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片桐雛太

やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい 3 ★★★★  



【やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい 3】 芝村 裕吏/片桐 雛太 MF文庫J

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ガーディ VS 10万の大軍――異端のヒロイック・ファンタジー第3弾!

僅かな仲間と共に森州平定という大偉業を成し遂げながらも、相変わらず俗世に疎いガーディ。そんな彼を放っておけないフローリン姫の近侍に取り立てられた矢先、次なる戦いが忍び寄っていた。沿海州リエメンを率いる女王ニフレディルが、国の存亡を賭けて10万の大軍を率いてイントラシアへの侵攻を準備していたのだ。その動きを事前に察知したガーディはフローリン陣営の指揮官として、思わぬ人物との同盟を提案する。そして、種族を分け隔てない“究極の優しさ”が、決死の侵略軍すらも救う軍略へと至る時、誰もが予想しない結末が待ち受けていた――!
こうしてみると、ガーディというこの時代において異質すぎる存在を虚飾も偏見も少なく一番深く理解しているのって、アンドゥイレドとシンクロのおっさん二人なんじゃないだろうか。
ナロルヴァやフローリン姫、テイといったガーディと近しい子たちは、近しいが故にガーディの人となり、その性格の優しい所や抜けている所危うい所なんかをよくわかっているけれど、近しいが故に近すぎてその凄まじいとすら言える巨大な能力については頭ではわかっていても実感として把握しきれていない部分があるし、テイに至っては崇拝に近いものがあるからガーディの実像を正確に認識しているかは怪しいところがある。これは臣下になったモノたちも同様で神格化とまではいかないけれど、美化していたり凄い人という固定観念を持ってしまっている節がある。一方でタヘーや幼母は軍師としてのガーディを全く知らないからこそ、よく知っている彼の人柄だけに目がいき、その持ち得る能力については全く関知できていない事からも、見る人によってガーディという人物の捉え方がこれほど幅広くなるのは興味深い。
ナロルヴァあたりは、最近武将としてガーディからちょっと離れた所から前線に立つ者の視点でガーディの業績を目の当たりにしているので、実感を得始めている所もあるのだけれど。
彼を知らない人たちなら、尚更その実像は伝わらないし敵対者として対面する者たちからすれば、その圧倒的な能力ばかりに直面することで、本来の姿とはかけ離れた姿を見出してしまう。もっとも、実像を知らないからこそ、本質を見抜いている節もあるのだけど。

その点、アンドゥイレドとシンクロの二人はガーディという天才のバケモノじみた能力も、逆にその人並み外れた無垢さや弱点、世知の疎さなどちょっと考え方が抜けているのもちゃんと把握してるんですよね。まあ、凄さもダメさもたびたび想像を遥かに越えてしまうので、そのたびに振り回されてしまうのですが。
それでも、このおっさんにしてフローリン陣営の文武のトップを担う重臣二人がガーディの最大の理解者にして後援者であるという事実が、どれほど皆にとっての幸いであるのかは、彼らがほぼガーディの好きなようにやらせて、彼の望むようにすべての準備を取り計らってくれた事からも明らかでしょう。もちろん、これまでにガーディは彼ら二人のお眼鏡に適うだけの実績を立て、信用を勝ち取り、その能力を示し人となりを知らしめたからこそ、なのですけど役職も重く実績も多分にあり経験も深いだろうこの二人が、判断の殆どをガーディという新参に任せきっている(そして恐らく責任の方は自分達で引き受けるのだろう)事は、この二人がどれほどの傑物かを示しているのではないだろうか。
この二人が後ろ盾だと、ほんと何の邪魔も入らないどころかガーディの思う通りにスムーズに準備段階から事が運ぶんですよね。
軒並み、反対勢力を粛清し尽くさなければならなかったニフレディル女王と比較するのも可哀想になるくらい。リエメン側の人材の払底は目を覆わんばかりでしたからね。実質、この幼女王一人であらゆる実務をやってのけざるを得なかったのを見れば尚更に。
忠臣と言える人は僅かも居ましたけれど、実務能力はほぼ役に立つことなし、みたいでしたし。
今回はガーディも三方から迫る敵軍に対するために、自分は後方に待機して各戦線を手ずからではなく他人に任せる必要があったわけですから、ガーディも自分だけで全部やってしまうという訳にはいかなかったんですよね……まあお膳立てはこれでもかというくらい丁寧にやってのけたわけですけれど、これに関してはニフレディル女王も一緒ですからね。
ただ、ガーディには後ろにも前にも自分の代わりに任せられる人が居て、足りない部分も「自分じゃわからないので紹介お願いします」と頼める人が居て、その人は適切な人選で適格者を引っ張ってこれる人だったりするんですよね。
こうしてみると、英雄譚のような戦記物のように綺羅星のごとく将帥が揃っている、というわけではないのですけれど、ガーディ陣営には質実剛健の頼もしい土台を担える人材が揃っているのがよく分かる。そして、ガーディを慕って集まることになったゴブリンや人狼、トロールなどの異種族による精鋭諸兵科部隊という槍の切っ先。
まあそれ以上にやっぱり、精霊魔法、或いは占いという名称で語られる高等数学による演算に基づくガーディの先見が並外れているからこそ、すべてが適切に配置されていくのですが。
ガーディって情が深いように見えてそれらに左右されない完全に理系軍師なんですよね。政治はわからないどころか人の世界の常識も知らない世知に疎い人物だし、あれほど優しさに特化した性質でありながら人の心理というものにも疎い。
今回、リエメンの侵攻をまるで予知したように侵攻の開始から軍勢の数、侵攻ルートに戦略目的まで見抜いてみせたのは、それだけニフレディル女王による侵攻計画が合理性と必然性の塊だったから、と言えるのかもしれません。不合理の入る余地のないほどの完璧に整えられた計画だったからこそ、ガーディには手にとるように予測できた、と見るならばそれだけニフレディル女王が完璧な計画を完璧に実行していたという事実に突き当たるわけで、この幼女王ガーディと遜色ないバケモノなんじゃないだろうか。
惜しむらくは、彼女が才能を発揮せざるを得ないリエメンという国の状況が、災害によって破滅を避けられない状況であり、動ける間に生きるための食料を確保するために他国に全国民ごとなだれ込まなければならない、という時間制限付きの絶望的な状況であり、それを理解していない現状を把握できていない者たちを排除したために、人材という人材が払底しきってしまったという事なのでしょう。軍は糧食がなく、ただただ前に進んで略奪しなければそのまま枯死するしかない。前提条件が悪すぎた。
この幼い女王の身を確保できたことは、森州にとってどういう意味を持ってくるのか。リエメンという国が崩壊しながら、その国民の少なくない数を難民としてではなく移民的な形で森州に吸収できそう、というのはフローリン姫の立場にとっても重要な意味を持ちそう。
すでに、ガーディを近侍としたことでフローリン姫は独立領主としての道を歩みだしている、と周囲からは認識が持たれはじめているし、アンドゥイレドとシンクロのフローリン姫の両輪も、ここにきてガーディとフローリン姫の婚姻を本気で進めに掛かってますし。本国から独立独歩の道を歩もうという気満々なんだよなあ。
そのフローリン姫はというと、もう王族として仮面をかぶるのは完全にやめてしまって、今は公然とガーディの世話を焼くと公言して実行してますからねえ。それはもう好意以上のものだと思うのだけれど、この姫様は浮世離れして危なっかしいガーディの世話を焼かねば、という使命感に燃えているので彼が旦那様に、とかは果たしてどこかで現実味をもって捉えているのか。
むしろ、一旦婚約しそうになりながら引き離されたナロルヴァの方が、ちゃんと自分の気持ちというものに向き合えている様子が見える。
それにしても、世話を焼きたくて仕方ないフローリン姫がまたかわいらしすぎてたまんないんですよね。作中でも繰り返し語られてますけれど、近侍とは本来主君の世話をするような役職のはず(まあ実際は建前に縛られない必要に応じた自由度の高い立場みたいだけど)なのに、なぜか主君のフローリン姫が彼のお世話をしようと彼の住まいまで毎日訪ねてくるような様子で。森州の最高幹部が集まって今後の方針を決めよう、という会議に姫様が直々にガーディ呼びに来て、手を引っ張って会議室まで連れてきた挙げ句に「連れてきました!」ですもんね。なんだこのかわいいお姫様は。
それをみんなが微笑ましく見守っている、というのがこの森州の雰囲気を一番最適に現しているような気がします。
アンドゥイレドさんも、「ワシは、意外に小僧のことを小僧と呼ぶのが好きだったのだな。ガーディさまと呼ぶのが惜しい」という一言でこれまでも好きなキャラだったのですけれど、なんかもう大好きになってしまいました。こういう露悪的で周りからは嫌われているけれど、有能だし実は情も深いしというキャラはやっぱり好きですわー。

ついに「信長公記」の太田牛一みたいな、武将でありながら後にガーディの業績から日常的な様子まで書き残すことになる人物まで登場してるんですよね。
さながら現代から当時の人が残した資料を元に歴史家の視点で、ガーディたち当時の人たちの現代での評価を語ったり、歴史的事実に関しての見解や論説を述べたり、という歴史小説風味の語り口はやはり本作の大きな魅力の一つで、うん面白いなあ。面白い。


やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい 2 ★★★★   



【やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい 2】  芝村 裕吏/片桐 雛太 MF文庫J

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のちの大軍師ガーディ、覚醒の時――王道ヒロイック・ファンタジー第2弾!

