電撃文庫

恋は双子で割り切れない 3 ★★★★★   



【恋は双子で割り切れない 3】 高村 資本/あるみっく 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
私だけを見て――。こじれた恋は、もうほどけない。

三人の関係が再びうまい具合に収まればと、大人な私は二人のほつれをほどいてあげた。自分の本音に蓋をして――そのつもりだった。だけど、二人はそんな私の想いを汲んではくれなくて、胸のうちを曝け出してなるものかと思っていたけれど、無理だった。耐え切れなかった。
もう我慢なんてしない。私は私のやり方で純君の時間を拘束する。手始めに、部活を作る。うん、悪くない。だから、これからは今までみたいに優しくしてあげないからね、お姉ちゃん。
なんて考えていたら、琉実がバスケ部の男友達に告白されたとかなんとかで、また純君の気持ちをかき乱すような厄介事を持ち込んできて……だるっ。
私の邪魔したら、許さないからね。


続きを読む

わたし、二番目の彼女でいいから。2 ★★★★★  



【わたし、二番目の彼女でいいから。2】  西 条陽/Re岳 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
「二番目」が二人いても、いいでしょ? 危うい関係は崩壊し、そして――。

「私、二番目の彼女でいいから」

彼女のその言葉に甘えて、俺はみんなに隠れていまも、悪いことを重ねている。
早坂さんと夜の教室で二人、いけないことをして。橘さんと真夜中、こっそり見知らぬ駅でキスを交わす。そんな早坂さんと俺と橘さんの甘い泥沼は、けれど。

「今度、私の全部をあげるね。だから、ちゃんと受け止めてね。逃げないでね」

大胆になっていく好意の果てで、もう、落としどころを見つけられない。
一番目じゃなくて、いいはずなのに。
二番目のままでも、いいはずなのに。
互いに言い訳をしながら、競うように壊れていく俺たちの関係。100%危険で、甘美で、嫉妬にまみれた恋の挙句の果てに、彼女が口にする言葉は――。


続きを読む

魔女学園最強のボクが、実は男だと思うまい ★★★☆   



【魔女学園最強のボクが、実は男だと思うまい】  坂石 遊作/トモゼロ 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
女装がバレたら丸焼き!? 魔女学園で繰り広げられるバトル&ラブコメディ

「ユート。――魔女学園に潜入しろ」
男だけがなれる騎士と女だけがなれる魔女。二つが対立するなか、騎士のユートは騎士団長である兄から、女装して魔女学園に潜入せよというミッションを与えられた。
兄の無茶ぶりを断ることができず、男子禁制の魔女学園に転入したユートは、ルームメイトで学級委員長のメイファ、大商会の令嬢フラウ、ユートに敵意むき出しのシリカたちと、魔女になるための授業をこなしていく。
そんなユートに告げられたのは、世界を変える魔法の存在と、その魔法を使えるかもしれない魔女を、周囲の女子たちのなかから突き止めろというものだった──。
魔法の使えないエリート騎士が魔女学園で無双する、女装潜入ファンタジー!





続きを読む

美少女エルフ(大嘘)が救う! 弱小領地 ~万有引力だけだと思った? 前世の知識で経済無双~ ★★★★  



【美少女エルフ(大嘘)が救う! 弱小領地 ~万有引力だけだと思った? 前世の知識で経済無双~】  長田 信織/ にゅむ 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
見てろよ、異世界。ボクがこの弱小領地を経済大国(イギリス)にしてやる!

アイシアは激おこした。育ての親で、いつもデレデレに甘やかしてくれるエルフのロリママが政略結婚するというのだ。
アイシアに政治はわからぬ! でも経済はちょっとわかる。貨幣足りない、特産品も無い。それがダメじゃね?

こうなったら、ボクがその土地を経済大国にして、ママの婚約をぶっ壊してやる!
……そう、イギリスの造幣局長だった前世――アイザック・ニュートンの経済知識を使ってな!

