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森沢晴行

Babel III 鳥籠より出ずる妖姫 ★★★★★   



【Babel III 鳥籠より出ずる妖姫】  古宮 九時/ 森沢 晴行 電撃の新文芸

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

大国キスクを訪れた雫。妖姫と謳われる王妹オルティアとの対決へ。

この大陸の在り方にまつわる秘匿された真実を、ファルサス王から知らされた雫とエリク。その情報の中から日本帰還への糸口を見いだした二人は、再び旅に出ようとしていた。
だがその時、突如現れた使者に雫は選択を突きつけられる。招かれた先はかねてよりきな臭い噂が絶えなかった大国キスク。彼女に求められた役割は、残忍で知られる王妹オルティアの遊び相手だという。

「それで? お前は何ができる? 自らの口で述べてみよ」

成り行きから雫は、流行り病とされる言語障害の対処法を確立するという大役を負うことに。失敗すれば待つのは無残なる死。旅の庇護者であったエリクのいない中、雫は一人手探りで解決策を探す。
そして孤独の姫オルティアとの対峙を重ねるうちに彼女の心根を知り、二人の間柄にも変化が生まれていくのだが……。
ああ、凄い一冊だった。
この一冊のなかで、幾人の運命が変わってしまったか。そして、雫とオルティア。二人の女性の人生の歩みは根底から変わってしまった。果たして、この巻がはじまった時の雫とオルティアと、キスクでの物語がひとまずの終わりを迎えた時の二人とでは、紛れもなく同一人物にも関わらず同じ彼女たちには見えない。別人のように、とは言うまい。彼女らの芯の部分は最初から最後まで何一つ変わっていない、それでもこれだけ変わって見えるのはそれだけ彼女らが成長した、という事なのだろう。
いや、成長というのもそぐわない。背が伸びるような、体が大きくなるような、そんな成長とはわけが違う。
これは羽化だ、
同じ存在でありながら、まったく別の存在に進化する。それは、羽化と呼ぶに相応しい。
幼さを脱ぎ捨てて、彼女たちは大人になったのだ。

ウェブ版でも、このキスク編は一番好きなお話でありました。雫を主人公とするこのシリーズにおいて、紛れもなくメインヒロインはこの妖姫オルティアだと、読んだ当時は強く思ったものですけれど、改めて一冊の本として彼女たちの物語を見た時、その思いは一層強固になったのでした。
彼女たちの関係の変化は一冊という枠組みに収められたが故により鮮やかに浮き彫りになったように見えます。初めてまみえた時の、あの暴君と玩ばれる哀れな生贄に過ぎなかった二人が、その別れの際には……あの挿絵には感極まってしまいました。尊い、尊い! 
ある時を境にして、雫もオルティアもお互いへの想いが器を越えて溢れるほどになっていて、一瞬も気を抜けない中で二人とも全力疾走していたから、読んでいるこっちも夢中になっていたのですけれど、すべてが終わってふっと落ち着いた時に、そしていつの間にか同じ道を手を握り合って進んでいた、もうこれからいつまでもずっと続くように感じられていた道が、それぞれ自分の道を歩くために別れていくのを目の当たりにした時。それを、二人が穏やかに受け入れた時。
見つめ合う二人の姿に。そっと抱き合う二人の姿に。はじまった時のあの残忍な妖姫と決然と睨み合う雫の姿が思い浮かび、この数ヶ月のあまりに濃い時間の中で無関心と敵意がこんなにもお互いを大切に、掛け替えのなく想い合えるようになっていく変遷が過ぎっていき、その果てにこの光景に辿り着いたことに。あの二人が、貴女と出会えて良かった、と心の底から思い別れを惜しむことが出来たことに、なんかもう感極まっちゃったんですよね。
泣いた。
……と、感じ入ってたのにラルスが後ろでワケワカランことしてやがるから、余韻が台無しだったけどな! このファルサス王、いくらなんでも酷すぎるw 相対的にオスカーが超真面目に思えてしまうじゃないですか!
ぴょんぴょん跳ねるオルティアがやたら可愛くもあったのですが。ラルス相手だと、オルティアも形無しだ。

しかし本当にこの巻における雫は別格でした。最初にオルティア相手に堂々と自分の使いみちを主張するくそ度胸! くそ度胸!!
そして殺されるかもしれないという状況にも関わらず、オルティア相手に一歩も引かず、不退転の覚悟で詰め寄った姿。自分の無実を証明するためにファルサスで塔から飛び降りた時もまー、むちゃくちゃでしたけれど、今度のそれはあの時を上回るある意味イッちゃってる様子で怖いくらいの迫力だったんですよね。激高しながら頭の芯が完全に冷めきってるような、勢いに任せているようで思考の方はフル回転しているような。目が据わっていて、あれはヤバかった。
このときのオルティアは、まだ暴君そのものだった時でしたし触れれば切れる剥き出しの刃のような状態と言っても良かったのに、まったく気にせずに掴みかかったようなもので。
命知らず、と言われても仕方ないですよね。でも、こういう時の雫って別に自分の命を捨ててでも、というふうには考えているわけではないように見える。そもそも、そういうの頭からすっ飛んでいて、兎に角退かない譲らないという所に自分の全リソースを注ぎ込んじゃっているように見える。だからこそ、あんまり危機意識を持ち得ないし、あとで後悔してるようにも見えない。
でも、ここらへんまでは以前までの雫でも見られた部分だと思うのだけれど、言語習得実験が終わってオルティアの元で働くようになって以降から徐々に変わってくるんですよね。
自分が容易に殺されない立場にある、という事情を利用して、オルティアに言いたいこと言うべきことを率直に諫言するようになってから、雫は暴君オルティアの内側にある歪みに、孤独に気づき、また側近のファニートやニケを通じてどうして彼女が今のようになったのか、その過去の一旦を知ることになります。
オルティアの心に近づき始めたときから、そしてオルティアが徐々に心を許してその内側を見せてくれるようになった時から、雫の在り方が劇的に変わっていくのである。
端的に言うと、オルティアにめちゃくちゃ入れ込んでいくんですよね。いつしか、オルティアのために全身全霊を注いで彼女の未来を切り開こうとしはじめるのである。
エリクがピンチに陥った時など、雫のバイタリティはほんと凄まじい勢いでアップしてもう尋常でない働きを見せたりしましたけれど、あれって実は瞬間的な強化加速ではなかったという事なんでしょうね。
いざ、オルティアのためにやったるぞー、となって以降の雫のあのポテンシャルの爆発的な増大は、上がりに上がり切ったところから一切落ちることなく、いつの間にかオルティアの側近中の側近として、腹心として、股肱の臣として、十年来ずっと使えてきた重臣としてオルティアを支え、ついには現王を追い落としてオルティアを女王として即位させるクーデターの牽引役として主君を叱咤激励し、支持を取り付けるために貴族たちを口説き落とす切り込み役となり、ひいては戦場に立つオルティアに全権を預けられその命運を託される代理人にまでなりおおせるのである。
その堂々としたオルティアの片腕としての姿には、貫禄すら伺えて……暴君だった姫を多くの貴族が国を託すだけの忠誠を捧げ、軍の将兵が喝采をあげて支持する偉大なる名君へと変えた名臣以外の何者でもありませんでした。
もうどこにも普通の目立たない女子大生の皮なんて残ってないですよ。
あと、普通の女子大生はスライディング土下座とかしませんから!
折角の感動の再会シーンにも関わらず、この娘さんときたらなんでこうドラマティックに出来ないんだ!? ほんと、そういうとこだよ!?
あのどうしようもない絵面から、わりとじんわりと染み入る再会シーンまで持ち直させるエリクさん、マジ尊敬します。この人、色んな意味で顔に出さなさすぎますよ。彼が雫のためにどれだけの事をしてきたか。雫さん、キュンとしましたか? しましたよね?
ある意味、ニケの奇襲は一番効果的なタイミングだったのかもしれませんね。彼にとっての失恋は、でも最後に一矢報いた、というべきなのでしょう。エリクじゃなくて、雫の方に全ダメージが入ってしまったようですがw

生得言語の問題については、子供の失語症の回復実験がなんとか成功を収めたあと、雫とオルティアの二人の物語、キスクの国内問題とファルサスとの紛争へと深く進行してしまったために、一旦脇に置かれる形になりましたけど、さらっと一文、重要な伏線が敷かれてたんですよね。
雫が一から言葉を教えた幼子リオ。この子の雫の呼び方を、なぜかニケはちょっとおかしな認識の仕方をしているのである。この違和が大事になってくる。それに、なぜか本来雫が知らないはずの、喪われた記録や情報がまるで最初から備わっていたように雫の知識、記憶の中に存在していた不可解さ。
【Babel】の本当の意味が問われる最終巻、今からすごく楽しみです。
でも今は、蛹から蝶になるように羽化した雫とオルティアの間で育まれた友情の尊さを、しばし噛み締めて反芻していたいと思います。


Babel II 魔法大国からの断罪 ★★★★☆   



【Babel II 魔法大国からの断罪】 古宮 九時/ 森沢 晴行 電撃の新文芸

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

魔法大国ファルサスへ到着。しかしそこで知る衝撃の真実とは――。

幾度となく命の危険に遭いながらも、雫のひたむきな前向き思考と魔法士エリクの機転によって切り抜けてきた長い旅路。カンデラ城での禁呪事件を経た後も、行く先々で何故か騒動に巻き込まれながら、遂に二人は当初の目的地であった魔法大国ファルサスへと到着する。
日本帰還への糸口を求めて、ファルサス王ラルスとの謁見が実現するが……。

「──立ち去るがよい、外部者よ」

雫の存在を“ありえない異質”と断じ、冷徹な意志を持って王剣を突きつけるラルス。処断を逃れるため、自分が人間であることを証明するために雫が取った行動とは。そしてファルサス城の中で知ることになる、エリクの過去とは。
やがて解明されていく世界の謎。異なる世界の言語を教え合う中で少しずつ降り積もっていった違和感は、衝撃的な事実として雫たちの前に立ち現れる。

それ、その人!! リースフェンを迎えに来た人ーー!! イラスト付くとあからさますぎてちょっと笑ってしまった。これ、現在進行系でのみ電撃の新文芸から出ている古宮さんの作品を追いかけている人はどういう反応になるんだろう。ちょっと気になるなあ。
というわけで、ついにファルサス編に突入であります。その前にリースフェンというどこぞのお姫様みたいな逃亡者と遭遇したり、偽装結婚の替え玉にされそうになったり、と相応のでっかいトラブルには巻き込まれているのですが。いや、結構な頻度で巻き込まれてますよね。自分から首突っ込んでいるわけでもないのに。
とは言え、一つ一つはまったく関係ないような事件に見えるのだけれど、これが「言葉」にまつわる物語であるという根底でしっかりと繋がってもいるんですね。偽装結婚の話では、この世界の大陸の成り立ちにまつわる神話に基づいた結婚式が行われるのだけれど、その神話の内容、特に花嫁を迎えるエピソードに関しては、ラストで明らかになった言葉にまつわる認識の齟齬。雫の住んでいた地球と、この世界における言語についての成り立ち? いや発端? そもそも根本的に違う部分について発覚するのだけれど、神話で確かにそれを示唆するような内容が含まれているんですよね。
それはそれとして、偽装結婚の事件の当事者となる人たちについても言葉が重要な意味を持っていました。言葉によって傷つけられ、言葉によって満たされる。伝わらないと思い込んで言葉を費やさなかったことは、彼らに決定的な断絶と孤独をもたらし、でも最後の最後に彼と彼女はもう一度、今度こそは本当に伝え合うことが出来た。心重なることが出来た。それが、悲劇の後の終幕でしかなかったとしても。破滅は時として美しい。それが幸福に満たされての破滅なら、なおさらに。
ただ、雫には似合わない。
この娘はいつだって直球勝負だもんなあ。直球というのも違うか。無神経にズカズカ踏み込んだりとかしないわりに、理不尽さには憤るし背を向けて逃げたりしない。行きずりで出会ったばかりのリースフェンの境遇に怒り、彼女の自由を取り上げようとするものに向かっていったあれは、勇気とか正義感とかじゃあないんですよね。なんだろう、これを負けず嫌いとでも言うのだろうか。それとも正しい怒り? いずれにしても、彼女には譲れないものがあるし、それを踏みにじろうとするものには徹底的に反抗する。エリクは雫を頑固と評するけれど、頑固どころじゃないですよね。硬骨漢か! 
ただそれが権力者だったりしても、譲らないんですよね、この娘は。
ファルサス王ラルスに突然言いがかりめいた見に覚えのない理由で断罪されようとした時、エリクに身を挺して逃されて、それで一目散に一旦王城から飛び出しておきながらそのままの勢いで戻ってきて、アレですよ。
いやそれはおかしい。一般人は絶対、そこまで出来ないから。そんな一線を持っていないから。
でもそれは体を張ったとはいえ、会話を交わそうとしない相手に対して言葉を届かせる手段ではあったんですよね。無理やりグリグリと押し付けて飲み込ませるようなやり方でも、此方の言葉を聞かず一方的に自分だけが理解する理由で相手の意思を無視して結果を押し付けようとする行為に対して、ただ反抗するのではなく、それは間違いだと突きつける行為。
エリク、怒るよそれ。
でも、結果としてラルスと一応とはいえ交渉可能になった。いびってイジメてくるけれど、言葉は交わせるようになった。言葉をちゃんと聞いてくれるようになった。
そういう状態になっておきながら、わざわざラルスの土俵に乗って言葉以外のところで張り合って彼のイビりに真正面から付き合って、負けるかおらー、ってやってたのはやっぱり負けず嫌いなんじゃないのかな。
ともあれ、この娘は、雫はとにかく言葉を惜しむことだけはしない。自分だけで溜め込まずに、ちゃんとコミュニケーションを取ろうとする。思えば、異世界に飛ばされて身一つで見知らぬ土地に放り出され、そうでもなんやかんやと辺境の街で生活基盤を築き上げてしまったのも、彼女のそういう意思疎通を惜しまないところだったのだろう。
エリクは、その辺決してうまい方ではないと思うんですよね。でも、自分からなかなか見せようという能動性に欠けるだけで、問われれば問われた以上を返してくるし、押せばそれなり以上に押し返してくる。待ってたら、あんまり反応してくれなくなるけれど、そうじゃなかったら、この人はきちんと以上に対応してくれる、考えてくれて、慮ってくれて、実行してくれる。
その意味では雫とは相性ピッタリなんだろうなあ。
そして、彼の……エリクの過去は。ファルサスで彼が得てしまった喪失は、意思疎通の齟齬と欠如に基づいてしまっている。かの人の正体を思えば、最初からこれは行き場のない物語だったのかもしれないけれど、行き着く所はそこ以外になったのかもしれないけれど。
それでも、エリクにとっては清算の済んでいない傷だったのだ。でも、それを雫に話したことでなにかほどけたものはあったのかもしれない。自分のことを話すことは、許すことに繋がるのだろうか。
いずれにしても、伝える、という事の意味の深さをこの物語は常に意識しているように思える。

