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電撃文庫

川上稔 短編集 パワーワードの尊い話が、ハッピーエンドで五本入り 2 ★★★★☆  



【川上稔 短編集 パワーワードの尊い話が、ハッピーエンドで五本入り 2】  川上稔/さとやす(TENKY) 電撃文庫

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・『総統閣下の塔』
 「ヘロー ヘロー 少年達、少女達、今日も悪いおじさんが抵抗の曲を聴かせよう」僕達の町には総統閣下の像と呼ばれる通信塔がある。戦争が終わり塔が取り壊されると知った僕が、その塔を昇ろうと衝動的に挑んだ処から始まる、これは、誰も彼もに聴かせる物語。

・『天使の解釈違い』
 「ちょっと旅行行ってくる」結婚して二十数年の熟年天使夫婦。ある日、夫が二週間家を空けたと思ったら若返って帰ってきた? しかも手土産まで持って。妙に親切になった夫に違和感を感じた妻は、調査を開始する。

・『黄金周環』
 「──この日、この夜、時間がチョイと狂うんです」連休中も仕事に追われ疲れていた僕は、帰宅のためタクシーに乗り込んだ。『ちょっと、遠回りしてみませんか』「いいよ、どのくらい?」『そうですね、“どのくらい”、戻ってみたいですか』ゴールデンウィークの夜を走る取り返しの物語。

・書き下ろし短編『幸いの人』
 「君を神の下に導くよ」突然の姉の失踪とともに目の前に現れた彼。白の服を着た青年は私の問いかけに、見たことのない表情で頷いた。不幸な女と言われる私と、彼の距離感。「それを信じない私じゃないわ」

・『禁書区画で待ってる』
 「手紙を送る! ──そして、必ず会おう!」東の大図書館には幽霊の司書がいる。本当の話だ。戦後200年、政治的にも“物理的にも”東西真っ二つに分けられた国が併合するとき、廃止となる禁書区画で願う、彼女の区切りの物語。

 川上稔が贈る、最高に尊くて卒倒する珠玉のラブコメ短編集! 書き下ろし含む5本の他に、BONUS TRACK『ライブ“黒死無双”』を収録!


『禁書区画で待ってる』の200年後に届いた手紙と司書さんが会話しながら読み進めていくシーン、なんど読んでもボロボロと泣けてくる。
ずっとずっと一緒に居た。でも、ずっとずっと待っていた。そして今、約束は果たされる。必ず会おうと、交わした約束が。
「――ずっと一緒に居たけれど、これから私達、会えるのね」

これもうちょっと尊すぎて、あかんですよー!! もう無理、なんか自分でも訳わかんないくらい、胸に突き刺さってしまいました。パブロフの犬みたいに、条件反射で泣けてくる。
哀しい物語じゃないんです。これは、再会の物語。祝福を、祝福を。

はぁーーーー………。この2巻は1巻よりも寄り染み入る尊さだった気がします。同じラブストーリーでも、芽生え育まれていくものではなく、既にそこに在ったものをより深く深く掘り下げていくような。
最初の『総統閣下の塔』に至ってはラブストーリーではないですもんね。いや、幼馴染の再会の話ではあるんですけれど、それ以上に一人の頂点に立った男の、たった一人の抵抗運動であり、友情の話だったんですよね。これもまた、尊いッ!!

二話目の『天使の解釈違い』なんて、既に夫婦になってる熟年の男女の話であり、倦怠期に入った天使な奥さんが……これ、なんて言えばいいんでしょうね。なんか、何言っても無粋な気がしてきた。それも、解釈の違いですか? 愛を思い出す? ときめきを確信する? 運命を信じる? 幸せを自覚する? すべてがそうであるようで、まあそれもまた人それぞれの解釈だ。
ただ一つ間違いないのは……この夫婦、尊いぃぃ!!

『黄金周環』。ゴールデンウィークは連休長ければ長いほどイイ! ということですね、わかります。まさか、連休の長さで時空加速が増すとは知らなかった。
SFである。なんかこう、今まで読んだ時間旅行の設定の中で一番イカしてる時間の戻り方だと思う。タクシーの運ちゃん、すげえなあ。
十年を経てようやくはじまる二人の時間。よいゴールデンウィークを。とても素敵なハッピーエンド。

『幸いの人』
龍が飛ぶのを釜揚げうどんに例える人ははじめてみた。不幸な、と呼ばれた女の話。ヒーローだよね、この人。あらゆる他者の不幸をはねのけた人。じゃあ、幸いの人というのは? 幸福を運ぶ人。自分以外の人を幸せに出来る人。そんな二人の、距離感のお話。

そして最後の『禁書区画で待ってる』。胸を締め付けるような、でも温かくなる噛みしめるような尊さでした。
こうも見事に尊さを揃えられると、もう頭を垂れるしかありません。尊みが、体中に染み渡るぅぅ。


川上稔 短編集 パワーワードの尊い話が、ハッピーエンドで五本入り 1 ★★★★☆   



【川上稔 短編集 パワーワードの尊い話が、ハッピーエンドで五本入り 1】  川上稔/さとやす(TENKY) 電撃文庫

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WEB限定!! 『境界線上のホライゾン』の川上稔が贈る珠玉のラブコメ短編集・第3弾、今回は「尊い」編!
・『君が手を離さない』
 「憶えてる?」「憶えてない」洞窟の中で目を覚ました男女。記憶を消された二人に対し、外の世界は終わってるのかと思えばそうでもなく。では何故、という疑問に、君と僕の不慣れな生活がやがて小さな答えを導いていく。

・『化け物のはなし』
 「あなたは 誰?」あるところに化け物として怖れられている少年がいた。そんな彼の下に届いた一枚の手紙。「ごめんなさい」――少年はその言葉が嫌いだった。そこから始まる化け物と天使の話。雪の降らない海辺の町で起きた、これは誇りの物語。

・『最後に見るもの』
 「見えてますの?」二級傭兵として各地を転々としていた僕の前に現れた美人のゴースト。彼女は司祭である僕の姉に頼まれて、僕を連れ戻しに来たらしい。帰路に着いた二人が明かすお互いの秘密。極端な選択はいけないと思います……!

・『ひめたるもの』
 「貴様を下選と呼んで良いのは、私だけだ」ある王国に偉大で聡明な王がいた。しかし王の側にいる少女の秘書官は、王の言行に一度も首を縦に振ったことがなかったという。読後にタイトル確認必須の、不遜な王と、いい性格した秘書官の物語。

・書き下ろし短編『空と海を結ぶもの』
 「ねえ、傍に行っていいかしら」狭い海を挟んで対立している二つの国。それぞれの国に住む、接点の無い筈の二人が、ある夜に出会ってしまった。その逢瀬の果てにもたらされる結末とは?

 川上稔が贈る、最高にハッピーで尊い珠玉のラブコメ短編集! 書き下ろし含む5本の他に、BONUS TRACK『コガレ』を収録!

今回に関しては前回の短編集と違って、厳密にはラブコメではない作品が多めだと思う。もっと直球にラブストーリーしてる印象がある。
愛の、物語になってるんですね。
それが、尊い! 今回のテーマは「パワーワードの尊い話」なわけですけれど、本当にもう「尊い!」と、読み終えた後に拳握り込んで「尊いぃぃ!」と声を絞り出してしまう程には尊い!


個人的には最初の『君が手を離さない』もいきなりガツンと来るラブストーリーでめっさ好きなのですけれど、最後の書き下ろしの『空と海を結ぶもの』がちょっと最高すぎて、キュン死してしまいました。
『君が手を離さない』は、目を覚ました時記憶を喪っていた男女二人のお話。目覚めた時、自分に関する記憶の全てが消えてしまっていたのだけれど、二人は手を握り合っていました。強く握って握り返していたのでした。
何もかもを喪っていた二人ですけれど、まっさらな再起動の中でその「手を握り合っていた」という事実が何も残されていない彼らの、唯一確かなものになっていた事が、その後彼らのゆったりと流れていく穏やかな日々の中で定まっていくんですね。
徐々に、世界が置かれていた状況が明らかになっていき、おおよそこの二人の男女の立場がどういうものであったかも見えてくるのですけれど、当人達はそんな世界の情勢などは無くなった記憶とともに遠くに置き去りにして、迎え入れてくれた開拓村の中で日々を過ごし、仲を深めていくのでした。そんな二人の最初からあった絆こそ、離さなかった手。記憶を無くす前の彼らが、まっさらになって始める自分たちに託した最後の贈り物。そして今、その手は握られ離れない。
ハッピーエンドぉぉぉ!! と、思わず悶絶してしまうほどの、完膚無きまでの美しいハッピーエンド。そうだよ、これこそが額縁に入れて飾りたいハッピーエンドなんだよぉぉ!!

『空と海を結ぶもの』がまた最高で、最高なんですよね。
戦争のさなか、敵同士でありながら巡り合ってしまった男女、と聞くと戦争モノの一つの定番なのですけれど、本作の珠玉なところが、その男女が人間ではなく片や無人機のAI。片や無人戦略潜水艦のAIという、両者ともが自我を持ってしまった機械知性というところなんですよ。
機械と人間のラブストーリーというのはこれまた定番としてあるものですけれど、AIとAIのラブストーリーですよ。もうなんじゃこりゃーー! てなもんじゃないですか。
戦闘不能に陥って着水した無人機を見つけた潜水艦が思わず助けて、それをきっかけにはじまるラブストーリー。そんな一機と一隻が戦闘の合間に指揮所誤魔化してランデブーして、逢瀬を重ねるわけですよ。潜水艦の方が海底ケーブルから配信データを拝借して、音楽や映画一緒に聞いたり見たり。マニュピレーターで機体をさわさわしてイチャイチャしたり、直接機体連結してデータ復旧して助けたときのことを人工呼吸とかキスとか言って照れ照れしたり。お互い示し合わせてデートの待ち合わせしたり、こっそりネットワーク介して無人機の基地に忍び込んで無人機の待機状態(寝顔)盗み見たり。
恋人かっ! というくらい、イチャイチャしてるですよ、この一機と一隻。
交戦する2つの国で、双方で唯一自我を持つAI。その二人、敢えて二人と書きますが、この二人の正体もまた無人機にまつわる真相が明らかになることで察せられるのですけれど、わかったらわかったでこれがまた運命的なんですよね。この二人のAIが戦場で出会ったことそのことがまた運命的でドラマティックで。尊い!!
戦争が終わろうというそのときに、終戦によって全てを喪ってしまう一部勢力が死なば諸共と起動してしまった破滅へのカウントダウン。それを止めるために行われる最後の戦闘。そして、彼女のもとに駆けつける彼。最後のダイブ、そして愛の言葉と抱擁のシーン。もう映画化していいんじゃないですか、これ。あのシーンの美しさが極まりすぎてて、尊すぎて、このシーン見直すたびに泣けてきてしまうのです。
そして、ちゃんとハッピーエンド! ハッピーエンドなんだよぉぉ!!

『最後に見るもの』とか、これ川上さんらしい作品と言えるのかもしれませんね。ゴースト、幽霊をあの世のものとかこの現世には居てはいけないものではなく、そこに在る存在として描く一方でそれが自分の死を通り抜けてきた者である所を忘れていない所なんぞ。
『化け物のはなし』など、実験作の色が濃かったですし、『ひめたるもの』も多くを物語らず行間から感じ取ってほしい、というような感じのする話で、なかなかじっくりと読み込み、自分のなかで消化する必要を感じる話の多い、と思える短編集でもありました。その意味では、また前作のラブコメ短編とはまた色合いが違ってきてるんですよね。色々と挑戦してくるなあ、川上先生は。大ベテランもイイ所なのに。

でも、総じて尊かった。尊みをこれでもかと味わえる短編集でした。これが、これが尊いってことだよぉ!!
いやもう本当に『空と海を結ぶもの』はAI萌えとしてもちょっと最高すぎて、好きすぎましたわ。



グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む ★★★★   



【グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む】  佐伯 庸介/花ヶ田 電撃文庫

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図書委員の仕事は……迷宮探索!? 異能の力を秘めた魔書を見つけ出せ!

国内有数の蔵書数を誇る宇伊豆学園の図書館には、広大かつ深遠な《地下迷宮》が存在した。
高等部に所属する図書委員の守砂尊は、ある日、立入禁止の《閉架書庫》に足を踏み入れ、この図書館に隠された真実を知る。――地下に収められた奇書や希覯本、異能の力を秘めた魔書を手に入れるため、図書委員たちが果てなき迷宮探索に挑み続けていることを――。
秘密を知った守砂は、他の図書委員とチームを組んで、妖魔が跋扈する迷宮で未知の蔵書を探す《地下レファレンス》をすることに。しかし、それは楽しくも波乱に満ちた日々の幕開けで……!?

なんかフブルさん居るんですけどー!? 佐伯先生の現在進行中のもう一つのシリーズ【昔勇者で今は骨】のかつての勇者パーティーメンバーで大魔導師にして宰相のザ・ロリババアなフブルさんが、しれっとこっちでも司書先生してるんですけど。しかも既婚で子持ちとな!? 情報量が、情報量が多い!
一瞬、昔勇者の方と一緒の世界観なのか、と疑ってしまったがこっちはあくまで現代ベースの世界観で魔法関連も基本的に一般的に存在も知られてないようなので、あくまでスターシステムと思われるのだけれど、フブル先生の場合平行世界に並列的に存在していても不思議ではないのでなあ。

ともあれ、世間一般には魔法だのダンジョンだのは周知されていない現代。そんな中で、宇伊豆学園の図書館地下には地下迷宮が存在し、学園の図書委員達は日々未発見の蔵書を探すためにパーティーを組んでこの書庫ダンジョンへと潜っているのだという。
なにしろ、学園の名前からして「宇伊豆学園」……「ういず学園」と読むそうで。ういず、ういず、ウイズ、ウィズ……Wiz……「Wiz学園」!!
ちなみに、本家ウィザードリィと違ってロストが存在しない親切設計。ロストの代わりに迷宮に潜るための魔書との適合が不可能になるという、迷宮探索から永久に弾かれることになるというリスクはあるものの、実際に死ぬことに比べたら随分と軽いリスクだ。
それに、迷宮に潜れる期間も十代で魔書との適合率が落ちてしまうとのことで、実質探索に費やせる時間は学園に通っている間だけ、なんですね。
そして、この迷宮が存在することで人類に危機が訪れる、なんて事も今の所確認されておらず、迷宮探索に対して切羽詰まった切迫的な事情は存在していないのである。
なので、図書委員達の大半はこの迷宮の図書探索を部活かバイト感覚で行っているのだ。死亡後数日、迷宮に死体を置き去りにされたままだと資格を失ってしまうが、この切迫感のなさ故に殆どが自己責任で処理されてしまっている。死体をわざわざ持ち帰ってくれるのは自分のパーティのみであり、他のパーティーとの協力関係なんぞ殆どありえない。ましてや、わざわざ他のパーティーの遭難を救援して、死亡者が居た場合は連れて帰る、なんて慈善事業は皆無に等しかったわけだ。
もし、このダンジョンに人類の存亡の危機が備わっていたり、それでなくても本当に死んでしまったり取り返しのつかない後遺症が残ってしまう、という危険が存在するならば救援に関するシステムは早晩構築されていただろう。それがなければ、迷宮探索事業そのものが立ち行かなくなる可能性が高いからだ。
しかし、この書庫迷宮ではあったら助かるけれど、決して必要不可欠なものではないからこそ、依頼があれば他のパーティーの遭難を助けて回る、なんて事をするやつも考えるやつもいなかったわけだ。
彼にとっては、必要でないのにやる、という事が重要だったようだ。

主人公、守砂尊は元探検家である。そして、事故によって激しい運動が不可能になり二度と秘境や高山などの難所に挑むことのできなくなった、夢の果てた残骸であった。
そんな身体機能を損なった彼でも、全盛期以上の動きが魔書との適合によって叶うようになり、彼はもう一度二度と見ることの出来ない景色を夢を見るだけの可能性を得ることができたのだ
探検家としての夢をもう一度。

なんて、単純な夢の再生話、とはいかなかったんですけどね。主に、尊という主人公の在り方において。
探検家生命を失った遭難事故は、守砂尊の生き方や価値観を根底からぶっ壊したと言えるのでしょう。彼は、その探検家人生においてまったく価値を感じていなかったものに、その生命を繋ぎ止められ助けられた。それはこれまでの彼の在り方を根っこから破壊してしまうものであり、たとえ身体能力が戻ったとしてももう二度と同じ在り方には戻れなかったんですよね。
まあ、それがわかってくるのはだいぶ後半なのだけれど。尊という人物の内面は最初から多く語られているのだけれど、さらにその奥からチラチラと垣間見える獰猛な唸り声ややけどしそうな吹き上がる火の粉は、彼が決して一筋縄ではいかない人間であることを示していたのですが、同時に容易にその本性を覗かせることがなかったんですよね。
彼の口からこぼれる言葉や態度は偽りではなく本物であると同時に、語られない側面を抱えているように見えたのです。真っ当なことを言っているけれどそれは本心からのものなんだろうけれど、でもそれは善意とか正義感に基づくものじゃない、という感覚が。
やがて、尊の昔の野心や欲望剥き出しの在り方と、遭難事故の際に何があったのかが語られたわけですが。
それで反省したとか心を入れ替えた、とかじゃないよなあ、こいつ。というのはもう明らかだったんですよね。単純に、ごくごくシンプルに、感化されたんじゃないかと。あれを、やってみたい、と思うようになったんじゃないかと。方向性が変わっただけで、あの自分の衝動や欲望に対して貪欲で傲慢で素直で一途なところは何も変わっていないんじゃないかと。
いや、事が終わったあとにエピローグでフブル先生たちが思いっきり直接的に尊の本質について言及して暴いてくれて、その辺明言してくれていたのですけどね。
ただ、全く彼が遭難前と何も変わっていないのか、というとそうではないと思うんですよね。
新しい嗜好の方向性が、人を助け送り届ける、という所にある以上はかつてのように傲岸不遜に振る舞うことは害悪にしかならず、あらゆる手段を使って目的を達して楽しみを得る、衝動を発散し、欲望を満たす、という彼の在り方からしてもわざわざ悪手を取らずに、社交性を保ち人当たりを良くして、というのはまあやって然るべき外見の繕いだと思うんですよね。交渉を優位に進めるにあたっても、コミュニケーション能力は高く維持しなくてはならないし、他人との関係は良好にしておくにこしたことはない。
ただ、利害関係だけで人間関係を捉えているのかというと、かつて人を人とも思わなかった尊とは、そこんところが決定的に変わっている、と思うんですよね。
周りとの交渉でも、うまいこと利益誘導してWin−Winの関係を作り出す巧みに人の間を泳いでいる彼だけど、ミカ姉とあの後輩二人、エスキュナと大国だけは尊に対して利益度外視なんですよ。自分に何のメリットもないのに、何の利益ももたらさないどころか彼らにとっては苦労ばかり背負うような提案を、彼らは何の存念もなく快く承知してくれるのである。尊の方も、彼らに対しては変に利益を与えようとせずに率直に頼ってるんですよね。その代わり、彼らに対しては自分の出来る限りをしようとしている。慕い慕われ、信頼しあう関係。自分さえ良ければそれで良かった過去とは、決定的に違う他人との関わり合い方。その中でも利益の介在しない関係であるミカ姉と後輩二人とのそれは特別に見えるんですよね。同じパーティーメンバーでも津久澄先輩についてはちょっと微妙に違う感じなんですけどね。この人は、実利じゃないんだけど尊に色々と求めててきっちりそれを回収してますし。趣味とか嗜好を満たす意味で。まあ信頼に関してはこの人に対してこそ尊は絶大なものを寄せているようにも見えますけど。
いずれにしても、今の彼にはちゃんと「仲間」がいるわけだ。生命を預け信頼を寄せて、命運を託せる人たちが。そういう人たちを大切に思えるようになった。確かに彼の本質は変わらなかったのかもしれないけれど、人生観は変わったんでしょうなあ。

