羊太郎

ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン ★★★☆  

ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン (ファンタジア文庫)

【ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン】 羊太郎/はいむら きよたか 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

生まれながらにして、すべてのことが出来すぎてしまうせいで空虚な日々を過ごす高校生、真神凛太朗。暇つぶしのため、あえて“最弱”と呼ばれる瑠奈=アルトゥールの陣営に加わり、来るべき世界の危機を救うため真なるアーサー王を決める“アーサー王継承戦”に参加することになるのだが…。「私のエクスカリバー…売って、お金に換えちゃったから」瑠奈は、聖剣を売り払い、召喚した“騎士”のケイ卿にはコスプレさせて利用したりするロクでなしで!?しかし絶望的な危機に瀕した時、瑠奈は凛太朗さえも認める強さを垣間見せ―。新たなるアーサー王伝説がここに始まる!
作中で引用されるアーサー王伝説の本の著者ジョン・シープって、作者御本人のことですよね、はい。ある程度一通りの文章作ってたりするんだろうか。
アーサー王(ギャル)である。若い女性のお腹だしファッションってエロ可愛いことこの上ないはずなんだけれど、瑠奈っちのそれはすばらしく色気に欠けていますね!!
しかしこれはこれで! 基本的にはいむらーさんの絵は大好物なので、彼女みたいな陽性かつ奔放なキャラクターは主人公らしくていいじゃないですか。
瑠奈っち、確かにクズっぽいロクでなしの類なのだけれど、彼女なりの王様像というのを一貫して貫いている気合入ったネーチャンでもあるんですよね。すべてのクズっぽい言動にはそれを成すべき理由があり、でもイヤイヤやっているわけではなく、心の底から楽しみながら周囲を巻き添えにしつつ、しかし周囲だってノリノリにさせてみんなまとめて暴走させる、という意味ではちゃんと上に立つもの、大衆を率いるもの、皆の想いを背負うもの、としての責任を果たしている。どれほど無茶苦茶に見えても、彼女は立派な王様なわけだ。誰もが彼女のために立ち上がり、彼女の敵に立ちふさがり、彼女のために奮起する。なぜならば、彼女こそ呵々大笑しながら傷だらけになり血まみれになりながら、率先して立ちはだかる壁を切り開いていく道標だからだ。
あのカラー口絵の女の子のくせにボロボロで、それなのにキラキラと輝いて聖剣ぶん回している姿はまさにそれを象徴するものだ、と全部読み終わったあとに納得させられるものだった。あのお腹は良いお腹だ!
それにしても、俺様なんでもできるぜー、俺様の言うこと聞いてりゃ全部勝てるぜー、と調子乗りまくって瑠奈っちに声かけてきた真神凛太朗くん、まったく話を聞いてもらえないどころか途中で遮られて逆に首根っこひっつかまれて、毎回イイように利用され使い倒され振り回されて、???マークが飛び交っている間に見事に便利使いされ倒されてるの、これもまた痛快展開になるんだろうか。面白すぎるんですけどねえ、このあたり。
同じように瑠奈っちに振り回されて毎回「ひーん」と泣いているケイお姉ちゃんが誠に愛しく、この二人の「手下」、うん部下とか仲間とか配下とかじゃなくて手下と呼ぶのが一番相応しい二人を両脇に従わせて、ガハハハと大笑いしている瑠奈っちは、辺境の山賊の親分じみていて、それはそれで一種のアーサー王像なのかもしれない。そこはかとなく蛮族みがあるよね♪
ぶっちゃけ、このアーサー王の継承戦争ってバックグラウンドとか世界観がよくわかんなくて、なんで日本でこれやってんの? とか、そもそもどういうノリでこういうことになってるの? という舞台設定がかなり強引かつ雑にぶっこんできていて、いやほんとわかんないんですけど、てな感じでいまいち乗り切れない部分があるのも確かな話。それを無視して楽しめるほどの野放図な勢いはまだ足りてない。まあそういうもんだからいいじゃない! と思わせてくれるほどのもっとシッチャカメッチャカに楽しくガンガンやっていってくれたら、気にならなくなるかもしれないが。
ケイお姉ちゃんが果てしなく弄られているときこそは、もうなんにも気にならなくなってましたけどね! 瑠奈っち、これだけケイちゃんで遊んでおきながら、自分の行動原理の根源は乙女しまくってるというのはちょっとズルくない? 一人だけ恋する女の子属性あとから垣間見せるとかケイお姉ちゃんにごめんなさいしといたほうがいいじゃない? ケイお姉ちゃんは許してくれるだろうけれど。まあ瑠奈っちはひたすらやりたい放題やってた方が輝いているので、変に物分りの良い良い子ちゃんにならず、この路線で行ってください。今後は真神凛太朗の方もノリノリで付き合いそうな感じなので、より酷いことになりそうでワクワクします。

しかし、モルガンの正体はちょっと予想を外されたというか、え? そっちなの? という人物で、だったらこっちの娘は誰なんだ?? というあたりは次巻以降か。
円卓の騎士たちの中では超有名株のガウェインとランスロットを初っ端から出してしまったので、いやむしろこれからどういうキャラ付けを円卓の騎士たちにしてくのかは逆に楽しみかもしれない。ケイちゃんがある意味はっちゃけすぎてハードルあげまくってる気がしないでもないですけど。

あと、主人公の真神凛太朗。外道呼ばわりされてますし、天才人外扱いですけれど、俺様系なのにメンタル相当繊細ですわねえ。ってか、幼少から天才過ぎて両親からも嫌われて孤独になって寂しい、けど認めるのは癪だから、世の中斜に見て拗ねてます、ってどんだけ真っ当に柔いんだか。天才は天才なんだけれど、バカと紙一重系のそれではなく、根本真面目だし良識的だし頭おかしい系からは程遠いですよねえ。これはもう瑠奈っちに大いに振り回されている方が余計なこと考えなくて済む、という意味でも相性ピッタリなのでしょう。
あの先生のアドバイス、わりと的確に当てはまってたと思うんだけれど、あれが被っていた仮面の方というのは若干首を傾げたくなるんですよね。瑠奈と真神凛太朗のそれぞれの在りようを正確に見抜いて、その上で二人の関係性を深慮してないと、そう簡単にああいうセリフでてこないだろうし。
ああいうセリフを語っていた人が、あとでああなるというのはむしろ演技なんじゃないかと疑ってしまったくらいで。実際はそういうこともなさそうだったのだけれど。
本性の方がよっぽど底が浅くて、むしろ表向きの顔の方が洞察力も人間性も基本的な知性や思想の幅についても広かったり深かったりしてそう、というのはなんともはや。
もう一捻りある登場人物なんだろうか。せっかくだから期待したいところではあるんだけれど。

羊太郎作品感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 11 ★★★☆   

ロクでなし魔術講師と禁忌教典11 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 11】 羊太郎/ 三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

“フェジテ最悪の三日間”から始まった富国強兵の流れによって、アルザーノ帝国魔術学院に新学院長が就任する。武一辺倒の教育改革にグレンは反発するのだが…。そんな折、先の戦いの失態から、イヴが学院に左遷されてきて!?
「いいわ。私も貴方に力を貸してあげる」
―戸惑うグレンをよそに、改革の是非を懸けた『模範クラス』との決闘に向け、強化合宿を敢行。道を失ったイヴは、生徒たちとの交流を通じて、自分が本当は何を為したいのか気づきはじめ…。改革に伴う裏学院の開放。学院創世の闇に触れた時、代償とするのは、誰がための命―。

