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猫鍋蒼

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 Secret File 2 ★★★   



【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 Secret File 2】  細音 啓/猫鍋蒼 富士見ファンタジア文庫

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アリスと燐の帝国潜入……という名のコスプレ大会!?――『波乱の仮装大会』 ニューイヤーレターを巡って使徒聖たちが大暴れ!!――『天帝直属、最上位戦闘員』など珠玉の短編集第二弾!


「キミと僕の最後の戦場、あるいは炎の芸術家」
部隊予算の使い方が雑すぎる! ってか、仮にも年間予算なんだからお小遣いみたいに使ったらだめでしょう! 事前に使う予定を決めてから予算案だして、実際の予算額引っ張ってくるんじゃないの? 決算ではちゃんと予算何に使ったのか詳細な報告書とか出さないといけないんじゃないの!?
なんか、話だけ聞いていると何に使うか確かめずに一定額を各部隊に与えて何に使うかはお好きにどうぞ、ってなってるように見えるんだけど!?
凄いな帝国軍!
そして、予算が足りなくなったら自弁で稼いでもいいよ、という副業可という内務規定。すげえな、予算使い込んだら自分で稼いで補填したりしてもいいんだ!
元々福利厚生の充実っぷりに瞠目させられていた帝国軍ですけれど、この場合の副業OKという規定はどう考えたらいいんだろう。足りなかったら自分たちで稼げ、というのは闇にも聞こえるけれど、自由に何でも出来るとも取れるんですよね。
まあ、軍隊としては自弁できるってのはヤバいなんてもんじゃないんですけれど。でも、その稼ぎ方が普通にアルバイトだもんなあw


「キミと僕の最後の戦場、あるいは試練の裏切り計画(スパイミッション)」
一部の部隊を敵側と設定しての、施設の防衛訓練。ある意味まっとうな訓練なんだけれど、だから自費で勝手に装備とか増強しないで! 自前の武器を自費で購入、とかは普通にあると思うけれど、高が訓練に金持ちな実家の財産を注ぎ込んで無敵要塞にしてしまうピーリエ隊長。
ミスミス隊長もそうだけれど、帝国の部隊長の選定ってポンコツじゃないとダメ! という原理原則でもあるんだろうか。


「キミと僕の最後の戦場、あるいは波乱の仮装大会(ハロウィンパーティー)」
わりと本編でもイジラレ役な事が多い燐ちゃん、当然短編集でもアリスに無茶振りされて半泣きになりながら恥ずかしい目にあうのでした。仮装はともかく、下着に包帯ぐるぐる巻き、というのは相当にエロいんじゃないだろうか。当初その衣装を着る予定だったアリスは、その豊満すぎる肉体からして完全に見た目でアウトなので、燐くらいでギリギリセーフ。ってそれを舞台上で晒し者にされた挙げ句に包帯までほどけてしまって、という目に遭う燐ちゃん。これはこれで美味しい役どころである。


「キミと僕の最後の戦場、あるいは完全無敵のお姉さま」
なんでか観衆の前でお姫様としての品格対決をすることになったアリス、シスベル、そしてイリーティアのロア家三姉妹。いやいやいやいや、あんたらそんな面と向かって張り合うような仲じゃなかったでしょうが。そもそも、アリスとシスベルに至ってはお互いの猜疑心からまともに会話すらもなく、避けていたでしょうに。短編特有の謎時空だろうか。
ともあれ、ここのイリーティアが加わったことで、妹二人から姉がどんな風に見られているのかが知れたのは良かったかも知れない。こと、異能力以外のすべて、美貌にしてもスタイルにしても教養にしても品格にしても、イリーティアってアリスもシスベルも尻尾を巻いて逃げたくなるほど完璧で完全無欠だったのか。まあ、品格なんぞに関しては、イリーティアがどうこうじゃなく、アリスもシスベルもまあ……なんだ、頑張れ……というくらいのレベルだしなあ。二人が手を結んで共闘したからと言って0.5に0.5をかけても1になるどころか0.25になるんですよ?という話である。
いやでも、半分喧嘩でも普段からこれくらい三姉妹でコミュニケーション取ってたら、もっと普通の姉妹仲になっていたんじゃないだろうか。こんな拗れることなかったんじゃないだろうか。アリスにしてもシスベルにしても、イリーティア姉様のことそれだけ一目も二目も置いていて自分たちではかなわないと痛感していたのですから。


天帝直属、最上位戦闘員
だから、アルバイトで予算を稼がないでw
ついに部隊ごとどころか、軍団ごとでアルバイトしはじめたぞ、この帝国軍。それも、年賀状の配達である。ミスミスたちのいる璃洒のところならまだしも、冥の機構校佞縫諭璽爛譽垢竜々渋茘沙佞泙撚辰錣辰討離縫紂璽ぅ筺爾らの雪の帝都を部隊にしたドタバタ劇。いや、雪降る帝都というシチュエーションなら、政変とか革命とかそういう雰囲気ある展開にならないものでしょうか。
璃洒ならともかく、ネームレスまでこんな話に乗ってくるとは思わなかったw
その挙げ句に大爆発オチである。そりゃ、面白いこと好きの天帝さまでも普通にお説教ですわ。


あるいは世界が知らない予言
イスカとジンと音々がクロスウェル師匠のもとで修行していた頃の話。のちの小隊結成の前日譚にあたるのか。頭が悪い、と名指しされていたイスカ。だが、その愚ゆえに弟子としてすべてを叩き込まれ、ジンや音々は賢いが故にストッパー役として支える役としての役割を与えられていたのか。
本来ならそんな彼らをまとめてくれる大人のリーダーが求められていたにも関わらず、なぜか彼らの隊長になってしまったのはミスミス隊長……いや、なんで本気でこの人どっから湧いて出てきたんだろうw



キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 10 ★★★☆   



【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 10】  細音 啓/猫鍋蒼 富士見ファンタジア文庫

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「待ってるよ黒鋼の後継。この星の未来を決する話を、しよう」天帝ユンメルンゲンとの邂逅を経て、帝都への帰還を命じられたイスカ達。しかし『100年前の真実』の隠蔽を目論む八大使徒の妨害に遭い――

