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綾里けいし

霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない ★★★★   



【霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない】  綾里 けいし/生川 ガガガ文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

その少女は「かみさま」のなりそこない――

藤咲藤花の元に訪れる奇妙な事件の捜査依頼。
それは「かみさま」になるはずだった少女にしか解けない、人の業が生み出す猟奇事件。

人の姿を持ちながら幽世のものに触れる異能をもつ彼女は、事件の解決に自分の居場所を求めて歩む。
そして、その隣には「かみさま」の従者として彼女を守る役目を負うはずだった青年・藤咲朔の姿が常にあった。

数奇な運命のもとに生まれ――そして本来の役割を失った二人は現世の狂気のなかで互いの存在意義を求め合う。
これは、夢現の狭間に揺れる一人の少女と、それを見守る従者の物語。

思えば、綾里けいしさんの描く物語の多くが、主人たる少女と従者たる青年の二人を中心として描かれる物語だ。そして、その主人たる少女たちの多くがまた超常の存在である。存在以上にその精神性が人並み外れた強靭さ、或いは異常さを有している特異な人物だった。
【B.A.D】の繭墨あざかも、【アリストクライシ】のエリーゼも、【異世界拷問姫】のエリザベートも、狂気であり誠実であり残酷であり異質であり優しくもある突き抜けた人物だった。従者たる青年たちは、彼女らに振り回されながら彼女らを追いかけ付き従い、支える者だった。【B.A.D】の小田桐くんについては異論多々あろうが。
「かみさまのなりそこない」藤咲藤花もまた、そんな人外たる女主人の列に連なるヒロインだと思っていた。なにしろ、かみさまのなりかけ、だ。この場合の神様というのは、人の身でありながら人でなくなる、生きたまま幽世の住人になるような、俗世から完全に隔離されてしまうような、超常の存在だ。人としての人格も、人としての人権も、人としての柵も、何もかもから解き放たれた、贄のようなカミのような、祭り上げられた祀り上げられた神秘。
そんなモノになりかけた、なるはずだった、そんな少女はやはりそもそもが超常の存在なのだろう、と。超然として達観して透徹として、ふと目を離すと消えてしまいそうな浮世離れした儚いカゲロウのような少女なのだと、勝手に考えていた。

まさか、こたつから出てこないただの引きこもりニートだとは思わなかったさ。
食べ物に関してだけはアグレッシブになる、食物を買いに行くのなら積極的に外に出る種類のニートだとは思わなかった。
ただの食っちゃ寝してゲームして遊んで、従者の朔くんに衣食住ぜんぶ依存しているダメニートだとは思わなかった。
そして朔くん、厳しいことを言っているようでこの男、藤花にだだ甘である。甘やかしまくっている。口を開けて餌をねだるヒナにせっせと餌を放り込む親鳥のごとくである。なんだかんだ辛辣な文句を言いながら、一生彼女が引きこもりでも嬉々として養いそうな、人をダメにするたぐいの男である。
「少女たるもの」
それが藤花の口癖、或いは決め台詞だ。
かみさまになれなかった彼女の能力は中途半端。霊能探偵を名乗って看板を立てているけれど、聡明ではあってもカミソリのように謎を事件をズバッと解決するような切れ味はなく、自称かみさまの劣化品である彼女の精神性は、自分で宣うように当たり前なほど少女だ。ただの15歳の少女なのである。そこに、かみに連なる神秘も超常性も、異常性も狂気すらも持ち得ていないかもしれない。
本当に、ただの女の子なのだ。
だからこそ、藤花は傷ついている。現代の残酷な御伽噺のような、この異能と超常の世界に生まれるにはあまりに普通の少女だったが故に。かみになれなかった、成り得なかった自分への意味を、存在意義を見失っている。
いや、すべての真相が明らかになったあとに振り返ってみれば、彼女が苦しんで自分に価値を見い出せずにいたのは、かみさまになれなかったからではないのだろう。かみさまにもなれなかったにも関わらず、かみの従者となるはずだった「彼」藤咲朔を自身に縛り付けてしまったから。彼を自由にしようともがきながら、結局誰よりも自分が彼を縛り付けてしまったから。そして今この瞬間も彼にすがりついているから。もうかみさまでもないというのに。
つまるところ、藤花の想いはただただ朔一人に向けられていたと言っていい。藤花の振る舞いは、そのたどった歩みは、徹頭徹尾ひとりの青年を想ってのことだった。
それはもう少女以外の何者でもない在り方である。到底かみさまになんてなれるはずがない、ただの女の子のありかただった。
好きな人のためならば、たとえ自分を殺しても。たとえかみすら殺しても。

だからきっと、そんな彼女を救うには、かみさまでもかみさまの劣化品でもなりそこないでもなく、ただの無意味な少女をこそ守るのだという青年の想いを伝えることが必要だったのだろう。
従者という役割だからじゃなく、ただ単に藤花だから傍にいるのだと、そんな当たり前を彼女に信じてもらうことが必要だったのだろう。
でも、この異常で残酷で半ば狂った異形の世界で、そんな当たり前こそが普遍的ではなくそう在る事は難しい。こんな歪んだことわりが罷り通っている世界の中で、ただの少女であったというのはいっそ惨劇ですらあったかもしれない。

霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない。
当然だ。人の惨劇を嗤えるような、そんな歪んだ存在では彼女はなかった。本当に、ただの少女だったのだ。
少女はただ恋をして、恋に殉じた。それこそが、彼女自身の惨劇だったのかもしれない。
それがただの惨劇で、悲劇で、末路として終わらなかったのは、朔もまた、かみの従者になりえなかったからなのだろう。
彼もまた、最初から役目など意味をなしていなかった。彼にとってかみさまなんてどうでもよかった。最初から、彼の目にはかみさまではなく少女しか映っていなかったのだから。
与えられた役目によって結ばれた二人は、最初からかみさま候補とその従者という役目など関係なかった。最初から、お互いしか眼中になかったのだから。
でも、それを二人共知らずわからず理解せず、そのまま拗れて固まり、どうしようもないまま藤咲の因果としがらみに囚われて、彼らもまた惨劇の道をたどるはずだったのかもしれない。

そう考えると、本物の「かみさま」になったあの名前も語られぬ少女は、役割としてのかみさまではなく、彼女自身の意思と力で「縁結び」の神様と成ったのかもしれない。ほんの些細で親切なおせっかい。意地悪で迂遠な依頼にして道しるべ。傷ついて向き合うことのできなくなっていた少女と青年に、真実をたどる道筋を示すことで、お互いの想いを伝え合えるきっかけを与えてくれた。
彼女は狂ったかみであり、正しいかみであり、だからこそ血を厭わずまともな倫理に縛られず、でも友人だったひとりの女の子の恋を、大切になるはずだった青年の想いを、そっと結ぶ機会をくれたかみさまだった。
それはかみというより、少女のようで。名前も語られぬ彼女もまた、かみさまとなった彼女もまた、少女たるもの、だったのだろう。

かくして、これは最初から最後まで徹頭徹尾、純粋な恋の物語でありました。幾多の惨劇の上を歩んでいくものだったとしても、穢れを感じさせない純愛の物語でもありました。
死がふたりを分かつまで、或いは死すらも分かてぬ、この世界にただ二人きりであるような恋人たちの物語。




終焉ノ花嫁 2 ★★★☆   



【終焉ノ花嫁 2】 綾里けいし/村 カルキ MF文庫J

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魔導学園×主従バトル×ダークファンタジー、祭華夢幻の第二弾!

人類の敵【キヘイ】が世界を蹂躙して幾年。
魔導学園・黄昏院を設立し、人々はその脅威に抗戦を続けていた。
キヘイと婚姻し、【百鬼夜行】に転科・入隊したカグロコウは、一万五千回の試算の上にキヘイの大進行【逢魔ヶ時】を越える。
束の間の日常を謳歌するコウたちの前に――予想だにせぬ転科生が現れる。
時を同じくして【逢魔ヶ時】打破記念の祝祭が行われ、コウたちも出し物をすることに。
だが、祭りの最中、唐突にコウが殺される。
何度も何度も。
何度繰り返しても――。
さらには【戦闘科】最強の学徒で構成された【傀儡衆】の少女に襲撃されてしまい……?

ササノエ先輩、見事にミレイさんに洗脳されてお化け屋敷の脅かし役で動員されてるじゃん! 孤高の戦士を地で行ってるササノエ先輩だけど不思議と孤立はしていないどころか慕われていて、わりとイジられる事も多い気がするぞこの人。でも何より格好いい。最強の幻級の人は他にも二人いて頼りにされているけれど、百鬼夜行の支柱的存在というのはやっぱりササノエ先輩なんだよな。
百鬼夜行そのものが陥れられハメられたときに、切ってみせた啖呵には奮い立たずには居られなかった。
彼に限らず百鬼夜行の面々は気持ちが涼やかで本当に気持ちの良い人たちなんですよね。黒姫が転入生として教室に現れた時も、事情も何も説明せずともコウが真摯にお願いすることでキヘイの女王だった彼女を受け入れてくれた時も、コウを信頼して気持ちを汲んでくれたからこそ、なんですよね。
また時間遡行の繰り返しで、傍目には奇行に見える行動を起こし、また突然前触れもなく感情を爆発させたような不審極まる場面でも、状況のおかしさや異常さよりもまずコウが見せている感情を、泣きじゃくる彼の悲しみや安堵というものを優先して見てくれて、コウのどうしようもない気持ちの擾乱を皆して受け止め見守ってくれるのだ。こういうシーンを見せられると、本当に百鬼夜行の面々がみんな生き残れたという事が嬉しく思えてくる。この気持ちの良い涼やかな人達が、優しく強い人たちが生きてくれた、という事実にコウの一万五千回もの繰り返しが確かに価値あるものだった、この人たちを喪わずに済んだことがどれだけ掛け替えのない事だったのかが実感できるのだ。

だからこそ、コウが掴み取ったこの未来を否定し、貶めて、百鬼夜行が生き残った事実そのものを台無しにしようとする外部の人間の悪意に強い憤りを覚えるのだ。
敵はキヘイか、はたまたヒトか。
だからこそ、ササノエ先輩の一般の生徒は自分達の排斥に回るのは仕方ないが、これを企んだ連中は生かしておかん、という啖呵が沁み入るのである。怒りのみに染まらず、しかし怒りを留めず、敵と守るべき人たちを明確に区分けして斬り込もうというその姿に、この仮面の先輩の誇りを、百鬼夜行クラスの強さの意味を垣間見ることが出来るのである。
この人たちには幸せになってほしいなあ。
白姫との閉ざされた二人だけの愛の縁にとどまらず、こうして白から分たれた黒姫とも繋がり、百鬼夜行クラスというこれ以上ない仲間たちと出会い、そして途切れたはずの一般クラスの友人たちも、今もなおコウの事を想ってくれていた事を知れて、世界は捨てたもんじゃなくヒトは素晴らしいともっと思えるようになってくる。
だからこそ、余計にヒトの良き部分を塗りつぶすようなヒトの醜悪な悪意が際立ってくるのだけれど。
傀儡衆というのはこれ名前、結局ミスリードだったのか。直接対面してみると、いわゆる暗部な連中にも関わらずこの人たちも何だかんだと裏表のない気持ちの良い人たちだったんですよね。あくまで、彼らは意思を無視して使われる側であったのか。
しかし驚きだったのが、コウの時間遡行って即死した場合その時点で終わりだったのか。いや、これよくまあ一万五千回も即死せずに繰り返せたなあ。本人気付かずに流れ弾とかで頭吹き飛ばされて即死、とかいうケース決して珍しくないだろうに。精神がゴリゴリ削られていく以外は万能に思えたコウの能力だけど、これ詳細を知られた場合かなり容易に排除されかねないぞ。
今の段階では担任教師の二人以外には知られずに済んでいるのだけど。百鬼夜行の面々は知ろうともしていない、ほんとイイ連中なんだけど、敵サイドが全く気づいていないというのは大きいなあ。

ともあれ、学園祭の最中、いやその学祭の終わり際に突然脈絡もなく知人からナイフで刺されて殺されるという自体が続く中で、誰かが生徒たちを操ってコウに攻撃を仕掛けてきている、と察知するのですけれど、最初の案件、一般クラスで仲の良かったアサギリと再会して、話しているときにいきなりナイフで脇腹刺された時には瞬発型ヤンデレだー! と大いに興奮してしまったわけですけど……。
いやうん、ファーストインプレッションは侮れませんね、うん。

さて、今回からさらっと転入生としてクラスに加わってしまった一巻のラスボスである千年黒姫。無理にラスボスする必要なくなったというのもあるけど、ちょっと内気で周りの反応にビクビクしながらでも好奇心を隠しきれずにキョロキョロしつつ、コウの裾つまんで影に隠れてる、みたいなイメージのキャラがめちゃめちゃ愛らしくて、なんだこの新興マスコットは。コウよりもむしろ白姫の方がテンションあがって甲斐甲斐しく世話しだしているあたりは、なんとも微笑ましい光景でした。姉妹みたい、と言いたくなるけど姉妹どころかこの二人アレなんだよなあ。でも白姫よりも黒姫の方が経験も実体験も上のはずなのに、白姫の方がお姉さん風吹かせているのはふたりとも可愛いなあ。
そして、なんか作中で一番ラブコメしているヒカミとミレイのお二人さん。この二人が一番学生生活の青春真っ盛りじゃないですかー。ヒカミの方まったく無自覚にも関わらず、愛が深い、深い。そして薄々察してソワソワしてるミレイさん、乙女ですよ乙女。
そんな二人をみんなで隠れて出歯亀しながら見守る百鬼夜行クラス。こいつら、ほんとあらゆる意味で仲良いよなあ。そして、学園の最後の盾であり最強の矛、他の生徒たちから秘されし影の存在でありながら、わりとちゃんと生徒として青春してるんですよねえ。学園祭も何気に毎年参加してるそうですし。
そんな中に、コウも加わって最終的にちゃんと学園祭を全部回れてよかった。途中経過で、結局参加出来ずに終わるのではないかというちょっと寂しい予感があっただけに、ほんと良かった。
と、良かった良かったなんて言っていられないラストの驚きの展開。そうかー、そうきたかー。
さても、人の敵はやはりヒトか。


終焉ノ花嫁 ★★★☆   



【終焉ノ花嫁】 綾里 けいし/村 カルキ  MF文庫J

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拘束を、隷属を、信頼を、貴方に――約束しよう、貴方のために全てを殺すと

突如出現した脅威【キヘイ】が世界を蹂躙して幾百年。人類は対抗手段として魔導学園・黄昏院を設立し、日夜戦闘が繰り返されていた。
運命の日、魔導研究科所属のカグロ・コウは【キヘイ】の死骸回収のため、とある遺跡に出向き、不運にもその命を散らした……はずだった。【キヘイ】の少女に救われるまでは――。
「初めまして、愛しき人よ――我が名は【白姫】。これより先、私は永遠に貴方と共にあります」
物語の中の騎士のように、御伽噺の中の姫のように、目覚めた少女は告げる。それが終わらない地獄の始まりになろうとも知らず――。
『異世界拷問姫』の綾里けいしが贈る、希望と絶望が織りなす、感動のダークファンタジー!

