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狐印

サ法使いの師匠ちゃん 2 ★★★   

サ法使いの師匠ちゃん2 (GA文庫)

【サ法使いの師匠ちゃん 2】 春原煙/狐印 GA文庫


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サ法使い VS.カルト教団!? 第7回GA文庫大賞≪優秀賞≫作品、待望の第二巻!!

「みんなをスマイル、あたしはリッチに! 実はこのあたしは、伝説のサ法使いだったのでした〜!!」
カルト教団に洗脳されたエルフ族を解放するため、辺境のミッケリンナ村へとやって来た詩子たち一行。
「サ法使いって、あのおとぎ話に出てくるペテン師じゃないんですか?」
しかし、村の修道女アルマに強く反発され、協力の申し出を拒絶されてしまう――。
「YOU、(教祖)やっちゃいなよ」
ところが詩子は、アルマを教祖に祭り上げて新興宗教パンスト教を興し、村人奪還に乗り出しちゃった!?
悩み相談にマルチ商法、異世界では斬新すぎる布教活動は奏功するのか!?
異世界ファンタジーコメディ劇場型詐欺、第二弾!!
勢力を拡大する怪しげなカルト教団に、新興宗教を立ち上げマルチ商法で対抗する詩子たち一行! って、ええんかいそれ!?
そりゃ、ある特定の業種を潰すには同じ業種で客を奪うのが一番だけどさ。よく料理漫画とかお店モノである、ある日突然向かいに同じモノを売る店が開店して大ピンチ、みたいな感じで。この場合は、相手のカルト教団がピンチなのだけれど。
しかし、その新興宗教がまた「パンスト」をご神体としたパンスト教というのがいい具合に狂ってる。そして、一番ジェラールくんがそのパンスト教にはまってるんですけど!?
まあでも理解は出来る。白い肌に黒のパンストもいいのだけれど、あのロザリアの褐色の肌に白いパンストというのも実に乙で……こほん。
ともあれ、新興宗教というのはそりゃ信仰の自由はあるし、パンストの有用性を広めるためにも良い機会だったのかもしれないけれど、マルチ商法はわりとやり過ぎだったんじゃね? アルマさんが怒るのも致し方なしというか、途中から師匠ちゃん欲望のままに走ってた感があるし。ストッパー役のジェラールくんはパンストに埋もれて見事に籠絡されてしまってたからなあ。
今回、ちと盛り上がりにかけたのは肝心の相手のカルト教団が敵役としては弱かったせいもあるのでしょう。敵国の尖兵としての側面があったとはいえ、カルト教団としてのヤバイ側面が全然なかったですし、師匠ちゃんの詐術が決まる余地があんまりなかったんですよね。ペテンらしいペテンにかけるまでもなく、案外正攻法で押しきれちゃいましたし。
でも、師匠ちゃんコンプレックスじゃないのだけれど、ピュアなジェラールやロザリアに対して色々と思うところはあったんだなあ。自身がどちらかというと、いや圧倒的に悪の側の人間であることを自覚していて、だからこそジェラールやロザリアみたいな良い子たちに自分がしてあげられることを考えているところとか、救われているところとか。
そして何より、師匠ちゃんも一人の女の子なんだぞ、というキュンキュンしたところが可愛いじゃないですか。散々引っ掻き回しながら、肝心なところでしっかり甘えてくれるところなんぞ、色々とたまらんところだわなあ。

こうしてみると、物足りなかったのはやっぱり師匠ちゃんとジェラールとロザリアの三人での掛け合いというかイチャイチャがちと足らなかったんかなあ。この三人が仲良く騒いでるのが一番この作品の幸せなところでしたからねえ。
なんか、このシリーズはここで締めみたいな感じなので、もう三人のドタバタイチャイチャが拝めないのが残念ですけれど。

1巻感想

サ法使いの師匠ちゃん ★★★★   

サ法使いの師匠ちゃん (GA文庫)

【サ法使いの師匠ちゃん】  春原煙/狐印 GA文庫

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胡散くさカワイイ!? 新・外道ヒロイン爆誕

魔法使いを凌駕する伝説の救世主、『サ法使い』。
だが、落ちこぼれ魔法使いジェラールが召喚できたのは――

「何なのそれ? あたし可愛すぎるだけの普通の高校生なんだけど?」

なんだか胡散臭い女子高生・鷺坂詩子だった!?

「あたしの自己啓発セミナーで、ハッピーライフにステップアップしちゃおうよ。
新しい自分を見つけられたら、心のパワーで魔法とかジャンジャンバリバリになっちゃうから
(※あくまで個人の感想です)。乗るしかない、このビッグウェーブに! 」

ナンパにセクハラ、怪しげな精神論などテキトーな修行で、
弟子のジェラールを鍛えたら、ついでに世界も救っとく?
第7回GA文庫大賞優秀賞作。異世界ファンタジー魔法コメディ型詐欺!!
師匠ちゃん、面白えぇ!!
というわけで、粗筋に速攻で詐欺とか書いてますけれど、サ法とは人呼んで詐法。召喚された胡散臭い女子高生は、高名な詐欺師の一族の血を引く娘さんだったのです。母親が自己啓発セミナーをやってる、という時点でかなりライン跨いじゃってますw
でも、詐法と言っても師匠ちゃん、殆ど人を騙すようなことはしてないんですよね。心理学や詐欺師の手法、弁論術などをやりたい放題駆使して面白おかしく色々とやらかすわりには、変な嘘は付かないし何かを誤魔化したり騙したり、他者に被害やダメージを与えるような真似はしないのである。なので、享楽的に好き勝手している胡散臭い人物なのに、凄く信頼感を抱かせてくれるんですよね。師匠と呼ばれるだけあって、実に頼もしい。いや、詐欺師というのはまず信頼されないといけないので、誠実さや明るさ、人懐っこさが大きな武器だというのはわかるんだけれど、彼女の気持ちいい人誑しっぷりは本気で詐欺師として騙しに掛かったらそれこそ手に負えない凄まじさなんだろうなあ。でも、彼女は決してその一線を超えないので自由奔放なその陽性の魅力だけが残るわけで、彼女を召喚したジェラールと仲良くなったゴブリンの戦士、ゴブ子ことロザリアを引っ掻き回し弄り倒し、と忙しないけれど笑顔の絶えない日々が続くのである。
この三人で暮らしている頃が一番楽しそうだったんですけどね。別に、この三人の閉じた世界を続けても良かったんじゃないか、と思ってしまうくらい。
とはいえ、当初の目的通り御前試合に出場することになったのだけれど、相手の魔法使いに対する師匠ちゃんの精神攻撃、口撃のひどいことひどいことw
特にあの某朝○新聞ネタには、不覚にも思いっきり爆笑してしまいましたがな。あれはもう、なんというか禁呪扱いでいいんじゃないだろうか。天の声を人が語るような超上から目線の精神をささくれ立たせるイラッと攻撃。色々と最強すぎるw
一方で、味方のジェラールやロザリアにはメンタルケアを思わせる心理カウンセリングで精神面から支えて、と縦横無尽の大活躍。いや、この人本当にベラベラと喋っているだけなのに、場も物語も全部彼女中心にぶん回していたわけで、なんだかんだと凄い存在感でした。あと、可愛い。超自信満々に振る舞いながら、所々にドキッとするような乙女らしい素振りを垣間見せてくれたりして、普段セクハラ上等の積極的な振る舞いしながらそんなチラリズムをされると……あかん、この人結婚詐欺も多分、得意だw
でも、何気にジェラールの方も天然でジゴロな資質があるようなので、相殺はされてるみたいなんだけれど、こんな二人の間に挟まれた素人でも簡単に騙せそうなほどチョロいロザリアが、もう好き放題二人に転がされてる感があって、でもこれはこれで天国にいるかのような幸せ具合なんだろうかw

物語を引っ張る師匠ちゃんが、何しろノンストップでイケイケガンガンな娘さんなので、作品のテンポも実にリズムよくぐんぐん進んでいくのだけれど、彼女の明るく淀みをふっ飛ばすような痛快な振る舞いがそのイケイケドンドンっぷりに拍車をかけて、実に後腐れなく楽しい、すっきり笑える気持ちの良い良質のコメディでした。
あー、面白かった!
これは、まだまだ師匠ちゃんとジェラール、ロザリアの三人トリオのドタバタコメディを追っかけたいなあ。

できそこないの魔獣錬磨師(モンスタートレーナー) 3   

できそこないの魔獣錬磨師 (富士見ファンタジア文庫)

