徒然雑記

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紙城境介

僕が答える君の謎解き 2.その肩を抱く覚悟 ★★★★   



【僕が答える君の謎解き 2.その肩を抱く覚悟】  紙城 境介/羽織 イオ 星海社FICTIONS

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明神さんの推理が間違ってるかもって、少しも思ってないでしょ?

生徒相談室の引きこもり少女・明神凛音は真実しか解らない。
どんな事件の犯人でも神様の啓示を受けたかのように解ってしまう彼女は、無意識下で推理を行うため、真実に至る論理が解らないのだった。
臨海学校に参加する凛音の世話を焼く伊呂波透矢だったが、ふたりは深夜に密会していた疑惑をかけられてしまう。
立ちはだかるのは35人の嘘つきたち。
誰も信じてくれない凛音の推理を、透矢は証明することができるのか。

本格ラブコメ×本格ミステリ、恋も論理も大激突の第2弾!


いい子だなあ、紅ヶ峰。この2巻は、彼女こそが華だった。
華と言ってもまっさきに目を引く咲き誇る華ではなく、ひっそりとでも深い存在感を示す一輪の花のような咲き方だったけれど。
いい加減に生きてるようなキャラのようで、紅ヶ峰は誰よりも誠実であろうとしている。それは、このシリーズ冒頭で凛音を貶めた悪戯を、彼女自身が痛く後悔しているからだとしても。それは心改めたというよりも、自分のやったことの醜さ、惨めさに打ちひしがれたからなのだろう。こんな自分は嫌だ、という思いが彼女を駆り立てているように見える。
だからだろう、2巻後半で自分がやってしまった致命的な行為に落ち込む透矢を慰めるのではなく、叱咤激励した彼女の選択は気高くすらあった。
それはきっと、透矢につけこむチャンスであったはずだ。でも、この娘にとって透矢を好きという気持ちと同じくらい、凛音が自分を認めてくれたこと。友達という関係になったことを大事に思っているようでした。
紅ヶ峰が普段からつるんでいる二人のギャルに対して、友達と言えば友達だけどそんな大した関係じゃないと明言しているのに比べて、明神凛音と友達になったという事実はお互いぶつかりあった結果なんですよね。踏み込まず上辺だけの薄っぺらい関係でなあなあで済ましているのではない、自分の力で自分の言葉で、今まで自分のことなんか名前も覚えてなくて認識すらしていなかった凛音に、自分のことを否応なく思い知らせた。認めさせた。そんな初めての、本気でぶつかった相手だったのだ。
最初から、恋敵だとわかっている。それでも、凛音に認識されたのは嬉しかったし、お互い意識し合う関係は気恥ずかしくも楽しかった。友達だと、思っている。
そんな相手だから、この娘は正々堂々ぶつかりあう事を選んだのだ。逃げることなく、卑怯な真似をしてかすめ取るのでもなく。
そんな紅ヶ峰亜衣という娘の踏み出した姿は、気高くすら感じるものでした。カッコよくすらあったのでした。
一歩進み、一歩踏み込んだ凛音と透矢の関係ですけれど、それを後押ししたのは間違いなく紅ヶ峰でした。彼女の葛藤、懊悩、勇気、すべてが誠実で眩しかった。それは、確かに「華」だったのです。
和花暮は、完全に紅ヶ峰のこと見縊って見損なっている。和花暮は人にレッテルを貼り付けるのは上手いのかもしれないけれど、そのレッテルを貼り付けた相手の中身に何が詰まっているのかを、まるで見る気もないのだ。理解する気も、とっくの昔になくしている。
その意味では、和花暮が透矢を自分と同類と分類していたのも間違いではないと思うんですよね。彼は他人にレッテルを貼り付けるような人間ではないけれど、逆に言うと何も貼り付けない人間のようにも見える。自分の中の推定無罪という絶対善の定義にこだわり、その枠に他人を押し込める。型にはめ込んで判断する、というタイプだったように思える。彼もまた、本質的に他人の中身なんか理解する必要がないと考える側の人間だったんじゃないだろうか。事実さえあればいい、客観的な事実さえ積み重ねていけば、答えは導き出される。
でも、そのこだわりは凛音と深く関わっていくことで段々とズレを生じさせていく。いつの間にかもう、彼は彼女の苦しみに共感して、踏み込んでしまっていた。彼女への情が生まれ、彼女のことを信じていた。信じていたからこそ、彼女の言葉を信じなかった。凛音の正しさを客観的な事実ではなく彼女の人間性の方を信じて、否定してしまった。
凛音が、透矢に信じてほしかったものは、違ったのにね。いや、違っていたんだろうか。少なくとも、お互いもう出会う前の二人ではなくなってしまっていたのに、以前と変わらないままのつもりで続けようとしたからこその、致命的な錯誤であったように見える。
それでも、以前のように諦めて逃げずに、自分の力で自分の言葉を証明しようとした凛音は、確かに前に進んでいて。紅ヶ峰に発破をかけれた透矢もまた、変わってしまった自分を認めることで、ある意味現実から目を背けた和花暮の停滞を踏み越えられたんじゃないでしょうか。
和花暮がレッテルを貼って書割の駒のようにしか扱わなかったクラスメイトたち。その一人ひとりを生きた人間として、一人ひとりが違った事を考え思って動いている人として捉えたことで、透矢は彼らがついていた嘘を紐解いていく。
肩肘張ってついた嘘じゃなく、普段の生活の中でふとしたきっかけ、タイミングでつく小さな嘘の積み重ね。それは、クラスメイトたち一人ひとりのその日の行動を紐解いて、その性格を、その日の何気ない気分の移り変わりを、感情の様子を、彼らが置かれた状況や事情を、きちんと見つめなければ気が付かない嘘たちだ。一人ひとりを、ちゃんと見なければ紐解けない連鎖であり、行動の積み重なりだ。
「嘘つきはクラスメイト全員」というアオリ文に相応しい、その日起こった事の解体であり、明神凛音の証言の正しさを、唯一嘘をつかなかった彼女の言葉の正しさを証明する、推理劇でありました。

前半の、紅ヶ峰のカンニング疑惑事件も、まさかの事件発生前の犯人指摘にもびっくりさせられましたけれどね。いや、むしろ納得か。凛音の能力からすると、たとえ事件が起こる前でもその材料が揃っていたら、自明の理で犯人が導き出されてしまってもおかしくないんですよね。
ただ、この場合だと起こってしまった結果から、その際に起こっていた状況を鑑みて当てはめ逆算していくことで凛音の推理を推理していく透矢の手法は適用できないんですよね、これ。
まだ事件が起こっていない何が起こるのかわかっていない段階だと、透矢は推理しようがないのですから。推定無罪、以前の問題だこれ。
透矢の信念からしても、まだ起こっていない事件の犯人捕まえて事前に防犯、というのもできないだろうしなあ。いやこれ、犯人に今から何するかわからんけれど、とにかく止めろ! という風に止める事は出来ると言えば出来るのかもしれないけれど。知らんぷりされたらどうしようもないなあ。でも、まだ何もしてない段階から、でも準備を整えて行動に移る用意が完了している段階でそんな指摘を受けたら、抑止効果は発揮できると言えなくもないのか。
でも、今回凛音の能力では、教唆犯まで推理は届かない可能性が高い、という話も出てきて、彼女の能力にも大きな陥穽があるとわかったのは大きいかも。

しかし、今回の話を見ていると実質ラスボスになるのは、明神先生になるのだろうか。ある意味、凛音に閉じこもる鳥かごを用意していたのは彼女なわけですし。


転生ごときで逃げられるとでも、兄さん? 2 ★★★★☆  



【転生ごときで逃げられるとでも、兄さん? 2】 紙城 境介/木鈴カケル MF文庫J

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――今はあなただけが知っている。あの妹の存在を。

俺がジャック・リーバーとして転生し、同じく転生していた妹との死闘から8年。ヴィッキー率いる『真紅の猫』との事件後も、俺はラケルの指導の下で精霊術に磨きをかけていた。
そして遂に、リーバー家に一人の使者がやってくる。王立精霊術学院――才能・努力・天運、己の全てを賭けて同世代の神童たちと鎬を削る、弱肉強食の世界への招待状を携えて。
いいだろう、やってやるさ。最高の環境でさらなる力を身につけ、もう何も失うことのないように。転生しただけの凡才が、それでも最強だってことを、本物の天才どもに証明してやる!
神童が集う待望の第2巻! ――戦え。ただ一つのために、他全てを捨てることになっても。

ライトノベル史上最恐最悪と言っていい妹の恐怖から一年五ヶ月ぶりとなる第2巻。
いや、長いこと続き音沙汰ないから心配していたのですが、どうやらこのまま続いてくれるご様子で。作者の紙城さんは【継母の連れ子が元カノだった】の方が順調な上にアニメ化の企画も進んでいるようなのでてんやわんやだったと思われるので、兎にも角にも出てくれてありがたいところ。
おまけに、ちゃんと前回のあらすじを丁寧に書いてくれたことで物語への没入もすんなりと……って、あらすじでめっちゃ語ってる人ーー!!
ウェブ版既読なのでこの人誰なのかわかるし、こういう場面で口挟んでくる立ち位置にいる人だというのは知ってるんだけれど、それでもえらいところで顔だしてきたなあ。普通はいや誰だよ!? となるところであるんだけれど、そもそもラスボスである「妹」からして正体不明所在不明存在不明すぎるので、そういう得体のしれない「領域(ステージ)」が存在していると認識しておいた方がいいかも知れない。
それに、一巻で描かれた中で不自然な描写だった場面や疑問点をちゃんと項目にしてあげてくれているのは物語を理解する上で非常に親切な仕様になっている。まあ一連の最重要な疑問点は、この時点では絶対にわからないんですけどね。おいおい、物語が進んでいった上であれがそうだったのか! と、なるわけですけれど。
それでなくても、この2巻も伏線のオンパレードだったのですが。ちなみに、このあらすじで喋っている人に関しても、この2巻の作中でちゃんと?触れられていたりします。

さて、9つになったジャックとフィルは、スカウトを受けて国中から天才たちが集まる王立精霊術学院を受験することになる。そこで出会ったのは四人の同級生たち。
アゼレア・オースティン。
ルビー・バーグソン。
ガウェイン・マクドネル。
エルヴィス=クンツ・ウィンザー。
血と涙と魂で結ばれる、ジャック・リーバー生涯の友となる者たち。
この物語はジャック・リーバーと彼を陵辱する妹との悪夢のような戦いの、絶望を終わらせる戦いの物語であると同時に、ジャックとこの四人の青春の物語であり、果てしない闘争の物語でもある。
彼ら四人との出会い、そして友情の始まりこそがこの物語の本番のスタートだと断じてもいいくらいに、重要な四人なのである。
しかし彼らの関係は最初から、手に手をとってのお友達ごっこ、ではないんですよね。端から真剣勝負、あらゆる手段を講じて相手を蹴落とし、自分を有利に立ち回らせる、ほんとうの意味での全力の戦い。
これ学園モノではあるんだけれど、精霊術学院の入学から卒業までのシステムを見ていると、教え学び成長するための学舎ではなく、常に上を目指し届かなかった者から脱落し追い落とされるシステムになってるんですね。厳然とした勝敗数がものをいうシステムになっている。
これウェブ版読んでいる時は全然気づかなかったんだけれど、改めて書籍版を読んでるとまんま「将棋」の「奨励会」がモチーフになってるんじゃないかと思うようになったんですね。
毎期、総当たりの勝敗で負けが込んだら脱落退学。もし卒業できたとしても、あくまで段位を取得する資格を得ただけで、本番はプロの精霊術士になってから。という過酷極まるシステム。
【りゅうおうのおしごと!】なんかを読んでたら、奨励会という場所が天才ばかりが集まり蠱毒のようにお互いを食い合いながら、その上澄みとなるほんの数人だけが上に抜けられるという、現代の魔窟さながらの場所であり、何人もの人間の人生そのものが食い潰されていく壮絶という言葉では表現しきれない場所だ、というのがおわかりになるでしょう。
この精霊術学院もまたそれと同じく、まず天才である事は前提条件。その上で生き残ることの出来るだけの餓狼のような意欲が、闘争心が、何としてでも勝ち抜くという本気が必要になってくる場所。
その上で、この物語では本気でぶつかることこそ、本気で潰し合うことによってこそ、本当の友情が芽生えるのだという理(ことわり)が描かれている。相手の強さに敬意を抱くならなおさらに、相手の強さを認めるのならなおさらに、全力で潰せ、全力で戦え。
そうして初めて、真の友情が生まれるのだ。

相手の戦い方を研究し、対抗策を練り上げ、罠を仕掛け、妨害し、相手に不利を自分に有利をもたらす環境を整える。この手練手管の応酬が面白いのなんの。
フィルが入った諜報科、というのが大手を振って学院の看板の一つとして機能しているのがとびっきりに奮っている。まず前提として、戦闘科の生徒は諜報科・支援科の生徒と組んで実際に戦う前に情報戦に勝利しろ、というクレバーきわまる学校の方針なんですよね。
んでもって、この策略謀略環境調整こそがジャック・リーバーの真骨頂、と言ってしまいたくなるほど、ジャックのケレン味とズルさを極めた立ち回りがイカしてるんですよね。すべての仕掛けを御覧じろ、とばかりのジャックとフィルのコンビの食わせ者っぷりは最高でした。
院長先生がもうずっと楽しそうに「ウヒヒヒヒヒ」と爆笑してた気持ち、よくわかるわー。