メルンちゃん、結局手足となって動いてくれる側近は、璃洒しかいないのかー。いやネームレスも天帝派なんだっけか。なんかそんな場面があったような。でも他の使徒聖は八大使徒の影響下にありそうだなー。他の使徒聖ってこれまであんまり出てきていないし。
実権はほぼ八大使徒が握っているようなので、駒を確保できないのも仕方ないんだろうけど。メルン自身、マメに働くの面倒がりそうな性格なので自分から勢力を広げるみたいなことはしてこなかったんじゃなかろうか。
ほとんど神輿状態なのに、どうしてこれで八大使徒を掣肘できていたのかがよくわからんけど。
始祖と同格である以上、メルン単体でそれだけの戦闘力を持ってた、という事なのかもしれないけど、組織としての権力は八大使徒のほうが握ってるっぽいもんなー。
まあ、ここまで帝国内部で激しく割れているとは思わんかったけど。ほぼほぼ敵対勢力じゃないですか、天帝と八大使徒。
それを言ってしまうと、皇庁の方もルゥ家・ゾア家・ヒュドラ家で暗殺謀略なんでもござれで内部でバチバチやりあってたのを見たら、そりゃ帝国の方も内部分裂していなかったら帝国と皇庁で拮抗を保てないですよね。メルンは随分と皇庁への攻撃を抑えてたみたいですけど。

こうして両勢力の内実を見ると、当初のイスカの和平プランは何の意味も持っていなかったことが良く分かる。まあ中身見なくても、イスカのプランって端から実現する可能性あるようには見えなかったけど。
でも、こうも勢力争いがグチャグチャになっていたら、どうやったら戦争が終わるのかさっぱりわからないぞ。あまりにも関係が入り組んでいる上で各勢力が自分達の事しか考えていないものだから、対話とは不可能そうだし。これもう自分達以外の勢力を根絶やしにする他ないんじゃないだろうか。
という事は、案外とイリーティアのプランって間違っていないのかもしれない……いや、客観的に見ると他の勢力も自分達以外は敵国も国内の対抗勢力も全部ぶっ潰してやる、という方針でイリーティアと実はあんまり変わらないんじゃないだろうか。
イリーティアだけ、自分自身が怪物と化しても構わない、という自爆特攻精神でいるのを除けば。
ほかが組織としてスタンスを取っているのに対して、イリーティアだけ同志がいるとはいえ一人なんですが、その分なにをやろうとしているのかちょっとわからないところがある。
いや、目的と方法は彼女自身が明言しているのですけど、全部ぶっ壊してそのあとどうやって理想を叶えるつもりなんだろう。彼女の理想というのは大まかに不公平を無くし機会を均等にし差別を拝する、という所にあるんだろうけれど、それって既存の勢力を掃除して更地にしたあとに統治が必要となってくると思うのですけれど、全部ぶっ壊したあとどうするのかがどうにも見えないんですよね。人ならざる怪物になっちゃったら統治も何もあったものじゃないでしょうし。
それとも天帝メルンみたいに御簾の向こうに隠れるつもりなのか。
いずれにしても、導火線に火がついているこの状態で誰にとってもイレギュラーなのは、イリーティアとヨイハムの二人組なのでしょう。この二人の動向が鍵を握っているのか。
にしても、使徒聖の第一席が裏切り者って、ほんと危機管理どうなってるんだろうw

始祖もついに復活し、八大使徒も天帝との対立でようやく表舞台に出てきて、イスカとジンの師匠も姿を表し、とここに来て役者が出揃ってきた感がある。ついにクライマックス直前という雰囲気なのだけれど、このイスカと一緒にいられるラストチャンスにも関わらずそれを全く活かせていないシスベルのポンコツっぷりよ。
夜這いはあかんじゃろw
だいたい、夜這いしかけて具体的にどうするかとかこの娘まったく考えてなかったんじゃないだろうか。そもそも、イスカとジン同室な所に押しかけてどうするつもりだったんだろう。
むしろ、ミスミス隊長たちに防がれてよかったんじゃないだろうか。部屋に侵入したらしたでなんか悲惨なことになってたんじゃないだろうか。
どうしてルゥ家の女たちはこうもポンコツなんだろう。女王ミラベアもあれで相当な所があるだけに……イリーティアだけポンコツ成分が無いとは考えにくいんだよなあ。肝心な所でなんかやらかさんだろうか、この長女も。

戦闘の方はまさかの八大使徒戦。ってか、八大使徒が自分から出張ってくるのかいな。こいつらの性質からして、個として鍛えた強者とは全く異なるベクトルなんで噛ませ感強いんですよねえ。
だからこそ、誰かが一方的に倒すのではなく、第九〇七部隊全員のチームワークで倒すという流れは良かったです。こうなるとジンくんの頼り甲斐は留まる所を知らないんだよなあ。




キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 9 ★★★☆   



【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 9】 細音 啓/猫鍋蒼 富士見ファンタジア文庫

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「さぁ燐。あなたは帝国に侵入なさい」――帝国潜入作戦、開始!

王家『太陽』の策略で、帝国へと拉致されたシスベル。そんな彼女を救うべく燐は、イスカたちを尾行する密偵として帝国へ潜入することになり!? 『魔女』を生み出す地で、災厄が胎動する。帝国潜入編、作戦開始!

