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竹岡美穂

蒼井葉留の正しい日本語 3   

蒼井葉留の正しい日本語 (ファンタジア文庫)

【蒼井葉留の正しい日本語】 竹岡葉月/タケオカミホ 富士見ファンタジア文庫

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ラノベ作家になるという夢を叶えるべく、高校進学と同時にひとり暮らしを決めた久坂縁。彼が新居である「鳩居寮」で出会った少女・蒼井葉留は、パッと見は可憐、中身は「辞書」と「正しい日本語」を愛しすぎる変人だった。「あのあの、久坂君。ここの、奥義“土龍天翔爆裂拳”とはどういう意味でしょうか」書き上げたばかりの原稿を真っ赤に校正され、中二ワードの意味を真っ正面から質問され、縁のライフは削られっぱなし!ラノベ作家(志望)と日本語少女のディクショナル・ラブコメディ、開幕です!!
あれ? イラストの人、カタカナになってるけれど、竹岡美穂さんじゃあるまいか。なんでカタカナ表記にしたんだろうか。作者と名前被るから? むしろ、竹岡姉妹の共同作品というのを前面に出した方が映えるでしょうに……て、あれ? 商業作品でこの二人が組んで出す作品ってもしかしてデビュー作以来!? その意味でも記念的作品なんですよね。
正しい日本語と言われると、どうしても構えてしまいます。これが正しい、と指摘されるというのは逆から見るとそれは間違っている、と言われているようなもの。しかし、数式のように決まった解答があるものならともかく、言葉というものは常に変転していくものであり、正しい日本語とはどの時系列的・地域的な起点を元にするかで全然変わってくるものであります。ところが、正しい日本語を主張しそれを正しいものとして声高に言い募る人々の少なからぬ数が、その起点を主観上にしか持っていないように感じます。言葉もまた、歴史。そして、言葉の正しさとは、どれだけ相手に自分の意図を、意思を、想いを伝えられるか、それに尽きるのではないでしょうか。
辞書をこよなく愛し、日本語という迷宮にどっぷりと頭まで浸かっている日本語愛好家の蒼井葉留。彼女は、決して凝り固まった「正しい日本語」の信奉者ではなく、また布教家でもありません。彼女の正しい日本語への愛は、排他でも共有でもなく、ひたすら個人的に愛好する事に傾いています。勿論、重度の愛好家らしく、話題には食いつきますし、ついつい口出ししてしまったり、人の文章を添削校正しちゃったりも我慢できずにしたりもしますけれど、決して自分の正しさを押し付けてくるわけではありません。言葉の歴史にも造詣が深く、言葉の誕生、意味の変遷についてもほぼ正確に網羅しているだろう彼女にとって、正しい日本語とは決して固定されたものではなく、久坂の創りだした中ニワードを好奇心たっぷりに掘り下げていったり、リア充などの新語に目を輝かせたりと、とても柔軟に変化と新規と受け入れていきます。
そんな彼女が、どうしても認め難く我慢しがたかった事とは、言葉に託された、込められた思いが間違って解釈されてしまうこと。ちゃんと正しく伝わらないこと。正しい日本語とは、きっと正しく伝わる日本語の事なのだ。
尤も肝心の蒼井葉留当人は、ポワポワとした天然風情ですぐに自分の世界に夢中になってしまうせいか、話をしても果たしてどれだけ伝わっているかわからない、というのは何とも微苦笑を誘われる為人なのだけれど。
でも、彼女の語る日本語は、とても健やかで雅で優しく柔らかい。帰国子女ということで、ライトノベル作家を目指しながらも決して日本語に長けている訳ではない主人公久坂にとって、彼女の日本語へのスタンスはとても新鮮で刺激的なんじゃないだろうか。とりあえず、当面彼女に校正と添削をしてもらうだけで美しく涼やかな文章を書けるようになるんじゃないだろうか。彼女の赤ペン添削は、指摘こそ多いものの一方的な否定は見当たらずとても柔らかいので、何というか抵抗感なく、感情的にならずに受け入れられると思うんですよね。彼女には、自分はこういう意図でこの言葉を使ったのだ、と従来とは違う使い方をしていても、ちゃんと説明すれば受け入れて貰えそうだし。そこで説明できない、恥ずかしい、抵抗感がある、というのは使う言葉に全力を尽くしていないようなものですしね。

学園モノの中でも「寮」を舞台にした作品というのは、年齢も違い人柄も様々で、普通の学校生活ではまず一緒に行動することのないだろう人たちが、同じ空間で共同生活を送るという意味で、部活モノとはまた違う雰囲気があるものだけれど、本作も順当に「寮」モノの味わいを醸し出しているので、先々が楽しみです。
なんか既に危うい話が聞こえてきているのは、気にしないもん!

竹岡葉月作品感想

スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの4   

スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの (ハヤカワ文庫JA)

【スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの】 籘真千歳/竹岡美穂 ハヤカワ文庫JA

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人間に奉仕するために造られた人工妖精。その一体の揚羽は、東京自治区の閣僚を殺戮し続けている人工妖精“麝香”の影を追っていた。その頃、揚羽の双子の妹である真白は、自治区総督の椛閣下が暗殺されたことを知る。自治区最大の危機を前に、揚羽と真白はそれぞれ、己の今後の人生を左右する選択を迫られる。守るべき者のために、己の全てを犠牲にする覚悟をした揚羽の運命は…揚羽をめぐるシリーズ4作のフィナーレ。
しばらく、時系列が錯綜している上に揚羽さんが複数人存在していらっしゃったので、大変混乱した。まあ、気づかなかった二巻での真白=揚羽は、今回は違いがよくわかったので致命的な事にはなりませんでしたけれど。ってか、揚羽と真白の違いはこうして並んで書かれると顕著に出てきますよね。思っていた以上に、真白が精神的に未熟だったように思います。それ以上に、揚羽が姉として非常に出来た人物だった、ってことなんでしょうけれど、椛閣下がこの愚妹にブチ切れてしまったのもさもありなんと納得してしまう。その生まれを考えても仕方ないとはいえ、あまりにも未成熟でメンタルが幼いもんなあ。それに、未熟であるという以上に拙いというかスペックが足りないというか、そもそも考えが足りない、というか揚羽を知っている身からするともどかしいし、その程度で揚羽を名乗り、アクアノートを襲名するなんておこがましい、と椛閣下が怒り心頭するのも完全同意なんですよね。揚羽も、結局この娘に身の丈以上のものを背負わせてしまったわけで、罪作りだわ。さらには挙句に、自分が就くはずだった立場に、真白を登らせてしまったわけですしね。椛閣下を除けば、やっぱり揚羽が一番総督の座にふさわしかったと思うんですよね。彼女の自己評価の低さの原因については今回、じっくり語られていますけれど、重ね重ね残念に思う所。
だいたい、揚羽さんは全部背負いすぎなんですよ。ただでさえ、男性側自治区を追放されることになった件だって彼女が全部負っ被った結果だったのに、更にこの上今回これですよ。この娘の献身には、身を切り刻まれるような切なさを感じてしまう。なんでもっと幸せになろうとしないんだろう。本当に細やかな幸福で、この娘は満足しちゃうんだから。せめて、何も期待していないような生き様だったならまだしも、陽平とのデートであれだけ心からの笑顔を浮かべていたのを見せられると、身につまされるなんてものじゃありません。ついに、陽平の旦那が亡き妻の事を棚に閉まって、今抱いている感情を剥き出しにして揚羽のことを掴もうとしてくれたのに。その手を、そっと包み込みぬくもりを刻んでから、握ることなくふわりと遠ざけるように行ってしまった別れ方は、あんまりにも切なすぎて寂しすぎて、ほんとに哀しかった。
鏡子さんが、このバカ姉妹をあれだけいつも怒鳴りつけ、慈しんだのもよく分かる。この娘たちは、本当に馬鹿だったんだから。でも、繋ぎ止められなかったんだよなあ。水淵のお父さんといい、こんなにも色々な人たちから愛されながら、この娘たちはその愛に報いて愛し返すやり方が不器用極まりなく、幾多の人を救いながら多くの人に痛みや苦悩や後悔を刻み込んでいってしまった。そのことに、多少なりとも憤りを感じずには居られない。
水淵先生が語っていたけれど、人類は他の知的生命にその存在を肯定し祝福してほしい、という根源的欲求を持っている、というお話。これは、他のSFでも度々見かける主題であり、すごく共感できる感覚なんですよね。人間という種の存在を知ってほしい、認めてほしい、肯定してほしい、いつまでも覚えていてほしい。いくつかの作品で、このテーマに沿った展開を目の当たりにしてすごく感激したこともありますし、本作でも揚羽という人工妖精という枠組みから外れた本当の意味での人と異なる知的生命体が、人をこれほど愛してくれたことに、水淵先生が抱いた感慨と感動は、とても胸に染み入るものであり、この方が感じた思いに共感できる。
でもね、その肯定は一方通行であって欲しくないんですよ。果たして水渕先生がどこまでもどかしさを感じていたかはわかりませんし、鏡子さんをはじめとする揚羽を知る人達がどれほど唇を噛み締めていたか、わかりませんけれど。揚羽が人を愛し肯定し祝福してくれるように、人と人工妖精の側もまた、揚羽を愛し肯定し祝福したかったはずなのです。もっとちゃんと晴れ晴れと、よくやったねと褒めてあげたかった。それを、きちんと受け取ってくれないことへの、もどかしさ、悔しさは如何ばかりだったか。貴女がたとえどれだけ満ち足りて幸せだったとしても、それに納得できるかは別である。また、納得できたからって悲しくないなんてことはないのです。でも、でも、みんなそんな揚羽の選択を、否定しないで肯定してあげてるんだろうなあ。
陽平も、鏡子さんも、椛閣下もそれぞれに悔しさを胸に秘めたまま、諦めることなく藻掻いて暴れて歩き続けていらっしゃいますが、その姿には敬意を払うと同時にやはり、胸に詰まるものがあるなあ、と思うのです。
真白さん、あーた呪詛ってる暇ないですよ、だから愚妹呼ばわりされるというのに、ほんとにこの娘は……この愚かしさこそが、愛おしむべきところなんだろうなあ。またぞろ、仕出かしそうで怖いのですけれど。

