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渡瀬草一郎

妖姫ノ夜 月下ニ契リテ幽世ヲ駆ケル ★★★★☆   



【妖姫ノ夜 月下ニ契リテ幽世ヲ駆ケル】 渡瀬 草一郎/こぞう  電撃文庫

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Kindle BOOK☆WALKER

大正十三年、春。少年、椚雪緒は、上京した先の夜鳴川邸にて美しき白蛇に出会う。彼女は父である八頭八尾の大蛇、「十六夜」の決めた縁談から逃れるため、妖相手に商売をする「化猫堂」へ助力を求めに来たと云う。化猫堂の店主、夜鳴川夜霧と猫のミタマ様に連れられて、雪緒は妖達の住まう「常夜之町」へ乗り込むが、そこは人の世の常識が通じぬ異境だった―!関東大震災後の横浜を舞台に、人と妖の縁を紡ぐ大正伝奇浪漫。

雪緒くんイイなあ、これはイイ主人公だなあ。前作の【ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット】のナユタもそうだったんだけれど、落ち着いた冷静で温厚で礼儀正しく品行方正な若者にも関わらず、妙な所で箍が外れているというか常識がズレているというかわりと我が道を行くタイプで周りとの差異を気にしない主人公、面白いんですよねえ。
妖怪の存在や異界となる幽世という人ならざるものを前にして、本来なら度肝を抜かれて驚き慌てふためくのが普通じゃないですか。それが雪緒くんと来たら本人それなりに驚いているつもりのようなんだけれど、傍から見るとまったく動じている風もなく平然としているように見えるんですよね。
驚くとか慌てるとか怯えるとか警戒するとか、そうでなくても何らかの反応を示すのを想像していた当の妖怪さんたちや、そちらと深く関わり合いのある夜霧さんなどは雪緒くんのあまりの平常運転ぶりに「お、おぉぅ?」となってしまうんですよね。え? そこは驚く所じゃないの!? てな感じで。白蛇の宵姫にしても、人間大の巨大な白蛇の姿で突然雪緒の部屋のベッドに潜り込んでいて、帰ってきた雪緒をばったり、というのが初顔合わせのシチュエーションだったわけですが、雪緒くんてば完全にフラットな対応でしたからね。
それどころか、逆に宵姫たち人ならざるモノたちの方が雪緒くんの真面目な顔して突然突拍子もない事を当たり前のようにやってしまう彼に「えええ……」と呆気にとられたり、度肝を抜かされてしまったりするわけで、いやどっちが人の世の常識が通じぬアレなんだろうか、と。

とはいえ、雪緒くん。決して変人とか変わり者という風情ではなくホント基本的には真面目な青年以外の何者でもなく、そんな世間の常識に疎いとかいう風でもないので、普通につきあっている分には多分気づかないんだろうけど、ほんと妙な所でボタンをかけちがえまくっているというか、えらいところで常識を履き違えている感じなんですよね。まあ、そもそもあの動じなさをまともな人といってしまうのは間違っているのだろうけど。


平安時代を舞台にした作品も手掛けている渡瀬さんの時代物ということで、またぞろ中世代の物語かとワクワクしていたのですが、まさかの大正ロマンチカ。ちょうど関東大震災の直後で都心が壊滅し復興もまだはじまろうとしているところ、という時代背景でこれがまた描写が素晴らしいんですよね。文体そのものも大正時代を意識しているのか雰囲気のある台詞回しや文章として凝っていて、そこにあの時代特有の空気感が目の裏に浮かぶような情景や風俗の描写が時代背景をダイレクトに感じさせてくれるのがまたいいんですよ。典雅な風情と地に足がついた風格のようなものを味わわせてくれる背景描写なんですよね。
平安時代のお話でのあの宮廷や京の都の描かれ方もすごかったけれど、まさに時代に合わせた情景描写なんだよなあ。
面白いことに、アヤカシたちの住まう幽世の方はまた大正時代の帝都とはちょっと雰囲気違うんですよね。あちらはあちらで文明開化の花が咲いて独特の文化が花開いているのだけれど、人の街である帝都のそれとはまた違う、人外たちが行き来する世界ということで人界以上に古きと新しきが混在している町並みになってるんですよね。ここのあやかしたちは、浮世離れしている風でもなくむしろ俗っぽい生命力を感じさせる存在たちなので、幽冥とした儚さよりもむしろ混沌とした鮮やかさを感じさせる世界観で、目の裏に浮かんでくるその賑やかさはなんとも見ているだけでも楽しかったのであります。
路面電車で乗り合わせて、猫なミタマさまにジッとガン見されてダラダラと冷や汗垂らしてる魚怪の乗客とか、行き過ぎる何でも無いワンシーンの片隅でちらっと描かれるこういう些細な描写が、作品全体の雰囲気に味わいをもたらしているんだろうなあ。こういうシーン、ほんと好き。

今回、面白いことに登場人物としては主人公の雪緒は当然としても、結構男連中が目立って存在感示していたんですよね。雪緒の下宿先のご主人であり雪緒とあやかしたちの縁を繋ぐきっかけとなる化猫堂の店主夜霧さんとか、宵姫の兄でもある蜂月さまとか。下手をするとメインヒロインの宵姫さまよりも前面に出てたような気がします。二人とも、美味しい場面も多かったですし。
とはいえ、これら一癖も二癖もあるだろう食わせ者たちを差し置いて、彼らの度肝を抜く形で実際は一番ぶっ飛んでいるのを証明してしまうのが主人公の雪緒くんなわけですけれど。
同郷で祖父の門人であったので雪緒くんの事を全部知っていた上に、さり気なく夜霧さんの事情についても察していた瀬尾さん、何気にこの人侮れないよなあ。計算の上で、夜霧さんの所に雪緒を下宿させたわけですから。
にしても、雪緒くんの正体というか素性に関してはそっち方面にはまったく想像していなかったので、詳細が明らかになった時は正直吹いたw
いやあ、でも時代からすると幕末から半世紀。ギリギリ最後発の範疇には入るのかなあ。まさに最後の「○○」なのか。
姫様に関しては家出してきた上に簡単に出歩けない状況になってしまったので、後ろに引っ込まざるを得なかったのはちとメインヒロインとしては存在感を示しきれなかったかもしれない。その分、蛇のお姫様らしい……思い込みの激しい所は十分見せていただいたので……ってか、完全にこの娘清姫系じゃねえか。無自覚ジゴロな雪緒の責任大にしても、遊郭を囲んでの口上の際に雪緒と自分の関係をホップ・ステップ・ジャンプな勢いでどんどん勝手にバージョンアップしていくのを見た日には、誰か止めろ、と。止められる人がどこにも居ねえw 
そして、化け猫か猫又なのか、猫の神様とかそんなのかと思っていたミタマさま……終始一貫して「可愛いのがお仕事」なただの猫だったじゃないですかー! ひたすら猫ムーブしつづけて癒やしを振りまき続けるミタマさま。にゃんこ可愛いなあ、もう!! 
にゃーん。にゃーん。

渡瀬草一郎作品感想

ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット 3 ★★★★★   

ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット3 (電撃文庫)

【ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット 3】 渡瀬草一郎/ぎん太 電撃文庫

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Kindle B☆W

「んー…そこは私と海世くんの仲ですからーー」
《SAOサバイバー》にして、VRMMOの中限定の《探偵》クレーヴェル。そんな彼のリアルをよく知るいわくありげな美女の登場に、戦巫女・ナユタと忍者・コヨミは動揺を隠せない。謎の美女、リリカとクレーヴェルの関係とは?
その一方、現実世界のクレーヴェルの自宅では、ナユタのお泊りイベントが発生。微妙な距離を保ち続けてきた二人の関係に、大きな変化が訪れるーー?
VRMMO《アスカ・エンパイア》を舞台に綴られるもう1つの《SAO》の物語、ここに完結!!

ナユタ、これヒロインとして最強なんじゃないですか? 圧勝ですよ。クレーヴェルこと暮井さんについに手も足も出させずに完落ちさせてしまいましたよ!?
すげえ、唖然でした。それも、まったく小細工らしい小細工も使うことなく情緒的にも感情的にも論理的にすら一部の瑕疵すらなく、暮井さんを全く有無を言わせないまま堂々と正面から押し切ってしまったじゃないですか。
泰然と一歩一歩歩み寄ってくるナユタに対して、暮井さんが一歩も触れることが出来ないまま後ろに退いていき、そのまま崖下に転落していった、という表現が思い浮かんでしまうほど抵抗の余地なくやられてしまった感すらあります。
本来暮井さんほどの人だと、女子高生からのアプローチなんてほぼ一蹴、取り付く島もない扱いのはずなんですよね。事実、クレーヴェルは隙らしい隙は一切見せていませんし、女性に対しても決して主導権を握らせていいようにされるタイプじゃないんですよね。いやまあ傍若無人な姉に対しては振り回されてたりしましたけれど、あれでちゃんと首に縄はつけているようですし。
どちらにしても、まだ未成年の小娘なんぞがどうこう出来る男性ではないはずなのですが、ナユタの方が小娘どころじゃなかったのですなあ。
未成年の女性に手を出すのは倫理的にも法律的にも大問題です、という所を強調してナユタに対して線引しようとしていたことが、あとになってみるとむしろ弱点になってしまったのかもしれません。
暮井さんの方からナユタに手を出すにしても、ナユタの方から暮井さんに何かをして彼に社会的なダメージを与えることにしても、どちらもお互いにそんな事はしないという信頼があれば多少プライベートに踏み込んでも問題になりませんよね、というところからナユタさんグイグイと攻めていって、その上でところで私が未成年じゃなくなったらそもそも問題の発生根拠からなくなるんじゃないですか? という虚を突くようなコンボは見事の一言でした。なまじ、未成年という点を強調して障壁としていた暮井さん側からしても、あれ?じゃあ何も問題ないんじゃない? と思ってしまう心の陥穽。そもそも、予防線として敷いていたそれが暮井さん自身の言い訳になってしまっていた時点でもう大勢は決まっていたのかもしれませんが。
それにしても、押し一辺倒とは程遠い自然にスルリと懐に入り込みつつ、泰然自若な姿勢を見せながらふとした瞬間に垣間見せる弱い部分、それを桐の切っ先にして飛び込んだ先で誕生日による条例的にヤバイ年齢からの脱却を宣告してみせた上での、本気の告白、というハメ技かというコンボの華麗さにはもう言葉もないくらいの見事さでありました。
ナユタさんの恐ろしいところはこれ、まったくの計算ずくでも天然でもないというところなのでしょう。多少の女性らしい奸計は図りつつも常に真摯であり自然な飾らない態度であり、そして怯むことのないくそ度胸でどんと行ってしまう男らしさが、暮井さんをして全く太刀打ちできない有様にしてしまったんですよね。
自分の存在が暮井のトラウマに対しての救いになる、と自覚しながらお互いを依存の対象とさせずに、ちゃんと対等の男女として立脚する付き合い方に終始していたのも、暮井さんからするとどうしようもなかったのでしょう。もっとナユタが寄りかかってきたり、自分が必要以上に彼女に寄りかかってしまったり、あるいはお互いに慰め合うような関係になってしまった、あるいはなりそうな気配があったら暮井さんみたいな人はキッパリと距離を置いてたと思うんですよね。
ところが、ナユタはそういう瑕疵を一切みせない対等の、依存ではなくお互いに真っ当に支え合う関係をテキパキと構築してみせたわけで。こういうところが、周りの人を含めてナユタが女子高生ではなく一回りは年上の大人の女性と勘違いさせるところだったんでしょうねえ。
一方で、甘えるところはグイグイえぐりこんでくるんだから、とんでもないですよ、ほんと。
女子高生を一週間近く自宅に泊まらせてあげる、なんて危険な真似、暮井さんみたいな人が絶対許すはずがない、というかもし他の人がそういうシチュエーションに見舞われていたら、両方に対して冷静かつぐうの音もでないほどの正論で滾々と説教して反省させそうな人なのに……。
あの、ナユタが帰ったあとになんで自分、許可してしまったんだ? と懊悩する暮井さんはなんとも可愛らしかったです。貴方は悪くない、あれはもうナユタが上手としか言いようがない。偶々、話を聞いてしまっていた取引先の虎尾さんがアレは無理、と太鼓判を押すくらいでしたしねえ。

いやもう、ナユタと暮井さんの関係の進展具合については、もう圧巻のナユタさんにアッパレアッパレと感服しきりだったわけですが、世界観の方も非常に面白かった。
SAOのスピンオフという体ではあるんですけれど、例えば同じスピンオフの【ガンゲイル・オンライン】がその世界観を利用して思う存分銃撃戦をドンパチやってるのに対して、本作はVRMMOの世界を利用する、というよりも<SAO事件>が世間に与えた影響についてその被害者たちの現況を踏まえて描きつつ、その先のVRMMOの未来の可能性について、使用者やそれに関わる企業、技術開発、そこから広がっていく社会的な影響、という土台部分にスポットを当てて描いていたのが印象的でした。
今回も、企業体とのコラボレーションやVRMMO世界内での観光事業やVRオフィスなどの事業展開、思考出力という新しい技術の可能性とその未完成っぷりなどについての話が飛び交っていたわけですが。
一足飛びに未来世界が近づいてくるのとは違う、VRMMOという新しい技術革新に対してもやはり社会は、社会の中で生活している普通の人々は、その新しいツールに戸惑いながらも着実かつ堅実に自分たちの生活の中に還元していっている様子が映し出されていて、そういうのって世界観の大いなる基礎工事だと思うんですよね。地に足の着いた土台のしっかりした世界観が、こうやって醸成されていくのは、むしろより強く未来を意識させてくれて、変に近未来的な世界観をぽんと提示されるよりもワクワクしてしまいます。
これで、本シリーズが終わりというのはものすごく名残惜しいのですけれど、いやもう重ね重ね名残惜しいのですけれど、もっと暮井さんとナユタの次元の違う甘酸っぱいのかクールミントなのかわからない大人の関係を堪能したかった、と同時ににゃんこやカピバラさんなど何気にマスコットAIキャラが可愛すぎるところや、謎の方向への展開を見せるアスカ・エンパイアという舞台も見ていたかっただけに、渡瀬さんにはまた何らかの形でこの世界観とキャラクターたちに関わってほしいものです。
ほんともう、めちゃめちゃ好きでした、この物語に登場する人たち同士にたゆたう繊細でありながら剛く靭やかな関係が。