ところで、今回の登場人物たち。主人公の守砂尊がスサノヲ、のようにキャラの名前って日本神話モチーフ、なのかな? 津久澄先輩はツクヨミ? 大国はオオクニヌシ、他にもアメノウズメとか迦具土とか。ミカ姉は武御雷か天津甕星かしら。そんな中でエスキュナだけわかんなかったんですよね。この娘外国人なんで、日本神話関係ないという場合も。なんて思いながら今、ウィキペディアをつらつらと見てたんですが、当てはまりそうなのスクナビコナかしら。大国主の相棒的なポディションだし、外国人説がある神様だし性格的にイタズラっ子みたいだし。ちょっとすっきりした。

しかし、本作ってメインヒロインって一応ミカ姉っぽいんですけど、表紙は尊のパーティー限定なのがちょっとめずらしい。あの集合写真的な表紙絵好きなんですけどねー。エスキュナーは後輩に徹しているので、あんまりヒロインという感じではないですし。だいたいミカ姉はもう愛が深すぎて、ライバルキャラなんぞ出たら即座に切り捨てそうなんですが。実際、ちょっと魅了の魔術かけただけのモンスターまであばずれ呼ばわりでズンバラリン、でしたしw
これ割って入るの、命がけだぞー。

佐伯庸介・作品感想

こわれたせかいの むこうがわ 〜少女たちのディストピア生存術〜 ★★★★☆   



【こわれたせかいの むこうがわ 〜少女たちのディストピア生存術〜】 陸道 烈夏/カーミン@よどみない 電撃文庫

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飛び出そう、この世界を。知恵、勇気そして大切なともだちの想いとともに。

《フウ》――最下層の孤独少女。
友は小鳥のアサと、ジャンク屋の片隅で見つけた、古いラジオのみ。
《カザクラ》――マイペースな腹ぺこガール。
出会った瞬間からフウを「お兄ちゃん」と慕い、陽気な笑顔でつきまとってくる。
そんな二人が出会ったここは、世界にただ一つ残るヒトの国。異形の怪物たちが支配する果てなき砂漠の真ん中で、ヒトビトは日々の貧苦を喜びとし、神の使いたる王のために生きねばならない――。
だが、彼女たちが知る世界は、全部大ウソだった。
たくさんの知恵と一握りの勇気を胸に。今、《世界一ヘヴィな脱出劇》が始まる。
第26回電撃小説大賞《銀賞》受賞作。
風の名を持つ、二人の少女の物語。

【このライトノベルがすごい2020】のランキング内に名前があがっていたのをきっかけに手にとった作品だったのですが、これがまたもうすげえすげえ作品でした。こういうきっかけがなかったらなかなか読む優先順位をあげることはなかったでしょうから、このラノをはじめとした多くの人がこれは面白いんだ!と好きな作品を持ち寄る企画は得難い出会いのチャンスなんだなあ、と実感しました。
チオウと呼ばれる砂漠の国。その最下層で暮らす少女フウは、自分の無知故に病気の母を死なせてしまう。苦しむ母のため死地をくぐり抜けて薬を貰って帰ってきた彼女を待っていたのは、母の死。でもそれは、病による死ではなく脱水症状によるものでした。母に必要だったのは薬ではなく水だったのです。でもフウはダッスイショウジョウなんて言葉を知らず、人が水と塩を必要とする生き物だということを知らず、生きるために最低限の知識すらも有していない無知で無学な子供でしかありませんでした。
それでも、母に教えられたチオウのシステムの元、ただ生きるための方法に従うことで日々を乗り越えていた彼女は、ある日なけなしの水と食料を配給してもらうための金券で、亡き母が口ずさんでいた歌と同じ歌詞のメロディが流れる「ラジオ」という機械を衝動的に買ってしまいます。
遠い過去に滅びた旧世紀のラジオ音源を、物好きな誰かが電波に乗せて放送しているのだというその古びたラジオは、ただ漠然と生きるために生きるフウの慰めとなります。
でも、それはただ心地よい音楽を流すだけのものではありませんでした。はるか遠い昔にもういなくなったラジオの中の人たちが、様々な学問の先生とともにかつて人類が持っていた多種多様な知識を丁寧な解説と説明とともに送る教育番組チャンネルだったのです。
基本的な科学知識も物理現象も社会のシステムについても、本当に何も知らなかったフウは、最初ラジオの中の先生たちが何を話しているかも理解できませんでした。意味不明な単語を積み重ねてわけのわからない理屈を組み上げていく彼らの話を、しかし彼女は飽きること無く聞き続けます。やがて、繰り返し繰り返し聞くことで一つ一つの言葉に、単語に理解が及んでいき、連鎖的に話の内容へと理解が及んでいきます。そうして、ゆっくりとゆっくりと、フウの中に知が蓄積していくのです。
彼女の中に、知識と智慧が息づいていくのです。
この世界の成り立ちを、この大地と空が織りなす世界の仕組みを、それは物理学であり地面を形作る土と砂と岩の意味を語る地学であり大気の組成であり、自分たち人間の体、人体の仕組みや医療という概念であり、心理学などに基づく人同士のコミュニケーションの方法であり、人が集まって形成される社会という存在の構造であり、人が集まることで生まれる経済という概念であり、経済活動の中で起こる様々な人間行動学であり、お金のやり取りの考え方からはじまる商売の仕組みであり、交渉や取引といった行動であり、機械や流通や金融、心の問題社会の問題肉体運動の問題。
そうした、人類という種が長い歴史の中で積み重ね学び取っていった知識を、智慧を、フウは身につけていくのです。独学で、いやラジオの中の先生たちの教えによって。彼女は貪るように知識を欲して、蓄えていったのです。
そうして、人が生きるには水と塩が必要という事すら知らなかった少女は、いつしか王都の商人たちとしたたかに駆け引きをして多大な金銭を左右するまでになってました。ラジオの電池を手に入れる僅かなお金を手に入れるのにも体中傷だらけになって必死に走り回っていた彼女が、社会を知り人間関係の機微を知り商取引の通念を身に着け、経済活動の真理を頭に叩き込み、王都の商売人たちの間でも知る人ぞ知る存在になっていったのです。

何も知らない何の知識も持たない何の智慧もない、無知で無学で無教養だった子供が。
何も知らないが故に、何も出来なかった娘が、学ぶことでここまで何でも出来るようになる。
これを「叡智」というんじゃないでしょうか。
これこそが「人類の叡智」の証明なんじゃないでしょうか。
かつての人類の繁栄が遠い過去となり、人という種族が大地の隅っこの砂漠の上にへばりつくように生きる世界になってしまったからこそ。人間社会の恩恵を何も受けず、獣同然に生きてきた娘が対象だったからこそ。
その喪われた遠い過去から届けられた人類がこれまで積み上げてきた「知」を受け取って、賢人となるフウのような娘の存在はまさに「人類の叡智」の体現者に思えたのです。叡智の結晶であり、人類の歴史の証明に見えたのです。

この感動たるや!!

人類の終末後、ポストアポカリプスのその果て。それ以上行く先のない閉塞の終着点としてのディストピア。それが、フウたちの生きる街「チオウ」の姿に見えました。
真実を覆い隠され、ウソの言葉に事実を塗り固められ、必要以上の知識を得ることを害悪として罪として定められ制限され断罪されるディストピア「チオウ」。ただ生きていくにはきっと充分で、しかし人類の可能性の行き止まり。そんな閉ざされた発展性の乏しい世界で、それでもここが自分の生きる場所だと生きてきたフウの前に、もう一人の少女が現れたのでした。
カザクラというその娘は、いつの間にかフウの生存圏の中に入り込みいつしか無くてはならない人生のパートナーとなっていきます。
どれほど賢くなろうとも、ただ自分のために生きる事は寂しいと感じるものでした。ラジオから送られる言葉によって日々賢くなっていく事は楽しみでありましたが、それでもその楽しさを共有する相手がいないことは孤独でした。
人は、誰かと共に有りたい。それもまた、人の可能性を広げるための原動力なのでしょう。
知恵と勇気と欲する心が合わされば、人は立ち止まり続けることは出来ません。チオウという街は、二人にとって真の意味で「生きる」には狭すぎる世界になっていきました。そして、チオウの側も自分たちの世界を逸脱する者の存在は、許容出来ない以上に絶対的に否定しなくてはいけない存在だったのです。
何より、カザクラには時間があまりありませんでした。今ある叡智では、彼女がこの先もフウと一緒にあり続けるためには足りなかったのです。
そこに留まっていては、可能性は途切れてしまう。あらゆる意味で、彼女たちは走り出さなければならなかったのです。
でも、果たしてこの閉ざされた世界から飛び出して、その先に望むべき世界はあるのか。喪われた過去から送り込まれてくる叡智は、既に喪われたものである以上いつかはすべてを吐き出し尽くして途切れてしまうのでしょう。果たして、外に飛び出しても可能性は続いているのか。
「人類の叡智」は終末のその先にもまた、羽ばたいていけるのか。

フウたちを全否定して追いかけてくるチオウの社会を維持するための部隊に追われ、カザクラ自身の時間も限界に近づき、絶望がひたひたと迫る中、それでも足掻き外の世界が存在する証拠を見つけ、外に飛び出すための資金を稼ぐために大企業との大勝負のプレゼンテーションに打って出るなかでさりげなくチオウの中にも発展の芽を植えながら、フウがある可能性に気づいた時。
そして、その可能性に希望を込めて、相棒の一人ならぬ一羽であるオオブンチョウのアサに託したものが、「あそこ」に届いたあのシーンは、もう言葉にならない湧き上がる感情に胸が一杯になっていました。
映画のクライマックスシーンのように、生き残るために必死に逃げながら戦うフウたちの姿を背景に、遠い遠いかの場所から、ラジオの中からフウたちに送り届けられるいくつもの声。希望の声援。閉塞を打破した先にある可能性の証明。そんな言葉を、声を背に、本当の今を生きるための疾走をするフウたち。

そしてたどり着くゴールと、そこを終点とするつもりなんて毛頭ないフウたちの輝く笑顔が胸に焼き付く。何も知らず孤独に死ぬはずだった少女が、智慧を得て知識を得て家族を得て友を得て、まだ見ぬ果てを自ら望んで歩いていく。
ここから先が、「壊れた世界の、向こう側」だ。

胸躍る、心をガンガン弾ませてくれる、凄い作品でした。とんでもねーとびっきりの物語でした。
やー、もう良かったよー!!


わたし以外とのラブコメは許さないんだからね ★★★  



【わたし以外とのラブコメは許さないんだからね】 羽場 楽人/イコモチ 電撃文庫

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戦いは恋人になってからが本番。 告白で幕開けるラブコメ戦線!

冷たい態度に負けずアプローチを続けて一年、晴れて想い人に振り向いてもらえた俺。クラスの誰をも寄せ付けようとしなかった孤高の美人、有坂ヨルカと彼氏彼女の関係になったのだ! しかもあれだけツンケンしていたくせに、本当は俺のことが大好きだったらしい!
「わたしの方が好きに決まっているのに、それが伝わってない気がする」
え、このカワイイ存在ヤバくない? 強気なくせに恋愛防御力0な彼女にイチャコラ欲求はもう限界! だけど人前でベタベタするのは禁止? さらに秘密の両想いなのに恋敵まで現れて……?
恋人から始まるラブコメ爆誕!

主人公がコミュニケーション強者すぎる。そもそも、孤立しているヨルカと親しくなってくれと神崎先生に頼まれた時点で、それだけ希墨なら仲良くなれるとそのコミュニケーション能力を先生にも見込まれていた、という事ですからね。
一方でヨルカの方は深刻なコミュ障。でも、ハリネズミの棘で自分を守っているタイプでキツい言動で周りを遠ざけ、そもそもコミュニケーションを極力取らないという手段で他人との壁を築いてきた娘なので、直接的な防御力は決して高くはなかったと思われる。その棘を無視され、壁を越えられてきたら直接向き合わなければならない。
家族のスペックが異様に高いため、物心ついてからこの方常にそれと比較して自分を卑下してきたために、異様に自己評価が低く自己肯定力がないヨルカさんである。希墨みたいな巧みな陽キャラに全力で来られたら、そりゃあイチコロだわ。
さすがと思うのが希墨くん、釣った魚には餌を上げまくるタイプだった事でしょう。いや、彼自身ヨルカに夢中なので彼の口から出る言葉は全部本心なのですから餌やっているなんて自覚もないのでしょうけれど。
ほんと、恥ずかしくなるくらい甘い言葉を引っ切り無しに囁くんですよね。愛している、好きだ、と告げる事を全く惜しまない。勿体ぶらない。思ったとおりに口に出し、伝える。多少気障でも関係ない。相手を喜ばせるためじゃなくて、シンプルに自分の気持ちを素直に伝えているだけだから余計に強力なのである。相手が、素直になれないヨルカだからこそ尚更に、率直で真っ直ぐな気持ちをぶつけられるとどうしようもない。
ここまでベタベタと優しい言葉甘い言葉を口ずさんでいるとチャラ男かよ、とも思うのだけれど、むしろ少女漫画とかで主人公の女の子を口説いてくるイケメン男子系統なのかもしれない。本人口説いているつもりなくても、思わず女の子がドキドキしてしまうような言動を素で垂れ流してくるような。女の子の理想像の一つだ。

そりゃ、ヨルカじゃなくても、女の子にモテるだろう。

彼氏彼女になる。男女のお付き合いをはじめる、というのは言わば独占契約、お互いがお互いだけと恋愛関係を結びますという契約みたいなものだ。勿論、それを当人同士の間だけで結ぶのもお互いの気持ちの上でとても大切なことだろうけれど、その関係を公然とするというのは他人に対しても、二人の関係を周知してそこに首突っ込んでくることは不義である、と知らしめる意味を持つ。
虫除け、とまで言ってしまうのはちょっとあれだけれど、周知徹底することで事前に余計なトラブルを回避する効果は大いにあると言っていい。
その意味では、ヨルカが希墨との関係を秘密にしてしまったのは、自分への自信の無さが原因なんだろうけれど、悪手だった事には違いない。幾ら、希墨が断ってくれるにしても希墨にアプローチする自由を野放図に開放してしまったのだから。公には瀬名希墨はフリーであり、どれだけアタックしても誰からも文句は言われないわけですからね。
まあ、彼に告白することになる他の娘たちは、ヨルカの存在を認知していなかったわけではないので、交際を秘密云々はあんまり関係なかったかもしれませんが。でも、自分の守り方と同様に、希墨との恋の守り方もヨルカのそれは不器用極まっていた、と言えるのかも知れません。
隠したり遠ざけたりするだけじゃあ、強引に突っ込まれてきたとき案外にも脆いものなのですから。
その意味では、ヨルカがひなかから叱咤されて本音をさらけ出してぶつかったことも、希墨がみんなに全部ぶちまけたのも、ヨルカと希墨のお互いの好きすぎる関係にこそ必要で相応しいものだったのではないでしょうか。隠しておくには二人共目立ちすぎるし存在感がありすぎるものあるわけですから。
朝姫がわり食ってると思うのだけれど、大人な対応だったなあ。大人な対応を取ってしまった時点で割って入るのは難しかったとも言えるのかも知れませんが。まあそれが普通の反応だわね。


http://yamata14.web.fc2.com/turezure/ha/haba_rakuto.html

バケモノたちが嘯く頃に ~バケモノ姫の家庭教師~ ★★★☆   



【バケモノたちが嘯く頃に ~バケモノ姫の家庭教師~】 竜騎士07/ はましま薫夫 電撃文庫

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『ひぐらしのなく頃に』の竜騎士07最新作、新たな鮮血の物語の幕が上がる

「磊一よ、私からの持て成しと、同じバケモノ同士への親愛の証じゃ。食え」
そう言って彼女が突き出したそれは、人間の“はらわた”だった――。
昭和25年晩夏。名家の令嬢の家庭教師として、村を訪れた青年・塩沢磊一。そこで彼が目にしたものは、死体のはらわたを貪る美しき“バケモノ”、御首茉莉花の姿であった。淑やかな令嬢の変貌は病か、それとも祟りによるものか……?
時を同じくして起こる少女の連続失踪事件。失踪者の特徴は、茉莉花の部屋で見た“それ”と一致していて……。
バケモノ姫の家庭教師・塩沢磊一がすべての謎を解き明かす――!!

ひぐらしの新アニメがはじまるのに合わせて、竜騎士07さんの最新作が小説で読めるということで早速手にとってみました。
ゲームのシナリオや漫画原作では幾つもの作品を手掛けている竜騎士07さんですけど、小説という媒体で見ると【ひぐらしのなく頃に】のノベライズが星海社から出ている以外では、本当のオリジナル作品はこれまで出していなかったんですよね。出てないですよね? 
【ひぐらしのなく頃に】は同人ゲームとして世に出た当時からハマった口でしたから、何だかんだと影響は大いに受けているはず。
しかし、読み始めてみるとなかなかしんどかったんですよね。
まずもって塩沢磊一のバケモノ論というかバケモノ語りがしっくりこない。うん、言っている事はオーソドックスと言っていいくらいの話だったんだけれど、どうにも飲み込みづらい。納得しづらかったのだと思うのです。それは、バケモノたちの間でだけ通るルールじゃないのか、と。一方的で、犠牲になる「人間」にとっては何の意味もないものなんじゃないかと。「人間」を踏みにじっておきながら、捕食される「人間」たちの事は一顧だにしないにも関わらず、自分たちは苦しみ藻掻いているのだ、と。ただささやかに自分たちが在る事を認めて欲しいだけなのだと主張しているかのようで。
随分と自分たちにばかり都合の良い、自分本位の、それこそバケモノみたいなロジックに見えて、胃の中が重くなるような感覚だったわけです。
でもその一方で、果たして本当にそういうことを主張しようとしているのか、と違和感みたいなものがこびりついていたんですよね。上記のように主張しているにしては、どうにも言がちぐはぐというかしっくりこないというか、読んでいてむしろわからなくなってくるというか、そもそも何を言いたいのかよく分からん! と、もやもやが募るばかりだったわけです。
いっそ、本当に独りよがりのバケモノ論を押し付けてくるのであれば、分かりやすいし反発にしろ様子見にしろ、物事が明瞭になるのですが、言いたいことの不鮮明さが作品そのものに霧がかかったように不明瞭な代物になってきたのでした。
それが、なんとも気持ち悪い。居心地が悪い。ちゃんと見て聞いて読んでいるのに、なんだかはっきりしない、何が繰り広げられているのかわからない。

で、はたと思い出すわけです。これ、ひぐらしのなく頃にを作った人の作品だった、と。

そうかー、そういう話だったのかー!
と、具体的に何が起こっていたのか、というのが明らかになった時、面白いほどにこれまで不明瞭であやふやだったものが、いっぺんにパーッと開けて霧が晴れて、もやもやしていた部分が振り払われたのでした。何が言いたいのか、意味不明だった部分に電気が通るように意味が通っていく。塩沢磊一の語るバケモノ論の本意が、そのただ一事が明瞭になったことで実にわかりやすく理解できる論へとひっくり返ったのでした。
まさに、なるほど! そうだったのかー! と、パンと手を打ってしまうように。
ああ、このどんでん返しはこの作者さんのおなじみの手管でありましたわ。
そもそも、登場人物の五感から得たと思しき情報をそのまま信じてはいけない、というのが大前提であるべきだったのかもしれません。今回は、本当に素直に見たまま聞いたままの情景をあるがままに受け取っていたものですから、それが全ての前提になっていたんだよなあ。
バケモノ姫のバケモノたる部分を完全に誤解したまま、すべてをそれ前提で解釈してしまっていたが故に、実際の世界と解釈を通して見ていた世界の齟齬が、そのまま気持ち悪さとなって何もかもを不鮮明にしていたのだろう。そしてそれが、この竜騎士07さんの特徴的な手法でもあるんだよなあ。ひぐらしのなく頃にを振り返ってみると、余計にそう感じるわけで。
でも、小説でこれをやられると全部がひっくり返るまでが本当にしんどかったんですけど。そもそも、塩沢磊一と御首茉莉花にまったく共感ができない状態でしたからね。
逆に齟齬が解消されると、塩沢磊一と御首茉莉花への共感が大爆発してしまうのですが。彼らバケモノたちの苦悩と、ルールを遵守しようと懸命に自己を律する姿に健気さ以上に敬意すら抱いてしまうほどでした。
全部が明らかになると、茉莉花という少女がどれだけ絶望し苦しんでいたかもよくわかるし、彼女のうちに希望が戻り人としての体裁を取り戻していく過程も、そこに健気なほどの初々しさが垣間見えるのも、しごく当然の姿だったんですよね。
何もかもをさらけ出しているようで、実際は心のうちのバケモノを、本当の意味で解き放たずじっと
抑え込んでいた、ずっと堪えていた我慢、克己心はむしろ立派と言えるほどで、だからこそ最後の外の世界に1人で踏み出していく、女性の自立など思いもよらぬ時代の中で、想い人を自分の力で追いかけていく勇敢さは、ほんとうの意味で強い女性である事と可愛らしい女の子である事を見事に両立させていて、実にヒロインしていたんじゃないでしょうか。