だからこそ、尚更に。ラストで明らかになった言葉にまつわる雫とこの世界の齟齬の大きさ、認識そのものをひっくり返すような事実にはドキドキしてしまう。心揺さぶられてしまう。言葉で意思を疎通する、という事そのものが、自分の中から生み出してきたものではなく、誰か大きな存在によって手を加えられてきたのではないか、という疑問のその恐ろしさに。
そもそも、生得言語なんて雫や、彼女の側に属する読み手にとっては発想すらないものですもんね。気づくわけがない。雫にとって、最初意味がわからなかったのも当然であるし、彼女と誰よりも言葉を交わし、彼女から異世界の言語を習ってきたエリクですら全く気付かなかったのも無理はない。
そんな両者の齟齬を暴くことになった、今子どもたちの間で流行りだしているという言語障害の病。それが病気ではない、という事実を理解できるのは雫と彼女との齟齬を正確に認識したエリクだけ。果たして、今この世界に何が起ころうとしているのか。ものすごく得体のしれない方向から忍び寄ってきた不気味な世界そのものを揺るがそうとしている変容に、これからどうなるのか。雫とエリクはどうするのか、と思った所でさらなる急展開である。
ああ、電撃文庫版ではここで打ち止めになっちゃったんですよね。ここまでやっておいてからに、そこで打ち止めって。いや、こうしてちゃんとカットなしでの再スタートを行ってくれたわけですから、むしろありがたいというべきなのか。
今度こそついに、ついに本作の真ヒロイン、というか雫にとってのヒロイン?の登場ですよ。もう顔見せはしてるけど。ある意味、ラルスのイビリは予行演習みたいなものですからな。王様相手だろうと一歩も退かずに張り合ってみせた雫である。耐性はついてるついてる、うんうん。



Babel I 少女は言葉の旅に出る ★★★★☆  



【Babel I 少女は言葉の旅に出る】 古宮 九時/森沢 晴行 電撃の新文芸

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現代日本から突如異世界に迷い込んでしまった女子大生の水瀬雫。剣と魔法が常識の世界の辺境に降り立ってしまい途方に暮れる彼女だったが、魔法文字を研究する風変わりな魔法士の青年・エリクと偶然出会う。

「――お願いします、私を助けてください」
「いいよ。でも代わりに一つお願いがある。
僕に、君の国の文字を教えてくれ」

日本に帰還する術を探すため、魔法大国ファルサスを目指す旅に出る二人。その旅路は、不条理で不可思議な謎に満ちていて。――そうして、運命は回りだした。
これは、言葉にまつわる物語。二人の旅立ちによって胎動をはじめたばかりの、世界の希望と変革の物語。


以前、電撃文庫から出た【Babel ―異世界禁呪と緑の少女―】と【BabelII ‐剣の王と崩れゆく言葉‐】の二巻。残念ながらこの二巻で打ち切りになってしまったシリーズの、これリブート版なんですよね。
ちなみに、前の感想がこれ。




この物語の核心ともなる「言葉」に纏わる謎は、シリーズ全般を通して徐々に明らかになっていき、そのクライマックスで劇的にすべてをひっくり返してくれる構成になっているんですね。だからこそ、まだ前フリの段階で打ち切られて終わってしまった時にはぐったりと打ちのめされて突っ伏してしまったものですが。
こうして改めて新文芸の方で再スタートしてくれるとは。同じ世界観でもある【Unnamed Memory】シリーズが好調というのもあったのでしょうけれど、うれしい限りでした。
ちなみに、本作は【Unnamed Memory】シリーズが展開している時代の300年後という事になっているそうです。ファルサス、今やなんか魔法大国になってますし。
ともあれ、リブート版という事で内容自体はまだ前回までと同じところですし、再読♪くらいのつもりで読んでたんですけど、読んでたんですけど、読んでたんですけど……。
んんん? なんか、読んでも読んでも終わらないというか、もう既に文庫一冊分くらい軽く過ぎてるはずなのにまだ終わらないけど、文庫版の第二巻ではファルサスに着いてるはずなのに全く到着する様子が見えないのに、まだまだ話が終わらないぞー!?
というか、なんか前と中身の分量がぜんぜん違うーー!?
と気づいた時には数時間が経っていました。違う、エピソードの密度が全然違うー。
後書き見たら、なんか文庫版では半分削ってましたー、とか仰ってるし。おいおいおい、どんだけ削られてたんだ文庫版。一応ウェブ版も文庫版を読むよりも随分と前に全部読んでいたんですけどね、そう言えばなんか文庫版読んだ時、昔読んだときよりもだいぶサクっと各エピソード終わっちゃった気がするなあ、とは思った記憶があるんですよね。
ウェブ版は確か最初から最後までほぼほぼ纏めて読んだんで該当箇所がどれだけの分量だったのかなんて具体的にはわからなかったものですから、ブラッシュアップしてスリム化したのかなあ、とは思っていたのですけれど、半分削って再構成してたって多くないですかねそれ!?

ともあれ、本作こそが原文に近いスタイルになっているということですか、なるほどー。

しかし、改めて見ると雫って自分でも気づいてますけど、一人で出歩くたびにトラブル巻き込まれますよね、この娘。別に彼女の不注意とかではなく、向こうからトラブル降ってくる不可抗力なんですけど、これだけ頻繁に巻き込まれたらそりゃエリクも目を離せなくなりますわ。安全なはずの町中ですら、容易に巻き込まれてますし。
かと言って過保護にべったりといつもくっついているわけでもないあたりがエリクのサッパリした所で。それなりに面倒見が良いからこそ、雫の旅についてきてくれているはずなんだけど、ベタベタしていない適度な距離感を保ち続けるのがこの青年の不思議な所なんですよね。他人に興味がない、と公言していて、雫に対しても異性を意識させる振る舞いをしないからこそ、二人で旅していて夜なんか一緒に眠ったり宿の部屋を同じにしていても、妙な雰囲気に一切ならないのですけれど。この距離感は独特だよなあ。
それでいて、雫を突き放しているわけではないんですよね。湖底の遺跡に引きずり込まれた時なんかは、走り回って助けに来てくれたわけですし。わりと身を挺して雫の安全を図ってくれたりしている。
この新文芸版になって、エリクの雫への興味というか関心? 彼女に対する思いやりの質感というものはより深く描かれているような気がします。ちょっとした彼女に対する反応や仕草、時折挟まれるエリク自身の感想などから、情動そのものが低温であまり動きを見せないこの青年の雫への「親身」がより伝わってくるような。
逆に、雫の方も突然異世界に放り出された中で、自分とずっと一緒に居てくれているエリクという青年への感謝の思いというのは、並々ならぬものがあるんですよね。それでいて、雫の方もあんまりベタベタしていないのも面白いところで、この旅の道連れ二人は不思議なほどさっぱりとした空気感で成り立っているように見えるのです。でも、一度どちらかが窮地に陥れば、絶対見捨てることなく危地へと飛び込んでいくんですよね。エリクも雫も、まともに戦う術も持っていない人間にも関わらず。
特に雫の方は掛け値なしにただの一般人で特別な能力なんて何一つ持たないのに。途中で一人ぼっちの所を拾って一緒に行くことになった使い魔のメアも、中級魔族とは言えそこまで強い力を持っているわけではありませんから、そんな便利な能力として扱えるものではありませんし。
それでも人づてを辿って協力を取り付け、また自分から渦中へと飛び込んでいく様子は何なんでしょうねこのバイタリティ。
雫自身、優秀で目立つ姉と妹に挟まれて、自己主張もあまり出来ずに姉妹にコンプレックスを抱いている何者でもなく何も持っていないつまらない人間だ、と自分を定義してしまっているのですけれど。
エリクが地味ってことはないでしょう、と若干呆れながら言っているように、絶対雫が自分で思い描いている雫と、傍から見た雫って違うんですよね。全然違うんですよね。こんな地味っ子がいるかー!! 異世界に突然身一つで放り出されて砂漠の真ん中で立ち往生、から速攻で生活基盤整えてしまったように、この娘ってなにげに適応能力が半端ないというかどんなところでも生きていけるようなバイタリティの塊みたいな所あるんですよね。これで凡人ってなら、彼女を目立たなくしてしまうほどの姉と妹ってどんだけの人物だったんだよ、と思ってしまう所なんですがまあ他人の庭の芝は青いってやつなのでしょう。

また、よく注意して読んでいるとエリクと雫が二人で文字や言葉について話しているときに、不可解な違和感が介在するんですよね。エリクは雫の旅についていく報酬の一つとして、雫から彼女の世界の言葉や文字を学ぶことを選んでいるのですけれど、その会話、意思の疎通に妙な「齟齬」が挟まるのです。まず最初に、雫が自分の名前をエリクに告げる所からそれははじまっているのですけれど、この齟齬こそが物語の根幹へと通じていくんですねえ。ってか雫はまだ全然気づいていないみたいですけれど、エリクは途中からその違和に気づきだしているのが面白いというか何というか。
異邦人、真に外から来た存在である雫にとって言葉こそ通じるものの、この世界には寄って立つものはなにもない。その宙ぶらりんの足元のおぼつかなさ、不安感、元の世界に戻れないのではないかという恐怖。どれだけバイタリティに溢れて闊達に過ごしていても、その奥底にはいつだって怖れがある。死地に近いさなかにエリクを助けに飛び込んでいったのだって、数少ないこの世界のよすがであるエリクの存在を、自分から手放すことが恐ろしくてたまらなかった、というのも彼女自身の性格や勇気以外の側面としてあった事でしょう。
そして、この巻のラストに遭遇した禁呪は、この世界の負の側面は彼女のことを異物として排除しようとしてきた。
元々、姉妹の狭間にあって自分の中に寄って立つものを見いだせなかった雫。家を出て一人暮らしを始めることで、姉妹から離れることで自己を確立しようとしていたという自己分析をするほどに、自分の立ち位置を見いだせなかった彼女。
自分の世界から放り出され、異世界でただ一人。そこでも彼女は未だ自分の居場所を見いだせず、大いなる意志は彼女を異質な棘と呼んでして排除しようとする。
それでも彼女は叫ぶのだ。自分はここに居る。

今、それを肯定するのはエリクひとり。雫にとって、放すことの出来ない日常で、自分を認めてくれる世界の代表、日常の象徴。そう思うと、雫にとってのエリクへの信頼というものの深みが、この旅で培われていった二人の関係が、どれほどさっぱりしているように見えても、見える範疇に収まらない深度を持つものなんだと、わかる気がする。
その意味でも、この新文芸版になってより確かに描かれたのって、この二人の関係になるのでしょうかね。

ともなれば、より強烈にそのあたりが問われ突きつけられるだろうファルサス編は、さらに楽しみ。
ってか、ラストにチラッと登場した人物、【Unnamed Memory】が出版物として世に出た今となっては爆弾そのものなんじゃないですか、どっちの作品に対してもw

古宮九時・作品感想

妖精狙撃 エルフ・ウィズ・サイレントアサシン ★★★★   



【妖精狙撃 エルフ・ウィズ・サイレントアサシン】 榊 一郎/森沢 晴行  富士見ファンタジア文庫

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「…悪い妖精は死体になるお時間です。にひ」
厳重な警備が敷かれた妖精族の結婚式で、新婦を撃ち抜いた一発の弾丸。妖精族を専門に狙う殺し屋“妖精刈り”。その正体は―“異界”から持ち込まれた自身の髪色と同じ朱色の狙撃銃“サイレント・アサシン”を愛用の武器にした妖精の少女アグネータ。生活能力皆無なアグネータの世話兼相棒を務める記憶喪失の普人ユーゴ。二人は今日も妖精の命を刈り落とす。それが使命だと信じて―。ファンタジースナイプアクション!

