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野崎まど

バビロン 3.―終― ★★★★☆   

バビロン 3 ―終― (講談社タイガ)

【バビロン 3.―終―】 野崎まど 講談社タイガ

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日本の“新域”で発令された、自死の権利を認める「自殺法」。
その静かな熱波は世界中に伝播した。新法に追随する都市が次々に出現し、自殺者が急増。揺れる米国で、各国首脳が生と死について語り合うG7が開催される!人類の命運を握る会議に忍び寄る“最悪の女”曲世の影。彼女の前に正崎が立ちはだかるとき、世界の終わりを告げる銃声が響く。超才が描く予測不可能な未来。
「終」って、そういう意味だったのか! そんな意味だったのか!!!
単にこのシリーズが終わるという意味での「終」であるとしか想像していなかっただけに、この巻がシリーズ完結ではない、と聞いたときは「?」が浮かぶばかりだったのですが、そういうことだったのか。振り返ってみると、このバビロンのサブタイトルはどれも一文字でありながら、強烈なほどにその巻において語られるべきすべてを集約した一文字になってるんですよね。

「―終―」

まさに、シリーズの行方を決するかのような一文字である。

そもそも、いきなり冒頭から舞台が日本ではなくアメリカ合衆国へと飛んでしまって、いったい何が始まったのかと面食らわされたところからグイグイと引っ張り込まれてたんですよね。
まず最初のサプライズ。「うぇ!?」と本気で混乱したそれは、まさに意表を突かれたという他ない驚きでした。
本巻の主人公は、アメリカ合衆国大統領。うん、これまで様々な媒体で様々な「プレジデント」を見てきましたが、この大統領はちょっと今まで見たことがない人だった。
そして何より、「凄い」人だった。アメリカの大統領がこんな人だとは、というよりも人類における政治媒体の指導者として、こういう人が選ばれたというのは途方もないことなんじゃないだろうか。
最強でも最高でもない大統領で、側近からも政治家として完全に失格、とまで言われる人であり、自他共認める凡人なのだけれど、ともかくこの人が指導者だというのは本当に凄い。この人が指導者として機能しているという時点で、アメリカという国家機構の凄まじさに敬服してしまう。これだけの人を国家元首として活かせるって、このヒトが国家元首として力を発揮できる人材とシステムがある、というのはちょっと憧れてしまうくらいに凄い。
でもなにより、この大統領が凄い。どうやったって、アメリカの大統領って東海岸の上流階級とかマッチョイズムの権化とかその方向なんだけれど、この大統領は既存の大統領像を根底から覆しているにも関わらず、非常にアメリカ的とも言える人物なんですよね。インテリジェンス、或いは思慮深さか。アメリカという大国における象徴ともいうべき「力」ではなく、フロンティアスピリッツという前に進む意思や性急さでもなく、成功を掴むアメリカンドリームという上昇志向でもなく……。
新しい国であるが故のしがらみの無さ。大きな国であるが故の懐の広さ。寛容さ。思慮深さ。最善を選択しようとする貪欲さ。そう、人は考える葦である、といったのはパスカルでしたか。最大にして最新の人造国家であるアメリカの頂点である大統領が、まさに考える葦である、というのは実になんというか、まさにアメリカの一面を体現しているようじゃないですか。
そして「考える人」と呼ばれる大統領は、一連の「自殺」が法的に権利として認められる世界的な流れに対して、まったく違う側面からアプローチすることによって、恐らく人類の中でも最も、今起こりつつ在るパラダイムシフトの本質へと近づいたはずなのである。
人としても、素晴らしい人だった。ほぼ闇落ちしかけていた正崎を人へと戻したのは間違いなくこの人の言葉であり思慮であり心である。どう考えても、この人が政治家であるということが信じられないくらいなんだけれど、この人を大統領に選んだ、というだけでこの世界におけるアメリカ合衆国は信じがたい奇跡を成した傑出した国家として人類史に語り継がれるだろう。
彼は、考える人は、人類文明の可能性そのものだった。

なぜだ!? 何を見た!? 何を知った? なぜ、そこに至ったんだ? わからないわからないわからない。その思慮の果てがその答えなのか? 人の可能性は、人間が人間である根源が、敗北したということなのか?
わからない。理由は、原因は、意味はあるはずなのだ。ただの理不尽なんかじゃない、確かな因果があるはずなのだ。
一つ一つ、紐解かれていく。なにが善くてで、なにが悪いか。その一つの定義があがった。だからこそ、蛇よ。バビロンの大淫婦よ。智慧の実の味を、その甘美さとは何なのかを、次でこそ語ってくれ。
でなければ、これほどの「悪」を許せるものか。終わって、たまるものかよ……。

野崎まど作品感想

正解するカド 第三話 ワム   

うひゃあああ!! 初っ端からなんちゅう大爆弾を!!
やばいこれすげえ面白い。すげえすげえ。

まだ交渉という段階には至っておらず、条件提示じゃないけれどヤハクィザシュニナ側からの自分たちの正体や目的についての情報公開と、提案がなされただけなんだけれど、もうその段階で凄まじく面白い。
宇宙人じゃなくて、この宇宙の外から来たと述べるヤハクィザシュニナ。SFだと、高次元と解釈してしまいそうなのだけれど、ヤハクィザシュニナは異方という訳に拘ってたわけで、この辺真道の正確な認識のすり合わせは後にしよう、という提案にヤハクィザシュリナも引き下がってたけれど、単純に高次元と考えない方がいいのかもしれない。
でも、あのヤハクィザシュニナの腕の表現とか、4次元以上からの三次元への干渉という意味合いにおいては、すげえシンプルにした上でわかりやすく描いてたんじゃないだろうか。ちょっと「うおお」となってしまった。
この辺でもうすげえガチにSFしてて、うひょわっ、となってたのだけれど、そこにさらにヤハクィザシュニナから日本政府に与えられたというか預けられてしまったものが、もうとんでもないもので。
その前の段階でなぜカドがこの地に現れたのか、についての理由を語ってたのだけれど、余っているパンを他者に分け与えられる精神性を一番現状持ち得ている地域、なんて言っておいて、ワムなんてものを渡すなんて、これまさに人類に対する試し、だわなあ。日本としてはこれもう勘弁してくれ、というような代物だぞ。
それ一対で全地球の電力を賄える、無限に異方より電気を引き出すことの出来る物体・ワム。こんなもん渡されて、どうせいっちゅうねん!!
テーブルにバラバラと放り出されたワム、確かにかなり多いけれどせいぜい二百個いくかいかないか、くらいなんですよね。こんな数じゃ世界の隅々まで行き渡らせるように配布する、とか無理だし、どういう基準で配布していくのかとか、なんでそれ日本が手動してやるのよ、と他国絶対文句いうだろうし、そもそもワムにしたってそれ自体が電力を発するものではなく、既存の施設に繋いだり新たな電力供給施設を建設したりしなくてはならず、そりゃもう利権わんさか発生する上で、世界中からその利権に群がってくるだろうし、それ以前に既存のエネルギー利権の主権者たちがこれ黙ってないですよ。ワムの存在自体許容できない、と認識する組織・国家が山ほどいるだろうし。アメリカにしてもロシアにしても、エネルギー利権こそを国際関係上の強大な戦略兵器として政治利用しているわけだし、中東なんかまだそれこそ石油マネーで生存している状態な中に、いきなりエネルギーとしての石油や天然ガスが無意味と化したら、阿鼻叫喚ですがな。それに関わって生活立てている人たちもどうなることやら、ってところですし。
このどう考えても戦争一直線の大混乱を、果たして日本が捌けるのか。首相含めて、この作品の政府要人や官僚はみな優秀にみえるけれど、それでも凄まじい荷の重さですよこれ。
真道さん、事前にヤハクィザシュニナとの打ち合わせで彼が何をしようとしているのか、ちゃんと理解した上で折衝役を引き受けているみたいなんだけれど、わかっててあの堂々とした態度というのがもう凄まじいわ。紗羅花が、何このヒト意味わかんない、という趣旨の認識をしているのもむべなるかな。
でも、妙に息の合った真道とヤハクィザシュニナのやり取りに、思わずウケてしまって笑ってしまう紗羅花が、人間味あって可愛いんですよね。いや、この短期間で妙なコンビネーション発揮している真道とヤヤハクィザシュニナの二人もおかしいんですけれど。

