紫色のクオリア

紫色のクオリア 3 5   

紫色のクオリア (3) (電撃コミックス)

【紫色のクオリア 3】 綱島志朗/原作:うえお久光 電撃コミックス

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うおおおおおおおおおおおおおおおお!!

超大傑作!!!


あの、原作を読んだ時の超弩級の衝撃を、そのまま、或いはそれ以上の威力を持って食らった、喰らってしまった。願わくば、この漫画シリーズ三巻をまとめて読むことをおすすめする。蝶オススメする。その上で原作を読んで、満を持してこの三巻の付帯されたうえお久光さんが書いた書き下ろしの短編を読めば、それできっとパーフェクト。
貴方は、地上から時空の果てに浮かび上がり、宇宙の彼方へと吹き飛ばされ、天上天下の概念を完全に溶かされた挙句に地上に叩き落とされ夢から覚めたみたいな放心状態にさせられること請け合いである。
この、際限なく自己が拡大していって想像が及ばない領域まで広がりきって進み切って、果ての果ての最果てまで到達した末に、最初の地点に収斂していく感覚は、きっと二度と味わえない前人未到の感覚である。そう思っていた。この原作を読んだ時に打ちのめされた陶酔を、まさか漫画でもう一度、些かの瑕疵もなく再び味わう事が出来るなんて。なんて新鮮で、懐かしくも尊い感覚だろう。泣きそうだ、というか泣いた。
そんな、湧き上がる感覚を、湧き上がって留まることなく吹き上がって、飛び散っていってしまいそうなそれを、最後の短編が小箱のように内に収めてくれたんですよね。
小説と漫画の、両方の終着点。この【紫色のクオリア】という世界の本当のピリオドが、この短編をもって打たれたのだ、と思うと切なさと同時に止めどない安堵が溢れる。やっと、蓋をすることが出来たのだ、と。

内容について言及する必要性は、これっぽっちも感じない。というか、もうやだ、ごちゃごちゃ言ってる前にまず読め、としか言えん。読んでこの怒涛怒涛の疾走に何も出来ずに溺れるがいい。 
今はただ、感慨に浸るばかり。これほどの傑作をもう一度味わえたことに、ひたすら感謝を。もうこれ、課題図書ね?

1巻 2巻 小説感想

紫色のクオリア 2 5   


紫色のクオリア 2 (電撃コミックス)

【紫色のクオリア】 綱島志朗/原作:うえお久光 電撃コミックス

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学にかかってきた「自分からの」電話が、告げたのは――

紫色の瞳をもった少女・鞠井ゆかり。彼女は、ニンゲンがロボットに見えるという――。特異な感覚をもったゆかりと、その友だちの波濤学が紡ぎだす「すこし・不思議な」物語。留学生・アリスの登場を機に、ゆかりの、そして学ぶの運命が大きく動くだす……。

警告しよう。

――ここから物語は急転する。


待っていた、待っていました。あの歴史的傑作の疾風怒濤の加速感を目撃する瞬間を。

「1/1,000,000,000のキス」

物語が走りだす。リミットを超えて、際限なく加速しだす。止まらぬ世界、窓から見える光景はもはや流れる光の線へと化していく。
正直言って、あの原作でのノンストップ感、ゴールまで一瞬足りとも減速することなく、ただただひたすら加速して加速して光速を超えたかのように限界突破して、そのまま走り抜けてしまったドライブ感は、漫画で十全味わうことは不可能だろう。あの感覚は、殆どトリップと言っていいもので、文章という媒体に寄ってもたらされる陶酔であった以上、漫画という媒体でありまたこの2巻で物語の執着まで辿りつけず続刊という形になってしまうコミックスでは味わう事は不可能なものだ。故に、あの乗ったが最後、終わりまで離脱できないという途方も無い感覚はさすがに薄れてしまっている。
多分、原作で内容を既に知っている事も大きいのだろう。何も知らなければ、これほど衝撃的な展開もないだろし。それを加味しても、小説と漫画という媒体の違いは大きいと思う。それは仕方ないことだ。だからこそ、逆に漫画という文章とは別の情報力を本作はこれでもか、と注ぎ込んできている。これは、原作では最後に我に返るまで置き去りにされてしまった心を、一から十まで首を引きずって連れ回す縦横無尽の所業である。一枚のページ、一つのシーン、一つの駒、その中の細かい仕草や表情で、これでもかと情感に訴えてくる。自分が何に乗っかってしまい、どんな状況の加速に巻き込まれてしまったのかを、つぶさに見せつけてくる。ワンシーンワンカットにぶん殴られる。あの時、マリィがどんなことを考えていたのか、学がどんな風に変貌し、その学の在り様に世界はどんなふうに激しく揺さぶられていったのかを、原作の学の語りだけでは知りえなかったところまで、つぶさに、つぶさに、外から光景を見ることによって窺い知ることになるのである。窺い知らされることになるのである。
目のあたりにするのである。
光のように一途な狂気を。すべてを置き去りにしていく最果てへの直滑降を。

