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茨乃

いつか仮面を脱ぐ為に 2.棄てられ軍師と悩める姫君 ★★★★   



【いつか仮面を脱ぐ為に 2.棄てられ軍師と悩める姫君】  榊 一郎/茨乃 角川スニーカー文庫

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王国を覆う「疑念」と「不安」――。見えない敵に護国鬼神、敗北す――!?

《鬼神》レオ・アラモゴードは王国を護る最強の戦士。だが、いま王国は見えない敵の脅威に動揺し、レオもまた立ち向かう術を無くしていた。国内に流行る奇病、表層化する国王の後継者争いに加え、国境に敵軍の影!?

やっぱり、この主人公のレオくん。榊先生の作品の中ではとびっきりに思春期の男の子していて好きだなあ。
両親を暗殺され、若くして護国鬼神を継いだレオ。対外的には仮面を被って冷酷非情の鬼として振る舞いながら、実質は引きこもりのオタク少年であり、女の子にも興味津々の年相応のエッチい欲望に色んな意味で忠実な男の子なのだ。
こういう子は年上のお姉さんからは弄りやすいし、同年代の女の子とはお互い赤面してしまい、純真無垢な少女相手にはその無防備さ故にあたふたしてしまう、初々しいところが実に良い。変に生真面目すぎないところもいいですしね。
王国で流行りだした奇病が、なぜかケモミミと尻尾が生えてくるものだと知ったら、狂喜乱舞。性癖隠さないでいいんですか、レオくん。
おまけに、婚約者候補として送り込まれて今では傍に侍ってくれている騎士マリエルにも耳が生えてきて、いや可愛いよ? 実際可愛いよ? でも、少年正気失いすぎじゃね?
マリエルも満更でもないあたり……ねえ? いや、何がねえだよ、うん。まあマリエルさん、既にベタぼれ状態なので楚々としつつ積極的なんですねえ。立場的にも公的に婚約者で、王国から縁を繋ぐために送り込まれている以上、むしろお手つきにしないといけない相手なわけで。
そんな娘が、さらにレオの性癖どストライクのケモミミ娘になってしまったのですから、少年がイカレてしまっても、うん仕方ないよね。

ただ、王国内の情勢は奇病が流行り病ではなく、帝国の謀略であることが発覚し、感染した人間は何らかの魔術的爆弾を仕掛けられてしまったのではないか。或いは操られて暴れだすのでは、という疑念が世間に生じて、ケモミミになった人間は偏見と猜疑の目で見られるようになってしまう。
ひいてはそれは排斥に繋がり、それを王国首脳部が収拾するどころか、むしろ敵国の謀略を阻止しようとして逆に煽ってしまう始末。まあその影には、わざと謀略であることを知らしめて情勢不安を助長させる某軍師の策謀があったわけですけれど。
あっさりと流言飛語に乗っかってしまい、不安を解消するために短絡的な行動に出てしまう集団心理の愚かさがこれでもかと突きつけてくる展開でした。
いやでも、呪いに感染した人間たちになにか仕掛けられているのでは、と疑うのは当然と言えば当然なんですよね。まさか、ただケモミミと尻尾が生えてくるだけの呪だとは思うめえ。
いやだって、そんな風に呪詛を広められるなら幾らでももっと直接的に害を与える内容の呪い撒き散らしますやん。疑われている通り、操ったり正気を喪わせて暴れるようなものを仕込んでも良い。
なんでそんな迂遠な真似するんだ、って話じゃないですか。まあ相手の軍師からすると、自分たちの愚かさで滅びるが良い、みたいな感じで自分たちで自分の首を締めて自殺していくのを楽しもうという悪趣味さ、性癖のゆがみが根本にあるのかもしれませんが。
ともあれ、感染者は被害者でもあるのですから、もっと国の側が庇護するべきなのに率先して排斥、排除、疑わしきは罰せよとばかりに一方的に処分しようとしてしまったら、そりゃ国としての信用が喪われてしまいますわなあ。まあ、それを支持しているのは国民自身だったので救いようもなかったのですが。それに、軍師の傀儡人形が浸透して指導者を誘導していたのですから、まあ良いように弄ばれていた、と言わざるを得ない。
いやでも、国民にこれだけ呪を浸透させ、国の意思決定機関の最上位ともいうべきあたりに工作員を浸透させていて、やることがこれ、というのはちょっとやっぱり迂遠すぎやしませんかね、軍師様。

こういう、自分たちと違ってしまったものを排除しようとする集団心理に対しては、大なり小なりみんな思ったことありますよね。じゃあ、全員変わってしまったものと同じものになってしまえばいい、同じものにしてしまえばいい。そうすれば、差別もなくなる、と。
往々にして、それやろうとするのは意識高い系のラスボス系の人たちだったりするのですけれど。
まあ敵役の人たちがやろうとする場合、だいたい酷い事になる前提だったり人間盛大にやめて社会崩壊しかねなかったり、と救いがない結末が待っていることが多いので、素直に享受できずに戦うことになってしまうのですが。
今回に関しては、その意味ではリスクが殆ど見当たらないパターンだったんですよね。だからといって、これを主人公サイドがやろう、というのはあんまり見たことなかったぞw
それにこう……人間の愚かさとは別に人間の業というか性癖を感じさせられる展開でもあり……おおう。もうこれいっそ、戻るという選択肢を用意せずに不可逆にしてしまい、王国=ケモモミ人、ということにしてしまっても良かったのに、とか思ってしまった。まあそうなると、他国との軋轢を生じさせてしまいますか。そうなったらなったで、人類総ケモミミ計画とか発動しそうですが。

ともあれ、バックグラウンドで進行するなかなか重たい展開とは裏腹に、主人公周りはノリのよいコメディタッチで、キャラクターも「イイ性格した」人が多くて、まー読んでて楽しかったです。
完全にレオ君より上位にいる女執事のハイエットだけでも充分レオくん周り引っ掻き回していたと思うのですけれど、ここにあの姫様加わると相乗効果になってしまうのではないでしょうか、と思うくらいにはあの第一王女もイイ性格してたなあ。
タイトルは悩める王女だけれど、実はあんまり悩んでなかっただろう、と言いたくなるんですけど。それとも、悩んでた王女は第二王女の方ですかい?w
本来なら一番腹黒で然るべきだろう、元軍師の娘の方が全然真っ当というか、真面目に見えますよぉ。



幼馴染が引きこもり美少女なので、放課後は彼女の部屋で過ごしている(が、恋人ではない!) ★★★☆  



【幼馴染が引きこもり美少女なので、放課後は彼女の部屋で過ごしている(が、恋人ではない!)】  永菜 葉一/茨乃 角川スニーカー文庫

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高校生の俺・三上奏太には幼馴染がいる。誰が見てもとびきり美少女な女子高生・如月唯花だ。ただし―怠け者で甘え上手な、筋金入りの引きこもり。俺は放課後になると唯花の部屋を訪れて、そのダラダラ生活に付き合っているのだが…。課金カードのお礼にと抱きつかれ、隣同士で密着アニメ鑑賞、たまには添い寝もしたりして!?だが、俺たちは恋人ではない。
「―あたしのこと、好きになっちゃダメだからね?」
それは俺たちが“幼馴染”でいるための、今の生活を守るための予防線。なのに…どうしてキス顔で迫ってくるんだよ!?恋人以上な幼馴染たちの、放課後イチャイチャラブコメ!

もっと緩い引きこもりなのかと思ったら、ガチの引きこもりじゃないですか。それも、家族とすらマトモに顔を合わせられないくらいの。
なぜそうなったのかの原因については詳しく触れていない、ただきっかけとなった事件については既に奏太が解決してしまっているので現在進行系で彼女が問題を抱えている、問題に晒されているわけではないようなのだけれど、その件で受けた精神的なダメージが唯花に人と対面する事への拒絶感をもたらしている……らしい?
唯一、面と向かって普通に話せるのが幼馴染の奏太だけ。というわけで、日々唯花のもとに通う奏太くん。恐るべきは、彼女に会いに行くことに彼が義務感とか責任感とかを背負っていないところなんですよね。あくまで好きで会いに行っている。親に頼まれて仕方なく、という事は一切なく、面倒くさいとか仕方ないという感情は一切ないっぽいんですよね。
そしてそもそも、引きこもっているという事柄に関しても決して否定的な様子を見せていないのである。つまり、引きこもりを辞めさせようとか表に出れるように一緒に頑張ろうと、部屋を出させる事を目的とはしていない。押し付けがましく、正解を突きつけようとしていない。
ただあるがままに、唯花の思うようにさせている。それは全肯定なのか、すべてを受容しているのか。
おまけに、課金と称してバイト代を貢いですらいるのだから……あれ? これってヒモを養うアレな人じゃね? 或いは、女をダメにする男、というべきか。
当然、唯花はそんな奏太に依存しまくっている。甘えまくり懐きまくりベタベタしまくっている。会えないと寂しくて泣いちゃうレベルでベッタリである。
何気にこれ、唯花の家族も彼女のことを奏太に任せきっちゃっているところをみると、家族まるごと彼に依存しているようにすら見える。奏太からすると、バッチコーイってなもんなんだろうけど。
それでいて、唯花は自分を好きになっちゃいけないんだからね、と幼馴染という関係から逸脱しないように彼に釘を指している。奏太も、それが唯花の意志ならば、と尊重してちょっとエロい気持ちになっても我慢しちゃってる。我慢するなよ! この男、幼馴染の言いなりである。甘やかすのが楽しくて仕方なさそうなのが、業を感じる。

ただ、唯花が奏太に対して依存しきらずに一線を引いているのは、それだけ自分に対して諦めきっているから、とも言えるんですよね。こんな引きこもったまま既に人生終了している自分を背負わせたくない、いつか自分から彼を遠ざけて奏太には自分の人生を歩んでもらわなくてはならない。未来のない自分には関わってはいけない、というセーフティーが彼女の中にかかっているのである。
あれだけ甘えきっておいて、どんな言いぐさだよ! と、思わないでもないのだけれど、そういう罪悪感めいた相手を思いやる心がある、という事自体がまあ彼女の一線でもあるのでしょう。ホントの正真正銘のダメ人間、には成りきっていないわけだ。
奏太としては、もう唯花を完全にダメ人間にしてしまいたいんじゃなかろうか、という疑惑もあるのだけれど。

そんなアルコール中毒とか喫煙者、ダイエットするする詐欺師みたいに辞めようとしてやめられない。奏太依存症な唯花にとっては、幼馴染という関係は自分への言い訳みたいなものだったのだろうけれど、少なくとも作中において彼女は自分への諦めを覆す意志を見せるんですね。
変わろう、という意志を持つのである。奏太に促されてではなく、彼は何も促さないし導かないしただ見守るだけだ。だから、本当に彼女の意志だけで変わろうと思うに至った。
それは、希望なのだろう。深々と音もなく静かに降り積もっていく雪のような絶望と諦めに埋もれていくばかりだった自身を、立ち上がらせようと彼女は思い立つのだ。
自分には未来があると、思えるようになるために。
そして、未来があるなら、自分は奏太を好きになっていいんじゃないか、と思えるように。
そこで同時に、奏太に好きになってもらうんだ! なんて事を思っている時点でポンコツにも程があるのだけれど。この娘は、幼馴染の男の子が一日も欠かさず自分のもとに通ってきてくれる事実に対して、一体彼がどう思ってると考えてたんだろう。想像を羽ばたかせられないほどに、彼女の諦めというのは視線を俯かせてしまっていたのだろうか。