真道は伝言ゲームという表現で例えてたけれど、ヤハクィザシュニナが懸念しているのは、情報は伝達する過程で劣化してしまい、十全の状態で意味伝達できない、と。
このへん、どこかで致命的な齟齬が出てきそうな問題ではあるんだよなあ。
なんにせよ、いきなり大混乱必死の爆弾投下である。この会談は、全世界に公開された隠しようのない代物。どう、次回なにがどうなるのかさっぱりわからなくて、ワクワクが止まらんですよ!!

正解するカド 第一話   


脚本・野まど

どーん!

野まどっすよ!!
最近著作を見ないと思ったら、こっちに携わってたのかー。
【[映]アムリタ】(メディアワークス文庫)でのデビュー以来、数々の大作にして怪作を手がけてきた小説家。
「野まど」としか言えない余人の追随を許さない唯一無二の物語を創り出す怪異のような物書き。
天才という存在を、人類の最果てという形で表現してきたこの作家が脚本を担ってるというんだから、そりゃあもう見るしか無いでしょう。

もうね、読むたんびに「茫然自失」どころか自分の価値観すらグラグラと揺らされて、ナニカがガラガラと崩れていくような感覚を味わわせられた身とすれば、このアニメ作品も絶対一筋縄ではいかないと確信してしまえるわけですよ。
現状だけでも、突如成田に出現したニキロ四方に及ぶ超巨大立方体、そしてその立方体に飲み込まれてしまった旅客機と250名を超える乗員乗客の安否を確かめるために、政府機関が全力でアプローチを仕掛けるというこの第一話だけで、スケールやら話のダイナミックさや、シンゴジラを想起させる若手官僚たちの躍動など、かぶり付きで視てしまう吸引力であり面白さなんですよね。そして、主人公であるエリート官僚にして超有能にして柔軟な発想の交渉官として活躍する真道という男と、まったく未知の存在であるヤハクィザシュニナとの交渉、いわゆる宇宙人とのファーストコンタクトもの、いや宇宙人どころか別次元の存在かもしれない知的生命、いや生命ですらあるのかも不明な存在と、いかにコミュニケーションを取り、ネゴシエーションしていくのか、というのがおそらくこの作品のテーマである、と捉えるのが普通だと思えるのですが……。

【[映]アムリタ】でも、【2】でも、そして【バビロン】においても前半の展開からは想像もつかない大崩壊、大壊乱、別次元にふっとんだようなあの凄まじい転換を目の当たりにした経験が、その当たり前を信じさせてくれないんですよね。
でも、何にせよ、何もかもが吹っ飛ぶにせよ吹っ飛ばないにせよ、もし当たり前に進んだとしても物語は血に足がついたものとしても尋常でない面白さであったことはこれまでも間違いないことだったので、さてアニメ脚本という今までと違う立ち位置ではありますけれど、野まどという異才をこの違う媒体で堪能できそうなのもまた間違いなさそう。
いやあ、すげえ作品がまた来よったわっ!! 

しかし、この第一話で一番「ひょっ!」となって怖かったの、あのラストシーンですよね。高さ2000メートルの断崖絶壁の端っこに立つとか、どんだけ怖いんだ。風とか凄いだろうに、落ちそうで落ちそうでひょっ!となりましたわ。

公式サイト見ると、ヒロインは内閣官房情報班の夏目女史でも、物理学者の品輪でもなくて、二話登場の徭 沙羅花の方なのか。この子、なんとなく【パーフェクトフレンド】の理桜みたいなタイプの匂いがする。まあ、実際どうかは出てきてから、なのですけれど。
品輪博士、まだ26歳っつー若さなんだけれど、この突拍子のなさからもこの子はこの子で天才枠なんだろうなあ。ただ、果たして「最果て」を突き抜けるタイプの天才なのかというと違う気配。でも、あのテンションは面白いなあ。
あと、知り合いがみんな真道の方ばかり心配していて、一緒に巻き込まれた部下の花森くんの方は一切誰も触れないのには笑ってしまった。いや、わかるんだけれど。しかし、夏目さん30歳なのかー。十分アリなのだけれど。



4150312729誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選 (ハヤカワ文庫 JA ノ 4-101)
野まど
早川書房 2017-04-06

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バビロン 2.―死― ★★★★★   

バビロン 2 ―死― (講談社タイガ)

【バビロン 2.―死―】 野崎まど/ざいん 講談社タイガ

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64人の同時飛び降り自殺――が、超都市圏構想“新域”の長・齋開化(いつき・かいか)による、自死の権利を認める「自殺法」宣言直後に発生!
暴走する齋の行方を追い、東京地検特捜部検事・正崎善(せいざき・ぜん)を筆頭に、法務省・検察庁・警視庁をまたいだ、機密捜査班が組織される。
人々に拡散し始める死への誘惑。鍵を握る“最悪の女”曲世愛(まがせ・あい)がもたらす、さらなる絶望。自殺は罪か、それとも赦しなのか――。


…………。

いやまて、三点リーダーはマズい。点線にしか見えない。点線怖い、点線怖い。
何から言葉にすればいいのかわからず、思わず……からはじめてしまったのだけれど、おかげであれの光景がぶり返してきてしまって、ようやく落ち着いてきた精神がまたぐちゃぐちゃに轢き潰される。
まだちょっと、動揺が収まっていない。第一巻のクライマックスにも度肝を抜かれたけれど、この二巻のラストには完全に心をすり潰された、と言って過言ではない。どうすんだよ、これ。正崎さん、再起不能だろこれ。