グランドラ王との戦争での功績により、金貨姫フローリンから故郷タウシノの領主に任命されたガーディ。その役職は名ばかりながらも、ガーディの存在を警戒する姫の臣下も現れた。そんな中、ガーディは自身の存在価値を証明する必要から、亜人種や土着勢力が入り乱れるタウシノの平定を名乗り出る。だが、兵士も連れず傭兵も雇わずに味方は無理矢理ついてきたナロルヴァ一人だけ。誰もが無謀な絵空事だと考えた、たった二人の森州平定戦――それは、大軍師が冴え渡る軍略によりその名が歴史の表舞台に刻まれる燦然と輝く偉業の始まりだった――異端のヒロイック・ファンタジー。第2弾!

中庭で微睡むガーディを、遠く窓から眺めて心慰めていた金貨姫フローリン。近侍などに取り立てる事もなく、ただその姿を様子を見守っていることで満足……はしていないか、我慢していたように姫がガーディに求めていたのはその才能ではなく、慈しみ愛おしんでいたのはその純真無垢さであったと言っていいだろう。直属の上司であるナロルヴァも、金貨姫もガーディの才能は勿論わかっていたかれど、愛したのはその人柄なんですよね。なので、彼の無垢さを打ち消してしまうかもしれない出世は、決して求めなかった。
そんな彼女たちであるからこそ、ガーディもその力を惜しみなく注ごうという気になったのだろうけれど。まあ彼に人の好き嫌い、というのはあまり見当たらないのですけどね。見た目にも言動にも騙されず、その人の言葉や行動の奥底、真意よりも深くにある善意、善心を汲み取っていく。
誰にでも優しくあってしまうという彼の権能は、彼のあり方とまったく矛盾していないが故に彼にとっての苦しみにはつながっていない。つまり、心の底から優しく慈しむ彼の態度は嘘偽りのない強制されたものではないんですよね。その優しさを前にして、多くの人は自分の中の悪意を取りこぼしてしまう。どうしてか、優しさには優しさをもって報いてしまうんですよね。それが、彼のカリスマに繋がっているのではなかろうか。
尤も、彼自身は自分の優しさが報われることについては、とんと無関心なのだけれど。
何気に、森州で隣国の収奪部隊が各地の村落を荒らし回っているのを、ナロルヴァとたった二人で助けて回った時も、決して救った恩に報いるために人が集まってくる、みたいな考え方はしていないんですね。
そこのところは酷く冷徹に、集って反抗の一勢を立ち上げなければ生き残れず、各地を助けて回っている自分たちがその旗頭として必然的に持ち上げられ、その旗のもとに反抗勢力は糾合することになる、という計算が働いている。そこに優しさという感情は計算のうちに含まれていないっぽいんですよね。そしてその計算とは全く別に、彼は本心からみんなを助けたくて、あちこち飛び回っているのだけれど、そういう感情と計算は完全に分け隔てられているのがまた興味深い。

本作が面白いのは、小説でありつつ後世の視点から様々な史料に基づいて語られている話でもある、という所であります。特に今回の戦いからは、ガーディが本格的に歴史の表舞台にあがった戦いとされているからか、多くの史料が残っているという設定らしく、後世からの視点ということでこの物語を書いている作者が作中の地の文にコメントを付与してるんですね。それは歴史的な解釈や解説であったり、エピソードの歴史上の意義であったり、歴史上の人物の史料から推察される心境だったり、幾つも残されている当時の人の手紙や日記から導き出される情景だったり、それらに対する作者自身の感想だったり。
いやあ、読んでてなんかこういう描き方って見覚えがあるなあ、とずっと頭に引っかかりながら読んでたんですが、ふと司馬遼太郎の名前が思い浮かんだんですよね。
そう言えば司馬先生もこういう書き方をしてやしなかっただろうか。あの方の余談の挟みっぷりには定評?がありましたからねえ。
かの御仁に限らず、歴史小説家には少なからず見受けられる描かれ方かもしれないのですが、そう思うとなんだか本格的な歴史小説を読んでいる気になってきて、何ともワクワクしてくるような気分になってくるのでした。
加えて、森州の戦いはリエメンからの侵攻軍による収奪によって、点在する集落が片っ端から襲われ殺され奪われる事により、軍ではなく住民自身が武器を手に取り反抗の軍をあげる、という展開になりました。そういう展開を引っ張り出したのは、ナロルヴァとたった二人でリエメン軍の侵攻を防ぐために乗り込んできたガーディの思惑があったわけですけれど、いずれにしても奪われる側の反抗という枠組みの中には本来森州にも深く根ざしていた人種間の断絶は挟まれる余地がなくなったわけです。まあそこにも、人種を差別する、種族が違うということで分け隔てるという発想を持たないガーディの存在があったからなのですが。
そうして出来上がったのが、種族を問わずに糾合された反抗軍。そして、種族で分け隔てる視点は持たなくても、戦力としては諸種族の特徴、短所長所を見出してそれぞれに合わせた運用を導き出し、それを組み合わせることに何らの戸惑いも持たないガーディによって、各種族の特徴を組み合わせて相互に欠けている能力を補い合い、相互に持ち得る能力を相乗させる戦闘単位。諸兵科連合ならぬ諸種族連合(コンバインドアームズ)。
MBTと書いて「メイン・バトル・タンク」ではなく「メイン・バトル・トロール」と称する所とか、往年の傑作ファンタジー戦記【A君(17)の戦争】を彷彿とさせてくれるじゃないですか。
ちなみに、運用の仕方はもろにタンク――戦車のそれなんですよね、トロール兵。そして、ちゃんとその足回りを狙われると弱い、という弱点を補強するために戦車随伴兵を伴って動かしているところとか。
それ以前にも相互通信可能な羽妖精たちを使っての、戦闘管制を実践していたりするところとかガーディの発想は近代的な軍事運用に繋がるものが散見されたのだけれど、今回本格的に百人を超える人数を動かすに当たって、それがより顕著に顕在化してきたのではないだろうか。つまり、面白い!

しかし、ガーディの手脚となって動く羽妖精たち、彼女たちがガーディの戦術を、近代的な軍事用語に言い換えて好き勝手に喚いているんですけれど、これって単なるお遊びの類なのかと思っていたのですが……。羽妖精たちの声を聞いて、トロールのお嬢さんが何かを未来の一旦を知ったような素振りを見せるんですね。
タイトルの【やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい】って、未来を知っている誰かからガーディ自身が聞いたような言葉じゃないですか。特にこのタイトルが作中に意味を持ってくるとは思っていなかったのですけれど、トロールのお嬢さんはこの「やがて」という言葉をこぼしてるんですよね。
羽妖精たちが未来の言葉を使っているのって、もしかして意味があるんだろうか。

たった二人で反抗軍を立ち上げ、リンメイ軍を打破してみせたガーディは、ついにその名望を確かなものとする。確かなものとしてしまう。この戦いを通じて、多くの弱き者たちが彼の知恵と優しさに希望を見出し、その身を寄せようとしはじめる。それに値するだけの結果と能力を、彼は示したと言っていい。それに縋ろうとするもの、期待し守り立てようとするもの。能力に着目しそれを利用しようとするもの。危険視して排除しようとするもの。様々な思惑が彼を中心に飛び交うなかで、フローリン姫とナロルヴァだけが……いや、あえていうなら彼の養子になったテイも含まれるか。ガーディの庇護者たらんと尽力しようとしているのは興味深い。特に彼女たちだけが、ガーディの優しさ故のやわさ脆さ危なっかしさを心配して、守ろう守ろうとしている。特に、権力者である自分に近づけまいとする事でエルフに育てられたが故に人間社会に馴染まないガーディを危険から遠ざけようとしていたフローリン姫は、今回の一件で放っておいても自分の手の届かない所で危ない目に自分から飛び込んでいくガーディにとことん思い知ったようで、彼を近侍に任命することで身近に置くようになる。身近に置いて、手づから世話を焼くつもりであったらしい。世話させるのではなく、自分が世話を焼くために近侍にしてそばに置く、というのは姫様もまあその本性は随分と変わっている。その優しい変さこそが、ナロルヴァと共にガーディが人の世に身を置く理由なのだろう。忠誠とも違う、愛ともまた少し違う、優しい関係。それで成り立つこの主従の、乱世での戦いをこのままもっと最後まで、歴史の行き着く先まで見てみたい。そう切に思う面白さでありました。






やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい ★★★★   



【やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい】 芝村 裕吏/ 片桐 雛太 MF文庫J

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これは無能の烙印を押された、大軍師となる少年のヒロイック・ファンタジー

人類が圧倒的な銃の力でファンタジー種族を滅ぼしゆく時代──エルフの村で育った人間の少年、ガーディは、村の掟を破ったことで追放され、金貨姫フローリンが治めるイントラシア領に身を寄せる。剣も槍もロクに扱えず、秘められし権能すらも“究極のお人好し”という戦乱の世ではどうしようもない有様のガーディ。けれど、エルフの村でバカにされながらも培った知恵と経験、そして誰もが呆れた彼の“優しさ”が、過酷な戦争の中で空前絶後の伝説を生み出していく──のちの世で大軍師として語り継がれる少年の異端の英雄譚、登場!