とうとうイグナイト家から放逐されてしまったイブ。イグナイト家のために、という事だけを拠り所に無理して頑張ってたにも関わらずこの仕打である。でも、勘当しておきながら次の就職先用意してくれているあたり、わりと親切なんじゃないだろうか、と思ってしまうのは間違っているだろうか。あの様子だと、家名から削除してあとは知らん、となっても不思議では無さそうなくらいの態度だったのに。
それはそれとして、イブは縋っていた支柱を引っこ抜かれてもっと消沈しているのかと思ったら、来てすぐにグレンのクラスの子たちの為に自分から積極的に動いているんですよね。てっきり、最初の時のグレンみたい、とまではいかないまでも無気力惰性で指導してたら生徒たちの頑張りに感化されて段々と教師としての仕事に目覚めていく、という過程を辿るのかと思ったのだけれど。
ほら、グレン先生、あんた自分の所業振り返って反省しなさいよ。
それだけ、イブが真面目で勤勉、ということなのかもしれませんが。先の「フェジテ最悪の三日間」の折に学院の生徒たちと一緒に戦ったことで、最初からこの子たちのためになんとかしてあげよう、という想いが生じていた、というのもあるのでしょうけれど。
こういう本来真面目でロジカルな人が、あれだけヒステリックになりふり構わず手柄あげることばかりに固執していた、というのはそれだけ精神的に追い詰められていた、強迫観念にかられていた、強圧的に追い立てられていた、ということなんでしょうね。父からの命令に逆らえずにセラを死に追いやった罪悪感が、それに拍車をかけていたのでしょう。
そこまでやっていたのに、一方的に捨てられたのですからもっと自暴自棄になっても仕方ない状態だったんじゃないかと思うのですけれど、こうなってみるとグレンはそんな鬱屈を吐き出せる唯一の相手だったんだろうなあ。それも、セラの件で憎悪すらされていることは自覚していたわけですから、頼ることも出来ず余計に歪んでしまっていたのが、今回の一件でようやく吐き出せた、と。
白猫が、こいつはやべえぜ!! と警戒レーダービンビンに反応させてしまっているの、笑ってしまったんだけれど、強敵出現は確かにそうなんですよね。なんか、精神的に落ち着いたイヴは同年代の気後れ無くグレンとぶつかりあえる女性、ということで一気にヒロインレースに躍り出てきた感がビンビンである。
と、久々に落ち着いて生徒たちに指導する学校ならでわのエピソードで、何だかんだと本作ってこうやって教師やってる話が面白いんですよね。今回はイブも一緒に指導してくれることで、ついに生徒たちも実践的な立ち回りを覚えていくことに。これまでのグレンの指導がちゃんと生きていて、それを土台にしてイブの実践的な指導によって一気に実力が開花していく生徒たち、という展開が実にくるものがある。
システィーナも、あれだけ別格の強さを手に入れながらさらに一皮剥けることになって、この子だけはなんか生徒というよりも本当にグレンの一番弟子、みたいになってきた感があるなあ。
惜しむらくは、クラスの生徒たち、みんなちゃんとキャラ立っているにも関わらず、それぞれ単独のエピソードとか殆どないものだから掘り下げ、という点で若干物足りないんですよね。短編集の2巻まだ喚んでなかったんだけれど、そっちで触れてるのかなあ。既にみんなそれぞれに特徴や個性を見せてキャラ立っているだけに、もうちょいこの子たち1人1人のバックグラウンドや中身を覗いてみたいものである。
実質、これが第2部スタート編、ということで本格的に禁忌教典を巡る話になってきそうで、楽しみ楽しみ。

シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)10 ★★★★   

ロクでなし魔術講師と禁忌教典10 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)10】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

現世への復活を果たした魔人・アセロ=イエロによる、フェジテ崩壊の術式―“メギドの火”。その発動を防ぐべく、グレンたちは、学院、そして宮廷魔導士団の総力を結集する。
「やつを倒す可能性のある手段は…ある」
グレンのワイルドカード。その切り札を使用するために、グレンはもう一度、血に染まった過去の自分と向き合うことに。
「ここに居ちゃいけないんだって…皆に甘えていた」
そして、その出自が周囲に知れわたり、身を犠牲に戦うことを決意したルミアの前には、もうひとりの自分が現れ…世界が破滅に向かう時、二人は自身の罪と過去に対峙する!

明示されているわけじゃないけれど、この巻はまさに第一部完結のクライマックス! という大盛り上がりでした。ルミアの正体がついにクラスメイトたちにもバレると同時に、フェジテの街を焼き尽くすメギドの火が放たれるまでの刻限が迫り、今までの登場人物総出演ときたらそりゃあもうねえ。
ただ流れで最終回、というんじゃなく、今までの積み重ね、蓄積してきたものをここぞとばかりに全部放出するかのような構成は、満を持してという感じなんですよね。クラスメイトたちの成長やルミアの真実を受け止めるに足る交流。万全の力を発揮するに足る白猫とリィエルの心身の充実、ルミアの危うさとそれを克服する為に必要な周囲との人間関係に彼女自身の枷の解放。そして、グレンが自分の過去と向き合い乗り越えることが出来るために必要だった、これまでの教師としての日々。
色んなものが、このクライマックスめがけて収束し、結実した結果がこの最後の大盛り上がりに繋がってるんですよね。主要メンバーのみならず、どころかグレンのクラスの生徒たちだけじゃなく、他の教師やちょい役だった面々、他のクラスの生徒たちに至るまでにちゃんと活躍の場があり、それ以上に今までの事件やエピソードで得た経験を踏まえた成長があり、心得の刷新があり、次のステップに至るためのあれこれがあり、どんな微力であろうとそれをこの一番大事な場面で尽くすだけの勇気を振るい、目の前の絶望的な戦いを乗り越えるだけじゃない、それぞれが新たな自分を掴み取る成長物語らしい本分を捉えていて、ただ今まで出てきたキャラがみんな活躍するというだけでない、清々しいと思えるような燃える展開なんですよねえ。
この作品の物語の本筋からして、どうしたって描写は常に非常時と隣合わせとなるメインの子らが中心となってしまうのは当然だったのですけれど、それでありながらちゃんとグレンのクラスの子たちを疎かにせず出来る限りしっかり描こうとしてきたことが、ここに結実してるんだなあ。
加えて、それが失墜して身も心もボロボロに成り果てたイヴが新たな道を見出すきっかけにも繋がってきたというのも面白い。
それにしても、ルミアはその懐の広さや精神的な落ち着きというヒロイン力の高さに繋がっていた要素が、この土壇場で自己犠牲を厭わないどころかむしろ望んでしまう危うさへとシフトしてきてしまいましたか。
諸々の精神的な弱さや特別性の薄さを内包していた白猫が、むしろだからこそここに来て幾つか致命的な部分を克服してきたからこそ、安定性を増してきたというところも尚更に興味深い。
相変わらずヒロイン力の高さはルミアの方が圧倒的なのにね。グレン先生的には、白猫の方に自分がメンタル不安定になった際の癒やしを感じている、というあたりも。
一連の事件を乗り越えたことで、ずっと一歩自分から引く姿勢だったルミアが堂々と白猫に宣戦布告したのも、仕切り直しとなる第二部以降面白くなってきそう。
その前に、イヴの再起がメインになってきそうだけれど。

シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 9 ★★★☆   

ロクでなし魔術講師と禁忌教典9 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 9】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

先の戦いから行方をくらましていた宿敵、ジャティス=ロウファン。彼の策略により、ルミアは誘拐され、さらにはフェジテ市庁舎爆破テロの容疑者として、グレンは指名手配を受けてしまい…
「先生!私も先生の力になりたいんです…!」
相棒として着実に成長しつつあるシスティーナ。彼女の助力のもと、事件解決にあたるべく、グレンはフェジテの街を駆け回るのだが、直面したのは存在しえない、かつての強敵で―街ひとつをまるごと崩壊する術式・“メギドの火”をめぐり、フェジテに集結する天の智慧研究会、宮廷魔導士団。それぞれの思惑が交錯し、フェジテ最悪の三日間の幕が開く!
ああ、これはなあ。白猫……システィーナってこの子、どれだけ強くなっても根本的なところで荒事向いていないんだ。能力的にもメキメキ上達してるし、精神的にも土壇場で踏みとどまれる根性がある。それでも、これだけ修羅場を何度もくぐっているにも関わらず、ピンチになるとペキッと心折れちゃう脆さはこれはもう鍛えられない部分なんじゃないだろうか。最後の最後で踏ん張ってみせたとはいえ、毎度毎度こんな感じで疲弊してたらいずれ持たなくなるのは目に見えている。その意味でも、システィーナはどれだけ強くなっても戦いに向いていない一般人というカテゴリーでの役割を得る時期に入っているという事なのだろうか。
ルミアがどんどんアンダーグラウンドサイドへと押しやられているからこそ、白猫が日向の場所を確保し続ける意味が生じてくるのだろう。白猫もそっちへと追いかけていくのは、今回の一件を見る限り厳しそうだもんなあ。彼女はどう転んでも異常者の枠には入れない。
その意味では、イヴ=イグナイトはシスティーナの在り得た未来、とも考えられるんですよね。セラを見殺しにした一件、どうやら裏がありそうというのが今回の話から伝わってきたのだけれど、手柄への執着の理由といい、セラを見殺しにした事への精神的ダメージといい、なにげにこの人、システィーナと同じレベルでこういうダーティーな仕事向いてなかったんじゃなかろうか。それが、本来向いてなかった分野を突き進んでしまった結果がこれなのではないか、と。何気にシスティーナがそんなイヴに自分の理想の将来像を垣間見て、強い憧れを抱いてしまった、というのは皮肉な話でもあり、懸念を感じるところでもあるんですよね。
白猫、凝りてないんだろうか。実際、一流の魔術師を一人で退けてみせた、というのは見事なものだし、この子の強さはあれがフロックではなく、今後も負けない戦いが出来るかもしれないくらいのものだとは思うんだけれど……それでも心が持たんと思うんだよなあ。

ともあれ、ついにタイトルにもある禁忌教典に踏み込んいく話となり、大きく展開が動きました。
ジャスティスが単独にも関わらず凄まじい存在感と蜘蛛の巣めいた手の広さを持つので、三つ巴の争いにも十分厚みが感じられるんですよね。最後までジャスティスの目論見が読めなかったところも含めて。
ここまで来ると、ルミアも元の生活には簡単には戻れなくなっただろうし、さてどう転がっていくのか。

シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 8 ★★★☆   

ロクでなし魔術講師と禁忌教典8 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 8】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

成績不振による退学を回避するため、聖リリィ魔術女学院に短期留学することになったリィエル。システィーナとルミアも同行し、さらには男子禁制の楽園でお嬢様を手玉に取ろうと、グレンも女に変身し、臨時講師として赴任することに!?…しかし、そこで見たのは、お嬢様グループ同士の抗争で!?
「あっれー??ボクが想像してたのと全ッ然ちっがーう!!」
女学院という名の鳥籠。先の見えた人生にくすぶる彼女たちは破天荒なロクでなしの姿に触れて―
「断言してやる。俺ならお前達を『魔術師』にしてやれる」
グレンの講義が、箱庭の少女達の運命の鎖を引きちぎる!
やっぱりグレンは「先生」してるときが一番面白いなあ。
教え導くなんて柄じゃあ全然ないのだけれど、彼自身行き詰まってにっちもさっちもいかない時があった人生経験からか、同じように停滞してしまっていたり鬱積に沈んでしまったりしている子を見るとなんだかんだとちょっかいかけるんですよね。面白いのはそれが手取り足取り十全手を引っ張る補助ではなく、ちょっとした新しい視点の捉え方、見地の得方ってなもんで、言わば選択肢を増やして出来る範囲を広げていくことなんですよねえ。
それは選択肢の無さにこそ魂を淀ませていた聖リリィ魔術女学院の面々にこそクリティカルだったのでしょう。あの手のひらを返してのモテモテっぷりは、閉塞の打破という観点が大きかったのではないかと。アルザーノ校では、教育方針の旧態化に対して生徒たちが逼迫していたわけではないですからねえ。それに、講師としての能力を示す以前にこれでもか、とロクデナシさを見せつけられた上で、講師として真面目に活動するようになってからも、人品の卑しさは日常的に露呈し続けるのを見せられた以上は、生徒たちとしてもまあ無闇な信奉はできないよなあ、と。十分、慕ってはいるんでしょうけれど。
とはいえ、セリカの授業のお陰でグレンの講師としての能力の高さをみんな痛感したようですから、帰ってきたらそれはそれで大歓迎されるんじゃないでしょうか。

というわけで、リィエルの退学回避のために、ルミアとシスティーナを連れて女学校に短期留学することになったグレン。もちろん、グレンは先生として。女教師ですよ、女教師w
こいつ、ちゃっかり女風呂に入ってるんですけれど、ちゃんと粛清しないといけないんじゃないでしょうか。
今回わりと怖かったのがルミアの方で、グレン先生の周りに女の影がまとわりつくことに関してこれまでは寛容の一言だったのですが、どうやらそれはちゃんと理由と原因があり、相手が親しい人物であったからこその寛容であったようで、知らないよそ者の小娘どもがグレンをちやほやするのを目の当たりにした時の、あのひんやりとした雰囲気は、真っ当に機嫌を悪くして怒っていたシスティーナよりもよっぽどヤバかったです。
ある日突然肝臓にナイフをぐさり、系だったりしそうだよなあ、ルミア。
しかし、これまでグレンの薫陶を受け、数々のヤバい事件をくぐり抜けてきたシスティーナとルミアだと、やっぱり実戦も知らない箱庭のお姫様たちじゃあ格が違うのか。そりゃ、修羅場の経験が段違いだもんなあ。ちゃんとこれまでの経験がフィールドバックされた活躍を、システィーナもルミアも見せてくれて、これは痛快でしたねえ。特にシスティーナは何度も弱い面をさらけ出さされて、失敗や屈辱にグチャグチャになる場面を見続けただけに、その成長を強く感じさせてくれる今回の話は、なんとも気持ち良いものでした。