しかし今回のこれはあくまでご挨拶。本気の戦いではあっても死命を左右する殺し合いではない。国や世界の命運をかけた負けられない戦いではない。
そうした戦いを前にした時、この子たちはただの神童ではない、掛け値なしのとびっきりだという事が証明されるだろう。
その時こそ、もう一度彼らは突きつけられることになる。
相手の強さに敬意を抱くならなおさらに、相手の強さを認めるのならなおさらに、全力で潰せ、全力で戦え。真の友であるからこそ、死力を振り絞って戦わなければならない時が来る。
だが今は、今だけはこの黄金の時間を穏やかに過ごして欲しい。青春という名のかけがえのないひとときを、宝物のような世界を、今はただ心ゆくまで楽しんで欲しい。溌剌とした、ワクワクを隠せない子供達の輝くような笑顔を前に、そう願うばかりだ。
「どうか悔やまないで。出会ったことは、きっと罪じゃない」

その存在の悪意は、未だ一瞬たりとて途切れずに纏わり続けているがゆえに。

それはまだ始まってすらいないはずなのに、とっくの昔にはじまっていて、もう取り返しがつかないほどに手遅れで。
でも、すべてはまだこれからなのだ。

頑張れ、負けるな。君たちは出会った。だからもう、独りじゃないんだから。


そう言えば、2巻は表紙フィルでもラケルでもなく、アゼレアなんですね。この順番には意味があるんだろうか。
アゼレアは改めて見ると、こう気の強さ以上に言動の端々に人の良さ、善良さ、優しさが滲み出ていて、もうツンツンしているのを見ているだけで微笑ましくてたまらなくなる。イイ子なんだよなあ。
めちゃくちゃイイ子なんだよなあ。
折角仲良くなった同級生、クラスメイトがお互い腹の探り合い騙し合い暗闘が日常になってしまうことに落ち込んで、元気なくしてしまうところとか、もういい子すぎて甘やかしたくなってしまいます。
フィルはジャックとイチャイチャしすぎー! いや、アゼレアが怒るのもしょうがないぞ、あれだけチューチューしてたら。9歳でおませすぎるだろう、この子は。でもポワポワしているのに、作中でこの子が随一のくせ者なんだよなあ。今回もそのくせ者っぷりをこれでもかと見せつけてくれましたし。
まだまだ萌芽ですけれど、こうニヨニヨしてしまうライバル関係がはじまっているのが、ルビーとガウェインで。不倶戴天の関係であるからこそ、意識しまくってるこのスラムの野良猫と正々堂々とした騎士の二人の関係も要注目なのである。
エルヴィスは、もうめっちゃ王子様然とした王子様なんだけどね。この子もイイやつなんだよなあ、それでいて頼もしいし、聡明だし、茶目っ気もあるし愛嬌もあって可愛げもあるしで完璧か、と。でも、完璧である以上に弱いところもあり不足もあり抱えているものもあり、だからこそジャックと無二の親友となっていくんですねえ。
ほんと、この新しいクラスメイトであり友人となる四人は大好きなキャラなので、彼らが揃ってようやく本番スタートという気持ちであります。
トゥーラ先生も、このロリババアも、好きなんだよなあ。あのババアっぽい笑い方とかホント好き。この人が笑ってるときってめちゃくちゃ楽しそうなんですよねえ。
好きなキャラが多いって、本当ならとてもイイ事なんですけどね……。

さて、次回霊王決戦編は、なるべく早めに出してきてほしいものです。このワクワクドキドキは、はやめに次の段階に進めたい。



継母の連れ子が元カノだった 7.もう少しだけこのままで ★★★★☆   



【継母の連れ子が元カノだった 7.もう少しだけこのままで】  紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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生徒会は、恋ざかり!? 新たな日常と体育祭――二人の誕生日ももうすぐ。

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
文化祭の一件から、元カップルだった記憶もいい思い出になりつつある秋のこの頃……結女が生徒会書記を務める、新たな日常も始まっていた!
緊張の面持ちで踏み入れた生徒会室に集うのは――意外と恋に多感な高校生たちで!?
水斗と散々嫌みを言い合った手前、いまさら好きだと言いにくい結女は、会長・紅鈴理はじめ女子メンバーの恋バナをヒントに、水斗から告白させるための“小悪魔ムーブ”を思いつき!?
「――私たちの、誕生日。予定、空けておいてね」
そしてきょうだいとして迎えるその日に、二人の想いは向かい合う――?


生徒会は恋の花咲く春爛漫、とばかりに結女が入った生徒会の役員たちは青春の真っ只中でありました。前巻で登場した生徒会長の紅鈴理はそのカリスマ性を見せつけてくれると同時に恋に悩む一人の乙女である事も発覚していたのですが……。
もう一人の副会長の亜霜愛紗という娘も、前生徒会長の星辺先輩に小悪魔ムーヴをかまして気を引こうと一生懸命。まさに恋真っ盛りの生徒会は、水斗にどうやってもう一度恋させるかに悩む結女にとっては相談相手に事欠かない頼もしい先輩達の園、になるはずだったのですが……。
いやうん、だめだこりゃ。
今まさに恋に夢中、と言った女性陣。年上の先輩たちと来たら、もう恋愛模様については練達、経験も豊富で相手を意識させるスキルにも事欠かない恋愛強者だと思うじゃないですか。
ちょっと相談したら含蓄ある台詞が帰ってくると思うじゃないですか。今恋している女の子特有の、価値ある言葉を送ってくれると思うじゃないですか。
……鈴理会長も、愛紗副会長も、ひでえポンコツだったぁ。
今まさに恋真っ盛りって、思いっきり空振りまくってる真っ最中じゃないですか! 相手を振り向かせるために、金属バットで殴りかかるような暴走娘たちじゃないですか。
恋愛弱者にも程があるじゃないですか。いや、もうちょっと男を振り迎えるにもやり方ってもんがあるんじゃないですか? 恋愛雑魚か! ゴブリンか何かなにか、この先輩たちは。
ラブコメ漫画読んだほうがまだ参考になるんじゃないだろうか。やり方を完全に間違えてません?
なんかもう目を覆わんばかりの惨状が繰り広げられてて、むしろもっとこの人達の恋模様一部始終見てみたい気がムクムク湧いてきてしまうんですが。ラブコメとして面白すぎるサンプルだぞ、この二組。
愛紗は小悪魔ムーヴかますにしても、もうちょっとやり方があるだろう、とかもうちょっと上手くやれよ、空気読めよ、タイミング見計らえよ、とツッコミが絶えないありさまで。
いやあ、作者の紙城さんといえば、別作品ですた最強のサークルの姫「アルティメット・オタサー・プリンセス」の暴れさせっぷりからも小悪魔ムーヴに関しては達人もいいところなんですけれど、あれをポンコツ方向にぶん投げるとこんな残念キャラになるのかー、すごいなー、わはははは(爆笑
それよりも酷いのが鈴理会長なんですが。この人は……ほんとになにやってんだ? 物理か? 取り敢えずメーター貯まりきったら襲いかかるのは、女の子としてどうなの!? どうなの!?

彼女たちを見ていると、中学時代に凄く真っ当に男女のお付き合いをしていた結女の方が恋愛経験値では遥かにベテランの風格が感じられてしまうのですが。暁月の方ですら、大失敗をしたとは言え川波とそれはディープな付き合い方をしていたのですから、同じ小悪魔ムーヴでも恋愛雑魚どもとは格が違うんですよねえ。
暁月の場合、やり方がエグすぎてどんな瀬戸際狙ってるんだよ、となってしまいますが。この娘、色んな意味で業が深すぎるw
ともあれ、恋愛雑魚どもの頓珍漢なアドバイスを真面目に聞いてしまう結女でありますけれど、生徒会の先輩たちの旋風脚並の空振りっぷりに比べると、結女がそのアドバイスどおりに動くと多少から回っててもちゃんと水斗に刺さるように着弾してるのを見て、流石結女さん恋愛経験値が高い! となってしまう不思議。
いや、最初の時のバスタオル事件と比べると、結女の肝の据わり方も違いますからねえ。腰引けたまま勢いだけでツンツン突き回そうとした頃と比べたら、攻める気満々の今は度胸が違う。
それはそれとして水斗の息子さんを思いっきりガン見してしまった後の、あの喜悦っぷりは普通にキモい、キモいぞ結女さん。いさな並にキモいw いや、生々しい反応というべきなんだろうけど、あんた喜びすぎだw

そんな裸のお付き合い、に限らないんだけれど、結女と水斗の距離感が凄く安定してきたのがわかるんですよね。かつての恋人だった時の頃のお互いに気を遣い、相手のことを慮りだからこそ距離が一定置かれてしまっている状況と違って、家族になったが故の遠慮のなさ。
それでいて、結女が生徒会に入って学校の中でも水斗と違う時間と空間の中で過ごすようになった事で、それぞれ離れた所で時間が進むようになったんですよね。それぞれに自分の世界を作って、別の道を歩きはじめた、とも言えるわけで、その意味では距離は開いた、とも言えるんですよね。
でも、恋人だった頃よりもその距離感は柔軟と言えるのかもしれない。近くも遠くも自由で、でも望めばすぐ手が届く。望めば、いつもそこにいる。
距離感というなら、今水斗とべったり近くにひっついているのはいざなの方でしょう。いやそりゃ、付き合ってると思わないほうがおかしい、という距離感でくっついている二人だけれど、結女はさほどその二人の距離感に焦りとか嫉妬とか感じている様子見えないんですよね。
それは、二人の関係をちゃんと理解しているという以上に、今の自分と水斗の距離感に確信を抱いているから、なのかもしれない。
あの体育祭の借り物競争の時の、いざなに対しての「貸して」じゃなくて「返して」。は結女の揺るぎない立場を指し示しているように思えます。いざなはほんと、無双状態エンドレスなんですけど、この結女に対しては完全に立場わからせられてますよねー。完全にひっくり返ってお腹見せてる状態。そんな無条件降伏状態にも関わらず、隙あらば水斗の美味しそうなところ齧ろうとしているところが卑しいw いざな卑しいw それを愛嬌として水斗にも結女にも見事に認めさせてしまっているところがなおさら御卑しいw
いやあ、この娘ほんと好きだわ。


もう少しだけこのままで
誕生日の、あのプレゼントを渡すエピソードは良かったなあ。今の兄妹という家族の関係と、元恋人という過去の想いと、今新たに好きになった人への想い、それらがゆっくりとかき混ぜられていく心地よさ。それが穏やかながらしっとりとした熱の籠もった深夜の部屋の中で交わされる会話の中に詰まってて、なんか胸が暖かくなるやらキュンキュンするやら、ぶわーっと読んでるこっちの感情というか気持ちというか、噴き上がってる感覚がたまらんでした。こういう「ぶわーーっ」ってなる作品は、やっぱりイイですわ。充足感というか、この胸一杯になる感覚を味わわせてくれる作品は、物語は、最高です。


僕が答える君の謎解き 明神凛音は間違えない ★★★★   



【僕が答える君の謎解き 明神凛音は間違えない】  紙城 境介/羽織 イオ 星海社FICTIONS

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本格ラブコメ×本格ミステリ、開幕!

生徒相談室の引きこもり少女・明神凛音は真実しか解らない。
どんな事件の犯人でもまるで神様の啓示を受けたかのように解ってしまう彼女は、無意識下で推理を行うため、真実に至ることができた論理が解らないのだった。
伊呂波透矢は凛音を教室に復帰させるため、「彼女の推理」を推理する!

『継母の連れ子が元カノだった』の紙城境介が紡ぐ新たなる勝負作!