芝村作品として期待はしていたけれど、いやいやこれ本気で面白いぞ!?
作者の芝村裕吏さんと言えば、ガンパレード・マーチの世界観デザインで知られ、小説家としても現在【マージナル・オペレーション】シリーズで真っ向から現代戦の紛争を描いている歴戦の作家さんです。マジオペは、電書化してないので最初の方しか読んでないのだけれど、早く電書化してくれないですかね? と思いつつ待ってたら第二期にまで突入しちゃって……。
ともあれ、戦争ものを描かせたら逸品の人ではあるのですけれどその分戦争描写が本格的、という事でもあり主人公の印象もどちらかというと悲観主義的だったりネガティブだったり陰気でダウナー系なイメージが強かったので、本作の主人公もその系統だと想像してたんですよね。
でも全然違ったんだなあ、これ。知性冴え渡る切れ者というよりも、むしろぼんやりホワホワしているような感じの少年で、あんまり深く物事を考えずにインスピレーションで捉えてるような雰囲気の子なんだよなあ。でも、決して考えなしというわけじゃなく、むしろ非常に観察眼に優れていて物事や事情、人物に対する見方なんかもとても鋭く、本質を読み取る力に長けている。
金貨姫なんか、王族として態度を厳格に取り繕っていて本来ならその人柄とか読みにくいタイプのキャラだと思うのだけれど、ガーディってば容易に彼女の被った仮面の奥を読み取るのでその人となりも手に取るように伝わってくるし、ガーディを通して色んな登場人物の人物像がより鮮やかに描かれて、とても魅力的に映るようになっている。直属の上司となるナロルヴァ女史なんか、フローリン姫とは逆に表裏なく感情を垂れ流しにしちゃうタイプなのだけれど、ガーディの目を通して見るとそのあからさまな感情表現の奥にも、どうしてそんな風に感情が動くのか、という理屈が見えてくるのが面白い。
こうしてみると、ガーディがかなりロジカルに物事や人物を観て分析しているのだけれど、そうやって得られた客観的・合理的な結論をこの子は冷徹に処理するのではなく、素朴な優しさ、お人好しな考え方でクルッと包んでしまって対処するのが、凡百の軍師とは違うところなのだろう。しかも彼の場合それを無理してやっているのではなく、天然無垢にやっていて自分のお人好し加減についても悩んでないし、それは良いものだとむしろニコニコと受け入れてるんですよね。それが何とも興味深い人物造形になっている。フローリン姫を始めとして、彼と関わることになった主要人物たちはみんな善人の傾向にある人たちなので、相性もいいんだろうなあ。
一方で戦場描写の方は期待通りの硬派であり、戦国系のファンタジーらしいダイナミックさもあり読み応えもタップリ。ガーディは当初、エルフ譲りのその弓術をもってフローリン姫を助ける事になるのだけれど、同時に戦術家としての見地も戦いながら深めていくんですね。とは言え、彼のスタイルって軍師と書いて想像されるそれとちょっとズレてて……あのピクシーたちの使い方といい、近代通り越して現代戦的な考え方じゃないの、それ。戦闘支援システムを独自に構築しようとしてません? こっちの主人公も「イヌワシ」になりそうな勢いである。
当面の好敵手となりそうなグランドラ王も、曲者食わせ者でとにかく癖の強いキャラで面白いんですよね。妙に憎めないキャラにもなっているし、それでいて極めて有能な戦争屋という。尤も、戦国日本を基礎ベースにしているらしいので、乱世らしく彼ばかり相手にしている事にはならない雰囲気もありますけど。

しかしガーディくん、エルフの少女に拾われて育てられたエルフの村の異端という扱いなんだけど、そのガーディを育てたエルフのお母さんが、彼から母として慕われているのだけれどどう見ても幼女w
いや、見た目もそうなんだけど中身もあれホントに子供ですよね、それも小学生の低学年くらいじゃないのかもしかして。年齢的には60になるらしいのだけれど、エルフの中でも童女と明言されているので間違いなく……。
二人が一緒にいるシーン、殆どないのですけれど保護者完全にガーディの方だったよな、あれ。それでいてガーディは本心から彼女を母と慕っているので、妙にこう倒錯した感じがw 年上だけど年下の母! 幼女に育てられる、という新感覚!
今後、このエルフ幼女お母さんに本格的な出番があるのだろうか。わたし、気になります。

芝村裕吏作品感想

魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>17 ★★★★   

魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>17 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>17】 川口士/片桐 雛太 MF文庫J

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エレンとフィグネリアはそれぞれ軍を率いて相対した。雪の降る戦場で、傭兵時代の因縁を終わらせるために、また戦姫としての誇りを賭けて、二人は戦うが、エレンを助けようと、リムは思いがけない行動をとる。一方、ティグルはガヌロンと決着をつけるべく、単身で王都を抜け出して荒野を行く。魔物たちによって恐ろしい変貌を遂げつつある世界で、ティグルは勝利をつかむことができるのか。それともティル=ナ=ファが地上に降臨してしまうのか。そして、ジスタート王宮の完全掌握にあと一歩というところまで迫ったヴァレンティナに対抗するために、ソフィーを始めとする戦姫たちがとる行動とは?大ヒット最強美少女ファンタジー戦記の最高峰、第17弾!

そうかー、以前のリムが16巻の表紙だった時のアレはここに繋がってくるのか。あれ、上手いこと両手は枠から外れていて得物は見えないようになっていましたけれど、ちゃんと得物を握っている絵もあるんだろうか。
いずれにしても、今回クライマックスではありましたけれど、ひたすらリム激闘編、みたいな感じすらありましたね。フィグネリア戦も、もちろん戦姫同士直接刃を交えるのはエレンとフィグネリアでしたけれど、リムもオマケ扱いではなく、二人で一緒に戦っていた感はしっかりありましたし、リムが身を呈さなければ絶対に勝てない展開でしたからね。それに、ここでの決死の行動がある意味、かの竜具に「こいつなかなか見所あるじゃねえか」と認めてもらえるきっかけになってたんだろうし。
てか、普通ならここでリム死んでてもおかしくなかったんだよなあ。あれ、普通死ぬよね。フィグネリアと双剣両方が意図して手加減してなかったら。
振り返ってみると、見据えるべき未来をもう見定めている戦姫たちに対して、今回は敵陣営の三人、フィグネリア、ガヌロン、そしてヴァレンティナの、現在に至る過去のきっかけとなるエピソードが印象的でありました。
フィグネリアは、最初登場した時は味方になるものかと思ったんですけどねえ。エレンが揉めてる相手ってわりと感情的な側面が強かったので、和解する余地は十分ありそうでしたし。ってか、リーザなんか今デレデレじゃないですか。まあ、あれはエレンが一方的に敵視しまくっていたところがあるんですけれど、和解したあとのリーザのあの照れながらの「ともだち」宣言にはこっちがこっ恥ずかしくなってしまいましたよっ。
でも、フィグネリアは彼女の抱えていたエレンたちの育ての親との因縁を思うと、自分の野望を捨てることが出来ない状態にすでに定まってたんですよね。彼を看取った時点で、彼の夢を自分の夢で終わらせた時点で、彼の夢を引き継いだエレンとの和解はなかった。新しい自分の夢を得たエレンとリムと、何らかの決着をつけなければならなかった。そして、止まることをもう自分に許さないフィグネリアには、その決着の付け方は一つしかなかったわけだ。それは、追い続けた夢だけれどヴァッサリオンと分たれてしまった時点で、どこか寂しい孤独な夢だったんだなあ。
孤独と言えば、ガヌロンもそんな感じで。彼の、他の魔物と全く異なる行動原理がずっと不明のままだったんだけれど、今回彼の素性が明らかになりその真の目的も明かされたことで、この男も妄執というにはあまりに寂しい、孤独を抱え続けてしまった結果だったんだろうなあ、と胸に沁みるものを感じてしまったのでした。
もしかしたら、一番欲望とは程遠いところに居た男だったのかもしれない。いや、欲と言うなら欲か。結局、悠久の果てに最も会いたい人にもう一度会おうという願いにしがみついていた、とも言えるわけだし。その結果として、幾つもの謀略で都市を焼き、戦火を振りまき、最終的には女神すら喰らおうとしたわけだからとんでもないっちゃとんでもなかったのですが。
そしてラストにヴァレンティナ。ってか、ヴァレンティナ。ルスランの不予には本当に何にも関わってなかったのか。あまりにもタイミング良くルスランが復活したので、彼の病もヴァレンティナの仕込みで復活から時間を置いての病の再発まで全部図られていたのか、と一時は考えていたものでしたが、まさか全部特に仕込んでいなかったとは……。いや、効果のある薬の調達は行ってたみたいだけれど、決してその効果に確信があったわけではないようだし、綿密なタイムスケジュールが組まれていた節はまったくないようなので、ヴァレンティナって謀略家というにはやっぱり行き当たりばったりすぎるぞ。事を仕掛けて起こして全体の流れを常に掌握し続けるという主導権を握り続けるタイプの戦略家ではなく、起こった出来事を利用して自分の都合の良い流れに持っていく、というタイプなんですよねえ。もちろん、自分で色々と仕掛けたり動いたりもしているのですけれど、意図した効果を得られなかったりとか、わりと至近の効果しか狙ってなくて別に何十手先まで相手がどう動こうと関係ないように持っていく、という風ではありませんし。
いやあ、本来ならこれヴァレンティナに勝ち目ない手筋だったんだけれどなあ。唯一の味方であったフィルネリアもあっさり脱落してしまったわけですし、彼女と組んで企図していた幾人かの戦姫の脱落はまったく果たせないままでしたし、それが結果としてあんな形になってしまったわけですから、この娘何気にすげえ運が良い。
正直、ここからどう転がるのかが想像し難いんですよね。ヴァレンティナとの決着の付け方もどうなっていくのか予想付かないし、それ以上にエレン以外の戦姫をティグルはいったいどうするのか。エレン一人だけなら、難しくも無理筋を通す手段は無きにしもあらずなんだろうけれど、それ以外の戦姫たちも抱え込むとなるとジスタートが許すはずもありませんし。
そりゃあ、この一巻では終わらんかったよなあ。最終巻を延長したのは正解だったんじゃないでしょうか。
でも、このラストは引っ張り方としては凶悪極まる……。

