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甲田学人

霊感少女は箱の中 3 ★★★☆   

霊感少女は箱の中3 (電撃文庫)

【霊感少女は箱の中 3】 甲田 学人/ふゆの 春秋 電撃文庫

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「被服準備倉庫には呪われた人形が置いてあるらしい」
真央が所有する棺に興味を持つ銀鈴学院三年総代・荻童獅朗から、ロザリオ・サークルに依頼が舞い込んだ。それは同じ学校に通う三年生・小木奏の相談―銀鈴学院に古くから噂が絶えない被服準備倉庫の呪い人形の霊に取り憑かれた妹の調査だった。真央や瞳佳たちが被服準備倉庫に向かうと、そこには埃をかぶりながらも布に覆われ異様な雰囲気を纏うドールハウスが一同を静かに待ち受けていて…。妹の身に起こるポルターガイスト現象、奏の依頼裏で暗躍する荻童、瞳佳の身にも迫る学院最凶の霊。事件を追ううちに見えてきた学院の抱える秘密とは―。

この銀鈴学院、ちょっと危険地帯多すぎやしませんかね! 瞳佳ちゃんが予てから絶対に近づいてはいけないと感じていた場所として、今回の舞台となる被服準備倉庫をあげていましたけれど、それ他にも何箇所か強度の差はあれど、近づくとヤバイ! という場所が学院内にいくつか存在しているわけで、調べてみると実際に過去にえらいことになってしまった事例が幾つも残っている、とか普通に通う学校としてはやばすぎるんじゃないでしょうか。どれだけ危険な学校でも、踏み入ってしまうと確実にアウト、な場所とかあってたまるか、というものですし。
……【Missing】の「聖創学院」は別ですよ。あそこは普通に通っているだけで普通ではありえない死に方をしたり行方不明になる人が年間何人も出てしまうような学校ですし。未だに甲田さんの作品に限らず、あそこまでやべえ学校は今までフィクションの中でもお目にかかったことはないです。
比べる対象をあれにしてしまうと、とりあえず近づかなければ大丈夫じゃん? とむしろ安全に思えてきてしまうので、そのあたりは意識から排除するとして、今回はポルターガイスト現象がメインとなるお話。
思春期の問題を抱えた少年少女の間で起こりやすい、コントロールできない超能力の暴走現象。当人の自覚なく発動する念動によって起こるポルターガイスト。この手の話の説明は、様々な媒体で扱われているので、おおよそ知れ渡っているとは思うのですが、この甲田さんの手にかかると案の定凄まじいまでのホラーと化すのである。
ドールハウスという外的な要因、というか触媒、呪いの品のようなものが存在することで、ただの精神の不安定さから顕れる現象、とは言い切れないものが横たわっているだけに、簡単に個々の問題を解決したら終わり、みたいなことに到底ならなさそうなのも大きな原因なのでしょうけれど、とにかく人間の無意識の発露、超能力の暴走、なんてものじゃあ絶対に収まらない異様さが、ぬめった液体に塗れた手で首筋を撫でられるように横たわっているのである。
生きている人間の露骨な悪意が、被害者となる娘たちの周囲に絡みついているのも大きいのでしょう。普通、この手の身の程を知らずに危ないものに手を出す人間は、相応の報いを得る、というのがホラーの定番でもあるはずなのですが、今回の主犯って身の程知らずとは言い切れないだけに尚更質が悪いんですよね。あれほど明らかな邪悪にも関わらず、なんかうまいこと箱の危険範囲外に位置取っていて、リスクは真央たちにばかり押し付けて美味しいところだけ抉り取っていきそうな、そんな狡猾さを感じさせるのです。実際に瞳佳はかなり危ないことになりかけましたし。
なんだかんだと、スポンサーサイドである、というのも辛いところなんだよなあ。他の三家の連中とは役者が違うみたいだし。それでも、それほどの相手だからこそ、安全地帯にふんぞり返っているつもりで一線を越えて自業自得なことにならないかなあ、と期待してしまうのはまあ仕方ないじゃないですか。
今回は前後編の前編というところで、いいところで終わってしまったので、小木姉妹の件、妹ちゃんの依頼も含めて、うまいこと解決してくれたらいいのだけれど、作品の流れ上はたしてスッキリするような結末になるものか。ジクジクとした不安ばかりが染み出してきます。

シリーズ感想

霊感少女は箱の中 2 ★★★★   

霊感少女は箱の中2 (電撃文庫)

【霊感少女は箱の中 2】 甲田学人/ふゆの春秋 電撃文庫

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少女失踪の心霊事件以降、ロザリア・サークルの代表・守屋真央のもとで「交霊会」の手伝いをすることになった柳瞳佳。
そんな中、守屋の前に同じ学校に通うテニス部所属の的場茜から心霊相談が舞い込む――それは「一人交霊会」を機に、人が全く変わってしまった親友・吉野美南海の調査だった。
美南海の横顔に写る無数の目鼻が浮かび上がった写真。彼女を取り巻く友人たちに次々と起こる不可解な現象。そして辿り着いてきた美南海に取り憑く首つりの霊。
全ての謎を追っていくうちに、やがて明らかになっていく哀しい真実とは――。
とりあえず、死人が出なかったら、凄く穏当に終わったなあ、と思わずホッとしてしまったんだけれど、いやいやいやいや、よく考えると全然良くないですからね、これ。死人出なかったら、って一応死者出てますし、再起不能に近い状態になっている人もいるわけで、全然穏当なんかじゃないですからね!
ただ、それでも前回よりよっぽどマシな結果に終わった、と思ってしまうのはそれだけ一巻の事件が凄惨で救いがなかったから、なのでしょう。
だからと言って、今回救いがあったかというと、てっきりあった……ちょっといい話で終わったかも、と思った瞬間に虫でも踏み潰すかのように「グシャ」っと、当の救いがあったと思われた娘の心のうちからえげつないまでの本音が見えてしまっただけに、もうなんかねー、なんかねー。
ただ、独りよがりではあるんだけれど、うーんうーーん。一概に攻められんとも思うし、もう一人の娘なんかはまだもっとシンプルに二人の親友のことを思って行動していたので、救いが全くないというわけではないとは言えるんじゃないだろうか。
なんか、学校の環境が酷い状況を酷いと生徒たち自身が思うことがないくらいに歪みきっているんだけれど、前回にしても今回にしてもちゃんと女の子同士、イビツでは在っても友情というまっとうな感情が機能しているのは間違いなく、ちゃんと友達のこと心配していることは確かなので、それは救いなのかなあ。
でも……思いっきり泥をかけられた気分でもあり。なんともすっきりしないわけですよ、うん。
しかし、そう言えばその友情を拗らせきっていた瞳佳についていたアレ。てっきりレギュラーのごとく、或いは【断章のグリム】の風乃姉さんのろくでもないバージョンとして、常につきまとってくるのかと思ったら今回は音沙汰なしでしたね。本作って、かなり実録に沿った形で「霊障」というものを取り扱っているだけに、風乃さんみたいなファンタジーな存在は扱わない、ってことなんだろうか。
それでも、真央や瞳佳が置かれている状況というものが絶望を享受しているのは確かな話で、この子らは根本的な部分で、現状を改善しようとかは思ってないんですよね。だからこそ、利用されることもまた享受しているのか。
まさか、あの「箱」を利用しようなんて考えている連中が居て、学校を舞台にその勢力争いというかちょっかい掛け合っている、なんてことになっているとは想像だにしていなかった。だってあれ、どう考えても人間にどうこうできるもんじゃないでしょう。いや、しかし真央はそれを「交霊会」に道具として利用しているわけで、使うものとして捉えられていても仕方ないのか。ぶっちゃけ、真央の側からそれを止めようという意思もあるのかどうか、ってなところだし。
触れてはならない領域に手を突っ込んでしまったものの末路、という顛末は見てみたい気もするけれど。
ところで芙美さん、なんか一巻では評価が微妙というか、ポンコツ巫女っぽい言い方をされてたような記憶があるんですが、普通に活躍してますよねえ。今回もあっちこっちに出張ってお祓いやら調査やらで大車輪でしたし。ちょっと調子乗りなところはあるかもしれませんけれど、何があかんのだろう。そのうち、やらかしそうではあるけれど。

一巻感想

霊感少女は箱の中 ★★★★☆  

霊感少女は箱の中 (電撃文庫)

【霊感少女は箱の中】 甲田学人/ふゆの春秋 電撃文庫

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「おまじないを誰かに見られたら、五人の中の誰かが死ぬ」
銀鈴学院高校に転校してきた少女・柳瞳佳。前に心霊事故に遭遇し退学処分となった瞳佳だが、初日から大人しめの少女四人組のおまじないに巻き込まれてしまう。
人が寄りつかない校舎のトイレにて、おそるおそる始めたおまじない。人数と同じ数を数え、鏡に向かって一緒に撮った写真。だが、皆の画面に写っていたのは、自分たちの僅かな隙間に見える、真っ黒な長い髪をした六人目の頭だった。
そして少女のうちの一人、おまじないの元となる少女が、忽然と姿を消してしまい……。
少女の失踪と謎の影が写る写真。心霊案件を金で解決するという同級生・守屋真央に相談することにした瞳佳は、そこで様々な隠された謎を知ることになる──。
ひぃぃん、怖いよう怖いよう。
うん、ヤバい。夜一人で読んじゃいけません。まじやばいです。ノロワレシリーズはそこまで怖くなかったんだけれどなあ。原点回帰と言いましょうか、デビュー作【Missing】以来の学園ホラーとなる本作。【断章のグリム】は学園モノとはちょっと違っていましたからね。いや、その意味でいうと【Missing】はあれはあれで振り切れすぎていて、非現実感が常態化してしまっていた感があるので、むしろ真っ当な学園ホラーものとしては本作が初めてなんじゃないだろうか、とすら思ってしまう。登場人物もみんな霊能者系も含めてマトモな人間ばかりですし。
でもね、マトモであるからこそ「闇」が濃くなることだってあるものなのだ。マトモであるからこそ、「闇」が濃く見えることだってあるのだ。
むしろ王道の、正統派な怪奇譚だからこそ、それを甲田学人というホラー小説の鬼才が手がけてしまうと、本当にヤバいものになってしまうのである。ってか、なってしまってるんだこれ。

箱、怖い。

もうなんだろうね、この情景描写の迫真性は。否応なく脳裏にイメージを思い浮かべてしまうこの強制的とも言える表現力は。同じ怪談でも、語り部の語り口の上手い下手によって怖さが全然違ってくるものだけれど、このジワリジワリと恐怖心を沸き立たせつつ、冷静さを削り落としていきながら、ふとした隙をつくようにしてギュッと精神を絞り上げるような「ナニカ」が起こるわけですよ。この間のとり方とか、絶妙すぎてもうヤバいの。
読んでる側の心理の動きを読み切っているかのようなタイミングで……。
洗面所がもうヤバい。鏡とかはある意味定番だけれど、まさかそこかよっ、という。あのシーンの鳥肌の立ちっぷりときたらもう……。

