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鈴木貴昭

ガールズ&パンツァー 劇場版(上) ★★★★  

ガールズ&パンツァー 劇場版(上)

【ガールズ&パンツァー 劇場版(上)】 鈴木貴昭 角川書店

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Kindle B☆W

戦車を使った武道―「戦車道」が大和撫子のたしなみとされている世界。学校の存続を懸けた第63回戦車道全高校生大会を優勝で終えた大洗女子学園。廃校を免れ、優勝を記念したエキシビジョンマッチの開催も決定し、大いに湧く大洗の町に、大会を戦い抜いた強豪たちが集結する―。だが、戦いを終えた彼女たちのもとに、文部科学省の担当官が現れる。そして彼から伝えられたのは、学園の廃校と、学園艦からの退艦命令だった―。累計観客動員数138万人突破の、超第人気アニメ映画『ガールズ&パンツァー劇場版』が、『ガールズ&パンツァー』シリーズ、考証・スーパーバイザーの鈴木貴昭による完全書きおろし小説で登場!巻末にはファン垂涎の、各種設定解説も大収録!

著者は『ガールズ&パンツァー』シリーズの各種考証、監修を手掛けた鈴木貴昭さん。ストライク・ウィッチーズの方でも軍事考証など深く関わっていて、作家としても【ストライク・ウィッチーズ アフリカの魔女】シリーズでしっかりと実績があるのであります。
劇場版の映像を思い浮かべながら読むのが一番良いのですけれど、下手なノベライズみたいにト書きでつらつらと出来事が羅列してあるだけの代物ではなく、しっかり読ませてくれる小説になっているのでそのへんは心配なく。
さらに、シリーズ製作の一番根幹に関わっているだけあって、裏話や映像だけではわからなかった設定や裏で起こっていたこと、登場人物の心情、さらに兵器群にまつわるあれこれなんかも描かれていて、劇場版視聴者にとってもガルパンシリーズのファンにとっても、なかなか必読の書でありました。
上巻は、戦車道全国高校生大会の大洗優勝から、大学選抜戦直前まで。
色々と中身読んでいて気になった情報を抜粋していきましょう。

どの学校でも、まともに隊列を組んで行進するに三ヶ月。砲弾を命中させるまでに三ヶ月かかる。それを大洗は素人を一ヶ月で戦えるまでに戦力化した。
大洗の優勝はこれまで文科省が主導して名門校を中心に行っていた選手育成プランを完全崩壊させてしまった。
一応文科省はこの現実を否定するのではなく、むしろ喜ぶべきこととして、新たな教育法によって生成された大洗の選手たちを、他の学校に移して硬直化した戦車道に新風を吹かし、これまで埋もれていた人材を掘り起こして対世界戦を見据え戦車道を活性化させること、を目指すことになる。
これは世界大会には間に合わないが、近い将来を見据えた新体制の構築を模索している、ということなんですね。ただ、その為には新教育法によって育った大洗の選手たちを各校に派遣する必要がある。その為には大洗はやっぱり解体が既定路線、いやむしろ早急に大洗の生徒を転校振り分けすることが提言されることになった。3月予定だった廃艦が繰り上げになったのはこのためらしく、単に予算の問題ではなかった。文科省のあの役人さんは個人的には約束を守りたかったものの、省の方針が明確化していたため官僚としてプラン通り動いていくことになる。

つまり、これを覆すには、大洗の解体以上に各校の戦車道のレベルをあげるプランの提示が必要になったわけですな。
これによって、大学選抜戦が与えるインパクトの意味がわかってくるんだけれど、恐らく始まった段階でそれについてそこまで考えていたのって、工作していたダージリンさまだけだったんでしょう。或いは、ダージリンさまの工作に乗っかった戦車道連盟や西住しほも想定していたのか。


エキシビジョンマッチは優勝校に与えられた権利。相手はベスト4に進出した学校で準優勝校以外。だからセントグロリアーナとプライダだった。
優勝チームは、準優勝校が一回戦で対戦した学校をパートナーに出来る。これが知波単学園。さらにリザーバーで、準優勝校が二回戦で対戦した学校を一両だけ助っ人で呼べる。これが継続高校。なんで一両だけ引っ張ってきて覗いてたのか、の理由がこれか。