1巻 2巻感想

ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット 2 ★★★★   

ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット2 (電撃文庫)

【ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット 2】 渡瀬草一郎/ぎん太 電撃文庫

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Kindle B☆W

《SAOサバイバー》にして、VRMMO《アスカ・エンパイア》内で《探偵業》を営むクレーヴェル。
そんな彼の前に、クエストで新規実装された《鬼動傀儡・鬼姫》にうり二つの少女が現れる。
彼女――マヒロから、“現実世界で行方不明になった父親探し”の依頼を受けたクレーヴェルは、
助手(?)の戦巫女・ナユタ、忍者・コヨミとともに、事件の鍵が眠る《アスカ・エンパイア》へとダイブする!
他にも前代未聞、仮想空間内での温泉旅行が描かれる『骨休 旅籠夜話』と、
大カピバラ祭が展開する《茶番劇 化鼠之宴》など、《アスカ・エンパイア》での様々なクエストを収録!
その傍らで、クレーヴェルとナユタの距離も少しづつ縮まっていき――?
少しずつどころか、ナユさんめっさグイグイ距離潰してきてるんですけど! それも、本人全然自覚なさそうなのがなんとも壮絶ですらある。そりゃクレーヴェルも焦るわなあ、世間体的にも。
どう見ても、ナユさん通い妻ですやん!!
いやもう、いつの間にそんな事になってたの!? というくらいにスルリと暮井さんの部屋に来て晩御飯作って一緒に食べるようになってたし。これ、クレーヴェルもいつの間に!? てな感じなんだろうなあ。気がつくと、にっちもさっちもいかないところまで来ていたような感じで。
それで必死に男女関係、女子高生、未成年である彼女と成年男子である自分とはちゃんと一定の距離感を置いて接するべきだ、と力説してナユさんに自覚を促せば促すほど、ナユさん意地になっちゃってるし。
そりゃあナユさんからしたら、自分が女子高生というだけであそこまで警戒され、世間という周りばかりを気にして自分の方はまったく見ずに線を引こうとされたら、自分のこと信用されてないみたいで面白くはないですよねえ。社会人として、暮井さんの警戒っぷりは決して間違えてはいないんだろうけれど、あそこまでの過剰反応は確かにナユさんに対して多少無神経なところはあったかなあ、と暮井さん本人も反省していたところですけれど。
でも、ナユさんのあの無自覚な無防備っぷりも結構問題ですよね!
それだけ、ナユさんが暮井さんを無条件に信頼している、という証であると同時に、自分の容姿や色気が未成熟な女子高生の範疇では収まらないヤバイものだ、という自覚が一切ないのがまずい。コヨミほどガキっぽかったら全然問題なかったんだろうけど! なんでコヨミの方が実年齢が酒飲める社会人なのか不思議なほどである。逆だろう!?
いずれにしても、ナユさんのあの無警戒無防備さは、在る種の理性への暴力だよね!
そして、なぜかナユさん相手だとラッキースケベにも対応してしまうクレーヴェルの幸運値。ゲームの仕様じゃないとしたら、クレーヴェルのリアルラックということになってしまうじゃないか!
これもう、元警察官で理性の信奉者であるクレーヴェルじゃなけりゃ、早々にえらいことになってしまったんじゃないだろうか。まあ、そうならないからこそ、ナユさん信頼していて、だからこそああまで無警戒、という悪循環があるのですが。なにこの地獄の往還?
これでナユさんの方に下心の類とかちゃんとした恋情みたいなものがあるなら、クレーヴェルの性格からしてもうちょっとはっきりした態度取れそうなんですよね。きっぱりと線引できるタイプですし。にも関わらず、そのクレーヴェルが対処のしようもなくスルリと懐に潜り込まれてしまっている時点で、ナユさんの無心ぶりがわかろうというものである。
恐るべき事に、ナユさんこの調子だとまったく今のまんまの流れでそのまま、どうせなら同居してしまった方がよさそうですね、という感じでフラットにいつの間にか完全に生活空間を重ねてしまいそうな雰囲気なんですよね。女子高生、女子高生はだめ! と抵抗しているクレーヴェルですけれど、その文言、肝心のナユさんが高校卒業しちゃったらまったく通用しなくなるんだけれど、そのへんわかってるんだろうか。誰に通用しなくなるか、というとまず真っ先に自分に。
まあクレーヴェルが本当にナユタを拒絶しきれないのは、一時期本当に危険域にあった彼女の孤独に対する忌避感を理解しているから、というのもあるのでしょう。シミュレーターで作り出していた事故で喪われた家族との生活の再現、それにのめり込んでいたナユタがようやく家族の幻影と距離を置いて現実への比重を取り戻したものの、そこで向き合うのは家族のいないたった一人という状況。
彼女が暮井さんの部屋に来て、料理を作って一緒に食べる、という行為に地味にこだわっているのは、独りへの忌避感が少なからずあるのでしょう。彼女の事情を詳しく知っているであろう暮井さんからすれば、戦友であり親友であった男の妹であり、彼女が心的外傷を負った原因であり発端となった彼女の兄の死に深く関わった身の上としては、やはり見過ごせないものがあったはずですし。
まあ、現状では見事に餌付けされてしまった、以外の何者でもなくなっているようですが。
これもう暮井さん、抵抗のしようがどこにも見つからないな! 

お話の方はクレーヴェルのコンサルタント業関係で、MMOの開発事情、テストプレイでのあれこれに、突発イベントと短編としての日常的なエピソードが続いたところで、それぞれの話の中に埋め込まれていた種が、クレーヴェルのリアルの探偵業の方へと持ち込まれた、一人の子役アイドルの依頼によって芽吹き、一連の物語の中にあった真実が浮かび上がる、という派手ではないものの妙のある構成で、なんだかんだと読みごたえあったなあ、と。
アスカ・エンパイアを遊ぶ、というよりも開発陣が身近にいることや、今回裏事情や本命の事件もそっち関係に片足突っ込んだ話だっただけに、あと仕様変更にまつわる関係者の呪詛がおどろおどろしいものだっただけに、なんか開発四方山話的な雰囲気も。
まあクレーヴェルやナユタ、コヨミは近しくても開発の外側の人間ですし、関わることが多くてもそっち側ではなくプレイヤーサイドであるだけに、大変だねえ、という他人事めいた一定の距離感があって、そこらへんがまた面白くあるのですけれど。

次の巻では、いつの間にか暮井さんのところにナユさんの生活用具とか着替えが当たり前のように備え付けてあっても驚かない。既に食器の類いはありそうだし!
一巻時点では確かコヨミの方が先に同居の勧誘してたはずなんだが、まんまとネトラレましたなコヨミさん。

1巻感想

ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット ★★★★☆  

ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット (電撃文庫)

【ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット】 渡瀬草一郎/ぎん太 電撃文庫

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《アスカ・エンパイア》。
茅場晶彦によるVR制作プログラム《ザ・シード》から開発された和風VRMMOである。《スリーピング・ナイツ》のユウキとラン、メリダが遊んでいたこのゲームにも、秘められたエピソードがあった――。

戦巫女のナユタと忍者のコヨミ。《アスカ・エンパイア》で出会い仲良くなった二人の少女は、ゲーム内で不思議な法師ヤナギと出会う。
その老僧侶は、とあるクエストの《謎解き》を《探偵》に依頼したいという。しかもその報酬は一〇〇万円。
法外すぎる値段に驚く少女二人だが、その奇妙な依頼を受ける《探偵》も負けず劣らず奇妙な青年だった。ステータスボーナスは《運》に《全振り》――つまりバトルは最弱、しかしレアアイテムドロップ率最強のトリッキーなプレイヤーで……。
最先端VRMMOの世界で、少女二人を引き連れた《胡散臭い探偵》による《謎解き》が始まる。

時雨沢恵一さんによるSAOスピンオフ作品【ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン】に続く、もう一つのスピンオフ作品がこれ、【クローバーズ・リグレット】である。
先のガンゲイルが仮想世界故に好きなだけ銃撃ちまくって楽しく遊んでやるぜー、な話だったのに対して、本作はよりソードアート・オンラインという世界においての、フルダイブ型VRMMOとは、そしてあの「SAO事件」が遺したものについて深く踏み込んだ話になっている。
4千人ものプレイヤーが「殺害」されることとなってしまったSAO事件。それが社会に及ぼした影響というものはそれこそとてつもないものだったのだろうけれど、マクロな視点のみならず、その亡くなった一人ひとりに焦点を当ててみても、そこには想像を絶するだろう悲劇が付随してくる。
ゲーム内で生死をかけて戦い続けていたプレイヤー本人の恐怖もさることながら、ゲーム内部の状況もわからないまま、ひたすら目覚めないまま横たわる自分の家族が、友人が、愛する人が、いつ脳を焼き切られて死ぬかわからないまま見守り続けないといけない人たちの抱き続けた恐怖は、如何程のものだったのだろう。
そして、その時が訪れた時の絶望は。

この物語は、そのすべてが過ぎ去ったあとに訪れる、荒涼とした草木も生えないモノクロの大地を見るような心象風景を秘めた登場人物たちの巡るその先の話である。
それでいて、彼らが事件を通じて目の当たりにしていくものは、フルダイブ型VRMMOのもたらす確かな可能性であり、希望の未来であり、優しさによって作り出される明日なのだ。
なんという皮肉なのだろう。それとこ、これこそが救いなのだろうか。誰よりも絶望に打ちひしがれていた彼らが、そんな希望を目のあたりにするのがよりにもよって自分たちを絶望のどん底に追いやったフルダイブ型VRMMOとそれを取り巻く新たな環境なのである。しかも、そのまま日の目を見ず、闇に葬られそうだった、そのまま誰にも気づかれずに消え失せてしまいそうだったそれを、幾多の謎と不幸な偶然と無慈悲な現実の間から見つけ出し、掬い上げたものたちこそ、彼ら自身だったのですから。
でも、この事実によって、彼らの絶望や諦観が癒やされたり救われたりしたわけじゃないんですよね。でも、それを成した想いは確かに存在し、その温もりを彼らはしっかりと感じ取った。そこに、意味が無いはずがない。
今なお、フルダイブ型VRMMOを続けているということは、歩むことをやめていないということ。託された想いを、バトンを、受け取ったということなのだ。
だからこそ、それを自覚し、前を向いた彼女に、家族は言葉を送れたのだろう。その背を送り出せたのだろう。その奇跡もまた、受け継がれた種の可能性である。

それにしても、あのコヨミちゃんも一つの奇跡そのものだよなあ、振り返ってみれば。あの「一緒に住もうぜー」という感じの何気ないセリフからして、その時は全くなんの意味もない雑談の中の一言に過ぎないように見えたものだったけれど、後々考えてみると凄まじいまでにナユタにとってピンポイントついてるんですよね。いったいナユタにとって、どれほどコヨミの存在が巨大なものかというのが透けて見えてくるわけです。その出会いは本当に偶然の、たまたまの、なんでもないものであったがゆえに、よくぞよくぞ、出会えたものだと思うのです。これこそ奇跡であり、運命だよなあ。
あと、間違いなくコヨミの衣装はエロ衣装ですね! ってか、半脱ぎじゃん! あれ、インナーなかったらどういう見た目の装備なんだ!? ってか、インナーモロ出しってだけでも凄いんですけど!

渡瀬草一郎作品感想

ストレンジムーン 3.夢達が眠る宝石箱4   

ストレンジムーン (3) 夢達が眠る宝石箱 (電撃文庫)

【ストレンジムーン 3.夢達が眠る宝石箱】 渡瀬草一郎/桑島黎音 電撃文庫

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加熱するキャラバンと皇帝一派の戦いに、翻弄されつつも抗う玲音と記録者――シリーズ完結!