ハッタリをかまして資金調達! 魔族から徴税し、公営ギャンブルで経済を回す! 一見、悪徳商人めいたアイシアの奇策は、弱小領地をどんどん大国に染め上げていき……!

『数字で救う! 弱小国家』著者による、爽快【経済】無双ファンタジー開幕!


続きを読む

ユア・フォルマ III 電索官エチカと群衆の見た夢 ★★★☆  



【ユア・フォルマ III 電索官エチカと群衆の見た夢】  菊石 まれほ/ 野崎つばた 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
過ちと分かってなお手放せない感情には、どんな醜い名がつくだろうか――。

★第27回電撃小説大賞《大賞》受賞のSFクライムドラマ・第3弾★!

――あの日、自分は選択を間違えた。
エチカ自らの意思で抱えた、ハロルドの敬愛規律にまつわる秘密。その重圧からか、電索能力が突如急低下してしまう。
電索官としての復帰が絶望的な状況の中、一般捜査員として新事件の捜査に臨むエチカ。そこで目にしたのは、新たな「天才」と組むハロルドの姿で――。
エチカとハロルドが別々の場所で追うのは、「思考をのぞける人間」を自称するハッカー〈E〉。ネット掲示板に国際刑事警察機構の秘匿事項を次々書き込み、
【真実を追求せよ】とユーザーを扇動する〈E〉の真の標的とは――!?



続きを読む

虚ろなるレガリア 2.龍と蒼く深い海の間で ★★★☆   



【虚ろなるレガリア 2.龍と蒼く深い海の間で】  三雲 岳斗/深遊 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

武器商人ギャルリー・ベリトと龍を殺す契約を結んだヤヒロは、民間軍事会社ギルドが統治する街、横浜要塞を訪れる。そこでヤヒロを待ち受けていたのは“沼の龍の巫女”姫川丹奈と、三人目の“不死者”湊久樹だった。
 そのころ彩葉の元には、欧州の大企業ギベアー社から企業コラボのオファーが届いていた。初めての企業案件に舞い上がる彩葉。だがギベアー社は日本人生存者による亡命政府“日本独立評議会”の支援者であり、彼らの目的は彩葉を日本再独立の象徴として担ぎ上げることだった。そして日本独立評議会の背後には、新たな龍の巫女と不死者の影が――!
 廃墟の街で出会った少年と少女が紡ぐ、新たなる龍と龍殺しの物語、待望の第二巻!