漫画作品としては文章がやたらと多いですけれど、これでもかなり噛み砕き、さらに分かりやすく整理してSF的な解釈を説明していると思います。ゆかりの存在のありようや、学がどうなっていってしまっているのかを、簡潔かつ的確に説明しているかと。少なくとも、何が起こっているかさっぱりわからない、なんてことはまず無いんじゃないでしょうか。要点をきっちり抑えている分、原作小説よりも端的に状況は理解できるかもしれません。
だからこそ、ここで起こっていることが恐ろしくなるでしょう。未知もまた恐怖ですが、理解もまた状況如何によっては恐怖をもたらすものなのですから。もっとも、まだすべてははじまったばかり。加速を開始したばかり。
前人未到の領域へと踏み入ってしまうのは、むしろここから。三巻こそが本番中の本番、と言っていいのかもしれません。ここで一旦区切られることが、救いなのか嬲りなのかは微妙なところでありますが。

とは言え、一旦加速しだしてしまった中で、巻末の番外編はひとときの憩いですなあ。物語が急転する前の、平穏な日常……というにはぶっ飛ぶ過ぎていますけど! 
ひっくり返って笑ったわ、「目からビーム!!」
ガクちゃんの換装システムすごすぎw

1巻感想

紫色のクオリア 1 5   

紫色のクオリア 1 (電撃コミックス)

【紫色のクオリア 1】 綱島志朗/原作:うえお久光 電撃コミックス

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紫色の瞳をもった少女・毬井ゆかり。
彼女は、ニンゲンがロボットに見えるという――。
各評論等で絶賛されるなど、世に大いなる衝撃を与えた電撃文庫作品をコミカライズ!!


紫色のクオリアである。

未だにこの原作である小説を読んだ時の衝撃は色鮮やかだ。特に物語の後半「1/1,000,000,000のキス」に突入してからの次元を超越した疾走感は、今思い返しても呆然としてしまう。ライトノベルという括りから出されたSF作品としては間違いなくラノベ史上屈指の傑作だろう。
紛う事無き傑作だろう。
だからだろうか、後半のインパクトが強すぎてついついこの作品を語るときには「1/1,000,000,000のキス」のことばかりを語ってしまう。脳裏に思い出されるのはいつだって、ガクちゃんが走りだしたあの後編だったのだ。
でも、この【紫色のクオリア】という作品のコミカライズにあたって、改めて最初からこの物語を見つめ直す機会を得た今回、私は新たなる衝撃をうけることになったのでした。

これ、後半に突入する前から、最初から超特急で傑作だ!!
ヤバいわ、この巻のラストシーン近辺、わかっていても鳥肌が立った。綱島志朗、パないわ。元々この作品自体、うえお久光と綱島志朗のコラボ企画によって生まれた作品で、小説の方の挿絵も綱島志朗さんが担当しているように、作品の理解度については心配のしようもないところでしたけれど、それでもコミカライズとなればそう簡単に行くとは思わなかったんですよね。……ちょっと舐めてたかもしれない。完璧だわ、今のところ。多分、言われなければこれが原作付きのコミカライズとはまずわからないんじゃないだろうか、という隙のない出来栄えでした。というか、私自身一旦原作のことは忘れて思わず夢中になって読んでた次第。のめり込んでたなあ、我ながら。
さらには、漫画になったことで視覚情報としてマリイの異質性を目の当たりにできたのは新鮮な心地にさせられた。あのシーン、あんなことになってたのか。
マリィの目は人間がロボットに見えてしまう、人と器物の区別が付かない、という風に冒頭から説明され、それは大筋として間違ってはいないのですが、でも根本的に間違ってもいるわけです。途中、天条が訴えてくる警告は、実のところ比喩でも例えでもなく、全くそのままの意味だった事が追々わかってくるわけだけれど……端的に言うなら、マリィは目や脳がおかしくて見ているものが普通の人間と違ってしまっている、のではないんですよね。まったく、そういう事じゃないのです。見ている世界が違うのではなく、存在している世界そのものが違ってしまっていることを、まだ誰も理解が及ばない段階に居る。
ぶっちゃけその差こそが、「1/1,000,000,000のキス」においてもガクちゃんの前に立ち塞がる壁となるのだ。原作の感想を書いていた時、何故ガクちゃんは最後まで目的を達成デキなかったのかについて、読破後の興奮や冷静になれずに頭に血がのぼっていたのも相まってか、疑問への明確な答えを導き出せず仮定しか並べられなかったのだけれど、こうして漫画化された最初のエピソードを見て、マリィという少女の本質的な違いを実感した今ならその理由に納得が得られる気がする。
ゆえにこそだ、早く綱島志朗の絵描くあのスタンピード「1/1,000,000,000のキス」を見てみたい。絶対に読んでみたい。
あの傑作を、もう一度目撃したい!