ともあれ、本作にファンタジーがあるのだとしたら……引きこもったままろくに外にも出ずに運動もしていないっぽい女の子が、美少女のままでいられるか! って、ところでしょうね、うん。
よっぽど節制して室内でひたすら運動して、各種ケアを欠かさずに、ってやってないと、なかなか愉快な身体になってしまうんじゃなかろうか。
まああれだ、はい、うん、本作はフィクションです。可愛い子はずっとカワイイのが真理。


永菜葉一作品感想

いつか仮面を脱ぐ為に ~嗤う鬼神と夢見る奴隷~ ★★★☆   



【いつか仮面を脱ぐ為に ~嗤う鬼神と夢見る奴隷~】 榊一郎/茨乃  角川スニーカー文庫

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戦場にて、英雄の少年は奴隷の少女に一目惚れをする―。ウォルトン王国の最終防衛用兵器―“護国鬼神”の異名を持つ少年・レオ。敵国ネプツニスの使い捨て魔力供給源として、特攻魔導兵器に組み込まれていた少女・フェルミ。二人は出会う。が、露わになる敵は―美少女妖精で!?大層な二つ名とは裏腹に、兵器として引き籠もり生活を送っていたレオは、あっさりとその可愛さに心奪われ―!?英雄と奴隷が紡ぐ、歯がゆくて不器用な恋の物語。

本作、敵の外道さやレオを始めとする登場人物たちの過去、人種間の差別意識やネプツニスとの戦争の残酷さ、護国鬼神に求められる冷酷残虐さなど、舞台設定はダークな要素で敷き詰められているいわば「黒榊」作品なのですけれど、面白いことにキャラ同士の掛け合いや騎士たちなど一般市民のノリは徹底したコメディ寄りなんですよね。これほどコメディなノリ全振りなのって、「まかでみ」や「アウトブレイク・カンパニー」以来なんじゃなかろうか。それでいてストーリー展開そのものはやっぱりダークそのものだったりするので、そのダークさとコメディがブレンドされて何とも不可思議な空気感になってて面白いんですよね。
珍しく、榊作品の主人公としては感情豊かでドタバタノリに自分から相乗りしていくタイプの男の子、というのも作品全体のリズム感に躍動を与えている気がします。榊作品の主人公、特に男の子はどこか面白味のない真面目な子が多くて、どうにもノリにノレない子が多かっただけに。それに、マリエルのセリフじゃないですけれど、とても可愛げのある男の子なんですよね、レオって。なれない人間関係にあたふたどたばたする姿、ハリエットにイジられてる姿とか、色々と擽られてしまうのもよくわかる。彼の執事として幼い頃から付き従ってるハリエットも、あれ性格がSというよりもレオの反応の良さについついイジってしまうのが習慣習性になってしまったんじゃなかろうか。
生真面目だった騎士のマリエルも、なんか速攻で影響受けつつありますし。
まあマリエルの場合、ただの生真面目騎士じゃなくてやたらと押しが強くてグイグイくる礼儀正しい傍若無人さが面白キャラになってる所があるのですが。護国鬼神という国の機密にして禁忌の存在に政略結婚することになって、その在り方に対してどう解釈するべきか理解するべきか受け止めるべきか、もっと迷って恐る恐る接してくるかと思ったら、びっくりするくらいガンガンいこうぜとグイグイくるところとか、なかなか新鮮でヒロインとしても存在感示してたんじゃないでしょうか。
むしろ、メインのフェルミの方がそのバックグラウンドからしても仕方ないのですけれど、キャラ的にもまっさらな所からはじめたので出遅れ感があったり。
いや実際、敵の黒幕さんってば急ぎすぎじゃなかったですかね? レオがフェルミに入れ込むまでは実のところもう少し時間があっても然るべきだったんじゃないだろうか、というくらいには二人の仲が深まる期間がちと短かった気がしますし。まあレオは実質一目惚れみたいなものですし、フェルミも真っ白な分塗りつぶされるのは早かったとも言えるのでしょうけれど、フェルミがあれだけ頑張れるだけの積み重ねはもう少しだけ欲しかったかなあ、と。このへんは好みかしら。二人のエピソード、十分と言えば十分とも言えなくもないですし。
しかし、最近先生R元服な作品の方手掛けたせいか、えっちい展開に今までよりも妙に雰囲気というか艶というか色気があった気がします。さすがだ。

榊一郎作品感想

ひきこもりな余をどうやって魔王にするというのじゃ? ★★★   



【ひきこもりな余をどうやって魔王にするというのじゃ?】 柊 遊馬/茨乃  電撃文庫

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魔王城(自宅)に皇女籠城中!? あがり症な新魔王の就任式を成功させよ!

メールを開いたら光に包まれて、魔王城に召喚された俺(ベタ展開)。俺を喚んだ家臣によると、次期魔王が極度のあがり症で、就任式が執り行えないんだと。
問題の次期魔王はというと、
「い、いやなのじゃ! 部屋から出たら死んでしまうのじゃ!」
ひきこもりも患っていらっしゃる様子。
不可侵条約の期限が切れる前に就任式を済ませないと、人類との戦争という最悪のシナリオに!? だから俺の感動的な演説原稿とスピーチ術で、彼女の就任演説を成功させて欲しいというのだが。
……待て、どうして俺がワナビだとバレてるんだ!? 俺のことを『漆黒の邪眼天使(PN)』と呼ばないでくれ!

まだデビューすらもできてないじゃないか、この先生。そんなウェブ小説作家先生が書かれたあがり症の女の子を生徒会長にするお話を見込まれて、うちの引きこもりを魔王にしてやってください(拒否不可)と喚ばれてしまった主人公。相当の無茶振りである。小説書いてその道の専門家になれるなら、ミステリーを書いた作家はみんな名探偵である……結構ミステリー作家兼名探偵なキャラもいそうなのであながち間違いではないかもしれないけれど。
でもこの次期魔王陛下のヴィレって、元々は快活な性格だったのが成長に伴う肉体的なコンプレックスや次期魔王という重圧、トドメに父親である魔王の早逝という幾つもの要因が重なった結果、人前に出ることが徐々にできなくなって、あがり症というよりも対人恐怖症気味な症状を発症してしまったために引きこもりになってしまったという経歴の持ち主であって、根っから怠惰でやる気がなくて引きこもってるというタイプじゃないんですよね。いやどっちも軽重はないんでしょうが、ヴィレさまの場合かなり深刻な経過を辿っているだけに、これ本職のカウンセラーが必要な案件だったんじゃなかろうか。
とはいえ、それでは話が広がらないのでワナビ先生が自分が調べた知識を支えに、自分の力でヴィレさまの症状を改善できるようにあれこれ奮闘をはじめるのである。
ただ、ヴィレさまの場合本人やる気は十分あるんですよね。やる気があるからこそ、人前に出れない自分に相当の悔しさをいだき忸怩たる想いを抱えていたわけで、やる気のない輩の尻をペシペシ叩いてやる気出させるという不毛な作業が必要ないだけサクサクと話は進むのである。
誠意を持って接することで信頼を得て、急き立てて立たせるのではなく無理やり引っ張るのでもなく、一緒に一つ一つできなくなっていたことをクリアしていく二人三脚の日々。ヴィレさま側のやる気も必要不可欠だけれど、根気よく地道に一歩一歩進んでいく作業に付き合い一緒にこなしていくのは日置くんの方も大変だっただろうし、彼の誠実さと根気強さが感じられるものでした。
とはいえ、先代魔王様も亡くなっていて人間世界との不可侵条約の更新時期も間近に迫り、のんびりと魔王就任を引き伸ばしているわけにもいかないので、自然と急き立てられてしまうわけですが。
それでも、次期魔王は殆ど彼女に決まっていて、反対勢力も基本的にそれほど厳しい追求があるわけではなく、ヴィレさま自身次期魔王としての能力は十分であり為政者としての知識や目標など勉強も重ねていて、ほんとただあがり症だけなんとかなれば済む話だったのでクリアする壁はある意味一つだけだったのが幸いだったのでしょう。
一つ一つのエピソードもそれほど手間暇かからずサクサク進んでしまったのは、こうなると逆にあっさりしすぎ、という感も否めませんでしたが。コロコロと坂の上から転がしたボールが下までルートをそれずにキレイに転がり落ちたかのような淀みの無さで、そこでのキャラの掘り下げなんかも実はあんまりなかったんじゃないかな、と。死してなお娘の行く末を見守っている父親、とか色々と要素はあったと思うのですけれど、そのあたりの見せ方なんかもサクッとしすぎてたよなあ、これ。
読み手側の興味が薄れてしまったと感じたら、サクッとこれまで書いていた作品を放り捨てて新しい作品に着手して、とこれまで作品を完結させたことがなかった日置先生。チクチクっと悪気なくそんな日置くんに突き刺さるあれこれはあったものの、それを踏まえてという展開があったのかなかったのか、というあたりもフンワリしすぎていたところかしら。
ともあれ、サクッとアットホームな話を読みたいという意味では実に読みやすい作品だったのではないでしょうか。

柊遊馬作品感想

クロックワーク・プラネット 3 ★★★★   

クロックワーク・プラネット3 (講談社ラノベ文庫)