龍の巫女ってみんな配信者にならんといかんのかー!? いや、珠依と最後に現れた雷龍の巫女はさすがに配信には手を出していないみたいだけれど、今の所5人現れた龍の巫女のうち3人が、と過半数越えてるもんなあ。あと三人は居るだろう巫女が配信者やってたら、リアル配信者バトルロイヤルという様相にもなるのかもしれないのか。というか、ダークでヤンデレたラスボス黒幕系ヒロインをやってる珠依が配信とかはじめたら、絵面だけでちょっと面白いんだけれど。
とまあ、浮かれてもいられない。彩葉は企業からオファー来て浮かれているようだけれど、彼女のような底辺配信者に企業案件きた理由には思いっきり政治的な理由が絡んでいたわけですからね。
無邪気に喜ぶ彩葉の警戒心の薄さを危ぶむべきか。イマイチこの娘、まだ自分の立場とか龍の巫女であるという意味を理解しきれていないところがあるんだよなあ。それだけ、この国家と企業が暗闘を繰り広げて利益と主導権を奪い合っているダーティーな世界観に馴染んでいない善良な少女、という事なんだろうけれど。
でも、その善良さは無防備ですらあるんですよね。今までの三雲さんの作品のヒロインって結構しっかりした……いやポンコツなのは多かったけれど、この手の無防備で子供っぽいヒロインはあんまり見たことがなかったので結構新鮮でもある。
ただ、今回は珠依以外にも山の龍の巫女、沼の龍の巫女、雷龍の巫女と一気に三人もの龍の巫女とその不死者(ラザルス)が登場したんですけれど、珠依も含めて全員こうある種の妄執に取り憑かれているような子たちに見えるんですよね。沼の龍の巫女姫川丹奈もクレバーで強かな食わせ者だけれどその根底に執拗さみたいなものが垣間見えるんですよね。
こういう娘たちは恐ろしいけれど、同時に危うくもある。山の龍の巫女であった三崎知流花とその不死者アマハの強いつながりと裏腹のあの儚さを目の当たりにしてしまうと、ね。
こうして龍の巫女と不死者のコンビが多く登場したことで、まだ良く分かっていなかった巫女と不死者の関係がどのように成り立っているのか、その深奥が知れた話でもあったんじゃないだろうか。
あれほどの絆と信頼、友情以上の命の共有者であった知流花とアマハですら、あんな事になってしまうほどの巫女と不死者のそれはアンバランスなんですよね。
ならば、妄執は強いほどの力となるのか。それとも、壊れやすい危うさに繋がるのか。
そんな中で彩葉のあの浮ついた善良さは、もろくもみえるんだけれど同時に揺るぎなさにも見えるんですよね。絶対の信頼、他に類を見ない妄執と比べて、彩葉とヤヒロの関係ってふわふわとして確かなものがなく、あやふやなものですらあるじゃないですか。願いはあっても信頼と呼べるほどの強固な繋がりが果たしてあるのか。
でも、不思議と二人の間の繋がりは途切れない。復讐に駆られどこへともなく走り去ってしまいそうなヤヒロの事を、彩葉が必死にしがみついて離そうとしていないかのように。それはヤヒロにとっても救いなのか。
知流花とアマハは遠くを見よう見ようとして足元を見ていられなかったのか。知流花自身が自分の求めるものに対してあやふや過ぎたのかもしれない。そしてこちらを顧みずにただただ突き進むアマハを離すまいとして、彼女は手を離してしまった結果があの形だったのか。
ストブラが何だかんだと多くの人が、メインキャラの多くが救われる話であったけれど、このレガリアはその意味では容赦がない作品になっているんじゃなかろうか。てっきり、敵味方別れていくにしろ巫女と不死者のコンビはレギュラーになっていくと思ってたのに、結構な衝撃でした。容赦なく、巫女も不死者も消えていく文字通りの龍殺しの物語。その結末は儚くも美しいものでした。
しかし、ベリト姉妹のラストの発言、こうしてみると不穏だなあ。味方だけど何を目論んでいるか分からないキャラでしたけれど、あれは最終的には彩葉も、という意味にも聞こえますしねえ。
何気に、ベリトの双子のうち明るく人懐っこいジュリエッタよりも、無表情で冷徹に見えるロゼッタの方がヒロイン度高いんだ。もしかしたらこれ、珠依よりも強力な彩葉の対抗ヒロインになっていくんじゃないの?




娘のままじゃ、お嫁さんになれない! ★★★☆   



【娘のままじゃ、お嫁さんになれない!】  なかひろ/涼香 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