嫌ですぅぅ! とガチ拒否したにも関わらず、無理やりアリスによってイスカたちに同行して帝国に送り込まれることになった燐。王宮守護星としてアリスの傍に常に侍る任務に就いているが故に、この女まるで自分が潜入工作員として送り込まれるとは夢にも思ってなかったのよね。
イスカとともに帝国に潜入する手段と人選のために考慮すべき条件を得意げに並べあげていたときは、てっきり自分に任せてください、と言っているのかと思ったんですよね。それくらい、燐が一番相応しい潜入条件だったもんなあ。いや、そんな条件あげたらアリスなら燐を指名することくらいわからんかったのか、このメイドさんw
アリスに心酔して忠誠を誓っているわりには、嫌なことはいやーー!と拒否るメイドさんである。もちろん、聞き届けてもらった試しはない。
というわけで、イスカたちと共に帝国サイドに潜入してシスベルを救出することになった燐であるが、まーなんというか主も主なら従者も従者である。
アリスと一緒にいるときもアリスがあんまりにも酷いから目立たなかったものの、一緒になってやらかす事も珍しくなかったので燐もアレだなあ、出来る女に見せておいて根本的にダメ娘だなー、というのはわかっていたものの、単独行動を取ることになってよりポンコツが際立つことに。
なにかと騒動を起こしそうになる燐に、イスカたちは揃って振り回されることになる。確か、イスカたちを尾行して帝国に侵入するという体裁のはずなんだが、とても放って置けずに面倒を見るイスカやジンたちがお世話様ってなもんだこりゃ。まあ、ここのチームはミスミス隊長のお世話で、トラブルメーカーの面倒をみるのは極めて慣れきっているのだが。

ともあれ、皇庁のヒュドラ家と通じてシスベルを連れ去ったのが、どうやら帝国中枢の公の指示ではなく、正式な命令系統からハズレたところからのものであり、シスベルが連れ込まれた先も中央から追放された研究者のもと、ということでどうやら内部で権力争いをしている皇庁と同様に、帝国の方も天帝ユンメルンゲンのもとに意思統一されているのは表向きで、こちらも派閥が分裂して主導権争いが生じていることが、今回の話で明らかになるわけだ。
具体的には八大使徒と天帝とで勢力が分裂しているんですね。使徒聖は天帝直属の戦力として数えられているけれど、イスカが天帝の正体を知らなかったように使徒聖もどうやらついている勢力がそれぞれ異なっているようで、璃洒が天帝の側近として動いている事は発覚したけれど、これ八大使徒側についてる連中も多いんだろうな。
というわけで、対立構図が単純な帝国対皇庁というものでは表しきれなくなっているのが段々と浮き彫りになってきているんですね。ヒュドラ家が八大使徒側とつながり、イリーティアもそちらへ寝返ったように。或いは形を変えてみるとイスカたちは明確にアリスたちルゥ家ともうこれ協力関係にあると言って過言ではないくらい密接につながっているし、今回でユンメルンゲンもイスカとルゥ家の関係に首を突っ込んできたわけですし。
これは対立構図の再編が起こり得る状態になってきたんじゃないだろうか。今回のはぐれ研究者のお姉さん、一発キャラでしたが状況の整理の触媒として機能したとも考えられるか。
シスベルは、もうちょっと引っ張られてしばらく捕まった状態になるかと思いましたけれど、捕まったままだと十八禁どころじゃない事になりそうだっただけに、早期に救出されることになって良かった。まあもうちょっと口に出しては言えない状態になっていても良かったんじゃ、と言ってしまうのはマズいですか?
しかしシスベルって、イスカにご執心というふうに見えるし本人もそのつもりなんだけれど、いつの間にか以前から何かと一緒に行動するようになったジンに対しての態度が妙に温度あるものになっている気がするんですよね。ジンてば対応が冷たいように見えてあれで親切極まる気配り上手なので、知らず知らずにハマってしまうのもわからなくはないんだよなあ。わりとミスミス隊長もジン寄りのところあるし、シスベルもジンの方に走ってしまってもいいんじゃないだろうか。
あの姉と張り合うのは無謀というかやめといた方がいいですし。何しろ、相手の盗撮写真枕元に隠し持って夜な夜なハアハアしてるヤバい人ですしねえ。
ちなみに、それが親バレしてガチ泣きするはめになってる次期女王であった。まんま、エロ本を親に見つけられて没収されるの図じゃねえかぃw
あと、さらっとミラベア女王、ショタの性癖暴露してるんですけど!!  美少年趣味を勢い余って口走ってるんですけど! 大丈夫か、女王陛下!?
……ルゥ家に皇庁を任せてはおけない! というゾア家とヒュドラ家の考えは実は間違っていないんじゃないかしら、と思えてきた今日此頃。


キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 8 ★★★☆   



【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 8】 細音 啓/猫鍋蒼  富士見ファンタジア文庫

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魔女の楽園の崩壊で、新たな始祖の血脈たちが動き出す!
魔女狩りの夜が明け、混乱の責任を問われ政権が大きく揺らぐ中、女王代理であるアリスは、シスベル奪還をイスカに託す。イスカもまた自分たちの目的のため、ヒュドラ家の研究施設『雪と太陽』への潜入を試みる!

上半身裸にロングコートを直接羽織って腰骨より下まで下げたローライズのパンツという大胆セクシー衣装で登場し、俺のミラになに手ぇ出してんだこらー! と暴れだすサレンジャーさん。

なんかすごい。

ちょっと語彙が削れちゃったよ、うん。
自分が陥れられて拷問され三十年近く捕われていた事には美学的に怒らなかったのに、ミラベアが傷つけられた途端に、激おこである。いやもうこれ、大胆告白以外の何ものでもないと思うのですけれど、相手人妻であるよ? いや、そう言えばアリスたちの父親については全然言及された憶えがないのだけれど、既に故人かなにかなのだろうか。未だにミラベアもサリンジャーのこと引きずってるっぽいからなあ。
アリスたち娘さんたちはサリンジャーと自分の母親の事は知らないんだっけか。今のミラベアは精神的にもへこみ切ってて落ち込んでるわ弱気になってるわ、という状態なので、サリンジャーの大胆なセリフ直接聞いちゃったらイチコロになってしまうんじゃないだろうか。なにしろ、チョロい事この上ないアリスやシスベルの母親であるからして。絶対妄想癖もあるに違いないw
まあサリンジャーもあれ、一つ間違えるとなんか中二病っぽいのを拗らせてるおじさんだしなあ。いやそれを言ってしまうと色々とお終いな気がするので、触れてはいかん。
それはそれで置いておくとしても、あの超上から目線な態度でこちらも超調子乗って傲慢に振る舞う魔女ヴィソワーズやヒュドラの王女ミゼルヒビィと言った小娘たちを弁舌では言い負かして負け惜しみを言わせ、実力では徹底的に足蹴にして踏みにじる、という蹂躙をかましてくれたのはちょっと痛快ですらあった。イスカみたいなくせのない爽やかな青年に任されるより、あのやたらと偉そうなおじさんに超馬鹿にされまくりめたくそにやられるのって、プライドずたずただろうし悔しかろう悔しかろう、わははは。