ヤバイんですよ。

今回に関してはストーリー展開も絶妙と言っていい構成で、真相の塗り重ね方が思わず呻いてしまうようなそれで、必死によじ登った絶壁をあがりきった途端に突き落とされたような感覚で。

救いがない。

あまりにも救いがない。何が一番救いがないかって、当人たちが救われることを一切望んでいないことなのでしょう。彼らは、自分たちが絶対に救われてはいけないのだと決めている。それは諦めでも絶望ですらもなく、決然とした贖罪として、一切の救いを、救済を、拒絶しているのです。
自分は呪われ尽くした挙句に狂死すべきなのだと、静謐なまでに思い定めている。
互いの生き方と終わり方を知った二人の、あの静かに見つめ合う姿。この世に唯一の同胞を得たかのような、無音の共感。あのシーンを見た時の、あの気持をなんと言い表すべきか。
悲しくも、切なくも……しかし、二人がその最期まで孤独であり続けるのではなくなったのではないか、という安らぎにも似た心地を。

メインとなる守屋真央と柳瞳佳を始めとして、主要な登場人物は癖はあっても根本的なところで真っ当で善良で優しい心根の持ち主なんですよね。どこか常軌を逸した面を隠しているわけでもなく、コミュニケーションに不便を来すほどひねくれているわけでもなく、それぞれふとした瞬間にみせる気遣いや、親切や、優しさ、正しい怒り。危急の場だからこそ本性が見える、なんて説にはあまり同調しないんだけれど、そこでそんな気遣いが出来るのか! という場面が幾つかあって、ああこの人、本当に良い人なんだ。と噛みしめるように感じられるからこそ、余計に辛いんだよなあ。
守屋真央と柳瞳佳。この二人の無辜の咎人の行く末がどうなるのか。出鼻からグイグイ引き込まれた挙句に、あのラストですからね。そりゃあ気になるどころじゃないですよ。
【断章のグリム】に匹敵する傑作となることを期待したいです。

甲田学人作品感想

時槻風乃と黒い童話の夜 23   

時槻風乃と黒い童話の夜 第2集 (メディアワークス文庫)

【時槻風乃と黒い童話の夜 2】 甲田学人/三日月かける メディアワークス文庫

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――少女達にとって生きることは『痛み』だ。現代社会に蘇る恐怖の童話ファンタジー第2幕。

「奈緒。わたし、可愛い?」
京本奈緒は、嘘が嫌いだ。その潔癖とも言える『嘘嫌い』のせいで親しい友達も少ない。だが唯一、天城紅美子だけは中学校からの親友と呼べる存在だった。
紅美子は奈緒が知る限り最上の美少女だが、過度の寂しがり屋と浅慮な言動のため、同性からは嫌われていた。
そんな紅美子の嘘や隠し事のないあけすけな言動は、奈緒にとっては心地よかった。
だが事件は唐突に起きてしまう。そして闇夜を歩く時槻風乃に出会い、二人の少女の間に黒い影が落ちる――。
「白雪姫」「ラプンツェル」など、現代社会を舞台に紡がれる恐怖の童話ファンタジー。
「白雪姫」と「ラプンツェル」というと、【断章のグリム】ではクライマックス、すなわち阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられた惨劇の元ネタとなった童話だったのだけれど、〈泡禍〉が介在しないこのシリーズでは純粋に人間の暗黒面が、少女たちを追い込んでいきます、と言い切れてしまえば楽なのだけれど、彼女たちを破綻するまで、破滅するまで追い詰めてしまったのは単なる悪意や負の感情じゃないんですよね。
強いて言うなら、幼い頃から家族が少女たちに強いてきた人格形成が、本来輝かしいものとして立脚するはずだった大切な人との「絆」を、逆に破滅への導火線へと変貌させてしまった、というべきか。彼女らにとって、結ぶに至った「絆」があまりにも強固でありすぎたが故の悲劇だったのか。
いずれにしても「白雪姫」にしても「ラプンツェル」にしても、決して「絆」を蔑ろにして相手を裏切る物語ではなかったのだ。両方共、最後までお互いの中の友情は本物であり、誰よりも、そう誰よりも大切な人だったというのは間違いなく……だからこそ起こってしまった出来事であり、だからこその惨たらしい結末だった。あまりにも、救いがない。
誰が白雪姫で、誰が継母の女王か。誰がラプンツェルで、誰が塔の魔女だったのかは実際に読んで確かめて欲しい。相変わらず、物語における配役は絶妙と言っていい。すべてが終わってしまったあとに童話の登場人物を当てはめてみれば、それは童話の登場人物の悲劇を現代における形に変えて、身震いするほどに再現されている。それは確かに現代の白雪姫で、現代のラプンツェルだったのだ。

それにしても、一巻からずっと続いているのだけれど、一連の少女たちの悲劇の発端となっている狂いを生じさせているのって、総じて家庭環境が原因だったりするんですよね。何らかの形で幼いころから少女たちに精神的な圧迫や思想の強制がつづけられた結果、どこかいびつな人格形成がなされてしまい、それが破滅を引き込んでしまっている。親や家庭環境というものが、どれほど子供に大きな影響を与えるものなのかがつきつけられているかのようだ。
今回に関しては、特に「ラプンツェル」が酷いなんてものじゃなくて、これほど惨たらしい子供の人格を無視した親としての在りようは見るに耐えなくて、あの手の平返しのはしごを外すシーンには反吐が出そう、という表現が相応しい。あれは本当にくそったれだった。あまりにも救われないよ。

風乃は、今回は言うほど導火線に火をつける役としては派手な動きを見せていなかったように思う。むしろ、洸平の方が起爆剤になってしまってるんですよね。彼が原因でもなんでもないんだけれど、偶然なのか何なのか、彼がその場面にただ居たこと、存在そのものが破滅の引き金となってしまっている、というのは、同じような悲劇を食い止めようとしていた彼の願いからすると、随分ときつい顛末なんじゃないだろうか。

1巻感想

時槻風乃と黒い童話の夜3   

時槻風乃と黒い童話の夜 (メディアワークス文庫)

【時槻風乃と黒い童話の夜】 甲田学人/三日月かける メディアワークス文庫

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中学二年の木嶋夕子は悩んでいた。常に優先される姉と、我慢をする自分。それは進路問題にまで発展していく―。そしてある所では、母親の顔色を窺いつつ、二人で助け合っている兄と妹がいた。だが二人の絆の中で負の想いが膨れあがってしまった時―。彼女達が悩みの末に出会うのは、時槻風乃という少女。風乃は闇に溶け込むかのように、夜の中を歩いていた―。「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」など、現代社会を舞台に童話をなぞらえた恐怖のファンタジーの幕が上がる。
電撃文庫からシリーズとして
出たファンタジックホラー【断章のグリム】のスピンオフとなるこのシリーズ。生前の時槻風乃をキープレイヤーとして描くシリーズの前日譚。タイトルにシンデレラとかヘンゼルとグレーテルとか並んでた時はびっくりしましたけれど。断章のグリムの各巻のサブタイトルと同じだっただけに。
ただ、こちらは泡禍という怪異の要素は皆無で、ひたすら現実的な話に徹しています。それだけに、余計に理不尽で救いがないといえるのですけれど。まさに現代版暗黒童話。シンデレラやヘンゼルとグレーテルといった童話に照らし合わされたような話が、現代を舞台に繰り広げられるのです。そこにあるのは、お伽話から連想するフワフワとした淡い夢に包まれた甘菓子のようなお話ではなく、タールのようにまとわりついてくる吐き気を催すような悪夢めいたお話。子供たちがじわじわと心を削り取られていき、絶望の淵でのたうち回った挙句にぴくりとも動けなくなるお話。そこに、希望や救いなんてものは何もない。ようやく保っていたものが、プツンと切れて空っぽに成り果てたあの瞬間の姿は、シンデレラにしてもヘンゼルとグレーテルにしても、そして金の卵をうむめんどりにしても、それを目にした瞬間、心がすっと冷えるような放心に見舞われる。
絶望とは、本当に空虚で冷たいものなのだ。
お伽話と違って、ここで描かれるお話はすべて「めでたしめでたし」とは正反対のバッドエンドで終わっていく。風乃は何も出来ず、それを見送るだけ。彼女は決して厄災や人の死、不幸を望んでいるわけではない。それどころか、あまりに苦しい現実の日々に溺れて苦しんでいる子供たちに、他人である彼女に出来る限りの言葉を投げ与えている。だけれど、その言葉が或いは彼女たちに一線を越えさせてしまう要因になっているのか。
だからこそ、風乃は自らを死を招く死者と自嘲し、他者を遠ざけようとしている。彼女自身、悲しみと自己嫌悪に蹲りながら。
死後、妹の雪乃に取り憑くようになった彼女は、悪意めいた嘲弄で雪乃や白野蒼衣を翻弄するけれど、この頃の風乃は本当に触れれば割れて粉々になってしまいそうな儚さで、その不吉な様相を塗りつぶしてありあまるか細さに縛られている。彼女自身、やがては不幸の底に落ち、妹に呪われながらもつきまとう存在と成り果ててしまうのがわかっているだけに、自己嫌悪に縛られて苦しむ彼女の姿には辛いため息しか漏れてこない。

しかし、それにしても救いのない話しである。シンデレラには王子様など現れず、グレーテルはヘンゼルに見つけてもらえないまま彼女自身が魔女となりはてた。どちらも家族の虐待をもとにした話になるんだけれど、学校でのイジメでも容易に子供たちは絶望にくれてしまうのに、帰るべき場所である家庭が、守ってくれるはずの家族が自分を虐げ、否定し、悪意で責め立てて来た時に感じる奈落はどれほどのものなんだろうか。胸の奥が重たくなる。
そして、【断章のグリム】からの再掲となる【金の卵を生むめんどり】。再度読みなおしても、やはり凄まじい話だった。翔花という普通の少女の怪物とかすほどの激情と、そこからの滑落が、背筋が寒くなるような哀れさで惨たらしさで。彼女の最後の憤怒と、その火がふっと消え去って空っぽになった瞬間の描写の薄ら寒さは、ほんと特別です。

これ、このままシリーズ化になって、「人魚姫」「あかずきん」と続いていくんだろうか。洸平が狂言回しになりそうで、続きそうな気もするんだけれど。それはそれで読みたくもあり、気が重くもなり、複雑な気分である。読むけどね。

甲田学人作品感想

ノロワレ 参 虫おくり3   

ノロワレ 参 虫おくり (電撃文庫)