【できそこないの魔獣錬磨師(モンスタートレーナー)】 見波タクミ/狐印 富士見ファンタジア文庫

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授かったモンスターの紋章によって優劣が決まる世界。モンスターを従え闘わせる『魔獣錬磨師』の育成学園『ベギオム』に通うレインは学園唯一のスライムトレーナー。周囲の嘲笑も気にせず、相棒のペムペムを信じ、誰よりも努力を重ねていた。そんなレインに固執する学年3位の美少女ドラゴントレーナーのエルニア。紋章と美貌を兼ね備えた完璧な彼女が底辺のレインにこだわるのは、過去の因縁が原因らしいが…!?最弱も最強も関係ない!勝利への執念が定められた運命に逆転劇をもたらす!!
なるほど、ポケモンっぽい……と、言っても自分、ポケモンやったことないので外から見た印象が似ている、と言うだけの事なのですが。
今はもう大人になってても、子供の頃からポケモンやってて今も親しんでいる、という人は珍しくないんでしょうねえ。自分の世代だと、ポケモンというと小学生が遊ぶものでわざわざ自分たちがやるもんじゃなかったからなあ。あ、勿論初代のゲームボーイ版の話ですよ? それ以降となると、もうさっぱりわからない!
とは言え、ポケモンがあれこれとゲットしたポケモンを入れ替えながら戦う、というくらいは知っている。対して、本作は一人につき1モンスターしか扱えない、と言う事なのでなかなか戦術の幅は広がらないんだろうなあ。一匹しか扱えないなら、そのモンスターの格でトレーナーの評価がある程度定まってしまう、というのも致し方ないのかと。
タイトルはできそこない、となっているけれど、単に世間的評価の低いスライムを扱っている、というだけで主人公のトレーナーとしての実力はすこぶる高い。努力し研鑽を積んで、単にスペックをあげるのではなく、自分の扱うモンスターの特徴をよく掴み、長所を取り上げ、戦いかたの幅を広げ、能力を開発し、と自分たちの限界を規定せず、自分たちを高め続ける姿勢は、ストイックですらある。最弱のスライムであることで上級モンスターを僻むでもなく、見返してやるという憤懣を蓄えているわけでもない。ただ、自分たちを高めることに一心不乱なのだ。
でも、実際を見ずに不当に低く評価されてしまうこと、最初から決められた枠内で物事を判断されてしまうことに対しては、やはり溜め込んでいるものがあるようで、時折激しく反発心を垣間見せる。

でもねえ、このレインって固定観念に対して憤ってみせるくせに、自分もやっぱり自分たちをバカにしている連中と同じく固定観念に縛られてるんですよね。エルニアたち女の子たちが自分に向ける感情に対して、まったく考慮もせず自分の観念に拘って一顧だにもしてあげないあの態度って、レインをバカにしていた連中と同根なんですよね。結局、同じ穴のムジナじゃないか、とちょっとがっかりしてしまった。
最弱のモンスターが最強のドラゴンを倒す、とはいっても、あくまで世間的評価ではジャイアントキリングに見えるだけで、実際の実力を発揮すれば勝てる、というくらいに普通にレインとペンペンが強いんですよねえ。それに、バトルみてるとわりと無駄な行動や攻撃が多いような。一手一手にすべて意味がある濃厚な戦術、というわけでもないですし。
エルニアも、なんか面倒くさいばかりで、その面倒臭さに面白みがあるタイプのヒロインじゃないですしねえ。対ドラゴン戦も、最初殺す気で来ていたはずなのに、戦い終わったあとにあんなに物分かりよくされてしまうと拍子抜け、というかなんというか。
どうも折々に触れて締まりがない気が抜けてしまう場面があって、もうちょっと起伏と締りのある展開が欲しかったかなあ、と。

天壌穿つ神魔の剣 3 3   

天壌穿つ神魔の剣 3 (GA文庫)

【天壌穿つ神魔の剣 3】 高木幸一/狐印 GA文庫

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【残りの欠片がすべて、こちらに向かってきています】
深夜、喋る剣ルガイアからもたらされた情報に驚いたアークだったが、その背後にある国家レベルの組織の暗躍にも気づくことができた。そして欠片を身に宿したリリアを守るため、アークはある決意をする。

やがて、ルガイアの失われた過去の記憶が明らかになる中、アークは黒髪の女性と出会う。
「お前は……」
「ありがとうございました。アーク・リガード。……さよなら」

ルガイアを巡る世界の危機と対峙する時、神魔の剣が今、目覚める!
高木幸一×狐印が贈る王道ロマンティック・ファンタジー第3弾!
わははは、全部オマエが持ってくんかーい!
元々現代を舞台に青春恋愛小説をメインに書いてきた作者だけあって、ファンタジーでありながら年頃の男女らしい恋愛色を強く感じさせる作品だったのだけれど、最後の最後でこれ、挑戦的な設定で挑んできましたよね。このルガイアの境遇って恋愛小説ならどんと来い、なポディションなんですけれど、ハーレムものに親しんだ読者によっては拒否反応を示すものなのかもしれません。私は、非常にそそられましたけれどね。ガンガン攻めたアークは、肝の据わったいい男ですよ。ごちゃごちゃ抜かさず、惚れた女を振り向かせるために一心不乱に突き進める男というのは、やっぱりイイです。その代わり、と言いましょうか割を食ったのがリリアたち三人娘でもあるんですが。
紆余曲折あって、ついに男のために命賭けれるくらい惚れぬいてしまった自分を認め、それを踏まえてよしやったるぜー、と気合を入れなおしていたら、その男に突然大本命登場である。これってなかなか大ショックですよ。自分たちが夢中になってる男が、突然現れた女に夢中になってるわけですからね。しかも、若干振られ気味だしw
なんじゃそりゃー、となるところを状況の緊迫化と合わせて、ガンガン行こうぜ、と猪突して勢い良く前進していけるあたりが、リリアたちの良い所なのか、恋する乙女の恐ろしいところなのか、まあ明るい前向きさは気持ち的にも助かります。アークも後ろから足を引っ張られずに、むしろ背中を蹴飛ばされた感もあり、背後を気にせずルガイアの元に行けたのは幸いでもあり、これが青春恋愛小説ではなく冒険ファンタジーであった証左なのかもしれません。恋愛小説だと、もうちょっとドロドロ縺れた気もしますし。
しかし、この巻まで剣のシルエットと音声のみで人型を表さなかったルガイアがメインヒロイン掻っ攫っていくとはさすがに思わなかったなあ。話の流れ的に、心臓にかけらを埋め込まれたリリアがそれっぽかったですし、ルガイアは女性人格ということはわかっていたものの、打ち解けてるとは必ずしも言いがたかったですし、相棒でありながら呪いをかけてきた相手、という事でどこか警戒を置かなければならない相手、という印象がつきまとっていましたし。
まさか、アークの方がこれだけベタぼれだったとは思わなんだ。
そして、頑なだったルガイアがついに振り向いた途端、尋常でないくらい甘い雰囲気になってしまったのにはどっひゃーってなもんでした。あかん、つれない女性が全力で甘えだしたときの凶悪さはやはり並々ならぬものがあった!
一番の大問題だったリリアの心臓問題が拍子抜けするほどあっさり解決してしまったことからも、おそらく内容をかなり捲いて完結まで持って行ったのでしょうけれど、このくらいでまとめるのでよかったのかなあ。
ぶっちゃけ、ファンタジー要素は置いておいて、このキャラたちで真っ当に駆け引きしながら恋愛小説してくれたら、それはそれで読みたくもあるのですけれど。やはり、この作者さんはそっちの話で読みたいなあ。

シリーズ感想

天壌穿つ神魔の剣 3   

【Amazon.co.jp限定】天壌穿つ神魔の剣 書き下ろし4PリーフレットSS付き (GA文庫)

【天壌穿つ神魔の剣】 高木幸一/狐印  GA文庫

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呪われた最強魔剣士 × 純情天才神術士
喋る剣、ルガイアと旅する魔剣士アークが恋を夢見る神術士リリアと出会って、不死竜退治へ――。
王道ロマンティック・ファンタジー!