時代的に存在自体が許されず否定され踏みにじられ無かったことにされて消し去られようとするもの、いや現代だとて全否定しようという意思は無視できないでしょう。社会からは大手を振って受け入れられるものではないでしょう。
しかし、内なるバケモノが生じてしまえば、それはもう在るわけです。無かったことには出来ない。心は縛れない。それはもう、その人自身なのですから、それを否定されると、心の中まで否定されてしまえば、存在自体を否定されてしまう。
かと言って、内側からバケモノをはみ出させてしまえば、自由に野放しにしてしまえば、勝手な理屈をつけて表に出せば、それは人の営みを踏みにじる害悪となってしまう。
それを律することが出来るか、制御も出来ずに暴走させるか。
でもそれって、ただの普通の人が持つ欲望や感情も変わらないはずなんですよね。制御を失って、野放しに解き放ってしまえば、どんな欲望も感情も容易に他人を傷つけ、社会に害をなすことは何も変わらないはず。
昔ながらに心の中の自由すら許さないという主張する人たちの存在が目にとまる事が多くなったこのご時世、色々と考えさせられる話でもありました。

にしても最近よく漫画などで狩猟などで鹿など捕獲した動物を捌いて解体する場面を見ていただけに、ハラワタはアカン! 内臓のうちでも特に腸は傷つけるとエラいことになってしまう! という意識付けがされていたんでしょう。茉莉花ちゃんがハラワタをはむはむしはじめたのを見て、グロい云々とはまた違った意味でうぎゃーー、となってしまったんですよね。思えば、あれが「気持ち悪い」の発端でもあったのかもしれません。思えば、あれもまた茉莉花が名家の深窓のお嬢様であるが故の知識不足、という側面もあったのかもしれません。現代と違って、生き物の解体についてなんかも簡単に情報を手に入れる事は出来ないでしょうし、想像にも限界あるだろうしなあ。

ワールドエンドの探索指南(あるきかた)3 ★★★☆  



【ワールドエンドの探索指南(あるきかた)3】 夏海 公司/ぼや野 電撃文庫

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ついに垣間見えた、世界の真実とは――ボクと彼女のサバイバルファンタジー

地図と周囲の風景が違う? 探索を続け町を進行するタイキとヤヒロは、世界への違和感を強くしながらも、高層ビルの立ち並ぶ繁華街へとたどり着く。無数の落書きに迎えられたここは、どうやら2つの勢力が縄張り争いをする、戦場の真っただ中のようだ。
〈天文館〉と〈果樹園〉という二つの部隊は戦闘を繰り広げ、究極の〈秘宝〉を探し求めているらしい。そんな中で、双方に和解を呼びかける勢力、〈灯台〉に所属する陽羽里クイナと出会う。
目指す〈ミハシラ〉へは繁華街を通過しなければならず、タイキは両陣営とクイナを前に選択を迫られ──。

エグいなあ。黒幕の人、目的は自身が語ってくれていましたけれど、あれで一応本気で善意なのかも。いや、みんなを見下し嘲弄に染められているそれを善意と言っていいのか。結局、ゲートの保持が目的なんだからそんなはずないよなあ。
にも関わらず、さも自分は善意で彼らを妨害していたんだ、なんて事を平然と笑みすら浮かべて宣ええる時点でその性根は最悪である。
だいたい、ただゲートを保持するため爆発を阻止するのならやり方はいくらでもあったんですよね。なのに、わざと関係をこじらせるように誘導し、本来理性的なリーダーに率いられた穏当な集団を敵意どころじゃない憎悪というマイナスの感情に染め上げて、人間の醜い面を引き出すように誂える。あとは、見ているだけで殺し合いだ。目的を達するための殺害ではなく、殺すための殺しを行わなければ気がすまないまでに両陣営の精神を汚染する。目的を達成するためには不必要なそれは、悪趣味以外のなにものでもない。

そも、振り返ってみると最初に与えられた「天文館」と「果樹園」という集団の情報からして悪意たっぷりだったんですよね。どこの戦闘狂で人でなしの集団か、というような言い草でしたし。
しかし、実際に問答無用で殺されかけた挙げ句に同じ目にあった人からの中立の立場を装った立ち位置からの冷静な、これまで彼女が経験した実際に見聞きして両陣営と交渉した結果から抽出された情報、という形で出された話は実感とともに真実味があったんですよね。
タイキたちが両陣営のリーダーに直接対面しにいく、なんて真似をしなければ、実像はわからなかっただろう。
実際、完全に冷静さを失っている現場最前線を何とかくぐり抜けて、両陣営の幹部たちが集まる指揮系統の中枢までたどり着いて見ると、聞いていた話とまた随分と違ってきているんですね。
また、両陣営とも敵対するに至った理由を聞いていると、明らかになんかおかしい。いや、当事者からしたらそれ以外に真実はないのだけれど、第三者の立場から見てみるとどうにもおかしい。
ただ、これに気づけるのはやっぱり第三者ならでは、なんですよね。
だからか、早々に彼女がタイキたちに接触してきたのは。
予期せぬ形で、この状況に介入してくる第三者が、彼女がお膳立てしていた状況を台無しにしていた危険性に、速攻で気づいていたのかもしれない。でも、まずいちばん最初に接触することで一方的な情報を与えて誘導することは可能だし、そうでなくても近くにいればタイキたちが介入して変化する状況を、即座に修正することが出来る。狡猾だ。
話してみてわかるのだけれど、天文館、果樹園双方ともグループを指揮するリーダーが優秀なんですよ。単に能力が優れているというだけではなく、理性的でここまで憎悪が循環する状況でありながら、暴力だけに丸投げしてしまう思考放棄に逃げない粘りがあったんですよね。他人の話を聞くことができ、冷静さを失わない。人望も厚くカリスマもあり、半ば統制を失いながらもそれでもグループを崩壊させていなかったのはそれだけ手腕が優れていた、というのもあるのでしょう。
逆に言うと、これほどのリーダーに率いられながらも、彼らはほぼ一方的に良いように弄ばれてしまったわけだ。黒幕の悪魔的な人心操作の技術を感じさせられる。それも、最小の介入だけで、だ。

では、そんな彼女の正体はなんだったのか。
一応、彼女自身が全部タイキたちにバレたときに語ってくれているのだけれど、前提となる情報が殆どないだけに、彼女の立ち位置はよくわかんないんですよね。
そもそも、タイキとヤヒロはもともとどういう存在だったのか。彼らはどうして今、ここにいるのか。若者の姿で、ここにいるのか。かつて、彼らに何があって、今この状況におかれているのか。
断片的に夢という形で過去の様子を垣間見ることが出来るのだけれど、断片的すぎてやっぱりわからない! 世界の本当の姿、というのも今まで見聞きしてきたものに、ここで体験したものを含めてもやっぱり判断材料が少なすぎるんですよね。
具体的に語れるものが、今の所殆どない。

ただ、タイキとヤヒロは記憶のない昔から、分かちがたく離れがたい存在だった、という事だけは実感できたのだ。それがなんという関係なのかはわからない。兄妹なのか、恋人なのか、親友なのか、好敵手なのか。
死なば諸共、が一番二人を言い表している言葉だ、なんてヤヒロが言ってたけど、それって敵対している関係性の人間が、負けそうなときに地獄まで道連れにしてやるー、と相打ち覚悟で挑んでくるような状況を指すことばで、一蓮托生とはまた違う気がするのだけど。
なんにせよ、運命共同体。そう言い表せる関係だと、二人で実感して納得して受け入れて、それを良いと思えたのだから、それで十分なのかもしれない。
特にヤヒロは、その魂が欲していたものはタイキと一緒にいる、ということだけで十全だったみたいだし。今が、彼女にとって望み叶った状況なんですよね。振り返ってみると、タイキと出会ってからのヤヒロってなんか常に上機嫌、だった気がするぞ。

世界の真実の核心に迫ったようで、実のところ何がなんだかさっぱりわからないままではある。ミサキたちの正体と目的についても、前巻の最後にちらっと触れられたところから殆ど進展していないし。果たして、話はここから進むことが出来るんだろうか。次巻が出るなら、ありがたいのですけれど。



Babel II 魔法大国からの断罪 ★★★★☆   



【Babel II 魔法大国からの断罪】 古宮 九時/ 森沢 晴行 電撃の新文芸

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魔法大国ファルサスへ到着。しかしそこで知る衝撃の真実とは――。

幾度となく命の危険に遭いながらも、雫のひたむきな前向き思考と魔法士エリクの機転によって切り抜けてきた長い旅路。カンデラ城での禁呪事件を経た後も、行く先々で何故か騒動に巻き込まれながら、遂に二人は当初の目的地であった魔法大国ファルサスへと到着する。
日本帰還への糸口を求めて、ファルサス王ラルスとの謁見が実現するが……。

「──立ち去るがよい、外部者よ」

雫の存在を“ありえない異質”と断じ、冷徹な意志を持って王剣を突きつけるラルス。処断を逃れるため、自分が人間であることを証明するために雫が取った行動とは。そしてファルサス城の中で知ることになる、エリクの過去とは。
やがて解明されていく世界の謎。異なる世界の言語を教え合う中で少しずつ降り積もっていった違和感は、衝撃的な事実として雫たちの前に立ち現れる。

それ、その人!! リースフェンを迎えに来た人ーー!! イラスト付くとあからさますぎてちょっと笑ってしまった。これ、現在進行系でのみ電撃の新文芸から出ている古宮さんの作品を追いかけている人はどういう反応になるんだろう。ちょっと気になるなあ。
というわけで、ついにファルサス編に突入であります。その前にリースフェンというどこぞのお姫様みたいな逃亡者と遭遇したり、偽装結婚の替え玉にされそうになったり、と相応のでっかいトラブルには巻き込まれているのですが。いや、結構な頻度で巻き込まれてますよね。自分から首突っ込んでいるわけでもないのに。
とは言え、一つ一つはまったく関係ないような事件に見えるのだけれど、これが「言葉」にまつわる物語であるという根底でしっかりと繋がってもいるんですね。偽装結婚の話では、この世界の大陸の成り立ちにまつわる神話に基づいた結婚式が行われるのだけれど、その神話の内容、特に花嫁を迎えるエピソードに関しては、ラストで明らかになった言葉にまつわる認識の齟齬。雫の住んでいた地球と、この世界における言語についての成り立ち? いや発端? そもそも根本的に違う部分について発覚するのだけれど、神話で確かにそれを示唆するような内容が含まれているんですよね。
それはそれとして、偽装結婚の事件の当事者となる人たちについても言葉が重要な意味を持っていました。言葉によって傷つけられ、言葉によって満たされる。伝わらないと思い込んで言葉を費やさなかったことは、彼らに決定的な断絶と孤独をもたらし、でも最後の最後に彼と彼女はもう一度、今度こそは本当に伝え合うことが出来た。心重なることが出来た。それが、悲劇の後の終幕でしかなかったとしても。破滅は時として美しい。それが幸福に満たされての破滅なら、なおさらに。
ただ、雫には似合わない。
この娘はいつだって直球勝負だもんなあ。直球というのも違うか。無神経にズカズカ踏み込んだりとかしないわりに、理不尽さには憤るし背を向けて逃げたりしない。行きずりで出会ったばかりのリースフェンの境遇に怒り、彼女の自由を取り上げようとするものに向かっていったあれは、勇気とか正義感とかじゃあないんですよね。なんだろう、これを負けず嫌いとでも言うのだろうか。それとも正しい怒り? いずれにしても、彼女には譲れないものがあるし、それを踏みにじろうとするものには徹底的に反抗する。エリクは雫を頑固と評するけれど、頑固どころじゃないですよね。硬骨漢か! 
ただそれが権力者だったりしても、譲らないんですよね、この娘は。
ファルサス王ラルスに突然言いがかりめいた見に覚えのない理由で断罪されようとした時、エリクに身を挺して逃されて、それで一目散に一旦王城から飛び出しておきながらそのままの勢いで戻ってきて、アレですよ。
いやそれはおかしい。一般人は絶対、そこまで出来ないから。そんな一線を持っていないから。
でもそれは体を張ったとはいえ、会話を交わそうとしない相手に対して言葉を届かせる手段ではあったんですよね。無理やりグリグリと押し付けて飲み込ませるようなやり方でも、此方の言葉を聞かず一方的に自分だけが理解する理由で相手の意思を無視して結果を押し付けようとする行為に対して、ただ反抗するのではなく、それは間違いだと突きつける行為。
エリク、怒るよそれ。
でも、結果としてラルスと一応とはいえ交渉可能になった。いびってイジメてくるけれど、言葉は交わせるようになった。言葉をちゃんと聞いてくれるようになった。
そういう状態になっておきながら、わざわざラルスの土俵に乗って言葉以外のところで張り合って彼のイビりに真正面から付き合って、負けるかおらー、ってやってたのはやっぱり負けず嫌いなんじゃないのかな。
ともあれ、この娘は、雫はとにかく言葉を惜しむことだけはしない。自分だけで溜め込まずに、ちゃんとコミュニケーションを取ろうとする。思えば、異世界に飛ばされて身一つで見知らぬ土地に放り出され、そうでもなんやかんやと辺境の街で生活基盤を築き上げてしまったのも、彼女のそういう意思疎通を惜しまないところだったのだろう。
エリクは、その辺決してうまい方ではないと思うんですよね。でも、自分からなかなか見せようという能動性に欠けるだけで、問われれば問われた以上を返してくるし、押せばそれなり以上に押し返してくる。待ってたら、あんまり反応してくれなくなるけれど、そうじゃなかったら、この人はきちんと以上に対応してくれる、考えてくれて、慮ってくれて、実行してくれる。
その意味では雫とは相性ピッタリなんだろうなあ。
そして、彼の……エリクの過去は。ファルサスで彼が得てしまった喪失は、意思疎通の齟齬と欠如に基づいてしまっている。かの人の正体を思えば、最初からこれは行き場のない物語だったのかもしれないけれど、行き着く所はそこ以外になったのかもしれないけれど。
それでも、エリクにとっては清算の済んでいない傷だったのだ。でも、それを雫に話したことでなにかほどけたものはあったのかもしれない。自分のことを話すことは、許すことに繋がるのだろうか。
いずれにしても、伝える、という事の意味の深さをこの物語は常に意識しているように思える。

だからこそ、尚更に。ラストで明らかになった言葉にまつわる雫とこの世界の齟齬の大きさ、認識そのものをひっくり返すような事実にはドキドキしてしまう。心揺さぶられてしまう。言葉で意思を疎通する、という事そのものが、自分の中から生み出してきたものではなく、誰か大きな存在によって手を加えられてきたのではないか、という疑問のその恐ろしさに。
そもそも、生得言語なんて雫や、彼女の側に属する読み手にとっては発想すらないものですもんね。気づくわけがない。雫にとって、最初意味がわからなかったのも当然であるし、彼女と誰よりも言葉を交わし、彼女から異世界の言語を習ってきたエリクですら全く気付かなかったのも無理はない。
そんな両者の齟齬を暴くことになった、今子どもたちの間で流行りだしているという言語障害の病。それが病気ではない、という事実を理解できるのは雫と彼女との齟齬を正確に認識したエリクだけ。果たして、今この世界に何が起ころうとしているのか。ものすごく得体のしれない方向から忍び寄ってきた不気味な世界そのものを揺るがそうとしている変容に、これからどうなるのか。雫とエリクはどうするのか、と思った所でさらなる急展開である。
ああ、電撃文庫版ではここで打ち止めになっちゃったんですよね。ここまでやっておいてからに、そこで打ち止めって。いや、こうしてちゃんとカットなしでの再スタートを行ってくれたわけですから、むしろありがたいというべきなのか。
今度こそついに、ついに本作の真ヒロイン、というか雫にとってのヒロイン?の登場ですよ。もう顔見せはしてるけど。ある意味、ラルスのイビリは予行演習みたいなものですからな。王様相手だろうと一歩も退かずに張り合ってみせた雫である。耐性はついてるついてる、うんうん。



川上稔 短編集 パワーワードのラブコメが、ハッピーエンドで五本入り 2 ★★★★   



【川上稔 短編集 パワーワードのラブコメが、ハッピーエンドで五本入り 2】 川上稔/さとやす(TENKY) 電撃文庫

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・『幸せの基準』
 「意地汚い豚です私……!」弁当を、つまらなく食うヤツがいるんだなあ、と、そう思った。そんな“ウマメシ”少女と“マズメシ”少年の弁当交換会。

・『星祭りの夜』
 「女のプライド一本勝負です」彼は気付いていない。いやホント、困っちゃうくらい気付いてなくて困る。想い人に別の女性との恋愛相談をされてしまった家業が神社の私。得意の占いで彼の恋愛成就を手助けしようとするが……?

・『鍵の行き先』
 「……うわあ生々しい……」本を読んでいる間は、他を気にしなくていい。自分のことも気にせず、心に鍵を掛ける。そんな少年“俺”は、入部した文芸部で、風変わりな先輩に出会うが、彼女もまた心に鍵を掛けていた。

・『自由の置き場』
 「弟! 今、エロ本落ちてた!」自由ってあるじゃん。まあノーパン未満の自由ってのに、不意に気づいたんだ。元秀才女子と才覚男子の勉強攻略。

・書き下ろし短編『再会の夜』
 「お前はモブの自覚あんの?」夜の町で会ったら告白しようと決めた。何の話だっけ。ああ、ゴリラ女子の私と、オスの人類のちょっと恥ずかしい昔話をしようか。

 川上稔が贈る、最高にハッピーでキュンとくる珠玉のラブコメ短編集、第二弾!


