徒然雑記

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翅田大介

悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。2 ★★★☆   



【悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。2】  翅田 大介/珠梨 やすゆき 電撃の新文芸

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ケジメを付けろ!? 型破り悪役令嬢の破滅フラグ粉砕ストーリー、第二弾

「……ちっ。胸クソが悪くなるね」
『悪役令嬢』に転生した元ヤクザのキリハだったが、持ち前の度胸で婚約破棄も乗り越え、周囲からの評価を高めていた。これを疎ましく思ったもう一人の転生者ユリアナは、キリハを破滅させるため陰謀を巡らせる。暗殺に反乱画策、更には戦争まで!?より大きくなった破滅フラグを打ち破る、痛快活劇ファンタジー、第二弾!
この女、ユリアナ、ここまでやっておいて自分がクズという自覚が一切なかったのか。それはそれで凄いな。自分のやっている人を陥れて相手の取り分を奪って他人の尊厳を踏み躙って、高みから優越に浸る、なんて事はみんながやっている事。
そんな風に思っていたのか。
この女にとって、世界はどんな風に見えていたのだろう。
クズは決して幸せになれない。ユリアナと一時的に組んでいた暗殺ギルドの頭目が、彼女に語った一言は、その内実とともに深くうなずかされるものでした。因果応報、とは言い切れない話なんですよね。別に善が報われ、悪もまた報いを受ける、って話でもない。いや、本質においてはそういう事なのか。
クズはどれだけ穏やかな幸せを手に入れても、それに決して満足できない。自らの幸せをも炎に焚べて、他人の不幸に酔い知れるからこそクズなのであって、決して自分の幸せに満たされない存在なのだと。
その暗殺ギルドのクズは自らをよく理解していた。だから、彼は幸せにはならなくても、不幸にはならなかったし、破滅もしなかった。
ユリアナは、自らをクズだとはまったく思っていなかったからこそ、破滅へと一直線に滑落していってしまったのか。
相手が悪かった、とも言える。ユリアナという毒婦は、その毒のあまりの強さ故に自らの破滅に周りすべてを巻き込むほどだった。国王陛下は強かな政治家として、国主として、ユリアナの毒を利用して国内を掃除するつもりだったみたいだけれど、これ結果として大失敗してるんですよね。
この毒は発見次第、患部ごと切除しなくては全身に回る毒だったのに、その判断を間違えてしまった。もし、キリハが居なければこれもうエラいことになっていたわけですから。
逆に言うと、国王陛下が目論んでいた形とは違うことになりましたけれど、キリハという毒を持ってユリアナが撒き散らした毒ごと国内の不良債権を一掃出来た、とも言えるわけだ。けれど、キリハに便宜図ったというほど支援もしてなくて、ほぼキリハが勝手にやった事だもんなあ。
まあいずれにしても、ユリアナとは役者が違いすぎた。
これがキリハがただのヤクザの組長の娘、とかだったらともかく、ヤクザの女大親分として表では企業群を仕切り、裏では全国津々浦々支配下に収めるような器だったわけですから、経験値が違いすぎる。
……そりゃ、こっちの世界でも裏社会には首突っ込みますよね。キリハにとって自分のフィールドというのは貴族世界や冒険者稼業よりも、裏稼業を仕切るマフィアの方なのですから。本業ですし。
むしろ、やり方、筋の通り方に関しては表稼業よりも通じてるわけで。前世でヤクザものたちを心から心酔させたその心意気は、そりゃあ任侠者ならこれ以上なく琴線に触れるものだったでしょう。
姐御呼びが、レイハには一番似合うよな。

一番面白かったのは、ユリアナの謀略によって正式に公爵家を引き継いだ上で、継承した途端に荒廃しすぎて革命が起こり反乱軍によって支配された領地を取り戻さなくてはならなくなったパートでしたけれど。
どうやっても詰み。あまりにも盤面に乗り込んだ時期が遅すぎて、挽回の目が完全に失せている、というゲームオーバーの状況で彼女が取った、盤そのものをクルリとひっくり返す手管が面白すぎました。これ、ここのパートは一冊くらいかけてじっくりやってくれても良かったのに、と思えるほどで、ダイジェスト展開みたいになっていたのはちょっともったいなかった気すらします。革命軍のリーダーも、もう少しちゃんと相手してほしかったでしょうし。
これは本作全般に言えるところかもしれませんけれど、ちょっと全体に急ぎ足でバタバタとストーリーを進めてるきらいがあったんですよね。それぞれのエピソード、もうちょっとじっくりと足を止めて当事者となるキャラたちを掘り下げつつ話を広げてくれてたら、もっと良かったんじゃないかな、と。話のスピード感は痛快でしたけれど、豪勢で味わい深いだろう品の良い料理を、早食いみたくガーッと掻き込んで食べてしまったような、もったいなさがありました。
この1巻で話を終わらせないといけない、という所もあったのでしょうけど。話を巻いていた、というほど性急さがあったわけではなく、ヤクザ令嬢一代記の「ざまぁ」キメるまでの物語としてはしっかり以上にガツンと威力たっぷりに書かれていたとは思うのですが。
キャラクターにしても、物語にしても、2巻で終わらせるには内包してるポテンシャルが凄く高かったのでしょう。まあ相手があのユリアナだと、あんまりじっくり腰を据えてやるには格が足りなかったのもあるでしょうけれど。彼女は毒が強いと言っても格としては小物であったのも確かですから、そう長いシリーズ続けて持つほどの悪役ではありませんでしたからねえ。
ともあれ、粋な気っ風と心意気が痛快な女任侠一代記であり、これ以上無くクズを踏み潰し切って捨てる見事な「ざまぁ」でありました。


悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。 ★★★☆  



【悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。】 翅田 大介/珠梨 やすゆき 電撃の新文芸

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ケジメを付けろ!? 型破り悪役令嬢の破滅フラグ粉砕ストーリー、開幕!

「聞こえませんでした? 指を落とせと言ったんです」
その日、『悪役令嬢』のキリハレーネは婚約者の王子に断罪されるはずだった。しかし、意外な返答で事態は予測不可能な方向へ。少女の身体にはヤクザの女組長である霧羽が転生してしまっていたのだった。お約束には従わず、曲がったことを許さない。ヤクザ令嬢キリハが破滅フラグを粉砕する爽快ストーリー、ここに開幕!

おらぁ、指詰めろや王子様よぉ。と、断罪イベントでむしろ断罪される王子様、超涙目である。
悪役令嬢キリハレーネ、前職ならぬ前世・女極道。ヤクザ令嬢とタイトルなってますけれど、ヤクザの娘じゃなくてご本人が組長をやっていらした女大親分なんですよね。それも小さいシマを仕切っていたようなこじんまりとした組ではなく、日本の任侠組織をまとめ上げ海外マフィアとの勢力争いを勝ち抜き、会社経営なんかも取り仕切って経済ヤクザとしても覇を極めた伝説の女任侠・和泉霧羽。
むしろ異世界で貴族令嬢やってるよりも、こっちのヤクザ時代の話のほうがド派手な冒険譚になってやしないだろうか、と思ってしまう経歴なのだけれど、そりゃあ中身がこれじゃあちょっと顔が良くて家柄が冴えているだけの王子さまたちなんぞ、ケツに毛の生えた小僧に過ぎず。なんの覚悟もなく寄りかかってくる貴族令嬢なんぞは「顔を洗って出直しな、小娘ども」と喝破するのがよく似合う。まあ役者が違うというものだ。
それに任侠者ではあっても正義の味方でもお優しい聖女でもないわけで、乙女ゲームに相応しい慈しみの心とか、コンプレックスを乗り越える手助けをしてあげるような手取り足取り支えて導いてあげるような親切心など、欠片もないのである。
自立するなら自分で立て、助けてほしけりゃ覚悟を見せろ。筋は通すし義理も果たすが、筋の通らない事は許さねえし不義理に対しちゃーきっちりケジメ、つけさせてもらいます。
とまあそんな勢いで、乙女ゲームのシナリオを蹂躙し攻略対象の小僧どもを容赦なく蹴散らしていくこの痛快さ。彼女の舎弟みたいなのになってしまう、貴族令嬢三人娘たちもそれまで貴族の娘として身を律して感情を整え抑え込んできたものを、自由かつ毅然と振る舞い貴族令嬢の枠に留まらないレイハの姿に感化されて、己の怒り、憤懣、復讐心、野心、欲望を曝け出して思うがままに振る舞い出すその様子は、まあなんというか自立した女性を通り越したナニカになってて、うん凄かった。
特に、他の二人が婚約者だった貴族の若者たちにさっさと見切りをつけたのに対して、幼馴染の婚約者に執着して、離れてしまった心はもういらないけど、身体は絶対に離さない。彼を所有できるのなら、悪魔にだって魂売ってやる、ともうヤンデレを通り越したナニカに成り果てたのを見たときには笑ってしまった。これが見るからに女性らしい女性ならまだしも、ヅカ系男装騎士令嬢から溢れ出すドロドロの怨念的執着ですからね。
女の暗黒面をこれでもかと曝け出す三人娘に、莞爾と微笑んで「良し」と言ってのけて、任せろと請け負うキリハさんのカリスマである。
実際、彼女の強烈な輝きは人を惹きつけてやまず、自身身体一つで冒険者稼業なんかも並行して行うものだから、市井でも人気を集め、さらに騎士のおっさんどもからもその勇ましくも美しい、しかも絶体絶命の危機にして死地ですら堂々と振る舞い姿に魅入られて、身分問わず凄まじい人気を集める始末。
前世でも、男には縁がなくって普通の恋愛がしたい、なんてうそぶいていましたけれど、自身を変えるつもりがさらさらない以上、ちょっとこの人に見合う男って早々見つからないんじゃないだろうか。執事として侍りつつ、キリハに色々と押し付けようとしていたこの世界担当神様のジェラルドは、もう顎で使われるだけの三下使いっぱしりにすぎないですし。こいつ、神様のくせにしょぼすぎるw
というか、このキリハさんの貫目に見合うような男って、国王陛下くらいなんですよね。立場上、嫡子の元婚約者なのですけど、国王陛下わりと本気でキリハの事狙いだしてやしないだろうか、これ。

そしてキリハさんのやり口なのですけれど、長ドス振る舞わすだけの脳筋ではなく、組織の取りまとめにも長けていたように交渉ごとも結構得意で、さらに会社経営者としての顔もあり経済ヤクザとしての辣腕の持ち主でもあるので、絡め手ハメ手もなんのその、なんですよね。結構えげつない手段で三人娘たちの障害になっていた商家や貴族家を陥れ、没落させ、抜け出せない沼に蹴落としていくやり口は、まさにヤクザ、ヤクザのそれである。いや商売の闇なんてそんなものだし、貴族同士の勢力争いも似たようなもの。ヤクザとはいくらでも親和性ある、という事なんでしょうね。
とはいえ、キリハさんのやり方はきっちり筋を通したものですし、彼女に寄って今回陥れられた人たちはそれだけ足元がお留守だったり、不義理を重ねていたことこそが没落の要因だったので、ちゃんと勧善懲悪っぽくはなっているんである。
こうして女性たちからは慕われ、一廉の男どもからも懐かれて、一種のカリスマとなっていく彼女。身分性別を問わずに人心を集め束ねていく姿はまさに姐御、姉さん、伝説の女大親分の器量である。
対するは乙女ゲーム主人公のキャラに収まった、前世・サークルクラッシャーの因業女。人を陥れ破滅する姿を見るのが楽しみという、人の不幸は蜜の味を地で行くまさに邪悪そのもの。だからこそ、他人を苦しめ人の絆と心を壊し、尊厳を踏みにじるを得意とする魔性の女である。
まさに対極をなす女同士、どちらかが破滅するまで終わらないだろう対決は、このまま第二ラウンドへ。これはキャットファイトなんかじゃ済まないドロドロの対決となりそう。ある意味、ワクワクw