"金の記憶の彫金師"リコルドリクと記録者を巡って、対立するキャラバンと皇帝一派――その狭間で戸惑いつつも、月代玲音と仲間達は事態の収拾を目指し奔走する。
騒動の中、"女王"の香恋により囚われた玲音は、皇帝一派の拠点において遂にリコルドリクと遭遇するが、不可視のその神は既にモニカの掌中にあった。
進退窮まった末、彼は"将軍"周皓月にある交渉を持ち掛けるが……
宝石箱より解き放たれた異能者達の騒乱劇、その結末は――!?
果たして、あと残り1巻でこの事態、収拾がつくんだろうか、とずいぶんと不安に思っていたのですが……つきましたよ、収拾!!
いやあもう急展開の連続で息つくヒマ無し。実際、当事者である玲音たちや、皇帝一派も一度落ち着いて状況を整理する、という余裕もなかったんじゃないだろうか。作中時間内でも、殆ど間断なく事態が二転三転していて日にちもろくに経過していなかったはずですし。
とまあ、終わってから振り返ってみるとさながらジェットコースター展開なのですが、だからといって無理して巻いて巻いてしているような印象がなかったのはさすがだなあ、と唸ってしまいます。あまりに目まぐるしかったりすると気分的に置いて行かれたり、忙しなさに話を畳もうとしているような意図を感じてしまって冷めてしまったり、という危ういところが一気呵成の急展開で事件を終わらすケースには多々見受けられるものなんですが、本作については見事に波に乗せきってるんですよね。
ただでさえキャラクターが多いにも関わらず、そのあたりの描写のバランスも絶妙でしたし。……まあ、終わってから、あれ?そういえばこのキャラあんまり出番がなかったぞ!? と愕然とさせられたりもしたのですが、読み終わるまで意識させないあたりがどうしてどうして(苦笑
こういう構成力や物語全体のリズム感、キャラクターの躍動感、勿体ぶらずにどんどん物事や心理面を動かしていく動性は、【パラサイトムーン】の頃と比べても目をみはるほど変わってきているのが、同じ世界観の事実上の続編だからこそ、如実に伝わってくるものがあります。
【パラサイトムーン】の頃のある種の仄暗いじっとりした感覚がいい、という向きもあるかもしれませんけれど、その意味では続編とはいえ本作はだいぶ根本の色が違ったからなあ。そもそもからして、主人公の玲音とメインヒロインのクレアからして、揃ってポンコツというなかなか肩の力が抜けるカップルでしたし。
うん、この二人は近年稀に見るポンコツカップルだった!
普通なら、どちらか片方はしっかりしているものなのですが、こいつらは二人共すっとこどっこいなところがふんだんに露呈するお間抜けさんでしたし。まあ、玲音の方は軽々として浮ついているように見えて、土壇場の度胸といい、意外に卒がなかったりと、最終的に何とかしてくれるという安心感があって、決して緩いだけのキャラじゃありませんでしたけれど。
パラサイトムーンから引き続き登場したキャラクターたちも、かつての陰鬱な雰囲気を引きずらずに、大人になって落ち着きながらもどこか愛嬌みたいなものが加わった気がします。カップル、というか夫婦になってる連中は軒並み血糖値があがりそうな糖分過多のラブラブになってて、いささか参りましたけれどw
爆発しろ! とは、散々苦労しまくった挙句にようやく結ばれた経緯を知っているだけに言えたもんじゃないのですが、ほんともうちょっと周りの目とか気にしましょうね!?
斯く言うラブラブ度では、クレアと玲音のそれも大変な代物だったのですが。これで、当人同士は相手が自分に好意を向けているなんてまるで思ってなくて、一方通行の片思いで相手を慮って遠慮しがちだった、というのだから、いっそホラーである。

「――今までは遠慮したり怖気づいたりしてたけど、これからはちょっと本気で頑張ってみようって思って」
 香恋が頬を引きつらせた。
「……遠慮……? 怖じ気づいてた……? アレで……?」

 ヤンデレをすらビビらせるクレアと玲音の普段の意識してないイチャイチャっぷりたるやw

 今回は意識を上書きされるという他に、感情の箍をいささか外す要素のあった宝石箱のお陰で、女性キャラの少なくない数が「ヤンデレ」の傾向を示してしまう、というちょっと恐ろしい有り様になってた本作ですけれど、なんとか悪い意味で血を見る修羅場な展開には至らなかったのは、良かったのか何なのか。香恋がいったいどうなるか、とかなりびくついていたのですが、皓月に夢中なモニカが予想外に大暴走をはじめたせいで、大方そちらに持って行かれた気がします。案の定、玲音と皓月にシンパシーが生じてしまったお陰で、モニカが完全にヒスっちゃいましたし。個人的には、皓月がもっと絆される展開を見てみたかったのですが、そうなるとクレアとの間で洒落にならない血塗れの展開が起こりかねなかったので、これは仕方なかったのかなあ。
香恋も、どうやら異性愛というよりも過剰な家族愛、依存の方に寄ったみたいで何とか収拾ついたみたいですし。そもそも、香恋にとって玲音は兄であり、父親代わりであり母親代わりすらもカバーしていながら、実際問題血が繋がっていないという、家族になりきれないという、依存に対して拠り所がない不安が募っていたところに、感情の箍が外れる展開が重なったことで、暴走が起こっていたようですし。

まあくろとらくんのあのセリフには大爆笑してしまいましたけれど。
「大切なことを忘れていた。……黒猫は……ヤンデレに……勝てない……ッ」

いつから次元を超えた統一法則になった、これw
しかし、中の人はそういうことでしたか。能力的なものと性格的なものがどちらの場合でもどうしてもそぐわないなあと首を傾げてたんですが、なるほど二人一組で動かしてたのね。さすがに前作の関連なので、記憶とのすり合わせが出来なくて困ってたんだけれど、当人が出てくれてなんとか焦点あいました。あったけどさ、酔っぱらいもいいところだよね、これw

最終的にいったいどんな悲劇が待ってるかとジリジリしていたのですが、思ってたよりも上手いこと収拾つきましたよね。どうもキャラバンの中堅クラスに陰険極まる連中が揃っていたので、かなり血を見る展開が待っているのかと思っていましたが、思いの外派閥のボスのカーマインと山ノ内の御大が前に出てきてくれた上に、想像以上にふたりとも良心的な人物だったんですよね。キャラバン自体、色々と黒かったし、その大派閥のボスということでもっと黒くて悪辣な人を想像してたんだけれど、夢路さんの人選は大したものだったわけだ。
ともかくヤバかったのが早矢多さん。一番精神的に大人で良心的で献身的で、皆の板挟みになって苦労しまくる、という一番割りを食う立場にたってたものだから、完全に死亡フラグの只中だったんですよね。もうどうなるかとハラハラしっぱなしだった上に、クライマックスのアレですよ。
もう心臓に悪かった! 本当にあかんかったですわ!!
しかし、静枝さんの動機ってそういう事だったのですね。彼女だけ、皇帝の意識を上書きされたとはいえ、反応がおかしかったし、それにしてはキャラバンへの敵意の質が、過去の経緯からの復讐心というにはなんか違ったので、なんでキャラバンと敵対しようとしているのか意図が読めなかったのですが……。この人もある意味情熱的だったんだなあ。
いやもう、報われてよかったですよ。

なんか、満月のフェルディナンがけったいな登場と退場の仕方をした上に、事件の収拾自体はついたものの、まだ行方不明の石もあり、記録者も玲音の中に残ったまま、という微妙に伏線を残した終わり方で、どうやらこの迷宮神群の世界観での続きもまだあるようですし、いやあこのシリーズは終わったけれど、大きな枠では終わらなくてよかった良かった。
個人的には、早矢多さんの部下たちをもうちょっと掘り下げた形で見たかったんですけどね。あの時緒さんとかキャラ立ちまくってたわりに出番が少なくて、ちと残念でしたし。
今度はもっと出番確保して活躍して欲しいのう。と、続きを待てるのはホント素晴らしいことです。

1巻 2巻感想

ストレンジムーン 2.月夜に踊る獣の夢4   

ストレンジムーン (2) 月夜に踊る獣の夢 (電撃文庫)

【ストレンジムーン 2.月夜に踊る獣の夢】 渡瀬草一郎/桑島黎音 電撃文庫

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十和田静枝の中で遂に目覚めた“皇帝”ブロスペクト―その桁外れの能力に動揺しつつ、月代玲音は静枝の説得を試みる。だが、キャラバンを憎む皇帝にその言葉は届かず、更には将軍・周皓月と因縁を持つ異能者の参戦により、戦況は激しさを増していく。そして戦いの中、玲音の身に宿った“星詠みの加護”にも覚醒の時が―!人に異能をもたらす異形の神々、迷宮神群。人はその不可思議な力に魅せられ、時には忌避し、翻弄されていく―『輪環の魔導師』『パラサイトムーン』の渡瀬草一郎が贈る、現代神話ファンタジー第2巻!
皇帝ブロスペクトって、調べてみると既に【クレセントムーン】の三巻あたりで微妙に触れられていたみたいですね。キャラバン側からの視点になるので、かなりの極悪な集団として描かれています。キャラバンが創設された理由の一つが、ブロスペクト派による迫害から互助的に身を守るためだった、とあるくらいですし。実際、パラサイトムーンの三巻で登場したリセルは、一族ごとブロスペクトに追われて流れてきた、という設定でしたしね。
とはいえ、ブロスペクト派からするとまた意見は違ってくるようで。彼らのキャラバンへの憎悪は、果たして単に敵対して自分たちを追い詰め衰退させるに至った相手へのもの、だけなのか。かなり過剰な感情が込められているような気がします。まあ、その一端として、ブロスペクト派が単に皇帝によって支配された集団ではなく、家族と変わりなく身内を大切にしていた一団だったからなのかもしれません。
いずれにしても、ブロスペクト派の絆は他人の体に記憶と能力を再現した状態でも綻ぶ事はなかったようで。だからこそ、ここまで一瞬にしてブロスペクト派がかつての全盛期の威容そのままに復活してしまったのでしょうが。
もっとも、その中でもかつての記憶を持ち越さなかった者。現代の肉体の主の意志が混ざることで大きく変容してしまったものも多いわけで、決してかつてと同じようにはいかない、ある種の齟齬が出てくるのではないでしょうか。現在のところ、その不具合は顕在化していないものの、皇帝となった十和田静枝さんからして、かつてのブロスペクトそのままではなく、静枝さんとしての意志が多分に混ざってしまっているようですし、女王となった香恋は見事にヤンデレ化してしまって、かなり理性飛んじゃってますし、周皓月の悪辣さはどうやらそのままのようですし。さて、いったいどこからほころんでくるのか。

話は変わってキャラバンサイド、いや主人公サイド、というよりもこの場合は旧主人公サイドですか。心弥と弓につづいて、ついに真砂と由姫が登場。やあ、こっちのカップルも既に結婚済みですか!! 心弥と弓については、月日も経ってるしこの二人は普通に結婚してるだろうなあ、というイメージがあったんですが、真砂と由姫の方は籍を入れて落ち着くという印象がなかったので、由姫の姓が真砂のものになっていたのを見た時はおっもわず「おおっ」と声を上げてしまいました。
心弥たちと、真砂をハジメとする実験室の子供たちが味方になってくれるのは頼もしいなあ。肝心のメインの二人、玲音とクレアが見事なポンコツカップルなだけに(笑
いや、玲音については抜けてるようで抜け目ないところもあるし、その境遇から若干精神的に壊れた所があるけれど、それが破綻ではなく度量と覚悟を与えていて、これで意外と頼もしい主人公しているんですが。その分、クレアが色々と酷い(笑
一見してまともで出来る女性を装えている分、ポロポロと取り落として垣間見えてしまう素のポンコツさが本当にもう笑えてしまって、ああ可愛いなあもう!! あざとさが天然すぎて防ぎようがない。これで、玲音側からスルーされてしまってたら、痛々しかったり可愛そうだったりするんだけれど、噛み合っちゃってるんだよなあ。お陰で、渡瀬史上でも類を見ない幼馴染バカップルになっちゃってます。電撃文庫の歴史において三指に入るであろう歴戦にして屈指の幼馴染ストであらせられる渡瀬さんですけれど、ここまでバカップルに仕上がった幼馴染カップルは初めてざんしょ。先のヤンデレ幼馴染もまたすんげえインパクトでしたけれど、今回のポンコツバカップルも素晴らしいのヒトコトです。いや、今回希崎さんご夫婦も、目も覆わんばかりのバカっぷりっぷりを披露してましたから、張り合ってのことかもしれませんけど。張り合うなよ!
クレアの側の母親や伯父さんが、思いっきり玲音押しで既に結婚前提で考えているあたり、家族ぐるみで包囲網完了してますし。残念ながら、今回はヤンデレの入り込む隙はなさそうだなあ。妹ちゃんよ、ヤンデレを極めるなら、【輪環の魔導師】のフィノのレベルに達しないと、この二人には割ってはいれませんよ? いや、あのレベルのヤンデレになってしまうと、ヘタすると登場人物の半分くらいは血の海に沈んで、残る半分くらいは精神的に抹殺されそうなんですが。……【輪環の魔導師】が平穏にハッピーエンドに終わったのは、いまさらながら奇跡だわなあw
その意味では、香恋がまだこの程度のヤンデレに収まっているのは安心材料なのですけれど。これで収まってる方、と感じてしまうあたり、感性がややヤバイ気もしますが。
なぜか関係ないクロトラくんが、ヤンデレ怖いで異次元の黒猫さんと共感状態に入ってるんですが(笑
とはいえ、クレア一強かというと、皓月が玲音にちょっかいをかけようとした瞬間、静枝さん含めて総出で玲音守りに入った陣容の凄味を見てしまうと、なにげに女っ気は強いんですよねえ。あのシーンは思わず笑ってしまった。記録者も実は女だったというし。

一応、旧主人公サイドが味方に入ってくれて、さらにキャラバンの良識派でもある文槻派がクレアの親族ということで全面的にバックアップに入ってくれた、というかなり良い陣容に思えたものの、やっぱりブロスペクト派は強大で手段を選ばず、しかもキャラバンの側も危ない連中がかさにかかってちょっかいをかけてきたことで、とたんに瀬戸際の崖っぷち状態に。
この玲音たちの追い詰められっぷりもさることながら、羽矢田さんの板挟みっぷりがさらに酷いことに。情深い人だけに、ブロスペクト派の記憶に乗り移られた静枝さんたち身内や部下たちは見捨てられないし、逆に彼らに追いかけられる玲音たちも見捨てられないし、キャラバンの暗部を務めていた人だけにその危険性は重々承知していてキャラバンに身は任せられないし、しかしブロスペクト派は完全に突っ走りはじめて歯止めがきかなくなってて自分がいないとどうなっちゃうかわからないし、皓月は危なっかしくてどうしようもないし、ともう誰かどうにかしてあげて、と思わず見ているこっちまで悲鳴を上げてしまうような大変な状況に置かれて、この人そろそろ胃に穴があくか、偏頭痛で倒れるかしちゃうんじゃないかと真剣に心配になってしまった。カラー口絵も、頭痛をこらえている絵になってるし(笑
幸いにして、この羽矢田さん自身が相当の実力者で、ブロスペクト派として受け継いだ能力は全然戦闘系じゃないにも関わらず、彼自身の強さとしてべらぼうな上に強かで慎重な人物でもあるので下手は打たない安心感があります。一応、彼の側に立って動いてくれそうな人も何人かブロスペクト派の中にも居るようですし。……その時緒にしても、くろとらくんにしても、若干会話が通じないタイプの人のような気がして、そこがさらに心労が重なるところなんですがw
ってか、くろとらくんってマジで誰なんだ? 
くろとらくんQ&Aを見る限りだと、由姫と顔見知りっぽいんだけれど、実験室メンバーっぽいなあ。だけど、こんな変な性格の子、居なかったと思うんだけど。着ぐるみ装着でキャラ変わってる!?