第一巻のラスト。あの、新域都庁からの64人の生中継同時飛び降り自殺事件。あまりといえばあまりにファナティックな光景。あの瞬間から、凄まじく読み応えの有る検察を主役としたサスペンス小説が野崎まどのあの独特の世界に飲まれてしまった、と感じたのだけれど、この二巻は再び検察、いや法治という観点からの自殺法という新たな提言と法解釈の問題に絡めながら、果たして齋開化は罪に問えるのかという問いかけに主軸を置きつつ、正崎をボスとした法務省・検察庁・警視庁を跨いだ機密捜査班が編成されて、一人ひとりが名うての叩き上げ捜査官であり、また組織の枠に捕われない「独立」した狼たち、という極めつけの精鋭たちによる捜査と追求が行われ……、というまた再び検察サスペンスとしてのドライブ感ある物語へとスライドしていったんですよね。
自殺法というセンセーショナルな提言。急増する自殺者数。自殺教唆の証拠どころか痕跡の欠片すら見つからない64人の自殺者たち。そもそも、自殺を取り締まるということが法的に可能なのか。
これまでの法律では解釈が叶わない、「死」という現象に対する新たな向き合い方の可能性に、法の違反を摘発する立場にある法律関係者たちは、顔を寄せ合って討論を繰り返し、自分たちの倫理観に根ざした正義に基づいて、捜査に血道をあげるのですが……。
当然のように、世論もこの自殺法については否定的を通り越して、拒絶的であり支持率もほんの微数。そんな絶対不利の状況でありながら、行方をくらましていた齋開化は新域の議員選挙の開催を宣言。事態は混迷を深めていくのであります。

正義とは何なのか。
自殺という自らの死を決する行為に対する是非。
これらに関する価値観というものは、普遍のものであり、それは揺るぎのないモノとしてこの物語のさなかでも語り続けられます。正義とは何か、それは正義を問い続けること。たとえ正義とは何かを悟った気がしてもなお、その正義を問い続けること。正崎検事は新たに補佐官となった瀬黒に自身の正義をそう語ります。それは人間にとってもっとも素朴な正義の在り方。
そして、公開討論会の中で自殺法反対派の議員たちが語った自殺という行為を法で制度化することに対する否定的な意見。これもまた、主観的客観的社会的経済的、あらゆる観点から説得力の有る正論が語られ、これらの価値観の揺るぎなさは証明されたかのようでした。

そう、揺れない大地が揺れるからこそ、地震が災害たるように。
齋開化の口から語られていく言葉は、揺るがないはずの価値観を、まるで地面が縄の切れかけた吊橋に変わってしまったかのように、激震させ、覆していくのである。
そうして、足元が覚束なくなりフワフワと心が定まらなくなったその時を狙いすましたかのように、とある作戦を結構しようとしていた正崎たち捜査班を、人としての善を貫こうとした彼らを悪夢が包み込むのである。
現代サスペンスで、こんな、こんな展開がありえるのか……?
この、この、この絶対悪を。正義だの善だのといった拠り所を、あっさりと塗りつぶして犯してすりつぶしていく本物の悪を、なんと言えばいいのか。
そう最悪だ、最悪だ、これを最悪と言わずしてなんというのか。
最も、最たる、悪なのだ。

凄惨なまでの絶望に、心がぐちゃぐちゃに轢き潰された。なんだこれは、なんなんだこれは。茫然自失して吐き気に目の前がグルグルとまわっている。
ヤバイ、これはもう、本当にヤバイ。これは文字で出来た劇薬だ。危険すぎる。危ないすぎる。そうして、往々にしてこの手の劇物は、尋常ならざる面白さなのだ。
畜生、こんなに胸糞悪いのに、めちゃくちゃ面白すぎてどうするんだよ、これ!?
次の巻、三巻はこれどうなるんだ? どうするんだ? もう、正崎さんが耐えられないんじゃないのか!?

1巻感想

バビロン 1.女 ★★★★☆  

バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)

【バビロン 1.女】 野崎まど/ ざいん 講談社タイガ

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東京地検特捜部検事・正崎善は、製薬会社と大学が関与した臨床研究不正事件を追っていた。その捜査の中で正崎は、麻酔科医・因幡信が記した一枚の書面を発見する。そこに残されていたのは、毛や皮膚混じりの異様な血痕と、紙を埋め尽くした無数の文字、アルファベットの「F」だった。正崎は事件の謎を追ううちに、大型選挙の裏に潜む陰謀と、それを操る人物の存在に気がつき!?
ぐわぁ、すげえ。この進めば進むほどズブリズブリと足の抜けない沼にハマっていく感覚。謎を追えば追うほどに自分の立っている地面がぐらついていき、常識が剥がれ落ちていき、正気が削れ落ちていき、どこに向かっているのかわからなくなっていく、闇の奥へ奥へと引きこまれていくかのようなゾッとするような、それでいて惹きつけられる物語の没入感。これは紛れも無く野崎まどワールドだ。
一枚一枚、真相へと近づいていくほどに濃くなる闇。ようやく明らかになったと思われた真実は、途方も無く巨大な権力の腕による逆らいようのない囲いであり、正崎では正義とも悪とも断じ得ないより良い未来を掴みとろうとする思想と信念の賜物だったわけだ。その真実ですら、正崎にとっては戦いようのない、戦うべきかも判断できない巨大な力の渦だったのだけれど……でも、それでも正崎の理解できる世界だったんですよね。手の届かない高く遠い世界の話でも、ちゃんと見て聞いて理解できる世界の話だった。
ところが、彼が追っていた事件は、辿り着いたと思われた真相は……当たりでもありハズレでもあったのだ。掴んだと思った真実のその当事者・関係者たちも関知していない、本当の闇がうごめいていることを正崎は知ることになる。決して理解できない、得体のしれない人智を超えた、正気を逸した、人間の持つ共通理念を逸脱してしまった、超越してしまったものの存在に行き当たってしまう。
理解不能の、未知なるものの恐怖。
あの、ガラガラと正気が崩れていくようなスペクタクル。ただのどんでん返しというには、あまりにも不気味で異常な事件は、まだなにも始まっていなかった、これから始まるのだ、という事実を否応なく突きつけてくる、この
怒涛の盛り上がり。もう、すげえところで終わったわ、第一巻。
東京地検特捜部の腕利き検事を主役として、決して大きいとは言えない医療薬品にまつわる事件の捜査をするうちに、得体のしれない資料を発見し、その持ち主を訪ねていけば当人は自殺体で発見され、とどんどんと巨大な闇が横たわっているだろう都市の暗部に切り込んでいく、サスペンスものとしても非常に読み応えのある作品として読み進めて行ってたら、これだもんなあ。
ほんと、読者の目線の持って行き方というか、ストーリーテリングというべきか、物語の誘導と引っ張り方、盛り上げ方がやっぱり抜群に上手いんですよね。いつの間にか、心をがっしりと鷲掴みにされて、時間を忘れて夢中で読んでしまっている。気がつけば、足の届かない沼に引っ張りこまれてズブズブと沈んでいく。人間の本性というものを、丁寧に丁寧に解体されて、細かくバラされたパーツが綺麗に並べられていくのを、瞬きするのも禁止されたように凝視させられ、目に焼き付けさせられる。
この、ゾッとするような快感は、野崎作品ならでは、と言っていいのでしょう。そろそろ2巻が出るということで、積んでいた本作を手に取りましたが、いやもう、参った。
案の定だ。めちゃくちゃ面白え……。

野崎まど作品感想

know 4   

know (ハヤカワ文庫JA)