翅田 大介・作品感想

桜色のレプリカ 2 ★★★★   

桜色のレプリカ 2 (HJ文庫)

【桜色のレプリカ 2】 翅田大介/町村こもり HJ文庫

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Kindle B☆W

理事長の理不尽な依頼に嫌気が差しつつあったカザネだが、校内に1本だけあるという桜の木の下でついに「本当のヒロイン」を見つける。
嫌々ながらの捜索だったが、真ヒロインの大胆な告白を受け、ハートのど真ん中を射抜かれてしまうカザネ。しかし他のヒロインたちも黙っちゃいない。
ヒロイン捜索型学園ラブコメは怒涛の展開へ――。
ヒロインとは一体……。
これあらすじ、工夫してあるというか間違ってないけれど全然違う的な書き方が面白いなあ。同時刊行としてはあらすじにネタバレかますわけにはいかなかったんだろうけれど。
前巻の感想で、ヒロインたちの魅力がこの物語のベースとなる「嘘くささ」。模倣の装いによって制限されている、みたいな事を書いたのだけれど、この二巻に至って当人の意志か置かれた状況の激変かによって違うけれど、装いが脱ぎ捨てられ剥き出しの「彼女たち」が出てきたことによって、一挙に様相が変わってきた。
いい意味でも悪い意味でも、本性が露わになった彼女たちは相手に合わせた演技ではなく、自分の欲求に基づいて動き、語り始める。その本音は、いっそ惨たらしいという程に一途であり同時に迷走している。特に百合原なんか、あれほどぶれない確信を得ていながら同時にずっと迷い続けていたんですね。それが、カザネとの交流によって揺さぶられ、定まってく。あれ? これやっぱりラブコメなのか? 存在そのものを絶対否定されながら、同時に攻略ルートに突入しているような状況になってるんですけれど。精神崩壊を起こしかねない告白によって、息の根を止めたはずが逆に自分でも自覚していなかった感情、人間らしさを一枚一枚皮を剥がされて引っ張り出されていく百合原。それは、彼女が数百年の孤独を自覚することも意味するわけで。
彼女がここにきて初めて知ってしまった恐怖は、それ自体が彼女の確信が正しいことを証明しているのだろう。彼女がソレなのは多分間違いない。でも、ソレ以外は?
本当のヒロインは彼女だったのだけれど、ソレ以外のカノジョたちは果たして本物ではなかっただろうか。理事長の定義はなかなか厳しいなあ、と思わざる負えない。理事長の立場と役割を思うと、その厳密さは正しいのだろうけれど、芽生えはカザネ以外にもたくさんあったんじゃないだろうか、と登場人物たちの言動を振り返ると思わざるをえない。特に、三十刈の恋に関する自己見解なんて、果たして模倣品に出来たものだっただろうか。彼女は既に自分なりの答えを得て、それを心に抱きしめながら歩んできていた。そう、彼女には心はもうあったんじゃないだろうか。それは実は理事長にも通じていて、AIはレプリカントとも違う生命体ではない機械そのものだったんだけれど、その振る舞いを見ていると機械とは程遠いものだったんですよね。
理事長は、人間じゃなくても機械だって狂う、と言っていたけれどそれって機械と人間にどれほどの違いがあったんだろう、と思ってしまうんですよね。
でも、百合原にはそのへん、はっきりと区別がついてしまってたんだろうなあ。だからこその、あの有様だったわけですし。その定義付けが正しいか間違っていたかはわからないけれど、百合原の中ではそれはゆるぎのない真理であったわけだ。だからこそ、自分に対する確信も揺らぎ始めていたのだろうけれど。カザネに見せてしまった百合原のあの弱音は、彼女がどれだけ自分の矛盾と孤独に参っていたかの証左であると同時に、女の子の弱った部分を引っ張りだした挙句にスルっと入り込む主人公、というラブコメの王道を行っているとも言えるわけで、あ、やっぱりこれラブコメだったのか。
いや、コメディというには置かれた状況が終末すぎる上に、概ねみんなメンタルボロボロすぎるのですが。でも、心底ムカつくヤツを絶対否定してイビリ倒して悦に入ってたら、段々情が湧いてくるわ、自分ちょっとさみしかったんだと自覚してしまうわ、ついつい略奪愛かましてしまって、相手の女が発狂してるのをめっちゃやってやったぜ、的なテンションの上がり方してるの、本当のヒロインさん、剥き出しにしてみたらそれはもうなんかえげつないヒロインだったなあ。
キャラが濃すぎる!
まあ、あのドSっぷりにいたぶられまくられながら、むしろそれに惹かれていってしまって業の深いドM沼にハマっていったカザネのアレっぷりの方が濃いと言えば濃いのかもしれませんけれど。ヒロインさまは、むしろどんだけ虐げても擦り寄ってくるアレっぷりにアテられた、と見るほうが正しいのかもしれない。
でも、修羅場ッてる時のリンネへの嬉々とした甚振り方を見せられると、あれ根っからのエスだよなあ。めちゃくちゃ楽しそうだったもの。ほんと、作者が書くヒロインって、方向性の違いはあっても「パワフル」さだけは揺るぎがないのう。
どこまでが機械で、どこまでが人間か、という人間論に指突っ込んで温度を確かめるような哲学面でのアプローチも、非常に真面目かつ深刻に考察しながら一歩一歩手繰り寄せて物語上の答えへと達しようとしながら、一方で人間って業が深いね、としみじみと趣向してしまうような身も蓋もなさも内包し、かつ機械もああいう風に狂ってしまうのを見せられると、人間と変わらん業深さよなあ、と感じ入ってしまうわけで。
むしろ狂った彼女に関しては、あれで終わりにならず放り出されたラストが、旅立つ人間の二人よりも印象深いんですよね。この終わった世界の果てで、なおもどう生きていくのか。その命題を背負うことになったのは、人間である彼女たちだけではなく、機械であるあの子にも課せられてしまったのではないかと思ってしまうような、そんな突き放し方で。
それをレプリカントの新しい可能性、というにはえげつなさが過ぎるとは思うのだけれど、これもまた「卒業」ということになるのかなあ。あのほっぽり出し方は、むしろ「退学」じゃねえか、とふと思わないでもなかったけれど。
一巻が意図的に表層舞台で滑稽な踊りを踊らせていたとしたら、二巻は書割りの背景を倒して踊っていた連中を全部深い沼に突き落として、その中から必死で這い上がろうとする「意思」がある者たちの足掻きっぷりを舐るように味わうかのような様相でした。必死さというのは、予想もつかない言葉や行動を生むもので、それは思いがけぬ展開を次々と引き起こす。まさに激動の二巻であり、物語の顛末であり、ラブストーリーの顕現でありました。
面白かった。

1巻感想

桜色のレプリカ 1 ★★★☆  

桜色のレプリカ 1 (HJ文庫)

【桜色のレプリカ 1】 翅田大介/町村こもり HJ文庫

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――この「学校」の中に1人だけ「本当のヒロイン」がいる。「その人」を君に捜し出して欲しいんだ。

六方(ろっぽう)カザネはこの「学校」の文学教師である。ある日、理事長の二階堂イツキに呼び出され奇妙な依頼を受ける。
積極的にカザネに迫って来る自称・淫乱ピンクの三十刈(みとがり)アイラ、マンガやアニメ的なお約束好きの四十田(あいだ)ユキ、委員長タイプの五十嵐(いがらし)ヒビキ、
無口で小説好きの百合原(ゆりはら)ハルカ、個性的な女生徒たちに囲まれるカザネが受けた依頼、その驚くべき内容とは――?

昨今では珍しい、1・2巻同時発売。しかも、第一巻は発売前からまるごと一冊無料で試し読みが出来るという企画をやっていたようで。まあ翅田作品は作者買いしているので、どっちにしても買いましたけれど。

最初から、変な話ではあったですよね。主人公の六方カザネ、彼は教師であるのだけれど当たり前のように「17歳」の少年である、と語られている。それについて、彼が特別だからという描写は一切なく、それどころか同じ年代の教師も普通に存在していて、この学校端からなんかがおかしい。
当初から常識と非常識の境界線が微妙に曖昧なところからはじまるのだけれど、話が進むに連れて境界線がくっきりと浮き上がってくるどころか、常識非常識の観点ではなく、現実と非現実、人間とそうでないものの境界線までじわりじわりと曖昧模糊で滲んでくるのである。
どこまで企図して描かれているのかわからない「嘘くささ」。少なくともそれを判別するための起点となるものだけは確かだと、そこだけは疑いすらしなかったのに、最後にはそれすらも虚構であったと突きつけられてしまう。
この足元の感覚、踏みしめるべき地面の感覚が徐々に心もとなくなり、雪崩落ちてくかのような不安定感の絶妙な加速度には、正直恐怖じみたものすら感じた。主人公が段々と精神の均衡を失ってくのもわからなくはない。一見、彼が精神的に追い詰められていく要因というものは、テンプレートとしても基本テキストに従順すぎる今時気にしすぎるのもどうよ、という理由によるもので、まあ理屈はわかっていても実感してしまうとどうにもならない、という類いのものではあっても主人公がそれをしてしまうと、主人公としても男としても器が知れてしまう内容である、一見ね。ところが、真相が明らかになってみると彼の感じていた違和感や恐怖感、忌避感というものが俄然様相を異にしてくるのである。
彼は、一体何にあれほどまでの忌避感を感じていたのか!
最後の展開、こうなると何が真実で何が嘘なのか、これまで語られてきた内容、世界の現状から学校の実態まで何から何まで信用が置けなくなってくるのである。だいたい、生徒だけじゃなく教師からして「ナンバリング」されていることを、どう考えればいいのか。
常に付きまとう登場人物たちの「嘘くささ」というのは、誰彼に限定されたものではなく、むしろ彼の恋人や周囲の人間たちにすら同様に感じるものだったことを、どう捉えればいいのか。あの恋人である彼女の「あざとさ」とか、ラストの展開以前に強く感じざるを得ないものでしたしね。少なくとも、私はそれを強く疑っていた。
まさか彼自身がその対象になるとまでは予想だにしていなかったのだけれど。彼も「六方」であることをもう少しちゃんと想像を巡らすべきだったのかもしれない。
しかし、あくまで驚愕の展開でありつつも、それが何を意味しているのか、それを暴いた彼女の正体、思惑、目的が如何にあるのか、という点についてはまだ一切不明であり、解釈のしようがないとも言えるわけで。
そりゃあ、早いところ2巻を準備して貰わないと、えらいところで止められちゃあたまったもんじゃあないですよ。その意味でも、二冊同時刊行というのは英断だったんでしょう。
ただ、現状ではまだ作品の勘所というか、物語としての面白さが起爆するという段階までは至っていないとも言えるんですよね。構成としての技巧は伺えるものの、作者の描くキャラクターの無軌道なくらいのパワフルな魅力が今のところ、この「嘘くささ」によって随分と制限されているというか、ラップを掛けられた状態とも言えるので、ちびっと活力が欠けてるんですよねえ。
なんにせよ、2巻次第か。