紙城先生、ほんとジャンル問わずに上手いよなあ。【継母の連れ子が元カノだった】が代表作となった紙城先生ですけれど、その書籍デビュー作は「ミステリー」でした。それもファンタジー世界における魔法を使った殺人事件、千年の因縁と祈りを紐解く超歴史的殺人事件というミステリー。
これがまためちゃめちゃ面白い、という以上にストーリー展開にしても演出にしても凄く巧かったんですよねえ。
そして再び今作にてミステリー作品と来た。体裁こそ日常や学生生活の中で生じた謎を解く日常ミステリーですけれど、本作が生半可なミステリーと異なっているのはあらすじからも明らかでしょう。
これは犯人や真相を推理するミステリーじゃない。過程をすっ飛ばして「天啓」によって導き出された真実、その真相に至るために演算されたはずの「推理」を「推理」するミステリー。

明神凛音は真実しか解らない

計算機に数字を打ち込めば、計算式をすっ飛ばして答えが出てくるように。
コンピューターに数値を入力すれば、その過程を内的に処理して答えだけを出してくれるように。

凛音は自分でもなぜ解ったのか解らないまま答えを導き出してしまう。それが真実、でも真実を証明するすべはどこにもなく、過程がわからない凛音自身にもそれを証明する事は出来ない。
なかには凛音に超常的な能力があると思い込み、それを「天啓」と呼んで神からの託宣や預言のようにありがたがる者すらも身内から出てしまう始末。
しかし彼女の能力はそんな神がかりのものではなかった。ただ、得られた情報を無意識下でスーパーコンピューターが演算するように超高速で処理し……瞬時に推理していただけ。いや、その能力ですら余りにも人間離れしていて、人間はそれを認められない、人の社会はそんな形で導き出された真相、答えを受け入れられるように出来てはいない。
そのため明神凛音は人の社会から孤立していた。自分のあり方が誰からも受け入れられず、理解されないと諦めていた。当然だ、明神凛音自身ですら自分の「天啓」を理解できなかったのだから。
どれだけ真実を話しても誰も信じてくれない、誰も話を聞いてくれない。
そうして世界と自分とを隔てて引きこもろうとしていた彼女の前に、一人の少年が現れて自分は弁護士志望だと告げた上で言ったのである。
弁護士とはこの世で最も、話が通じる人間のことだ、と。

推理の工程を、語らなければならない。答えへと至る筋道を示さなければならない。彼女が言う「自明の理」を、誰にでもわかる形で解き明かさなければならない。

そうして二人の事件簿がはじまった。明神凛音の誰にも理解できない「推理」を「推理」する謎解きが。
それは通常のミステリーとは真逆の工程をたどる。まず、答えが提示され、そこからなぜその答えが導き出されたのか、明神凛音に入力されたであろう「情報」を、真相に至る材料となった情報の収拾とブラッシュアップを行い、真相から逆算して「情報」を当てはめ、答えに至る筋道を、方程式を構築していく。
これがまた、べらぼうに面白い。通常の謎解きの工程を辿らないので、思わぬ展開、思わぬ思考の方向性、思わぬ発想気づきが思わぬ所から飛び出してくる。
ただ得ただけでは意味を捉えきれない情報材、それがどんな意味を内包しているかを読み解いていく、それが連鎖的に繋がっていく。
そうして見事に論理的に「推理」が構築され、明神凛音が明示した「真相」に至ったときの痛快感。なるほど、これは方程式だ。穴埋めのパズルだ。

それに。
答えを出した明神凛音が、お手並み拝見とばかりに高みの見物、をしてるわけじゃないんですよね。
真相を、犯人を暴いた張本人である凛音も、自分の「推理」がどういう筋道を辿ったかまったくわからないために、立場としては透矢と同じなんですよね。なので、透矢と一緒に自分の「推理」を推理していく相方となりコンビとなり、相棒となっていくんですね。
さらには、真相に至る「推理」の形に辿り着いた透矢に疑義をただす役回りすら担うことになる。
自分の出した答えを証明してくれる透矢に、なんでそうなるのか、なぜそんな風に考えられるのか、なんでそんな答えに至ったのか。わからないこと疑問に思ったこと理解できないこと、それを透矢に問いただして、理解を、納得を得ていくのである。
これ、考えてみると錯綜してるんですよね。倒錯、と言ってすらいいのかもしれない。この瞬間、伊呂波透矢という少年は明神凛音当人よりも明神凛音の思考を、考えを、無意識の領域を、明神凛音の一番奥底を理解している、掌握している、把握している、という事なのですから。
自分自身よりも自分のことを「解っている」男の子。どれほど鋭く瑕疵と思われる部分を突いても、疑念を生じさせても、彼は明朗に自分の無意識下の思考を正確にトレースして語ってくれる、話してくれる、証明してくれる。
彼こそが、明神凛音を暴き出してくれる。解き明かしてくれる。
この時明神凛音が感じている感覚は、いったいどんなものだったのか。想像するだけで、ゾクゾクしてくれるじゃないですか。
そもそも、諦めきっていた彼女を動かした透矢の言葉がまた必殺なんですよね。きっと彼女の頑なになっていた心に残っていた柔らかい部分をブスリと貫く一言だったでしょう。あまりにあまりに強力な言葉。これ以上強力な「口説き文句」はなかったでしょう。
このジゴロめ。
まあ常々凛音が告げる「気持ち悪い」というセリフもわりと本音な気もしますけどね。いや、実際その日の出来事を詳細に日記として記録してるとか、それも周りの状況や人の反応、行動を正確に記録してるとか。
彼の過去の経験が、彼に強烈な弁護士志望という動機を与えたのと同時に、「証明」という行為に対する執着、執念を産んだ結果、というのもわかるのですが。
客観的に見て気持ち悪いですww

まだラブコメ方面は心の側に踏み込む度合いが少なく、ミステリーの謎解きに寄った構成でしたけれど、結構無造作に凛音に致命傷めいたクリティカルを繰り出してますし、チビギャルこと紅ヶ峰亜衣との微妙な距離感……紅ヶ峰が自分の複雑な気持ちを質しきれずにかなり不安定な攻め方してるのを透矢がまったく理解していない、という微妙さですけれど、この人間関係の描写の妙は紙城さんの得意とするところですから、これからの展開はそれはもう期待大です。
凛音からして、この計り知れないキャラは面白すぎますからね。この娘、ひそかに蛮族だろw


継母の連れ子が元カノだった 6.あのとき言えなかった六つのこと ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 6.あのとき言えなかった六つのこと】  紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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「なぁ。『好き』って、なんなんだ?」お互いの気持ちに向き合う文化祭編!

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
水斗といさなが付き合っているという噂で校内が色めく一方、結女は水斗との距離を縮められないままで……。
そんな初秋、きょうだい揃って文化祭の実行委員に選ばれる!
衣装選びに放課後の準備作業……長くなる二人きりの時間に、夏祭りのキスの真意を確かめようとする水斗。
そして水斗に自分の好意を気付かせたい結女。
探り合いながら迎えた、文化祭当日――二人は展示の見回りを任されるが、これってもうデートでは!?
「なぁ。『好き』って、なんなんだ?」
元カップルが、お互いの気持ちに向き合う文化祭編!


いさな、この子ほんと凄えわ。この物語上における怪物なんじゃないだろうか。正直、この子みたいなタイプの登場人物ってその立ち位置を含めて見たことがないんですよね。なんなんだ、この未知の怪物は。
登場した時からそうだったのですけれど、いさなって結女の恋敵、ライバルキャラ、ヒロインの一人、では一貫して無いんですよね。じゃあなんなんだ? と、言われるとこの巻を読んでるともう「親友」としか言えないわけですよ。でも、男女の仲を越えた親友、というカテゴリーでもないんですよね。だって、男女の仲越えてないんだもの。いさなの方は未だに水斗の事好き好きですしねえ。
ただ、究極的には恋人になるとかあんまり欲してるわけでもない。
普通の人が考える男女の関係の範疇にどうしても収まらない。独立独歩というべきか、いさなはいさなの価値観の中で生きている。
世間の当たり前にどうしても適合できない自分にずっと悩んでいた彼女だけれど、前巻でおおむねその辺吹っ切っちゃったんですよね。
いさなに比べると、水斗の方は常識的と言える。いや、いさなと比べるなよ、て話かもしれないけれど、水斗みたいな他人と関わることを億劫に感じる人種って、みんなでわいわいとやるのが楽しいと思う人種からはびっくりするくらい認識されないんですよね。そういう人との関わりを避ける人の事は、本当はもっと周りの人と仲良くなりたいけれど性格的に不器用だったりしてうまく出来ない人、と思っちゃう事が多いんですよね。だから、善意で関わろうとするし関わらせようとしてくる。違う価値観の存在を認めない、というんじゃなくて認識出来ないわけだ。
水斗は、接客や委員会の取りまとめなどやろうと思えばできる人間である。でも、できるからってっやりたいわけじゃない。できるからってそれが別に楽しいってわけでもない。
そういう人間なのだ。そういう自分であることに、水斗は別に悩んでいたわけではないんですよね。
この巻においての主題は、あとがきでさらっと美しいぐらいシンプルに纏められてあって、ちょっと唖然としてしまうほどでした。いや、ここまで明確な指針を以て水斗という人間を掘り下げていっていたのか、と感嘆してしまって。本作って、キャラクターを解体してバラしきった後にもう一度そのバラした要素を組み上げていく行程がメチャクチャ綺麗なんですよね。ストーリーとしてでこぼこが一切ないなめらかすぎるほどの曲線を描いている。ラブストーリーとして「美しい」としか言いようのない情景が、心情が奏でられることになる。
いさなが導き出した、「好きってなんなんだ!?」という水斗の苦悶に満ちた問いかけへの答え。その前後に描かれていく、幾つものシーンがとても綺麗なんですよ。ドラマティックで神秘的で情熱的で、答えを聞いた水斗が衝撃を受けると共に自分の中に厳然として在った「好き」という感情が色を帯びて熱くなっていく瞬間が。二人のやり取りを知らないまま、後夜祭の独特の雰囲気の中でセリフもないままその眼差しを以て答えを示していく男女たちの情景。そして、一人歩く結女の脳裏の過ぎっていく水斗の横顔。
クライマックスは、決して盛り上がるわけではなく、熱がほとばしるわけではない。むしろ地味ですらあるのでしょう。それは静かで、ざわめきもなく、落ち着いた空気の中でそっと置かれたものでした。
劇的、とは程遠かったのかもしれません。感動というような震えるものを起こされたわけでもなかったでしょう。
でも、美しかった。こんなに胸に、心にふわりと熱をおびるシーンは経験がないほどに。
綺麗でした。きっとずっと先まで、忘れられないくらいに。
これが二人の恋のリスタート。勇気を出して踏み出したもう一歩。そのままの自分を許し肯定し認められたがゆえの、君を欲する我儘。
物語においても間違いなくここが転換点。こここそが最も大事なターニングポイントでした。
なんかもう、何度も読み返したくなります。読めば読むほど、色んなものが染み込んでくる。

あと、大正時代風の書生衣装をまとった水斗を目撃した女性たちが片っ端から聖闘士星矢の車田飛びみたいにぶっ飛ばされていくのは、なんかもう笑ってしまった、面白かったよw





継母の連れ子が元カノだった 5.あなたはこの世にただ一人 ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 5.あなたはこの世にただ一人】 紙城 境介/たかやKi 角川スニーカー文庫

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親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
結女が気持ちを決めたあの夏祭り以降、余計にお互いが気になる日々で――。
そんな夏休みも終盤、いつも通り水斗の部屋に入り浸っていたいさなは、水斗とのじゃれ合いを結女の母に見られてしまい、
「東頭さんが、水斗の彼女になっちゃった」
いさな=水斗の元カノという勘違いが、『今カノ』へとランクアップし!?
さらに、いさなの母には結婚しろとまで言われ、結女が攻めあぐねるなか着々と外堀は埋まっていく!
そして、いさなと水斗の噂は、新学期の高校にも伝わって……。
純真健気な片想いと、再び萌ゆる初恋の行方は――!?
こ、このヘタレがーー!! あの女、あそこまでキメ顔でキスして宣戦布告しておきながら、速攻で日和りやがったw ヘタレすぎる、根性なしすぎる、ポンコツすぎる!
普通、あそこまで心に確信を得て、二度目の恋をして、覚悟を決めて、キスという行動にまで打って出ておきながら、そこまで行っておきながらどうして腰砕けになるんだよっ!
おかげで水斗くんが訳わからなくなって混乱してるじゃないですか。当て逃げか! そりゃ、当たりも厳しくなりますわな。それでダメージ受けてるんだから世話ないよなあ、結女さんは。この娘さんは本当に、本当にダメだなあ……(しみじみ)。
うん、忘れてた。伊理戸結女という娘はこういう娘だったのでした。あんまりにも覚醒したみたいな言動してるから、見違えたのかと思っちゃったじゃないですか。
むしろ、義理の兄妹という関係で一旦落ち着いて意地はってた時の方が体裁を保てていた気がするぞ。今は、情緒不安定そのもので浮き沈みが激しいことになってて、それが余計に水斗を振り回す羽目になってるのがなんともはや。妙に小悪魔ちっくにいたずら仕掛けてきてマウント取るかと思ったら、自爆して自分から沈んでいったり。これを水斗くん、結構場面場面で真面目に受け止めているので傍目にはわかりにくいんだろうけど、結女の浮き沈みに思いっきり引きずられてるんですよね。イタズラにはかなりダメージ食らってるし。結女が意図しないところで、熱で臥せった時の結女の何の思惑もなく心配して看病する様子にもそれ以前の態度との違いに訳わからなくなって、動揺してるんですよね。
ここに来て、水斗くん結女が何考えてるのかさっぱり読めなくなって、結構パニックになっている。そりゃそうだ、結女自身がメンタルのコントロールミスって暴れ馬よろしく振り幅の大きい態度になってしまっているわけで、結女本人も自分が何やってるかよくわからなくなってるわけだし。それをちゃんとした意図の元に結女がなにかしようとしている、と見ている水斗くんである。訳わからなくなるのもしょうがない面がある。
そのお陰で警戒心でガチガチになって表面上、固い殻をかぶって様子を窺うモードに入ってしまったものだから、その水斗のそっけない当たりの強さに結女がさらにダメージ受けてさらに情緒不安定になって、とスパイラル入ってるし。
いやほんとに、前回の宣戦布告したときはカッコよかったのになあ、結女は。決意に実体がまったく付いてこなかったんだなあ、なんて残念な。

