谷川流

涼宮ハルヒの直観 ★★★★   



【涼宮ハルヒの直観】 谷川 流/いとう のいぢ 角川スニーカー文庫

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おかえり、ハルヒ! 超待望の最新刊、ここに登場!

初詣で市内の寺と神社を全制覇するだとか、ありもしない北高の七不思議だとか、涼宮ハルヒの突然の思いつきは2年に進級しても健在だが、日々麻の苗木を飛び越える忍者の如き成長を見せる俺がただ振り回されるばかりだと思うなよ。
だがそんな俺の小手先なぞまるでお構い無しに、鶴屋さんから突如謎のメールが送られてきた。
ハイソな世界の旅の思い出話から、俺たちは一体何を読み解けばいいんだ?
天下無双の大人気シリーズ第12巻!


2011年6月に出た【涼宮ハルヒの驚愕(後)】以来の新作となる【涼宮ハルヒの直観】。
挿絵のいとうのいぢさんの画集に掲載された特典小説に、今はなき小説雑誌ザ・スニーカーの特別復活号での掲載作品、そして書き下ろしとなる【鶴屋さんの挑戦】の三編からなる一冊である。
タイトルの「直観」ってあんまり見ない言葉だなあ、と調べてみたら「推理をせずに、論理に寄らず、パッと感覚的に本質を捉えること」みたいな事が書いてありました。
推理しないんだって。
ちなみに【鶴屋さんの挑戦】は鶴屋さんが送ってきた謎を、SOS団が顔を突き合わせて謎解きする話である。ハルヒもちゃんと推理に参加している。
さても、それでタイトルを涼宮ハルヒの推理などにせずに直観と敢えて対極に近い単語を配置したのはどういう意図なんだろう。
すべての謎が解き終わったあとにキョンと古泉くんが総括的に今回の一件を話している際に、またぞろハルヒの願望による世界の改変について言及されているのだが、そこで仮説としてハルヒの無意識が推理の答えを、物語の展開を直感的に変容させる可能性について語られている。
物語の内部の人間にも関わらず、だ。
ここが着地点なんですよね。
冒頭から古泉くんとミス研のTさんによるミステリー小説談義。その中で語られるミステリーという題材に向けたメタ的な取り組み方、後期クイーン問題とか読者への挑戦状とかですね。あれはミステリーという題材にどう取り組んでいくかの入門みたいなものであると同時に、直後に送られてきた鶴屋さんからの謎解きの取っ掛かりでもあり手がかりでもありヒントにもなっている。伏線と言ってもいいか。
それは直接的な謎を解くための手掛かりにもなっていると同時に、謎解き問題の内容だけではなくそれが鶴屋さんによってなぜSOS団に送られてきたのか、というもうひとつ大きな括りとなる部分をも示唆していた。お話の複層的な構造を事前に最初のミステリー談義の中で提示していた、とも言えるのか、これ。それにとどまらず、さらに大きな枠である「涼宮ハルヒ」という存在の特性、世界を改変する能力が今回の一件にどのような作用を起こしていたかの可能性についての言及という形で、さらにこの話の複層性を印象づけることになっている。
……でも、「読者への挑戦」はなかったんですよね。古泉が談義の中で触れていた「読者への挑戦」に関する話の引用からすると、「それ以前の解決が総て偽りである」という可能性の排除。つまり改変はなかったことを意味しているとも……いや、なんかわけわからんくなってきた。
ともあれ、今回の話はストレートに謎解きの過程と解答編を楽しむと同時に、謎解きを行うに至った背景をさらに踏み込んで解いていく話を堪能するのが一番わかりやすい所なんだろう。やたらと長い冒頭のミステリー談義については、あれ捉え方に寄って幾らでも多義的に見ることが出来るとも思うので、存分に穿ってあれこれと先の展開と照らし合わせつつ、当てはめたり関連付けたり意味を解釈したりしてみると面白いんでないだろうか。
論理的に整理して推理していくのもいいし、漠然と全体を捉えて直観的に感じてみるのもいい。ミルフィーユみたいに幾つもの層を重ねて出来ているような話ではあるけれど、まとめて一個の話として捉えるのもありなわけだ。食べてみればどちらも一口。
元々谷川流先生は【涼宮ハルヒ】シリーズじゃない方のもう一つのシリーズ【学校へ行こう】ではSFミステリーともいうべき作品を手掛けているので、こういう日常ミステリー系で攻めてこられても違和感を感じないどころか、むしろやりたい事詰め込んできたなあ、と感じた次第。と思ったらあとがきでもそう書いてあるしw
ちなみに、私の直観はエピソード2の温泉のシーンで登場人物については「あれ? この人じゃね?」と感じ取っていた。いや、エピ2の中の台詞とこの【鶴屋さんの挑戦】のキャラ配置から感じ取ったものだけに、小説というジャンルのメタ的に推理した、ということになるのだろうか。直観とは違うのだろうか。
わからん!
ともあれ、この幾つもの層を重ねたような話の構造は、感覚的にそそられるものがあってそういう方面的にも面白かったなあ。そういえば最近、がっつりとしたミステリーはあんまり読んでなかったなあ、と振り返ってみたり。【探偵くんと鋭い山田さん】くらいじゃなかろうか。あれも日常ミステリーだけど。

