【厄災の申し子と聖女の迷宮 1】 ひるのあかり/桜瀬 琥姫  ドラゴンノベルス

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死闘と混沌に満ちた迷宮を攻略する最強冒険者は現地生まれの狩人だった!

神が創りし迷宮のある世界。狩人の少年シュンは、現代日本から召喚された双子の少女ユアとユナと成り行きでパーティを組んで迷宮を攻略することに。銃と剣と魔法で戦うRPGのような迷宮で、シュンの"狩り"が始まる! しかし、それは、異世界からの召喚者、果ては神までもが驚愕を超えて苦笑するほどの超絶廃プレイそのものだった――!?
コミカライズの連載がはじまったのを見たのですが、これが一話からえらい面白い内容だったので、原作の方はどうなのかな、と読んでみた次第。
なぜか、漫画が連載されているのは【B's-LOG COMIC】だったりするのですが。まあ【カドカワBOOKS】などからも漫画化されて連載されてる作品が多い雑誌なのですが、だいたい女性が主人公の作品が多いので、本作みたいに男の子が主人公で、というのは珍しいというのもあったのですが。
そもそも、異世界転生モノでありながら純粋な現地人が主人公という点から結構珍しいと思うんですよね。それも、転生者の若者とパーティーを組む形での。
主人公のシュンは、若いながらも育ての親たちの仕込みで名うての狩人として、そしてソロの冒険者として活動する少年でした。
この世界では、孤児にはダンジョンを探索する義務が課せられていて、シュンもその義務を果たすために故郷から旅立ち、潜ったダンジョンでこの世界の神が行っている悪趣味な遊戯の存在を知ることになる。自分たちもまたその神の遊びの駒であるということも。
そして、異世界……この場合は地球から神が毎年のように集団召喚によって、少年少女たちを呼び寄せ、無理矢理に神がプロデュースしたダンジョンの探索に投入されているということを。
シュンは、そこで召喚された学生たちに混じって、ダンジョン攻略を行うように命じられるのだった、という内容。まあそこまでも細かく紆余曲折あるわけですけどね。

このシュンという少年が歳のわりに達観しているというか、ずっと独りで活動してきたせいか非常に狩人として研ぎ澄まされていて、まさにプロフェッショナルなんですよね。
突然、異世界に転生させられチートを与えられたといっても右も左もわからないところから、いきなり命がけのダンジョン攻略を強いられた学生たちの素人丸出しの姿を比べると、転生モノのテンプレとかスラング、用語、概念から全然知らないものの、冷静さを失わずにじっくり観察を重ねながら黙々と目的を達していくシュンの様子がまた頼もしいのである。
狩人という生業ゆえの我慢強さ、慎重さがそのまま廃人プレイ紛いの行動に繋がっていくのは面白かった。予断を持たないが故に安易に不可能と判断せず、検証と実証を繰り返していくところとか。
また現地人で銃なんて存在自体知らなかったのに、弓や弩の延長にある遠距離武器だと把握するやどんどん使いこなしていくところとか。

そして興味深いのがヒロインとなる双子の姉妹なんですね。双子キャラにも色々あると思うのですけれど、双子といっても個性が正反対だったり見た目は一緒でもキャラや性格は随分違っていたり、とヒロインとして扱われるキャラクターは特に個々の個性を重視した形で描かれることが多いと思うのですけれど、本作のユアとユナはぶっちゃけ全く差別化する様子がないのである。
双子二人セットで描かれると言うと、最近では【クロの戦記】の双子エルフのアリデットとデネブが思い起こされるけれど、二人セットで掛け合いという点でもユアとユナはアリデットとデネブもコンビと良く似てるんだけれど、なんだかんだと姉と妹で性格が違っててちゃんと二人別々にわかるように描写されている双子エルフと違って、こっちの二人は完全に不可分の二人一組で描かれていて、区別する様子が見受けられないんですよね。完全に二人で一人、という様相を呈している。
挙句の果てには、あの合体ですからね。あんなの、個々に自律した意識があったら出来ないことでしょう。生まれる時に無理やり二人に分けられた、という双子の妄想はあながち間違っていないのかもしれない。
いや、こういう自分自身と双子の姉妹との間で自己と他者であるという認識が曖昧になっている、という双子キャラはたまに登場したりしますけれど、それがメインヒロインとなるとちょっとお目にかかったことがない気がする。
とはいえ、二人差別化されていないとはいえ、双子というひとくくりでみるとこれが面白いキャラなんですよね。喋ってる内容はアーパーでお調子者というのは、プロというか職人気質なシュンと案外相性が良くってこの双子がいると雰囲気も自然と明るくなっていますし。
見るからに幼く実年齢からしても同世代と比べてもかなりちんまい双子は、シュンをして庇護欲を湧き立たせるのか面倒見よく扱っていますしね。……まあ過労死寸前になりそうな何日も跨ぐような長時間戦闘を当然のように強いたり、と現地人らしく労働基準法の概念は存在しないので、儲かるし強くなるけれどブラック!という環境なのですがw
とはいえ、双子もクラスメイトたちから見放され、そのままなら衰弱死するか魔物に殺されるかという運命を辿るはずだったところを、シュンに拾って貰って生きる術、戦う術を教えてもらい、一緒にパーティー組んでくれたという恩もあり、最後まで運命を共にする気満々なのですが。

しかし、悪質なのがこのダンジョンを運営して、無理やりプレイヤーを現地や異世界から引き込んで遊んでいる神様である。シュンたちがゲームマスターが本来想定していないクリア方法やモンスター攻略を行った際は、あとで修正してモンスターの強化をしてたりするんですよね。
バグや不具合をなくすのはわかるんですけれど、攻略されたから二度目はないように強化するって単純にGMとしてズルいし卑怯な気がするんですよね。
本気でダンジョンを攻略させる気があるとは思えないムーヴしてるんですよね。とにかく、どんどん脱落者を出すような運営ばっかりしていますし。
でも、シュンの国の偉い人には日本人らしい名前の人もいるらしく、ちゃんとクリアしてダンジョンから出ることの出来た者はいる、という体になっていて、それが新たに召喚された若者たちの希望になっているんだけれど……どこまで本当なのやら。
今の所駒に過ぎないシュンたちは、神様の言われた通りにダンジョンを攻略していくしかないし、シュンからして孤児の義務を果たしてダンジョン攻略を終えてさっさと帰る、くらいしか思っていないようなので、神様への反発とかはないみたいだけれど、さて果たして本当にダンジョンの攻略は可能なのか。
あとがきだと、どんどんとあの少年神の顔色が青くなっていくそうなので、ちょっとザマァ展開も期待できるかも?