そんな義理の兄妹で妙な攻防をしているうちに、いさながスルッと入ってくるんですね。いや、以前と変わらぬスタンスではあったはずなのですが、警戒心を募らせている水斗にとってはフラットに接する事のできるいさなは癒やしになったのかもしれない。
お互い気を許しすぎるほどに許しあったじゃれ合いを、結女の母に見られてしまった事からトントン拍子で二人が付き合っている、という話が広まっていってしまう。
それで二人が改めて意識しあって、なんて単純な展開にならないのが本作なんですよね。水斗といさなの二人はお互い変わらないし、結女なんかも不安になって穿ったりもしつつも、二人のことを良く知っているから、川波・暁月の幼馴染組と二人に近しい人間はその関係を勘違いはしないものの、周りの環境が二人の関係を付き合っていると思いこむことで、徐々に変化してくるのである。
その環境の変化が、東雲いさなという少女の本質を浮かび上がらせてくる。
改めて思うのだけれど、今、紙城 境介さんという人ほど登場人物の内面を徹底的に掘り下げて掘り下げて、細部に至るまで解体してバラして隅から隅まで暴き立てるライトノベル作家は数少ないのではないだろうか。作者自身にも把握しきれていない人物像を、書いて描いて書き出していくことで鮮明にしていく、形にしていく、言葉にしていく、そうやってキャラクターを一から再構築していく作業ってのは、いわば深い深い海の底に息継ぎなしで潜り続けていくようなものだ。
自分が生み出したはずのキャラクター。でも、それがどんな人物なのか、というのは実のところ完全な未知なのである。作者の押し付けや決めつけ思い込みを拝していき、脳内でシミュレーションを繰り返し、何度も何度も問いかけて、違和感を吟味し、しっくり来る言動を見出していく。彼ら彼女らの言葉を、思いを、考えを、感情を聞き取り汲み取り捉えて捕まえて、それを言葉に、文章に再変換していく作業というのは、永遠のように途方もなく、脳髄が煮えるような熱が頭をフラフラにさせていく。
ゲロを吐きながら振り絞るように書いていた、とかつて言っていたのは冲方丁さんだったか。
でも、そうやって掘り下げて積もっていたチリを払って「見つけた」キャラクターは、本物だ。
東雲いさなというキャラクターは、作中でも怪人と言っていいほどの変人だった。誰も予想のつかない掴み所のない言動で、作中の登場人物たちの度肝を抜いていく。作者本人ですら、わからないと言わしめる未知の存在でした。
それを丁寧に丁寧に、偏執的なほどしつこく探求し覗き込み、裏までひっくり返してバタバタ暴れるこいつを踏みつけておらおら吐けぇ、と誰も知らなかった本人ですらもよくわかってなかっただろう本音を、心の奥底にあったものを形にして引っ張り出してみせたのが、この5巻でありました。
いやもう、すげえよ。
特別になりたい、或いは普通になりたい。どこかしらで見聞きするテーマでもあります。いさなの母は、まさに特別のスペシャルであり、いさなの変人さを全肯定してくれる人でした。でも、いさなにとっては決して救いにはなってなかったんだなあ。いさなという人物を徹底的に解体していったとき、そこに現れたのは普通になりたかったただの女の子……なんて安易な事にはならないんですよね。水斗がいさなに見ていたのは、ある種の決めつけによる幻想でもあったわけですけれど、だからと言って結女たちが見ていたようなただの女の子でもなかった。あそこで、いさなへの幻想を諦めない水斗はやっぱりすごいと思いますよ。果たしてどれだけの人間が、東雲いさなという少女の本質にあそこまでたどり着けただろうか。とても普通でとても特別、その結論は決して珍しいものでもないのでしょうけれど、そこにたどり着くまでの東雲いさなという少女の徹底的な解体が、尋常ならざる説得力を、凄まじいまでの浸透力を、その結論へと与えるのである。これほどわかりにくい、意味不明な人物像を、そこまで詳らかにしてしまうだけの描写が、ここにはあったのだ。
そして、その普通であり特別である、という答えは誰もが普通であり特別である、という事へも繋がっていく。水斗という少年は、はっきり言って特別、と言っていいだけのキャラクターの持ち主だ。でも、いさなと再接続したときの彼は特別なんかじゃない普通のこっ恥ずかしい青臭い下手くそな男の子に過ぎなくて、でもそれが本当に素晴らしいんですよね。
特別な部分というのは誰にでもあって、前巻の水斗の従弟である幼い少年だった竹真くんの初恋の物語が背後で繰り広げられていたように、本巻でも結女のクラスメイトである二人の女子高生、坂井麻希と金井奈須華というそんな娘居たっけ? というキャラが登場した途端にとんでもねー濃いエピソードぶっこんできて、本作には背景キャラなんていなくて本当に一人ひとり自分の物語をそれぞれに繰り広げているんだな、というのが伝わってくるのだ。奈須華と先輩の話とか、これ結構色々とイメージあるんじゃあないかしら。
こういう子らが、周りに当たり前に散らばっていることで、作品そのものへの厚みが増していく。そしてメインのキャラをこれでもかと解体していくことで、深度もまた深まっていく。
東雲いさなの解体と再構築、そして周囲の人間関係の再設定は、一度義兄弟として固まってた水斗と結女の恋物語をリスタートするためには必要な事業だったのだろう。なにしろ、結女さんと来たら作者が「結女さんはなんで一人で勝手に負けヒロインになろうとするの?」と、わりとガチ目と思われるトーンで嘆くほどのポンコツであるからして、環境の後押しがないとドツボにハマったまま出てこなさそうだしなあ。
何気に、結女が水斗に恋をしているという事は暁月に伝わり、水斗もまたいさなと川波の協力を得て自分から動き出そうとしはじめているわけで、もう伊理戸兄妹の二人の間だけで収まる話じゃなくなってるんですね。
しかしこれ、冷静に考えるとお互いにもうすでに相手に惚れ直しているのに、もう一度惚れさせてやると入れ込んで、周りの支援を受けつつ真正面から衝突しようとしている三秒前、みたいな事になってやしませんかね。色んな意味で大惨事になりそうだなあ、うんうん。

しかし、同じシチュエーションでのお色気攻め、バスタオル一枚で男心を翻弄する、という行動に打ってでながら、結女と暁月でこれほど差が出てしまうのは、なんか結女さんに対して目を覆う他ないというか、逆に暁月と川波の幼馴染組は関係性がディープすぎてめまいしてきそうなんですけど。暁月ちゃん、小暮のこと好きすぎだろうこれ。そして、このままだと特殊なプレイに目覚めそうw

そして、本作読み終わって一番すげえな、と思わされた所が、あれだけ東雲いさなというキャラを解体し切ったにも関わらず、終わってなお「いさな」が予想のつかない想像の上を行く人物であり続けた事だろう。どれほど掘り下げ暴ききっても、キャラクターは駒にはならない。物語の登場人物に、実のところ底なんてものない。彼らは本来は誰からも自由な存在なのだ。東雲いさなは、それを一番先頭で体現し続けている。アホみたいに、すごいなあ、と口をぽかんと開くしか無い。
それがまた、痛快で楽しくて仕方ないのだ。うん、たまんないねェ♪


継母の連れ子が元カノだった 4.ファースト・キスが布告する ★★★★★  



【継母の連れ子が元カノだった 4.ファースト・キスが布告する】 紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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そういうところが、好きだったから。終わった初恋と“今”が交差する帰省編

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
“家族”らしさも板についてきた二人だが、ときおりあの頃の思い出が蘇り、やっぱりお互いが気になる日々で――。
そんな夏休みも半ば、伊理戸一家は父方の実家に帰省する。
「水斗くんじゃ~ん!! ひっさしぶりぃーっ!!」
水斗をハグで出迎えたのは、親戚の清楚風陽キャお姉さん・種里円香。
なぜか彼女には従順な水斗に、結女は察する――この人、水斗の初恋相手!?
昔の恋は振り切って、今の関係――“きょうだい”を受け入れたはずの元カレと元カノに、未練が渦巻く三度目の夏祭りが訪れる。
結女の決断に元カップルが大いに揺れ動く、夏休み帰省編!

はぁーーー。いやもう凄かった。元カップル同士が義理の兄妹になってしまって、未練を引きずりながらどうしようもない距離感で甘酸っぱいラブコメを繰り広げる、そんな作品だった本作だけれど、この巻に至ってラブコメという段階を突破してしまったのではないだろうか。
ほぼ結女の視点から描かれる未練の終わりと二度目の恋のはじまり。繊細に一つ一つ丁寧に紡がれていく心理描写。行きつ戻りつしながら整理されては迷走し、やがてひとつの答えへと辿り着いていく心の内。これはもう、真っ向純正の恋愛小説ではないか。
伊理戸家の実家に帰省し、父方の親戚の歓迎を受けて、知らなかった水斗の姿を垣間見る結女。これまでも家族となってはじめて恋人の頃と違い、お互いを慮らず気を遣わずただ一緒にいるという時間と空間を共にすることで、かつて知らなかった相手の姿を見る機会を得てきた二人だけれど、今回の帰省は改めて結女の知らない、過去の水斗が彼女の目の前に現れてくる。
それは言わば、水斗という青年の今へと繋がるルーツだ。彼という人間がどのように作られ、どのように育っていったのか。その内側に何を抱えているのかを知ることになる旅路だった。過去を知ることで、ようやく結女は今の水斗という青年の本当の姿を知ることになる。
それは恋人であり続けたなら多分知ることのなかっただろう姿。家族になってはじめて触れることの出来た成り立ち。
そして、彼の初恋の人と思われる親戚の女性円香の登場によって、彼女の未練は大いに揺さぶられることになる。
自分の中の未練の姿を、かつて自分が失ったものの大きさを、どれだけ自分が成すべきを成さなかったのかを、足りなかったのかを、知ることになる。円香さんの存在はまさに触媒だった。年上の女性、という経験値の豊富な彼女のアドバイスは結女の迷走に一つの方向性を与え、自分の心の内側を照らしだす灯火となる。
家族になってはじめて辿り着いた場所。義理の兄妹になってこそ。それこそが、この物語がただ元カップルがよりを戻すだけのお話にならなかった要なのだろう。
彼らが幾度も過去の関係を「若気の至り」と強調するのはごまかしでもなんでもない。彼らにとっても物語にとっても、それはまさに事実だったのだ。初恋は実らない、これもまた事実。だから、ここからはじまるのは、恋に恋する幼い初恋の物語でも青春の勢い任せの恋愛でもない。未練に引きづられて終わってしまったものをもう一度再開する昔の恋の続きでもない。
痛みを知り苦味を噛み締め傷跡を抱えながら、今度こそ本当にその人の人生そのものを掴み取る大人の恋の物語だ。
昔の恋が終わってくれない? それこそ未練だ。終わっている、それはもうとっくに終わっているのだ。それを認めなくてははじまらない。受け入れなければはじまらない。
だからこそ、伊里戸結女の宣戦布告。一足先にケリをつけてみせた女の宣言だ。
【ファースト・キスが布告する】。最高のサブタイトルだろう、これ。

しかし、このシーンをもうひとつの初恋の終焉に絡めているのって、心憎い演出だよなあ。恋破れた男の子にとっては、彼と彼女の間に繰り広げられている恋模様の内実は何も知らず、ただ目の前で起こった出来事でしかない。男の子の視点から見た光景を思うと、彼の千々に乱れているだろう心情と、結女と水斗の間で起こっている物語との断絶に感慨みたいなものが湧いてくるんですよね。
ああ今、結女と水斗と全く関係ない所でこの子だけの物語が繰り広げられているんだなあ、と。
この世界は、決して結女と水斗だけで出来ているわけじゃない。この子、竹真にとっての初恋の物語があり、やがて彼が成長するにつれてあのシーンは彼の心の育ち方に、恋愛観に多大な影響を及ぼすだろうことが想像できる。水斗の父と結女の母の結婚にも、親族たちの歓迎っぷりを見るととても大きな人生のドラマがあったのだろう。水斗の内面を作り出すきっかけとなり、今また結女に水斗の在りようを伝えるきっかけになってくれた曽祖父の自伝「シベリアの舞姫」もまた、かつてあり今結女たちに繋がっている人生の物語だ。とある壊れた幼馴染たち、あのどうしようもなく続いていくだろう川波と南の二人も独自の物語を構築しながら、この作品の世界観を形作る要素となっている。
登場人物の内面描写、心理描写を深く深く掘り下げて浮き彫りにしながら、人間関係を描き出していく作品は、ともすればメインの登場人物、主人公とヒロインのみに焦点を合わせて二人を描くためだめにすべてが用意されているような閉じた世界になるケースが幾つも見受けられるけれど、本作はちょっと違う気がする。
主人公とヒロインとは関わりがあるようで遠いところに幾つもの独自のドラマを見つけ、或いは目の端に映すことで、世界を広げ、そうすることでより深く一人ひとりのキャラの奥底を掘り出すための助走にしているかのようだ。広く浅くでも狭く深くではなく、広げることでより深く掘り起こし、成長させ、今までになかったものを構築していくかのような。心のあり方を見つけ、芽生えさせていくような。
この巻は、その一つの昇華の形である。
今までの三巻でばら撒いてきたものを、一気に集約して綴りあげてみせた段階を一つ上げるステップだ。そんでもって、こっからがリスタート。終わらない恋を終わらせて、はじまりはここからなのだ。
此処からなのよ!?
ほんとにもう、こいつは物凄い作品を送り出してきやがった!


