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美弥月いつか

魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 8 ★★★☆   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 8】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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再起を果たし、タラードとの戦いにも勝利したベルジュラック遊撃隊は、王都ニースに向かって進軍を開始した。
ティグルとミラ、リュディはレグナス王子の軍との合流をはかり、軍から一時的に離れる。
ファーロン王を捕らえて王宮を我がものとしたガヌロン公爵は、己の野望を押し進める一方、ティグルの故郷であるアルサスを焼き払うべく、軍を差し向けた。
悲壮な決意をもって戦うことを決意するウルスの前に、おもわぬ援軍が現れる。それは風を操るジスタートの戦姫だった。
バシュラル王子はレグナスを討ちとるべく動きだし、テナルディエ公爵もまた決断を下す。ブリューヌ王国を取り巻く状況が二転三転する中で、ティグルとミラは望む未来をつかむことができるのか。

ちょっとギネヴィア王女、自由すぎやしませんかね!? 前作・スピンオフを含めても、彼女ほど立場無視して好き勝手動いてた人、いなかったんじゃないだろうか。オルガだってあれ出奔じゃなくて武者修行という体がついてたはずですし。
こんな「乱入」としか言いようがない戦場横入りはなかなかないですよ。なんで此処にいるの!? と、彼女を知ってる人も知らない人も思ったでしょうねえ。この女、確実にロランをゲットして帰るつもりだ。
バシュラル王子は軍事的には常に圧倒していたにも関わらず、要所要所で邪魔が入りベルジュラック遊撃隊にもレグナス王子の本軍にも決定打を打てないままでいるうちに、情勢が変化していつの間にか劣勢に陥ってしまっていた、という振り返ってみると何でこうなった、というような展開なんですよね。
その要所を抑える形で援軍や後方撹乱やら、バシュラルを徹底的に邪魔したのがティグルだったわけだ。その僅かな差を押し切らないといけない時に押しきれなかったのは、バシュラルの限界だったのかもしれないけれど。彼には魔の手引はあったとしても、天分はなかったのだろう。天地人のうち、人がどうしても足らなかったんだなあ。タラードがいるだけでは足りなかったか。ガヌロンは協力者であっても潜在的には敵という認識は最後まで崩れなかった以上、バシュラルはずっと孤軍だったとも言えるし。それであれだけ大暴れできた、というだけでも彼としては本望なのかもしれないけれど。
彼の根源は、話を聞いた限りではやはり母への想いなんですよね。彼が傭兵になったのも、母を支え護るためだったという。その母が病で亡くなり、その直前戦場で戦士としては致命的な傷を負ってしまったバシュラルにとって、そこで人生は終わっていたはずだった。
それを運命の悪戯から命を繋ぎ、それどころか以前よりも増した力を手に入れてしまった。彼の中で燻っていた想いはなんだったのか。父親であるファーロンへの恨み、というほど父への執着はなかったように思う。でも、母との貧しい暮らし、病に倒れ相応の治療しか与えられなかった事への悔しさは、一介の傭兵ではなく王であったのなら母にもっと幸せを与えてやれたのではないか、という未練だったんじゃないだろうか。
でも、幼馴染から伝えられた母の末期の想いは、今のバシュラルの原動力だった野心の根源に、揺らぎを与えてしまった。果たして、母の願いを自分は無視してしまったのか。独り善がりだったのだろうか。
彼が自分の力を試し、やれるだけやってみたい、という真っ直ぐな我欲に殉じたのは間違いない。それでも、ロランやティグルと比べるとどうしても芯の強さに強弱があったように思える。彼の戦いは彼だけの戦いにすぎなかったわけだ。タラードはそれにこそ共鳴共感してたんだろうけど。
親孝行、できなかったんだなあ、彼は。

こうしてみると、主要登場人物の多くはまだ親が健在だったりするんですよね、本作。前作では既に亡くなっていたティグルの父やミラの母も健在で、リュディの父ベルジュラック公もレグナスの父であるファーロン王も子供達に未だ大きな影響を残している。
でも、なかなか親孝行って出来ない状況になってきてるんですよね。ガヌロンが、ファーロンを生かして人質にとっているのは彼の在り方からしてなんか不自然だなあ、とは思っていたのですが。人質なんてやり方に価値を見出しているような男ではなかっただけに。だから、何の目的でファーロン王を確保していたのかが明らかになった時は、深い納得がありました。いやガヌロンの目的は前回わかりましたけれど、方法がまさかそっちだとは思わんかった。
瀬尾さんの方が受肉した形で生き返ってたんで、普通に同じようなものかと思ってしまってた。

ちなみに、ザイアンもお父さんであるテナルディエ公が元気なんですけど、不思議とチマチマとポイント稼いで、親孝行してるんですよね、こいつw
あんまり出来が良くないと思ってた息子が、思いの外よく働くようになったのでちょっと期待するようになってしまった、ってそれなりに親としては嬉しいことなんじゃないだろうか。
でもザイアン、人間的に成長とか全然してないんですよね。いや、全然って事はないだろうけれど、あからさまに人間的に人格的に成長したという様子はなくて、相変わらず自分を大きく見せたがる見栄っ張りの人間の小ささ、小物っぽさは変わらないんですよね。
飛竜を駆って無双! という事もできず、結構ポカも多かったり締りがない結果になってしまったり、という事も多いのだけれど、わりといいところでそれなりに活躍するものだから、どうしても見直さざるを得ないという、どう扱えばいいんだこの男w
でも、憎めなさは際限ないことになってるので、このまま小物っぽいまま功績あげていって欲しいものです。

しかし、エレンとミリッツァまで介入してきて、いつの間にか戦姫みんなジスタートからこっちに来ちゃってるじゃないですか。戦姫、勢揃い! というには、なんかえらいなし崩しというか、いつの間にか集まってしまってた、という感じなのが若干微妙なのですがw
無事、リーザの記憶が戻ったのは良かったのですが、まさか右腕があんなところから出てくるとはw
記憶が戻ったおかげで、あの純真無垢な幼いピュアリーザがいなくなってしまったのは残念なのですが、そのあいだの記憶全部あるみたいですし……これはリーザ、いたたまれないよなあ、これ。
ただ戦姫勢揃いはしたものの、前作みたいにみんなティグルとイイ仲、という感じにはなってないんですよね。リーザもこれ、良い仲間にはなりましたけれどヒロインとしてはハズレちゃってますし。
その分、リュディがグイグイ来てるのとレギン王女が意外とかなりティグルにご執心なんですよね。まあレギン王女はちょっと後発すぎますけれど、リュディは現地嫁でもいいですよ、というスタンスなのでミラ一筋のティグルをして押し切られかねない勢いがあるんだよなあ。
最後のリュディにとって厳しい展開が、ティグルとの関係にどう影響してくるのか。

あと、ミリッツァはこの娘、クリティカルに出歯亀しすぎでしょうw 興味津々のお年頃とはいえ、覗きすぎ!
もうティグルもミラもこの娘には見られてても仕方ない、くらいの覚悟がないと先に進めないぞ。多分、どこでイタそうとしてもこの娘空間転移で現れて覗いてそうですしw



魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 7 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 7】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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ブリューヌ国王ファーロンに、庶子ながら王子として認められた若者バシュラル。
彼はひそかな野望を胸に、『黒騎士』ロランを罠にはめ、レグナス王子の抹殺を狙う。
レグナスの護衛を務める女騎士リュディエーヌは、幼馴染みでもあるティグルらの助力を得てベルジュラック遊撃隊を結成、バシュラルと戦うも敗北してしまう。
リュディエーヌを、そしてブリューヌ王国の危機を救うため、ティグルは父の親友であるマスハス=ローダント伯爵に助けを求める。
彼の力を借りて、ティグルたちは再起を計るのだが、そのころ王都ニースでは、バシュラルを操る黒幕であるガヌロン公爵が恐るべき行動に出ようとしていた。
混乱の渦に呑みこまれようとするブリューヌ。数々の困難をティグルは突破できるのか。

ガヌロン、ついに動く! なんかもうガヌロンが敵サイドの主人公、とばかりに掘り下げられてるんですよね。こうしてみると、彼に限らずこのシリーズって前作のエレンがメインヒロインだったシリーズでは描ききれなかったキャラクターに光を当ててるんですよね。
早々に退場してしまったロラン然り。テナルディエ公とザイアン然り。早々に人事不省に陥ってしまったブリューヌ国王ファーロンや、シリーズ始まった時にはすでに亡くなっていたティグルの父であるウルクやミラの母であるスヴェトラーナ。シリーズの終わりにようやく出てきた新任の戦姫ミリッツァ。ギネヴィアやタラートといったメンツにもスポットが当てられ、またリュディやバシュラルといったこのシリーズで初登場となるキャラクターもそれぞれメイン級のヒロインにロランに勝るとも劣らない戦士と、見事に存在感を知らしめている。
これで戦姫たちが目立たなかったら本末転倒だけれど、ちゃんと病に倒れているサーシャ以外は全員出張ってきているもんなあ。戦姫を引退したヴァレンティナまで、情報担当としてちょいちょいいい仕事してくれてますし。

しかし、ガヌロンが最初に仕えたブリューヌ王国初代のシャルルに深い思い入れがある事は前シリーズから語られていましたけれど、ここに来てその詳細が深く掘り下げられる事になったわけですけれど……ちょっとガヌロンさん初代のこと好きすぎじゃね? しかもちょっとツンデレ入っているし。
盲信してるとか忠誠心の塊、とかではなく、口ではシャルルと呼び捨てにしているし、あくまで対等、向こうがうるさいから仕えてやった、みたいな素振りのくせに、実際の様子を見たらめっちゃ一途なんですよ。最初から最後までシャルルの王道に付き合い、その戦いに寄り添い、仲間たちが死んでいく中で唯一最期を看取り、その後も公爵としてブリューヌに仕え続けてたのって、これ間違いなくシャルルへの忠誠ですよね。魔物を食らってしまって人ならざるモノになってしまった時、シャルルの下から離れようとした時に、お前は何も変わっていないじゃないか、と引き止められてその後もそばに居続けることにしたのって、もう完全に魅入られちゃってるじゃないですか。
ガヌロンって、あの他者に対する残虐さ非情さはもう人間としての心を喪っていると思うんですよね。元からそういう人間だったとは思えないんですよね。ガヌロンの記憶から伺えるシャルルの言動からして、今のガヌロンのような人を人とも思わない残酷さ、嗜虐性、殺戮は好まないし、恐怖で派閥の貴族や民を支配するやり方も必要以上にやりすぎていて、初代を支えた名軍師としてのガヌロンにはそぐわないように思える。
魔物を食らったことで、徐々に身も心も魔物のようになってしまった、というのならそれも理解できるのです。他の魔物たちは、ガヌロンの事を食らった魔物とイコールに見ている事からもガヌロンという人間に食らった魔物が侵食して染め上げていても不思議ではないなあ、と思うんですよね。
しかし、ガヌロンは自分が魔物であることを否定し続けている。他の魔物たちを敵視し、彼らには決して迎合しようとしないまま、ブリューヌの貴族としてシャルルの後裔を見守り続けてきたことは、ガヌロンのシャルルへの忠誠と友情、思い入れを伺わせてくれるのではないだろうか。
でも、彼の中では幾ら見守っていても、シャルルに匹敵するような偉大なる王はついぞ今まで現れなかったんですよね。自分が仕えるに足る王は現れなかった。その絶望が、さらに彼の魔物化を推し進めたのか。
それとも、心も魔物になってしまっていたから、どれほどの名君が現れても認められなかったのか。自分の中のシャルルに並ぶ、上回る存在を受け入れられなかったのか。
彼の中でどれほどシャルルが美化されて特別な存在になってしまったのかは定かではありませんけれど、果たして本来のシャルルとガヌロンのイメージの中のシャルルとでは一体どれほど乖離してしまったのか。
自分の記憶の中のシャルルに囚われたガヌロンは、ついに彼の後裔に再来が現れることを諦め、シャルル当人を蘇らせることを願ってしまう。その果てが、本当の絶望である可能性など微塵も考えず。
王都を支配しながら、決して玉座には座らず、その横に立ち続け主君の復活を待つ姿は、彼の挙兵が野心ではなく拗らせた忠誠と友情と……懐旧にあることを如実に示していて、どこか切なく虚しく哀れに見える。
だが、いずれにしてもガヌロンの挙はただでさえ庶子バシュラル王子とレグナス王子の対立によって内乱状態に陥りかけていたブリューヌを一気に争乱へと向かわせるのであった。

ここで、ブリューヌ国内の各勢力が一気に動き出して、王都を目指して参集しはじめるのは情勢が加速し集束していく怒涛の勢いを感じられて、ワクワクしてくる。
それも敵と味方の簡単な二勢力ではなく、リュディとティグルとミラたち戦姫が集うベルジュラック遊撃隊に、ロランが合流したレグルス王子の軍勢。待ちの姿勢を覆して積極的に動き出したテナルディエ公の軍勢、ガヌロン一派でありながらガヌロンの思惑とはまた別の独自の考えを持って動いているバシュラル王子とタラートの軍。そしてついに動き出すエレン率いるライトメリッツ公国軍に、聖剣片手に一人乗り込んでこようとしているギネヴィア女王。いや、最後のギネヴィアさんはちょっと冒険しすぎやしませんか!? こっちには側近のリネット居ないのか、先回りして捕まえる人いなかったのか!? 意中のロラン卿をゲットするため、という目的もなかなか酷いと思うのですけどw