翅田大介作品感想

神話大戦ギルガメッシュナイト 2 3   

神話大戦ギルガメッシュナイト (HJ文庫)

【神話大戦ギルガメッシュナイト 2】 翅田大介/Ryuki  HJ文庫

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聖王ギルガメッシュの『聖楔者』であるディーナ・チャレンジャーの正式なパートナーとして『摩天の夜宴』を戦うことになった宿儺星一郎。早速、自宅にて一緒に風呂に入るなどディーナとの仲を深めていたところ、幼馴染みの忌寸刀羽華が現れ、思わぬ修羅場に突入。そして立派に育った(主に胸)刀羽華までも『聖楔者』になったことを知り、戦いは新たなステージを迎えるのだった。
伝統的にこれを着ないとダメな改造巫女服かと思ったら、これ私服なんですか!? 痴女じゃん、ただの痴女じゃん!! 救いは当人はファッションに無頓着で、服を選んだのは妹だ、という点くらいか。でも、痴女じゃん!!
というわけで、清楚系のはずなのに見た目があれな幼馴染が登場。なんかテコ入れがあったのか、と思うくらいディーナと刀羽華の二人で色仕掛け、という展開が多発したのだが……主人公、反応しなさすぎだろう。わりと平気で肌を晒す女性陣もどうかと思うけれど、そこまで体を張ったアピールに対して、慌てすらせずあそこまで事務的にあしらわれたら女性としての挟持は傷つくわなあ。さすがに、これはちょっと異常だろう、と思ったら実際星一郎、異常をきたしていたらしい。最初からメンタル面、ある程度ぶっ壊れていたのか。
星一郎の聖楔者が「全き人間エンキ=ドウ」である事を考えるなら、彼の人間としての破綻、不具合はなるほど、エルキ=ドゥの逸話をある意味踏襲していると言えるのだろう。だとすると、刀羽華はエルキドゥを人間にした巫女シャムハトとも見立てることも出来るのか。実際の彼女の聖楔者の力の元は全然違うんだけれど、今回の敵である波々木節奈との関係から見ても、彼女の立ち位置って英雄神よりも奇稲田姫っぽいんですよね。
この第二巻は、だから過去の出来事から人間として欠けてしまっていた星一郎が、二人のヒロインにそれを埋めてもらい、人間に戻る、あるいは人間になる物語だったわけだ。
ヒロイン二人がかりとはいえ、やり方がそれぞれ違うのも面白い。刀羽華の方は彼が壊れている原因を深く理解していた上で、ディーナにも事情を語って理解を共有すると同時に献身によってそれを埋めようとする一方で、ディーナの方はむしろ突き放すことで自覚を促そうとするあたり、彼女の在りようというのは「王様」っぽいんですよね。内面的には女の子らしく、星一郎の代償行為に傷つきながら、振る舞いとしては厳しく叱咤する。さてその挟持は女性としてのモノとも言えるし、また王らしい厳格な振る舞いとも言える。二人共チョロいのは確かなんだけれど、やり方は違うとはいえ男が甘え続けるのを許してはくれない、なかなか厳しくも真ん中に一本芯が通っているカッコイイ系のヒロインではあるんですよねえ。そのへんは、翅田作品の片鱗があるのか。
ともあれ、この一巻でがっつり叩きなおしてしまうとは思いませんでしたけれど。いやでも、あの壊れていた部分が矯正されたとなると、ディーナも刀羽華もちゃんと女の子として見られるようになるわけで、今までみたいなノリで迫ると、あっさり星一郎手を出してしまうんじゃないだろうか。いいのか、これ?w


ワールドウォーカーズ・クロニクル 異世界渡り英雄記 2 4   

ワールドウォーカーズ・クロニクル 異世界渡り英雄記2 (HJ文庫)

【ワールドウォーカーズ・クロニクル 異世界渡り英雄記 2】 翅田大介/い〜どぅ〜 HJ文庫

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次なる“異世界”は現代日本!?

元の世界から“塔”を通じて、エリザ、ミュートと共に3つ目の異世界へ移動したヴィル。そこは現代の日本、東京のとある家の浴室だった。他の人には見えないという“塔”が3ヶ月前から突然見えるようになった天才少女・月詠ナナミは入浴中の闖入者に驚くものの、“塔”が見えるというヴィルたちに興味を持ち、共に“塔”の謎に迫ろうとする。
後書きでひたすらにろくでなしについて語りつく作者が何かに目覚め始めていてワラタ。うん、そりゃあねえ、かっこよくて自立した女性を書くことに関して前作以前から一流のものをもってるこの作者さんがさ、あんまり惰弱なヒロインを書けるとは思わなかったですよ。このヴィルみたいなガチのロクデナシに惚れてしまう女性って、それはそれで相当にダメな人しか無理だと思うんですよね。だがしかし、メンタル的に弱い系のダメ女性をヒロインとして翅田さんが描けるかというとどうしてもイメージ湧かないわけです。だから、このロクデナシがモテるためにはどうしたらいいか、と首をひねった結果としてヒロインもロクデナシにしてしまえばいいんだ! となる思考展開には思わずゲラゲラと笑ってしまいましたがな。ひどいなあ、もう。
というわけで、メインキャラが押しなべて「ロクデナシ」揃いというとんでもない作品に。
前回、ヴィルにこっぴどく振られた結果、堅物真面目キャラから異世界デビューを果たしてしまったエリザのロクデナシ度が留まるところを知らないアゲアゲ状態に。もう、凄いキャラになっちゃってるよ、これw
開き直った女怖い。
こっぴどく振られた仕返しに、振ったのを後悔させてやる、と奮起する女性は少なくないかもしれませんけれど、振った当人にここまで直接的にガンガンイビリ倒そうとする人はそうそういないですよ。もう引きつった笑いが止まらないというかなんというか。超肉食化すぎるw 色仕掛けどころじゃなくガチで襲いかかってるしw
一方で、ヴィルの相手以外だとナナミやその友達への丁寧で礼儀正しい振る舞いを見せていて、元々の生真面目で品行方正な女騎士だったころの性質はきちんと残っているんですよね。
好きな相手を振られてもなお未練がましく追いかけている、というのならもうちょっとみっともないというかアレな部分もかいま見えると思うんだけれど、エリザの場合はガチで恨みつらみ入ってるからなあ。もちろん、今でも好きという気持ちは残っているんだろうけれど、あの酷い振られ方が「思い知らせてやる」という方向に感情値を全振りさせてしまっているだけに、本当に面白いことになってる。
しかし、ロクデナシになるということはそれだけ倫理的にも捨ててしまっているモノも多いわけで、そのせいかしらないけれど、今回のエリザ、メインヒロインとして大丈夫なのか、と思わず心配になってしまうほど裸族状態で。エリザさん、あんたそれだけロクデナシになってしまいながら、その乙女めいた初体験幻想はちょっと無理がありますよ?

確か、行く先々の異世界で現地妻をゲット、とかいうアレなコンセプトがあったようななかったような気がしないでもないですけれど、その辺はちょいとズレてきてる気がする。なにしろ、ナナミってば現地妻じゃなくてこの場合完全に共犯者とか同類とか似たもの同士、という感じでしたもんね。まだ、自分の異常性を気に病んでいたあたり可愛げがあったのかもしれませんけれど、そういう自分を受け入れてしまって開き直ったあとの有り様ときたら、殆どヴィルとおんなじレベル、方向性のロクデナシでしたもんね。下手に科学知識を持った天才な分、マッド・サイエンティスト方向にぶっ千切っていきそうな気配もあるし。
これだけロクデナシな人間を揃えていってしまうと、ストーリー進行が暴れ馬の如く振り回されそうで、いいぞもっとやれってなもんである。

今回、訪れた異世界はまさかの現代日本、とは言い切れない伏線がチラホラと幾つかのセリフから伺えたのだけれど、ともかく最近は中世レベルの異世界やゲーム世界に行くばかりで、そっちサイドの住人が現代文明レベルの世界に迷い込む話は珍しかったので、そのあたりのギャップ体験もなかなか楽しかった。と言っても、ヴィルにしてもエリザにしても、適応能力がありすぎて文明レベルの差に戸惑う様子はあんまりなかったんですけどね。むしろ、よく馴染んでいるからこそ、時々垣間見せる驚きの様子が面白かったというべきか。その馴染みっぷりが面白かったというべきか。いずれにしても、一度こうして現代レベルの技術や概念に触れて理解を得ている以上、今後訪れる異世界でも現代で得た経験値は色々と役立ちそうで興味深い。

1巻感想

無能力者(レベルE)のオービット・ゲーム 2 4   

無能力者(レベルE)のオービット・ゲーム 2 (オーバーラップ文庫)

【無能力者(レベルE)のオービット・ゲーム 2】 翅田大介/伍長 オーバーラップ文庫

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激突! 倏依(エレクトロキネシス)畛箸い療刑融!!

「さすがは半端チームの『エンジェル・フェイス』ですね」
アルテミシア宇宙学園の公認チームとして存続が決まったソラたちだったが、実習生として赴任した『瞬星』アオがソラにべったりで、不機嫌を隠せないソフィーとフレーナ。
そしてアオが『出来損ない』に関わっていることを不愉快に思う学園の天才児リズ・ポーターが自らのチームを率いて挑戦してくる。
倏依(エレクトロキネシス)瓩箸いΥ少な能力を使うリズに対し、迎え撃つソラ。
度重なるイベントで騒然とする学園だったが、更にその裏ではソラを狙った陰謀も進行していた。
止まらない&無重力下(ノンストップ&ノングラヴィティ)バトルエンタメ第二弾!
ドSだーーっ! この主人公、ガチのドSだーー!! やばいやばい、主人公のソラくんが筋金入りのサディストだった件について。なんちゃってSじゃないですよ。こいつ、マジモンだw 宇宙最高の頭脳と呼ばれる女性によって仕立てあげられたソラのメンタリティは、もはや精神汚染か人体改造されたと言っても過言ではない強化がなされていて、魔改造もいい所。もう人類のそれを逸脱してしまっているのじゃないか、というぐらいに凄まじい次元で鍛えあげられていて、それこそが何の能力持たない彼の強さの源でもあるのだけれど、そこに至るまでに虐待を通り越して虐殺に近い精神強化の為の訓練というかサバイバルというか死んでも生きろな状況に叩きこまれてイジられてしまったせいか、恐ろしいまでの嗜虐性が備わってしまい、見るも無残なサディストの出来上がりである。
尤も、敵味方問わずに撒き散らされるS性ですが、敵はともかく味方に対しては心を傷つけるものでも屈服させるようなものでもなく、からかい半分にいじって来るぐらいの程度なんですが……それでもこれは酷い(笑
普通の年頃の男の子が持っているようなシャイな部分とか純真さなんかは鼻紙に包んでポイされてるような人間なので、いじられるにしてもそれはもう草葉の陰で涙してしまうそうなほど残虐非道な為さりように、ソフィーやフレーナの悲鳴がひっきりなしに響き渡ることに。もうご愁傷様です、ぐふふ。
意識せずに、なんでも受け入れちゃいますよ状態のアオに対しては、見事なくらいの放置プレイを各所で決めにキメまくってるあたり、そのどSっぷりはフルブースト状態。
ともあれ、このソラの精神的な強さというのは、とてもじゃないけれどマトモなものではないんですよね。正気の人間が保持できる強靭さではありえない。元来のものではなく、後天的に強化されたもの、という点でもその異常性は際立っている。どう言い繕っても、狂気の産物であり、イカレている存在なのである。
もっとも、その狂気もイカレっぷりも不安定さがかけらもなく、見事に制御されているあたりが味噌なのである。暴走しがちな狂気よりも、完全にコントロールされた狂乱の方が、怪物性は跳ね上がるのである。怪物性とは得体の知れなさであり未知であり、だからこそ悍ましく恐怖を生み出す泉足り得る。それが主人公に備わっている場合、この悍ましさは正しく敵に向けられるので、物語的にはややダークサイドな痛快さが保証されている、と言ってもいいんですよね。
さらに、主人公のソラだけがその部分で突出しているのかというとそうではなく、ヒロインの一人のアオもまた、同種の狂乱を内包していることが、作中で語られている。黒幕サイドの人間ですらビビるような、根本からイカれ狂ったキャラクターが主人公とヒロインに配置されている、というのはこう……ゾクゾクするような仕込みなんですよね。この手のイカレたキャラというのは、逆にその攻撃性や危険性が味方に牙を剥くことは殆どないので、その手の不安感については振り回される必要なさそうですし。まあ、パックリ頭から齧られそうな牙から伸びた舌にペロペロ顔を舐められてよだれまみれになりながら、涙目になって悲鳴をあげさせられるくらいの茶目っ気は、ソフィーたちヒロイン衆は覚悟しておかないといけないかもしれませんが。ソラもアオも、その辺り嬉々として弄びに掛かりそうな人たちですし。いかん、この幼馴染コンビ、敵にも味方にも危なすぎるw