【ノロワレ 参 虫おくり】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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―死ね。死ね。天井から聞こえる微かな物音。少年の意識には、その音が狂おしく囁いているように思えた。そして…。社で始まる「虫おくり」祭りの準備中、街では蜂の被害が広がっていた。その被害は特に、七谷地区よりも深い山奥にある棄谷という集落で酷くなっている。棄谷には信乃歩の読書クラブの友人と自殺したという少年が住んでいた。少年の家族は引っ越してきて以降ずっと、この集落に馴染めなかったらしい。そして少年を虐めていた人間がまた一人、蜂の犠牲になっていく。果たして呪いと虫おくりの関係とは―。甲田学人が放つ呪いの物語、第3幕!
蜂は嫌ぁぁ!! 虫は全般に苦手なんだけれど、特に苦手なのが羽音を立てて飛んでくる虫。中でも蜂だけはあの「ぶーん」という音を聞いただけで身を竦ませて固まってしまうほどの大の苦手なので、今回の話はひたすら「うぎゃーーーーっ!」と耳を押さえて七転八倒したくなるものでした。勘弁してくれ。もう蜂に集られて刺される描写のエグいことエグいこと。ラストの惨劇なんか、もっと酷いことになってたと思ったのに、あの被害で済んだというのが信じがたい
ただ今回は蜂の恐怖という以上に胸糞悪かったのが、呪詛の被害者となる人間たちの悪意の方でした。この作者の描く作品のホラーの被害者って、当人には殆ど責任のない理不尽な理由で巻き込まれ、無残極まりない目に遭うケースが多くて、だからこそ悲惨さや恐怖感がいや増す面もあったと思うのです。ところが、今回の被害者たちは、これは自業自得だろうと思ってしまうような吐き気のするような悪意を、一切の呵責なく垂れ流しにしていた上に、自分たちの行いについて最後まで省みることなく一方的な言い分を吐き出しているばかりで、こいつらが呪詛に見舞われることに関して、恐怖を感じるどころかむしろ当然の報いだろう、と思ってしまうほどだったんですよね。それどころか、被害がこの程度で済んでしまった事に鬱憤がたまってしまうほどに。自分でも嫌な感じ方だと思うのですけれど、一つの家族をあそこまで惨たらしく破壊して破滅に追い込み死に至らしめた連中が、自分たちの所業に何の痛痒も感じず正しさを信じたまま、何も変わらないまま終わってしまったというのは、これこそ理不尽極まる話のように思えてくる。ただ一人、正常な感覚で一連の出来事を捉えていた猿枝だけが、恐怖と罪悪感に囚われ、おそらくはこの後の人生もずっと後悔を抱えたままであろうというのは、やっぱり理不尽じゃないですか。確かに、彼女だけはまともな人間性をこれから育んでいけるかもしれませんけれど、少なくともこの棄谷という排他的な集落では、そのまともな人間性というのは彼女に何の幸せももたらしてくれないんですよね。このコミュニティーの中では、あの狂い果てた腐臭のする反吐のような感覚の方が正しく、それに基づいて動いているこの集落の人間たちは、それ故に概ね日々を平穏かつ幸福に過ごしていくのですから。正しい人間性なんて、持っている方が地獄です。最悪ですよ、なんだこれ。
前回とは全く違う意味で同じ言葉を繰り返したい。死ななきゃいいってもんじゃないですよっ!

1巻 2巻感想

ノロワレ 弐 外法箱3   

ノロワレ 弐 外法箱 (電撃文庫)

【ノロワレ 弐 外法箱】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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「また自分の知らない風習か…」
同級生・日高護の祖母の葬式に出席した真木現人は、そこで騒ぎに巻き込まれる。部外者であるはずの少女が発したこと―それは日高が過去に祖母から聞いていた『神様の入った箱』を差し出せというものだった。一方で現人の双子の兄・夢人は、その箱と同時に日高の家系にも興味を持ち始める。それは七谷という土地で脈々と引き継がれている『憑き物筋』で、呪いの本尊をその箱に収めているという。兄の話に怒りを覚える現人だが、呪いはすでに浸蝕を始めていた。現人が通う高校に巻き起こる怪異、そして―。甲田学人が放つ呪いの物語、第2幕。
昔、漫画【うしおととら】で、お外堂さんという箱に入った妖怪を遣う外堂使いなる女性のキャラクターが出ていて、その時は箱に入った妖怪というものを変な設定の妖怪だなあと不思議に思っていたものですけれど、今思うとこれがまさに「憑き物筋」の呪物だったんだなあ。あの漫画では直接の攻撃手段となる使役獣みたいな扱いだったけれど、これは少年漫画のバトルようにアレンジされたものであり、正しくは呪詛をもたらすための呪術の要であったのだろう。これは「犬神」のたぐいも似たような扱いをされることが多いので、むしろうしとらの外堂使いは非常に緻密な設定に基づいていたとも言える。祖母から孫娘が箱を受け継いだ、というのも単に女性のゲストキャラを出したいからではなく、キチンと女系に受け継がれる憑き物である、という流れだったのだ。
しかし、うしとらでは「憑き物筋」が忌避される存在であるという事は巧妙に避けて描かれていた。そもそも「憑き物筋」については言及がなかったですしね。ただ、無視するのではなく巧妙に直接は触れないように、しかし言外には忌避され畏怖される存在であるというのを匂わしてはいたので、その辺りはやはり巧妙だなあ、と。
自分が始めて「憑き物筋」というものについて知ったのは、京極夏彦【姑獲鳥の夏】が最初だったでしょうか。それまで勝手に抱いていた犬神などのイメージが大きく変わることになったので強く印象に残っています。
しかしこの作品の舞台となる集落、七谷という土地は「憑き物筋」まで内包しているとか、どれだけ多様な因習を抱え込んでいるのか。普通、特別な何かを一つだけ受け継いでいるだけで田舎の村落などそれでキャパシティが一杯になってしまいそうなものなのですが、この土地には通常の寺や神社と違う筋の巫女さんが地縁を統べているようですし、胡散臭さが尋常ではない。なまじ、本物っぽいだけに尚更に。
ただ、この作品が本当にしんどいのは、こういうオカルトサイドの闇深さやおどろおどろしさよりも、普通の人間たちの粘性の強すぎる剥き出しの負の感情なんですよね。今回については、日高の亡くなったおばあさんの偏執的なまでの嫉妬深さが、伝聞を聞くだけでもしんどい。この手の嫉妬って、直接当人のコンプレックスからくるものならまだいいんですよ。でも、その嫉妬心が当人の努力や行動で賄えるものではなく、今回のように孫と他者との比較から燃え上がるようなものだと本当に質が悪い。嫉妬心を自分だけで抱え込むのではなく、それを自分の写身となる対象者へと押し付けることになるのですから。
このお婆さんは特に酷い。聞いているだけで胸が悪くなるような酷い罵倒をずっと幼い孫に聞かせ続けていたんですから。よく、彼が根性歪まなかったものだと思いますよ。善悪の区別なくもろに感受してしまう幼い頃はどうあれ、高校生になった彼は非常に健全なメンタリティの持ち主で、祖母の悪影響と思しき性格の歪みは殆ど見受けられなかったのですから。
この作品の本当にエグいところは、因果応報、じゃないところなのかもしれません。まあこの作品に限らず、甲田さんの作品は大概そうなのですけれど、悪いことをしたから報いがあるのではなく、別にその当人が善人であろうと悪人であろうと無関係に、何も悪いことをしていなくても平等に「惨劇」の餌食になるんですよね。それこそ、ホラーの犠牲者の法則すらも鑑みないほどにのっぺりと飲み込んでいくのです。こいつ、ここまで酷い目に遭う理由があるのか? と愕然としてしまう。そう、理由なんて「たまたま触れてしまった」という以外無いに等しいんですよね。それも、意図して触れたわけでもなく、それこそ向こうから車が突っ込んできた此方に責任が皆無な交通事故並に。
犠牲者に罪科が殆ど無い惨たらしい地獄絵図は、読んでるこっちもゴリゴリと精神が削られていきます。
これで、せめて現人が主人公らしい働きをしてくれたらいいんですけれど、コイツときたら始終イライラと刺々しい空気をまき散らしているばかりで、空気の悪さの現況は半ばコイツなんじゃないでしょうか、と思うほど。ここまで不機嫌で居続けて、しんどくないんだろうか、この子は。正直言って、夢人の方が悪意があろうと歪んでいようと粘性自体は少ないので不快度はないんですよね。感情をコントロールできず、自分の中の鬱屈を持て余して飲み込めない現人の方が見ていてしんどいです。若さ故の未熟な部分なのかなあ。しかし、この感受性豊かな時期に、これだけ人間不信を加速させるような出来事ばかり続いたら、このままおとなになってもより内向きに刺々しさを尖らせていきそうで、なんとも暗澹たる気分です。
ところで、今回登場した表紙にもなっているおみこさまの後継者の娘は、本作のヒロイン役になるんでしょうか。一応、歴とした能力もあるようですけど、一方で精神的に閉塞してしまっている点については現人サイドの人間のようですし、周りに理解者がおらず孤立しかかっていた現人サイドのヒロインとして、今後も本格的に関わってきそうな予感。もっとも、現人と打ち解けたり仲良くなったりする様子が全く想像出来なくもあるのですが。
今回も……誰も死ななかった? でも、死ななきゃいいってもんじゃないですよっ!

1巻感想

ノロワレ 人形呪詛4   

ノロワレ 人形呪詛 (電撃文庫)

【ノロワレ 人形呪詛】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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双子の弟・真木現人は兄の夢人のことが嫌いだった。主人公の虐めと呪いをテーマにした小説『呪験』で十五歳にして作家になり、上京した夢人。そして、その内容に影響された殺人事件により帰郷するのだが、彼は七屋敷薫という婚約者を連れていた。―七屋敷は呪われている。七屋敷の花婿は、呪いによって、二年と経たず早死にするのだ。そんな『呪い』が噂される婚約だが、夢人は嘲り笑いを浮かべるだけだった。そして、夢人を尊敬し慕う妹の信乃歩に、彼らを蝕む呪いの物語が、静かに始まりを告げていた―。甲田学人が放つ呪いの物語、開幕。
うわぁ、ヤバイヤバイヤバイ。本邦屈指のホラー作家甲田学人の新シリーズは、もうのっけからヤバイ感じが荒れ狂っていて、もうやだ怖い。
前回が「童話」をテーマにした物語だとしたら、今回は「呪い」をテーマにしたお話なのでしょう。その導入というべき第一巻は、呪いの中でも最も有名でありましょう人形に纏わる呪詛。なにしろ、主人公(?)となる夢人からして、「呪い」を蒐集している人物であるからして、そりゃあわんさと呪いも集まるでしょうよ。
そんな呪詛に纏わる物品や逸話を集めたり関わったりして、夢人本人がノロワれないのか、呪いが恐ろしくないのか、と当然のように疑問に思い、その性格の破綻具合に戦々恐々としていたのですが……彼が呪いを求める理由の正当性を知ってしまって、頭を抱えることに。こりゃあいかん、呪いが効かないと確信していたり舐めてるわけじゃなく、むしろ相当に切実な理由があるじゃないですか。どんだけ切羽詰まってるんだ。あまりに切羽つまりすぎて、おかしくなってるとも言えるのですが、むしろ精神がおかしくなってないと耐えられないんじゃないかという状況でもあり、とにかくヤバい。
どう見ても性格破綻者、異常者の類か異端者かと思われた夢人のロジックが、真相が明らかになることによって完全に筋の通ったものだとわかった時には納得すると同時に背筋が震えました。そりゃあこんな事情を抱えていたら性格も歪むよ。
でも、考えてみると夢人が抱えている事情って、地獄が信じられていた時代にはすべての人間が置かれ抱えていたものでもあるんですよね。悪いことをすれば地獄に落ちるよ、という考え方を今の人は多分軽く捉えているけれど、かつて地獄や極楽といった死後の世界が本当に信じられていた時代においては、地獄に落ちるという末路がどれほど真剣に、深刻に恐れられていたか。地獄という世界の悲惨さ、無残さ、残酷さの描写は調べてみると想像を絶するものがあります。凄いですよ、マジで。よくまあ、こんな残虐な刑罰を思いつくな、と感心するくらい。これを死後、実際に味わうのだと信じていたら、とてもじゃないけど悪事なんて働けませんよ。
尤も、生前から地獄堕ちを決定づけられている人間なんて居ないわけで、それを思うと夢人が置かれている立場というのは悪夢どころじゃないんでしょうけれど。