一応、シリーズはこれにてひとまずの完結。でも、場合によってはまた別の形でこの娘たちの行く末を見ることの出来る機会もありそうなので、そのあたりはぜひ期待したいところです。

それにして、まさかの「雪柳」の再登場と、鏡子さん相手の無双には思いっきり吹きました。あの鏡子さんが手も足も出ないとか、どんだけなんだ。なんか、彼女が出てる場面だけ雰囲気がぜんぜん違うあたり、このぶっ飛んだ風気質は、作者のお気に入りだったのかなあ、と思わざるを得ません。勿論、読者たる私も大のお気に入りで御座いましたよw
揚羽が総督で、雪柳が側近になってしまった東京自治区、という五稜郭の悪夢再び、な世紀末も見てみたかったなあ。世界、いい意味で破滅しそうですけどw

シリーズ感想

スワロウテイル序章/人工処女受胎4   

スワロウテイル序章/人工処女受胎 (ハヤカワ文庫JA)

【スワロウテイル序章/人工処女受胎】 籘真千歳/竹岡美穂 ハヤカワ文庫JA

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男女別の自治区で性別の違う人間と共に暮らす人工妖精たち。その一体である揚羽は、全寮制の看護学園で同室の連理や義妹の雪柳らと学園生活を謳歌していた。人間に害をなす人工妖精を密かに殺処分する“青色機関”の一員という裏の顔を持つ揚羽は、学園内の連続事件に死んだはずの科学者・不言志津江の陰謀を見出す。それは揚羽の人生に今後降りかかる過酷な運命の予兆でもあった。人気シリーズの前日譚たる連作中篇集。
既に二巻出ているスワロウテイルシリーズの第三弾にして、序章の文字の通りに前二作の時系列的には前に当たる前日譚。なんと、揚羽がまだ学生時代の頃のお話である。揚羽、学生だった頃があったんか!! って、そう言えばそんな事を言及してましたし、真白も看護師になっていましたっけ。ただ、あの揚羽が学生だった。それも、由緒正しき【乙女はお姉さまに恋してる】の聖應女学院みたいなお嬢様学園に通っていたというのは、なんとも不思議な感覚。そもそも、人口妖精が学校に通っている、というイメージがまだ固着していなかったようだ。この人工島においては人口妖精はほぼ人と同じ扱いを受けている、という事実は認識していても、生み出されてから自立するまでにこんな風に学校で教育されている、なんて風に頭が行かなかったので、実際に人口妖精たちが普通の年頃の女の子たちのように活き活きと青春時代を送っている姿は、なんとも感慨深い。
そうか、あの揚羽にもこんな青春時代があったのか……はっちゃけてたんだなあw
この頃から青色機関の末梢抗体として活動しながらも、普通の学生として学業試験に追われ、後輩に振り回され、将来は看護師として働こうとしていたのか、この娘は。色々と外れていたとは言え、こんなお嬢様学校に通っていた娘さんが、一巻ではゴミゴミとした裏路地みたいな界隈であんなうらぶれた刑事のおっさんの相棒みたいな、生活圏に半歩踏み込んで奥さんの真似事をしてみたり、なんてしてたんだなあ、と思うと妙な背徳感がこうゾクゾクっと、ねえ(笑

しかし、これまでの二冊と比べてもこの短篇集はライトノベル寄りなんじゃないだろうか。表紙だけではなく、本巻には竹岡美穂さんの挿絵がところどころに入っていて、揚羽や周りの妖精たちの御姿が拝めます。こうして挿絵で見ると揚羽って完全に美人系なんですよね。これまでの表紙から受けていたイメージからちょっと違っていたのですけれど、むしろしっくり来ましたね。あの苦労性の性格は幼いカワイイ系よりも美人系の方がよく似合うw
逆に、そういう美人系だからこそ、あの黒猫の衣装が最高です! 最高です! 雪柳、あんた最高だよ!! もうあの猫耳尻尾姿をイラスト化するために、挿絵があったといって過言ナシ。
また、あのアクアノートとして活動するときの口上がやたらめったら格好良いんですよ。あの決め台詞は、中二病なハートを絶妙に擽ってくれます。
生体型自律機械の民間自浄駆逐免疫機構(Bio-figures self-Rating of unlimited automatic civil-Expelleres)――青色機関はあなたを悪性変異と断定し、人類、人工妖精間の相互不和はこれを防ぐため、今より切除を開始します。執刀は末梢抗体(アクアノート)襲名、詩藤之峨東晒井ヶ揚羽。お気構えは待てません。目下、お看取りを致しますゆえ、自ずから然らすば結びて果てられよ!
この口上が放たれるシチュエーションがまたしびれる場面なのです。特に、第三話における【蝶と夕桜とラウダーテのセミラミス】におけるラストシーンは、なまじその辺のバトル系のライトノベルでもなかなか拝めないレベルの「決闘」でした。
しかし、この口上、実に良い感じに見栄が切られて尖っているのですけれど、こういうタイプって殆ど巷では見たことないなあ。あんまり流行るタイプじゃないんだろうか。めがっさ格好良いのに、格好良いのに(笑
このタイプで記憶にあるのと言ったら、あれですよ、秋山瑞人さん。【鉄コミュニケーション】や【猫の地球儀】での前口上。SF的な未来機構と古色蒼然とした漢の字と話法のコラボレーションが実にソソるスタイルなのですけれど、使い手らしい使い手にはとんとお目にかかった事がなかっただけに、此処での揚羽にはキましたねえ。
前二巻までもそういう口上やシチュエーションはあったのですが、どちらかというと全体の大きな流れの中での一場面といった感じのシーンでの事だったので、そこまで印象に残らなかったのです。それに比べて、この短編連作集では、各話に事件の犯人がいて、揚羽がその正体を暴いてラストに対峙するというパターンを採っているので、決め台詞がきっちりクライマックスシーンの盛り上がりに懸かってくるので余計に引き立ったのでしょうね。