と、表紙なんですけれど、てっきりアオなのかと思ってたら、新キャラだったんですね。アオが転入ではなく教育実習生として来校した為にチームの新メンバーになれなかった為に、違う新メンバーが必要なのは冒頭の展開からも自明だったのですが、そうかー、この子かー。
いかんぞ、ただでさせ一生懸命背伸びして頑張ってきて、周りの目から本当の自分を鎧って踏ん張って頑張ってきた小さい娘が、それらを全部脱ぎ捨てたら、むしろ針鼠になって生きてきた分中身は無垢なままなので、そこにドSにいじられる環境に置かれてしまったら、即座に染まっちゃうじゃないか……うんうん。
いやマジで、仮面を脱いで天才児ではない歳相応の顔で現れたリズは、はかなげで無垢そうな幼女だったので、こんなヤバい男のもとに置いておいていいものかと真剣に危ぶむほかなく……そんなリズをソラの魔の手から守るべく、ソフィーとフレーナが自ら盾となって庇おうとしてドツボにハマっていく様子が目に浮かぶようであるw

1巻感想


無能力者(レベルE)のオービット・ゲーム 13   

無能力者のオービット・ゲーム 1 (オーバーラップ文庫)

【無能力者(レベルE)のオービット・ゲーム 1】 翅田大介/伍長 オーバーラップ文庫

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出来損ない(レベル・エラー)が世界を壊す!

「きっと、あそこへ行く」 超能力たる『遺能』が使われるのが普通となった時代。
無重力下で『遺能』を駆使して行われる戦闘競技『オービット・ゲーム』が人気を博し、軌道上のコロニーに存在する宇宙学校はオービット選手の育成に力を入れていた。
日向ソラは『遺能発現者』でない事を理由に希望していた宇宙学校への入学を拒まれてしまう。
別の学校に進んだソラは有望なオービット選手だと誤解され、手荒い歓迎を受けるが、それは無能力者が常識を覆す物語の始まりだった。
止まらない&無重力下バトル開始!
この無重力化における戦闘競技『オービット・ゲーム』の成立のざっくりとした歴史がなんか好きだなあ。スポーツの成り立ちなんてものは、往々にしてこんな風にルールも何も無いところからそこにいる人達が手持ちの道具や技術、環境を用いて好き勝手遊んだり、勝負したりしているところから始まって、ルールだの枠組みだのというのは後から付いてくるもんなんですよね。
尤も、表向きにおける軌道世界の一番人気のスポーツ競技、という看板は何やらカモフラージュっぽい怪しさが漂ってきてますけれど。
トッププレイヤーになれば、名誉も金も思いのまま、という大財閥の集まりを背景にした莫大な餌で有為の人材をかき集めて、さて一体何を育成しているのか。
正直、ソラが軌道世界にあがってきた事を知った時のアオの対応は、幾らなんでもと顔をしかめてしまうくらい人格攻撃を含めた凶悪な代物で、過剰反応もいい所だったんですよね。身内であるチームメイトに見せた素の顔の時でも、明らかにテンパってて一杯一杯になっている様子でした。
その時は、絶対に来るはずがなかった幼馴染が軌道上にあがってきたことで、テンションあがりまくって変になっているのかとも思ったのですけれど、どうしても彼を追い返さないといけないと思い詰めていたのなら、あの過剰反応も理解できなくも……ないかなあ(苦笑
この子、霧島アオってちょっとヤンデレの気配ありますよね。ちょっとどころじゃないか、いきなり極端にデレ化してしまうところといい、感情的に不安定な上にビキビキに尖りきってる。普段からじゃなくて、ソラに関してのみっぽいけれど。
翅田さんの描くヒロインは、往々にして既存の枠に収まらないオーバーフロー気味のキャラクターが多いのだけれど、アオに関しては特にヤバい雰囲気をひしひしと感じるのです。尤も、ヤバいと言っても味方身内に対してのものではなく、敵対する相手に対してですけれど。この手の娘は、相手がどんなに強大でも巨大でも関係なくニコニコと捻り潰して踏み躙って掻っ切ってしまいかねない恐ろしい頼もしさを持ってたりするので、ある意味主人公形無しになっちゃうのですが、いいぞどんどんやれw
アオに対しては若干押され気味である主人公のソラですけれど、人類の殆どが持つ超能力因子を全く持たないというハンデを背負いながらも、性格もネジ曲がらず……いや、思いっきり歪んで曲がって恐ろしく性格悪い人間に成り果ててるけれど、不平不満を内に溜め込んで鬱屈を貯めているような人間にはならず、馬鹿にされ蔑まれたら、その何倍もの勢いでその場で煽り返し言い負かし嘲弄してぐうの音も出ないほどコテンパンにやっつけてしまうのは、見ていても気持ちよかった。その上で、口だけではなく、きちんと実力で、しかも超能力を使わない純粋な身体スキルと頭の回転で、バッタバッタと増長した連中をなぎ倒していくのですから、純粋に気持ちのよい主人公です……性格悪いけどね! でも、下手にイイ子ちゃんしてスカした態度取られるより、やられたらやられっぱなしじゃなく、やられた分を割増してお返ししてくれる方が好感持てますよ。
それに、性格悪いとはいっても、自分が苦労してきた分、辛い思いや苦労を重ねてきた境遇には共感を寄せやすいですし、そんな境遇、環境にへこたれずに頑張る人たちには素直に尊敬の念を持てる、そしてそういう人たちの為に体を張れる、性格が悪いなりに真っ直ぐにそそり立った性根の持ち主、ということでちゃんと主人公らしい男の子じゃあないですか。
今のところ、まだキャラや舞台、状況説明に伏線の配布という側面が強くて、物語が本格的に動き出すのは次以降となるのでしょうけれど、とりあえずソフィーリアとフレーナのチームメイト二人はまだまだ存在感示しきれていないので、彼女たちが弾けるのも次回からの楽しみ、となりますか。もっともなんか、アオが手ぐすね引いてそうなんですけれど。

ワールドウォーカーズ・クロニクル 異世界渡り英雄記 4   

ワールドウォーカーズ・クロニクル-異世界渡り英雄記- (HJ文庫)

【ワールドウォーカーズ・クロニクル 異世界渡り英雄記】  翅田大介/い~どぅ~ HJ文庫

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世界の中心にそびえる≪塔≫、それは全ての異世界に通じていた
聖都ラグランジアにそびえ立つ、天まで届くという漆黒の《塔》。
教会騎士団の英雄でありながら、《塔》への信仰に疑問を持つ少年ヴィルはある日、まばゆい光と共に天から降ってきた少女と出会う。
その邂逅は少年を異世界へと導く道標だった。冒険心を抑えきれないヴィルは同僚であり、ヴィルを慕う美貌の女騎士・エリザと共に運命の選択を迫られる。
相変わらず、キャラ立ってるはずの主人公をさらに喰っちゃうくらい、ヒロインを自立させるよなあ、この作者さんは。まあでも、そのくらいしないとこのロクデナシの主人公の相手なんか務まらないか。
この主人公のヴィルもある意味とんでもない。作中でロクデナシ呼ばわりされる彼だけれど、ライトノベルでこれだけ大事なものを持たない、抱え込まない主人公は見たことがないですよ。まだ見ぬ世界への興味、好奇心を抑えきれず、冒険に心を寄せる根っからの旅人。稀人として一所に留まれず、帰る場所を持たず、故郷を持たず、根付く事を知らず、人すらも顧みない。ただ前ばかりしか見ず、見たことのない景色にばかり思いを馳せ、未知に心弾ませる。
そんな好奇心の塊、冒険心に蝕まれた主人公は今までだって珍しくはなかったですけれど、同時に今まで持ち得てきたもの、縁や繋がりといったものに対して、蔑ろにする、捨て去ることへの忌避感や罪悪感、寂しさや安住を求める気持ちというのが少なからず残っていて、葛藤に苛まれているものでした。
ところが、このヴィルにはそれが一切見当たらない。こだわりも未練も、何一つ心に残っておらず、自身の好奇心・冒険心を全肯定していて、躊躇うところが一つもなかった。
彼にとっての十年という幼少からの長きにわたっての最大の縁であり、しがらみであり、大切なものであったはずのエリザからしたら、置いて行かれてしまった時の衝撃たるや、とんでもなかったでしょうな、これ。
ヴィルにとっては、自分の存在というのは、未知への好奇心や冒険心に比べたら、まるでアンカーにならなかったのですから。いやさ、その冒険への欲求に対して、比べることさえして貰えなかったわけですから。
ここまでけちょんけちょんに振られたヒロインも見たことがないですよ。なまじ、大切にして貰っていたのが、大切な人と見てもらっていた事が余計にキツい。最初から一顧だにされてないような付き合いなら、眼中になかったのだと思えるのかもしれないけれど、本当に深くつながった付き合いだったからこそ、決定的なときにどちらを選ぶかで逡巡もなく捨てられてしまった、というのはもう心ズタズタにされますよ。
ここで並みのヒロインなら、それでもいいから、と情にすがってくっついていくのでしょう。冒険心のまま突っ走っていくヴィルを、その背中を必死に追いかけていくのでしょう。決して、彼の冒険への欲求に自分が勝てないと諦めながら、それでも共に居る為に。せめて、未知へのワクワクを共有しようと、彼に身も心も寄り添おうとするのでしょう。
ところが、このエリザは違いました。いや、彼女凄いですわ、とんでもないですわ。正直、尊敬すら覚えた。
エリザと来たら、ヴィルを支配する好奇心に対して、追従するでもなくしてしまおうとするのでもなく、その鼻面を引きずり回してやることを選びやがったのである。この自由にして放埒な主人公の、さらに前を行き、振り回されるのではなく、むしろ振り回してやろうというのです。
堅物で真面目で保守的で、あまり大胆とは言えない不器用さが目立つ女性だったエリザの、もはや覚醒と言っていいくらいの変貌ぶりは、ヴィルをして、とんでもない女のスイッチを押してしまった、と慄かせるほどの化けっぷりでした。ああ、あんな真面目でお行儀の良かったエリザさんが、ヴィルに同レベルのロクデナシに! しかも自主的に! 率先してロクデナシになろうとしてらっしゃる! 
やばいこれ、面白すぎる。
一所に留まれない根無し草の冒険家、その帰るべき家や港になろうとしたり、その旅を支える事を望むというのが、この手の旅の空を本分とする男に惚れてしまった女達の多くが選ぶ道なのでしょう。多分、この作品において訪れた異世界で現地妻となってしまうゲストヒロインたちも、その範疇のはず。しかしまあ、このメインヒロイン様ときた日には、彼の好奇心も冒険心も、他の未知やまだ見ぬ世界をすら後回しにしてしまうほど、自分という存在をもってゾッコン夢中にさせてやる、と恋だ愛だに留まらない収めない、ヴィルという男の持つ価値基準のすべてを虜にして支配して屈服させて充足させてやる、というこの女として望みうる最強の野望の凄まじさよ。
まあ、志高くもまだはじめたばかりで余裕なく必死な面もあるようだけれど、そこはそれで可愛げというもので、強烈な武器なんだよなあ。