しかし、いつ殺戮がはじまるかと震え上がっていたんですが……あれ? あれれれ!?
誰も死ななかったぞ!?
……誰も死んでませんよ!?
えええええええ!?
ちょっ、このパターンだと最低でも関係者は全滅。無関係な人が巻き込まれて死ななかったら御の字、という普通四、五人は死んでておかしくない展開だったのに。まあ、そのペースで人が死んでいくと、この村や学校から住人が居なくなってしまいかねないんですが、それでも誰も死ななかったことに安心を覚えるのではなく、むしろ不安を覚えてしまうのは、甲田作品に慣れ親しんでしまった証拠なんでしょうか。
だって、いつ地獄絵図がはじまるか、爆発寸前の爆弾が燻ってるようなものじゃないですか。しかも、ほぼ確実に爆発する予定のw

もう一つ以外というか虚を突かれたのが、夢人の婚約者である七屋敷薫が思いの外まともな人だった事。なにげに妹や現人と比べても、普通にまともな考え方の人だったんじゃないか? 勿論、あの夢人の理解者という時点でどう間違っても普通でもマトモでもないんですが。

甲田学人作品感想

断章のグリム 17.白雪姫・下4   

断章のグリムXVII 白雪姫・下 (電撃文庫)

【断章のグリム 17.白雪姫・下】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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「……白野君、やっぱり私、あなたが嫌いだわ」
甲田学人が描く悪夢の幻想新奇譚、ついに終幕!

「正直僕も、白野君をどれだけ追い詰めればいいのか、手探りなんだよ──」
 日々苦しみ続けていた蒼衣の過去の悪夢の真相、雪乃が抱える様々な想いや誇り、そして神狩屋から消えてしまった颯姫と夢見子……。謎が謎を呼び、混沌としていく神狩屋で、また一人『白雪姫』の悪夢に巻き込まれ、騎士たちが消えていく。だが全ては、蒼衣の過去より、始まるべくして始まっていた──。
 蒼衣と雪乃、そして最悪の悪夢の結末は──!?
 甲田学人が描く悪夢の幻想新奇譚、ついに最終幕!
雪乃さんの「殺すわよ」を聞くと安心してしまう自分はもう末期症状。

ついにライトノベル屈指のオカルトホラーもこれにて最終章。どうあがいても絶望、どうもがいても悪夢。そんな深淵の岸辺で起こるのは、当然のごとく無残にして冒涜的な鏖殺である。
そりゃもう、バタバタと人が死んでいく。いや、バタバタじゃないね、グシャグシャビチャブチャデロデロと皆が死んでいく。まともな死体など残りゃしない。人間としてこんな死に方だけはしたくない、という有様で死んでいく。リカさんは、まだあれマシな死に方だったんじゃないだろうか。
全部終わって愕然とさせられたのは、この程度の惨劇なら泡禍、じゃなくて「ロッジ」が起こした自己の規模としては「空前」ではない、という記述でしょう。これだけの出来事が、これまでにも儘あった事だという事実に、正直腰が抜けそうになりました。最悪じゃないのか。この世界では、こんな出来事ですら最悪でもないのか。
どんだけえげつない世界観なんだ、此処は。

映像化? 絶対無理です。実写だろうとアニメだろうと絶対無理。というか、見れない。無理、こんなの映像で見せられたらトラウマになる。特に、毒リンゴを食べさせられたあの人達の有様なんか、想像しただけでサブイボが立つ。気が遠くなりそうになったんだから。想像した事自体を心底後悔した。思い浮かべるんじゃなかったと絶望した。今回はもう全編に渡って脳内再生ですらR25レベルです。ぎゃあああああ。もうやだ、ぎゃーーーー!!

それでも、本気で全滅エンドの確率がかなり高いと覚悟していただけに、予想以上に、生き残ってくれたんじゃないでしょうか。あの子らが出てきた時にはもう勘弁してくれ、と泣きそうになったもんなあ。
だから、これはまあハッピーエンドの部類に入るんじゃないでしょうか。これをハッピーエンドといってしまうとハッピーエンドが発狂するかもしれませんが、白野くんの「普通」に対しての狂的な固執が、「普通」そのものが全損することで回避されたというのは、僥倖と言えば僥倖でしたし。彼の普通への固執は、そも葉耶の王国への呪いみたいなものでしたからね。ある意味、彼の普通に雪乃を取り込むということは、無自覚なまま雪乃を自分の悪夢の中に引きずり込むようなものでしたし。
尤も、雪乃さんと白野くん双方が自覚した上での承知の上とはいえ、結果として同じ事になったような気もしますが。あれって、解釈の仕方によっては心中エンドですもんね。決して遠くない未来に確実な破滅が約束されている白野くんが雪乃さんを招くのも、雪乃さんがそれに答えることも、二人共何を意味しているかわかっているはずですし。そも、風乃さんからしてすでにそのつもりらしき事が女王対談によって示されていましたし。
そう考えると、二人の最後のやり取りって、素っ気ないようで物凄く濃密なやり取りです。それこそ、生ける時も死せる時も共に在らん事を誓い合うような、共に滅ぶを約束したような。
だから多分、これは「ハッピーエンド」でいいんだと、そう思う。

全く以て、余人には到達し得ない、甲田学人という作家にしか描けえない、凄まじいまでの悪夢の世界でした。色々な意味でぶっちぎりでした。これ以上にグロテスクで恐ろしく、身の毛のよだつ凄まじいホラーは、ちょっと他に想像もつきません。唯一無二、と言い切って構わないでしょう。
この人が描ける新たなシリーズは、もう今から怖くて背筋が震えそうです。それでも、買っちゃうんだろうなあ、読んじゃうんだろうなあ。悪夢の底を覗いてみる誘惑にはきっと勝てないでしょうから。

シリーズ感想

断章のグリム 16.白雪姫(上)3   

断章のグリム〈16〉白雪姫〈上〉 (電撃文庫)

【断章のグリム 16.白雪姫(上)】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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甲田学人が描く悪夢の幻想新奇譚! いよいよ最終幕に突入──!!

「『普通』なんて、いつか壊れて、ここに戻って来る。蒼衣ちゃんは『王国』の国民なんだから」
 握り拳を震わせて言いつのる葉耶。蒼衣を苦しめる、かつて蒼衣が破滅させた少女の幻影。だが、蒼衣は<泡禍>と出会うまで、葉耶の存在すら忘れていた。過去に本当に起きていたことも覚えてはいなかった──。
 そして、主の帰ることのない神狩屋の書斎で見つけたスクラップブック。そこに記されていたのは、葉耶にまつわる過去の真相。そして──。
バタバタと書き割りが倒れるように、これまで真実と思い込んでいたものが翻っていく。過去の報道などに記されていた葉耶の死の真相は、蒼衣が覚えていたそれとは全く違っていた。ならば、蒼衣の偽りの記憶はなんだったのか。それに、蒼衣の断章は葉耶の死のトラウマこそが力の根源だったはず。あの記憶が間違いだったというのなら、蒼衣の能力は一体何によって決定されてしまったのだろう。
おそらく、真相をかなり深い部分まで探り当てていただろう神狩屋は、もはや完全に狂気に呑まれ、己が死を願うがゆえに死を撒き散らすことを厭わない人の形をした災厄と化してしまっている。
自ら真相を探ろうにも、蒼衣も雪乃もバックアップしてくれる大人が居なくなってしまったが為に、ろくに情報も与えられず行動を取ろうにも動けない状態だ。特に、騎士としての能力を自負していた雪乃にとって、神狩屋が居なくなった途端に自分が大人の支援がなければ何もできない子供に過ぎなかったことを思い知らされて、切歯扼腕するハメになっている。
何もできない、何もさせてもらえない。放っておいても早晩破綻しかねない断章の暴走を抱えている蒼衣にとって、現状は破滅への直滑降だ。本来、彼の記憶を探る件についてはもっと慎重に行うべきだったんだろうし、暴挙の誹りを受けても仕方のない行動なのだろうけれど、今の二人にとって真相を追う事は最善にして唯一の出来る事だったんだろうな。暴挙が最善であるという時点で、二人の、特に蒼衣の置かれた状況がもはや救いようの無い段階にまで進んでいると言えるのだろう。
その結果、辿り着いた葉耶の実家で遭遇した<泡禍>と、ようやく浮かび上がってきた蒼衣の本当の記憶の中にあった光景は、事の真相がとめどなく根の深いものだったことを示していたと言えよう。おかしいのだ、明らかに。あの家で<泡禍>に遭遇するのも、蒼衣の記憶の中に「彼女」が存在している事も。
状況はこれ、蒼衣の問題だけじゃなくなったのかもしれない。<泡禍>という悪夢に纏わる事象の根底に、事は関わっている可能性が出てきてしまった。これ、場合によっては全滅エンドどころじゃなくなるかもしれないぞ。夢は何時か覚めるもの。泡のように消えるもの。世界を夢に例えるのなら、その世界は夢から覚めたときにどうなってしまうのか。全滅エンドで終わればまだマシ、なんて絶望どころの話じゃないですよね、うん。
神狩屋のロッジのもう一人のメンバー。前巻のラストに出てきた入谷さん。人格に問題のあるかのような印象を事前には見せていましたが、実際はどうやら本来かなりまともな人だったようで。かなり摩耗しているとはいえ、まだ人間性はちゃんと保っているようですし、彼なりにロッジの子供たちのことは気にしているようでしたし。
ただ、この作品の場合、まともな人程悲惨な方、悲惨な方へと転がり落ちていくのが常であり、それはこの入谷さんもその点においては何も変わらない。この人、断章がまた凄惨を通り越してホラーの極みですよ。無茶苦茶な断章じゃないですか。これは狂う。普通は頭おかしくなる。年単位でまず持たない。それを、壊れかけとは言え十年以上保ってるんだから、元々からして相当に精神的に頑強な人だったんだろう。でなきゃ、断章が発現してから普通に恋人を作ろうという気にすらならないでしょう。恋人作ってる時点でどこか壊れてたんじゃないかと疑いたくなるところですが。
前々からこれ、映像化したらすごい作品になるだろうな、とか言ってましたが、無理です。映像化無理。しても、モザイクばっかりで何が映ってるか見えないアバンギャルドな作品になること請け合いである。少なくとも地上波では無理だろうな。というか、見る気しないわ、これは。読んでるだけでも気分悪くなりそうなくらいなのに。
ウジ虫はやめれーーww

最後の主題は白雪姫。誰が王子で誰が継母で、誰が七人の小人で誰が白雪姫なのか。多分、最初から最後は白雪姫だと決めていたのだろうから、ヒロインが雪乃という名前であったのも何らかの意味が込められている、と考えるべきなのかしら。現状、どちらかというとヒロイン役は蒼衣の方が強かったりするのだけれど。

シリーズ感想

断章のグリム 15.ラプンツェル(下)4   

断章のグリム15

【断章のグリム 15.ラプンツェル(下)】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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影から伸びる白い手。掴まれた先にある闇は──。
鬼才が描く悪夢の幻想新奇譚、15幕!