「キヘイ」なる存在と結ばれた特別な唯一無二の一組、というわけじゃないんだ、主人公と白姫のカップル。秘されているとは言え、丸々一クラス分の人数、キヘイと「結婚」した人間がいるわけね。それも、白姫のような喋れる人と変わらぬ姿のキヘイのみならず、魔獣型としか言いようのない甲型・乙型・特殊型のキヘイとも「結婚」している生徒たちが、二十数人。
なので、コウと白姫がただ二人きりの特別な存在として孤独な戦いを繰り広げるのではなく、ちゃんと同じ境遇の仲間たちと一緒に戦い、一緒に学校生活を送る学園モノとしての体も整っている。
同時に過酷な絶滅戦争の只中、その最前線を担う最強のクラスのメンバーとして、全員戦う覚悟と死ぬ覚悟が決まっている子たちでもあるのだ。だから、彼らは穏やかで朗らかに日常を謳歌し、その上で戦うことを厭わない。その末に死ぬことすらも受け入れている。
そんな仲間たちなので、白姫と出会いこのクラスに配されるまで、周囲から白面と侮蔑されるほど感情の動きが鈍い主人公でも全然浮かずに馴染んでいる。彼をありのまま受け入れる彼らキヘイとの婚姻者だけで編成された特殊部隊「百鬼夜行」の面々の精神性は、やはり普通の生徒たちからは逸脱しているのだろう。主人公カグロ・コウのように。だからこそ、仲間意識もまた強く結びついているのだろうけど。
コウとパーティーを組む面々もまた個性的なんですよね。ミレイさんだけは、個性的の方向性が一人だけ明後日の方向にいっちゃってる気もしますけれど、彼らとは日々の訓練と日常生活を共に過ごすうちに掛け替えのない友人となっていくのである。みんなの兄ちゃんという感じのヒカミと、ミレイのなんか幼馴染み感のある距離感は、本人たちは全くその気ないようなのだけれど傍から見てると間に入れない雰囲気があって、ちょっとこれどうにかなるんじゃないかしらと期待してしまうくらいでして。
ただ、全体的に話の展開に余裕がなくてイベントがとにかくギュウギュウに詰め込まれてしまっていた感がある。コウと百鬼夜行のクラスメイトたち、特にヒカミたちと交流を深めて得難い友人たちとなっていく描写こそ丁寧に描かれていたものの、その中の個人個人と人間関係を深めていくだけの猶予はなかったので、ほとんど掘り下げるまでいかなかったんですよね。ヤグルマくんが変な道に目覚めそうになってたり、と気になる要素はタップリあったのに。
それどころか、肝心の白姫との描写もコウと二人の関係の深さを実感として感じられるだけの積み重ねが、ちと物足りなかった気がする。ほぼはじめから、お互いが絶対という密度の濃い所からスタートしていて、それは全然構わないのだけれどその関係の深さを色付けする様々なエピソードを体験する間もなく、クライマックスに突入してしまったような。
なので、二人の関係を核として物語の根幹に横たわる真実や、様々な謎が怒涛のように明らかになり、それまでの前提などがひっくり返った時も、ひっくり返す台の上に乗った事実に重みを感じるだけの積み重ねが少なかったので、衝撃が軽く済んでしまった所がある。永遠のような地獄、もその地獄の辛さを痛切に感じるまでの削れていく失う痛みが、軽かったんですよね。
その意味では、この内容を一巻に詰め込んだのはちょっとバタバタしてしまった感があります。もしこれ、3巻とか5巻とかの重ねを経て、それだけ人間関係に想いを重ねてしまっていたら、衝撃にのた打ち回るはめになっていたかも。
ササエと紅姫とか一番割食って、ほとんど最強という以外どういうキャラかも見せて貰えなかったし。紅姫チャンなんぞ、ほとんど喋らんかったもんなあ。ちなみに、超寡黙なはずのササエはわりと喋ってたぞw
とはいえ、ここまでを全部プロローグにして、本格的にスタートするのは次から、というのであればとんでもないところまで突っ走って行きそうなだけに、まだまだ期待はしていきたい。
すでに2巻も9月に準備されているようですし。


異世界拷問姫 9 ★★★★★   



【異世界拷問姫 9】  綾里 けいし/ 鵜飼 沙樹 MF文庫J

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「どうか、皆、みーんな、一緒に死んでください」
最愛の父・ルイスを失い、【異世界拷問姫】アリスは世界を壊し始める。
かつて最愛の従者・瀬名櫂人を失った【拷問姫】エリザベートは世界を守り続ける。
それは鏡映し、共にあり得た可能性。
それ故に決定的に交わらない二つの道。
だから二人の拷問姫は“彼ら”の遺志を継ぎ、各々に世界へと立ち向かう。
「どうして、私だけお父様を失うの? 『瀬名櫂人』のエリザベートは生きているのに!」
「この【拷問姫】が全てを賭けるのだ──【異世界拷問姫】が受けずして、どうする?」
これが神話に至る物語。
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る至高のダークファンタジー、最終巻。


……冒頭の、見開きのカラー口絵。表紙絵がその一部分なのだけれど、これがもう美しすぎて、呆然と見とれてしまう。どこぞの美術館に飾ってあってもおかしくないと思えてしまう。初っ端から魂を鷲掴みにされて、そうして始まるのは生命の讃歌だ。

不思議だ。皆が皆、死んでいく。片っ端から、消えていく。惨たらしく、残酷に、血塗れになりながら、ろくな死体も残さず死んでいく。
なのに、これほど皆の「生」を、生きたという実感をどうして感じるのだろう。彼らは死んだ。だが、生きたのだ。生きて生きて、生き抜いた先での死だったのだ。それは惨劇ではない、悲劇ではない、そう思えてならない。そして、彼らの死は終わりではなかった。結末ではなかった。終わるためではなく、終わらないための、その繋ぐための彼らの生き抜いた証だったのだ。だから、彼らの死は犬死であっても無為ではなかった。その先へと続いていくための、橋渡し。不要ではあっても、証明だったのだ。世界は、人は、生きるということは、美しいモノだという事実を証立てる証明だったのだ。
瀬名櫂人とヒナが去ってからずっとエリザベートが自問し続けた問いかけ。果たして、世界は守るに値すべきものなのか。この人々の愚かさと醜さで彩られる世界は、瀬名櫂人が命を掛けるに値するべきものだったのか。救われるべきものだったのか。滅びてしまえばよかったのではないのか。愛するに、値しないものだったのではないか。
どうしようもない争いを目の当たりにしながら、何度も彼女が問いかけた疑問。そんな彼女を支え続けたのは櫂人の世界を愛し守ると願いであり意志であったけれど、この醜い世界で幾度も彼女が目にした美しい人の心がエリザベートを進ませ続けた。そんな美しい光そのものだった人たちが、キラキラと輝きながら散っていく。醜いと、愚かだと思えてならなかった人々すらも、この滅びの最果てで答えを得たかのように光り輝いていく。
そう、みんなこの世界の滅びゆく最果てで、各々に自分にとっての答えを得ていくんですね。迷いは払われ、それぞれが未来を思い描く。果たして、そこに自分がたどり着けないのだとわかっていても、思い描く未来が実現するのなら、それはきっと素晴らしいことなのだと。
だから、皆が胸を張り、ほほえみながら自分の成すべきことを見出して、成し遂げていくのだ。
聖女もまた、ついに自分の腕からこぼれ落ちていたあの「肉屋」を思い出し、彼の献身に思いを馳せ、愛おしさを胸に宿して、彼の愛に応えるように胸を張ってかつての自分の思いを取り戻し、貫き通していった。
神に身も心も捧げたはずの聖人たちも、兵器と成り果てていたはずの彼らもまた、一人一人が神と別れ自ら立ち、それぞれが思い描いた未来のために戦ってくれた。教会の人たちもそうだ。誰かに言われたからでも命じられたからでもない。その信仰は己の心のうちにあり。神の意志ではなく、彼ら自身の意志でその信仰を貫いた。
エリザベートを隊長と仰いだ治安維持の隊員たち。彼らこそが、いわばエリザベートを拷問姫というくびきから救い出した張本人たちだと言えよう。櫂人とヒナのいない世界で、エリザベートを人の子へと変えていき、解き放ったのは間違いなく彼らだ。
亜人たち。間違いだと知りながら敢えて間違いを貫いた者たち。綾里さんがちらっと某所で長い後書きを書いていてそこで触れているのだけれど、行き着く果に先のない亜人の彼らの絶望のなかで、あの父子は対局の立場に立ちながらそれぞれ同じ方向を向いて、先のない未来に立ち向かったんですね。そこには、確かに愛があった。同族への、家族への深い深い愛情が。

そして、愛があったのはアリスとルイスの疑似親子にもまた確かに。
愛があったからこそ、アリスはルイスの最期の願いに答えざるを得なかった。もう、それしかなかったから。ああ、なるほど。確かに、アリスはエリザベートと対極だ。世界を呪った者と世界を愛した者に遺されたもの同士、その遺志に寄り添う以外にその存在に意味はない。でも、ジャンヌとイザベラの愛しあう二人の姿にアリスは心打ち砕かれ、一方でエリザベートの世界への愛情は櫂人からの預かりものだけではなく、彼女自身が多く関わった人たちから貰ったもの。彼女自身が抱いた想い。彼女自身の意志でもあり、願いともなっていた。その違いだろう。それだけの、違いなのだろう。

アリスにはもうなにもない。でも、確かに彼女は愛されていて、父を愛した。その事実と過去だけを胸に、もう何もない彼女はそれからどうやって生きていくのか。残酷な結末でもあり、小さな希望の結末なのかもしれない。

皇帝は、ほんとね、こいつ悪魔だったはずなのに。契約者があのヴラドと櫂人であったのが災いしてしまったのか。もういつの間にか、悪魔であるという存在すら突破して違うものになっていた気がする。彼は彼で証明したのかもしれない。悪魔もまた、悪魔でなくなり自ら選んだ存在になれるのだと。誰よりも誇り高く、共に駆けてくれた戦友だった。

リュートはもう、なんというか、ほんと登場当初から彼はこの物語の救いそのものだった気がします。だからこそ、彼はいつでもどこでも無残に無為に死んでしまいそうだった。他の誰よりもただリュートであるというだけで死亡フラグそのものみたいな存在だった気すらする。
故に、彼が生きている限り。エリザベートを支えてくれている限り、この物語は希望を失っていないのだと信じることができた。実際、そのとおりであったことに、深い深い感謝を。

そして、ジャンヌとイザベラのカップル。多分、この物語で一番幸せだった二人。もっとも幸福だった二人。世界を愛し祝福し、だからこそ愛され祝福された二人。結婚おめでとう。最後まで、最期まで二人は二人でいることが目一杯幸せそうで、良かったね、という言葉を送ることができる。
でも、同時に泣いてしまうのは仕方ないですよね。泣いて泣いて、目が痛くなるほど泣けてしまって、でもやっぱり祝うのだ。おめでとう。ずっとずっとお幸せに、と。

そうやって、みんなやるべきを見出し、己の中の答えを得て、生きて生きて生き抜いて、やり尽くして去って逝く。
そんな彼らに問いかけたい。満足だったか? 満ち足りたか? 救われたか? 幸せだったか? 想いを果たせたか?
潰えることに無念はあるだろう、でも後悔はないに違いない。だから皆が皆、起立して胸を張って悠然と、笑顔すら浮かべて、去っていく。その胸に、目いっぱいの愛を宿し抱きしめて。
だからだろう、世界はこんなにも惨たらしく血塗れで死と破壊に侵されていたのに、切ないほどに美しい。
こんなにも、優しい。
だからこれは人間讃歌の物語。綺麗な夢のおとぎ話。