肝心の異世界渡りの方は、一つの世界を長々と旅するわけでもなく、それこそ旅の一時で立ち寄るだけ、といった風情で、玄関だけお邪魔して立ち話してさようなら、というくらいのあっさりさはちょっと忙しないんじゃ、と思わないでもないのだけれど、単によくある中世風の異世界を渡っていくだけではなく、それこそ現代、未来、宇宙にディストピア、とファンタジーに留まらないSFやなんやとジャンル問わずの無節操な世界観に次々と飛び込んでいくそうなので、どうなるか想像つかずワクワクしてきてます。いやあ、次の世界がかなりびっくりなところだったからなあ。というわけで、一人のジゴロなロクデナシと、それを踏み越える勢いの新人ロクデナシと、マイペースな喋らぬ少女の異世界を次々と旅してまわっていく三人旅のはじまりはじまり。うん、楽しみ楽しみ。

翅田大介作品感想

月花の歌姫と魔技の王 45   

月花の歌姫と魔技の王IV (HJ文庫)

【月花の歌姫と魔技の王 4】 翅田大介/大場陽炎 HJ文庫

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歌姫の舞台の幕が上がり、戦いの火ぶたが切られる!!

「月花の歌姫」として大舞台に立つことになったルーナリア。
その美しさと歌声は人々を魅了し、ライルに涙を流させるが、人と幻想種との戦争を止めることは出来なかった。
舞台の幕開けはそのまま惨劇の幕開けとなり、戦いの火蓋が切られる。
その中で下されるライルの大きな決断、そして運命に翻弄されるヒロイン達が選択する、それぞれの道とは?
いやあ、ホンマにホンマに。こんだけイイ女が出揃ってる作品は早々ありませんよ。マリーアにしてもルーナリアにしても、イルザにしてもツェツィーリアも、他の作品なら他の追随を許さない抜きん出た超抜ヒロインとして君臨できそうな逸材にも関わらず、それが全員揃っちゃってるんだもんなあ。なんて贅沢な。
いやあ、もう心の底から惚れ惚れさせていただきました、今回は。特にマリーアとルーナリア、この二人はちょっと極まっちゃってましたよ。
マリーア、なんですかあの全身全霊で捧げた献身の中に一輪の花のようにひっそりとささやかな、しかし頑なに飾り立てた乙女の願いは。本気で胸がキュンとさせられてしまったんですが。
その直前の、髪の毛の一本に至るまで自分の全てはライルのものだという気負いも何もない当然の事のように告げた宣言だけでも致死量に等しい凄まじい威力の兵器にも関わらず、対価がそんな事で構わないのかと思ってしまうような細やかな乙女の意地が、胸どころか心臓まるごと首根っこも含めて締め付けられそうな可憐な可愛らしさで、もうあきません、参りました、完敗です。
これほどの女性にこれほどまでに惚れられるって、男の本懐ここに極まれる、だよなあ。
マリーアの魅力というのは、決してライルだけに向けられているものじゃなくて、彼女の心意気に救われ、支えられ、生まれ変わったルーナリアは、半ばマリーアの信奉者みたいになっているのがまた面白いところ。彼女、ダブルヒロインの片割れにも関わらず、どうも途中からライルよりもマリーアの方を向いている傾向が強くなってるんですよね。親友であり、ライルをめぐる恋のライバル同士、という関係ではあるものの、どうやってライルの気を引くかではなくて、どうやってマリーアと対等になれるか、マリーアに張り合うに相応しいだけのイイ女になるか。マリーアのライバルに見合う女性になれるか。と、とにかく基準がマリーアなんですよ、ルーナリアって。一生懸命マリーアのことばかり注視しているのです、この娘。決してライルをないがしろにしているわけではなく、ちゃんと真っ向からライルに告白という宣戦布告をして、雄々しいまでに堂々とライルへの恋に没頭しているのは間違いありません。けれど、それ以上にルーナリアって、マリーアマリーアマリーアなんですよ。それがなんとも微笑ましいというか、恋している相手と恋を争っている相手のことがこんなのも好きでいられるというのは、とても幸せなことなんだろうなあ、とついつい笑顔になってしまいます。
ルナーリアはライルが好きで、マリーアが大好きだ。
この一文が、ある意味すべてを表しているのではないでしょうか。
ルーナリア、ガチでブチキレ!!のあのシーンも、マリーアが傷つけられた事で完全にプッツンきてしまったわけですし。
主人公がヒロインを傷つけられてぶちきれるシーンはありますけれど、ヒロインの片割れが同じヒロインの娘が傷つけられたことで、あれだけ本気で正体失うほどにブチキレるシーンはお目にかかったことありませんよ。もう、どれだけマリーアの事好きなんだ、と。
それでフルボッコにされるのがライルというのがまた……何とも微苦笑を禁じ得ないのですが。いや、でも痛快でしたよ。女の子を哀しませた男は、相応の報いを受けニャアなりません。それが善意にしろ後ろめたさにしろ、真実の愛情だったにしろ、です。何しろ女の子たちは、何の助けもフォローもなく、自力で立ち上がったわけですから、そうするだけの権利があり、義務すらあったに違いないのですから。
お陰で、最後のルーナリアの結論もスッと理解出来ました。そりゃあ、それだけ好きなら諦められんよなあ。好きなもの同士結ばれて幸せになってくれるなら、それであきらめが付く……という範疇をとっくにぶっちぎってますもの、これ。ある意味一番肉食じゃないか、ルーナリアって。
これほど恐ろしいお目付け役は居ませんよ。なるほど、最後のこの二人の組み合わせはちょっと納得です。ルーナリアの据わりっぷりに加えて、何だかんだとライルだってマリーアに若干頭おかしくなるほどべた惚れである事が発覚した上ルーナリアに焼き入れられたことで心境に変化もあったようですし、この二人組に今マリーアを放り込んでしまうと、色んな意味で「蹂躙」されてしまいそうな気がします(笑

民族問題の様相もはらんだ幻想種との争いも、お為ごかしの倫理を振りかざした決着ではなく、いわゆる剣と闘争による対話をもって決着を付けたのも、子供騙しの和解ではなく、逃げない真っ向からの解決法で思わず頷いてしまいました。これって、人間種と幻想種がお互いに接触が少なく未知の相手であったからこその争いであり、和解でもあるんですよね。本当の民族紛争だと数百年千年単位で遺恨が根付いてしまっているので、どうにもならないケースが多々あるのですが、未知と利権が発端で始まった争いは、お互いを知ること、出会いの先に進もうとする意志を結び合うこと、そして利益調整さえ叶えば、相応に形が出来ますし。そして、お互いを知ることには、痛みと血を流すことでようやく理解できる事も含まれるわけで、ようはそれをどれだけ限定的な形に留めることが出来るか。その理性と強かさが試されるわけで。ライルにしても、ベルンハルト王子にしてもイルザにしても、そこを冷徹に判断して実行してのけたのは、感心させられることばかりでした。

一方で、明確な野望を持たずひたすらに享楽で人と国と世界を弄ぼうとしたアルベルトや、復讐に囚われたマルガレーテについては、これまた見事な決着の付け方をしてみせてくれました。
ライルは、二人のいびつな精神の正体を、見事に細片まで解体してみせ、マルガレーテには解放を、不気味で底の知れなかったアルベルトには馬脚を現させて、見えなかった底をあからさまにして矮小化して徹底的に叩き潰してしまったわけです。特にアルベルトは、野心家ではなく快楽主義者という点から最悪その悪事を潰しても、破滅することすら含めて楽しみそうな気配があって、たとえやっつけてもスッキリしない終わり方になるんじゃないかな、と思っていたところに、見事にその歪んだ心をライルが折りたたんで踏みつぶしてくれたので、こっちの方も痛快だったんですよね。

改めて振り返っても、面白いと諸手を上げて喝采する展開、シーンの連続で、実に密度の濃いエンターテイメトでした。これで終わりというのが勿体無い、あまりに勿体無い……シリーズ、これで終わりじゃないですよね!?
とりあえず一区切り、と作者はおっしゃっているようですけれど、十分続いて然るべきですよ。幸いにして、締めの英文はパート1の幕であって、パート2の開幕を可能性として内包している文章でしたから、全然オッケーですし。やりましょうやりましょう。
その前に、【マリーア・ザ・フレイムダンサー】というスピンオフの可能性もあるのか。マリーアも主人公やって全然役不足じゃないもんなあ。これはこれで有りかも。
何れにしても、彼らとお目にかかれることを真剣に願いつつ……ああ、面白かった!!