一方で、今皇庁内でめたくそに政治的にやられてしまっているのは、帝国軍の侵入を許し、王族たちの誘拐を見逃し、女王自身傷を負わされ権威を傷つけられたルゥ家である。意気消沈してしまった女王ミラベアは発言権を失い、ヒュドラの謀略だとイスカたちのお陰で気づけたアリスだけれど、それを手繰り寄せて武器として振り回してヒュドラに対抗するには政治スキルが皆無なアリス。
……アリス、この娘女王にして大丈夫? 脳筋よ、この娘。どんな詐欺にも簡単に騙されそうよ? なんでも信じちゃうよ??
それを言ってしまうとミラベアも政治力あんまりあったようにも見えないんですよね。世論を操作し謀略をはかるヒュドラのタリスマンといい、領袖を失いながら果敢に主導権を握ろうとするゾア家の仮面卿といい、他家には寝業師というべき政治力の持ち主が力を握ってるのに、アリスたちのルゥ家にはそれらしい存在が見当たらないんですよねえ。唯一、その手の手腕に長けていたと思われる長女のイリーティアは盛大に出奔してしまいましたし。しかも、星霊力の欠如のみを理由とした待遇の悪さが原因、というありさまで。星霊の力を重視する皇庁全体の思想ではあるものの、ルゥ家としてはこの娘を逃しちゃあかんでしょうに。長女どころか、姉妹同士で内紛まではいかないけれど権力争いをしていて、お互い信用も信頼もせずに牽制し合ってたんですよね。そりゃ、身内でこれだけ争ってたらヒュドラ家やゾア家といった他家に付け込まれて追い落とされるの、当然じゃないかしら、と思えてくる。少なくとも、ヒュドラとゾアは身内では一致団結しているように見えますし。少なくとも意思統一はされている。
挙げ句に、ルゥ家の娘たちは密かに帝国の元とはいえ使徒聖と通じちゃってるわけで。
いやこれ、客観的に見ると擁護のしようなくなくない?w 帝国軍引き込んだヒュドラもバレたら言い訳難しいだろうけど、こっちはこっちでバレたら同じくらい言い訳不能っぽいのだが。
それはそれとして、イスカのシャワー後の全裸シーンを監視カメラの映像でガン見してぶっ倒れるアリスさん、それはそれでアウトです。いや、ガン見してたのは直接ラッキースケベした燐の方かw

ちなみに、イスカが常々目指していた皇庁の王族を捕まえたら停戦交渉できるよね、という状況は叶っちゃったんだけど、イスカ的にはどうなんだろう。イスカは王族捕まえたら戦争終わらせられる、と言ってたわけだけど、やっぱりどう考えてもこれ終わらないですよね。どころか、より関係悪化しましたよ?

次回はようやく舞台を帝国に戻しての、今度は燐を伴っての珍道中と相成りそう。ってか、燐はあんな提案しておいて、自分が行くつもり欠片もなかったんかい。流れ的に自分が行く、と主張するものかと思ってたのに。わりとこの人もポンコツだよなあ。


キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 7 ★★★   



【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 7】 細音 啓/猫鍋蒼 富士見ファンタジア文庫

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帝国軍の襲撃により火の海に包まれた魔女たちの楽園―ネビュリス皇庁。皇宮のいたるところで、使徒聖と純血種という最強同士の戦闘が勃発する中、イスカたちもまたルゥ家の別荘にて、帝国軍に擬装したヒュドラ家から第三王女・シスベルを護るべく戦闘を続けていた。そして、新たな『魔女』が産声をあげ、帝国と皇庁が過去最悪の関係にいたったその夜。イスカとアリスは戦場で再び出会う。「わたしは帝国を滅ぼさなきゃいけない。それがキミであっても」―そして、始まる。好敵手でいられなくなったキミと僕の望まない決闘が。

ネビュリス王宮ではじまった使徒聖と純血種たちの頂上対決。なんだけどなー。うん、どの対決もはっきりとした決着つかないんですよね。どちらも自信と自負をたっぷりに余裕で見下ろすような強者感を醸し出しているのですが、使徒聖と純血種もその自信に遜色ない底知れない強さを実際に持っている、持っているのですけれど、それを発揮できていたかというと……。
別に出し惜しみしていたわけではないのですけれど、どちらも強者感を失わしめないためなのか、お互いにお前の能力など想定済みだ、想像の範囲内だ、効かぬわー、の応酬になってしまってる感じなんですよね。おかげで、なんかえらい中途半端に感じてしまったんですよね。結局、お互い大して通じてないじゃない、余裕めかしているのに押しきれていないじゃない、という風に見えてしまって。どちらも凄い、じゃなくてどちらも偉そうにしてるわりに……、と見えてしまって、なんとももやもやした気分に。そして、決着つかないまま水入り、という事になってしまってもやもやは晴れないまま。
折角の頂上対決だったにも関わらず、すっきり感が全然感じられなくて、ちとシュンとなってしまいました。マウント取り合ってるだけじゃあ自分は盛り上がらなかったなあ。