生きて生きて生き抜いて、途中で進めなくなった人たちに背中を押され、多くのものを預けられ、辛くでも苦しくても寂しくても悲しくても、背負いきれない罪を背負いながら、それでも進み続けたエリザベートの辿り着いた結末は。皆が思い描き、託したそのさき、その未来に辿り着いたエリザベートは。
拷問姫でなくなった、ただのエリザベートは。ようやく、ようやく、焦がれ焦がれた幸いをその手にとり戻す。
小さな小さな、幸せの夢を。

これは、ヒトが小さな幸せを手にする物語だ。



異世界拷問姫 8 ★★★★☆  



【異世界拷問姫 8】 綾里 けいし/鵜飼 沙樹  MF文庫J

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『断罪を止めたくば、代償を、犠牲を、生贄を。我々は結晶化した“狂王”とその花嫁。及び、“拷問姫”エリザベート・レ・ファニュの身柄をお前達の命の代わりに求めよう』
各地での殺戮を煽動するアリスとルイスの要求に対し、三種族は救世の英雄を生贄とする決断を下す。
「…貴様ら夫婦を相手取る羽目になろうとはな。流石に予想せぬわ」
再び世界の敵となったエリザベートの前にはジャンヌとイザベラが立ちはだかり、
「さぁ―父性愛の勝負といこうじゃないか!」
愛娘の道を切り開くためヴラドはルイスを迎え撃つ。綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る至高のダークファンタジー第八弾。彼らは戦う。各々の何かを守り抜くために。

ジャンヌとイザベラだけが癒やしです。この二人だけはそのまま幸せになってくれ、と願わずにはいられない。とうとうこの二人とも殺伐とした展開になるのかと危惧したのですけれど、彼女たちだけは平常運転で本当に良かった。この世界に対する失望と絶望が湧き上がり、カイトとヒナが身を犠牲にして守った意味があったのか、と幾度も自問してしまうなかで、ジャンヌとイザベラのカップルやリュート夫妻の存在がどれだけ救いに思えたか。この世界もそこに住まう人たちも決して見捨てたものじゃない、と思わせてくれる人たちなのですから。あのエリザベートを避難する民衆を一喝した老婆のように、咎人であったエリザベートを気遣ってくれた文官の人のように。この世界には、まだこんなにも尊いものが散らばっている。狂王カイトの姿に憧れた臆病者の王も、今や人族をまとめる王として以上に、世界の価値を信じさせてくれる良い男に成長してるのに。
それでも、悪夢は積み重なっていく。折り重ねられる復讐の連鎖、悪意の塔、無辜という名の罪人の群れたる民たち。
そんな中で独り戦うエリザベートの孤独はいや増すばかり。いや、その孤独を、寂しさを彼女はすべて受け入れている。ゆらぎはしてもブレはしない。
でも、その想いにもう名前をつけても良かったんですよ。ようやく、ようやく、エリザベート・レ・ファニュの本心がエリザベート自身に届いたのでした。その形のない想いを、言葉にして形作ることができた。

親友を、弟を、兄を、己の恩人を。
優しく、愚かで、仕方のない人を、
愛すべき人を、愛するように、
エリザベート・レ・ファニュはセナ・カイトを愛している。

無意識にこぼれ落ちた言葉を彼女は自分で反芻し、そして静かにはっきりともう一度繰り返した。
愛している。その言葉のなんて深い響きだったか。その言葉を告げる彼女が、どれほど美しいモノだったか。
何かを求めるわけではない、報いを欲しているわけではない。その感情は、湧き上がる想いはただただ捧げ与えるためのものだった。エリザベートのそれに、色恋の熱量は見当たらない。滾るものではない、焼き焦がすものではない、それはお互いを温め合うもの。その存在を慰め合うもの、癒やし合うもの。掛け替えのない、意味を持つもの。
愛すべき人を、愛するように。
思えば、エリザベートとカイトとヒナの三人の関係は、常に与え合うものでした。愛している、その三人同士の間で揺蕩う想いは、気安くも献身そのものでした。それは、エリザベート独りが取り残された今に、何も変わってない。触れられそうなほど近くにありながら、決して届かないはるか遠くへと行ってしまったカイトとヒナを、エリザベートは変わらずずっと愛している。
その健気でさみしげな彼女の姿が、どうしようもなく愛おしく美しく、悲しい、哀しい。
それは仕方のないことだったのだろうけど、やはりエリザベート独りを置いていってしまったカイトとヒナに文句が言いたくなる。二人とも、随分と後ろ髪引かれているみたいだけれど、エリザベートはもっとずっと寂しかったのだから。
迎えに行って、くれるのだろうか。もう一度、あの三人の輪の中にカイトとヒナはエリザベートを迎え入れてくれるのだろうか。

思えば、ヴラドもまた何も見返りを求めていなかったですよね。あれほどの極悪人で鬼畜外道の残骸であっても、彼の父親としての愛は、娘に何も求めなかった。ただ、愛していた。それが、彼がなしてきた残虐非道の数々に対して、冒涜であったとしても、娘への愛は無償であった。
ルイスが、ついぞ最期まで娘となったアリスを本当に心から愛していながら、彼女に愛に対する報いを、見返りを求めてしまった事と比べてしまえば、尚更に。尚更に胸に凝りを残すのである。
ああ、なんて度し難い愚かさなのだろう。それを自覚しながら自身を止められなかったルイスが、哀れでならない。


次が最後、本当の最期。万感の想いを抱いて、結末を待つ。

シリーズ感想

異世界拷問姫 7.5 ★★★★   



【異世界拷問姫 7.5】 綾里 けいし/鵜飼 沙樹  MF文庫J

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これは櫂人やエリザベート、ヒナ達が過ごした日常、夢のように幸福な記憶―遠い日々。櫂人は悪夢に悩まされ、エリザベートは狂信者に押しかけられ、ヒナは行方不明になっていた?また、終焉回避後の『ある日のこと』、櫂人とヒナの提案で、エリザベートの治安維持部隊隊長就任三周年目を祝う宴が開催されることになり…?天然たらしっぷりを発揮するイザベラ?のろけるジャンヌ?ヴラドにウザ絡みする『肉屋』?会場はカオスな様相を呈するが…?Web連載短編に書き下ろし小説&イラストを加えた豪華短編集。これは幸福の断片、そして先へ繋がる物語。

こうしてみると、エリザベエートと櫂人の二人きりだった頃はまだ二人の関係ってぎこちなかったようにも見える。それだけ、まだお互いがお互いを知らず、打ち解けていなかったからとも言えるのだけれど、やはりヒナがここに加わってこそ彼らの関係が完成したと言えるのでしょう。
それは、ヒナとカイトが一緒の時のエリザベートの緩みっぷりを見れば自明のことかと。あれだけ峻厳な生き方をしているエリザベートが、ヒナとカイトが一緒の時の何事もない日常の際には本当に気を許し切っているんですよね。許しすぎて、若干ポンコツ化するくらい。ヒナってば、あれだけカイトに尽くしながら、同時にエリザベートも甘やかし尽くしてるからなあ。ヒナが行方不明になった時のカイトとエリザベートのコンビのシッチャカメッチャカな姿を見せられると、ヒナってわりと尽くしてダメにするタイプのメイドでお嫁さんなんじゃなかろうか、と思ってしまう。
まあ、いざという時のカイトとエリザベートが求められる地獄を思えば、普段がダメ人間のポンコツになってしまうくらい緩ませて甘やかせて労り愛し尽くすのもまた十分な仕え方とも思うのだけれど。同じくらい、カイトやエリザベートの方もヒナのことを愛で尽くしているわけですし。ふたりともヒナに対しては尋常ならざる過保護っぷりだもんなあ。ヒナが居なくなった時の二人の焦り方といい心配のあまりむちゃくちゃしだす様子を見ていると、ほっこりするやら苦笑してしまうやら。
それだけ、三人が三人であることが完成していて、満たされていて、この上ない幸せの形だったのだ。遠からず、それが終わってしまうことがわかっていても、悪人は地獄に落ち、その従者が粛々とその終焉に付き従うことが決められたことだったとしても、彼らにとってこの時間は安らぎであり確かな幸福だったのだ。
望外なことに、たった三人の閉じた世界ではなく、彼らの幸せを祝福してくれるような人間関係も新に育まれていく。肉屋も、ジャンヌとイザベラも、リュートたちも、あの夢に現れた人たちはつまるところエリザベートにとっての幸せの記憶のなかに輝いている存在なのだ。
だから、エリザベートはその輝きを胸に終わることになんの後悔も未練もなかったはずなのに……。
現実は、幸福のほうが彼女を置き去りにしていってしまった。いつまでもずっとそばにいると誓ってくれた最愛のヒナとカイトの二人は、エリザベートを守るために置き去りにして近くも遠い場所に行ってしまった。
これは、この巻は、その事実をエリザベートが再び噛みしめる物語。思いと決意を新たにする物語。
掛け替えのないものが残してくれたものを、もう一度確かに胸に宿すための物語。

さいごに、この世界を憎み呪って破滅を願った聖女の、本音の先の本心が心にしみる。
本当の願いが、剥き出しにされた想いが紡ぎ出した赤子のような、赤心の言祝ぎが胸を突く。
聖女は、あの世界を呪った無残な聖女は、それでもなお、聖女たらんとしている。かつて世界を憎んで破滅させようとした者として、やるべきことを成すために。
世界という舞台から転げ落ちたはずの落伍者が、もう一度メインプレイヤーとして立ち上がる。
エリザベートの絶望で孤独な戦いに一石を投じる、これこそが希望の一手と信じたい。

シリーズ感想


それはそれとして、ジャンヌだけがひたすらラブコメ時空に生きていてなんか揺るぎないな!!

異世界拷問姫 7 ★★★★☆  



【異世界拷問姫 7】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

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いつか遠い遠い昔の御話と、呼ばれるかどうかもわからない醜悪な物語。

終焉を超えたはずの世界に、何の前触れもなく異世界からの【転生者】にして【異世界拷問姫】を名乗る禁断の存在――アリス・キャロルが現れる。
彼女は【お父様】のルイスと共にエリザベートに苛烈な選択を突きつける――
「会わせてあげる、エリザベート! この私が会わせてあげるの大事な人に!」
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る至高のダークファンタジー第七弾。
誰かの物語が終わったところで続くものはある。
かくして、新たな舞台の幕は上がる――演者達が、望むか否かに拘わらず。
もう泣く。エリザベートの抱く想いを想像するだけで、その切なさに、哀惜に、胸をかきむしられそうになる。
どれだけ、カイトとヒナに会いたいだろう。どれほど焦がれ、どれほど願い、どれほど祈っているのだろう。その上で、わかっているのだ彼女は。もう二度と、生きて彼らに逢うことはないのだということを。結晶に閉じ込められた彼らの姿を見守ることは出来ても、その声を聞くこともその肌に触れることも、もう二度と叶わないのだと。エリザベート・レ・ファニュは知っている。
あの幸せな時間はもう二度と戻ってこないのだと。
それを安易に、いや安易ではないのだろう。奴らには奴らの論理があり正義があり意義があり覚悟があり信念があり、怒りがある。
それでもなお、エリザベートにもう一度二人に逢わせてあげるなんて誘いをかけるなんて。そのために世界を裏切れなんて。
いったい、何を踏みにじっているのか、彼らは理解していないのだろうか。理解してなお、指し示しているのだろうか。いずれにしても、そう彼女の言葉を借りるならば。
「胸糞悪い!!」
これに尽きる。尽き果てる!
「穏やかで凡庸な、夢のようなひと時があった。そして、終わった――それでよいのだ」
「他でもない奴が望んだ。余を生かし、世界を守ると。ならば主たるもの決意を尊重しよう。今までの日々こそ罪人には過ぎた奇跡で幸福であった――もう戻らぬ。それでよい」

もうあの日々は帰らないと。戻らないと。終わったのだと。エリザベートの口から言わせ、それでよいのだと、言わせた奴らがどうしても許しがたい。
夢を見させろなんて言わない。言わないけれど、本人の口からそれを言わせることはないじゃないか。どれほどの想いをもって、もうよい、と口ずさんだのか。それを思うと、本当に泣けてくる。
エリザベートはカイトとヒナを本当に愛して慈しんでいたのだ。彼らと居るとき、彼女は本当に幸せだったのだ。たった一人取り残されて、眠る二人を寂しそうに見守りながら、彼女の愛は続いている。幸せは終わっても、いつまでも続く。
でも、彼女はもうたった一人なのだ。そのエリザベートの尊く誇り高い在り方を、セナカイトの世界中の痛みを背負い負の感情で打ちのめされ、それでもなお決して他者にその報いを向けることのなかった生き方を、踏みにじろうとしているのだ、彼らは。
同情に値する正当なる復讐者。彼らを弾劾できるものは、加害者たる世界には存在しないのだろう。
それでもなお、エリザベートの振るった弾劾の言葉こそが本質を貫いている。
「他者を踏み躙るために、弱者を名乗るな」