高校教師と女子高生。恋人未満<家族未満の二人が贈る、日常系ラブコメ。

高校教師の見取桜人、26歳、独身。銀髪碧眼女子高生の星咲藍良、15歳。
冒険家の祖父が亡くなったのをキッカケに桜人は藍良を引き取ることに――
「起きた? おはよ、ご飯できてるよ」
「お風呂上がったから、お次にどうぞ」
「私……あの頃よりも、成長したよ? 今の私の……見たい?」
だけど二人は、教師と教え子の間柄でもあって――
「一緒に学校行ってもいいんじゃない?」
「え? 誰かに見られたら、変な噂が立つかもしれない……私は気にしないのに」
「『学校ではちゃんと先生って呼ぶんだぞ』って……バカ」
親と娘、先生と生徒、近くて遠い関係が織りなす年の差ラブコメ!
タイトルのポップさを見るとすぐにでも仮の親子のラブコメが始まりそうな勢いだったのですが、果たして現実のこの日本という国で赤の他人である若い男女が結婚以外で家族になるには、様々なハードルがかせられている。
いや、それをハードルと言ってはいけないのだろうけれど、公に認められる正式な家族という関係になるには、それだけちゃんとした手続きをしないといけないということだ。
その点を本作では適当に流してしまわずにきちんと向き合う形で描いている。まあそれでも、現実からするとだいぶ簡略化され、書類や手続きなどが受理されるためのハードルも下げられているのだろう。
そもそも、藍良の身の上からして冒険家の祖父が赤ん坊の頃にどこからか引き取ってきたという日本人ではない外国人の娘であり、日本国籍を持っていない。それどころか、産まれた国すらも定かではないので無国籍者という国家による法的な庇護から多くハズレてしまっている存在になってしまっている。
一応、桜人の祖父の娘、という形で引き取っていたようなので桜人とは親族のはずなんだけれど、正式に里子の申請をしていなかったというので、制度的には赤の他人なんですよね。
さらに、桜人の職業は高校教師。社会的な立場からしても年頃の娘を引き取るには色々と問題があるはずなんだけれど、教育委員会の方はほぼ責任放棄して桜人に丸投げしてしまったというのはともかくとして、同僚や上司は全部知っている上で受け入れてくれているのは助かりますよね、これ実際。
尤も、桜人自身は教師という職に思い入れはなく、教育にも熱を持っていないので、藍良との同居が周知されて問題になったら辞めればいい、と考えているので社会的立場についてはそれほど構えている様子はないのですが。
世間体や対面ばかり気にして自分を含めて子供達の進路や将来なども型にはめることしか考えていなかった家族とは不仲であり、人生の師ともいえる冒険家という一族の中でも異端だった祖父にばかり心を残している桜人にとって、幼い頃以来久々に再会した藍良を引き取って祖父の家で同居するという選択肢を選んだのは、彼なりの踏ん切りでもあったのだろう。

いきなり家族として一緒に暮らすことになった若い男女、となると感情的な行き違いが生じそうなのだけれど、実際のところ二人の関係は再会時こそ恨み言を言われたものの、それ以降は衝突もすれ違いもなく、お互い距離感を測りかねているという感じでもなく、お互い生活にすいて相談摺合せしながらだけれど、共同生活を穏当にはじめるんですね。
むしろ、社会制度や無国籍者という問題、親族との感情的行き違いや祖父や藍良を取り巻く事情など、二人の周りの環境が桜人と藍良が家族になるために整えなければならないものだった、という感じなんですよね。
二人が納得していても、そう簡単に家族ってのはなれないんだよ、とでも言いたいように。
でも理不尽に家族になりたい二人を引き裂くものでもないんですよね、制度も環境も。だから、ちゃんと一つ一つ手続きを通していくことで、二人が家族として暮らすための環境が整えられていく様子は、だからこそ二人の生活がふわふわとした現実感のないものではなく、しっかりと地に足がついたちゃんとした関係として成立していくもの、として実感が得られていくんですよね。
こういうのちゃんと描いてくれたおかげで、二人の同居モノとしての体裁に芯がしっかり通っていった気がします。
そうして環境が整った上で、では家族として暮らし始めた桜人と藍良は果たして具体的にどんな「家族」になりたいのか。そういった点にスポットがあたっていくのである。未だ教師の延長線上として生徒として藍良と接してしまう桜人。本人はそんなつもりはないのだけれど、それまでこの年頃の女の子とは教師と生徒としてしか接したことがなかったから、意識せず似たような対応を取ってしまっていた、というのは無理からぬところではあるんですけどね。
でも自覚があるくらい、教師としての職業に熱がなく、生徒への対応もシステマチックにこなしていたのだから、藍良との接し方もちょっとでもそちら側に寄せてしまった、というのはまあ下手くそでしたよね。家族関係がそもそも最悪で、ちゃんとした家族というものを体感してこなかった、というのも大きいのかも知れませんが。妹とだけは仲いいんだから、そっちに寄せていけばいいのにとも思わないでもないですけど。
まあ桜人のあの生活環境や健康への無見識っぷりは、家族云々教師云々以前の問題だと思いますけど。不摂生とか睡眠、食生活を蔑ろにしてしまうのは、若いうちは仕方ないけど、少なくとも身体に良くない、という認識や罪悪感みたいなものはあって当然だと思うのですが、この男、あんな生活しておいて何の問題意識も感じていなかったのだから、かなりやばいです。悪い、と全然思ってる様子がないんだもの。教師として、社会人としてあれはやばいでしょう。アホな大学生かよ。
でも、こういう大人って少なくはないんだろうなあ。
桜人のそれはひどすぎるので、藍良の生活態度へのお小言、説教、酒量制限は全然厳しくないと思います。完全に適切です。これ、誰かが厳しく見ておかないと、この男早晩死ぬわ。
その意味では元カノさんは放任主義というか、自分の趣味趣向は主張して譲らないものの押し付けるタイプではないようですし、そもそもあっちもちゃんとした生活してるのか怪しいタイプなので、くっついたままだったら二人共ヤバかったのかもしれません。
その点、藍良はまず前提として嫁になる気満々なので、旦那の健康については強く意識しますよね。
まだまだラブコメとしては始まっていないか始まったばかりですけれど、土台作りに比重を掛けた分家族ものとしてしっかり読み込ませてくれる一作になっていたのではないでしょうか。
ここから、二人のとっての家族の形がどう変わってくるのか。続きが楽しみです。