くろとらくんみたいなモドキじゃなくて、しっかり本物(?)のクロネコまで登場してしまうあたり、ネコネコフィーバーが続いてる(笑
……香夜子さん、やっぱり結婚できてないのか。文槻院長、確実に獲物を確保している可愛い姪っ子に現実逃避してないかw

1巻感想

ストレンジムーン 宝石箱に映る月4   

ストレンジムーン 宝石箱に映る月 (電撃文庫)

【ストレンジムーン 宝石箱に映る月】 渡瀬草一郎/桑島黎音 電撃文庫

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妹と二人暮らしの高校生、月代玲音。ある日の放課後、彼は友人の文槻クレアに連れられ、地元の紅街中華街を訪れる。場違いな洋菓子店でメイド姿の双子と出会い、妙なケーキを注文する玲音だったが、異変の刻は彼の知らないうちに着々と近づいていた。封印を解かれた「マリアンヌの宝石箱」。その内側に封じられていたのは、かつて欧州を席巻した異能者、“皇帝”のブロスペクトとその部下達。街の裏側で暗躍する“キャラバン”の幹部、周皓月の掌に踊らされ、事態は混迷を迎えていく―異形の神と異能者達が紡ぐ騒乱劇!
心弥さん、この度は御結婚おめでとうございます。この度は、と言っても既に弓さんと結婚してからそれなりに経っているようですけれど、ちゃんとくっついてて一安心。元々年齢離れした落ち着いた性格していたけれど、大人になってますますイケメンになったなあ、心弥くんは。
世界観を同じくする【パラサイトムーン】シリーズから十年、ちなみにこの十年というのは【パラサイトムーン】シリーズの最後である6巻が出てから十年です。心弥くん以外にも、チラホラと見覚えがあるキャラが散見されて思わずニヤニヤ。忘れている部分も多かったので、登場キャラクターも一人ひとり以前出てたっけなあと確認しながらの読書でした。確認しているうちに話の内容も思い出してきたので、復習にもなりましたね。
ともあれ、主だったキャラクターはほぼ総浚えの新キャラのようで、旧作を知らない人にも優しい作りになっている……のかな? キャラバンや神群についてはパラムン読んでないと実感として把握できない部分も多いかもしれない。特に今回のブロスペクト派の能力とキャラバンの迷宮神群の力の違いについては迷宮神群についてちゃんと知ってないとなかなかわかんないんじゃないだろうか。迷宮神群とマリアンヌ、星詠みのエスハなどについては、むしろパラムンよりも前作である【輪環の魔導師】シリーズを読んでいたほうが詳細を知る事が出来るんじゃないでしょうか。
しかし、今回ときたら迷宮神群同士の、ひいてはキャラバン内の抗争を逸脱した、完全にキャラバン全体とブロスペクト派との全面戦争みたいな事になってますからね、初っ端からこれ大風呂敷広げまくりじゃないですか。戦記モノを含めた異世界編2シリーズを完結させたためか、再び現代劇に戻ってきてもスケールの大きい話をやってのける筆の見通しがついたんでしょうか、これほんとありったけの要素ぶち込んでますよ。
ただの対立する二派の抗争なら話は単純なのですが、ブロスペクト派がそもそも「マリアンヌの宝箱」に封じられていたかつてのブロスペクト派の人間たちの意志や能力が、現代の人間に憑依する形で顕現したために、元々なんの関係のない一般人もさる事ながら、キャラバンに所属していた人間たちも多数憑依されてしまったために、敵味方の勢力図が一瞬にして混沌と化しちゃってるんですよね。しかも、憑依された人間の中には封じられていた能力の持ち主の意思ごと乗り移られた者もいれば、能力だけ移されて意識は元の人間のまま、という人間もいて簡単にブロスペクト派に味方するという形にもなっていないし、元々キャラバンには敵意があって、という人もいて、人間関係がシッチャカメッチャカにシャッフルされてしまい、いやもうほんとに面白いですよ、何この状況!?
そんな中でえらい目に遭うのが特に三人。まず、主人公の玲音くん。彼、一見ヘタレで優柔不断に見えるんだけれど、折々でなかなか果断な面を見せたり、臆病者の意志薄弱に見えて守るべき一線を心得ているというか、一番肝心な部分を見失わないなかなか大した若者だったりします。ただまあ過去のトラウマもあってか自分に自身が無くかなり慎重な性格なせいか、間が悪いというかタイミングの掴み方が下手というか、とにかくそのせいもあってかとかく面倒な立ち位置に放り込まれ、今回のブロスペクト派復活にともなう大混乱の収集の鍵となる立場に立たされるわ、仲の良い友人がキャラバンとブロスペクト派に別れちゃうわ、毒婦の極みみたいな女に目をつけられるわ、トリックスター星詠みのエスハに玩具として指定されるわ、妹がヤンデレと発覚した挙句にとんでもない能力を持ってしまうわ、と幾ら主人公としてもハードル高すぎるだろう、という冒頭から難易度の高すぎる立場に立たされてしまってます、ご愁傷様。
とはいえ、彼の場合幼馴染のクレアを守る、という一番大事な部分はハッキリしているので、そこさえ見失わなければまだ何とかなりそうな気がします。「記録者」という貴重なアドバイザーが居てくれますしね。
むしろ、この場合クレアの方がかなりキワキワのところに立たされてるような気がします。この娘、最初のイメージでは才色兼備で要領の良い主人公にとっても高嶺の花になりがちの、出来るタイプの幼馴染かと思ってたんですが……読んでいるうちに、実はこの娘、相当にダメっ娘なんじゃないか、という疑いが、というか確信が。これは、友人たちにも認知されているようで

「涙ぐましいのは認めるけれど、クレアって割りと普通にアホだよね? 見た目賢そうに演出してる分、余計にそのアホさが際立つっていうか」
語ってる娘が毒舌風味というのもあるんだけれど、概ね残念扱いされてます。なんか、やることなす事意図に反して上手く行かなさそうなんだよなあ。色々と要領が悪そうなんだ。挙句、人間関係も皓月には深刻に憎まれてるし、玲音の妹の香恋には思いっきり嫌われてるし、と毒婦とヤンデレに敵視されているという立ち位置のヤバさ。皓月はともかく、香恋からの嫌われ方がちょっと酷いんですよね。これは香恋という娘が相当にヤバイ娘だったというのもあるんでしょうけれど、クレアの方も無意識に地雷踏みまくったんじゃないだろうか、という疑いが。どうも、良かれと思って悪手を選びまくるきらいもあるので、ホント心配ですよ、この娘。
ただまあ、クレアも玲音がいるんで大丈夫だろう、という安心感はあるんですが。頼りなさそうにしか見えない主人公ですけれど、幼馴染書きのスペシャリストたる渡瀬草一郎一流の幼馴染カップルですから、此処らへんは盤石です。
最悪、というか一番ヤバそうなのがこの人、羽矢田さんですよ!! 見た目いかつくて武闘派のヤクザみたいなおっさんにも関わらず、その内面はというと気配りと心配性と面倒見の良さと苦労性がえらい勢いで混ざってしまっていて、お陰で今回の一見で一番面倒と苦労を背負ってしまってるんですよね。実際、キャラバンの中でも山之内派の実働部隊の一隊の長として荒事、汚れ仕事に辣腕を振るう腕利きであり、リーダーとしても部下や仲間内から信頼されている人なのですが、それにしても本人が懸命に部下や身内の身を守ろうと最善を尽くしているにも関わらず、どんどん泥沼にはまっていくその過程の、いっそ美しいと言ってしまえるほどのドツボっぷりが、凄まじいの一言。もっと自分の身が可愛い人なら、ここまでドツボにハマらなかっただろうに、とにかく身内や部下たちを大切にして自分が不利益を被っても何とかしようと足掻くたびに、余計に身内や部下も巻き込んでズブズブのところにハマりこんでるんですよね。本人、悪気は無いことはわかってますし、それどころか滅茶苦茶良い人なのは、その心の声を聞いていると嫌というほど分かるんですが、間が悪いというか運が悪いというか。いやもう、ほんとにどうしてこうなったw
ただ、本人意図しないまま図らずもブロスペクト派でも重要な立場に立ってしまった以上、良識と自分の身を盾にしても身内を守ろうとする侠気の持ち主である彼、羽矢田さんが多くのキャラクターが悲劇的な末路を辿らずに無事にこの事態を乗り切るための切り札的、或いはストッパー的な立ち位置に立っているとも言えるんですが、部下の幾人かはブロスペクト派の意識を上書きされてしまうわ、皓月の無茶苦茶さに女王とクレアの最悪の関係に皇帝の正体、と巻き込んでしまった部下や巻き込まれてしまった後見人として見守ってきた玲音と香恋の兄妹をこの抗争で守るだけでも手一杯だろうに、あまりにも錯綜した状況に、羽矢田さんにとってはもう抱える頭が一つや2つでは足りてないんじゃないかという難易度の高さで、もう誰か助けてあげてください、ほんとw 間を置かずに胃に穴が開いて血を吐いて昏倒してしまうんじゃないかと真剣に心配になっちゃうじゃないですか。
もう一人の主人公じゃないか、と思えてくるほどの災難っぷりであります。特に最後の皇帝の正体はトドメだよなあ。あれは流石に予想していなかった。いつどの段階で覚醒してたんだ? 失踪から戻った羽矢田さんと面会していた時にはそんな素振りは見せていなかったけれど。
それにつけても、マリアンヌ・シリーズの傍迷惑さである。以前のパラムンの時からマリアンヌの遺産は大概にして大迷惑の発端だったからなあ。今回も往々にして、これである。
騒乱劇という標榜通りか、最初っからキャラを大量につぎ込む展開で、その意味でも大盛り上がりな事になってます。パラムンの頃と比べると、キャラの立て方もうまくなったというか何というか。面白い子も増えたよなあ。羽矢田さんの部下の時緒さんなんて腹ペコキャラにしても面白すぎませんか、この人?
あと、謎なのがくろとらくん。着ぐるみをずっと着たままなので正体も定かではないのですが、こいつも自由人というか、この性格もともとですよね? キャラバン関係者のようですし、もしかしてパラムンの頃からの再登場者だったら嬉しいんだけどなあ。

ともあれ、最初っからかなりのフルスロットルで盛り上げにかかったわ、人間関係のしっちゃかめっちゃかな入り組み方と感情の入り乱れ方、引っ掻き回し方がまた最高で、当人たちは深刻にエライコッチャなのだけれど傍から見ているぶんにはどうなるかさっぱりわからなくて、楽しくて仕方がない。メインとなる幼馴染の二人は、渡瀬さんの幼馴染らしく見ているだけでニヤニヤ出来る密接っぷりで、またぞろ堪能できそうですし、いやあ楽しみなシリーズ始まりましたわ。パラムンの続編というの関係なしに、これは面白いですぞ。

渡瀬草一郎作品感想

輪環の魔導師 10.輪る神々の物語4   

輪環の魔導師10 輪る神々の物語 (電撃文庫)

【輪環の魔導師 10.輪る神々の物語】 渡瀬草一郎/碧 風羽 電撃文庫

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薬師の少年と黒猫の魔導師が紡ぐ
ファンタジー冒険譚、堂々完結!


 神界の門より現れた異形の神、ボルアルバとその眷属を退けたセロ達。しかしその直後、世界各地に謎の光の帯が現れ、人々を襲いはじめる。聖教会の本拠、聖都ハルマニオスにその原因があると推測したセロ達は、英雄達の遺産を手に現地へと向かうが、そこには既に魔族の影が……
 異形の神々と魔族、そして犂堽の輪環瓩鮟笋襯札蹐肇▲襯イン達の旅路。その果てに待ち受けていたもの、辿り着いた真実──! 全ての謎が明らかになる最終巻!
ヒロインがヤンデレをこじらせすぎて、神様もビビって尻尾を巻かせて逃げました……え? なにこれギャグ?
ちょっとこれ、しばらく笑いが止まらなかったんですけど! 
聖神イスカの、人類補完計画みたいな、みんな一緒になって平穏を手に入れ幸せになろう空間にみんなが取り込まれて、状況的には絶体絶命の大ピンチだったはずなのに、セロと引き離されたせいでブチ切れたフィノが背筋も凍るような態度で脅しつけたお陰で、イスカ様はビビってドン引きしなさるわ、クラリオン様は絶句したまま何もできないわ、精神汚染されて平和そうに平穏空間を讃えまくってた仲間たちはころっと意見を翻して口々にフィノに迎合しはじめるわ、アルカインは正座して謝罪するわ、もう空気が完全に変な方向に(爆笑
特に仲間連中の、フィノの顔色を見ながらの鮮やかな手のひら返しには、もう お・ま・え・らーー って感じでいやはや。最終巻にも関わらず、アルカインと言えば活躍はしているもののかつてのカッコイイネコ型ヒーローの姿はどこへやら、この巻なんかへーこらしている姿しか思い浮かばないんですが。
フィノに怯え、シズクに引きまくり、シズクの親父さんにはビビリ倒し、と……この猫、敵に対しては実に勇ましい戦士なのに、身内に対してはどうしてこうなった、と思うくらいに哀れな人になってしまったなあ(苦笑
最初の頃の雄姿はいずこにw
それに比べて、セロの安定感の素晴らしいこと素晴らしいこと。ハッキリ言ってフィノのヤンデレ度ってこの界隈を見渡しても最悪に近い凶悪さなんですけれど、セロってばフィノが「おかしい」事に気づいていないというのもあるんだけれど、それにしてもほぼ完全にフィノのヤバさを包み込んじゃってるんですよね。普通、ここまでのヤンデレ、持て余してひどいことになってしまうものなんだろうけれど、その点セロは見事。なんだかんだと一貫してセロはフィノを一番大事にし続け、一途に守り続けたという理由もあるんだろうけれど、それにしても神様をすらドン引きさせたヤンデレを、よくぞまあ手の内に入れれるもんだわ。いい意味で鈍感だったんだろうなあ。終わってみると、何だかんだで一番大物感を感じさせてくれる子になりました。皆もフィノの恐ろしさを身をもって知っているからこそ、彼女を暴走させずにてなづけているセロに、その一点を以て敬畏を抱いてるんじゃないだろうか。セロさん、すげえ……ってなもんで(笑

