【打撃系鬼っ娘が征く配信道!】 箱入蛇猫/片桐 TOブックス

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バイト先が全て潰れてしまった少女は、親友のプロゲーマーに誘われて、「スクナ」として配信者になることに!選んだゲームは広大な自然広がるファンタジーの世界なのに勧められたのは物理特化の「鬼人族」に打撃武器!?だが超人級の身体能力をもつ彼女にはドンピシャリ。軽々と使いこなし、生き生きと敵をなぎ倒す!普段のゆるい雰囲気とは裏腹なその姿に、気づけばリスナーは一万人越え!?噂を聞きつけやってくる強敵も、金棒一本に全ての力を込めて迎え撃つ――

「それじゃあ、今日も配信やっていこ~」

解き放たれた鬼っ娘がモンスターを狩りまくる、冒険配信ファンタジー開幕!
書き下ろし短編収録!

おおっ、これ元の人間としての身体能力が図抜けているが故に、フルダイブ式のゲーム内で突出したプレイヤースキルを発揮できるというタイプのお話なのですが、このスクナこと菜々香はガチのリアルチートじゃないですか。元トップアスリートとか軍人とかじゃなく、彼女自身リアルで何か業績をあげているわけでもないのですが、単純に身体能力が異常。人間離れしている。というか、これ突然変異種じゃねえの? 作中でも超人体質、みたいに言われているし。
これ普通にスポーツの道に進んでいたら意味不明なレベルの世界記録保持者になってそう、なのだけどそういった道へは進まなかったんですよね。それどころか、中卒フリーターで現在無職の21歳、という中々厳しい人生を歩んできている所で察するものがある。
と言っても家庭環境が頗る悪かった、という訳でもないようなのですが。両親が早くに亡くなってしまったのが一番大きいのでしょうけれど、引き取られた先を含めて周りに居た人達はむしろイイ人たちだったようなので、我武者羅に働いて働いて働きまくるという人生に突入してしまったのはこのナナという娘の不器用さゆえだったのかもしれません。なんか、かなり肉体労働系の仕事に偏っていたみたいですし。現実社会で思いっきり振るうことの出来ない自分の力を持て余した結果として、体力を発散する方向へと突き進んでしまった、みたいな?
もう少し自分の力を有用に使うやり方もあったんじゃないか、とも思えるんですけどね。まあ本人は不満には思っていないようですし、フリーターとはいえアホみたいに仕事掛け持ちして働きまくっていたせいか、金に関しては困らないだけ稼いでるみたいですけど。
それでも、一番仲の良い親友と言ってもイイだろう相手と一年近く顔を合わすこともないくらい、連絡もなかなか取り合えないくらいまで働きまくっていた、というのはやっぱり不器用を感じてしまう所だなあ。
ともあれ、それだけ突っ走って脇目も振らず生きてきた彼女が、唐突に生まれた空白、バイト先が全部潰れるという偶然によって出来てしまった暇な時間に、ようやく周りを見渡す余裕を持てたのか。
久々に会った親友のリンに誘われて、彼女がプロゲーマーとしてプレイしている完全没入型、フルダイブのゲームへと誘われ、その世界ではじめて自分の力を全力で震える環境に出会うのである。
……と言っても、まだレベルの低い段階ではむしろ彼女の身体能力の発揮を阻害する形になってしまっているみたいなので、現状では全力で動ける、には程遠いみたいなのだけど。

ゲーム配信というのは実のところ全然見たことがなく、文化そのものが未知なのだけど、「わこつ」とかそっち系では共通のネットスラングなのか。他の配信系ネタの作品でも見たけど。
独りで、或いはパーティーでゲームを進めていくのみではなく、配信する事に寄って視聴者に見られ、彼らのコメントに反応しながらゲームに挑んでいくスタイル、というのは会話の入り方というか、コメントからいろんな情報が飛んできながら、という展開になるのでちょっと雰囲気違いますねえ。
とはいえ、本作はまだこの配信型特有というべき特徴というか、そういう形式であってこそのナニカ、それを武器にした魅せ方、をまだ感じるところまでは行っていないのですが。
しかし、ナナって友人たちの幼少期の回想を見ると、かなりの口数少ない表情の変化があまりないタイプのぼんやり天然不思議ちゃん系なんですよね。
当人視点だとただの脳筋系マイペース型なのですが、幼児の頃のキャラだととても配信のために常に喋りながらあれこれするタイプには見えないので、だいぶキャラ変わったように見える。
まあバイトの内容を見ると接客系もかなりこなしていたようなので、そういう経験の蓄積による変化もあったのかもしれないけど。でも、あの幼児の頃のキャラも面白かっただけにその路線も見たかったかなあ。とはいえ、あれを一人称の主人公でやるのは、配信も含めて難しそうだけど。

今の所ソロプレイで進んでいるけれど、親友との合流もあるだろうし、パーティープレイになっていくんだろうか。小難しいことをせずに、まずぶん殴るという棍棒金棒での打撃スタイルはなかなか面白かったです。