一方でリィエルの方は、個人的に新しい友人を作って友好を深める、というグレンやシスティーナ、ルミアにべったりで、離れると泣いてしまうほど幼かった姿からも、これまた成長と自立を強く感じさせる話でもありました。自己の存在や意思が極めて薄かったリィエルが、ルミアやシスティーナと育んできたものが、こうして結実するのを見るのは感慨深いものがある。
てか、リィエルと親交を深めることになったエルザ女史、何気にとんでもないキャラなんじゃなかろうか。魔術抜きでかなり凄いことしてるんですけれど。近接無双はリィエルの独壇場でしたけれど、これエルザのトラウマが解消されて本格的に実力を発揮できるようになったら、リィエルとのコンビ、かなりとんでもないことになりそう。二人の関係についても、なんかとんでもない方に行きそうな気配もありますが。周囲に温かい視線が……w

新キャラとしては、派閥トップのお嬢様二人よりも、毒舌忍者のジニーが良いキャラすぎて、かなり存在感喰ってた気も。エルザとジニーはこのまま合流しても不自然なさそうなくらい、馴染んでましたねえ。どうも話の流れによってはお嬢様ズと合わせてまた登場しそうですけれど。
久々に先生なグレンを堪能できて、良い回でした。何気に、帝国の闇について結構核心的な部分まで踏み込んでた気もしますが。

シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード) 7 ★★★   

ロクでなし魔術講師と禁忌教典7 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)7】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

「久しぶりね、グレン。会えて嬉しいわ」「はっ…俺はテメェにだけは会いたくなかったがな…ッ!」
迫る『社交舞踏会』に学院が沸く中、グレンの前に因縁浅からぬかつての上司―宮廷魔導士団特務分室の室長、イヴ=イグナイトが現れる。『社交舞踏会』に乗じた天の智慧研究会による『ルミア暗殺計画』を聞かされたグレンは、舞踏会を中止しようとするのだが…。イヴは逆にルミアを餌にした非道な作戦を提案してきて―。ルミア護衛のため、グレンは半強制的にダンス・コンペでルミアのパートナーとして優勝を目指すことに!特務分室VS天の智慧研究会、最後に微笑むのは―。

うへえ……いや、新登場のヒロインがこんなやたらヘイト高いキャラで大丈夫なんだろうか。どうせ、あとで好感度の低さは挽回してくるんだろうけれど、元値がこれだけマイナスだとそう簡単にはあがるもんもあがらんですよ。
それに、幾ら強キャラで能力は高いと言っても、今回の一連のやらかし具合を見せられるとポンコツとかじゃなくて純粋に「無能」が極まってるんですよね。ちょっと目が当てられないレベルで。
部下からも好かれてないし、上に対してもかなり強引な振る舞いや脅しまがいのことをしているようなので、敵ばっかり作ってるようにしか見えず、利益目当ての味方ですら集めてないんじゃないだろうか。信用的にも信頼的にも損得的にも権力的にも政治的にも、えらい叩き潰されやすそうな孤立状態にしか見えない。普通、嫌われ者なら嫌われ者らしくきっちり身の安全をはかる保身能力については高いはずなんだけれど、この娘の脇の甘さみると、その手のことちゃんと考えてるような節見えないし。
配下の身からするといつ利用されて使い捨てられるかわかったもんじゃないから、後ろから銃弾飛ばすことは常に頭よぎるだろうし、もし自分が女王陛下だったら有能だろうとこんな危ない制御できない駒は何としてでも潰すだろうなあ。

ともあれ、相手が用意した暗殺の舞台にわざわざ乗っかって、同じ土俵で勝負して手柄をたてようという元上司のわけのわからん策に無理やり噛まされ、可愛い生徒たちを人質に取られて守る羽目になったグレン。
今回ばかりは同情を禁じえなかったです。敵と戦う前に味方であるはずの上司に雁字搦めに縛られた挙句に邪魔され続けたようなもんですもんねえ。イヴさん、見事なくらい最初から最後まで役立たずでしたし。まったく挽回の機会ないまま終わったし。失敗しまくったけれど、最後にちょっと活躍して取り戻した、という程度のこともできなかったし……。
一方で、ガンガンと才能を開花させていっているのが白猫ことシスティーナの方で、覚悟も能力も未熟という以前に、どれほど優秀であっても一般人の女の子に過ぎなくて、本物の実戦や死の恐怖に怯えて泣いて勇気も奮えない臆病な子が、それでも挫けずに努力を続け、なけなしの勇気をかき集めていつしか心の芯に剣を宿し、弱さを克服していた様子は、ただ能力的に優れているだけのイヴと対象的なんですよね。
彼女を未熟と断じながら、もしかしたらグレンよりもシスティーナを評価しているのかもしれないアルベルトの言葉が今回は非常にしびれました。
「信頼に対する真の応えとは、責任という重圧に耐えて、行動を起こす事だ。己の為すべき事を見据え、逃げず、それに立ち向かうことだ」

自分に投げかけられたこの言葉を噛み締めて、受け止めて、胸に宿して体現しようとするシスティーナ。成長の物語としては、本作において彼女こそが主役なんだよなあ。
でも、最近なんとなくシスティーナはアルベルトとの絡みの方が重たくなってきている節があるんですよね。一方で、ルミアの方は天の智慧研究会の陰謀の核心を担うキーキャラクターとして、物語の謎を一身に背負う存在として、そして悲劇と悲恋を抱えるヒロインとして、メインヒロインの潮流に乗った感もあり、あれ? マジでルミアの方がメインヒロインとしての比重を増してきた? って感じなんですよね。
ルミアの健気さって、むしろ身を引こうとすればするほどスポットがあたる属性みたいなもんですし、やっぱり華があるんだよなあ。

シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)6 ★★★☆  

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 (6) (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)6】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