リーザは引き続き記憶喪失のままなのですが、精神が子供帰りしたリーザの純真無垢さが眩しい!
これでティグルにべったりだったらアレなのですけど、ティグルは遊撃隊での仕事が忙しいのも相まってあんまり関わりなくて、主に面倒を見ているソフィーヤとどんどん百合百合しくなっていくのはなんともはや。おかげでソフィーヤもティグルにちょっかいかけてる暇なくなったもんなあ。
リーザの右腕が切り落とされてしまった件は、これで戦姫としてもう戦力外になるのかと思っていたら、そこまで軟弱じゃなかったか。というか、利き腕落とされてしまったにも関わらずリーザを見捨てない操雷の鞭「ヴァリツァイフ」、根っこはワンコなんだろうか、こいつ。








魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 6 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 6】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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ブリューヌ王国に激震が走った。自らを王の落胤であると名のる青年が現れたのだ。彼の名はバシュラル。厳重な調査の末にバシュラルは認められ、正式に王子となった。
そして、大貴族であるガヌロン公爵が彼の後見役となった。
ガヌロンの支援を得たバシュラルは各地を転戦して武勲を重ね、諸侯の支持を得ていく。ごくわずかな期間で、彼は次代のブリューヌ王となるレグナス王子に対抗しうる存在となった。
冬の終わりのある日、バシュラルはついにある行動を起こす。だが、そこに計算外の要素が現れた。
黒騎士ロランの守るナヴァール城砦から火の手があがったという知らせを聞いて急ぎ駆けつけたティグルとミラたち、そしてレグナス王子の腹心のひとりリュディエーヌである。
リュディエーヌと出会ったティグルは、ブリューヌの歴史を大きく変えるであろう出来事に自ら関わっていく。
人気シリーズ、急展開の第6弾。

セカンド幼馴染きたーー! あ、いや、ファースト幼馴染はティッタだから、サード幼馴染になるのか。
というわけで、サイドテールが眩しい公爵令嬢騎士リュディエーヌ・ベルジュラックの参戦である。前シリーズでは登場しなかった完全新キャラ。サイドテールと書いたけれど、これ結構複雑な結い方した髪型だぞ?
なんか既視感あるなー、と思いながら見ていたキャラデザインなのだけれど、そうか、リリカルなのはのヴィヴィオに似てるのか。スッキリした。
いやこの期に及んで新キャラ、しかも幼馴染って、と思ったけれどこれが遅れてきた最終兵器の様相を呈する強キャラでした。幼馴染と言っても、ずっと一緒に居たタイプじゃなくて毎年ある季節に遊びに来ていた来訪型なんですが、ティグルと一緒に山の中を駆け回っていたという意味ではミラと負けず劣らずで、色んな意味でミラの最大のライバル出現、なんですよね。
何よりキャラクターがいい。性格は明るく活発で前向き。ちょっとドジっ子な所もあるのは愛嬌で、
気性は素直で女の粘っこい所が全然ないんですよね。同性相手にも嫌味がなくて、ミラに対しても無邪気なくらい当たりが良くて、裏表がないものだから、ティグルに幼馴染全開で身近に親しく接するリュディにミラもモヤモヤするものの、どうしても敵意や対抗心を持てないという感じになってしまってるんですね。
戦士としての技量も相当のもので、竜具やそれに匹敵する伝説の武器こそ持たないものの技量に関してはミラも自分と同等以上、エレンと比べても引けは取らないのでは、と評価する強者で、女性キャラとしては最強格なんですよね。だから、ミラも同じ女性の身の上で自身を鍛え上げたリュディを騎士としてこの上なく認めている。おまけに自分の紅茶の趣味でも結構話が合って話題も尽きないし、ティグルとの距離感の近さもミラに見せつけようとするものではなくて、二人の世界を作らず自然にミラの方へも距離感詰めてきて気の置けない様子で接してくるのである。それも気を遣ってとか気を回してみたいな意識的なものではないんですよね。
ミラって、オルガにも入れ込んでたようにこういう純真で直向きで悪意とかまったくないタイプって弱いですよね。ミラ自身面倒見が良いタイプというのもあるんだろうけど。
リュディの方はこうしてみると、人間関係引っ掻き回しているようで、ミラがあれだけティグルと眼の前でイチャつかれているにも関わらず絆されてしまっているように、これ誰とでも仲良くなれるっぽいタイプなんですよね。グイグイと懐に飛び込んで、自分とだけじゃなくて周り同士を繋いでしまうような。何気にハーレムなんかだとヒロインたちのまとめ役みたいになりそうなポディションだぞ。
この物語においても、リュディってこうしてみるとティグルとあらゆる意味で相性ピッタリなんですよね。山に放つと帰ってこないティグルと一緒に山野を駆け回れる活動派だし、お姉さん風吹かせつつドジっ子要素でティグルも目を離せずにいてしまうタイプでお互い変に気を使わずそのままで過ごせる距離感ですし、同じブリューヌ国民であり、公爵令嬢として嫁にすればティグルの国内での躍進に寄与する立ち位置ですし。彼女の実家であるベルジュラック家というのはちょっと特殊な立ち位置の公爵家で、血を取り込むことに積極的であまり身分差とかはこだわらない所らしいんで、ヴォルン伯家でも結婚相手としては何の問題もないようなんですよね。
他国の貴人として、ティグルとは身分差だけではなく国の違いというものが大きく横たわっているミラとは、ハードルが全然違ってくるんだな、これが。ティグルが国を捨てずにブリューヌの貴族として生きていくなら、リュディエーヌこそが最上のパートナー足り得るわけで。
ミラとしては、リュディエーヌの登場はかなりショックなことだったんですね。
今回のブリューヌの内乱で自分がブリューヌの人間であることを強く意識しだしたティグル。これまで他国をめぐり、そこで自分の国を立て直そうという人たちと一緒に戦ってきた事も大きいのでしょう。外国で過ごすことで、自分の出自や故国をより強く意識するようになるケースはよくあるようですが、ティグルも今改めて自分の国について自分がよく見ようとしてこなかった事に気づき、自分がアルサスという自分の故郷だけではなく、ブリューヌという国自体に帰属意識を持っていることを自覚しだしているのである。
ミラと結ばれるため、という最大目標の他に、この故国ブリューヌという国を自分の手で変えていく、という事をこの内乱とリュディエーヌの誘いをきっかけに考え始めるんですね。
それは、ミラにとってある種のパラダイムシフトでもあったわけだ。これまではティグルが自分を射止めるために、武功を上げて立場を獲得して自分のいる所まで駆け上がってくるのを、期待して手助けして待ちわびていたのだけれど、リュディエーヌは公爵令嬢というティグルよりも立場が上の人間であるのだけれど、待つのではなく彼の隣に自分が駆け寄ることに躊躇する事がないのを知って、自分が彼の隣に立とうと自分から動こうとした事がないこと。今回ティグルが他国との内通を疑われたように、自分と仲良くすることによってティグルが被るデメリットがあったように、リュディと違って自分が彼に与えてあげられるものが、どれほどあるのか、という疑念。
こういう形でミラがティグルと自分の将来について、不安と心もとなさを抱いたのは初めてだったんじゃないだろうか。それは、ティグルがいずれ自分に矢を届かせてくれるという信頼と期待と愛情とは関係ない、ミラが自分自身に抱いたティグルと結ばれるに足る資質と資格への疑念だったわけですから。
即座に解消、とまでは行かないもののミラの憂いを晴らしてみせるあたりが、さすがティグル、といった所なのですけれど、今回のことはミラにとってもティグルとの関係を進める上で意識を変えるものがあったんじゃないでしょうか。
ティグルは、ミラに一途なんですけどねえ。

さて、今回のブリューヌの内乱には新たに庶子として王族にたったバシュラル王子という新キャラの登場があったのですが、ガヌロンを後ろ盾に表舞台に立った、という時点でこいつ傀儡かそれとも魔物の擬態か? と一旦は疑ったのですけれど、どうやら純粋な人間であり本当に王子であり、ガヌロンとは利用し合う関係以上のものではなく、彼個人としてはガヌロンのヤバい部分には気づいていて、いずれ袂を分かつつもりはあるようなんですよね。
それ以上に、元傭兵であり彼個人がロラン級の戦士というのが何ともはや。いやいや、ロランと互角以上ってこの世界で実質最強格ってことじゃないですかー。ミラたち戦姫よりも確実に上、複数人掛かりでも勝てず、って魔物じゃない人間相手だと初めてなんじゃなかろうか。
おまけに、アスヴァールから流れてきたタラードが仕官していて、弓の腕ではティグルに匹敵する上に指揮官としても最上級のこの男がロラン級の戦士にして指揮官であるバシュラル王子と組んでいる、ってちょっとヤバくないですか?
実際、ティグルはミラとリュディエーヌと共に戦って、最初は何とか逃亡。諸侯や騎士団をリュディが糾合して軍勢として戦った次の戦いでは、敗走の憂き目にあったわけで。
ミラが自軍を率いていなかったのと、ティグルが一勢を率いるだけの権限を持てずに指揮権を持てなかった、という点が大きいにしても、完全にバシュラル・タラードのコンビに敗北を味わわされる結果に終わったんですよね。このバシュラルの強敵感よ。
これ、こっちも早くロランと合流してのロラン・ティグルの最強コンビを組まないと対抗出来ないぞ。
このバシュラルも、ガヌロンから与えられたという形とはいえ、オートクレールという伝説の武器を携えているわけで、また伝説の武器持ちの英雄が現れたということなんですよね。
各国それぞれにレジェンド級の武具を携えた英雄たちが降り立ち、割拠するというなんか群雄伝の様相を呈してきて、前シリーズよりも戦記寄りのダイナミックな展開になってきたなあ。

しかしロラン卿、今回だけで二度も「ロラン暁に死す!」になりそうな死亡フラグ全開の展開を切り抜けたんですよねえ。ほんと、ロラン卿しぶとい!

そして、ソフィーに拾われたエリザヴェータが、記憶喪失のお陰で外面を全部引っ剥がされて根っこの部分の正義感たっぷりの優しいイイ子な所が思いっきり曝け出されてしまい、おかげさまでソフィーが思いっきりリーザに情が移ってしまって肩入れしてしまうことに。
記憶ないとここまで人懐っこいのかリーザってば。まさかここで、ソフィーとリーザがここまで親密なコンビになってしまうとは。記憶の方は早晩戻りそうな気配があるのだけれど、その前にエレンとも会っておいてほしいなあ。エレンの反応が面白いことになりそう。或いは、エレンの方からリーザに気づくことも可能になりそうだし、今のリーザなら。


魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)5 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)5】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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アスヴァール王国の内乱は、勝者となったギネヴィア王女が宝剣カリバーンを正式に継承し、父王の跡を継ぐ形で幕を閉じた。ティグルはブルガスの地で手に入れた黒い鏃にまつわる『魔弾の王』の足跡を追って、ミラたちとともにザクスタン王国へ向かう。ザクスタンでは王家と土豪が対立を深めており、各地で小さな争いが頻発していた。王都を目指して旅をしていたティグルたちは、雪の降る山中で因縁のある魔物ズメイに遭遇する。激闘の末にティグルと離れ離れになってしまったミラは、ヴァルトラウテと名のる土豪の娘に助けられる。彼女の傍らには、少女と呼んでいい年齢の戦姫の姿があった。山と森の王国で、ティグルとミラは新たな戦いに身を投じる。

ザクスタン王国で出会ったのは、14歳の最年少戦姫のオルガ・タム……14歳だったのか! ミリッツァが15歳なのでほんとに一番下じゃないですか。しかも、二年ほど自分のブレスト公国を出て放浪していたらしいので、戦姫になったの12歳だったんですね。子供じゃないの!
そりゃ、公国の運営とかそうそう上手くやれんわなあ。
前作でもオルガは戦姫になった直後に公国を出て旅に出てたんだけれど、実際に何があって自分が領主には相応しくないと思うに至ったのか具体的な話は出てきてなかったんですよね。なので、どちらかというと最良の領主とはというテーマに対して哲学的に悩んでるみたいな感じになってて、その解決もティグルを見初めてアルサスという領地を守るという明確な意識を持っていた彼を観察するために行動を共にするうちに、そのまま特に具体的な解決があったわけではなく流されてしまった感があったんですよね。
一方、今回はまず最初にあったのがミラだったからか、彼女が戦姫として立派に領主を務めている事もあって彼女に相談することに。その際、オルガの経験不足や潔癖な姿勢から起こしてしまったミス、失敗例などが話にあがって、なるほどなあ、と。
これは誰が悪いということではなく、本当に経験不足ゆえだったんですよね。ミラのように生まれが代々戦姫の家柄で、幼い頃から教育を受けていたわけじゃなく、傭兵として生きていたエレンや商家の人間だったというソフィーのように実地で経験を詰んできたわけでもない、遊牧民族の中で生きてきたわずか12歳の子供にいきなり公国の政務をやれ、と言われてもできんわなあ。
いや、それまで公国の運営を担ってきた文官の人たちも決してオルガを蔑ろにしていたわけじゃなく、むしろ幼い彼女を慮り気遣って尊重しすぎたことがまずかったのか。この娘、傍目こそ無口で無表情で何考えてるかわかりにくい娘なのだけど、凄く真面目で何事にも真剣で緩みがない娘なんですよね。いや、遊牧民族らしい自然体こそが本質なんだろうけど、慣れない環境で肩肘はって頑張っちゃったんだろうなあ。
でも、こういう娘、ミラからするとどストライクだと思うんですよね。真面目な子、シンパシーが通じると言うか、ミラってこの手の娘凄く相性いいんですよ、多分。なのでか、随分と親身になってオルガと接することに。
ミラの変化、ティグルと出会った事によって戦姫という枠組みにはめ込んだ自分だけではない、枠組みを広げて俯瞰的に余裕を持って違う視点から自分の立ち位置を振り返ることが出来るようになっていた事が、余計に悩むオルガに親身になれた要因なのかもしれません。
自分でもちょっと触れていますけれど、ティグルと会わなかったミラなら、戦姫としての責任を一時とはいえ棚上げして、放浪の旅に出てしまったオルガのこと、たとえ理由があったとしても未熟と断じて突き放しそうですし。代々戦姫を継いできた家柄ゆえのプライドが、そういうの甘えとして見たんじゃないかな、というのが前シリーズのミラからは伺えましたし。
その意味でも、ミラとオルガがこんなに仲良くなるのはちょっと意外なくらいで面白かった。こんな世話好きだったっけ、と思うくらいオルガの事可愛がってますし。妹みたいに思ってるんじゃないだろうか。この新しい関係性はなかなか新鮮で味わい深いです。