卒業する生徒会たち、廃校騒ぎで後継者を決めていなかったのでこの時期に時期生徒会長の選抜をはじめていた。西住みほも候補だったものの、生徒会長には性格的に向いてないと早期に候補から外れる。
上巻では生徒会引き継ぎの話については、さらなる廃艦騒ぎによってこれだけで止まっちゃってるのだけれど、ここで触れられているということは後々色々と絡んでくる、というか角谷会長たち候補は考えてるってことなんだろうけれど、誰なんだろう。

アニメでは出なかった英国巡航戦車クロムウェル。聖グロリアーナでも実はダージリンさまの尽力で導入されていて、対黒森峰女学園戦で投入されていたらしい。そこで盛大に大破してしまったせいで復旧が遅れ、大洗エキシビジョンマッチや大学選抜戦ではローズヒップはクルセイダーでの参戦となる。
聖グロリアーナではマチルダ会、チャーチル会、クルセイダー会というOG会が非常に強い力を持っていて、現役生にも色々と口出ししてくるらしい。そのため、新戦力の導入は非常に難しく、そんな雁字搦めのなかでダージリンさまはジリジリと改革を進めていて、このクロムウェル巡航戦車導入もその一つだったらしい。
彼女の伝統墨守相手の苦闘と、大洗戦、大学選抜戦を経ての改革への飛躍は【リボンの武者】などのスピンオフなどでも描かれている。

映画はいきなりエキシビジョンマッチの途中からはじまったわけだけれど、ダージリンさまがゴルフ場のバンカーに押し込まれ、プラウダ高校やクルセイダー部隊と分断されてしまった、試合スタート時からの展開もちゃんと本作では描かれている。
西住みほの得意な戦法は敵を分散させての各個撃破なのだけれど、それは既にみんなには知れ渡っているわけで、プラウダも聖グロリアーナも大洗の夏祭りにかこつけて会場となる大洗の街はくまなく探索されている。道路幅の測距など、レーザー測距儀なども使ってやってた、というから本格的である。
試合の後半、聖グロリアーナやプラウダが町並みに精通していて簡単に分断されず、先回りなども多様していたのはそのお陰もあるのだろう。はじめての聖グロリアーナとの練習試合でグロリアーナ側が市街戦で翻弄された当時からすると、かなり状況は変わっている。が、それでも細かな上り下りや傾斜カーブなど、大洗側は十分に地元の利を利用しているので、やはりホームグラウンドというのはアドバンテージが大きいのだろう。

ここでは、知波単学園との共闘を強く意識した西住みほ隊長の大体な冒頭から全車一丸になってフラッグ車への突撃、という大胆すぎる戦法に打って出たのだ。これに対して、みほの奇襲戦法を警戒したグロプラ連合は部隊を3つに分けて慎重な防御態勢をとったわけだけれど、まさに真正面からの奇策に翻弄されることになる。
ここまではみほが完全にイニシアティブを握ったわけだけれど、ここから粘りに粘ったダージリンさまの冷静な指揮の練達さが際立つんですよね。
映画は、まさにダージリンさまが状況を膠着状態にまで持ち込んだところからはじまるのである。
勿論、速攻で救援に駆けつけようとしたプライダ勢をほぼ押さえ込んでみせた、遅滞戦術用小部隊を率いたレオポンさんチームもまた際立つんですよねえ。単にポルシェティーガーという最強戦力というだけではなく、みほはレオポンさんチームを小隊指揮官として相当信任している節が伺える。

聖グロリアーナの戦車内のティーセットは、乗員の持ち込みじゃなくて戦車備え付けでその戦車に因んだ由緒あるものが使われている。ので、テレビシリーズでダージリンが割ったとき、代わりを手に入れるのはかなり苦労したらしい。
聖グロの一年生は、戦車の扱い方と同時に紅茶の淹れ方とカップの扱い方を学ばされる。ダージリンさまのあれは、伝統であって別に個人の趣味ではなく、まだローズヒップのあの暴れ紅茶も決してダージリンさまの真似を無理にしているわけではないのだ、きっと。

映画で、知波単学園がマチルダ兇魴眷砲靴董大喜びしていたあのシーン。実は知波単学園細見車が撃破したというのは誤認であって、実際に撃破したのはカバさんチームの三号突撃砲だった、という事実が発覚!
なので、知波単学園側の初撃破の栄誉は、立体駐車場でルクリリを撃破した福田だったりする。