「いま敵じゃないひとは、いつか敵になるひと。まだ気づいてないだけだよ……」
 葬儀屋の蘇りによる影響はまだまだ続く。蒼衣に復讐を誓う少年は、自分も死ぬ覚悟で蒼衣を苦痛の海へと沈めていく。遠くなりかけた視界に佇むのは、かつて蒼衣が破滅させ、いまは蒼衣を破滅させつつある、死した少女の姿だった。
 そして、蒼衣の窮地を救った雪乃も、勇路を始末するべく、動き出す。いまだ真相の掴めない〈泡禍〉に加え、勇路の存在は危険すぎた。蒼衣を置いていくことに不安は残るものの、雪乃は一人〈泡禍〉の渦中へと飛び込んでいくのだが──
この作品がアニメ化されたら、毎週のように視聴者阿鼻叫喚になるんだろうなあ……どう考えても地上波で放送デキませんが。
それでも、この人の作品は一度映像として見てみたいと思うのは止められない。見たら見たでトラウマになりそうですが。

今回は普段に比べてグロくなかったなあ……なんて感想を抱いてしまうのは相当感覚がおかしくなっていると自覚しておいた方がいいのでしょう。それに、ビジュアルを刺激する直裁的な肉体の損壊という意味でもグロテスクさでは普段よりも大人しかったかもしれませんが、シチュエーションは最悪ですよ、これ。瞬間的な衝撃度、恐怖感は小さいかも知れませんが、この光景を見続けてるとジワジワと頭がおかしくなりそうです。精神的にねじり切られていきそうだ。
それでも、今回の〈泡禍〉の印象がどうしても小さくなってしまったのは、それ以上に衝撃的で絶望の底が抜けたような展開が待っていたからなんでしょうね。〈泡禍〉のもたらす狂気よりも恐ろしい、壊れきってしまった人間の狂気に完全にアテられてしまい、放心状態に陥ってしまう。よりにもよってあの人が……。
これまで仮にも〈泡禍〉と立ち向かってこれたのは、同じ方向を見ながら同じ恐怖に対処してくれる人たちが居てくれたからです。そうでなければ、人として死んでしまう。蒼衣と出会う前の雪乃のように、自らを人ではなく兇器とするか、リカのように人として破綻するしかない。
ただでさえ、いつ踏みしめている地面が抜け落ちて底へ底へと堕ちるかもしれない恐怖と隣合わせなのに、手を握り合い支えあっていたはずの人がまったく信じられなくなったとしたら、いったいどうしたらいいんだろう。
絶望感よりも途方にくれたような呆然とした気持ちにさいなまれる。ただでさえ蒼衣はもう破裂寸前の爆弾を抱え、破滅へのカウントダウンがはじまっているのに。
世界も、他人も、自分も恐怖であり悪夢でしか無い。そんな絶望のさなか、唯一の寄る辺が雪乃さんになってしまった。本当に、「なってしまった」としか言いようがない。〈泡禍〉を潰すことしか考えていなかった雪乃さんが、〈泡禍〉を放置して蒼衣を心配して戻ってくるなんて。騎士としての役割を投げ捨てて、蒼衣の為に戻ってくるなんて。あの、雪乃さんが。
それは雪乃さんがいつの間にか「鬼」から「人」に戻っていた、という意味では喜ぶべきことなんだろうけど、〈泡禍〉を放置した結果、救えたかも知れない人もまとめて死に絶え、雪乃は蒼衣の為に他人を見捨てた、という形になってしまったわけだし、さらに物語としても決して良い方向に進んでるとは考えられないんですよね。
断章が暴走しかけている蒼衣のストッパーとして雪乃が機能し始める。それは二人の絆がより深まった、とも言えるのだけれど、とうとう雪乃さんが蒼衣を優先しだし、ある意味デレはじめた、とも言えるのだけれど……普通なら唯一の希望へと繋がりそうなその絆は、この作品の場合だと余計に救いのない絶望を、より悪夢めいた惨劇をもたらすための布石にしか見えてこない。元々脆く希薄なシロモノより、より頑丈できつく結びついたものの方が、壊れ潰れ破綻しぐちゃぐちゃにすり潰されたときのショックが大きくなるもんなあ。上げたら、必ず落される事を覚悟しなきゃいけないのである……いや、これまで上がった事なんてなかったかもしれないが。

それにしても、神狩屋さんがなあ……。
どこまで狂ったかと戦々恐々だった勇路が、少なくとも目の前の〈泡禍〉の被害者を無視できずに助けてしまうほどにはまともさを残していたのには安心したけれど……今回さらにぐちゃぐちゃにされてたし、楽観は禁物か。蒼衣を殺す気は満々のままだし。なにより、彼の抱えたあの絶望感の描写は凄絶ですらあった。こういう暗黒方面への心理描写については、未だにこの人はちょっとおかしいくらいに怖いヨ。
もう此処まで来るとハッピーエンドなんて欠片どころか塵ほども期待できないけれど、せめて全滅エンドだけは逃れてほしい。それすらも、望み薄なんじゃないかと思えるこの絶望感……。

甲田学人作品感想

断章のグリム 14.ラプンツェル(上)3   

断章のグリムXIV ラプンツェル・上 (電撃文庫)

【断章のグリム 14.ラプンツェル(上)】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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「不本意に生きて、何もできずに死ねばいい」
苦悩の蒼衣を気遣いつつ、雪乃が取る行動は──!?


“──彼女の髪に、触ってみたい……”
 少女が歩道橋を登り、階段の一番上に、ぺた、と差し掛かった時。突然、ぐん、と後ろ髪を鷲掴みにされた感触と同時に、髪の毛が思い切り後ろに引っ張られた。そして、恐怖とともに堕ちていき──。
 いまだ葉耶の悪夢に苦しむ蒼衣は、葬儀屋の件でさらに自責の念に駆られていく。葬儀屋の蘇りにより自我を保っていた保持者が多く、蒼衣は方々から恨まれていた。そして責任を取るかのように、蘇りに関わる〈泡禍〉解決に雪乃と二人で向かうのだが──。
変な話なんだが、一線を超えてしまった今の方が、蒼衣がマトモに見えてしまう。自分のやってしまった行為に慄き、恐怖し、悔恨して苦しんでいる今の蒼衣には、これまではりついていた、普通を標榜しながらどこか異質で不気味で肌が粟立つような違和感が拭い去られたかのようだった。皮肉なものだ。葬儀屋と可南子を消し去ってしまったことで、ようやく蒼衣が普通の少年に見えるようになっただなんて。
でも、そんな感覚ももしかしたら錯覚なのかもしれない。
果たして、蒼衣が悔やみ苦しんでいる理由は、罪悪感ゆえなのか?
もしかして、彼が苦しんでいるのは葬儀屋たちを殺してしまった事そのものではなく、「普通」を逸脱してしまった、という一点にあるのではないか。そういう疑念が湧きでて止まらないのだ。彼が贖罪を希望し、葬儀屋が消えたことで被害を被った人たちにしつこいくらいに頭を下げて回ろうとするのは、そうすることが「普通」の人としての反応だからではないのか?
彼は、この期に及んでなお、「普通」を演じようとしているのではないのか? そういう一抹の疑念が浮かんできて仕方ない。それだけ、自分は蒼衣という少年に対して不信感を抱いているのだろう。
しかし、彼が思い悩み深刻に心を翳らせているのは本当だ。決して表層でだけそう演じている訳ではない。それこそ、切羽詰まって余裕をなくして素の性格が出てしまっている時の雪乃ではなく、平素の冷酷で非情で残酷な怪物であろうと心がけている雪乃が、思わず蒼衣を気遣ってしまうほどに。
まあ雪乃さんの場合は平素の時でも、それこそあくまでそう在らんとしているだけで本来の優しさは殺しきれてないのですけどね。それでも、普段の時の雪乃さんがあんな風に蒼衣を支え、沈みゆく心を繋ぎとめるような行為に出たのは驚かされた。それだけ、雪乃さんには蒼衣が参ってるように見えたんだろうなあ。それでも、思わずあんな事をしてしまうあたり、やっぱりこの人はどうしようもなく優しいよ。可哀想に。

さて、今回のお題はラプンツェル。髪長姫の童話だ。実はこの話については、ラプンツェルの名前くらいしか知らず、話の内容はあんまり詳しく知らなかっただけに、ちょっと新鮮でした。思ってたのとだいぶ違った。というか、マイルドにアレンジされた話の方でも、あんなに生々しい話だったのか。直接的な部分は削られてても、あれじゃあ塔の中で何が行われてたかすぐ分かっちゃうじゃないか。
しかし、髪関係だけでも相当にエグい話になりそうなのに、そこに加えて妊娠が主題に入ってくるとなると、これはまた想像を絶する話になりそうだなあ。今の段階ではまだ起こるべき惨劇が起こり始めたばかりで、グロ描写は最小に留められているだけに。

ただ、今回の話についてはまたぞろ、何か裏かひねりがありそうだ。冒頭のイタズラが原因で起こってしまった事故。あれは今のところ単なる過去の事故として処理されているけれど、描写だけ見てると死んでしまったようにしか見えないし。そもそも、今回の一家を襲い妹を死に至らしめた泡禍の発生源はまず母親と見るべきだし、ならそれはいつ始まったのかとか、考え始めるとそもそも発端から何かオカシイ気がする、この事件。

それとは別に……ああ、そうだった。葬儀屋が消えてしまい、彼によって蘇らされていた死人たちもまた消滅してしまった以上、あの子もまた同じ運命を辿っていたんだ。それはつまり……。

かくして。
また<悪夢>は、さらに続く。

続きが出ても待たされても、息が詰まりそうだ。

甲田学人作品感想

断章のグリム 13.しあわせな王子(下)4   

断章のグリム 13 (電撃文庫 こ 6-27)

【断章のグリム 13.しあわせな王子(下)】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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 bk1

「……可南子さんには、気をつけた方がいいわ」
彼女の過去を知り、二人が下す決断は──!?