さて、舞台はアスヴァールからザクスタン王国に。国が変われば自然も変わり、国情も変わってくる。漫遊記みたいになってきたなあ、と思いつつ国をまたぐたびに景色が変わるのもまた何とも楽しい味わいで。ザクスタン王国は前作でも戦争してたりしましたけれど、実際にザクスタン本国に足を踏み入れることは……あったっけ。ただあったとしても軍勢を率いての進軍、という形だったと思うので国の中を実際に歩いて周りを見渡し、匂いを嗅いで人々の生活の様子を眺めて、という風情ではなかったですからね。このアスヴァールとはまた違う深い森の国の様子はなかなか情緒的なものがありました。人狼、と呼ばれるあやしい存在の噂がまた拍車をかけるのですが。
それに、国の体制も他と違って王家の力が非常に弱く、土豪と呼ばれるこれもう独立勢力ですよね、公然と王家と張り合ってる勢力と常に小競り合いしてるような情勢で。
そんな中で、魔物との交戦によって別れ別れになってしまったティグルたちとミラ。はからずも、王子と行動をともにするようになったティグルたちと、土豪連合の主力を担うヴァルトラウテという若き女主人に保護されたミラ。なんか、ロミオ&ジュリエットな様相も呈している状況のなかに首を突っ込んでしまう。ジュリエットがまた勇ましいんですけどね。勇ましいと言っても性格的には理性的で、むしろ家のしがらみに囚われているというべきか。先代の父を王家とのトラブルで喪ってしまったが故に、余計に土豪としての立場にこだわってしまっているというべきか。心情としては王子の側にあるのに、自縄自縛になっていた所にミラとオルガという外の人間であるからこそ胸襟を開けて話せる友人と出会えて、想う所変わっていくという感じでしたね。
同じく領主としての悩みを抱えるオルガに、自分と同じ女領主として戦士として堂々と振る舞いつつ恋にもまっすぐ生きているミラ。影響を受ける、という意味では実に効果的な二人でありましたし。
王子の方はひたすらいい人で、こいつ大丈夫かと思うくらいお人好しなんですよね。ただなよなよしてるし戦う力はないものの、無力さに打ちひしがれて縮こまらずどんどん行動に出る気力があり、聡明でもあり、彼を侮らずに脇を固める人材がいたら見違える気配はあるんですよね。実際、ティグルが協力することで一気に状況を打破できたのは、彼の手腕でもありましたし。何より、あの一途さは好感を持たざるを得ないですわ。

しかし、魔物側の思惑も相変わらずまとまっていないというか、個人個人で勝手に動いているというか。最終目的は一緒のはずなんだけれど、やはりこのシリーズの最大の敵はミラの祖母の体を使っているズメイ、ということになるのか。今回の人狼と呼ばれる人の意識を失わしめ徐々に怪物に変えてしまう存在も、ズメイの仕込みだったわけですし。
このザクスタンでは、宝剣バルムンクが登場してきましたけれど、どうもこの剣は一筋縄ではいかなさそうな気配があるんだよなあ。なんか、危険視されて封印されてたみたいだし。今の所、ヴァルトラウテが使ってるけれど特に怪しい影響はないんだが……。

ところでこれ、結果的にザクスタン王国、中央集権化が進みそうなんだけど、隣国であるブリューヌ的には大丈夫なんだろうかw ティグルくん、思いっきり手助けしちゃってるけど。

さて、前回えらいことになってたリーザですけれど、途中で彼女に呪いかけてた魔物の婆ちゃんが呪いが解かれちゃった、という話をしだして、その流れであいつ死んだわー、みたいな話になってて、マジかー! と結構焦ってたんだが、どうやら生存はしていたみたいで……。
でもこれ、まさに前シリーズと真逆の立場になっちゃってませんか、リーザさん。残念ながら拾ってくれたのティグルではない、という時点で不憫度はまったく解消されてないのですが。どうもソフィーが引き取ってくれそうなので、変なやつに拾われてない分まだマシなのかもしれませんが。

そして、なんかもう登場するだけで面白くなってきたザイアンくん。お父さんに怒られるの巻。竜の世話係の娘が理不尽な目にあった、と勘違いして父親への恐怖も忘れて激高するなど、なかなか良いところも見せてくれましたけれど、オチがやっぱりザイアンくんでナイスザイアンw
いやでも、ザイアンくんちょっとチョロすぎませんかねw 勝手にどんどん侍女のアリエットへの好感度あげてってるんですが。多分、アリエットの方は別に好感度あがってないぞw


魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)4 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)4】  川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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エリオット王子を利用してアスヴァールの内乱に介入すべく派遣されたティグル、ミラ、ソフィーたちジスタート軍は、暴虐の限りを尽くしていた魔物・トルバランを討ち取り、港町デュリスの解放に成功した。が、王子の急死という予期せぬ事態の発生により、急遽、ギネヴィア王女を総指揮官とするアスヴァールおよびブリューヌとの連合軍を結成して、ジャーメイン王子と対峙することに。ジャーメイン王子の勢力圏へ橋頭堡を築くために港町マリアヨを目指す連合軍だったが、待ち構える敵の船はこちらの倍以上。圧倒的劣勢の中、アスヴァールの覇権を巡る戦いの幕が上がろうとしていた。

ミリッツァちゃん、この娘いい性格してるわー。性格というか、おませさんというかエロ小娘というか。エザンディスの瞬間移動能力をヴァレンティナとは別の意味で悪用してやがるw
しかしヴァレンティナ、この世界線でも他の戦姫たちから嫌われてたのかー。どうせ寿退社した件で他の戦姫たちにマウント取りまくったとかそんなんじゃないのか?

さて、アスヴァール内乱編は本格的にギネヴィア立志伝という体の戦記モノに。後ろ盾を持たないギネヴィアが頼らざるを得ないのは、ブリューヌ軍とエリオットの死によってギネヴィアに乗り換える事にしたジスタート軍という外国軍という状況なのだけれど、地元に基盤がないというのが逆に今のアスヴァールの状況では差し引きプラスに働いた、というべきなのか。
大陸派と島派の対立構図が激化している現状では、どちらの諸侯とも縁を繋いでこなかったギネヴィアはフラットな立場で扱えるということなのだけれど、勿論扱いを間違えると父王のようにバランスを重視しすぎて何も出来なくなってしまうか、内部対立を激化させて組織集団としての体をなくしてしまうか、のどちらかなのでギネヴィアの手腕とカリスマが問われることに。
こういうケースだと、外国軍であるブリューヌとジスタートは傀儡とならずとも主導権を握って権益や利益を確保しまくり、自国に都合の良い政権を誕生させようと尽力するものなんだけれど、何しろブリューヌ側の指揮官は清廉な騎士であるロランだし、ジスタート側も寝技は得意だとしても悪辣ではないソフィとミラなだけに、ほんとに純粋な支援軍みたいになっちゃってるし。
勿論、ギネヴィア政権が誕生したらその功績からアスヴァールには多大な借りを貸し付けることになるんだろうけど、良心設定になるんだろうなあ。

ともあれ、後手後手に回ってしまったジャーメイン。さらに疑心暗鬼を募らせて信望を喪っていってしまったのも相まって、戦況はギネヴィア有利に。海戦での大勝がきっかけだったとはいえ、なんとか島派・大陸派を取りまとめて戦略も堅実に進めて間違わなかったギネヴィアの手腕は大きかったのではないかと。この点、ギネヴィアを侮ったジャーメインの失点ですね。この内乱がはじまるまでギネヴィアを眼中に入れていなかったのも、それまでのギネヴィアの自由気ままな振る舞いを見ていればわからないでもないのですけれど、内乱始まってからのギネヴィアの動きを注視していれば、もう少し積極的に動けたのかもしれません。戦姫や黒騎士ロランの輝きに目を取られてギネヴィア本人の資質に目を曇らせてしまった、とも言えるのかもしれませんが。

しかし、まさかのザイアンくん登場参戦ですよw
相変わらず性格ネジ曲がってますけれど、仲良くはなれないけれど信頼はできる、というくらいに成長したんじゃないでしょうか。人間的な余裕が出来た、というべきか。あれで出来たの? と言いたくなる所だけれど、昔のザイアンなら飛竜にちょっかいかけようとした子供を止めることすらしなかっただろうしなあ。あの若干飛竜に舐められてる竜との関係は愉快なんだけど、もうちょっと頑張れと応援したくもなりますなあ。

一方でひとりえらい目にあってしまうリーザさん。この娘、相変わらず貧乏くじ引いてるよなあ。仮にも戦姫が暗殺者紛いの仕事を請け負っているという時点で、他の戦姫よりも公国の王としての立場苦しいんじゃないだろうか。他の貴族からの要請を断れない、という事でもありますし。
しかし、あのラストの展開はどう持っていくつもりなんだろう。ギネヴィアとしても、今回の一件は変な形でボタンを掛けてしまった気がしないでもないですし。なんか変なスイッチ入ってません?
リーザもまさかあれで、とはならないでしょうけど。むしろ、彼女の右手の問題が早く解決するきっかけになればいいのだけど。ってか、この世界でもリーザってばエレンにボコられて例の力望んじゃったのかしら。

今回はロランとがっつり組んでのタッグ戦、みたいな形になっていたティグルですけれど、この二人の相性ってもしかしたら戦姫たちよりも上なんじゃないだろうか。息ピッタリすぎやしませんかね!?
ってか、ロランのデタラメっぷりがホント凄いんですけど。こいつ、人間か!?
そんなロランが前衛にいたら、後ろからティグルがやりたい放題なんですよね。もちろん、竜具を使う戦姫たちとティグルのコンビはその竜具の能力や黒弓との相乗効果も相まってバッチリ以外の何者でもないのですけれど、ロランとティグルのそれは虎に翼、という感じすらしたんですよねえ。
二人共、純粋に技量が噛み合った結果、なのかもしれませんけど。にしても、繰り返しになるけどロランがバカ強すぎるw

シリーズ感想

魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)3 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)3】 川口 士/ 美弥月 いつか  ダッシュエックス文庫