そしてイスカの方はというと、タリスマンと対決しているうちに結局イスベルを攫われてしまうことに。結局守りきれないのかー。どうしても謀略は防げず、黒幕の思惑通りにどんどん進んでいってしまう。イスベルの存在はそれを止めることが出来る切り札だったからこそ、彼女を守るということは敵のシナリオを潰すということで、そうなったらストーリー展開も予想もつかない方向に行くんではと期待していたのだけれど、結局当然のようにイスベル攫われてしまうというのは、フラストレーションたまりますねえ。
そして、それを救出に向かうイスカの前に立ちふさがるのが、母と姉を使徒聖に斬られて一杯一杯になってしまっているアリス。
妹が攫われてそれを助けに行こうとしているのをよりにもよって邪魔するアリス。うん、パニックになってるのはわかるし、八つ当たりの相手が必要だったのもわかるけれど、場面も状況も最悪である。アリスの激情を受け止めるのはイスカの役目だろうけど、妹が攫われてると他の誰でもない「イスカ」に告げられているにも関わらず、信じずに邪魔するというのは……。ほんとに、今はそんな場合じゃないだろうに。
丁度、この望まぬイスカとアリスの対決は、前世代のミラとサリンジャーの淡い交流が辿った誤解による破綻と同じ末路を辿るのか、というシチュエーションだったんでしょうけれど、さすがにこの状況でイスカ邪魔する、というのはどうなんだろう、という感じ方だったんですよねえ。今までイスカとの間に培ってきたものは、なんだったのかという。
結局誤解は解けるのですけれど、それもイスベルの従者が残してくれたメッセージでイスカの身の潔白が証明されたからであって、これイスカの事をアリスが信じることが出来たから、と言えるんだろうか、とちと首を傾げてしまいました。サリンジャーと同じ運命を辿らなかった、とはいえそれはイスカとアリスとの間に育まれた絆ゆえだったのです、と言えるのかなあ、と。
それ以前に、ほんとにイスベル助けに行くの話も聞かず聞いても信じず立ちふさがって邪魔したのが心証が悪すぎました、自分には。この娘、色んな意味で回りに影響されすぎのような気がします。果たして揺るぎない芯のようなものが、この娘にはちゃんとあるんだろうか。今のままだと、ただ強いというだけで、女王としてやっていけるのか甚だ不安だなあ。
あと、ミラとサリンジャーの過去は単純にサリンジャーが悪い。女王殺してないなら、自分じゃないとちゃんと言いなさい。黙るな。やってないことをやってないと告げるのは、言い訳じゃないんですよ。殺したのか、と問いかけて沈黙されたら、肯定だと思うの当然じゃないですか。
運命とか関係ない、言うべきことやるべきことをちゃんとしなかった、というだけなのにそれこそ運命なんて言うのは言い訳じゃないんだろうか。
色んな人の言動にシャンとしたものを感じられずに、もやもやしてしまうなあ。

だからこそ、イスカが話聞かないアリスにビシッと話を聞け、と怒った所はそれだよ、とうなずく所だったんですよね。その意味ではイスカはちゃんと言うべき事を言いやるべきことをしっかりとやっている、と言えるのか。イスベルの従者の信頼を得て伝言を託されてたのも、イスカが勝ち取っていたものだし、少なくともアリスと和解に漕ぎ着けたのは、イスカがやるべきことを間違えずにやり抜いていたからなのでしょう。
さすがは主人公。ジンくんもそうですけれど、彼とイスカが押さえる所押さえている分、ホッと安堵できるんだよなあ、うん。

シリーズ感想

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 6 ★★★   



【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 6】 細音 啓/猫鍋蒼 富士見ファンタジア文庫

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国家転覆を狙った暴力政変―王女暗殺未遂事件の混乱が広がる中、ネビュリス王宮へと急ぐイスカたち。ゾア家との繋がりを疑われている皇庁第一王女イリーティアは、第三王女シスベルの護衛が帝国軍であるという秘密を人質に、「皆さん、ルゥ家の別荘でバカンスを楽しんでくださいませ」―イスカたちを別荘という名の鳥籠に閉じ込めようとしていた。さらに、妹の身を案じたアリスもまた、姉を止めるべく別荘に向かったことで、三姉妹が一つ屋根の下に集うことになり…。疑惑の魔女が張り巡らした策略は、時計塔の鐘を高く鳴り響かせて、魔女たちの楽園を戦場へと変える―!

このアリス、ムッツリスケベすぎる! なにやってんの第2王女さま!? 
今、女王暗殺未遂事件の黒幕を暴き出すためにシスベルを連れてこないと、という大変緊迫した状況で、不自然に姉イリーティアに連れ去られてしまったミスベルを連れ戻すために急いで迎えに来たはずのアリスが何をしていたかというと。
一晩中、鼻息荒くしながらイスカのズボン脱がして下着見ようと奮闘する第2王女。しかも、両隣にはシスベルとイリーティアが寝ている状況で、である。疲れて寝てしまうまでゴソゴソと抵抗するイスカと攻防を続けていたというのだから、この王女どこへ行こうとしているのか。
完全に変態の所業である。というか、こういうのをムッツリスケベって言うんですよね!? 
かつてまだ母ミラベルが女王位を継ぐ前。王女であった頃にサリンジャーとライバルとして刃を交えあい、特別な関係を築いていたと知って、アリスは内心自分とイスカの関係を照らし合わせて、同じだ! と叫びそうになっていたけれど……。
同じ……かぁ? 違うんじゃね? 全然違うんじゃね?
少なくとも、君のお母さんはライバルであるサリンジャーのズボンを剥いてハアハアするような志向はなかったと思うぞ。もっとこう、ストイックでプラトニックな関係だったっぽいぞ。純粋にお互いの力と誇りを認めあい、高めあっていた関係だと思うぞ。

自分の秘蔵のえっちぃ下着を見られたからと言って、お互い様だから貴方の下着も見せなさいぃー、とか言って目を血走らせてハァハァするような関係とは、さすがにちょっとどころじゃなく違うぞ思うぞ。
かつての女王とサリンジャーの特別な、しかし終わってしまった関係と。敵国の人間であり誰よりも認める好敵手であるアリスとイスカの関係を、過去と現在とで照らし合わせて浮かび上がらせようという流れだったけれど、アリスリーゼのあんまりと言うにもあんまりな欲望ダダ漏れの所業に、いろいろな意味で台無しになってしまった気がする。まあ女王たちの関係には恋愛感情は挟まれる余地はなかったようだけれど、少なくとも顕在化はしないまま結晶化してしまったようだけど。
アリスは今の段階で完全に男としてのイスカにハマっちゃっているので、その意味でも母たちとの関係と同じであるわけではなさそうなのだけれど。
それにしても、それにしてもであるw
いやでも、妹のシスベルも姉のエッチィな下着を発見して、テンションあがりまくって夢中になってハァハァしていたのを見ると、もしかして血筋なのか!? という可能性も浮上してくるわけで。
実は女王もハァハァする人なのか!?