講師として頑張ることを決意した矢先の解雇宣告。クビを回避するには自腹での古代遺跡の調査が必要で―金欠のグレンが思いついた手段は…生徒を利用するという相変わらずロクでもない方法で!?天使ルミアの厚意で生徒たちの協力を得られたグレンだったが…なぜかセリカも同行することに!?遺跡に眠る世界の深淵に触れた時、家族の絆が試される!!
グレン先生って大概大人げないというか性根がガキというか、この普通にロクデナシなのはそろそろ何とかした方がいいんじゃなかろうか。その意味では講師という真っ当な職につくことで真人間としての再教育を受けているようなものなんだけれど、本来教わるべき生徒たちに負わされる余計な負担を思うと、なんともはや。まあそのグレンが持ち込んでくる要らんことが、生徒たちにとっても良い経験になっているのだから、結果としては悪くはないのだけれど、毎回理由が理由だからなあ。
今回の首騒ぎもいい加減自業自得なのだけれど、その挽回に生徒たちを巻き込んで利用しようとするあたり、本当にロクデナシですね、と言いたい。
そんなグレンに負けず劣らずの面倒臭さを発揮しまくっているのが白猫シルフィーナである。この娘も成長せんというか、自縄自縛の素直になれなさにはホトホト可哀想になってくる。いくつも修羅場を潜ったことで土壇場の度胸とかメンタル面の強化はなされているはずなのに、性格に関してはあんまり成長してないあたりグレンと似た者同士なのかもしれない。でも、白猫のこの本気なダメダメ感が常につきまとうヒロイン像って結構好きなんですよね。ルミアがパーフェクト・エンジェルすぎて、ヒロインとしてどう成長しようとも太刀打ち出来ないのを、敢えてヒロインとして弱点となる要素をゴテゴテと身にまとうことでダメダメで面倒くさくて余裕がなくて古代文明オタクという本来アカン方向から迂回突破しようという姿勢にはなかなか見るべきものがあるんじゃないか、と思うのだ。
ダメな子ほど可愛い理論である。
とはいえ、今回のメインヒロインは圧倒的にセリカだったのですけれど。前回のセリカの過去を語る短編はまさにこの第6巻のために用意された前菜だったわけですなあ。
セリカの抱えている寂しさ、絶望感はすでに染み入るように理解できているだけに、それを埋めるためにセリカがどれだけ必死なのか、セリカにとってグレンという「家族」の存在がどれほどのものだったかを改めてつきつける、家族の絆の物語でありました。セリカもグレンも心に悲鳴のような軋みを抱え込んだ人間なだけに、それを癒やすためにも本当の意味で掛け替えのない関係なんだよなあ。一歩間違えれば共依存になりそうな深みでもあるのだけれど。グレンにしてもセリカにしても、親バカマザコンがいささか度が過ぎてるくらいだし。母親と息子という関係と言うには、ちょいと偏位がありますし不思議な距離感でもあるんですけどね。これ、グレンをお婿に貰ったらもれなくセリカもついてくるよなあ。口では色々と保護者らしいことを言っているけれど、このセリカさんがグレン離れ出来る要素を微塵も感じないのですがw

セリカの暴走に端を発して、怒涛の勢いで世界の秘密というべき情報が詳らかにされていってしまったんだけれど、果たしてそこにグレンの存在がどう絡んでくるのか。ルミアが重要なキーパーソンであることは間違いなさそうなのだけれど。しかし、あっさりと最強キャラであったセリカの戦力をダウンさせてしまったなあ。こういう師匠系キャラの戦力を削るパワーバランス調整はありがちだけれど、結構なあからさまさだったのでうちっと上手いことやって欲しかった気もする。

シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と追想日誌(メモリーレコード) ★★★☆   

ロクでなし魔術講師と追想日誌 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と追想日誌(メモリーレコード)】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

アルザーノ帝国魔術学院には、生徒もあきれるほどの一人のロクでなし魔術講師がいた。男の名はグレン=レーダス。授業では、蛇で女生徒たちを怖がらせて遊ぶも、その蛇に頭を噛みつかれたり…。図書館で失踪した女生徒の救助へ向かうも、怪異に怯えて、破壊呪文で図書館を吹き飛ばそうとしたり…。授業参観で珍しく真面目に授業をしようとするも、すぐにボロが出てしまう…そんな、ロクでなしな学園の日々。グレンの師であり育ての親セリカ=アルフォネアとの衝撃の出会いが綴られる『ロクでなし』シリーズ初の短編集!
白猫はどうして好き好んでそんな地雷要素ばっかり一人で兼ね備えてるんだ?w
シリアスだとキリッとカッコいいところをよく見せてくれるグレン先生だけれど、緊張感の必要がない日常だとこの人はどうしても幼稚さが前面に出てしまうのねえ。子供かっ! というような言動が色々と多すぎる。これ、装っているのではなく、わりと本気で子供みたく騒いでいるのでどうしようもない。白猫がもうちょっとビシっと叱ってシメてくれたらいいんだけれど、基本白猫はグレンには舐められてるからなあ。思いっきり馬耳東風だし。
だいたい、セリカはもう仕方ないとしてもルミアの方も先生甘やかしすぎてるんですよねえ。ルミアがもうちょっとたしなめてくれたらこの男も多少は聞く耳持ちそうなものなのに、この娘ははいはい私はわかってますよぉ感を醸し出しまくってるのがなんとも「器用」なんですよねえ、ヒロインとして。

実のところ、グレンの子供っぽさというのは真面目に授業する場面にも出ていて、無謀編の夢中になって心身を削って実験の準備を整えてるところなんて、あれって自分の好きなこと、面白かったことを他に人に伝えたい、見せたい、教えてあげたいというと子供らしい率直な感情の発露みたいなところが強くて、大人として教師として、という側面とは少し違ってるんですよねえ。
この場合に関しては、それは良い方にバランスが取れていて、グレン自身、魔術の習得に関して一家言持ち、それを論理的に展開できる基盤となる非常に優秀な教育論を何気に自分なりに構築しているので、その夢中さが良い方に好転しているわけですが。

虚栄編だと、授業参観ということで結構取り繕って授業してるわけですけれど、そこまでしろとは言わないまでも普段から真面目にやってたら教師としてのポテンシャルは相当に高いんだよなあ、この人。
あと、セリカの親ばかっぷりが振り切れすぎてるw 授業参観のエピソードは色々見たけれど、ここまで大っぴらに親ばか全開してる参観者はさすがにそんなに居ないぞ。しかも、教師の親てw

そんなセリカさんの、グレンと出会う以前のやさぐれていた頃のお話。いや、マジでこの頃のセリカって精神的に擦り切れてグレて鬱って破滅的で、とどうしようもないじゃないか。なるほど、糞ニートと化していたグレンを何だかんだと許して甘やかしてたのって、自分のこの頃のやさぐれ方を思い出したらグレン程度の引きこもりなんて可愛いもんだわなあ。
しかし、想像以上にセリカの抱えていた過去が救いがないというか、寂しい人生送ってたのねえ。それで出会ったのが幼いグレン。そりゃあ、人生の生き甲斐としてこの子に全振りしてしまうわなあ。
最初のグレンにはおもいっきり騙されましたけれど。普通にこの子がそうだと思い込んでた。
それにしても、ここまで酷い親バカになってしまうとは。

ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード) 5 ★★★☆   

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 (5) (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード) 5】 羊太郎/ 三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