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ライトメリッツを襲ったアスヴァール軍を撃退し、エリオット王子を見事に捕らえたティグルたち。ジスタート王国はエリオットを利用して、アスヴァールの内乱に介入することを試みる。遠征軍の指揮官に任命されたのはミラとソフィーの二人だったが、その人選にはいくつもの思惑があった。
同じころ、アスヴァールの王女ギネヴィアは、自らの野心をかなえるためにブリューヌ王国を訪れていた。ブリューヌは黒騎士の異名を持つロランに、あることを命じる。
野心家たちが入り乱れ、混迷渦巻くアスヴァール島で、ティグルとミラの前に新た
な強敵が立ちはだかる。戦いの先で二人は何をつかむのか――。
アスヴァールって前作では特に元ネタがどこに国とか意識していなかったのだけれど、今回はハッキリとイングランドがモデルとわかる描かれ方になっている。とはいえ、大陸側に領地を得る過程など歴史的推移に関してはイングランドのそれとはだいぶ違っているので、史実のイングランドと重ねて考える必要などこにもないのでしょう。ただ聖剣カリバーンが実在し円卓騎士団がかつて存在したというのはかなり重要になってきます。
このシリーズだとジスタートの戦姫たちが携えている竜具とティグルが持つ「黒い弓」以外にも魔物に対抗できる伝説の武器が各国に一つ以上はあるみたいなんですよね。いや、実際に国ごとにあるかはわからないのですけれど、ブリューヌには現在ロランが所持しているデュランダルがあり、こっそりギネヴィアがくすねていたカリバーンと、色々と登場してくるんですよね。そして、それらは実際に得意な力を秘めていて、魔物たちと相対せる力を持っている。ギネヴィア王女は前作ではタラードが下剋上した時の旗印というか神輿という扱いで特に自己主張していなかったのですが、今回のシリーズでは兄弟の争いに割って入る形でブリューヌに助力を求めて女王として立つために第三勢力として名乗りを上げて、さらにカリバーンの所持者として戦場に立つことに。前は立ち絵すらなかったのに、今回は挿絵にもバンバンと登場して戦姫はジスタートの専有ではありませんぞ、とばかりに大活躍。泳げなくて溺れるロランを自ら海に飛び込んで助けたり、と活発に動いてますし何やらロランにご執心。さらに彼女に指針を与えたのが昔ブリューヌを訪れたときに出会ったティグルのお父ちゃんというのだから、ティグルにも縁があるわけで面白いポディションになってきてるんですよね。
ジスタート側は前回ライトメリッツにちょっかいかけて捕えたエリオット第二王子を傀儡にして後押ししアスヴァール王に仕立てようと、ミラとソフィーの軍を派遣させたわけですけれど、ブリューヌ側も王様がけっこう積極的に動いていて、ギネヴィア王女を支援してロランたちの騎士団を送り込んで来てるんですよね。彼女が女王になればよし、そうでなくてもガヌロンの暗躍の裏付けを取りにかかっているところなど、ブリューヌ王がかなり意欲的なんですよ。この方、元気だったらこんなに政略にも謀略にも手を伸ばせる人だったのか、と感心する次第。
とはいえ、現状ミラについているティグルとしては、アスヴァールの地で故国と対立する陣営に立ってしまったわけで、これ困るよなあ。
幸い、魔物トルバランが暴れまわっていたお蔭で渋々共闘しなくてはならなくなったエリオット王子側とギネヴィア王女側。でも、トルバランが動き出してなかったらティグルとしては非常に苦しい立場に追い込まれてたんじゃないだろうか。とはいえ、ティグルの行動もブリューヌ王の指示でもありますし、王命に違反しているというわけでもないんですよね。その点を押し出してティグルってばミラの元から離れる気は一切なかったようですけれど。ミラの味方をし続ける、という点に関してはティグルはどう情勢が変わっても譲らない覚悟はあるようで。ある意味ブリューヌという国もアルザスという故郷も、今のティグルにとっては重くはあってもミラよりは軽い、という比較になってるっぽいなあ。親父殿が生きていて、弟が生まれているという前作からの変化が、ティグルの気持ちを想像以上に軽くしているように見える。
しかし、エリオットはあの退場の仕方はなかなかひどいと言うか可哀相というか。さらっと彼なりの王になりたい動機やギネヴィアにはちゃんと告げなかったけれど、王位を得たらどういう国を作るかというものに伝統を廃してやりたい指針を持っていたようなので、それを誰にも告げず知られず秘めたまま、結構雑に退場させられたのはなんとも無残な話であります。これ、何気にミラとソフィの失態として本国から怒られちゃうんじゃなかろうか。まー、ジスタート王がどれだけ本気だったかどうかだけど。
しかしトルバランはこっちでもやはり強大な敵でした。変な異能ではなく、純粋に化物としてのパワーで押してくる、ってレベルを上げて物理で殴るそのものなので、ちょっとどうしようもない所ありますもんね。しかも、トルバランの特性として竜具を眠らせてしまう、というのがあるのでこっちの特殊能力で押し切るという手段がとれないですし。
デュランダルを装備したロラン、という人類最強の近接戦闘型人間がいなかったらまともに太刀打ちすら出来なかったんじゃなかろうか、今回。前作ではついに実現しなかったロランとティグルの同じ戦場、同じ敵を前にしての共闘、という夢のタッグマッチが見られたのは感慨深いにも程があります。剣のロランと弓のティグルのタッグってそれもう無敵じゃないですか。
それですらもトルバラン相手だと負けそうになったわけですから、どれだけ強かったんだ、というところ。ロランが為すすべなく吹き飛ばされる場面とか想像だにしなかった。

前作ではアスヴァール王になったタラードだけれど、今回は今も第一王子の麾下にいるようで。おとなしくしているようなタマではないですけれど、ギネヴィアはカリバーンの力もあって自力で女王へと登極しそうな勢いですし、傍らにはすでにロランを配しているわけで、タラードはどうなるんだろうホント。
そして、竜を乗りこなせるようになりつつも、竜騎士ドラゴンライダーになったらなったで意外と実際に竜に乗って戦うって難しいというか戦いようがないことに気づいて愕然とするザイアンくんw
竜に乗っての偵察って何気に戦局に重要な価値をもたらしそうな兵科ではあるんですけれど、公爵の御曹司が担うのって確かに微妙ではあるんだよなあ。テナルディエ公爵が危惧しているように、かなり危険でもありますし。どうするんだ、ザイアンくん!

シリーズ感想

魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)2 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)2】  川口 士/美弥月いつか ダッシュエックス文庫

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ブリューヌ、ジスタート連合軍によるムオジネル侵攻は、失敗に終わった。アルサスに帰還したティグルだが、国王からの密命を受けてジスタートへ向かう。愛するミラとの再会を無事に果たし、オルミュッツを訪れたティグルを、新たな出会いが待ち受けていた。ミラと険悪な間柄で知られる戦姫“銀閃の風姫”エレオノーラが来ていたのだ。一方そのころ、北西の王国アスヴァールは、ジスタートに野心の牙を向けようとしていた。そこには、戦による混乱と流血を望むブリューヌのガヌロン公爵と、そして魔物の影があった。黒弓と竜具に導かれるティグルとミラの運命は。新たな魔物との戦いが幕を開ける!
前作のメインヒロインであるエレン、ミラがヒロインとなったこちらのストーリーでは領地同士の繋がりも乏しいし、今回はしばらくは疎遠という形で行くのかなー、と思ってたら第二巻で速攻ガッツリ絡んできた。
もともとミラとはライバル関係だし、アルサスとエレンのライトメリッツも隣国と行っていい距離だし関わり合いにならないほうがおかしいか。いやでもね、前回のメインヒロインだけあってエレンとティグルってやっぱりべらぼうに相性いいんですよ。初対面で意気投合してしまうくらいには。しかも、身持ちの固いミラと違ってエレンてばやたらと全裸登場する始末。いや、エレンさんてばティグルに裸見せすぎじゃないですかね!? もうこれエロス担当ヒロインじゃないですかー。
ミラが思わずやきもきしてしまうのも無理からぬところでしょう。ただでさえ、ティグルとは表立って付き合えない身分差の恋ですものねえ。ティグルが一途で居てくれているからいいものの。これに関してはミラからはどうしようもなくて、ティグルが身を立ててくれないとどうにもならないですからねえ。それに、ある意味一代の戦姫だったエレンと違って、ミラのところは代々が戦姫を継いでいる家柄というのが、ティグルとの婚姻を面倒なことにしているわけで。ティグルも軽々には婿入りとか出来ない立場だもんなあ。親父殿が健在で幼く腹違いとはいえ弟がいる、というのは前作と大きな違いではあるものの……。下手に出世してしまっても、そうなると所属している国が違うという壁が隔ててしまうわけで、いやこれ前作よりかなりヒロインと結ばれるハードル上がってるなあ。
おまけに、魔物との戦いが本格化しはじめたこともあって、ティグルには早々に後継者、子供を作ってくれないと困るという話が持ち上がってしまい、これはまた形は変わってもまたぞろ嫁さんたくさん出来てしまうパターンなのか。
国内情勢も、ティナルディエの嫡子であるザイアンが生きてて竜騎士になるべく頑張ってたり、黒騎士ロランがバリバリ現役でファーロン王もガヌロンから手出しされていないのか健在と大きく異なっていたけれど、ここで国際情勢の方も前作とは大きく様相を異にしてきてアスヴァール王国の内乱もギネヴィア姫の動きが大きく変わっていて、これ成り上がったタラードどうなるんだろう。

ムネジオル王国の方でも、ダーマードがなんか第二の主人公みたくアイシェ姫をヒロインにして独自のストーリーを展開していて、こっちも目が離せない状況になってるんだよなあ。
もう一人、戦姫ミリッツァも今回ミラにもティグルにも会わないまま、一人でアルザス訪問したりと動いている様子が描かれていて、ある意味ソフィよりも重要な役どころなのかもしれない。

あ、ルーリックもちゃんと登場してくれましたが髪があるルーリックって新鮮w

シリーズ感想



魔弾の王と凍漣の雪姫 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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弓は臆病者の武器。祖国でそういわれ続けてきた少年は、少女の言葉によって己の進むべき道を見いだし、守るべきものを得た。二年後、ブリューヌ王国はジスタートと同盟を組み、大国ムオジネルと開戦する。ティグルは病に伏せた父ウルスに代わり、初めての戦場へと向かった。戦争は順調に進んでいるかのように見えたが、奇襲を受けブリューヌ軍は戦線崩壊する。敗足するティグルの部隊。その窮地を救ったのはオルミッツ公国の戦姫、リュドミラだった。二年ぶりの再会を喜ぶ二人。しかし、その行く手には新たなる戦いが待ち受けていた。戦乱の世を舞台に、伝説の時代より続く闇の勢力との戦いが、今はじまる!!
MF文庫で展開された【魔弾の王と戦姫】シリーズの完全IFシトーリーとなる本作。リュドミラをメインヒロインに完全新作として展開されることになったのですが……ティグルがエロ小僧になってるー!
いや、見境なく女好きというわけではなく、幼い頃に交流のあったミラ一筋なんだけど、若さ故の欲望に対してかなり素直になっているというか、このエロ小僧め! 一方のミラの方もそんなティグルにだだ甘なんですよね。
前シリーズでのティグルがエレンと結ばれるまでかなりストイックで恋愛ごとからは本人的には後回しにしていたことから考えると、身分差のあるリュドミラと結ばれるために功績をあげようと意欲を燃やしているティグルは、何とも新鮮というかミラに一途な恋に燃える情熱的な男になってて、かなりキャラ違うんですよね。
最初は戸惑っていたのですけれど、考えてみると前作のティグルが早くに父ウルクを亡くしてアルザスの領主として責任ある立場となり、常にアルザスの事を最終盤に至るまで自分の中の最重要に位置させて動いていたのを考えると、本作ではウルクが生きていることで領主という責任や立場から自由になり、一人の青年として生きていることがこの違いになっているのか、と思い至ることでストンと腑に落ちたわけです。何気に、ティグルに年が離れているとはいえ弟が出来ているというのもポイントかと。いざとなっても、ちゃんとアルザスの後継者が他にいるという安心感は大いに軛を断つものですし。
これはヒロイン側のリュドミラの方にも該当していて、前作では早世していた母で戦姫だったスヴェトラーナが戦姫は引退したとは言え、元気に健在しているというのも大きいんですよね。ティグルと同じく彼女も若くして後ろ盾となる母を亡くし、公国を引き継いで背負って戦っていたわけですから、色々と自由にならない部分もあったし精神的にも決して余裕があるわけではありませんでしたからね。それでも立派に戦姫であり公王をやってのけていたのですが、この立派という部分に縛られたところも大きかったかと。その意味では、戦姫を継いでいるとはいえこっちのミラは自由度がマシていますし、幼い頃にティグルと過ごしたことでミラに本来あった冷厳さが削がれて人格的にもすごく柔らかくなった、というのは周りの人からの評価でもあるようですし。
まあ、あのミラとはまたぜんぜん違う姉御肌のラーナ母さまが後ろでドーンと控えていてくれたら、ミラもやりやすいですわ。そのやりやすい分をティグルへのだだ甘っぷりに随分とつぎ込んでいるようですけれど。
ビジュアル的にも髪伸ばしているせいか、随分印象は異なってしまいましたが、甘やかしつつもきちんと厳しくするところは厳しくするあたりは、ミラらしくてそこらへんは変わってないんですよねえ。川口作品とは長いお付き合いとなる絵師の美弥月 いつかさんですが、やっぱりこの人と八坂ミナトさんは、川口士作品にはなくてはならないパートナーだなあ、と実感しております。

他にも色々と歴史が変わっている世界観ですけれど、一番の仰天部分はやはりヴァレンティナ様でしょうこれ。大鎌の竜具・虚影エザンディスは、前作でも最後に出てきたミリッツァに既に引き継がれてて、本作でもミラ以外に登場する戦姫としてミリッツァ大活躍だったのですが、その前の持ち主であるところの、そして前作ではラスボス級の黒幕として暗躍していたヴァレンティナが……なんか本作では既にえらいことになってしまってるんですがーーー!!
爆笑してしまいましたがな。
もしかして、前作で彼女を駆り立てていた野心も、一つ間違えればこれしきのことで満たされて幸せになっちゃってたのかもしれないのか、と思うとなんとも擽ったいようなおもはゆいような。
いやもういいんですけどね。これはこれで、もうティナ様ご満悦のようですし全然いいんですけどね! にしても、相手って誰なんだろう。

黒騎士ロランが早くも登場しティグルと交流を持ったり、魔物が早速現れて交戦することになったり、ティナルディエ公の方も相変わらず真っ黒だけど以前とはまた違う歴史を辿りそうだったり、ブリューヌ国王ファーロンが精力的に動き回ってて実に名君っぽかったり。
前作はあれでかなり完成された物語で、これをどうイジって新しいストーリーを構築するんだろうと疑問に思っていたんだけれど、これはちょっと期待以上に別物の面白い英雄譚、戦記物になりそうで読む前より読んだあとの方がワクワクしています。
ダーマードが相変わらずいいキャラしていて、またぞろ彼がティグルの相棒になりそうなのが嬉しかったり。前作から好きだったもんなあ。何気にダーマードのヒロインっぽいお姫様も出てきていて、ニヤニヤしてしまった。あと、相変わらずムネジオル王国の王弟クレイシュが強キャラ過ぎてドキドキしますわ。こと軍の指揮官としてはこの髭親父がやっぱり最強なんじゃなかろうか。何度繰り返しても、軍勢を押し返したり判定勝利は得られてもこの人を討ち取るとか軍勢を撃滅するとかのイメージが湧かないんですよねえ。
前作のメインヒロインであるエレンもちゃんと登場。良かった、違う戦姫にはなっていなかった。そしてやっぱりミラと仲悪い! 今回はティグル、ミラに一途っぽいので前作のようにハーレムとはいかなさそうなんだけど、果たして他の戦姫たちとはどんな関係になるんでしょうねえ。そこはちと気になるところであります。特にエレンに対しては。
ともあれ、新シリーズ期待以上で実に先が楽しみです。