【クロックワーク・プラネット 3】 榎宮祐・暇奈椿/茨乃 講談社ラノベ文庫

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―全部、全て、何もかも、壊れた。死んだ地球のすべてが、時計仕掛けで再現・再構築された世界―“巨大兵器”が放った電磁場が、あらゆる時計仕掛けを否定する。自動人形も、全身義体も、区画・秋葉原さえも帯磁し静止する中、ただ人だけは一〇〇〇年前から変わらず、変われず、蠢き続ける。保身、欺瞞、虚偽、理想―空転する閣議と、国家非常事態宣言。“人々の総意”による破滅を前に、ナオトは嘲笑う。「行こうぜマリー、邪魔する奴は全部ブッ潰せばいい―!」現実は空想を超える!今一度、あの奇跡を証明しろ―!榎宮祐×暇奈椿×茨乃が紡ぐオーバーホール・ファンタジー第三弾!
ああ、歯車が噛み合った。
唐突に現出したミッシング・リンクの天才たるナオトと、人類の最果ての限界に到達した天才であるマリー。非連続性の中に浮くナオトと、連続性の到達点であるマリー。二人の天才はその立脚点のあまりの違いから、これまで相容れること無く、協力はしてもそれぞれ独立した歯車として動いていたんですよね。その力学は決して噛み合わず、同じ方向を向いていても、作用しあう事はなかったのだ。規格が合わない、論理が合わない、法則があわない、意味が合わない。その凄まじさをお互い認識し、それ故に憧れ焦がれ嫉妬し憎みすらしながらも、決して届かないもの、相容れないもの、歯車の歯は決して噛み合わないのだと、理解していたのだ。納得していたのだ。受け入れてすらいたのだ。
それが、常識だった。常識的な考えだった。
なんて、バカバカしい。
その常識を超越して、人類の範疇を飛び出してしまったのが彼らだったというのに。自覚なく、人の領域を逸脱してしまっていたのが、彼らだったのに。もはや、神とすら謳われるに至ってしまったハグレモノであったのに。
何故、常識を受け入れてしまっていたのか。
噛み合わないのなら、合うように壊せばいい。理解できないのなら、理解できるように破綻させればいい。連続していないのなら無理矢理に繋げればいい。到達点に至ってしまってそれ以上乗り越えられない壁が現れたのなら、そんな壁ワープしてすり抜けてしまえばいい。飛躍せよ、解釈をひっくり返せ、すべてを否定し受け入れろ。答えはすでにそこにある。天才とは、真理をつかみとる者の事を言う。
ついに、ブレイクスルーを迎えたマリー。そして、足りない欠落を埋めきったナオト。二人が足りないものを伝え合い、すり合わせ、壊し合って埋め合った時、噛み合うはずのない歯車が、完全に合致した。単独で、人外魔境の領域だった二人が完全に噛み合った時、生じた現象はまさに人の御業を遥かに超える、神の領域へと加速する。
これは、マリーが人類の限界を超えたと同時に、人という存在の理解の範疇の外に居たナオトが、人の領域へと降りてきた、とも言えるんですよね。前巻まで、どうしても彼の思考についていけないものを感じていたのだけれど、繋がった、ようやく繋がった。人間の枠内から外れ、人の心からも外れ、非連続性に孤立していた
ナオトの心が、ようやく人間に繋がったのだ。マリーが、届かせてくれた。ふたりとも、明らかにもう人間の領域外へと突破してしまったのだけれど、彼らの到達した地点にはちゃんと道が続いているのである。行こうと思えばいける、という可能性をつなげてみせてくれたのである。彼らだけが特別であるように見えるけれど、続こうと言う思いを失わなければ、そこにたどり着けるのだと、人の限界点をさらに先へと進めただけであるのだと、それを示してくれたのだ。
彼らだけが凄いのではない。もっと純粋に、人の可能性とはここまで凄いのだ、というのを二人の歯車の合致は、証明してみせてくれたのだ。
正しく、マリーは人類の可能性の代表を担い続けている。彼女のブレイクスルーは、人類のブレイクスルーなのだ。それを、どれだけの人が理解しているかわからないが、少なくとも彼女を先生と仰ぐ技術者集団たちは、正しくそのことを理解しているようで、安心できるし頭が順調におかしいと思う。
黒幕みたいなのが出てきたけれど、こういう輩はグチャッと爽快につぶしてほしいなあ。すべてを掌握し、すべてを見下してせせら笑って偉そうにしているやつほど、潰れたカエルのような声で鳴かせてほしいものである。

1巻 2巻感想

神さまのいない日曜日 9 5   

神さまのいない日曜日IX (ファンタジア文庫)

【神さまのいない日曜日 9】 入江君人/茨乃 富士見ファンタジア文庫

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「私、死んじゃったんですね…」
アイは、土曜の朝に死んだ。ユリーも、傷持ちも、ディーも、ウッラも、それぞれがアイの死を受け止めた。そして、皆が思った。
「アイ、キミは、これからどうするの?」
死者として埋葬されるのか、このまま在り続けるのか…。アイは待っていた。脅威なき世界の魔弾となったアリスと、悪なき世界に舞い降りた魔女の娘を―。世界の終わりに出逢った少年と少女。ふたりは奇跡を起こせるのか―?
墓守アイの願いの物語、ついに完結。

次々と「死んだ」アイに会いにきて、それぞれ違った反応を見せていく、アイの家族や友人たち。それは、まるでアイに最後の別れをしにきた葬列のように思えて、頭がクラクラと揺らいだ。
まるで、「アイの葬式」だ。
アイは、ちゃんとそこに居るのに。生前葬? でも、アイはもう死んでいる。死んでいるのに、意識を持って其処にいる。でも、ユリーも、スカーも、ディーも、アイの死を嘆き悲しみ、狂乱しているのだ。
なんて狂った状態なのだろう。なるほど、ようやく実感できた。これこそが、この死者が生き返る世界のありのままの姿なのだ。死んだアイに逢いにきた人たちの反応がそれぞれ違うのも当然だ。みんなそれぞれ、この死者が残り続ける世界において、見ている「死」が違うのだから。
アイが救おうとして失敗した、壊れた世界とは、つまりはこういう世界だったのだ。こんな共通した価値観を喪った「死」が蔓延する世界なのだ。先に生者から見た死が描かれたのと対象的に、この巻はまさに「死者」の側からこの世界を見ることになったである。
神様のいなくなった、生者が生まれず死者が死なない壊れた世界。その破綻の最たるものである「壊れた死」が、「アイの死」を通じて、ついに実感として突きつけられる事になったのです。

アイの死を嘆き、哀しみ、絶望し、一方で受け入れ、祝福するものもいる。これまでも十分、死者の死なない世界というのを目の当たりにしてきたつもりですけれど、主人公のアイが「死」の当事者になる、というのはこれまで見聞きしてきた「死者」が、結局は外側から見てきたものだと思い知らされる事でもありました。
アイの死を目の当たりにして狂ったユリー。墓守として初めて「悲しみ」を知り暮れたスカー。アイの死を前に、死というものを理解して恐怖に崩れ落ちたディー。
アイの死に、彼らが受けた衝撃はあまりにも大きくて、激しくて、彼らがこらえきれずに溢れ出させ、噴き出させた感情の渦はあまりにも圧倒的で、ああ、親しい大切な人が「死んでしまう」とはこういう事だったんだな、と思い出さされて、なんだか無性に……わけもなく落ち着かなくなったのでした。滾々と沸き上がってくる情動はコントロールできず、その揺さぶるような波に、しばしじっと耐えるしかありませんでした。
「もう二度と、絶対に会えない」。
それが人が死ぬということ。死なれるということ。それが当たり前の真実だというのを、改めてつきつけられたのでした。
しかし、死んでしまったアイは、なおもどこにも行かずにここにいる。それが不思議で、不可解で、でもホッと安心させられて、でも彼女が埋まる事を選択すれば、死は正しく死として彼女を眠りへと誘ってしまうという状態で……とにかくもう足元がグラグラとして覚束ないのです。これは、何なんだろう。この定まらない、具体的でないあやふやで混沌としたものは何なんだろう。この訳のわからなさが、感情に方向性を与えてくれないのだ。感情に名前をつけることを許してくれないのだ。だから、どう名づけていいのかわからない感情が、混沌としたまま渦巻いている。
だから、混乱したまま受け止め、飲み込むしかなかったのだ。

一方で、物語の登場人物たちは、当事者であるアイを含めて、「アイの死」というものに整理をつけていく。それは、半ばあまりにも大きすぎるその衝撃によって生じた狂いを、或いは浮き彫りになったその人の真実を、すべてアイが受け止め、許容し、肯定して、受け入れたことによって収まったと言えるのだろうけれど。
アイが死んではじめて家族になった、ユリーとスカー。アイが死んだことで初めて生と死を理解し、そうしてアイと本当の友達になったディー。生前も死後も変わりなく、かけがえのない友達でいてくれたまま再会し、別れることになったターニャ。アイが死ぬことによって、初めて顔をあわせ言葉を交わし、触れ合うことが出来て、思う存分旧交を温めることが出来たウッラ。
そして、なおも世界を救う夢を諦めなかった、失敗を認めず、突き進むことを選んだ魔女の娘をも、アイは否定せずに肯定して受け入れる。
たったひとりの、アイの死という事実だけでも、これほどまでに多種多様な捉え方があり、慟哭があり、歓喜があった。それをすべて、受け止めて、認めてみせたアイに、過日の姿はない。かつて、世界を救うのだと夢見た頃のアイは、多くを否定し、多様性を一つの枠に収めようとして、狭量に振る舞うことしばしばだった。それが、幾度もしくじり、失敗し、自分の不明を思い知り、挙句の果てに、世界を救うのだという夢さえ敗れ、半ば怪物とかしていた存在から、ただの人の子に落ちた末に、生きることを終えて死者という存在になった末に、アイがたどり着いた場所が此処だった。数多を認め、数多を受け入れ、数多を肯定し、すべてを祝福する。
それでいて、自分の信念はブレずに貫いてみせる。他者を肯定し祝福し、しかし自分の道に立ちふさがるなら堂々と立ち向かうのだと、笑って宣言できるのが、今のアイでした。
これが、彼女の長い旅の出会いと別れの果ての結果だったのだ、そう思うと、ただただ胸が一杯で、たとえ感情の名前がわからなくても、たとえどんな種類か把握できていなくても、感動というのは訪れるのだと、知ることが出来たのでした。

そんなアイが唯一、認めず、肯定せず、祝福せず、問答無用で蹴っ飛ばしてみせたものこそが、アリスの生き様だったというのは、結局アイが夢を諦めることを選んだ時から、自明だったのかもしれません。
だからこれは、きっと心の底から「良かったね」と微笑むことが出来るエンディングだったのだと、思うのです。
明日へ……。

本作は、富士見ファンタジア文庫というレーベルの色から逸脱した、というところに留まらず、もう数あるライトノベルという括りからも半ば足を踏み出した、非常に特異な作品だったように思います。よく、こんな独特すぎるお話を、打ち切りもせずに路線も歪めず、存分に書かせてくれたものだと、感嘆するばかりです。これぞ、英断というものでしょう。結果として、これほどまでに唯一無二の物語が、ついに幕を引くまで走りきったのですから。
この物語を、最後まで読み終えさせてくれたすべての尽力に、感謝を。
……ありがとうございました。

シリーズ感想

クロックワーク・プラネット 2 4   

クロックワーク・プラネット2 (講談社ラノベ文庫)

【クロックワーク・プラネット 2】 榎宮祐・暇奈椿/茨乃 講談社ラノベ文庫

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死んだ地球のすべてが、時計仕掛けで再現・再構築された世界――“時計仕掛けの惑星”。京都パージ未遂事件から三週間後、マリーのもとに謎の通信が入る。ナオトたちは発信源である区画・三重に向かうが、そこは全てが停止したゴーストタウンと化していた! 都市最深部に潜入した彼らが見たのは、条約違反の“巨大兵器”と幼い少女の自動人形――『永遠』を体現する最強のInitial-Y――。
「おねえちゃん――わたしを、壊して――」
……世界は修正を許さない。破綻した歯車は軋みを上げて螺子狂い、少女の悲嘆をすり潰してなお加速する――――!!
榎宮祐×暇奈椿×茨乃が紡ぐオーバーホール・ファンタジー第二弾!
ああ、あの老軍人の憤りはちょっと理解できるかもしれない。理不尽な怒りかもしれないけれど、どれだけ手を尽くしながらも何も変えられず何も守れず、それでも耐えながら抗ってきた生涯を送ってきた人にとっては、ナオトの在り方の方が理不尽だと思ってしまうものなんじゃなかろうか。何も考えず好き勝手しながら、何も堪えず我慢せず目の前の興味のある事だけに傾倒しながら、その正しさを疑いもしない。
もちろん、ナオトの立場からすると、彼にとって儘ならないものは沢山あったわけで、最近になってようやく自分の好きなものにかまけるようになれたばかり、なんだろうけれど……。
ずっと堪え続けてきた人にとって、世界に絶望していた人にとって、周りも世界も、世界を覆い尽くす絶望すら一顧だにせずにいる存在は、かつて抱いた希望も今抱いている絶望も、自分を取り巻く世界すべてを全否定、全無視されているような、許せなさを抱いたのか。
ナオトやマリーといった天才だけの視点だけではなく、彼らについていくハルダーの視点だけで、常人の観点は補填していると思っていたのだけれど、まさかこういう限界を迎えた俗人の立場から天才の立つ境地に牙を剥いていくアプローチを仕掛けてくるとは思わなかった。
うん、実際マリーのような天才には共感を抱けても、ナオトってどうしても見ている世界が極々小さく狭くって、果たしてマリーやハルダーたちについてすらどれだけ視界に入れているか怪しく思える時すらあるのに、その彼が揺るがぬ中核となって壊れかけた世界の深淵にガリガリと食い込んで行くというのは、1巻の時にはあまり感じなかった事だけれど、理不尽な不快感が痛快さの中に微細に混じり込んで来てたんですよね。
あの老人の憤怒は、そうしたナオトへの理不尽な違和感への払拭に繋がる展開になってくれるのでは、とちと期待してしまう。
何にせよ、ナオトの精神構造が微妙なところで得体が知れなく不気味なお陰で、同じ天才でも、同じ無軌道暴走娘であっても大義と正義感を持ち、涙を流し、艱難辛苦汝を玉にすを地で行っているマリーの方がやっぱり一端の主人公をやってるんですよね。今回だって、七転八倒しながら、自分の行った行為を顧みて、後悔し苦しんでのたうち回った末に、涙を拭って歯を食いしばって立ち上がり、ボロボロになっても不屈の闘志で前に進み続けようという姿は、心が揺さぶられるほど気高く眩しく格好の良い在り方でしたし、惚れ惚れとするほどヒーローしていましたから。やっぱり、共感を得るという意味では圧倒的にマリーなんですよね。
個人的には、彼女にはヒーローであると同時にもう少しヒロインでもあって欲しいのですけれど、ナオトのそっけなさというか道のハズレっぷりがそれを許してくれないのがもどかしいやら、果たして仲間として心通じあえているのかすら不安になる次第。マリーの片思い、ではないのでしょうけれど、一緒に行動しながらもどこかズレている感覚がつきまとってるんですよね。果たして、ナオトはマリーに対して「価値」を感じているのか。彼女がやろうとしていることに「意味」を感じているのか。これだと、むしろリューズやアンクルの方がわかりやすいくらい、とすら思えてくる。さて、彼に付き従うリューズにはコチラには見えないナオトの進む道が見えているのか。
いずれにしても、次回にはその答えを、不安を払拭して欲しいものであります。