第一話のヒロイン、早くに父を亡くし、母は深夜まで働きに出てて幼い妹の分もメシを作ることになった娘。長じて高校になった頃、母と自分と妹の分の弁当も作ることになり、という境遇を見るとなかなか大変なご家庭で、という風に見えるのだけれど、当人たちはそのあたり決して深刻には考えてないんですよね。弁当作りも、娘、楽しんでいるのだし。母も一人で子供を育てて夜遅くまで働いて、となると生活に疲れてそうだけど、むしろバイタリティ満タンでバリバリ働いてるの謳歌してる感じナノが結構似たもの母娘なのである。この二人の掛け合いというか関係がまた楽しくてねえ、好きですわー。このお弁当を作るという作業に纏わるお話だけでも充分に面白いといえるほどに。
この作品に限らず、この短編集のお話って短編という短い枠組みにも関わらず、ラブコメの舞台となる登場人物たちが置かれた生活環境や、人間関係がそれ自体で見てて面白い! と思えるほどにしっかりと、同時にはっちゃけて構築されてるんですよね。
二話の巫女さんの実家のフィジカル系恋愛神社の来歴とか。三話の文芸部の実像とか、最終話のギアナ高地に自分たちでなぞらえる地方都市とか。地元の短大をラブホという隠語で呼ぶのやめいw
このシリーズって、登場人物は具体的な名前が一切でないまま名無しで進行するのですけれど、固有名詞を必要としないほど、ありありと姿が浮かぶんですよね。
彼女たちが、どんな風な家庭で育ってきてどんな学生時代を送ってきて、どんな想いを描いて生きてきたのか、その在り方というのが人間像みたいなものがこうして描かれた背景、生活環境や人間関係や幼い頃から今に至るまでの凄くぶっちゃけた物言いの過去語りによってありありと浮かび上がってくるんですね。
だから、ラブコメがスタートした時点で彼らは凄まじく濃い存在感を焼き付けているのである。心の在りようというものを明瞭に見せつけてきている。だから、そんな彼女たちの人生の歩みの中にポッと現れた存在がものすごく目立つのですよ。いや、最初はやはりそこまで目立ってないんですよね。これまでの歩みを揺るがすような存在ではなく、紛れでしかないのだ。
でも、その存在を無視できなくなった時点で、それまでの彼女たちの在り方に影響を与えている時点でそれはもう大きな変化なんですよね。
弁当を交換するようになるのも、得た自由を自ら縛るのも、どれもが自ら邁進してきた歩き方を変えるに等しい。
それに気づいた段階でもう取り返しはつかないのだけれど、でも果たしてその取り返しがつかねー、となってるのは自分だけで、相手にとっては別にそうじゃあねえだろう、という気後れみたいのもやっぱりあって当然なんですよね。というか、この娘らどいつもこいつも傍若無人に見えて、なかなかの繊細さというか気遣いの娘さんたちで。唯一の男性視点のちびっこもまあそうなんだけど。
でもそれはそれとして置いておいて、気持ちを伏せるばかりではなくやっぱり気づいてほしいなあ、とアプローチもするんですよ……往々にして気付かれないんだけどな。
でもまあそれで怒るのは筋違い。なにしろ、自分だって往々にして気づいていないのだから。
今回特に「やっはー」となったのが視点側の彼女・彼が不器用にアプローチしている一方で、相手側も同じような感情曲線を辿っていて同じように不器用にアプローチしていた事に、気付かされるわけですよ、最後。気付かんて、そんなんー、と思いつつもそりゃこっちもだよね、と苦笑して、初々しくて乙女チックでやっぱり不器用な数々の気持ちを滲ませてチラチラを垣間見せるあれこれに、ひゃわにゃわー、となってしまうんですよ。
この双方向性は、この2巻は特に良かったなあ。
また、2話はその気遣いを失恋前提の条件故に自分のために使わずに一生懸命想い人のために費やしていた姿が、川上先生の描く巫女さんらしくて、キュンキュンしてしまいました。
こんな姿見せられたら、傷心だろうと一発撃墜だわさ。

まったく、一話残さずどれもこれもが最高のラブコメ揃いでした。加えて、パワーワードというタイトル通りの、なんかこうパワフルなラブコメでした。キャラのバイタリティがすごいのは川上作品の常だけれど、そのキャラのバイタリティがラブコメに全力投球されると、ほんと凄いパワー、パワーあるお話、パワー型ラブコメになってて、なんかこうキュンキュンするだけじゃなくて元気にさせられる感じすらありました。ああ、パワフルなハッピーエンドって最高じゃないですか?



川上稔 短編集 パワーワードのラブコメが、ハッピーエンドで五本入り 1 ★★★★   



【川上稔 短編集 パワーワードのラブコメが、ハッピーエンドで五本入り 1】 川上稔/さとやす(TENKY) 電撃文庫

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・『恋知る人々』
 「ホント、バッドステータス」私は人の心が読めると、そう自惚れた事はないだろうか。人の心が読める。そんな私に訪れた一つの変化――好き? 色恋? 私が? 無口系少女の不器用な初恋の物語。

・『素敵の距離÷2』
 「マー頑張って下さいよ少年」恋愛成就の「告白の木」が三本もある町。その一本をお気に入りスポットにしている私と、ある日、対岸の丘にあるもう一本の木の下に現れた黒のジャージ少年。300メートルの、安全な、卑怯な思い。

・『地獄の片隅で笑う』
 「笑ってよ。そうして欲しいんだ」地獄広場って、知ってる? 開かずの踏切とその周辺の喫茶店に集まる作家と編集者たちの奇妙な恋愛物語。

・『嘘で叶える約束』
 「こんにちは、虫です」よう、幽霊です。まあこの学校の学生みたいなことやってんだけどね、俺。そんなある日。俺のことが“見える”後輩が現れて……?

・『未来の正直』
 「巨乳、解りやすいよな」漫画家を目指していた少女の初めての挫折と、解決する感情。美術部の彼に「通じないと」そう言われたときから全てが始まる。

 川上稔が贈る、最高にハッピーでグラッとくる珠玉のラブコメ短編集、第一弾!
エッモぉぉいッ!!
そうかーっ、エモいってこういう感覚をいうのかー。はじめて頭で何となく理解するんじゃなくて、感覚として実感したぞ。エモいエモい、なるほどなるほど、これがエモいだっ!
というわけで、【境界線上のホライゾン】や【終わりのクロニクル】の川上稔先生によるはじめての短編集。鈍器じゃないよ、短編だよ?
鈍器云々以前の問題として、本作ってこの後の二巻も含めて実本では発売してないんですよ。電子書籍限定発売という形式になっていて、電撃文庫の公式ホームページにも載ってないでやんの。いやさ、電書限定はいいとして公式サイトに新刊情報が載ってないってなんなのさ。
まあそれは良いとしても、ラブコメですよ。考えてみれば、川上先生の作品って世界を救う物語であると同時に、どれもこれも壮大なラブストーリでもあったんですよね。それも主人公とヒロインのみならず、様々なカップルによって繰り広げられる恋模様が幾つも幾つも描かれていた物語。
都市シリーズもそうだし、言ってしまえばゲームセンターでひたすらシューティングゲームに青春を注ぐ【連射王】ですら、むしろあれこそ生粋のラブストーリーでありました。
そんなこんなで長年蓄積されてきたラブコメパワーの純結晶化として送り出してきたのが、この短編集なのではないでしょうか。ラブコメに関するあらゆる熱量と技術を凝縮したパワーオブラブコメ。それがこれらの物語なのです!(言い切った!)

『恋知る人々』

初っ端にして最高傑作。この主人公たる女性って、言うたら「サトリ」に近しい他人の心を読む、というか聞くか、この場合。声として聞けてしまう女性がそれまで他人事で恋愛相談なんかしてたのが、自分がはじめて恋をして、恋っ正直見くびってましたすんません!と土下座する勢いでパニクりながら、七転八倒しながら初恋にのめり込んでいくお話。初っ端にして、一番好きなお話でした。
女性視点のお話で、結構むき出しの心の言葉を思うがままに垂れ流しているような自由な言葉の本流なんだけれど、本能任せノリ任せの言葉垂れ流しのようで全体的にすごくロジカルでもあるんですよね。制御された垂れ流しとでも言うのでしょうか、野放図に見えて感情の推移が、どんな風に心の持ちようが変わっていくのかがすごくわかりやすく描かれてるんですよね。ほとんどが彼女の内なる言葉によって綴られていくのですけれど、この娘のテンションの上がり下がりも明瞭だし、一人称視点なのに周りの人たちの反応も含めて情景がとても浮かびやすい。
ここらへんの塩梅というか、描写力は流石だなあ、と言わざるを得ない。何も考えずに垂れ流してるだろう、というような言葉の綴のなかに、唐突に鋭い刺さるような言葉が投げ込まれてきたときのドキリとした感覚は、ちょっとたまらないものがあります。そういうぐにゃぐにゃしたものと凄まじく鋭い差し込みのバランスが、この一作目が一番エッジが効いてた気がするんですよねえ。
ってか、本作に限らずこの短編集の恋って、恋心って、グミみたいにぷにぷにして柔らかいのに弾力があって、好きだわー、超好きだわー。

『素敵の距離÷2』

ずっと見ていました、って卒業式に告白されるやつ。だいたい、告白される方視点で「え? なにそれ?」ってなるものですけれど、これはその「ずっと見ていました」側の女性からのお話。いや、彼女からしても見ている事をアピールしていたわけじゃないですよね。一人で見守ってそれで満足していたわけで。「推し」という表現にはちょっと笑ってしまった。でも、ずっとその男の子が頑張っているのを密かに見守り密かに応援していたことでちょっとモヤモヤしてくるわけですよ。この距離感の煩悶、陰ながら勝手に応援しているからこそ、相手からなんか期待するのは間違っている、と思うんだけど、ちょっと期待しちゃったりしてしまうので戒め戒め、な長きにわたる300メートルの距離感。人と人との距離って面白いねえ。


『地獄の片隅で笑う』

一杯二五〇〇円のコーヒーってすごいよな、すごいを通り越してエグいよな。果たしてどれだけ金持ちになれば、そんなコーヒー毎日飲もうと思うようになるんだろう。
これもいわば見守る系なのか。喫茶店の席から作家の執筆仕事をしながら、開かずの踏切で繰り広げられる人間模様を観察する日々。そんな中で一人、特に目にするようになった若造。彼を眺めるうちに、ひょんなことから彼が自分の本を携えていて、そこから彼に感情移入していくのである。地獄の広場と呼ばれる踏切前。それを隔てられた窓の内側から眺める彼女の気持ちがあるのはどちら側だったのか。それを外からの視点で教えてくれる喫茶店のマスター、粋ですなあ。


『嘘で叶える約束』

今巻唯一の男性視点のお話。だけど、この男、身体もなにもない幽霊なのであった。
とりあえず男を出したら全裸にしたがるのは、もはや性癖なのだろうか川上稔大先生w
女の子が指差してる指先に全裸の先端を持ってくるなしw 見えていないからといって、それはやりたい放題の類だからね。
唯一幽霊のはずの男の子のことが見えた転入生の女の子とのボーイ・ミーツ・ガール。いや、そこには裏があるんですけどね。これ、気づいたあとの女の子サイドの気持ち考えると結構大変だったんじゃないかな。幽霊くんはのほほーんと幽霊生活、まあ人恋しくて寂しくなって結構辛かったみたいだけれど、女の子の方はもっと混乱と動揺とが激しかったんじゃないだろうか。それをあんまり彼には見せなかったので、なかなか幽霊くんの方からは見えてこなかったけれど。
それでも彼女が勇気を出すきっかけになったのが、彼がどうしようもなく幽霊であるという自覚のまま、彼女との関係を維持しようとした事なわけで。うん、そうなのかな、どうなのかな。でもきっかけはあそこですよね。家に誘って云々。あの時点で、家に呼ぶけど意識はしないで、と言ってたのが、ラストではっきりとひっくり返して……あのセリフは、また直撃ですわー。


『未来の正直』

生き様が漫画家、というよりも生来の漫画家。物心ついたときから、息をするように漫画に没頭し続けた女が直面する、生の人間、生の男の子、生の恋。自分の漫画を読む他人。自分の漫画が他人に読まれるという革新。そこから生じていた感情が、恋だと気づいたときから始まる葛藤。恋という感情、或いは現象に対する分析がまたいいんだ。感覚を言葉にしていく作業、それを情動のママ漫画という表現に形作っていく情熱。魂をフル稼働するこのパワーの若々しさよ。青春だよ、これが青春だよ。青春とはパワーだよ、心の力だ。パワフルだ。ひゃー、熱い! 


さあ、間をおかず同時発売の2巻に行きますよ。


ドラキュラやきん! ★★★☆   



【ドラキュラやきん!】 和ヶ原 聡司/有坂 あこ 電撃文庫

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夜しか外出できない吸血鬼が現代日本で選んだお仕事は“コンビニ夜勤”!?

太陽の光を浴びると灰になってしまう存在、吸血鬼。夜しか活動できない彼らだが、現代では割と問題なく生活していた。
そう、なぜなら“夜勤”で働くことができるから――。
虎木由良は現代に生きる吸血鬼。バイト先は池袋のコンビニ(夜勤限定)、住まいは日当たり激悪半地下物件(遮光カーテン必須)。人間に戻るため、清く正しい社会生活を営んでいる。
なのにある日、酔っ払いから金髪美少女を助けたら、なんと彼女は吸血鬼退治を生業とするシスター、アイリスだった! しかも天敵である彼女が一人暮らしの部屋に転がり込んできてしまい――!? 虎木の平穏な吸血鬼生活は、一体どうなる!?
『はたらく魔王さま!』の和ヶ原聡司が贈るドラキュラ日常ファンタジー!

いや、夜勤でしか働けないって結構現代社会でも問題だとは思いますよ!?
昨今、日中でも平気で出歩くデイウォーカーが珍しくない吸血鬼界隈ですけれど、主人公の由良は陽の光に当たると速攻で灰と化してしまう正統派。それどころか、日が昇ると起きていられないほどの眠気に襲われてしまう、というのだから屋内での活動もままならなそう。尤も、力を使った直後でなければこれほど眠気に抗えないんでしたっけ? とにかく、活動時間は極端に制限されることになる。
ただ、彼にとって夜勤のコンビニバイトだけが社会とのつながり、みたいな結構孤独な境遇を予想していたのだけれど、肉親との交流はこれ並の親戚づきあいよりかなり深いし本邦の退魔集団みたいな家とも付き合いがあって、決して社会から孤立しているわけじゃあないんですよね。
【はたらく魔王さま!】と似たような設定ですけれど、こうして見ると結構コンセプトも異なっていることに気付かされます。あっちは特に当初は魔王や勇者が異世界からきて現代日本で地道に生活していく様子こそがメインで描かれていましたけれど、本作は日中活動できない吸血鬼がコンビニの夜勤バイトだけを収入源に、どうやって生活していくのか吸血鬼の日常譚、みたいな所は今回はあんまり重視されてないんですよね。
突然、生活圏に飛び込んできたアイリスとの男女の共同生活で起こる様々な細かい齟齬や妥協や同居生活はじめのあるある話、とかいうのもそう言えばあんまりなくて。わりとオーソドックスにアイリスが追う犯罪者吸血鬼の確保を巡って、由良が協力しつつお互いの理解を深めていく、みたいな当人同士の関係重視のお話になってましたね。
そもそも、アイリスも吸血鬼退治の専門組織から派遣されてきた、と言っても決して人外そのものを敵視しているわけではなく、男性恐怖症の彼女が男性を意識せずに頼れる相手としてむしろ由良に懐くというかしがみつく、というかバチバチ張り合ったり敵対し合ったりする関係にはならなかったんですよね。むしろ、思いっきりまとわりついてきていたような。自分のポンコツさを逆手にとって、おしかけ居候するあたりはやり手なんじゃないかと思うほどですし。
とはいえ、生活力がないわけではなく、むしろイギリス人であるにも関わらず料理上手ですし(偏見)。いやイギリスの飯がマズいと言われるのとイギリス人が料理うまいか下手かは関係ないんでしょうけどね。本人はイギリスじゃなくてイングランド人だと主張していますが。
ともかく、一緒に暮らすことでしばらく一人暮らししていた由良に家族という郷愁を思い起こさせるきっかけになるアイリスなのでありました。
今現在も、血縁の弟家族と深い交流がある由良ですけれど、今回は明言はされてなかったですけれど、どうも人の女性に想いを寄せていた過去がある節があったんですよね。寿命の差を意識しているようでしたし、亡くなった弟の奥さんにも思う所あったみたいだし、こうしてみると実年齢的にも爺さん!というほどじゃないけれど、若者にはないある種の人生の年輪みたいなものを垣間見せることのある人物像なんですよね、由良って。なので、アイリスにしても以前からの知人で由良を一方的に慕ってくる未晴に対してもどこか年の差を意識しているような接し方、自分の娘みたいな、とまでは言わないですけれど、自分が働いているコンビニのオーナーの娘さんに対しているのと似たような距離感が感じられるんですよね。
実年齢から言うと、娘どころか孫か曾孫でもおかしくない年齢差なのですが。なので、彼女たちの事はなんだかんだと手助けしてあげつつも、自分のことに関しては協力を求めたり利用したり、というのをあんまり考えておらず、自分の仇であり人間に戻るために倒さなければならない祖との対決でも自分一人でなんとかしようとしちゃうんですね。
それをおとなしく待っていられるようなヒロインたちではなく、むしろ無計画な由良の首根っこ抑えて自分達のプランに無理やり彼も同乗させる、という逞しさを見せてくれるのですが、こういうのも一人暮らし故の不安定な生活様式を、同じ生活圏に入ってきた女の子がパパっと整えてくれて、乱れていた夜型生活が一新される、のパターンの一つになるんだろうか。

今の所、アイリスの方の過去が定かではなく、男性恐怖症のおかげでろくに任務遂行できずに辺境日本に左遷されてきた、くらいしかちゃんと語ってくれていなくて、どうも家族関係にしてもなんで生活に支障があるレベルで男性恐怖症になったのかも不明なんですよね。本人は方向音痴や迷子の先で名物食べ歩いてたり、という図太さなどポンコツ面も強いのですけれど、何だかんだと能力的にも人格的にも優秀かつシスターとしても清廉で、人外相手にも偏見少なく気遣いも上手だったり、と良い子なのですが、果たして由良にどうしてあれだけ拘っているのかがちょっとした謎めいた部分でもあるんですよね。彼女の男性恐怖症って、男嫌いとはちと異なっていそうですし。ちゃんと普通に接することのできる異性である由良に拘っている、というのは恋とはまた違ったものみたいですし。まあ後から出てきた由良にアタックしまくる未晴にあれだけ張り合っているあたり、由良を意識しだしているというのはあるのでしょうけれど。
彼女に対する掘り下げは、次回以降になるのかな。
ただのコンビニバイトで生計立ててるフリーター、というには由良さん、吸血鬼としての能力が高い云々以前に、洞察力や人間力が非常に高いし、結構あっちこっちに(国家権力方面にも)顔が聞いて人脈も広かったりするので、いやなんでこの人コンビニバイトしてるんだ? と思ってしまう所もなきにしもあらず、なのですが。普通にアイリスに付き合って吸血鬼犯罪者の捜査や探索、潜入に確保など忙しく駆け回ることも多くなるので、バイトくらいが時間の融通きいて良い、という事なんだろうか。
ともあれ、ラブコメ風味もそこそこ強めみたいですし、人の社会に溶け込む人外たちと裏路地で相対するようなアイリスとのバディものとしての要素も全面に押し出されていますし、その意味では王道的な現代異能バトルものでありラブコメ、になっていくのでしょうか。次回以降もそのへん興味深く拝見ですね。

和ヶ原聡司・作品感想

はたらく魔王さま! 21 ★★★☆   



【はたらく魔王さま! 21】 和ヶ原 聡司/ 029 電撃文庫

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魔王城を打ち上げ、エンテ・イスラでの人間同士の争いも治めた魔王たち。残すは天界で神討ちに挑むのみ──だったのだが、その前にやるべきことがあった。魔王と勇者はじめ、一同が正装で向かったのは、千穂の自宅、佐々木家だった。
 千穂の父と会い、日本にやってきた当時のケジメをつけた魔王。しかし頂点会議から続く体調不良で、日常生活にも影響が出ていた。決戦を前に、見かねた恵美は魔王を心配するのだが──?
 最後まで格好つけられない魔王たちを待ち受ける、天界の真実とは。神討ちは成るのか。成ったとして日本での生活はどうなるのか――フリーター魔王さまと元テレアポ勇者の長い戦いもついに決着、庶民派ファンタジー、感動の完結!