川口士作品感想

双剣使いの封呪結界(ロストマギカ) ★★★   

双剣使いの封呪結界2 (一迅社文庫)

【双剣使いの封呪結界(ロストマギカ)】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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黒い霧から東京を解放すべく活動を続ける一輝、遙、理沙ら。そんな三人の耳に入ったのは、黒い霧と戦うための帰還者たちの最大組織「東解委」の主力遠征隊が何者かの襲撃を受けたこと、そして襲撃したのが死んだはずの遙の姉である久遠であるという情報だった。かつての想い人の名に動揺する一輝。時を同じくして、混乱する「東解委」が発生し、拓海淳という謎の男の手中に落ちる。新たな「東解委」のリーダーとなった拓海淳は、別行動を取る一輝たちの殲滅を計る。一輝たちはこの危機を乗り越えることができるのかそして、一輝たちの前に立ちふさがる久遠の正体は?!
二巻で実質打ち切りかー。となると、久遠を生き返らせるという一輝の妄執とそれに遥がどう付き合うか、そして命残り少ないかなたの運命とそれに寄り添うことをきめた理沙にどう決着をつけるか、というところに一気に焦点をアテないといけなかったわけで、色々と取っ払ってその辺に多少唐突だろうと久遠もぶっこんで話を持ってきたのは、最善だったんだろう。
もうちょい時間があれば、一輝のイカレ混じりの久遠への執着を煮込んで色々と出汁を取ることもできたんだろうけれど、こうなったら決断を促すしかなかったからなあ。勿論、あれだけ執着を抱えている一輝に一人でそれが出来るはずもないので、久遠ご本人にやらかしてもらうのが一番だったんだろうけれど、遥のあの一輝の落ち込みに付け込むことにまったく躊躇しないガンガンいこうぜ!な姿勢には感服しました。久遠の代わりに自分が居ますよー、とあからさまに攻めこむことに衒いも何もないんですもんね。そのあっけらかんとすらしている態度には嫌味がないので、余計に攻撃力高いんでしょうけれど。
今回の話でやっぱり印象的なのは、まだ小学生にも関わらず、過剰な能力付与で寿命を削りまくった挙句にもう何週間と命が持たない、というところまで消耗したかなたが、自分の命の使いドコロを冷静に選択し続けるところでしょう。その事実については隠すこともなく公にしてるので、一輝たちも全員知っているのですけれど、かなたを止めるでもなく、無闇に延命させようともせず、ぴーぴー騒いで感情的にならず、かなたが本分を尽くせるように支え続ける理沙を含めた、メインキャラたちの姿勢には感じ入るものがありました。
様々な苦悩や葛藤を乗り越えた末の、かなたの覚悟を受け入れた見送る者としての覚悟。泣きわめくこともなく、親友として笑ってかなたとイチャつき続けた理沙の強さは、瞠目すべきものでした。戦闘マシーンとしてではなく、誰かを大切に思うがうえにその人たちを守るために自分の命を使い果たせる人間に、かなたを戻した理沙。それは見るものによっては残酷なことだったのかもしれませんけれど、かなたの迷いの失せた満ち足りた決意を見せられると、かなたにとってそれがどれだけ掛け替えのないことだったか、納得出来るというものです。
よく、見送った。

だからこそ、かなたを見舞った運命については、素直に祝福出来るんですよね。良かった、と言える。この展開を見れただけでも、本望です。
さて、そろそろあの大迷惑な小人族を敵役にして、徹底的に撃滅する話でも描かれないかなあ、と思う今日このごろ。まあ、そうなるとむしろ主人公サイドがこてんぱんにやられてエンドになりかねないのですがw

1巻感想

双剣使いの封呪結界(ロストマギカ) ★★★  

双剣使いの封呪結界 (一迅社文庫)

【双剣使いの封呪結界(ロストマギカ)】 瀬尾つかさ/ 美弥月いつか 一迅社文庫

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若者たちが異世界に勇者として召喚されては、ちからを手に入れたまま帰還することが頻発するようになった地球。あるとき、東京は謎の黒い霧に覆われ異世界とつながり、強大な怪物たちが現れるようになり東京は閉鎖された。高い戦闘力を保持した異世界帰還者たちは、霧を発生させている謎の黒い柱を破壊することで霧から東京を解放できることを発見するが、黒い柱の数は膨大で……。帰還者たちの中でも最強と呼ばれる一輝と遙、特殊な魔術を行使する理沙の三人組は、激しい戦いの中、黒い霧の奧に潜む途方もない何かの存在に巻き込まれていく……。スカイワールド、銀閃シリーズを完結させた瀬尾つかさが挑むバトルファンタジーの新境地!
相変わらずどこでも出てくるな、このマッド小人族。黒い霧が無数の異世界を侵食していく、という危機的状況だけれど、侵食具合なら作品の枠を超えてどこにでも登場するこの自爆系小人族の方がよっぽど侵食してますよね!?
多数の次元世界を滅ぼした勢力が、現代地球にも侵略の手を及ぼしてくる、というのは瀬尾さんの得意のツールなんだけれど、本作は最初期に東京の中枢部がやられてしまっているために、優秀かつ指導力を持った層が根こそぎいなくなっているので大人側の指揮系統が完全に劣化してるんですよね。割りと他の作品では後方支援組織やバックアップ体制は中身が真っ黒であろうとかなり頼りがいはあったんですよね。人類の存亡を賭けた総力戦、に相応しい体制だったのですが、こっちはバックアップがしっかりしているどころか、足を引っ張られている状況なので前線戦力となる帰還者たちは精神的にも肉体的にも疲弊する一方。かなりストレスの溜まる状況なんですなあ。
そんな中で世界を救うよりも個人的な事情を優先して動いているのが、主人公となる一輝と遙。政府の紐付から離れて独自に動いているのですが、この子たちも目的に向かってひたすら脇目もふらずに邁進していたが為に、気付かずかなりメンタルがヘタって先鋭化していたようなんですよね。
そんな中で、召喚された異世界で仲間たちをすべて殺されて自身もその世界の侵略者のボス相手に潰えようとしていたところを一輝たちに助けられた理沙。彼女の参入と地球への帰還が、思えばすべての変化の起点になってるんですよね。彼女自身、共に召喚されて辛い戦いをくぐり抜けてきた仲間たちを失い、大きな心の傷を負っているにも関わらず、微妙に三下っぽい、しかし意図された陽気さと前向きさによって、徐々に一輝たちの凝り固まったメンタルを解きほぐして、彼らを人間に戻していくんですね。また、帰還者たちのリーダーとしてこの世界の盾となり、無能なバックとの調整や一輝たちに便宜を図るなど組織運営や防衛戦略についてもほぼ一人で奮闘していた小学生戦士かなたの孤高にして孤独な心を本当の意味で救い支えようとしているのも彼女、理沙ですし……もうこれ、理沙が主人公でいいんじゃないだろうかw
理沙は決して強い子じゃないんですよね。戻った学校ではうまく馴染めず、失敗を繰り返してはへこんで落ち込んでいるし。それでも、この娘だけはひたすら目的に向かって邁進する、突き進まなければもう二度と進めないくらいにボロボロになっている帰還者たちの中で、周りの人たちを支えようとしている。かつて、自分が居世界で仲間たちに支えられ助けられ、最期まで守られたことを。彼女の能力が、誰かに守られることを前提としているからこそ、当たり前のように自分を費やして周りの人たちを身も心も守ろうとしている。それこそ、自分を使い尽くすのを望んでいるように。その意味では、彼女もまたいい具合に壊れているんだけれど、その壊れ方が他人を癒やすことに費やされているのは、何とも健気だなあ、と遠い目になってしまう。これに関しては、かなたも似たようなものなんですけどね。かつて喪われた仲間たちが自分に託したものを、目いっぱいに背負い込んで、世界を守るために全力全壊で使い尽くそうとしている。小学生の幼女が背負うには、あまりにも酷じゃあないですか。でも、優秀すぎるが故にみんな、彼女自身も含めて彼女を決して歳相応の小学生の子供としては扱わない。それを、理沙がするりと滑り込んで誰もやらなかったことをやっているわけですけれど……。
いずれにしても、惨い世界観だなあ。ただでさええげつない状況下で、さらに悪意を持った謀略が帰還者たちを陥れ、屠ろうと手を伸ばしてくる。さて、いったいどの段階で痛快にこの行き場のないどん詰まりのような状況をふっ飛ばしてくれる展開になってくれるのか。

瀬尾つかさ作品感想

聖煉の剣姫と墜ちた竜の帝国 2 3   

聖煉の剣姫と墜ちた竜の帝国2 (一迅社文庫)

【聖煉の剣姫と墜ちた竜の帝国 2】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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アリシアに連れられて賢者の学院に入学したグレイだが、生物学や薬草学など狩猟以外の座学ではまったくの役立たずであることが判明する。実母の故郷であり、かつて地上に墜落し地下迷宮と化した竜の帝国の廃墟へ向かうのだが、そこには意外な人物が待ち受けていた…。

あれぇ、二巻で打ち切りですか。長期シリーズを睨んだ仕込みが随所に見られる作品でしたし、主だったキャラクターもまだ出揃ってもいない段階でこれはキツいなあ。
主人公グレイの、シスコンを通り越した妹教狂信者的な妹至上主義なキャラは面白かったですし、そんな妹にしか眼中にない彼をアリシアが必死こいて靡かせていく流れは楽しみだったんですけれど。どこか、動物の調教めいていて(マテ
振り返ってみると主人公のグレイは天然のスットボケたアホの子であり、ウェンディは瀬尾作品の小人族らしい自爆教派で引っ掻き回すのが大好きな享楽家、新登場のイルミナは恋愛脳の妄想家、んで唯一のツッコミ役をあてがいたいアリシアからして、真面目ゆえにどんどん空回りしていって歯止めを見失うタイプなので、カオスを止める人が全く居ない。これでは、掛け合いもポンポンと弾むはずです。この手の漫才はキャラの立ち位置がある程度定まってからガッチリ噛みあうのが常ですから、まず出会いがありそこから交流があり親密になっていく紹介と微調整という過程が必要な1巻よりも2巻からが本番であり、実際本作もこっから調子出てるんですよね。一旦軸が定まれば、後からキャラが追加されても上手いこと嵌り込むので停滞はなく、イルミナやラストの彼女の登場と加入はよいアクセントになるはずだったのですが……。特にイルミナは、まだ本番はこれからといった風情で、馴染む前に終わっちゃうというのは辛いなあ。アリシアの噛ませ臭がプンプンしていたのは確かですけれど。
興味深いのはエルシオーネという人の存在。彼女に近似するのが【銀閃の戦乙女と封門の姫】のエリカなんだけれど、このパターンのヒロインは中々他では見ることの出来ない属性なんですよね。エリカだけだったなら、特別で済んだのだけれど、ここでエルシオーネという存在を改めて登場させてきたとなると、作者にはそっちの嗜好もあるということなのか。もしかしたら、以後のシリーズでも似たような存在についてはお目にかかれるかもしれない。
魔王側の埋伏作戦といい、妹フィーネの暗躍といい、竜の一族の謎といい、ここで放棄されるのは勿体無いネタと伏線と謎ばかりで、本当に勿体無い限りです。頼むからほんと、2巻打ち切りというのは勘弁してほしいなあ。3巻切りと比べても余りにも中途半端になってしまうし。

瀬尾つかさ作品感想

深き迷宮と蒼の勇者 銀閃の戦乙女と封門の姫外伝3   

深き迷宮と蒼の勇者 -銀閃の戦乙女と封門の姫外伝 (一迅社文庫)

