神と奴隷の誕生構文

神と奴隷の誕生構文(シンタックス) 34   

神と奴隷の誕生構文III (電撃文庫)

【神と奴隷の誕生構文(シンタックス) 3】 宇野朴人/きくらげ 電撃文庫

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一大スペクタクルで贈る、次世代ハイ・ファンタジー第三弾!

 発展世界による侵略から後発世界を守るため、大陸統一を進めるロケィラ女皇・セレィ。オルワナ・アヌビシアとの三国同盟に成功し、盟主を務める彼女の次なる舞台は、同じ有角種のヘィロンが支配する中陸地域の大平原へとうつる。
 中平原の覇者であるヘィロンと、東方を支配下においたセレィ。有角種同士の威信と覇権を賭けた戦いが始まる……!
 同時期。発展世界の尖兵“神狩り部隊”が再び動き出す。若き導神・クルァシン不在の中、その防衛はアヌビシアの少女・サーリャの手に委ねられ……緊迫の第三弾登場!
これまで異種族との対話と融和がセレィ女皇にとっての試練だったわけだが、今度の相手は同じ有角種。しかも、現状中平原を征服して、長爪種と牙種を支配下に収めている一国となる。融和をもって大陸を統一し発展界の侵攻に抵抗しようとするセレィに対して、ヘィロンは同じ種族ということで友好的に振る舞いながらも、セレィに融和と違う大陸統一の手段を示すこととなる。それこそ、武力による征服。
ここでセレィは、なぜ征服ではなく融和をもって大陸を統一させなければならないか、という命題をクラゥシンからの教えや導きに手を引かれた結果でも、健全な良識や人としての良心に基づくものでもなく、皇として、エナ・ガゼを発展界からの侵攻から守る者として、融和による統一が征服による統一よりも発展界に対抗する際に有効である事を、具体的に証明しなければならなくなるわけだが、これはヘィロンたち中原の有角種に証明する、という以上にセレィがクラゥシンからの借り物の思想ではなく、自分で考え自分で実感し体感し、導き出した答えとして、民族の融和と統一というこれまでの目的を彼女自身のものとする意味があったと思われる。
丁度、クラゥシンが別行動になって一連のヘィロンとの交渉と対決はすべて残されたセレィと、サーニャたちによって為されるわけだけれど、ここで彼女たちは自分たちがもう導神に手をひかれるだけの存在でなく、自立した彼と対等の、発展界と戦うための同志であることを証明してくれるんですよね。
中原の覇者たるヘィロンたちに対抗するため、有角、有翼、盲、長爪、牙という異種族の力と想いを結集して立ち向かうセレィたち。これは面白かったなあ。
クラゥシンと掛け合いをしているセレィたちも好きなんですが、今回彼が居ないことでむしろセレィたちは輝いていたような気がします。特にサーリャなんか、セレィの軍師的な立場になり八面六臂の大活躍。セレィの異母妹であるコリォの活躍も含めて、三人の少女たちの絆が姉妹以上に深まっていくんですよね。セレィは今回、統一王としての威風を見事に確立しました。同時に、妹や友を愛する姉としても、カリスマ性を大きく発揮して、これまで以上に敬愛と忠誠を獲得したんではないでしょうか。サーリャなんか、これまでクラゥシンに傾倒していたのが、セレィ個人に随分と魅せられ惹かれていたような気がします。勿論、その前にサーリャが献身的に自分の心身を削ってセレィの為に奮迅したからこそ、セレィが先にサーリャにメロメロになった、という流れがあったんですが。なんか終わってみればこの三人娘、お互いに好き好きだろう、というくらいに仲良くなったなあ。良かった良かった。
その頃、クラゥシンさんといえば、メリェを連れて今度は長爪種と牙種の娘さんに粉掛けてました。いや、別にそういう意味じゃないんですが、なんて女の子ばっかりなんだ、という疑問はあるぞw

1巻 2巻感想

神と奴隷の誕生構文(シンタックス) 23   

神と奴隷の誕生構文 2 (電撃文庫 う 4-2)

【神と奴隷の誕生構文(シンタックス) 2】 宇野朴人/きくらげ 電撃文庫

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若き神が、その身を賭して世界を駆ける。気鋭のハイファンタジー第二弾!