1巻感想

神さまのいない日曜日 8 3   

神さまのいない日曜日VIII (富士見ファンタジア文庫)

【神さまのいない日曜日 8】 入江君人/茨乃 富士見ファンタジア文庫

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黒面の向こう側に現れた新世界。世界は救われ、封印都市は新たな街に生まれ変わろうとしていた。そしてアイも、新たな自分を見つけ始める。「アイ・アスティンは、始まりを見守るものでありたい…それがきっと『私』なんです」夢が果ててもなお、たくましく変わりゆくアイ。そんなアイを目の当たりにしたアリスは―。そんなとき、黒面からもう一人の少女が降り立つ。「私は世界を救うのよ」夢に生きる少年と少女の物語は、再び交わるのか―?
ちょうどアニメも始まったことで、振り返りという意味も込めて1,2巻あたりの感想を読み返してみると、そこで自分はアイのことを理想主義者ではなく徹底した超現実主義者だと唱えている。今更ながら、これは結構当たっていたと思うんですよね。彼女は現実主義者だったからこそ、自分の抱いていた夢が単なる目標であり、夢破れ、また自分の夢を裏切ったという挫折をあるがままに受け入れることが出来たのでしょう。今、アイは自分で不思議に思うほどに、夢を喪った今を平穏に健やかに過ごしている。
一方で、アリスはその点、理想主義者ではないけれど全くもって現実主義者でもない。彼の夢は、夢と言うよりももう存在理由そのものになっていたのです。それはもう、自動的に邁進するだけの存在とすら言えるほどに。ただ、そのままだとアリスは自分が破滅する他ないことを自覚するに至っていたし、自分と同類だと思っていたアイが思いの外健やかに夢を捨てられた事に希望を抱くに至っていたわけです。
ところが、そんな折に現れたのが、「万能の力」を有する魔女の娘。世界救う、というかつてアイが夢見た目標を、アリスと同じように存在理由として持つ少女ナイン。そう、彼女こそはアイが成し得なかったのと同じ夢を、叶えるためだけに生み出された存在であり、神に等しい力を持つ彼女は何の力も持たなかったアイと違って、世界のすべての理をも、神様が捨てて変わり果ててしまった死者が死なず生者が生まれない、という狂った理すらも覆す力を持って現れたわけです。
ところが、この魔女の娘は、世界を救うという存在理由に強迫的に背を押され走り回りながら、その実世界を救う方法を何一つ知りませんでした。そう、アイが世界を旅することで一つ一つ現実として知っていった世界を救う難しさを、世界を救うとはどういうことなのかを、世界を救うの「救う」とはどういう事なのか、何を意味するのか。救うべき「世界」とはそもそも何なのか。世界を救おうとしてここにアイがたどり着くまでに知ったものを、夢を捨てるに至るまでに得たものを、ナインは何も知らなかったのです。彼女にあるのは力だけでした。
だからこそ、ナインの進むべき道にあるのは破綻だけであり、しかし彼女には止まるわけには行かない理由となんでも出来る力があったのです。
結果として訪れたのが、救うはずの世界の破綻であり、それを止めるために止まらなくなったアリスでした。

まー、もうナンと言っていいのやら。ナインの存在はあまりにも今更であり、あまりにも早すぎたとも言えて、もはや神に近しい力を持っていても世界は救われないほどに、物事は単純じゃなくなってしまったんだなあ、という感慨が。まあ、最初からうまくいくはずがない、というのはわかりきっていて、だからもうナインが現れた時点でアリスやディーは動き出していたわけですけれど、ナインの駆け抜けっぷりは早かったなあ。なまじ力があったからこそ、アイが夢敗れるまでに至った過程を一瞬で駆け抜けたような気がします。ところが、アイがそこで立ち止まり、諦めたのと違って、ナインはそれでも止まれなかった。そうなると、世界を救うという夢を叶えるためにどうなってしまうのか。アイが辿れなかった、辿らずに済んだ道をナインは突き進んでしまいます。有り得ない未来として、これはアイとアリスが迎える結末だったのかもしれません。
とはいえ、ここに対峙したのはアイとアリスではなく、ナインとアリスであり、その両者の前に割って入るところに世界の行く末を見守ろうと決めたアイが居たわけです。
……あれ? アイ、世界救ったんじゃね?
いや、だからこそ、当初の予定としての世界を救う、という形とは大いに違っていたとはいえ、ある意味世界が救われたからこそ、ナインもアリスも止まれたんだろうけれど。
いやしかしこれ、せめて死者の方は置いておくとしても、子供が生まれなくなってしまった理の方は、元に戻してもらえばよかったのに。それさえ元に戻れば、、この世界少なくとも死者の世界になってしまう事は免れたはずなんだが……ナインも順番考えようぜw

そして、一手にラブコメパートを引き受けるスカーとユリーの新婚夫婦。今回はついに結婚式まであげてしまい、まーおめでとうおめでとう。……ラブラブでござるなあ。いったい、一巻二巻の頃から二人がこうなると誰が想像したものか。辿る軌跡の不思議なことです。
……って、ラストが衝撃的すぎて、あっけだよ、あぜんだよ。マジですか!? どうなるんだ、これ!?

シリーズ感想

クロックワーク・プラネット 15   

クロックワーク・プラネット1 (講談社ラノベ文庫)

【クロックワーク・プラネット 1】 榎宮祐・暇奈椿/茨乃 講談社ラノベ文庫

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――唐突だが。世界はとっくに滅亡している。
死んだ地球のすべてが、時計仕掛けで再現・再構築された世界――
“時計仕掛けの惑星”。落ちこぼれの高校生・見浦ナオトの家に、ある日突然黒い箱が墜落する。中にいたのは――自動人形の少女。
「あんな故障一つで二百年も機能停止を強いられるとは。人類の知能は未だノミの水準さえ超えられずにいるのでしょうか――?」
榎宮祐×暇奈椿×茨乃が共に紡ぐオーバーホール・ファンタジー!
ぎゃああーーーーーーー! あかんわこれべらぼうに面白いわぁーーーっ! ちょっ、これほんまどないしてくれんねん!!
全身の毛穴が開くような、フリーフォールで内臓がぶわっと持ち上げられるような、そんな鳥肌モノのシーンがあちらこちらに散見していて、心拍数あがりっぱなしですよ。
うはは、【ノーゲーム・ノーライフ】で思い知ったつもりでしたけれど、この尖りきった部分を無邪気に振り回す大暴れっぷりはたまったもんじゃないわー。どころか、共著のお陰で持ち味が消えるどころかいい具合に化学反応を起こしていると思しき気配もビンビンにするんですよね。あとがき見てると、共著と言っても計算された分担作業なんかじゃなくて、もうシッチャカメッチャカにお互いキャッキャとはしゃぎながら好き勝手に書きまくり、それを粘土でこねくりまわしているような有様で、こんな無分別な共著とか見たこと無いよ! よくまあ、そんな書き方で一本の作品に仕上がるもんだと唖然とするくらい、あとがきの雰囲気大騒動なんですよね。いや、あとがきだけ見ても笑えて面白かった。
しかし、そういう好き放題が相乗作用すると、こんなんなるのか。これもひとつの奇跡だわなあ。お互いの発想を面白い面白いとまぜこぜにすると、こんなんになるのか。いやあ、凄い。
とにかく、キャラクターの魅せ方、盛り上げ方がちょっとキてるくらいにイカしてるんですよね。ナオトにしてもリューズにしても、そしてマリーにしてもぶっ飛んだキャラであり、突き抜けた能力の持ち主というのは最前提として、それを如何に派手に、度肝を抜くように、思わず呆気にとられてしまうように魅せるかについて、そりゃもう尖りまくってるんですよ。やっぱ、発想のスケールというか、在り処が全然違うよなあ。なんでそんなこと思いつけるの!? と思うような異常さが、もろに此方のハートをわしづかみにしてくるのです。
リューズの故障箇所の原因の概念なんて、どういう頭してたらそういう発想湧くんだろう。ナオトがさらっとなんでもないことのように原因を口走った時には、本気で「え、何言ってるの?」と呆然としてしまいましたからね。それが、周りで聞いてた登場人物の心境、胸の内と完全にシンクロしてしまうものだから、驚き様まで作品の内の内にのめりこんでいってしまうわけです。
夢中になる、というのはこういうんだろうなあ。驚愕を、物凄いものを目の当たりにしているという感動を、作中の登場人物と共有することでより深く、ダイレクトに感じるんですよ。その演出の仕方が、この作者たちは抜群に上手い。エンターテイメントというものの粋を極めてる。素晴らしい。
だいたいからして、マリーもナオトもウジウジと停滞せず、おいやーー! ととにかく行動してやってしまうキャラなので。それも、一旦立ち止まりかけてもお互いに影響しあって、リューズやハルターのおっさんも遠慮なく後押しするから、もうイケイケドンドンなんですよね。だから、痛快さ爽快さも留まるところを知らないわけです。悪意も理不尽もこの世の矛盾も、絶対無理も絶対不可能も何もかもぜんぶドカーンと吹き飛ばすこの快感。
最高じゃあないですか!
リューズのフルスロットル。マリーとナオトという天才同士の奇跡の共演。人が届かないはずの神の領域に指先を引っ掛けるような、心奪われるような光景。いやあ、凄いものを見せてもらいましたよ。
あと、リューズの人を人とも思わぬ毒舌とは裏腹の、黙らせるともろにデレが出てしまうのとか、反則じゃね? いや、マリーもいいんですよ。このちびっ子、誇りの在処を心得まくってる、気概にみちたすこぶるイイ女なんだよなあ。ハルターのおっさんも、このにじみ出る渋さと頼もしさがたまんねえです。
イラストの茨乃さんも、いい仕事してましたよ。この人は【神さまのいない日曜日】とかでお目にかかってましたけれど、いやあええ感じでした。
もうなんもかんもたまんねえ感じで面白かった、楽しかった! これは、超おすすめ。