許せない。しかし嫌えない。ルイスとアリス、その在り方があまりにも悲痛で縋るような絶望に苛まれている姿が、憐れだからだろうか。あり得たかも知れない、カイトの結末の一つだったからなのか。彼らは虚無だ。感情を込めて睨みつけ見つめれば、穴に落ちるように吸い込まれていく。強い感情を抱けなくなる。

眠るカイトは、確かに世界を守り、淀んだ人の心に清涼の風を吹き込んだ。今なお、彼の存在が人を変えるきっかけとなり、世界を変えるきっかけとなり、愚かで救いがたいものを良き方へと変質させる踏切台になっている。
それでも、それでも、世界は終焉を逃れて良き方向へと進んでいるのかと言えば、決してそうとは言えないのが現実というものなのだろう。
もはや、ポイント・オブ・ノーリターンは通り過ぎた後だったのか。あ
亜人種の純血主義に秘められた悲壮とも言える祈願も、刻々と定まりつつある霊長の帰趨も、もはや個々人の意志や働きではどうにもならないところで決まりつつあるものなのかもしれない。その結果として起こり得る惨劇は、人が人である限りもう止めることは出来ないのだろうか。
エリザベートがこぼしたこらえ難い絶望の吐露が、改めて胸を突く。
リュートとアインの夫婦が迎えつつある結果は、諸手を挙げて祝福するべき幸いであるはずなのに。
微笑ましく甘やかなジャンヌとイザベラの睦言も、幸せなカップルとして何事もなく続いてくれれば、それでいいのに。
ラ・クリストフが幼き頃に抱いた夢が、万人の幼子の中で同じように輝く世界であれば、良かったのに。
獣人の姫たちの顛末が、聖人の見事なまでの最期が、あまりにも独りなエリザベートが、哀しくて切なくて、なんともたまらなく心揺さぶられる新たなる惨劇の開幕でありました。
世界は、救われてなお、未だ救われるに足らぬものなのか。
はぁ……なんかもう、ラ・クリストフが色んな意味でいい人いいキャラすぎて辛い、辛い。
つらすぎるので、亜人のお嬢さんにならって、もうジャンヌとイザベラのイチャイチャ見てひたすらキャーキャー言ってたいです、キャーキャー♪

シリーズ感想

異世界拷問姫 6 ★★★★★  

異世界拷問姫6 (MF文庫J)

【異世界拷問姫 6】 綾里けいし/鵜飼 沙樹 MF文庫J

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世界に断罪されし少女と愚鈍な従者の物語、第六弾

「今だけは俺が王だ。盲目的に、俺に従え」
かつて異世界で無意味に死んだ少年・瀬名櫂人は狂王と化した。
――たった一人の女を救うために。
神と悪魔に囚われた『拷問姫』の代理として、人間、獣人、亜人による会合を掌握した櫂人のもと、三種族合同の防衛戦線が動き始める。
だが、従兵達の各地への侵攻は繰り返されるごとに激しさを増し、凄惨な地獄と化した世界は、櫂人に残酷な選択を突きつける。
「今一度問おう―――セナ・カイトには、エリザベート・レ・ファニュを殺せるのか?」
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る今最も熱いダークファンタジー第六弾。
話をしよう。
これは恋の物語ではない。
憧れと愚行と、幸福な愛の物語だ。
多くを語るも烏滸がましい。ひとえにこれは、あらすじにある通り「憧れと愚行と、幸福な愛の物語」なのだ。
だからこそ、物語はラストシーンへと集約される。
何者でもなく無意味でしか無く、この世界においてはそもそも存在すらしなかった少年であるところの瀬名櫂人が。この世界に何の責も負も原罪も持たぬ彼が、ただその憧れを以ってして誰にも出来ない愚行を成し遂げる物語だ。だからこそ、これは愚鈍なる従者である彼の物語であり、彼とともに在るお嫁さんの、二人の物語だ。二人だけの物語なのだ。
ほかはみんな、置いていかれてしまった。彼が大好きだった者たちは、彼を好いた者たちは、みんな置いていかれてしまったのだ。伸ばした手を優しく振りほどかれて、祝福の言葉を送られて、その果て見送るしかなかったのだ。カイトとヒナが、幸せになるのを見上げるしかなかったのだ。
それは他でもない、エリザベート・レ・ファニュですら例外なく。カイトとエリザベートの二人の最後の語らいが、お互いにこの上なく本音を曝け出しあった別れが、エリザベートを優しく包み込み、突き放す。
彼女は独り。ひとり。永遠に自らの傍に居続けるであろう最愛の二人に、逢えることはない。それでもきっと、これは、セナ・カイトの物語は善き結末だったのだ。

ここで、終わるなら、ね?

確信する。
綾里けいし先生をこそが、脳内に地獄を飼っているに違いない。
ここまで! ここまで! ここまでやっておきながら。世界を破滅においやっておきながら。彼と彼女に祝福を、拷問姫に寂しい安息を、世界に救いを与えておきながら。
なおも、ここで、そう言い放つのですか!! 後書きの最後の宣言に、文字通り震え上がり、心底恐怖させられた。これほど凶悪にして最悪にして、強烈なる一文がそう簡単に顕在できようものなのか。悪鬼羅刹の所業である。恐ろしや恐ろしや、もっとやれ。
まさに、ここからこそが、「彼女」の物語に相応しい舞台。相応しい有り様。相応しい惨状!!
「異世界拷問姫」の物語の開幕である!!

あとそれはそれとして、うちのジャンヌが恋愛脳になりすぎなんですけど。どうしてこうなったww

シリーズ感想

異世界拷問姫 5 ★★★★☆   

異世界拷問姫5 (MF文庫J)

【異世界拷問姫 5】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

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もう一人の『拷問姫』ジャンヌ・ド・レに誘われ、地下墓所で世界の真実に直面した櫂人たちは、彼女が語る救世に協力することを決める。
「余の積んだ屍を犬死と嗤う者は生かしておかぬ。全て殺す。それこそ『拷問姫』の名にふさわしき方法で、だ」
「称賛しましょう。それでこそ、です。初代の『拷問姫』。自ら罪人に堕ちた女よ」
十四の悲劇で始まり終結を迎えるはずだった物語はここにきて残酷さを増し、全ての者に苛烈な選択を迫り出す――――。
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る今最も熱いダークファンタジー第五弾。悲劇を糧に進み続ける世界の中で、櫂人はエリザベートはヒナはジャンヌはイザベラは――――そして肉屋はいかなる道を選び取るのか

お……おお…おおおお。
このラストシーンよ!! ラストシーンよ!!
世界の敵となった男が、世界を統べるのか!
世界よりも一人の少女を選んだ青年が、世界を救うのか!!
狂王にして皇帝たるを、彼は掴み取りテーブルに叩きつけ踏みにじり、見下ろすのだ、見下すのだ、見回し見渡し一望して睥睨するのだ。愚鈍なる従者であった彼よりも愚かなる高貴なるものどもを、統率者どもを、その全世界の痛みを以って跪かせるのだ。

ふわぁぁぁぁ。

やばい、これはやばい。もうなんつーかやばい!!
3巻のラストの、エリザベートを死なせないために覚悟完了したカイトも格好良かったのだけれど、そういう次元を通り越してもうこれ、至った、とでも言うべきか。
無意味に生かされ無意味に殺されたなんの価値もない魂として打ち捨てられた青年が、ただ独りの少女に憧れ追い続け、その果てに彼女を追い越してついにここまで至ったか、と。
そうなんだよなあ。まだ届いていないのだけれど、ついにエリザベートと追いつ追われつが逆転したというか、ついにカイトの方から捕まえにいく、エリザベートが待っているという構図になったことこそを感慨深いと感じているのだろう、これは。
そうするために、エリザベートを救うために、エリザベートを迎えに行くために、そのためにその為だけに彼は王へと至ったのだ、と考えるならこれほど胸震わすものはないんじゃないか?

またエリザベートの方もね、ついに彼に捕まえられるのを赦した、迎えに来ることを赦して、あれを託したあのシーン。認め赦し受け入れた。あの表情を思うと、胸がいっぱいになるのです。

なんか、今回は特に胸を突かれるシーンが多かった、と今振り返ると思うのです。リュートが見つめていた、忘れてはならないと思い定めながらカイトを見つめているシーン。ジャンヌが、イザベラを思い口ずさむ幾つかのシーン。どれもが、フッと胸を突かれるような深く淡く切ない情感が込められていて、なんだか感傷的になってしまっている自分がいる。
特にジャンヌがねえ。四巻から突如あらわれた二人目の拷問姫、という立ち位置ながら、この巻におけるイザベラに対して見せるあの一途で訥々とした想いがジャンヌというイレギュラーに物凄い勢いで強烈な存在感を吹き込んでいくのです。エリザベートと対象的な白黒相反するもう一人の拷問姫、なんて分かりやすくも品のないキャラクターなんぞではなく、独自の唯一人の、エリザベートと関係なく高らかに自らを唄うジャンヌ・ド・レという生者を、威風堂々と掲げて振りかざし、ふわりと舞って見せるこの美しくも清廉な存在感。
これをして、エリザベートと並び立つに相応しいと受け入れてしまったんですよね。拷問姫が二人いて、何がおかしいものやらか。
イザベラの顛末は衝撃的ではありましたけれど、このイザベラこそがあのジャンヌという存在をここまで確立してみせたと思えば、むしろイザベラってここから躍進していくんじゃないだろうか、あれほどの有様となりはてながら、むしろここからが本番なんじゃ、と期待してしまう。ここまで見事に自分を貫ききってみせた彼女に、その先を果たさせんとする残酷にして優しい顛末は、これでもかと悪意の地獄を現出させながらも常にその中に優しい愛情を込め続ける綾里けいしという作家の作風の髄だわなあ、と深く深く感じ入るのでした。

さあ、盛り上がってきたを通り越して、極まってきましたぞクライマックス!!

シリーズ感想


幻獣調査員 2 ★★★★☆  

幻獣調査員2 (ファミ通文庫)

【幻獣調査員 2】 綾里けいし/lack ファミ通文庫

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伝説の悪竜に攫われた村娘。その御伽話にも似た事態の真相とは―。かつて海豹乙女を嫁にもらった老人。だが人と幻獣の結婚の先にあったのは…。第一種危険幻獣の中でも伝説級に該当する生物ヒュドラ。行く手を全て毒に染め、不死の体を持つヒュドラを倒すには幻獣、それも「火の王」の炎が必要だという。フェリ達は王都が保護していた“勇者”を連れて「火の王」の元に赴くことになり―。人と幻獣の関わりが生む残酷で優しい幻想幻獣譚、第二集!
あの幕間の醜い怪物と美しい女王の話にはやられたなあ。あれほどシンプルな話でありながら完全に持っていかれてしまった感がある。第7話のヒュドラの話で出てきた「あれ」になんの疑問も抱かなかったんだもの。その直前のめでたしめでたし、に本当にうまいこと意識を誘導されていただろう。まさかまさかのことであったと同時に、それが意味することにもう胸を打たれてしまって……。
運命とは斯くの如く、か。はたして、クーシュナとフェリが出会ったように、この世に使命持って生まれてくる王様たちに、与えられた使命ではなく自身の体験と意思によって選択を得るために、大事な出会いが待っているというのは運命的とも言えるし、運命の軛から解き放たれているとも言えるし、なんとも不思議な感覚である。
それにしても、フェリは前回にもましてこう、クーシュナが我が花と一途に愛するだけの魅力が増していると云いますか。一巻でももう凄い魅力的な女性であったのですけれど、ここまで来るともう聖女様ですよね。それも神秘的で近寄りがたいという類のではなく。人と幻獣の両方を護るという理想に殉じながらもしっかりと現実を直視して粘り強い対応を見せる強かさも然ることながら、なんかもう生き方が美しい。芸術品のような飾り立てて引き立つ美しさじゃなくて、自然界の野生の動物のような精悍な美しさというべきか、荒野に毅然と咲く花の如くと言うべきか。そこに女性らしい柔らかな靭やかさが備わっていて、もうフェリの一挙手一投足が凄く綺麗。ここまで来ると浮世離れした遠い存在になってしまいそうなのだけれど、ここでトローとクーシュナとの暖かな関係が効いてくるんですよね。
このホムンクルスの小さなコウモリと闇の王様と、フェリとの三人の関係。これが、彼らが遭遇する人と幻獣との様々な、悲しく楽しく滑稽だったり優しかったり残酷だったりする物語に、傍観者でも外から余計な手を入れてくる部外者でもない、ここに一つの人間と幻獣との揺るぎない関係を築いている同じ当事者として、それぞれの物語の中に飛び込み寄り添う意義を持たせているんですね。
人間と幻獣とは確かに違う生物であり、それぞれのルールの中に生きていて、そのルールそのものが行き違うこともある。時として、それが惨劇や悲劇を生むこともある。正しくは住み分けすべきものなのかもしれない。それでも、時として住み分けして生きる領分を隔て、時に最大限の配慮を交えて共に生きる道を選ぶことを導くのが、幻獣調査官、幻獣調査員の仕事なのか。その領分の判断は、同じ幻獣調査官や調査員の中でも食い違ってくる各個人のものなのだろうけれど。
その中でも、フェリは……。時として人と幻獣の間に何の区分も必要ないことを信じている。それは幻獣に家族を殺され、幻獣そのものを憎む親子に見せたあの「景色」が示していて、そして同時に彼女が七話で宣言したクーシュナを愛していること。クーシュナに愛されていること。人として幻獣としてではなく、ただフェリとして彼を愛し、クーシュナとして彼女を愛している、その事実を以って生き様を体現している。
その生き様に根ざしたフェリの在り方が、折々で見せる喜怒哀楽が、トローやクーシュナに見せる愛情が、本当にもう綺麗で、美しくて、胸をひきつけてやまないのである。
もう魅了されてしまった、と言っても過言ではないかもしれない。闇の王様クーシュナがあれだけ溺愛してしまうことに、かつてないほどに共感している。小さな騎士トローがあれほど一途に彼女に尽くしている姿に、共感を覚える。
彼女こそ、いつまでも見つめていたい花である。