シリーズ感想

月花の歌姫と魔技の王 34   

月花の歌姫と魔技の王III (HJ文庫)

【月花の歌姫と魔技の王 3】 翅田大介/大場陽炎 HJ文庫

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行楽地で水着回……と思いきや。

いつも通りにイルゼシュタイン城を訪れるライルだったが、イルザの策略にはまり、半ば攫われるような形で王家のプライヴェートビーチがある行楽地・へクセンブルグに連れ出されてしまう。
最後の魔女・エルルーア所縁の地でもあるというヘクセンブルグでライルはエルルーアの最初の工房を発見する。
その始まりの地でライルが見た物とは?
かっ……かっこいいーーーーっ!!
 うわああっ、何これもう体の芯からビリビリと痺れそうなほどカッコいいですよ、メインヒロインのお二人さん。マリーアにしてもルーナリアにしても、ちょっともう反則級にかっこ良すぎですよ。イイ女どころじゃない、二人して世界一イイ女じゃないですか。惚れるわー、これはもう惚れるわー!
いやもうね、マリーアとルーナリア、二人の友情が滅茶苦茶熱いんですよ。今回、肝心のライルがイルザ姫の策略で行楽地に連れ去られてしまったので、二人きりで行動するシーンが多かったのですけれどお陰でライルを抜きにした分、ダブルヒロインというよりもダブル主人公みたいな活躍っぷりで。それ以上に、お互いを高め合うような関係が本当に素敵なんですよ、この二人。恋のライバル同士であることをとても大事にしていて、相手が腑抜けてたりするのを絶対に許さないんですよね。叱咤激励し合ってお互いを磨き合っているから、相乗効果でただでさえイイ女だったマリーアはもう手の付けられないくらいイカした女になってるし、あの儚げで自信なさげだったルーナリアもマリーアに認められたに相応しい女性であらんとして、今となっては見惚れるような毅然としたイイ女になっちゃって。前回の感想で、ルーナリアはもうマリーアに頭あがらないんじゃないか、言ってましたけれど、彼女はそんなタマじゃありませんでした。そうだよなあ、その程度ならマリーアが認めんよなあ。それでも、一瞬でも膝を折りかけたマリーアの背中を蹴飛ばし立ち直らせるだけの対等な存在にまで成長するとは思わなかっただけに、あのシーンは感慨深かったなあ。
彼女については、今後人間と異族の争いの狭間に立って苦しむことになるんでしょうけれど、この段階で自分の立ち位置と覚悟を決めちゃってるのは頼もしい限りです。もう、どうすればいいかわからなくて右往左往して守られるだけのヒロインじゃないんですよねえ。それでも、一人だけで頑張っているなら心配だし不安なのですけれど、両脇を固めるのがライルとマリーアという、正攻法のみならず腹芸や政治工作、謀もお手の物という二人なので、少なくとも彼女一人が為す術もなくどうしようもない境遇に追いやられてひどい目にあう、ということだけはなさそうなのが幸いであります。いや、その意味ではライルとマリーアの頼もしさは半端ないよなあ。二人ともお前がラスボスやれよ、と思うこともしばしばな出来物ですもんねえ。まあその分、敵となる黒幕もまったく油断ならない不気味さと得体のしれなさを兼ね備えたラスボスに相応しい逸材なのですけれど。さらに言うと、イルザ姫とそのお父様の第一王子も恐ろしいくらいのクセモノなんですよね、この作品ラスボス級ばっかりだな、おいw

話を聞いていると、実はこのライル。女性の好みに対する理想値というか期待値のレベルが異様に高すぎるきらいがあるんですよね、主人公のくせに(笑
人当たり自体は柔らかくて人畜無害に見えるので許容度は広いのかと思うところですけれど、並の女性だと異性としてまるで眼中にないんじゃないかな。女性にモテるわりに、あまりしつこく言い寄られないのは、女性の側がライルと自分とは吊り合わないと思って身を引いてしまう、という風な事をマリーアが語っていましたけれど、実際は敏感に相手にされていない、眼中にも入れられてない、と感じ取ったからなんじゃないでしょうか。女の人だって、上辺だけ丁寧に接っせられても中身は実質無視に近い扱いで見られてたら、なかなかそれでも、とはいかないでしょうし。
いや、こいつ結構キツい男ですよ。
まあ、マリーアとミラみたいな幼馴染が幼い頃から身近にいたら、そりゃあ女性を見る目も基準値がイカレるか。マリーアも自分でハードル上げ続けてるんですよね。ライルの基準って完全にマリーアになってるから。しかも、だからといってマリーアが自身のレベルを下げたとしても、それに合わせてライルも基準をさげてくれるわけじゃないから、殆ど止まったら死ぬレベルの耐久レースになってしまってる。
まあ、普通はここに割って入るのは無理なんですけれど、ルーナリアは見事にマリーアとライルのタイマンレースの中に割って入ってきたわけです。あの、果し合いをたたきつけるようなライルへの参戦宣言という名の告白は、気持ちいいくらいカッコいい告白でした。普通、ああいうのってライバルの恋敵にするもんだろうに、それをライルにするあたりに、この三人の関係性の面白さがにじみ出てるような気がします。まったく、カッコいい告白ってなんだよ、と思うところですけれど、前巻のイルザ姫も含めて、この作品のヒロインはとかく熱い告白ばっかりですよ(笑
そして、突き抜けてしまった主人公を、二人のヒロインが身命を賭して引き止めるシーン。ここでのマリーアのセリフがね、叫びがもう至言なんですよ。
必死な女を見て、涼しい顔するな!
このセリフ見た瞬間、なんかうわーーっ、てなりましたね。まさに無数のヒロインの魂の叫びですよ、これは。それを実際に言ってのけるマリーアかっけえ!
こんなとてつもなくイイ女二人に想われるなんて、男冥利に尽きるなんてもんじゃないですよ。

わりと危惧していた3巻というハードルも無事乗り越えて……って、作者の主人公への殺意がヤバいことになってる(笑
ライル大丈夫か、生き残れるのか?w
今回もすこぶる面白かったです。最高だわ。あっ、なんかツェツィーリアについて一切言及せずに終わってしまいましたが、彼女も悪くはないんですよ。というかむしろヒロインとしては非常にレベルの高い魅力を発揮していて、今回はかなり優位な位置取りで蹂躙していたとも言えるんですが、如何せんマリーアとルーナリアが圧倒的すぎるんだよなあ。ライルの好みのレベルに合わせて、本作ヒロインのレベルが色々と高すぎて、ウッハウッハですよ、まったくヤレヤレだw

1巻 2巻感想

月花の歌姫と魔技の王 24   

月花の歌姫と魔技の王II (HJ文庫)

【月花の歌姫と魔技の王 2】 翅田大介/大場陽炎 HJ文庫

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秘書であるルーナリアに部屋を用意するために、新しく仕事を探していたライル。マリーアの仲介で家庭教師のアルバイトを始めたが、教え子のイルザは明らかに普通の少女では無かった。そんな中、マリーアは2人の王子と面会を果たし、ルーナリアは死んだはずの肉親に出会う。人と『幻想種』、王位を巡る陰謀、ライルは新たな争いに巻き込まれる。
うあああっ、面白いっ、面白いなあもう!! なんかもう隅から隅まで私の好みの琴線に触れまくってる。なにこれ、すっごい好き!! 大好き!!
このシリーズのみならず、前作、前前作シリーズからこれだけスマッシュヒットばっかりを食らうと、この作者さんの作風そのものが私のドストライクを突いている、と捉えてもう間違いないみたいだ。

さて本作は第一巻の表紙だったルーナリアと、今回表紙を飾るマリーアのダブルヒロイン制なんだけれど……これ、ルーナリアってマリーアに絶対頭あがんないですよ。元々、ライルたちに出会った段階では生きる屍のようなもので、彼女が自分を助けてくれたライルへの思慕を自覚したのはマリーアの導きによって、と言っても過言ではありません。その段階で既にスタートラインで差がかなりついているのですけれど、マリーアときたらこの娘、恋というものについてまるで解っておらず右往左往して迷走するばかりの彼女に対して、わざわざ手をとって自分の立っている場所まで引き上げた上に、シャンとしなさいとばかりに喝を入れるような真似さえしているのです。それは、当事者であるルーナリアすら呆然としてしまうほどの手厚い援助。恋敵として未熟過ぎるルーナリアを、自ら対等なライバルとして立たせようとするその所業は、まさに敵に塩を送るようなもののはずなんですが……このイイ女は自分がライバルの弱みを突いて蹴落として満足するような卑小な女である事に我慢がならなかったのでしょう。それよりも、ライバルと正々堂々張り合って愛する人を勝ち取る事を選んだわけです。同時に、自分の愛するライルを同じように愛する見る目のある女性が、無様を晒す事が我慢ならなかったのかもしれませんが。自分がライルに相応しい女であるように常に努力しているのと同じく、その恋敵にも相応の水準を求めずには居られない、という一種のライル至上主義(笑
まあ、ただ純粋にマリーアという女性がお人好しもいいところ、という理由が大半なのでしょうけれど、もし彼女が深慮遠謀神算鬼謀の策士だというのなら、こうやってルーナリアを厚遇することで彼女に引け目を負わせて自分を出し抜くことのないように楔を打った、と考えることもできるのですが、さすがにそこまでは考えすぎでしょう。繰り返しになりますが、何だかんだとこの娘はとてもイイ娘で、食わせ物の才女のくせに変な所で間の抜けた所のあるお人好しですから。
ともあれ、ルーナリアは大変です。恋のライバルは一から十までお世話になって頭が上がらず、恋の相手である主人はときたら、そんな完璧なイイ女がさらに努力を重ねてなお完璧さを高めないと釣り合わないと思い込んでいるほどのイイ男で、実際文句のつけようのない完璧超人ときた。しばらく迷走気味にツンデレをこじらせてウジウジしてしまったのも無理ない環境です。ルーナリアという娘は無表情系ではありますけれど、自他共に求める感情過多の負けず嫌い。意地を張ろうにも周りの高さは足がかりになるものもないほどで、寄って立つもののなかった彼女が困ってしまったのも仕方ないでしょう。それでも、自分なりのやり方で自信を得る方法を見つけて努力を重ねることを選び見つけ出したのだから、この子も大したものです。そこは、マリーアが対等の相手と見込んだだけの事はあるかもしれません。
それでも、なかなか厳しい道程ではあるのですけれど。
マリーアはまだ自分の恋愛は恋を射止める狩猟の段階で、同じ舞台に立たせてでの戦争には至っていないと考えていますけれど、実際はというとライルは完全にマリーアを特別扱いしていますからね。ここに本当の意味で割って入るには、マリーアの壁は生半じゃなく高い。幼少の頃から純粋にライルのためだけに自分を磨き続けた女に、途中から割って入るというのは本当に難しい。面白いことに、それが出来ると誰よりも見込んで、期待してすら居るように見えるのがマリーアというのがなんともはや。
話は戻ってライルのマリーアに対する感情ですけれど、これが発覚してみると何気に思いの外明確だったんですよね。マリーア本人には一切素振りを見せないくせに、彼女のいない所では彼女が他の男に粉かけられたと知って余人に隠せないくらいに感情を乱していたり、特に感心させられたのはマリーアの従者にして同じくライルとは幼馴染の関係にあるミラとのやり取りで見せた、「本当のただの幼馴染」との接し方、でしょうか。ここは死角を突かれた感がありましたね。幼馴染であるミラに対して、ライルは胸襟を開けて本音や愚痴を吐露しているのですが、それは気心の知れた幼馴染だからこそ、であると同時に幼馴染でしか無いからこそ、でもあったんですね。実は、ちゃんとマリーアとは明確に接し方を異にしていたわけです。ライルの事を巷にあふれる鈍感主人公とは一線を画しているとは思っていましたけれど、これほどはっきりしていたとは、マリーアは報われているのか居ないのか(苦笑
ただ、はっきりしているからこそわりと思想は頑固というか凝り固まった所があったこともわかってきたわけで……でも、家庭教師となった先の教え子である女の子イルザから、そんなちょっと独り善がりの入った思想に対してダメ出しを受けたことで、自分が意固地になっていた部分があると自覚したようですから、もしかしたら次あたりからその態度に違った面が出てくるかもしれませんね。そうなった時のマリーアのメロメロっぷりがどれおほどのものになるか……既に現段階でかなり骨抜きで目も当てられないことになっているので、えらいことになるかもしれませんが。にやにや。
なんて言うんだろう、このあたりの微妙かつ巧妙な男女関係の機微は、さすがは上質にして繊細な心理描写で鳴らした青春恋愛劇である【カッティング】シリーズを描いた翅田大介その人、と言ったところでしょうか。
それでいて、活劇らしい激しく感情をぶつけあい、盛り上がるシーンも多いわけで。ライルを泥沼の政治闘争の渦中に巻き込ませないために、これまでのライルと過ごした時間そのものを賭けて彼を引きとめようとしたマリーアとライルの対峙は、もう鳥肌が出るほどしびれました、うん。しびれた。
あとでマリーアが殆ど融解といって良いくらいにデレッデレに蕩けてたのも宜なるかな。女として男にそこまで言ってもらったら本懐でしょう。まあ、あそこまで崩れるとみっともないですが。この娘、この段階でそこまでデロデロになってたら、まともに付き合いだしたら体裁保てるのか?(苦笑
とまあ、語る話はついつい恋話ばかりになってしまいましたが、裏で進行する権力闘争や古き時代と新しい時代の相克から発生する軋轢など、時代の裏側の闇の部分にまつわる話もいい具合に盛り上がってきているんですよね。黒幕となる人が、どうも思っていた以上に大物、身分的にじゃなくてメンタル的に大物で、敵役に相応しい貫禄の片鱗を垣間見せてくれたことは、先々どんどんおもしろくなっていきそうな要素でもあるので嬉しい限り。何気に本作は敵も味方も小物、と呼んでしまえるような人物が居ないので非常に歯応えがあります。新しく登場した幼いイルザも、まだ十を幾つか超えただけの子供としては、その境遇や経験によってかなり鍛えられていますし、味方側となるであろう第一王子もまたちょっとやそっとでは微動だにしないであろう大物感あふれる人物ですし、そんな大物揃い相手にして一歩も引けをとらないのが、ライル、マリーア、ルーナリアの主人公サイド。誰も弱みや弱点になるような所がなく、三人とも頼もしい限りなので、焦れったさなどで歯噛みすることもなく、痛快で手応えばっちりのストーリーを安心して期待できます。出来れば、でっかい規模の長編シリーズになってくれればいいんですけれど、それに相応しい面白さであるだけに。少なくとも既に三巻は執筆中のようですので、非常に楽しみ。
オススメ、一押しです。よしなに。