「先生と私は、将来を誓い合った恋人同士だから」学修旅行後、アルザーノ魔術学院に招かれた特別講師レオス=クライトス。彼から婚約者として突然の求婚を受けたシスティーナは、グレンを言い訳に断ろうとするのだが…。「お前とくっつけば、俺、もう働かなくていいじゃんッ!」グレンは夢の無職引きこもり生活ゲットのため『逆玉』を本気で狙うロクでもない行動に出始め―。システィーナを賭けて、レオスと担当クラス同士の魔導兵団戦で決闘をすることに。決闘の裏に潜む最凶の『正義』、そして魔導士を辞めることになった過去の事件と向き合う時、グレンの下す決断とは…。
うん、わかる。グレンの過去がどうだろうと、彼が本当はどんな人間だろうと、全部受け止め受け入れる覚悟を持っているルミアと比べて、システィーナはあまりにも覚悟据わってないんですよね。ルミア自身、その人生は常に非常の只中にあり、陽の光の下に曝け出せない後ろ暗い部分を抱え持っているだけに、いつ如何なる時も覚悟を決めて生きているし、その中で何が大切なのか、何を守らなければならないのか、というのを決して見失わない強さを備えている。それに対して、システィーナはあまりにも弱い。危急の時、自分がこれだ、と思ったことを貫けないし、こうしなきゃと思ったことさえすぐに揺らいで取りこぼしてしまう。普段の気の強さ、背筋をまっすぐ伸ばしたような正道を歩む姿とは裏腹に、命の危機に見舞われた時や人の悪意を目の当たりにした時、この世の闇の部分を覗いてしまった時、彼女は脆く崩れてしまう。怯え、怖がり、自分を保つ芯を持てない臆病者。好きな人を信じきることすら出来ない弱虫だ。
でもね、私はそんな彼女が、システィーナが愛おしい。誰よりも、自分の弱さに打ちのめされ、失望しているのが彼女だから。ルミアに対して敗北感を痛感し劣等感を感じているのが、彼女だから。
みっともないし、無様だし、情けない有様を晒しまくっているけれど、自分に絶望しかねないレベルでこれまで積み上げてきたものをボロボロと取りこぼし、剥がれ落としてしまった彼女だけれど、でも本当に最後の最後で、一番見失ってはいけないものだけは、諦めてしまってはいけないものだけは、死守してみせたから。
この娘は、とても弱くて臆病なこの娘は、それでもなけなしの勇気を振り絞ることが出来たのだ。弱い彼女だからこそ、恐ろしいもの怖いもの悍ましいものを受け入れられない、受け止められない弱いシスティーナだからこそ、言えるワガママがあったのだから。
諦められず、捨てられず、無様を晒してしがみついて守り通した、好きという気持ち。そして、怖いグレンを受け入れられない弱さが、振り絞った勇気によって振るわれて、きっとグレンを引き戻したのではないだろうか。
ルミアやリィエルならどうだっただろう。ここまで必死になって、グレンの回帰を止めることが出来ただろうか。パーフェクトヒロインの貫禄すらある、ルミアの愛の深さ器の大きさを考えると、たとえグレンが昔に戻っても、彼が抱える苦悩ごとまるっと包み込んでしまいそうな懐の深さがあるんですよね。ルミアのポテンシャルだと、グレンがどうなっても、その心の傷ごと癒やして救ってくれそうな趣きすら感じられるのです。でも、その大きさはグレンのこの時の非情の決意を引き止める役割を担えただろうか、とふと考えてしまうのです。
グレンは、先生のままで居られたかな、と。
それに、あの時、あの瞬間、グレンが過去と直面させられた時、その場に居たのはシスティーナだけだった。彼女しか居なかったのである。だから、彼女は頑張ったし、彼女にしか出来ないことをやってのけた。
無様でもみっともなくても、ちゃんと、システィーナはメインヒロインの看板、立てて居られていますよ。
勇気を持って、奮い立っているじゃないですか。

グレンにとっても、この娘はほんと可愛いんだろうなあ。でも、この一件はグレンにとってもシスティーナへの見方を大きく揺るがすものだったように思います。グレンを先生として引き止めたシスティーナですけれど、はからずもグレンにとってもシスティーナにとっても、お互いの関係を先生と生徒、という枠に収まらないものにする転機となったのではないでしょうか。

一方で、肝心の禁忌教典についてはひたすらと真実へと至るまでの道程の基礎固めを進めている感じ。なかなか核心へと踏み込まずに、周辺を入念に埋めてる感じだけれど、だからこそ一度核心へと事態が進むと一気にクライマックスまで行きそうな溜めが感じられるなあ。

シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 4 4   

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 (4) (富士見ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 4】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon

分かり合えていたはずの想いは、無残にも引き裂かれた。
「…実は、わたし、あなた達の敵」
「…う、嘘…嘘よ…そんな…」
天の智慧研究会の魔の手により闇へと堕ちたリィエル。システィーナの説得も空しく、リィエルは親友ルミアを誘拐し―。一方、死の淵から復活を遂げたグレンは、アルベルトとの帝国軍コンビを再結成。反撃の狼煙を上げる!
「…行こうか。頼りにしてるぜ、相棒」
「抜かせ、誰が相棒だ。寝言は寝て言え」
かつての盟友と、囚われし少女たちの奪還を目指す!
な、なるほどなあ。さすがにあそこまでやってしまうと、リィエルは引き戻しようがないんじゃないか、と思ったんだけれど、これはグレンが自分で言っている通りに自業自得という面が非常に強い事態だわ。そりゃあ、リィエルの件をケアもせずに放置したまま逃げ出してたんじゃあ、言い訳のしようがない。こればっかりは時間の経過で良化するようなものではないわけだし、アルベルトもこれ、腹に据えかねても仕方ないぞ。なーんか、結構グレンに対して怒っている素振りを見せていたので、アルベルトの性格からしてグレンのドロップアウトに対してそこまで感情を揺らす要素がなかったものだから、あの苛ついてそうな態度には違和感を感じてたんだけれど、うん怒る。むしろ、もっと怒っていいくらい。リィエルの処遇に対しての厳しい物言いも、リィエルの事情からしてグレンがドロップアウトした時点でそうなってもおかしくなかったのを考えると、グレンに対しての叱責だよなあ。
これだけクールな物腰に反して中身が情に厚いキャラクターというのは、色々と美味しすぎる。もし、アルベルトが男じゃなくて女だったら、これヒロインとして圧倒的だったんじゃないだろうか。ルミアですら、太刀打ちできなかったかもしれない。現状において、教師であるグレンに対して対等であるキャラってアルベルトだけだものねえ。
しかし、グレンも相当に搦め手寄りの使い手だけれど、アルベルトも最強枠だというのに力押しじゃなくて、あらゆる勝ち筋を事前に用意しておくタイプだというのが面白い。これで地の力も並外れてるんだから、そりゃあ反則だよなあ。即興と周到を併せ持つ二人だからか、グレンとアルベルトがコンビを組むと際限なく運用の幅が広がるんですよね。ここに、力押しで全部ぶち壊せるリィエルが加わってたんだから、このトリオ、いったいどれだけ戦果をあげていたのやら。

一方で、面白いくらいに徹底的に潰されたのが、シスフィーナ。なんだかんだエリートだし、才能も豊富で将来有望な白猫さんだけれど、だからこそなのか今は徹底的に叩いて叩いて容赦なく切り刻んでいる感じすらします。ぶっちゃけ彼女、一巻からこっちイイトコロなしですもんね。成長していると見せかけて、更により大きな挫折を味わわす。果たして、彼女の中で渦巻いている無力感、悔しさは如何ばかりか。多少なりとも得た実戦経験や、成長の実感が一度は折れかけた彼女の心を奮い立たせていただけに、この落とし方の容赦のなさはゾクゾクするものがあります。
ここまで手ひどく圧倒的に踏み潰されたら、シスフィーナの内圧はどれほどのものになっているか。彼女の良い所は、その内圧が彼女の芯を歪ませる気配がまったくないところでしょう。悔しさ、自分への怒り、不甲斐なさに対する屈辱、無力さへの恥辱感。そのぐつぐつと煮えたぎるような負の内圧が、しかし彼女の場合フレームの歪みへと波及する様子が一切感じられず、正しくまっすぐ反発し反動し噴火しそうにしか見えないあたり、凄いなあ、と。もうなんか、絶対尋常じゃない化けっぷりを見せてくれそうじゃないですか。
人品の強さを最初から見せていることで、ヒロインとしての強度を見せつけているルミアに対して、システィーナはひたすらに優秀さ故の脆さ、人間としての弱さ、醜態を晒す無様さをぶちまけ続けていますけれど、彼女のこの弱い部分っていうのは、珠玉なんですよね。私は、この弱くて無様な彼女が特に好きなんだなあ。