10年も続いたのか。長い間お疲れ様でした。終わってみれば……これ、漆原がニートから脱却する話だったんじゃないの?
いや、このラストバトルってなんだかんだと漆原が主体になっていた、とも言えますし、親の軛から脱することでフラフラと当て所なく彷徨っていた彼が地に足をつけて生きていけるようになった、とも見えますし。
ただ漆原ことルシフェル、本当に長い時間フラフラしていたせいで大事な記憶も朧気になっていて、肝心の部分もこの最終局面に現場にたどり着いてようやく思い出す、という感じだったのでそもそも本人に当事者意識がなかったもんなあ。ダァトに関しても一番最後になって現れて、その姿がルシフェルそっくりだった、というのが結構重要な問題になっていた事に殆ど誰も気づいていないという顛末でしたし。
まあこの最終決戦である神討ちって余談は余談だったんですよね、本作においては。そのために千穂ちゃんが槍ゲットするためにエンテ・イスラではっちゃけたり、魔王城飛ばすためにみんなとっかえひっかえエンテ・イスラと日本を行ったり来たりと大忙しだったりしたわけですけど、やっぱり本作においてはエンテ・イスラの政治的な部分だったり戦争の部分だったり、決戦なんてものは余談だったわけですよ。そういう風な作りにしていた、とも言える。そういうのを、日本での日常生活と天秤にかけて日本での生活の大事さの方に比重をかけたかったのでしょう。少なくとも、日本で生活していた主要人物たちにとっては、日本での生活こそが大事という意識になっていたわけですから。
だから、最終決戦なんてものはアルス=ラムスの兄妹たちを開放して小さい娘を喜ばせる誕生日プレゼントであったわけですし、最終目標というのは千穂が思い描いた日本の小さなアパートの一室でみんなが賑やかにごはん食べてる光景をいかに守るか、てなものだったわけです。
守るだけではなく、先々までその光景を継続する、というのが千穂の願いであり彼女が本来の身の程を越えて頑張った理由でもあったのでしょう。千穂にとって、もうハッピーエンドに等しい時間はとっくの昔に彼女の前にあったわけですから。あとは、それを以下にして将来まで維持できるか、という問題が前にあり、恵美たち含め異世界組が元の世界に戻ってしまうなど憂慮すべき問題は山積みだったのを、あれこれ努力して解消していき、自分の願望をみんなにとっての願いであり望む光景として共有していくことに、千穂は見事に成功した、と言えるんですよね、これ。
最後には、みんな一致団結してそれを叶えるべく動く形になっていましたしね。
千穂個人の幸せとしては、真奥とお付き合いする関係になる、というのは勿論無視できない要素ではあったと思うのですけれど、最重要ではなかったと思うんですよね。そういう関係になれるのを踏まえて、みんな一緒の光景の一要素になれれば、という感じで。だから、真奥に対する独占欲みたいなものが薄かったんじゃなかろうか。彼女にとって、アムス・ラムスという娘を間に挟んでパパとママしている真奥と恵美、というのも彼女の望む光景にとって欠かせない要素だったわけですし。
恵美との関係についてもうるさく言わないどころか、寛容な態度をみせていたのはそのせいではないかと。
まあ、その千穂当人がなにやらエンテ・イスラの方に就職しそうな勢いではあるのですが。結構簡単に帰ってこれるだけにハードルは高くないとは思うのですが、あっちに行くとそのまま政治家ロード一直線っぽいしなあ。
個人的には、周りに変に気を使って忖度したりもせず、自分の感情に背を向けて色々繕ったりもせず、まっすぐに本心を曝け出して直向きに恋していた鈴乃のことは応援していたんですけどね。
一番こう、登場人物の中で乙女していたと思いますし。
しかし、なんでこの大司教さまは、異世界宗教の頂点近い地位に立ってるのにお遍路さんなんて仏教ロードに凝りだしてるんだ!?w

ちなみに、真奥と千穂の関係ですけれど真奥が何となく流れで受け入れるのではなく、ちゃんと千穂との出会いまで遡って彼女に対する気持ちを自己分析した上で、彼女が大事という気持ちに特別な感情があるのだと発見して、ちゃんとそれを踏まえた上で千穂に返答したことは評価してあげたい。
でも、悪魔だから恐怖を力に出来て、逆に愛情には拒絶反応、という設定は構造上は誠実に捉えてあって然るべき設定ではあったかもしれないけれど、物語上はちょっと面倒くさくてあんまり必要性がない設定だった気がするなあ。というか、真奥以外の他の魔族はこの問題どうするんだろう。真奥も先々種族間の分断に繋がりかねない問題だと認識していたけど。魔族でなくしてしまえば、解消されるにしてもそれ恵美がして回るわけにもいかないだろうし。
ちょっと、リヴィクォッコと岩城店長の関係に期待してしまったのですが、あれはまったく職務上の関係以上ではなさそうだなあ、うん。
逆に度肝を抜かれたのはやっぱりサリエルと木崎さんで、うんあれが一番驚いた。なにがどうしてそうなったんだろう。想像がつかないのだけれど、木崎さんのあの娘に対した時のキャラ崩壊してるんじゃ、という声音みると、あの人知らざる一面がまだあるに違いない、うん。
お付き合い、という面でみると三年後の場面の方で真奥と話す千穂ちゃん、もう敬語が抜けてるんですよね。あれは新鮮でしたけれど納得でもあり、順調にお付き合い進んでるんだなあ、と実感させてくれる小さくも丁寧な描写であったと思いますし、ちーちゃんが大人の女性になったんだなあ、と感じさせてくれるシーンでもありました。
芦屋と梨香はもうワンチャンないかなあ。

というわけで、結構ややこしくもなっていたセフィラやら天使関連の話もなんとか伏線を回収し終わり、三年後の場面と並行しながらの最終決戦はあんまり盛り上がらない事は想定済みだったのでしょう。そういう構成でしたし、というかこの作品の方向性そのものがラストを決戦で盛り上げるものではなかった、というのを徹底して貫いたとも言えるのかも。そういう手かせ足かせを嵌めたまま外さなかった、とも言えるのかも知れません。それは四角四面であったとも思いますし、また誠実でもあったとも思うんですけどね。
恵美ことエミリアはもうちょっと許されざる秘恋に葛藤するというかドロドロするというかねっとりしても良かったかなあ、と思うのですが、彼女なりにあの一夜のキスは精一杯のそれだったと思うので、それなりには堪能させて貰いました。
神は細部に宿る、を体現するような日常シーンの細かすぎるほど繊細な描写によって他の追随を許さない生活感のリアリティを常に物語そのものに根ざしつづけた本作、存分に楽しませてもらったと思います。長い間お疲れさまでした。完結、おめ♪

シリーズ感想


……でも、昨今のコロナ禍がこっちにも直撃してたら、真奥さんの会社もろにやられてそう、とか思っちゃうのがリアリティありすぎる世界観ゆえか。図らずも、梨香に語ったまおう組の顛末繰り返しかねないか、恵美のヒモですね、うん。

ストライク・ザ・ブラッド 22.暁の凱旋 ★★★★   



【ストライク・ザ・ブラッド 22.暁の凱旋】 三雲 岳斗/マニャ子 電撃文庫

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世界最強の吸血鬼と監視役の少女の物語 ついに完結!

異境(ノド)を制圧し、咎神(きゅうしん)カインの真の遺産である六千四百五十二発の眷獣弾頭を手に入れたシャフリヤル・レン。眷獣弾頭の圧倒的な威力の前に聖域条約機構軍の艦隊は壊滅し、三真祖たちも沈黙する。
日本政府は異境への『門(ゲート)』を閉じるために絃神島の破壊を決断。雪菜と那月を要石のあるキーストーンゲート最下層に派遣する。自らの手で絃神島を沈めることに苦悩しつつも、忠実に任務を果たそうとする雪菜。そんな雪菜の前に吸血鬼の力を取り戻した古城が立ちはだかる。
そのころ異境では、謎の仮想空間に囚われたアヴローラが、モグワイと名乗る怪しいぬいぐるみと接触していた―― !
世界最強の吸血鬼が、常夏の人工島で繰り広げる学園アクションファンタジー、ついに堂々の本篇完結!

いきなり雪菜の夜這いからはじまるという最終巻。この中学生すけべえすぎる。さすがに夜偲んできて襲いかかってくるようなヒロインは……あれ? わりと過半数に達しているような。
というわけで、長く続いたこのシリーズもついに完結。第四真祖の誕生の真実、咎神カインとは。三人の真祖たちの意図とは。などなど、シリーズ通して紡がれてきた物語や世界観の根底を担う設定や伏線などもほぼほぼキッチリと明かされたんじゃないでしょうか。総じてカインと彼を殺す為に生み出された初代第四真祖との友情の物語であり、その後始末を現代で古城くんが一生懸命に頑張るはめになった、と。まあ彼に言わせれば、こいつは自分の戦争(ケンカ)だっ、てなもんなのでしょうが。
しかし、モグワイはただのAIじゃない、とは最初期から感じてはいたんだけれど、彼を作った浅葱が天才すぎるもんだから、浅葱が作ったAIなら妙に浅葱からすら独立した個性や意志を感じてもおかしくはないよね、という微妙なライン上を走ってたんでどうにも判断つかなかったんですよね。最後まで。
その御蔭か、なんかあるかもとは思いつつも正体云々にまで想像が及んでいなかったんですよね。なので、アヴローラの前に出てきた段階でようやく「あれ?もしかして」と思ったくらいで、結構素直に驚きましたよ。そうなると浅葱のカインの巫女って思いの外直接的な意味でもあったのか。

ラストという事で総力戦であり、シリーズ通して最初のヒロインであり最後のヒロインでもあったアヴローラ、囚われの姫君との再会でもありました。って、折角のアヴローラとの再会シーン、そんなんでええんかい! いやもう古城らしいと言えば古城らしく、アヴローラらしいと言えばアヴローラらしいんだけど、もっとこう感動の再会とは行かなかったんだろうか。ほんと、長きにわたる別離からの邂逅だったというのに、唯里のツッコミも冴え渡りますわ。何気にヒロインの中で随一のツッコミ役になってしまった感のある唯里さんである。普段は一番温厚でツッコミとかには程遠い人格者のはずなのに、こんな子に何をさせるんだか。
しかし、唯里さんは仄かに古城に対して「イイなあ」という淡い気持ちを抱いていたからいいものの、むしろ父親の方の牙城の方に惹かれていた志緒や、古城に対しては特になんにも思ってなさそうな妃崎霧葉まで血の伴侶にしてしまってよかったんだろうか。霧葉さん、あれはツンデレ、てわけでもないだろうし。
というわけで、正式な12人の花嫁は叶瀬夏音、江口結瞳、ラ・フォリア・リハヴァインに仙都木優麻、藍羽浅葱、煌坂紗矢華、香管谷雫梨・カスティエラ、羽波唯里、斐川志緒、妃崎霧葉。んで、アヴローラ・フロレスティーナと姫柊雪菜。これでちゃんと12人。自前の眷獣を持っているアスタルッテは血の伴侶には慣れないものの、魔力連結はしているので事実婚状態。十三人居る!?
一度、暴走した古城を元に戻すために招集された12人の花嫁たちだけど、あの時は結局血の伴侶を集めて儀式して、という通常の流れにならなくて、暴れる眷獣ヒロインたちがぶん殴って正気に戻すというそれどうなの? 嫁怖い、というかなり力づくな流れで片が付いてしまったので折角の花嫁設定ががが、という所があったのですけれど、この最終盤になってもう一度仕切り直して血の伴侶たち12人の想いと力が合わさって、古城復活、という王道の流れが来るとは思いませんでした。ベタだけど、この整えられた流れは美しさすらあるよなあ。
そしてメインヒロインが12人いて誰一人として個性埋没していない、というのが何気に凄い。この中では煌坂とカス子が圧倒的イジラレ役になってしまいましたなあ。まあ最初からですけど。
煌坂がもう、チョロ坂さん、チョロいさんの面目躍如とイイますか、結瞳の夢魔の力にアテられてたからといって本音ダダ漏れすぎでしょう。どれだけ古城のこと好きなのを拗らせてるんだ、この愛人体質娘。おまけに、相手が最強の夢魔だからといって簡単に操られすぎである煌坂さん。魅了かけた結瞳ですらちょっと引くくらい完璧に洗脳されちゃってたし。普段よりスペック発揮してるし。なんかもう、あらゆる方向にチョロいよねこの人w
そして、古城だけじゃなくて多方面からも変なあだ名や呼び名つけられてキャンキャン鳴くはめになってるカス子さん。那月ちゃんにパッパラ修女騎士(パラディネス)とか呼ばれたのにはこっちまで吹いてしまった。なんかもう誰も雫梨とか呼んでくれてないんですけどw
浅葱はもう女帝としての貫禄が根付いてしまっていて、今回何気に一番ヒロイン的な活躍をしていたのって妹の凪沙だったんじゃないだろうか。結局、凪沙こそがアヴローラをはじめとした人造吸血鬼たちを救うための鍵となる存在だったわけですし、巫女としての役割をいかんなく発揮して本来手の届かない場所から、アヴローラに手を差し伸べる姿なんぞは美しさすらありました。この子、現在はやかましい中学生の小娘なんですが、将来美人になるんだろうなあ。父親と母親がアレなので、あんなふうにはなってほしくないですけど。
そして、本命の雪菜はというと。結構今回置いてけぼりというか仲間はずれというか。獅子王機関のエージェントという立場もあったので、一連の危機の中で絃神島の住人として動く古城たちとどうしても距離を置かないといけない、という所もあったのですけれど。
下手にどっちかを選べ、みたいな選択肢を突きつけるのではなく、監視役という雪菜のアイデンティティを最後まで尊重してあげたのは、古城くんらしいなあ、と思いつつ、そこはもっとグイグイと押して本当の意味で自分のものになれ、みたいな事もちょっとは言って欲しかった所もあります。
彼の朴念仁は結局最後までゆるぎもしませんでしたからね。いや、案外雪菜含めてかわいいかわいいは連呼していたような気もしますけれど、恋愛的な意味で古城がデレたかというと……最後まで変わらんかったもんなあ。個人的にはもう一声、古城くんの方から恋愛感情に目覚めた所を見せてほしくはありました。というか、責任取るところ?
まだまだ古城くんの長い物語は続くようで、この天部編は序の口、みたいなことを未来から来たあの子たちがこぼしてましたけれど、ほんと全部片付いて終わったー、という感じは全然しないんですよね。
わりと今までと同じような感覚で一つの事件が幕を下ろした、んですぐにまた新たな事件が……と続きそうな感じで、あんまり最終巻という感じしないんですよね。そのお陰で、長く長く親しみ楽しんだシリーズが終わっちゃった、という寂寥感も味わわずに済んでいる、とも言えるのですけれど、もうちょっと区切りの感覚も欲しいので、後日談的とかスピンオフ的なものは出して欲しいなあ。
ともあれ、9年近くにも渡って長らくお疲れさまでした。うん、ひたすら楽しかったなあ。


ダークエルフの森となれ -現代転生戦争- ★★★☆   



【ダークエルフの森となれ -現代転生戦争-】 水瀬 葉月/コダマ 電撃文庫

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褐色ギャル風ダークエルフとの同棲。そして種の生存をかけた戦争が始まる!

輝獣と呼ばれる自然脅威から日本を守る騎士候補生として学園生活を過ごす朝倉練介は、誰よりも駆動鉄騎の扱いに長け、優等生の仮面を被り、だがしかし温度のない日常に倦んでいた。
そんなある日、木の上から突如彼に飛びかかってきたのは、一人の黒ギャル女子高生……もとい異世界から転生してきたというダークエルフ、シーナだった。
挑発的な態度、嗜虐にみちた言葉、それでいて明るい、日だまりのような笑顔。そんなシーナに眷属として見初められた練介は、彼女とマンションで同棲を始め、やがて異世界から転生してきた魔術種たちの生き残りをかけたバトルロイヤルに巻き込まれていく。
これは世界から零れ落ちた二人の、大それた神話で――黙示録だ。

黒ギャルの装いとダークエルフって思いの外似合うなー。というか、これは絵師さんのデザインが素晴らしいというべきか。派手で享楽的な見た目の割に品の良さが伺えるのは、化粧のけばけばしさが見当たらなくてダークエルフという素体そのままだからなのだろうか。
というわけでダークエルフに、ヴィラン好きのグロ趣味を隠して品行方正の優等生として窮屈に生きる主人公が運命の出会いをしてしまう、というお話。主人公の趣味嗜好からして、水瀬さん元来のエログロ好きが詰め込まれていて、懐かしいというべきか相変わらずというべきか。
しかし主人公の練介は、ダークエルフを悪の象徴と見なして興奮気味に語っているけれど、実のところそこまでヴィランとしての印象ないんですよね、ダークエルフって。確かに、闇勢力側の種族として基本扱われているけれど、わりと悪役としては採用されてないんじゃないだろうか。ダークエルフの原体験というと自分はやはり【ロードス島戦記】のピローテスなのだけれど、ダークエルフのキャラでも最古参だろう彼女からして、決して悪役ではなく主人公と対をなすライバル役の恋人として、愛に一途なキャラでしたからね、そんな「悪」というイメージは全然ないわけです。
もっとも、練介の思い描く「悪」というのは犯罪的なものや邪悪で他者を傷つけるモノというジャンルではなく、アウトサイダー……。品行方正で誰の目からも清く正しく秩序だったもの、から外れたもの、自由で何ものにも捕われず、人から後ろ指さされるような後ろ暗さを抱いてしまうもの、というイメージなのだろう。
実際、シーナは自由奔放で規範に囚われず自儘に振る舞う人物だけれど、無闇に人を傷つけて喜ぶような悪質だったり悪趣味な人柄ではない。他者から虐げられることに傷つき、裏切られたことをトラウマのように抱えているある種真っ当な感性の持ち主である。
元の世界では嫌悪され排斥され問答無用で踏みにじられるだけだったダークエルフという種族そのものを、好きだと叫んだ練介に興味をいだき、ダークエルフな自分に隔意を抱かないどころか好意を向けてくる事に嬉しさを感じてしまう、その時点で彼女の感性というのは真っ当の類なんですよね。
むしろ、歪んでいるのは朝倉練介の方なのでしょう。その歪みは、親をはじめとした外圧によって無理やり押し込められ型に嵌められることで中身と体面との齟齬が軋みをあげて徐々に破綻しはじめていた事による歪みだったのでしょうが。
彼にとってダークエルフという悪の象徴は、自分を偽らずに型にも嵌められずに自由に自分を曝け出しているという憧れの象徴だったのでしょう。そしてシーナは、その思い込みから一切外れることのない彼の思い描くダークエルフそのままだった。閉塞感に狂を発して、投げやりに自死を選ぶほどに追い詰められていた練介にとって、それは今までのすべてを投げ捨ててもすがりつきしがみつくに十分な憧れの具現であったのでしょうか。普通はこんなに懐かれてはドン引きするし警戒もするんでしょうけれど、シーナにとっても彼の無窮の好意は、今まで望んでも得られなかったプラスの感情であり、どうしようもなくガッチリ凹凸がハマってしまったんでしょうな。シーナが、一時なりとも得られたと思ったそれを裏切りによって踏みにじられてしまった後だった、というのも大きいのでしょうけれど。
最初は二人共、ガワだけだったと思うんですよね。練介はダークエルフという象徴に夢中でシーナという個人を見ているわけじゃなかった。シーナも、その野放図な好意が心地よくて練介という青年については興味半分で覗き込んでいるような状態だった。
それがいつしか、練介が好きだ好きだ、と公言する相手がダークエルフという存在ではなく、シーナという個人へと変わっていっていたのはいつからだっただろう。練介自身は、最初から最後までダークエルフを悪の象徴として奉り、ダークエルフが好きだと言い続けているけれど、たしかにその好きはいつしかシーナという個人へと向けられているんですね。練介自身はその事に気がついていないのか。意識すらしていないのか。それは、体面を繕うことに人生の大半を費やし、生きるエネルギーの大半を注ぎ込んでいたが故の思考の硬化なのかもしれない。体面の奥に押し込めた自分の本音、素の気持ち、表に出せない趣味嗜好。いつしかそういう自分の本来の内面すらも、無自覚に型に嵌めて「本当の自分はこうなんだ」という枠に当てはめてしまっている気がするのだ。その「本当の自分」を一生懸命振りかざして、シーナに尽くしているけれど、どうにも「ダークエルフが好き」という主張だけが後半に行くほど浮いて見えるのだ。シーナへの一途なほどの好意、自分が変質しても変わることなく彼女と一緒に居続けたいと願う気持ちが自然で想いに満ち満ちているだけに、尚更にそれが「建前」に見えてしまう。いつしか、「本当の自分」という形が、自分自身に見せる体面になってやしないだろうか。練介の本当の気持ち、本当の想い、いつしか「本当の自分」から溢れ出して不定形の型にはまらない自由なものとして、自然に溢れ出しているように見える。
それだけ、朝倉練介という青年が押し込められていた型枠というのは、窮屈なものだったのだろう。押し込められていた内側にまで根付いてしまうほどに。
だから、ダークエルフという種族が好きという言葉とシーナが好きという言葉が重なった時、君と一緒に居たい、と。好きな子と、はっきり言葉に出来た時に、彼は解放されたのだと、思うのだ。
さながらそれは、世界を救う話なんかじゃなく、一人の青年と一人のダークエルフが孤独と閉塞から救われる話。
運命のようなボーイ・ミーツ・ガールのお話だったという事なのだろう。

http://yamata14.web.fc2.com/turezure/mi/minase_haduki.html

ワールドエンドの探索指南(あるきかた)2 ★★★☆   



【ワールドエンドの探索指南(あるきかた)2】 夏海 公司/ぼや野  電撃文庫

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“学園”を脱出したボクとヤヒロは、ミハシラを目指し、無人の街を進んでいた。しかし、進むにつれて凶暴さを増すミサキの出現や、物資の消耗に2人だけでの探索へ限界を感じ始める。そんな中、旧い前線基地の“工場”が近いと知り、補給のためにかつて“学園”が放棄したその施設へと向かうことに。そこで待ち受けていたのは、別拠点“教会”の遠征隊のメンバー、ツクシだった。たった一人で“工場”に立てこもるツクシに、敵対心を露わにするヤヒロ。他の探索メンバーの有無や、一人で見張りに立つツクシに不信感を持ったボクは、一計を案じ―。