【know】 野崎まど ハヤカワ文庫JA

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超情報化対策として、人造の脳葉“電子葉”の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁で働く官僚の御野・連レルは、情報素子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。その“啓示”に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。それは、世界が変わる4日間の始まりだった―
世界が変わる4日間……凄い、「すべてを知る」というのはそういう事だったのか。道終・知ルが「すべてを知る」ことによって起こった世界の変容。その意味がわかった時の、体の芯から湧き上がってきた寒気のような、興奮のような、ともかくゾワゾワっと噴き出してくる震えに、しばし呆然。正直言って、ここに現出した世界というのは、もう今まで想像したことのない世界だった。いや、出来なかった、というべきなのか。そんな概念を、発想として抱く余地がなかった。だけれど、知ってしまった。知らないことを、知らない価値観を、知らない概念を、知ってしまった。
凄い、そして怖い。歓喜であり、恐怖である。価値観そのものが揺さぶられる。人間が想像し得る事は実現可能である、なんて風な言葉があるけれど、ならばこんな世界もあり得るのか?
エピローグで、不治の病を患った子供の母親がまくし立てている内容の意味を理解した時の、あの衝撃はしばらく忘れられないだろう。死後の世界、という概念があり、またイザナギ・イザナミの神話を知っていれば、生死をまたぐことは、イメージするにさほど難事ではない。だけれど、ここに現出した世界は、そういう黄泉がえりとかとは全然違うんですよね。そうか、死とはこんな形でも克服できるんだ。

道終・知ルは「すべてを知る」ことを欲するに躊躇いがない。彼女は運命でも宿命でも使命感でもなく、その原動力はひたすらに好奇心であり知識欲だ。よく、全知を得ること、過去から未来まですべてを知ってしまう事で絶望を抱く展開がある。だけれど、「知る」ということは、もっとこう、食べたり飲んだり、性欲を抱いたりすることと同じものなんですよね。根源的欲求であり、たとえこれから起こることを何から何まで知ってしまったとして……そこで欲は尽きるのか? 欲は枯れ果ててしまうのか? 知ってしまった事を退屈だと思うのか? 知った時点で、それ以上知ることに関心をなくしてしまう程度のことなのか? 常々、心の何処かで疑問に思っていたことである。人は、いくらでもひたすらに知り続けたいと願い続ける生命である。その一番純真な部分を、この道終・知ルは体現しているのではないだろうか。そのピュアさが、何故か可愛らしくてたまらない。知る事に終わりはない、知ることに果てはない。それはきっと、宇宙よりも広いもので、どこまでも歩いていけるものである。その終わりのない広さに絶望を抱くか、それとも心をときめかせ目を輝かせるか、その違いこそが境界なのだろう。ここに出てくる人物は、特異である知ルを含め、連レルも常イチも、知ることにひたすら貪欲であり、子供のように目を輝かせて、知る事に邁進している。その結果、生まれた世界の見たことのないあり様に感動し、興奮したのは、それが人間の無垢で無邪気な焦がれによって生まれた世界だったからなのだろう。
そう、きっとこれが人類の、ネバーランドだ。

野崎まど作品感想

なにかのご縁 ゆかりくん、白いうさぎと縁を見る3   

なにかのご縁―ゆかりくん、白いうさぎと縁を見る (メディアワークス文庫)

【なにかのご縁 ゆかりくん、白いうさぎと縁を見る】 野崎まど/戸部淑 メディアワークス文庫

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お人好しの青年・波多野ゆかりくんは、あるとき謎の白うさぎと出会いました。いきなり喋ったその「うさぎさん」は、なんとその自慢の長い耳で人の『縁』の紐を結んだり、ハサミのようにちょきんとやったり出来るのだそうです。さらにうさぎさんは、ゆかりくんにもその『縁』を見る力があると言います。そうして一人と一匹は、恋人や親友、家族などの『縁』をめぐるトラブルに巻き込まれ…?人と人との“こころのつながり”を描いた、ハートウォーミング・ストーリー。
この作者のことだから、さあどこで卓袱台返しが待ってるんだ? とおもいっきり構えてたら、最後まで揺るぎなくハートウォーミング・ストーリーでした……なんですと!?
さすがに、第一話を読んだ時点でこれは少なくとも最終章までは安心して見ていられそうだな、と察せられたので油断しきって読んでいたのですが……いや、本当に油断していたので途中で崖下に突き飛ばされていたら全く抵抗できずに滑落していたでしょうから、危ないところでした。いやいや、だから全然危なくないとても安全なハートウォーミングだったんですけどね。危ないハートウォーミングってなんだよ、という話ですが、一度安全だったからといって野崎まどを読むにあたって油断などもってのほかと、改めて心構えを律する次第でありました。って、普通に心温まっておけよ、という話なんですが。
まあね、第一話ってあれハートウォーミングなのかと言われると何気に微妙じゃありませんか? 一途に想いを寄せてる女の子と、相手の男性には残念ながら縁の紐が繋がっていなくって、紐が見えてしまうゆかりくんが苦悩するお話なのですが……あの縁が繋がったシーンって冷静になって見なおしてみると私としては相当に怖いんですけれど。少なくとも、自分の絵を無数に描いて飾ってる女の子の部屋を覗いてしまったら、と想像するとわりとドン引きなんですがw 絵だからあれですけれど、これが写真だったりすると立派にストーカー……w
ま、まあ本人同士がよろしければよろしいんじゃありません?
それに、第二話は掛け値なしにほろりと胸の熱くなる友情話でありました。ただの男の子同士、女の子同士じゃなくて、女一人に男三人の大学生が恋愛感情抜きで、というのがまた良かった。四人はサークル費もマトモにもらえない弱小自転車部のメンバーなのだけれど、その中の唯一の女性部員の娘が、家庭の事情から大学を辞めて実家に帰ることになり、その娘の為に彼女が温めていた夢の可愛い自転車を実際に作って贈ろうとする男三人とそれに関わることになったゆかりくんの奮闘記で、これがまた泣かせるんだ。四編あるお話の中で、自分はこれが一番好きでした。仲良し四人組は、離れ離れになってもずっと大切な友達同士。男女に友情は存在しないというけれど、こういう男女だからこその友情ってのもアリじゃないかなあ。

第三話はシングルマザーとその出来た一人息子の家族の縁のお話。
ここで出てくる少年は、ちょっと子供らしくなさすぎるくらい出来た男の子なんですけれど、礼儀正しくお母さん想いで誠実で、と確かにこんな出来た子が育つならゆとり教育って大変なシロモノですよね。完全にお母さんの教育の賜物なんでしょうけれど。でも、聡い子だからこそ頭がよく周り世間や自分の環境のことをよく理解できるからこそ、余計なことまで考えてしまうというのは、子供らしく無邪気で居られないという意味ではしんどいことなんだろうなあ。でも、そんな彼が抱いてしまう不安を、このお母さんは真っ向から吹き飛ばしてくれたので、読み終えたあとは笑顔笑顔。自分の都合や予定を諦めかなぐり捨ててまで、この男の子をひとりきりに放置せず、最後まで付き合ったゆかりくんもまた、素直にカッコ良かったです。あれはなかなか出来んですよ。そして、ウサギのうざいことうざいこと。このおっさん、煮物にして食ってしまえば良いんでないか?