 発展界による歪な歴史干渉。
 その脅威から後発世界を救うため、地上に舞い降りた一人の若き神クルァシン。
 敵対する最悪の暴神オルデンダラィムを退け、無事オルワナとの会戦に勝利したクルァシンは、ロケィラの皇女・セレィと共に、隣国アヌビシアと同盟を結ぼうと考える。彼女は近い未来、この世界を統一し、いがみ合う大陸全土に平穏をもたらすはずの、選ばれし少女だった。
 しかし、アヌビシアとの交渉が始まった矢先。若き神を狙って、“神狩り部隊”最強の男が別次元から襲来した。
その国産みの成り立ちから、他国、他民族への不信が根底にあるアヌビシア。深く暗い森の底で、視力を無くしその際立った聴力でもって不可侵を司る盲民族たちの鎖国国家。長年血で血を洗う戦争を繰り返してきた有角種と翼の民を纏め上げたセレィだが、ある意味発展界による分かりやすい侵略行為を利用しての和平だったこともあり、彼女がこののち大陸を統一するための力を持っているのかの真価が問われる最初のハードルがこのアヌビシアだ。武力を背景としながらも、それはあくまで交渉の場を成立させるためのカードとして。ただ力で相手を屈服させるのは征服に過ぎない以上、ここで彼女は他国を信じない民族に対して、武威ではなく志と利潤を以て信頼を得て、同胞として彼らを迎えなければならないという試練を得ることになる。
実のところ、ここからなんですよね。セレィが本当に王としての資質を示し始め、クルァシンと対等の同志として立ち始めるのは。一巻では打ち解け心許しあい認め合いながらも、まだセレィはクルァシンに一方的に教えを受け、導かれる立場だったのですが、むしろ此処では文化の衝突など未知の概念をクルァシンから学びながらも、多くを知るが故に立ち止まり迷いがちになるクルァシンを、セレィが逆に叱咤し、彼の迷いを晴らし、勇気を与える存在になっていくのです。導きの神と自称するクルァシンですが、果たして彼はそれを自分が導く者であるという自負から称しているのではないような気がしてきました。意識してか無意識か、彼は自分がこの地の民を導くと同時に、自分を導いてくれる存在を求めているのかもしれません。それこそ、果てのない贖罪の旅路を終わらせてくれる答えへと導いてくれる者たちを。答えをくれる人々を。
彼の懇願にも似た願いに、セレィは応え得るだけの存在へと成長してくれそうな手応えを、ここでようやく感じました。そして、新たに登場した盲民族にて天才と謳われるサーリャ。まだ見ぬ世界に恋焦がれ、世界の美しさを信じている彼女もまた、クルァシンの因業の旅路に光を与えてくれる存在になり得そうです。メリェは逆に距離感が近すぎて、彼女に取っての世界がクルァシンそのもの、となりそうなくらいだから、支えになっても導きとなるかは微妙なんでねえ。セレィ一人にクルァシンの闇を導く役割を担わせるのはちと酷な所があると思っていたので、サーリャの存在はクルァシンにとっても、セレィにとっても思っている以上に大きくなるのかも。
他者と交わることは、ある意味その純粋性を失わせ、侵略と同じように決定的に相手の存在を失わせしめてしまうものなのかもしれない。あるいは、自分が行なっている事は結局発展界の行う植民侵略と変わらないのではないか、という深刻な疑問に因われるクルァシン。しかし、他者と交わらないということは閉塞であり停滞であり衰退へと繋がるものである。特に、世界は閉じたままでは息苦しいばかり。交流によって生まれる変化は必然であり、健全な発展になるか一方的な搾取になるかは結局当事者たちの心づもり次第。
悪意だけじゃなく好意や善意が原点であっても、容易に交わりは相手を摩滅させることにつながりかねない以上、話はそう簡単じゃないのでしょうけどね。でも、セレィが語るように、サーリャが望んだように、世界の美しさとは止まって変化しないから生まれるのではなく、常に対流し、新しきを生み出すことによって発現するものなのでしょう。それを忘れない限り、セレィたちは上手くやれるはず。一度すべてを失ったクルァシンは、ここで再び得難い良き同志に出会う事が出来たんだなあ、とちと感慨深くなってしまった。