これ、「妖精の狙撃手」とかじゃなくて「妖精狙撃」というシュッとしたタイトルだからこそビビッと来るものがありますなあ。
榊先生、今までの作品の中でも極め付きに銃器趣味に走った作品だったのではないでしょうか。「妖精刈り」と呼ばれる謎のエルフ連続殺人犯。その正体は、狙撃手を担うエルフの少女アグニと、彼女に拾われその助手を務めることになったユーゴの二人組の殺し屋コンビ。
彼らが狩るのは、妖精族のみ。なんだけれど、この妖精族……エルフと呼ばれるそれはファンタジー定番の不老にして悠久を生きる事実上死から最も遠い生物、ということになってるんですね。ここからが面白いところでこのエルフたち、先の異世界人たちの来訪があった時代に天敵であったオーガやゴブリンが絶滅した上に医療技術の発展もあって病気などの外的要因による死が完全に遠ざかってしまったために、長く生きた個体ほど生命体として精神的に変質しはじめてしまうのですが……。
長く生きたために精神が摩耗して感情が薄くなっていく、という設定はよく聞くのですけれど、その結果として外界への興味が失せたり変化を厭うようになったり、という変質はよく見るものだったのですけれど、この世界のエルフたちは心を失うことで静的になるのではなく、むしろ刺激を求めて欲望へと忠実になっていってしまっているのである。個としてひたすらに快楽を求め、悪しき欲望の権化へと化していく。それが露骨に表に出るのなら社会的に制裁を受けようものなのだけれど、数百年を生きたが故の強かさと社会的な立場によって、その誰もが社会的には名士として表の顔を保っていて、陰で権力を駆使して自分の欲を満たすための邪悪を、死から最も遠ざかったという意識ゆえの傲慢さから享受しているのである。
アグニとユーゴは、名も知らぬ謎の依頼人から指示を受け、そんな世に罰せられないエルフたちを剪定する、そんな立場に立っている。
ただ、彼らには正義を行使しているという意識はない。あらすじには使命と信じて、なんて書いてあるけれどどこをどう見ても使命なんか見出している様子もない。信念があるわけでも思想的観念があるわけでもない。怒りや憎しみという感情に則って復讐を果たしているわけでもないし、同じエルフとして許せないと憤っているわけでもない。
ユーゴに関しては、どうやら異世界人らしく記憶喪失を伴って迷い込んだこの世界で保護された先で、それはもうトラウマになるような悪夢を味わい、その果にアグニと出会って拾われたわけだから、奴隷商人などに対するドロッとした負の感情、怒りや憎しみは煮え立っているのだけれどだからといって、正義の味方として振る舞っているわけでもそういう意識を持っているわけでもない。彼は彼なりに、自分がなぜアグニを手伝って悪を為しているエルフを殺して回っているかについて、答えを探していくのだけれど、一方でアグニの方はというと上記したように実のところなんにもないんですよね。ただ、言われたからやっているだけ、という主体性の無さで自分の狙撃の腕に自負があるわけでもなさそうだし、その仕事に熱意を持っているわけでもなさそう。
やる気もなくいつも気だるげでシモネタが大好きで生活能力皆無な駄目人間。これ、ヒロインとして大丈夫か、というレベルで女子力も皆無、人としておおむねダメというありさま。あとがきで野良猫風?とのたまっていらっしゃいますけれど、野良はもうちょっと野性味というかやる気があるんじゃないだろうか。エルフとはいえ、まだ見た目相応の……長寿のエルフにとって場合によっては見た目以下の精神年齢かもしれないアグニですけれど、はたして彼女に心はあるのか、とふと思ってしまうほどには感受性が薄い感じなんですよね。ふにゃふにゃしていて、だるだるーとしている有様は無機質とは言えないんだけれど、その根底には人形めいた主体性のなさが見いだせてしまう。
唯一、執着を示しているのはユーゴに対して、なのかは今の所まだハッキリとわかりやすい反応を示したわけでもなく、でも愛用のL115A3を紅く塗ったりしているのは趣味趣向が出ているんだろうか、これ。
キャラとしては辛うじて【棺姫のチャイカ】のアカリが似てるかも知れないけど、あれは単にシモネタ好きがかぶっているだけかしら。ただ中身の空疎さを唯一身近にいる人間で埋めようとしはじめている、という点で結構似た感じはするんですよねえ。
作品として見ると、アグニとユーゴの二人で完結している閉じた世界でもあるんですよね。あとにミリアムという獣祖族の少女がチームに加わるのですけれど、依頼者でスポンサーである相手は全くの謎で接触らしい接触もなく、狙撃対象とは個人的な繋がりもなし。外界から遮断された彼らだけの閉ざされた人間関係、というのはユーゴたちが殺し屋という職業なのを加味してしっとりとした黒さを雰囲気として醸し出している。
サブキャラとして、事件を捜査する刑事二人が登場しているのだけれど、果たして彼らの存在は重要な役どころになっていくのだろうか。閉ざされた世界に穴を穿つ相手になるのだろうか。

殺し屋稼業としては、どちらかというと必殺仕事人的な雰囲気もあるんですよね。狙撃でありながら、その尽くでヘッドショットではなく胴体をぶち抜いているのが何気にミソなんじゃないでしょうか。殺された当人がわけも分からず突然死ぬのではなく、じわじわと今から自分が死ぬのだという痛みと恐怖を味わいながら死んでいくという末路を、心を失い感情を喪失し死を克服したと増長していた悪に味わわす。因果応報というものである。
また、スナイピングのみならず、いやアグニはもう狙撃しか出来ないポンコツなのだけれど、ユーゴの方は結構近接での銃撃戦のシーンも多いんですよね。それも拳銃で撃ち合うのではなく、短機関銃しかもスコーピオンというのがまた、やっぱりここぞというときはスコーピオンですね、という感じでw いやまあ、最終的に手持ちの最後の武器である拳銃で撃ち合うことになる、というのは銃撃戦の定番ではあるんですが。
久々にどっぷりと黒い榊さんバージョンを読めて、大変満足でありました。アグネータ、ヒロインとしては大変アレなんだけれど、先の見えない暗殺者という生き方において、ああいう退廃的で刹那的で自堕落で女子力皆無な在り方というのは、逆にそのまま後先考えずにズブズブになってもいいじゃないという沼的な魅力がなきにしもあらずなので、ここからミリアムも加わってどうなっていくのか楽しみでもあります。

榊一郎作品感想

英雄教室 10 ★★★   



【英雄教室 10】 新木伸/森沢 晴行 ダッシュエックス文庫

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ローズウッド学園は今日も常識外れに青春中!最近人間離れしすぎのアーネストがついに分裂!?ちっちゃいアーネストがみんなのペットになって大騒ぎ!!剣聖の娘・サラは恋愛にキョーミ津々!!オトナの女性目指してレンアイ修行スタート!?魔法の指輪でブレイドが5歳に!?盛り上がる女子たちの期待とは裏腹に、子供時代のブレイドはとんでもない野生児だった!!小さくてもすでに十分超生物なロリブレイドとガチバトル勃発!!勝利は誰の手に!?魔王ちゃんが魔界に里帰り!?魔王不在で群雄割拠の魔界にローズウッド学園の生徒たちも殴り込み!!ローズウッド学園四天王が、全てをぶっ飛ばす!絶好調超生物学園ファンタジー、第10巻!!
前々から人間もうやめちゃったんじゃないか、と言われてたアーネスト。似た感じの能力を持つルナリアが登場し、一緒に魔人化、一緒に融合なんて事もやってたので若干沈静化していたものの、最近とみに人間やめちゃってる能力を開発しまくったうえに、挙げ句に分裂である。斉天大聖孫悟空も髪の毛から分身を作ったりしてたけれど、アーネストの場合は自分の体を細分化しての分裂で、どれが本体ということもなく全部本物のアーネストですからね、それはもう人間じゃなくてスライムとかそっちですから。スライムだって最近は核があってそんな分裂とかしないんだから。
超生物な勇者さまもお墨付きの人外である。やろうと思えば大概力押しでなんでも出来るブレイドをして、自分そんなん出来ないから。もう人間じゃねえ、と言わしめる人間離れっぷりである。登場当初の規律正しい女帝さま、というキャラはほんと遠くになりにけり、だなあ。精神年齢、明らかに下がってブレイドと同じぐらいになってしまってるし。最近のブレイドの成長ぶりからすると、もう抜かれてても不思議ではないぞ。
これでわりと仲の方は進展しているんだから不思議なものである。なんだかんだと、ブレイドがアーネストのことちゃんと意識するようになってますものねえ。
面白かったのが、ブレイド(五歳)の若返り話で、いや話自体が面白いというよりも若返りの理屈が面白かったというか。これ、肉体が若返るのではなく厳密には幼い肉体年齢当時の当人を過去から引っ張ってきてるようなものなのか。限定的な時間移動? この場合、現在のブレイドはどこに行っていたのか、という疑問点も出てくるものの幼い頃の記憶としてブレイドの中にちゃんと思い出が残っているのはなんだかほんわかさせられる話だった。
ラストの中編は、いきなり魔界旅行編。マオの帰省に便乗してかつて勇者たちが攻め込み魔王と一大決戦を繰り広げた魔界へとほいほい行っちゃうのね。さすがにブレイドが危険で危ないと認識していたのでヤバイところなのかと思ったけれど、とりあえずこれについてこられるくらいにはクラスメイトの面々も強くなってるのねえ。魔界ルートの中でもイージーなところを通ったとはいえ、辛うじて準英雄級なクラスメイトたちと現状出力四%なブレイドでサクサク進めるんだから、大戦期とはやはり違う状況なんでしょうなあ。
ってか、魔王って死んでなかったんか! マオの登場時のエピソードではがっつり死んだみたいな話だったのに。あれ? それともブレイドそれとなく否定してたっけ。覚えてない。
魔物の死と再生のシステムもこれ面白いなあ。倒されれば倒されるほど強くなって復活するのもさることながら、倒された相手に似た姿や特性を持って復活することで同族が増えていく。さらには知性化を経てただの魔物ではなく、死と再生のサイクルから独立した種族として巣立っていく、というのは面白いシステムである。
ラストの酒盛りは、伝え聞くばかりの大戦だけれど本当に終わってたんだな、というのを実感させてくれる良いシーンでありました。この子たちはほんとに戦後の平和な時代に生きてるんだなあ。

シリーズ感想

Eクラス冒険者は果てなき騎士の夢を見る 「先生、ステータス画面が読めないんだけど」2 ★★★   



【Eクラス冒険者は果てなき騎士の夢を見る 「先生、ステータス画面が読めないんだけど」2】 夏柘 楽緒/森沢 晴行 ファミ通文庫

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咎人の烙印を押された者は、 その運命を曲げられない……!?

「咎持ち」――それは詐欺師、呪術師、そして殺人鬼など、罪科を犯す才能の保有者を指す。近頃、王都ラシュールでは連続殺人事件が起きており、犯人はその咎持ちである可能性が高いと噂になっていた。一方、ギルド職員のリカリアーナがライに対して冷たい態度をとり、どこか元気がない。さらにそんな矢先、ロロナが行方不明になってしまった! 助けに向かった先でライが目にしたのは――!? 世界の宿命に抗う、落ちこぼれ英雄ファンタジー、第2弾!
ステータスがバグっているために、どれほど実力を持ってても実績を示しても、信用が得られないというステータスが価値基準の中心にある世界における主人公ライの不遇が描かれたのが一巻だったのですが、そのライのステータスを見て、思わず「羨ましい」と言ってしまうほどの境遇にあったのがギルド受付嬢のリカさんことリカリアーナ。
それだけ、咎人スキルと呼ばれるものが人生を狂わせる凶悪な代物なんですよね。
ただ、悪逆に繋がる技巧を伸ばしやすい、というだけのスキルならまだしもその技術を悪行に使わなければ済む話なんだけれど、これに関しては場合によっては本能そのものを暴走させたり、性格や嗜好まで改変してしまうケースも多々見受けられるだけに、咎人スキルを持つものは何の罪を犯していなくても、予備軍どころの扱いじゃない罪人扱いされてしまう。国によってはスキルを持っているだけで抹殺されてしまう扱いですらあるわけで。
生まれながらに咎人スキルが付与されていた人間の人生が果たしてどうなるのか。その辛酸を嘗め切ったのがリカさんだったわけですね。
彼女もまた、ステータスというものに支配されたこの世界における犠牲者の一人であったわけだ。
実のところ一巻の段階では、リカさん裏社会で実績を積み上げた凄腕の殺し屋出身。或いはギルド専属の暗殺者、みたいな裏の顔の持ち主と思ってたんだけれど、ここまで純粋にただ犠牲者であったとは。
そもそも、リカさんが所属する冒険者ギルドの裏の顔がなかなか驚きのものだったんですよね。いささかならず、あの冒険者ギルドのギルドマスターってライの利用の仕方と言い腹黒いとまでは言わないまでも、胡散臭いというか腹に一物抱えた人物だとは思っていたんですが、これは予想外の思惑で動いている人だったんだなあ。
ただ、彼の思想やその実践であるこのギルドって、ステータスをあらゆる価値基準の要においているこの社会、世界に対するアンチでもあり対抗を志すものでもありうるんですよね。ちょっとディストピアっぽい世界だな、と思ってはいたんだけれどこのギルドのような密かに世界の在り方に対して疑問を呈する組織が存在する、というのは物語のテーマそのものがこのディストピア的世界観に対する疑義なのかもしれない。そうなると、良いようにも悪いようにも捉えることのできないステータスの概念から完全にはじき出されているライの存在は、完全な異端なんですよね。単に彼が強いというのは問題じゃないんだろうなあ。
ただ今の所、ライ自身の思想や価値観というのは現行のステータス基準の世界観に寄り添ったもので、騎士を目指しているその在り方も一般常識に基づくものなんですよね。彼自身、世界に対して疑問を抱いている様子もないし、何かを変えようとしている素振りもない。枠組みの中で満足している、という以前の枠組みが存在している事自体認識せずにその中に収まっているつもり、の人物なんですよね。
いや、だったというべきか。
この巻で、彼は常識においては絶対に排斥されなければならない咎人スキルの持ち主であるリカを、まったく疑いもせずに受け入れている。その生来から刻まれた瑕疵を問題視すらしていなかった。それは、彼の価値観自体がこの世界における基準から逸脱していることを示している。それが元からだったのか、それとも大切な友人であるリカに関すること故に生じたものだったかは、微妙に把握しづらい展開だったのだけれど、それでも彼がステータス表示のみならず、その内面もまたあるべき枠組みの中から逸脱したことは明らかなのだろう。
それは、ステータスが基準となっている世界の枠組みの最も要となっている部分を担うであろう「聖女」とは、絶対に相容れないものとなってしまっている、ということでもある。
世界の否定は聖女の否定と同義であり、世界そのものである聖女もまた、この枠組を壊しかねない異端は絶対に認めてはならないものである。だからこそ、彼と幼馴染の少女はどこかで決定的な決別を経てしまっていたのか。
虚を突かれたのは、それが今後起こることではなく、どうやら既に両者の間に共通認識として共有されているっぽいことなんですよね。いわゆる不倶戴天。
ライのこれまでのあり方を見ていると、そんな様子全然伺えなかったんだけれど、それだと既にライは騎士目指すとかの夢を真剣に考えているはずがなくなってしまうわけで。このへん、どうなってるんだろう。
リカさんはリカさんで、ライに救われたは救われたんだけれど、殺人鬼スキルの熟練度が既にリミットに達しているわけですから、全然ピンチは摘まれていないわけで、こっちはこっちでどうするんだろう。