第四話は、作品通してのヒロインではないかと目していたこの大学の屋台骨として機能している才媛・
西院さんが囚われてる死者との縁のお話。
てっきり、ゆかりくんが第一話でバッサリとぞんざいに大した理由もなくその場の空気でうさぎさんに切られてしまった彼と繋がる縁が、実は西院さんと繋がっていて、それが結ばれてめでたしめでたしハッピーエンド、という油断しきったお話になるのかと緩みきっていたら、これがどうしてかなりヘヴィーな過去が彼女にはあり、それが現在もなお彼女の時間を止める形で縛り付けていたのでした。
ここで立ちすくまないのは、ゆかりくんのイイトコロ。このゆかりくん、決して能動的じゃなくてすっとぼけたところはあるけれど、温厚篤実で大人しい感じの青年にも関わらず、此処ぞという時に立ち止まらずに気がつけば動いている、というあたり大した男だと思うのです。まあ何気に、それはあの人イイ人だね、で止まってしまうようなキャラクターな気もするし、動いているわりにフラグがあんまり立たないという自然体の持ち主という事でもあるのですが。
あれだけガツンと、動けなくなっている西院さんを励まし急き立て背中を押して、彼女を縛っていた因果を振り払う手伝いをして、彼女が気持も新たに未来へと歩いていけるだけの手助けをしたにも関わらず、殆どフラグらしいフラグが立たなかったのはある意味奇跡的とすらいえるくらい……人畜無害?
でも、もし続きものだったら、ここからもう一度西院さんとの縁を繋げて育んでいってほしいなあ、と思ったり思わなかったり。西院さんはあくまで憧れの先輩ポディションで、という欲求も無きにしもあらず。何にせよ、ヒロインが新しく出てきてくれないことにはねえ……何しろ、現状うさぎさんとの縁が鬱陶しいくらいに太すぎて、鬱陶しい鬱陶しい(苦笑
あれでうさぎさんが実は女の子でした、なら実にライトノベルらしいんですけれど、声や生活態度からしておっさんだしな、このウサギ。おっさんとの縁がしめ縄みたいに太くて祝われてるって、なんか嫌だ。相手が可愛らしいうさぎさんでも、おっさんは嫌だw

野崎まど作品感想

独創短編シリーズ 野まど劇場 3   

独創短編シリーズ 野まど劇場 (電撃文庫)

【独創短編シリーズ 野まど劇場】 野まど/森井しづき 電撃文庫

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「電撃文庫MAGAZINE」で好評連載中のユニークすぎる短編が文庫化。死体を探しに行く検死官、対局にペットを連れてくるプロ棋士、勇者を何とかしたい魔王、若頭、サンダーファルコン、ビームサーベル、ライオン、うげげげと喋る牛、電撃文庫の妖精等、変態的(?)な登場人物たちが繰り広げる抱腹絶倒の物語の数々。
こ、これはっ!! これはっ!? これは、何!?
メディアワークス文庫から出されている野崎まどの作品から知らない身の上からすると、これはまったくもって期待していたものとは似ても似つかぬ謎の物体! UMA? UMAなのか!? そう、期待していたのとは違うぅ、違うのだけれどっ!! く、悔しい、冒頭からいきなり爆笑してしまった。これはあかんやろ!! いや、あかんやろ!! まさかこの人がこんなん2年近くも連載してはったなんて知らんかったわ。完全にお遊び感覚で、そんじょそこらの人がやってまうとふざけとんのかっとシバかれてお仕舞いな仕様になっとります。実際、小説としては反則も反則、或いは固定観念をリフティングしてしまっているような代物で、これを許せるのが大人なら大人になんてならなくてもいいんじゃないかという……。
結構微妙に面白くもないっ、という話も散見していたりw
こればっかりはかなり読む人の好み趣向が左右するんじゃないだろうか。それくらい、右に左に上に下に斜めに四次元にと偏りまくったお話揃い。まあ騙されたと思って読んで騙された! と怒るのが一番イイんじゃないでしょうか。
私が面白かったのは、冒頭でぶん殴られた【Gunfight at the Deadman city】。
なんか物凄い無茶振りをイラストレーターの森井しづきさんに振っていた、というか話の内容よりもむしろ無茶振りするのが目的だったんじゃないかという【バスジャック】。
しょうもないんだけれど、本当にしょうもないんだけれど、地味に笑ってしまった【苛烈、ラーメン戦争】二編。
そして、もうなんかアレすぎるボツネタな【第二十回落雷小説大賞 選評】。
なんでこの中に混ざってるんだ? どこかに隠された意図が? と思わず本を逆さまにしてしまったしっとりとした情緒あふれる短編【魔法小料理屋女将 駒乃美すゞ】。
きっと科学技術が進んで極まれば、ヒッグス粒子もニュートリノもお茶を点てられる時代が来るに違いない【TP対称性の乱れ】。あれ? けっこう楽しんでるじゃないか、自分。
あと、著者近影は許さない! アニメ版は認められない!

野崎まど作品感想

2 5   

2 (メディアワークス文庫)

【2】 野崎まど メディアワークス文庫

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 数多一人は超有名劇団『パンドラ』の舞台に立つことを夢見てやまない青年。ついに入団試験を乗り越え、パンドラの一員となった彼だったが、その矢先に『パンドラ』は、ある人物によって解散を余儀なくされる。彼女は静かに言う。「映画を撮ります」と。その役者として抜擢された数多は、彼女とたったふたりで映画を創るための日々をスタートすることになるが――。
『全ての創作は、人の心を動かすためにある』
 彼女のその言葉が意味するところとは。そして彼女が撮ろうとする映画とは一体……? 全ての謎を秘めたままクラッパーボードの音が鳴る。
これまでの野崎まどの手がけた作品
・【[映]アムリタ】
・【舞面真面とお面の女】
・【死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死】
・【小説家の作り方】
・【パーフェクトフレンド】
この5作品のキャラクターがすべて総登場するオールスターキャスト作品。と言うと、集大成というかお祭り騒ぎみたいな賑やかながらもやや軽佻な作品を想像してしまうかもしれないが、この【2】はさにあらず。ってか、このタイトルからして凄いよね。単純に昨今の長いタイトルに逆行して、というのとはこのタイトルになった意味は全く異なると思う。なんかねー、そういう周り見て決めましたって感じじゃないんですよね。外の世界は眼中になし。ただ、ひたすらに野崎まどワールドにしか視野は置かれて、その上でこのタイトルが舞い降りてきたんじゃないでしょうか。
終わってみれば、このタイトルは「暴虐的」ですらある。最原最早が、大衆に見せるための映画を作らないように、このタイトルは野崎まどワールドの中の座標を示す数字に過ぎないと言える。読者に何かを訴えるための意味が篭められたようなものではないんじゃないだろうか。ただし、読者たる自分はそれを決して無視できないのだけれど。ただ佇立するだけの番号に、これほど圧倒されてしまうなんてねえ……いやはや。
さて、スーパー野崎まど大戦、などと言っても過言ではない本作。ところが、冒頭から始まる物語にはこれまで出てきたキャラクターなど一人も登場しない。あの最原最早が出る、という情報だけは聞き及んでいたのだけれど、強烈な個性とキャラクター性、情緒深く人間味ある登場人物たちが、これまた凄まじい「パンドラ」と呼ばれる超劇団の激烈なまでの在り様の中に飛び込み、演劇感の革命に遭遇するさまは果たしてこれからまたどれほど天上に駆け上るかのような想像を絶する物語が始まるのか、とワクワク感が滾って仕方ないような、それはそれは躍動感に満ち溢れたはじまりだったのです。
多分、このまま物語が進んでもそれはそれで大変面白い作品だったんじゃないかなあ。
だがしかし。だがしかし。