1巻感想

神と奴隷の誕生構文(シンタックス)3   

神と奴隷の誕生構文(シンタックス) (電撃文庫)

【神と奴隷の誕生構文(シンタックス)】 宇野朴人/きくらげ 電撃文庫

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 翼をもつ民からの侵略を受ける有角種。君主セレィのもと、奮戦するも既に戦局は深刻化の様相を呈し、有角種は滅亡寸前の状況であった。
 しかし一人の若者が戦場に舞い降りる。自らのことを『若き神』と称する彼が、ここにやってきた目的はただ一つ。翼の民に加担し、異世界より来る『歴史を改変する者』を打ち滅ぼすためだった。
 世界を自らの理によって律しようとする強大な勢力に、一人で立ち向かおうとする『若き神』。その双眸には秘めたる決意が映っていた。
 神と奴隷の誕生秘話に迫る、期待のハイ・ファンタジー、いよいよ開幕!

SFファンタジー戦記とは良く言ったもので、これは凄いなあ。ある程度ジャンルの違う世界観は一緒の所に閉じ込めても上手く混ざらないものだけれど、この作品は実に絶妙な配合で同一線上に攪拌されている。なるほど、ファンタジーの世界の上位にある神話世界を、SFの世界観と=で繋げているから上手く合致するのか。
ギュウギュウに盛り込まれた設定群の大津波にも圧倒されたけれど、それ以上に主人公である若き神「導神クラァシン」こと奄倉信の寄って立つ背景の事情が凄まじいを通り越して凄絶である。彼の背負うものの悲惨さは、これヘヴィとかハードとか言ってられないよなあ。ある意味、彼についてはもう既に終わってしまっているとすら言っても過言ではないはずだ。彼個人はもう救われることはないだろうし、幸福な結末なんてあり得ない。彼と共に歩いてくれる人は死者以外に存在せず、彼が愛し彼を愛した人々は本人が望むと望まざると彼を苛む呪いとなり、彼を縛る鎖となり、彼を否定する在り方として寄り添うしかなくなっている。結局彼のやっていること、やろうとしていることは彼が生前にできなかった事をやり直しているに過ぎず、自分と同じ惨劇を他所で繰り返させないための足掻きであり、それは彼個人を救うものではないんですよね。それ以上に、彼がやっていることは対処療法に過ぎず、元凶を揺るがすものではない以上、ひとつの世界を守りきったとしてもその次の世界に旅立ち、永遠と終わることのない防衛戦を続けなければならない無限地獄だ。そして、戦いを続ければ続けるほど彼の神としての在り方は負債を相乗に負わせ続け、彼の苦しみは増して行く。
そこに、救われる余地など何処にもない。
これだけの業と罪と呪いを主人公に背負わせて、これ、どうやって決着を付けるつもりなんだろう。
もし彼が救われる可能性があるとすれば、それこそ発展界が他の界に侵攻する根本原因である、人間存在に対する絶望と諦めを根底からひっくり返すようなナニカがなければ始まらないわけだが、それを遥かに文明の遅れた植民界のセレィたちが示せるのだろうか。それでなくとも、クラァシンの神の罪の痛みを、彼女らは癒せるのだろうか。何れにしても、非常にハードルが高い前提条件である。
 
1月25日

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