神さまのいない日曜日 7 4   

神さまのいない日曜日VII (富士見ファンタジア文庫)

【神さまのいない日曜日 7】 入江君人/茨乃 富士見ファンタジア文庫

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アイやディーたちの活躍により封印都市は復活を果たす。けれど、アリスの断罪に失敗した魔女旅団―マダムは暴走、鉄虫に襲われた封印都市は、戦火に包まれる。アリスは、封印都市を救う為、“我が侭”になったマダムに対抗する為に、その力を解放する。「―俺が止める」その異能で。すべてを燃やし尽くす。一方、アリスと共に戦うと決めたアイは、一度は手放した墓守のショベルを、再びその手にとる。大切なものを、誰かを。もう一度、守りたいから。「アリスさん―私と一緒に、生きてください」世界の終わりを守る少女と少年の、果てない夢の行方は!?―。
前々回で「世界を救う」というこれまで培ってきた夢を裏切り、前回においてはその夢を取り戻すどころか、裏切った選択を肯定して本当の意味で捨て去ってしまったアイ。ここに至るまで、ただ「夢」を叶えるために生きてきたアイにとって、生きる意味である「夢」を捨て去ったことは死んだも同然。なぜ夢を捨ててなお未だに生き続けているのか、という存在意義への疑問すら抱きながら、アイは周りの人たちを通じて自分が普通に笑って生きていることを実感する。同じく、自分の夢にこだわり続けて破綻しかけていたアリスの姿を目の当たりにすることで、自分もまたどれだけいびつな存在だったのか。ユリーたちに心配をかけてきたのかを、実感する。
夢がなくても、人は生きていける。その事実に愕然とした想いを抱きながらも、彼女はその事実を受け入れつつあったのでした。

でも、世界は着々と滅びつつある。

この生者が生まれず死者が生き返る世界の恐ろしさは、これまでも散々目の当たりにしてきたつもりでしたけれど、結局今までの体験というのは生まれた時からこんな世界だった若者たちと、滅びつつある世界の中で抗いながら生きてきた大人たちの目線から見ていた世界だったんですよね。ある意味、異常が当たり前になった人たちの視点からしか、この世界を見ていなかったと言える。
でも、この世界から長らく隔離されていた封印都市の古参の人たちの、死が終わりであった人たちの目線からこの世界を見直した時、今の世界の異常性が際立ってくる。
この世界は明らかに壊れていて、そして滅びつつあるのだ、という事実を改めて認識することになった。そして、そんな世界を救うなんてこと、とてもアイの手には余ることだったのだ。

そもそも、自分の全存在をかけた夢とは何なのか。一度「夢」から離れて、アイが「夢」というものを振り返った時、そこにあるものは、夢とはただの生きる上での「目標」でしかなかったのです。生きるための目標なのに、そこには「自分」というものが存在しなかった。違ったのだ。夢とは思い定めて自分を捨てて、置いてけぼりにして邁進するものなどではなく、ただ自分が自分らしく生きようとした時に自然とその道筋の先に現れるものだったのだ。
この「夢」というものの概念自体の再編は、さらなる衝撃だった。
そもそもこの【神さまのいない日曜日】という作品自体が、神という指針が存在しない世界での、「夢」という生の意味を問いかけるような内容だっただけに、夢そのもののようだったアイが、その夢を裏切り、さらに取り戻すことすらせず裏切った事を肯定して、夢なき自分を認めてしまった事自体が大衝撃だっただけに、その上にさらに「夢」というものの概念すら根底からひっくり返してしまうという展開は、驚きなんてものじゃないんですよ。この作品の主題の扱いとしては正直度肝を抜かれるような大胆さである。本来ならぶれないはずの作品の芯の部分そのものを、ぶん回すような所業なのですから。
でも、ぶん回したその先に、新たな、そして開かれた未来への道が待っているというのは、唖然とすると同時に興奮を呼ぶ流れでした。
その上さらに、夢の標榜だった「世界を救う」ことそのものを、ここで一気に叶えてしまったという展開も、仰天だったんですけどね。あれだけアイが苦心して見出そうとしていた答えを、ここで数ある一つとは言えあっさりと開いてしまうとは。なんと、まあ……。
でもその救済を前にした時、現行世界は先へと続く未来を手に入れ滅びを回避したと同時に、完全に「死後の世界」への道を歩み始めたことになったのです。高次世界やアストラル界などではない、3次元の物理世界にも関わらず、ここは地獄であり天国である死者たちの世界。死後の世界へと変わっていく。
この事実を前にした時、もうわけわかんない感情がこみ上げてきて、どうにもならなかった。それは感動であり、失望でもあり、希望でもあり絶望でもあり。とてつもない矛盾をはらんだ感情がわきあがってきた。なんか、もう凄かった。
もちろん、これも確かな世界の救済なのです。世界は間違いなく終わりから救われた。でも、未来へとつながっていく歴史、という意味での世界は救われたとしても、それは世界を救うことの一つに過ぎないんですよね。世界を救うという言葉に思い描く形の一つでしか無い。これで、全部終わりじゃないはず。世界が在りし日の姿を取り戻す、という救いが、まだあるはず。でも、それが叶うということは、今回の救いを台無しにすることにもつながりかねないんですよね、考えてみると。あの救いは、死者が存在し続けることが前提となっているのですから、死者が終わり、生者が生まれる世界の復活は、黒面を通じた異世界との連結を台無しにするおそれがある。
でも、この形が正解なの? 分からない、何も分からない。アイは、どうするつもりなんだろう。アリスやディーと共に、どういう光景を見出すんだろう。アイがアイらしく、自分を手に入れた時に見たいと思う光景は、一体どんなものなんだろう。
まさに最終回! みたいなノリだったのにも関わらず、物語はまだ続く。当然だ、アイはまだ「自分」という夢を見出していないし、アリスは破綻したままで、ディーは魔女のままなのだから。
でも、次回以降のあらすじはそれこそ理解不能の次回予告で、これってどういうことなの!?
わけがわからないよ! でも、その理解不能さが今だけは心地よい気がする。まったく、不思議で地に足の付かない困った、しかし恐ろしく充実して中身が充填された作品であり、物語である。

あと、スカーがユリーと惚気けすぎ。いや、この人ホントに変わっちゃいましたよね。構ってくれないユリーに拗ねるスカーさんが、可愛らしすぎる。今回は墓守らしい働きも見せてくれたお陰で、余計に昔との差異が浮き出たような気がする。そうか、これがいわゆる未婚の人妻か!!(?
そして、ユリーのお父さんスキルがそろそろ異能の域に達しつつあるような。第六感冴えすぎですw
まあ、アイはまだ恋愛感情って理解できてないようですけど。それとも、解った上でディーをからかってる? アイとアリスの雰囲気はディーがいじけるくらいに醸成されてしまってるのですが、本人たちにその気はないのかなあ。これが普通のお話なら、双方とも鈍感、で済まされるのかもしれないですが、こればっかりはアイもアリスも色々と破綻してるからなあ。本当に無い可能性もあるので油断できない。
でもスカー、貴女は無いわ。普通にそれは恋ですから、愛ですから。

シリーズ感想

神さまのいない日曜日 64   

神さまのいない日曜日VI (富士見ファンタジア文庫)

【神さまのいない日曜日 6】 入江君人/茨乃 富士見ファンタジア文庫

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封印都市をタイムループから解き放ち、3年4組を助けることに成功したアイ。しかし、同時にアリスの願いに反して彼を救ってしまったことで、2人はすれ違ってしまう。「私にだけ見えていた夢が、なくなっちゃったんです…」アリスへの想いと引き替えに失った、墓守としての夢。ひとりぼっちで途方に暮れるアイだが、突如、封印都市に魔女旅団と名乗る異形の集団が現れ―!?「罪人を裁きに来ました―ここに魔女裁判を開廷する!」世界を救う罪を裁くという魔女旅団。彼らの狙いはアイなのか?そして、すれ違ったアリスとアイの想いの行方は―。
前回、自らの「世界を救う」という夢を「裏切り」、アリスを助けてしまったアイ。これまでの失敗は、言うなればアイの力不足であったのに対して、前回のそれは文字通り自分の夢を裏切ってしまった。これまで彼女が歩んできた道を全否定するものだった。これまでアイが世界を救うためと信じて選んできた幾多もの選択、他者の想いの破壊、何より実の父を埋めた過去をけたぐり捨てるものだったのだ。
これまでなら、失敗しても失敗してもめげずに立ち直り、世界を救うということへの見識を改め、更新し、さらに夢を高みに置いて邁進を続けていたアイをして、「裏切り」は二度と立ち直れないほどの挫折だったのだろう。もう、この巻のアイは気力を失い、希望をなくし、諦め、絶望し、完全に腑抜けになってしまっていました。自らへの背信。それは彼女の意思をズタズタに傷つけ、その傷が時間の経過や周囲の人間たちの温かい思いやりによって癒されていく事に気づいて改めて傷つき、抜け殻のようになって新たな生活を構築していく封印都市の皆の間でふらふらと生きるアイ。
その生きる屍のようなアイの姿は哀れなんだけれど、ディーやユリーたちがそんな今のアイに安心を覚えているのもわかるっちゃわかるんですよね。世界を救おうとしているアイは、はっきり言ってまともな人間とはかけ離れた存在だった。聖人とも狂人ともつかない、恐ろしくも危うく何もせずに見ていられない存在だったんですよね。ユリーがあれだけ過保護にアイを気にかけていたのは、何も親友の娘だから、今となっては自分の娘のように思っているから、というだけではなかったはず。それだけ、危うい存在だと感じていたからなのだろう。だからこそ、この巻ではユリーはわりとアイの事は放置してるんですよね。勿論、落ち込んでいるアイを気にして気遣ってはいるものの、ムキになっていたこれまでと違ってどこか余裕がある。それは、スカーとイチャイチャ夫婦生活送ってるのに忙しいから、とは思いたくないw
ディーの方も幽霊じゃなくなり、西の魔女という軛から解き放たれたからこそ憑き物が落ちたように忙しく走り回っているんだろうけれど、アイのことを気にかけている様子は普通の友達のようで、以前のように友達でありながら不倶戴天の敵という風な態度から変わってしまったのは、アイが変わってしまったから、というのも大きかったのだろう。

つまりは、アイは普通の「人間」になってしまったのだ。

これから彼女がどうするのか。夢に背を向けたままそのまま薄れていくのか。それとも、強引に自分の夢をもう一度たぐり寄せるのか。普通なら、夢を取り戻すというのが王道なんでしょうね。うん、今回も実はそうなると思っていた。
まさか、アイがあんなことをするなんて。あんな選択をするなんて。
けっこう、いやかなり驚いた。トドメじゃないか。諦めでもなく、絶望でもなく、否定の末の受容ではなく、アイはあの瞬間、自分の夢を捨てたのだ。自分の自分への裏切りを肯定した。
夢を取り戻し、意思を取り戻し、再び「世界を救う」ために立ち直るのではなく、「世界を救う」夢を裏切ったことを間違いではなく、アイという人間の在り方として肯定したのだ。
これまでのアイは死んだ。完全にトドメを刺され、息の根を止められた。アイの姿をした「世界を救う」生き物の抜け殻は、ただの人間のアイへと生まれ変わったのだ。

なんかもう、言葉にならない衝撃だった。
これって、アイ個人の話だけじゃなくって、アイが世界を救うという主題でこれまで積み上げてきたこの作品のこれまでを、放り捨てるってことでもあるんですよね。勿論、物語としては積み上げた事もそれをほうり捨てた事も踏まえて進んでいくので、無意味ってことでは全然ないんだけれど、それでも大胆なことをするよなあ、となんだか深呼吸してしまう。
世界は、この死者が戻ってくる世界は、新たに生者が生まれない神様に捨てられた世界はどうなるんだろう。
世界は、救われないんだろうか。このまま、ゆるりゆるりと滅んでいくんだろうか。
絶望感はない。だからと言って希望が湧くわけでもない。何となく、すごくフラットな気持ちでアイとアリスが選んでいく道を見ている自分がいる。
ふらふらと足取りもおぼつかないけれど、紐で繋がれて引っ張られていくみたいに、物語についていく。連れて行かれる。
どこに、この物語は一体何処に、自分を連れて行ってくれるんだろう。不思議な、作品だよなあ。不思議なお話だよなあ。でも、何がなんだか面白い。

とりあえず、スカーさんは誰か何とかしろ。なんだあの色ボケ人妻は。元の墓守だった頃の面影が全然ないんだが。というか、キャラ違いすぎ!! もっとやれ!!