「私の欠片を集めてください」
千魔斬《サウザンド》と呼ばれる凄腕の傭兵、魔剣士アークは、言葉を話す傷だらけの剣、ルガイアに「余命五年」の呪いを受け、【ルガイアの欠片】を探す旅を続けていた。ある日、彼はマナラン王国から、不死の力がある目を持つと言われる「三眼竜《スリーアイズ》」討伐の依頼を受ける。しかし、王の推薦で、旅の同行者になった神術士の少女、リリアの体内には、ルガイアの欠片のひとつが眠っていた……。
「わ、私をいい女だと言うなら……キミがなんとかしてよっ! ! 」
高木幸一×狐印が贈る、呪われた魔剣士と、恋に不器用な神術士のロマンティック・ファンタジー開幕!
【俺はまだ恋に落ちていない】や【放課後四重奏】で思春期の少年少女の純真な恋模様を描いてきた青春小説の雄、高木幸一の最新作は、まさかのファンタジー。この業界にあってはジャンルの変更というのは珍しくも何ともないんだけれど、これだけガチンコの、内面描写と想いのぶつけ合いをメインに描いてきた青春小説畑の人がファンタジー書くとなると、どうなるのかやっぱり興味深くはあったんですが……いやこれはなるほど、面白いなあ。
何というかね、リリアとかヒロインの女の子たちのキャラクターの造形が微妙に違うんですよ、普通のファンタジーと。ロジックが異なっている、とでも言うのか。キャラクターがすごく普通の女子高生っぽいんですよ。異能学園モノに出てくるような女子高生とかでもなく。
まあ、これまで作者が描いてきた青春小説のヒロインの、あのピチピチと肌も心も弾けてるような女子高生像がそのままファンタジーになっても変わってなかった、というだけの事なのかもしれないのですけれど、何気にこの手の言動のロジックが違うヒロインのキャラクターは、ファンタジーではお目にかからないので、妙な新鮮さがあるんですよね。
これなら、たとえ舞台がファンタジーでもガッツリ恋愛モノにしてしまってもいいんじゃなかろうか、と思えて来るくらい。とはいえ、舞台設定もキッチリしっかり整えてきているので、ファンタジーものとしても全く遜色なく話は進められそうなのですけれど、その呪われた剣というのも、余命があまり残されていない、というのもひっくり返すともろに恋愛劇の種になりそうな要素にもなってるんですよねえ、これ。
剣は剣で、後半アークに女を目覚めさせられてしまったせいか、一気に「私ヒロインです!」と言わんばかりの存在感を示しだしてきやがりましたし……女性としてのビジュアル、まったく出てないのにも関わらずw
インテリジェンス・ソードという意思のある剣、という類は決して珍しくもないし、それが女性人格というのもよくある話なんだけれど、その場合だと往々にして人化出来る設定だったり、少なくとも女性としての姿を投影出来たりするものなのですけれど、この呪われた剣ときたら一切人としての姿を見せないんですよね。お陰で、女性人格なのかも後半まで不明だったくらいで。
しかし、一度女性としての自覚が芽生え、アークに対して単なる持ち主、宿主という以上の想いが生まれ始めている事に、アークに気付かされた途端にヒロインとして、それも恋愛模様に強烈な楔を打ち込むような位置取りで、存在感を示し始めたわけです。なるほど、ライトノベルには挿絵はとても重要だと私も強く思う所なのですが、無ければ無いでそれは構わないと言わしめるだけのキャラ、ヒロインも在るっちゃ在るのが、この剣を見てると頷けるものがあるというもの。まあ、このケースだと、いざ人化した時のインパクトのために「貯め」ているとも言えるのかもしれませんが。

這いよれ! ニャル子さん 123   

這いよれ! ニャル子さん 12 (GA文庫)

【這いよれ! ニャル子さん 12】 逢空万太/狐印 GA文庫

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真尋さん……だ・い・す・き・です!

真尋さんの方から、私と二人だけでお出かけの提案とかあり得るんですか……!?
真尋の元へニャル子達がやって来てからもうすぐひと月ほど。過密な日々に体感的には四年くらい経ったような気がしていた。せわしない日々がすっかり当たり前の日常となり、結局この不思議な関係もずっと続くのだと考えていた矢先、珠緒がとある提案をしてくる。自分も全力で応援するのでニャル子との仲をもっと進展させるべき! と言うのだ。なかなか踏ん切りの付かない真尋だったが、真剣に応援してくれる珠緒に背を押され、一念発起してニャル子とのデートに臨む。
しかし、その時の真尋は知る由もなかった。この後に、思いがけないSAN値ピンチな事態が待ち受けている事に……!!
宇宙邪神混沌(ラヴ)コメディ第12巻!
体感的には真尋さん、すごく粘って這い寄る混沌の脅威をはねのけていたように感じていたのだけれど、具体的にはなかなかデレない難物だったはずなんだけれど、実際の時間経過を見ると、わずか一ヶ月と経たずにニャル子にメロメロにされてしまった超チョロいさんなんですよね。なんという時間のパラドックス。
それはそれとして、なんと突然のニャル子さん終了のお知らせ。というか、真尋さん終了のお知らせ。ついに真尋さんのSAN値が尽き果て、正気を逸してしまい這い寄る混沌の魔の手に堕ちてしまった、というハッピーバッドエンド。ニャルラトホテプに食われたって、もう物語的にはバッドエンドだよね。
……って、ほんとに食われたーー!! 性的に食われたーーー!! 自重しろ、この混沌生物。まったく自重しやがらなかった。これはあかん、この調子だと駄ルキリーの方も近々マジで食われるな、これ。
何だかんだと結局身を引く決意をシて応援する側に回ってしまった珠緒。イイ子すぎて、割って入るような無粋な真似はやっぱりしなかったか。この娘の場合は、ほんとにニャル子と真尋のカップルを見ているのが好き、という感じがたしかに漂ってましたからね。一方で、クー子は自重しないだろう。かなり真尋に対して本気になってなりふり構わなくなってるのは間違いないし。結局、まったくニャル子はクー子に歩み寄りを見せなかったのは苦笑せざるをえないのですけれど。そのうち絆されるか、と穿ってたんだけれど、鉄壁でしたね、ニャル子。
だからこそ、記憶喪失なんてネタがなければ、クー子にもてあそばれるニャル子、なんて貴重な構図はお目にかかれなかったのでしょうけれど。眼福。
それはそれとして、図らずも押してダメなら引いてみな、という形になってしまったんですよね、今回の事件。ただでさえ陥落しかけてて、ガチでニャル子をデートに誘ってしまうようなSAN値が欠乏しきった狂気に冒された行動をとっていた真尋少年が、このタイミングでニャル子によそよそしくされる、なんて事に耐えられるはずがなく……この悪魔的なタイミングは、それこそ這い寄る混沌の悪意を感じますわー。ニャル子じゃない、それ以外の這いよる混沌の魔の手を。なんか、全宇宙規模、パラレルワールド、全フィクション網羅した偏在があるみたいだし。ニャルラトホテプ星人とか、わりとぶっちゃってますよね。ニャル滝もニャルラのはずなのに。
ってか、あの全ニャルラトホテプ入場、ネタはいいのか!? もろに他作品なんですが。イラストまで全ニャルラトホテプ勢揃いで描いちゃってるしw
もうこれは行き着くところまで行き着いた究極のパロネタを、最後の最後に引っ張ってきた、ということなのか。

これで終わり、というのは何とも変な気分なんだけれど、真尋少年の正気が失われてしまった以上、もうあかんよなあ。終わるしかないよなあ。というわけで、ゲームオーバー、ジエンド。
でも、平然と新しいシリーズが始まっても図々しく顔出してキそうな面々ばかりなので、あんまり寂しいという気持ちは抱かずに済みそうです。なんにせよ、終わった終わった、お疲れ様〜
シリーズ感想

這いよれ! ニャル子さん 113   

這いよれ! ニャル子さん 11 (GA文庫)

【這いよれ! ニャル子さん 11】 逢空万太/狐印 GA文庫


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さよならニャル子さん。――からの!?

真尋が珠緒とついにデート!?

「お前、魔法少女になれ」
ある日、残酷無惨混沌絵巻のような戦い方ではなく、
見る人に夢と希望を与えるようなものにならないかと真尋がニャル子に提案したのは
「ニャル子魔法少女化計画」であった。
一見してそれは、うまく行くように思えたのだが――
そしてまたある日、ニャル子の下に届いた一通のメール。
それは意外な事態を知らせるもので……。

――そんな風に、相変わらず騒がしい真尋の日常だが、
さらに去って行ったはずのイス香の呼びかけで、
なんと珠緒とケーキを食べに行くことになったりして……!?
GAマガジン掲載の2編も収録した宇宙邪神混沌コメディ第11巻!
まあ待ってください、真尋さん。普通は変身ヒーローだって、敵をミート的な意味でぐちゃぐちゃにしたり、グロい倒し方をするわけではないんですよ。むしろ、魔法少女の方がグロかったり、敵に対して容赦なく暴力的だったりするケースが多いような気がするので、ニャル子を魔法少女にして精神的に落ち着かせようという試みは、平成の世ではむしろ逆効果。真尋さんが想定している魔法少女は、いわゆる黎明期の魔法少女であって、昨今の戦闘型魔法少女では余計悪化するばかりです。
そんな感じで真尋さんが無駄な努力をする【優しい敵の仕留め方】。タイトルコールは【やさしい竜の殺し方】のパロになるのかな。基本的に真尋さんは何をやっても無駄なので、つまり毎度のことのような気がするものの、積極的にニャル子の行状を改革していこうという前向きな思考になったのは、それだけ今後もニャル子と付き合っていこうという心持ちになったのだと思うと何気に感慨深い。

さて、真尋さんの回想という形で展開される今回の短編2編と中編1編の11巻ですが、巻数が二桁超えたにも関わらず、作中時間は驚きのまだ三週間。たった三週間(笑
この人達、ほぼ一日も休まずイベントこなしてるんですよね。僅かな間隙も、こうやって短編で埋めてしまっているのだから、本当に何もない平穏な一日って、こいつらには存在しないんじゃないだろうか。
しかし、バレンタインや誕生日とか文化祭などといった季節イベントに全く頼っていないという点は、この手のコメディとしては特筆すべき点かもしれない。

【さよならニャル子さん】
一応、ニャル子たちが地球に留まる言い訳として利用されていた蕃神が予定期日を大幅にまくって完成してしまい、ニャル子たちが任期満了で帰還しなく成りかねない大ピンチ。という話だったんだが、ニャル子たちの場合結局なんだかんだと理由をつけて地球に居残ることが確実なので、特に緊張感もなく真尋さんも何を焦っているんだか、というお話。むしろ、ニャル子たちの方が焦っていたのが違和感があるくらい。お前ら、そんなん気にしねえでしょうに。