 きっと、浅井は自殺したんだとおもう。
 私は呪い殺されるなんてやだ。
 ぜったい耐えられない。
 だから死ぬことにする。さよなら。
 病院で首を吊って死んでいた少女が残した手紙。そこには、自分たちがいじめていた浅井安奈からの復讐が匂わされていた。いまだ解明できていない謎の死を遂げた安奈と、生き返りの彼女を連れて
逃亡を続ける多代亮介。二人を追ってクラスメイトたちに接触を図る蒼衣と雪乃だが、徐々に“生き返り”の鍵を握る可南子への不信感も増していき──。

か、勘弁してくれぇ。今回のクライマックスの凄まじい惨たらしさは常軌を逸してる。怖いとかグロいとかいうレベルじゃない。これまで自分は阿鼻叫喚、地獄絵図なんて言葉を安易に使ってきたけれど、これが本当の地獄絵図だ。これこそが阿鼻叫喚の地獄絵図だ。イヤだイヤだイヤだイヤだ、こんなの絶対見たくない、ましてや巻き込まれたくなんて絶対ない。呪われるのがイヤだととっとと自殺して逃げてしまったあの女子高生が正しくすら思えてくる、その選択こそが正解だったのだと思いたくなる。あんな地獄に巻き込まれるくらいな、それこそ死んだ方がマシだ!!
パニックホラーだって、ここまで物凄い有り様を描いてしまったものはないんじゃないだろうか。以前、一度だけ雪乃が町ごと焼き払ったときはそこまでしなくても、と思ったものだけど、今回ばかりは丸ごと犠牲者もろとも焼き払っても仕方ない、いやそうしないといけないと思わされる代物だった。これ、ほんとに巻き込まれた人は悲惨だよなあ。だって、何にも今回の一件には関係無いんだよ。ただ、その場に居ただけで、なんでこんな惨たらしい最期を迎えなきゃいけないんだ? 死んだ方がマシ、殺されたほうがマシみたいなことになるんだ? 報いも何もあったもんじゃない。理不尽というのもおこがましい。
さすがにこれは、この惨劇を起こした輩に同情なんて湧きようがない。どんな理由があったとしても、どんな想いがあったとしても、絶対に認められない。狂ってる、狂ってやがる。<葬儀屋>の能力によって知性を破壊され発狂してしまったあの少女の方が、はっきりと発狂していると明言されている彼女の方が、まともに見えてしまうのって何なのだろう。狂ってるってどういう事なんだろう。

葬儀屋・瀧と可南子の過去といい、今回のラストといい、むごたらしく救いようのない顛末が多すぎて、いつにも況して精神的なダメージが大きかった。
瀧と可南子、二人の物語を見ていると、雪乃が瀧を騎士の中の騎士と目標に定めていたのは、きっと彼の本質を誤解していた結果で、同時に無意識に理解していた結果だったのかもしれないなあ、と思う。瀧は、決して雪乃が考えるような騎士の中の騎士なんかではなく、ただただ不器用に地獄のような現実に流され続けていただけで、それは考えようによっては泡禍を抱えた騎士という存在の中では、正気を保ったマトモな人間だったのでしょう。そこが、同じく数少ないまともな人間である雪乃のシンパシーを誘ったのかもしれない。
今回の一件で雪乃が瀧と可南子に激烈なまでの拒否反応を示したのは、瀧と可南子の関係に自分と風乃の関係を透かし見てしまったからだと作中でも言明してるんですが、きっと雪乃にとって諦め受け入れ流される瀧と彼に偏執的な愛を傾ける可南子、二人の関係は自分の決してなりたくない未来絵図だったんだろうなあ。

なんで、雪乃はこんなにもまともなんでしょうね。こんなイカレた世界の中で、ヒトをやめて純粋な泡禍を狩る騎士になりたいと願いながら、どうしようもなくまともなヒトであり続ける彼女が痛ましくすら思えてくる。
今回、雪乃のセリフの中に、さり気無く「委員長」の名前が出てきたときには泣きそうになりましたよ。ほんの一言、彼女の名前を出した理由や想いなどなにも語られず、通り過ぎるように呟かれた一言なのに、激烈なまでのショックでした。ああ、雪乃は、委員長のことを、<ヘンゼルとグレーテル>の潜有者だった媛沢遙火を殺したことを、騎士になって以降の彼女にとって唯一の友人だったかもしれない彼女を殺したことを、ずっとずっと忘れていなかったんだなあ、と。傷の一番深いところにずっと抱えているんだなあ、と。
彼女を殺した事を忘れずにいることこそが、彼女が自分のなりたいモノになれない証左だというのに。

そして、ついに一線を超えてしまった蒼衣。いつか起こると規定されていた彼の能力の暴走。すべての悪夢を消し去る悪夢。
何かが、決定的にして致命的な何かが入り混じっていく。現実と夢の境目を乗り越えてくる。繋がってしまう。
そろそろ、この物語もクライマックスだという。嫌だな、いやだ。ほんとうに、怖い。

甲田学人作品感想

断章のグリム 12.しあわせな王子(上)4   

断章のグリム〈12〉しあわせな王子〈上〉 (電撃文庫)

【断章のグリム 12.しあわせな王子(上)】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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死んだはずの者がその先に待っていることは──。悪夢の幻想新奇譚十二幕!

 大きな黒い霊柩車のような不審な車。かつてこの車を見た翌日、隣の家族は忽然と姿を消した。その同じ黒い車が、密かに想いを抱く浅井安奈の家の前に停まっている。安奈はあまり幸福とは言えない学校生活を送っている可憐な少女で、趣味を通して最近少しだけ仲良くなってきたところだった。膨れあがる不安感に押され家の中に忍びこんだ多代亮介は、傷ついた安奈を連れ出して逃亡した──。
 蒼衣が深い傷を抱えた一週間後。処分しそこなった〈泡禍〉被害者を探すため、瀧修司と可南子の工房を訪れた蒼衣たち。だが、可南子に対して雪乃は恐怖を感じずにはいられない。雪乃は“生き返り”という概念に疑問が隠せず、そして──。
断章のグリムで幸せの王子という題材を扱うとなると、それはもう尋常ではないグロテスクな展開を覚悟せざるをえないのである。
なにしろ、王子の像から宝石で出来たや全身に貼られた金箔をはがして、話だ。そのまま、眼球や生皮が剥がされて配られるような話に違いない、と覚悟してたら、あっさり覚悟を上回るエグいのがきて、もう泣きそうになる私。
しかし改めて「しあわせの王子」という話を読んでみると、悲劇以外のナニモノでもない話なんだな、という感想を抱かざるを得ない。王子の使者となったツバメは結局死んでしまい、王子は悲しみのあまり鉛の心臓が張り裂けて、像が死ぬ、というのも変だけれど完全に停止してしまい、彼が救おうとした街の人々はそんな王子の像をみすぼらしくなってしまった、とあっさりと打ち壊してしまう。最終的に彼とツバメの魂は神様に拾われ、天国へと導かれるのだけれど、そもそも天国なんてものは、悲しみのない世界という意味では王子が像になるまえにしあわせに暮らした王宮と何も変わらないんですよね。王子は結局、彼が悲しみ涙を流した街の人々の貧しく悲惨な暮らしを救えぬまま、元居た悲しみの無い世界に戻されてしまったわけだ。

しあわせの王子の童話をモチーフにした泡禍は、まだその鎌首をもたげはじめたばかりで、この上巻は前のエピソードで周知となった可南子の正体と、雪乃の「葬儀屋」への不信感。そして、葬儀屋の元から逃げ出した甦った死体の少女と、その友人である少年の逃亡劇がメインとなる。
「葬儀屋」瀧修司の在り方を騎士の鑑、彼女が目指す「孤高の怪物」を体現するような存在と目標にしながら、そのまともな人間からあまりに逸脱した在り方に不安感を隠しきれない。それは、正しくいうなれば瀧への恐怖そのものであり、雪乃の精神が正常であることを示しているとも言える。結局のところ、雪乃が目指そうとしている「孤高の怪物」という存在を、今の彼女は受け入れる事すらできないわけだ。
甦った死体であることが判明した可南子を、雪乃が過剰なくらいに忌避しているのも雪乃のまともさを逆に証明していると言えるかもしれない。

もっとも、何らかの理由で死んだ可南子を甦らせて一緒に居続けようとしている瀧は、だからこそ雪乃が考えるほど「孤高の怪物」と呼べる存在とは言えないのかもしれない。

にしても、これまでは「葬儀屋」の断章って話の流れで普通に流してきたけれど、こうして改めてスポットが当たって、その有様を目の当たりにすると、とんでもなくエグい能力だよなあ。
泡禍に巻き込まれて死んだ人間は、もしかしたら下手に死体を残さずに死んだ方がマシなのかもしれない。もし、死体が残っていて処理される必要があった場合、彼の能力によってもう一度殺されなきゃならないわけだし、もしかしたら泡禍で死んだ時以上の恐怖と苦痛を味わうハメになるかもしれないのだから。

不幸な弾みから、瀕死の重傷を負ってしまう蒼衣。蒼衣の怪我に動揺しまくる雪乃。この娘の必死に張り詰めた精神の脆さは、こういう時にこそ危うさを増す。普通に蒼衣を心配することさえ、自分に許さない、認めない頑なさと、容易に揺れ動き狼狽えるその心。
そんでもって、未だにこの娘は、蒼衣の異常性についてまるで気づいてすらいない。神狩屋は薄々把握している節があるけれど、彼の語る「普通」を雪乃はそのまま額面通りに捉え、蒼衣を普通の人間と思い込んでるんですよね。そもそも断章を抱えている時点で、そんなことはありえないのに。
そして、これまで安定していた蒼衣の断章も、怪我をきっかけにか不安定化し、暴走の危険性が示唆される。これ、ムチャクチャやばいよな。蒼衣の能力が制御を失ったら、危険どころの話じゃない。
いつにもまして波乱の予感をはらんで、下巻へと続く。

4巻 6巻 7巻 8巻 9巻 10巻 11巻感想

断章のグリム 11.いばら姫(下)4   

断章のグリム〈11〉いばら姫〈下〉 (電撃文庫)

【断章のグリム 11.いばら姫(下)】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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冒頭のシャルル・ペロー版【眠れる森の美女】の内容にはかなり驚かされた。いばらに包まれた城の中で、眠れる姫に王子様がキスをして、みんなが目覚めて、お姫様と王子様は結ばれてめでたしめでたし。と普通の童話版だとここでおしまいなのだけれど、まさかその続きがあったとは。
この内容からすると、王子様の出自というのはかなり解釈の余地があるのだと考えられる。だいたい、王妃が人食いの種族だというのは、どこからどうすればそんな話になるんだろう?