形としてはラスボスみたいな立ち位置になった聖神イスカも、クラリオンの人格をいびつに歪ませてしまった事もあってか、これまで抱いていた不気味で得体のしれない神と呼ばれる異形にして異質な存在、という印象からすると……けっこうイイように変わったように思う。色々とその在り様を目の当たりにしてしまうと……むしろ、すっごくいい人(…人?)だったんですよね、イスカ様って。
神様として上から目線で正義を押し付けてくる、みたいな感じでもなく、ひたすらに善意で、一生懸命人間が幸せになれるように頑張ってるという朴訥とした善良さがかいま見えるんですよ。ああ、この神様、本当に人間のこと、好きで好きでたまらなかったんだろうなあ、と。で、自分なりに人が幸せになれるようにあれこれ手を尽くしていたものの、そもそも人間とは全く在り様の異なるイスカには、人間の幸せとはどういうものなのか、というのがわかっていなかった。それだけだったんですねえ。
その齟齬に自分で気づいたイスカが、素直に自分の間違いを認めて、クラリオンを解き放ったのを見た時には、この純朴な神様、なんだか好きになってしまいましたよ。この神様なら、確かに最高神として多くの人の信仰を集めるのも納得できるなあ、と。

イスカの力は、ウィスカが引き継いだようですけれど、ウィスカにもこの純朴な善性が幾許かなりとも引き継がれたら面白いのになあ、と思ったり。そもそも、ウィスカもヤンデレ入っているとはいえ一途でひたむきな子で悪い子じゃないですからねえ。幸いにも、想い人と再会できて新しい地に旅立てたのですし、そこでは誰かを助ける側にまわってくれたらなあ、なんて思ったりたり。

こうして終わってみると、この物語は異なる立場、組織や種族、相容れないと思われる思想や考え方の持ち主同士だろうと、分かり合い和解することができる、ということを示してくれたお話だったように思う。
最初に明確な敵として現れた「魔族」も、決して悪とされる存在ではなかったし、民族紛争や神々と人の交わり、果ては精神的に歪んだヤンデレさんまで、色々な障害を乗り越えて手を取り合い、理解を及ぼし合い、和を結ぶ事が叶ったわけですから。
でも、同時に本来なら強固な絆や盟約によって結ばれていた関係も、簡単に破綻し壊れてしまうことも、六賢人の崩壊やかつての大罪戦争の英雄たちの分裂などによって如実に示されている。
要は、当事者たちの意識と努力、なんだろうなあ。関係性とは如何にも脆く危うく、しかし幾らでも縒り合わせ取り戻す事のできるものなのでしょう。
さながらそれは、輪を環するようにして。

なんか、フィノのヤンデレのインパクトがひたすらとてつもない作品でしたけれど、心地良い良作でした。お疲れ様です。
まだまだ世界を渡って、この物語は続くようです。その先は、再びパラサイトムーンの世界なのでしょうか。何れにしても、ワクワクは止まらない。

追記:

うがああああああああ! シェリル様、オマエもかーーーー!!!
んなアホなーーーーーー!!!


渡瀬草一郎作品感想

源氏 物の怪語り 5   

源氏 物の怪語り (メディアワークス文庫)

【源氏 物の怪語り】 渡瀬草一郎  メディアワークス文庫

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 千年の時を経て――
 なお歴史にその名を残す希代の文人、紫式部。
 中宮彰子に仕えつつ、『源氏物語』を書き綴る彼女の傍らには、とうの昔に亡くなったはずの“姉”がいた。
 愛娘の賢子にとり憑いたその姉に導かれ、紫式部が出会うのは、四人の歌人と四季を巡る四つの物語。
 伊勢大輔、和泉式部、中宮彰子、赤染衛門――当代の歌詠み達の前に現れる物の怪は、時に恐ろしく、時に儚く……けれど人の心を映し、朧々としてそこに在る。
『陰陽ノ京』の渡瀬草一郎が贈る最新刊。
何故に、この人の絵描く平安絵巻はこんなにも生きている人を感じられるのでしょう。生活感、というと少し違う気もするのですが、登場人物たちに確かな生の感覚があるんですね。歴史上の人物、特に平安時代の人々なんてものは、どこかおとぎ話の住人のような印象があるものなのですが、あとがきでの語りに絡めて述べるならば、千年前と言えども今と地続きで、そこには今と変わらない「人間」が、幾つかの価値観や考え方が違っていても今の人達と変わらない喜怒哀楽の感情を持った人たちが暮らしていたんだなあ、という実感がこの本を読んでいると得られるのです。平安時代の風俗がしっかりと描かれているのも、うそ臭い書き割りの虚構を感じさせない要素なのでしょう。
それでいて、生臭さは感じないのです。
生と死の境界が曖昧で、ともすれば強い感情に引きずられて魂が身体を離れてしまいような、肉体と魂魄の繋がりがどこか薄い、夢幻の幽玄の世界が表裏となって横たわっている時代。死がとても身近で、それゆえに生の美しさを実感しているかのような、「現もまた夢の如く」とでもいうかのごとき死生観を持つ人々が暮らす時代。
この「幽か」な雰囲気は、酩酊にも似た感覚を以て心を惹くのです。読後も、いつまでも余韻が残るのが心地よい。これは、渡瀬さんの平安もの独特の感覚だよなあ。これ、ハマるんですよ。

今まで紫式部や和泉式部などといった人たちには、歴史上、文学史上の記号的な認識しかなかったのですが、この作品を読んでしまうともういけませんね。単なる記号、コマではなく、その時代を生きた人として、どんな人だったのか、どんな人生を歩んだのかという生きた人間としての彼女たちに興味が湧き、そんな彼女たちが残した作品や、彼女らが生活の場とした平安という時代そのもの、そして朝廷内の人間模様まで気になってくる。そもそも、歴史に興味を持つ、ということはこんな風に人に興味を持つ、ということから始まるのでしょう。
今回の紫式部こと藤式部が主人公となる四篇のお話は、彼女に絡んだ幾つかの逸話を題材にしていることからも、新たに湧いた好奇心を満たし、擽る仕様になっています。お話を読んだあとに、彼女らに関するWikiなんかを読んでみても面白いかも。ああ、このエピソードが元になっているんだ、と知ると同時に、記述すれば単なる一文にすぎない歴史の一コマに、こんな物語が、こんな人々の想いが込められ巡り巡っていたのかと思い描くと、また心躍るのではないでしょうか。私は踊りました。
ここで描かれる紫式部は既に夫君に先立たれ、娘である賢子(この娘もまた有名な人なんですね。この作品を読むまで全く知りませんでした)を育てながら女房として出仕し、また小説の書き手として名を馳せる三十代後半というお年ごろの女性なのですが、娘に取り憑く二十代の頃に亡くなった姉の幽霊と絡むことが多いからか、妙に若々しい少女然とした姿を見せて、随分と可愛らしい一面も見せてくれます。それと同時に、中宮彰子に仕える女性の中でも赤染衛門に次ぐ筆頭格として、皆に慕われ信頼される困っている人を見捨てられない頼もしくも優しい一面もあり、と実に魅力的な女性として描かれています。もう一人、奔放な女性として描かれる和泉式部と相対するときなどはつっけんどんで大人げなかったり、という一面も見せてくれるんですけどね。
史実では、日記に和泉式部について「あの娘、歌はとんでもなく上手いんだけど、素行が悪いのよね」などという意味の言葉を残している紫式部ですが、本作では仲が悪いのではなく、むしろ唯一といっていいくらい遠慮なく言いたいことを言える間柄同士みたいな感じで描かれています。ケンカするほど仲が良い、というのとは少し違うか。素行の悪い不良少女に目くじらを立ててばかりの委員長、と言った感じで当人は嫌っているつもりだけれど、実際はすごく気にかけている、みたいな。和泉式部の方は邪険にされたり説教されたりと辛辣な態度をとられてばかりなのに、気にもせずすっごく紫式部に懐いて信頼してますしね。傍から見ても、二人は良い友だち同士に見えるようで、実際作中でもこの二人の絡みは見ていてとても楽しかったです。
【陰陽の京】を描いた渡瀬さんらしく、陰陽師も登場はするのですが、本作ではあまり活躍の場はありませんでした。物の怪とタイトルにはありますけれど、真性の化生が相手ではなく、どちらかというと人の心のうちから溢れ出した想いが化けたというべき、幽かな存在が絡んでくるお話となっていましたし。故にこそ、人の想いと向き合う話に、いずれの物語もなっていたようです。
ちなみに、本作は【陰陽の京】の時代からはおおよそ40年ほど下った時代で、あちらの登場人物は殆ど名前も登場しません……殆どということはチラリとだけ名前出てる人はいるんですよね。安倍吉平とか、賀茂光栄らはどうやら陰陽寮のえらいさんになっていたようで。吉平なんか五十代ですよー。さらに付け加えると、吉平の長男も登場しているんですが……安倍時親、彼の融通のきかなさそうな、頭の硬そうなところはこれ絶対母親似だよなあ(笑 晴明よりも頭柔らかそうだった吉平の息子とは思えないくらい硬っ苦しい男である。
あと、どうでもいい話なんでしょうけれどね、この時親、年齢が既に四十代に達しているようなのですが、吉平の方は五十余歳と表記されてるんですよ。二人の年齢を差し引いてみると……吉平くんよ、あんた貴年にいったいいつの段階で手を出したんだ、おい! 【陰陽の京】では二人の恋愛模様を、吉平の押し捲りの口説き攻勢にこいつ本当に12歳か!? と冷や汗を垂らしながらもまだまだ子供、幾らプロポーズしてたってまだ先の話だよね、と侮って見ていたのですが、もしかして早晩押し切られて押し倒される運命にあるのですか!? そ、早熟にも程があるだろう。さすがだ、平安時代!! 凄いぜ、平安時代!! いや、この場合時代が云々じゃなくて、純粋に吉平が凄いんだな。すげえぜ、吉平さんw

渡瀬草一郎作品感想

輪環の魔導師 9.神界の門3   

輪環の魔導師〈9〉神界の門 (電撃文庫)

【輪環の魔導師 9.神界の門】 渡瀬草一郎/碧 風羽 電撃文庫

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神界より訪れる異形の神々──
苦境に立たされるセロ達の運命は!?


「全員、“神々”の来訪に備えなさい!」

 シャンヤルル僧院での混乱を経て、遂に開いた“神界の門”。その向こう側から訪れた異形の神の眷属によって、セロ達は窮地に陥る。
 魔族の主ウィスカは、部下達と共にその侵攻を食い止めるが、常軌を逸した敵の前に劣勢を強いられ──
 神話の時代から続く神々の遺恨。
 その神々の力に魅入られた者達。
 次々と変転していく状況の中で、セロ達が直面する新たな事実とは?
 シリーズクライマックスの第9巻!
思いっきり「迷宮神群」だこれ!!
まあそれ以前から既に【パラサイトムーン】に登場した迷宮神群と、この輪環の魔導師にて記された神々には共通する名前や神話が散見されていたので今更といえば今更なのだけれど、まさか本体と眷属まで出てくることになるとは。驚いたよっ! マジで驚いたよ! セロがまさかのアラクネの眷属扱いされるとは。アラクネってあれですよね。甲院薫の異能の元。
そう言えば、今回のストラーダの過去回想に出てた天元の職人マリアンヌって、パラサイトムーンにも名前出てたんだった。ああ、以前の巻にもマリアンヌて出てきてたんだよなあ。露草弓が閉じ込められた「マリアンヌの虫籠」って、もろに彼女の作品だもんね……あれ? ということは、時系列的に言うと次元の「巡礼者」たる迷宮神群が神界の門を渡っていった次の世界、とは言わなくても少なくとも「パラサイトムーン」の世界は「輪環の魔導師」の世界よりも後になるんだろうか。
大罪戦争の黒幕とも呼ばれる大魔導師エスハールが、魔人ファンダールとの邂逅シーンでかなり近い身形容姿だったことからもあの星詠みのエスハである可能性が高まったことからも、一応時系列上はコチラが過去、になるのかな。果たして世界を渡る迷宮神群に時間という概念がどれほど当てはまるかわからないが。

かつての大罪戦争の裏側に、英雄たちとエスハールの開けた神界の門によって「戻って」きた神々との戦いがあったのなら、再び神界の門が開き、或いは別口から迷宮神群の本体が現出しようとしている今、大罪戦争再び、という事になってきてるんだろうか。どうやら聖神イスカの動向が核となってくるようだけれど。すべての事情を把握していそうなのは、それこそ大罪戦争の頃から生きてそうな魔族の主人ウィスカだけか……。
今回、何故か魔族にだけ神群ボアアルバの力が通じなかったんですよね……。魔族には魔道具を使えないという特徴もある。魔道具はアラクネの力を使ってその加護を帯びて生み出されたもの。ウィスカが大罪戦争の頃から姿も変わっていない。そして彼女によって魔族という存在が生み出されている。これって、封印の鬼神・シャパニアの異能や特性とかなり共通性があるような。もしかして、ウィスカがシャパニアの宿主なのか? 「神群の渡し」についてだけは全く触れられてないのが気になるところだけれど。

豊穣の神ボアアルバの顕現による大混乱。さらに、これまでずっと行方不明だった魔人ファンダールを思わぬ場所で助けだす事で、事態は大きく動き出すことに。まだまだ竜人やウィスカなど思惑がわからない人が多数いて、状況が整理出来ていないのだけれど……すべてのキーワードはやはりセロとフィノたちの両親が死んだあの事件、という事になるんだろうな。あそこで何が起こったのかさえわかれば、多くの謎が紐解けるはず。そうなると、あのフィノの暴発しかかってきた狂気こそが物語の重要な鍵の封印を解くさらなる鍵、になるのかもしかして。あれってただのネタじゃなかったんだなw
もうアルカインが完全にトラウマになってますよ?(笑
ウィスカの雰囲気がフィノのアレに似ている、という話を聞いて途端にフィノと同じって勝てる気しないよぅ、と戦意を失って逃げ腰になるアルカインに吹いた。ちょっとアルカイン、キャラ変わってる変わってる。どれだけフィノの事怖いんだよ。
そのアルカインが黒猫の姿になった真相も明らかになったわけだけれど……あれれ!? 今まで魔族の呪いと言われてて、アルカイン本人もそう信じ込んでいたんだが……おいおいおい。ファンダールさん!? あんた、やっちゃった? 自分の大ぽかを悟った魔人ファンダールの焦りっぷりに、状況が緊迫しているにも関わらず大笑いしてしまった。いや、あの場面では仕方ないんだろうけどさ、この真相は滑稽極まりないw
しかし、アルカイン大軍団には思いっきり和んでしまった。あれは反則だろう。暗黒神トライハルト、なかなかイイ趣味をしておる。

渡瀬草一郎作品感想

輪環の魔導師 8.永き神々の不在3   

輪環の魔導師〈8〉永き神々の不在 (電撃文庫)

【輪環の魔導師 8.永き神々の不在】 渡瀬草一郎/碧 風羽 電撃文庫

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魔族、聖教会、アルカイン達──三つ巴の戦いの行方は? シリーズ第8弾!