1巻感想

月花の歌姫と魔技の王 4   

月花の歌姫と魔技の王 (HJ文庫)

【月花の歌姫と魔技の王】 翅田大介/大場陽炎 HJ文庫

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「最後の魔女」が起こした技術革命は「魔法」の世界に「科学」という新たな秩序をもたらした。魔法と科学、双方の力を持つ少年ライルは、科学時代を推し進めようとする幼なじみの貴族令嬢マリーア、そして偶然出会った魔法時代の象徴「幻想種」の少女ルーナリアの間で揺れ動く。2人の少女、2つの時代。世界を変える力を持つ少年が選んだのは果たして!?
うはー、なんて素晴らしく格好良い女性なんだろう、このマリーア嬢。何が格好良いって、生き様でありその精神性ですよ。なんて言うんだろう、見栄と意地の張り方を見事なほどに理解してるんですよ。彼女、決して完璧な人ではないんですよね。裏に回れば、すごくジタバタとあがいている。でも、それを決してライルにだけは見せようとせず、常に自分に余裕があるように見せている。懐深く、思慮深く、聡明で賢く、綺羅びやかに品よく美しく、優しく快活で天真爛漫という瑕疵一つ無い淑女であるのだと見栄を張っているのだけれど、それをただのハリボテにせず本物にするために常に研鑽を積む事を怠らず、努力を重ね、自分を磨き上げる事に労苦を厭わず邁進している人なのである、このマリーアという人は。
とまあ、ただ石ころだった自分を宝石にまで磨きあげただけだったなら、それはそれで凄いけれどそこまで感心はしないのですけれど、彼女はそんな所にとどまっていませんでした。
そこで止まっていたならば、彼女は自分をただ価値あるアクセサリーとして練り上げただけで終わっていたでしょう。
この娘、本当にライルの事、好きなんですよ。愛とは与える事、と言いますけれど、彼女が彼に与えようとしたものは、彼女自身、すなわち心と体だけではなく、ライルの将来そのものでした。魔法と科学、過去と未来に跨った究極の天才であるライルが、今は何もしないことを選んでいる彼が、将来どのような道を選ぼうとも即座に支え守り実行出来るだけの、財と人脈と知をひたすらに蓄え、じっと待っているのです。その選択の中には、本当に何もせずに時代の中に埋没する、という道があるのも承知の上で。今備えている全てが無駄になることも厭わずに。彼に望めば、マリーアはそれこそ何でも手に入れることができるでしょう。世界を手中に収めることすら出来るかもしれない。もっと身近な、ささやかな幸せや利益だって得られるかもしれない。でも、彼女は一切、見返りを求めていないのです。ただひたすらに、与えようとしている。
愛とは与えるもの、をまさに体現していると言っていいでしょう。それどころか、彼女は今あるものを与えようとしているだけではなく、より良い物を、素晴らしいものを、最高のものを与えんとして、常に研鑽を積み続けているのです。
そして、それはライルが天才だからじゃないんですね。
ライルが、マリーアが自分に構うのは、自分の才を欲しているからなのではないか、と疑ってしまったのも無理はありません。それだけ、ライルが備え持つ才の価値は凄まじいものであり、彼女ほど素晴らしくイイ女が労力を傾ける理由としては、才が目当てである方が自然です。そこに愛情というものが介在していたとしても、ライルの才を無視する事など出来ないでしょう。そして、何よりマリーアにはライルの才を活用出来るだけの才がある。
でもね、話は最初から逆だったんですよ。マリーアが今みたいな素晴らしくイイ女になったのも、ライルの才能を活かせるだけの辣腕の持ち主になったのも、全てはライルのため。ライルに見合う女になるためであり、ライルがいざ事を起こそうと思った時に十全彼の力になれるようになるために。ライルを助けられるようになるために。
ライルを手に入れるためじゃなく、ただライルに振り向いて欲しいから。

ここまで女の人に思われるって、いったいどれだけ冥利に尽きるってもんなんだろう。
逆にここまでやってもらって、この男は何をやってるんだ、と思われるかもしれないけれど、男としてもこれ、生半可な気分では受け止め切れないですよ、ここまでされたら。
まあ、マリーア嬢ほどの人ともなると、自分の研鑽も献身も、相手に悟らせず気づかせず、押し付けがましくして背負わせず、ライルの行き方に不純物を混ぜあわせないように上手くごまかしてるんですよね。まったく、どれだけ見返りを求めようとしないのか。ホントなら、ちょっとくらい返して欲しいと思うだろうに。思ってるんでしょうけどね、実際。裏ではジタバタ悶えてますし。でも、それを見せない事が見栄なんだろうなあ。そして、その見栄と意地こそが、彼女を最高のイイ女にしているわけだ。
ライルだって、全然気づいてないわけじゃないと思うんですよね。そんでもって、逆に自分の方が彼女に与える
人間で居たいと願い、彼女にとって格好良いと思ってくれる男でありたいという見栄っ張りなきもちは持っているはず。とある場面で、マリーアに対して慌てて言い繕ってたセリフを見てると、ね。自分が色々と難しい立場に居て、安易に動けないと承知しているからこそ、ライルは慎重になかなか動こうとしないけれど、決してマリーアの献身に対して甘えるようなヌルい男ではなく、それどころか一種の高潔さを持ち合わせた誇り高い人種であることは、作品通して伝わってきているので、もうなんというか、まさにお似合いな二人なんだよなあ。

タイトルの一方でもあり、また表紙を飾ったもう一人のヒロイン、ルーナリアは決して悪くはないんですけれど、初動位置が違いすぎた上に、途中まで精神的にも骸みたいなものだったので仕方ないのですけれど、随分と出遅れてしまった感があります。が、巻き返しはここからなんだろうなあ。ある意味、ライルよりもマリーアと息があっている感じに女同士の友情が醸成されてしまったので、主人公との絡みのみならず、マリーアとの絡みというキャラ立ての飛躍のプロセスが構築されて、以後メキメキと伸びる予感はたっぷりあります。それでも、マリーア在って、という感もありますけれど。しかし、これはこれで、強力なダブルヒロイン体制だなあ、うん。

翅田大介作品感想

戦え!神群活動保全課 カミカツ!4   

戦え!神群活動保全課 カミカツ! (HJ文庫)

【戦え!神群活動保全課 カミカツ!】 翅田大介/シコルスキー HJ文庫

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時は二十一世紀。神様は地上に姿を現していた。猫耳メイド喫茶『猫神さまっ!』の店長バステトに傭兵会社『蝿の翅音』を経営するベルゼブブ、ホストとして迷える子羊たちを導くガブリエル。人間界に紛れ込んだ神様と、神様降臨に戸惑う人間たちが巻き起こす愉快で神懸かりな事件に神群活動保全課、通称『カミカツ』の守倉惟月と薊谷サキが挑む!

あははははっ、これはいい、面白い面白い♪
あとがきを読むと、執筆前に【ダイハード】【リーサル・ウェポン】【ビバリーヒルズ・コップ】【沈黙の〇〇】【あぶない刑事】などを見て自己洗脳した、と仰っていらっしゃって、思わず納得してしまった。主人公にヒロインに当面の敵キャラさんに巻き込まれるモブの人に到るまで、なんとも賑やかで軽快に大騒ぎ、といった感じが実にこれらのバディ活劇モノの雰囲気を取り込んでいて、実に楽しかった。
こんな根っから笑って楽しめるコメディアクションを書いたのが、あの人間の内面の奥深くへとじんわりと切り込んでいくような語り口のディープで純粋なラブストーリー【カッティング】シリーズを書いていた翅田大介さんだというのだから、ビックリだ。このヒト、こんな話も書けたんだ!!
【カッティング】のあとに書いた【相剋のフェイトライン】という作品が、いわゆる熱血バトルアクションものだったんですが、どうにも中途半端でやはりしっとりとした心情描写を丹念に描いていく作品こそがこの人のフィールドなんじゃないのか、と思っていただけに、このキャラが活き活きとして跳ね回るコメディには二重に驚かされたわけです。
ただ、完全にスタイルが別人になってるわけじゃないんですよね。愉快な掛け合いの狭間に、よく見るとさすがは【カッティング】を書いた人らしい、思わずフッと吸い込まれてしまうような内面描写や、恋心の芽生えみたいなのが描かれていて、なかなか油断できない。『ああ、あたし傾きかけてるな』には、かなりゾクゾクさせられましたしw
恋愛劇というものは、大なり小なり男女の駆け引きや間合いの計り合いみたいなものがあってこそ輝くもの。好意だろうと思慕だろうと、すれ違いすら無い一方通行の関係というのは単純で分かりやすいけれど、易しすぎて単調で退屈なんですよね。ラブコメやハーレムものって、その辺軽視されてるケースが結構あって、辟易することも多いんですよ。ラブコメだからこそ男女の関係って繊細に、丁寧に、複雑に、綱引きをやって欲しいと思うことも度々。
そして、その点においてこの【カミカツ】は充分以上に期待に応えてくれてるんですよね。馬鹿でエッチな掛け合いばっかり繰り広げているようで、主人公の守倉惟月とヒロインの薊谷サキの関係と感情はかなり入り組んだものになっているのである。
惟月にとっての「神様」であり、世で言う「魔王」、そしてサキの母親であるキョウカという存在が二人の間に介在していることで、惟月にとってもサキにとってもお互いの存在を単純に恋愛感情の対象にすることも、逆に無視する事もできない関係にしてるんですよね。実のところ、二人ともお互いに惹かれ始め、そんな自分を自覚しているのだけれど、二人とも何らかの形で「キョウカ」と決着をつけないと多分、お互いの事を好きな異性、とは見ることが出来ないようになってしまってる。でも、二人が惹かれあうキッカケは、キョウカの存在にあるわけで、プロローグ冒頭にしか登場してないくせに、随分重要なキャラクターになってるなあ。さすがは「魔王」。