1巻感想

英雄教室 9 ★★★☆  

英雄教室 9 (ダッシュエックス文庫)

【英雄教室 9】 新木 伸/森沢 晴行 ダッシュエックス文庫

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ローズウッド学園の仲間は今日も青春まっさかり!不遇のイケメン槍使いレナードをみんなでビルドアップ!?イケメンビームにアーネストもたじたじ!?ブレイドはアーネストにプレゼントを買うため、生まれて初めてアルバイトに挑戦!果たして超生物は無事お金を稼ぐことができるのか!?念願の修学旅行に出発!!豪華飛空挺の旅に浮かれる生徒たちだったが、国王の用意したプランはとんでもないもので!?灼熱・極寒・超重力に真空まで、極限環境目白押し!英雄学校の修学旅行は超規格外!!アーネストが結婚!?他国の王子がアーネストを見初めて大胆アプローチ!!どうするブレイド!?超ヒット学園ファンタジー第9巻!
そりゃあ、眼光の一睨みが物理的衝撃をハッスルのなら、イケメンの白い歯キラリも物理的な☆になって発射されても不思議じゃないよね!
浴びると女の子が堕ちてしまうということは、マテリアル化された魅了の力ということになるんだろうか。いや、魅了という技術とか魔法ではなく、あくまでレナードの魅力が物質化したものなんだろうけれど、手ではたき落とせるというのは色んな意味でさすがだなあ、と。
でも、アホの娘であるアーネストを腰砕けにするくらいなのだから大したもんじゃないですか。レナードの場合、顔だけじゃなくて性格も一流のイケメンだけに何らかの形でもう少し報われてほしいけれど。ちょっと物分りが良すぎるというのもねえ。
アーネストのウェディングドレスが表紙を飾っているように、今回のメインのお話はアーネストの結婚話なんだけれど、その余波を受けているのかいないのか、全体的にアーネストとブレイドのラブコメ方面に比重が置かれていたような気がします、他の短編も。
レナードのキラキラ攻撃の話でもブレイド、露骨に嫉妬をみせるようになったし、5才児呼ばわりされてた彼の精神面もこうしてみると着実に成長しているのだなあ、と。普通になってきている、ということなのでしょうか。
アーネストの誕生日に、ブレイドが自分で働いてお金稼いでプレゼントを買おう、という展開なんかとても「普通」ですし。その結論に至る前に、アーネストにお小遣いねだってそのお金でアーネストにプレゼントを買おうと思っていたことは抹消すべき秘密なのですが。ブレイド、わりと考え方の方向性が王様にそっくり、というのは何気に色んな場面で垣間見える。特にダメ人間方面に関しては。
ブレイドは、そんな王様のダメな部分毛嫌いしているからちゃんと反省しているので大丈夫だと思うのだけれど、そのまま何の掣肘もなくブレイドが精神的に成熟したらそのまま王様みたいになっちゃうんじゃないだろうか。
アーネストが成長してセイレーン女史のようになるかというと、まあ無理そうなのですが。二人とも、順調に成長しても二人のような「大人」になれる姿は想像できないんですけどねえ。まあ、今の段階で充分お似合いの精神レベルなのですが。
あとちょっとブレイドがアーネストの乙女心を理解できるようになれれば、そこがゴールになるのでしょう。

魔剣も、なんか普通に増えだしてるし。焔の魔剣と来て氷の魔剣が来たら、そりゃ風と土の魔剣もありますわねえ。とまあ、四大元素に連なる他の魔剣が出てくるのはいわば「普通」の展開なんでしょうけれど、まさか魔剣の子供とかそういう発想はなかったw
一番最初にくっつく、というか出来ちゃった婚をするのが魔剣とは思わなかった!
それはそれとして、ネーミングセンスは最悪だと思うけれど。
そう言えば、色々な属性のキャラクターでてきてましたけれど、妹キャラって何気に居なかったんだよなあ。クーはペット&娘枠だし。とりあえず片っ端から属性埋めていく所存なのか。これだとそのうち、幼馴染とかも出てきそう。
でもまあ、妹枠のサラさん、ちゃんと婚約者付き、相手の男性がしっかりといるというのは新鮮かもしれないけれど。

シリーズ感想

Eクラス冒険者は果てなき騎士の夢を見る 「先生、ステータス画面が読めないんだけど」 ★★★   

Eクラス冒険者は果てなき騎士の夢を見る 「先生、ステータス画面が読めないんだけど」 (ファミ通文庫)

【"Eクラス冒険者は果てなき騎士の夢を見る 「先生、ステータス画面が読めないんだけど」】 夏柘楽緒/森沢 晴行 ファミ通文庫

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"ステータス"――それは神が与えし才能を示す唯一の指標である。この世界ではそれが人生のあらゆる場面で重視され、一生つきまとう。騎士団に入ることを夢見る青年ライは、認識できないステータスを持つことでまともな職にも就けず、万年Eクラスの冒険者に甘んじていた。しかし、その剣筋は並の冒険者には視認できないほど疾く、"魔の森"屈指の魔物をも瞬殺する実力を持っていて――。 定められた運命に抗う、最低クラス冒険者の英雄ファンタジー、開幕!


ステータスに記されたスキルという名の才能によって、ほぼ将来が決定してしまう。社会的にも評価基準がステータス表記に基づいていて、それから外れると社会的にドロップアウトしたのと同然になる。というのは、まあこの手のファンタジーでは見る設定なんだけれど、何気に近未来SFのデストピア社会的なものを想起させるのは面白いなあ。尤も、モデルとなる中世世界の職業や身分がガッチリと固定されて自由のない社会に比べるとむしろ才能に基づいて仕事につけたり、わりと職業選択もガチガチではなくて、スキルの成長を見込んだり、表記されたスキルの外側の範囲にも可能性を求めることが出来たり、とけっこう自由度が大きいので、決して窮屈な世界観ではないんですよね。
それでも、評価基準がステータスにあるということは、ステータスがバグって読めないとなると、どれだけ車の運転が上手くても免許持ってなかったら公道での運転が認められないのと同様……と、これは例題がちょっと違うような気もするけれど、ともかく実態が制度上の評価基準と合致しないために不遇をかこつのが、本作の主人公なのである。
尤も、その主人公自身がステータスの価値・評価基準に固定観念を縛られているし、現行社会を逸脱する気、ルールそのものを変えてやる!みたいな事はさっぱり考えずに、今の評価基準に則ったまま憧れの騎士になりたい、と考えているような人なので、まあこの待遇も仕方無いのかな、と思わないでもない。
でも、彼の実力を正確に把握している冒険者ギルドの上層部が、まったく便宜らしい便宜を図っていないのは、なんというか……色々と思わせるところありますよねえ。最低ランクから引き上げることは出来なくても、報酬面とかで幾らでも手当とか出せそうなものなのに。さすがに日雇い仕事でひーくら言いながら生活している姿は可哀想なものがある。イイように利用している、と見られても仕方無い部分があるんじゃなかろうか。受付のリカリアーナさんは出来る範囲で色々とやってくれてるようだけれど。それにしても、ライ自身に自覚が全然ないからなあ。
そもそも、彼が自分の力を正確に把握していないというのが、彼我の実力差もわからない程度、に見えてしまって仕方ないんですよねえ。結局ステータスでしか判断できない、という意味では騎士団入ったクラスメイトの筋肉ダルマとそんな変わらない、という感じですし。なので、あんまり強者的な雰囲気が感じないのがなんともはや。
雰囲気としてよかったのは、あの魔法使いの娘、フレミヤの一族マルドゥナ家にかけられたドラゴンの呪いですか。あれ、西洋ファンタジー的な呪いじゃなくて、むしろ本邦の伝奇風な禍々しいドロっと粘度の高い呪詛っぽいんですよね。それか、宿主の無意識を自分の繁殖の為に操る寄生虫めいたヤバイ感じの。
あの普通のファンタジーな世界観の中にポツリと突然生まれたシミのような仄暗いゾワゾワするような黒点。それがいい意味での「違和感」として首筋を冷たく撫でるような感触が漂っていて、その変に混じったようなまじりきらないように残っている雰囲気が、けっこう好きでした。
ギルドマスターの狂気走った思惑とか、リカさんにつきまとう疑惑とか、なかなか陰惨な要素が入り混じっていて興味深いんだけれど、実のところそういう方向とライのバグった性能と無自覚な性格ってあんまり合ってない気もするんですよねえ。フレミアは、まさにそのライのそれに救われた、と言えばそのとおりなのですが。
あと、聖女さまが完全に自分の男に唾つけようとする相手に喧嘩売りに行ってるようにしか見えなくて笑った。いやこう、一応聖女として意味深に釘刺してる、という体は保ってるんですが、それにしてもアレである、いやはや。

英雄教室 8 ★★★☆  

英雄教室 8 (ダッシュエックス文庫)

【英雄教室 8】 新木伸/森沢晴行 ダッシュエックス文庫

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ローズウッド学園の仲間は今日もすくすく成長中! アイン&ツヴァイの霊鳥姉弟が、人間になっちゃった!? 元気すぎるパワーで女帝もたじたじ!
夏!海!南の島にバカンスにやって来た生徒たち。そこでブレイドとクレアの仲が急接近!?
帰ってきた現代学園!アーネストが幼馴染でソフィが転校生!?仮想世界で繰り広げられる英雄教室「日常学園ver.」のゆくえは!?
反目しあう生徒と王都防衛隊の両方に国王から指令が下される!逃げ出した厄介なモンスターを討伐せよ!今回の「実戦的訓練」は犬猿の仲の防衛隊と共同作戦!?しかも能力コピーするモンスターとか!?反則なんですけどーっ!?冒険&青春マシマシの第8巻!
カシームーー!? 皇帝カシムイベントは、なんか学園モノの定番というか、一番お馬鹿な友達キャラを親の参観にかこつけて持て囃すハメになる、というアレなんだけれど、アーネストをあれだけ女扱いすらせずに好き放題やらかす命知らずっぷりは一周回ってカッケエ! となるほどで、何気に後輩に信奉されているというのもわからなくはなかっただけれど、この短編のラストのオチにびっくり仰天ですよ。え!? 平民の子じゃなかったの!?
キャラクターの方向性、似ていると言えば似ているけれど言われないとわからないほどだしなあ。その上、女子からのモテっぷりの差ですがな。まあ、現状極めてモテナイ型の頭悪い男の子ですけれど、ナイスガイではありますし、わりと肝心な時の女の子の扱い方下手ではないと思うので、やはりおとなになったら変わるんですかねえ。
ちょっと「ほえ!?」と思ったのが、このカシムに対してイェシカが何気に気がある素振りをみせたところなんですよね。シリーズ中盤入って有耶無耶になってたんですけれど、確か最初の方ってカシムってクレアのこと気にしてなかったけか。それで、イェシカに対してはクレイがすごい意識してたはずなんだけれど、今回クレアはクレアでクレイのことちょっと気にしてるらしいことイェシカが発言してたし、見事にクロスした関係になりつつあるんだろうか。初期の頃の男子たちのアレが継続しているなら。それはそれで面白そうではあるのだけれど。
今回のシリアスというかしんみり話は、まさかの仮想世界編での展開となりまして。現状、みんなハッピーで悩みも不満もとてもありそうになかっただけに、それこそアーネストがそろそろブレイドとの関係まったく進展しないしブレイドの精神年齢的成長が頭打ちだし(そうでもないっぽいけれど)、鬱憤溜まったんじゃないか、と考えたんだけれど、そうかー、そっちの話があったかー。
ソフィについては、姉妹は精神はソフィの体に緊急避難することで救えたので、それで解決だと思っていたのだけれど、ああして姉妹仲良く暮らしている姿を見せられると、違う個体で存在するということの意義というものを想起してしまう。同時に存在するのと一緒に居るのとは、また別なんですよねえ。
でもまあ、この世界観だとアインとツヴァイがなんとなく人間化できたように、頑張ればなんとかなりそうな気がしないでもないんだけれどなあ。
あと、兄妹でもその歳で一緒にお風呂とかアウトなのに、幼馴染だから一緒にお風呂オッケーとかエロゲでもまず見たことないですから。アーネストさん、そこんところ本当によろしく。