こっれっはっ、気づかんわー! 分からんて!
視覚情報に完全に騙された。いやこれはちょっとズルくないですか? もう何も信じられないw
いやでも凄いのはタイキですよ、これは。ツクシとの出会いから合流までを再確認してみたのですが、こうしてみるとヤヒロの反応は正しい、というか普通のものだったんですよね。一巻では性格的には大雑把というか鷹揚で、他人から信用されていない事この上なかったタイキの事も端から信じて命預けてくれるような娘だったわけですよ。それが、この二巻ではやたらと刺々しいし、ツクシに対して警戒しまくるし、ああも他人を寄せ付けまいとするヤヒロはこれまでの印象とはまったく別だったので、キャラ変わった? と思うほどだったのですが……。いやこれは、ヤヒロでもそう反応するよね。むしろ、よくタイキの言うことを聞いてくれたというか、それだけタイキの事を信頼していたという事なのか。読んでいる最中は言うこと聞いてくれないなあ、とすら思っていたのだけれど逆じゃないか、実際は。
だいたいこの場面、反応というか対応がおかしいのは絶対タイキの方である。ってか、ナンナのコイツ? あの段階のあの場面で、あの咄嗟の状況でなんであんな冷静な対応が出来るの?
あれは、もう最初から可能性としてそれが「ある」と頭のどこかで考えを据え置いていなければ出来ない反応ですよ。だから、読んでいるこっちはまったく違和感に気づかなかったし、ツクシもまた微塵も気づかなかったわけだ。
あれ、タイキが当たり前のような顔しているから、ヤヒロの過敏な反応が単なるよそ者、一度攻撃してきた見知らぬ謎の人物、に対する警戒にしか見えなかったんですよね。
ヤヒロがそういうタイプの人間ではない、と知らないツクシからしたら、むしろヤヒロの方が当然の態度に見えたかも知れない。
しかし、そう考えるとタイキはほぼこの段階で、自分たちの目の前に聳えている「工場」の正体についてある程度当たりをつけたんじゃなかろうか。
さすがに中で何が起こっていたかについては、ツクシに聞くまでは知らなかっただろうけれど。
でも、それも聞いた段階で起こっている状況の大まかなところ、或いは原因の一番根っこの部分は気づいたんじゃなかろうか。
ヤヒロがぶっ倒れたあとのツクシが語ってくれたこれまでの体験は、その結論を補強し想定を具体化するための材料になったのだろう。でなければあれだけすぐに、教団側の探索チームが壊滅した、もうホラーじゃね?というようなSAN値直葬なケースへの対策を、お披露目出来るとは思えない。
いやほんとこいつどこまで見えてるんだ? ツクシに対しては勘働きを間違えたヤヒロですけれど、まず外さないその感性がタイキに対して全幅の信頼を寄せているの、よくわかったわ。
ヤヒロに関しても、一度ツクシに助けられてからのあのツクシへの打ち解けっぷりは、あれはあれで凄いのですけれど。いや、あれこそが本来のヤヒロというべきなのでしょう。

冒頭では、拠点を持たず流離うしかない二人きりでの探索に限界を感じているようでしたけれど、こうしてみるとこの二人と一緒に行動するというのは、能力云々とはまた別にこの二人の感性というか価値観というか、それについていける人でないと無理なんじゃなかろうか。
その意味では、ツクシという少女はついていけるか云々じゃなくて付いていってしまうというか、二人のハズレた所をわざわざ気にする余裕がないタイプだった気がするので、案外相性も良かったんじゃないだろうか。あの手先の器用さや雑務能力はヤヒロとタイキの二人にはない能力でしたしね。打ち解けてからのヤヒロのツクシへの可愛がりっぷりも、かなりお気に入りみたいでしたし。

これはツクシという少女の意地とも誓いとも取れる戦いの跡に、タイキとヤヒロが訪れたお話であり、その意志の強さにあらゆる意味でタイキたちが救われた話でもありました。タイキが作中でツクシに語っていたことですが、彼女が居なければまず間違いなく二人は教団の探索班と同じ末路を辿ったでしょう。あ、いやどうだろう。ああ言ってますけれど、タイキなら致命的になる前の段階で踏み抜かずに後ろに下がれたような気もしますけれど。
でも、ツクシが語ってくれた情報がなければ、彼女の存在がなければ、まずこの「工場」で何が起こっていたかの全貌はつかめなかったでしょうし、ひいてはこの世界の真実の一端を捕まえる事も叶わなかったでしょう。
そうこれ、この終わりを迎えたような世界の正体に、深く踏み込む展開でもあったんですよね。タイキは表に出ている部分は氷山の一角で、まだ相当の想定から推測からを既に頭の中で広げているんだろうな。
最後の最後で湧き出るが如くまた謎が吹き出てきましたけれど、次回でその深奥にたどり着けるのか。……道連れが、増えてくれると思ったんだけどなあ。


シリーズ感想

七つの魔剣が支配する VI ★★★★☆   



【七つの魔剣が支配する VI】 宇野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第6弾!

エンリコの失踪はキンバリーに衝撃をもたらした。二年連続の異常事態に教師陣も犯人捜しへと動き始め、ついには学校長自らの尋問が生徒へと及ぶことに。
不穏な情勢下で近付く統括選挙の時期。後継者を決めあぐねるゴッドフレイ陣営の前に、因縁の対抗勢力が立ち塞がる。
そんな中、人生を懸けて箒競技のタイム更新に挑むアシュベリーは、大きな壁にぶつかり苦しんでいた。彼女の助けになろうとするナナオだが、ふたりの華々しい活躍は選挙と無縁でいられず──。
一方でオリバーたちの前には、転校生の少年・ユーリィが現れる。軽いノリとは裏腹に高い戦闘能力を持ち、楽しげに校内を探って回る彼の目的とは──。


あの3巻でのオフィーリアとカルロスの美しい破滅を目の当たりにして以来、未だにどう整理していいのかわからない感情の行所が、またぞろこの巻を読んで胸の中に渦巻いている。
わからない。悲しいのか感動しているのか、当たり前の喜怒哀楽では表現しきれないどう捕らえて良いのかわからない複雑な想いが、激しく胸をかき乱す。
彼ら魔法使いたちの価値観は、この物語で描かれる登場人物たちの価値観は大きく一般的なものとは異なっている。それが常識として描かれることに、どうしても混乱が生じてしまう。置いてけぼりにされるのならそれはまったく違い世界の出来事として分けて捉える事ができるだろう。でも、この物語は凄まじい勢いで読んでいるコチラの気持ちを引きずり込んでいく。共感にも似た網でこちらを捕らえて、彼らが感じたであろう想いを共有しようとしてくる。読んでいるこちらの価値観では理解しきれないはずのものが、感覚的に同期されていく。だから、わけがわからなくなるのだ。この情動を表現する言葉がなくて、混乱する。でも、確かにそれを、感じている。それがどうにももどかしい。

彼ら魔法使いは、その在り方からして人外の存在だ。自らが見出した命題にそれこそ魂から殉じて捧げ尽くす理外の存在だ。しかし、同時に凄まじいほどの深い情を持つ者たちでもある。これは年齢の上下に関わらず、学年の上下も関係なく、教師たちもまた同様に、きっと普通よりももっともっと情によって形成されている存在なのだ。狂うほどに、愛に生きている。魔道の追求のためにすべてを捧げているようでいて、きっと彼らは愛のためにすべてを投げ売って在る存在なのだろう。今までずっと彼らの在り方を見てきて、そう思う。そう思うようになった。
だからこそ、道を踏み外す。だからこそ、憎悪に呑まれる。オリバー一党が復讐に狂奔することも、またその原因となったオリバーの母の死も、魔法使いたちのあの想像を絶するほど深い情愛こそが根底にあるじゃないか。
オリバーたち剣花団の関係を見てみるといい。あれが、ただの友情、ただの親愛で結ばれた関係だろうか。あのオリバーが自分の弱さを泣きじゃくるという幼い子供みたいな姿で曝け出してしまえるほど深く繋がった関係。それを見て取り乱すようにしてオリバーのもとに寄り添う面々。
あんな、深い深い情愛で重なり合った友情が、一対一ではなく6人のグループで結ばれ合う、いや溶け合うというほどになっているものを、自分は見たことがない。親友や一心同体どころじゃない。
でもきっと、彼ら剣花団ほどの関係はこの世界でも貴重ではあっても特別ではないのだろう。この作品で描かれた魔法使い同士の人間関係は、繋がりは、どれもが勝るとも劣らない深度の情で紡がれている。
元生徒会長のあのゴッドフレイへの敵対と執着ですらそうだ。いやあれは、勘弁して欲しいほどヤベえんだけれど、あの元生徒会長があの執着を剥き出しにさらけ出しながら、どちらの陣営も異常に思っていないあたり、あれですらも決して珍しくはない魔法使いの在り方なのかもしれない。

そんな彼ら魔法使いの、情を燃料として焚べるように駆け抜ける人生において、だからこそ「死」もまた無慈悲な悲劇、ではないのだろう。
魔法使いにとって、きっと死ぬことそのものは忌避するではないのだ。それは受け入れるべき結末の一つであり、それが自分の魔法使いとしての人生、在り方の完結としての死であるなら、寿ぐべき祝福ですらあるのだろう。哀しく寂しくとも、それは良き旅立ちなのだ。
だから当人たちにとって満ち足りた幕引きならば、見送る者たちはそれを黙して受け止める。それが連れ添う者の居る孤独ではない旅立ちなら尚更に。
死という完結は、完成は、だから神聖ですら在る。
なればこそ、その神聖を穢すことへの呪いは如何ばかりか。寿がれるべき死を、無残な形で台無しにし、そこにいたる魔法使いの人生そのものを踏みにじった事への憎悪はどれほどのものになるのだろう。
オリバー一党のあの妄執とも狂奔ともいうべき憎悪の所以が、少しわかった気がする。そして、オリバーを愛する従兄姉たちが、どうしてあれほどオリバーの苦しむ姿に魂を引き裂かれながらこの復讐を止めないのかも。
それがもう、オリバーにとっての魔法使いとしての命題となっているから。
それを輔けることこそが、従兄姉たちの魔法使いの人生となっているのだ。

でも、いつかオリバーはその歩むべき人生を引き裂かれるような気がする。情愛の深さこそが魔法使いの業ならば、剣花団の中での日々はオリバーの中に新たな命題を産み始めているのではなかろうか。それは、ナナオとはじめて剣で相対した日をはじまりにして。
それとも、この物語における魔法使いたちの価値観は、在り方は、オリバーの復讐と友情を、両立して果てさせる事が叶うだけのものを内包しているのだろうか。

ただ一途に魔法使いとしての生きて生きて、駆け抜けたアシュベリーの姿に、魔法使いの在り方の結晶を見た。その結末は、きっと満ち足りたもので幸福だったのだろう。きっとあれこそが、ナナオの思い描き目指すべき魔法使いの完結だ。
果たして、ナナオはあのように生きて、死ねるのか。
命を文字通り圧縮して、生き急ぐオリバーはそんなナナオに応える事が出来るのだろうか。二人は、剣花団の6人は、あのオフィーリアとカルロスのように、アシュベリーとモーガンのように、あの先輩たちのように存分に生きて、思い残すことなく共に逝ける相手を見出すことが出来るのだろうか。
アシュベリーとモーガンの最期の挿絵は、本当に幸せそうであのシーンの印象を決定づけてくれたように思う。
……ああもう、どんな最良の結末でも彼らが生きて幕引かれる姿が思い描けない。そして、それが哀しくともハッピーエンドなのだろうと感じてしまう時点で、この物語に随分と毒されてしまっている。
どうか彼らに幸せな良き結末を。ただただそう願うばかりだ。

シリーズ感想

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 V ★★★☆   



【新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 V】 支倉 凍砂/文倉 十  電撃文庫

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神をも畏れぬ女商人エーブの謀略を見事に退け、王国と教会による戦争の危機を回避したコルとミューリ。騒動も落ち着く頃、コルは自らを慕ってくれるミューリとの関係をはっきりさせなければとあれこれ知恵をひねり、ある方法を思いつく。そして調べもののため、かつて訪れたブロンデル修道院を目指す道中、コルとミューリは行き倒れの少年ローズと出くわすことに。彼はミューリの尻尾が飛び出るほど高名な聖クルザ騎士団の見習い騎士で、世界最強の騎士団が、悪名高い“薄明の枢機卿”のせいで壊滅状態だと訴えてきて―!?一時の休暇のはずが、またしても大事件勃発のシリーズ第5弾!

おおっ、黄金羊のハスキンズ翁、久々の登場である。ウィンフィール王国が舞台になれば、また再登場あるかな、と思ってはいましたけれどこのタイミングで、という事になりましたか。
ロレンスとホロ相手には塩対応、とまではいかなくても峻厳でどこか動かぬ岩を相手にしているような相対し方をしていた印象のある羊のお爺さん。ホロですら強く出られず、耳を伏せていたイメージがあるもんなあ。それだけに、コルとミューリの年少組がこの寡黙で厳しい老人とお話するのは辛いんじゃないか、と思っていたら……あれあれ? なんだかミューリには対応が柔らかいぞ? というか、ダダ甘だぞ? 羊爺さん、デレてますか? ミューリのこと、孫感覚ですか!?
ハスキンズさん、生意気と称したホロと比べてそりゃあミューリは可愛げの塊みたいな娘で、最初こそビビってたもののすぐに懐いてわりと遠慮なく無邪気に接してくるものだから、お爺さんちょっと嬉しそうなんですけど。
まあ爺馬鹿というだけではなく、ロレンスとホロの行く末がミューリという物証付きでハッピーエンド継続中という形で収まった事が、本当に嬉しかったからというのも大きいのだろうけれど。あの頃はまだホロは厭世的な部分があって、ロレンスと添い遂げようと決心ついてなかった頃なんじゃなかったっけか。だから、ホロの先行きをハスキンズ翁は決して楽観はしてなかったと思うんですよね。それがこうしてミューリがあの時ロレンスにくっついていた子供コルとともに自分を訪ねてきてくれた。
ハスキンズ翁がこうして本音語ってくれるとは予想外だったのですが、ホロたちが訪ねてきた事も彼にとってはとても嬉しいことだったそうで、あれで百年まだ頑張れる気力を得た、と言ってるくらいですから、ミューリたちの来訪はさらに百年重ねられたんじゃないだろうか。

さて、ミューリとの間に確かな絆を形であらわすために、二人だけで使う紋章を定めようと決めたコルとミューリ。兄妹というには実際には血が繋がらず、しかし聖職者になるために結婚はできない。しかし、今更離れることは能わず、きっと死ぬ時は一緒と信じられるほどに共に有り続けたいと願った二人。その思いを確かなものとするための紋章だったのだけれど、逆にその紋章を二人だけで使うためには、二人の関係をはっきりしたものにしなくてはならない、という事実が発覚してしまう。
そう言えば、ホロとロレンスも随分と長い間お互いの関係についてウダウダやってたなあ、とふと思い出してしまった。エルサにお互い好きなのになにウダウダやってんの! と一喝されて色々と関係が一新されたんですよねえ。
ミューリとコルの場合はまたホロとロレンスのときとは事情が違うので何とも言えませんけど。コル個人の信条の問題ですし。それでも、ミューリの求愛に応えれば即座に全部解決じゃん、と思ってしまうのも否めません。
最後に改めてコルってば、ミューリとの新しい関係について見出していましたけれど、さすがにちょっとそれしっくり来ませんよ? ミューリが騎士、というのもねえ。足元が疎かでふわふわしているコルの代わりに、足元に注意し迂闊を指摘しナニカにぶつからないように手を引いて歩くミューリを騎士と呼ぶのは、さて……微妙に色々と丸投げして頼り切りになると言ってるようなものな気がしてきたぞ。まだ兄妹であった方が兄として威厳があったようなw ミューリはこれはこれでご満悦かもしれませんが。

月を狩る熊の謎についても、ミューリによって新たな見解のアプローチが。新大陸に消えた、という話になっていたけれど、そういえばそうなんですよね。前から漠然と感じてはいたんですよ。人ならざる者、ホロたちのような獣の神たちの間では月を狩る熊はまさに魔王さながら、有名なんてものじゃないのに、人間たちの間であの熊の話って一度も持ち上がった事なかったんですよね。伝承ですらほとんど語られていない。ホロにしてもハスキンズにしても、古きものは何かしら伝承を残しているのに、一番有名になりそうな熊についてはあんまり聞かないなあ、と思った事がそう言えば狼と香辛料を読んでいる時にあった気がします。
まさか、そういう方向にアプローチしてくるとは予想外でした。これ、地味にコルにはショックな仮説だよなあ。
いやでも、コルにとって神とは実体のある存在として受け止めているわけではありませんし、彼の信仰の在り方を見れば、発端なんて究極的には気にしてもしょうがないもの、として割り切れる範疇なのかも。でもそうなってくると、教義とかにそこまで拘る必要もなくなってくるよなあ。

コル、すなわち薄明の枢機卿の活躍によって、ウィンフィール王国内で旧来の教会勢力が劣勢となってしまった、その余波でウィンフィール王国からの寄付で運営されていた教皇直属の聖クルザ騎士団、その中のウィンフィール分隊が存続の危機に立たされてしまう。
まさに、コルの影響によるもので、良かれと思ってやっていることでもどうしてもしわ寄せというのはどこかで出てきてしまうという事なんですね。誰が悪いというわけでもなく、しかしその道理をなかなか受け止められる人間は少ないわけで。でも、ウィンフィール分隊の隊長さんはその道理がわかってる人だったんですね。だからこそ、コルを悪者にして王国内の反抗勢力側について立場を確かなものにする、という安易な方法を取らなかった。それは身を挺して周りのすべてを守ろうという騎士としての誇りであり、しかし選んだ方法は茶番を演じることであり、騎士としての誇りを捨てる行為でもあった。つまり、自分だけが貧乏くじを引くことで全部丸く収めようという方法だったんですね。
でもそれは、コルの信条としては受け入れづらい事だったんですね。誰かに負債を押し付けない、みんなが幸いを得る。それが商人でも武人でもない、コルのやり方でエーブからすらも勝利をもぎ取り分配し直したやり方だった。
一時はこらえて隊長の茶番を受け入れようとしたコルだったけれど、まさに起死回生の発想の転換でした。しかしこれで、聖クルザ騎士団からも信頼を受けるようになったわけですから、薄明の枢機卿の名声は揺るぎないものになってしまったなあ。もうここまで来ると、一介の聖職者なんかに戻れないんじゃないだろうか。
ハイランド王子は、何はなくとも後ろ盾になってくれるだろうけど。この人、王族なのに人が良すぎて心配になる。ちょっとイイ人すぎやしませんかね!?


地獄に祈れ。天に堕ちろ。2.東凶聖餐 ★★★★   



【地獄に祈れ。天に堕ちろ。2.東凶聖餐】 九岡 望/ 東西   電撃文庫

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死神×聖職者。イカれた奴らのイカれた日常、再び!

みなさーん! 今日も元気に死んでますかー!? 亡者の街『東凶』より、DJフルソマがお送りいたします。
さて相変わらず悪人亡者を狩りまくる『死神』ミソギですが、なんと彼の前に 『本物の死神』が現れたというじゃありませんか。しかも超美人。いいなぁ!
更に『人喰い鴉』のアッシュが、なんでも食べちゃう最悪の『亡霊兵器』を追いかけてきたというから、この街はまたかなり物騒なことになりそうです。
……というかこれ、東凶壊滅のフラグビンビンでは?
じゃ、じゃあDJはお先に逃げるので、みなさん代わりに世界の終わりを見届けてくださいね! グッバイ!!
……え? 逃げ場、無いの!?