待ってます。

原作:紫色のクオリア感想

紫色のクオリア5   

紫色のクオリア (電撃文庫)

【紫色のクオリア】 うえお久光/綱島志朗 電撃文庫

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 bk1

……言葉を失うという感慨を久々に味わわされた。
これはすごい。本当にすごい。
本物の傑作。紛う事なき傑作。完全に抜きん出た、卓抜した凄まじい傑作。
すごいものを読んだ。まったく、凄いものを読んでしまった。
これほど際立ったSF作品にも関わらず、同時にライトノベルとして一つもぶれていないのだから、もはや呆気にとられるしかない。
まいったな、これは。体の芯から揺さぶられたまま、未だにうまくこの作品を咀嚼し切れていない。
正直、これをネタバレなしに語るなど難易度が高すぎるんだが、いやネタバレをしたからといって小揺るぎもしないんじゃないのかとも思うんだが、だからと言ってどんな小さな瑕疵すらも付けることに怖れ慄いてしまうこの感覚を無視できようはずもない。

しかし【少女とロボット】というテーマから第一話「毬井についてのエトセトラ」へと至る時点でその発想のぶっ飛びっぷりはおかしいとしか言いようがないのに、そこからどうやったら第二話の「1/1,000,000,000のキス」に発想が至るのか、もはや常軌を逸しているとしか思えない。なんなんだ、この話の転がりっぷりは。
第二話が始まった途端、第一話のあらゆる要素が起爆剤となり、物語は尋常ならざる速度で加速していく。それは規定されたルールを飛び越え、常識を乗り越え、可能性という可能性を網羅し、人であることすらかなぐり捨て、ただ一つの目的を達成するためにあらゆる観測点を踏みにじり、世界の外へと飛び出していく。
その果ての果てに辿り着いた場所で遭遇したもの、それこそが彼女の誤謬であり到達点であり、回帰であったのだ。
ここで思うのだが、これほど遠大な探求を成し得ながら彼女が目的を達成できなかったのはなぜなんだろう。ここで目的の対象である彼女の言は、あまり全面的に信用できないように思う。なにより彼女は、対象以外の運命はほぼ完全に操作しきっていたからだ。
そして、果てでのあの邂逅。まるでお釈迦様の手のひらの上を彷徨っていたような感覚。
そう、万物理論へと至るまでのあれほどの段階に達した彼女ですら、結局あの子のいた地平には辿り着く事は叶わなかったという事になるんじゃないだろうか。
というよりも、そもそも回帰することで既に辿り着いていた同じ地平に戻ってきた、と言えるのか?
いや、でもそういうメンタル面の話ではなく、存在の階梯という意味ではやはり、ああなってすら辿り着けない断絶があったような気がする。
それでも、着地点としてこうなるのは、正しくライトノベルであったというべきか。でも、IFでのあれを考えると、色々と意味深に推測できることも多々あるわけで……まいったなあ。

とにかく、ものすごい作品である。このドライブ感に巻き込まれれば、それこそどこまでも、人が本来辿り着けるはずのない地平の先まで覗けてしまいそうな恐怖感と興奮に取りつかれることだろう。
繰り返す。紛うことなき、これは傑作である。
 
1月25日

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