テレビシリーズから注目を集めていたバレー部アヒルさんチームの八九式中戦車砲手佐々木あけびの命中率の高さ。もし、もっと強力な戦車に乗り換えたら戦果も跳ね上がるだろうに、という話題は以前から出てましたけれど、あれは小さな八九式の主砲だからで、もっと大型の砲となるとハンドルによる制御などの理由でそれまでと同じ命中精度を出せるかは不明らしい。

みほが時々見せる怖いもの知らずの突進は西住流らしい。エキシビジョンマッチの随所でみほの西住流らしい戦車の扱い方が垣間見えて、聖グロやプラウダの選手たちを戦慄させている。本家から離れることになったみほであり、彼女なりの戦車道を構築している最中だけれどやはり根っこには西住流の真髄が根付いているのだ。

ローズヒップの飼い主の手から紐が離れてしまった元気一杯のワンコっぷりは、小説になると余計に際立つ。ダージリンサイド、殆どローズヒップがどこに行ったか把握してない。まさに解き放たれたワンコである。

ダージリンさま、角谷会長に密かに大洗廃校が伝えられる段階で、既に調査を開始していた。具体的には、あのみんなでお風呂、のシーンで既にアッサムに調査の指示を出している。相当早くに事態の全貌把握に動いていた模様。まあでないと、あれだけ裏で動けないか。

大洗の戦車を運んでいったサンダースのギャラクシー輸送機は、サンダース仕様の特別機らしい。なので、大洗の全車両を積んでも余裕余裕。

大学選抜戦で集まった他校の生徒たちが来ていた大洗高校の制服。大洗学園艦廃艦に合わせて投げ売りされていた制服を、ダージリンさまがアッサムに買い集めさせたもの。この段階で、ダージリンさまは角谷会長の目論見について予測していた上で、乱入を画策していた事になる。
ちなみに、まだこの段階では角谷会長は大洗廃艦撤回の念書を取り付けるまでに至っていない。

サンダースから送り返された戦車、洗車や整備までしっかりされていて、傷んでいた部品を新品に交換までしていてくれたらしい。好意が身に染みる。

蝶野亜美教官。戦車道全国高校生大会で単騎駆け十五両抜き。一二時間一騎打ちという伝説を残しているらしい。十五両抜きはともかく、十二時間一騎打ちって燃料と弾薬が持つんだろうか、という以前に相手誰だよw
陸自富士学校富士教導団戦車教導隊所属。実業団リーグ富士チーム所属ということで、プロリーグの強化委員であると当時に現役選手でもあるわけで、実業団リーグパねえ。
その社会人チームに勝った大学選抜、どれだけヤバイんだよ、という話である。ちなみに島田流が勝った相手は関西リーグの二位のチームらしい。社会人でも雑魚チームではないのだ。

大学選抜との試合が決まった時点で、実はサンダースやプラウダはじめとして各校から、戦車の提供など支援の話が舞い込んでいたらしい。しかし、ルール上他校からの支援はダメ、とのことで片っ端から断らざるを得なかった模様。
ダージリンさまは、制服を買い集めた時点で既にこのルールを把握した上で動いていたことになるわけだ。

こうしてみると、劇場版の裏主人公がダージリンさまだ、というのがよく分かる。

あと、小説で読んでもみほの帰郷と姉のまほとの再会は心がほんのりと温まる。幼いころの姉との思い出が途切れないまま、姉妹の仲も変わらない故郷の風景と同じように続いていることが実感できるエピソードだった。
ちなみに、あの二号戦車でまほみほ姉妹が笑ってる写真を撮ったの、しほお母さんなんですなあ。

巻末には作中に登場した兵器などの解説が、ガルパン作中での取扱事情や運用事情込みでかなり詳細にされていて、これも読み応えタップリである。
単行本だけに値段的にもなかなか手出ししにくいものはあるのですが、これは読んどいて損はなかったですなあ。

鈴木貴昭作品感想

ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 ケイズ・リポート 3 3   

ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 ケイズ・リポート3 (角川スニーカー文庫)

【ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 ケイズ・リポート 3】 鈴木貴昭/島田フミカネ:本文イラスト:飯沼俊規 角川スニーカー文庫