1巻感想

異世界拷問姫 4 ★★★★   

異世界拷問姫4 (MF文庫J)

【異世界拷問姫 4】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

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「余が貴様を速やかに殺してやるからな」
14階級の悪魔と契約者討伐を終えたエリザベートに、『皇帝』の契約者―全人類の敵となった櫂人を討てとの命令が下される。一方、逃亡生活を続けていた櫂人とヒナの下に、予期せぬ来訪者―獣人が訪れる。「人類の敵を、賓客としてお迎えする」何者かにより同胞を虐殺された彼らは、事件解決のため櫂人に助力を求めていた。早速向かった獣人の領域で惨状を確認し―
「俺はこの犯人を知っている。―間違いなく、悪魔の仕業だ」
だが、14の悪魔は既に殺し尽くしたはずで…?
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る異世界ダークファンタジー第四弾。分かたれし二人の道が交わる時、残酷なる世界の真実が姿を現す―。
はいアウト!! アウトアウトアウトーー!! それもう服じゃないからっ! 水着ですらないからっ! 超絶十字架ファッションすぎる。これに聖別的な意味が込められてるなら、神様の趣味を疑っていまいます。神アウト!!
いやもうね、エリザベートのあのドレスも大概でしたけれど、新たなる拷問姫こと「聖女にして阿婆擦れ」たるジャンヌ・ド・レの格好と来たら作中でもかなりツッコまれてました。これ創った錬金術師たち、何考えてたんだホントにっ。エリザベートの方はあれ、彼女の趣味なんだっ、と言い切られると「あ、あ〜〜」とまあ何となく目をそらしながら頷いてしまう部分があるのですけれど、こっちのジャンヌはちょっと自分の格好意味分かってるのか怪しい気がするので、これ創った連中がわるいですね、アクですね。大丈夫か、世界護る側がそんなんで。
それにしても、ジャンヌの名前からしてまた凄まじく冒涜的というかなるほどというか、名前だけで神聖さと禁忌を体現しているかのようである。
そんな彼女の出現が、14の悪魔を殺し尽くして終わったはずの、そしてエリザベートと櫂人とヒナだけの延長戦とも言うべき顛末かと思われた物語に、新たな開幕のベルを鳴らすことになる。
そうなんですよね。ぶっちゃけこの延長戦って櫂人たちの我儘であり、エリザベートの意固地であり、絶対に許されざる者の救済であり、痴話喧嘩に収まりかねないところがあったのですけれど、これまでの戦いが全部前哨戦に過ぎなかった、というのなら話は大いに違ってくる。ってか、第二幕開始、いや真章開幕じゃないですか、これ!?
でもそれはそれとして、カイトたちに救われて、しかし置いて行かれてしまったエリザベートの落ち込みっぷりがねえ。孤高の狼であった彼女の安らぎがどこにあったのか、得られぬはずの幸福がなんであったのかが、静まり返った城に独り残ってしまったエリザベートの姿が嫌というほど物語っていたんですよね。もうらしからぬほどのへこみっぷりで。
だからこそ、騒がしく押しかけて肉食わせてくれた肉屋の存在がありがたかったのです。まだ、エリザベートがひとりじゃない。別れてしまったけれど、置いて行かれてしまったけれど、肉屋を通じてカイトたちとの時間がまだつながっているのを実感できたというか。ちゅうかなんで自分がこんなへこんでなきゃいかんのだ、何もかもがカイトが悪い、締める、甚振る、ぶっ殺すっ! ぶっ殺す前にこの憤りを晴らすためにぶん殴る、蹴っ飛ばす、踏むと激おこぷんぷん丸なエリザベート様の元気いっぱい復活がまた、良かったというか大変なことになったというか、うんうん。
そう、ほの暗い覚悟や後ろめたさ、嘆きや怨みなんかはとりあえず置いておいて、エリザベート様を怒らせたんだから殴る! というシンプルな激情が、淀みを消し飛ばしてくれたみたいで、その原動力となった肉屋は以前からの痒いところに手が届くサポートも相まって、本当にありがたい「仲間」の一人だと、そう思って疑いもしなかったのに。
まさか、そんなキーパーソンになっていたとは。
愛もある、情もある、幸せな思い出があり、絆があり、友情があり、親愛がある。彼の人と我らにはそれがあり、しかしそれらすべてを投げ打っても果たすべきものがある。
ああこれは、もっとも魅力的にして悲嘆たる敵役の在り方じゃないですか。もしかしたら、主役を食う可能性すら生まれるほどの、悪の誕生じゃないですか。
まさか、ここまで重要なキャラクターになってくるとは。
悪魔たちですら慄き冒涜的とのけぞった世界に隠されていた真実。それを元にうごめく世界壊滅の運命と、その運命に抗う者たち。そして、定められた運命に投じられた一抹のイレギュラー。拷問姫エリザベートとその従者たち。この、本当の戦いが今、はじまる、というノリはホント好き。

とりあえず、カイトとヒナのご夫婦新婚生活スタートにも、おめでとうの一言を。祝杯をあげるのと壁をぶん殴りたくなる気分を同時に味わったエリザベート様には、えらく共感させていただきました、ええそれはもうw

シリーズ感想

異世界拷問姫 3 ★★★★☆   

異世界拷問姫3 (MF文庫J)

【異世界拷問姫 3】 綾里けいし/鵜飼沙樹  MF文庫J

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激闘の末、ヴラドの旧友にして『大王』フィオーレを撃破するも、代償は大きかった。ヒナの離脱、櫂人の『皇帝』との契約、そして―王都壊滅とゴド・デオスの死亡。その報を受け、王都に向かった櫂人とエリザベートが目にしたのは、残る三体の悪魔『君主』『大君主』『王』の契約者が融合し、猛威を振るう悪夢のような惨状だった。「希望など抱くだけ無駄だ。絶望のみを信じよ―そして、それを砕くために足掻け」綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る異世界ダークファンタジーの最高峰、無限惨劇の第三弾。

強敵との戦い、この世に蔓延る悪意との戦い、という観点は既に二巻で片付いている、と見ていい。ならばこの三巻で描かれるものは何だというと……兎にも角にも納得が行くか行かんか、という話なんですよね。
エリザベートの誇り高き生き方に与えられる結末に対して、納得が行くか行かないか。
残る三体の悪魔の討伐を終えれば、エリザベートの火刑は粛々と執り行われることになる。融合した悪魔三大との戦いは、そのまま彼女の処刑へのカウントダウンとなっているわけだ。
そんな自分を殺すに至る戦いを彼女は忌避せず、意気揚々と参陣する。エリザベートを憎み恨み忌避する視線を、正しいものとして真っ向から受け止めながら、そんな自分に殺意を滾らす騎士や恐怖の視線で見つめてくる市民たちを、身を挺して守り助け救っていく。
『皇帝』と契約してしまったカイトを、罵倒しながらも何くれと無く気遣い、心配し、その危うい未来を過たないように何度も何度も口うるさく釘を刺すエリザベート。口こそ悪いものの、彼女の言葉には常に優しさが宿っていて、その辛辣な口ぶりには親愛が篭っている。そこに込められている願いは、カイトとヒナの未来を案じるものばかり。二人の行く末の幸せを願うものばかり。
その誇り高く、情愛に溢れた姿のどこに、無残に処刑されて幕を引く結末を納得できる要素があるものか。
カイトが誘い出した廃墟と化した王都の中でのデートで垣間見えた彼女の年相応の可愛らしい素顔。そして、彼女によって助けられた市民たちの感謝の言葉に戸惑い、混乱する、好意を向けられ慣れていないエリザベートのあまりにも初心で拙い心の在りようは、カイトのもどかしさを募らせていく。
誰もが絶望を抱くあまりに残酷な光景を、激烈なまでに打ち砕いていく拷問姫の勇姿、いやその誇り高い在り方を目の当たりにして、正しい結末に疑問をいだき、納得行かない思いを抱くのはそばにいるカイトだけではなく、守られた騎士や民の中にも生じてくるんですね。
果たして、拷問姫の罪はどれほど善行を重ねようと濯がれず報われず、最後に火刑に処せられるその結末が、本当に正しいのか、という疑問が。
正しいのである。それは、どう足掻いても正しいのである。
でも、正しいからと言って、すべての人に納得がいくものじゃあないのだ。かと言って、彼女が許されてしまえば、かつて彼女の犯した罪によって苦しみ絶望しながら死に絶えた人々の思いはどうなるのか。彼女の犠牲者の係累や近しい者たちの怒りはどうなるのか。
納得は、結局どうやったって皆が皆、全員が同じように出来るものではない。
それでも、拷問姫エリザベートがそう選ぶのなら。本心から願うのなら。心の底から望むのであれば、カイトはそれを受け入れていただろう。自分の心を押し殺して、自分の英雄が選んだ最期を受け入れただろう。

でも、心の鎧も建前も罪の意識も何もかもを脱ぎ捨てて、そのむき出しになった幼い心が漏らした本音は、悪魔の精神攻撃によって剥き出しになってしまった本当の願いは……。
愚か者が愚かに徹するを決断するに、余りあるものだった。
今回の戦いが何のためにあったかというのなら、これまで決して見せることがなかったエリザベートの心の奥底を、剥き出しにしてしまうことその一点であったのだ、と断言できるほどに、彼女が漏らしてしまった想いはあまりにもあまりにも、せつなすぎた。
あれほどにエリザベートの事を愛し、あれほどにエリザベートに愛されて、それでなお無視できるほど、カイトも、ヒナも、彼女の心の中を知ってしまって無視できるはずがないのである。
お陰様で、誰よりもエリザベートが納得行かねえ、となる結末になってしまったわけだけれど、当の怒り心頭怒髪天なエリザベートにぶっ殺されることなく、どうやってこれケリをつけるのか、色んな意味でこの後の展開は見ものである。ほんとにどうするんだ、これ。
今回、マジで完結するものとばかり思って読み出していたので、想像以上に怒涛の展開でした。場合にとってはこの巻ではもう登場しないかな、と思っていたヒナが復活参戦したことで、余計に完結か、という雰囲気になってましたしねえ……いや、そうでもないか。決戦に挑んだ時点で既にカイトがもう不穏な雰囲気出しまくってたし、ここで終わらなさそうな流れになってたからなあ。

今回はエリザベート自身が覚悟完了してしまっていたせいか、普段よりも隙だらけで根っこの優しいところ、照れ屋なところ、可愛らしいところ、女の子らしいところをポロポロとこぼしまくっていて、やだなにこのヒロイン、と思ってしまうくらいにカイトに対しても油断しっぱなしだったんですよね。前までのエリザベートなら、デートなんて絶対に受け入れんかったでしょうに。カイトに対してもあれだけ優しい言葉ばかり掛けてしまって、最期だからと油断し過ぎである。お陰で、バカがバカな覚悟決めちゃったじゃないですか。エリザベートの自業自得である。ヒロインとして隙見せすぎた結果である。
カイトにはヒナが居ればいい、とも思ってたんでしょうけれど、残念ながらヒナはヒナであれだけカイト至上主義にも関わらず、同じくらいエリザベートの事も大好きという狂信的自動人形のくせに浮気者ですからなあ、愛との決断を喜びこそスレ邪魔などするはずもなく。
エリザベート、見通し甘すぎなのである。
今回もヒナのテンションマックス状態が見れて、花嫁満足度も充填出来ましたし、ここから何とかハッピーエンドまで持ってけないでしょうかねえ。

シリーズ感想





異世界拷問姫 2 ★★★★☆   

異世界拷問姫2 (MF文庫J)

【異世界拷問姫 2】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

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「ヒナ―――俺のために死んでくれるか?」
破滅に向かう反英雄譚、第二弾!