そんな青色機関としての働きとはまた別に、学生として過ごす学園生活もまた、これって学園コメディだったっけ!? と思うほどに日常シーンでのドタバタがはっちゃけていて楽しいのなんの。主に、その原因は揚羽の後輩にして「妹」である風気質の(マカライト)の雪柳の暴走に寄るのですけれど……いやもうホントに面白いのなんの。この揚羽の通う学校、まんま【マリア様がみてる】や【乙女はお姉さまに恋してる】みたいな、先輩と後輩で姉妹の絆を結ぶエルダー制を採用している上に、おとボクばりのエルダー選挙まである始末。そこで、なんと落ちこぼれの四等級予定の揚羽が、雪柳の暴走で候補にあがってしまい……という展開もあり、このあたりの雪柳関連のスチャラカネタにはもう笑った笑った。なんか、「ごきげんよう」が合言葉のお嬢様学校はどこへいった、と言わんばかりの60年代の学園紛争みたいな大騒ぎになってるし。
「よくぞ集まってくれた諸君! 君たちは一人ひとりが五稜郭全学生徒から選び抜かれた最強・最精鋭の一兵卒であると同時に、五稜郭の運命を背負った誇り高き勇士だ!」
「「「おおー!!」」」
「敵はこの学園に創立当初から巣くい、生徒(たみくさ)を飢えしめ苦しめながら既得権益の甘い蜜を貪り肥え太り続ける悪鬼亡者の壁蝨・虱蠅、他ならぬ鬼畜生徒会である! 奴らは間もなく思い知るだろう! 我らの軍靴が連中の血に濡れた放埒腐敗の生徒会室を踏み荒らし、子々孫々に至るまで我ら憂学志士の勝利の行進曲に恐怖し怯えることになるのだと!」
「「「おおー!!」」」
「ここで我らが盟主たる、詩藤之揚羽様より激励のお言葉を賜る! 総員踵を揃え刮目して静聴せよ! ……さ、お姉様(エルダー)、マイクをどうぞ」
「……ああ、えっと、コホン。皆さんまだ遅くはありません。一刻も早くこんな馬鹿な真似はやめて元の教室にお戻――」
「総員火の玉となりて玉砕突撃を敢行せよとのお心強いお言葉であった!」
「「「おおー!!」」」
「これより我々は二十四時間の臨戦態勢に入る! 襲撃に備えよ! 立ち塞がる者はたとえ上級生といえども一人残らず駆逐せよ! 我らの進軍を妨げるあらゆる障害はそのすべてが敵か雑草である! 区別なく公平に焼き払え! 学園全土を二度と緑湛えぬ焦土と化せ!」
「「「おおー!!」」」
「では、盟主・揚羽様よりの作戦号令に耳を傾けよ! ……ささ、お姉様(エルダー)、どうぞ」
「……えぇっと、その……い、『いのちをだいじに』」
「作戦名は『ガンガンいこうぜ』に決した!」
「「「おおー!!」」」
「怯むな! 臆するな! 後ろを振り向くな! 正義は我らにあり! 弾丸(チラシ)を手に取れ! 拡声器の撃鉄(でんげん)を上げよ! 戦旗(プラカード)を翻せ! 五稜郭の興廃はこの一戦にあり! 諸君勇者たちの凱歌を学園中に轟かせよ! 総員戦闘開始! これにて本日の決起集会は解散とし、順次作戦行動へ移行する! 各個に突撃せよ! 突貫!」
「「「おおー! 突貫!」」」
「……ゆ、雪柳、あの、あのですね、ちょっと私とあなたたちとの間に横たわる、目に見えない絶望的な溝を埋めるための大事なお話があるのですが……」
揚羽が何度も何度も繰り返し力説することになる風気質の人工妖精のぶっ飛んだ性格を聞いていると、どうやっても風気質って性格が破綻した享楽主義者で社会不適合者に思えてくるのだけれど、外の社会に出た風気質は、ちゃんとやってけてるんだろうか。これまでは、どちらかというと繊細で心か弱く優しい水気質の人工妖精に、より焦点が当てられて語られる事が多かっただけに、この風気質の娘さんたちの面白ければ何でもあり、という性質は傍から見てると楽しすぎです。そばにいると、揚羽みたいにひどい目に合いそうですが。
「まかせて。文句のつけようがないくらい完璧に、五稜郭史上最高の土下座を決めてくる」
のちに、自治区総督にして唯一の一等級人工妖精である椛子閣下に次ぐ、二番目の一等級候補であり、椛子閣下の後継者として指名されるはずだった人工妖精の残した名台詞である。
うん、まあ頑張れ。超頑張れw

とまあ、電撃文庫に戻ってきても全然イイんじゃないかというノリだった本作ですけれど、最終編における自我と意識の境界などにまつわる論談の長さと掘り下げを見ると、やっぱり本作は純然たるSF寄りの作品なんですよね。ここまでしっかりと思想や概念について語り尽くせるのは、ハヤカワ文庫ならではでしょうしね。ほかだと絶対に削らされるパートでしょう。此処こそが肝であるにも関わらず。と言うことは、やはりこの作者さんはこのハヤカワ文庫で書いているのが一番いいんだろうなあ。
個人的には、二巻目よりもこの短編連作形式の三巻の方がストーリーラインがブレずにしっかりと組まれていた印象がありますし、純粋に面白かった気がします。わりと、短く区切って一つ一つのポイントを積み重ねていって大きなデザインに仕上げていくほうが、一気にでっかいキャンバスに一枚絵を描くよりも合っているのかな、この人は。まだ、そう判断してしまえるほど作品も出ていませんから、なんとも言えないのですけれど……うん、だからつまりはもっとどんどんたくさん読みたいです、はい♪

追記:結局、鏡子さんというものぐさは、椛子についても揚羽についても、筆舌しがたいほど親バカなのね。ホント、面倒くさい人だなあw

1巻 2巻感想

半熟作家と“文学少女”な編集者(ミューズ)3   

半熟作家と“文学少女”な編集者 (ファミ通文庫)

【半熟作家と“文学少女”な編集者(ミューズ)】 野村美月/竹岡美穂 ファミ通文庫

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あ、あかんあかん、そのカップリングは危険過ぎる。ブレーキがついていないじゃないかっ! そっちの文学少女は他人に力を与え、元気にしてくれるという意味で稀有な人だけれど、ちょっとパワーがありすぎるんですよね。だから、内省的で腰の重たい人を相手にすることで丁度バランスが取れるくらいなんですよ。すぐに調子にのってしまういい意味でも悪い意味でも「お馬鹿」な人と掛け合わせるとエラいことになってしまうぞ! それぞれ一人ひとりでも周りの人達が頭を抱えるような「お馬鹿」なのに、掛け算してしまったらそれはもう惨劇ですがなw
個人的には彼は御同輩のお姉さん作家さんの方がお似合いだと思うんだけどなあ。あの人とは良い意味で足を引っ張りあえて、助け合えるパートナーになれそうな気がするのだけれど。

という訳で、最終巻は編集者として活躍する遠子さんに担当してもらってる、少々夜郎自大なところのある売れっ子高校生作家くんのコミカルな奮闘記でした。正直、たとえウェブ上の評価でも平均☆一つは相当だと思うぞw
遠子さんは相変わらずの遠子さんでした。もうそれなりの年齢になってるはずなのですが、この人はいつまで経っても少女だ。このシリーズには沢山の女性キャラクターが登場したけれど、どんな年齢になっても変わらず少女性を失わないでいるのだろうな、と思わされたのはやっぱりというか、文学少女を名乗ったあの二人だけのように思える。大人の女らしさとはとんと縁がないだろうな、というイメージだとも言えるけどw
だからと言って、セーラー服は無理があると思いますよ、遠子さん。似あってしまうのは逆に問題なんじゃないかと思われw
ただ、作家に作品を書かせるサポート役としての編集者としての姿勢や腕前には、かつて井上後輩と接していた頃のそれとは別格の、確固とした自分の仕事としてのスタイルを確立している。自分の役割への自覚と、作家に対する責任感。それはまさしく、プロの編集者としての姿勢だ。ああ、遠子さんもちゃんと社会人になったのだな、と安心するやらちと寂しいやら。井上くんとの仲は初々しいまでに順調のようで、実に幸いである。
しかし、この遠子さんの姿は作者の編集者に対する理想型なのかなあ。

そんな遠子さんに面倒を見てもらう本作の主人公くんは、いい意味でも悪い意味でも人生が陽性のヤツだった。まあ、このシリーズ本編に出てきた連中みたいに指先で触っただけでひびが入ってしまそうなほど繊細すぎる脆くて危うい心の持ち主に比べたら、よっぽど人生を健全に過ごせそうなイイ子なんだけどね。ちょっとでもこの子みたいに自分に自信を持ててたら、数々の登場人物たちももうちょっとイイ方向に舵を切れたかもしれないのに……ああいや、爪の垢を煎じて飲むなら、こいつよりも文学少女見習いの方がよっぽどいいか。

ともあれ、これにて文学少女シリーズも本当におしまい。こんなにホンワカと幸せな雰囲気で終われるとは思わなかったなあ。みなさん、お幸せに。

野村美月作品感想

“文学少女”見習いの、卒業。4   

“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)

【“文学少女”見習いの、卒業。】 野村美月/竹岡美穂 ファミ通文庫

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 bk1

日坂菜乃、全く以て大した女だった。麻貴先輩は、彼女は将来「度量の広い、魅力的で思いやりのある、最高の女」になる、と太鼓判を押しているけれど、何のことはない、今この時点で菜乃は充分、最高の女だった。
世界を閉ざしていた心葉を、新たな世界に導いたのは確かに遠子先輩だったかもしれない。でも、新しく生きることになったその世界で、心葉に生きていく力を与えたのは、他の誰でもない菜乃だった。
ずっと立ち上がることが出来なかった心葉は、遠子に導かれて確かに立ち上がる事が出来たかもしれない。でも、彼に一人で立ち続ける芯となるものを、立ち上がったその先、前へと歩き出す活力と自信を与えてくれたのは、一人の元気な後輩だったのだ。
彼女は、淋しさを癒してくれる娘だった。生きる力を与えてくれる娘だった。自分を信じる事を許してくれる娘だった。
多かれ少なかれ、この物語に登場する人物たちは、誰かを救うためでも自分が救われるためであろうとも、誰かを傷つけ、自分を傷つける事を避けられない人種ばかりだった。
何らかの形で自らを哀れむことに夢中になってばかりの人たちだった。
そんな中で、彼女だけは誰も傷つけず、自らも傷つけず、自分も他人も優しく包みこむ。自らを哀れまず、ただただ前へと突き進んでいく。しかし、他人を本当に傷つける領域までは決して土足で踏み込まない。ちゃんと靴を脱ぐ。靴下も脱ぐ。裸足で飛び乗ってくる、そんな感じで。
猪突に前に進むようで、優しく寄り添い見守る存在だった。