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マルタ島の激戦から数日。そこで浮き彫りになったネウロイの不可解な出現パターンから、サハラ砂漠を突破して襲来している可能性が浮上する。この危険性に、各国が連携し大規模な偵察作戦を展開。次々と届く情報の断片からケイが大型ネウロイの新たな進化に気づいた時、最悪の場所が襲撃されるのだが―「ふん、地味な戦いに飽きてきた所だ」。待望の外伝第3弾、アフリカの空が戦火に染まる時、マルセイユが最高の輝きを放つ!
アフリカ戦線にとどまらない、まさにワールドウィッチーズ。
当然のことなのだけれど、戦争というものは一つの戦場で完結しているものではなくて、どこかで起こった戦闘がそのまま全く別の遠く離れた戦場に波及し、戦局全体に影響を及ぼしていくという事が当たり前のように起こるわけです。ついつい、視点を限定して一個の戦場ばかりに注視して一喜一憂してしまうのは現実でもフィクションでも大いにありがちな事なのですが。
なぜ遠く、扶桑やリベリオンのウィッチたちが欧州に派遣されているのか。また、各国のウィッチたちが自分の国だけではなく、違う土地で飛び回っているのかを鑑みると自ずと答えとなっているのです。伊達や酔狂で送り込んでるわけじゃなく、回り回って自分のところに悪い波が来ないように切実かつ現実的な考えによるものなんですね。
しかして、まずはかの有名なマルタ島の戦いであります。アニメ版でもマルセイユがゲスト出演したことで有名なマルタ島の戦いですが、あれは二度目の戦い。すでに一度、マルタ島を舞台にした激戦が繰り広げられたことはアニメ作中でも語られていましたが、本作ではその第一次マルタ島防衛戦の激闘が描かれています。のちに第504統合戦闘航空団「ARDOR WITCHES」の隊長となるフェデリカ・N・ドッリオが事実上ウィッチを引退することになる重傷を負うことになるほどの激戦で、それこそ近隣から投入可能なウィッチや海空軍戦力を根こそぎ動員されるほどの規模の戦いとなっています。それだけ、連合軍が総力を投入するのも当然で、マルタ島の位置を地図で確認してもらうとわかるのですが、まさに地中海の要。ここを抑えられると、アフリカ戦線そのものが根こそぎ崩壊し、さらにはイタリアから南欧戦線まで共倒れしていきそうな、まさに要衝地なのです、マルタ島って。史実でも、この島の攻防が欧州戦線のターニングポイントの一つとなっているほどです。
まあそれほどの要衝を、アニメ版ではあっさり奪い返され、その奪還をほぼ501だけに任せちゃうという、結構無茶苦茶な事をしてるんですけどね。第一次防衛戦で投入された戦力規模や死命をかけて送り込んだ補給「ペデスタル作戦」を考えると、ちょっと考えられないんですけれどw
ちなみに、このケイズレポートの2巻では、そのペデスタル作戦がこれでもか、という濃さで描かれています。
ここで小憎い演出なのが、スムオス派遣軍のいらん子小隊からブリタニアのビューリングがゲスト参戦してる所なんですよね。史実では、ドッリオ隊長の元ネタの人をマルタ航空戦で撃墜したのが、まさにビューリングの元ネタの人なのです。それが、ストパンの世界ではドッリオ隊長の生命を救うのがビューリングになっているわけで、まさにストライクウィッチーズならではのネタだなあ、とニヤニヤしてしまったり。

さて、これもマルタ攻防戦を見てた時に疑問に思ったことなんですけれど、マルタ島ってネウロイの行動範囲外にあるんですよね。あのネウロイはどこから来たんだろう、と随分と首をひねった覚えがあるのですが、どうやら実際のウィッチーズの世界でもマルタ島に現れたネウロイについては相当に頭を悩ませたようで、空母を含めたかなり広範囲での索敵が行われることとなりました。第一候補地だったヒスパニア沖のバレアレス諸島には敵影見えず。様々な情報を検討した結果、おケイさんは一つの可能性に思い当たるのです。
ブレニム爆撃機はともかく、英国の長距離砂漠挺身隊 LRDGとかが出てくるとか、どんだけ美味しいんですかw しかし、これ見てると北アフリカ戦線はほんと、各国の協調がスムーズなんですよね。腰が一番重そうなブリタニアからして、フットワーク軽いもんなあ。将軍はともかく。これもおケイさん効果なのか。