東凶巣怪吊と書いて「トウキョウスカイツリー」と読むの、結構好きかもしらんw
一巻では終盤になってアッシュが正気を取り戻して一人の人間として立ち直るまで、アッシュが本当の意味でイカレてしまっていたので、バディものとしての醍醐味を味わえたのはクライマックスに差し掛かってからだったんですよね。
しかし、この二巻では最初からアッシュがもうまともになっているだけに、スロースターターだった前回と異なり今回は最初からバディものとして全開フルスロットル。
そう、これだ、これが見たかったんだよ、というミソギとアッシュのお互い罵り合い実際手も足も出る喧嘩を繰り広げながら、一方でやたらと息ピッタリでシンクロしてるかのように戦闘ではお互いを補い合い、また以心伝心でお互いの意図を読みあい、時に強引に引っ張り回し、そのすべてがなんだかんだと相手への揺るぎない信頼に基づいている、というこれぞまさにバディアクションの完成形、という体を最初から最後まで目一杯見せてもらいました、やったね!
息をするように貶し合い殺気をぶつけ合いながら、いざミソギやアッシュそれぞれの信念や根源を揺るがすような事態を前にして思わず相方が立ち止まってしまった時は、荒っぽいやり方や口ぶりながら叱咤し背中を押すような気配りを見せるわけですよ。それが優しい言葉だったり親身な態度じゃなく、拳だったり皮肉全開の言い回しだったりするのが彼らなわけで。
傍目には本気で殴り合ったように見えて、実は叱咤激励してたりで男同士でわかり合ってるような態度に、思わずフィリスが「男の人って……」とため息をついてしまうあたりに、もう分かり味が尽きないわけでw

そのフィリスだけれど、彼女は彼女で以前のイカレてしまっていたアッシュの制御弁でもあった「姉」という役割を、アッシュが正気を取り戻して降りる事になったのだけれど、ある意味拠り所だった狂気を失い、姉の喪失を受け入れてしまったアッシュに、なおも寄り添い続けてるんですね。
以前と違ってちゃんと話が通じるアッシュは、前みたいに何をしでかすかわからない危なっかしさが取り除かれて、ちゃんとフィリスの言葉も聞いてくれるので、暴走するアッシュにひたすら振り回されて悲鳴を上げていたのが懐かしくなるくらい。いや、ほんとにちゃんと話も意見も聞いてくれるようになりましたよね。そのぶん、フィリスの押しも強くなったようで、アッシュの聞き分けが良くなったというよりもフィリスの手綱が効いているという方が正しいのかも知れない。ミソギと合流してからも、アッシュだけでなくミソギもまとめて彼女が引っ張っている節もありましたし。
ビシッと言い聞かせられて、思わず顔を見合わせるアッシュとミソギがまた良いシーンでありました。
フィリスもまた、こうしてみるとほんとうの意味でアッシュの相棒となってるんですよね。今度こそ、与えられた役割ではなく自分の意志で、アッシュのパートナーとして歩んでいく事を選んだ生き様は、まさに強い光のようで正気を取り戻すと共に絶望も思い出してしまったアッシュを照らす光となっているかのようです。

こうしてみると、アッシュにはフィリスという相方が出来ているわけで、そういう意味ではミソギにもパートナーがほしいよなあ、と思ってしまいますよね。それこそが、火楽木蓮というもうひとりの、そして本物の死神だったのではないでしょうか。
太平楽でどこか呑気な、閻魔の友人でもある死神の女。本質的には、ミソギと同じ方向を向いているキャラクターのはずなのだけれど、その一途さと優しさが生死の境界が喪われたこの東凶という場所においては駆け足になってしまったのか。長らく眠っていて、目覚めたら自分の死神としての在り方を根底から覆すような世界になってたら、そりゃ目を回しますわなあ。
そこから、亡霊兵器の襲来という偶然と地獄の閻魔との約束、迷い子たる少女の魂の懇願、と彼女の一途さをひた走らせ、願いを叶えるという特性を加速させる要素が加わったことで、木蓮に亡霊兵器の開花に便乗させることにだったのか。悪意ではなく、ただただ寂しい思いを慰めたいがために、世界そのものをひっくり返そうとしてしまった優しい死神。それは、ミソギみたいなヒーロー気質に人間にとって、好ましくはあっても忌避スべき相手じゃなかっただけに、まあ頑固者同士ぶつかりあってそれぞれの意志を貫き通すしかなかったわけだ。色んな意味で同レベルなもの同士でもありますし。
木蓮、それは嫌いという感情じゃあないんだよ、と教えてくれるような親切な人は幸か不幸かいなかったわけで、いやフィリスともう少し接触が増えてきたら結構ぶっちゃけて教えちゃいそうだなあ、フィリスたん。
相変わらず、ビジュアルの派手さが鮮やかに光景となって目に映るアクション描写。こういう映えるアクションを描ける文章は、この作者さん得意技ですよねえ。今回は最初から最後まで一貫してぶっ千切った痛快エンターテインメントアクションをやってくれて、その上でバディものとしてもこれぞ、という大満足の仕上げで、大変ごちそうさまでした。うん、期待して見たかったものを十全見せてくれた、という感じです。前に物足りないなあ、と思ったところを見事に全部埋めてくれました。ありがたし、ありがたし♪


叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 3 ★★★★   



【叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 3】 杉原 智則/ヨシモト   電撃文庫

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二人の王女と一人の騎士――今、決断の時! 英雄のチグハグ世直し第3弾!

邪神を討ち倒した英雄ギュネイは、敗戦国ランドール王国の荒廃ぶりを見かねて手助けを重ねるうちに、救世主〈黒狼の騎士〉として祭り上げられてしまう。
そんななか、〈純潔の聖女〉エリシスの暗殺計画の情報を得るギュネイ。居ても立ってもいられず、ランドールの姫・ミネルバに暇を乞うが……

「これまでよくぞ仕えてくれました、と言うと思いましたか? 許しません!」
「ええっ!?」

時を同じくして、それまで沈黙を貫いていた不死騎士団残党が王都に押し寄せてきて――二人の王女の間に立つギュネイ、今こそ決断の時!?
邪神王国復興物語、第3弾!


完全に続きが出るの諦めていたので、新刊情報にタイトルが出た時は思わず声が出てしまうほど驚いてしまいました。音沙汰なくなってしまってそのまま幕引きか、と思われている作品でもこうして復活するという前例を作ってくれたのは希望そのものです。
さて、前回は衝撃的というのもまだ生ぬるいほどの欠片も頭の片隅になかった衝撃的な展開に、ある意味打ちのめされ、ある意味胸を突かれ情動を噛みしめることになったのですが。
ギュネイからすると頻繁にあるわけではないにしても、決して珍しいことではなかったのかもしれない。でも、あんな風に感謝されて約束を預けられていく事はなかったんじゃないかな。
彼が見ている世界。魔鎧によって死者の姿と声を聞けるようになってしまったギュネイにとって、語りかけてくる死者は常に傍らにある存在で、いつしか彼は死者と生者の区別が付きづらくなっていき、それが高じて死そのものに忌避感を感じなくなっていく。生きていることも死んでいることも変わらない。そんな生死の境界への認識の曖昧化は、彼から生きることへの尊さと死を迎える事の重たさを見失っていく。もし、そのまま行けばギュネイは、英雄竜騎士は亡者の想念に飲まれて生きながら死者の騎士になっていっただろう。
そんな彼を生者のもとに引き戻したのは。生きていることの素晴らしさと、死の冷たさを恐怖を、死とは喪われることなのだという当たり前の事実を突きつけた人こそ、聖女エリシスだったのである。
もうこれ、ただの仲間とか密かに思いを寄せていた姫とかいうレベルじゃないじゃないですか。身を挺して、自分を黄泉から連れ戻してくれた人。自分のために必死になって、比喩ではなく命を賭けて助けてくれた人。ギュネイにとって、もう唯一無二の相手じゃないですか。掛け替えのない人、大切な人という言葉では到底足りない人。
……なんで、そんな人放ったらかして樵なんかしてたんだ、こいつは。
聖女エリシスに危機が迫っていると知った途端に、何もかもを放り出してエリシスのもとに駆けつけようとするギュネイ。
いや、放り出せるはずないじゃないか。
ギュネイは自分でも自分のことを正確に分析しているのだけれど、この男とにかく目の前の事にしか考えが及ばないんですよね。とにかく、目の前の理不尽を見捨てられずにひたすら対処療法で対応していくものだから、にっちもさっちもいかなくなるのである。
一応、先々の展望も考えて想定して動こうとしているのだけれど……どう見てもそれ願望ばかりが混じってて、全然うまくいきそうにないのよねえ。全部自分の都合の良いように動いたらそうなるでしょうねえ、という見通しばかりで甘いよ、考えが甘すぎるよ!
と、思ってたら速攻お暇願ったミネルバ王女にダメ出しされる始末。気持ちよく見送ってくれるに違いない、とか何を考えたらそう思えるんだw
なまじギュネイって、あとでちゃんと冷静になって落ちついて相手の身になって考えればちゃんと相手の言い分にも納得できてしまうので、考え方が甘い割に相手の言い分に納得させられてしまう事も多いんですよね。とはいえ、それは納得できるだけの理由があればこそで、理不尽な相手には相応の剣をきっちり振るっているからこそ、こうして英雄として持ち上げられるだけの結果を出し、悪しき敵を討つ形になっているわけですが。
またそういう時に理不尽を見過ごしたり出来ず、悲劇を見捨てられないからこそ、厄介事にまめに首を突っ込むはめになり、挙げ句にかつての敵国で謎の英雄として持ち上げられ、今下手をするとかつての仲間と敵対しかねない立場になってしまっているわけで。
世渡り下手もいいところなんだよなあ。
でも、今も昔も彼の周りに集うのはそんな不器用な彼を利用して使い捨てようとするような人間よりも、彼のその行いを信じて慕ってくれる相手なんですよね。見る目は、確かなんですよねえ。
ミネルバ王女も、不死騎士団のクルスもこの動乱をギュネイと共にくぐり抜けたことで確かに覚醒に近い成長を迎えているのである。
それは、自分の理想や願望に溺れる事を許してもらえず、現実に直面させられ否応なく向き合わざるを得なくなった結果かもしれなくても。それを強いてきたのは、彼らに救いの手を差し伸べてきた謎の騎士「黒狼の騎士」たるギュネイだったとしても。
だからこそ、彼のことをどこかで恨みながらも慕わずには居られないんだろうなあ。
特にミネルバ王女は、一皮も二皮も剥けてとても神輿なんかじゃ収まらない、女傑へと変貌しつつある。あの不死騎士団の残党たちとの会見での圧倒的なまでの貫禄は、キャラクターとしての魅力としてもヒロインとしての存在感も、見違えるものを見せてくれましたし。
これほど強くなったところを見せて、そして同時にギュネイに対しては弱い部分を叩きつけるくらいに見せてくる。なんか駆け引きも海千山千のものになっていて、これどうやったってギュネイ、この娘さん見捨てられないでしょう。そういう風に、見事に自分を位置づけてみせたミネルバ王女の躍進は拍手喝采である。
でも、ああやって安易に約束してしまうのはギュネイの軽率さ以外のなにものでもなく。こいつ、絶対に約束とか破れない性格しているくせに、先のこと考えないでその場で自分の頭が回る範疇で判断してどうしようもない約束してしまうの、絶対前から何度もやってるぞこいつ。
それで、いろんな女性から恨めしがられるのだ。
ただでさえエリシスにミネルバという二大巨頭が両立してしまい、しかも立場上状況上、二者択一の選択を突きつけられてしまう中で、完全に厄モノでしかないものにまで引っかかってしまって、どうするんだこれ。本気でどうするんだ!?
ギュネイの従者で彼に今の状況を正確に知っているリーリンが、エリシスのもとにまでたどり着けたというのはどん詰まりの状況を打破する光になるのかも知れないけど、放っておくとどんどん自分でどん詰まりにハマっていくギュネイの元から、なんだかんだとしっかりしていて苦言もていしてくれるリーリンが、あまり効力を発揮できてなかったかもしれないけれどそれでもお目付け役として機能していたはずのリーリンが、いなくなってるという状況はなんかもうギュネイが頭からドツボにハマる前フリにしか見えないんですよねえ。実際、そうなってってますし。
それでも、エリシスが国元からこちらに来ているというのは、状況がもっと最悪になる可能性もあり、一応手の届くところまで来てくれたということで最悪の中の本当の最悪は回避できる可能性のようでもあり、ともかく本番はここからなんですよねえ。
ある意味物語としてキリのよかった前回と違って、今度は本当に次回に続くになっているので、ちゃんと遠からず続刊が出てくれることを信じたいと思います。祈りたいと思います。

Babel I 少女は言葉の旅に出る ★★★★☆  



【Babel I 少女は言葉の旅に出る】 古宮 九時/森沢 晴行 電撃の新文芸

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現代日本から突如異世界に迷い込んでしまった女子大生の水瀬雫。剣と魔法が常識の世界の辺境に降り立ってしまい途方に暮れる彼女だったが、魔法文字を研究する風変わりな魔法士の青年・エリクと偶然出会う。

「――お願いします、私を助けてください」
「いいよ。でも代わりに一つお願いがある。
僕に、君の国の文字を教えてくれ」

日本に帰還する術を探すため、魔法大国ファルサスを目指す旅に出る二人。その旅路は、不条理で不可思議な謎に満ちていて。――そうして、運命は回りだした。
これは、言葉にまつわる物語。二人の旅立ちによって胎動をはじめたばかりの、世界の希望と変革の物語。


以前、電撃文庫から出た【Babel ―異世界禁呪と緑の少女―】と【BabelII ‐剣の王と崩れゆく言葉‐】の二巻。残念ながらこの二巻で打ち切りになってしまったシリーズの、これリブート版なんですよね。
ちなみに、前の感想がこれ。




この物語の核心ともなる「言葉」に纏わる謎は、シリーズ全般を通して徐々に明らかになっていき、そのクライマックスで劇的にすべてをひっくり返してくれる構成になっているんですね。だからこそ、まだ前フリの段階で打ち切られて終わってしまった時にはぐったりと打ちのめされて突っ伏してしまったものですが。
こうして改めて新文芸の方で再スタートしてくれるとは。同じ世界観でもある【Unnamed Memory】シリーズが好調というのもあったのでしょうけれど、うれしい限りでした。
ちなみに、本作は【Unnamed Memory】シリーズが展開している時代の300年後という事になっているそうです。ファルサス、今やなんか魔法大国になってますし。
ともあれ、リブート版という事で内容自体はまだ前回までと同じところですし、再読♪くらいのつもりで読んでたんですけど、読んでたんですけど、読んでたんですけど……。
んんん? なんか、読んでも読んでも終わらないというか、もう既に文庫一冊分くらい軽く過ぎてるはずなのにまだ終わらないけど、文庫版の第二巻ではファルサスに着いてるはずなのに全く到着する様子が見えないのに、まだまだ話が終わらないぞー!?
というか、なんか前と中身の分量がぜんぜん違うーー!?
と気づいた時には数時間が経っていました。違う、エピソードの密度が全然違うー。
後書き見たら、なんか文庫版では半分削ってましたー、とか仰ってるし。おいおいおい、どんだけ削られてたんだ文庫版。一応ウェブ版も文庫版を読むよりも随分と前に全部読んでいたんですけどね、そう言えばなんか文庫版読んだ時、昔読んだときよりもだいぶサクっと各エピソード終わっちゃった気がするなあ、とは思った記憶があるんですよね。
ウェブ版は確か最初から最後までほぼほぼ纏めて読んだんで該当箇所がどれだけの分量だったのかなんて具体的にはわからなかったものですから、ブラッシュアップしてスリム化したのかなあ、とは思っていたのですけれど、半分削って再構成してたって多くないですかねそれ!?

ともあれ、本作こそが原文に近いスタイルになっているということですか、なるほどー。

しかし、改めて見ると雫って自分でも気づいてますけど、一人で出歩くたびにトラブル巻き込まれますよね、この娘。別に彼女の不注意とかではなく、向こうからトラブル降ってくる不可抗力なんですけど、これだけ頻繁に巻き込まれたらそりゃエリクも目を離せなくなりますわ。安全なはずの町中ですら、容易に巻き込まれてますし。
かと言って過保護にべったりといつもくっついているわけでもないあたりがエリクのサッパリした所で。それなりに面倒見が良いからこそ、雫の旅についてきてくれているはずなんだけど、ベタベタしていない適度な距離感を保ち続けるのがこの青年の不思議な所なんですよね。他人に興味がない、と公言していて、雫に対しても異性を意識させる振る舞いをしないからこそ、二人で旅していて夜なんか一緒に眠ったり宿の部屋を同じにしていても、妙な雰囲気に一切ならないのですけれど。この距離感は独特だよなあ。
それでいて、雫を突き放しているわけではないんですよね。湖底の遺跡に引きずり込まれた時なんかは、走り回って助けに来てくれたわけですし。わりと身を挺して雫の安全を図ってくれたりしている。
この新文芸版になって、エリクの雫への興味というか関心? 彼女に対する思いやりの質感というものはより深く描かれているような気がします。ちょっとした彼女に対する反応や仕草、時折挟まれるエリク自身の感想などから、情動そのものが低温であまり動きを見せないこの青年の雫への「親身」がより伝わってくるような。
逆に、雫の方も突然異世界に放り出された中で、自分とずっと一緒に居てくれているエリクという青年への感謝の思いというのは、並々ならぬものがあるんですよね。それでいて、雫の方もあんまりベタベタしていないのも面白いところで、この旅の道連れ二人は不思議なほどさっぱりとした空気感で成り立っているように見えるのです。でも、一度どちらかが窮地に陥れば、絶対見捨てることなく危地へと飛び込んでいくんですよね。エリクも雫も、まともに戦う術も持っていない人間にも関わらず。
特に雫の方は掛け値なしにただの一般人で特別な能力なんて何一つ持たないのに。途中で一人ぼっちの所を拾って一緒に行くことになった使い魔のメアも、中級魔族とは言えそこまで強い力を持っているわけではありませんから、そんな便利な能力として扱えるものではありませんし。
それでも人づてを辿って協力を取り付け、また自分から渦中へと飛び込んでいく様子は何なんでしょうねこのバイタリティ。
雫自身、優秀で目立つ姉と妹に挟まれて、自己主張もあまり出来ずに姉妹にコンプレックスを抱いている何者でもなく何も持っていないつまらない人間だ、と自分を定義してしまっているのですけれど。
エリクが地味ってことはないでしょう、と若干呆れながら言っているように、絶対雫が自分で思い描いている雫と、傍から見た雫って違うんですよね。全然違うんですよね。こんな地味っ子がいるかー!! 異世界に突然身一つで放り出されて砂漠の真ん中で立ち往生、から速攻で生活基盤整えてしまったように、この娘ってなにげに適応能力が半端ないというかどんなところでも生きていけるようなバイタリティの塊みたいな所あるんですよね。これで凡人ってなら、彼女を目立たなくしてしまうほどの姉と妹ってどんだけの人物だったんだよ、と思ってしまう所なんですがまあ他人の庭の芝は青いってやつなのでしょう。