シリーズ感想

魔弾の王と戦姫<ヴァナディース> 16 ★★★★   

魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>16 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫<ヴァナディース> 16】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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ルスラン王子の復活と、国王ヴィクトールの死によって不穏な空気に覆われているジスタート。王子の側近として隠然たる権力を持ち始めたヴァレンティナは自らの野望を果たすため、ついに動きだし、その大鎌をソフィーへと向けた。他方でフィグネリアの双刃がリーザを追い詰めるなど、戦姫同士の対立は決定的なものになる。混沌たる情勢の中で、ティグルは自らの立場を鮮明にし、大切なものたちを守るべく、激しい争いの渦中に身を投じる。争乱の陰では、魔物たちに代わって地上にあの女神を降臨させようとするガヌロンの姿があった…。未曾有の危機のなか、英雄となった若者を待ち受ける運命とは。大ヒットの最強美少女ファンタジー戦記の最高峰、第16弾!
ヴァレンティナさんが行き当たりばったりすぎてたまんねー! しかし、本人それで楽しそうなんですよねえ。あれこれと張り巡らせた策や奸計が上手く行かなくてポシャっても、あんまり気にしてなくてむしろ臨機応変な対応を楽しんでるっぽいのが謀略家として質が悪いんでしょうなあ。いや、深慮遠謀に欠けるっちゃ欠けるんだけれど、精神的に停滞しないしあの拙速さは自身の失敗に限らず状況の変化への対応速度としては大したもんなんですよねえ。何気にこういうタイプの謀士はあんまり見たこと無いなあ。
でも、ヴァレンティナさんのこの性格からして大昔から長期的なスパンで謀略の網を仕掛けていた、とは思えないのでルスラン王子のかつての人事不省が彼女の手によるもの、ということはやっぱりなさそうなんですよねえ。まあ、年齢的にもあり得ないのだけれど。あのタイミングでのルスラン王子の復帰はマッチポンプじゃないか、と疑いたくなるところだったんだけれど。少なくとも、ルスラン王子には傀儡の糸をつけてるのかとおもってたんだけれど……ルスラン王子、普通に優秀で真っ当で結構気持ちのよい人だー!! あかん、この人かなりの逸材だ! ヴァレンティナの紐付きかと思ったら、精神支配とかその手のものも受けてないようだし、亡きイルダー公といい、ユージェン伯といい、ルスラン王子といい、もしかしてジスタートって何事もなく世代交代していたら、ルスラン王の時代は黄金期突入してただろうこれ、と確信できるくらいには逸材揃いだったんだなあ。しかも、ルスラン王子、良い人なんだよー。むしろ、その良い人なところがヴァレンティナに付け込まれているとも言えるのだけれど。でも、ヴァレンティナを重用しすぎず、かなり公正に扱っているのを見ると、普通にやってたらとてもじゃないけれど、ヴァレンティナが権力握れるとは思えないんですよねえ。
ということは、最初からあの地雷を仕込んでいた、というよりも復活自体が時限式にならざるをえないような手段を用いていたわけか。
やっぱりやり口が陰険で好かないなあ、ヴァレンティナのそれは。
それでも、誰が影で暗躍しているかわかっていても、このあとに何が起こるかわかっていてもヴァレンティナの意図したとおりに動くしか無い、という謀略の張り巡らせ方は突貫で仕上げたわりには本当に凄まじいの一言。謀略の粋というのは、何が起こっているのか最初から最後までわからないような代物か、何が起こっているのかこれから何が起こるのか全部わかっていたとしても、どうすることも出来ない状況を仕立てるか、の二極なんですよねえ。ヴァレンティナはそれに近しい辣腕を奮っているわけで、いやもう行き当たりばったりなのに凄いなあ、と。とにかく手が早く、手が多くて、それが見えないし、見えた段階では終わってる。恐らく不発に終わってるものも多々あるんだろうけれど、早さと多さがぜんぶ補ってるんでしょうねえ。一つの案件に複数の意味付けも与えているようですし、ある側面から見ると失敗してても、別の側面から見るとそれでOKみたいな多重構造になってるから、意図を挫くのが非常に難しい。これはどうやったって先手が取れないから後手に回らざるをえない。これを防げば全部の陰謀が瓦解する、というような芯も見当たらないのが本当に質が悪い。
ソフィは情報戦優秀なんだろうけれど、これはイニシアティブ取りようがないよなあ。
むしろ、フラフラと歩き回って要所要所で大事な場面に遭遇して、色々とヴァレンティナの策を潰してまわってるティグルさんが反則だわなあ、あれ。
ヒロインの絶体絶命のピンチに絶対に助けに現れるマンである、この主人公。とはいえ、戦姫の方々はガチで強い人たちなので、どれだけ絶体絶命になってもまず自力で突破してしまえるので、ティグルも軽々には助けに現れないのだけれど、だからこそ本気でマジヤバな時を絶対に見逃さないんですよねえ。エレンが捕まったとき然り、今回のリーザのとき然り。そりゃもう陥落するわさー。とっくに陥落しているとは言え。
しかし、ティグルさん、どんどんアーチャーとして化物になってくなあ。フィグネリアさん、がちで魂消てたじゃないですか。まああれ、人間業じゃねえし。ってか、弓矢でやれる技じゃねえ。あんなんやられたら普通死ぬw
ってか、四百メートルまで当てられるようになってたのかー。四百ってパねえっすよ。実際遮蔽物ない広い場所で四百メートルという距離を見てみなさいな。ちょっと笑っちゃうほど遠いよ!?

戦姫たちとのロマンスの方は、ミラがついに勇気を振り絞って告白したことで、ソフィが有頂天にw
このお姉さん、マジでティグルを正々堂々と戦姫たちの旦那にするつもりだ。ってか、政治的に誰にも文句言わせねえ形を整えようとしている。怖い。
でも、政略として言い訳させず、ミラにちゃんと女の子としてティグルと気持ちを通じ合わせるのをずっと待っててくれたとか、配慮が行き届いてるんですよねえ。逆に言うと、女性陣にもティグルにも建前とか政治的に仕方ない、とか言い訳絶対許さん、という恐ろしい配慮なのですけれどw
やっとこ、エレンとリーザが本当に和解……、というかついにリーザが過去にエレンに出会っていたことを告白して、リーザがエレンに憧れ焦がれていたことも伝わって、わだかまりも解けて良い仲なったし、五人の戦姫の間にはもう問題なくなったんですよねえ。ティッタとオルガがなんかちびっ子コンビで仲良くなってるし。
あとはリムですなあ。はじめて戦姫以外で、しかもこのクライマックスで表紙絵を飾るという抜擢となりましたし、エレンはもうリムも嫁にする気満々だし、本人すげえまんざらじゃなさそうだし、まあどこにも問題ありませんな。
問題は、あとシリーズ一冊で完結するのか、というところくらいか。いやね、あと三冊くらい使ってもいいんですよ?

シリーズ感想






魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 15 ★★★★   

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉15 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 15】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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空前絶後の大軍で侵攻してきたムオジネル軍は、総力を結集したブリューヌと戦姫たちの助力、そしてティグルの乾坤一擲の活躍でついに退けられた。人々が祝杯を挙げ、王都の復興が進む中、これまで以上に声望を高めたティグルは思いがけぬ人物からの告白を受ける。今後やらなければならないことと、ブリューヌの人々が望む英雄としての未来との間で思い悩むティグル。時同じころ、風雲急を告げるジスタートでは、ヴァレンティナの野望がついに形となって動き出す。ティグルたちの動向を伺う魔物たちも、悲願達成のために牙を剥く。息つく暇もなく、さらなる大きな時のうねりの中で英雄の戦いは続く―大ヒット最強美少女ファンタジー戦記の最高峰、第15弾!
……やっぱりヴァレンティナってけっこうポンコツじゃね? 彼女の仕掛けてる謀略って、いつも上手くいった試しがないような。いや一応目論見は達しているのかもしれないけれど、仕掛けたあとに起こる想定外が多すぎる上に大きすぎるんですよね。全然思った通りに行ってない。その後のリカバリーをなんとか繕えているのだから、あかんわけではないのですけれど。でも、今回の一連の謀略は彼女にとってもルビコン川を渡ったようなもので、もうあとには引けない分水嶺となるものだったはずなのに、ものの見事にやらかしてますしねえ。お陰で、ジスタートは大混乱。後々の事を考えると、この混乱こそがティグルたちの付け入る隙、となってしまうだろうことは容易に想像できますし。
大体さ、王の後継者と任命されたユージェン伯にイルダー公が隔意を持つように毒殺未遂事件を起こしたのは、ヴァレンティナが操るルスラン王子がユージェンから次期王の地位を奪うのに利用するためだったんだろう、と今になっては想像できるんだけれど……、いきなりヴィクトール王が精神疾患から復活したルスラン王子を即座に後継者に復帰させちゃったもんだから、ユージェンよりもイルダーの方が怒っちゃってユージェンと元サヤに戻って仲良くなっちゃうわ、ルスランに対して隔意を抱くわで逆に政敵に追いやってしまい、挙句安易に謀殺してしまったことで、イルダー公の関係者が軒並み敵対陣営に回っちゃうわ、とえらいことになっちゃってるんですよね。ぶっちゃけ、この段階で早々に他の戦姫と刃を交える、危険分子となりそうなソフィーとリーザを始末に掛かる予定なんかこれっぽっちもなかったでしょうし。
ヴァレンティナさん、屋根に登ったはいいけれど即座にはしご外されちゃってないですか、これ? しかも、他人の思惑関係なしに、ほぼ自爆的な展開で。大丈夫か、黒幕さん。
踊らされているというと、ガヌロンもまた怪しいんですよね。一応、彼は思惑通りに自分では動いているつもりみたいですけれど、彼と敵対することになった魔物たちの意図が全然わからない。ティグルが女神から教えてもらった断片的な情報と照らし合わせても、彼らの目論見というのはどうも単純なものではないようなんですよね。大体、滅ぼされてしまったら普通はそこで終わりだろうに。