 シャンヤルル僧院にて再び激突したアルカイン達とロンドロンド騎士団。それに並行して工人ナボールと南天将デルフィエの接戦も続く中、楽人シェリルと腹心のレニーは、六賢人の亀裂が決定的なものになることを危惧していた。
 そして、まるでその不安を嘲るかのように、眼下ではある変事が起き――
 セロの中でよみがえる大罪戦争の断片的な記憶。幼いフィノが見た異世界につながる門。様々な謎が糸となってつながる先に、魔族の“主”が現れる!
 人気ファンタジーシリーズ第8弾!!

ああなるほど、フィノの度を越したセロへの執着は、いわゆるヤク中みたいなものだったんだね。なら仕方ない……って、んなもん余計ヤバいじゃん!!
ま、まさかフィノのあの病みっぷりに相応の理由があったとは驚いた。驚いたけど、それ以上に怖いっすよ。ぶっちゃけそれが真実なら、もう中毒症状が進みきってしまった依存症じゃないですか。治りようがないじゃないですかっ!
これ、フィノがセロと離れ離れになったら冷静になって落ち着くどころか、禁断症状が発生しそう。フィノが強引にでも旅にくっついてきたのは正解だったんだな。
このシリーズ、何が起ころうとどんな敵が出てこようと、とりあえずフィノより怖いものは存在しないので、何があろうとわりと鷹揚に受け入れてしまえるのは、正直どうなんだろう(笑
ついに現れた魔族の主。さすがは魔族を生み出し、主と祀り上げられている人物だけあって尋常でない異質さと存在感で場を圧倒してしまうのですけど、怖くはないんですよね、怖くは、うん(笑
別に、いきなり横っ腹をナイフで刺して来たりとかしなさそうだし。いや、仮にもラスボス級がいきなり腰だめにナイフを構えて体当りしてきて「裏切り者ーーっ」とか泣き叫びながらグリグリと突き刺したナイフを捻ったりとかしてきたら、それはもう怖いとかいう話じゃないんですけどね。ラスボス級がそんなことしたら、困る、うんw
だもんで、まあ怖くないとか的外れな感想なんですが、でもフィノと比べると怖くないww

とはいえ、この魔族の主という存在が非常に危険なのはひしひしと伝わってくる。前巻までのエピソードなどから、魔族になっても善い人は善い人で魔族=悪ではない、というのは理解できたのだけれど、それを上書きする形でさらに魔族の在り方の情報が出てきたことで、やはり魔族という存在になることは不自然で危険なことなのだということが発覚する。人格の開放については論じる余地があるけれど、魔族全体が一人の意思によって思考に影響を受けてしまう可能性があるというのは、やっぱりねえ。肝心の主が、温厚で人格者ながらどこか破綻し人倫から逸脱してしまい、さらにある存在に執着して社会秩序を全く顧みていない、というだけでも危険極まりないのだから。

かと言って、聖教会みたいな信仰を笠に着た絶対権力の押し付けに対しては、魔族は一定の共闘は出来るはずなんですよね。だから、両方と完全に敵対しまう形は出来れば取りたくない、というのが今のアルカインたちの立場になるんだろうけど……いや、そもそもアルカインたちにはまだ聖教会や魔族たちみたいに世界をこうしたい、という展望が無い以上、第三極にはまだ成り得ないんだよなあ。楽人シェリルも含めて状況の激変に混乱しながら対処し続けているのが現状で、積極的に現状を思う方向へと動かそうという能動が生まれていない。その方向性が見いだせてないから、仕方ないんだけど。
やっぱり、そこを見出しはっきりさせるためには、セロの持つ力の真実を明らかにすることと、行方不明の魔人を見つけないと始まらないんだろうなあ。
セロの秘密については、魔族の主が知ってるみたいだけど、聞き出せるかどうか。なんか、最後えらいことになってしまったし。
いきなりあれは想定外すぎるっ。もしかしてこのシリーズも、パラサイトムーンにつながってるんじゃないだろうな!?

最後に、満足して逝ったバルマーズ師に黙祷。涙とともに見送るラダーナと、バルマーズの遺志を継ぐと誓うクリムドの姿に貰い泣き。この三人にこれだけ感情移入することになるとはなあ。

渡瀬草一郎作品感想

陰陽ノ京 月風譚 2.雪逢の狼4   

雪逢の狼―陰陽ノ京月風譚〈2〉 (メディアワークス文庫)

【陰陽ノ京 月風譚 2.雪逢の狼】 渡瀬草一郎/洒乃渉 メディアワークス文庫

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メディアワークス文庫創刊の最大の功績は、このシリーズを再開させた事だよなあ、と続刊を読んで改めて思ったさ。
現在、作者が電撃文庫で書いているシリーズも面白くないってことは全然ないんだけれど、感覚的にこちらのシリーズの方が自然体に感じるんですよね。筆致にしても、物語の流れにしても、登場人物たちの心の移ろいや立ち位置、人との関わり合いなどについても、形式ばった堅苦しさがなく、在るが儘そこにあるように自然に紡がれている。
たとえば、ちょっとクスッと笑ってしまうようなシーンも、無駄に笑わせようという力が入ってない感じなんですよね。あの山の精たちの人外ゆえの無軌道さ、奔放さがこの昼と夜の狭間、夢と現の境界、陰と陽の混ざり合ったような時代における京の都の中では、自然にそこに在る者たちで、それが故に彼らの異質さは愛嬌として成り立ってる。
あの山の精たちのお姫様、玉響殿には吹いたなあ(笑
あれは、見たら脱力するわ。本人は何も悪くはないんだが、ここは光榮の愚痴に同意したい。いや、ほんと可愛いとは思うんだが、なんか違うだろう(笑
可愛いといえば、栗鼠の御大がやたらめったら可愛くて、あれは困った。居丈高で偉そうで人間見下しまくってるんだが、愛嬌がありすぎるせいで全然嫌味に感じないし。

どうやら、前回の鬼の件はあれで終わりではなく、裏でこそこそと動き回っている輩がいるようで、水魚という外法師の老人を中心とした連中の暗躍と、それに対向する陰陽寮という構図で以降のシリーズも続くようだ。
なるほど、その意味では慶滋保胤を主人公から外した意味の一端には、新しく主人公に配された光榮を中心に、陰陽寮に属する者たちとその周りの人々にもっとスポットを当てる、という意味合いもあったのかなあ。
敵対者である水魚も褒めているのですけれど、この時代の賀茂保憲を長とする陰陽寮は、御所の役所の一つでありながら、貴族の飼い犬には成り下がってないんですよね。清濁合わせのみ、内側から貴族の横暴を掣肘するストッパーとしての役割を果たそうと尽力している。
この賀茂保憲という人が、変人であり難物である安倍清明や息子の賀茂光榮、住吉兼良という面々に慕われているだけあって、大した人物なんだわ。あの権力者など鼻で笑って相手にもしないような面々が、曲がりなりにも宮仕えをしているのは、保憲の人柄と彼の目指す陰陽寮のあり方に共感しているからだもんなあ。
この人はほんと、理想の父親と理想の上司を体現しているような人物で、晴明なんぞ、はっきりと自分が陰陽寮に属しているのは公家や陰陽寮に忠誠を誓っているのではなく、賀茂忠行、保憲親子がいるからだ、と明言しているし、息子の光榮だって、あの野生児というか、ひねくれ者で粗野で万年反抗期みたいな青年が、父親と叔父である保胤にだけは反発せずに素直に言うことを聞く、ってんだから面白い。光榮みたいな性格の奴なんて、まず真っ先に父親に反抗しそうなものなのに。
でも、保憲の息子への対応や考え方を見せられると、光榮が慕うのもよくわかるんですよね。あそこまで自分のことを認め受け入れ信頼し信用して理解してくれ、その挙句自分の行動に対して責任を負う覚悟まで持っててくれるんだから、馬鹿みたいに反発したりするような甘えた態度はとれんよなあ。特に、光榮は他人から誤解されそうな格好や言動を取ってて、外聞は良くないわけだし。
なるほど、兼良が揶揄を込めて光榮を犬呼ばわりするのも仕方ない。確かに、犬っぽいんですよね。それも愛玩動物としての犬じゃなくて、ドーベルマンとかの類の主人や認めた相手以外には懐かないようなタイプ。

前回のヒロインだった藤乃は出てこなかったなあ。賀茂家の嫡男として、ほんとそろそろ嫁さん貰わにゃあ。ウィキでこの人の系譜見ると、嫡男の生年が986年なんですよね。本作の作中年が恐らく966年であることを考えると……まだ二十年近くあるのかw
保憲さんとしては頭痛いところだろうなあ。弟の保胤も奥手だか甲斐性なしだか、時継と殆ど進展ないわけだし。
でも、意外だったのは賀茂家の中で時継との仲って、黙認じゃなくてむしろ積極的にくっついちゃえよ! な空気だったところ。保憲さんなんて、時継の従者の貴年を吉平に誘わせて、時継と保胤が二人きりになれるように、なんて計らったりまでしてるし。まあ、その程度でどうにかなっちゃうとも思ってないんですが、弟の性格よく知っちゃってるしなあ(苦笑
でも、時継の家の事情から、もうちょっと慎重な立場だと思ってたんですけどね。こりゃあ、保胤、完全に堀を埋められちゃってるじゃないですか。
しかもねえ、なんか時継、電撃文庫の頃からするととみに女っぽくなった気がするんですよね。電撃の頃はまだ少女然としていたんだけれど、闊達で行動力に有り余ってる性格や言動は変わっていないのだけれど、保胤と接するときの物腰や彼のことを想い語るときの仕草など、やたらと艷めいてるんですよね。女の色香が感じられるようになってる。恋する少女を通り越して、愛する人の傍に侍りて安らぐ女の落ち着き、とでも言うべきか。
こりゃあ、いくら保胤が甲斐性なしと言っても、時継の醸しだす空気のまろやかさを思うと、これは時間の問題だぜ。

保胤が陥落寸前なのに対して、もはや完全に堕ちちゃってるのが、貴年さん。もう晴明の息子さんにメロメロです(笑
仮にもこいつら、吉平も貴年も12歳の子供に過ぎないというのに、なにこのイチャつきっぷりw こちらの貴年の方は完全に恋する少女。この歳で、「溺れてしまいそうだ」とか「まさか私以外の女にもあんな態度で接しているのか?」とか気を揉んだり、吉平の早熟さは言うまでもないけど、貴年も吉平に引きずられて、女として目覚めちゃってるよなあ、これ。
でも、この時代では12歳で懇ろの間柄になってしまうというのは、早くはあっても早過ぎる、ということはないのか。いやでも、片方が幼くて、というケースはあっても双方ともに齢十幾つで、というのはさすがに平安時代でも…ねえ。

仲の良さ、というと何気に晴明さんところの夫婦仲も良いんですよね。摂津から一ヶ月ぶりに帰ってきて、嫁さんの梨花さんの顔をみたい、と臆面も無く言うあたり、普段から夫婦でけっこうベタベタしてるのかもしれない。それを見て育ったから、吉平もあんなんなっちゃったのか?

男女の仲、というと今回の雪狼、白山もその雄々しく気高い狼としての振る舞いに見えたそれも、突き詰めれば好いた男に尽くし立てようとする女の情に由来するんですよね。
忠節や友情ではなく、愛情と考えると理不尽と理解しながらも陰陽寮の道士たちに挑む心の在り様も分かるんですよね。
分かるだけに、勝手に白山の情を、戌彦の想いを自分の好きなように面白いようにねじ曲げて解釈して、それを押し付ける水魚のやり口は、虫酸が走る。
理念や信念があるわけではなく、自由なだけに煩わしい敵だなあ、こいつらは。

そういえば、新キャラで渡辺綱が出てましたね。この時期だとまだ綱も吉平と同じくらいの歳なのか。抑揚のない無感情無表情なくせに人を食ったようなキャラで、また個性的な奴で、面白いw あの晴明がけっこうタジタジになってたもんなあ。
他のキャラと絡めても面白そうなので、摂津からこっちに出てこないもんでしょうかねえw

1巻感想

輪環の魔導師 7.疾風の革命4   

輪環の魔導師〈7〉疾風の革命 (電撃文庫)

【輪環の魔導師 7.疾風の革命】 渡瀬草一郎/碧風羽 電撃文庫


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ついに“魔族”と“六賢人”が対峙する──! 激動のシリーズ、第7弾!!