最後の劣化コピーブレイドとの激戦見ると、もうクラスメイト全員人間やめてますよね、これ。それでいて、まだ準勇者級になるかならないかレベルだってんだから、勇者業界のインフレどこまで青天井になってるんだろう。

シリーズ感想

英雄教室 7 ★★★  

英雄教室 7 (ダッシュエックス文庫)

【英雄教室 7】 新木伸/森沢晴行 ダッシュエックス文庫

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ローズウッド学園は今日も平和!天才科学者イライザの発明で、アーネストとルナリアが融合!?ついに超生物をも越える最強戦士の誕生か!?仮象で普通人の身体能力に落とされたブレイド。念願の普通生物になって、喜び勇んで皆にマジパーンチ、マジキーック!そうした楽しい日常の陰で、人知れず悩みを抱えるイェシカ。学園一の自由人で、いつも明るい彼女には、誰にも言えない大きな秘密があった。「超生物を暗殺せよ」―“組織”からの指令を前にしてイェシカの取った行動は…?王都壊滅の危機も、大事なトモダチの悩みも、全部まとめて解決しちゃうぜ!元勇者の日常は、今日も穏やかに絶好調!超ヒット学園ファンタジー第7巻!!

融合(フュージョン)って、もろにドラゴンボールネタじゃないですかー。いや、フュージョンなんてトンデモが実際にやれちゃうようなハチャメチャな世界観な作品なんてそんなにないので、意外とありそうであんまり使われないネタだったのか。キャラ同士をくっつけて二人が混ざったようなキャラを作る、というのコメディ系ならなんぼでもネタに使えそうなんだけれど。アーネストとルナリアが融合して氷炎将軍フレイザードみたいになってたのにはワラタ。メドローアみたいなのまで使えてたし。しかし、これってフュージョンもダイの大冒険もネタとしてはもう古典なんですよねえ。年代としてはもう随分前で若い子が生まれる以前ですし。それが通じるというのはネタ元がそれだけ凄いとも言えるのだけれど。
さて、今回のメインは表紙にもなっているイェシカ。シリーズが長くなってくると色んなキャラにスポットが当てられるからいいなあと思うんだけれど、彼女に関しては絶対に後付設定ですよね。むしろ開き直ってて清々しいくらいなんだけれど、あの実戦経験なしビッチ設定にもちゃんと意味があったのかー。でも、今更勇者に手を出すとか、あの裏組織って「業界」についてまるで無知だったとしか思えないんだけれど。ともあれ、あれだけ苦労してあげたパーセンテージを、この元勇者本当につまらん理由でガンガン下げはるなあw
まあ力を発揮できるパーセンテージがどれだけ下がっても、実はまったく弱くはなってないというのが、実質0%でも無双、で明らかになってしまったわけであんまり%の上下は関係ないのかもしれないけれど。
この勇者、単に出力で強くなったわけじゃなくて、師匠となった武術家たち全部ぶっ殺す勢いで技巧の方も習得してるんだよなあ。
しかし、これでイェシカも本格的にブレイド寄りになってしまったわけですが、個人的にはクレイとカシムに報われてほしかったので、全員ブレイド寄りになってしまうのはちょっとなあ、と思わないでもない。なんか、クレイたちも超進化してしまってるけれど、いやいやそういう方向で報われてもなあ、と。

Babel II ‐剣の王と崩れゆく言葉‐ ★★★★☆  

BabelII ‐剣の王と崩れゆく言葉‐ (電撃文庫)

【Babel II ‐剣の王と崩れゆく言葉‐】 古宮九時/森沢晴行 電撃文庫

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『――立ち去るがよい、外部者よ』
ついに辿り着いた、魔法大国ファルサス。しかし世界を害する“異物”と判ざれた雫は、非情にも王・ラルスに剣を向けられる。
ラルスと戦う決意をし、瀕死の重傷を負った雫の一方、エリクは過去を追憶する。自らが殺した、ある一人の少女のことを……。
そして“死者蘇生”の禁呪による事件で国中に暗雲が漂うなか、雫とエリク、二人の運命は分岐点を迎え――。
異世界の秘された“真相”が明らかになる、衝撃の第2巻!
おお、オスカーとリースヒェンの二人はここで遭遇してるんだったか。なんか意味深に登場してそのままさらっと通り過ぎていってしまったこの二人ですけれど、意味深なのも当然でそりゃもうものすげえウルトラ重要人物であるのですが、ここは通り過ぎていったその背を覚えておけばそれでいいのではないでしょうか。
というわけで、雫が元の世界に戻る手がかりを手に入れるため、目的地だった世界最大の魔法大国であるファルサスへようやく到着した雫とエリク。
ファルサスである……。【Babel】という作品はウェブサイトで連載されていた作品であると同時に、「Memories」という世界の中で繰り広げられる物語のうちの一片である、というのは一巻の感想記事でも触れたと思いますが、ファルサスという国はその一連の物語群の中でも始まりであり根幹でもある、とある物語の舞台となった国でもあるんですよね。作中でもファルサスの歴史を語る中でチラチラと触れられているものであり、そのファルサスに帰ってきたことが懐かしく、ここに彼らの姿がもう無いことが無性に寂しくもある。
今、このファルサスを支えている王族直系はわずかに二人。王ラルスと王妹レウティシア。この王様、初対面の印象最悪だよなあ、これ。いきなり尋ねてきた雫を「外部者」と呼んでぶっ殺しに掛かってきたわけですから。しかも、その理由ときたら雫には身に覚えのないもので、訳がわからないとしか言いようがない。ファルサス王家に伝わる使命として世界外存在である「外部者」を討滅すべし、というものがあったらしいのだけれど、どうもその「外部者」という存在は同じ異世界からの来訪者としても、雫には全く当てはまらないんですよね。明らかに勘違いか誤解なのであるが聞く耳持ってくれないし、もし間違っていても念のためにぶっ殺しておいた方が安全だよね、という雫からするとたまったもんじゃない理屈でぶんぶんアカーシアぶん回してくるもんだから、雫からするとなんやねんそれ!! と悲鳴よりも憤激の声をあげたくなるような状況なのである。
それでも、相手は一国の、しかも大陸有数の大国の王である。その王が危険であるから殺す、と声をあげてしまった以上、もはや雫の進退は極まってしまったと言っていい。エリクが身を挺して雫を逃してくれたものの、このまま逃げて果たしてどうなるのか。元の世界に戻る手がかりを求めてたどり着いたのがこのファルサスである。その手がかりに背を向けて逃げて、それもこの世界の縁となり、ずっと雫を助けてくれていたエリクを置き去りにして。
ここで、逃げ出さずに思い切ってしまうのが、雫という少女のとんでもないというか、尋常ならざるところなんだよなあ。エリクは彼女を頑固と評しているけれど、これは頑固なんて領分で収まるもんじゃないでしょう。決して気が強いタイプでもないのに、ここぞという時の肝ノ据え方と負けん気の強さに関しては、雫はもうぶっ飛んでる。この退かない時は頑として相手がなんだろうと退かない、という彼女の不退転は後にラルス並かそれ以上にやばい人を虜にしてしまうのだけれど、まあそれはそれ。
自分の命を的にして、堂々と大国ファルサスの王ラルスに喧嘩を売る雫。力も何もない彼女が、たったひとりで王を自分と対等の舞台に引っ張り上げて勝負を挑むのである。これってある意味魔女裁判でもありながら、訴えた側にも間違っていた場合にはきっちり落とし前をつける事になる捨て身の大勝負なんですよね。無茶苦茶なんだけれど、無視は絶対に出来ないという。それでも、自分の死に様をチップにするんだから、とんでもない女である。
でも、これで一点ラルスが雫を認めたか、というと……いや、認めたと言えば認めたんだろうけれど、素直に認めずにずっと雫のことイビリ続けるあたり、ラルスって心底性格歪んでるというか、子供かっ! っちゅうところなんですよねえ。わりと笑い事では済まない真似もしてるし。そりゃ、レウティシア様も怒髪天つくわー。ただ、ラルスがいじめていた分、周りの視線が警戒よりも同情で占められたというのも確かな話で、この国に因縁があり、罪人ではないものの曰くを持ってファルサスを出ざるを得なかったエリクが連れてきた謎の少女、という立場の雫はもっと怪しまれても良かったんですよね。それを、ラルスが無茶苦茶したからこそ、可哀想にと受け入れられた面もあるんだよなあ。でもこの自分は面倒くさがりなのに、取扱が非常に面倒くさいキャラなシスコンサド王陛下、いやもう妙に憎みきれない小気味の良さがあるんだけれどやっぱり面倒くさいなっ!
ともあれ、このファルサスで頻発する禁呪に纏わる事件は、同じく禁呪に関わる事件によって大きな傷をココロに負ったエリクの過去に、雫は踏み入ることになるのだ。
反省しても後悔はしていない、とエリクに訴えかけた雫。その言葉は、長く長く後悔に沈み続けたエリクにどのように響いたのか。囚われた過去の残像にどこか雫を重ねていたエリクが、失った彼女と雫が似て非なる存在だと、いや全然違うだろうというキャラなのだと、飲み込む話であり認める話であり、きっと改めてほんとうの意味で雫と向き合うことが出来るようになった話でもあったのだろう。
その直後に、ラストのああ言う形になってしまうのだから、まあ皮肉な話なんだが。
また、この二巻は【Babel】というタイトルが急速に迫ってくる話でもあるんですよね。各国にここしばらくで急速に増え始めた言語障害を負った子どもたち。前からチラチラと話には出ていたものの、その障害をおったという子どもたちと初めて雫は対面することになるのですが、そこで雫は自分の常識にある言語と、この世界における言葉の在り方の決定的な違いに直面するのである。生得言語。エリクの口から語られるこの世界における言葉の有り様。雫とエリクの間に横たわっていた、言葉に関する大きな誤解、食い違い、すれ違い。
それはまた、雫に背筋を凍らせるような思いとともに違和を突きつけるのである。ナゼ、この世界の人間ではない雫が、この世界の言葉を理解でき、また喋ることが出来るのか。
それはこの世界の常識では決して不思議ではなく、だからこそ雫の、現世地球の常識では絶対に有り得ないこと。異世界人である雫にまで適合してしまう、言葉の統一。
そうまさに、ここから【Babel】の真実に、そしてその崩壊の萌芽に雫たちは直面していくのである。

というところで、あとがきのニュアンスが非常に怪しいっちゅうか、次の巻が出ないんじゃないかと思ってしまうようなニュアンスで、うえええと悲鳴をあげてしまったんですけれど。
待って待って待って、こっからが面白いのに。作中最強コンビとなる言って過言じゃない雫と姫様の出会いが待ってるのに。あのとびっきりにヤバイ、オルティア姫を雫が落としてしまうところが一番面白いのに。
どうか、あの感動のラストまで書籍を以て読ませて欲しいと願うばかりです。

1巻感想

英雄教室 6 特装版 ★★★★   

英雄教室 6 画集+キャラクター事典収録 豪華80P小冊子付き特装版 (ダッシュエックス文庫)

【英雄教室 6 特装版】 新木伸/森沢晴行 ダッシュエックス文庫

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清純派ヒロイン、クレアがイライザの発明品で巨大化!?さしもの超生物ブレイドもついに敗北か!?『クレア・マウンテン』。イオナとイケメン剣士・クレイが密室で急接近!意外なカップル誕生か!?『賢者クレイ』。転校生・ルナリアが学園に馴染もうと、クーに弟子入り!?天才少女にもトモダチたくさんできるかな?『ルナリアの悩み』。アーネストが炎の魔人になる度に素っ裸に!脱「怪人赤マント」を目指して、魔王となにやら特訓開始!?『脱怪人赤マント』。ローズウッド学園には個性的な生徒たちがいっぱい!英雄を目指す生徒たちの、明るく楽しい規格外の日常が盛りだくさん!エピソード満載のシリーズ第6巻!!