【深き迷宮と蒼の勇者 銀閃の戦乙女と封門の姫外伝】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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異世界クァント=タンで繰り広げられたすべてを滅ぼす凶生物ゼノとの死闘。ゼノとの戦いはもっと前から始まっていた。エアリア界の魔法を操る少年、法鷹和馬は勇者の血統をもつ青髪の少女あかり・クラインと出会い、迷宮の中で発見された和馬の記憶喪失の妹エーリエとともに深き迷宮、その最深部を目指し攻略に挑んでいた。数多の魔物が闊歩する迷宮の奥底に潜む陰謀と、世界を滅ぼす災厄の正体とは?!『銀閃の戦乙女と封門の姫』の前日譚『放課後ランダムダンジョン』が、加筆のうえ装いも新たに再登場!瀬尾つかさ書き下ろし、『銀閃の戦乙女と封門の姫』の後日談となる物語も収録!
【銀閃の戦乙女と封門の姫】の最終決戦にて颯爽と参戦して、縦横無尽の活躍を見せた蒼の勇者あかり・クライン(既婚・人妻)が、旦那となるお相手と出会い結ばれるまでのお話、というと語弊があるか。正確には、ゼノ戦争の前史。【銀閃の戦乙女と封門の姫】にていくども語られることになる「ゲート・ブレイク現象」と「英雄部隊の最後の戦い」の当事者であり、再びゼノが侵攻してくるまでの一連の出来事を担うことになる、英雄部隊の生き残りと蒼の勇者の後継者の物語である。
作中の時系列的にも、作品の出版時期についてもこちらの方が本当は速く、本作は新装版ということになるのだけれど、自分が読むのはコチラが後発。エリカお母さんもメンバーだったという英雄部隊の活躍については、ずっと気になってたし、ゲート・ブレイク現象から異世界クァント=タンで戦備が整えられるまでの具体的な過程も薄っすらと既に終わった話として語られるばかりだったので、こうして当事者の視点から語られる物語は疑問や好奇心を解消させてくれるという意味では、まさに痒い所に手の届く作品だった。新装版は助かったなあ。
なんでダンジョンなんかに潜る事になってたんだ? という最大の疑問についてもちゃんと答えが用意されていたし。
まだ十代の子供にも関わらず、重すぎる過去と心の傷を負ってしまった和馬やあかり、そしてエーリエ。年齢的にはまだ幼いと言っていいくらいの子供なのに、もう微塵も子供として生きる猶予も余裕も与えられていない彼らが、可哀想でならない。大人であるケンの忸怩たる思いもわかるというものだ。なのに、さらに彼らを戦場へと引っ張り込まなければ、人類が滅びてしまうという矛盾。重責というにも程がある負担である。否応もなく子供で居られなくなった彼らだからこそ、お互いに出会うことが出来たのは何よりの幸いだったのだろう。負担も重責も心の傷も、重すぎる真実も一緒に共有でき、一緒に背負うことが出来、人生を共に歩むことが出来、一緒に戦うことが出来る支え合える相手と出会えたということは、何よりの幸いだったのだろう。あまりにも悲惨で救いのない事実ばかりの中で、こればかりは運命の巡り合わせだったように思う。
エーリエについては、もっと悲惨な顛末になっても仕方なかっただけに、最悪の事態にならずに済んで本当に良かった。救われたと思って、期待を踏みにじられたら立ち直れないよ、これ。
一巻完結ということで、和馬とあかりがイチャイチャするような余裕はあんまりなくて、この蒼の勇者というぼんやり娘が、この朴念仁をどうやって攻略したかについてはざっくり端折られてしまったのはちょいと残念。まああかりが想像以上に奥手だったので、あかりが攻略という形にはならなかったみたいだけれど。これ、エーリエ苦労したんだろうなあ。その苦労をねぎらうためじゃないけれど、彼女についても責任負っちゃえばいいのに。エーリエもごちゃごちゃ言ってないで。
ちゃんと妹含めて、皆まとめて娶ってしまった実績の持ち主が、クァント=タンの方に見本として現れてくれたんだから。まあ、あっちにはラスボス属性の妹と黒幕属性の妹姫様がタッグを組んで暗躍するという怖すぎる肉食系ヒロインの支配領域なので、あかりとエーリエに同じ真似をしろ、というのも難しいというか可哀想なのだけれど。でも、人妻とか言っておいて、あかりにまだ手を出してなかったとか、当時の切羽詰まった事情もあるでしょうが、そりゃあかんでしょう、和馬さん!!

瀬尾つかさ作品感想

聖煉の剣姫(ソーディア)と墜ちた竜の帝国3   

聖煉の剣姫と墜ちた竜の帝国 (一迅社文庫)

【聖煉の剣姫(ソーディア)と墜ちた竜の帝国】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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魔王が60年周期で赤い月からやってくる。人間と竜、妖精、そしてエルフやドワーフといった多種多様な種族は、強大なちからを持つ竜を中心に戦い、都度、魔王を討ち果たした。しかし60年前、魔王は現れず、共通の敵を失った人々は互いに争い、いくつもの国が滅びた。それから60年。豊かな自然に囲まれた辺境の町に住む狩人の少年グレイのもとに、浮遊機動島ネクサス・シティにある賢者の学院から一人の少女が現れた。少女の名はアリシア。賢者の学院に留学したグレイの妹フィーネが失踪したこと、各地に伝わる遺跡や聖遺物を彼女が破壊している疑いがあり真偽を問うべく、フィーネを追いこの地にやってきたという。魔の森、その奥深くにある遺跡へ向かったというフィーネを追い、アリシアとともに旅立ったグレイは、かつてないほど殺気立つ魔物の群れ、そして自らの血に隠された秘密を知る―アリシアとグレイを待つ運命とは、そして赤い月からやってくる魔王とは―
これまでから引き続き、イラストは美弥月いつかさんとのコンビで。今となっては一迅社ではこの絵師さんとでないと、みたいな安心感があります。さて、イラストレイターの人は前作から引き続いたとはいえ、作品自体に繋がりがあるかというと……あれ? 無いとは言い切れないのか。【銀閃の戦乙女と封門の姫】や【魔導書が暴れて困ってます】は、三千世界との行き来が可能な世界観なので、完全な異世界モノである本作とも繋がりが無いとは言えないんですよね。まあ、その三千世界は前作の敵によって殆ど滅ぼされてしまっているのですが。
とはいえ、この60年周期で魔王が赤い月からやってくる、という話と、竜という存在が色々と想像はさせてくれます。特にこの魔王と敵対していた「竜」という存在は、どうやらその単語から思い浮かべるトカゲの王様、ドラゴン的な存在とはちょっと違うみたいなのですよ。少なくとも、作中で描写された「竜」の姿は全部人間形態ですし、「竜」特有の言葉や表現ってのが……完全に現代日本で使われてる「スラング」だったりするんで、あれ?となってしまうわけです。
でも、妖精が爆発するのは宇宙的真理なので、この際共通項として挙げるにはいささか根拠が弱いですよ?

「竜」の正体も「魔王」の正体も今のところまだ不明なままですが、この60年周期の魔王の襲来という設定は面白いなあ。特に、前回の60年前には魔王は襲来せず、その為に種族間や国家間の結束が崩壊してしまった、というところなんぞは。
強大な敵に対する備え、というものは、必ず来るとわかっていたならば万全を期して待つことが出来ますけれど、来るぞ来るぞと待ち構えていたものをスカされて空振りさせられてしまうと、どうしても次も同じように備える、という事は出来にくいんですよね。
論理的に考えて、もしもの時に備えて準備しておくことは当たり前なんでしょうけれど、60年という世代が1つ2つ更新してしまう年月や、その準備の為にかかる予算や労力のことを考えると、もし次も空振りならば、という何もなかった時の方のリスクへと意識が行ってしまう。
根拠はなんにもないけれど、前回は大丈夫だったんだから、今回だって大丈夫だよ。これまで大丈夫だったんだから、今後だって大丈夫なんだよ、という気分になってしまうのが人間であり、これだけ準備したのに今回も何もなかったら誰が責任を取るんだ! と言い出してしまうのが人間というものだったりします。
その意味では、この作品における魔王サイドの戦略というものは急所を穿ちまくってるんですよね。結果的に見れば、60年前に攻め込まなかったことで、むしろ攻めこむよりも多くの被害、損害、損失をこの世界に及ぼしているのですから。しかも、自分たちの戦力を費やすことなく。それどころか戦力の蓄積増強にすら成功している。人間サイドは、もう魔王の侵攻の可能性自体を無視している状況だし、開戦の段階でもう殆ど戦略的に詰ませた、と言っていいくらいの状況を作り出している。これで負けるとか、あり得ないよね〜〜。

めっちゃやられとるやん!!
ちょっ、せっかく60年掛けて準備してきた侵攻計画が、たった一人の為に半壊状態じゃん!!
魔王サイド、これ涙目じゃないですか?(苦笑
これはもう、妹ちゃんを褒めないとしようがないのか。
前作もそうだったけれど、妹という存在は優秀すぎてたまらんなあ。兄のシスコン振りも、前作に輪をかけてひどくなっているけれど。酷いどころじゃなくて、もうこれ唯一妹神として絶対信仰しているんじゃないか、というレベルでシスコンなんですけど。あかん、この主人公、瀬尾さんの作品の中でも頭ひとつ抜けておかしなことになってるw
あまりにも妹絶対主義の狂信者になってしまっているせいで、肝心のヒロインのはずの、表紙も飾っているアリシアの扱いが微妙に目立たなくなっちゃってるような気がするのだけれど、グレイは妹に対してはイカレてるけれど、それ以外に対しては生真面目で愚直なくらい素直なので、相棒として、ヒロインとしての接し方はかなり丁寧だし対等に尊重している上に距離感に遠慮もないので、今後なかなかよいコンビになっていきそうです。
というか、このアリシアも多分にもれずお姫様としてリーダーシップに溢れているタイプなので、なんかグレイとの関係はお姫様とワンコになりそうだ。グレイって賢い忠犬みたいなところがあるし。
ともかく、まだ物語もスタートしたばかりで、舞台を整えて人員を揃えている状態。本格的に動き出すのは次回以降になるんでしょう。ブースターに火がついてからが本番かな。

瀬尾つかさ作品感想

銀閃の戦乙女と封門の姫 3 3   

銀閃の戦乙女と封門の姫3 (一迅社文庫)

【銀閃の戦乙女と封門の姫 3】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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クァント=タンを襲った新たなノーブルを撃退した武勲を称えられ、カイトと梨花は避暑もかねシャーロッテの所有する湖の別荘へと招かれる。湖畔の別荘で夏休みを満喫しようとするカイトだが、いつものようにフレイとソーニャもやってきて、いつものドタバタ騒ぎに。そんなさなか、シャーロッテから湖底に巨大な水中迷宮があると知った一行は探索を開始するのだが、様々な魔物が巣食うとともに希少金属オリハルコンの痕跡があることを発見する。泳ぎの苦手なフレイ、ソーニャの代わりにカイトと梨花が水中迷宮へと挑むのだが、そこには意外な先住民たち、そしてクァント=タン全土を揺るがしかねない脅威に直面する。瀬尾つかさが贈る本格異世界ファンタジー早くも第三弾!
親子丼はさすがにないよなあ、という立場だったのだけれど、母親が娘よりも年下ならそれもありかと思えてくる不思議!
しかし、なんでこのシリーズって表紙がフレイ固定なんだろう。実のところ、フレイは確固たるメインヒロインというわけでもないんですよね。この作品って、フレイにソーニャ姫、それから梨花と前回加わったシャーリーの四人がヒロインとしてほぼ均等位置いるので、ことさらフレイが表紙でだけ特別扱いされるのがどうにも違和感が残ってしまいます。
さて、前回国王の排除に成功した結果、後継者争いが水面下で激化。一応、ソーニャ様は表向き後継者レースから距離を置くことを表明しているものの、立場的にも実力的にもライバルたちからすると無視できない存在であるのは間違いなく、そうした立ち位置がカイトとの関係を踏ん切りつかないものにしてしまってもいる。
面白いのは彼ら、カイトとヒロインたちは既に恋愛をゲームとして楽しむ段階は疾うの昔にクリアしてしまっているところなのでしょう。女性陣たちはカイトにしっかりと好意を伝えているし、カイトとしても彼女たちに好意を持っている事を自覚し、またそれを彼女たちに伝えてもいる。じゃあそれでハッピーエンドじゃないか、と思うところなんだけれど、問題は現実的なところにあって、クァント=タンという異世界の成り立ちと現状、ソーニャたちの王族としての、英雄としての立場を考えると好きだから付き合って、という風にはなかなか行かない。シリーズの初期段階ではカイト自身、日本側に長らく暮らしていたせいか視点が人間関係によってしまっていて政治的な立場としての問題に理解よりも実感が追いついておらず、半ば感情面を優先して動いていたのでその辺りがフレイたちとの齟齬ともなって、様々な点で二の足を踏む形になってしまっていたのだけれど、将来の展望というか人生の方針となるべき考え方が前回の事件で大方定まったというか覚悟が決まったようなので、何気に目立たないけれどいつの間にか物語の方向性が大きく変わっていたことに、読んでいるうちに気づいた。
つまるところ、王族であるソーニャやシャーリーも含めた女性陣を正式に娶る為の環境整備を、カイトが精力的に始めてるんですよね、これ。それも、既存の選択肢からどちらを選ぶか、ではなくて新しく選択肢を構築する形で。この辺り、ソーニャが脳筋だったり、フレイも事務方仕事はともかくとして緻密な戦略を描ける性格じゃなくわりと感覚で動くタイプだったので、カイトも相談相手がいなかったのもあったんだろうけれど、頭脳担当のシャーリーが本格的にともに行動することになった上に、梨花も片足だけじゃなく両足でクァント=タンに立つ覚悟を持ち、この異世界に対する理解を深めていったお陰で、カイトの大まかな方針に対して具体的な政策を練りあげてくれるメンツが加わった、ということも大きいのでしょう。
この三巻は大事件、というほど大きく状況が動くような出来事こそ無かったものの、地道に基盤部分から手を加えていっているような状況であり、何気に状況自体は激震レベルで進んでるんですよね。さり気なく、ラストバトルへと繋がりそうな、世界の危機クラスの予兆も滲み出ていますし。
ラブコメサイドについても、カイトの覚悟が決まったお陰で彼の甲斐性については十分すぎるほど発揮が期待できるようになって、イチャイチャするにも壁がなくなったお陰で全体的にラブコメ摩擦係数が低かったですしねえ。あんまりみんなベタベタした性格じゃないからか、さくさくっと進んでましたけれどこういうカラッとしているけれど関係の密度の深さを察せられる恋模様というのは大変好みなので、美味しかったです、はい。
そもそも、この世界観の設定自体も人工の異世界という点からして面白い仕組みなんだよなあ。そのせいか、社会システムもかなり独特な所があって、そういう設定群を追っているだけでもなんだか楽しいです。楽しいといえば、アルルメルルのキャラの尋常じゃないギャグキャラとしての存在感は楽しいどころじゃない笑いどころだよなあ、あれ。ソーニャ姫さまもネタキャラとしては相当の逸材なんだけれど、アルルメルルは無双すぎるw

1巻 2巻感想

銀閃の戦乙女と封門の姫 23   

銀閃の戦乙女と封門の姫2 (一迅社文庫)