【不器用じゃなきゃ恋はできない】
真尋さんは罪作り、というお話。イス香の煽りと支援があったとはいえ、珠緒はとっくに諦めていたのを考えを覆してしまったのは真尋の思わせぶりな態度のせいだよなあ。
さらに言うと、邪神系宇宙人たちの暴虐に徹底的に反逆しているようでいて、真尋さん案外流されるタイプであることが、今回の一件でなんだかんだとイス香の言うとおりに珠緒をデートに誘ってしまったあたりに如実に現れているような気がします。

【ELDER GOD SPEED LOVE】
けっこう色々と巻き込まれていたにも関わらず、ニャル子たちの正体についてはさっぱり知らないままだった珠緒さんが、ついに全部知ってしまい、名実ともにこの戯けたラブコメに参戦するというお話。
ハス太が……まあ最初からこいつは色物だったんだけれど、昨今ではちゃんと男の子としてルーヒーと実質お付き合いを始めてしまい、真尋さんのヒロイン役からは脱退してしまったので、最近ではほとんどニャル子とクー子の寡占状態だったんですよね。アト子についてはやや特殊な立ち位置で、むしろ煽り役に回っていることを鑑みると、珠緒の参戦というのはなかなか大きな一石を投じる形になるのではないだろうか。
さりげに、真尋のお母さん、もう誰でもいい、って感じでこの人も煽るなあ。

シリーズ感想

這いよれ! ニャル子さん 10 3   

這いよれ! ニャル子さん 10 (GA文庫)

【這いよれ! ニャル子さん 10】 

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「なっ!? あなた……あ、アト子ちゃん! ?」
ニャル子達を取り戻し、非日常的ながらもいまとなってはすっかりお馴染みとなった日々を真尋は取り戻した。
学校へ行って、帰りにふざけ合って……そんな日常だ。
しかし、学校帰り、なんとニャル子達の幼なじみアト子が訪ねてきたのだが……。


ニャル子が真尋のベッドに潜り込み、クー子に嫉妬の炎で焼き殺されそうになる――八坂家はいつものように朝から大SAN事!
歴史は修復され、ニャル子達のいる日常が戻った。ありえない非日常こそ、いまは自分の日常である――そう自覚した真尋だ。
そんな矢先、焼失していた地球拠点の修復が終了したとの連絡が入った。
確認へ行くべきと提案する真尋と、後回しにしようとするニャル子達。そんなやりとりのさなか知らぬ声がかかり――
「アトラク=ナクア星人、銀アト子と申します……どうぞ、よしなに」
ニャル子の幼なじみ、アト子が地球にやって来て――! ?
宇宙邪神混沌コメディ第10巻!
ニャル子さんも、長じてついにシリーズも二桁。にも関わらず作中時間はまだ三週間を過ぎたくらいなんですよね〜〜。一ヶ月経ってないのかよ!!(笑
幾らなんでも密度の濃すぎる時間を過ごしている真尋さんである。だいたい、事件と事件のスパンが短すぎるんですよ、息つく暇もないじゃないか。作品を読んでいる限りだと、真尋さんが段々とニャル子たちと暮らす状況に愛着を憶えていく過程に違和感を覚えないんだけれど、距離をおいて時間経過だけを基準にして俯瞰視すると、真尋さん馴染んで順応して魅了されて墜とされるの早すぎ! となってしまう時間のマジック。読んでる方からすると、難攻不落だった真尋さんが徐々に陥落していく様は感慨深いものだったのだが。
今となっては、完全にニャル子にデレデレっじゃないですか。ニャル子そっちのけで。勝手に真尋さんが乙女時空に突入しています。結果として一ヶ月かけずに鉄血真尋を実質落としてるんだから、ニャル子の落し神としての実力は並大抵のものではないことが伺える。流石は這い寄る混沌というべきか。
さて、この二桁到達を記念してかわかりませんが、今まで存在だけは匂わしつつ、何故か先にフラッシュアニメの方にレギュラー出演していらっしゃったアトラク=ナクア星人のアト子が本編に進出してくることに。
って、なんでアト子だけ名字があるんだよ! しかも、しかもよりによって「銀」と書いて「シロガネ」と読む、である。不朽の名作【アトラク=ナクア】を知っている人ならば、思わず「銀」かよ! と叫んでしまうところだ。BGMは勿論「Going On」である。姉様! 姉様!!
まああちらの姉様と違って、こちらのアト子さんは比較的まともな人である。少なくとも、表面上の受け答えに関しては今までの宇宙人の中ではとても常識的で温厚篤実な人物でした。と見せかけて実は黒幕上等で裏表の激しい性格でした! という事も幸いにして無く……何気に極端な変態でないと発言権がどんどんなくなってしまうというこのシリーズの実情を体現してしまったハス太のように自己主張が薄くなってしまうこともなく……ハス太の出番の薄さについてはセルフ突っ込みされてましたがな。ニャル子とクー子のツートップ相手にハス太みたいな普通に良い子は対抗できんよなあ、これ。
ニャル子の親友だけあって小気味の良い食わせ者、といった風味のアト子さんは、その点イイ性格を見せてキリキリと食い込んできてくれそう……と、安心していたら本性がアレだったよ(笑
これは生々しい意味で酷いw
いや、ルーヒーにちょっかい掛けた時点でまさかとは思ってたけれど、露骨にこんな悪趣味だったとは。なんという昼ドラ体質(苦笑
これはある意味、LOVE寄せが進んでるということなのかもしれませんけれど。アト子のあの性分は、ラブコメが進めば進むほど活きて来るものですし。
事件はいつものように、本気でアンブッシュした伏線を引っ張りこんでのちゃぶ台返しのズッコケオチ。あのどうでもいいところから引っ張ってくる伏線は、解っているのにどうでも良すぎて引っかからないんだよなあw

シリーズ感想

這いよれ!ニャル子さん 9 3   

這いよれ!ニャル子さん 9 (GA文庫)

【這いよれ!ニャル子さん 9】 逢空万太/狐印 GA文庫

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ニャル子が……消えた!?
八坂家でのたわいないやりとり、学校帰りのゲームセンター。
ニャル子達と過ごす日々があたりまえになったそんなある日、真尋が思いもしなかった事態が訪れた――。
それはニャル子のいない日常。

「さあ、いつか想い出になる物語を激写しましょう!」
学校帰りのゲームセンター。真尋は成りゆきでニャル子とプリントシールを撮影する羽目に。
「真尋さん、携帯電話は?」「ん?あるけど」「――隙ありゃあっ!」
ニャル子は電光石火で携帯電話を奪うと、二人で写ったシールをそこへ貼り付けた。
真尋は慌てて剥がそうとするも、シールは剥がれない!
――あいかわらずのメチャクチャな邪神達との日々。
色々思うことはあるものの、それを日常として受け入れ始めている真尋であった。
だがしかし、それが突如消え失せる事態になって……!?
宇宙邪神混沌コメディ第9巻!
あーーー、つまりあれですか。ニャル子やくー子が押しかけドタバタ騒がしい、この真尋さんの平穏とは程遠い頭の痛い日々が現出した原因にして元凶となったのって、概ね真尋さんのせいだった、ということなのね。
自業自得じゃん!!
ニャル子が地球のエンタメにハマったのも、真尋さんに一目惚れしたのも、クー子がニャル子好きの変態になったのも、そのくせ真尋さんにもフラグ立てまくってるのも、ハス太くんがいけない道に片足突っ込んでしまったのも、シャンタっくんが愛玩動物とかしてしまったのも、本当に今に至る概ね全てが真尋さん自身が選んだ結果だというのなら、これ以降現状を嘆くのは許されませんよ、真尋さんw
まさに全部、貴方が仕組み構築した関係性なのですから。
そもそも、ニャル子のあの容姿からして、真尋さんの要望だったというのなら、さり気なく光ゲンジ計画でした、と言われても仕方ないですよw
鉄壁の真尋さんも、いい加減デレっデレになってきたなあ。ニャル子が初恋の人の話をした時の、真実を何も知らない時の微妙に嫉妬しまくった反応といい、全部を知ってしまった時の照れっぷりといい、もう殆ど詰んでます。問題は、肝心のニャル子が自分がいつの間にか王手をかけている事に気づいていないあたりですか。ニブチンめw
今回の「それが伏線だったのか!」クイズの答えは、ついに巻を遡っての回収騒ぎに。ってか、ついに二桁に片足を突っ込もうという9巻にもなって、今更第一巻の話を引っ張りだしてきて真尋さんは実は◯◯だったのだ! とか言われてもそんなん伏線として気づくかーー!w 本当に手を変え品を変え、伏線を引っ張ってくる作品である。もはやそろそろ手段を選ばなくなってきているが、ニャル子さんの定番ネタだからなあ、「伏線」は。
しかし、今回やたらとイス香が珠緒を押してたわりに、肝心の珠緒は殆ど関わってこなかったのだが、これも何かの伏線なんだろうか、などと考えるだけ無駄なのであったw

シリーズ感想

這いよれ!ニャル子さん 83   

這いよれ!ニャル子さん 8 (GA文庫)