最上位の悪魔『皇帝』とその契約者ヴラドを討ち果たすも残る敵は多い。今後の戦いに備え、櫂人は魔術を習い始める。その後『総裁』をも倒すが――それは罠だった。ヴラドの旧友にして『大王』フィオーレが同胞悪魔の心臓を生贄にし、エリザベートの悪魔の力は封じられてしまう。
「遊びは終わり、お姫様―――さぁ、大人の時間を始めましょう」
拷問姫が倒れし好機に悪魔たちの攻勢が始まり――?
「さぁ、お相手しよう、『悪魔』達! 我が名はヒナ! 愛しき櫂人様の永遠の恋人であり、伴侶であり、兵士であり、武器であり、愛玩具であり、性具であり――――花嫁だ!」
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る異世界ダークファンタジーの最高峰、白姫血染の第二弾。

もう表紙からして花嫁無双。無垢なる純白を血と臓物の赤に染めて乱舞する花嫁人形。ほんと、この物語で描かれる絵面と来たら、なんて悪趣味で……美しい。
作者の綾里けいしという人は、本当に何というか「愚者」の愚かの描き方に毎度胸をかきむしらされる。愚か愚か愚かとしかこぼせないのに、その愚かな有り様が、愚直な在り方が愛おしくて仕方ない。慈しまざるを得ない。自ら選んで、地獄を征くものたち。もっとささやかで幸せな人生を得られただろうに、それに背を向けて悪夢と寄り添うものたち。それが破滅へと行き着く道だと理解しながら、蕭々と進んでいくモノたち。
そんな子たちだからこそ、破滅へと至るまでの僅かな平穏、笑い合う時間が涙が出そうなほど愛おしいのだ。
カイトもまた、ただ拷問姫の末路を見届けるだけでは気がすまず、同じ煉獄へと身を落とすことを選んでしまった。その最期の道連れとなることを選んでしまった。その破滅の選択は、だけれどあまりにも純真な思いから発露していて、同じく人形として無垢なる想いを結晶のように昇華させていくヒナと並んで、穢れない眩しさに塗れているのだ。
あれほどの地獄を体験して、呪われし人生を歩んで、絶望と苦痛の粋を魂に刻まれながら、この少年はどうして邪悪に堕ちずにいられたのだろう。それもまた、拷問姫に魂を救われたからなのか。
大罪人として贖罪たる悪魔たちの討伐を終えれば、火刑に処せられることが決まっている拷問姫。彼女は正しく邪悪と世界に認知されている。その罪の是非はこの物語では問われていないんですよね。どんな理由があろうと、彼女が犯した虐殺は事実であり、そこから生まれた罪と怨嗟は決して否定も覆されるものでもない。彼女に向けられる憎悪も憤怒も正しいものであり、その贖罪たる悪魔の討伐もまた、彼女に何一つ報いをもたらさない。
彼女は悪しき、それは間違いないんですよね。それは前提として、でもそれを個々人の心の中まで強制される謂れはないのである。彼女に殺されたものたちにとって、その縁者たちにとって、世間にとって拷問姫エリザベートが邪悪で呪わしくおぞましい殺人狂であっても、カイトとヒナにとってはエリザベートはまた違う存在なのである。事実は事実として受け止めながら、その上で彼らがエリザベートをどんな風に想うか、その心の中は犯すべからざる領域なのだ。
想うことは、何者にも束縛も強制も受けざる、自由であるべきなのだ。
それこそが、魂の自由なのである。
その大悟へと至ったカイトの飛躍は、見ていて震えるものがありました。ブラドの残影と、そして皇帝と五分に渡り合えるようになったのも、彼の中にその指針が根を張り芯を得たからではないでしょうか。その瞬間、彼はブラドの意図とはまた全く違う方向に向かって、ブラドの後継としての在り様を手に入れたのである。
そうすることによって、ヒナとカイトの花嫁と花婿という関係の中にあったモヤモヤとした霧も晴れ、エリザベートという主と連れ添うカイトとヒナ、この三人の不動の関係も完成したようにすら思うのです。
自分、こういう破滅という結末を受け入れた上でその最期の瞬間まで堂々と共に歩むことを選んだ関係って、たまらなく好きなんですよねえ。
そして、あの、将校姿のカイトのシーン、震えるほどかっこよかった。
人形であるヒナとの関係、一巻ではいきなり起動からあんな感じだったんで、ヒナの想いに嘘くさいと言わないまでも人工の与えられたモノとしての気配を感じてしまっていたんだけれど、それも今回うまく解消されてましたしねえ。人工的に植え付けられたものではない、ヒナという存在の生の想い。それを実感させられたからこそ、あの花嫁無双のシーンも映えるわけで。
そんで、力を使い果たしたヒナに、エリザベートとカイトがもうなりふり構わず駆け寄ってくシーンがたまらなく好きなんですよね、あれ。カイト命のヤンデレ入ってるようなヒナだけれど、実は同じくらいエリザベートのことも大好きで、エリザベートの方もあんな風に慌てふためくくらいにヒナのことが大好きで、と悪魔討伐の地獄行の途中という余計な事情やら何やらを全部取っ払ったこの三人の関係を、あのシーンは全部表していたように思えたので。
俄然、盛り上がってきたなあ。
シリーズとしては次が最終巻っぽいけれど、この三人には救いは無くても、せめて幸いなる破滅が訪れんことを願うばかりである。

1巻感想

魔獣調教師ツカイ・J・マクラウドの事件録 獣の王はかく語りき ★★★☆  

魔獣調教師ツカイ・J・マクラウドの事件録 獣の王はかく語りき (Novel 0)

【魔獣調教師ツカイ・J・マクラウドの事件録 獣の王はかく語りき】 綾里けいし/鵜飼沙樹 Novel0

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「魔獣には人を狂わせる力がある」
“魔獣"――その身体に“人"に酷似した部分を持つ獣が存在する世界。
人々が鑑賞・性愛の目的で雌型の魔獣を嗜好、盲愛して狂気に堕ち、世間には様々な事件が充ち満ちていた。

帝都最高の魔獣調教師『絢爛なる万華鏡』ゴヴァン卿の不可解な死とともに彼の全てを継承した青年――ツカイ。
とある【魔獣愛好倶楽部】でツカイの友人となった上代ウヅキは、帝都最高峰の魔獣調教師【獣の王】として
名声を高めていく彼に纏わる魔獣絡みの事件に遭遇していき……やがてその地位に関する陰惨な真実に触れることとなる。

「運命の敵も、親愛なる友も、私にとっては同じことだ」

人間の業と罪過が妖華絢爛に綴られる、至高の王の残酷なる事件録。
なんという邪悪。いや、邪な悪というにはこの男の悪性は低俗足り得ない。まさしく、王の悪というべき純粋悪なのか。
獣の王と呼ばれる魔獣調教師ツカイ・J・マクラウド。平然と人を殺し、人を陥れ、人を地獄へと突き落としていく彼の所業には、一欠片の正義もなくただただ悪を成しているのだけれど、彼によって魔獣の贄となっていく人たちもまた、醜い獣欲の虜であり人足り得ない奴隷と化したケモノたちでもあるんですよね。その意味では、獣の王が罪深いケモノたちに下す断罪とも思えるのだけれど……いや、罪を裁くなんて高尚さや正当性はそこにはなく、ただただケモノたちの歩むべき当然の末路を演出しているだけ、なのかもしれない。
その当のツカイですら、汚泥のようなケモノたちの有り様を高みから見下ろして嘲笑っているようで、彼の真実が明らかになるに連れて、彼自身がもっともその汚泥の奥底で息絶えているからこそ獣の王として君臨しているのだと、語られることになる。
悪たる獣の王は、だからこそ自らの悪逆の鏡写しであるケモノたちの所業から目を背けず、深淵を覗き込み続けているのだ。その醜さをあざ笑うことで、自らの絶望に耽溺している。魔獣たちの奴隷ではなく王として君臨するツカイだけれど、彼もまたある魔獣の奴隷として運命に縛られているのかもしれない。他者を嗤うことで、自らをも嗤っているのだ、彼は。
だからこそ、彼が求めているのは自分を討ち果たす運命の敵なのだ。これほどに、彼が「運命の敵も、親愛なる友も、私にとっては同じことだ」と真摯に語るその真意には、哀れみすら覚えてしまう。そして、その言葉を真っ向から受け止め、その言葉を心から送れる相手が出来たことに、祝福の念を抱いてしまうのだ。
正直、頭のおかしさという意味ではツカイよりも、好奇心という魔性に魂の髄までオカし尽くされ、おっかなびっくりながら毎度危険の中に自ら飛び込んでいく上代ウヅキの方が、色んな意味でイカレ狂っている気もするのだけれど、そんな彼だからこそ最も自由であり誰の奴隷でもなく、人間足りえる男なのだろう。彼は彼で好奇心の奴隷、になっている気もするのだけれど。
それでも、ウヅキはツカイに友情を感じるがこそ、彼の敵として立つことを決意する。なんとも不思議で得心の行く、敵意と友情に満ちた二人の関係がこの気色の悪い世界観の中で安らぎのようなものを与えてくれる。
グロテスクでえげつない悪に満ちた、しかし異形の中に人らしい感情が芯のように備わった酩酊感を与えてくれる物語でありました。

綾里けいし作品感想

幻獣調査員 ★★★★   

幻獣調査員 (ファミ通文庫)

【幻獣調査員】  綾里けいし/lack ファミ通文庫

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村を襲うも人は殺さない飛竜の真意とは。老人の巻きこまれた妖精猫の裁判の行方は。
鋭い吠え声が響く村で娘達を食らう獣の正体とは――。独自の生態と超自然の力を持つ生き物、幻獣。
謎多き存在である彼らと人の衝突が増えたため、国家は幻獣を調査し、時には駆除をする専門家を定めた。そのひとりである調査員のフェリは「人と幻獣の共存」を胸に、世界で唯一の幻獣書を完成させるため旅を続けている。
これは、人と幻獣の関わりが生む、残酷で優しい幻想幻獣譚。
ねこー、ねこー! 短編連作形式なのですけれど、掌編とも言ってもいいだろうネコネコ大裁判編がもう好きすぎて。ほわー。
綾里けいしさんというと、代表作の【B.A.D.】に代表されるように物理的なグロさと精神的なグロさをハイブリッドしたようなホラーの印象が強いのですけれど、決してそれ一辺倒ではなく透き通るような純愛だったりライトでポップな明るい話だったり、切なくも美しい御伽話だったり、ドタバタコメディみたいな話だったり、何気に何でも書ける作家さんなんですよね。それも、どの分野もエッジがきいていて心に訴えかける力強さが在る。
この短編集は、そんな綾里さんの作風の広さを堪能させてくれる、見事なくらいにいろんなタイプの話が詰まっているのです。
なかでも【妖精猫の裁判】は、このはにゃーとなりそうなフェリ猫の可愛らしさは特筆に値すべきもので、いやもうこれ反則だろ!!

この主人公のフェリという娘さんがまた面白い子で、イラストの神秘的な風貌や白いヴェールを被った姿からも、なんとも厳かで重々しい女性なのかと思ったら、バイタリティがあるというかいい意味で図々しいというか、なかなかのタフネスガールなんですよね。面白い子なんだわー。
そして、強い娘でもある。
意志の強さ、幻獣にも人間にも偏らない公平性と、どちらも心から慈しみ愛する心を揺るがさない不屈さ、そしてわりとズケズケと相手の領分に踏み込む図々しさと、それを許してしまう愛嬌。
それらは、人外の存在である、それこそ魔王とも言うべき破壊のために生まれた黒い影クーシュナをして、心奪われてしまうほどに、魅力的な魂の輝きなのである。
そうだよなあ、これもまた怪物と人間のラブストーリーとも言えるんだよなあ。
でも、この本の話を通してみると、幻獣だ人間だ動物だ、という存在の差異に対して、心の在りようの差異はそれほど異なるものではないのですよね。
大事な巫女のために傷つき哀しみのたうち回る飛竜の姿に、想えど想えど離れていく男たちの背にすがることも出来ずに自分ではもぎ取ることの出来ない林檎を胸に抱くマーメイド。
大事な人を奪われた怒りに、憎悪に身を焦がして復讐に身も心も焼きつくす老犬に。
身勝手に利用され、騙されて、しかしそれでも人して罪の裁きを受けようと思いながら、幻獣として討たれることを人としての選択で受け入れた一人のライカンスロープ。
そして、衝撃のラストエピソードで語られた、少女の「人間であり続ける」物語。あの小さき勇者トローの、友のために命を焼きつくす訴えが、その高潔なありようが胸を打ってやみません。
こうしてみると、フェリの物語である以上にこれってクーシュナの物語なんですよね。魔の王様が人を知り、世界を知り、友情を知り、哀しみを知り、絶望を知り、そして愛を知るとてもとても切なくも甘やかなロマンティックなお話なのです。
本作はこれ一冊だけの予定みたいですけれど、フェリとクーシュナとトローの三人の旅の御伽話、これで終わるにはもったいなさすぎる心揺さぶられる作品でした。
ねこー、ねこー。

綾里けいし作品感想

異世界拷問姫 ★★★★   

異世界拷問姫 (MF文庫J)

【異世界拷問姫】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

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「我が名は『拷問姫』エリザベート・レ・ファニュ。誇り高き狼にして卑しき牝豚である」
死後、異世界転生した瀬名櫂人の前に現れたのは絶世の美少女・エリザベート。彼女は『拷問姫』を名乗り、従者として自分に仕えるよう櫂人に命じるが――「断る」即答する櫂人にエリザベートは『拷問』か『執事』かの二択を突き付ける。あえなく陥落した櫂人はエリザベートの身の回りの世話をすることになり、咎人たる『拷問姫』の使命――14階級の悪魔とその契約者の討伐に付き合わされることになるが……!? 「あぁ、そうだ。余は狼のように孤独に、牝豚のように哀れに死ぬ。たった一人でだ」綾里けいし×鵜飼沙樹! 最強タッグが放つ異世界ダークファンタジーの最高峰!