稀有である。

彼女によって、今の自分を信じる事が出来るようになったのは、心葉だけではない。心葉への恋心の向け方を見失い、小さく縮こまっていたななせに、自分の恋の素晴らしさを信じさせ笑顔と元気を取り戻させたのは、菜乃だった。菜乃の親友である瞳に、途方も無い人生の選択を選ぶ背を押したのも、菜乃だった。
こんな彼女が、今この時点で最高の女でないと、誰が言えるだろう。
文学少女シリーズが一旦完結したあとでも、ななせがあれほど前向きに笑えるようになるなんて思わなかったもんなあ。

一連のシリーズは、先述したように他者を傷つけずにはいれない、自分を憐れむに夢中の人々たちが織り成す話のお陰で、感動の中にも痛みと苦しさを感じずにはいられない作品だったが、この後日譚である【見習い】シリーズは、菜乃がいるお陰で随分と痛みから解放された、読後感の心地良い物語だったように思う。
この巻からして、冒頭、瞳と心葉がキスしているかのようなシーンにばったりと行き会った時の菜乃が、衝撃を受けてその場から逃げ出すのではなく、咄嗟に反射的に、二人の方に叫びながら<突進>していった時点で、ああこの娘には敵わんなあ、と納得したものである。

まだこのシリーズ、挿話集4に続いて「半熟作家と“文学少女”な編集者」なるものが用意されているらしい。文学少女の物語はまだまだ続くわけだ。
しかし、半熟作家と“文学少女”な編集者って、そのまま心葉と遠子先輩の話と捉えるのは危険だよなあ。大体、百万部なんて現代じゃ夢物語な部数を売り上げる作家が半熟なわけないじゃないかw

シリーズ感想

“文学少女”見習いの、傷心。4   

“文学少女”見習いの、傷心。 (ファミ通文庫)

【“文学少女”見習いの、傷心。】 野村美月/竹岡美穂 ファミ通文庫

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よし、心葉はいっぺん死なそう。
前巻にて「ぼくは君が嫌いだ」と冷厳に告げた心葉。それはそれとして仕方の無い感情だとは思うのだけれど、その後の心葉の菜乃への仕打ちには、ちょっとマジで殺意が湧いてしまった。
なんでこの小僧はよりにもよってそういうわざわざ人の心をズタズタに切り裂くようなやり方をするんだ、人を遠ざける、排除するにしてもやり方ってもんがあるだろうに、彼にやり口というものは控えめに言っても人でなし、ろくでなしの類である。それをやるなら、最初からそうすれば良かったのだ。仮にも打ち解けてしまい、心の内側の幾許かを見せてしまった相手に、その態度は残酷にも程がある。嫌うというのは積極的な感情であり、対人関係においてより深い断絶を導くのは無視であるとよくいうけれど、考えてみると単に無視するというのも相手のアプローチが強力なものだった場合は積極的な意思表示になる行為と言える。
だとすれば、心葉が菜乃に示した態度は無視よりも断固とした拒絶であり、相手の人間性を蔑ろにし、自分に取って相手の存在が全く相手にする価値がない人間であるのだと知らしめる徹底的な断絶である。
これ、相手がタフネス菜乃だから良かったものの、このシリーズの多数派に所属するであろう繊細で精神的に脆く妙に叙情的で儚い思春期の少年少女たちだったら、すっぱり絶望して自死しかねない仕打ちですよ?

これには菜乃も相当傷つきめげたはずなんだけど、折れないなあこの子は。
この子の心には、どうやら陰ることの無い太陽が燦々と輝き続けているらしい。
だけれど、心に深い闇を持ち、暗闇に惑いと安堵をいだいている者たちにとっては、その光はいささか眩しすぎるらしい。
光は、暗闇に身を潜める儚い者たちの姿を、なぜ彼らが闇に親しむのか、闇に心を委ねているのかの理由も、事情も、何も考慮せず、配慮もせず、事情があるなどと想像すらもせず、それどころかそんな闇があることすら認知せず、その強い光によって暴きだそうとする。
その無神経さ、暴虐と理不尽に振り回され、あげつらわれ、痛めつけられて、彼ら彼女らはその善良な光の主に、苛立ち、怒り、憎悪を抱き、そして同時に闇と言う名の、人間が持つ本質、真実、醜悪さ、絶望の姿を知らない無知で愚かな善人に、仄暗い嘲りと優越感を抱くのだ。
何も知らないくせに。お前には理解できないのだ。この傷の痛みなど、想像もできないだろう、と。
見下し、侮蔑し、せせら笑う。

そうして無知で愚かで善良で、眩しい光を遠ざけようとしながら、一方で憧れ、羨望し、惹かれるのだ。

傷ついた自分を憐れみ、慈しみ、愛でるのは、甘い痛みに身を委ねるということで、それはきっと苦しくも心地よいものなのだろう。だけれど、その痛みは自分ばかりではなく他人をも傷つけ、苦しみを広げていくばかりなのだ。
それでも、どうしたらいいのか分からず心の中の暗闇に浸るか弱き者たちにとって、菜乃の存在は理不尽であり暴虐であるのだとしても、それ以上にやはり差し込む光であり、道を指し示す光なのだ。
太陽の光は、逃げこむべき闇を吹き払い、迷い子たちを隠れる場所の無い荒野へと放り出す。だが、心葉も、ななせも、もう闇に逃げ込み震えているだけの子たちではない。あの頃の彼らには、きっと菜乃の光は凶器にも等しかっただろうけれど、今の彼らは一度は一人で立ち、逃げるのではなく歩いて行こうと決意した子たちなのだ。菜乃の存在は、確かに彼らを前に進ませる力になっている、それが嬉しくも誇らしい。

一方で光そのものである菜乃もまた、自分の視界に映る世界以外にも、光が届かない場所があるのだということを、目のあたりにすることになる。人の心に闇があり、怪物は厳然と存在することを、それまで想像もしなかった奈乃は、急迫として突きつけられ、大いに衝撃を受けることになる。きっと、このとき太陽は一度確かに陰りかけたのかもしれない。人々の心にはびこる暗闇は、光を蝕み始めていたのかもしれない。
でも、その時に彼女に手を差し伸べ、彼女が光たらんとするのを支えたのが、心葉だったのは彼がもう遠子に手を引っ張られるだけの子じゃないのだというのがわかり、安堵と頼もしさを覚えたのでした。
大丈夫、この子は自分じゃない誰かを守ることの出来る子に、ちゃんと一歩一歩成れているよ。

それはななせもおんなじで、傷つき痛みに悶え苦しみながら、彼女のなかにはちゃんと勇気が芽生えている。この子だけは、菜乃の光に怯みはしても、その光にアテられている風はないんですよね。だから、妬みも見下しもしない。ただただ震えながら、それでもがむしゃらで、菜乃を気にしてないわけじゃないんだけれど、その存在感、在り方――光に気を取られることもなく、それよりも心葉の事に一生懸命で。それがななせらしくて、なんとももどかしくも愛しい。
他の連中はいいから、この娘だけは幸せになって欲しい。
ちょっとしたサプライズから、どうやら彼女の未来にはちゃんとその道筋が出来つつあるらしいことが伺えて、物凄くホッとさせられた。


“文学”に同期し若者たちの純粋で夢見がちな心を鏡とすることで、人の悪意も醜い愛憎も、何もかもが儚くも美しい結晶のように映り込むこの作品。その美しさに魅せられながらも、それらを美しいと思うこと自体に、怖気を感じることが侭ある。
そんな中で、菜乃の存在はそんな怖気と不安感をぬぐい去るナニカがあったのだけれど、残り一冊。文学少女見習いは、純粋で夢見がちな少女のまま、最後まで幻燈機に映る世界に飲み込まれない光として踏破できるのか。強く前向きな女の子のまま、バタバタと駆け抜けて欲しいなあ。

