独創短編シリーズ 野まど劇場 (電撃文庫)

【独創短編シリーズ 野まど劇場】 野まど/森井しづき 電撃文庫

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「電撃文庫MAGAZINE」で好評連載中のユニークすぎる短編が文庫化。死体を探しに行く検死官、対局にペットを連れてくるプロ棋士、勇者を何とかしたい魔王、若頭、サンダーファルコン、ビームサーベル、ライオン、うげげげと喋る牛、電撃文庫の妖精等、変態的(?)な登場人物たちが繰り広げる抱腹絶倒の物語の数々。
こ、これはっ!! これはっ!? これは、何!?
メディアワークス文庫から出されている野崎まどの作品から知らない身の上からすると、これはまったくもって期待していたものとは似ても似つかぬ謎の物体! UMA? UMAなのか!? そう、期待していたのとは違うぅ、違うのだけれどっ!! く、悔しい、冒頭からいきなり爆笑してしまった。これはあかんやろ!! いや、あかんやろ!! まさかこの人がこんなん2年近くも連載してはったなんて知らんかったわ。完全にお遊び感覚で、そんじょそこらの人がやってまうとふざけとんのかっとシバかれてお仕舞いな仕様になっとります。実際、小説としては反則も反則、或いは固定観念をリフティングしてしまっているような代物で、これを許せるのが大人なら大人になんてならなくてもいいんじゃないかという……。
結構微妙に面白くもないっ、という話も散見していたりw
こればっかりはかなり読む人の好み趣向が左右するんじゃないだろうか。それくらい、右に左に上に下に斜めに四次元にと偏りまくったお話揃い。まあ騙されたと思って読んで騙された! と怒るのが一番イイんじゃないでしょうか。
私が面白かったのは、冒頭でぶん殴られた【Gunfight at the Deadman city】。
なんか物凄い無茶振りをイラストレーターの森井しづきさんに振っていた、というか話の内容よりもむしろ無茶振りするのが目的だったんじゃないかという【バスジャック】。
しょうもないんだけれど、本当にしょうもないんだけれど、地味に笑ってしまった【苛烈、ラーメン戦争】二編。
そして、もうなんかアレすぎるボツネタな【第二十回落雷小説大賞 選評】。
なんでこの中に混ざってるんだ? どこかに隠された意図が? と思わず本を逆さまにしてしまったしっとりとした情緒あふれる短編【魔法小料理屋女将 駒乃美すゞ】。
きっと科学技術が進んで極まれば、ヒッグス粒子もニュートリノもお茶を点てられる時代が来るに違いない【TP対称性の乱れ】。あれ? けっこう楽しんでるじゃないか、自分。
あと、著者近影は許さない! アニメ版は認められない!

野崎まど作品感想