シリーズ感想

神さまのいない日曜日 54   

神さまのいない日曜日V (富士見ファンタジア文庫)

【神さまのいない日曜日 5】 入江君人/茨乃 富士見ファンタジア文庫

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アイはアリスを救えるか!? 世界の終わりを守る少女の物語
「3年4組を救ってくれ」。世界塔を共に脱出した少年、アリスにそう請われたアイ。アリスと共に向かったのは15年前、神さまがいなくなる前に“時が繰り返す”街だった。アイはそこでアリスの真の目的を知り!? 
……うわあ、やっちまった。とうとうやっちまった!! アイ・アスティン、最大最悪の致命的な大失敗である。これまでも何度も大失敗してきたアイだけれど、今回のそれは今までのそれとは質が違う。これまで一切揺るぎなかったアイの「世界を救う」という信念を、自らねじ曲げてしまった失敗なのだから。
他でもないアリス・カラーによってアイは「世界を救う」方法を導き出せたというのに、肝心のアリスの「世界」を救う事が出来なかったなんて、なんて皮肉な話だろう。彼女はここで逡巡する訳にはいかなかったはずなのに。父を埋めた段階で、あの願いによって建っていた塔を壊した段階で、彼女はもう後戻りできなかったはずなのに。アイが求めた通り、彼女の夢の叶え方にそって、アリスは自らの世界を救う方法を決したというのに。
アイは今まで歩いてきた道を、自ら否定してしまったのだ。彼女が世界を救うのではなく、彼女が世界に救われてしまったのだ。
取り返しの付かないことを、しでかしてしまった。
ハッピーエンドのはずなのに、希望がつながった結末だったはずなのに、結果としてアイは自らの夢を閉ざしてしまったのである。理想が、目の前の救いに負けてしまったのだ。
勿論、それを責められる人はだれもいないだろう。彼女にそれを強いるのはあまりにも酷な話だったからだ。アリスもまた彼女を責めなかった。ただ、事実を突きつけただけだ。でも、アリスはそんな酷な現実を、アイなら実行してくれるはずだと、思ったんですよね。だから、彼女に救いを求めたはず。……ひどいヤツだな、こいつ。
そんな酷いけれど、きっと誰よりもアイの夢を認めてくれたアリスの期待に、彼女は応えられなかった訳だ。それを一番良く知るのはアイ本人である。だから責めるのは、アイ本人でしかない。
どうするんだろう、アイは。一度こうして道を外れてしまえば、敢えて振り返らずに居た過去を振り返らずにはいられないだろう。父を埋めたことを、いまさらのように後悔してしまうんじゃないか。彼女は夢を叶えられるのだろうか。それ以上に、世界を救うという夢をこのまま持ち続けることができるのだろうか。

アイを含めて皆が救われた話だったというのに、何故こんなにも残酷な話なんだろう。
これから話がどう展開するのかがまるで予想できない。アイは挫折したまま違う道をゆくのか、それとも脇目もふらず邁進をはじめるのか。とにかく、次回が気になって仕方ない。


さて、それはそれとして、あの新婚夫婦なんとかしろ! ユリーは亭主関白だしっ、スカーは人妻女子高生だし! スカーは前回にも増して登場時の墓守らしいクールさが微塵も残ってないよ。なにこのデッレデレな若奥様は。貞淑妻は。はいはいはいはい、末永くお幸せにーーッ!! 

シリーズ感想

神さまのいない日曜日 43   

神さまのいない日曜日IV (富士見ファンタジア文庫)

【神さまのいない日曜日 4】 入江君人/茨乃 富士見ファンタジア文庫

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消えたスカーを追いかけるアイたちは、「世界塔」に辿り着く。遙か天を突く巨大なその塔は、アイに不思議な幻を見せる。何でも願いが叶うという「世界塔」だが、石碑にはある兄妹の物語が刻まれており……
これって見方を変えれば、賽の河原の積み石そのものだよなあ。ならば、兄が石を積み上げるのは供養のためなのか。この塔、結局完成することは有り得なかったんですよね。鬼が現れて積み石を崩してしまうことはなかったけど(それとも、ディーの為した所業こそがそれに該当するのか)、積んでも積んでも積んでいる本人はそれを完成とは認められない以上、塔は果て無く上へ上へと登っていくしかなくなるわけだ。それこそ、願いが叶う天国のようなものになってしまうまで。
元々、神様が世界を見捨て、生者が生まれなくなり死者が死ななくなった世界という、ファンタジーな世界観でしたけど、少なくとも今までは確固としたルールに則った世界だったんですよね。それが、この「世界塔」の物語は通常の物理法則や、一定の決まったルールなど完膚なきまでに無視した、イメージが何よりも優先される、観念的なファンタジーの世界観へと変貌している。
そこで描かれるのは、実際に救われた世界だ。
これまで、アイの世界を救うという目的に対して、救うべき世界とは一体何なのか。救うという行為は具体的にはどうしたものなのか、という問いかけが為されてきたわけだけれど、ここで新たに指し示されたのは、人それぞれ個々の中にのみ有されている救われた世界の形だったわけである。なるほど、これは観念的な世界観でなければ描ききれないシロモノだ。敢えて堂々と小細工を弄さずに、ならば世界を観念的にしてみよう、とやっちゃうあたり、この作品は他の何を度外視しても、恐ろしく徹底してアイの目的である「世界を救うこと」を追求していく試みなのだと伺える。テーマの為なら、世界観すらひっくり返して透徹とするぶれない一途さは、ちょっと鳥肌が立ちそうだ。人間、なかなかここまでテーマに対して脇目をふらずに居ることは出来ないものだからして。
そして、ブレないのはアイも同じ。世界観がひっくり返っても、彼女の「世界を救う」という目的に基づく行動には一切の迷いがない。願いが願うだけ叶う世界の中で、彼女は自分が思い描く自分であり続けながら、塔を上へ上へと登っていく。彼女はこの手作りの天国を否定も肯定もしなかったけれど、少しだけツラそうに眺めてた。ディーがこの塔を罵倒したとき、アイは怒っていたけれど、彼女はこの塔と、この願いがカナってしまう場所を創りだしてしまった人の在り方を、どう思っていたのだろう。
考えているのだけれど、よく分からない。その塔を生まれさせるに至った人の意思を肯定し、しかし塔そのものの姿は否定的だったのだろうか。
わかるのはひとつだけ。
塔の中で自分の答えを見つけたのは、アイではなく、きっとユリーだったのだろう。
アイの結論は、塔を登る前と登ったあとで変わったようには見えない。塔の最上でスカーに追いつき、彼女の縋るような問いかけに対する答えを導き出したとき、アイは彼女なりの「世界を救う方法」を既に見つけていたように思う。アイは世界を救うのだろう。でも、きっと誰にも何も与えないのだ。願いを叶えるわけでもない。手を引いて導くのでもない。自決せよと迫るのだ。世界を救うのだと願いながら、自分で決めろと放り出す。なんて突き放した理想論。でもきっとそれは、この世を見捨てた神様から、人間は独り立ちしなきゃいけない、という意味が込められているのかもしれないなあ。
でも、現実的には人は迷ったとき、道を見失った時、手を握って導いてもらいたいものなんですよ。その意味では、ユリーの決意と行動はまさに現実をかみしめた大人の考えで、でも諦観を乗り越えたドラマチックなリバティでした。
大それた理想を叶えるのもまた世界の救済かもしれないが、手に届くものを幸せにする甲斐性も、この滅び行く世界の中じゃあ十分世界を救ってるよ、ユリーさん。何より、アイみたいな子には貴方みたいな保護者が必要だわ。でないと、アイみたいなのはどこまでも突っ走っていってしまうだろうから。
さて、じゃあアリスが抱えているのは、大それた理想なのか、身の丈にあった甲斐性なのか。いずれにしても、それを達するために、彼はアイを見込んじゃったわけですね。この子に「助け」を求めたらどうなるか、大概分かっているだろうに。それとも、分かっているからこそ、なんだろうか。
何にせよ、次は、アリス・カラーの物語だ。

シリーズ感想

神さまのいない日曜日 34   

神さまのいない日曜日III (富士見ファンタジア文庫)

【神さまのいない日曜日 3】 入江君人/茨乃 富士見ファンタジア文庫

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 bk1

百万都市オルタスを脱出し、荒野に戻ったアイ。青い車であてどない旅を続けるアイに、ユリーから思いがけない言葉がかけられる。
「学校に、行かないか」
学校――それは、かつて人食い玩具(ハンプニーハンバート)が通っていたという場所。期待と不安の中、ゴーラ学園という生者の学校に転入したアイだが、待っていたのは不思議な力を持つ級友たちと、鉄線に囲まれた奇妙な場所だった。そしてアイはそこで、アリスという少年と出会う。
 アリス・カラー――アイと“同じ夢”を見る少年と。
 十五年前の<あの夜>以来、人は生まれず死者は死なない。これは、神様が捨てた世界で紡がれる、世界を救う夢を見る少女の物語。