黄昏色の詠使い 10.夜明け色の詠使い4   

黄昏色の詠使いX  夜明け色の詠使い (富士見ファンタジア文庫 さ 2-1-10 黄昏色の詠使い 10)

【黄昏色の詠使い 10.夜明け色の詠使い】 細音啓/竹岡美穂 富士見ファンタジア文庫

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うわぁ、泣いた。二人の詠が紡がれていくシーンでは、自分でもどうかと思うくらいに泣いてしまった。
しかし、どうしてここまで泣けてしまったんだろうか。ちょっと自分でも不思議に思うくらい、胸がいっぱいになってしまったんですよね。
お話自体は決して特別でも特異でもなかった。というよりも、むしろ古典的な王道路線と言ってもいいくらい普遍的な内容。囚われのお姫様を、小さな王子様が一生懸命助けようとする話。もしくは、分からず屋の親の手元から恋人を取り戻そうとする、嫁取り話?
こうして見ると、これって子離れできない親に対して、子供はしっかりと自分の力で成長し、貴方から受け取った祝福を糧として、自分たちだけで幸せを掴むことがもう出来るんだ、と伝える親子の物語だったんだなあ、と納得。
これまでミクヴェクスの摂理に抗した人たちは、まさしく反抗しただけだったわけだ。親の説いに対して、受け入れず反対し、抗おうとするだけ。それは、親としては子の行く末への心配をさらに募らせるだけ。
それに対して、ネイトは敢然とミクヴェクスの傲慢を指摘し、誤解や間違いを示し、それとは別に親としてのミクヴェクスの意思と好意、そして祝福を否定せず受け入れ、その上で自分たちはもう、自分たちだけでやっていけるのだ、ということを、見事に証明してみせたわけだ。
エピローグでのミクヴェクスがシャオやファウマに語った独白は、何故ミクヴェクスがクルーエルをネイトに返し、これまで彼の存在が竜との対立を解消するに至ったのか、それをものすごくわかりやすく端的に語っていて、この物語がとても素晴らしい形で幕を下ろしたのを理解させてくれたんですよね。あれは良かったなあ。
正直、ミクヴェクスとアマリリスの対立やこの世界の成り立ち、名詠式の意味など、かなりややこしく把握していたとは言い難かったんだけど、あの独白で一気に全部理解できた気がする。そして、ネイトたちが成し遂げた事の意味も。

ほんとに、きれいなお話でした。なんかもう、不純物を取り除き、丹念に磨き上げ、結晶化させたような、宝石のようなお話でした。見ているだけで圧倒され、心震わされ、魂を奪われる光景ってあるじゃないですか。まさにあんな感じ。気を衒う事もないとても王道的なお話だったにも関わらず、これだけもろに泣かされてしまったのは、人の根源的な部分にある、綺麗なものを見たら感動する、という感性に直撃を食らったせいなんじゃないかと、思うわけですよ。
ぶっちゃけ、色々と足りない部分も多々あったと思う。技巧的、構成的にも拙い部分があったように思う。でも、それらを気にさせない、圧倒的なモノが、この物語の結末には広がり、輝いていたという事なんだろう。
作家として、それはきっと得難い特質なんだろうね。これからも、作者にはそれを大事にして、いっそう磨いていって欲しいと願う。
また、何度も泣かされる作品を読ませて欲しいから、ね。

個人的には、イブマリーが「またね」と言ってくれたことがこの上なく嬉しい。思い入れとしては、むしろ少年少女よりもかつて少年と少女だったカインツとイブマリーにこそ入れ込んでいたものだから。
でも、イブマリー。息子がいるようないい歳なんだから、そろそろ素直じゃないのはやめときなさいよ(笑


“文学少女”見習いの、初戀。4   

“文学少女”見習いの、初戀。 (ファミ通文庫)

【“文学少女”見習いの、初戀。】 野村美月/竹岡美穂 ファミ通文庫

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いや、まいった、これは正直、驚きだった。ごめんなさい、いまさらこの作品を続けてどうするんだと、蛇足じゃないかと思ってました、すみません。
半眼で読みはじめて小一時間、瞠目している自分がおりました。

蛇足だなんて、とんでもない。菜乃という新たなキャラクターの存在こそ、この物語における主人公であった心葉という少年を儚くか弱い未成熟な卵から、一人で立てる大人の男性に成長させる、最後にして最大のファクター。完成へと至る物語そのものじゃないですか。
まさか、遠子先輩が去ったあとに、菜乃みたいな子を心葉の前に飛び込ませるとは。やっぱり、作者もあのままの心葉くんではまだ足りない、と思ったんだろうか。思ったんだろうな。でなければ、これほど完璧な配役を心葉くんの世界の中に放り込もうなんて思わないだろうし。

怯え、逃げ惑い、必死に目を逸らし、俯いてやり過ごそうとしていた日常から、友人たちの、ななせの、そして遠子先輩の導きにより顔を上げ、歩き出すことを始めた心葉くんだけれど、それはまだ、一人で歩けるようになった、というだけなんですよね。
この子には、まだ決定的に足りていない部分があるわけです。そこが補われなければ、この子はまだ、きっとどこかで躓いたときにそのまま動けなくなってしまう。いや、誰かに手をひかれて立ち上がることはできるかもしれないけど、自分でたちあがることは難しいようになってしまう。援けを得られるかもしれないけど、それはまた、多くの周りの人たちに多大な労をかけることになってしまう。周りの人に迷惑をかけることは決して悪い事じゃないけれど、迷惑をかけるばかりの人間というのはやっぱりよくないんですよね。助けられるばかりではなく、助けられる人間にならないと。守られてばかりの人間じゃなくて、守ることのできる人間にならないと。傷つけるばかりの子供じゃなくて、癒してあげられる人間にならないと。
今の心葉くんは、一人で歩けるようになったけれど、まだ自分も自分以外の人も傷つけることしかできない未成熟な子供から脱却しきれていないように思えるのです。
そんな彼の前に現れた。底抜けに明るくて、闇を持たなくて、負の感情にむしばまれていなくて、はた迷惑で、強くて、眩しくて、でも弱くて、進むべき道を知らなくて、どこまでも引っ張っていってくれそうな強引さと、引っ張って貰わなければどこにもいけなさそうな戸惑いを併せ持った、後輩の女の子が現れてしまったわけです。
この子は、今まで心葉くんが接してきた多種多様な人間の中にもいなかった、彼が関わることのなかったタイプの人間で、だからこそきっと遠子先輩だけじゃなく、ななせや芥川や麻貴先輩、そして美羽では決して変えられない部分を、心葉くんに与えてくれるんじゃないかと思うのです。
これは、物凄い縁ですよ。きっと、彼女の初恋は叶わないものなんでしょうけれど、この出会いは心葉くんにとって間違いなく、決定的な、ある意味においては致命的と言ってすらいいかもしれない、重大なものになるに違いないと確信するところなのであります。
あの、彼の最後のセリフからも、ね。

菜乃も、過去にまるっきりなにもない平穏に過ごしてきた子、というわけでもないんでしょうけど。少なくとも、友達の瞳関連で、なにかありそうだし。


ななせは、振られてきっちり終わってしまったあとにも関わらず、苦しい想いにまだまだ振り回されてるんだなあ。なんとかしてくれ、ほんとに。可哀想だわ。

それより怖いのは美羽だけど。彼女のコノハへの執着は、実は全然収まってなかったあたりが、素晴らしい限り。順調に芥川くんとの仲は育んでいるにも関わらず、コノハへのあの考え方は、いやはやおっとろしいばかりで。素敵です、ミウさん。

うん、もしかしたら本編よりもこの外伝、好きかもしれん。どこか遠くに感じていたこの物語が、登場人物たちの心情の在り方が、グッと手元に近づいてきた感がある。心葉くんだけじゃなく、ななせや麻貴先輩、美羽に至るまで。この菜乃という子が関わることで、繊細なガラスの灯篭のうえでゆらゆらと揺らめいていた幻影めいたものが、日の光を浴びて肉感を得たような、そんな感覚。この菜乃ってこの介入による化学反応、凄いわ。

“文学少女”と神に臨む作家 (下)4   

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫 の 2-6-8)

【“文学少女”と神に臨む作家 (下)】 野村美月/竹岡美穂 ファミ通文庫



人は神聖なものを前にした時、慄き震え、涙を流すだろう。透明で純粋で穢れのない尊いものを目の当たりにした時、人は感動に己が身を抱きすくめるだろう。
でも、身近には感じない。

"All the world's a stage,/ And all the men and women merely players「この世は舞台、人は皆役者」"