さて、リィエルの彼女自身も知らなかった真実をはじめとして二転三転する状況は、後編はほぼ状況も明らかになってあとは消化試合かな、と考えていたのを蹴飛ばすような怒涛の勢いで、うん3巻からだいぶ空いたのも納得の出来栄えであり熱量でした。
そろそろ、敵さんの真打ちもその影が見えてきた感じですし、天の智慧研究会やルミアたち王族の秘密など世界の謎に関するあれこれも、段々舞台上にキーワードとして揃えられてきましたし、物語も次の段階に入った感じで、面白くなってきた。

シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード) 33   

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 (3) (富士見ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード) 3】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon

魔術競技祭後、学修旅行の行き先をクラスに告げたグレンは、男子生徒から神と崇められていた。その理由、ロクでなしを神とまで高めたその旅行先は…リゾートビーチで有名な離島。水着、お泊まり―。グレンに焚きつけられた男達は女子の露わな姿を求め、帝国軍顔負けの作戦を計画し…!?一方、男子を『馬鹿の巣』と揶揄するシスティーナは、ルミアの護衛員・編入生リィエルと仲良くしようとするも…リィエルはそれを拒絶。さらに、その不安定な心に付け入る男が訪れ―。生徒を惑わす闇を払うため、グレンの力が試される!
うーーん、正直言って普通。いやあ、ダメだよ普通でこじんまり落ち着いちゃったら。久々にレーベルの看板スターを張れるんじゃないか、というくらいの輝きを二巻では見せていたのに。微妙とは言わないけれど、これだと多数の中に埋没しちゃうよ。
しかし、こうして振り返ってみると、この人の作品の武器というかあの面白さって具体的に説明するのが難しいですよね。二巻とこの三巻、いったい何が違うのか。とりあえず、リィエルのキャラの掘り下げについてはあんまりよろしくない。彼女を扱いきれなかったのが、最大のウィークポイントだったんじゃないだろうか。少なくとも、ルミアとシスティーナの二人とリィエルが打ち解け仲を深めた描写の弱さと、リィエルの心の闇の深さの描き方、これにねちっこさが足りなかった為か、リィエルの反転のインパクトが軟いんですよねえ。あの程度でひっくり返ってしまうリィエルに危なっかしさよりも軽さを感じてしまった次第。彼女を引き止めるルミアたちとの絆も薄いため、それを振りきってしまう闇の深さも感じ取れないという往還になってしまってる。
あとねー、これはかなり偏った見方なのかもしれないけれど、クラスメイトの何人かに明確なキャラの配置の中での役割を与えてしまった事が、逆にキャラの枠や幅、関係性の自由度を限定してしまったような感じがして、眉間にシワを寄せてしまった次第。うーんでもこれって個人的な印象なんて、自信はないんですよねえ。これについては極々私的な感想ということで。
できればこのエピソードは一巻である程度決着をつけて欲しかった。これで続いてしまったのは冗長の感が否めない。全体的に微妙に物語の密度が薄かったんだよなあ、今回。
一方で、問題教師グレンをはるかに上回る常識知らず世間知らず無知無茶無謀の編入生リィエルの参入は、必然的にグレンに教師としての仕事を真面目にやらざるをえない状況に追い込むことになって、けっこうまじめに生徒のために走り回るグレンの姿を堪能できたのは楽しかった。
リィエルがちゃんと生徒の中に溶け込めるか、心を砕くグレンは何だかんだともう教師らしい考え方になっちゃってるんですよね。リィエルだけじゃなく、自分の担当クラスの生徒たちのことはよく見ていて、その生活や教室内での振る舞いなんかをきっちりチェックしていて、気を配っているんですよね。人を教える、ということについて疎かにせずに描いているあたりは、やはり好感が持てます。
できれば、次の巻はここを停滞とせずに打破していって欲しいのですが、果たして……。

1巻 2巻感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード) 2 4   

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 (2) (富士見ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード) 2】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon

正式に魔術講師となったグレンは、アルザーノ魔術学院で例年行われる魔術競技祭に向け、生徒たちに指示を飛ばしていた。
「先生がやる気出してるんだし、私たちも頑張らなきゃね!」
システィーナたちもグレンのやる気に応えるべく、優勝を目指していたのだが―当のグレンは優勝で得られる特別賞与を使った、借金返済を目論んでいただけで…!?
そして訪れる競技祭。学院が熱気に包まれる中、女王を守る親衛隊に異変が…。女王を取り押さえた挙げ句、なぜかルミアを狙ってきて!?「処刑!?そんな勅命聞くか!馬鹿」拒絶された生徒を守るため、グレンの魔術が秩序を正す!
おおおっ、なにこれ凄い面白くなってるんですけど!? 一巻も新人作品としては標準を超えた高いレベルの良作だったんですが、この2巻はそれにもまして、これが二作目とは思えない完成度なんですよね。物語性、エンタテインメント性、キャラの魅力が抜群に輝いていて、その上で語り口が軽快で笑えるところは笑わせて、ワクワクさせてくれるところは盛り上げて、緊迫感を必要とするシーンでは引き締めて、と読んでいる間、夢中になって読んでました。
楽しかった!
うん、これに尽きる。
一巻ではまだ主人公のグレン先生がヒネちゃってて心象悪かった分、それを取り戻すのに一杯一杯だった部分があるのでしょう。その分、この2巻では最初から先生らしい所を……あれ、あんまり見せてないかな。まあ給料日よりもだいぶ前にギャンブルでお給金殆どスッちゃったり、おっちょこちょいで調子の乗ってポカやったりと、うん、そういう失敗談も親しみやすいんじゃないかな。一方で、ちゃんと生徒たちの事を考えて、一緒になってお祭りを楽しんでいるあたりは、すごくイイ先生してるんですよ。誰か特定の、少数の生徒の為の教官じゃなくて、一クラス二十人近い子供たちをしっかりと見てるあたりは、特に、ね。
それに合わせて、システィーナとルミア以外の同じクラスの面々もどんどん前に出てきて、わんさと作品上を動き回るキャラたちが増えたのは、作品そのものを賑やかにしてくれて、お陰で狭い範囲じゃなくこのクラスメイトの子たちみんな、ひいてはこの魔術学院、そして世界観そのものが好きになってきているように思えるのです。
読んでて、純粋に、ああこの「作品」大好きだなあ、とニコニコ笑いながら思えるようになってきた♪
一方で、裏では前回のテロにも通じる陰謀が進行しているのですが、前回の感想で危惧していた、一教師という立場で今後、どういう形で不自然ではなく国家規模の陰謀やテロリズムへのカウンターに首を突っ込む事になるのか、というのに見事に一つの応えを出してくれたのではないかと。勿論、これは今回限りではあるんでしょうけれど、ルミアの抱えていた事情と合わせて、本当に成り行きのまま上手いこと、クラスのお祭りでの優勝も含めて、表と裏の事情を話の本筋に収束させてくれたからなあ。このあたりの構成も文句なしでした。
グレン先生、軍隊時代はあんまりいい思い出ないみたいですけれど、任務があったとはいえあんな風に屈託なく力を貸してくれる仲間、同僚が居たのなら、決して悪いことばかりじゃなかったんでしょうか。ルミアを救い、約束を交わした時のように、何もかもが無駄で酷い事だけではなかったのでしょうし。過去を全否定するのではなく、ルミアとの約束のように、仲間たちとの出会いがあったように、そこに確かな光があったのなら、これからの教師生活にも、知識や経験だけではない糧としてグレン先生を成長させてくれるのではないでしょうか。
その意味では、教師と生徒たち、一緒になって成長していける物語なのかなあ、これは。そして、グレン先生の少年の頃からの夢と情熱を、一緒に共有していけるようになるのだろうか。
今回の黒幕は、国家の中枢にまで入り込んでいて、どうやら根っこは相当に根深いものであることが発覚したけれど、そこにはあの空飛ぶ幻影の城も関わってくるみたいですし、これからの話の展開が非常に楽しみ。
ともかく、これは先々の飛躍を非常に期待させてくれるシリーズになっていました。今後の注目株ですよ。

