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漂流王国

漂流王国 2.国民的アイドルVS.勇者アイドル ★★★☆  

漂流王国 (2) 国民的アイドルVS.勇者アイドル (角川スニーカー文庫)

【漂流王国 2.国民的アイドルVS.勇者アイドル】 玩具堂/U35 角川スニーカー文庫

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初ライヴで見事(?)ゾンビ観客を昇天させた異世界アイドルのリーンたち。新しい仕事も増えるなか、今度は日本の人気アイドル“シューテム・ハーツ”と対決することに。でも顔合わせの場に現れた月野優姫は、なんと翌の元カノだった!?おまけに翌は他メンバーにもフラグを立ててしまい、妹の朝霞から白い目で見られ…。そんな時、ヴァンパイアが街に襲来。急遽、Wアイドルによるヴァンパイア撃退ミッションが展開されて!?
攻めあぐねたなあ。コンセプトに対して、どう掘り下げていくかを最後まで決めかねてしまった感がある。この二巻で打ち切りということで全体的なプランニングが崩れてしまったのかもしれないけれど、色んなテーマやキャラクター描写に関して、あれこれやらないとという焦りから手を出しながら、迷った末に中途半端なまま掘り下げられず、触りだけになってしまっているようなところが見受けられるんですよね。
表層だけ浚うのならともかく、玩具堂さんの書き方って独特で直接心情を描写するのではなく、外縁を丹念に描くことで描写しがたい機微まで浮き彫りにしていくスタイルなんで、方向性が定まってないとこんな風に片足だけずっぽりとハマってしまったような、何を言いたかったかわかりにくい話になってしまうんだなあ、と今になってうんうん唸ってしまっている次第。
特に、肝心のリーンに関して完全に攻めあぐねてしまっていて、作者さんもこれリーンの物語像をはっきりさせられなかったんじゃなかろうか。或いは、彼女のようなキャラこそ外側から丹念になぞっていくことでその内実を浮かび上がらせていくことによってようやくその物語の輪郭をはっきりさせていくことが出来たのかもしれないけれど、時間も余裕もなく叶わなかったって感じかなあ。
非常に難易度の高いキャラクターではあったんだけれど、それだけに描き甲斐、読み解き甲斐のあるキャラだったんだけれどなあ。
迷走といえば、リーンたちの勇者アイドル活動も迷走を極めていて、本来勇者として名望を集めないといけないながら、実際は前回のゾンビライブといい、今回の一件と言い、何故か人知れずに世を救う陰のヒーローをやってしまってるんですよね。いやいや、そこで戦果を公開せずに秘密裏に処理しちゃったら肝心の知名度もあがんないじゃないですかw
治安とか外交とか機密上そうそう宣伝出来ないのは仕方ないのですけれど、勇者として、ヒーローとしての在り方に徹すると、こうして影働きになってしまうというのは、勇者とアイドルって結局両立しがたいものなんじゃないかと思ってしまうじゃないですかw 
実際、アイドルという概念がメヘンと日本とでは異文化間の差異としてすり合わせが出来てなかったからこそ、なかなかアイドル活動が実らない部分があったとは言え、ねえ。
その概念や認識の差異を強引にでも埋める手腕が、所詮地方公務員と素人マネージャーのプロデュースでは全然足りてなかった、というのが今回、プロのアイドルたちがやってきて、みるみるうちに人気を得て席捲していったのを見るに、やっぱり本職は違うなあ、と。
翌の大胆かつ奇抜な発想は、これはこれで有用なんだけれどやっぱり本職のそれではないんですよねえ。あと、一番重要なのは、彼ってアイドルのプロデュースをしているというよりも、本当は勇者のプロデュースをしている、という観点が本職のそれと一番異なってる。だからこそにっちもさっちもいかない部分があるんだけれど、ここはひっくり返したらいけないところでもあるので、仕方ないといえば仕方ないのだけれど。
まあそうでなくても、わりと芸能界的アイドル活動に関してはバッサリな内容が散見されるわけでw

とりあえず、翌と朝霞が気持ち悪いレベルでシスコンとブラコンを抉らせてしまってる、というのはよくわかりました。これだけはよくわかりました。ベタベタしていない分、余計にマジなんだよなあ。そりゃ、元カノもドン引きますわ。よっぽどの覚悟がないと、そりゃこんな妹のいる相手と付き合うのは難しいよ。だって、やるとなったら戦争だぜ、間違いなく。戦争する気で男の子と付き合う覚悟って、まだろくに恋愛もしたことのない初々しい女子高生が挑むには高すぎるハードルだわ。この時期の恋愛ってのは、楽しくて甘酸っぱい心地を堪能するものであって、ガチ修羅場が待ってるとわかっているのに、それでも吶喊する気概を持て、というのはキツイですよ。まだ一時撤退で再戦する心づもりがあっただけ、月白ちゃんには真面目に恋に対して挑もうと言う本気があったとは思うんですけれど、タイミングが悪かったというか運がなかったというか。
ある意味この再会は、再戦どころかバッサリ引導を渡すような側面があったので、残酷だなあと同情してしまいます。いや、これは決着がつけられた、と良い方に考えるべきなのか。

ともあれ、この二巻で終わりなんですよねえ。仕方ないとはいえ、ちょいと敗色濃い作品だったかな。

1巻感想

漂流王国 難民勇者と目指すトップアイドル ★★★★  

漂流王国 難民勇者と目指すトップアイドル (角川スニーカー文庫)