ダカール、というとまず思い浮かぶのがダカール・ラリーのかつてのゴールであり、ガンダムなんかだと元地球連邦の首都なんかだったりするのだけれど、これも地図を見るとよくわかるのですが、アフリカ大陸の南回り航路における重要な中継地点なんですよね。スエズ運河が使えない現状からすると、太平洋をつなぐ航路の要衝の一つと言っていい。ちなみに、元はフランスの植民地だったので、ここの軍港には本国を失ったフランス海軍の艦艇が逃げ込んで、えらい悶着が史実でも発生しているのですが、このストパンの世界でも数ある自由ガリア政府の一つが居を構えた上に、戦艦リシュリューが鎮座していて、のちに第502統合戦闘航空団に参加するジョーゼット・ルマールが護衛に参加していて、ダカール軍港防空戦ではたった一人で孤軍奮闘することになります。
アフリカ戦線の最前線であるトブルクから遠く離れたダカール近郊に、新たなネウロイの巣が構築されようという危機。北アフリカ戦線も大事だけれど、さりとてアフリカ西岸を抑えられると、スエズとダカールというアフリカの両サイドをキメられることになるわけで、これまた致命的。このダカールでの戦いは、そこにいたウィッチがジョーゼットしかいなかった為に、数少ないガリアの海軍、航空戦力が死力を振り絞る戦いになっていて、戦闘機による体当たり攻撃で中型ネウロイを撃墜するような出来事まで起こってます。ジョーゼットも何度も被弾と弾切れを起こして、補給帰還と出撃を一日になんども繰り返すような状態で、途中でリベリオン海軍の救援がなかったらどうなっていたことか。
幸いにもアフリカを横断するような長距離移動は、ネウロイも大きな戦力を集中できなかったようで、ダカールは攻め切れないままリベリオンの救援により支えられ、巣が構築されそうだった拠点もブリアニア艦隊の攻撃に破壊される。これも、おケイさんの進言によっる大規模な索敵作戦が行われてなかったら、迎撃も後手に回ってアフリカ西岸を抑えられてたかもしれない事を鑑みると、結構危機一髪だった?
一方で北アフリカ戦線も、トブルクを迂回したイコニウムへの襲撃が行われて、トブルクを基地とするマルセイユたちアフリカ軍団も決断の時。
ここでの長距離移動用の大型地上戦ネウロイの登場や、ネウロイの巣と対峙する戦いが、のちのちのスフィンクス作戦へと繋がっていくことになるんだろうか。
まさにアフリカの北から西まで、あるいは地中海から大西洋を股にかけた対ネウロイ戦線の激戦の数々。今回は、色んな場所にスポットがあたることで、マルセイユの活躍も限定的なんですけれど、それってつまりマルセイユがどれほど凄くても彼女という存在は一人だけで、あっちにもこっちにも飛んでいけるわけではなく、同時に戦局を左右するような戦場はそれこそ各地に飛び散っていて、そこが崩れると友崩れでしわ寄せがあらゆるところに押し寄せてくる、という局面が幾つもあるわけです。それこそ、マルセイユだけでなく、あるいは501だけではない多くのウィッチが世界各地で死力を振り絞って戦い、人類戦線を支えている、というのがこの巻ではよく伝わってたんじゃないかしら。
近々、アニメでも新たな企画がスタートしているみたいですし、ちょうど【島田フミカネ THE WORLD WITCHES】という世界各国のウィッチが紹介された画集も発売され、とストライクウィッチーズも新たな局面を迎えているようで、さらなる世界の広がりがなんとも楽しみな昨今です。

しかし、ビューリングは格好いいのう。あとロンメル将軍、遊びに来すぎ! まあ、ほんとに忙しい時にはさすがに来なかったようですけれど。

1巻 2巻感想

ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 ケイズ・リポート 2 4   

ストライクウィッチーズ アフリカの魔女    ケイズ・リポート2 (角川スニーカー文庫)

【ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 ケイズ・リポート 2】 鈴木貴昭/島田フミカネ:本文イラスト:飯沼俊規 角川スニーカー文庫