「バレてる?」

さすがに、そろそろ気づいてる人も出てきてるのかー。アーネストは論外としても、ロンロン論外としても。
ルナリアはこのやり取りの中で気づいたのね。イェシカがあれだけ誘導してたら気づかないほうがおかしいか。
ブレイドの判別法、あれ何気に的確でしたよね。単純だけれど、わかりやすく気づいてるか気づいてないか判断しやすい。それが通じない女の子が幾人かいましたが。

「クレア・マウンテン」

そりゃあ、勇者が自分より巨大な相手に苦戦するはずないよなあ。世界観として、個体戦闘力がデカイ小さい無関係にふっ飛ばせるものですし。巨人化した程度で苦労してたら、ドラゴン程度でも相手に出来ないだろうし。
それよりもですよ、いまさらも今更なんですが、この娘ら全くもって裸に対して抵抗なくなってきてるよなあ。クレアなんか、巨大化してしまって見られちゃいけないところ思いっきり見られてるのに頓着してないし。

「ルナリアの悩み」

このルナリアの孤高の女王というポディションって、本来アーネストのものだったんですよねえ。それが、炎の女帝さまはあのようなこのような有様になってしまわれて。アーネストはどこへ行こうとしているのか。
まあルナリアの登場からして、アーネストがあれだけキャラ変わらなかったら出番なかっただろうから、それはそれなんだろうけれど。しかし、ぼっち決め込んでるルナリアを気にして本音出させようとしているあたり、ブレイドの精神年齢は順調に成長してるんだなあ、と感慨にふけってしまう。


「普通人の生活」

ちゃっかり幼馴染ポディションをゲットしているアーネストに微苦笑を誘われる。こういうイベントをみんなで一致団結してやれてしまうのが、優しい世界だよなあ。それにしても、アーネストなりきり過ぎてちょっとはまってるだろう、これ。普段やれないことをやりまくってたの、彼女なんじゃないだろうか。


「マッサージ師ブレイド」

エロい。ってか繰り返しになるけれど、全裸で全身マッサージされるのをちょっと恥ずかしい、くらいで収まっちゃってる裸族化は、もうなんというかもっとやれ。
アーネスト、性的に開発されるの巻。というか、クラスメイト男女問わず全員、性的に開発されるの巻ww

「賢者クレイ」

クレイがひたすら可愛そうなんですけれど。ってか、イェシカが好きって設定どうなったんだろう。彼女の方には全然脈なさそうなんだが。
ブレイドが「嫉妬」という感情を覚える回。対象がイオナというのは、ブレイド当人としては非常に納得し難いものがあるんだろうが。


「脱怪人赤マント」

いやもう、炎の魔人化したら全裸になってしまうというの、恥ずかしがるの今更じゃね? と思うんだが、浴場で混浴してるのと、外で裸になるのはそれなりに違うらしい。みんなに見られるというのは変わらないのにねえ。
まあ、裸が恥ずかしいというよりも赤マント呼ばわりされるのが屈辱、っぽいのがアーネストらしいのだが。
しかし、なんで人間には絶対ムリな上位魔族化を、ただマテリアライズで服を形成したいというだけで、根性で成し遂げてしまうのか。アーネストはどこへ行こうとしてるんだろうw


「デートのお手本」

処女ビッチ疑惑の有るイェシカによる、女性陣に訓ずる普通のデート編。普通にデートしてるし!! 単なる耳年増ではなく、ちゃんと実践できる応用力が有るあたり、イェシカ経験豊富と言われても仕方ないよなあ。
そして、普通にデートすればするほど、以前のクレアとの違いが浮き彫りになり、女子力の違いががががが。
ブレイドがメンタル幼い分、楽しい楽しくないが素直に表に出てしまうので、イェシカの相手を楽しませるデートと自分ばっかり楽しいクレアのデートの違いが浮き彫りになって、哀れw


「美女と魔獣」

いやいやいや、さすがにもう「ヴァルツァーの紋章」はみんな知らんでしょう、さすがに。魔獣の設定が作者のデビュー作にもとづいている、なんてのは言われてもわからん。読んだけどね、昔読んだけどね。20年以上前じゃないの、あれ? 電撃文庫の黎明期、創刊直後の作品ですぜ。
ともあれ、魔獣に構うアーネストに、ブレイドが嫉妬しまくる話。いやもう以前のイオナの時どころじゃなく、ブレイドが機嫌損ねまくってるのがまた可愛いのう。やっぱりアーネストが一番なのねえ。そんでもって、嫉妬してもらってると知って、めっちゃ喜んで心がぴょんぴょんなって調子乗ってるアーネストが、まあ彼女である。


小冊子の方はイラストと漫画、それにメインのキャラクターほぼ全員の掌編。見てると、クレイがまあ残念なことで。こいつ、普通に持てるのになあ。それ以上に拗らせてるのがレナードですが。アーネストがあれだけキャラ激変してるにも関わらず、一貫しているのは実に偉いと思うのだけれど、その方向性は思いっきり間違ってる、うん間違ってるw こいつも、どこへ行こうとしているのだろう。
あと、王様。本気でブレイドのこと可愛いのねえ。あの仮想現実編の時にパパさん役やれて、実はかなりご満悦だったんじゃないだろうか。

新木伸作品感想

Babel ―異世界禁呪と緑の少女― ★★★★☆  

Babel ―異世界禁呪と緑の少女― (電撃文庫)

【Babel ―異世界禁呪と緑の少女―】 古宮九時/森沢晴行 電撃文庫

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『小説とかドラマって不思議だと思わない? 異世界でも言葉が通じるなんて』
ごく平凡な女子大生・水瀬雫は、砂漠に立ち尽くしていた。不思議な本を拾った彼女は気づけば"異世界"にいたのだ。
唯一の幸運は「言葉が通じる」こと。
魔法文字を研究する魔法士の青年・エリクに元の世界の言語を教える代わり、共に帰還の術を探す旅に出る雫。しかし大陸は二つの奇病――子供の言語障害と謎の長雨による疾患で混乱を極めていて……。
自分に自信が持てない女子大生と、孤独な魔法士。出会うはずのない二人の旅の先、そこには異世界を変革する秘された物語が待ち受けていた。
「言語」と「人間」を描く、感動のファンタジー登場!
ああ、そうか。一番最初の、シズクという名前をエリクに名乗った時点でもう齟齬は描かれていたんだ。あのやりとりこそが、この物語の根幹を揺るがすキーワードになるとは、まったく想像もしてなかったもんなあ。
というわけで、ウェブ版は既読済み。いやもうこれ大好きでねえ。元は作者が藤村由紀名義で書かれているファンタジー小説「Memoriae」、【Babel】は同じ世界観を舞台とするMemoriaeの中の一作品だったわけです。特に【Babel】はこの「言葉」という主題の扱い方と、シズクの波乱万丈な異世界紀行に、エンディングへと至る物語の流れの美しさとか、ラストが凄い好きでねえ。本作を書籍版として読めるというのは、実に嬉しい限りなんですよ、しかも森沢さんの絵付きで。これが雫かー、シズクかー!
この雫という娘は本当に何の特別な力も持たない等身大の娘さんにも関わらず、異世界に飛ばされただけじゃなく、その異世界の中ですらあちらこちらと世界中を旅してまわり、また波乱万丈と言っていいくらいの様々な境遇へと放り込まれるのである。むしろ、何の特別な力もないからこそ自分の意志の元に一貫した立場を保てずに、他者の思惑や偶然の出来事に翻弄され、意図せず立ち回りを強いられてしまう。
と、ここからが水瀬雫という娘の凄いところで、彼女はたとえ強いられた境遇であっても決して立ち止まらないんですね。理不尽の中に置かれても決して前に進むのをやめない。元の現世に居た頃から、個性的で優秀な姉と妹に挟まれ、劣等感と自信のなさに苛まれながらも、雫ってそれを理由にして立ち止まっている様子は一切ないんですよね。大学進学を期に、姉妹から離れて一人暮らしを始めた、というのも逃げという消極さよりも現状でどうにもならない境遇を足掻いて抜けだそう、固定化されかけていたものを刷新しようという積極性に端を発している感じなんですよね。
まず、異世界の砂漠の只中に放り出された時に、開き直って歩き始めたように、この子は蹲って動かなくなるということを絶対にしないのである。意志も責任も放り出さず、常に彼女は自分自身で決断し続けるのである。理性と理知を行動力でコーティングしたような彼女のそんな特質を、恐らく一番正しく評価していたのは彼女の姉と妹なんだろうけれど、それを面と向かってちゃんと彼女に告げてあげたのって、多分エリクが初めてなんだろうなあ。
ぶっちゃけ、この雫をして比べて地味という枠に押し込んでしまう彼女の姉と妹って、どんだけだよ、と思わないでもないのですけれど。バイタリティの塊だもんなあ。感情的に豊かであっても派手ではなく、さっぱりとして理性的なのが地味めに見えてしまったのかなあ。
まあ雫に関しての見解については、後々に妹ちゃんから語られた妹から見た姉、という視点でのそれに随分と頷かされたものでしたが。なるほどなあ、と。人間、自分については案外見えてないものなのである。だからこそ、自己評価と実際の齟齬とをきちんと修正してくれる周りの人というのは大切であり、そういう人と出会えるというのは運命的なものなのでしょう。それはエリクにとっても、感情的じゃないわりとサラッとした物言いで、確信を突くというかバッサリ有り体に自分の在り方について表現されるというのは、新鮮だったんじゃないでしょうか。

本作の主題の一つに、言葉というものがあります。いや、まさに主題そのものでしょう。それこそ、タイトルが「Babel」。統一言語とその崩壊の神話であるバベルの塔から取られたものであるからして。
雫がどうして、異世界に迷い込みながらその世界の言葉を理解できるのか。そもそも、この世界の言語の概念と、雫の世界である地球の言語の概念とが食い違っていることからはじまって、この世界の根底に横たわっている謎そのものに踏み込んでいくストーリー。言葉というキーワードがすさまじいまでに重要になってくるのであります。
一方で、本作の舞台となる「大陸」は「Babel」という物語すらもが、大きな歴史の流れの一端に過ぎない「クロニクル」であります。作中でちらりと触れられているファルサスという国の成り立ちや、かの国に存在する精霊、それをもたらした魔女の話など、様々な歴史と物語に彩られ、積み重ねられた世界なんですよね。
つまるところ、この世界は「水瀬雫」のために準備され用意された世界ではないのです。雫という主人公を起点にして生まれた物語世界ではないんですね。水瀬雫は、長く長く続いてきて、そしてこれからも続いていく世界の中の、物語の中の、本当の意味での異邦人なのであります。これって、異世界転移系の物語の中ではやっぱりかなり珍しい構図なんですよね。小野不由美の【十二国記】の中嶋陽子なんかはそれに該当するのか。それだけに、雫が迷い込み、エリクと共にあっちこっちを歩きまわり、飛び回り、転がり込む世界の大地には、国々の風俗には、そこで暮らす人々の生きる姿には、積み重ねられた年月という揺るぎのない強度があり、厚みがあり、通り過ぎるだけの目に映る風景に膨大な背景が感じられるのである。雫の目に映る異世界は、確かにそこにある世界で、過去から存在する世界で、これからもずっと続いていく、世界なのだ。
そんな踏みしめる感触の有る世界を、雫は旅していくのだ。翻弄されながら、生きているのだ。迷い込んだ先で、彼女はその世界の人々と交流しながら、生きていく。
それが、書籍版となり、今まさに始まったこのシリーズ最初の一冊からも、ひしひしと感じることができる。指先で触れるように、匂いを胸いっぱい吸い込むように、日差しや風を体中で浴びるように、感じることが出来たのだ。
それが、何とも嬉しくて、くすぐったくて、心地良い。

あぁ今、自分、異世界を舞台にしたファンタジーを読んでいる。

さあこれが、【Babel】の開幕だ。

英雄教室 5 ★★★☆  

英雄教室5 (ダッシュエックス文庫)

【英雄教室 5】 新木伸/森沢晴行 ダッシュエックス文庫

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ローズウッド学園は本日も大騒ぎ!
キスを“挨拶”と勘違いしたブレイドがキス魔に豹変!女子も男子も唇が大ピンチ!?
「ブレイドは魔法が苦手」と考えたアーネストたちは、国王と共謀して“ローズウッド魔法学園”を建立。魔法以外使用禁止のルールで超生物討伐に乗り出すのだが―!?
他国の勇者育成学校との交流戦が開催!アーネストの対戦相手は最大のライバル、氷の魔剣使いの天才少女ルナリアだった。アーネストは自分の勝利を確信するが、なんとブレイドがルナリアに“超生物的特訓”を付けてしまって!?炎の魔人VS氷の魔人、2匹の大怪獣大激突の行方は―!?
強すぎる元勇者の青春満開・学園スローライフ、待望の第5巻!!