転生ごときで逃げられるとでも、兄さん? ★★★★  



【転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?】 紙城 境介/木鈴カケル MF文庫J

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俺を監禁していた妹が、この世界のどこかに潜んでいる――。

高校卒業から5年間、妹に監禁されていた俺は、やっとの思いで逃げ出した矢先にトラックに轢かれ、異世界に転生。悪魔のごとき妹からようやく解放された……。
新しい、自由な世界での名はジャック。貴族の一人息子として、愛に溢れた両親と優しいメイドのアネリに囲まれ、幸せに満ちた、新たな人生が始まった――はずだった。
そう、一緒に死んだ妹も、この世界に転生しているのだ。名前も容姿も変えたあいつが、どこに潜んでいるかはわからない。だが、今の俺には神様にもらった、世界最強クラスの力がある。
この能力であいつを退け、俺は今度こそ、俺の幸せと、周りの人たちを守ってみせる――!

ウェブ版既読済み。【継母の連れ子が元カノだった】で今青春ラブコメ界隈をぶっ千切る紙城境介さんの新シリーズは、最恐最悪の妹の魔手、或いは神の手に抗うある兄ともうひとりの闘争史であり、ダークホラーファンタジーであり、きっと世界を超える愛の物語。
彼女は今まで自分が見てきた中でダントツのヤンデレ妹である。もちろんヤバい意味で。本気で怖気が走り背筋が凍り肝が冷えて、ヒュンとさせられた本物のサイコキラー。うん、ただの殺人鬼ならまだこんなにも怖くなかった。だってただの殺人鬼なら倒せるもの、捕まえられるもの。しかし彼女はそんなレベルじゃない、そんな領域でもない、果たして本当に人間か? 彼女本人がデウス・エクス・マキナのようなものなのだ。愛に病み狂ったお釈迦様だ。その掌の上から逃げられずに弄ばれる。
まさに、転生ごときでは逃げられない、恐怖の権化。それがこの名前も口にできない妹なのだ。
この一巻の時点で涙目になりそうなほど怖いのだけれど……恐ろしいことにまだ序の口なのだ。心せよ、備えて構えよ、でなければ精神的に死にかねない。
白目剥いて「アッバババババア」とリアルでなってしまったあの経験は、あの体験はちょっと忘れられないというか、若干トラウマである。その意味でも、心慣らすために最初の試練はしっかり受け止めておくべきだろう……。
ってか、一巻の表紙にメイドのアネリを持ってくるとか最初どういうつもりなんだろう、と深刻に悩んだんだけれどこれってあれだ。製作サイドが「邪悪」極まってるということなのだろう。或いはあの女神よろしく後ろから刺されかかっているか。
転生モノでは、生まれたての赤子の頃から意識を持ち、備え持った能力を伸ばしていくという通常の人とはスタート地点の早さから違う、という展開がままありますけれど、さすがに生まれて一歳になろうかという時点で速攻人生クライマックスに放り込まれたケースは滅多とないだろう。
いやもうこれ、本当に怖いよ。現世で死んで、死んで逃げて、他の世界に転生してやっと妹の手から逃げられて、ホッとしたと思ったらこれである。妹からは逃れられない、にも程があるわー!!
乳幼児の時点でありえないレベルの死線を潜らされて、必死過ぎる死闘を繰り広げなくてはならなくなったジャックの人生たるや。負けたときの悪夢具合が、本当に死んだほうがマシ、というレベルなんですよね。というか、死んだ方がマシな結果がこの転生だったわけで、その先ですらとなると精神的に死ぬどころじゃなく、発狂シかねないです。
完全にホラー。

この乳幼児期のエピソードこそが、この作品の原点であり本質。それを杭を打つように叩き込み、忘れないように刻みつける、そのための最初のエピソードなのでしょう。
だってね、このあとの少年期。黄金の少年期と銘打たれる青春時代の展開が本当に素晴らしいんだ。まず運命の出会いとなる幼馴染のフィルと、師匠となるエルフのラケル。この二人にはじまり、ジャックの世界はどんどんと広がっていく。生涯の友ができ、運命を共にする仲間ができ、恋をして、切磋琢磨して能力を伸ばす喜びを知る。まさに輝ける時代のはじまりなのだ。
それを象徴するのが、繰り返しになるけれどフィルとラケルとの出会いなのである。まだ幼いフィルとジャックの、甘酸っぱい恋模様が本当に素敵でねえ。
シーツの奥で幼い二人が交わす愛の言葉と約束の口づけには、キュンキュンしてしまいましたがな。

そう、これは悪魔のような妹の負の極限のような愛に、正の極限たる愛で打ち勝つ物語なのである。
愛を呪う物語じゃなく、愛の讃歌、なのだ。
しかし、妹の愛に負けぬだけのもうひとつの愛は、そこにもう在れどもまだ日の目を見ていない。その姿を見える場所には現していない。それは未だ眠り続け、目を覚ましてはいない。
しかし、その残影と断片はすでに幾つかのシーンで垣間見ることができてるんですよね。これは既にウェブ版読んでいるが故の気付きだなあ。先を知っているが故に、書籍版として最初から読むことで気付かされることがある、驚かされることがある、ああこの場面、このシーンこそがアレだったのか、と感動にも似た思いを噛み締めさせられたのは、母の客だという二人のフードを被った来客とジャックが行き合ったシーンだろう。そうかー、ここだったのか(涙

第一章のタイトルに併記されている愛の言葉。この言葉の意味が明らかになるのは、どれだけ先になるのだろう。
そして、盗賊団「真紅の猫」のあの惨たらしい末路が示していた「異様さ」の正体が明らかになるのは……。

でもまずは、ここからはじまる黄金期を堪能しよう。怖気も恐ろしさも忘れてしまうほどに、ここから繰り広げられるジャックの冒険は明るく輝かしい。学園編と来たらもうめちゃくちゃ面白すぎて、ワクワクとドキドキがとどまるところを知らない楽しさの快進撃がはじまるのである。
本当に、悪夢を忘れてしまうほどに。この物語が、どういう話だったのかを忘れてしまうほどに、それほどまでに面白く、楽しい時代がここからはじまるのである。
恋と友情と冒険の物語のはじまりだ。乞うご期待。

だがしかし、これだけはしかと心に刻むべし。

妹は 忘れた頃に やってくる



最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ 温泉旅行編:繋いだ手だけがここにある ★★★★★   



【最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ 温泉旅行編:繋いだ手だけがここにある】 紙城 境介/きただ りょうま ダッシュエックス文庫

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孤高のゲーマー、古霧坂里央。
学校一の完璧美少女、真理峰桜。
現実世界では何の関わりもない2人だったが──VRゲーム《マギックエイジ・オンライン》では最強コンビとして名を馳せていた。
そんなある日、二人は秘境の温泉クエストの攻略へ。しかし見つけた旅館は廃墟と化しており――「どうしたんですかぁ、先輩? もしかして怖いんですかぁ~?」「はっ……はなれちゃだめって、言ったじゃないですかぁ……!」「人前で裸になるのって……思ったより、ずっと恥ずかしいですね」お化け屋敷気分の廃墟探索。混浴イベントに超大型ボスとの激戦。最強カップルの日常はすべてがデート! ……なのにこの二人、付き合っているつもりはないらしい。

ぎゃあああああ! もうめっちゃ面白れぇぇ! もう好きぃぃ!!

今一躍ラブコメ界の旗手の一角に名乗りを上げた【継母の連れ子が元カノだった】の紙城境介さんの新シリーズ。小説家になろうで発表してきた作品の中では代表作と言ってもいいのがこれ、【最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ】である。自分もこれ、めちゃくちゃ好きでねえ。いやだってもう面白いもん。
これはゲームであって、遊びである。そう語られたのは、本作の前身でもある【遊者戦記 #君とリアルを取り戻すRPG】でありましたが、本作でもこの目一杯全力で遊ぼうという精神が進化しつつ体現されています。
本作の主人公であるケージとチェリーの最強カップル。ひたすらイチャコラしている二人ですけれど、その根底にあるのは心から楽しく遊びたい、という思い。それを一緒に成し遂げられる相棒であり相方であるのが、お互いであるという認識、或いは誓約。それこそが、二人をこの上なく結びつけているのです。
そして、それこそが。余りにもお互いを特別だと思っているが故に、カップルだとか彼氏彼女という目に見える、形のある枠組みに自分たちを当てはめたくない、という暗黙の了解につなげている節もあるのですけれど。
ケージもチェリーも、人付き合いにおいて脛に傷持つ身。彼と彼女はあまりにも周りから突出していたが故に孤独に追い込まれ、傷ついてきた子供たちでした。そんな二人にとって、この先輩は、この後輩は自分の全部を全力を全開を微塵の取り零しもなく受け止めてくれる唯一の相手。自分についてこれる、なんてレベルじゃない。常に自分の傍らに寄り添ってくれる、それどころかふと気を抜けば置いていかれてしまうような、全身全霊を尽くしてなお余りある無二の人。
古霧坂里央にとって真理峰桜は、真理峰桜にとって古霧坂里央は、唯一無二の連理比翼な特別な人なのだ。
だから、彼らが付き合っていないのは現状維持で満足しているとか関係をはっきりさせる勇気がない、という停滞した想いゆえではないのだろう。それよりももっと特殊で重たいものなのだ。
……そう、重たいんですよ、この子らの人間関係に対するスタンスって。愛が重たい者同士なんだ。
自分が相手のことを好きという自覚もある。相手が自分を好きという確信もある。でも、お互い約束しあったようにその関係を既存の枠組みに当てはめる事をシャットダウンしている。カップルじゃない、と周りからの指摘を否定しながら二人の間にあるものは絶対に否定しようとしないのだから。
なので、この二人の間に割って入ろうとするには、とても軽々な感情では無理なんですよね。その点、たびたびこの1巻でも名前だけ出ていたUO姫はチェリーに負けず劣らず、というか結構似たもの同士なんじゃね? という中身は面倒で重たい女性なのでかなりの勢いで切り込んでくる事になるのですが。
ともあれ、関係性だけははっきりさせていないけれども、お互いに好き同士だからケージとチェリーのやり取りは傍から見てて呼吸するようにイチャイチャしているのである。ちなみに、本人たちは普通にしているだけのつもりなので、まったく無意識である。無意識でこれである。
場合によっては、意識し合って本気でイチャイチャしだす時があるので、その時は当人たちも本気なのでイチャコラ糖度がさらに跳ね上がるという、イチャイチャの基準がバグってる仕様w
いやもうね、【継母の連れ子が元カノだった】も読んでくれればわかるだろうけど、作者の紙城さんのラブコメ手腕、特に自然にカップルがイチャイチャする描写力に関してははっきり言って化け物級である。正直、尋常ではない。果たして読んでてここまで切れ目なくニヤニヤさせられ続けて顔面の筋肉が痙攣しそうになるレベルのラブコメ描写は、今まで読んできたものの中でもどれだけの数あったか。
ヤバいです、ほんとに。
お化け屋敷編とか、あれもうズルいですよ。最強ですよ。お化け屋敷なんかでカップルで入ると急接近できる、みたいなネタってあくまでネタであって実際にライトノベルでもマンガでもそのシチュエーションをやると大概、余計な邪魔が入ったりカップルの片方が居なくなっちゃったりと本来の趣旨通りに展開する試しがないものですけれど、今回のケージとチェリーのそれとかもう完璧にお化け屋敷ネタをコンプリートしてるんですよね。ってか、ここのケージ君が可愛すぎてたまらん! なにこのビビリまくる男の子の可愛さ。チェリーが調子乗るのもめちゃ分かりますもん。それはそれとして、チェリー主導で最後までいかないあたりが素晴らしすぎて。同時に、コメディとしても最高領域に達していてお互い生贄にしだす所なんか笑い倒しましたがな。それでいて、傍からみたらひたすらイチャイチャしてるわけですから、色んな意味でたまんねー。
チェリーってやたら攻めるくせに防御力は紙仕様なんですよね。あまりに防御力が低すぎて、ケージの事イジろうとして自分にもダメージ食らって自爆攻撃となることも度々ですからねえ。
可愛いなあ、もうほんとチェリー可愛い。これでイイ女・カッコいい女要素も目一杯詰まっているのだから、たまらんヒロインであります。自分の後輩属性って、このチェリーに大いに発掘された感すらあるのです。
ケージ視点だけじゃなく、チェリー視点も並行して描かれているあたりで、イチャイチャっぷりが一方向からではなく双方向から眺められるのもお得感満載なんですってば。