【這いよれ!ニャル子さん 8】 逢空万太/狐印 GA文庫

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 宇宙ゲーム戦争に敗れたルーヒーは、今はたこやき屋台を営んでいた。
 ニャル子達一行も時折購入しに来てくれるのだが、その中にはハスター星人のハス太少年もいた。

 小柄で少女のような面差しの彼は敵対していたゲーム会社統括者の息子。
 種族的にも因縁のある二人は、言わば犬猿の仲の筈だが彼女はどうにもこの少年のことが気に掛かっていた。
 そこで一計を案じ――「教育実習生のルーヒー・ジストーンよ」「なぁにやってんだよルゥゥゥゥヒィィィっ!」
 なんと、真尋たちの学校へ教師としてやってきたのだ。事態はもちろんそれだけで済むはずもなく――。

 宇宙邪神混沌コメディ第8巻!!
ルーヒーさん、今回マジでメインヒロインじゃないか! とは言え、お相手は真尋くんじゃなくて、ショタっ子ハス太くんの方なのですが。前回の短篇集でやり手だけれど優しいお姉さんと懐いているショタっ子という形で仲良くなったところから、一気に異性としていい雰囲気に。
毎度メインヒロインとは名ばかりでネタキャラとして活躍する事が多くなってしまっているニャル子はまあいつも通りとして、今回ばかりは主人公の真尋くんも賑やかし、とまでは言わなくてもルーヒーとハス太を見守る応援団。ルーヒーさんは宇宙人とは言いつつも、ニャル子やクー子に比べると並外れた常識人なだけに、真尋とはシンパシーが通じ合いそうなものだけれど……意外と咬み合わないんですよね、この二人。これも真尋が超ツッコミ属性であるのに、ルーヒーが健全すぎて突っ込む所が殆どない、というのもあるんだろうけど。ニャル子やクー子相手だと息をするようにボケてふざけるので、いくらでも突っ込めるんですけどね。やっぱり何だかんだと真尋とニャル子、クー子はお似合いなんじゃないかと思えてきたぞ。
普段はおとなしくはにかみ屋で内気なハス太くんですが、なんだよ一端の男の子してたじゃないか。大切なルーヒーさんの為に、自分の意志と力で覚醒して彼女を守った少年は、いつもの庇護され愛されるだけの可愛い男の子ではなく、年上だろうと自分よりよっぽどしっかりしてようと、きっちり女の人を守れる一人の立派な男でした。
ルーヒーさん、もうその子引きとって自分の家に連れて返っちゃってください。もう、お二人ともお幸せに〜、でいいんじゃない? これ。

しかし、真尋くん、もう宇宙に出ることためらわなくなったなあ。慣れって恐ろしい。実に恐ろしいw

シリーズ感想

スノウピー 3.スノウピー、恋愛する4   

スノウピー3  スノウピー、恋愛する (富士見ファンタジア文庫)

【スノウピー 3.スノウピー、恋愛する】 山田有/狐印 富士見ファンタジア文庫

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恋っていったい何?――"僕"たちが見つけた答えとは!?
「恋のことはよく知らないの。恋は人間だけがするものなの」最近、スノウピーは「恋」を研究中。真面目な可香谷さんがときどき暴走するのは、恋をしてるから!? 恋とエッチなふるまいをスノウピーが全力でみつめる
不思議なことに話の方向性はまったく異なるにも関わらず、【スノウピー】ってどことなく【ニャル子さん】シリーズと世界のカタチが意外と似ている気がする。コズミックな所とか。だから何? と言われるといや別に何でもないのですが。ちょっと思っただけ。
さて、今度のスノウピーの観察対象は「恋」だそうです。「恋とはどんなものかしら」というスノウピーの台詞、なんか聞き覚えがあるなあと思ったら、そうだ、野梨原花南さんの「ちょーシリーズ」にそういうタイトルがあったっけ。【ちょー恋とはどんなものかしら】。
あれもまあニコニコニヤニヤと笑えるおはなしでしたけれど、こちらも「恋」に興味をいだいたスノウピーの心境を考えると、思わず相好が崩れてしまう。彼女の研究テーマである人間観察において、今回の「恋」という要素は確かに必須のものかもしれないけれど、これまでのどこか学術的な好奇心に基づいた研究題材選びと違って、今回は好奇心よりもどこか切迫したものを感じたのは気のせいだろうか。
論理的ではない感情の発露。理性的な人物が理性的でない行動に出てしまう不思議な気持ち。スノウピーは可香谷が時々起こすそんな突拍子も無い行動を、「恋」だと断定して調査を開始する。つまり、スノウピーはだいたい「恋」というものがどういうものかは理解はしているのだ。可香谷が恋していると思い至る程度には。ただ、スノウピーは自分が理解し認識している以上の深い「恋」の真理を知ろうと躍起になっていく。恋と愛との違いとは? 恋することとエッチな気分になることはイコールじゃないの? 映画のラブシーンを凝視し、書物の恋愛話を開き、他人が見せる不可解な行動を目にすれば積極的に質問を投げかける。「それは恋?」。
その行動は、「恋」という今まで知らなかった、感じたことのなかった、持ったことのなかった感情を知りたい為の熱心さには見えない。むしろ、自分の中に生じつつある未知の感情の正体を確かめたい、あやふやでもやもやとしてはっきりと形になってくれないものの正体を見極めたい、とでもいうような切実さを感じるのだ。いやそれよりももっと純真に、まっさらに、恋という理屈を超えたものを感じてみたいと思っているようだ。
単純に「僕」をスノウピーが好き、という話でもないんですよね。この二人の関係って作中でも彼が語っているように、どこか不可分なところがあるんですよね。相似というか一心同体というか。比翼の鳥、というのが一番近いか。この点、むしろ可香谷さんの方が、「僕」とちゃんと他人である為に、きっちり恋愛感情が成立している感じがあるんですよね。お互いに相手と意思疎通出来ていないが故に、相手の心の中を覗きたい、知りたいという欲求が働いて、わからないからこそ相手の気持ちが見えなくて不安に思い、嫉妬にかられ、余計に心を求めてしまう、というスパイラルが発生している。それが高じて、今や可香谷さんと「僕」とは完全に「特別な関係」へと至っているのだ。何しろ、同居している兄が出張で家をあけるや、泊り込みで家事のお世話をしに来てくれる女の子が特別でなくて何なのだろう。
それぞれに大切で掛け替えのないパートナーであるスノウピーと可香谷さん。わりと厳しくてあまり甘やかしてくれない二人なのですけれど、今回、二人は「僕」を褒めてくれる。自分に自信を持てないながら、それでも手探りで頑張ってきた彼の在り方を、これまでの生き方を、二人は全部肯定してくれるのだ。素敵で優しいあなたが自分をもっと好きになれるように、と願うようにして。
真っ白な処女雪のように汚れなく、フワフワとした羽毛のふとんのようにあったかな、人と人の繋がりをこの物語は感じさせてくれる。胸にたまる澱を吹き流してくれるような風を感じる。
世界はただそこにあるだけでとても綺麗なのだと、スノウピーの在るが儘を見つめる目が教えてくれた気がした。

2巻感想

這いよれ!ニャル子さん 73   

這いよれ!ニャル子さん 7 (GA文庫)

【這いよれ!ニャル子さん 7】 逢空万太/狐印 GA文庫

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 クー音が地球から消え失せた日の深夜、ニャル子は報告書を作成していた。
 真尋のそばに居るためには、手を抜くことなんか出来ない。そうして作業を進めながら、ニャル子は地球へ来てからの様々な事件を思い出していた。

 必死に真尋の好感度を上げようと頑張ったこと――。
 神の代わりに地球の神々を守る為、幻夢境へ行ったこと――。
 真尋さんがまさかの裸幼女を連れ込んで(怒)いたりしたこと――等々。