さて、本編の方であるが、毎度の事ながら後味の悪さはとびっきりだ。それに、いつどこから泡禍の悪夢が襲ってくるかという恐怖。今回に関しては普通の一般家庭の一軒家に閉じ込められて、というシチュエーションだったから、異様に切迫感と閉そく感、逃げ場の無いという恐怖感が際立っていたように思う。考えてみると、こういう普通の家の中、もっとも日常的な空間である家の中が、非日常の悪夢に浸食されていく、というのはホラーの定番なんですよね。著名なホラー映画を適当に抜きさして見ても、普通の一般家庭の家の中が舞台となる作品はたくさんあるわけだし。
いつも使っている押入れが、部屋のドアが、水槽の水が、廊下の暗がりが、いつ化け物や怪異が飛び出してくる裂け目になるかわからないという、安心を根こそぎはぎ取られたような恐れ。
その上、雪乃の強大な断章すら通じない、何をやっても対抗できない相手、というのは狭い空間の中というのもあって、凄まじい瀬戸際感が切れ目なしに続いていて、本当に今回は息をつく暇もなかった。
挙句、追い詰められた結果、泡禍の直接の浸食とは関係ない部分で、人の心が壊れていく展開も、重ねて襲いかかってきたわけで。
あれを正気、と言うのなら、そもそも人間の狂気と正気とはどこで区別するべきなんだろうか、と頭を悩ます羽目になる。
むしろ、あの状態を正気だと言ってしまえるところに、雪乃の純真さ、人の良さが垣間見えてしまう。彼女にとって、狂気とは泡禍に侵された事を云うのであって、人が人の侭なら、それはどれほどおかしくなっても人間であり、断章によって壊すべき、殺すべき存在じゃない、と言う事なんでしょう。
その分、少しでも泡禍に侵されている可能性があるのなら、殺せるというのも彼女なのでしょうけれど。以前、それで街一つ焼き払っているわけですし。まあ、その辺を明確に区切らなければ、彼女の心は耐えられないんだろうなあ。

驚いたといえば、彼らの再登場には驚かされた。あの子に関しては、もっと心が破綻して壊れているかもしれない、と危惧していただけに、思っていたよりもずっとまとも、というか以前と同じ断章所有者にしては健全な精神の持ち主のままでいるとは思っていなかったなあ。それは良かったんだけど、おそらく彼がそのままでいられた原因の方が、また不穏で仕方ない。
あれって、いくらなんでも都合が良すぎるんですよね。そんな馬鹿な、という話でしょう。とてもじゃないが、まともな話じゃない。だいたいこれ、【断章のグリム】ですよ? この作品で、何の代償もなしにあんな事が出来るはずがないでしょうに。どうせ、本当にろくでもない、悲惨で無残で残酷な何かが後ろで横たわっているに違いないんだ。だから、彼女の再登場と、可南子さんの顛末については良かった、と思うよりも後々の惨劇を想像してしまって、不安と恐れしか湧いてこない。

事件の顛末は、なんとも悲惨な形に終わってしまった。毎回悲惨であることは変わらないけれど、今回は本当にひどい。
稀に見るくらいいい子で、良い弟だった耀の無残な死もそうだし、そこからもとより壊れていた家族がさらに破綻していく姿は文字通りの惨劇である。なにより、莉緒があまりに可哀想だ。
彼女の行為は正当防衛で、彼女には何も悪いところはないんですよね。自業自得、なんて言える部分は皆無に近い。それでも、彼女はこれから永遠に苦しまなければならないわけです。自らを呪い続けなければならない。
弟の遺した想いは彼女を支える事ができるでしょうけど、それでも重すぎるよ、これは。
いずれまた、彼女も千恵のようにホルダーとして再登場するかもしれませんけど、出来ればせっかく生き残った彼女には普通の幸せを手に入れて欲しいものだけれど……あんな経験したあとじゃ、無理なんだろうなあ。

断章のグリム 10.いばら姫(上)4   

断章のグリム〈10〉いばら姫〈上〉 (電撃文庫)

【断章のグリム 10.いばら姫(上)】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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ほんとに、もう、勘弁してつかーさいogz
今回のグロさは、とびっきりもとびっきり。もう、うわー、である。うわーー。悪寒が止まらない。これ、夢に見そう。勘弁して。
罷り間違っても、この作品だけは映像化はしない方がいいなあ。いや、それともこの人の書く文章だから、これだけ怖いしグロいのかもしれないけど。
夢見子と目が合う瞬間の描写なんて、それ自体は映像にしても大したことないんだろうけど、文章で読むとめちゃくちゃ怖いんだよなあ。

今回はいばら姫、ということでもう明らかに痛そうなことになるの間違いなし、と気構えはあったんだけど、中に入ってくるんじゃなくて中から生えてくるとは予想してなかった。うう、夢に見そう。うええ。
舞台配置も、今回は大胆に敷いてきましたね。閉じ込められてた閉鎖環境、次々と襲いかかってくる怪異、と完全に今回は余裕なし。雪乃の能力も、この空間のおかしな作用のおかげで普段のような切り札になり得ず、御蔭で彼女の精神面もえらい事に。
登場人物が限定されているだけに、配役も分かりやすそうなものだけど……前回の【なでしこ】が敢えて明快な配役だったのに比して、今度のは何が何だか。いばら姫の童話に秘められた寓意も、まだ解釈は端緒に取り掛かったばかりだし、真喜多家での問題といばら姫がどうつながるのかも、今のところ取っ掛かりが見えないし。追い詰められているわりに、それとも追い詰められているからこそか、泡禍の解体がまるで進まず間断なく襲い来る怪異に絶体絶命に追い込まれていく様は、今までにない切羽詰まった瀬戸際感がある。
この作品の場合、誰が犠牲になるかわかったもんじゃないからなあ。ホラーにおける定番はまるで当てにならないし。だいたい、セオリー通りなら一番最初にやられるのはこっちじゃなくてあっちでしょうに。普通なら一番考えにくい立ち位置にいるやつからあんなことになるんだから、油断のしようがない。

それにしても、いつもにも増して雪乃の精神面が不安定だ。切り札である彼女の憎悪の炎が現状で役に立っていないというのは、それほど彼女の存在意義を揺るがしたのか。これまででは考えられないくらいに、蒼衣のことを考えてるんですよね。蒼衣への嫉妬、劣等感。怪物であることを自身に求めながら、この場において切り札として機能するのは普通であろうとする蒼衣であることが、彼女を揺るがしまくってる。
もっとも、雪乃も神狩屋も、というか作中におけるほぼ全員が、蒼衣こそが普通とは程遠い異常性を秘めていることに気がついていないのが、そら恐ろしいわけです。
なでしこの時もぞっとさせられたけど、今回もところどころ明らかにおかしいんですよね。風乃は気付いてるんだろうか。

息を抜く間のない緊迫した展開続きで唯一、ホッとできた瞬間が雪乃が「殺すわよ!」と言うところというのは、なんなんでしょうねえ(苦笑
もちろん、雪乃の照れかくしというか、複雑な感情の発露を示す言葉ゆえであることもそうなんですが、この「殺す」という言葉の、本来なら物騒極まる意味が、この作品では非常に即物的で、現実的で、人間的なものだからというのもあるんじゃないかなあ。悪夢が現実に浮きあがってきたようなこの常軌を逸した状況の中で、彼女の発する殺すという言葉は、むしろ常識的な自分たちがよく知っている地に足のついた世界を連想させて、どこか安堵を誘うような、そんな解釈をしてみたり。
どれだけ異常なんだよ、まったく。


そして、ラストのあまりにも予想外の人物の再登場。そういえば颯姫がここまでまともに泡禍に巻き込まれたのは初めてだったっけ。あの服装の描写と、颯姫との関連性から、出てきたのはまずあの人で間違いないはずなんだけど……なんで、ここで出てくるんだ!?

あと、あとがきの渡瀬さんとのやり取りには吹きだしましたw
この人、私生活でも恐ろしいヒトやぁww

断章のグリム 宗,覆任靴魁焚次4   

断章のグリム〈9〉なでしこ〈下〉 (電撃文庫)

【断章のグリム 宗,覆任靴魁焚次法曄々壇蝶愎諭浸案月かける 電撃文庫

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<なでしこ>編、完結!
これは参った。この展開に真相は完璧に予想外、想定の枠内のさらに外側から来られた感じ。これまでの泡禍と同じパターンで、潜有者を特定していくものだとばかり思っていたから、それ以外の状況をまるで考えていなかったので、かなり愕然とさせられた。まさかそういう事になっていたとは。
確かに、上巻から妙な違和感ばっかりだったんですよね。どうにもこれまでと違って、起こる事件が<なでしこ>童話から想定される惨劇パターンにすっきり当てはまる感じでありながら、どこかそれが上滑りして身になっていないような、ちぐはぐで不気味な感覚が。
それが、下巻になってからさらに膨らんできて、いったい何がどうなってるのか訳がわからなくなってきて。
これまでの泡禍は、起こる惨劇が予想外でありながら、起こった後に吟味してみるとそれが常に明確な指向性を示していただけに、今回はその指向性が不鮮明で、混乱させられたんですよね。
なるほど。なでしこ、という童話の知名度の低さ、この童話の寓意などの研究度の乏しさを逆手にとった、これは見事な仕掛けでした。やられたわ。
下巻に入って、蒼衣といういつもの探偵役が現場を離れてしまったのも、事態の真相解明が混迷を深める結果を上手く導いていたように思える。

しかし、毎回言ってる気がするけど、蒼衣の異常性は今回際立ってませんでした? 普通の日常というものへの執着が、明らかに異常。明らかにこの子、普通というものを履き違えている気がする。普通なら、あのクライマックスで現場の方で異常事態が起こっている、しかも雪乃とも連絡がつかない、なんて一報を聞いて、現場に駆け付けようとせずいつも通り学校に通う方を優先しようとするかな? それも、一瞬も迷わずに。
わかってるのでしょうか、彼は? あの瞬間、自分が普通の生活のために、雪乃たちを見捨てた、ということを。全然、わかってないのか。それとも、わかった上で平然とそうしたのか。聡明な彼が、それを理解していなかったとは、とても思えないんだけど。その決断に、後悔や後ろめたさが一切感じられなかったのも……。
いつも、この子には違和感と居心地の悪さを感じていたけど、今回ばかりはかなりゾッとさせられましたわ。
本当に普通の人間が、目醒めのアリスのような強力で理不尽な断章を、断章保持者として維持できるわけがないのは確かなのですが、多かれ少なかれ他の断章保持者が異常性を有しているにしても、彼はどっか根本的におかしいんじゃないでしょうか。
雪乃さんなんか、今回さらっと明らかになってたけど、追いつけられて余裕がなくなるほど、普段の冷酷さや非情さが薄れて、情深い行動を咄嗟に取ってしまう人なんですよね。
過去編を読むと分かるように、彼女元々はとても優しく、親身になって他人を気遣える女性だったんですよね。そんな素の性格が、逆に余裕がなくなればなくなるほど、表に出てしまう。普段の【雪の女王】としての彼女の顔は、やっぱり造った仮面の顔だったってことなんでしょうけど。
まあ、自分の意志で外したりつけたりできるような類いの仮面ではないのでしょうけど。根深い憤怒や憎悪、絶望と自己嫌悪、そういった激情によって形作られ、貼り付けられた雪の仮面。
でも、それがやはり仮面に過ぎないというのは、何だかんだと言いながら、結果として彼女の行動が周りの人間を助け、心が傷つかないように気遣う形となっているものからも明らかなのでしょう。ただ、それに周りの人間も、本人も気づいていないようなのが不幸なのか、それともこの環境においては幸いなのか、複雑なところです。