始まりの第一巻が、アイが世界を救う夢を手に入れる話だったとしたら、二巻はアイが世界に救う事を拒絶され挫折を知り、返す刀で<世界を救う>の「救う」とはそもそも如何なる事なのか、何をどうすることで「救った」と言えるのか、と問い詰められる話であったように思う。ならばこの三巻はどういう話だったのか。
物語はさらにアイに問いかけてくる。お前は<世界を救う>のだという。ならば、お前が救おうとしている<世界>とは、そもそも「何」なのだ? と。
アイにとって、これはで世界とはその単語を発するだけですべてが表現しきれる、伝わるもの、通じるものだと思っていた。それが、全くの凝り固まった観念に過ぎないのだと、彼女は生者たちが集う<学校>で、様々な人たちと出会うことで、皆がそれぞれに自分の中に自分だけの<世界>を有している事を初めて知ることになる。そして、アイと同じく<世界を救う>という夢を見ながら、アイが漠然と思い描いていた<世界を救う>姿とは全く違う形、方法、考え方で<世界を救う>と夢見る者たちと出会ってしまうのだ。
そう、アイの夢見る<世界を救う>事とは、万人が共有する夢では必ずしもなかったのだ。彼女がオルタスで大失敗をやらかしてしまったのは、「救う」という行為への不明のみならず、アイにとっての「救う」べき「世界」が、アイ独りの主観に基づくものに過ぎずオルタスの人々が抱く「世界」と異なっていた事が原因だったのだろう、と今になって理解できる。
彼女は、失敗するべくして失敗したのだ。
ここでアリス・カラーが無知なるアイに教授する、「世界」についての固有性と概念の説明は非常に分かりやすく、私もかなり目が覚める思いで彼の論述に頷かされてしまった。
彼は非常に論理的かつ簡潔で明快な形で<世界>という概念を解体し、アイに分かりやすく提示した上で、彼女に<世界を救う>方法論を指し示す。そう、前回アイが大失敗をやらかした原因をアイに思い知らされた上で、<世界>とは何なのか、<救う>とは何なのかをアイに見事に示すのだ。
これまであまりに漠然として掴み所がなかった<世界を救う>という夢に、アイは具体的な思考の取っ掛かりを得ることになる。
そして、彼女はついに、彼女なりの<世界を救う>方法を見つけることになるのだ。
最初から用意されている答えに辿り着くことは、簡単とは言わないけれど難しいとも云いきれない。答えがある、ということはそこに至るための道が必ずあるからだ。
しかし、彼女は答えを見つけるのではなく、自分の答えを創りだした。夢を見つけ、叶える決意を覚悟し、しかしやり方が分からず失敗し、悩みながら手探りで答えを求め、人の話を聞き、考え、考え、考えに考えて、その上で……彼女はついに形作ったのだ。
夢の叶える方法を。
それは、とても尊い事だと思う。とても、素敵なことだと思う。
学ぶとは、教えられるばかりではなくて、教えられたことをきっちりと自分の中で消化して自分なりの答えを得る事なんでしょうね。その意味では、今回は間違いなく「学校」の話だったように思います。
そして「学校」に通うということは、友達が出来る、ということでもあるんですよね。一方的に問いかけられるのではなく、お互いに問い掛けあえる関係。アイが自分の夢に悩むのと同じように、この学校で出会った級友・ターニャもまたアイに問い掛けられることで自分の<世界>について考えるようになる。そして、アイとターニャの考に導かれるように、他のQクラスのクラスメイトたちも、自分の<世界>について考えるようになるのだ。
これこそ、皆と一緒に学ぶ、という学校の在り方の原風景なのかもしれないなあ。

さて、やりたい夢のやり方を手に入れたアイ様はもう無敵です状態のはずなんだけれど、自体はまたぞろワケの分からない方向へ。ユリーの言い草は一方的なのでいまいち信用できないけれど、アレほど固執していたセリカを放り出して、となるとよっぽどの事態が起こったのか、それとも本当にユリーの言うとおりに精神的に参ってしまったのか。どちらにしても、登場した時の無機質な墓守からは想像できない姿だ。

そして、二巻でさよならしたはずの友達。死人の女王ウッラだけれど……ちょっとこの娘、アイの悪いところが感染しちゃったんじゃないのか? と心配するくらい大ハシャギしてるんだがw 二巻の終わり方からして、この娘の行末は大丈夫と言われていても少し心配だったのだけれど、この様子だとホントに大丈夫そうだなあ。というか、彼女は彼女なりに自分の<世界を救う>方法を見つけたのだろう。やり方さえ決めたのなら、あとは一直線だ。

シリーズ感想

くるくるクロッキー 24   

くるくるクロッキー〈2〉 (電撃文庫)

【くるくるクロッキー 2】 渡部狛/茨乃 電撃文庫

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 bk1


あはははは、これはひどい。文章がめちゃくちゃだ。読者の読みやすさなどまるで考慮に入れていない暴れ馬。前後の関連性が唐突すぎて油断すると意味も時系列も掴み損ねてしまうくらい、奔放に跳ねまくっている。
小説として、これはちょっとアレな出来だと思う。読んでてなんじゃこりゃ、と挫折する人もそりゃあ出てきてしまうだろう。
でもですね。
でもですよ?
それを考慮に入れてもなお、この作品、自分の中では好感度ストップ高なのだ!
面白いというよりも、この圧倒的な雰囲気に魅入られてしまったと言っていい。一巻の時ですらその傾向はあったけれど、どうやら作者は文章の整調よりも自分の特性をより先鋭化する方向性に舵を切ってしまったらしい。お陰さまで自分などは完全にノックアウトされてしまったのだが、商業的にはどうなんだろう。ちょっと心配だ。
まあ余計な心配は脇においておいて、本作の魅力について語りたいところなのだが、はて、これをいったいどう伝えたらいいものか。迷子小路という神隠しを発端に始まる時間交錯のエピソードになるのだけれど、テーマとしては確かにSFながら実態はというとサイエンスフィクションというよりも或瀬がいうような「すこしふしぎ」の領域、幻想譚とも言うべき情景が広がっている。論理に遠慮してもらった不条理によって紡がれる心象が、この物語の原風景と言っていいのではないだろうか。
時系列が倒錯していく中で、主人公の或瀬と鳴歌の二人、そして彼らを取り巻く周りの人々はその事実を認識しながら、特に慌てふためいたりはしないのである。あやふやになり混迷を深めて行く現実の中を、困惑を覚えながらもスイスイと泳いで行く。彼らに取って、過去から未来に流れていく時間という固定概念は特に意味を成さないように。すべてをあるがままに受け入れて行く彼らは、やはりどこか並人から外れているのだろう。
そんな世界のあやふやさと人物の揺るがなさを現すように、この巻は終始不思議な雰囲気に包まれている。夏の暑さで立ち上る陽炎の向こうで揺らめくかのように、ぼうと輪郭を失い現実感が乏しく時間が停まってしまったような街並み。裏腹に、輪郭が整い何もかもがあやふやな世界の中で何故かはっきりと焦点を結んでいる登場人物たち。彼らの存在感があるからこそ、幻の中に呑み込まれて消えていきそうな儚さが、縫い止められてしまっているのだ。このあやふやな非現実感としっかりとした手応えの残る実体感が混在した、不可思議で圧倒的な作品の雰囲気に、ただただ息を飲むばかり。ここは現在のはずなのに、未来から見た懐かしい過去のようでもあり、遠い過去から見た遥かな未来の時間のようにも思えてくる。そもそも、時間とは過去から未来に一方的に流れていくという概念すら馬鹿らしくなるような、心引き寄せられるあやふやさ。
今も昔も未来すらもこの瞬間に混在するのなら、それこそ永遠というものなのではないだろうか。
そして、間違いなくこの登場人物たち、或瀬や鳴歌、道流に藤堂、真昼や紙魚はその永遠を共有しているのだ。そんな彼らの関係性にも、何故か心惹かれてしまう。
ぶっちゃけ、他人には何を言っているか分からない感想になってしまったと思うが、この感覚は完全無欠に感性に則り生じたものなので、論理的な解釈のしようがなく、感覚的な表現でしか伝えられないのが辛いところだ。
ただ、一巻の段階では或瀬と鳴歌、そして鳴歌からの一方通行の指向という限定された繋がりだったけれども道生、少なくともこの三人に限定されていた、上記の関係性は、この2巻で藤堂というキャラがその存在感と人間関係を詳らかに見せてくれたことに加えて、エピソードの主軸となる雪姫千絵の持つ秘密によって、加速度的に拡大した感がある。特に、藤堂と道流というラインは非常に大きい意味を為したのではないだろうか。
一旦否定され、やり直しになかったことにされたフラグは、どうやらあの最後のやりとりを見る限り修復されたみたいだし。この二人の関係は非常にロマンティックであり、自分としては或瀬と鳴歌のそれよりも好きかもしれない。もちろん、意味の分からない鉄板具合を見せている或瀬と鳴歌の謎の仲の良さも、そのワケのわからなさ込みで大好物なのは言うまでもないですよ?

ともあれ、なんだか得体の知れない方向でハマってしまった気がする。自分としてはこのまま気にせず先鋭化していって欲しいところだけど、評判は良くなさそうだなあ(苦笑

1巻感想

くるくるクロッキー4   

くるくるクロッキー (電撃文庫)

【くるくるクロッキー】 渡部狛/茨乃 電撃文庫

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去年の暮に出版された作品。もう二巻が先月に出てたので、急いで注文した。うん、つまりは二巻を慌てて買うくらいには、自分にとっては面白かったということ。やはり師走は色々と物入りで、海の物とも山の物ともつかぬ新人作品は手を出しにくかったのと、タイトル、あからさまにユルそうなタイトルのお陰で、中身もどうせユルユルなんだろうなあと思ってしまって、今まで手出ししてなかったんですよね。
ところが、読んでみるとこれがイメージとかなり違って、けっこうソリッドな内容だったんですよね。ユルい部分もあるにはあるんだけれど、ユルいというよりもこれは斜に構えたような惚けたテンポで媚びた感じは欠片もない。むしろ、主人公含めた登場人物へのアイロニカルな雰囲気を感じる。
けっこう評価が割れているみたいだけれど、自分としてはこの乱暴、というべきか、感性を優先させた蛇行しまくる文章はえらくダイレクトにシナプスをビシビシと刺激してくれるので、むしろ大好物である。面白いのは感性任せに書いているにも関わらず、登場人物に移入しすぎず、酔っ払ってもいないところなんですよね。倫理を踏み外したところにある人の業と、それに囚われ耽溺するキャラたちを突き詰めて書いているのに、その善悪正否については偏らずにフラットな視点で書かれている。この淡々とした立ち位置は非常に興味深い。さらに言うと、執筆者がこのスタンスだからこそ、主人公の在り方に凄味が出ているのかもしれない。
この主人公、或瀬の特異なところは、狂人としての部分とまともな人間としての部分が反発せずに並列しているところか。或瀬は、ちょっと冷めているのが目立つくらいで、考え方の概ねがまともなんだけれども、絵を描くことに関しては完全に頭の配線が一本千切れてる。道理を解しないわけじゃない。世の中の倫理を解し、まともな人間としての正気を有し、善意も罪悪感も人並みに持っている。でも、それらを遥かに上回る形で、彼にとっては絵を描くことは至上なわけだ。
ラストで彼のスタンスを否定する人物との論戦のシーンでは、或瀬の持つ業と彼がそれを全く自分の存在意義として飲み干している事が浮き彫りになり、大いに唆られた。画狂と自称する彼の業は、ある意味魔性と呼ぶべきものなのかも知れない。鳴歌はきっと、その魔性に魅入られてしまったのだろう。人を振り回すことが大好きな女王様気質の彼女をして、逆らえないほどの一途で脇目もふらない人の業。恐ろしいものほど、蠱惑的ということだ。もっとも、彼女はその魔性を御せる気満々、というか制御するつもりはないか、彼の業をもう自分のものとして美味しそうにペロリと平らげようとしているところが、このヒロインの面白さ。先述して女王様気質と言ったけれど、彼女の場合は他人を自分のペースになんやかんやのうちに巻き込む超々ワンマンマイペース気質というべきなのかもしれない。案外、ムリヤリとか強引に、とか乱暴な事はしてないもんね。自分の思い通りにならないからって癇癪起こすわけでもないし。ただ、結果的に誰もが彼女のペースに巻き込まれている、と。そのへんが顕著なのが、或瀬の妹の道流か。この妹と鳴歌の掛け合いは妙に面白かった。兄にちょっかい掛けてくる女に対しての妹の対応というのは、大概大いに敵視して攻撃か、手懐けられて変に慕っちゃうかというパターンが多いんだけれど、この二人の場合、突っかかる道流をその時の気分で適当にあしらうか猫かわいがりするか、という気分屋の鳴歌、という感じで、いい具合に振り回されて目を回してる道流が可愛いやら面白いやら。ブラコン妹のわりに変にエキセントリックでもなく、けっこう普通の娘というのもポイント高い。