1巻感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード) 3   

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 (富士見ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon

アルザーノ帝国魔術学院非常勤講師・グレン=レーダスは、自習→居眠りの常習犯。まともに教壇に立ったと思いきや、黒板に教科書を釘で打ち付けたりと、生徒もあきれるロクでなし。そんなグレンに本気でキレた生徒、“教師泣かせ”のシスティーナ=フィーベルから決闘を申し込まれるも―結果は大差でグレンが敗北という残念な幕切れで…。しかし、学院を襲う未曾有のテロ事件に生徒たちが巻き込まれた時、「俺の生徒に手ぇ出してんじゃねえよ」グレンの本領が発揮される!第26回ファンタジア大賞“大賞”受賞の超破天荒新世代学園アクションファンタジー!
あれ? 本当に最近、主人公が指導者というタイプの作品が増えてきているんだろうか。
この手の作品の特徴は、ヒロインを主人公が指導する、教え導く……というのでは実はなくて、主人公がある種の挫折者であることが多いのですね。レベル1からスタートして成長していくタイプの主人公ではなく、進んだ道で一通りの経験を得ている主人公なのです。その分、生徒であるヒロインたちよりも人生経験を多く積んではいるものの、その歩んでいた道からドロップアウトして教師、教官の道へと入ってきた場合が多いので、決して目をキラキラさせてお前たちを一流の◯◯にしてやるぜ、と熱血している人はあんまり居ません。むしろ、生徒たちの交流で停滞していた時間を再び動かし始める、挫折を乗り越え改めて未来に希望を抱くようになる、行き詰まりを打破して新たな夢を見るようになる、という風に生徒たちを引っ張るよりもむしろ、生徒たちに引っ張られるようにして後ろから支える形となり、一緒に進み始める、というパターンが多いのではないでしょうか。
多分に漏れず、本作の主人公にして図らずも教職につくことになったグレンも、かつて夢見た理想を踏みにじられ、失望に心をズタズタされてドロップアウトした口でした。そのまま、保護者のスネかじって高等遊民していたら、いい加減おかんに泣かれて無理やりおかんが用意してくれた講師職に就く羽目になった、という……ある意味首を絞めたくなるような経緯を辿った野郎ですが、辞めたい一心でまじめに仕事もせず、生徒たちに迷惑をかけているあたり、ちょっと殺意が湧いてきたり……いや、マジで。あの授業態度はいただけない。拗ねたくなる理由はわからなくもないが、職を用意してくれたおかんにも失礼だし、その八つ当たりに生徒たちは関係ないわけですしね。いい年した大人なんだから、もう。
社会に出て現実を知って傷ついて絶望して……だからといって、まだ何も知らずに目をキラキラさせて頑張っている学生たちを蔑むのは、彼らの可能性を否定するのは、まさに大人げない、というものなのでしょう。現実を教えてやるのは大事ですが、自分と同じ失望を共有させようというのは間違っている。幸いにして、グレンはそこまで堕落してはいなくて、むしろ生徒たちのひたむきさに、かつて自分が魔術に抱いていた理想や、楽しさ、希望と言ったものを思い出していくことになります。それは、彼の身に降りかかった出来事の中で色あせ振り返ることもなくなってしまったものですが、だからといって少年の頃、抱いていた楽しい思い出は否定されるものではなかったはず。そして、同じように今の生徒たちが抱いているものを色褪せさせていいものではないはずなのだと、思い改めてからの精力的なグレンの講師活動は……その授業内容の革新性や充実ぶりもさることながら、生徒に対しての、生徒の未来に対しての姿勢そのものが素晴らしいものでした。
可能性を否定するのではなく、守り育てていくもの。それこそ教師の鑑であり、またそうすることによって生徒たちを通してかつてグレン自身が失っていた情熱を徐々に取り戻していく様は、見応えあるものでした。
まあ難しいのは此処からなんですけどね。
教職という主体でこのまま物語の主人公を続けていくにしても、毎回テロと戦うのも変な話ですしね。先生の仕事を蔑ろにして、変な陰謀に首を突っ込んでいくのも変な話ですし、あくまで講師としてどう物語を転がしていくのか。生徒たちを教え導き、同時に生徒たちに教えられ、という主軸さえブレなければ、なんとでもなるのかもしれません。それに、空飛ぶ幻影の城、という魔術という学究の夢の目標がキッチリと存在しているので、その意味では先々までしっかりと構成が組んである土台の広い物語なのかもしれませんね。
この女子生徒の制服が、へそ出しルックなのは色々と狙いすぎなんじゃないかと心配になりますけれど。お腹冷えますよ、この制服。
個人的には、大魔術師でありグレンの保護者役でもあるセリカが、見た目の若さとは裏腹に、完全に中身子供にだだ甘な過保護オカンだったのに笑ってしまいました。穀潰し状態の時も、働くようにせっついてはいるものの、最終的に追い出すつもりは毛頭なかったみたいだし、グレンが講師として能力を示しだした時の浮かれっぷりときたら、幼稚園で息子がお遊戯会の主役を頑張ってるビデオを周囲に無理やり見せて回って自慢するお母さんか! という有り様で。ダダ甘じゃないかw
まあ実際、グレンは幼い頃から女手ひとつで育てた本当の母親みたいなものみたいなので、しゃあないっちゃ仕方ないんですが、これじゃあ弟子じゃなくて完全に息子だよなあ。しかも、子離れ出来てないw

 

12月1日


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


11月30日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月29日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月28日


Amazon Kindle B☆W

11月27日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月25日

Amazon Kindle B☆W

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


11月24日

Amazon Kindle B☆W


11月22日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


11月21日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月20日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月19日

Amazon Kindle B☆W


11月17日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月16日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


11月15日

Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月14日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月13日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月10日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W



Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


11月9日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon


Amazon


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


11月8日

Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月7日


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月6日


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月4日


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月2日


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Categories
最新コメント

Archives
記事検索
タグ絞り込み検索