シェイクスピアの戯曲の名言だ。その解釈はここでは脇に置き、ただ言葉の表層から受け取られる意を流用させてもらう。
最初に断言するが、この物語は名劇であった。それは間違いない。私は感動もしたし、慄きもした。
だがそこには、遠い隔たりを感じずにはいられなかったのだ。それこそ、舞台と観客席を隔てるような、遠い距離感を。疎外感を。
いつものように、本の中に、物語の中に入り込めず、読者たる私はどこか手の届かない遠くから彼らの物語を眺め見ることしかできない。
彼ら登場人物の吐く息吹は迫真のもので、その吐き出す言葉は魂からの叫びだ。彼らの祈りのセリフは、見ている私の打ち、痺れさせる。
だがこれは物語だ。その事実が、読中たびたびハッと思い起こされ、高揚は潮が引くように去っていく。
人々の苦悩も、痛みも、ドロドロの汚泥のような感情さえ、どこか玲瓏として透明で、その尊いまでの純粋なあり様が、逆にこれが物語である現実を突き付ける。
モチーフとして重ねられる文学作品とのあまりにも近しい整合振りもまた、作中の雰囲気を現実感よりも物語としての存在感に近づけていく。その文学作品そのものに、飲み込まれていくように。
まるで、当該の文学作品から滲み、こぼれ、産み出された世界のように。

思えば、これほど不思議で独特な作品も珍しい。
傑作なのだろう。それはたぶん、間違いない。
でも、私には少し遠くて、触れて感じることのできない作品だったんだろう。寂しいけれど、まあそういうこともあるのさ、と強がりを口にしたい今日この頃。

黄昏色の詠使いVII 新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ4   

黄昏色の詠使いVII  新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ (富士見ファンタジア文庫 さ 2-1-7 黄昏色の詠使い 7)

【黄昏色の詠使い ?.新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ】 細音啓/竹岡美穂 富士見ファンタジア文庫


クルーエルのヒロイン性は完璧だなあ…(慨嘆
ようやく前回までのアマリリスによる浸食、というかアプローチ?の影響によってクルーエルの身体を蝕んでいたモノが拭い去られ、元気になったと思ってたら、結局問題は何も解決していなかったというわけなのね。
彼女が背負い続ける破滅へのリスクは、まさしくヒロインとして相応しい特性なんだけど、ちょっと辛いよなあこれは。
本来クルーエルとは、世話好きで明朗快濶、少しやんちゃなところもある正義感たっぷりの、でも女性らしさに満ち溢れた優しいお姉さんで、まだ幼い主人公のネイトからすれば、どちらかというと甘えたい対象というべき存在になるはずだと思うんですよね。実際、クルーエルは自身が負っている破滅を意識することなく(無意識には自覚しているのでしょうけど)、ネイトという少年を自分は庇護し支えるべきだと考えている(恋愛感情も自覚し出しているけど、まだそこらへんは擦り合わせてる段階のようにも見える)。
でも、ネイトからするとクルーエルを襲う運命の末路を知ってしまった以上、ただ頼り甘える相手ではいられないんですよね。母の軌跡を追い、母の想いを探して、どこか周りの全てを、自分ですらもかなぐり捨てて母が残した【夜色】を一身に、一心に追い求めていた少年を振り向かせるほどの強く眩しく、そして暖かい光。その光は、同時に今にも消えてしまいそうな儚さを秘めていて、自然と少年にその光を守りたい、守るために強くなりたいという意識を芽生えさせる。
これはまさしく、子供でしかない幼い少年を、一人の男に成長させる要因であり理由そのものなんですよね。
守ってくれる庇護者であると同時に、守ってあげなければならないお姫様という両面の特性を有しているクルーエルのヒロイン性は、完璧なんですよ(力説
ただ、そのためにクルーエルが背負う羽目になった運命が、半端ない過酷さで、正直たまんないんですが。
でもね、その分ネイトが男の子としておっきく成長してきているので、不安はないのですけれど。カインツが母イブマリーに対して果たせなかった想いを、ネイトが受け継ぐシーンはちょっと胸にきましたね。
お互いに、お互いが自身の根幹を支える存在、か。この二人にとって、相手を守ろうという想いこそ、時に崩れそうな自分を支え、時に自分を大きく成長させる支柱となってるわけだ。こういう関係、めちゃくちゃ好きなんですよね。

一方で、メンバーの中で騎士的・戦士的役割を担ってきたエイダの新しい一面も見えてきて……。
今まであんまり女の子扱いしてなかったくせに、いきなり反則級の見せ方してきたなあ(苦笑
そりゃあ、お互いを強く守ろうと意識し合ってるネイトとクルーエルを一番間近で見てきたのは、エイダなんだろうけど。茶化す風でもなく、あんなに真剣に、深刻に、守られる女の子を羨ましく思ってるとは、普段の男勝りで…というより冷静沈着なプロフェッショナルな彼女の在り様を見てたら、全然想像もしてなかった。
考えてみればこの子も年頃の女の子なんだよなあ、とテンプレ的なことを思ってしまうほどの不意打ち。
そんなエイダの女の子的な側面を、余人にまで垣間見せてしまうほどの刺激を与えることになった存在が、このアルヴィルってわけか。
なんかエイダの様子見てると、まだ自分の感情を把握しきれてないクルーエルやネイトと違って、かなり自覚的なような……。

そして完璧に予想外だったのが、灰色詠名。これまで敵役が使ってきた詠名式なだけに、ある種の邪法のように認識にインプットされてきたのですけど、まさかこういう形で再登場してくるとは……。
これって作者の詠名というモノに対しての強いメッセージを感じるなあ。
いやいや、素敵だと思います。

黄昏色の詠使いVI そしてシャオの福音来たり4   

黄昏色の詠使いVI  そしてシャオの福音来たり (富士見ファンタジア文庫―黄昏色の詠使い (174-6))

【黄昏色の詠使いVI そしてシャオの福音来たり】 細音啓/竹岡美穂 富士見ファンタジア文庫


二月に出版された五巻から僅か二か月での新刊ということで、早いなあと感心していたら、短編集でした(苦笑
とはいえ、ポツポツと見逃せない重要な情報が混ざってるんですよね。
短編それぞれの時系列が記されてないので、最初混乱しましたけど、一応冒頭に季節などが描写されてることもあり、おおむね判別はできそう。変に時系列シャッフルされてないし。

赤奏【あなたに送る小さな黒歌】
ネイトが転入してきてからこっち、クルーエルのネイトへの感情って案外見えにくかったんですよね。最初から、ネイトに対しては熱心に構ってたし、その割には異性に対する情熱みたいなのはあんまり感じられず、柔らかい包み込むような温度、お姉さん役としての態度として一貫してたように見えていたので、あのキスをせがむシーンには不意打ちでガツンとやられたんですよね(苦笑
そんなクルルが、ネイトへの感情を自覚する話がこれ。てっきり、クルルもあの瞬間までネイトに明確な感情を自覚していたわけじゃないと思ってたんですけど、そうじゃなんかったのか。いやいや、ネイトが年下でまだ12,3の子供というのもあるんだろうけど、クルルって自分の恋情に対して余裕ありますよね。

緑奏【探せ、そいつはあたしのだ!】
本編ではなかなか見られない脇役衆の新たな一面が伺えるドタバタコメディ。というかミオ、本編とかーなりキャラ違うんですけど!(笑
こんな危ないヤツだったのか。もっと健気でまじめで貧乏くじ引いてしまう幸薄いタイプだと思ってたのに……完全に暴走して回り巻き込んで自分だけ平然としてるタイプだ、これ(w
そして、エンネ先生……なんなんだ、その暗黒精神面というのは(汗
若かりし頃のエンネ先生は、どうやら邪悪というか黒ミサひらいて悦に浸ってそうな暗黒な人だったらしいw

青奏【アマデウスを超えし者】
てっきり、名詠を学ぶ学校であるトレイア・アカデミーにおいて、こと武術についてはエイダだけがずば抜けた実力を有しているのかと思ってましたけど……違うのか?
どうやら少なくともあと二名(女性)、エイダに比肩する実力者がいるらしい。どちらもゲテものっぽいので、本編にどれほどからむかわかんないけどw

白奏【花園に一番近い場所】
ネイトが主人公である以上、絶対あるだろうなと思ってた女装ネタw
なんだけど……、これコメディ回にも関わらず、非常に気になる点があるんですよね。
なんで、女装したネイトが、イブマリーそっくりなんだ?
それも、イブマリーと同窓であるミラー、ゼッセル、エンネの三先生が揃って見紛うくらいに。
ネイトの話では、イブマリーと彼には血の繋がりはなく、ネイトはイブマリーによって孤児院から見受けされ、育てられたはずなのに。
ネイトとそっくりなシャオという少年の存在といい、ネイトの出自にはかなりまだ大きな秘密が隠されているのではないだろうか。