これは異世界違う! 異界や!!
いやまじで、異世界観が他と違いすぎる。それよりも、綾里けいし作品で度々邂逅することになる「異界」と呼んだ方がよっぽどしっくりとくる世界であるこれ。
なにより、作中における内臓率が高すぎる。腸率が高すぎる。残虐劇(グランギニョル)たる作品は決して珍しくはないけれど、それはどちらかというと鮮血の血塗れ的なそれで、そう血の赤なのである。液体としての赤なのである。鮮烈な赤なのである。
それに対して、本作ときたら敷き詰められるように内臓の赤。壁に手を付けばブニョブニョと腸のような感触で、天井からは腐肉がポタポタと肉汁を垂らしてきそうな、そんな四方が人間を解体して引きずりだした中身で組み立てられたような世界なのである。
だから言う。これは異世界違う! 異界や!!

そんな気が狂いそうな世界に、呼びだされた少年瀬名櫂人。彼が死んだ理由はトラックに轢かれたなんて優しいものではなく、肉親である父親に虐待され、踏み躙られ、人として扱われずゴミとして甚振り尽くされたあとに、無造作に放り捨てるようにして踏み潰される、というその生に喜びもなく尊厳もなく誇りもなく、何もないまま殺された無残極まる死であった。故にこそ、何もなかったからこそ彼は罪なき無垢な魂として呼び出され、人形の体に取り憑かされる。
死んだあとに呼び出された世界が、こんなおぞましくグロテスクで死臭しかしない世界だなんて、普通に地獄におちたと勘違いしても不思議ではないだろう。
ところが、そこで彼を呼び出した自らを拷問姫、誇り高き狼にして卑しき雌豚であると名乗る少女に、彼は魅了されていく。その生き様、その死に様に惹かれていった、と言っていいのかもしれない。
自らの領地の領民たちを拷問によってすべて責め殺し、根絶やしにしたという人類最悪の乙女。世界に潜む十四の悪魔をことごとく殺戮した末に、自らも火刑に処せられて死ぬことを高らかに謳う少女。
たった一人で死ぬことを、心から望む姫。
そんな彼女の戦いと、その果てに待つだろう孤独な死を、最後まで見届けようと思い定めた少年の心はいったいどんなものなんだろう。虐げられ続けた側である少年が、一時駆られた魂を燃焼させるような復讐心を休めてなお、彼女を最後まで見届けようと思った心の置き所はどこなのだろう。
ヒナ、という全肯定者に救われた部分もあるのだろう。凄惨すぎるこの異世界での経験が、かつての前世の恐怖を結果として拭い去ってくれた、どれほどつまらない事だったのかに気付かされたというのもあるのだろう。
それでも、この無垢で歪んだ櫂人という子の魂を捉えて離さなくなったのは、拷問姫その人なのだ。
彼女は微塵も救われることを望んでいない。そして、今のところ彼もまた彼女を救おうとは思っていない。ただ、見届けるのみだ。
彼女の生き様は、贖罪のそれなのか。それとも犠牲を糧にした救済なのか。いずれにしても、人は拷問によって与えられる苦痛の凄まじさを知らないと同時に、欠片も望まぬ拷問を、何の罪もないと知っている無辜の民に掛けて責殺す側の苦しみも知らない。
この物語に、通り一遍のハッピーエンドは訪れないかもしれない。拷問姫は、彼女の望むとおりに救われないまま焼き殺されるのだろう。それでも、孤独に、哀れに死ぬことだけは、ないと信じたい。それぐらいは、願いたい。

綾里けいし作品感想

ヴィランズテイル 有坂有哉と食べられたがりの白咲初姫4   

ヴィランズテイル 有坂有哉と食べられたがりの白咲初姫 (ファミ通文庫)

【ヴィランズテイル 有坂有哉と食べられたがりの白咲初姫】 綾里けいし/リラル ファミ通文庫

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「私を、食べて欲しいんです」怪物の安寧を壊したのは“食糧”志願の少女だった――。

食糧と書かれた宅配便に入っていたのは『淑女』と名高い同級生、白咲初姫だった。姉を殺し内臓を食べた人物に自分も食べて欲しいという。彼女は『有坂家【モンスターファミリー】』次男である俺、有坂有哉が犯人だと言い、自分を食べろと居座り始めた。折しも俺は兄妹の部屋から誰かの内臓と手首を見つけてしまい……。それでも俺は家族を推定無罪とし、平穏を守るべく、初姫が納得する別の犯人探しに乗り出すが――。青春を生き抜く悪役たち【ヴィランズ】の学園ミステリアス・エンタテイメント!
これは見事にミスリードされたじゃありませんか。有坂家の面々の異常性って、最初なんかキャラ作っているみたいな浮いた滑稽さを感じていたんだけれど、有坂家にまつわる真相が明らかにされてから彼らの言動を振り返ると、途端にぞっとするほどの生々しさを鼻面に突きつけられる。彼らがそうであることに、迫真を感じてしまったのである。その、なんとおぞましいことか。納得、得心、腑に落ちる、本来そんなもの、感じてはいけない領域に至っているのに。
これが怪異譚だったなら、異能ものだったり、伝奇ものだったりしたならむしろ救いがあったのかもしれない。「早く人間になりたい」という願望は、人間でないからこそ願えるのだ。ならば人間でありながら人間になれなかった者は。人間にしてもらえなかったものは、どうやって人間になればいいのだろう。
真っ暗な闇を覗いてみたつもりが、そこにあったのは闇どころではない底なしの深淵だったなんて、笑い話にもなりゃしない。滑稽を通り越して凄絶ですらある。主人公の有哉が殊更脳天気に、楽天的に、享楽的に、どんなグロテスクな事柄も浅薄に、冗談交じりに、茶化すように語る姿は、最初は随分と安っぽくみえたものだったけれど、今にして思えば必死さすらうかがい知れる。ともすれば切れ落ちそうな均衡を、辛うじてそうやって保っているような、そうでもしなければ容易に脆く割れ砕けてしまいそうな、危うい瀬戸際を綱わたっているような、そんな気すらしてくるほどだ。
だからこそ、そんなヒビ割れたガラスみたいなところに、釘バットをブンブン振り回しながらスキップして突っ込んでくるような初姫のアプローチは、今にして思うと無茶苦茶で、どれだけ有哉が肝を冷やしたか寒気がしてくるほどである。でも、面白いことにそんなずかずかと踏み込んできた初姫の遠慮のなさ、傍若さこそが有哉の冷えた肝を、逆に据わらせたと言えるのかもしれない。危機感こそが、尚更に彼に覚悟を決めさせたのかもしれない。愛していても信頼出来ない家族の中で、自分を含めて誰も信じられない中で、そんな彼女だけが信じられたのか。初めて、信じる人が出来たのか。悪役でしかない自分たちに、人間の中に居場所のない自分に、初めて安らぐ場所を与えてくれた人。
何の事はない、これもまた、これほどにグロテスクで人間のもっともおぞましい部分をさらけ出す物語でありながら、異常にして異端にして破綻して既に破滅した怪物たちの末路でありながら、
眩しいくらいに綺麗なピュアラブストーリーなのだ。
底なしの深淵に首まで浸かった救われようのない悪役たちの話でありながら、彼らが幸せを求めて良い物語なのだ。
さあ、目指すは極々平凡な日常のごときハッピーエンドだ。

綾里けいし作品感想

B.A.D.チョコレートデイズ 44   

B.A.D.チョコレートデイズ(4) (ファミ通文庫)

【B.A.D.チョコレートデイズ 4】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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「人間は、さ。わけわかんねぇ方向から、なんでっていうことで、無理やり救われちまうことがある」
蟲の怪異に怯える私に名も知らぬ金髪の人はそう言った。そして古書店で働く霊能探偵を紹介してくれたのだが――『B.A.D. AFTER STORY』。
狐との決戦後、白雪は未だ小田桐と再会できずにいた。
一族の掟と自らの恋心に悩む彼女の前に婚約者を名乗る男が現れ……『恋しき人を思うということ』
他3編を収録したチョコレートデイズ・セレクション第4弾!
『小田桐は今日も理不尽と戦う』『七海は幽霊を信じない』
毎度の如く怪異に巻き込まれ、肉体的にも精神的にもひどい目にあってきた小田桐くんだけれど、それは大概にして自業自得、起こってしまった事に対して自分から余計な首を突っ込むからで、決して繭さんの事務所で働いているから、という訳ではありませんでした。そりゃあ、繭さんのところに来た依頼にひっついていくから巻き込まれるわけですけれど、その時に余計な事をしなければそれほど酷い目に合わなくても済むケースも多かったですしね。そもそも、彼が繭さんの側に居なくてはいけなくなったのも、何だかんだと彼本人のせいという部分が大きかったわけですし。
とはいえ、何もかもが彼の自業自得というわけじゃあありません。実は彼が余計な被害を被るのは、繭さんじゃなくてとある人物が巧妙に厄介事を押し付けてくるから、という場合も少なくなかったのです。そう、大家代理の小学生七瀬七海の暗躍であります。この短篇集にも二編、彼女によって怪異の解決を押し付けられてしまった小田桐くんの苦闘が描かれております。小田桐くん、その人の良さもあってか自分が七海に厄介事をおしつけられた、という認識が全くないのも哀れなのですが。
この七海ちゃん、自称小学生で実際小学生にも通っている自他共認める小学生なのですけれど、小学生離れした得体のしれない、不気味なところが散見されてある意味繭さんよりも謎な子だったんですよね。あまりにも賢すぎる上に、賢さの方向性がどこか仄暗くて魔女めいたところがあったのです。
長らく、本当の大家である彼女の祖母は、実はとっくに死んでいて七海がそれを隠しているんじゃないか、という疑惑がつきまとっていましたしね。今回、ようやく大家の生存が確認されて、疑いが払拭されたのですけれど。
彼女が本当にいい子だということは、綾とのエピソードでちゃんとわかっていますし、彼女なりに小田桐くんをちゃんと慕っているのも理解しているのですけれど、小田桐くんを巧妙に利用するあのこなれた手腕は彼女が大人になった時が恐ろしくなってきます。あれで、決して他者を利用することを楽しんでいる訳でもなさそうなんですけどね。なんか息をするようにやってるあたりが、ヤバいなあ。

『愛しき人を、思うということ』
白雪さんが、小田桐くんへの愛を貫き通す決意を固めるエピソード。当の小田桐はあの白雪さんに出した酷い手紙以外は登場せず、水無瀬家本邸で話の一切が纏まってしまうあたりに、小田桐という青年の残念さが詰まっているような気がしないでもない。
小田桐くんを愛してしまいながら、白雪さんにはどこか儚げで叶わぬ想いを抱えながら遠くから見つめ続けるような印象が強かっただけに、一度離れて小田桐くんが手紙を送ったあとに再登場したあとの、あの不退転の決意で破滅の道をひた走る小田桐くんの体にしがみついて留めようとする白雪さんの、あの強い意思、断固とした想いにはちょっと圧倒され、驚いたものです。結局、最後まで小田桐くんを救い続け支え続け自分を放棄するのを許さなかったのは白雪さんで、彼女が居なかったらまずこの物語は文句なしのBADエンドだったのでしょう。離れている間に一体彼女に何があったのか、それを物語るのがこのエピソードだったわけですな。
最愛の兄との決別への気持ちの整理、水無瀬家の当主としての責任、それらもろもろに決着をつけて女として一回りも二回りも大きく強くなったお話に、肝心の小田桐くんが直接何も関わらず、白雪さんが一人で乗り越えたというあたりに、最初に書いたように小田桐くん……(苦笑)な気持ちが湧いてきてしまいます。
もちろん、白雪さんの中に小田桐くんへの想い、という捨てられず揺らす事の出来なかった支えがあったからこそ、なんですけれど……でも、この時小田桐くん、白雪さんフッてるんだもんなあ。フラれた事で余計に奮起した白雪さんには感心せざるを得ないです。


『繭墨は今日も僕の隣で微笑む』
時系列としては、繭墨と小田桐くんが一緒に過ごすようになってからまもなく、初期のエピソードにあたるのか。
原点に帰るような、人間の残酷さと醜悪さがこれでもかと詰め込まれたグロテスクな惨劇であり、尤も繭墨が好むお話でありました。案の定、小田桐は巻き込まれ、繭墨は何もせずに惨劇を鑑賞するばかり。誰も救うこと無く、しかし事態はしっかり解決に持ち込む繭さんは、確かに悪趣味なのだろうけれど、彼女は決して状況を悪化させようとはしていないし、ちゃんと自分は誰も救わないと明言して、確認して、念を押してるんですよね。決して理不尽ではないのです。
それでも、この頃の小田桐くんは中々彼女の邪悪な誠実さを飲み込めずに、怒り苦しんでいる。自分がかなり巻き込まれ酷い目にあっているから、というのもあるんだろうけれど。
この頃の様子を思うと、最後のあたりは小田桐くん、随分繭墨に歩み寄り、彼女を理解してるんだよなあ。