と、本作がこうしてケージとチェリーがイチャコラしているだけの物語だったらただのラブコメになってしまうのですが、これは同時にこの上なく「ゲームで遊ぶ」作品なのでした。
彼らが遊んでいる舞台であるVRゲーム《マギックエイジ・オンライン》。これがまた、本当に素晴らしく面白いのです。ただのVRゲームではない、運営が用意したシナリオをクリアしていくだけのものではない、プレイヤーたちが本当に世界の歴史を作っていく、紡いでいくゲームなのである。
そして、プレイヤー同士の一体感。自分たちが歴史を作っていっているという一体感が本当に凄い。あのやり直しのきかない、ゲーム上で起こった事は決して覆らない、NPCが死んでも生き返らないし地形や気候の変化も戻らない、という設定なんかは他のゲームを舞台にした小説でも決して珍しいものではないのですけれど……本作はなんかそこに凄い特別感があり緊迫感があり迫真性があるんですよね。この実感は、巻を重ね話が進むごとにより確かなものになっていくと思う。プレイヤーたちが抱いている感覚に追いついていくと思う。
これはゲームであって遊びではあっても、みんな本気で真剣で全力なのだ。それはケージとチェリーだけではなく、多くのプレイヤーたちが共通して宿している認識でもある。
VS.神造炭成獣フェンコール戦なんかは、導入から本当に素晴らしかったもんなあ。あの配信者プレイヤーのセツナやろねりあたちが配信している映像を共有して、万を越える視聴者たちが同じ戦いを、同じ歴史が作られる瞬間を共有する、あの熱狂、一体感。そこに、読んでいる此方まで飲み込まれる。自分もまた、一視聴者となり、共有している感覚に引きずり込まれる。
ああ、みんな無茶苦茶楽しそうだ! という傍観者的な感覚を超えた、自分も今この瞬間、めちゃくちゃ楽しい! という感覚。この盛り上がり。テンション上がりっぱなしになりましたよ、フェンコール戦は。
ってか、ウェブ版でも既に読んでいるはずなんですけどね。そういう関係なしに、テンションあがってしまった。楽しかったッ!
とはいえ、これでまだまだフェンコール戦は序の口。このあとに繰り広げられるだろうさらなる大規模レイド戦なんぞ、ちょっとやべえレベルの大会戦になるのでほんと楽しみ。チェリーのクロニクルでもちらっと描かれていた指揮官としての力量も見られますし。
それ以上に、日常でのイチャコラとはまた別の形での戦闘シーンでのケージとチェリーの息のあった以心伝心、を通り越したもう二人で一人なんじゃないか、という神業コンビネーションは見どころたっぷりすぎて、いやもうたまらん。そりゃ、ゲーム内でこの二人が最強カップルなどと呼ばれるのも当然で仕方ないですよ。あんなシーン、万単位の視聴者の前でやらかしまくってたらなあ。
章タイトルのひとつ「カップルの人間離れ」にはワラタ。

この世界はゲームだけれど、本物である。
章間に記載されているこの《マギックエイジ・オンライン》の解説でちらっと書かれているのだけれど、AI搭載のNPCの中にはこの世界がゲームである事に気づき理解する人も出てきていてそういうNPCは電子人類と呼ばれ、明らかにただのプログラムを逸脱しだすんですよね。はたして、このゲームって本当にただのゲームなの? というバックグラウンドまで見えてきて、物語のスケールも途方も無い事になってきて、ワクワク感が止まらないのです。
この楽しさをぜひ共有してほしい。メインのケージとチェリーのみならず、脇を固める無数の登場人物たちも個性的でイキイキと躍動していて、カップルの小さな閉じた世界の話ではないこのぐんぐん広がっていく世界の痛快さを。そのうえで、もう顔がにやけて仕方ない最強カップルの糖度致死量のイチャイチャを、存分に堪能されたし。そして、これからももっともっと堪能したい。がんがん、続き出てほしいヨ。

ああ、楽しかったッ!!

紙城 境介作品感想

継母の連れ子が元カノだった 3.幼馴染みはやめておけ ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 3.幼馴染みはやめておけ】 紙城 境介/たかやKi 角川スニーカー文庫

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まだ覚えてるよ、 好きだったこと。元恋人たちが大いに悶える勉強合宿編!

いさなの告白叶わずも、すんなりと親友同士に戻った水斗といさな。相変わらず近い二人の距離感に、心がざわつく結女だったが――そんな彼ら以上に、理解できない二人がいた。
南暁月と川波小暮である。幼馴染み同士なのに、顔を見る度にいがみ合い……。
暁月たちの仲直りを望む結女、そして二人の過去を察した水斗は、いさなを巻き込んで一役買うことに!?
きたる勉強合宿。かくして暁月と川波は、黒歴史《おもいで》に向き合うことになる。
あの頃のあだ名で呼び合い、恋人ごっこをさせられて。
それはただの“罰ゲーム”なのに、どうしてもお互いを意識してしまうこの二人も――元恋人同士なのである!!

凄えな、ホント凄えな。幼馴染という関係をここまで多面的に掘り下げて解体して見せた物語が果たしてどれだけあるだろうか。幼馴染の光と闇、功罪、清濁正邪にメリット・デメリット、その精髄を極めつけたようなある幼馴染カップルの顛末である。

幼馴染とは、すなわち距離感だ。兄弟姉妹と違って他人にも関わらず、家族同然或いはそれ以上の密接な距離感。同時に、他人である以上兄弟と違って本当に何の関わり合いもない他人の関係になってしまえる儚い関係性とも言える。
川波小暮と南暁月はその幼馴染としての距離感で致命的にやらかしてしまった失敗カップルだ。その原因は概ね、暁月が生来のメンヘラ女であった事とその事実に暁月本人と小暮自身が破綻するまで無自覚であった事に求められるのだろうけれど、二人の話を見ているとそれだけじゃあないんですよね。
よくある幼馴染が恋人同士になって破綻してしまう理由として、関係の変化。恋人という関係にどうしても馴染まなかった、というものが多いけれど果たしてこの二人の場合はどうだったのだろう。少なくとも、その変化に違和感を感じていなかったのは確かなんですよね。むしろ、ドハマリしたとも言えるのでは。一方で、元々幼馴染であったが故に……最初から彼氏彼女の関係なんかよりもよほど一心同体の関係であったが故に、その距離感はより悲惨にグチャグチャになってしまったと言える。
南暁月は、カノジョなんかよりもずっと面白い、という彼の言葉に芽生えてしまった彼女は、彼氏彼女よりももっともっと濃密な幼馴染としての関係にのめり込み、生来何かを演じ続けていた小暮は何も演じず頑張らず言わずに素の自分をそのまま受け入れてくれる、幼馴染や彼氏彼女という周囲がこういうものだとレッテルを張る枠組みではないただの暁月に傾倒し、すれ違った。
ここらへんの二人の食い違いと破綻については一概にこうだとは言えなくて、読めば読むほど言葉にできる範疇よりも奥底に渦巻くものがあって、いくらでも覗き込んでいけそうなのが色々とたまらんのですよね。幼馴染という複雑にして紐解けない関係の深奥を垣間見えることに、興奮が否めないのだ。
そうして破綻してしまい、恋人でも幼馴染でも居られなかった暁月と小暮はお互いのハイスペックなコミュニケーション能力を駆使して、他人同士という関係を演じるようになる。それは周りに見せつけるための演技ではなく、そうやって人工的に距離感を製作しなくてはどうやって顔を合わせて付き合えばいいのかわからなくなってしまったからだ。人生の殆ど大半、全部と言っていい時間を費やしてきた関係だ。それが圧潰してしまったのだ。小暮のPTSDも相まって、それは修復不可能なものになってしまった。もう、元の関係にはどうやっても戻れない。今までずっと続けてきた距離感では、もう何も出来なくなってしまうまでに破綻したのだ。だから他人を演じなければ、本当に距離を置かないといけなくなる。真の意味で疎遠になってしまう。
……そうなんですよね。家が隣同士とか同じ学校でクラスメイトとか親同士は今も仲の良い幼馴染同士と思ってるとか、そういう理由で実のところ理由にはなってないんだろうな。
やろうと思えば、ホントの意味で他人同士になる事は出来たはずなのだ。スッパリと、幼馴染という過去を上書きしてなくしてしまう事は出来るのだ。人間、出来てしまうのだ。それは暁月と小暮も変わらない。実際、そう成りかけてた。多分、二人の繕っていた外面は、破綻した距離感を誤魔化して適切さを維持するためのコミュニケーションという技術によって維持されていたバランスは、時間の経過によって本物に成りかけていた。
そして自然消滅ではなく選択としても、それは出来ただろう。合宿の途中で、それは示された。
本当の他人同士になることは、出来たのだ。

それがそうならなかったのは。出来なかったのは。
出来ないのは、嫌だからだよ!!
なんでわざわざ嫌ってるはずの幼馴染の家にマメに掃除に行くのさ、小暮くん。別れて登校するのに、なんで家を出るタイミングはそんなに重なるのさ。たまに一緒に飯作って食ってるだろ!? すんげえ、抵抗してるじゃないか。自然消滅、過去が解消されちゃうだろう時間経過による摩耗にさぁ!

幼馴染じゃ居られない、だからといって恋人にはもう慣れない、だからといってホントの他人になるのは嫌だ。絶対に嫌だ。
だからこそ、そんな地獄のような有様で口を揃えてこういうのだ。
「幼馴染みはやめておけ」


でもだからこそ、観察者たる読者の立場としてはこう叫ぶ他ないのだ。

「幼馴染って、最高じゃん!!」



いやもう、幼馴染の恋愛話としてとんでもねー位階まで掘り下げてみせた、そして繊細かつ縦横無尽に描ききってみせたラブコメでした。読めば読むほど凄えわ、これ。サブキャラの話とか、完全に忘れる。
しかしこれ、小暮くんてばまさかあそこまで酷いPTSDを患ってるとはついぞ想像もしてなかったんだけど、取り敢えず一度伊里戸兄妹のお節介によってグチャグチャになった後になんとか修復された後の関係って、生理的には受け付けないけど感情的には実のところ……って奴なんですよね、これ。暁月に関しては、険悪な態度とは裏腹に内心は最初っから昔と変わってなかった節もあるし。ってか、あの態度は適切な距離を保つためだけではなくて、小暮の症状を鑑みてのものという可能性もあるのか。
あれ、PTSDが治れば障害はなくなるとも言えるし、たとえ治らなくても……治らないなら小暮には絶対に他の虫は寄りつけないという事でもあるので、もうこの二人あの幼い頃の約束破る気ないですよ、きっと。かぁーー、もうたまんねえなあ、幼馴染って。
知っていますか? お互いベタベタ好意を寄せ合わなくても、熟練したカップルは無自覚自然にイチャイチャ出来てしまうのだ。なのでこの幼馴染ども、小暮に蕁麻疹がわかないレベルでも普通に濃密なイチャイチャをしはじめそうである。


……そんな暁月と小暮の幼馴染話の最中、基本的にずっと背景側でナイスアシストを続けていた支援組の伊里戸兄妹ですけれど。
こいつら、背景の方でずっとイチャイチャしてやがったぞ!? 
なにこの、呼吸するように自然にイチャイチャしてる水斗と結女のお二人さん。しかも、まったく無自覚に! 今回の話では、伊里戸兄妹が混迷する幼馴染カップルの間で奔走する形にはなっているんですけれど、特別なイベントなくても普通の実生活の中でこいつら当たり前のようにイチャイチャしてるんですよね。本人たち普通に生活しているつもりなのかもしれないけど、傍から見るととんでもねーレベルでイチャついてるから! 本人たちにそのつもりがないのだけれど、二人が色々と画策して暁月たちにちょっかいかけるために相談したり動き回ってる時も、ナチュラルにイチャついてるから。普通、イチャイチャするのって二人だけの世界に入っちゃっての事のはずなんだけれど、この兄妹の場合普通にしてるだけでイチャイチャしてるのと変わらない塩梅になってしまっているので、元幼馴染カップルの話が進行している背景でやたらと伊里戸兄妹のイチャイチャが目に入ってくる始末。
君ら、メインの話じゃなくても関係なしに見せつけてくるなあ、ほんとさ!

そして、伊里戸兄妹を上回る勢いで背景で暴れまわるフリーダム東頭いさな。こいつ、やりたい放題ってレベルじゃねえぞ!www
確か前巻で振られてラブコメ的には終了したはずのヒロイン。そのままフェイドアウトならずとも、存在感のオーラは減少して主軸から外れるタイプの立ち位置なキャラだったはずなのに、この作品の場合むしろ振られて繋がれた首輪から解き放たれた凶獣の如く、自由に大暴れですよ。物語の大筋が一本の横線だとしたら、この女蛇行しながら度々大筋の横線に横から突撃してきてぶちかましてはそのまま去っていき、行ったと思ったら帰ってきて横線ぶち抜いていく、という迷走する台風か上陸して暴れまわる怪獣か、の如きやりたい放題である。
凄いな、ラブコメでこんな野放しに放たれたキャラ、早々見たこと無いぞw
ちょっといさなさんが色んな意味で面白すぎて、色んな意味で目が離せない。どうするんだ、この娘!?