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北アフリカ全域でネウロイの動きが活発化する事態が発生し、地中海交通の要衝であるマルタは危機的な状況に陥っていた!30日以内に補給が出来なければマルタは陥落、そうすると人類防衛の要であるトブルクも危なくなってしまうため、ケイの率いる統合戦闘飛行隊にも出動要請が。アフリカを救うためにマルセイユたちが、そして各国のウィッチたちが空を翔ける―!新ウィッチも多数登場、待望の外伝第2弾が登場。
ペデスタル作戦来たーーーー!!
アニメでは2期十話のマルセイユがゲスト登場する回でネウロイによって陥落していたマルタ島。アニメの中でも語っていたか、それ以前にも一度陥落しかねない危機があり、それを連合軍と近辺のウィッチ隊の激戦によって辛うじて防衛に成功する、という戦いがウィッチーズの世界でもあったのですが、それが史実でも行われたマルタ島救援作戦ペデスタル作戦なのです。
マルタ島は、地図を観てもらうとわかるでしょうけれど、地中海のどまんなかに存在し、ここを抑えているということは地中海の交通を確保しているということに繋がり、逆にここを抑えられるとスエズ運河を通したインド洋と大西洋の通路を遮断されると同時に、欧州と北アフリカの交通をも閉ざされることになり、必然的に北アフリカで戦っているアフリカ軍団をはじめとする連合軍は兵站を切られて戦闘力を維持できなくなってしまうのです。実際、この時期マルセイユたちが所属するアフリカ軍団は、燃料や糧食が欠乏しかなり無理なやりくりを強いられることになります。丁度、野上さんが漫画で描かれたハルファヤ峠の激戦はこのタイミングで、なぜあのタイミングでマルセイユのみが上空支援に現れたのかが、本作中で詳しく描かれてます。
まあ本作を読むと、なんでアニメでわざわざマルタ解放作戦にマルセイユが呼び寄せられたのか、という理由の一端も理解できるんじゃないでしょうか。
一方で、この時期は北アフリカではネウロイの大攻勢が行われており、上記したハルファヤ峠のみならず、北アフリカ全域で激戦が発生していて、マルセイユたちは現地を離れることができず、実は肝心のマルタ島救援作戦には参加していません。
その代わり、というわけではないのですが、今回の作戦にはメディア初登場なんじゃないかというウィッチがかなりの人数参戦お目見えします。
・エディタ・ノイマン少佐(カールスラント空軍第27戦闘航空団司令)
この人は、マルセイユの上官だった人で、作中でも直立不動で畏まるマルちゃんという稀少なシーンがお目に掛かれますw
他にも、
・ヴェンデリーン・シュレーア中尉(カールスラント空軍 北アフリカ・トブルク南方)
・フェデリカ・N・ドッリオ中尉(ロマーニャ空軍マルタ派遣部隊)
・エンリーカ・タラントラ准尉(ロマーニャ空軍マルタ派遣部隊)
・レジーナ・H・P・カーバー大尉(ブリタニア 空母ヴィクトリアス)
・リタ・A・ブラブナー大尉(ブリタニア 空母ヴィクトリアス)
・ナタリア・F・デューク中尉(ブリタニア マルタ駐留部隊)
・パトリシア・シェイド曹長(ブリタニア マルタ駐留部隊)