まあ家族でそんなハァハァする前に、あの怪しすぎる長女をなんとかしろ、という話なのだけれど。いやもう、どう考えても怪しいのに野放しにするの、どうなの? 最低でも、皇庁に来るようにと女王命令が出ていたはずのシスベルを、無断で別荘に連れ去ってしまった時点で怪しいを通り越してギルティなんだから、アリスを派遣して事情を尋ねるなんてしている時点で後手に回ってるどころじゃないんですよねえ。
こうしてみると、女王ミラベルって統治者としても戦士としても親としてもあらゆる方向で失敗してないかしら。アリスもよりポンコツにやらかしそうなきらいがあるしこの娘自分の考えで動くよりも誰かに使ってもらった方が適切に動けそうなだけに、どう見てもイリーティアが一番適正ありそうなんだよなあ。
そんな彼女がこれだけ皇庁のシステムに感情を拗らせてしまっているという時点で色々と破綻している気がするぞ。実際、一旦全部完全破壊してしまった方がいいんじゃなかろうか。イリーティアに、破壊後再構築するつもりがあるのか、どうも怪しいけれど。

シリーズ感想

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 5 ★★★   



【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 5】 細音 啓/ 猫鍋蒼 富士見ファンタジア文庫

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ネビュリス王宮までシスベルを護衛することになったイスカ。他勢力より早く妹の身柄を確保すべく捜索に出たアリスリーゼは、そんなイスカと妹が腕を組んで歩く姿を見てしまい…。
「これぞ星の運命。わたくしたち、良い主従関係を結べますわ」
「イスカは帝国には靡かないわ。わたしが誰より知ってるの」
どんな手を使っても唯一の味方としてイスカを手に入れたい妹。使命でも責務でもなく己の意志でイスカと唯一の好敵手であろうとする姉。姉妹の想いが交錯する中、イスカはシスベルを狙う皇庁の怪物と対峙。高潔な意志もなく人であることを捨てた敵―初めて戦う本当の魔女に、剣士は怒りの剣を抜く!

アリスご乱心である。妹シスベルと敵国の兵士であるイスカが一緒にいる場面を目撃してのアリスの反応が、完全に狙ってた男を横から掻っ攫われて歯噛みする女になってて、建前のライバルだの好敵手だのはどうした、と言いたい。
多分、側近の燐も言いたいに違いない。
しかしこれ、対外的には敵国の部隊を自国に引き入れた利敵行為そのもので、シスベルが内通者の歌切りもの扱いされてしまうのを補填していると言われても仕方ないんですよねえ。ただ、それを軽薄というにはシスベルには信頼できる相手がいなさすぎて、頼る相手がイスカしかいなかったというのもわかるだけに二進も三進もいかないところ。
せめて、姉のアリスが信用できる相手だとシスベルに伝わるように両方と親しいイスカが仲介できればいいのだろうけど、現状むしろ姉妹の間を別の意味で決定的に引き裂く火種になりかねないのがイスカくんである。
このまま行くと姉妹で戦争だよね!?
にしても、イスカの立ち位置が相変わらず中途半端。
ミスミス隊長が魔女化してしまったのをバレないようにシスベルに助けてもらう、と目的があるにしてもこの子基本的に場に流されてばっかりな気がするなあ。
彼が言う所の、ネビュリスの皇族を人質にして和平交渉をするって目標、最初からそうなんだけれど希望的観測だけで、仮に人質に取れたとして和平交渉が成立する根拠がまったくないんですよね。
どうやって交渉に持ち込むか、以前に身内の上層部にその案を通すためのツテらしいものもなにもないですし、皇族を人質に取られたからといってネビュリスが交渉に応じるかどうかは、身内の誰も信用できず命の危機を感じて敵国の兵士を頼るしか無いシスベルの現状を見てたら自ずとわかりそうなものだけれど、イスカって自分の考えに固執したまま現状に合わせて修正とか破棄して新しい方策を模索しようという様子が一切見られないんだよなあ。
まあ、情にかられて実行に移そうというつもりがないみたいなので、仮初の目標を立てたままで挿げ替える必要性を感じていないのかもしれないけど。
ネビュリスはネビュリスで、ひらすら権力争いの足の引っ張りあいで女王暗殺事件にまで発展する始末。中立を標榜するヒュドラ家までこうして裏で悪巧みしていたとなると、三大氏族全部が身内で喰らいあいして敵である帝国に内通してるものはいるわ、人間捨てて怪物化してまでマウント取ろうとするやついるわ、控えめに言っても酷い有様である。
しかも、同じルゥ氏族で姉妹であるアリスやシスベル、イリーティアの間ですら時代の女王としての後継争いで信用しあえず牽制しあっている始末ですし。
まあ長女イリーティアが一番怪しい動きしていますけれど、怪しすぎて逆に怪しくないんじゃないかと思えてくるんですけどね、これ。なにしろ、ポンコツアリスとシスベルと同じ血を分けた姉妹なわけですしぃ?