また、よく注意して読んでいるとエリクと雫が二人で文字や言葉について話しているときに、不可解な違和感が介在するんですよね。エリクは雫の旅についていく報酬の一つとして、雫から彼女の世界の言葉や文字を学ぶことを選んでいるのですけれど、その会話、意思の疎通に妙な「齟齬」が挟まるのです。まず最初に、雫が自分の名前をエリクに告げる所からそれははじまっているのですけれど、この齟齬こそが物語の根幹へと通じていくんですねえ。ってか雫はまだ全然気づいていないみたいですけれど、エリクは途中からその違和に気づきだしているのが面白いというか何というか。
異邦人、真に外から来た存在である雫にとって言葉こそ通じるものの、この世界には寄って立つものはなにもない。その宙ぶらりんの足元のおぼつかなさ、不安感、元の世界に戻れないのではないかという恐怖。どれだけバイタリティに溢れて闊達に過ごしていても、その奥底にはいつだって怖れがある。死地に近いさなかにエリクを助けに飛び込んでいったのだって、数少ないこの世界のよすがであるエリクの存在を、自分から手放すことが恐ろしくてたまらなかった、というのも彼女自身の性格や勇気以外の側面としてあった事でしょう。
そして、この巻のラストに遭遇した禁呪は、この世界の負の側面は彼女のことを異物として排除しようとしてきた。
元々、姉妹の狭間にあって自分の中に寄って立つものを見いだせなかった雫。家を出て一人暮らしを始めることで、姉妹から離れることで自己を確立しようとしていたという自己分析をするほどに、自分の立ち位置を見いだせなかった彼女。
自分の世界から放り出され、異世界でただ一人。そこでも彼女は未だ自分の居場所を見いだせず、大いなる意志は彼女を異質な棘と呼んでして排除しようとする。
それでも彼女は叫ぶのだ。自分はここに居る。

今、それを肯定するのはエリクひとり。雫にとって、放すことの出来ない日常で、自分を認めてくれる世界の代表、日常の象徴。そう思うと、雫にとってのエリクへの信頼というものの深みが、この旅で培われていった二人の関係が、どれほどさっぱりしているように見えても、見える範疇に収まらない深度を持つものなんだと、わかる気がする。
その意味でも、この新文芸版になってより確かに描かれたのって、この二人の関係になるのでしょうかね。

ともなれば、より強烈にそのあたりが問われ突きつけられるだろうファルサス編は、さらに楽しみ。
ってか、ラストにチラッと登場した人物、【Unnamed Memory】が出版物として世に出た今となっては爆弾そのものなんじゃないですか、どっちの作品に対してもw

古宮九時・作品感想
 
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【槍使いと、黒猫。13】
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【少年マガジンR 2021年2月号】

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【カッコウの許嫁 5】
吉河美希
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【ネクロマンス 5】
堂本裕貴
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【獣の六番 2】
永椎 晃平
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【なれの果ての僕ら 5】
内海八重
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【魔女に捧げるトリック 2】
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 【俺の死亡フラグが留まるところを知らない 1】
乙須ミツヤ/泉
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【星斬りの剣士】
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【花街の用心棒 二 雪が宮廷の闇を照らす】
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(富士見L文庫)

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【江戸の花魁と入れ替わったので、花街の頂点を目指してみる】
七沢 ゆきの
(富士見L文庫)

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【氷室教授のあやかし講義は月夜にて】
古河 樹
(富士見L文庫)

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【附子の弁舌】
沼矛 トモ
(富士見L文庫)

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【瑠璃宮の花守り人 一輪末々を知る】
伊藤 たつき
(富士見L文庫)

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【女神「異世界転生何になりたいですか」 俺「勇者の肋骨で」】
安泰
(宝島社)

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【吾輩は歌って踊れる猫である】
芹沢 政信
(講談社タイガ)

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【あくまでも探偵は】
如月 新一
(講談社タイガ)

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1月14日
【転生魔王の大誤算 2 〜有能魔王軍の世界征服最短ルート】
あわむら赤光
(GA文庫)

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【忘れえぬ魔女の物語】
宇佐楢春
(GA文庫)

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【貴サークルは"救世主"に配置されました】
小田一文
(GA文庫)

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【カンスト村のご隠居デーモンさん 〜辺境の大鍛冶師〜】
西山暁之亮
(GA文庫)

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【俺とコイツの推しがサイコーにカワイイ】
りんごかげき
(GA文庫)

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【ひきこまり吸血姫の悶々 4】
小林湖底
(GA文庫)

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【たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語 11】
サトウとシオ
(GA文庫)

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【スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 15】
森田季節
(GAノベル)

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【変な竜と元勇者パーティー雑用係、新大陸でのんびりスローライフ】
えぞぎんぎつね
(GAノベル)

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【異世界賢者の転生無双 7〜ゲームの知識で異世界最強〜】
進行諸島
(GAノベル)

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【ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。6】
えぞぎんぎつね
(GAノベル)

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【未来職安】
柞刈湯葉
(双葉文庫)

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【後宮の花は偽りに惑う】
天城智尋
(双葉文庫)

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【あやかしよろず相談承ります】
伽古屋圭市
(双葉文庫)

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1月13日
【ログ・ホライズン 外伝 新たなる冒険の大地】
池梟 リョーマ/木村 航
(エンターブレイン)

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【メイドさんは食べるだけ 2】
前屋進
(イブニングKC)

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【未熟なふたりでございますが 8】
カワハラ恋
(モーニング KC)

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【パリピ孔明 4】
四葉夕卜/小川亮
(ヤンマガKCスペシャル)

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1月12日
【カワセミさんの釣りごはん 3】
匡乃下キヨマサ
(アクションコミックス)

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【弧を描く 3】
木下 聡志/岩井 良樹
(アクションコミックス)

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【乙女戦争外伝供_个魴僂絢圓燭繊幣紂法
大西巷一
(アクションコミックス)

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【おとなの防具屋さん 3】
斐宮ふみ
(アース・スター コミックス)

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【俺んちに来た女騎士と田舎暮らしすることになった件 6】
秋乃かかし/裂田
(アース・スター コミックス)

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【きららファンタジアイラストレーションズ 2】
きららファンタジア製作委員会
(まんがタイムKRコミックス)

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【スローループ 4】
うちのまいこ
(まんがタイムKR フォワードコミックス)

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【月刊少年ガンガン 2021年2月号】

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【まんがタイムきららフォワード 2021年 02 月号】

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【ゲッサン 2021年2月号】

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1月10日
【川上稔 短編集 パワーワードの尊い話が、ハッピーエンドで五本入り 1】
川上稔
(電撃文庫BORN DIGITAL)

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【川上稔 短編集 パワーワードの尊い話が、ハッピーエンドで五本入り 2】
川上稔
(電撃文庫BORN DIGITAL)

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【新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち】
佐島 勤
(電撃文庫)

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【娘じゃなくて私(ママ)が好きなの!? 4】
望 公太
(電撃文庫)

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【神角技巧と11人の破壊者(上) 破壊の章】
鎌池和馬
(電撃文庫)

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【わたし以外とのラブコメは許さないんだからね 2】
羽場楽人
(電撃文庫)

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【ダークエルフの森となれ 2―現代転生戦争―】
水瀬葉月
(電撃文庫)

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【つるぎのかなた 4】
渋谷瑞也
(電撃文庫)

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【Re:スタート!転生新選組 3】
春日みかげ
(電撃文庫)

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【絶対にデレてはいけないツンデレ】
神田夏生
(電撃文庫)

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【先輩、わたしと勝負しましょう。ときめいたら負けです! イヤし系幼女後輩VS武人系先輩】
西塔 鼎
(電撃文庫)

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【来タル最強ノ復讐者 〜救いなき監獄都市で絶望を容赦なく破壊する〜】
哀歌
(電撃文庫)

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【男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 1. じゃあ、30になっても独身だったらアタシにしときなよ?】
七菜なな
(電撃文庫)

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【犯罪迷宮アンヘルの難題騎士】
川石折夫
(電撃文庫)

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【役立たずと言われたので、わたしの家は独立します! 〜伝説の竜を目覚めさせたら、なぜか最強の国になっていました〜】
遠野 九重
(カドカワBOOKS)

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【捨てられ白魔法使いの紅茶生活 2】
瀬尾 優梨
(カドカワBOOKS)

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【スライム召喚無双 2 〜ゲーム技術は異世界でも最強なようです〜】
可換 環
(カドカワBOOKS)

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【百花宮のお掃除係 3 転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。】
黒辺 あゆみ
(カドカワBOOKS)

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【悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です! 5】
明。
(カドカワBOOKS)

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【魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする 10】
流優
(カドカワBOOKS)

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【痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。11】
夕蜜柑
(カドカワBOOKS)

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【蜘蛛ですが、なにか? 14】
馬場 翁
(カドカワBOOKS)

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【ティアムーン帝国物語 VI 〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜】
餅月望
(TOブックス)

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【特級ギルドへようこそ! 6 〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜】
阿井りいあ
(TOブックス)

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【レア・クラスチェンジ! VII 〜魔物使いちゃんとレア従魔の異世界ゆる旅〜】
黒杉くろん
(TOブックス)

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【打撃系鬼っ娘が征く配信道! 3】
箱入蛇猫
(TOブックス)

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【ヤングキングアワーズ 2021年 02 月号】

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1月9日
【最果てのソルテ 1】
水上悟志
(BLADEコミックス)

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【魔導具師ダリヤはうつむかない ~Dahliya Wilts No More~3】
住川惠/甘岸久弥
(BLADEコミックス)

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【シネマこんぷれっくす! 6】
ビリー
(ドラゴンコミックスエイジ)

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【さまよえる転生者たちのリライブゲーム 3】
サイトウケンジ/火野遥人
(ドラゴンコミックスエイジ)

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【魔術師たちの混乱 1】
奇仙
(ドラゴンコミックスエイジ)

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【最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 2】
天海雪乃/タンバ
(角川コミックス・エース)

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【合鍵くんと幸せごはん 1】
黒麦はぢめ
(角川コミックス・エース)

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【蜘蛛ですが、なにか? 蜘蛛子四姉妹の日常 3】
馬場翁/グラタン鳥
(角川コミックス・エース)

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【東島丹三郎は仮面ライダーになりたい 7】
柴田ヨクサル
(ヒーローズコミックス)

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【まんがタイムきらら 2021年 01 月号】

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【コミックフラッパー 2021年2月号】

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【ドラゴンエイジ 2021年2月号】

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【別冊少年マガジン 2021年2月号】

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1月8日
【可愛いだけじゃない式守さん 7】
真木蛍五
(KCデラックス)

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【メイドの岸さん 2】
柏木香乃
(KCデラックス)

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【幼女とスコップと魔眼王 1】
茅田丸/丁々発止
(シリウスKC)

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【よくわからないけれど異世界に転生していたようです 4】
内々けやき/あし
(シリウスKC)

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【ラストオーダー 1】
松葉サトル/浜松春日
(シリウスKC)

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【時間停止勇者 4】
光永康則
(シリウスKC)

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【お嬢様の僕 8】
田口ホシノ
(シリウスKC)

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【この世界は不完全すぎる 2】
左藤真通
(モーニング KC)

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【進撃の巨人 33】
諫山創
(講談社コミックス)

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【赫のグリモア 5】
A−10
(講談社コミックス)

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【我間乱−修羅−14】
中丸洋介
(講談社コミックス)

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【アサルトリリィ League of Gardens -full bloom- 1】
月並甲介/阿羅本景
(KADOKAWA)

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【ヤングエース 2021年2月号】

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【スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 心をつなぐスープカレー】
友井 羊
(宝島社文庫)

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【毒をもって毒を制す 薬剤師・毒島花織の名推理】
塔山 郁
(宝島社文庫)

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【ゴールデンタイムの消費期限】
斜線堂有紀
(祥伝社)

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1月7日
【ゆるキャン△ 11】
あfろ
(まんがタイムKRコミックス/フォワードシリーズ)

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【若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です! 6】
森田季節/出水高軌
(ガンガンコミックスUP!)

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【冒険者ライセンスを剥奪されたおっさんだけど、愛娘ができたのでのんびり人生を謳歌する 6】
斧名田マニマニ/唯浦史
(ガンガンコミックスUP!)

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【good!アフタヌーン 2021年2号】

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【私、能力は平均値でって言ったよね! 14】
FUNA
(SQEXノベル)

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【万能「村づくり」チートでお手軽スローライフ 〜村ですが何か?〜】
九頭七尾
(SQEXノベル)

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【転生したらドラゴンの卵だった 〜最強以外目指さねぇ〜 13】
猫子
(SQEXノベル)

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【勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖女、お前に追って来られては困るのだが?】
初枝れんげ
(SQEXノベル)

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【大日本帝国の銀河 1】
林 譲治
(ハヤカワ文庫JA)

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【そいねドリーマー】
宮澤 伊織
(ハヤカワ文庫JA)

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1月6日
【1日外出録ハンチョウ 10】
上原求/新井和也
(ヤンマガKCスペシャル)

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【アダマスの魔女たち 5】
今井ユウ
(ヤンマガKCスペシャル)

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【ヤングマガジン サード 2021年Vol.2】

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1月5日
【願いを叶えてもらおうと悪魔を召喚したけど、可愛かったので結婚しました】
shiryu
(ドラゴンノベルス)

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【田中家、転生する。2】
猪口
(ドラゴンノベルス)

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【虐げられし令嬢は、世界樹の主になりました 2 〜もふもふな精霊たちにかこまれて、私、聖女になります〜】
桜井 悠
(ドラゴンノベルス)

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【最強錬金術師の異世界開拓記】
猫子
(ドラゴンノベルス)

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1月4日
【国防特行班E510】
神野オキナ
(小学館文庫)

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【呪術廻戦 14】
芥見下々
(ジャンプコミックス)

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【Dr.STONE 19】
稲垣理一郎/Boichi
(ジャンプコミックス)

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【チェンソーマン 10】
藤本タツキ
(ジャンプコミックス)

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【ぼくたちは勉強ができない 20】
筒井大志
(ジャンプコミックス)

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【ワンパンマン 23】
ONE/村田雄介
(ジャンプコミックス)

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【ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミアILLEGALS- 11】
古橋秀之/別天荒人
(ジャンプコミックス)

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【すいとーと! 3】
沖野ユイ
(ジャンプコミックス)

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【第9砂漠 3】
出口景
(ジャンプコミックス)

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【姫様“拷問”の時間です 5】
春原ロビンソン/ひらけい
(ジャンプコミックス)

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【ぼくらの血盟 1】
かかずかず
(ジャンプコミックス)

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【夜桜さんちの大作戦 6】
権平ひつじ
(ジャンプコミックス)

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【終末のハーレム ファンタジア 6】
LINK/SAVAN
(ヤングジャンプコミックス)

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1月1日
【嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい漫画】
40原
(ナンバーナイン)

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12月28日
【SPY×FAMILY 6】
遠藤達哉
(ジャンプコミックス)

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【SHOW BY ROCK!! 1】
邪武丸
(角川コミックス・エース)

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【スーパーのお兄さん 2】
河田雄志/行徒
(角川コミックス・エース)

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【高校事変 2】
松岡圭祐/オオイシヒロト
(角川コミックス・エース)

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【どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。1】
釜田/六つ花 えいこ
(フロース コミック)

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【まんがタイムきららキャラット 2021年01月号】

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【コミックライド 2021年1月号】

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【元勇者の公務員はゆっくり暮らしたい 1.帰還勇者、身分を隠してたのに新人冒険者の世話をすることになりました】
すえばしけん
(HJ文庫)

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【聖剣士さまの魔剣ちゃん 2 〜孤独で健気な魔剣の主になったので全力で愛でていこうと思います〜】
藤木わしろ
(HJ文庫)

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【最弱無能が玉座へ至る 2 〜人間社会の落ちこぼれ、亜人の眷属になって成り上がる〜】
坂石遊作
(HJ文庫)

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【お知らせ:最強魔王はダンジョン経営で荒稼ぎを始めます! 2】
坂本一馬
(HJ文庫)

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【異世界迷宮でハーレムを 11】
蘇我捨恥
(ヒーロー文庫)

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【ワールドオーダー 5】
河和時久
(ヒーロー文庫)

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【落ちこぼれ竜騎士、神竜少女(バハムート)に一目惚れされる 2】
深山鈴
(ヒーロー文庫)

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【ファントム オブ キル 死の国の守り人】
櫂末高彰
(ファミ通文庫)

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【彼女できたけど、幼馴染みヒロインと同居してます】
桐山なると
(ファミ通文庫)

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【異世界のんびり農家 09】
内藤 騎之介
(エンターブレイン)

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【人類滅亡して最後の1人になったら?】
三河 ごーすと/フェルミ研究所
(エンターブレイン)

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【幼女信長の異世界統一】
舞阪洸
(エンターブレイン)

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【転生七女ではじめる異世界ライフ 〜万能魔力があれば貴族社会も余裕で生きられると聞いたのですが?!〜】
四葉 夕ト
(エンターブレイン)

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【ラピスの心臓 3.深紅の狂鬼】
羽二重銀太郎
(エンターブレイン)

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12月26日
【隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた 3】
荒三水
(モンスター文庫)

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【初級魔術マジックアローを極限まで鍛えたら】
ぺもぺもさん
(モンスター文庫)

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【冒険者をクビになったので、錬金術師として出直します! 〜辺境開拓?よし、俺に任せとけ! 5】
佐々木さざめき
(Mノベルス)

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【白衣の英雄 2】
九重十造
(Mノベルス)

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【最強陰陽師の異世界転生記 4 〜下僕の妖怪どもに比べてモンスターが弱すぎるんだが〜】
小鈴危一
(Mノベルス)

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【幼女戦記 20】
東條チカ/カルロ・ゼン
(角川コミックス・エース)

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【幼女戦記 20 限定版 】
東條チカ/カルロ・ゼン
(角川コミックス・エース)

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【フェイト/エクストラ CCC FoxTail 9】
たけのこ星人
(角川コミックス・エース)

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【シャバの「普通」は難しい 4】
ばたこ/中村颯希
(角川コミックス・エース)

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【戦争は女の顔をしていない 2】
小梅けいと/スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ
(KADOKAWA)

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【ざつ旅 ―That’s Journey―4】
石坂ケンタ
(電撃コミックスNEXT)

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【この美術部には問題がある! 13】
いみぎむる
(電撃コミックスNEXT)

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【タプリスシュガーステップ 3】
ばふぁこ/うかみ
(電撃コミックスNEXT)

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【姉なるもの 5】
飯田ぽち。
(電撃コミックスNEXT)

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【スーパーロボット大戦OG ―ジ・インスペクター― Record of ATX(7)BAD BEAT BUNKER】
八房龍之助
(電撃コミックスNEXT)

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【外道魔術師の憑依譚 2 〜最強剣士を乗っ取ったら、自分の身体を探すことになった〜】
羽鳥ぴよこ/新嶋紀陽
(電撃コミックスNEXT)

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【無職転生〜4コマになっても本気だす〜 3】
野際かえで/理不尽な孫の手
(電撃コミックスNEXT)

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【東方Project二次創作シリーズ 人間たちの幻想郷(前)】
芦山
(電撃コミックスEX)

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【魔王様、リトライ! R 2】
身ノ丈あまる/神埼 黒音
(モンスターコミックス)

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【農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。 6】
樽戸アキ/しょぼんぬ
(モンスターコミックス)

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【ムダヅモ無き改革 プリンセスオブジパング 9】
大和田秀樹
(近代麻雀コミックス)

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【桐谷さん ちょっそれ食うんすか!? 10】
ぽんとごたんだ
(アクションコミックス)

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【少年エース 2021年2月号】

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【コンプエース 2021年2月号】

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【月刊少年シリウス 2021年2月号】

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【電撃マオウ 2021年2月号】

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【月刊コミックアライブ 2021年2月号】

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【月刊コミック 電撃大王 2021年2月号】

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【コミック電撃だいおうじ VOL.88】

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【Comic REX 2021年2月号】

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【最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 5 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する】
タンバ
(角川スニーカー文庫)

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【『おっぱい揉みたい』って叫んだら、妹の友達と付き合うことになりました。】
凪木エコ
(角川スニーカー文庫)

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【恋人代行をはじめた俺、なぜか美少女の指名依頼が入ってくる】
夏乃実
(角川スニーカー文庫)

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【強気なお嬢様が俺の料理で甘々に】
雨宮 むぎ
(角川スニーカー文庫)

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【元カノと今カノが俺の愛を勝ち取ろうとしてくる。】
はむばね
(角川スニーカー文庫)

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【ひげを剃る。そして女子高生を拾う。5】
しめさば
(角川スニーカー文庫)

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【悪役令嬢、ブラコンにジョブチェンジします 3】
浜千鳥
(角川ビーンズ文庫)

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【グランドール王国再生録 破滅の悪役王女ですが救国エンドをお望みです】
麻木 琴加
(角川ビーンズ文庫)

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12月25日
【ロード・エルメロイII世の冒険 1.「神を喰らった男」】
三田誠
(TYPE-MOONBOOKS)

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