 “聖人”クラニオンの不穏な動きにより、六賢人の関係が軋んでいく中、大国サイエントロフに内乱の兆しが訪れる。“楽人”シェリルに保護されたアルカイン達は、浮遊庭園からその調査に乗り出すが、その地には魔族の影も──
 そんな中、セロは自身の見る夢の内容が、大罪戦争の英雄達と深く関わるものであることに困惑を深めていく。
 反乱軍に協力する魔族、そして内乱への介入を決めた聖教会。様々に入り乱れる各勢力の思惑を前に、アルカイン達が選ぶ道は──!


先の感想で、この作品が個々のキャラクターたちの事情と価値観に焦点を当てて紡がれていた小さな世界の物語から、国際情勢や組織間の対立構造が絡み合う大きな世界の物語へと一気に視点が広がったことに驚きを以て触れていたのだが、ここでさらに過去の歴史という時間軸の方向にまで関連性を広げてきたか!!
かつて、大罪戦争と呼ばれる世界規模の大乱の中で名を馳せた英雄たち。だが、その英雄たちには、史実から抹消された、表の戦争とは異なる闇に葬られるべき戦いに身を投じた歴史が秘されていた。
華々しい表の歴史には記されない、英雄たちがただ一人の敵を討ち果さんが為に集い、その目論見を葬り去るために挑んだ戦い。名のある英雄たちが束になって力を合わせなければならなかった狂気。それが、かの大罪戦争と銘打たれた大乱の真の戦い。
ああ、これまで度々歴史上の英雄の名が口端にのぼり、大罪戦争という過去の歴史に過ぎないはずの戦いが、物言わず物語の傍らにずっと寄り添っていたのは、こういう事だったのか。

今、かつての大罪戦争と同じ何かが始まろうとしており、同時にそれを阻まんとする現代の英雄たちが生まれ始めている、まさに時代が激動の波にさらわれようとしている歴史的瞬間を目の当たりにしているわけだ。
これは燃える。

作者は先のシリーズ【空ノ鐘の響く惑星で】で試行錯誤し続けた、個々のキャラクターの戦いと、大規模な国同士の衝突となる戦記的な戦いとのすり合わせを、この【輪環の魔導師】ではこういう形でハイブリッドしていくつもりなのか。マクロな視点とミクロな視点。それらを両方手放さず、中途半端にせず、自在に融合し分離して演出して行く。非常に難易度の高いやり方だとは思うけれど、この緻密にして基礎となる土台のドでかい考え抜かれたストーリーデザインを鑑みれば、確かな手応えが感じられると言える。これは、当初読み始めた時感じたものよりも遥かにスケールが大きく、大胆で躍動的な物語になりそうだ。しまったなあ、渡瀬さんは最初から【空ノ鐘の響く惑星で】に負けないスケールでこのシリーズ、考えてたんだなあ。正直、見くびってたかも。

しかし、こうなってくるとそもそも<魔族>というのはなんなのか、というのが気になってくるところ。シリーズ当初は魔族=悪みたいなイメージがあったけれど、魔族化する事自体が人間性が邪悪化する事とイコールではないことは、魔族化しながらも敵に回らず味方で居続けた人もいれば、また敵対している魔族勢力も決して悪の軍団ではないことは明らかになってきている。
となると、そもそも魔族化という現象が何によって引き起こされているのか。そこが気になってくるんですよね。かつて、英雄たちが戦ったあの存在が絡んでくる事になるんだろうか。
話が壮大になってきたなあ。

そして、話が壮大になってこようが変わらないのが、フィノのセロへの偏愛である。最近はもうセロが気づかないんだからいいんじゃないかという気にさえなってきたw
フィノって稀代のヤンデレで、思いっきり性格歪みまくっているんだが、その歪み方が真っ直ぐなので(って物凄い矛盾した物言いをしているがこうとしかいいようがないのであしからず)、意外と嫌悪感やらの類は感じないんですよね。ちょっと微笑ましいくらい。微笑ましいと言っても、浮かぶのはひきつった笑いなんだけど(苦笑
お姫様が正直危なかったんだが、あの人のフィノの敵視を回避するスキルは超絶技巧の領域(笑 あれだけセロにベタベタしながら、フィノの殺意が高まる前にヒラリヒラリと避けちゃうんだから、スゴイの何の。それを完全に天然にやっちゃってるんだから。まあ、本人がセロの事を異性として全然見ていないと言うのもあったんだろうが。

むしろ、シズクが変にフィノを見習いはじめたのがむしろヤバいw シズクは生真面目だからなあ。フィノもお付き合いの秘訣とか聞かれて、他の女を近づけないこと、とか真面目に答えないでくれ。

と、セロ一行についてはわりと和やかな雰囲気だった今回。楽人のお嬢さんは、前回苦労してたっぽいから、若いのに曲者の賢人たちに囲まれて色々大変なんだろうなあ、と若干同情混じりにその頑張りを応援していくつもりだったのだが……此の人、アーパーだったw
いやあもう、なんというか……賢人は神器に選ばれるために変人が多いというけれど、こうもアレな人ばっかりというのも凄まじいと言うか、神器自重しろというべきか。ただ、この状況下においては楽人シェリルのアーパーっぷりが、むしろ頼もしい。アルカインの師匠たる魔人が行方不明で、聖人率いる聖教会とかなり深刻に拗れはじめたのを考えると、この後ろ盾は大きい。あのお気楽脳天気な人柄は、対応するのにアルカインも気苦労が大きくなりそうだけど。
気苦労といえば、アルカインはシズクがヤンデレ修行を始めるわ、元西天将のルスティアナがむしろ魔族の時よりも積極的にアルカインを狙ってきているだわ、とフィノへの心労も加わって、そのうち胃に穴が開くんじゃないだろうか。大変だねえ、猫さん。
ルスティアナが魔族化が解かれた後も、大して傍若無人っぷりが変わってなかったのには笑ったなあ。性格的には言葉数の少ない不思議少女なのだけどw
メルルーシパ、妹弟子甘やかしすぎだ(爆笑 西天将のルスティアナと対立していたときには、まさかここまでシスコンとは予想もしなかったぜw


そんなこんなで和やかなセロたち一行と比べて、深刻真剣に戦っているのが魔族の諸君。
のちに<疾風革命>と呼ばれることになるサイエントロフ国の内乱に深く関与していくことになるのだけれど、決して自分たちの都合だけを押し付けてるわけじゃないんですよね。自分たち魔族の足場にするつもりはあっても、ちゃんと現地の人達の事を考え、国のあり方を考え、関わろうとしている。その結果、というかその過程において、ニスロフというとんでもない指導者が現れることになるんだが……。元は国内の貴族領主の一人だったニフロスという男の軌跡は、ちょっとした感動もの。ルーファスたちをも驚嘆させる男の覚醒には、ほんとに驚かされたなあ。この辺の変転は、戦記物として非常に面白く、興味深かった。
このサイエントロフという国の状況は、相当に酷い。二つの民族間の、憎悪という感情に根ざした対立は、おそらくルワンダあたりがモデルなんじゃないだろうか。
人間が人間の扱いを受けられない、地獄のような世界。それが、支配するされる側が歴史の中で入れ替わりながら延々と今にいたるまで続いてきた。
終わることの無い悪夢のようなこの国の在り方に、北天将ルーファスと南天将は敢然と立ち向かおうとしているのだ。そして、それは彼らの下にいるラダーナたちも同様で……。

エルフール国を乗っ取り、セロたちと敵対した彼らだけど、こうなってくるととてもじゃないけど、憎むべき敵とはもう思えなくなっちゃったよなあ。
アルカインたちとは勢力としては敵であっても、個々の感情で憎みあうような敵ではなくなったというべきか。勢力としての敵対関係なら、情勢の変化で幾らでも敵味方は転びますしね。
だからこそ、ラストの展開は激燃え!! もう、無茶苦茶熱かったーーっ! 物凄いイイところで次回に続く、だもんなあ。これは次回が待ち遠しくて仕方がないですよ。素晴らしかった。

2巻 3巻 6巻感想

陰陽ノ京 月風譚 黒方の鬼5   

陰陽ノ京 月風譚 黒方の鬼 (メディアワークス文庫)

【陰陽ノ京 月風譚 黒方の鬼】 渡瀬草一郎/洒乃渉 メディアワークス文庫

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まさかまさか、メディアワークス文庫創刊ラインナップに【陰陽ノ京】のタイトルが並んでいたのを見たときには驚くとともに飛び上がって喜んだものです。電撃幼なじみ作家のひとりとして良質のファンタジーを提供し続けてくれている渡瀬先生でありますが、やはり私個人としましては作者の最高傑作は【陰陽ノ京】と信じて疑わない次第。
ときめく心とともにページを開いて至福の数時間。
嗚呼、嗚呼、もう最高じゃ!!
やっぱり【陰陽ノ京】は別格だ。渡瀬さんの文章においては、なによりこの作品こそが一番しっくり来るんだよなあ。面白かったーー。メチャクチャ面白かったー。
てっきり主人公は今までと同じく慶滋保胤だとばかり思い込んでいたら、月風譚ではそうなのか、それともこの巻のみなのか、主人公は保胤の甥にして、現陰陽寮の長である陰陽頭・賀茂保憲の長子・賀茂光榮となっている。
あの野卑でズボラでぶっきらぼうで素っ気なく、どこか斜に構えている癖に、妙に生真面目で繊細で細かいところまで気が回るという結構複雑で矛盾な性格をした兄ちゃんが主人公になりますかー。保胤さんはあれで相当面倒くさい人だったけど、光榮もこうして見ると結構主人公らしい厄介な人柄なんですよね。ただ、グダグダと内心では思いをめぐらしているにも関わらず、行動力は抜群なんですよね。考えることで立ち止まらず、考えながらも常に動き続けるあたり、非常に能動的で、その意味では動かしやすい主人公なのかもしれません。それなりに割り切り決断も早いし。
以前のそのままの続編ではなく、仕切り直しの新編という意味でも、主人公変更は良かったかも。前までのシリーズを知らなくても、読んだ感じまったく問題なさそうですもんね。
光榮と兼良のこれまた複雑怪奇な関係も、電撃文庫の時にはサブキャラ同士ということで、これほどまで面倒くさい事になってるとはわからなかったし。ただ、あの吉平くんと貴年の嬉し恥ずかしなイチャイチャ関係については、なんでああなってしまったかは前までのシリーズ読んでないとアレでしょうけど……。
そう、そうなんですよねー。またぞろ、この阿部吉平(12歳)の最強女殺し属性がまた見られるとは思わなかったよなあ。このお子様、登場人物中最年少にも関わらず、頭一つ二つ他の連中と女性に対する接し方が抜けているというか、凄まじいことになっているというか。もっとも、女殺しと言っても貴年相手だけなんですけど。でも、今回もひどいことになってたなあ。もう、口説く口説く。甘い言葉を囁き、躊躇もなくベタベタとひっつき、プロポーズ紛いの言葉を連発するという、なんだこの十二歳(笑
こんだけ積極的かつストレートに口説きまくるキャラって、渡瀬さんの他の作品見渡しても、見あたらないよw
二人で夜釣りに出かけて、釣りしている間じゅう寒いからと貴年を後ろから抱きしめながら釣りしてたって、お前、なにやってんだよ、ほんとに!! ヤバイ、行状が以前よりも悪化している。直接的になってる。そして、それを許してしまっているあたり、貴年のデレっぷりも堤防を決壊しつつある(笑
任務で路傍で警戒待機している吉平の元を心配で訪れ、何か手伝えることはないかと申し出てきた貴年に対して、じゃあただ突っ立ってるの寒いから、この間の釣りの時みたいに抱きつかせてー、とかあっけらかんと女の子に要求する、なにこの十二歳(笑
いやあ、普段のこの子、登場人物の中でも屈指のマジメで聡明で冷静で賢い子なだけに、貴年相手の時だけのこの女殺しへの変貌ぶりが、毎度ながらギャップが凄くて、笑っちゃうんだよなあ。
しかも、周りの大人たちは貴年が女の子とは知らず、みんな男の子と思い込んでるのがまた、なんともはや(笑
この時代、十五歳くらいになればもう、男女とも結婚して子供をもうけてもおかしくない年齢ですからね。あと三年もすれば、貴年、食われちゃいそうだなあw

と、思わず年少組二人について熱く語ってしまいましたが、この二人のみならず、光榮と兼良の複雑怪奇な関係や、左大臣藤原実頼と、外法師桔梗と藤乃母娘の入り組んだ愛情によってつながった関係など、死後になっても残る思い、鬼に変貌する人の心などをメインに扱うせいか、非常に繊細かつ丁寧に人と人との繋がり、想いの在り方というのが描かれていて、読み応えがハンパない。
この実頼という、この時代の最高権力者のじいさんが、またイカした爺さんなんだよなあ。正直、惚れた。
権力者なんざ鼻にも掛けない光榮が、事件で面識を得たあと完全に意気投合してしまっているあたり、その人柄が知れるんじゃないだろうか。前主人公の保胤が顔見せした際の、二人のむちゃくちゃなやり取りには笑った笑った。
実頼と、桔梗・藤乃母娘との関係で違和感があった部分も、最後ちゃんと光榮が指摘してくれて、すっきりしました。やっぱり、そうだったんだなあ。でも、だからこそ桔梗があれほどまでになって残した想いや、実頼の桔梗への想い、藤乃への接し方というものが余計に尊く感じられるんですよね。やっぱり、この爺さん、素敵だなあ。
光榮は、どっか達観していると言うか、妙に俗世から浮いている部分があるんで、嫁取りとかは難しいんかなあ。少なくとも、彼の方からは今回のヒロインであるところの藤乃に対しては全然気がなかったようにも見えるし、実際そう明言しちゃってるし。藤乃の方は違うみたいだけど。
でも、賀茂家の長子で、もう27歳という年頃を考えると、幾ら何でもそろそろ貰っとかないと、ねえ。