黄奏【走れ、そいつはあたしのだ!】
とりあえず、【イ短調】がダメな人たちの集まりだということはよくわかった。ものすごくよくわかった。
ダメだ、こいつら。
そして、短編通してわかったのが、クルーエルが何気にそつなくおさえるところ押さえてるしっかりものの要領良し、ということか。ちゃっかり暴走の外にいるか、巻き込まれても痛い目みたいところに上手いこと逃げてるし(笑
頼りになりますw

虹奏【また会う日までの夜想曲】
カインツとイブマリーの……これはもうラブストーリーと言ってもいいでしょ。お互いにひたすらに目指し登らなければならない頂が見えていたからこそ、お互いに普通の恋人として想いを重ねることを選ぶことはしなかったにしろ、こんなに深く固く絆が結ばれていたんなら、それはもう恋人以上に心を重ねた関係だったんだろうなあ。
不思議と、悲恋という感じはしないんですよね。距離も存在もこえて、この二人は傍に居続けているような気がします。少なくとも、カインツがネイトというイブマリーの想いを継ぐ者の存在と、それを見守る者の存在を認識した瞬間から。
それにしても、コートの事といい、卒業式での無茶っぷりといい、カインツのイブマリーへのべた惚れっぷりは想像以上でw

そして、第二楽章へと繋がる幕間
禁律・空奏【そしてシャオの福音きたり】
結局のところ、未だにクルーエルが負っている運命にしても、シャオの正体も、ネイトとイブマリーの使う夜色名詠にしても、何も明らかになっていないんですよね。それどころか、第一楽章で起こった様々な重大事件。その真相も明らかになっていない。
まさしく、ここまでの5巻って起承転結の起。序破急の序でしかないんですよね。そして、ここからこそ、本当に始まるこの黄昏色の詠使いの本章、というわけですか。

……よし、盛り上がってきた!

黄昏色の詠使い 后〜瓦討硫里鯡憾る子供たち  

全ての歌を夢見る子供たち (富士見ファンタジア文庫 174-5 黄昏色の詠使い 5)

【黄昏色の詠使い 后〜瓦討硫里鯡憾る子供たち】 細音啓/竹岡美穂 富士見ファンタジア文庫


その純粋な魂を、誰かを好きになる想いの発露を、磨きあげ輝かせた時、それがどれほど綺麗で美しく眩しいものになるものか。
穢れも曇りも拭い去り、ただその輝きを貴ばせる。この作者の綴る言の葉、文章から綴り上げられる人々の思いの形は、本当に美しい。本当に綺麗で、奇麗で、泣きそうになる。
その一切の穢れを取り払った輝きに、思わず目をそむけたくなる人もいるかもしれないけど、でもこの拙いほどまばゆい光に、私は心ひきつけられてやまない。
ネイトの一途さは、あれはなんなんだろうね。人当たりもよく健気で純真。人から可愛がられ好かれて慈しまれる人柄の持ち主なのは疑いようもないのですけれど、私には彼の魂は孤高であるように思うのです。
母イブマリーと二人きりで過ごした日々。イブマリーはネイトに明確な形で愛情を注いでいません。彼の記憶にあるイブマリーはどこか冷たさすら感じます。母からの愛を信じつつも、どこかで心に飢餓感を宿しているような……母が残した夜色名詠を極めようという彼のはじめの頃の姿勢には、態度こそおとなしく柔らかいものの、それ以外のこと、自分を取り巻く人たちについても本当の意味で目もくれない、眼中にないのでは、という魂の形が垣間見えました。
そんな彼の孤高の魂に、するりと寄り添ったのがクルーエル。
ただ母の愛情を証明するために全てをかなぐり捨てることも厭わないように突き進んでいたネイトの足を止め、周囲を見渡す錨となったのがクルーエルの存在だったとしたら。
イブマリーを起点として閉じていたネイトの世界は、クルーエルを起点として広がりつつあったのではないでしょうか。
そして、そんなクルーエルが失われようとしていることは、すなわちネイトにとって世界そのものを失うことと同じ意味。
依存? それはまた違うでしょう。誰かを大切に思う気持ちとは、お互いを想い合うこととは、きっと支え合うことなのですから。そして、誰かが誰かを支え合うことが折り重なり、世界は成り立っている。
その体現が、この物語でネイトとクルーエルが織り成したあの美しい賛来歌(オラトリオ)。

名詠式では手に入れられないものがある。今回含め、この物語ではくり返しくり返し、この言葉が強調されていました。それは様々な人に当てはまる言葉でしょうけど、なによりネイトの生きざまに、そして夜色名詠という名詠式の完成にそれは現われているのではないでしょうか。

あれほど自分を追い詰め、求め続けて得られなかった夜色名詠の完成。それを、ネイトは今回見事に形にすることに成功します。偶然ではなく、揺るぎない確かな形をもって。
夜色に限らず、名詠式の神髄とは想いの力そのものだったんだなあ(感嘆


そして、あの二人の再会。
そっと寄り添うあの二人の姿に、胸が締め付けられそうでした。今回、ネイトとクルーエルの独壇場でしたけど、それでも一瞬のこの二人の邂逅はあまりに印象的で、思い出しただけで泣きそう。
二人にとって、あの短い邂逅と、ネイトとクルーエルの成長を見守ることで幸せで、報われているんだろうけど、はたから見たら切ないよなあ。
切ないよなあ。

“文学少女”と月花を孕く水妖  

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6)

【“文学少女”と月花を孕く水妖】 野村美月/竹岡美穂 ファミ通文庫


いったい、この遠子先輩という人は何者なんだろう。自称文学少女。心葉くんが言うところの、物語を食べる妖怪。でも、幻想の領域に住むアヤカシの類というには、彼女にはちゃんと住む家があり通う学校があり、友達がいて家族同然の人もいて、ちゃんと日々を生きている。彼女は、彼女としてちゃんと存在している。
でも、普通の人間というには、どこか存在感があやふやなのだ。今にも消えてしまいそうな儚さを垣間見る瞬間がある。次の瞬間、何の痕跡も残さず、この世界から消え去ってしまいそうな、そんな心もとなさ。

今回の物語は番外編。時系列としては二巻の後。夏休みの出来事。80年前に起こった事件の再現であり、遠子先輩の天敵であり親友である【姫】こと麻貴先輩の物語だ。
だがしかし、今回の話の深層に横たわっていたのは、徹底して遠子先輩の物語だったのではないだろうか。百合の心情。泉鏡花のネームの元となった鏡花水月の言の葉。鏡花の描く物語に刻まれた一連の作風。それら輻輳的に込められた意味の底辺に通じるのは、いまだ秘められた遠子先輩の想いと運命。
エピローグで示された未来からの回想。そこに込められた、身震いするほど切ない想い。思い出への郷愁。
第七巻卒業編がいかなる物語になるのかを自然と想起させる淡くも強烈な思いの発露に、どこか打ちのめされた感すらある今巻でした。


黄昏色の詠使い 4.踊る世界、イヴの調律  

踊る世界、イヴの調律 (富士見ファンタジア文庫 174-4 黄昏色の詠使い 4)

【黄昏色の詠使い 4.踊る世界、イヴの調律】 細音啓/竹岡美穂 富士見ファンタジア文庫


重ね重ね、この作品のイラストレイターに竹岡美穂さんを選んだのは慧眼と言いたくなる。
この作品のあったかい透明感に、これほどふさわしい絵柄は、今となってはちょっと他に想像できないですよ。

原因不明の昏睡状態に陥ったクルーエル。そのころ、世界のはずれの孤島で、クルーエルに似た少女に出会うカインツ。
クルーエルを中心に、ネイトの夜色名詠とそれに連なるもう一つの名詠式、さらに彼らを取り巻くさまざまな真相が明らかになっていくんだけど……。
こうなると、【黄昏色の詠使い】というタイトルが気になってくる。この黄昏色の詠使い、とはいったい誰をさし示しているのか。
一巻を読んだ時は漫然と、夜色名詠を使うネイトかと思ってたんだけど。夜は夜でも、ネイトの名前が意味しているのは「夜明け」。夜へと至る境目の時間をいう黄昏とは、真逆を意味している。
あれ? そういえば、クルーエルを守護している赤の真精は「黎明の神鳥」なんですよね。……ふぅん(思索中)

そもそも、黄昏色という名詠が、夜色名詠のことかどうかもはっきりしない。現状確認されている名詠式は五色に加えて、五色の混合である虹色。白の派生とされる灰色。そしてイブマリーの夜色と、新たにその存在が示されたもの。
でも、そのいずれとも、黄昏色はそぐわない。このタイトルにはどういう意味が込められているのか。次の巻で話は一つ区切りを迎えるみたいだけど、タイトルについてはまだ先に持ち越されるかもしれないなあ。