ともあれ、今回はメインの二人の話ではなかったとはいえ、ずっと気になっていた幼馴染の元カップルの話を期待以上に掘り下げ料理しきってくれたので、満足どころじゃない大満足の堪能具合でありました。この巻のパートからウェブ上での連載は読まずに、初見で味わうことが出来ましたし。
もうほんと好き。
シメのあとがきの最後の一文は、サブタイトルの意味合いをきっちり仕上げていてくれて、実に最高でした。


1巻感想


2巻感想

継母の連れ子が元カノだった 2.たとえ恋人じゃなくたって ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 2.たとえ恋人じゃなくたって】 紙城 境介/たかやKi  角川スニーカー文庫

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元カノvs新カノジョ候補!? ぼっち系オタク少女・東頭いさな襲来!

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
両親の前では“家族”らしく振る舞うも、二人きりになるとあの頃の思い出が蘇り、やっぱりお互いが気になる日々で――。
そんな中、水斗の前にぼっち系オタク少女・東頭いさなが現れ、二人はすぐに意気投合! 図書室で放課後を過ごす関係に!?
ただの気の合う友達だと真顔で言い張る水斗といさなの、友達以上な距離感に結女はやきもき。しかも、
「わたし、水斗君の彼女に、なれますか……?」
徐々に水斗への恋心を自覚していくいさなを、”水斗の義姉(おねえちやん)”として応援することに!?
恋と友情ときょうだいの絆が錯綜する、『水斗攻略作戦』が始まる!
プロローグから殺しに掛かってるんですけどーー!? 殺意高すぎるんですけどーー!? 悶絶死させる気満々じゃねえかぁ!!
もうなんですか、あれ〜。自分の勧めた本を水斗くんが読んでいく様子を傍らからジーッと見つめてる結女。ついさっき自分が読み終えた本だから、どのくらい読み進めた段階でどんな展開が待っているのか当然知っている結女は、その展開ごとに水斗くんがどんな想いを抱くのか、どんな風に感情を揺らすのかを、彼の横顔をジーッと見守っているのですよ。そんでもって、自分が読んだ時と照らし合わせながら、共感したり思わぬリアクションに驚いたり、期待通りの反応に内心ニマニマしてしまったり。
人が本を読んでいる姿がこんなに色彩溢れているのか、と驚くようなシーンであると同時に、それだけ結女の目から見る水斗くんの姿が鮮やかということでもあるんですよね。ほんと、めっちゃ見てるんですよ。水斗くんが本の中にのめり込んでいくのを、傍から見ていてちゃんと把握しているし、彼が読んでいる時に何を考えているか、とか細かな仕草や表情の変化の捉え方がいやもうどれだけ見つめてるんだよ、というくらいなんですよね。その見つめていることそのものが、楽しそうで。
この場面の二人の様子を思い描くだけで、なんかもう悶絶してしまうのである。なんかもうたまらん気分にさせられてしまう。初っ端からなんという凶悪なシーン打ち込んでくるんだ、この作品は!!

でも、結女のこの視線って、多分中学生の頃の彼に恋していた頃ではきっと生まれ得ない視点だったんだろうな、とも思うのである。中学生の頃の結女は、水斗のことが好きで好きでたまらなくて、だからこそ「好きな人」という部分に意識の大半を奪われてしまって、果たして水斗という等身大の少年をどこまで直視できていたのか、怪しい部分がある。彼のどんな姿を見ても、そこの「恋」というフィルターが挟まってしまっていたのではないだろうか。
今、この時水斗の読書する横顔をジーッと眺めている結女の眼差しは、あの頃に比べるととても率直にこの新たに出来た家族である少年を見つめている。
だから、彼に対して生まれる感情は、見つめたその先にあるのだ。前のようにフィルターを通した先にあるのではなく。お互いを全部さらけ出して、お互いの様々な側面をもう一度知り直して、お互いの等身大を目の当たりにしたその先に、もう一度芽生えたものなのだ。
このプロローグはその象徴的な1ページであり、この先の物語はそうして芽生え始めたものを、新たに横から割って入ってきたファクターによってお互いにどう処理するべきか考え始める、そのきっかけとなるエピソードである。

と、言ってもその重要人物となる東頭いさなの登場は後半から、となる。前半を引っ掻き回してくるのは、前巻で友人となった南暁月と川並小暮の両名だ。
この二人がまた曲者であると同時に、何気に伊里戸兄妹を上回る地雷持ちなのである。サイコレズの看板を背負って結女に迫り、水斗を引っ掻き回した暁月だけれど、この巻では結女の親友として相棒として、思いの外存在感を示しながら立ち回るのであるけれど、ただの脇キャラじゃ済まない様相を呈してくるのが、川並小暮と暁月が実はマンションの隣同士の部屋に住む幼馴染であり、しかもどうやら水斗と結女と同じく交際していて、盛大に失敗した元カレ元カノ同士であるらしい、というのがわかってくるあたりからなんですよね。
あくまでメインが伊里戸兄妹二人の視点で進むために、詳細は不明なのですけど友人の家でのお泊り回でその一端が明らかになり、この元カップルの幼馴染同士の微妙過ぎる距離感がわかってくると、小暮のあの妙に傍観を気取りながら変なところに地雷ポイントがあるところや、暁月のある一定のラインを超えると尋常じゃなく重いキャラになるところなど、想像の羽が羽ばたくところが怒涛のように湧いて出てくるんですよね。思えば、結女たちのように突然家族となり同居生活になる、というわけじゃないけれど、この二人隣同士で住んでるだけあって普段の生活範囲や行動パターンは完全に重なっているし、別れても即他人というわけに行かず、物理的にも精神的にも離れられない距離に居る、という意味では伊里戸兄妹と似た傾向にあるとも言えるわけです。
しかし、そこは幼馴染という関係を理して、適切な距離感というのを保ってきていたはずだったのが。二人が伊里戸兄妹ともっとも親しい友人になってしまい、必然的に今まで以上に顔を突き合わせる機会が増え……でも、それだけなら今までの「適切な」距離感が揺らがなかっただろうところに、間近でその適切な距離感を取れずにトンデモナイ勢いでグルングルン揺れまくってる自分たちとよく似た関係の元カップルが暴れまわる余波をもろに真横で受けているがためか……どうも、こっちの幼馴染たちも煽りを喰いはじめている感があるんですよね。まだ兆候だけですけれど、しかし無視できない兆候が。正直、結女たちの裏側で着々と変質しつつあるこっちの幼馴染たちの動向もめっちゃ気になるところなんですよーー。

と、思わずメインの二人ならざるカップルの方で語ってしまいましたが、やはり最強にラブコメしまくるのはメインのお二人、水斗くんと結女の兄妹なわけで。
結女の方がもうこれ、一巻の最初の頃にはまだ保っていた平静が、二巻ではもう殆ど保たれてないんじゃないですか、これ!? いや、これはもう水斗くんが悪いとも言えるんですけどね。このカレ、ズルいですよ、絶対! 席替えのときとか、あれなんですか? 中学のときには忘れていた合図を、あのタイミングでやっちゃうとか、そんなん結女ちゃん死ぬに決まってるじゃないですか。あんなんされた日には、平静でいられるもんですかい。そもそも、結女が水斗くんを好きになったきっかけというのが、自分を対等の存在として意識してもらったこと、認めてもらったこと。
自分を見ていてくれること、それこそが結女にとっての最大の急所だったわけですよ。それをこの男と来たら、この巻だけで何回そのポイント、急所目掛けてクリティカルな会心の一撃を叩き込みました? ここぞというときに、一番強烈なやつをぶちかましてくるわけですよ?

死ぬわ!!

見なさいよ、今回結女ちゃんほぼ瀕死じゃないですか。そこ触られたら死んじゃうって場所をピンポイントでグリグリ刺しやがってからに、この男は! この男は!!
控え目に言ってももう、結女って伊里戸がいないと生きていけない身体にされてしまったんじゃないだろうか。
しかも、水斗くん無自覚でやってるわけじゃなさそうなんだもんなあ。一度、結女の方がちゃんとした「適切な」距離を取ろうとした場面があるんですよね。兄妹として、別れた元カップルの友人同士として、感情的に割り切った適切な距離感というものを、結女からちゃんと取ろうとした時にこの男ときたら。
普段、シレッと素知らぬ顔して知らんふりしているかのような平然とした態度とっているくせに、いきなりガッと来て、ガシッと手を掴んで、グッと無理やり引き寄せて顔寄せて、その態度気に食わない! ですからね! しかも、結女が思わずアヘ顔になってしまう結女理想の装いにわざわざ着替えて。
もう思わず「きゃーーー!」ですよ。少女漫画見て色めき立つ女の子か、という勢いで読んでるこっちが黄色い悲鳴ですよ。
もう、きぃゃーーーー! だよ!
うん、もうこの男、ズルいわ。ズルいズルいズルい。格好いい……。
いやこいつ、絶対モテるわ。そりゃモテるわ。
後半に満を持して登場のいさなも、この娘はこの娘で言うてしまうとエキセントリックなんだけれど、うん惚れるわなあ。わかる、わかりみ。
なんかこう、面倒くさかったり自分で自分をコントロール出来ない系女子からすると、そういう暴走しがちな面も含めて、理解してくれて逆にうまいことコントロールまでしてくれる身も心も行き届いたフォローをしてくれる優しくて頼りがいのある男性、とか。普通に接したら死ぬよね、死ぬわ。
いやー、いさなもまた結女とはまったく別のベクトルで面白すぎる娘なんだけど。ってか、同じ文学少女で引っ込み思案とはいえ、昔の結女とこのいさなって全然キャラの方向性違いますよね。最終的には異世界人呼ばわりされてしまう価値観と言うかメンタリティの持ち主ですけど、そもそもマイペースだし内気というわりに自己主張激しくてイイ性格してますし。あんまりぼっちらしくはないなあ、と思ったけど女の子グループの中に入ってやってけるタイプでは全然ないな、うん。
全部終わった後の「「ちょっと面貸せや」」には思い切り笑ってしまった。うん、あれはズルいよw
一連の、あの男人の心を持たんのか!? も終始笑いっぱなしだったし。
あー、面白かったなあ。なんかもう、読んでいる間中ハートがあっちに引っ張られこっちに弾み、と落ち着いている暇がないのですよ。ずーっと揺さぶられて弾まされて。
ドキドキして、ワクワクして、ニヤニヤして、キューーンってして。
ラブコメの醍醐味を味わい尽くしているような、そんな幸せ。読書における最高の味わいなんじゃないでしょうか。
1巻に引き続き、2巻もまた紛うことなき最高傑作でありました。
3巻はまだウェブ連載のストック全然ないそうで、最近連載再開しているみたいですけど、私も書籍版の方で新鮮な多幸感を味わいたいので読まずに居てます。なので、ほんとーに楽しみにしつつ、夏頃予定というのを信じて次巻を待ってます、待ってます!

1巻感想

継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない ★★★★★  



【継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない】 紙城 境介/たかやKi 角川スニーカー文庫

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ある中学校である男女が恋人となり、イチャイチャして、些細なことですれ違い、ときめくことより苛立つことのほうが多くなって……卒業を機に別れた。
そして高校入学を目前に二人は――伊理戸水斗と綾井結女は、思いがけない形で再会する。
「僕が兄に決まってるだろ」「私が姉に決まってるでしょ?」
親の再婚相手の連れ子が、別れたばかりの元恋人だった!?
両親に気を遣った元カップルは、『異性と意識したら負け』という“きょうだいルール”を取り決めるが――
お風呂上がりの遭遇に、二人っきりの登下校……あの頃の思い出と一つ屋根の下という状況から、どうしてもお互いを意識してしまい!?

もう好きーーーー!!