【漂流王国 難民勇者と目指すトップアイドル】 玩具堂/U35 角川スニーカー文庫

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日本の十六門市は、滅亡寸前の異世界から転移してきた漂流王国メヘンと融合した。それから九年、現代とファンタジーが混ざる不思議な街で、高校生の鵐目翌はメヘンの巫女王から新時代の英雄を育てろと命じられる。でもここは平和な現代日本、冒険も危険も何もない!そんな時、翌が思いついたのは、メヘンの勇者リーンやエルフのレレレリカたちを、アイドルグループ“レフュジー・キングダム”で英雄にすることだった!?
なよ課の課長の早木野(ぱやきの)氏。きのこ族の英雄たるこの人、ぱやきのさんの名前に凄く聞き覚えがあったんで、一体何のキャラだったか、由来のネタだったかずっと気になってたんですけれど、思い出した、思い出したよ! 何の事はない、同じ作者の【子ひつじは迷わない】シリーズに出てたアレじゃないか! そうかそうか、スッキリしたよ。何気にレギュラー出演だったんだよなあ、ぱやきのさん。ついに動いて喋り出すまでになってしまったか……。

しかし……発想がまた凄い話だなあ。異世界から王国が一つまるまる現代に漂流してくる、という時点で生半な異世界転移ものではないのですけれど、そこで発生する異文化の衝突と交流、亀裂と融和の問題に対して、ある種の血なまぐさい手法ではなく、アイドルという芸能というアプローチを敢えて勇者にやらしてみる、という発想がまず凄いのよね。普通なら、もっとこうわかりやすく腕力だの口八丁手八丁に訴えたくなるところなのに。
結構、メヘンと日本の国民感情の亀裂は生々しいんですよ? わかりやすい反発ではなく、同情という上から目線による隔意と、レッテルを貼り付けられた側の無理解による閉塞感と環境の変化による価値観の崩壊によるストレス。王国側の世代間のギャップ、元の世界に長く生きてきた世代と日本で過ごした期間の方が長い若い世代との感情的な齟齬、などなど。実際の移民問題にも通じるような「軋み」をわりと率直に描写してるんですよね。
同時に、通常の移民・難民問題ではありえない、異世界特有の問題、或いは生存すること自体が厳しい生存戦争という環境から突然平和な世界に住まうことになったがゆえの問題、というのもつきまとっていて、それが「勇者」という役割に大きく関わってくるのである。
その名望を以って民衆から支持され信奉されなければならない「勇者」という存在。その役割はメヘンの巫女王が担う王国の魔力的な安定と直接繋がっているようで、勇者がその役割を果たさないとどうも物理的にまずい状況になりかねない現状らしいんですよね。
しかし、異世界にいた時はその戦果によって名望を得ていた勇者だけれど、日本じゃ倒すべき敵もいなければ、そもそも戦いすらない平和な世界である。勇者というのは名ばかりの役立たず、というのが初めて出会った時のリーンの有様。しかし、彼女は彼女なりにずっとその平和な世界の中で勇者たらんと頑張ってきていたわけだ。彼女としても、何をどうすればいいかわからないまま試行錯誤して、挫折を繰り返していたのだけれど、どうも彼女自身はっきりとしない曖昧模糊とした勇者という形象とは裏腹に、なんというか「勇者とはこうなんだ」という揺るぎない核の部分は以前から彼女の中にはっきりと存在していたみたいなんですね。それを、具体的に他者に説明は出来ず、それを発露する方法もわからないがゆえに、ずっと迷走し続け、誰にも理解されないという苦痛を味わい続けていたわけだ。
しかし、その自分ですら説明できない勇者としての核を、まるっと全部理解して、共感してくれる人が現れた。勇者とはこうなんだ、というものを共有してくれる人が現れた。それが、主人公鵐目翌だったわけである。
孤立し、ずっと他人の協力も拒んできたリーン。失望し続けてきた彼女がようやく出会った勇者としての価値観の理解者であり共有者である翌。一番核の部分の理解者であるからこそ、ぶっちゃけ彼が何を言ってるかわからないし、どんな目論見があるかも理解できないし、正直あんまりやる気にもならなかったのだけれど、それでもリーンは、勇者としてアイドルになる! という意味不明な翌の企画にどんよりしながらも、最後まで拒否せずにやり通していくわけです。
この理解を通じての共感と、理解できないがゆえの拒絶感という部分。これはリーンと翌だけの話じゃなくて、登場人物全員の人間関係に深く絡んでるんですよね。翌と妹・朝霞の関係しかり。朝霞と両親の間にあるわだかまりしかり。レレレリカのプリティ・オブリージュしかり。ユニットとなるリーンと朝霞の、最初は反発しかなかった関係からの変化にまつわるあれこれしかり。大きな枠組みでみると、日本とメレンの関係ですら、これなんですよね。
面白い。
玩具堂さんの物語の特徴として、感情の機微や関係性の描写についてはっきりと具体的な言葉で語らないんだけれど、読んでいると感覚的にかなり具体的にその繊細な動きを捉えることが出来るんですよね。むしろ、わかりやすい単純な単語で表現されてしまうより、感覚的だからこそセンシティブに機微の核心を掴むことが叶うのです。
これがいい。実にいい。
フィルターに濾されず、ダイレクトに沁みるものがある。繊細な青春模様であるなら、尚更にこれがイイんですよねえ。本作でも、そういった作風は十分に活かされていて、それはある程度方向性が定まったこれ以降こそ、力を発揮しそうである。実に楽しみ。

しかし、単純にアイドル活動やらせず、最初のオン・ステージがあんなとんでもないことになるなんて、結構脚本もやりたい放題してますよね!?(笑

玩具堂作品感想
 
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