前作の感想では、ネイトはまだ自分に課せられた道を進むのにいっぱいいっぱいで、本当の意味で周りを、強いては自分を支えてくれているクルーエルを見ていない、と書いたけど。
その辺は、この巻で解消されたのかもね。
ネイトが他に扱う者のない夜色名詠式を研鑽しようとしているのは、今は亡き母イブマリーの背中を追いかけるため、という意味合いが大きかったのだけれど、自分を支えてくれていたクルーエルが倒れ、その背に大きな運命が背負わされていることを知ったとき、自分が彼女のために何ができるのかを考え始めている。そして、自分だけが使える夜色名詠。それを学び、研鑽し、母が残したこの謎の名詠式の秘密を見つけようとする意味を、改めて考え始めている。
がんばる男の子のスタイルを変えることなく、でもその方向性を新たな進路へ切り返したネイト君。
ここでも、一つの巣立ちが垣間見えたなあ。
がんばれ、男の子。

それにしても、まだ男女の機微どころか恋愛のなんたるかも理解していないおこちゃまのネイト君に、きっぱりと告白してさっくりと決断を迫るクルーエル嬢は、ある意味鬼畜外道のたぐいです。お、恐ろしいヒト(汗
いや、しかしお姉さんキャラがついつい保護者としての立場に齧りついて時期を逸してしまうことが多い中、彼女の自分の気持ちにとても素直で変に立場に拘泥しないきっぱりとした態度は、とても清々しいです。
おおいにもっとやれ。

あと、ジジイども。そのライバルの叱咤に限界を超えて立ち上がるとかいう熱いノリは若者の特権だからして、自重しろ(笑

黄昏色の詠使い 3.アマデウスの詩、謳え敗者の王  

アマデウスの詩、謳え敗者の王 (富士見ファンタジア文庫 174-3 黄昏色の詠使い 3)

【黄昏色の詠使い 3.アマデウスの詩、謳え敗者の王】 細音啓/竹岡美穂 富士見ファンタジア文庫


どうもやはり私は一生懸命頑張るショタ男の子と、そんな男の子を守るために一生懸命頑張るお姉さんな女の子、というカップリングが好きすぎるみたいです。
特に、男の子の方は姉役の少女のことを慕い、懐いているのだけど、根底のところで少女には背を向けて、違うものを必死になって追いかけてる。少女の方はちゃんとそれを分かりながら、男の子を振り返らせるんじゃなくてその背中を押してあげようとしている関係、とか。むしろ、少女の方は自分が彼の背中を押してあげるには力不足なんじゃないかと思い悩み、男の子と同じような必死さで、一生懸命さで自分の力を究めようとしているところ、とか。
何となく、ネイトとクルーエルの関係って、【ネギま!】のネギと明日菜の関係にちょっと似てるな、とも思ったり。違う? なんとなくですよ、なんとなく。

名詠式や世界観に関する設定も、段々といい感じで肉付けが出来てきた感もあり、イイ意味でバックグラウンドのはったりが効いてきた気がします。踊るための舞台はしっかりと土台が出来ているに越したことはないですからね。

2巻では周辺の人物の掘り下げで来たので、もうしばらく脇を固めていくのかと想像していたのだけど、今回は物語自体を動かしてきたか。クルルとネイトの内面についての掘り下げは、まだ本番前の助走段階でしょう、あれは。
ラストのクルルのネイトへの不意打ち紛いの甘え方は、お姉さんキャラの遣り口としては近年稀に見る凶悪かつ会心の一撃(笑

さて、今回作品自体に奥行きを与えるバックグラウンドの作り込みも成功した感ありで、見事にレーベルを代表する大作への衛星軌道に向けての打ち上げは完了したようにも思えるけど、次が本当の勝負どころですな。
物凄い期待中。

“文学少女”と穢名の天使(アンジュ)  

“文学少女”と穢名の天使
【“文学少女”と穢名の天使(アンジュ)】
 野村美月/竹岡美穂 ファミ通文庫


薄氷の上を歩くかのように。もしくは針金のように細い尾根を歩くかのように。
この作品を読んでいると、いつの間にかそんな気分になってくる。
思わず先端恐怖症(?)になってしまいそうなほど、この物語の少年少女たちの心は繊細で脆く儚げだ。
触れるだけで壊れそうな傷ついた心。息を吹きかけただけで砂と化して消えてしまいそうな怯えた心。
このあまりに繊細な心の移ろいを前にして、読むというささやかな触れ合いですらこんなに怖ろしいというのに。
よくも、こんなものを書く。よくも、こんなものを創り上げる。
絶妙の匙加減。自分なら、と考えてしまう。自分なら、この砂糖菓子の塔のように脆い登場人物たちに、壊れないようにと強さを与えてしまうだろう。それとも、いっそ壊してしまうか。
とにかく、このキャラ造成は、ある種想像を絶している。剥き出しの純粋さ。純粋であるからこそ、深く深く沈みこんでいく泉の底のような世界観。
参ったなあ、こりゃあ。
過程も方向も到達位置すらも違うかもしれないけれど、確かにこれは“文学”の境地に迷い込んでるよ。
前作の主題となった夏目漱石の『こころ』。あれが、一番ここに出てくる人々の純粋さ、潔癖さに通じているように思える。
これを読んで畏れを感じるということは、それだけ自分が適当に生きてる、って事なのかなあ、なんてことを思ったり。

まさかここでななせが心葉の世界に重きを成してくるとは思わなかったので、意外の念にうたれている。いや、考えてみれば前作で既に兆候はあったわけだし、キャラの配置から見るに『彼女』と対決するに遠子先輩という人はあまりに心葉に依存されていると同時に立場が不鮮明に過ぎるのを考えれば、ななせの重要性は無視できないどころか必要不可欠と見てもいいのかもしれない。
なんにせよ、ここまで悲惨で可哀相な、でも自業自得で自爆型なツンの人も珍しいので、ついつい応援してしまうのでした。

黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで  

イヴは夜明けに微笑んで
【黄昏の詠使い イヴは夜明けに微笑んで】 細音啓/竹岡美穂
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富士見ファンタジア文庫の新人賞、第十八回ファンタジア大賞の佳作受賞作品である。
なるほど、佳作だ。
話の筋立てや組み立て方なんぞ、素人感丸出しだし、全体的に荒も多い。拙い部分ばかりだ。まだまだ全然下手くそである。
作品全体を見ての完成度という視点で見るなら、まったくお粗末でしかない。これでは大賞はとても取れないだろう。金賞や銀賞も正直苦しい。佳作はまったくもって妥当だ。佳作とする以外の選択肢はなかっただろう。

だ・が・し・か・し!!!

そんなことは、この作品の素晴らしさを語るのに何の問題にもならない! なるものか!
だいたい、荒だの下手だのなんて部分部分はあとから振り返ってみてからようやく気付いたものだ。読んでる間は、それどころじゃなかった。
この物語が放つ輝きは、そんな短所を覆い隠してなかったことにしてしまうくらいに、眩かったわけだ。
まずプロローグでガツンだ。ボクシングやらの格闘技で言うなら、それ以降の記憶はありませんでした、というぐらいのクリーンヒットのスマートかつ華麗な一打。
まったく、やられたものだ。もう既に、あのプロローグで自分はこの作品に完全に魅入られていたわけだ。引き込まれていたわけだ。飲み込まれていたわけだ。
そして、ラストのかつて交わした約束の果て。素晴らしい、物語の結実。切なさの結晶。おそらくは、限られた人間にだけ紡ぐことを許されたあまりにも綺麗なお話。
あの気持ちがあふれ出したような告白には、胸が一杯に……あぅあぅ(涙
この作品の拙い部分なんてものは、正直努力を怠らず研鑽さえ積めば幾らでも解消し、伸ばせる部分だ。まったく、問題じゃない。
この人には、傑作を紡ぎ出せる重要なナニカを間違いなくその手に握っている。

ああ、思い返していると胸に沁みてくる。切ないよぅ、切ないよぅ。だけど、彼らは決して不幸なんかじゃなく、約束を果たすことで、彼らは失ったものをもう一度見つけられたわけだ。
イブやカインツ、それに対してクルーエルやネイトの若い世代。二つの世代の青春時代の交錯。この辺は、対比というわけでもなく、単なる並行というわけでもなく、本来なら離れた世代であるこの二つの世代の物語が、クライマックスで重なっていく、魅せ方としては素晴らしかった。この辺のセンスは得がたいものがあるなあ。
クライマックスまでの持っていき方はやっぱりどうかと思うんだけど、読んでる方の気分はぐいぐい持ち上げられていくわけで、押さえるところは押さえてるんだな、これ。綺麗なだけの話じゃなく、燃え系の話も書こうと思えば書けるとみた。
いや、でもしかし、この作品の肝ややはり『人の想い』であり、『約束』なわけで。
……イブは夜明けに微笑んで。
うん……うん……うん。
おすすめです。
 
11月26日

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