思惑が不明、という点で最も何を考えているのかわからなかった、作品中最大のプレイヤーではないかと目していたジスタート王ヴィクトール。この人こそ裏ですべての事象の糸を引いているんじゃないか、と思ってしまうくらいに言動の意図が見通せなかった人なんだけれど……あれ? あれあれ? これってつまり、彼の言動に裏なんてなく、普通に全部表だったの?
極々最初のエレンによる凡庸な王、という評価に対してヴィクトール王の判断や行動は王としての貫禄と重厚さがあり、だからこそエレンが凡庸に見てしまうような在り方のさらにその奥があるんじゃないか、裏で何か企んでるんじゃないか、と思ってたんですけれど……。ユージェン伯を次期王に任命したのも、イルダー公をわざと後継者から外したのも、大きな世界規模の陰謀が裏にあるんじゃないかと、怪しんでいたんですけれど。
あれ? 本当に普通に王様してただけじゃね? しかも、見聞きしてきた通りの国王として欲目をかかず、国の発展のために尽くすのに十分以上な働きをしている名君以外のなにものでもなく……。ユージェンとイルダーの扱いについても、贔屓目なしに能力を評価してのものであったわけで。ちゃんと、ティグルのブリューヌ国との友好関係も重視してる政策や人事を取り……って、冷静沈着だし品行方正だし王権を意識しつつ変に貴族や戦姫から権益を奪ったり恣意的な利益誘導をしたりもせず、調整役としても天秤を司るに相応しいバランス感覚の持ち主だし、優柔不断の卦は無いし、ユージェンへの権限移譲の過程を見ていても変な妄執抱えてないし……、周辺国家の王族支配者見渡しても、ジスタート王文句なしに名君なんですけど。
エレンってさ……わりと人物評価間違ってる場合多いよね。わりと人を見る目ないよね。
フィグネリアとも、えらい勢いで反発してしまいましたし。あれはリムも同じように反応している上にフィグネリアの方も自分でコントロールできないものを抱え込んでしまっているようなので、清算のためにもこの経緯は仕方ないことなのか。
ともあれ、ジスタート王が最後に盛大にやらかしてしまったせいで、ヴァレンティナも含めてジスタート国は尋常ならざる混迷へと突入していく。ソフィーがまた重要なことを想定し始めているようだけれど、それもこれもヴァレンティナの魔の手を逃れてからか。

ブリューヌ国の方は、どうにもこうにもティグルが国王に、という流れができつつ有るようで。ごく一部、ではなくわりと国内の多数派意見になりつつある、というのが結構意外なことで。いや、ジスタートのユージェン伯の王太子就任もそうなんだけれど、意外とこの作品の王家って嫡流にそこまでこだわってるわけではないんだ、と今更ながら実感している。作品初期の二大大公の王権を蔑ろにしているような専横も、そりゃ王位がそれだけガチガチに血統で固まってないのだとしたらそれほど不可解ではないですもんね。それにしても、ここまで支持者が多いとは。ティグルの方も無理やり押されて、というわけじゃなく、真剣に王位に関して考え出しているようですし。レギン女王も、なかなか告白の仕方がしたたかなんですよね。まず一人の女として、それからブリューヌの王として。何気にこの食らいついて離さないという強さは、作中の女性の中でも屈指なのではないかと。
その点、ミラはもう可愛いんだけれど、思いきれなくて悶々としている様子がもうなんというかなんというか。ミラが告白してから、なんて順番をつけてしまったソフィー、さすがに焦れてきてるんじゃないですか。
それに比べて、しばらく離れているうちにティグルの女性関係がえらい進展してしまったリーザなんか、再会してエレンとの関係を察した途端、えらいぐさっと来る牽制を放っているあたり、ミラよりも有望なんじゃないだろうか。まあリーザはリーザでいつまでもエレンとの仲をはっきりさせられてないあたり、思い切りに関してはなんともはや、なのですけれど。これに関してはオルガの方が一気に切り込んでしまうのかも。

いずれにしても、あと二巻でシリーズ完結という情報が出てしまったので、あとはどう転がすか、ですねえ。
とりあえず、リムは早いところ娶ってあげてください。


シリーズ感想





魔弾の王と戦姫(ヴァナディース)14 ★★★★   

魔弾の王と戦姫(ヴァナディース) (14) (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫(ヴァナディース)14】 川口士/よし☆ヲ MF文庫J

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ムオジネルの王弟クレイシュは十五万という空前絶後の大軍を擁し、優れた将軍たちをそろえ、都市や城砦を次々に無力化して王都へと迫っていた。ティグルは王女レギンが西方国境から呼び集めた兵を預かって月光の騎士軍を再編成し、仲間たちとともにクレイシュとの決戦に挑む。若き英雄は大切な者たちのいる王都を守り、クレイシュを撃つことができるのか。一方、ジスタートではブリューヌから帰国したヴァレンティナがフィグネリアやリーザと会談。ジスタートを覆う不穏、とめどなく続く数多の戦い、祖国に訪れた史上最大の危機の中で今、英雄となった若者は、その名を永遠に歴史に刻み込む―大ヒット最強美少女ファンタジー戦記の最高峰、第14弾!
駄目だ、この王弟。欠点らしい欠点が皆無じゃないか。能力的にも偏りがないし、大胆不敵でありながら細かいところまで目が届き、油断や増長というものが存在しない。これまでも智将勇将の類と戦い続けたティグルだけれど、王弟クレイシュは文句無しにシリーズ最強の大将じゃないでしょうか。この人相手ばかりは、どうやったって何度やっても勝ち筋が見えてこない。
ぶっちゃけ、同数を用意しても十万以上の大軍を自在に動かす手腕としては、ティグルではクレイシュには及ばなそうなんだよな。結局、ティグルは指揮官先頭型でありますし。そもそも、クレイシュ相手だと対等の戦力という土俵には上がってこなさそうですし。
彼に関しては、ティグルがついに勝てなかった相手として長く語り継がれそう。クレイシュ側から見ても、ティグルは同様の認識かもしれないけれど。万難を排して勝利が約束された戦争に挑みながら、勝ちきれなかった。想定を上回られ続けてしまった、という意味で。
最後は完全に天運でしたけれど、それを掴んだのは戦争の行方を完全に見通していたクレイシュの読みを、何度も上回ったティグルの指揮と弓の腕があってこそでしたからね。決して卑下するものではないかと。クレイシュの読み、或いは分析といっていいか。それは、主観が入らない非常に客観的でかつ慎重なもので、予断らしい予断も入っていない正確で緻密なもので、加えてある種の読み違いも踏まえた「余裕」すら加味したものですから、それを上回るというのは、文字通り尋常なものじゃなかったんですよね。それをやり遂げた、というだけでティグルの将器は証明されますし、今までさえ人外の領域だった弓の腕が本当にえらいことに。
あれ、周囲1キロ半径の安全を確保していたのに、1.5キロ先から狙撃を受けたようなもんだからなあ。ティグルの尋常でない弓の腕前をちゃんと考慮に入れた上で、安全マージン過剰なくらいに取っていたのに、さらにその外側から狙われたらそりゃどうしようもないですわー。

しかし、今回の敢闘賞は外に出て走り回っていたティグルたちではなく、やはり籠城戦で奮闘したレギンやミラたちの方でしょう。正直、ムネジオル軍の攻城戦パなかったですからねえ。革新的な戦術とかはないものの、詰将棋のように淡々と工程を進めていくその戦闘は、ミラたちが最大限限界まで振り絞って抵抗していたからこその攻城速度であって、ちょっとでも穴ができたらそこから一気に瓦解しかねない圧倒的なプレッシャーでしたからねえ。
あそこまで焦りも性急さもなく、じっくり腰を据えてジワリジワリと迫られたら、そりゃたまらんですよ。攻城戦においても、クレイシュはまったく相手を甘く見ることなく、結局ほぼ最後まで想定通りに攻略は進みましたからね。ミラたちのあの激闘が、クレイシュの想定のおそらくほぼ最上限だったにしろ、想定を覆すほどではなかった、上回れなかったというだけでゾッとします。
どこを見ても、名将としての格しか見当たらないんだよなあ、この王弟。
唯一隙を見出すとしたら、後方に座して動かないところか。情報は厚く集めるけれど、現地を実際に走って見て回るティグルと比べて、生の情報に触れていない、というのは今回の戦いで分水嶺となっている。もっとも、王族という立場と十万を越える大軍の指揮、大量かつ多角的な情報の集積と分析による大局的視点の確保、という意味においては、クレイシュの姿勢はまったく間違っていないんですよね。
正直、これを倒すというのはどれほど運が良くても無理だろう、と読めば読むほど思い知らされていただけに、この決着はまあこれしかないよなあ、というものでした。
王族として、見事に籠城戦の士気を保ち続けたレギンを含め、全員が人事を尽くしたからこその結果でしたけれど、もし叶うならばクレイシュが撤退した理由となる政治的な部分が偶然の産物ではなく、意図した政略或いは謀略として仕掛けることの出来る人材が、ブリューヌに欠けているのが辛いところ。尤も、それが出来る手の長い大政治家、謀神的人材は各国見渡してもなかなか居ないんですけれどね。万端勝てる戦場を整えてから繰り出してくるクレイシュ当人とか、ブリューヌ国内を内乱状態にした上で攻めてきたザクスタン王、或いは往時のガヌロン公爵なんかがこの手の指し手ではあるのですけれど、今のブリューヌにはこのタイプの指し手が居ないんだよなあ。武人タイプばっかりだし、宰相のボードワンも内向きですしねえ。
例えば、ヴァレンティナが目指すべきはこのタイプなんだろうけれど、今のところ小賢しい立ち回りに終止していて、大局を動かす繰り手を見せることは出来てないんですよねえ。