【銀閃の戦乙女と封門の姫 2】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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クァント=タンからカイトたちが帰還してひと月がたち、新しい家族も増えた花梨家は賑やかな日々をすごしていた。そんなある日、第四王女シャーロッテがこちらの世界にやってくる。カイトが保護しているエリカを狙った陰謀が進行していると忠告しに来たのだというが、時すでに遅く、梨花とエリカは黒鎧の男が率いる機士の一団によりクァント=タンへと連れ去られる。二人を助けるべくカイトは再びクァント=タンへと降り立ち、フレイそしてシャーロッテとともに誘拐犯を追うのだが、そのとき予想外の異変が起きて…。
瀬尾さんはやっぱり策士系ヒロイン好きなんかなあ。メインには据えないものの、メインヒロインを立てる形でちゃっかり主人公の傍らに自分の場所を確保してしまう立ち位置にこの手のヒロインを配置するんですよね。魔導書でもそうだった。
シャーロッテもそうなんだけれど、計算高く腹黒なわりに自分は二の次で周りの大事な人を優先して計算立てる健気系なんで、アピールポイント高いんですよね。しかも、主人公が馬鹿じゃなくちゃんと彼女の健気な気持ちを察するに足る聡明さを持っているだけに、周囲から胡乱に見られるわりに主人公からは大事にされるという役得な立ち位置だったりする。カイトの場合、年下の女の子にひどく甘いきらいもあるのでその意味でもシャーロッテの待遇は立場の際どさに較べて非常に高く見積もられている。まあ、シャーロッテの境遇を聞いているとソーニャ姫さまよりもよほど酷く危うい状況下に置かれていて、味方らしい味方もいないだけにカイトが味方してあげないと容易に死んでしまいかねない所だっただけに全然構わないんだけれど、その分ソーニャとフレイは今回ほぼ完全に脇役に回ってしまった。特にソーニャ姫さまに至っては途中退場の憂き目に。ほぼ相思相愛の幼馴染同士という設定のはずなんだが、気心が知れている分逆にぞんざいに扱われてる気がする、ソーニャ様。この人自身も大雑把というか、嫉妬はしても陰湿にネチネチといつまでも引きずらないサッパリとした人なので、ぞんざいに扱っても大丈夫、というのはわかるんだが。
面白いのは、むしろシャーロッテの最大の理解者がカイトではなく、梨花の方だったというところだろうか。この妹ちゃんの頭の回転の速さは、完全にシャーロッテと噛み合ってるんですよね。カイトは聡明だけれど頭の硬い方だから決してシャーロッテの思惑の裏の裏まで読み取れるようなタイプじゃないだけに、雰囲気は察することは出来てもシャーロッテが何を考えているかまではわからないので、そのたびに戸惑って立ち止まらざるをえないのだけれど、そこを尽く梨花が先読みして状況と思惑を詳らかに指摘説明してくれたお陰で、物事がこじれずに済んだ場面が度々あったわけです。シャーロッテとしては、言わずに済ませて迷惑をかけまい、自分で背負ってしまおうとした部分までおっぴろげさせられてしまったのでだいぶ参ったとは思うのですけれど、あそこまで細やかに自分の中身を汲み取ってくれる人が居るというのは、賢しらな分不器用に生きざるを得なかった彼女にとっては、得がたい出会いだったのかもしれない。梨花としても、計算高さ故にカイトの意を無視して忌憚なく色々と教えてくれるシャーロッテは、ある意味フレイたちよりも波長が合う友人になりそうな感じでしたし、イイコンビになるんじゃないでしょうか、この二人。幼馴染組と妹組、という区分けで。

しかし、噂の国王陛下は聞いていた以上に真正のクズ野郎で、あまりのゲスっぷりに逆に驚いたくらい。しかも、最近人格が変貌したのではなく聞く限りはどうやら元からろくでもない奴だったらしい。ここまで自分の息子や娘に非道をするか、という無茶苦茶なやりようで、権力欲と野心をこじらせると此処まで自己本位に歪むものなのかといっそ感心すらした。正直、あんなにあっさりと殺されてしまったのは信じられない。ああいう小心で自分を守ることに偏執的に汲々としている小物は、逆にゴキブリみたいにしぶといし、賢者策士顔負けの強かさを備え持ってるものなんですよね。自分を守るためには信じられないほど慎重で狡猾で大胆で強かな立ち回りを見せたりするものだけに、ああもあっさりとくたばってしまうのは違和感すらある。しばらくはまだ注意が必要だな、これ。

とはいえ、公式には国王の死は確かなものとなり、後継者問題は必然的にカイトの今後にも関わってくることになる。何しろこの世界の国是は血筋による継承とはまた別に、力による継承もあるわけで、別に国王の座につくまではいかなくても、カイトの実力と立場、彼が果たした役割は必然的に彼をいつまでも現代日本に引きこもらせているわけにはいかなくなっている。もう、いい加減決断はしているみたいだけれど。結局、何が大事かと言えばもう決まってるんですよね。それを敢えて無視して背を向けることに何の意味も利益もない。最大の理由だった妹の梨花についても、こっちついてくる気満々ですし。モテる男はいつまでも逃げていられてないという一点だけで、つらいものだなあ、うんうん。

1巻感想

魔導書が暴れて困ってます。 3.まあ、どうにかなるでしょう3   

魔導書が暴れて困ってます。3 まあ、どうにかなるでしょう (一迅社文庫)

【魔導書が暴れて困ってます。 3.まあ、どうにかなるでしょう】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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謙児と同じ邪神の力を受け継ぐボルホス・ハドリッドたちが立ち去った六道島。今日も謙児とイリーナは、新たに増えた島の住民ナントの一族の居留地で騒動に巻き込まれたりと平穏な日々を送っていた。そんなある日、謙児と共に戦ったモーリ男爵が、ボルホスに勝ったとの急報が入る。男爵の能力はボルホスに勝てるほどではなかったはずと困惑する謙児たち。そんな彼らに一本の電話が入る。ボルホスが戦ったモーリ男爵は偽者で、本物は自分だと。電話で指定された場所に向かうと、そこにいたのは三つあみの巨乳少女だった…。この少女は一体何者?!魔導書回収ファンタジー、待望の第三弾。
なんかもうクルルハルルたちはアレですよね、【人類は衰退しました】の妖精さんですよね、掛け合いといいその無駄な科学力といい。と言うことは彼女たちこそ新人類なのかw
あらすじやカラー口絵であっさりバラしちゃっているのだけれど、前巻でチラッと顔を見せた邪神の子供の一人であり怪盗を名乗っていた紳士のモーリ男爵は実は女の子でした、というあざとすぎるお話。しかもこの娘、コミュニケイション障害っぷりがイリーナさんと被ってるよ!! アンリエッタと冬菜がキャラ被りしていた事といい、敢えて似ているキャラを投入してくるあたりチャレンジャーだなと思われ。そして、イリーナと同じくコミュ障のくせにやたらとイイ性格をしているのがモーリ男爵ことマリーさん。単なる内気で対人恐怖症なら何も怖くないのだけれど、この娘やたらと行動力があるんですよね。それでいて、アンリエッタを出し抜くほど強かで手癖も悪い、と。
同じボッチでも、イリーナと違ってわりと一人でも大丈夫、みたいなところのある独立独歩の人でもある。じゃあやっぱり一番ダメなのイリーナさんじゃん、と言われ続けて幾星霜。いじられることだけが生き甲斐よ、じゃないけれど、謙児を始めとした周りの人間全員にイジられる事がプロの弄られ屋の存在理由、みたいな雰囲気になりつつあったイリーナさんが、実は本当は意外なことに本当に凄い尋常ならざる魔術師だったんですよ、とみんな忘れていた設定を思い出させようというお話でもありました。でも、そこに至るまでは熱発でダウンしてしまい肝心なときに役に立ってなかったり、と決して期待を裏切らないイリーナさんでありました。いいんです、いいんです、イリーナさんはそんな残念な感じで。多少魔術師として傑出していたとしても、そんなことでポンコツ魔術師としての威厳は失われたりしないから、イリーナさんにはそのまま残念な人で居て欲しい、そう素直に思える今日このごろ。
さて、本筋であるようなないような邪神レースは、ますますその陰惨な姿をあらわにしていっている。とは言え、その酷い部分というのは大概にして邪神の子たちを利用しようという人間の浅ましくもおぞましい欲望によって悲劇にして惨劇へと彩られてしまっているわけです。その渦中に図らずも放り込まれてしまった邪神の子たちは多かれ少なかれ心をズタズタに切り刻まれている。ボルホスのように開き直って野心を全開にしてしまっている輩もいれば、ひたすら復讐心に身を浸して邁進するものもいる。その意味では、幼少の頃にイリーナによって記憶を封じられた謙児は、彼女によってその身も心も守られ続けたと言えるのでしょう。
そして記憶とともに力を手に入れた今の彼は、その力によってイリーナたちを逆に守る側に立っている。そして、今の自分と彼女たちを守るためには、時として非情な決断を下さないといけない立場であることも理解している。とは言え、やたらめったらと一線を超えるのも認めがたい。というわけで、決断を下すか否かの境界線上を見極めることを常に要求され続けているのが、今の謙児くんの現状なのだろう。アンリエッタは甘やかさずに彼に厳しい判断を突きつけ続ける審判者、という役割を敢えて受けているようなものなのか。なかなか彼女としても辛い役どころである。幸いなのは、誰よりも謙児がそれを理解し、彼女にそれを求めて感謝しているところなのだろうけれど。彼女としては十分報われているわけだ。イリーナさんの愛人二号以下で全然OKとしているあたりは健気、と思っていいのか何なのか。実は一番甘え上手で美味しい所を頂いている気もするのだけれど。
まあ、イリーナさんが揺るぎない本妻というのは微塵も揺るがないので、その点は安心して見ていられます。そっちは一線を越えてしまって別に構わないのよ? ラストを見ると、イリーナさんの覚悟完了さえ済めばいつでも進展してしまいそうな雰囲気でしたけれど。さて、ヘタレはどっちだ、というお話。

1巻 2巻感想

魔導書が暴れて困ってます。 2.ま、どうにかしましょ4   

魔導書が暴れて困ってます。2 ま、どうにかしましょ (一迅社文庫)

【魔導書が暴れて困ってます。 2.ま、どうにかしましょ】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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伊佐木イリーナとともに危険な魔導書を封印しながら、六道島での穏やかな日々を送る謙児のもとに新たな美少女魔導師、宇此鳴アンリエッタが現れた。伊佐木家の分家にあたる宇此鳴家のアンリエッタの来訪に、イリーナの妹の冬菜はなぜか動揺する。時を同じくして、謙児同様に邪神の血をひく赤毛の男、ボルホス・ハドリッドが六道島に現れて…。瀬尾つかさの新境地、第2巻。
なんか、イリーナさんのイジられキャラがプロの域に達してきた気がする。プロの弄られ屋? ラストの猿のアルキメデスにかまけたやり取りなんて、コントとしてはほとんど完璧でしたよ?(笑
いやあ、しかし面白い。最近の瀬尾さんの作品は好んで読んでいるつもりなのですけれど、その中でも本作は特に充足が進んでいるように思う。第一巻はまだ手探りな部分が伺えたんですが、この二巻は謙児くんとイリーナさんの関係が定まったというか収まったというか、とにかく揺るがない形で完成されたせいか、作品全体にどっしりとした安定感が出た感があります。前半はアンリエッタの登場と冬菜の動揺、後半はボルホスの襲来からかなり目まぐるしく話が動く展開になるのですが、謙児・イリーナラインという幹がしっかりとあるために、新キャラの登場、既存キャラの掘り下げ、急展開の連続という荒波を見事に捌ききっている。謙児くんという主人公の性格も大きいですね。わりときつい境遇ですし、過去現在未来と彼にかかる負担は大きく、並々ならぬ覚悟を要求される身の上ですし、実際覚悟も完了しているはずなんですが、彼には覚悟を決め受け入れた人間に特有の切羽詰まった余裕の無さが見当たらず、むしろ泰然自若として鷹揚に構え続けている。自分の立場を理解しきった上で、自然体なんですよね。単に受け入れているどころか、積極的に自分のため、イリーナのため、自分を助けてくれる人慕ってくれる人を守るため、利するためにその立場を利用し活用するにも意外と貪欲なあたりは、強かな一面もかいま見える。見ていても非常に頼もしい。
邪神の子としては格上と言ってもいいボルホスとの対面でも、実際の実力差を抜きにして対等以上にやりあっていましたしね。駆け引き上手、というのとはちと違う感じ。むしろここは貫目で釣り合っていた、というべきか。
こうして見ると、結構王様気質、という部分が大きいのかもしれない、謙児くん。ヒロイン陣との関係も、どちらかというと侍らしてる、という感もありますし。アンリエッタなんて、攻略と言うよりも文字通り陥落させた、という感じでしたし。
後半の急展開の連発も、事前に小出しにしていた情報から予測される展開を上手いことひっくり返した上で、さらに真打ちは実は此方でした、という見事に鼻先を摘んで良いように引っ張り回された感があり、小気味よさを感じるくらいでした。なるほど、今回のお話の核心がそこにあるなら、クライマックスがそうなるのはむしろ自然だったか。お行儀の良いやり方で攻めてくると思っていた所を、正面からの強行突撃を食らった気分。真っ向勝負が奇襲となるって、完全に上手いことしてやられた、ってなもんですよ。参った参った。
うん、キャラクターの掛け合いもなんだか思ってた以上にハマってきて楽しくなってきた。これは好きなシリーズになりそうです。

1巻感想

銀閃の戦乙女と封門の姫 3   

銀閃の戦乙女と封門の姫 (一迅社文庫)