あの女が現れた。

自分、ここまで完膚なきまでに「物語」が潰乱するアリサマを見たのは初めてかもしれない。
そう、潰乱である。その時点まで綴られていた、紡ぎあげられていた、築きあげられていた、今まさに産声をあげ誕生しようと、飛躍しようと、羽ばたこうとしていた「物語」が、木っ端微塵に消し飛んだ。吹き飛んでしまった。消滅してしまった。溶けてグズグズになってしまった。自壊して崩壊して溶解して形をなくし過去をなくし未来も現在も意味も無意味も価値も概念も何もかもがなくなって、まさに跡形もなくなってしまいましたとさ。
最原最早の発した、ただの一言で。本当に、ただの一言で。
物語は潰乱した。

たった一人の役者を残して。

そこからは、もはや最早の蹂躙戦である。何がオールスターキャストだ。何もかもが最早の掌の上。探偵も仮面の女も不死の生徒も小説家も、そして愛すべき子供たちですら、すべてが最早の思うがままに蹂躙されていく。
圧倒的である。
圧倒的である。
それ以外に、何といえばいいのか。最原最早……あの【[映]アムリタ】で現れてしまった、人類の最果て。以降の作者の作品を読んで、様々な突拍子もないキャラクターが現れましたけれど、常々彼女だけは立っているステージが根本から違っているんじゃないか、と思わせる超常感があり続けたのですが、それが揺らいだのがあの【パーフェクトフレンド】での、彼女の立ち位置でした。
いったい、あの最原最早に何があったんだ!? と心底仰天させられた彼女の現状は……やはり俗に収まったわけじゃなかったんですな。そんなはずがあり得るはずがない、という確信は間違っていなかった。うん、揺らいだなんて嘘だ。むしろ、そんな母親なんて立ち位置に立っていた、まるで健全で善良な母親のような価値観で、やってることややり口のえげつなさこそ相変わらずだったけれど、まるで普通の良い子を育てるような真似をしている彼女の在り様には、空恐ろしさしか感じなかった。何を、企んでるんだ? って。
まさか、その答えが次の作品で速攻で語られることになるとは思わなかったけれど。

そして、留まるところを知らない大どんでん返しの連続! 普通、この規模の大どんでん返しってのは作中に一回あれば充分なわけで……クライマックスに差し掛かっての謎の種明かしに種明かしに種明かしを重ねまくる驚愕の連続には、もうあいた口が塞がらなくて……よだれ垂れてきた。
だがちょっと待って欲しい、というフレーズを使いたくなるほど、待った待った待った、を掛けたい気分になったんだが、読み終わった後。
あの、これ全部終わってみるとさ……最早さんマジ最強、とか言う前にあれですか? 彼女の思想とか映画への執着とかその高みに至り過ぎて立ってる次元が違いすぎる、とか人類の到達点に至っちゃった、とかは大前提としてさておいて、この話って……なんというか、ぶっちゃけ……イチャラブ惚気話だったのか、もしかして!?
いやあ、自分、あの人かなりの勢いで使い捨てにされちゃったのかと思ってたんで、このラブラブっぷりは望外と言っていいくらいなんだけれど、終わってみると僕の最早さんはこんなに凄いんだぞー、という自慢話みたいな惚気話を聞かされてたんじゃないか、と傍と思い至ってしまった。なんか、変な所に到達してしまったぞ、自分w これもまた、人類の最果てを覗いてしまった、と言うことなんだろうか。
取り敢えず、最中ちゃんが道具扱いじゃなく、ちゃんと愛されていたのには安心した。この子の心の成長譚が、ただの作業過程だったら、悲惨以外の何物でもないですしね。
紫先生は、あれどうするんだろう。彼女の書いたモノがちゃんと「読まれた」というのは、彼女の目的が叶ったとも言えるんだけれど……でも、最早さん以外読めないとなると、まだ改良の余地ありということか。

あと、野崎まどキャラ総出演してなお言い切れるのは……一番の萌えキャラはやっぱり「アンサー・アンサー」さんですよね、というところでしょうかw ついに本名まで普通にしようとしてしまってますが、頑張れ、超頑張れ!!

野崎まど作品感想

パーフェクトフレンド5   

パーフェクトフレンド (メディアワークス文庫 の 1-5)

【パーフェクトフレンド】 野崎まど メディアワークス文庫

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「友達」は果たして本当に必要か?
少女たちが贈る《友情》ミステリ!!


 周りのみんなより、ちょっとだけ頭がよい小学四年生の理桜。担任の千里子先生からも一目置かれている彼女は、ある日、不登校の少女「さなか」の家を訪ねるようにお願いをされる。能天気少女のややや(注:「ややや」で名前)や、引っ込み思案の柊子とともに理桜は彼女の家に向かうが、姿を現したさなかは、なんと早々に大学での勉学を身につけ、学校に行く価値を感じていない超・早熟天才少女であった。そんな彼女に理桜は、学校と、そこで作る友達がいかに大切であるかということを説くのだったが……果たしてその結末は!?
 野まどが放つ異色ミステリ、まさかの小学校編登場!


Marvelous!!

くはははははっ、久々にキタコレっ。これまでの作品も面白いのばかりだったんだけれど、ここまでクリティカルヒットされたのはデビュー作の【[映]アムリタ】以来。もう、滅茶苦茶好き、大好き。完全にやられた、最高。
友情をテーマにしたすこぶるハートフルで素敵極まりない物語にも関わらず、同時にこれ以上無い怪作なのである。世の人はもっと「野崎まど」という作家の名前を知っておいた方がいい。稀有な逸材ですよ、この人は。
周りのみんなより、ちょっとだけ頭がよい、という主人公の理桜。てっきり賢しらに早熟なだけの秀才ちゃんなのかと思ったらどうしてどうして。この子の頭の良さというのは勉強が出来る、という方向性じゃないんですよね。勿論、勉学も優秀でそちらの方も同世代の子に比べて図抜けて秀でているのですが、彼女が周りの子よりも頭が良くて大人っぽいのは精神が成熟しているから。もしかしたら、その辺のいい年をした大人よりも余程頭が良くて大人なのかもしれない。肝心なときに垣間見せる理桜の思慮深さや聡明さは、理桜という少女の器の大きさを実感させてくれる。幾らオトナっぽいとは言っても、普段は歳相応の子供なのにね。短気で自己顕示欲があって結構狷介なところもあって表裏のある狡猾でずる賢いところもあって。ほんと、こまっしゃくれた子なんですよ。それが嫌な子という評価にならないのは、この子は絶対に自分の悪意を許さない子だからなのでしょう。そして、感情豊かで喜怒哀楽を隠さないのに、本当に大事な場面では感情を制御しきり、優しい理性に身を任せるから。
理桜は天才なんかじゃありません。正しく、秀才です。でもこの秀才は、秀才だからこそ天才を包み込むほどの抱擁力を持ったのです。この世のすべてを解き明かす本物の天才ですら掌の中に収めてしまう大きさを、ただ一歩一歩地面を歩いて歩いて、その結果ちょっと頭が良くて人よりも物事がよく見える目を獲得するに至った秀才だからこそ、彼女は備えたのです。
秀才と天才だと、どうしても秀才は天才には絶対に叶わないものとして比べられ、評価され、上下に区別して扱われてしまうケースが多いけれど、そういう対立軸で語れるものでも同じ評価基準で語れるものでもないんですよね。
これまでデビュー作から幾多の「本物の天才」を見事に描ききってきた野崎まど作品だからこそ、理桜という「秀才」の存在感はインパクトすら感じたのだ。この巻にも、その世界の真理の狭間を読み解き顕現させてしまう狂気めいた「本物の天才」が登場するにも関わらず、だ。その小さな天才「さなか」を秀才である「理桜」が圧倒するのである。圧倒しただけじゃない、天才という同い年の幼い小学生だけじゃない、きっと大人も含めて殆どの人間が受け入れられないだろう異物を、何一つ損なわせる事無く丸ごと受け入れて見せたのである。
天才を天才のまま受容し、だが彼女が天才であるがゆえに致命的に欠損していた部分を完璧に補い、いや何も手を下すこと無く「さなか」に自分で自覚させたのだ。
この子、理桜は本当に凄い。物凄い子だ。というか、もう滅茶苦茶カッコイイのだ。惚れ惚れする、いっそ惚れそうだ。