と、そういえばフィグネリアさんが正式に戦姫として活動を開始しましたけれど、リーザやヴァレンティナとの対談を見ていると、今までの戦姫にはないポディションになりそうで面白し。いや、実直な戦士タイプではあるんだけれど、一番の新参ながら年齢的には年上なせいか、落ち着きのある性格も相まってどうも長女的ポディションに付きそうな感じがあるんですよね。前には出ない後ろでみんなを見守るタイプのまとめ役、というべきか。うん、貫禄があるんですよね。彼女の動向には興味をそそられる。
しかし、戦姫の殆どがティグルに好意持ってるんじゃないか、という呆れ気味のフィグネリアさんの見解には笑ってしまったw

そのティグル、エレンと好い仲になったものの、他の娘たちはどうするのかな、と思ったら、ティッタに関しては選択するという選択すらなしですか。そりゃ、女好きと自嘲するのも仕方なし。まあ、ティッタ相手だとエレンも文句言わないしねえ。
それはそれとして、もう好意を隠そうともせず食いつく気満々な肉食系のソフィに、こちらも素直に好意を口にしているリム、周囲も動いてティグルとくっつけようとしているレギン女王。とまあ、入れ食い状態で。
ミラさん、落ち込んでる暇ありませんよ!? ってか、嫉妬に身を焦がすでもなく、わりとマジに羨ましそうにエレンとティグルの様子を指くわえて眺めてるミラが、なんとも可愛くてねえ。恋愛方面だと、ミラもあれですね、乙女ですねえw

まあ女性陣との関係はそっちのけっで、ちゃっかりダーマードととっ捕まえて確保しているあたり、ティグルの狙った獲物は逃さない感が出てますなあw
ルーリックが居るとはいえ、彼はジスタートの将校ですし、気心の知れた実力のある腹心ポジションの男性キャラが欲しかったところで、薬を使っていたとはいえエレンとガチで打ち合える実力のあるダーマードをゲット出来たのは大きいぞ。

シリーズ感想

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 13 ★★★★   

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉(13) (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 13】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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大軍と共に出現したタラード=グラムを説き伏せ、その助力によりザクスタン軍を撃退した、ティグルたち月光の騎士軍。しかし、王都への帰還の途上をグレアストの軍に襲撃され、満身創痍のティグルたちは壊滅の憂き目に。指揮官であるティグルとエレンは混乱のなか行方不明となる。エレンはグレアストに捕らえられ、彼女への異常な執着に晒されてしまう。マスハスやリムアリーシャが対策を練る一方、単身で動き出したティグルの元には、予測しうる限りで最悪の敵が迫り、同時に、最高の助っ人が駆けつけようとしていた―大ヒット最強美少女ファンタジー戦記、緊迫の第13弾!
月光の騎士軍の敗走に伴いティグルとエレン、二人共が行方不明という衝撃的な結末で終わった前巻。この間行方不明になって記憶喪失になってたティグルですから、え!?また行方不明!? とさすがにこれには違和感があったのですけれど、なるほどそういう展開だったのか。まさに、お膳立てとしてはこれ以上ないシチュエーションなのだけれど、ティグルのメンタルがあれほどマッハに削れていくのは意外でもあったのだけれど、それだけ必死さが伝わってきたのは読者としても手に汗握る迫真性だったんじゃないだろうか。何だかんだと追いつめられても生来の大らかさからか若干鈍いところがあるのか、ティグルって常にどこか余裕というか慌てない動じない部分が残っていたのだけれど、今回に関してはそういうの全部ゴリゴリと削り落ちて凄惨と言っていいくらいになってましたからね。
それだけ、エレンの危機に対して冷静で居られない、というティグルの精神状態がよく伝わってきたのですけれど、叩けば治るところがこの男の良い所で。
こういうシチュエーションで、ティグル一人の力で打開させないのは、らしいというかなんというか。一部始終を目の前で見せつけられることになった、どころか全力で手助けすることになってしまったミラとしてはいい面の皮、なんだろうけれど、ここでこの場に居て全部知ってしまったのがミラだった、というのは重要ですよ。他の誰でもない、ミラが選ばれたという事でもありますからね。この負けず嫌いの娘さんがこれだけメタメタにやられてしまってすごすごと引っ込むはずがありませんもんね。むしろ、闘志を燃やすのがミラの真骨頂でしょう。目の前の現実と自分の醜くも情けない心の動きに随分と凹まされたみたいですけれど、事実を知ってまず「その手があったか」とか思ってる時点で色々とアレですし。
ある意味、徹底的に追い詰められた、とも言えますし、こっからはミラさんなりふり構わない気すらします。
一方でティグルですけれど、こっちはこっちで自分から形振り構わないと言ってるようなものな宣言しちゃってますからね。恐ろしい。このティグルくんが、受動的ではなく能動的に「絶対に何とかする」とか言っちゃったんですよ。絶対になんとかしてしまうに決まってるじゃないですか。今のところ、解が見えていないだけにどこに進んでいけばわかりませんから走りだしていませんけれど、もし解さえ出ればそれがどんなモノだろうとティグルだと、もう気にせず進みだす気がするんですよね。この男、一度決めたらどんな大胆な内容でもとんでもない代物でも、躊躇わんからなあ。基本的に、促してもなかなか動き出さない鈍いのんびりとした青年なのだけれど、それだけにこうと決めた時の揺るがなさは……。
ある意味、これまで故郷アルサスの安定以外何も望んでこなかった男が、初めて欲したわけだ。能動的に手に入れようと動き出したわけだ。これは、えらいことになりますよー。
味方のメンツ見渡すと、「じゃあこうしたらいいんじゃないですかねー」と耳元で囁いてちゃっかりその代価に枠内に入っちゃいそうな女性がいるだけに、ティグルが本格的に動き出すのもそう遠くないような気もします。

いずれにしても、そうなるとヴァレンティナは対立軸の向こう側に行きそうなんだけれど、この娘さんはふらふらと暗躍しすぎてて、ちょっと敵役としては腰が据わってない感じなんだよなあ。信用も信頼も出来ない人物としてティグルサイドでは評価は定まっているけれど、ティグルがそんなに彼女に対して悪印象を抱いていないのがちょっと気になる。
動乱の黒幕として動いていたガヌロンも、ちょっと孤立しがちだしイマイチ受動権を握れているとは思えない部分があるので、どうなんだろう。魔物側はある程度自分たちが立てたスケジュール通り状況を動かせているみたいだけれど、それでも想定外の部分は多いみたいだし。
実のところ、こうして敵側の思惑が一つにまとまっておらず、各自が勝手に動き回り暗躍している状況というのは、誰もイニシアティブを握れていないという点で次に何が起こるのか誰にもわからないので、混沌として話としては面白いんですよねえ。脚の引っ張り合いで物事が中途半端になってしまうのならともかく、ムネジオルの侵攻で今、もうわやくちゃなことになっててまさに激動という有様になってますし。
此処に至ってまだ真意が見えないプレイヤーが、ジスタート王というのが気になるところでもあるんですよね。何を考え、どのように動いているのか。それがわからないうちは、もしかして彼が主導権を握っているのでは、という疑いが拭いきれませんし。ティグルの最終目的からしても、ジスタート王の存在は無視できないものですし。
さあ、いずれにしてもティグルの英雄譚としては、もしかしたら彼がやる気になったここが本当の、或いは最後のスタートかもしれない。面白くなってきた。