シリーズ感想

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 4 ★★★   



【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 4】  細音 啓/猫鍋蒼  富士見ファンタジア文庫

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危険任務の手当として休暇を与えられ、リゾートへやってきたイスカたち。水着でバカンスを堪能するはずが、イスカにとって因縁の少女と再会したことで、雲行きは怪しくなる。「一年ぶりですわね。わたくしと皇庁へ来ていただけませんか」かつてイスカが救った魔女、皇庁第3王女シスベル。アリスリーゼがイスカを欲したのと同じように彼を誘うシスベルには、誰にも言えない秘密があった。たとえ血を分けた姉であっても。一方、妹がイスカについて調べていることを知ったアリスリーゼもまた、この砂漠のオアシスへと向かっていて…。剣士と魔女たちの運命は、戦場に更なる火花を撒きちらす。
危険手当で60日の休暇「命令」! 許可じゃなくて命令! 自主的にサービスで働くことも、事実上上司から強制的に自主的に働け!ということも「命令」なので出来ません、という趣旨の命令! ちゃんと休暇くれるだけでも真っ当なのに、60日ってバカンスかよ! しかも、命令ですよ!? 知らなかった、帝国軍ってホワイトだったのか!
ただねえ、短期間に危険任務に繰り返し従事したということで休暇を貰ったイスカたちなんですけど、これまでの話を振り返ってみるとそんなにイスカって働いている印象ないんですよね。
というのも、アリスと出会う機会を得るがためにコヤツってばしょっちゅう帝国を出て海外である中立都市へと遊びに行ってるわけですよ。毎回、遊びに行ってるわけですよ。毎回、休暇に女の子と逢い引きしてるんですよ。
こいつ、休んでばっかだな、と思うのも無理ないじゃないですかー。まあサボっているわけではなく、ちゃんと規定のお休みをとっているだけなので悪いことは全然ないのですけれど。むしろ、正しい労働者の在り方なのですけれど。そうだ、もっとしっかりどんどん休むが良い。
でも、イスカくんって前回捕虜になってたときもあれ高級ホテルの最上階で食っちゃ寝してたと考えたら、やっぱり働いているよりも休暇を満喫している方が多いんじゃなかろうか、この主人公め。
むしろ、同じチームのジンの方がいつも地味にずっとまめに働いているような。今回のバカンスでも一人あまり浮かれずに警戒を怠らず常在戦場の心がけを忘れずにいますしねえ。
一方で、真面目な顔して妹姫に逆ナンされてるイスカくん。
いや、それはそれとして妹ちゃんがお姫様にも関わらずあまりにもぼっちすぎるんですけど。まさか、帝国に捕まっていたの身内家族含めて誰も知らなかったってどういうことなのー!?
普段から引き篭もり気味だったとはいえ、敵国に捕虜にされてるの同じ城に住んでたはずの女王やアリスたちが全然知りもしなかった、というのはいくらなんでも存在感がなさすぎる。もちろん、謀略の類であり意図的に情報封鎖されていた、というのはわかるんですが、仮にも皇女が一人いなくなって何も問題が起こらないくらいに情報封鎖が出来てしまった、というのはそれだけシスベルと周辺とのつながりが薄かった、ということですもんね。食事や衣装、身の回りの世話などたとえ引き篭もりだろうと関わる人は決して少なくないはずだろうに。
この子、そもそも城でどうやって暮らしてたんだろう。まあ明らかにあの側仕えの人が怪しすぎるんだが。
これで、自分を助けてくれたイスカを唯一の信頼できる助けとして求めに来た、というのもまあ夢見がちというかなんというか。ネビュリスの誰も信用できないにしても、短絡的だなあ、と。
それだけ、精神的にも追い詰められていたということなのかもしれませんが。
まあ、短絡的というか夢見がちというか、実は何も考えてないだろう、というのはイスカもまあまあ似たようなものなのですが。ネビュリスと帝国の講和を実現させようともくろんでいるのはまあいいとしても、その方法として皇族の一人でも捕まえたらまあ何とか話し合いに持っていけるだろう、それから先は特に考えていないけれど、というにはさすがに考えが甘すぎやしませんか、とイイたい。
実際問題、彼が逃したシスベル、あのまま捕虜になったままだったとしてとても講和へと話が進んだとは思えませんし。いいとこ泥沼の総力戦一直線じゃないかしら。敵国をどうこうする以前に、自分の国である帝国の首脳部の意図や方針なんかもまともにわかってないわけですしねえ。
上層部の意思決定に働きかける立場を得ているわけでもなく、現状ではミスミス隊長の魔女化をどうやったらごまかせるか、という眼の前のことに汲々としているわけですから、まだ登るべき山の麓にすらたどり着いていないんだよなあ。
もっとも、アリスやシスベルという山の峰が向こうから寄ってきているのも確かなのですが。
アリスとシスベルの仲もなんとももやっとするもので。女王継承のライバルでもあるわけですから、信用し難いというのもわかるんですけど。アリスもあんなあからさまに不気味がってたら、シスベルもただでさえ能力のお蔭で不信を募らせているのですから、歩み寄るのも難しいよなあ。それでいて、シスベルに危害が加えられていたらアリス激おこなわけですから、なんともチグハグな感じではあります。アリスの皇族としての立場ゆえの考え方と、ただの姉としての在り方の錯誤が彼女の中で不協和音として自分でもコントロール出来ない形でかき乱されているのかもしれませんが。
でも、シスベルのあれだけ熱烈なアプローチに対して、イスカけっこう冷めてるというか突き放してるんですよね。そんなにアリスの方がええんかい! なんか、対応が違うんですけど!?

シリーズ感想

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 ★★★   

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 (ファンタジア文庫)