ほぼ十年以上ぶりとなる久々の涼宮ハルヒとしては、違和感なく読めたけれど、以前と変わりなくと言えるのかというと前の読感とかそこまではっきり覚えてないからなあ。
古泉くんが、結構感触違っていたかもしれない。この人、結構お喋りであるのだけれど、自分の感情や考えている事はその口で語るばかりで、外側からはあんまり伝わってこない印象だったんですよね。必要以上は前に出ず、黒子に徹して胡散臭い愛想笑いに終始している。その意味では、【七不思議オーバータイム】の彼なんかはイメージそのままの古泉くんでした。
でも、【鶴屋さんの挑戦】だとキョン視点ではあるんだけれど、口以上に表情や態度が雄弁に見えたんですよね。思ってることが意外と顔に出てたような、態度から透けてみえたような。ミステリー談義もあれ、わりと本気で語っていたように見えましたし。ほんとに好きだろう、ミステリー。
長門の方も今回はかなり反応が顕著で、能弁だったように思う。
それに、いつも強引にみんなを引っ張り回すハルヒだけれど、今回は鶴屋さんからの挑戦を受けて、みんなで考え考察する、という構図だったせいか、えらい受け身だったんですよね。そのせいか、ハルヒが引っ張る後をみんながその背を見ながらついていく、という形ではなく、みんなで卓を囲んで顔を突き合わせて、意見を交わし合いながら、というものだったせいか、なんかどっしり落ち着いていたなー、と。
これも、ある種の年輪というか、年季が入った、という類なんですかね。ハルヒが落ち着いた、ってわけじゃないのですけれど。話そのものが落ち着いた、というような。まあ、題材が題材だったというのもあるわけですから、何とも言えないのですが。
何気に、今後についてもキョンが色々と考えているようなので、一応シリーズ続きというか締め方は考えていて取り組む気はある、という事なのかしら。
……佐々木さん、全然まったくこれっぽっちも出てこなかったよぅ。
みくるちゃんは、何年経ってもみくるちゃんでした。揺るぎない癒やし系だなあ、この人わ。








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【問題児たちが異世界から来るそうですよ? 白夜の送別会】 竜ノ湖太郎

白夜叉さま、本編ではいつの間にか居なくなっちゃってたんだけれど、ちゃんと送別会やってたんだ。良かった、ハブられてたわけじゃなかったのね。あの賑やかな性格で一人寂しく旅立ってたら可愛そうだったもんね! 本編では白夜叉さまの正体も、さらっと明らかにされて、さり気ない割にとんでもない正体に唖然とさせられたものの、実はここでやや詳しめに語られてるけれど、ほんととんでもないな白夜叉さま。それ以上に、本当に親しみやすく頼もしい味方だっただけに、去られるのは寂しい限りだけれど、こうやって上層に帰る彼女にあとは任せろ、と言うことが出来た話として、コメディとはまた別に良い話でした。まあ、直後にあんな展開になってしまうのですが。


【彼女たちのメシがマズい100の理由 秋季限定パン食い競争事件】 高野小鹿

最新刊でちらりと触れられていた、体育祭でのお話。パン食い競争でメシマズ、ってどんな地獄だよw パン食い競争というものはもう少し楽しいはずのものなのに、吊るされてるパン全部ハズレってただの公開処刑じゃないかw


【大奥のサクラ 地獄の片想い】 日日日

元の作品は未読。なんだけれど、なんにも知らなくてもこの短編は読み応えのあるハードなお話でした。ってか、ぬるさが全然ないんだけれど、大奥のサクラってこんなグロい話だったのか。地獄のような環境の中で培われた愛情の末路。潰えてもなお、先へと望みを残した悲しい恋歌。これ読むと、雹虎の子供が主人公な流れなんだが、どうなんだろう。


【七星降霊学園のアクマ 悪夢で逢いましょう】 田口仙年堂

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【Round―Trip】 谷川流

谷川流書き下ろし新作。生きてたのか、この人! いやあ、でもやっぱり面白いなあ。胡乱というか面倒くさいというか、恋人同士と誤解されている優等生の男女が雑談という名のロジカルにして明瞭な対話を巡らした結果、恋愛へと論理的帰結するという……誰から見てもお似合いの二人は、話し合った結果実際にお似合いだったという事実が発覚するという……難解に思えた数式が、スルスルと解まで紐解かれていくような快感を覚える掌編でした。上手いなあ、の一言。

涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版4   

涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫)

【涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版】 谷川流/いとうのいぢ 角川スニーカー文庫

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長門が寝込んでいるだと? 原因は宇宙人別バージョンの女らしいが、どうやらSOS団もどきのあの連中は俺に敵認定されたいらしい。やれやれ、勘違いされているようだが、俺もいい加減頭に来ているんだぜ?
ハルヒによるSOS団入団試験を突破する一年生がいたとは驚きだが、雑用係を押しつける相手ができたのは喜ばしいことこの上ないね。なのに、あの出会い以来、佐々木が現れないことが妙にひっかるのはなぜなんだ?
涼宮ハルヒシリーズ、四年ぶりの新刊である。一時期は本気でもう続きなど出ないものだと諦めていただけに、極初期からのファンとして嬉しい限りだ。ただ、ブランクも長かったですしね、既刊もクオリティの高低が激しいシリーズだっただけにあまり期待値はあげないようにしていたんですよ。アニメがまたやたらめったらハードルあげまくってくれましたしねえ。それに釣られて変に美化しすぎてしまうと、楽しめるものも楽しめないぞ、と戒めながらページを開いたのでありました。
案の定というか、冒頭らへんは手探りというか試行錯誤の経過が見え隠れしているようで、筆が滑らず一つ一つ手作業で積み上げているみたいな感じで、読むリズムに乗りきれなかったのですが、むしろキョンの勿体ぶった独り語りが物語に馴染むのに手助けしてくれたように、段々とスイスイと読めるようになってきて、あとはラストまで一気でした。いやあ、面白かった。なに期待値下げてくれてんだよ、と蹴飛ばされたみたいに面白かったです。とは言え、期待値アゲアゲにしてたら期待ほどではなかった、と言ってしまったかもしれないけれど。こういうのは、やっぱり受け入れ態勢はフラットでいるのが一番ですね。なかなか難しい話かもしれませんが、楽しみをむやみに損ねる勿体なさは回避できるように思います。
相変わらず、この作者は張り巡らせていた仕掛けが一気に収斂していくクライマックスの盛り上げ方、疾走感が半端ないですわ。学校シリーズと違って、このハルヒシリーズではなかなかそうした大仕掛を見せてくれなくて、四年間の空白を抜きにしてもやきもきとさせられていたものですが、消失以来の大仕掛けには十分楽しませていただきました。

しかし、久々に読むと意外に思うことも多かった。ハルヒシリーズって、というか谷川流という作家さん自体がキャラクターに対して物語を担う役者ではなく、作品を動かすための駒としての役割しか求めていない、というイメージがあったんですよね。過去の感想でも触れているのですが、キャラの魅力や萌えで勝負するのではなく、物語の構造そのもので挑んでくるタイプというか。ハルヒたちに対しても、類型を逸脱しないパターン化された造形なのだと。
それが、久々に読んでみると何やら個々のキャラクターの描き方に随分と感覚的なものが増えてる気がしたんですよね。特に顕著だったのが古泉とハルヒ。今回、えらくキョンがやる気になって燃えてましたけれど、その陰で古泉も何やららしくないくらい意気込みや熱気といったものを帯びてたんですよね。あれ、古泉ってこんなに情緒を表にはみ出させる事を許容するキャラだったっけ、と戸惑うくらいに。
それからハルヒである。消失前後からだいぶ丸くなり聞き分けのよくなってきていたハルヒだけれど、正直ここまで女性的な柔らかさを感じさせる反応を見せるキャラだっただろうか。彼女の微妙な反応や意味深な言動って、これまでもっと頭で考え明瞭な形で組み上げた理解した上で、ああこの反応はこう言うことなんだろうなー、と把握するみたいな形だったのが、この驚愕のハルヒの言動って何か感じたものを言語化する前にフッと染みこんで腑に落ちる、みたいなところが多々見受けられたんですよね。
このへんは、もしかしたらアニメの影響って大きいのかもしれない。あのアニメのお陰でハルヒたち登場人物は良きにつけ悪しきにつけ、記号的では居られなくなったもんなあ。実際、文章読んでてこれだけ明瞭アリアリと映像や音声が脳裏に浮かぶとは思わなかったですし。
そもそも、佐々木とキョンの関係の描き方からして、その過程から結末にいたるまで恐ろしく叙情的というところが目新しい。佐々木の役割ってもっとシステマティックになるとばかり思ってただけに、これだけキョンの青春を土台から揺らす相手になるのは驚きでしたよ。佐々木との再会と彼女からのアプローチは過ぎ去った時間と現在を同期させ、しかしその最後の会話における二人の共有できる時間と空間は過去だけのもので、現在においては重ならない選択が下されたという事実は、キョンに今という時間におけるモラトリアムを強烈に意識させたようですし。モラトリアムを意識する、というのは同時に未来を意識する、ということですしね。
キョンが自分とハルヒたちの未来を遊び半分の空想ではなく、いずれ必ず来る現実として意識する日が来るとはなあ。
さて、こうして再開なったハルヒシリーズですけれど、果たしてここからさらに続く事は出来るんだろうか。これで打ち止め、というのは回避して欲しいなあ。コンスタントに出せとは思わないけど。

谷川流作品感想
 

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