他に、名前は出ていないものの、空母インドミタブル所属の母艦ウィッチが二人居るはずで、人数だけ見ると相当数のウィッチが作戦に参加しているように見えるのですが……、マルタの駐留部隊は燃料欠乏の為にギリギリまで動けず、カールスラントの二人もユニットの航続距離の関係から迂回を強いられて、こちらも支援に相当遅れることになってしまいます。必然的に船団護衛は母艦ウィッチの四名に託さざるを得ず、いつネウロイが襲ってくるか分からない状況では、船団や艦隊の防空体制ってのは常に上空で待機している必要があり、ウィッチたちの消耗は加速度的に大きくなっていってしまうのです。アニメみたいにパッと戦場に飛んでいってやっつけて帰る、というわけにはいかず、ジブラルタル海峡を通過してからマルタ島につくまでの期間を常に警戒していないといけないわけですしね。
その上、本来このインドミタブル、ヴィクトリアスら空母と戦艦ネルソン、ロドネーなどを含む護衛艦隊はブリタニア本国艦隊所属の主力部隊であり、ここで損耗してしまうことは絶対に避けなければならない、ということで作戦上途中で引き返すよう定められているのです。
んで、起こるのが凄まじいまでの消耗戦。次々に襲ってくるネウロイの攻勢に、護衛艦艇や船団の船が沈められていきながら、這いずるようにマルタ島へ向かうという激戦中の激戦。
アニメじゃ沈められるためにただ浮いてるだけだった戦艦、巡洋艦、駆逐艦もここではまさに獅子奮迅の戦いを見せてくれると同時に、どれだけウィッチという存在が強力であると同時に、足りない少ない宝石のように貴重な存在だというのが身にしみてわからざるをえない展開なのです。そりゃ、世界各国からエースウィッチかき集めて囲うような統合航空戦闘団が、一部で激烈に非難されるのもわからなくもない。どこでもウィッチが足りてない状況で、それだけ戦力集中してしまったら、そりゃウィッチが居なかったり少なかったりして苦戦を強いられてるところは、なんであそこだけ、と思っちゃいますよ。このマルタ島補給作戦だって、あともう一人ウィッチが居れば、あともう少し航続距離のあるユニットがあれば、と歯ぎしりせざるをえない厳しい戦局でしたからね。
いやしかし、それにしても燃える。限りある戦力で、なおも目的地に到達するために最善を尽くし、死力を振り絞る将兵たち。ブリタニアの護衛艦隊から、扶桑とリベリオンの艦隊がエスコートを引き継ぐ展開は握った拳に力がはいるシーンでしたけれど、さらに扶桑の艦隊が第八艦隊で、司令長官が井川中将という、明らかに史実の三川中将がモデルなところがまたくるんですよね。
んで、ネウロイの猛攻に護衛艦隊はほぼ壊滅してしまい、まとまった戦力は扶桑艦隊のみとなった状況で、この船団直衛艦隊司令官のバーロー中将と井川中将の会話であります。
「こちら井川、我々が防いでいる間に残りの輸送船を連れて急いでくれ」
「いや、ネウロイを引きつけるのは我々の任務だ。レディたちのエスコートは東洋のサムライに任せた」
「侍の任務に貴婦人のエスコートは存在しない。それはブリタニア貴族の仕事だ」
「では、侍もそろそろエスコートのやり方を学ぶ時期が来たということだな。ようこそ、我々の主催する社交界へ」
 それを聞いて沈黙する井川中将。
 しばらくの沈黙の後、やっと通信が返ってきた。
「こちら井川、了解した。我々が貴婦人をエスコートする」
「よろしく頼む」
普通に聞いていても燃える展開なのですが、この第八艦隊が史実の第一次ソロモン海戦で見せた輸送船団というものへの対応と認識を鑑みると、一層の感慨深さを感じてしまうやり取りなんですよね。このあたりは、わざと第八艦隊持ってきたんだろうなあ。
あと、1つだけ気になったのが、この作戦に扶桑から参加した高速油槽船・東洋丸。いや、なんで「東洋丸」という名前だったんだろうな、と。別に史実では、特に取り上げられるようなエピソードのある「東洋丸」ってないんだよなあ……。【兵隊元帥欧州戦記】とか関係ないですよね?w

