異世界に転生したら美少女で女城主だった。 (ファミ通文庫)

【異世界に転生したら美少女で女城主だった。】 水城みなも/冬ゆき  ファミ通文庫

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Kindle B☆W

チート能力も特殊スキルも無い青年が“美少女力”で三国制覇、目指します!

黒猫を助けるため七門景は命を落とし――小国ステンベルグのお姫様ティフォに転生した。そして彼女のペットの黒猫に、本来のティフォの魂が入ってしまった。「あたしの身体を返してよ!」と言われ困り果てる景。しかし彼女は二つの大国のうち一方から結婚を、一方から戦争をふっかけられ、貞操も命も絶対絶命! 転生スキルも何もない景は、この絶世の“美少女力”で危機を切り抜ける決意をするのだが――!? 興国の美少女となる三国制覇譚、開幕!

中身が入れ替わっての転生モノというのはよくあるけれど、中身を奪われた側のお姫様が側についているというのはあまり見ないパターンかも。その分、主人公が孤立していなくて対話しながら物事を進められる、というのは何気に大きいのかも。お互いに育った環境も世界も違う二人ですから、価値観も違いますし男女の性差の違いもある。だからこそ、お互いに見えていない部分を相互に指摘しあえる、というところもあるんですよね。国を背負う責任というものを、誰にも相談できずに一人で背負うというのは苦しいものですが、それでも胸襟を開けて話し合える相手がいるというのは大きいでしょう。
主人公の景、覚悟が据わるといっそ冷徹なリアリストとしての側面が浮かび上がってくるだけに、そこに国を、国民を愛するという想いを共有するティフォの存在は結構なアンカーになってるんですよね。まあ、その芽生えた愛情こそが、彼に一層冷徹な決断を後押しする燃料になっているというのも皮肉な話なのかもしれませんが。
ぶっちゃけ、景の戦略は敵の思考を誘導するという導線の引き方こそしっかりしているし、それを仕掛ける相手のことをちゃんと把握し、冷静さを奪う策を幾つも重ねているわけで決して行き当たりばったりではないのですけれど、いざ予定外のことが起こった場合、読みどおりに相手が動いてくれなかった場合などに際してのマージンが全然ないんですよね。それだけ、国力にもとり得る選択肢にも余裕がさっぱり無い、という描写が山盛りにあっただけに、決して景の考えが浅いとか甘いとかではなく、文字通り綱渡りの賭けだった、というのを仕掛けたがわも十分承知した上での緊迫感にも繋がっていたわけですが。
しかし、主人公って中身は男なのに意識は完全に身体のお姫様に引っ張られてるのね。本来ティフォ姫のものである恋心を、彼も自分のものとして意識してしまっているわけですし。
TSものに対しての捉え方は人それぞれだけれど、自分は身体が女になったのなら男を好きになってもいいじゃない!派なので、身内のイケメン男子にトキメイてしまうのは大いにありなのですけれど。
恋のライバルが、自分の身体の本来の持ち主であり唯一無二の相棒、というのはなんとも乙女ロードじゃないですか?
あとはもうちょい、その恋愛対象のお兄さんのキャラ立てと掘り下げを進めて欲しいところです。今のところ、脇キャラは宰相と将軍のおじさんコンビの方が遥かに立ってますもんねえ。それはそれで全然構わない気もするのですけれど。