ともかく、何が面白いって主人公の惟月である。これだけお調子者で脳天気で「イイ性格」をした主人公はなかなかお目にかかれない。そんな彼にギャーギャーを噛み付きつつも、実際のところノリノリで息があった無茶無理無謀っぽりを共演している薊谷サキもそうとうぶっ飛んだヒロインと言えるのだろう。そんな大迷惑で大暴走な二人が、ライトなエロネタ振りまきながら大暴れするのだから、そりゃあ面白いに決まってるw
惟月のセクハラは、サキに対しては半分くらい逮捕されても仕方ないレベルに至ってると思うだが(苦笑
いきなり胸を弄られまくって呂律が回らないほどイカされるヒロインってどうなのよ(笑

ここしばらくHJ文庫ではこれだ! という目ぼしいシリーズが出てなかったので、ぜひぜひこれは目玉として前面に出して欲しいですね。なにはともあれとりあえず、続きをッ。

カッティング 〜Case of Mio Reincarnation〜5   

カッティング~Case of Mio Reincarnation~ (HJ文庫 は 1-1-4)

【カッティング 〜Case of Mio Reincarnation〜】 翅田大介/も HJ文庫


結局、最後までこの【カッティング】という作品への、<真摯さ><誠実さ>という印象はブレることがなかった。
その作品に課せられた命題に対する作者の誠実かつ真剣な取り組む姿勢は、いっそ求道的とすら映る。
かといってそれは渇望に引きずられた激情とは裏腹の、冷静な熟考の末に導かれる答えであり、苦悩する若者たちへの愛情が込められていた。
甘やかすことのない、突き放した、だが穏やかで見守るような距離感。
だからだろうか、激しくもせつない登場人物たちの痛みや苦しみに引きずられることなく、かといって他人事のように無関係の事項を眺めるようでもなく、彼らの揺れ動く感情、思い悩む思考のあがき、心の衝突を遠すぎず、近すぎない距離で読み綴ることができたように思う。
作者の姿勢を投影するように、自らが置かれた境遇とそれに伴う最も愛する人との関係に、真摯に、真剣に、そして誠実に向き合う登場人物たち。もっと、曖昧なまま濁してしまう事も簡単だろう。自分の心の在り様など、そっぽを向いてただダラダラと時間を過ごすこともできただろう。だが、彼らはあまりにも誠実すぎたのかもしれない。それがゆえに、彼らはきっと必要以上に苦しみ、ズタズタに心と体を傷つけることになったのだから。
だが、生きることに、自分の在り様を考えることに、人を想うことに真剣であることが、批難されるべきことなのだろうか。
それは、とても尊い行為だと、彼らのあまりに真摯な在り様に思い知らされた。それはとても美しく、眩く、敬虔な気持ちにさせられた。

彼らの選んだ未来と、彼らが見出した愛の形に、祝福を捧げたい。

傑作である。


余談。一つ、物凄く心に残ったエピソードが、カズヤが旅先で行きあった大学生のグループ。ほんの一晩、夜行バスで交錯しただけの関係なのに、彼らがカズヤに残したささやかだけどとても涼やかな善意は、心を凍らせかけていたカズヤに、確かなナニかを残したんじゃないだろうか。
もし、彼らのあの好意がなければ、カズヤはあの夢を見ることがなかったかもしれないし、場面でああいう行動に出なかったんじゃないだろうか、とふと思った。
ほんの一瞬の出会い。一期一会の関係。だからこそ、あのエピソードにはあふれんばかりの人間賛歌が詰まっていたように感じたのである。

カッティング 〜Case of Mio Entanglement〜  

カッティング3~Case of Mio Entanglement~ (HJ文庫 は 1-1-3)

【カッティング 〜Case of Mio Entanglement〜】 翅田大介/も HJ文庫


どこが、自分は単純になっただ、この男は〜〜(怒
本当に物事に対してシンプルになれたのなら、こうも目の前の問題に対して迂遠な思考を辿ることもないだろうに。変に思慮を働かせてしまうことで、どんどんと物事の本質から遠ざかってしまい、当初の目的から外れて思考は求めるべき答えとはかけ離れたところへと駆け出していく。
結果として訪れるのは、決定的なすれ違いだ。
本当ならそこまで拗れるような大きな問題ではなかったはず。ただ、単純に自分の胸にともってしまった不安を相手に打ち明ければ良かった、ただそれだけのことなのに。
些細な不安だったものは、自分の中だけで醸成するうちにどんどんと膨れ上がり、怪物と化していく。それは、カズヤにしか認識できない戯けた怪物。
思えば、この男はやはり人間関係というものに経験が圧倒的に不足しているのだろう。自分ひとりで心理見解を捏ねまわしていくことに慣れ過ぎている。ふとしたことで、交感を閉ざして自分ひとりで思索を弄り回してしまっている。それも半ば無自覚に。
みさき先輩に、もうこれ以上ないくらいに分かりやすくシンプルで特効薬的な助言を頂いてさえ、そのアドバイスをありのまま受容できずに【解釈】を加えてしまう。結果、そこから得るべき答えの本質から遠ざかってしまい、アドバイスを無駄にしてしまっている。
度し難いバカだと言えばそれまでなのだけれど……。問題は、この男の魅力の大半はそういう面倒くさいところにあるんだよなあ。

双子には悪意があったようには思えない。彼女らがカズヤとミオに近づいてきたのは、彼等をどうこうしようというのではなく、もっとシンプルに彼等に可能性を見つけたかったからだろう。自分たちの破滅的な在り様以外に、自分と同類であるミオに希望を見出したかっただけのはず。
ただ、その接触がカズヤに対して予想以上の揺さぶりになってしまったと。
結果訪れた最後の展開は、悲劇としかいいようがない。
中盤までのちょっと若さに欠けるくらいの、カズヤとミオの穏やかで落ち着いた、でもちゃんと熱のこもった恋愛関係が素晴らしかっただけに、この展開は悲劇だよなあ。

カッティング ~Case of Tomoe~  

カッティング ~Case of Tomoe~ (HJ文庫 は 1-1-2)

【カッティング ~Case of Tomoe~】 翅田大介/も HJ文庫



一作目に引き続き、登場人物たちに対して優しさと抱擁感を感じさせる筆致ですねえ。それでいて、甘やかしているのではないのは、主人公の痛々しい自意識を突き放すように書いてるところ。
幼い頃のトラウマがあるとはいえ、主人公の抱いている自分への絶望感はまったく幼稚で若者にありがちな浅薄で自己満足的な自傷にすぎないように見える。
ハッキリ言って、こういう思いを本気で書かれてたら辟易しそうなものだけど、行間から滲んでくるのは共感や投影、憐憫ではなく、むしろ突き放したような冷たい目線。
つまるところ、彼の痛々しさは敢えてそういう風に描かれているんでしょう。それでいて、否定感は感じないんですよね。
前作でも感じたところだけど、過剰に許容するでもなく、拒絶するでもなく、若人の心のありようとありのままに、真摯に向き合うような筆致が全体から漂ってくるのです。
作者の人は、年齢いくつくらいなんでしょうね。あとがき見る限り、それなりには行ってそうですけど。大人の立場から見下ろすものとも少し違う、同世代の視点からうつしたものともまた違う、優しくも厳しく傷の痛みに溺れる少年少女を描き出すこの作風、やっぱり好きですわー。
カッティング、というタイトル。こうしてみると、実にテーマとフィットした良いタイトルですわ。

カッティング 〜Case of Mio〜5   

カッティング ~Case of Mio~ (HJ文庫 は 1-1-1)

【カッティング 〜Case of Mio〜】 翅田大介/も HJ文庫


これは、良かった……(ひたり中)

こういう自分の内面に違和感や歪みを感じている人物や、精神的な傷を負った人を扱ったライトノベルというのは最近珍しくないんだけど、どうにもその手の作品の筆致というものに、私には斜に構えたような、ひねた視線を垣間見てしまうのです。
「ほら、異常でしょ? 病んでいるでしょ?」みたいな。
それが悪いというわけではないし、そういった書き方が味わいに成り、独特の作風として機能しているケースも多いんだけど、中には無理矢理な、辟易とさせられてしまうようなものも少なくないわけです。
ところが、この作品にはそうしたひねた視線、人の内面の闇をこれでもかと書き露わそうとする強迫的なものが一切感じられない。
あくまでテーマとして心の歪さや傷、違和感を扱い、非常に冷静に、なおかつ『真摯』にテーマに向き合っている。
それらを異常なものとして扱うのではなく、普通の人の心の在り様の一つの形として触れているのだ。
だから、デキモノに触れるような扱いではなく、一人の少年と少女が出会い、交流を重ね、お互いを想いあうようになる、という当たり前といえば普通すぎるくらい当たり前の特別なことなど何一つない人と人との関係によって、互いが持つ傷と違和感への恐れと疑問を解きほぐしていく。
その描き方が、本当に素晴らしい。
抑制の効いた、でも真摯でひたむきな青春モノで、純愛ストーリーになっている。
後半に訪れる展開は、一見破天荒で、前半の流れとはまったく違うように見えるかもしれないけれど、実際に問題になっているところは自己と相手への認識と理解、そして受容という点で、一切ぶれてはいないように思う。

なんのことはない。自分はこうした、理屈っぽさと感情のバランスが取れながら、優しさと愛情の込められた話が物凄く好みだと、まあそういうことなんだろう。

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(まんがタイムKRコミックス/フォワードシリーズ)
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(双葉文庫)
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9月8日

(少年チャンピオン・コミックス)
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(少年チャンピオン・コミックス)
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(ヴァルキリーコミックス)
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9月7日

(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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(まんがタイムコミックス)
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(ガンガンコミックスUP!)
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(ガンガンコミックスUP!)
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(ガンガンコミックスUP!)
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(アフタヌーンKC)
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9月6日

(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
Amazon


(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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9月5日

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9月3日

(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(フロース コミック)
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(フロース コミック)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(ドラゴンノベルス)
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(ドラゴンノベルス)
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(ドラゴンノベルス)
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(ドラゴンノベルス)
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9月1日

(HJコミックス)
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(HJコミックス)
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(B's-LOG COMICS)
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(B's-LOG COMICS)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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8月31日

(講談社ラノベ文庫)
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(Kラノベブックス)
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(Kラノベブックス)
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(Kラノベブックス)
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(エンターブレイン)
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(ヒーロー文庫)
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8月30日

(エンターブレイン)
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(エンターブレイン)
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(エンターブレイン)
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(ファミ通文庫)
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(ファミ通文庫)
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(GCノベルズ)
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(GCノベルズ)
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8月28日

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8月27日

(電撃コミックスEX)
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(電撃コミックスEX)
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8月26日

(角川コミックス・エース)
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(まんがタイムKRコミックス)
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(REXコミックス)
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(角川コミックス・エース)
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