【銀閃の戦乙女と封門の姫】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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マナの満ちあふれた世界クァント=タンをかつて救った少年カイト。数年後、平凡な高校生活を満喫しつつも時折悪夢にうなされる彼の前に、かつての戦友で銀髪の魔法剣士フレイが現れ、クァント=タンが再びカイトを必要としていると告げる。 都合のいい話だと怒る彼は、義妹の梨花の機転で条件付きでクァント=タンへと向かうことに。クァント=タンを襲った新たな魔物たちの正体とは?!
瀬尾つかさが贈る魔剣・魔導ファンタジー最新作ついに登場。

この主人公は煮え切らない男だなあ、という印象。多少、主人公当人も自覚があるようだけれど、彼が嫌悪感を感じている対象は論理的なものじゃなくて、多分に感情に寄るものなんですよね。いろいろ理由付けはしてますけれど、彼が主張しているポイントはわりと一貫していないんですよ。その中で共通点を洗い出していくと、結局彼は他人の思惑に乗ってそのとおりに動かされる事を極端に嫌う傾向があるようです。それも、かなり過敏に。それでいて、思惑に乗った上で自分の好きなようにする、という強かさや聡さや狡猾さは皆無に近く、ひたすら嫌悪し遠ざけ、逃げることで状況を避けようとするあたりは潔癖症のきらいも伺えます。
まあ、気持ちはわからなくないんですよ。他人の身勝手に振り回されたくない、というのは誰しも思うところ。それに、嫌悪感が客観的、論理的な拠り所によるものではなく、生理的な感覚によってもたらされるものなら、どうしたって我慢出来ないというのはあるでしょう。感情ってのは、どうにもならないものでありますしね。でも、悪意や敵意によるものではなく、むしろ他者を助け守ろうとする意図まで、十把一絡げにまとめて嫌悪して突っぱねようとするのは、いい加減潔癖が強すぎる気がする。たとえ戦場暮らしだろうとなんだろうと、まったく濁を飲めないあたりは子供でしかないのだろう。まだ、平和な世界で暮らしてきた妹のほうがその点まったくボケていない。
だいたい、その潔癖症の八つ当たりのとばっちりを食わせているのが、姫様とフレイだというのは可哀想な話じゃないですか。彼女たちがカイトに向けている好意や愛情には、後ろ暗いところはなにもないのに、外からの干渉が嫌だから、と遠ざけてしまうのは姫様たちからしてもとても納得できるものでもないでしょう。
そうして、自分に関わる押し付けは嫌うくせに、姫様が政略結婚することについては仕方ないことだ、と黙認してるんですよね。彼が姫様と付き合う件で一番問題視しているのが、貴族間で行われる優良種交配の種馬に利用されたくない、という件であるくせに。姫が政略結婚するのって、それもカイトが嫌悪する優良種交配の一環なんですよね。自分が種馬扱いされるのが嫌だから関わらないけれど、姫が繁殖牝馬扱いされるのは義務だから仕方ない、とするのはあまりにも姫さん可哀想じゃないか。
せめて好きあっている自分が相手になるか、それでなくても自分たちの関係やその結果生まれる子供たちが利用されないように立ちまわることについては最初から放棄して積極性の欠片もないんですよね。自分たちの両親が自分たちをそんな利用の手から守ってくれていた、という実例があるにも関わらず、自分がそうしようという気をさらさら見せてくれないのは、残念の一言。
こうして客観的に見ると相当に酷い男なんだけれど、それが魅力の無さに繋がるのかというとそうでもないのが不思議なところ(笑
カイト当人も明確に自覚しているわけじゃないけれど、自分が理不尽な感情で姫様たちに不憫な思いをさせている、という意識はあり、罪悪感やどうしようもない自分の感情に自責を抱いているのは間違いないので、まあ究極的には覚悟の問題なんですよね。他人の人生を引き受け、一生涯にわたって守り通すという覚悟。よくある話ではあっても、これは決して簡単な話ではありません。まだ十代のガキんちょがビビらないというのはおかしな話だし、そもそも男であったら大人になろうと何歳になろうと家族を持つ、という責任を持つ覚悟か軽々として出来るものではないはずなのです。況してや、姫とフレイの二人を引き受けた上で、国の思惑や脅迫から彼女たちと生まれてくる子供たちを守るだけの覚悟を持つのは、容易ではないはず。国王と徹底的に対立している、という事もありますしね。でも、だからこそ主人公としては姫たちを駒としてしか見ていない、どころか自分やシステムを脅かしかねない脅威として見ている国王たちから、大切な人を守るだけの甲斐性を見せて欲しいものです。そのためには、その潔癖すぎるところは、いい加減濁を飲めるようにしておいた方がいいよなあ。子供のままじゃあ、何も出来ないよ。
と、完全に妹ちゃんが脇に置かれてしまっているけれど、彼女もクァント=タンに深く関わるものだとしたらそれだけ因果を持っているわけで、なんかラストの新キャラと絡んでも次回以降はもうちょっと踏み込んでこれるか。
って、そのロリは倫理的に危なすぎるww 

瀬尾つかさ作品感想

魔導書が暴れて困ってます。まぁ、どうしよう!?3   

魔導書が暴れて困ってます。まぁ、どうしよう!? (一迅社文庫)

【魔導書が暴れて困ってます。まぁ、どうしよう!?】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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真崎謙児が訪れたのは、東京のはるか南方に位置する六道島。そこには全寮制の学園都市「六道学園」と、この世界において滅多に目にすることが無くなった魔法に関する本「魔導書」を収蔵した大図書館があった。転入初日、夜の学園を散策する謙児の目の前に現れたのは黒髪の少女、冬菜。この世界からは消えたはずの魔力を操る謎の敵に追われる冬菜を助けて逃げる謙児。そんな彼の前に現れたのは輝く銀髪をなびかせる美少女、伊佐木イリーナ。冬菜の姉だという彼女の魔法で窮地を脱した謙児だが、しかし魔力の暴走で図書館の封印がとかれ、魔導書たちが島中に逃げ去ってしまった。心配になった謙児はイリーナの魔導書の回収に付き合うことにしたのだが、ひと癖ふた癖ある魔導書たちに悪戦苦闘、次々と予想外のハプニングにドッキドキ?!魔道書回収ラブコメディ。
はーー、しばらく読んでなかったうちに、瀬尾さんもこういうの書くようになったんだ。……そうかー。
この作者の作品は、ごく初期の頃に幾つか読んでなんというか……心折られてしまったんですよ。読んでて、辛くて辛くて泣きそうになってしまったんですよね。というのも、この人の書く物語というのは、遥か遠く遠く、辿りつけないような高みまで、人が昇っていく話であると同時に……その高みへとかけあがって行く人たちを見送る物語でもあったのです。すぐそばで笑っていた人たちが、子供の頃から一緒に居た人が、想いを交わし合った人たちが……そんな想いも絆も置き去りにして脇目もふらず遠くへ飛び立っていくのを、見送る話だったのです。
置き去りにされる人たちは、それを受け入れ、彼らが飛び立っていくのを心から祝福し、応援し、その手助けをしていくのですけれど……それがねー、辛くてねえ。なんだか、見ていられなくて、【クジラのソラ】の途中で心折れてしまったのです。実は結末の4巻まで読んでいないので、もしかしたら話の途中で方向転換がなされていたのかもしれませんけれど、とにかく自分にはこれ以上読むのはつらすぎたんですよ。ちょっとトラウマになるくらい。トラウマというのは大げさか。でも、この作者さんの著作には怖くて手が出せないくらいには。
で、気がつけば五年くらい経ってました。
うん、なんで今さらになって手を出そうと思ったのかは自分でもよくわかりませんけれど、この五年近くずーっと気にしてたのは確かなんですよ。読みたくはないけれど、気になって仕方なくって、チラチラ横目で伺ってたんですよね。それが、まあ場の勢いというやつです。
新刊じゃなくて、三巻くらいまで出てから手を出してみる、というところに我ながら臆病さを感じてしまいますが。

とまあ、懐古はこのくらいにして、本作なのですけれど……いやあ、自分なにをビビってたんだろう、というくらいに突き放されることなく、ヒロインの姉妹と主人公がお互いを受け入れ合うお話でした。
こうなってみると面白いんですけれど、ヒロインの姉妹はふたりとも求道者でありながら、それぞれの理由で求めた高みから転げ落ちて挫折し、その代わりと言ってはなんですけれど、遥か遠く高みにあるものではなく身近で大切なものに全霊を賭すようになっている。同時に、これは姉のイリーナが特に顕著なのですけれど、置き去りにされることをひどく恐れているんですよね。その為か、非常に繋がりや距離感に対して強いこだわり、執着、或いは懇願にも似たものを抱いている。
面白いことに、主人公のあり方、言うなれば真摯な誠実さ、とも言うべき求められた事に応えようとする在り方、これはかつて私が読んだ昔の作品の主人公と、この作品の主人公はさほどその根源が変わっていないにも関わらず、主人公に対して求められているもののベクトルがまるで正反対になっているために、物語そのものの在り様が全然変わってきている、それともこれは反転してきている、と言った方がいいんだろうか。ともかく、全く似ていて非なるものになっている。面白いなあ、これはこの作品特有の傾向なのか、それとも作者の最近の傾向なのか。気になるので、作者の最近の他の著作にも手を出していこうと思ってます。まずは、富士見の【スカイ・ワールド】くらいから。

しかし、この主人公って、自分の性欲に対しても誠実なんだな。ギラギラした欲求は全然見せないくせに、さらっとセクハラしまくるので油断できない。しかも、イリーナさんが色々とチョロすぎるので、セクハラが素通しなんだが……あれ? これって結構エロエロですか?

桐野くんには彼女がいない!?4   

桐野くんには彼女がいない!? (一迅社文庫) (一迅社文庫 か 3-3)

【桐野くんには彼女がいない!?】 川口士/美弥月いつか  一迅社文庫

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  bk1


ほほーー、川口さんがエロゲ的なハーレムラブコメを書くとこうなるのか! いやいや、この人もハーレム系ラブコメなんか書けるようになったのかー。作風広がったなあ。
いやいやわかってますよ、実はこういうの好きだったなんてこと。他のシリーズ【ライタークロイス】や【漂う書庫のヴェルテ・テラ】なんか見ても、さり気なくそういう要素満載ですもんねえ。ただ、作風が変に媚び媚びしていなくて、実直で抑制の効いた地味めな文章だから目立ってなかった、というか迷彩されていただけで。
面白いのは、この作品、ハーレム系ラブコメ! という点を主題とすると、全体的にまったりとした日常ものになってしまったというところか。実直で丹念な描写法が、ラブコメにありがちはアホみたいにハイテンションな馬鹿騒ぎを許さず、日常の何気ない交流を一つ一つ地道に折り重ねるみたいに節制の効いた、じっくりと堪能できる青春モノになってるんですよね。
とはいえ、それが重たく濃密な青春モノになっているというわけでもなく、一生懸命軽く軽くしようとしているところが逆にエッセンスになって、訥々とした雰囲気の割にテンポのよいラブコメにちゃんとなってるんですよね。
これを逆に浮いている、と取る人もいるかもしれないけど、異能の話の挟み方といい、この危なっかしいアンバランスさこそ、ある意味川口さんの醍醐味だよなあ、と最近そういうところが楽しくなってきている私でありましたww
キャラがわかりやすく定形化してないのも、この場合いいように作用してるのかな。幼馴染や帰国子女、みんなそれなり以上に主人公に好意を持っているというテンプレこそ踏襲しているものの、性格や考え方は変に固定化されてないんですよね。流動的と言うかフラットというか。毒舌家や意地っ張りという特徴となりえる傾向はあるものの、あくまで傾向であってそこだけに突出したキャラ付けはしてないんですよね。そのせいか、キャラ同士のやりとりもつまらない退屈なラブコメの方程式みたいに決まりきったやり取りにならず、似たような話になったとしてもなかなか新鮮な気持ちで読めるんですよね。
そして相変わらず、此の人の描く女同士のギスギスした鍔迫り合いは秀逸の一言。おまえら仲いいなあ、とは決していえないぐらいに明らかにギスギスしてて仲悪いんだけど、修羅場ってるというほど険悪ではないこの絶妙のバランス感。
おいおいいいかげんにしろよー、と行き過ぎヤリ過ぎになりそうになったときは仲裁に入りはするものの、基本的に沙由里とレナの対立を面白がってる康介と麻耶は大物だよなあ。普通、胃がキリキリしそうなもんだけどww
18までに童貞捨てないと死ぬって、それなんてエロゲ?!
数奇な運命に翻弄される桐野くんの切実な悩み。
それは彼女がいないことでした……orz
『星図詠のリーナ』の川口士が贈る超変化球ラブコメついに登場★

と、あらすじではなってるですけど、康介ってあんまり切実に困ってもいないし、ガッついてもいないんですよね。好きな人と結ばれたいとこだわっているところなど、親族身内がとっとと誰でもいいからヤッちゃえと急かす事を思うと古風ですらあるし。
かと言って女嫌いとか潔癖というんでもなく、普通にすけべえでもある、と。ハーレムモノの主人公としては、びっくりするくらい鈍感という感じがしないのは珍しいよなあ。かと言って、じゃあ他人の気持ちに敏感かというと、沙由里とレナの仄かな想いにはさっぱり気がついていないんですが。それなのに鈍感というイメージがないのは不思議だなあ。男女の距離感が、川口さんって独特なところがあるんですよね。近いのか遠いのかわからんところが。それが、ラブコメ書いてても作用してしまっているのか。そのへんも、ハーレムものとしては妙に新鮮なカンジのする理由なのかも知れない。
なんにせよ、事前に想定していたよりも遥かに筆者の特色が出てて、面白かったです。これは続きも期待したい。
 
9月21日

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