【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦】 細音啓/猫鍋蒼 富士見ファンタジア文庫

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高度な科学力を有する帝国と、「魔女の国」と畏怖されるネビュリス皇庁。永く続く二国の戦場で、少年と少女は出会う。史上最年少で帝国の最高戦力となった剣士―イスカ。皇庁最強とうたわれる氷の魔女姫―アリスリーゼ。
「わたしを捕えられれば、キミの夢も叶うかもしれないわ」
「そっちこそ僕を倒せばいい。君の世界統一の前進になる」
宿敵として殺し合う二人。しかし、少年は少女の美しさと高潔さに心奪われ、少女は少年の強さと生き方に惹かれていく。共に歩むことは許されず、互いを倒す以外に道はなくとも―。敵対する少年少女が世界を革新するヒロイックファンタジー!
殺意が足りない。
てのは冗談にしても、殺し合っているというには二人とも戦場で戦っていてもそれほど戦意を漲らせ、火花飛び散らせている、という風ではないんですよね。敵同士でありながら恋が芽生える、という展開はものすごく大好物なのですけれど、敵同士故の葛藤、愛しさ余って憎さ百倍という剥き出しの感情のぶつかり合い、強敵故の相手の強さへの興奮、というこう味方同士・友達同士では出来ない本気のぶつかり合いというものの研磨によって、純愛が磨き抜かれていくところが魅力的というものが多いのですけれど、そこの熱量がちと足らないかなあ、と。
二人とも、戦う目的にいささか迫真性が足らない、というのもあるんですよね。アリスの方は立場から与えられた目的を自分の目的に定めているにすぎないし、イスカの方ははっきりとした目標があるもののそれを叶えるための過程がふんわりとしすぎていて、しかもその行動で目的が叶うのかというと実のところ本人も確信があるわけではなく、お互いにあんまり切羽詰った感がないんですよね。なので、初戦闘からお互いに興味を抱く流れもちょっと柔らかすぎて、芽生える興味・恋心というものもふんわりとしていて、情熱的な観点からするとやや物足りなかった。
それに、即座に中立都市で再会してしまうというのも、お互いの素顔を知るという展開はともかくとして普通にお互いの正体を認識しながら普通に仲良くなっちゃってるんですよね。いやいいんですけど。二人の人柄からして、縁があれば仲良くなってしまうのも仕方ないんですけれど、これだけ仲良くなってしまったらもう本気で戦ったり殺し合ったりなんて出来ないでしょうに。実際、おおかた共闘路線で話は進んでしまいますし。
いわるゆ敵味方に分かれた宿敵同士のボーイミーツガールとしては、ちょっと歯ごたえが足りなかったかなあ、と。対比的な会話の応酬も、なんかとってつけたようでしたし。結局、あれやこれやと共闘する流れ続きそうだしなあ。かと言って今更本気で戦わないといけない、なんて展開も強いられたものとして痛快感のあるもの、決着に手に汗握るもの、にあんまりなりそうもないし。
そのへん、現状の認識を見事にひっくり返してくれるなら嬉しいのですけれど。

細音啓作品感想

異世界魔法は遅れてる! 7 ★★★★   

異世界魔法は遅れてる! 7 (オーバーラップ文庫)

【異世界魔法は遅れてる! 7】 樋辻臥命/ 猫鍋蒼 オーバーラップ文庫

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最強の現代魔術師 VS 最強の中二病!?

親友の英傑召喚に巻き込まれ、異世界に転移した現代の魔術師・八鍵水明。
幼なじみの朽葉初美を襲う普遍の使徒との邂逅を果たした水明は、ネルフェリア帝国にて遮那黎二と合流し、二人で覚醒した安濃瑞樹――否、九天聖王イオ・クザミに頭を悩ませる。
次いで知らされた、魔族による帝国への襲撃。参陣しようとする水明だったが、帝国十二優傑に難色を示されてしまう。
リリアナ、イオ・クザミと共にやむなく模擬戦を行うも、なんなく力を認めさせ、魔族を迎え撃つ水明だったが、そこへまたもや普遍の使徒が姿を現し……!?
異世界魔法と現代魔術が交錯する異世界ファンタジー、炉心を灯す第7巻!
イラストレーター交代で、再スタートということになったようで。一時期は打ち切りかという話も出てたようなので良かった良かった。個人的にもキャラデザインはこっちの方が好きですなあ。リリアナのマスコット的な可愛らしさとちびっ子化したレフィールの愛らしさが実に素晴らしい。瑞樹ももっと野暮ったい感じだったんだけれど、普通に可愛いじゃないですか。赤いマフラー、指ぬきグローブ、オッドアイという中二病三拍子を揃えた格好ですけれど、黒ストと服装のおかげか普通に可愛いんだよなあ。リリアナのあのゴスロリ帽子もいいアクセントですし、女の子の衣装の描き方がなかなか好みなのでした。
と、ビジュアル面でもようやく充実してきましたけれど、キャラクター描写の方も巻数七巻に至ってそれぞれいい具合に成熟してきたというか、溌剌と動き出した感があるんですよね。黎二パーティーの方も安定……というか、姫様中心にはっちゃけてきましたし。グラツィエラもちょろかったなあw
瑞樹があんなことになってしまって、水明と一緒に振り回されてヘトヘトになってる黎二くんだけれど、そっちにかまけているうちに姫様の方もいい具合にぶっ壊れてきてますよ、うん。まあ、タラシな黎二くんが悪いんですけれど。いや、実際いい子だからなあ、黎二くん。捻くれ者で若干面倒くさい水明くんに対比するように素直で真っ直ぐで熱いもう一人の主人公をきっちりこなしてますし。やや道を過たないか心配なところもあるのですけれど、いや大丈夫か。そう思えるくらいには安定感というか信頼感がある人格ですし、今回の力不足な自分に対する行き詰まり感の打破の仕方も変に淀みを溜め込まないものでしたし。
水明くんと一緒に瑞樹の黒歴史現在進行形に振り回されてげんなりしている姿は愛嬌あって、良い友達同士だなあという雰囲気も伝わってくるだけに、このままもう一人の主人公として真っ当に成長していって欲しいものであります。
しかし、これもうさすがに黎二に魔術のこと秘密にしておくのいい加減無理というか、もう隠す気無いだろうというくらいぞんざいに振る舞ってないか、水明くん。まあ、そろそろ覚悟決めたみたいだけれど。
戦闘シーンは相変わらず魔術のロジックや描写が凝っていて読んでいて楽しい。リリアナとフェルメニアの強化がもう半端ないことに。特にフェルメニアなんか登場の時の白炎でござい、と調子乗ってて鼻っ柱見事にへし折られたころのショボさが微塵も感じられないパワーアップっぷり。明らかにこっちの世界の魔法使いとは隔絶した段階に至っちゃってるしなあ。
とは言え、早々無双無双とは行かないわけで、魔族とは別にインルーのような別の思惑で動いている勢力や、ついに水明くんの対称となる敵キャラが出てくるわけで、主人公と敵の二筋だけで物語が構成されるのではなく、様々な思惑を持つ勢力が入り組んだ情勢になってきたのは先の展開が混沌としてきて、物語としてもワクワクさせてくれるものになってきたんじゃなかろうか。
個人的には、水明くんの現代地球における魔術師時代のご同輩が気になるところなのですが。なかなかに個性的な面々が、かなり設定彫り込まれて隠れていそうなだけに、何らかの形で出てきてくれると嬉しいのですけれど。

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