と、ここまでで素直に終わっていたら、天才「さなか」を加えた四人の女の子のでこぼこコンビのコミカルな漫才まじりの笑い声に満ちた日常の繰り返しの末に、「さなか」が理桜とやややと柊子の本当の友だちになる。そんなハートフルで微笑ましい友情物語で幕引きだっただろうに……だがしかし、これを書いたのは野崎まどであることを忘れてはいけなかったのだ。

もう、愕然。愕然である。茫然自失である。そこからの展開はもう、ぶん投げるブン投げる。虚脱して魂を引きぬかれたまま、「彼女」と同じように言われるがまま動くしか無い。喪失の痛みに麻痺してしまった心のままに、「彼女」の縋るような行動を追うしか無い。
何が起こったのか、何が起こってしまったのか。あまりに突拍子もない、幻想的のような詐欺を働かれたような顛末に茫然自失が再びである。上塗りである。二度重ねである。
我に返った時にはすべてが終わっていて、解を紐とくにはあまりにも夢心地の出来事に混乱しながらも、絞りきられそうだった心は安堵にまみれて、とにかくよかった、そんな気分だったんですよね。
だからこそ、さなかの語る仮定を聞くのにもあんまり身が入らず、さなか自身も自分が導きだした仮定には納得が言っていない様子だし、結局世の中不思議なこともあるもんだ、でもまあさなかも、あの事件によって自分に足りなかったもの、心豊かにしてくれるものについて身を切るような痛みと共に思い知ったわけで、並べて丸く上手く収まったのだから、ハッピーエンドだし良かった良かった。
そんなホワホワした気分でエピローグを読んでたら、最後の最後に――。

ハンマーで頭ぶん殴られたような衝撃走る!!

う、うわあああああああああっっ!!?

は、犯人はおまえかーーーー!!! あんただったのかーーー!!

いや、いやいやいや、これは驚いた。驚いたなんてもんじゃない、仰天だよ。驚愕だよ。

そ、そうか、そうだったのか。だから、道理で、「さなか」の天然のそれとは違う、急所を狙って穿つような切れ味タップリのボケ倒しに既視感があったわけだ。
でも、え? ちょっと待って。
この人が犯人だったとすると、これ本当に「ハートフル」な物語だったの? 友達って素晴らしいという結論に至る素敵なお話だったの!? 
だって、この人がそんな真っ当な目的の為に動くの? というか、そういうまともな人間らしい発想が存在している人なの? いかん、もしかして何か裏の思惑があるんじゃないかと勘ぐってしまう。前にとんでもない目に合わされているだけに、恐怖感すらぞわぞわと湧いてきた。

とはいえ。
犯人にどんな思惑があろうとも、理桜とさなかの間に芽生えた友情には偽りなどないはず。これが、友達って素晴らしい、という素敵な素敵な友達の作り方のお話であったことには間違いない。
これは心温まる、声を立てて笑ってしまうような最高の友情物語だったのだ。染み入るまでに堪能させていただきました。
特にトム最高。あれはもう笑った笑った。さなか、もうボケのプロですよ。参った。

野崎まど作品感想

小説家の作り方4   

小説家の作り方 (メディアワークス文庫)

【小説家の作り方】 野崎まど メディアワークス文庫

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「小説の書き方を教えていただけませんでしょうか。私は、この世で一番面白い小説のアイデアを閃いてしまったのです――」。
 駆け出しの作家・物実のもとに初めて来たファンレター。それは小説執筆指南の依頼だった。半信半疑の彼が出向いた喫茶店で出会ったのは、世間知らずでどこかズレている女性・紫。先のファンレター以外全く文章を書いたことがないという彼女に、物実は「小説の書き方」を指導していくが――。
 野まど待望の新作ミステリーノベル……改め、意表を突く切り口で描かれる『ノベル・ミステリー』登場。
うわっはあっ! そう来たか! そう来たか!!
野崎さんの作品ということで絶対に一筋縄ではいかないとは警戒していたけれど、まさかそっちの方向へとすっ飛んでいくなんて、どう予想すればいいというんだか。
そして、誰か【アンサー・アンサー】の人に今まで教えてあげる人いなかったんですか。なんであんなになるまで放っておいたんですか。あの様子だと一言変だよ、と言ってくれる人が周りに居たら、あんなにアレを拗らせてしまうこともなかったでしょうに。可哀想に、超絶偉そうに私は何でも知ってるよー、とばかりの登場を決めたのに、終わりの方借りてきた猫みたいにシナシナに萎びちゃってたじゃないですか。生まれてきてごめんなさい、みたいになっちゃってたじゃないですか。なんてダメッ娘な天才なんだw
あの様子だと、そのうち見た目には完全に普通になってしまいそうだ。取り敢えず、あと髪型についても指摘してやろうよ。

という訳で、それについては触れるとどうやってもネタバレになってしまうので手のつけようがないのですが、<この世で一番面白い小説>という「概念」とそれが及ぼす影響については、【[映]アムリタ】から始まった野崎まどという作家の備え持つ「究極の概念」の系譜だなあ、と納得。いや、それよりも前作の【死なない生徒殺人事件】で描かれた教育の概念と今作を並べてみると結構面白い対比になっているような気がする。ある意味、あちらとは正反対に突っ走っていることになるのか、これ? 知識と情報を並列化することで共通した統一人格を形成したあちらと違って、こっちはスタンドアローンが生み出される話なわけだし。しかし、うーん、考えてみるとスゴイ話だよなあ、これ。自分の中で芽生えた物語を実際に小説として出力したい、という物書きという人種が根源的に備え持つ、あの自分ではどうしようもない欲求であり業である衝動が、現実として無から有を生み出すことになったわけですからねえ。自我が衝動を生んだのではなく、衝動が自我を生んだと考えると、同じ系列の意識の芽生えを描いた話の中でも、これはやっぱり突拍子も無い、しかしこれぞ野崎作品、という佇まいだ。

ただ、そうした物語が真の姿を見せ始める前の、紫という少女と若い作家先生の奇妙な交流も杓子定規な性格で、でもどこか浮世離れした紫のキャラクターと相まって、どこか淡い青春小説っぽくて好きなんですよね。特に、紫と大学の学園祭に遊びにいく場面なんか、軽妙洒脱なノリとお祭りという名の異空間の雰囲気が相まって、森見登美彦的な独特のフワフワとした楽しい夢のような、あとに残る余韻があって、特に好きな場面だったなあ。

それにしても【アンサー・アンサー】の人は、返す返すも、残念だなあ(笑
頑張れ、超頑張れ!