シリーズ感想

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 12 4   

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉12 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 12】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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ブリューヌ王国に侵略したザクスタン軍を撃破するため、月光の騎士軍を結成して、その緒戦を勝利に導いたティグル。王都ニースで戦況を見守る王女レギンの下を訪れたが、王宮は謀略の渦巻く魔窟となっており、凶悪な魔手がティグルに忍び寄る。戦場の敵はザクスタン軍だけにとどまらず、因縁の深いあの男の登場により、ブリューヌの地を舞台とした戦乱は、新たなる局面を迎えることに。一方、ジスタートでは新たに煌炎バルグレンを継承した戦姫フィグネリアがヴィクトール王に謁見していた。幾つにも重なり合う陰謀と戦いを目前に、英雄となった少年は、戦友たちと共に未曾有の混乱を収束させることができるのか―大ヒットの最強美少女ファンタジー戦記、急転直下の第12弾!
ああ、フィグネリアさんて、またエレンと複雑な関係にある人なのか。もっとシンプルに傭兵時代の良き先輩、という風に捉えていたんだけれど、敵ではないものの友好的、とは言えない関係にあるのだなあ。感情的に拗れてしまっているエリザベータと比べると、まだマシなのかもしれないけれど、こればっかりはエレンがまたどう思っているかわからないし、なんとも言えないのだけれど……いや、むしろフィグネリアさんの方が気にしてるというか、引きずっている節があるのでにんともかんとも。
ただ、面白いことに新たに登場した彼女は、傭兵でありながら「国家観」というものを有した人でもあるんですね。
ちょうど、ティグルが国の中枢に携わろうか、という立場となり一地方領主ではなく天下国家の在りようというものをより顕著に考えるようになった折に、彼女のような存在が現れた、というのはなかなかに面白い。
合わせて、エレンが傭兵時代からその養親の影響で自分の思い描く国家観というのもをしっかりと持っていて、それをティグルに贈り物のように伝えているんですよね。そして、フィグネリアさんが国家観を持つようになったのも、そのエレンの養親の影響であり、エレンとの関係が難しいことになってしまっているのもその養親が関わっている、ということで随分と面白い因果と先々の展望への絡め方を織り込んでいたなあ、という印象。
さらにそこに、戦姫という存在がジスタート国の重鎮でありながら、国王の手が及ばない独立国の公主であるという特殊な立場であると同時に、国の担い手という立場を離れた「戦姫」という一人の戦士としての役割が与えられていることが、ミラの件で浮かび上がっているんですよね。ここ、何気にこの先においても重要なポイントになってるんじゃないかと思うわけです。ティグルのブリューヌの中での立場もあがってきたことで、ブリューヌ王国の公主としてのエレンとの関係は、今までのような気安いものであり続けるのは難しくなってきている。それは、ブリューヌ王都でのティグルとエレンたちとの接触すらままならなかった状態にも象徴されるように、今後さらに立場が二人の間を隔てていくであろう中で、公としての戦姫ではなく個としての戦姫の役割が、同じく「弓」の使い手としてのティグルと、エレンそして戦姫の女性たちとの関係に新たな一石を投じるのではないかな、と思ってたら最後に急展開だよ!!
まー、このままだと、どうやったってティグルとエレン、離れ離れにならざるを得なかったからなあ。いやしかし、あの段階でああなってしまうと、それでおしまいというわけじゃなくて、王都ヤバいじゃん!

レギン女王、優秀ではあるんだけれど、王としては実のところジスタート王の方が老練なのかなあ、と思わないでもない。エレンみたいに舐めてる人も多いみたいだし、実際やってることは当てこすりみたいだったり狡いことは多いみたいなんだけれど、王権の維持、という観点にたつと戦姫みたいな半独立勢力が乱立してるような危うい権力基盤の上で、実に見事に立ちまわってるとも言えるんですよね。
それに比べて、レギンは権力基盤が弱いから仕方ないのだけれど、全方位の顔色を見ながらかなり弱腰に振舞っているので、今度の一件はナメられた、とも言えるのかもしれない。ただ、参加した貴族の数がかなり少なかったことや事件後に厳しい対応を取ろうとしているのですから、出来る範囲で最大限の努力をしている、とは言えるんだろうかなあ。
今更ながら、ロランが殺されたことが惜しまれてならない。彼が居るだけで、レギンの押し出しもよっぽど違ったはずなんだよなあ。こればっかりは、どれだけ武功をあげてもティグルではなかなか難しいところ。それでも、ロランの代わりを務められるのは今やティグルしか居ない以上、彼があの選択をしたのは他の余地がなかったんだろうなあ。
まあそれも台無しになってしまったのですが。

しかし、今回の騎兵軍といい、前回の工兵軍といい、ザクスタン軍の二枚看板、こと軍の将帥という観点においては、作中でもちょっと図抜けてたんじゃないだろうか。ここまで戦場での指揮能力の高さを見せた将はあんまり居なかったですぞ。バルバロッサよりも上だったよなあ。正直、よう勝てたと思うよ、ほんまに。

シリーズ感想

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 11 4   

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉11 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 11】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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記憶を取り戻したティグルはジスタート王国にて新年を迎え、因縁浅からぬ戦姫たちと感動の再会を果たす。また、彼はジスタート王に謁見し、思い描く未来の甘さを指摘される。ブリューヌに戻ったときろで残してきた巨大な武勲が、決して彼を以前と同じままにはしておかない。王の言葉に、ティグルの胸中は大きく揺らぐ。一方、ブリューヌ王国ではレギン王女暗殺が企てられるも、未遂に終わる。だが、事件はそれで終わりではなかった。陰謀の背後に見え隠れしていた隣国ザクスタンが、剥き出しの野望をブリューヌに向ける。故国の窮地に、英雄となった若者はいま、再び大動乱にその身を投じようとしていた―最強美少女ファンタジー戦記、新章突入の第11弾!
七戦姫勢揃いのなんというド迫力。サーシャ抜きなので六戦姫だけれど。よく考えると、こういう形で戦姫たちが勢揃いする機会って今までなかったんですよね。それが公式の場で、こうしてティグルを取り巻くように戦姫たちが揃うインパクトときたら。しかも、ティグル中心、戦姫をティグルが引き連れるような構図になってるんですもんねえ。ジスタート内でも、これはもうティグルという存在を無視できないんじゃないだろうか。
それにしても、他の戦姫があれだけティグルと好を通じてしまっている中で一人だけヴァレンティナだけが蚊帳の外という疎外感(笑
思ってた以上にリーザとエレンに和解ムードが漂っていたのが、そこに拍車をかけるわけで。ほとんどのメンツとは初対面となるオルガも、ソフィーがわりと傍に寄ってる感じでしたしね。まあ、いきなりオルガは再会した途端に爆弾を投下してましたが。ティグルとの男女関係というのは、それぞれの立場もあってか戦姫の誰もが保留というか、あんまり考えないようにしていたっぽいところに、オルガが空気読まずに、同時に結構その立場にも考慮した爆弾発言で否応なくそれぞれの胸中に波を立たせたわけで……速攻でその波に乗って食いつくソフィーの肉食っぷりには笑ってしまいましたがw
めっちゃ食う気満々のソフィーに対して、他の戦姫が思いの外ティグルと親しい関係なのを目の当たりにして、焦りながら自分も呼びたいし呼んで欲しい、といそいそと申し込むリーザがなんか可愛らしかった。このメンツの中では何だかんだとリーザが一番乙女っぽい内面があるんだよなあ。ミラもあれでけっこうそっちの卦があるけれど。お陰でこのリーザとミラ、意気投合しつつ打ち解けられないんじゃなかろうか。
と、男女関係云々だけではなく、オルガの投じた爆弾というのは、ティグルの在り方を「王」のそれだ、と言及してのけた点こそが大きかったように思う。ティグルはこれまでの旅路の中での体験の中で王という存在について徐々に思うところを蓄積していってたと思うんだけれど、戦姫たちにとってティグルという男に「王」をみるという考え方は今まで殆ど持ってなかったんじゃないだろうか。ところが、オルガの発言によってそれが現実的か非現実的かというところは脇において、ティグルという男を表す在りようとして「王」という考え方がある、という発想が植え付けられたわけだ。これは、今後について大きな布石になりそう。
むしろ、もっともティグルという男と「王」という存在を結びつけて考えていたのは、こうしてみるとジスタート王なんじゃないか、とすら思うんですよね。ジスタート王って、当初エレンがけちょんけちょんに貶してたもんだから、随分な小物な王様なのかと序盤は思ってたけれど、中盤から直接登場するようになってその内心や考えが読めないところから得体の知れなさ、不気味さが感じられてた上に、今回の含蓄あるティグルへの助言とも警告とも野心の植え付けとも取れる言葉の数々は、このジスタート王がどのような性質の持ち主であるかは未だわからないものの、少なくとも「賢人」のたぐいであることは間違いないと確信させられた次第。ティグルの在り方とは違うにしても、確かに「王」たることを忠実に勤めてる、って感じなんだよなあ。
ぶっちゃけ今の段階だと、ヴァレンティナではジスタート王に対してまだまだ及ばないように見えるのよねえ。いろいろ暗躍している彼女だけれど、まだ浅いというか、ジスタート王やガヌロンレベルに比べると深慮や遠謀が足りてない気がする。
ジスタート王の在りように、強く「王」という存在を意識させられたティグルに対して、間髪入れずに届くのは、ブリューヌへのザクスタン王国の侵攻。そして、それを手引きしたと思われるブリューヌ内の新女王への抵抗勢力の存在。既に他国にも名望響くブリューヌ最高の英雄となってしまったティグルは、もはや辺境の小領主という立場では居られず、ブリューヌ国内での政治闘争に必然的に巻き込まれることになるのだと、ジスタート王の予見通りになりそうな流れ。第三部に入り、明確に空気が変わった感があるのは、このティグルの政治中枢へ問答無用に係ることになりそうな流れそのものなんだろうなあ。そして、それはティグル単体ではなく、ジスタートという異国の影が常に付き纏うことになるわけだ。もう誰がどう見ても、ティグルのバックにはジスタート王国がついている、と思われて仕方ないもんなあ。いくら英雄とはいえ、他国の紐付き、という印象は常に悪感情を伴って付き纏うことになる。どれだけ健常で公正な考えの持ち主でも、疑念は抱いてしまうだろう。ザクスタンの侵攻にともなってエレンの軍を連れて戻ってきたティグルへの視線には、その萌芽が幾つも散りばめられていた。今後、もつれるだろうなあ。
あと、戦姫の結婚についてはなんか具体的な話というか、一般的な貴族や豪族との違いなんかが語られて、より身近な話ともなってきたんだけれど……なんかティグルって、今の段階でわりと好きな相手居そうじゃない、これ?
それから、もう一つ重要なイベントが。ついに、サーシャの後継。操炎の双剣「バルグレン」を継ぐものが現れる……って、んんん? これって、もしかして、一番最新の戦姫にして、一番年長になるのか、この人!?
エレンの傭兵時代、以前の子供時代も知ってるみたいだし、もしかして、リーザとエレンの過去イベントを掘り起こしてくれるきっかけにもなりそうな予感。リーザはエレンとの過去については絶対口を開かなさそうだし。そのくせ、エレンを超好き好きなのは、ミラがエレンの悪口言ったら超不機嫌になってるあたり、未だ衰え知らずみたいだし、そろそろ本格的に和解させてあげてほしいのよね、この二人。