ドラキュラやきん! 4 ★★★★  



【ドラキュラやきん! 4】  和ヶ原 聡司/ 有坂 あこ 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

ポンコツシスター、今度は恋煩い!? 吸血鬼たちが過去と向き合う第4弾

京都での動乱から二週間、アイリスの様子がおかしい。あれだけ虎木に絡んできていたのに、顔を合わせるとすぐに姿を消してしまうのだ。
そんな中、コンビニオーナー村岡の娘・灯里が家に転がり込んできた。新たなトラブルの予感に困惑する虎木であったが、灯里の『虎木とアイリスは付き合っている』という勘違いが更に事態をややこしくして――!?
そして、コンビニを訪ねてきた思いがけない人物とは……!!
吸血鬼×シスターの日常ファンタジー。ラブコメの気配を感じつつも、過去に向き合う第4弾!!
アイリスの男性恐怖症の原因となった出来事がついに発覚。アイリス自身も理由がわからないんじゃなくて、明確に自覚していたのか。ええ、この娘、こんなもの抱えて今までずっと生きてきたわけ?
ちょっと想像以上に重たかったんですけれど。これは無理だわ。男性への性的な嫌悪感とか潔癖症から来る恐怖症じゃないんですよね。なんでファントムの男性相手なら大丈夫なのか、ようやく理解した。幾らファントムでも男性は男性じゃないか、と思っていたのだけれど。これ、下手したら男とか女とか関係なく恐怖症になっていた可能性もあったわけなんですよね。
村岡さんや虎木の弟の和楽、という絶対に安全で人柄も承知している相手ですら、生理反応としてどうしても耐え難い状態になってしまう、というのもこうなると理解できる。完全にPTSDだわ。

同時に、アイリスにとってそれだけ「家族」という存在が重要なワードになっている事を考えると、虎木が吸血鬼から人間に戻れる方法、というのが確実に存在する、というのが明らかになった……これも物語上重要な出来事ですよね。虎木たちは既に「聞いて」いたから疑っていなかったみたいだけど、それを語った本人の口から確証を得られたのは大きい。
ともあれ、このまま下手に虎木が人間に戻ってしまうと、アイリスの恐怖症の対象が虎木にまで及んでしまいそうだけれど、虎木が人間に戻る前に彼がアイリスの「家族」になった上で人間に戻ったら、彼はその対象から外れる。もしくは、アイリスが恐怖症に陥った原因の因果が反転する、家族が人間になることで人間の男そのものが恐怖症の対象ではなくなる、という可能性も出てくるのか。
虎木が人間に戻りたいと切実に願い、焦りすらしているのは彼の家族である和楽のためでもあるのだけれど、これはそれだけに留まらない理由が生まれてきたのかも。
尤も、虎木からするとまだなんぞそれ!?という状態なのだろうけれど。
でもアイリスが、虎木に対して告白を敢行したのはただ好意を伝えたいというだけではなく、彼に自分の家族となって欲しい、と願うことでもあり、アイリスにとっての「家族」という存在の意味を考えたらそれを虎木に願うということの重たさが果たして虎木にはわかっているだろうか。