野崎まど作品感想

死なない生徒殺人事件 識別組子とさまよえる不死4   

死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死 (メディアワークス文庫)

【死なない生徒殺人事件 識別組子とさまよえる不死】 野崎まど メディアワークス文庫

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死なないはずの、女が死んだ――。女子校を舞台に描かれる怪異ミステリ。
「この学校に、永遠の命を持った生徒がいるらしいんですよ」
 生物教師・伊藤が着任した女子校「私立藤凰学院」にはそんな噂があった。話半分に聞いていた伊藤だったが、後日学校にて、不意にある生徒から声をかけられる。自分がその「死なない生徒」だと言ってはばからない彼女は、どこか老練な言葉遣いと、学生ではありえない知識をもって伊藤を翻弄するが……二日後、彼女は何者かの手によって殺害されてしまう――。果たして「不死」の意味とは? そして犯人の目的は!? 第16回電撃小説大賞<メディアワークス文庫賞>受賞者・野?まどが放つ、独創的ミステリ!

うわぁっ、これは巧いわっ! やられたっ! ミステリーを読んでて何が一番痛快なのかというと、全く頭の隅にもなかった予想外の展開を、辻褄の合わない非論理的な超展開ではなく、考えてみれば、意識さえしてみれば完璧に納得させられるロジックを以て、ここぞというタイミングで突きつけあっれる事、なんですよね。
その点において、これはまさに絶妙でした。本当に僅かずつ、絶妙な力加減でこちらの盲点を突いてくる。特にラストにはやられたなあ。なんと、そういう事だったのか! とすべてわかったような気になってホッと息を付いた途端に、ポンと後ろから肩を叩かれるみたいに登場する最後の真実。
これには思わず、パンと柏手を打ってしまいましたよ。あれは完全に盲点だった。その発想は見事に死角に追いやられてしまっていた。意識は全部、特定の方向に釣り出されていて、まったくそっちには思考が回る余地を置いていなかった。
今まで丹念に語られてきた説明や解説、解釈をたった一撃で全部台無しにしてしまう、身も蓋もないぶっちゃけっぷり。なんという喜劇的顛末。
いやー、久々に、やられたーーっ! という痛快な気分を味わわせていただきました。

主人公である先生のキャラクターも、これは妙味なんですよね。軽妙洒脱でとても俗っぽい事ばかり考えてる人なんですが、斜に構えてるように振舞ったり、お気楽ふざけたような地の文で内心を語っているわりに、よくよくその人柄や言動を見ていると教師として非常に真面目て、子供にモノを教えるという仕事に対して真剣で、教え子の事を真摯に考えている、とても素晴らしい先生なんですよね。そして、好奇心旺盛で向学心に富み、建前や常識に縛られずに、自分が見聞きしたものに偏見を抱かず興味を抱ける。かなり面白い人でもある。
先生の一人称で物語が進むので、あんまりそんな風には見えないんだけど、識別組子が懐き、同僚の受村先生や有賀先生が親身になり、天名珠が彼に頼ったのも、彼だからこそ、と言える気がする。

ところで、ここで描かれている怪異、つまりここで語られる不死って、筆者のデビュー作である『[映]アムリタ』を読んだ人なら「おっ!?」と思うものではないだろうか。方法や、上書きと併存という、という違いこそあるものの、基本概念としては共通していると言っていいんじゃないだろうか、これ。情報伝達手段がアナログなものしかなかった時代に発祥したものと、より発達した手段が存在した現代の差とも言えるのか。現状、彼女らが到達している学識の高さからして、現代科学の情報伝達技術を媒介に変換出来ないはずはないから、今のままで良し、と考えているのかな。もし、その気になればもっと簡単に増殖できそうなんだし。

しかしこれ、映像化、というかビジュアル化は難しい、というより絶対無理だよなあ。件の証明図形って、それこそ当人たちでないと描けないわけだし。だからこその説得力だったのだが。あれは字面上はこの上なく簡単な表現で説明されているのに、有無を言わせぬ無二の威があったものなあ。

野崎まど作品感想

[映]アムリタ5   

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

【[映]アムリタ】 野崎まど メディアワークス文庫

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………(絶句)

お、い…おいおいおいおい、なんちゅうもんを書くんだこの新人さんは。
いったい何を考えてこんなものを電撃文庫なんかに投稿したんだ、と首をかしげかけたんだけれど、よく考えると確かにこれは電撃文庫くらいじゃないとハマらないというか入りきらないというか。ただ、電撃文庫の枠内にも収まらなかったからこそ、こうしてメディアワークス文庫なんて新装開店のところに放り込まれたんだろうけど。
ぶっちゃけ、メディアワークス文庫賞って、この作品のために作られたんじゃないのか、なんて妄想を滾らせてしまいことを止められないくらいには、とんでもない作品だった。
呆気にとられる作品だった。

最初読み始めたときは軽妙洒脱な主人公のノリは、森見登美彦っぽいし、これなら一般文芸でもいいんじゃないのか? こういう芸大の大学生が集まって妙なノリで映画作りって、冬目景とかやまむらはじめの漫画で読んでみたいよなあ。などと気楽に読んでいた頃が懐かしい。
ヒロインであるところの最上最早と主人公であるところの二見遭一との粋を凝らしたボケと切れ味たっぷりの即応裁断型ツッコミの応酬は、ノリノリの西尾維新を想起させる愉快さで、大いに笑わせていただいた。遭一くんのツッコミの切れ味は阿良々木くんのそれにも勝るとも劣らず、とだけ票しておこう。もちろん、それを引き出す最早嬢の計算し尽くされたボケに関しては芸術の領域であるからして、もはやツッコミの資質があるならば、それに反応するのは条件反射どころか簡単な物理法則の発露に近しいもの。それは、すなわち最早嬢の意思一つで自由自在にツッコまされている、と言っても過言では無く、ああ、遭一くん、最早嬢に好きなように弄ばれてるなあ、とゲラゲラ笑っていたわけだ。幾重にも囲われた枠の一番内側に囚われていることにも気づかずに。
読み終わる頃にはそんな連想をしていたこと自体に、蒼褪めていたのだけれど。


本物の、真性の、唯一にして無二である、<天才>という生き物。天にすべてを与えられたもの。
それが存在したとして、それが人間の中に紛れていたとして、社会の中に入り込んでいたとして、常人たる普通の人間とかかわることで、いったい何が起こるのか。

神様の手慰み。

彼女は神のごとく悪魔のごとく人を愛し、世界を愛し、故にこそ、思うが儘に弄ぶ。
 
12月1日

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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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11月18日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガブックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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11月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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11月6日

(角川書店単行本)
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(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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11月5日

エンターブレイン
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(エンターブレイン)
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(ドラゴンノベルス)
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(ドラゴンノベルス)
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(PASH!コミックス)
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(フロース コミック)
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(フロース コミック)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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