『B.A.D. AFTER STORY』
理解しその在り方を受け入れることが出来ても、ずっと一緒に居られるわけではない。本編のあの終わり方からして、繭墨の事務所を辞めた小田桐くんはそのまま繭さんとは縁が切れてもう二人は逢う事もなくなってしまっているのだろうと思っていた。
だから、何だかんだと普通の友人のように、折があえばちゃんと会っているというのが分かって、なんだかホッとしてしまった。良かった、良かった。
本当に、芯からバッドじゃないエンディングだったんだなあ。
後日談であります。果たしてあの後、みんながどのように過ごしているのか、というのが異能に目覚めてしまった一人の少女の目線を通して描かれるのがこのエピソード。
繭墨の事務所を辞めた小田桐くんが、一体どうしたのかは一番気になるところだったんですよね。無職ですよ、無職。その経歴からもまともな職にはつけるはずもないし、これはもう白雪さんに養われるしかないよなあ、と思っていたのですが、何と自立していました。薄給だし繭さんのところに勝るとも劣らずな変な本屋だけれど、ちゃんと就職できたのか……おまけに霊能探偵なんて続けてるとかw
本人は霊能探偵なんかじゃない、と言い張ってますが。実際、雨香もいなくなって当人には何の力も無いですけれど、見える目はちょっと残ってるみたいですし、何より人脈が凄い。繭さんともまだ連絡取り合っているし、舞姫のところにもコネがある。そして、何より白雪さんの水無瀬との繋がり。小田桐くん当人も何だかどっしりとして頼りがいが生まれちゃって、これも嫁さん貰ったからかねえ。まだ、正式には結婚してないみたいですけれど。幸仁がラスボスとして立ちふさがってるみたいですけれど。リアル『神』の試練(笑
でもこの野郎、ドヤ顔で俺の嫁、とか白雪さんの写真掲げてのたまってるあたり、本当にこの野郎め、爆発しろ! あの雄介が辟易とするほどですから相当です。その様子を見てる七海さんがガチで怖いです。まあ雄介もなんだかあの後輩ちゃんとよろしくやっているようですし、舞姫と久々津もあのまま幸せそうで、あさとですらもフラフラとしょっちゅう旅に出て根無し草ですが、あの『猫」と一緒で……。
しっかりと、これ以上無くしっかりと、皆のその後が、不幸も悲劇も惨劇もないその後が描かれて、安心しました。ちらりと語られた、目撃された雨香の様子も……。彼女も、もうひとりの繭墨も決して不幸ではなさそうで。あとはもう一度、あの父娘が再会出来たらいいのになあ、と願うばかり。でも、いつか叶う気がします。いつか、いつか……。

これにて、【B.A.D. Beyond Another Darkness】は終幕。
本当に、素晴らしいシリーズでした。良き物語との出会いに感謝を。

シリーズ感想

アリストクライシ 3.with you4   

アリストクライシIII with you (ファミ通文庫)

【アリストクライシ 3.with you】 綾里けいし/るろお ファミ通文庫

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辛くはないのか、寂しくないのか――人にも化け物にもなれなくて。

大都市ロミニアでは祭のような喧騒の裏で、少女ばかりを狙う連続殺人鬼「吸血鬼」の噂が流れていた。
エリーゼとグランはそこに『穴蔵の悪魔』の影を見、正体を探るも自分達が「吸血鬼」とされ投獄されてしまった!
脱獄を考える二人の前に現れたのは、義賊を名乗る少女達。
「吸血鬼」討伐で利害の一致したエリーゼは、しばし少女義賊に身を寄せるのだが、この出会いが彼女に絶望をもたらすものとなり――。
儚く哀しい化け物達のダーク・ファンタジー終幕!
打ち切りかぁ。売上の問題と言われると、どうしようもないですもんね。とりあえずは3巻まで続いて、一つの格好をつけられた分、作品としては良かったのですが。というか、あとがきで書かれているほど有耶無耶な感じではなかったですよ。確かに様々な問題や因縁については決着つかずじまいでしたけれど、これがどこまでもエリーゼとグランの二人の物語であったと考えるのなら、何が一番大切なのか、についての結論が出たことで、穏やかな気持ちで幕引きを受け入れられました。たとえこの後、どのような変遷を辿ろうとも、エリーゼとグランがあの気持ちをちゃんと抱いていけるのなら……それこそ悲劇に終わろうと納得出来そうな気がしますから。尤も、この作者の綾里さんは、悲劇と無残と残酷を嗜みながらも、根本的な所で希望を追求し続ける作家さんなので、切なく救いのない終幕というのは無いと思うのですが。実際、3巻でこの作品を完結させるにあたって、そちらの決着は回避してますしね。
それにしても、まだまだこのエリーゼとグランという人にも怪物にもなれない、狭間の中でただ二人だけ、という男女の行く先はもっともっと見ていたかった。決して世界と繋がれず、しかし掛け替えのない相手が傍らに居る中で、永遠に近い時間を彷徨う二人、という切なくも深い愛に浸るようなシチュエーションは昔から大好物でしたから。
でも、エリーゼとグランについては、エリーゼが復讐に取り憑かれ、その心を炎で焼き続けている事が、不可分であるはずの二人の関係が、まだ本当の形と得ていないという点で、まだ過程の揺らぎの段階ではあったんですよね。そして、結末となる今回のお話は、エリーゼにそれを突きつけ、答えを促す話でもありました。
すなわち、かつて彼女のすべてを奪い去った者への復讐の為に、今持ちえているすべてのモノを捨てされるか。復讐の対価として、新たに得た大切なものを捧げられるか。過去の怨念を取るか、今自分にとって一番大切なものを取るか。未だ大切な者を持ちながら、人の大切な者を奪い去れるのか。
かつてすべてを奪い去られた自分が、人からすべてを奪い去る者になるという事実。もし、本当にすべてを奪い去られたままなら、彼女はそのまま心のない怪物に成り果てて楽になれたでしょうに、エリーゼは改めて掛け替えのない大切な者を手に入れてしまっていた。
今まで自分が全身全霊を投げ打ってきた復讐が、今自分を千々に引き裂こうとしている絶望。あのエリーゼの狂乱こそが、そしてその狂気ですら投げ捨てられなかった想いこそが、この物語が至るべき骨子だったのでしょう。狂乱し、絶望し、死に果てた彼女に、グランが注ぎ、捧げ、埋め込んだ誓いであり、呪いであり、祈りこそが、この物語の深く深く溺れそうな美しさの源泉だったのでしょう。
たどり着いた。
「for Elise(エリーゼのために)」
1巻のサブタイトルだったこのフレーズ。グランという心のない怪物が、エリーゼのために、と願い祈り至った答えこそが、この誓いでした、約束でした。
「with you(あなたと共に)」

いつか、このふたりきりの物語の続きが読めることを、切に祈り願います。今は、この雪に覆われていくような静かな、しかしその冷たさのなかで抱きしめられているかのような温かな気持ちに浸っていたい。

1巻 2巻感想

B.A.D. 13.そして、繭墨は明日もチョコレートを食べる5   

B.A.D. 13 そして、繭墨は明日もチョコレートを食べる (ファミ通文庫)

【B.A.D. 13.そして、繭墨は明日もチョコレートを食べる】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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彼女は、僕の運命だった――

「諦められませんよ、繭さんを」
繭墨あざかは異界に沈んだだけだ。だが、早く迎えに行かなければ、彼女は本当に死んでしまうだろう。
再び異界にゆく手段を探す僕の前に、繭墨分家の長・定下が現れた。あざかを紅い女に捧げたままにしたい彼に“あさとと共に繭墨家の新たな呪いを解く"ことを協力の代償として求められた。
そして再び訪れた繭墨本家で僕は決定的な間違いを犯してしまい――。
残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー完結。

……小田桐くんという青年は筋金入りの偽善者で、どうしようもない愚か者だった。彼の偽善のせいで、死ななくてもいい人が何人も死に、彼が愚かだったせいで幾度も惨劇が繰り返された。やることなす事裏目に出て、彼が救いの手を差し伸べることで悲劇の引き金が引かれてしまうこともしばしばだった。
もう何もするな、と思ったこともある。願ったこともある。自分のせいで起こる悪夢に、彼は身も心も傷ついてボロボロになるばかりでしたから。それ以上に、彼に善意を強いられることで、多くの人が踏みにじられていったのを見ていられなかった。
それでも、彼は周囲がどれほど止めても、呆れても、憎まれても、呪われても、偽善者であることをやめなかったし、愚者であることを省みなかった。そうして、本来ならば絶対に救われなかったであろう人たちを、彼の偽善と愚かは血みどろになりながら、或いは相手を血塗れにしながら救い上げていったのです。ふと、最後に彼のために集った人たちの顔を見渡して、そのあり得ない顔ぶれに愕然とするばかりでした。果たして、小田桐くんが居なければ、生きてこの場を迎えられたヒトがどれだけ居たでしょう。雄介が侵された狂気は絶望的でした。彼が生きて正気に戻ることなどありえないはずでした。舞姫と久々津が、生きてその想いを遂げることがあったでしょうか。何よりも狐が、繭墨あさとが、あの悪意の権化が、繭墨という家の歪みが結晶化したような青年が、心改める日が来たでしょうか。未だに、この顔ぶれが揃っていることが信じがたいです。本当に信じがたい。その信じがたい結末を手繰り寄せたものこそが、小田桐くんでした。
小田桐くんにとっての運命が繭墨あざかならば、確かに雄介の言うとおり、彼らや白雪にとっての運命は小田桐くんだったのでしょう。この愚かで無力で間が悪く何も出来ずに怯えて藻掻くばかりのこの青年が、成したことは終わってみればあまりにも偉大でした。
数多あったであろうバッドエンドを、こうしてひっくり返してみせたのは間違いなく彼の功績です。この作品は、この物語は明確に悪意に溺死するような醜悪な結末を指向していたにも関わらず、その指向性を、空気感を、世界のあるべき姿を、すべて塗り替えてみせたのが、この冴えなくみっともなく無様な青年の無駄な足掻きだったという事実に、今更ながら呆然とするばかりです。
白雪にきちんと筋を通したことも相まって、この愚か者は最後の最後まで見事に愚かを貫いたのでした。終わってみて、なおさらにそう思います。本当に、大した男でした。

そんな彼を、果たして繭墨あざかはどんな風に見ていたのか、ずっと気になっていたところではあったんですが……彼女の小田桐くんについての独白は、やはり辛辣であきれ果てているのが一目瞭然の厳しいものでしたけれど、それ以上に慈しみにあふれていて、どこか優しい眼差しを感じさせるものでした。突き放してはいるけれど、決して目を逸らさず、いつでもじっと見守っている。小田桐くんがどれほど傷ついても慰めてはくれなかったけれど、いつでも傍に居てくれた。彼がどれほど馬鹿なことをしでかそうと、愚かな判断をしようと、明らかに間違っているだろう決断をしても、彼女はそれを許し続けたし、文句を言いながらもいつも一緒に巻き込まれてくれた。何度か、シリーズ途中でも繰り返したけれど、繭墨あざかというヒトはずいぶんと優しいヒトだったと思う。決して甘やかさない人だけれど、何も共感してくれない人だけれど、やっぱり優しい人だった。

そして、雨香である。男である小田桐くんの腹の中に収められた、異形の子、真なる鬼の娘。
最初、何もかも喰らい果てるだけの怪物、不気味で気持ちの悪いいびつな化け物としか捉えられなかったそれは、成長するにつれてなおも怪物性を増しながら、同時に人間性をも獲得していく、可愛くも可哀想な子でした。こんないびつな生まれ方をしながら、こんなおぞましいあり方をしながら、それでも徐々に人の心を得て、小田桐くんからちゃんと愛情を注がれて、鬼でありながら同時にちゃんと人の娘として育っていきました。
まさか、当初こんなにもおぞましく思えた怪物が、こんなに愛おしく思えるなんて、ついぞ想像すらしなかった。こんなにも健気に、一心に、小田桐くんからの愛情を受け止めて、娘として振る舞うなんて思わなかった。
怪物であれば、鬼であれば、こんなにも苦しまずに済んだだろうに。本能と愛情の間で、こんなにも絶望せずに済んだだろうに。それでも、この娘を自分の娘として、人の子として愛を注いだ小田桐くんの父親としてのあり方は、雨香を幸せにしたのでしょう。この鬼の子に、幸せというものを与えてあげられたのでしょう。良かったなあ、と思うのだけれど、それ以上にやっぱり哀しいです。悲劇ではないかもしれないけれど、大好きな父親と一緒にいられなかった、父親を守るために離れることを選んだこの子の健気さを思うと、胸が痛いです。
救いは、なおも小田桐くんが彼女のことを諦めていないということか。連れ戻すことは叶わなくても、鬼である以上そちらに在ることが誰にとっても良きことなのだとわかっていても、父親として娘が元気かちゃんと確かめたいとする彼の姿勢は、敬服に値します。白雪さんとのことといい、今回最後の最後で小田桐くんも彼なりに男をあげたものですなあ。

今振り返っても、いったいどこでこのルートへの道筋が出来たのか。何人も哀しい結末をたどった人がいました。おぞましい末路に落ちていった人も居ました。大切な人も何人も逝ってしまった。綾のように。
でも、それでも、こんなにも優しく温かい結末にたどり着けるなんて、果たして誰が信じられたでしょう。本当に、本当に頑張った。絶対に無理だったはずのものをひっくり返した、その頑張りには敬意すら覚えます。
もう少しだけ、短篇集という形でこの後の物語も描いてくれるようですけれど、それまで今しばらくはこのあり得なかったはずの、甘やかな優しい幕引きに浸りたいと思います。

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