どうやらこれにて一件落着、というわけではなく、兼良が追いかけていたシーンを見ると、なんかまだ続くみたいな感じで、嬉しい限り。
何はともあれ、伯家の姫様と保胤のロマンスだけは、なんとか決着つけて欲しかったし。続きを読む

輪環の魔導師 6.賢人達の見る夢4   

輪環の魔導師〈6〉賢人達の見る夢 (電撃文庫)

【輪環の魔導師 6.賢人達の見る夢】 渡瀬草一郎/碧風羽 電撃文庫

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ああ、これって安易にこう考えるのは危険かもしれないけど、空ノ鐘とは反対の流れなんだ。
軍記物・戦記物としての始まりから、キャラクター個々の物語へと収束していった空ノ鐘とは反対に、まず舞台を辺境からはじめ、セロたち主人公を取り巻く世界観を限定して狭い部分に焦点を当てて推移させていたのを、ここにきて一気に世界規模に広げてきたわけだ。
これまで辺境出身のセロの視点から見ていた世界が、一気に高いところに移行したことで、魔族とアルカインたちの対立構図すら激動しつつある世界情勢の僅かな一部にすぎないことが分かり、魔族という存在の位置づけすらこれまでの認識から一気に覆るような、これは一種のパラダイムシフトだわ。
これまでの舞台となっていたエルフール王国も、これまでだとセロの目から見ていたからだろうけれど、まるで全世界の大半をなしているような巨大な大国のようなイメージだったのに、世界全体からみると吹けば消えてしまうような、少なくとも強国とは程遠い小国にすぎなかったんですよね。
何と言っても、五巻までであれほど魔族と死闘を繰り広げてようやく解放したエルフール王国だったのに、たった一人の差し手であれほど容易に命運が決められてしまいそうになったことが、なんかもうショックで。
あれほど強大で比類なき敵のように思われた魔族も、こうして現状の世界情勢を目の当たりにしてしまうと、まだ世界の隅でこそこそと何かを企んでいるだけの弱小勢力でしかないことがわかり、それらと決死の激闘を続けていたセロたちはなんだったのか、と。
もっとも、未だ少数勢力であり世界の覇権を握りせめぎ合う諸勢力からあまり相手にもされていない魔族勢力ですが、ルーファスをはじめとしてこれから誰も無視できないような強力な新興勢力としてメキメキと頭角を伸ばしてきそうな気配はビシビシ伝わってくるのですが。

こうしてみると、魔族=悪というのはやはり完全に間違った認識なんだなあ。竜使いの兄ちゃんの魔族化も解かなかったし。
魔族個々はもちろん、勢力としての魔族も決して一方的に断罪されるような存在でないのはちょっとした驚きかも。北天将ルーファスの一団なんか、こうしてみるといっそ魅力的ですらある。いまいちキャラクターがわからなかったルーファス自身も、非常にカリスマ性と愛嬌のある魅力的な人物であるのがわかったし。

こうなってくると逆に怖いのは、教会なんだよなあ。なんだよ、あの巨大勢力は。なんかもう、抗いようのない絶対権力みたいな威圧感。
これもまた、これまでの魔族と同じくある一方から見た姿でしかないんだろうけど、これほど無茶苦茶されると、ルーファスたちとの共闘すらもあり得るんじゃないかと疑ってしまう。
なんにせよ、こうも賢人がしっちゃかめっちゃかだとなあ。ファンダール師が出てこないことには、乱世まっしぐらじゃないのか、これ。

セロが見る過去の夢といい、還流の輪環にはまだまだヒミツが眠っていそうだけど、こりゃあ否応なくセロたちは激動の世界の表舞台に引き摺りだされそうだ。
まったく、こいつは面白くなってきたぞ。


そして、フィノのセロ狂いがもはや笑うしかなくなってきた件について(苦笑
いちいちハラハラして神経擦り減らしてるアルカインに同情すると同時に、笑えるんだよね。どんだけ気苦労背負ってるんだ、と。
セロは全然わかってないもんなあ。アルカインからみると、ニコニコとほほ笑みながら地雷原を散歩しているように見えるのかもしれない。
薬師の師匠アネットは、セロにもフィノと同じくらい気をつけろとか言ってるし。たいへんだw

輪環の魔導師 3.竜骨の迷宮と黒狼の姫3   

輪環の魔導師3 竜骨の迷宮と黒狼の姫

【輪環の魔導師 3.竜骨の迷宮と黒狼の姫】 渡瀬草一郎/碧風羽 電撃文庫


い、胃が痛い(苦笑
普通、魅力的な新ヒロインが登場したら嬉しいもののはずなんだけど、この【輪環の魔導師】シリーズだけはそうじゃないんですよねえ。
フィノの影が凶悪すぎてw
なんかもう、魅力的なヒロイン! ってだけで死亡フラグみたいな!?
ちょっとでもセロにフラグ立てようものなら、それだけで惨殺の予感がww
本来ならドキドキするようなイベントを読んでても、別に意味でドキドキですよ。
二巻で登場したシズクやティアネスは、シズクはアルカインラブだし、ティアネスはそもそも人間じゃないので、本当の意味でフィノの反応対象からはズレてたからいいんですけど、今回のイリアード姫はマジやべえ(笑
正直、最後はああいう展開になって逆にホッとしてしまったのは自分だけでしょうか。むしろ、セロたち一行といる方が身の危険が大きかったんじゃないのか?(笑
イリアード姫が、優しく穏やかで強く健気で活発、さらには姫将軍と謳われるほど勇ましく、戦闘面でも強力。おまけに魔獣<黒狼>を幼いころから育てて相棒にしているという、性格的にもヒロイン的にも戦闘要員的にも完璧超人、強力な正統派メインヒロインというキャラクターだけに、病ん病ん病んなフィノのセロへのベタベタ振りが恐ろしくなる。
将来、血を見ずにはいられなさそうで。

一方、そんなフィノに引きっぱなしのアルカイン、二人の関係を心配しつつもどこか他人事ですけどあーた、自分も相当ヤバそうなお嬢さんに目ぇ付けられてるの気が付いてますか?(苦笑
セロはあれで、殆どフィノの病的な部分に気づいていない幸せ者ですけど、気づいてて構われるのってかなりキツいことになりそうで……がんばれーアルカインww
いや、明確に敵である分、アルカインの方は面倒くさくないのか。
やっぱりフィノだよなあ、怖いのは。

「ふとした拍子に眼が覚めましてね。なんとなくセロとフィノのほうを見たら、眠りこけるセロの顔を、フィノが……」
言葉を区切り、ホークアイはわざとらしく眼を見開いた。
「……こう、じいいい――――――っ……と、間近から瞬きもせずに、無表情で見つめていましてね」


ほんとに怖いよ!

輪環の魔導師 2.旅の終わりの森  

輪環の魔導師 2 (2) (電撃文庫 わ 4-26)

【輪環の魔導師 2.旅の終わりの森】 渡瀬草一郎/碧風羽 電撃文庫


今回、アルカインの仲間である天才と馬鹿紙一重のホークアイに、アルカインラブなシズクという濃いキャラが登場するんですけど、それらを登場シーンとともに一発で食っちゃって、インパクトを掻っ攫っちゃったのがヴィオレでしょう。
この娘、敵方の魔族なのに、あまりにもおもしろすぎる(爆笑
しかも、単なるネタ要員かと思ったら、かなりドラマティックな境遇だし。
さりげなく、見た目のデザインも一番好みだし、なんでカラー口絵に登場しないのか、とw
今のところ、まともにフィノと張り合ってセロに好意示すような年頃の女性キャラは登場していないんですけど、ヴィオレって候補じゃないんですかねw これくらい空気読めないお間抜けさんでないと、フィノのヤバさに対抗できないですよ。というか、まともに対抗すると惨劇になりそうなので、フィノの狂気を天然でいなしてしまえそうなヴィオレには期待が膨らみます。
まあ、それ以前に彼女を取り巻く問題が解決しなければ話にならないのですけど。あのラスト、どう考えても聞いちゃいけないこと聞いてしまう流れだしw

そして、この作品の見どころ(?)である、フィノのヤンデレっぷりは相変わらず……怖いよ!
アルカイン、思いっきり逃げ腰じゃないですか(笑
ほかのことに関しては敵である魔族についても何にしても超然と構えてる余裕たっぷりのキャラだけに、フィノに対しての腰の引けっぷりが目立って目立って…w
セロはセロで、フィノの狂気については当事者故の視野の狭さか対して問題視してないし。フィノの偏執的なまでの自分への執着を理路整然と解釈してて、言われてみればその通りなんだろうけど……傍から見たら完全に危ないですって(笑
今のところ、セロはフィノに対して殆ど恋に近しい好意を抱いてて、性格的に別の女の子に易々と心映りするタイプじゃないですから危険はなさそうですけど……将来的にはドキドキだなあ。

物語の方は、アルカインの仲間との合流とともに、セロに秘められた力の正体の一端の解明、さらに敵方である魔族の詳しい内情が徐々に明らかになってきて、そろそろ本格的に物語も動き出した感あり。
特に、一概に魔族が力に魂を売ってしまった狂人たちだけではない、というのが明らかになったのは面白くなってきたぞ。あの瞬間まで、あのキャラがそんな立場の人間だとは予想だにしてなかったので、かなり驚かされたし。
しかし、逃亡している姫君ってのはまだ登場してないんですよね? 年代的にはつい最近らしいので、フィノとは違うだろうし。

空ノ鐘の響く惑星で  

空ノ鐘の響く惑星で外伝-tea party’s story (電撃文庫 わ 4-24)

【空ノ鐘の響く惑星で 外伝 tea party’s story】 渡瀬草一郎/岩崎美奈子 電撃文庫



一言で言うなら

至福の一冊

本編のエピローグの続きを主軸として、登場人物たちの四つの物語を挟んだ短編集。
本編が主菜なら、まさしくこれは最高に贅沢なデザートでございました。ごちそうさま。

個人的に一番気になってたライナスティとディアメルのでこぼこコンビが、ちゃんとよろしくやってたのは嬉しかったなあ。エピローグじゃ巧妙にぼかされてて、いったいどうなってるんだろうとやきもきさせられたものだから、余計に。
まさか籍を入れていないだけで、ちゃっかり子供まで作っちゃっているとまでは思っていなかったけれど。
こうして振り返ってみるとこの空鐘で自分が一番好きなキャラだったのって、ライナスティだったのかも。徹頭徹尾スチャラカなくせに、いつの間にか締めるところ締めてるところなんか特に。
今回の過去編を読む限り、その陽性気質はどうやら生来のもので、本人何にも性格とか装ってなかったみたいなのも嬉しかったり。やっぱり、ライナスティな根っから惚けてないとねえ。だからこそ、ディアメルともお似合いなわけだし。

しかし、本当にみんな幸せそうで、なんだか読んでるこっちまで気持ちが楽になるというか、いい気分になれるというか。渡瀬さんの書く人物というのは、死ぬまでの時間を精一杯生きてる感じがするので、そういう人たちが生を謳歌し、温かい波に揺られて幸せそうにしているのを見ると、ほんと、救われた気分になるんですよねえ。じわぁっ、と実感できるわけです、そんな気分を。

とりあえず、シアの可愛さは異常ということで、OK?

陰陽ノ京 巻の五  

陰陽ノ京 巻の5 (5)
【陰陽ノ京 巻の五】 渡瀬草一郎/酒乃渉 電撃文庫
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実に四年ぶりとなる陰陽ノ京の新作。
まさしく感無量。
好きなシリーズの続きをまたこうして読めるというのは、本当に嬉しいものなのです。ページを開けば、あの懐かしい物語の空気が流れてきて、懐かしいキャラたちがかつてと同じように動いてる。
ああ、身体の芯から震えが湧き出してきます。
またこの【陰陽ノ京】を読んで再認識。私、渡瀬さんの作品ではやっぱりこの【陰陽ノ京】が一番好きだわ。

今回は吉平の母親で清明の奥さんで蘆屋道萬の娘である梨花さんが、あらゆる意味で大活躍。わりと抑制の効いた落ち着いた人物の多いこの作品をして、この梨花さんは一際天真爛漫として明るい人柄で、好きなんだなあ。とはいえ、今回の話は梨花さんを中心に据えながらも、初登場の阿倍家次男の吉昌の境遇と合わせて、純真無垢で世間知らずな時継に人の親となる事への凄さと素晴らしさとを教授するような内容でしたなあ。子供を作り、育てることへの重みを知る。ふむ、保胤が時継が何も知らない童と思って躊躇っているうちに、彼女の方は着実に一人の女として成長している模様。
あらゆる意味で、段々と外堀が埋められていくのが、ちょっと笑えますw
女性関係にとんと鈍い保胤と比べて、吉平の方は相変わらず手練手管が凄いなあ、と。貴年、もう完全に墜ちてるよ(笑
吉平くん、普段は生真面目で素直な少年なだけに、貴年にだけ見せる女殺しの顔と口説き文句の嵐は、物凄いインパクトなんですよね。何気にオヤジの清明よりも、底知れない。
と、今回吉昌とともに初登場なのが、阿倍清明が従えたという式神・十二神将の一人、天一。自宅に住まわせていた式神を清明の妻が嫌がったので、清明は式神を一条橋の下に住まわせた、なんて話があるわけですが、なるほど、こういう仕立てにしてきましたか。
しかし、となると天一以外の十二神将は存在自体してなさそうだなあ。

物語は、これまた懐かしい【陰陽ノ京】らしい話で。空鐘もいいけど、勇躍勇んだ話より、渡瀬さんはこうしたしっとりと落ち着いた、人の生き方や心の業と移ろいを描いた優しい澄んだ話が抜群に上手いと思います。
決してド派手な展開にはならないけれど、本当に、このシリーズは読むと心が落ち着くんですよねえ。
次は、早めに出して欲しいところです。いい加減、私も二人の子供が見てみたい(マテ
いや、それよりも吉平君が宣言どおり貴年を貰っちゃうあたりを見てみたいところではあるのだが。まあ、何年でも待てますけどねw
 
11月26日

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