 しかし肝心の真尋のニャル子への好感度は上がるどころか、むしろ下がる一方。しかも最近は余計なライバルまで増えてきてしまったようで!?
 そんなニャル子の奮闘と真尋への愛が溢れた報告書、ぜひご堪能ください。
ニャル子さんはさやか派だったのねw
というわけで、ニャル子さんも短篇集の時期なのである。相変わらず、1ページに三つはネタがありそうな勢いのネタの物量作戦(さすがに実際はもっと少ない。あくまでイメージです)。しかもネタが濃すぎて、殆どわからん!! 元ネタを追求しているwikiを覗いてみたが、言われてみてようやく分かるネタよりも、言われてもわからないネタの方がはるかに多い。かといって、わからないから面白くないってわけじゃないんですよね。もうノリやら雰囲気が楽しくて仕方ない。そりゃ、あれだけ濃いネタに的確にツッコミを入れてくれる真尋は手放せないよなあ。ボケた瞬間、切れ味たっぷりのツッコミが綺麗に返ってくるその快感たるや、ニャル子が中毒になるのも宜なる哉。
しかし、ちょうど時系列を遡って描かれる短編だけに、真尋のニャル子へのデレ度の違いが明瞭に把握できて、これ結構ショックですよね。最初の頃って、こんなに冷たかったんだ。いや、そうだよなあ。真尋のツンっぷりはそれこそネタになるくらい熾烈で痛烈だったんですから。それが、今やビックリするくらいニャル子に対してデレてるんだから、最初の頃からすると驚愕の展開なんですよね、これ。ナチュラルにニャル子のこと可愛いとか思っちゃったりしてるんだもんなあ。一時期、本気でニャル子への好感度がマイナス近くにまで低下してた事を考えると、ここ最近の挽回っぷりは神がかってすら居るのだが、肝心のニャル子はいまいちその辺ちゃんとわかってないというか、欲張り過ぎだろうw まあ、クー子がニャル子ラブとか言いながら、さり気無く真尋にも粉かけ始めて、それが本当にいい感じになりかけてきてるお陰で焦ってしまっているのもわかるっちゃわかるのですが、ニャル子が風邪をひいてしまった時、真尋が看病してくれた時なんか本気でイイ雰囲気になってたんだから、どうしてもネタに走ってしまうニャル子の性分が勿体ない。ただ、あの押せ押せの姿勢が何だかんだと当初の冷たい態度を打破して、今の真尋との間に確かな好感度を獲得したのを考えるとあながち間違いではないとも言えるので、判断も難しいところだ。ただ、いつまでも押せ押せのワンパターンだとチャンスを逃してしまいそうでちと心配。
ニャル子、何だかんだと本気で心の底から真尋の事が大好きで大好きでたまらない、という女の子らしい気持ちもあれでちゃんと伝わってくるので、真尋くんには人生いろいろ諦めて貰って、うまく結ばれて欲しいんですよね。クー子もプラスでいいので(笑

驚いたのが、ハス太の方にルーヒーさんとのフラグが立った事ですよ。あの男の子、そのまま真尋に対してアブノーマルな関係を貫くのかと思ってましたが、そうだよなあ、さすがにニャル子とクー子との間に割って入れなくてちょとハブられ気味な所があったので、彼がちゃんと真っ当な恋愛をした方が真尋の可愛い弟分としての立ち位置もしっかりするんじゃないだろうか。

シャンタッ君は最近、アニメの影響もあってあの異形も可愛いと思えるようになってきてしまいました。本当ならキモいだけの外見なのですが、慣れって凄いですよね。もう仕草やら反応やらが愛玩動物として極まっているお陰で、あのキモい外見でも気にする事無く可愛いと思えるようになってきた。別に人間形態になんかならなくていいですよ。シャンタッ君は今のままで充分可愛いです。

シリーズ感想

這いよれ! ニャル子さん 64   

這いよれ!ニャル子さん 6 (GA文庫)

【這いよれ! ニャル子さん 6】 逢空万太/狐印 GA文庫

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 bk1

 いくら言っても八坂家のリビングにゴロゴロ集まっては与太話を繰り広げるニャル子たち。業を煮やした真尋は「自分たちの部屋を造る話はどーなった!?」と、発破をかけた。

 ようやく重い腰を上げたニャル子らは、思い思いに部屋を作り上げたのだが――それは、色々な意味で真尋のSAN値を下げる部屋であった。

 そんな騒動もなんとか落ち着いた矢先、真尋はクー子の様子がおかしいことに気づいた。なんと惑星保護機構から調査官がクー子の仕事振りを確認しにやってくるからだというのだ。しかも、それはクー子の従姉妹で……。

 毎度毎度、宇宙規模でのしょうもなさに定評のある邪神達が繰り広げる混沌コメディー第6巻!


『サイクロンッ!!』
「ジョーカーーッ!」
って、それやりたかっただけだろう!!(爆笑

いくらこの作品において仮面ライダーネタが定番中の定番であるとはいえ、最初、ニャル子たちがトランプの大富豪をやりながら「ジョーカー! ジョーカー!」と連呼している時点で、まさかそっちにネタが飛ぶとはさらさら想像も出来なかったさっ。
ほんっっっとにしょうもないな!! と、普通のドタバタギャグ作品だと、こういうしょうもない一発ネタは当たり前のようにその場限りで使い捨てられるものなんだけれど、ニャル子さんの場合はどう考えても使い捨てと思われた一発ネタが、あとで重要な伏線になっていたり、起死回生に至るためのポイントになっていたりするので、読んでいて些かも油断できないのである、これが。
まあ、ネタが伏線として使われる伏線なんてのは、とてもじゃないが見抜けないので、いずれにせよ「なんでやねん!」と突っ込むしかないんですがね。真尋くんをはじめとした中の人達も、もうメタ的にどれが伏線として機能してもいいように、構えていらっしゃいますし。構えすぎてて、あっさり何事もなくスルーされてしまう展開もあるので、やはり侮れないのですがww

今回、一番驚いたネタはやっぱりあれですよ。
【戦略拠点32098 楽園】。
これ、それなりに古参のラノベ読みでないとわかんないですよww
これは、今は【円環少女】シリーズで有名な、長谷敏司さんのデビュー作。2001年に発刊だから、もう十年近く前になるんですよね。これは文句なしの傑作で、読んだ時は衝撃だったなあ。ちなみにスニーカー文庫ですぜ、おいw

と、相変わらずパロネタに突き進んでいますが、でもどちらかというと今回はそっちは普段に比べると大人しめだった気がする。それよりも、ストーリーと人間関係の再編に重きを置いていたのではないだろうか。
具体的に言うと、真尋くんのデレ期が、ダムが決壊したみたくえらい勢いで進行しつつあるのです!
ライトノベルの主人公でも有数の鉄壁ツンだったはずの真尋さん。最近、徐々に軟化しつつあったのは、彼自身も認めていたところでしたが、今回はほんとに軟化どころの話じゃなく、本当にデレてましたよ。これがデレ期というものかっ!!
そもそもの発端が、クー子の親戚のお姉さんが査察も兼ねて地球を訪れた際に、なんやかんやで真尋とクー子が婚約者の振りをするという展開になってしまったというところ。登場した当時は、ニャル子激ラブ一辺倒で、真尋には見向きもしないどころか恋敵として目の敵にしていたものですが、時代は変わるもので、相変わらずニャル子に性的倒錯&傾倒しまくりながらも、最近真尋に対しても野生動物が懐きだした、みたいな空気になっていて、変態道一直線で少々乙女成分に欠けているニャル子よりも、むしろ邪念がニャル子方向に限定されている分、真尋には可愛らしい女の子の顔を見せるクー子の方がヒロインとしての立場を高めていたのでした。
危うし、ニャル子さん!
自分でも、多少メインヒロイン陥落の危機は自覚していたらしく、これでは「ニャルなんとかさん」呼ばわりされてしまうーーっ、と某メインヒロイン(笑)をディスってやがりましたが(ぉ
と、ただでさえ「え?ヒロイン?」みたいな空気になっていた所に、振って湧いたようなクー子と真尋のラブラブイベントの到来。さらにクー子的にはニャル子が本命でありつつも、真尋の事も結構マジで好き、これはもうハーレムにすれば良くね? みたいなノリで、結構マジに真尋にイチャイチャする始末。真尋は真尋で、らしくもなくクー子にドギマギしているご様子。
ニャル子さん、SAN値下がりまくりである(爆笑
さすがのニャル子も、いつものようにふざけた態度を取る余裕もなく、ドロドロと滾らせるのは嫉妬の怨念。不思議なのが、そうやってマジに欝っていると、ニャル子さん本当に恋する乙女に見えてくるんですよね。いつも軽い調子でマヒロさんラブー、とやっているニャル子だけど、彼女の中ではあれで真尋に対する想いというのは真剣で本気でマジだったのだ、というのが今回の態度ではっきりと伝わってきたのは収穫だった。
特に、ついにストレスが限界突破して、真尋に対して自分のことどう思ってるんですかーーッ、とマジ泣きで問い詰めだした時のニャル子さんは、シリーズ始まって以来の乙女モードだったんじゃないでしょうか。
彼女がギャグやネタじゃなく普通にヒロインとして可愛い、と思う日が来るとは思わなかったww
でも、問い詰められ泣きつかれたときの真尋さんが、また優しいわカッコイイわで、参りましたよ、こっちが惚れるかと思ったわぃw

変態宇宙人たちとの奇妙な生活を楽しいと思うようになり、ニャル子たちとの関係が変わりつつあるのを自覚しだしている真尋さん。でも、その変化を戸惑いながらも好ましいものとして受け入れつつあるようで。それは良かったねえ、とにこやかに思いつつ、同時に早まってるねえ、などとほくそ笑み。なんやかんやと楽しさ面白さは高い位置で安定してますね。
アニメはフラッシュじゃなくて、ちゃんと30分番組でやって欲しかったですけど。いや、三分でも面白さは折り紙つきなのですが。来年、まともなアニメ化、あるのかなあ?

1巻 4巻 5巻感想

スノウピー 2.スノウピー、憤慨する4   

スノウピー2  スノウピー、憤慨する (富士見ファンタジア文庫 や 5-1-2 スノウピー 2)


【スノウピー 2.スノウピー、憤慨する】 山田有/狐印 富士見ファンタジア文庫

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怒って、怒られて人は成長するのです!? 僕だって成長したい!
「十日後に、銭湯に行くわ」と彼女は宣言した。スノウピー。雪の精みたいな女の子。苦手なお湯を、十日間かけて克服するらしい。僕も会話をがんばろう! だけど僕の熱意は女性陣に空回りで!? 女の子って、難しい!