なんにせよ、なんかこう、全体的にツボにハマってしまった。けっこう乱暴な仕立てであるのは間違いないので読む人を選ぶ向きはあるけれど、私は大いに気に入ってしまったのでした。

神さまのいない日曜日 25   

神さまのいない日曜日II (富士見ファンタジア文庫)

【神さまのいない日曜日 2】 入江君人/茨乃 富士見ファンタジア文庫

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本作は18回の川口士さん以来の第21回ファンタジア大賞・大賞受賞作。その続編に当たるのだけれど……。
一巻の段階で抱いた感想は、普通の良作、って感じだったんですよね。もっと詳細に述べるなら、新人賞応募作品であるがゆえに、一巻で完結する形での話のガッチリした完成度にこだわったがゆえに、それ以外のもろもろに目を瞑って切り捨てた作品、というイメージだったのです。
多かれ少なかれ、この手の大賞受賞作品にはその傾向があったのですが、この【神さまのいない日曜日】は特にその趣が強く、圧縮出来る部分はありったけギューギューに凝縮して、そこから漏れてしまったもの、例えば登場人物の掘り下げやテーマへの突き詰め方、世界観のディティールなどを泣く泣く置き去りにしてしまった感があったんですよね。
これは逆に言うと、構想の段階では作者が描くこの作品には、もっとスケールの大きなものが備わっていて、もっともっと細かく深く繊細なところまで書き込みたいという渇望みたいなものが、キチキチに枠に収めた一巻の中の色んなところに垣間見えたのでした。
それゆえに、前の巻の感想では<奔放にやらせたらかなりのスケール感を振り回せる>んじゃないの? と書いたりもしてるんですけど、実際には続刊が出ても劣化させずにどれだけこの雰囲気を持続させられるか、という現状維持が精々、という見込みしか抱いていなかったのが正しいところ。
ところがですよ、この二巻を読んでもう、私、仰天しました。
びっくりした、びっくりした、びっくりした!! もう一回言っておこう、ビックリした!!
これ、一巻とはまるで様相が違うじゃないか! 面白い、これはメチャクチャ面白い!!
いや、面白いという以上に「ガツン!!」と胸に衝撃が来るような、いい意味でこれでもかこれでもかと訴えかけ、問いかけてくる作品になっている。
読み始めてからすぐに、「あれ? これもしかして一巻の時より面白くないか?」と思い出したのもつかの間、グイグイと引き込まれ、呑み込まれ、夢中になって読みふけってしまい、一気に最後まで持っていかれてしまった。
これは参った、これがこの【神さまのいない日曜日】という作品の、引いてはこの作者が持っていた本当のポテンシャルだったのか。完全に見縊っていたと頭を垂れるしか無い。
まさか、窮屈な頚木を外されたこの【神さまのいない日曜日】という作品が、これほど爆発的に大化けするとは思いもしていませんでした。


子どもが生まれず、死者が死なない、神さまに見捨てられたと言う末世の世界。墓守と人間のハーフの少女アイは【人食い玩具ハンブニー・ハンバート】という男との出会いと別れを経ることで、この終りゆく世界を救うことを夢を抱き、父の友人であったユリーと墓守のスカーとともに旅に出る。その旅路の途中で出会ったキリコという少年との縁により、アイは死者たちが幸せに住まう街。百万の死者が住む死霊都市オルタスへと足を向けることになる。
ここで、前巻では漠然としか伝わってこなかった、死者が死なずに蘇る世界がどのように成り立っているか、という世界観が圧倒的なスケールと身近な体感を以て押し寄せてくる。
同時に、世界は、彼女が知っている生まれ育った村という小さな世界しか知らなかったアイでは、想像できないほど変わり果ててしまっていたことを思い知ることになる。
アイが救おうとしている世界は、すでにこの世のどこにも無く、生者が減り続け死者が増え続けるこの世界は、かつてのそれとは価値観も成り立ち方も多くが変容してしまい、今なお変容し続けている事を思い知らされる。知る度に、知る度に、知る度に、そのたびに彼女の夢が砕かれて行くのだ。
異常であることが、もはや異常でも何でもなくなってしまった世界。それが当たり前になってしまった世界。彼女が思い描いていた救いは、既に多くの人々にとって救いでも何でもなくなってしまっていて、彼女が備え持つ「不幸も幸福も、その人だけの者」という揺るがぬ信念は彼女が抱いた夢「死者には幸せに死んでもらいたい」という願いと真っ向からぶつかり、その夢を粉々に打ち砕いてしまったのだ。
だが、彼女は絶望しない。彼女の狂気に似た切望は、彼女に夢を諦めさせない。それでも、一度打ち砕かれてしまった夢は、改めて再構成しなければならない。どうすれば世界は救えるのか、ナニを持って世界は救われたと言えるのか。父と別れを告げ、生まれ故郷を旅立った時に胸に宿した夢のカタチでは世界を救えないと理解してしまった以上、アイはこれから「世界を救う」とは何なのかを見つけなければならなくなったわけだ。
この終りゆく世界をただ救うことすら途方もない事だったというのに、アイが自ら背負い込もうとしている夢の負債は、際限なくその重さを増しているように見える。その愛すべきキャラクターから、死者からも生者からもどんな立場の人間からも別け隔てなく愛され、慈しまれるアイというキャラクターは、だが恐ろしいほど孤独で過酷な生き方に身を投じているのではないだろうか。

そもそも、このアイ・アスティンのキャラクターは、主人公としてもヒロインとしても、とてつもなく特異で強靱だ。
彼女は一見、天真爛漫で奔放で明朗快活で無邪気で楽観的で、優しく暖かでナニも考えていない頭の中が春うららな、幸せな夢想の中にいる少女、そんな風に見える。
彼女は、まるでこの世界が楽園であるかのように楽しげに、振舞っている。彼女の瞳には、世界が素晴らしい色彩を持って映し出されているかのように、
錯覚してしまう。
だが、彼女の本質はその傍から見える印象とはまるで異なっている事を、読む人は思い知るだろう。作品の登場人物たちも、彼女の明るく無邪気な態度に彼女の在り方を誤解し、勝手に思い込み、その結果、自分たちがとんだ勘違いをしていたことを思い知らされるのだ。
アイ・アスティンは夢想家などではない。空恐ろしいほど徹底した現実主義者だ。彼女は人が抱くには壮大すぎる夢をいだいているが、幻想は決して抱かない。どれほど厳しく辛く痛々しい現実だろうと、目を逸らさず真っ直ぐに直視する。
彼女はその身の上の事情から、欺瞞をとことん嫌っている。世界を決して自分の都合の良い偽りの姿で見ようとはしない。
彼女は常に理性的に、理知的に、世界を在るが儘に観察し、その有り様とその理由を深く思惟して、時に冷酷なほど率直に現実を受け止める。頑固ではあるが頑迷ではなく、意固地に自分の考えや視点に縛られない。それは彼女が素直だからというよりも、自己欺瞞を自らに許さないほど徹底した現実主義者だからと言える、そしてゾッとするような聡明さを備えていると言うことであり、真っ向から現実と向き合う壮絶な覚悟を有している証左なのだ。
その上で、アイ・アスティンはこの末世に、悪夢のような世界に絶望も諦観もいだいていない。これほどの現実主義者でありながら、彼女は夢を諦めないのだ。
なんという頑固者だろう。なんという、理想家なのだろう。この可愛らしくも鋼鉄の意志を秘めた小さな少女は。

人類と世界が終末へと至った世界観を描いた作品の多くは、その終末を粛々と受け入れる形で終幕へと流れて行く。そんな類型が多い中で、この作品は珍しくも明確にこの終りゆく世界を救おうと動いている。
にも関わらず、ここにきて何をもって世界を救うと言えるのか、というそもの原点を問いかける展開に進もうと言う大胆かつ妥協のない挑戦には、正直鼓動が高鳴った。
作者は、この世界観を単なる舞台装置ではなく、明確な主題として捉え、マントルへと掘り下げて行こうという果敢で意欲的な意気込みをはっきりと見せてくれたのだ。これが、愉快にならずに何にときめくというのだろう。
キャラクター同士のコミカルな掛け合いも、テンポ良くリズム良く、非常に面白くなっているし、時折ハッとさせられるような印象的な言葉の選択や、不意に訪れる荘厳なまでの神話的な圧倒感など、一巻の時からは想像もつかなかった、途方もなく大きなものが、今目の前にブワァッと広がっていく感覚に圧倒されている。酔いそうだよ、ホント。

まだまだ萌芽なのかもしれないが、芽が出たのは疑いも無い事実。この作品が本物の大作となり、傑作と呼ばれるに相応しいものになるかは、今後次第なのだろうけれど、私の期待は膨らむばかり。ああ、ワクワクが止まらない。

1巻感想

神さまのいない日曜日3   

神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)

【神さまのいない日曜日】 入江君人/茨乃 富士見ファンタジア文庫

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なんで絶賛しつつみんな売れない売れないって付け加えるんだよ! と選考の選評を見て突っ込んでしまった(笑
いや、確かにそうなんだけど。
ウケ狙いとは程遠い、実に大賞らしいというか受賞作を取りに来た作品と言う完成度の高さを重視した作りは、この作品に限っては売れ筋ではないでしょうけど、前の大賞受賞者の人に比べれば(この人はこの人で別レーベルの作品ですけど独自の作風を確立して、物凄いファンなんですけど)、だいぶエンタメ方面に舵を切れる余裕が文体から感じられるので、むしろ以降のシリーズがどれだけ売れ線に手綱を緩めながらこの大賞受賞作の持つ<雰囲気>を堅持できるかのバランス調整に興味が湧くところです。

と、肝心の本編ですが、この手の卒なく余分の無い完成度の高いのが特徴の作品は感想の取っ掛かりがなくて難しいんだよなあ。ぶっちゃけこの人、読んだ感覚だと奔放にやらせたらかなりのスケール感を振り回せるポンテンシャルを感じたんだけれど、この作品に限っては色々と圧縮しすぎてポロポロと削り落ちている部分が目立ってしまうくらいにはあるんですよね。もっとテーマのみに焦点を当てて研ぎ澄ませる方式ならこれほど粗が目立つことも、肝心の主題に対する印象が薄まってしまうこともなかったんだろうけど、こりゃあもっと色々書きたかったんだろうなあ、というのが伝わってくる気がして、ついつい削り落としてしまった部分の削り跡に目が行ってしまいました。スカーにしてもユーリにしても、中途半端なんだよなあ。
それでもボロボロにならずに、ここまでガッチリ物語として固めてるんですから、感心させられる次第。

って、やっぱり中身に触れてないや。出来れば人が死ななくなった壊れた世界の街並み、人々の日常風景などといった世界観の根幹を担う部分をもっと読みたかったなあ。
 
12月3日

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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(GCN文庫)
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11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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11月18日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガブックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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11月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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