完全にどストライクでありました。これって、未練を残したままの恋愛のやり直し、とはまた少し違うんですよね。一度は確かに終わった恋愛なのである。気持ちは冷めて、感情は沈静し、相手の何もかもを好意的に感じられていた時間は遠ざかって、相手の言動の何もかもが癇に障る。
初めての恋愛で舞い上がっていた心が、地面に降りてきてしまった。そうなると、むしろ想いは反転してベクトルは逆へと向かい、冷静とはまた違う逆立った視点で相手を見るようになってしまう。
それもまた感情的であるからこそ、拒絶へと繋がってしまうんでしょうね。
未練を引きずっていたわけではない。まだ実は好きだった、なんてことはない。この二人、水斗と結女の恋愛は、完全に終わったそれであったのです。
だから、この二人の二度目の義兄弟としての再会は、家族としてはじまった二度目の関係は、延長戦ではなく、ニューゲームなのだ。ただし、前回の感情の記憶を残した二週目の、ただ甘いばかりだった前回とは異なる、お互いの嫌な部分も私生活も何もかも曝け出した上での、リスタートなのである。
二人の回想から語られる中学時代の恋人時代の思い出は、中学生らしいというべきか、実に初々しく恋愛という事象に浮かれきった実に甘酸っぱいエピソードばかりで……まあ当人たちからすると思い出すだけでSAN値がガリガリ減っていく黒歴史でありました。曰く、狂気の沙汰、愚かの極み、今になって冷静に振り返ると頭がおかしくなっていたに違いない、花畑が咲き誇っていたという表現で過去の自分を罵り、恥辱に七転八倒する水斗と結女。まあ確かに、他人事で見ていても微笑ましくもこっ恥ずかしすぎて、直視し難い思い出ばかりである。これも年月過ぎて大人になったあとに振り返れば、苦笑とともに飲み込めるのかもしれないけれど、未だ記憶が薄れる前にその当事者と毎日自宅で顔を突き合わせるはめになってしまったのである。まさに、黒歴史と暮らす生活である。
面白いのは、彼らが付き合ってた事については、家族どころか友達も全然知らない、まさに二人だけの秘密、なところなんですよね。だから、周囲には過去に付き合っていた素振りなんかを見せられないし、図らずも秘密を共有して、秘密がバレないように協力する共犯者、という立場も維持しなければならない。
そんな新しい家族で共犯者で秘密の元カレ元カノ同士、という複雑な関係は、お互い好きというふわふわとした綿菓子みたいな関係性だけで完結していた中学時代の恋人時代とは、全く次元の異なる距離感を彼らに突きつけてくる。
そんな距離感から育まれていく関係というものは、お互いへの幻想だけを積み上げるだけで維持していたものとは違うものでありました。より深く踏み込んで、より深く相手の心を覗き込んで、より強く相手の意志を、感情を感じてしまう、浴びてしまう距離感。嫌いという感情ともしっかり向き合わなくてはならない関係。そこから生まれてくる淡い想いというものは、中学時代のそれとは全然別物の、でも想い出を引き継いだ、二重に補強されたものになるのである。
中学時代の恋愛が最後まで続くなんて、まさに夢物語。そんな当たり前の現実に則って終わってしまった二人の恋は、今度こそ現実に負けないものになるのかもしれない。

このラブコメの素晴らしいところの一つが、水斗の一方的な視点からの物語ではなく、水斗と結女の視点からのエピソードが交互に描かれるところでありましょう。これ、二人が主人公で二人がヒロインなんですよね。軽快でテンポのよい語り口で描かれる二人の日常は、実にエキセントリックな友人たちの登場と介入でどんどんとポップアップされていく。普段から落ち着いている水斗と比べて、根は大人しいのに調子に乗ると後先考えずにハシゴを登って、自分でハシゴを蹴っ飛ばして外してしまい高いところから降りられなくなって狼狽えまくる結女が、かなりポンコツ娘で最高に可愛いんですよね。盛大にやらかすもんなあ。
コミュニケーション強者なんだけれど、中学時代は大人しい文学少女だった頃の対人能力の低さが突然顔を覗かせてけったいな事になることも度々ですし、ポンコツ可愛い。水斗とのデート回なんて、変なスイッチ入りすぎて酷い有様でしたし、この娘は〜〜〜ww
でもニヤニヤがひたすら止まらないんですよー。イチャイチャするって、ベタベタするのとは違うんですよ。お互いのことすき〜すき〜って撫であうばかりがイチャイチャじゃないんですよ。
お互いそっぽを向き合っていても、憎まれ口を叩いても、誰も間に入れないくらい通じ合うものが垣間見えた時、そこに二人だけの時空間が誕生してしまっていれば、それはもう果てしないイチャイチャなのであります! いや、反発してるだけじゃあやっぱりだめなんですけどね。不意打ちまがいに訳のわからないレベルの超ゼロ距離の距離感を差し込んでくるのが凄まじい効果を発揮しているわけで。作者の紙城さんはこの手の、いやこのたぐいに限らず多種多様のイチャイチャ感の描き方で至極の域に達している方だと自分なんかは思っているわけですが、その中でも純粋なラブコメとして描かれた本作はちょっとそのへん極まってしまってるんじゃないでしょうか。
控えめに言っても、最高すぎる。これぞ、ラブコメ!! ラブコメですヨ!!

紙城 境介作品感想

遊者戦記 #君とリアルを取り戻すRPG ★★★★  

遊者戦記 #君とリアルを取り戻すRPG (ダッシュエックス文庫)

【遊者戦記 #君とリアルを取り戻すRPG】 紙城境介/40原 ダッシュエックス文庫

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人見知りだがそれを決して認めない"オンラインぼっち"ゲーマーのリオは、後輩・サクラに誘われ、あるゲームに参加する。それはSNSにばら撒かれた暗号を解き、現実世界に隠された《扉》に辿り着けた者だけがログインできる、世界初のVRRPGだった。
ドラゴンやゴブリン、そして剣と魔法に彩られた"リアリティのありすぎる"大冒険に心躍らせるリオとサクラ。2人は溢れんばかりのゲーム愛とセンスで瞬く間にトッププレイヤーに登り詰めた。
だが、夢中になって楽しむからこそ彼らは気づく。世界(ファンタジー)の真実に迫るとき、現実(リアル)の未来はあまねく全てのゲーマーに託されることを。
遊者(ゲーマー)が世界を変える! 人類史上最大最高の実況プレイ開幕! !

これは面白かったなあ。まずもってリオとサクラのコンビが素晴らしい。そうそう、年下の女の子の属性って妹キャラだけじゃないんですよ。こんな風に気の置けない後輩ちゃんキャラもまたいいんですよ。遠慮なく戯れてくる、乱暴に甘えてくるというこの懐いた感覚、妹キャラでも似た感じではあるんだけれど、家族みたいな関係の延長線上に乗っかっている妹キャラと、友達の延長線上に乗っかってる後輩キャラでは微妙にニュアンス違うと思うんですよねえ。そんでもって、このサクラはその後輩キャラのドストライクなんですわー。主人公も人見知りしがちだけれどコミュ障というわけではなく、これはシャイな性格というべきなのか。精神年齢は結構ガキで、ヤンチャなサクラとどっこいどっこいという感じなのも、この二人のコンビのドタバタ同じ精神年齢でギャーギャー騒いで息ピッタリ、というところに繋がっているのかも。ゲーマー魂漲らせながらほんと楽しそうに遊んでいる様子が、仲良さそうで見ていてほんと微笑ましいしこっちも楽しくなってくるわけだ。お互いデジタルゲームとアナログゲームという専門違いがありながら、だからこそか遊びにもバランス取れてるのかなあ。
お互いにふざけて弄り合う関係だけれど、それだけ相手への信頼感は全幅のものがあって、度々見せる以心伝心っぷりはまさに相棒という感じがして、あとがきでこの二人がゲームで遊んでいる展開だけでも延々書けるみたいなことを作者が述べてるのだけれど、読んでる側もその気持ちが良くわかるし、延々眺めてるだけで楽しそうだ。
一方で、後半ふとした展開からサクラがいつもの元気一杯さを取り崩して、リオと一緒に切羽詰まった状況に置かれてしまい、凄く怯えて弱った姿を見せる瞬間があるのですが、そういうときだけこのリオくん、ちゃんと男らしい先輩らしい頼もしい姿を見せてくれるわけですよ。普段は簡単に自分にやり込められてしまう、
じゃれついても同じレベルでゲシゲシ遠慮なく叩き合って笑いあって受け入れてくれる先輩が、いざとなると必死に自分を背中にかばって身を挺して守ってくれる姿なんか見せられた日には、キュンキュン来てしまうやないか〜(笑
これは、エリスなんかも一緒なんでしょう。普段はかっこ悪いくらいで親しみやすい懐きやすい男の子が、ココぞという時にはビシッと決めてくれる。トキメキすぎて、妊娠しそうとか言ってるぞこの娘w
このもうイチャツイてるとしか思えない二人の掛け合いに天真爛漫なエリスが加わってのドタバタキャッキャな大騒ぎだけでも楽しかったのですけれど、それだけでは収まらずに中盤から物語も大どんでん返しを持ってくるのであります。ここらへんはデビュー作【ウィッチハント・カーテンコール】を手掛けた作者らしい怒涛の展開と熱量で、これは大いに盛り上がりました。テンションの上げ方、上手いなあ。

紙城境介作品感想

ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件4   

ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件 (ダッシュエックス文庫)

【ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件】 紙城境介/文倉十 ダッシュエックス文庫

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祭りの最中、少女が炎の海に没した。密室かつ衆人環視、そのうえ千年前の伝説を模倣した形で。魔女の手によるこの事件に、新米騎士ウェルナーと『魔女狩り女伯』ことルドヴィカが挑む。だが二人は知らなかった―事件の裏に眠る超歴史的真実の存在を。さらに追い打ちをかけるかの如く、ルドヴィカの前に異端審問官の少女・エルシリアが立ちはだかる。旧友にして天敵同士の二人は、とある悲劇を共有していた―少女達の対立、魔法に彩られた事件、千年間解かれなかった謎。そして偽りの真実が牙を剥いた時、少年は己が正義の在処を知る。第1回集英社ライトノベル新人賞“優秀賞”。精妙にして峻烈なるファンタジー・バトル・ミステリ!!
千年の間解かれなかった謎、それはこの日この時、彼女に解かれるために用意された謎だった。祭りの日、皆が見つめるその先で燃え盛る炎に焼きつくされた少女。事故と思われたそれは、千年前の伝説を模倣した殺人事件、それもこの世に十二しかない魔法を使った異端の魔女の仕業である、と。
まさにミステリー。事件の謎を解き、そこに込められた意図を、想いを詳らかにして、真実を明らかにする。これをミステリーと言わずしてなんという。
ファンタジー世界の物語であり、魔法だの魔女だのといった要素が介在するとはいえ、きちんと事前にルールを提示して、筋道立てて謎の発端から事件の発生、混迷の過程を経て、事件の真相を劇的な形で紐解いていく、というこれ以上なくちゃんとミステリーしてましたよ。
特に好ましかったのは、ルドヴィカという少女の真実に対する狂熱である。真実によって世界を正そうとする彼女と、真実を手の内にして世界を手に入れようとする異端審問官のエルシリア。同じ悲劇を共有しながら、その先に選んだ道を決定的に違えた二人。憎みあい、そして愛しあう。お互いに認め合うからこそ、決して許せず、しかし友情を喪わず、だからこそねじ伏せなければならない相手同士。この二人の偏執的と言っていいくらいの真実への狂熱が、物語の粘度を飛躍的に高めてるんですよね。余人には理解できない執着こそが、ミステリーという属性に圧倒的な質量を与えてくれる。丹念に積み上げられた謎とは、人の抱いた想いそのものであり、人間の内面というものを露骨なくらいに具象化したものだと言えるのだから、それを詳らかに開陳する役目を担う探偵は、それに相応しい人傑であり、人の闇の体現者でなければならない。それを、この二人は見事に成立させている。否や、その二人の対立こそが、それを成立させていると言ってもいいのか。
常にある種の弱さを抱え込んでいるルドヴィカよりも、個人的にはエルシリアの狂奔の方が惹かれるものがあるかなあ。あれほどルドヴィアに焦がれながら、その焦がれを殺意へと転換しなければ正気を保てないほどに至ってしまっている彼女。その行動は、ルドヴィカの考え方そのものを全否定しているかのようでありながら、どこかそうであって欲しいと願っているようにも見える。友情は確かにそこにあり、しかしだからこそそれを踏みにじって殺してあげたいと、切に願っている様は明らかに矛盾の中にいて、恍惚としている。彼女もまた純然たる殺し愛の信徒ではなかろうか。こういう複雑怪奇に入り組みきった憎愛の輩は、好みドストライクなのよねえ。しかし、だからこそ彼女は孤独であり続けなくてはならない。彼女に共感するものを、彼女は決して許さないだろうから。
しかし、ルドヴィカにはこの世でもっとも純朴で真っ当な正義が着いた。あらゆる秩序をかなぐり捨てて、ルドヴィカを信じた正義がそこにいた。まったく鈍くさくて、不器用だけれど、だからこそ揺るぎがない、まるで白馬の王子様。愚かで愛しい大馬鹿者。魔女だろうとお姫様だろうと、こんな馬鹿者に肯定されるほどに嬉しい事はなかろうて。得られるのは、自分を信じる勇気だ。自分のあり方を信じることの出来るぶっとい柱だ。
クライマックスは、こうした噴き出るような情熱が場を炎上させ、盛りたてる。激情のぶつかり合いが、秘密の暴露の場を演出する。そして、探偵の独壇場だ。見せ場としてはこの上ない。
ラストに至るクライマックスの怒涛の展開は、ある程度謎の真相が予想できたにも関わらず、大いに沸き立たせてくれたのではなかろうか。手に汗握る最終局面であり、ふとした瞬間吹き込んできた清涼な風を感じたような、ラストシーンだったんじゃないでしょうか。
実に狂と熱の乗った良いミステリーでありました。見せ方、心得てたなあ。

 
10月22日

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