あれ? この主人公くんって名前が無かったっけか。所謂、「僕」で表記され固有名詞が出てこない主人公。とはいえ、意外と固有名詞を教えてくれない主人公のほうが、自己主張の強い個性的な主人公であるケースは多いんですよね。本作も、わりとその傾向が強い。
ヒロインたちも大変魅力的な本作なのですが、主人公くんも負けず劣らず興味深い人材なのである。
彼の特徴を言うなれば、幼い、とするのが一番近いのではないだろうか。幼い、というのはこの場合、純朴で俗世に穢れていない無垢な人間である、という事である。兎に角、捻くれていないんですよね。とても真面目に、自分に対しても他人に対しても真摯に生きようとしている。
彼は、自分が他人の気持ちがわからない、理解することの出来ない欠陥のある人間だと思い込んでいて、それは大まかに置いて正しいのである。彼はどうしても空気を読めないし、他人の気持ちを正確に推し量る事ができない。普通、人は幼い頃からの他人とのコミュニケーションの経験を積み重ねることで、経験則として他人の気持ちを慮る、というスキルを獲得ものなんだけれど、何故か彼はその経験則が欠落してしまっているようなのだ。
でも彼は、少なくともスノウピーと出会い、可香谷ユリと身近に接するようになってからの彼は、自分の持つコミュニケーション能力不全を理由にして、言い訳にして、他人と距離を置いて孤立を深めようとする、言わば楽な道を選ぶことをハッキリと拒絶しているのです。むしろ、積極的に他人の気持ちがわかるような人間になりたい、と彼なりに様々な試行錯誤を重ねながら一生懸命自分以外の他者に近づこうと努力するのです。
勿論、他人の心の動きを察することのできない、理解出来ない彼は失敗を繰り返します。
彼なりに一生懸命考え、自分の身の回りで繰り広げられる様々なコミュニケーションの様子から、彼なりの他人と仲良くなり、心をつなげられる方法を導き出し、実行するのですが、コミュニケーションの本質を理解出来ていない彼は、他者のそれを参考にしてもその表層しか捉えられずに、彼の本来の意図からすると完全にズレてしまったやり方を、正しい方法と勘違いして、他者と心の距離を縮めるどころか、余計に溝を深めてしまうような失敗をしてしまうのです。
トライアンドエラー。本来なら、まだ確固とした人格や人間関係が形成されていない幼少時代に行われるべき試行錯誤を、高校生にもなってからやらなければならないというのは、やはり大変なことであり、傷つくことも多いのです。
それでも、彼はあきらめないんですよね。落ち込み、傷つき、自分に愛想を尽かしそうになりながらも、彼はひたむきに、他人と親しくなりたいという欲求に従います。それは純朴な一途さであり、幼いが故の真っ直ぐさであり、無垢であるが故のよどみない健やかさなのでしょう。そして、それこそが彼を魅力的な人物として成り立たせている。
スノウピーは彼のことを再三、愚かだと評しているけれど、彼はきっと正しい愚者なのでしょうね。スノウピーも、愚かという表現を決して罵倒として使っているわけじゃなく、むしろ彼のことを遠まわしに認める表現として、それを使っているようだし。

そして、彼の心の在り方は幼いけれど、それは彼が精神的にも幼い、という事とはイコールではないのです。彼は、当然のように年頃の若い男の子なのです。
自分以外にはその素顔を見せなかった可香谷さんが、一番親しい友人であるじゅりん君と趣味の一致から意気投合して、急に仲良くなってしまったのを目の当たりにしたとき、彼は普通の善良な人間の在り方として、友人が可香谷さんの事が好きなのなら自分は友達として応援してあげるべきなのだろう、と頭ではそう考えながら、心が何故かその考えにブレーキを掛け、彼は自分の理解不能な心の軋みに混乱し、苦しむことになります。
彼は人の心がわからない欠落した人間かもしれないけれど、同時に人並みの心がちゃんと普通に存在する人間であることが、嫉妬や独占欲という当たり前の人の心を持った男の子であることが、ここで強烈に示されるのである。

トライアンドエラーを繰り返し、繰り返し、何度も失敗し、自分を見失いそうになりながら、でも彼の周りにはとてもたくさんの、彼のことを考えてくれる、想ってくれる人たちがいて、ちゃんと彼に怒ったり、彼のことを心配したり、助けたり、やるべき事を教えてくれたりしてくれるわけです。
そうやって、色々な人達に助けられながら、彼は失敗の中から人の心を知っていく、分かるようになっていく。
そのおはなしは、人が一段一段、階段を登っていく姿は、とても心をあったかくしてくれる物語なのである。

そういえば、スノウピーがこの世界にきてやろうとしていることは、この好奇心の塊のような娘が望んでいるのは、人間観察だったんですよね。そりゃあ、この主人公くんはとびっきりの題材だわ。

そんな主人公くんの周りを賑やかす他の登場人物たちも魅力的なんだわ。スノウピーにしても可香谷さんにしても、これでもかというくらいに心引きつけられるような引力を持っている。
可香谷さんなんて、近年稀に見る純粋無垢なツンデレさんだもんなあ。
不意打ちに私服を誉められて、真っ赤になって慌てふためいて思わず、バカバカと怒りながら
「ばかっ! ありがとう! バカ!!」「ありがとうばか!」
素直なんだか素直じゃないんだか(笑
この娘、照れ屋さんですごくツンツンしてるんですけど、そのツンが並みのツンデレさんと違って、気持ちの誤魔化しや否定、拒絶、にはなってないんですよね。ツンツンしながら、同時にものすごく素直にその時の気持ちを表現しているのです。上述のは一番分かりやすいパターンだったけど、それ以外でもツンツンした態度をとっている時でも、というかそういう時こそその前後や、時にはツンツンしている言動態度の最中に、素直な本音や想いを表に出してるんですよね。
もう、だからか、この娘、可愛くて仕方が無いんだ。

そして、メインヒロインであるところのスノウピー。今回のサブタイトル、「スノウピー、憤慨する」これ考えた人は素晴らしい。今回、スノウピーは憤慨するんですが……うん、憤慨するんですよ。この憤慨するスノウピーが、とんでもないことになってて。もうどうしようかと思いましたよ(笑
この娘も一巻から独特な不思議少女だったんだけど、いやーかわいいわ。ほんと、スノウピーかわいい。
このメインの三人を中心に、スガモさんやじゅりんくん、兄貴やフローン、ヒノリカといった面々で繰り広げられるどこか惚けた独特のテンポの会話、掛け合いが、あーーー楽しかったなあ。
これは、ちょっと癖になりそう。大変、面白かったです。
表紙に可香谷さんを加えた担当さん、グッドジョブ。うん、彼女は人気になって然るべきだよ。

這いよれ! ニャル子さん 53   

這いよれ!ニャル子さん 5 (GA文庫)

【這いよれ! ニャル子さん 5】 逢空万太/狐印 GA文庫

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「真尋さん、今日はどこに寄り道しましょうか!」「―このまま、まっすぐ帰るって選択肢はないのか!?」つかの間の平和な時間。真尋たちは放課後青春ライフを満喫していた。がしかし。ニャル子が受け取った一通のメールによって、その静寂は瞬時に破られたのである。「真尋さん、今すぐにここを発ちましょう。私は、我々は、行かなければならないんです」ニャル子の口調は、有無を言わせない勢いがあった。「ど、どこにだよ?」「―セラエノ図書館です」こうして真尋は、遙か宇宙の果てに旅立つことになったのだが―。這いよるハイテンション混沌コメディ待望の第5巻。

正式にアニメ化も決まり、順風満帆なニャル子さんも、五巻目かぁ。最初は一発ネタの勢いだけのコメディかと思ったりもしたけれど、これがどうして巻を重ねるごとに味わいが出てきてるんですよね。高値安定、読んでて安心してくだらないくだらないと笑える安定感には、既に老舗漫才番組の風格すら出てきているかのよう。今後はどうマンネリ感を処理していくかになるんだろうけれど、今の感じだと何巻続いても、同じように面白く続いていきそうなどっしりとした安定感があるんですよね。勢いだけじゃあこうは行かない。