「キス魔ブレイド」
キスをただの挨拶と勘違いしたブレイドによる、男女見境なしのご乱行。ぬるい話だと、だいたい未遂で終わるのだけれどガッツリやってしまうのが超生物基準である。マジでクラスメイト全員とやりやがったぞ(アーネスト除く)。清純派とか幼女とか関係なしにぶちゅーである。どころじゃなく、がっつりベロチューである。キスだけでイカされてしまったあれやこれはやご愁傷様以外のなにものでもない(男)。
で、アーネストはなんで抵抗してたんだ、なんで無駄な抵抗してたんだ? 対抗できないという意味ではなく、抵抗する意味が無いという意味で超無駄だったじゃないか。一番シテほしいのがアーネストだっただろうに。
この娘のポンコツっぷりはとどまるところを知らないなあ。


「アダルト・クー」
ある程度外見年齢が自由にかわるキャラは居たけれど、さすがに食事量で変わるのは見たことがない。体が巨大化するならともかく、加齢するというのは凄いなあ。そして、消化したら低年齢化するって……。中身の精神年齢が変わってなかったらどれほど美熟女になってもあんまり意味が無いのだけれど。


「ハイウィザード・ブレイド」
勇者は実は魔法使いとしても超生物だった、という話はともかくとして、ブレイドの弱点が魔法なんじゃないか、と連想しただけで学園を魔法学園へと改変してしまうと発想して実行に移してしまうアーネストが、いい加減発想がもう超生物寄りなんですけれど。すでに常識の失われ方が半端ない。まあ、それを丸っと許可して実際に魔法学園にしてしまう王様が居るのが悪いんですけれど。


「ガールズミッションヾ欖△螢献А璽爛此
まだこう、ブレイドは女性の機微みたいなものは全然理解してないんだなあ、というのとは別に、何気に英雄級というのは凄まじく稀少、というわけではない、という話でも在る。
学園の連中、もう準英雄級くらいの能力を手に入れていて、人外魔境みたくなってきたなあ、と思ってたんだけれど、社会にでるとまだまだヒヨッコでしかなかったのか。
まあ将軍クラスはみんな英雄級以上らしいので、国王陛下の周りに侍るお姉さま方の準英雄級という実力は実際の所本当に大したものでもないのかもしれない。
一般市民と上級戦闘職の差が尋常でない気もするのだけれど、そうなるとブレイド来るまでの学園の連中って相当レベル低かったんだなあ。


「ローズウッド学園の対抗戦」
他校との対抗戦、なので超生物による超生物的訓練によって超生物に近づいたローズウッド学園の生徒たち、もはや他校とは比べ物にならない実力を手に入れた! というわけでもなんでもなかったのね。ルナリアは別格としても、他の学生たちともクラスメイトの連中互角かちょっと上、くらいだったものなあ。まだまだじゃないか。
しかし、久々に会ったライバルのルナリアから見ても、現在のアーネストは「誰だよこいつ」レベルで人格変わってるっぽいなあw まあ、外面という外套脱ぎ捨ててやりたい放題感情剥き出しにしてしまっているわけだし。幼児化している、とも言う。ポンコツ化している、とも言う。
ただ、アーネストが天才じゃなくて努力で叩き上げたタイプで、ルナリアの方が天才、というのは魔人化のあれこれを見てるとなるほどなあ、と思う所。なかなかハードな訓練だったとはいえ、超生物訓練一週間で実力があれだけ引き上がるんだから。若干、精神が破壊されて人格が再構成されてしまった気がしないでもないですが。
でも、ガチで恋敵になる相手が出てきたのはアーネスト的にはピンチなんじゃないだろうか。ソフィはそっち方面、受け身すぎて危険度高くなかったけれど、ルナリアは押せ押せっぽいもんなあ。ブレイドがそっち方面理解できるとは思わないけれど、理解しているしていない関係なしにわからないまま押し切る押しの強さがこれ以上ない強敵である。


英雄教室 4 ★★★☆  

英雄教室4 (ダッシュエックス文庫)

【英雄教室 4】 新木伸/森沢晴行 ダッシュエックス文庫

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今日も平和な学園ライフを満喫中の元勇者ブレイド。学園の仲間たちも着実にレベルアップ中。だがそんな平穏は突然破れた。追いついてきたソフィの過去。ソフィそっくりの顔を持つ、量産型人工勇者ソフィシリーズがブレイドの命を狙う。どうする超生物!?そしてローズウッド学園の日常は様々な方面で、大賑わい!ブレイドが“伝説の勇者王”として皆のコーチをすることに。超生物身バレの危機!!初の生徒会選挙が実施される。アーネストは女帝の地位を守れるか!?食堂のマダムが祝ご結婚寿退職。ブレイドの好物カツカレーの行方は!?性別も種族も全てを越えてトモダチになってゆく!青春全開の学園スローライフ、第4巻!!
女の子が具とか口走っちゃだめ!!
まだ幼児レベルのブレイドには性の目覚めはまだ早いかー。嫉妬の感情とかは、別にちっちゃい子でも持ってるものですからね。特別に大好きな相手を盗られると拗ねたり怒ったり、とかは。それでも、段々とドキドキ出来るようになってきている、ということは大きくなってるんでしょう。思春期までもうすぐもうすぐ。まあどう見てもブレイドの成長よりもアーネストの精神退行の方が勢い物凄いんですけどね。女帝(笑)でしょう、これw でも、幼くなればなるほどに、ブレイドのことを大好きなことも彼のためにナニカしてあげたい、自分がやってあげたいという素直な気持ちを隠さなくなってきたので、その意味ではちょうど釣り合いが取れつつ合って、どんどんいい感じにはなってるんですけどねえ。もう女帝の威光なんぞかけらも残ってないような気がしますが。最近、周りの子たちもブレイドだけじゃなくアーネストも子守対象になってきてる気がするし。
それでも、戦闘力だけはガンガン跳ね上がってるんだから、とんでもないですけれど。18%前後しか力出せなくなってるとは言え、ブレイドとまともに訓練出来るようになってるわけですしねえ。ってか、眼光が物理的攻撃力持ちだしたのにはわらたw 睨んだら衝撃波が発生って。
まあそんな自己改造甚だしいアーネストと比べると、ソフィはちと存在感を示せてはいなかった気もするけれど、今回の一件の結果だと余計にキャラ薄くならないだろうか。変なもの取り込んだせいで、キャラとっちらかって落ち着かなくなりそうだし。
ソフィーシリーズがブレイド暗殺のために攻撃しかけてきていたの、周りが全然気づいてなかった、というのには笑ったけれど。完全に遊びに来てるのと勘違いしているあたり、平和ボケ……じゃなくて危機を感じる危険度の設定がみんな強くなりすぎて、或いは精神的に柔軟になりすぎて緩々になってるしw
クールボケのソフィが、ズッコケルくらいだもんなあ。珍しく真面目にシリアスしてたのに、誰もついてきてくれなかった、というのはなんともはや。

しかし、アーネストは本気で勇者の正体、気づいてないんだなあ。勇者王登場で本気ではしゃいでるアーネストが可愛い。そして、自分で黒歴史を更新し続けなくてはならなくなったブレイド、メンタル脳天気な幼児のくせにこういうところ結構苦労性なのよねえ。

シリーズ感想

英雄教室 3 ★★★★  

英雄教室  3 (ダッシュエックス文庫)

【英雄教室 3】 新木伸/森沢晴行 ダッシュエックス文庫

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元勇者ブレイドは108人と1匹と2羽に囲まれ、今日も気楽な学園生活を送って…いなかった!?ブレイドを倒すため最強ガーディアンがクラスに仲間入り。ついに『超生物』敗北か!?ブレイドはアーネストを賭けて国王と決闘をするハメになる。さらには国王の“実戦的訓練”で、混浴温泉や、王国地下食料庫でのサバイバルと、学園のカリキュラムは大賑わい!しかしブレイドにとっては、平穏そのもの。だってもう勇者じゃないし。ここ戦場じゃないし。男子のコイバナあり、女子の友情あり、ローズウッド学園は青春まっさかり。ここに通えば誰もが強くなれる!笑顔になる!元勇者が過ごす規格外の学園日常ファンタジー、待望の第3巻!!
あらあらまあまあ。と、ママさんキャラみたいな呟きを漏らしてしまった、若い子たちの微笑ましい恋のあれこれ。初々しいなあ。恋の何たるか、以前に友情の何たるかも人としての最低限の常識も持たなかった超生物のブレイドが、随分と当たり前の情緒が芽生え始めたじゃないですか。求めよ、されば得られん、かどうかはわからないけれど、普通の人間になりたいと学園に通い始めたブレイドが、こうして本当に「普通の人間」になっていく様子には思わず目を細めてしまう。それが、彼自身の願いと努力の結果、のみならず彼の周りの人達の「優しさ」によって育まれていくのなら、尚更のこと。
まー、その一方で学園の生徒たちはまるごと「普通の人間」の枠から順調に逸脱しつつあるのですがー。未だブレイドは超生物ですけれど、既に他の一般生徒たちも一巻の頃から比べるともう超生物の方に割り振られる生き物ですからー。最初は人間の学園だったのに、最近もう当たり前のように人外魔境になってきてますから。ブレイドに「普通」が教え込まれる一方で、それに倍するスピードでみんなから「普通」とか「常識」とかが消し飛ばされていってますからー。
アーネストも順調に精神年齢が暴落中。その分、見栄っ張りの仕方も幼くなってしまい、ブレイドへの好意の発露も初々しいというか微笑ましい拙さと純粋さでねえ、頑張れ頑張れと応援したくなる次第。もう、かつての「女帝」の様相は欠片もないんですけどねー。でも、より一層優しくなった。
防衛機構の機械端末に過ぎなかったイオナに思いっきり感情移入してしまう所なんかもね。イオナに関しては、似たような境遇だったソフィと反発し合い共感し、友情が芽生え、という過程がまた素晴らしかった。ただの機械から自力で一個の生命として生まれなおし、周りとの交流によって感情が育ち、人として羽化していく。それを見守り、促す周りの連中の優しいこと。
ブレイドに対しても、ドラゴンの子に対してもそうなんだけれど、みんな心からその存在を祝福してあげてるんですよね。超生物なんて言いながらも、ブレイドのことを分け隔てない。それが、どれだけこの人としての常識も情緒も感性も持たなかった勇者という存在を、根本から書き換えていったのか。
彼の中に芽生えた、「恋」という感情はその祝福の結晶みたいなものなんでしょう。ラストの、食材求めての原始人サバイバル、の話なんてその極めつけ、みたいな話でしたし。
こういう「優しさのお話」は、ほんと好きです。
何気に混浴が当たり前になってるけれど、この年頃の男女にそんな環境与えてしまったらえらいことになりそうなんだが、でも実に羨ましいw

シリーズ感想

英雄教室 2 3   

英雄教室2 (ダッシュエックス文庫)

【英雄教室 2】 新木伸/森沢晴行 ダッシュエックス文庫

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念願の友達100人を達成した元勇者・ブレイド。今日も一般人ライフ万歳、ごくフツーの学園生活を送っているつもりが、ナゼか身の回りではハプニングが途切れない。魔王の娘が登場してブレイドにライバル宣言!?クラスの授業ではまさかのバトルロイヤル・デスゲームが勃発!?さらには国王のいつもの「実戦的訓練」により王都が巨大怪鳥に襲われて大ピンチ!?だが国王は動じない。「大丈夫!!なぜなら彼がいるからだ!!」アーネストの炎のダイエットや実は泳げない超生物・ブレイドの水泳特訓など、学園の日常も大充実!勇者に美少女、魔王っ娘に巨大モンスターまで、すべてがトモダチになってゆく“楽しすぎる”学園ファンタジー待望の第2巻!!
なんかもう、アーネストさんがフリーダムすぎて、ヒロイン? と深刻に首を傾げる事態になってきているような。少なくとも、ギャグ要員だよね。なんとなく、考え方というか行動がブレイドとおんなじになってきてますよ。大人の女性とは逆方向に突き進んでますよ? むしろ、超生物化へと進行してしまいつつあるような。わりとブレイドの世間知らずの無軌道っぷりが落ち着いてきたのとは裏腹に、アーネストの超生物化による無茶苦茶さが加速してきていて、お馬鹿な事態を引き起こす役が入れ替わりつつある、というのがなんともはや(苦笑
まあ、楽しそうだからいいんですけれど。
いやそれにしても、アーネスト、はらぺこキャラになりすぎだろう。食い意地が張りすぎて超生物化とか、女としてどうよw なんか、縦に真っ二つになったりとか、断面図はわりと勘弁して下さい。お詫びか知らないけれど、やたら全裸化もしてましたが。最後の方、あんまり恥ずかしがらなくなってたあたりも、女性としてどうよ的な……w
でも、トラブルメーカーだったブレイドが、トラブル解決人の役割を背負い始めるのは、せっかく勇者やめることが出来た彼にとっては、あんまり良い状況ではないんですよね。アーネストをはじめとしたクラスメイトたちがなんか仕出かすのを、ブレイドが止めるというのなら友達の誼というやつでいいんですけれど、大概のトラブルが国王が持ち込んで、しかも最初からブレイドになんとかさせるつもりだ、というのがねえ。折角一般学生になりきってるんだから、自分がトラブルメーカーになってそれを友達であるクラスメイトたちがみんなでワイワイいいながら事態収拾してまわる、くらいの方が和やかでいいんだけれど。ブレイドの勇者としての能力に制約がかかってしまっているのも、微妙に引っかかる。そんな風に戦力を均等化しなくても、友達と一緒に頑張ってトラブルを解決する、というカタルシスに、能力差なんて実のところあんまり関係ないんですよね。友達の優しい心意気さえあれば。それは、第一巻のラストで十分示してくれていたと思うので、ブレイドに変に重しをつけてほしくはなかったかなあ。

1巻感想

英雄教室 4   

英雄教室 (ダッシュエックス文庫)

【英雄教室】 新木伸/森沢晴行 ダッシュエックス文庫

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おっす。俺。勇者。魔王を倒した俺は、同時に勇者の力もすべて失ってしまった。
代わりに生まれてからずっと欲しかった「戦いとも冒険とも無縁な安息の日々」を得られたはずだった。
だが国王のやつが、なんと「勇者学校」なんてものを作っちまいやがった。 魔王もいないっつーのに、勇者作ってどーすんだよ。
俺はそんな学校で普通に過ごしたいのに、俺の常識はどうやら普通レベルから大きくかけ離れているようなのだ。