そして、断章のグリム、としては今まででは珍しいパターンの結末。ただ、生き残った人間の心に刻まれた傷跡は、これまでのものと変わらないくらい酷いものだったんじゃないかな。いや、これまでが有無を言わさぬ悪夢の惨劇に、問答無用に心砕かれたものだとすれば、今回は明確に自分の責任によるもの、という意識がある分、背負った重荷はより重たいものなのかもしれない。エンディングの彼の暗いまなざしからは、そんな傷跡が伺える。
まあ、死人が思いのほか少なく済んだ、という意味ではやはり画期的なんだろうけど。

断章のグリム 8.なでしこ(上)4   

断章のグリム 8 (8) (電撃文庫 こ 6-21)
断章のグリム 8 (8) (電撃文庫 こ 6-21)

【断章のグリム 8.なでしこ(上)】 甲田学人/三日月かける  電撃文庫


……なんだか、今回は異様に配役がすっきりと決まっているのが、不気味なんだよなあ。なでしこ。犬。料理番。母親。父王。
全部、それらしい人物が当てはまる。
毎回、あっと言わされるような人物に、思わぬ配役があてがわれることが多いだけに、この順当さが不気味なのだ。
後編で大どんでん返し的に、配役の変換が行われるのか、それともここまで明確に提示したことで逆にストレートにこのまま行くのか。どちらにせよ、迷わされるわけだ。
【なでしこ】という童話は、蒼衣などと同じく私もここで初めて知りました。たぶん、これは読んだ記憶がない。
マイナーなのだろう。
それだけに、この童話についての研究は他の著名な童話と比べて進んでいないはず。逆にいえば、解釈の自由度は大きいとも言えるんだけど、とっかかりが少ないというのはハードル高いはず。
それでも、ここでの童話の解釈というのは、あくまで泡禍における解釈だから、実際のそれとはまた異なるだけに、なんとも言えないのだけれど。
はたして、王子役が誰なのか。順当に考えるなら、あの二人のうちのどちらかなのだろうけど、それだとあまりにもストレートすぎる。
本来部外者であるはずのロッジの面々もまた、ここに組み込まれてくるのだろうか。
そもそも、潜有者が誰なのか。

今回は、あの【人魚姫】の事件での生き残り、海部野千恵も再登場する。泡禍の惨劇にまみえることで、やはりというべきか彼女も<断章保持者>になっていた模様。
ただ、そのせいでかなりえらいことに。本当に、泡禍というのはたとえ生き残っても、決して無傷では終わらないんですよね。人間と言うものを、あらゆる意味で破壊していく。
彼女ものちのち、騎士として活動することになるんだろうか。彼女の断章は、またえらく扱いにくそうだけれど。
……後々、なんて話をするには、まずこの【なでしこ】を生き残らにゃならんのだよなあ。たとえ、泡禍を生き残ったからと言って、あっさり別の
泡禍に殺されるケースだって無きにしもあらずで……胃が痛い。
これでも彼女、さまざまな事件の中で、致命的な立ち位置にいながら生き残った稀有な例なだけに、なんとか今後も生きていてほしいんだけど。
この作品、登場人物の致死率が高すぎるからなあ。

だいたい、この【なでしこ】からして、順調に人が死にすぎるw
しかも、今回は気合入ってるかして、もういつもにもまして、グチャグチャのグログロ(うへぇ
だから、あんなグロい惨劇を、ありありとまぶたの裏に移り込むような描写をしないでください。夢に見そうだよ、ほんとに。
いやまあ、それが売りなんでしょうけど。それ見たさに読んでるのもあるんですけどww
後半、何度もミスリードされて、最後にあれでしょ? このシリーズほど、読んでて心臓に悪いのは滅多ないですよ、参るなあ。
……しかし、今回はマジで登場人物の死亡率が高すぎるなあ。もう、残って無いじゃないですか?(ぉ
……それがだから怖いんだって。後半もまずペース落ちないだろうし。
マジで千恵さん、危なくないか?(汗

断章のグリム 察ザ發陵颪鬚Δ爐瓩鵑匹  

断章のグリム (7) (電撃文庫 (1574))

【断章のグリム 察ザ發陵颪鬚Δ爐瓩鵑匹蝓曄々壇蝶愎諭浸案月かける 電撃文庫


……orz

いやね。泡禍が絡まない表題作の【金の卵をうむめんどり】の話が一番悲惨でグロくて救いようのない話ってのは、酷いハナシじゃないですか?
前の二つの短編が、なんとか前向きな形で終わる話だっただけに、過去編でもある最後の【金の卵をうむめんどり】が、あんまりにもあんまりな話で、妙にヘコんでしまった。
なまじ、やたらと面白いもんだから困るんですよね。
というわけで、今回は短編集。ただし、短編だからと言って侮るなかれ。
こと、ホラー描写については全力全開。特に【よくばりな犬】のあの手は反則。
わたし、こわくて泣いちゃうよ?
もう「手」は勘弁。痛いわ怖いわ、毎回毎回この著者のこの種の描写能力に関しては悲鳴をあげるしかない。もう異常です、これは。
自分、ほとんどホラー小説って読んだことないけど、みんな甲田学人氏ばりに怖いの? とてもそうは思えないんだけど。

ところで、今回は初の過去編ということで、まだ泡禍に出会う前の雪乃と風乃が出てくるわけですけど……べ、別人だ(唖然
え? 雪乃ってこんな娘だったの? 全然違うじゃない。……いや、そんなことはないのか。現在の雪乃と過去の彼女とはまったく別人みたいに見えるけど、そうかうん、極端な変容があったとしても原型として本来の彼女がこういう女の子だったというのは決して違和感がない。確かに、現在の雪乃からもチラチラと原型である彼女の要素は垣間見えている。
むしろ、驚くべきは風乃の方かもしれない。
普段の言動や、雪乃が彼女に向ける憎悪からして、どれほど破綻した人間だったのかと思ってたけど、思っていたより遥かに普通のメンタリティの持ち主だったんじゃないか、これは。もちろん、歪みがありそれが通常の生活を送るのにも、普通の少女として生きるにも難しい状況に置かれているのも確かだけど、自分の歪みを自覚し、周囲を嫌いながらも嫌ってしまう自分を嫌っているあたり、物凄くまともなような……。

いや、でもそれ以上に【金の卵をうむめんどり】の主人公であった翔花は普通の少女であったわけで。
死んだ卵と雛と怪物か……。
結局、過去に何があり、風乃はなにになってしまったんだろう。
ただ、雪乃は自分の世界を壊されて、でも怪物になろうとして未だになれずにいて、そんな彼女を風乃は見守っている。
いったい、風乃の真意はどこにあるんだろう。わからんなあ。
わからんと言えば、主人公の蒼衣がやっぱり一番わからんけど。
やっぱり、一番異常で怪物のように見えるのって、こいつなんだよな。
未だに普通の日常が壊れていないって、おかしいでしょ、これ。
一番普通で人畜無害でおとなしいこの男が、話が進むにつれて一番不気味で恐ろしい存在になっていきそうな、そんな予感。

断章のグリム 6.赤ずきん(下)  

断章のグリム 6 (6) (電撃文庫 こ 6-19)

【断章のグリム 6.赤ずきん(下)】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫


これは素晴らしかった。童話・赤ずきんを模した<泡禍>。その度肝を抜く配役と見立ての意味、事件の真相。
自分の中でシリーズ随一の傑作と思っている二作目【ヘンゼルとグレーテル】の魔女のお婆さんとグレーテルの往還に匹敵する精妙な解釈と真相だったと思います。
赤ずきんと怪談の類似性なんて、こういう形で指摘されなければ全然思いもしなかっただろうし。どこまで正確に突っ込んでるかはわからないんですけど、ホラーや謎解きミステリーとしての側面とはまた別に、童話に含まれた、もしくは忍ばせてある意味や背景などを色々と解釈・解体し、再構成していく童話研究的な側面がまた、とても面白いんですよね、この作品。第一級のホラー描写に震えあがり、予期せぬ事件の展開や真相に仰天しながら、同時に「ほー」やら「はー」やら「へぇ」やら主題となっている童話に秘められた意味や新鮮な視点、解釈に感嘆の吐息を洩らしながら読み進める。一粒で三種美味しいって感じですよ。
その上、雪乃さんが「殺すわよ」って殺伐とツンツンしてくれているというヒロイン強度も一級品という……なんということだ、まるで隙がないじゃないか!

それにしても、この作者の話読んでると、そんじょそこらの物語に出てくる狂人がまったく温く感じられてしまって、非常に困る。
これに出てくる狂人は本気で、ヤバいもんなあ(汗
他の作品なら飛び抜けて危ない人のはずの笑美さんですら、最後まで読むと明らかに前座でしかないし(w


もしそうなら―――※※※※は既に完全に狂っています。


この文字列を見た瞬間、ゾワゾワっときて「うわっやべえッ」と感じましたもんね。
そんでもって、白日の下にさらされる真相。今回は、かなりキました。

気になるのは<最後の赤ずきん>ですよね、やっぱり。この人物はまとも過ぎたんでしょうね。周りを見渡しても、主人公の蒼衣を含めて誰も彼もがどこかが致命的にイカレてしまってる人ばかり。唯一例外は雪乃なんだと、私は思ってるんですけど、彼女は彼女でガチガチに決意で心を鎧ってしまってますからね。
結局一番マシな健全性を保ってる人物が、一番最悪の顛末を選んでしまうあたりが、この作品世界の救いの無い残虐さを示してるんでしょうけれど。
これで、こいつも精神を病んじゃったのかなあ。
再登場しても、さらなる最悪を伴ってくるとしか思えなくて、怖いです、怖い。

 
12月2日

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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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11月6日

(角川書店単行本)
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(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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11月5日

エンターブレイン
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(エンターブレイン)
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(ドラゴンノベルス)
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(ドラゴンノベルス)
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(PASH!コミックス)
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(フロース コミック)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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