しかし、このニャル子さんの以前の設定をこれでもかとばかりに無かった事にしていく全力っぷりはなんなんだ? 後付け設定と言ってしまえばそれまでなんだけれど、この作品の場合それまでの設定を忘れてるんじゃなくて、明らかに全部把握していながらわざとちゃぶ台をひっくり返していくこの御乱行(爆笑
ここまで絨毯爆撃にこれまでの設定を次々と無かった事にされていくと、普通は設定と食い違う内容があった場合にそれは違うだろう! と指摘してしまうところを、この作品の場合設定におとなしく沿うような形で内容が綴られた場合の方が「……あれ?」と違和感を感じてしまうレベルにまで、そろそろ到達しようとしている感触があるんだが、大丈夫か? 色々な意味でw
ただ、こういうちゃぶ台返しを際限なく出来るのも、それだけ作品の骨格がしっかりしているからなんでしょうね。本当に適当に好き勝手思うがままに設定覆してたら、無茶苦茶になってしまうはずですし。
一旦、ネタとして消費したものを、さらにひっくり返すことでもう一度ネタとして再利用して、次に繋げるための糧とする。これ、何気にギャグコメディの高等技術じゃないでしょうか。
もちろん、ニャル子の畳み掛けるようなネタふりに、鮮やかにツッコミまくる真尋くんの切れ味たっぷりのツッコミ力あっての、皆のボケなのですが。
いい加減、この作品のキャラたちは真尋くんのツッコミに頼りすぎだよなあ(笑
まあ、尽くに見事にツッコミ入れる真尋くんのキャパは、まだまだ余裕がありそうですが。最近は、ただザクザクと切り刻むだけでなく、ツッコミに愛すらこもるようになってきたからなあw
前回あたりから、ひらすら冷たかった真尋くんの態度に軟化の兆しが見え、ニャル子たちを家族として受け入れちゃってるわけですし。傍若無人に見えたニャル子たちも、あれでけっこう真尋くんに気を使う能力がある事も分かってきたわけで、段々と一緒にいる事が自然になってきてしまい、ギスギスしたところがなくなって、見てるこっちもストレス感じ無くなってきたもんなあ。
ニャル子命のくー子も、なんか妙に真尋くんに懐いてきてるしね。最初は、ニャル子しか眼中になく、真尋は邪魔者扱いだったのが懐かしいくらい。刺々しい対応がなくなったからか、クー子への真尋くんの接し方も柔らかくなったし。というか、今回一番真尋くんに愛でられてたのって
クー子じゃないのか、これ。真尋くん狙いだったら美味しいどころの話じゃないぞ。何気に、クー子満更じゃなさそうだったのが、段々と怪しくなってきたぞ。ニャル子狙いと見せかけて、いつの間にか真尋に優しくされることにハマり出している気がする(笑

定番のパロネタは、毎度のことながら一冊に投入する量じゃないよなあ、という大量っぷり。ジャンルから年代から、恐ろしく多岐に渡っているために、ハッキリ言って全部追いかけるのはかなり難しいんじゃないだろうか。最新のネタはもとより、自分みたいな三十代直撃のネタも多いのがそこはかとなく嬉しい。

オチがひどいのも毎回のことなんだが、なんだかんだとかなりいい具合にオチが決まるので、わりとこのシリーズ、ラストのオチの開陳が楽しみなんですよね。ホントくだらないししょうもないんだが、実際のところ異様に凝ってたりするので。
お後がよろしいようで、という感じでえらくスッキリとした気分で終えれるので、読後感が実はかなり気持ちの良い作品でもあるのでした。
いやもう、ほんとーにしょうもないんですけどね(笑

シリーズ感想

這いよれ! ニャル子さん 43   

這いよれ!ニャル子さん 4 (GA文庫)

【這いよれ! ニャル子さん 4】 逢空万太/狐印 GA文庫


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突っ込み属性の主人公は沢山いますが、ニャル子さんの真尋くんはその中でも特に好きな部類であります。何を況や痒いところまで届く突っ込みが素晴らしい。ニャル子、クー子の大ボケ小ボケに、しょうもない展開の連続に対して、君はツッコミのガンカタ使いか、と言わんばかりの的確かつ絶え間ないツッコミの連撃は、もはや快感すら感じてしまうのです。
そもそもツッコミとは笑いを誘うための技巧であると同時に、観衆の意を汲み取った鋭くえぐるような指摘が痛快さをもたらしてくれるものなんですよね。その意味では、真尋くんのツッコミは痛快そのもの。スパスパと切り刻むカミソリの切れ味である。

そんな、容赦苛責のない処刑人のようなツッコミをニャル子に対して痛撃し続けていた真尋くんに、なんとデレの傾向が……ニャル子に対してデレの傾向が! ニャル子にデレだした!?

なんとーーー!?

いや、実際前までは何の躊躇いもなくザクザクと突き刺していたフォークを、今回は一度も突き刺さなかった。流血沙汰がなかった。母親が帰ってきて、精神的に安定したのもあるのだろうが、明らかにニャル子たちへの手加減が見られるのだ。
真尋くんのニャル子への認識が、フォークをザクザク突き刺して調教しなければ何をしでかすかわからないアホ宇宙人というものから、何をしでかすかわからない無茶苦茶でどうしようもない女の子、という認識への変化が。あんまり変わってないじゃないか、というなかれ。別に宇宙人だからフォークで刺していいとは人類の未来のためにも思わないけれど、確かに以前までには無かった女の子を見る目でニャル子を見てる気配があるんですよね、真尋くんに。

そして、それをきっちり把握し、シメシメと舌舐めずりして図に乗りかけているニャル子さん(苦笑

いや、そこは女の子らしく可愛く振る舞って畳み掛けにいくところだろうに。良くも悪くもボケをかまさないと死んでしまう病が治らないニャル子さん。なぜ敢えて覇道を行くんだ(笑

ただ、今回は多少事情もあってか、普段よりはおとなしいんですよね、ニャル子さん。少なからずそれが真尋くんの症状を進行させてしまった気配もあるんだが。
というのも、旅行から帰ってきた真尋母が、まあ予想通り変人ちっくなところはあったものの、概ねまともな人物だったんですよね。ニャル子たちの存在を素直に受け入れつつ、真尋くんの保護者としてニャル子たちに恐ろしいほど真っ当な掣肘を加えてしまったので、雰囲気的にニャル子たちもいつものようにデタラメ無茶苦茶をなんとなく出来ない空気になっていたというか。
ちゃんとまともに扱われると、わりと大人しくなるべく常識の範囲内で動いてしまうあたり、ニャル子たちの根っこの部分って案外まともなのかもしれないなあ。
と、あり得ない結論にたどり着いてしまったのでありました。

話の方は、いつも通り壮大な前振りにしょうもないオチ、というパターン。なんだが、相変わらずしょうもないオチのくせに、ネタばらしをされると意外と良く凝ってひねって練り上げてあって、だからどうしたといわれればおしまいなのだけれど、妙に悔しいのである。
おかげで、くだらない、と鼻で笑ってすませられないんだよなあ。なんか悔しい。しょうもないのに、やられたー、という気分にさせられて、なんでこんなしょうもないオチにやられたー、なんて思わなきゃならないんだというところから悔しくなる。
けっこう、ドツボにハマっているかも知れない。
本来なら一発ネタで終わりそうな話なのに、四巻まで来て安定しているというのは、何気に凄いよなあ。

今回は流行りの男の娘が出てますけれど、あの属性はけっこう難しいんだなあ、と実感。

這いよれ! ニャル子さん4   

這いよれ! ニャル子さん (GA文庫)

【這いよれ! ニャル子さん】 逢空万太/狐印 GA文庫

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あはははっ、くだらないくだらない(爆笑
いやあ、これは酷い。純粋なクトゥルー神話信者が普通に怒りそうなほどには酷いんじゃないだろうか。全然這ってないじゃないか、にゃる子さん。

神野オキナさんの【うらにわのかみさま 邪神さまにおねがい】も相当だったけど、あれはあれなりにしっかりクトゥルーしてた気もするしなあ。
それに比べて、こっちはクトゥルー神群を、あっさり●●と規定してしまっているあたりが、ちょっとどうなのかと。少なくともコズミックホラー分に関しては最初から期待しない方がいいんじゃないかと。
単に名前だけ借りました、って感じだし。

ただ、作品としては面白かった。やたらくだらなくて面白かった。
つまるところこの作品って、ニャル子と八坂真尋の掛け合い漫才に終始するわけですね。ストーリーとか世界観とか設定とかはどうでもよろし。
ヒロインとしてはアンタそれはどうよ、というくらいにボケに徹するニャル子さん。これ系統だとドクロちゃんなんかそうかもしれないけど、あれは天然無自覚な暴走不思議ちゃん。ニャル子はその類いではなく、完全確信犯のお笑い芸人。ウケを取ることについつい命賭けちゃいます、みたいな。
幸か不幸か、相方となってしまった真尋のツッコミ技能がこれまた尋常じゃない切れ味なので、延々と息つく暇のないテンポの良い爆笑ドツキ漫談が続いてしまうわけで。
いや、ほんとにこれストーリーどうでもいいだろ(笑
これ、ツボにハマれば最後まで息もできない大笑で突っ切れるけど、とことん合わないだろうタイプのお話だわなあ。その意味では、みごとにこの笑いのツボに嵌まってしまった自分は、幸いだったということで。
意外とこのボケ担当芸人系ヒロイン、ツッコミ主人公(対邪神兵装フォーク装備)の愉快な関係はなかなか見かけない種類のコンビなので、けっこう続編なんか期待してしまいますね。続きが出たら多分、喜び勇んで買ってしまうかと。続けようと思ったらなんぼでも延々続けられそうな話ですし。

……ところで、ニャル子。最後の展開はあんた、違法滞在じゃないのか?

 
12月2日

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