知らんかった。木の棒で神鉄切っちゃ、あかんかったのね。
知らんかった。素手でベビードラゴンをボコることが、そんなエラいことだったとは。だってあれ赤ん坊だよ? 成体でも古種でもないんだぜ?
知らんかった。魔法結界って破っちゃいかんかったのね。てゆうか。あれ魔法結界だったのね。張ってあったことさえ気づいてなかった。
堪忍してくれ。堪忍してくれ。俺は「普通」を知らなかっただけなんだ。俺は普通に生きたいんだ。

魔王と相打ちになって勇者の力を全て失った元・勇者の少年ブレイド。念願叶って普通の学生になれるはずが、入学させられた学園は、なんと勇者を養成するエリート学園だった!?そこに通う生徒たちはもちろん優秀。だが“本物”の勇者だったブレイドは心技体全てが英雄すぎる!?実技の授業で校舎は半壊!国王とは旧知の仲でタメ口上等!!学園の“女帝”である怖いお姉さんに睨まれても気づきやしない!!!ドラゴンの脱走でパニックとなっている学園でも、一人だけマイペースにカツカレーを食っている!?やることなすこと「超生物」な主人公の、無理・無茶・無謀・不自然極まりない「平静学園俺ライフ」!?いまここに開幕!!
なんだこの主人公、精神レベルが幼稚園児並だぞ!? その幼さは、小学生ほどの自意識も持ってないんじゃないだろうか、と思うほど。
でも、子供が一番かわいいのって、このくらいの年の頃なんですよね。純真無垢で悪意を知らず邪さを持たず、自分を偽らない。勇者として結構つらい思いも苦しい経験もしてきているはずなのに、これだけスレておらず、純真なまま、しかし自分本位ではなく他人を思いやれる子のままで居るというのは、それだけ周りの人間たちが良い人たちだったのでしょう。彼の述懐から語られる勇者の周りに居た人たちというのは、押し並べてどいつもこいつも人外魔境の様相を呈していたようだけれど、ブレイドの為人を見ればその人品がどういうものだったかというのもわかるというもの。まあ、もう少し一般常識とか振る舞いの仕方を教えてやれよ、と思わないでもないけれど、きっとその人達もその手のたぐいの知識経験は持ってなかったんだろうなあ。なにしろ、その一人である国王陛下からして、相当アレな人だったし。
しかし、勇者の力を失ったとはいえ幼い頃から人外魔境の中で育ったブレイドは、精神年齢はともかくとしてその身体能力たるや、そういう人たちと同列同等なわけで、とても普通じゃ居られない。だから、やることなす事しっちゃかめっちゃかなのだけれど……子供のそうした振る舞いを、叱るのは当然として怒ることは出来ないよね。彼自身が、心から反省しているのなら尚更に。彼がむちゃくちゃしてしまうのは、純粋に無知からくるものであり、また純真さ故に偏見や因習に囚われないという事なのだから。
幼い子供が、無邪気になついてきたら、キラキラとした満面の笑みを浮かべながら近寄ってくるのを、果たしてどれだけの人が邪険にあしらえるか。少なくとも、この学校の生徒達は身分や体裁や能力の差に拘って自分を鎧う外面を、そうまでして頑なに抱え込むほど哀しい人たちではなかったわけだ。色んな物に雁字搦めになってガチガチに針山をかぶっていたアーネストのような少女ですら、縛り付けられていたワイヤーをぶち切られるほどに、ブレイドの純真すぎる好意は強力で……そして、その強力すぎる好意を受け入れることが出来るほどに、彼女や他の子たちみんなが、凄く優しい子たちだったんですよね。
一人ぽつんと女の子が食事をとる大きなテーブルに、段々と一緒に座る人が増え、いつしか賑やかにワイワイと笑顔が弾けていく過程が、なんとも嬉しくてねえ。ブレイドの純真さが否定されるのではなく、皆をどんどん優しくしていくのが、嬉しくてねえ。
特にあのシーン。誰に促されたのでもなく、学園のエリートである上級クラスの面々が、つまらんプライドなんか放り捨てて、という以前にプライドのあるなしなんか一顧だにせずに、自然に、しかし真摯に、世界の危機でも国の存亡でも人の生命が掛かっているわけでもない、しかし大事なトモダチのために、当たり前のようにあんなことをしてみせたシーン。こういうのね、やっぱりいいなと思うのですよ。やっぱり好きなのですよ。
こういう、優しい気持ちにさせてくれるお話は、大好きなのですよ。
トモダチ百人出来るかな? というのをこれ以上無く描いて見せてくれた素敵な物語でした。

とある飛空士への誓約 2 4   

とある飛空士への誓約 2 (ガガガ文庫)

【とある飛空士への誓約 2】 犬村小六/森沢晴行 ガガガ文庫

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疑心暗鬼が七人の友情を切り裂いてゆく。

――空は、墓場だ。
――わたしは人間ではない。戦闘機の一部だ。
かつて「空の王」と呼ばれた父、カルステン・クライシュミットの教え。
その言葉を胸に刻み、一個の鉄塊となったイリアは、今日も灰色の空へ向かい離陸する。

25戦中、24勝1敗。撃墜数33機――。
エアハント士官学校飛空科の「模擬空戦」において、驚異の記録を更新中のイリア・クライシュミットは、「空の一族」の追撃からただ一機帰還し、叙勲までされた士官候補生たち「エリアドールの七人」の中では突出した存在となっていた。
比して、イリアと共にエリアドール飛空艇の操縦を担当した坂上清顕(さかがみ・きよあき)の戦績は、11戦して2勝0敗9引き分け。撃墜数0機。
互いに撃墜王の父を持ちながらも、イリアに実力の差ばかり見せつけられ、悩み、焦る清顕。

――なんのために、ぼくは戦場を飛ぶ?
――なんのために、ぼくはひとを殺す……?

そして、平穏な学園生活の中で懊悩する裏切り者の工作員「ハチドリ」。その正体も明らかに――!?
七人の主人公が織りなす、恋と空戦の物語。激動。
地図をください地図をくださいと喚いていたら、この巻ではきっちり近隣周辺の地図をつけてくれました、ありがとうございます。
一巻のあとがきにあった作者の「シリーズ最大スケール、最長の群像劇」というコメントを噛み締めている真っ最中。正直、一巻を読んだ段階では主要登場人物が七人というのはいかにも多すぎやしないかと思ったものでしたが、伊達に七人じゃなかったようです。本気で七人全員を脇に回さず中心核として取り回していくだけの作者の覚悟、或いは悪意と言ったものを嫌というほど見せつけられましたよ、今回は。鬼か、この人は。よくぞまあ、ここまで雁字搦めに過去と現在と立場と感情を錯綜させた挙句に固結びにしてしまえるものです。現段階で表に浮かび上がっているだけの因縁だけでも、七人恐ろしいほどの解けない絡み方してますよ、これ。さらに、まだ表に浮上してきていない伏線もバルタの目的などを始めとして多々ある気配があるんですよね。いったいどれだけ丹念に執拗に七角関係の因果が折り重なるように設計したんだか。この犬村さんという人は自身の扱う登場人物を愛すれば愛するほど泥沼のような過酷な状況に追い込むことに至上の喜びを感じるタイプの作家さんだと思ってはいたのですが、今回のこれは芸術的なまでの、或いは偏執的なまでの編みこみの密度が随所から感じられて、正直背筋が寒くなる思いです。
しかし、今回は本気で驚いた。完全に意識が工作員「ハチドリ」の正体は一体誰か、という方に向いていて、お姫様の方はあの娘だと思い込んでたんですよね。お陰で、ラストの大どんでん返しには完膚なきまでに踊らされました。比較的早いうちにハチドリの正体があからさまにされたのも目線をそちらに向けさせられた要因だったんだろうなあ。最近、このへんの勘働きが利かなくて忸怩たるものがあります。
いやでも、これは鬼でしょう。展開が鬼過ぎますよ。ただでさえ不憫枠だったミオが不憫どころじゃなくなってしまったじゃないですか。場合によってはミオがメインヒロインの座を奪還したとも取れるんですけれど、なんかさらにひどい方向に流れそうな気もするし、一概にミオと清顕だけにフラグが立っているわけでもなさそうなんですよね。恐ろしいのは、これもう何がどう転んだ所で、誰もほんとうの意味では救われないし、どんな形でも悲劇しか待ってないような詰んだ状態なんですよね。もうこれ、どんな形の悲劇になるか、しか結末残ってないんじゃないんですか? そう思わざるをえないほど、七人がどの選択肢を選んでも誰かが救われず、その為にそれ以外の子たちも傷つくように、縦横無尽に因果が絡められているのです。これを執拗にして丹念な仕込みと言わずしてなんと言いますか。悪意すら感じる、と思ってしまいますよ。
ぶっちゃけ、一巻冒頭の二人の裏切りもの、というフレーズはまだミスリードされてると思ってます。いや、この衝撃の真実を目の当たりにしてそう思うようになりました。こんなどんでん返しを見せられては、これで語られていた五人の英雄と二人の裏切り者の正体が明らかになった、なんて素直に受け止められるわけないじゃないですか。
これから先読んでいくの、今までのシリーズにまして精神をゴリゴリと削られそうで、ぶっちゃけめげそうなんですが、面白いだけにタチが悪いんだよなあ、ホント。

1巻感想

とある飛空士への誓約 1 4   

とある飛空士への誓約 1 (ガガガ文庫)

【とある飛空士への誓約 1】 犬村小六/森沢晴行 ガガガ文庫

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七人の主人公が織りなす、恋と空戦の物語!

四千もの島嶼が大瀑布を挟んで存在する「多島海」。
ハイデラバード連合共同体、セントヴォルト帝国、秋津連邦、三つの大国が覇権を争うこの海を、七人の少年少女の操縦する大型飛空艇が親善飛行していた。
その、「エリアドール飛空艇」に集ったのは――

河南士官学校三回生、坂上清顕(さかがみ・きよあき)。
河南士官学校三回生、ミオ・セイラ。
箕士官学校四回生、紫かぐら。
エアハント士官学校四回生、バルタザール・グリム。
エアハント士官学校三回生、ライナ・ベック。
エアハント士官学校三回生、イリア・クライシュミット。
エアハント士官学校二回生、セシル・ハウアー。

いずれも、その突出した才を認められた士官候補生たちだったが、「空の一族」の強襲を受け、名も知れぬ島への不時着を余儀なくされる。脱出のために協力する七人だったが――。
とある飛行士シリーズ第四弾。地図、地図をください!! またぞろ新しい国の名前が出てきて、若干混乱中。地理、どうなってるんだろう。とある飛空士シリーズのどっかの巻に地図があったような気もするんだけれど。
しかし、和風の国って一つだけじゃないんですね。帝政天ツ上に斎ノ国ときて、今度は秋津連邦ときたら何がどう違うんだろうか、と気になってくる。
冒頭から、この七人のうち五人が英雄として遇され、二人が裏切り者となることが明らかになっている。そして、同時にこの中には一人の亡国の姫と、ウラノスから潜入した秘密工作員が混じっている。お姫様についてはもう丸わかりもいいところなんだけれど(これがミスリードされてたらかなり驚く)、残る工作員が誰なのかがまだわからないんですよね。あからさまに怪しい人が一人居るんだけれど、この人はあまりにもあからさますぎて違うっぽいんですよね。本当の工作員なら、表面上の感情操作なんてお手の物でしょうしね。なので、かぐら先輩あたりが怪しいかなあ、と思って読んでいたのですが……ラスト近辺の誓約シーンを見ると、どうも違うっぽいんだよなあ。しかし、この工作員くんも何気にチョロいっぽいぞ(笑

しかし、此処に来て飛行艇モノかー。多分、飛行艇に乗るのはこの巻だけで、後は戦闘機に乗ることになるんだろうけれど……何気に航空機モノで一番迫真性があり、人間ドラマが展開されるのって、爆撃機とか飛行艇のように一つの飛行機に多数に人間が乗り込むものなんですよね。そして、この手の航空機というのは、戦闘機や対空砲火から一方的に攻撃を受ける脆弱な存在であると同時に、なまじ機が大型な為に攻撃を受けた際の人員の被害が均等でないために、パイロットや機長は空の上で多種多様な決断を迫られることになり、それが様々な人間ドラマを生むのです。
本作も、敵機の攻撃に対して無力な飛行艇でいかに危地、否や死地から逃れるか、という絶体絶命の緊迫した状況や、操縦席から機体の各部の様子を窺い知る事の出来ないために、銃撃を受ける度に仲間の生死が解らず機内無線に呼びかけるしか無いという切迫感、そして無茶なランディングを選択せざるを得なくなるという最後の最後の大関門。まさに空の群像劇の要素が一揃え揃っていて、この手の話が好きな人は垂涎なんじゃないでしょうか。
飛行艇のモデルは当然のようにあの傑作機である二式大艇。もうそれだけであたしゃあ嬉しいんですけどね。

でも、なんでこの人の作品は幼馴染が毎回貧乏くじを引くはめになるんだろうw
なんか、今回もミオが可哀想なことになりそうで、今から心折れそうです。取り付く島もなく、それどころか父親の仇敵の息子ということで、敵意の対象でしか無かった主人公に、あっさり転んで無表情の鉄面皮な無感情娘があたふたしはじめるのはあれですなあ……チョロすぎる!!

犬村小六作品感想
 
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