他にも、軽巡マンチェスターや駆逐艦神風、油槽船オハイオなどの個艦エピソードもタップリあり、またウィッチとの協同による対空戦闘、大型ネウロイへの戦艦の有用性など、見どころには事欠かず。
ウィッチがエピソードの主体となるストライクウィッチーズらしいお話を希望していた人にとっては微妙に不満が募るかもしれませんが、この世界観の実際の戦争の様子をがっつりと味わえる戦記モノとしては濃厚きわまる無く、自分としては大満足でした。こういうのもっと読みたいんですよー!
あとがき見る限り、鈴木さんも全然書き足りてないというか、もっと書きてえ、と唸っていらっしゃるご様子で……「最も長い撤退戦」とか、ぜひとも読みたいですよ? 読みたいですよ!?

しかし、あの主計中尉は本気で只者じゃなさそうだな、何者ですか、マジでマジで。

1巻感想

ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 ケイズ・リポート4   

ストライクウィッチーズ アフリカの魔女  ケイズ・リポート (角川スニーカー文庫)

【ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 ケイズ・リポート】 鈴木貴昭/島田フミカネ:本文イラスト:野上武志 角川スニーカー文庫

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灼熱の大地、アフリカ。正体不明の敵・ネウロイに対する人類の防衛拠点であり最前線のひとつ。扶桑皇国の従軍記者・加東圭子は、あるひとりのウィッチを取材するため、この地を訪れていた。そのウィッチこそ「アフリカの星」「黄の14」と呼ばれる稀代のスーパーエース、ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ。灼熱の大地を舞台に、今、新たな物語の幕が開く―。大人気アニメ『ストライクウィッチーズ』待望の外伝、堂々スタート。
どえええええ!? 連合軍第31統合戦闘飛行隊「アフリカ」の誕生って、こんなにグダグダだったの!? ある意味、スミオスの「いらん子中隊」よりもよっぽど酷いじゃないか。
いやあ、驚いた。漠然と見聞きしていた加東圭子が「アフリカ」の隊長になる経緯って、てっきり既にちゃんと成立した部隊の隊長をマルセイユに押し付けられたものだと思ってたんだが、これを読む限り扶桑陸軍のあんまりと言えばあんまりな不祥事のしわ寄せの結果、宙ぶらりんのままアフリカに送り込まれてきた、というよりも捨てられた? 放り出されてしまった整備中隊をおケイさんがゼロから引き受けて、一人で走りまわって各国の協力を取り付けて統合戦闘飛行隊に仕立てあげちゃったという、これ殆どおケイさんが一人で立ち上げたようなもんじゃない。そりゃ、マルセイユも丸投げするわ。そりゃ、事務仕事とか面倒くさいの押し付けたかったのもあるんだろうけど、あれよあれよとゼロから部隊作っちゃったような手際見せられて、しかも階級も上と来たらそりゃコイツに隊長やらせときゃ、事務から逃げられる以上に楽出来るぞ、と思うよなあ。
上にも顔が利く交渉上手と言えば、504のフェデリカ・N・ドッリオ少佐が思い浮かぶけど、どうしてどうして、おケイさんの口八丁手八丁は百戦錬磨じゃないですか。しかも、これ自分の扶桑海戦役でのスーパーエースとしての名望は一切使わず、主にマルセイユのプロマイドや写真を交渉材料に立ち回っていたというのだから面白い。彼女の写真、独自の市場価値が出始めて、戦国時代の茶器みたいな効果まで出始める始末、面白い面白い。
そんなおケイさんの目を通してみるマルセイユも、なかなか興味深い。付き合いが深まるに連れて、最初はどこか神秘的でどこか手を触れるのを躊躇ってしまうような深奥と儚さを併せ持ったような印象だったのが、歳相応のヤンチャでプライドが高くて気分屋で陽気で子供っぽくてお茶目なところのある、可愛い女の子としての一面が見えてくるのだ。おケイさんも、当初は多分に憧憬を含んでいたマルセイユのこと、段々とヤンチャな妹みたいに扱いだしてるんですよ。ああもう、可愛くて仕方ないんだろうなあ、というのがすごく伝わってくる。他のメンバーの稲垣真美も、素直で純朴な妹分でかわいがっているし、ライーサの事もあれで結構面白がってるのが透けて見える。現役時代には挫折を味わい、魔女として辛酸を舐めてきたおケイさんだけれど、この「アフリカ」の隊長職はすごく楽しそうで、充実しているように見えて、何ともよかったなあと思うばかりである。
姉御肌、ってわけじゃないんですけどね。わりと飄々としていて屈託がなく、国の境や階級の上下無くすッと懐に潜り込んでしまうようなところがあって、この時期のアフリカみたいにごちゃごちゃと国際色ゆたかで混沌としている戦場は、彼女には打って付けだったのかなあ。

また、彼女の口から回想として語られる他の魔女たちの話も、いいんですよね。プロフィールはみんなそれなりに知識として知っているものの、おケイさんの口から語られるそれは、ちゃんと生の魔女の人となりを感じさせてくれるのです。魔のクロエこと黒江綾香なんかも、台詞一つナイにも関わらず、ああこの人ってこういう人だったんだ、というのがエピソードから伝わってくる。
ストライクウィッチーズの世界観を、直に感じられたみたいで、ちょっとワクワクさせられました。

野上さんの漫画「アフリカの魔女」とも共通するところがあり、ってそりゃ当然か。あの主計中尉が何故送り込まれてきたのか、なんて裏事情もさらりと載ってたりして、両方比べて読むと新しい発見もあるかも。
そう言えば、ロンメル将軍、ストパン媒体ではここが初登場じゃないのかしら? モンティとパットンは漫画の方に出てましたけど、ロンメル将軍は姿見なかったもんなあ。

いやあ、想像以上に面白かったです。コレに乗じて「アフリカ」のみならず、他の統合戦闘団の話とかも小説で読んでみたいです、はい。
 
12月2日

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11月6日

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