シリーズ感想

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 10 4   

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉10 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 10】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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エリザヴェータの力を借りバーバ=ヤガーを退けた“ウルス”ことティグルだったが、その矢先に魔物の力で見知らぬ森の中に飛ばされ、ムオジネル人ダーマードと出会う。ティグルの消息を探るダーマードに剣を突きつけられ、ティグルは絶対絶命の危機に。一方、エレンの命令を受けたリム、マスハスとティッタの三人はついにルヴーシュの公都にたどり着いた。同じく公都に帰還したエリザヴェータは、あらためてバーバ=ヤガーと戦うことを決意する。さらにガヌロンが暗躍し、ブリューヌとジスタートに新たな動乱の火種を撒く。混沌が加速して世界が人知の及ばない狂気を帯びていく中、時代が、英雄の復活を待ち望んでいる―大人気美少女ファンタジー戦記、第10弾!
マスハス卿が有能で便利すぎる! 何この万能爺ちゃん。凄い痒い所に手が届くよっ! 亀の甲より年の功と言いますけれど、マスハス卿のそれはまさに円熟した経験の賜物。勿論、単に年を経ただけでは得られないような機微や発想、手練手管の数々で、若い頃からこの方はいったいどのような人生を送ってきたのか、非常に気になります。ただの貴族ではとてもじゃないけれど出来ないような事をひょいひょいとやってのけるのですから。若いころのマスハス卿を主人公にした話で、一作書けるんじゃないだろうか。ティグルよりモテてそうじゃないですか。
案の定というか、エリザヴェータの側近でも文官筆頭というべきラザール老も見事にティグルに完落ち。これで武官のナウムさんと合わせ技一本である。ついでのように、ティグル暗殺を命じられてジスタートに潜入してきたはずのムオジネル王国の王弟の側近であるダーマードまで、なんだかんだと友情を交わしてしまって惹きつけちゃってるし。将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、じゃないけれど、意外なことにティグルってわりとまず射止めるべき人間の周囲の人間から、その魅力で落としていってるんですよね。戦姫にしても他国の王族にしても、その立場上のしがらみもあってか、その本心とは別に安易にティグルに対して全面的に肩入れ出来ない場合が多いのですけれど、そういう時はむしろ身分的に自由の効く周辺の側近クラスがティグルに傾倒して、何かと手を差し伸べ援助し協力してくれるケースが実に多い。だから、いざティグルに力を貸す、という段階になった時に反対の声が起きずにむしろ積極的にその判断を盛り立て後押ししてくれたりするんですよね。
これはなにげに恐ろしい地ならしであります。
文官武官双方の筆頭が、あれだけティグルという人間を気に入ってしまったとなると、エリザヴェータのルヴーシュ公国も、今後ティグルに対して便宜をはかる事に対してよっぽど悪条件でなければ異論は出にくいでしょうし、今回の一件を通じてルヴーシュ公国は、それまで若干の溝があったエリザヴェータと先代からの旧臣との関係も改善され、エリザヴェータ自身の心の余裕と側近との信頼関係の醸成も相まって、国力も今後充実していくでしょうし、何より修復不能だったはずのエレンのライトメリッツ公国との間に和がなったのがとてつもなく大きい。
ヴァレンティナが着々と自分の勢力を広げているけれども、誰も知らないうちにティグルを中核とした繋がりも無視できない広がりを見せてるんですよね。あのダーマードとの交流も、場合によってはムオジネル王国とのコネクションになり得るわけですし。

しかし、エリザヴェータは一連の事件を通じて、ホントに正ヒロインっぽさを発揮してましたよね。傍目には悪役全開で嫌味なお嬢様気質の人なんだろうな、というシリーズ当初のイメージはどこへやら、生真面目で不器用で未熟さを自覚し、コンプレックスを抱えつつもそれに負けない根性の持ち主で、実はエレンよりも不遇な幼少時代からの叩き上げ。意外と健気で一途でもあり、女性としての弱さと強さを兼ね備えたヒロイン性は、間違いなく戦姫全員の中でも随一、というタレントでした。場合によっては、ほんと彼女がメインヒロインになってもおかしくなかったくらい。
魔物との契約疑惑も、その敢然とした誇りと正義感で払拭してくれましたしね。
この娘は、もうちょっとわがまま言ってもいいんじゃよ、と思ってしまうくらいには立派すぎるところもありましたけれどね。だからこそ、記憶を取り戻したティグルに抱擁してみせた時には、思わずなかなかやったじゃないか、とニヤリとした次第。うんうん、それくらいしないと、要らんものが溜まってしまう。そうやって、もっとエレンを刺激して欲しいものである。まあ、本当はちゃんとエレンと胸襟を開けて仲直りして欲しいのですけれど。本当は昔の幼いころのお礼をして、あの頃のような仲になりたいと思っているのに、それが出来ずに居るのが伝わるからこそ尚更に。ティグルを通じて、ちょっとでも打ち解けた今後には、そういう機会もあると思いたい。その意味では、二人の本当の和解は先々の楽しみとなる展開でもあるんですよね。

魔物たちの密かな台頭が始まる一方で、ヴァレンティナ、ガヌロンのそれぞれの暗躍に、ムオジネル王国の蠢動、そしてジスタート王の不気味な動き、など戦乱の予感は募るばかり。
記憶を取り戻したティグルの帰還と共に第二部も終了とあいなったわけですけれど、第三部はこれまでに輪をかけて大規模なスケールの話になっていきそうで、本当に楽しみ。死んだと思われていたティグルの復活に、戦姫たちを含めた世間の反応がどう炸裂するかも、ニヤニヤと想像するだけで顔がニヤける楽しみですなあ。

シリーズ感想

風に舞う鎧姫(ブリガンディ) 3   

風に舞う鎧姫 (MF文庫J)

【風に舞う鎧姫(ブリガンディ)】 小山タケル/片桐雛太 MF文庫J

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俺、明智慶貴は健康な男子高校生。先輩に誘われて全寮制の女子校・志弦女学園へ侵入するが、何故か剣をもった物騒な女の子たちに追われるハメに。そんな中現れたのは幼馴染の少女・橘みのり。彼女は俺を助けるために追っ手の女の子たちを斬り付けた。な、なんてことを。と思ったら女の子たちは無事。しかし、かわりにスカートがダメージを受けて破れている…!?そう、志弦女学園の生徒は学園内の「領地」を奪い合うため、鎧(スカート)をまとって闘う騎士だったのだ!!そして俺もその戦いに巻き込まれ騎士の王を目指すことになり…!?ハイテンションバトコメ開幕。MF文庫J第8回新人賞受賞作。
まず覗き目的で女学園に忍び込むという時点でアウトです。普通は警察沙汰です。私刑も致し方なしw
それが何がどうしてか女装してスカートを脱がし合う羽目になってしまった主人公。なんか今月女装モノばかり読んでる気がするが最近の流行なんだろうか。一部でお姉様扱いされてしまうケーキだけれど、まあおとボクの主人公ズなんかと比べるととてもじゃないけれどセレブリティや女性らしさには長けていないので、あれはとってつけたような感になってしまった気がする。それよりも、学園内のはぐれものを集めてアウトローたちの頭をはるやんちゃ坊主という路線のほうが主人公のキャラには合っていたので、早々にそっちに舵を切ったのは間違いなかったかと。しかし、はぐれもののリーダーで美化委員長って、やはりヒャッハーで消毒だーー!のノリだったんだろうか。そもそも、美化委員のメンバーが本来の美化委員長であった美風さんたった一人だったというのは何ナンデショウ。この人自体毒舌家で下ネタ好きでわりと変態入っているので、最初から孤立してたっぽいな、うん。そんなやや危ないメイドさんに盲愛されている時点で、生徒会長もそうとうアレな人な気がするんだが。ノーパン主義だし。これで人気あるんだろうか、うむむ。
さて、戦う理由もよくわからないまま、実は戦っている当人の女学生たちも実はあんまりよくわかってないんじゃないだろうか、とこっそり思いながらも、結構ノリと勢いと娯楽も入っているのか、勇んで領地争いに勤しむ生徒たちの中に敢然と乗り込むはめになった主人公のケーキ。いや、本当になんで戦ってるんだろう、と首を傾げることしきりなのだけれど、気がつくと自分の身を守るため、歪んだ友の性根を叩き直すため、幼馴染との約束を果たすため、仲間とともにスカートを翻して疾駆し、他の女生徒のスカートを粉砕して回る大立ち回りを繰り広げる主人公。こういうなんだかよくわからないままだけれど、ノリと勢いで楽しく読ませてしまう、というあたりはなかなか侮れない誘引力を感じさせる。実際、登場人物同士の掛け合いは垢抜けていて淀みなく、非常に楽しいものでした。それに、真っ向からぶつかり合い、相手の歪みに剣を突きつけ、意気を示すさまは痛快でしたし。
結構面白かったです。

 
11月26日

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