幼い頃でももう分別のつく年齢の際に、母を喪ったアイリス。ただ奪われただけじゃない、彼女が死ぬことになった理由も意味も、彼女が何を自分に願ったのかも全て承知した上で両親の願いを叶えるために、今まで嘘を突き通してきた彼女。自分が周りにどう見られ、両親のことを言われ続けてきたのか、小さい頃からずっと理解しながら今まで闇十字騎士団の修道騎士として生きてきたアイリスが、果たしてどれだけ頑張ってきたのか。どれだけの想いを胸に秘めてやってきたのか。ちょっと思い巡らせるだけでもキツいものがあります。彼女にとってファントムとは、吸血鬼とは、決して邪悪でも滅する対象でもなく、むしろ恐怖の対象となっていた人間の男性に比べれば……。そんな中で彼らファントムと敵対する組織で生きてきたのですから……彼女が遠い東方の地で虎木という存在と巡り合った時、あれほど友好的に交流をはじめた理由が、よくわかるというものです。
そしてまさか、その虎木とアイリスにそんな縁があったとは。
虎木にとっての吸血鬼の師匠が、アイリスの継父だったとは。
その師匠ザックにとっては、虎木もアイリスもまさに愛する我が子だったわけだ。こんな因果がまさか隠れているとはねえ。

アイリスにとって、自分の所属する教会組織はファントムと敵対する組織というだけでなく、本当の意味での教会。迷える人に手を差し伸べる人を救い助ける組織の一員という意識を強く持っていたんですね。シスター、という呼び名にこそ意義を見出していたのかもしれない。
それ故に、だからこそ、アイリスにとって家族間の関係で苦しむ灯里は決して見捨てられない存在だったわけだ。両親の離婚問題の間に挟まれて苦しむ子供、というのは現代社会にとっては決して珍しくない存在だけれど、だからこそ教会組織にとって無視できない救済の対象でもある。家族の問題なら、アイリスなら尚更だ。その一助に、村岡家の行く末にザックが……世界的ジャズシンガーのザックの存在が必要なら、それはアイリスにとって十分な理由になったんですよね。
もちろん、自らの家族。残された唯一の親。愛する継父のこととなれば尚更に。

今回は特に「家族」がテーマとなったお話でした。この作品自体の根幹ともなるテーマだったのかもしれません。村岡家の家族問題はシリーズはじまった当初からのことでしたしね。
そこにアイリスの家族の話が主軸となり、虎木家の話が絡み、とみんな家族のために生きてるんだよなあ。未晴の方だって大体が家族のお話だ。
だからこそ、だからこそ、アイリスの告白は恋という想いを伝えるに留まらない。彼女ははっきりと告げている。将来あなたと家族になりたいという気持ち、だと。
アイリスが「家族になりたい」と口にする事がどれほどの事なのか。今回一連のアイリスの過去を知ってしまえば、それが生半可な思いではないとわかるはず。ほんと、ただの告白じゃないのだ。
虎木はほんと十分にちゃんと受け止めないと。
その虎木の方も、和楽の様子がどうもおかしいのを見る限りではのんびりしていられないのかもしれない。
虎木、大丈夫か? 周りの進展に対して頭ついていけてるのか? みんな、待ってはいてくれないぞ。


ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインXI フィフス・スクワッド・ジャム〈上〉★★★☆  



【ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインXI フィフス・スクワッド・ジャム〈上〉】 時雨沢 恵一/黒星 紅白 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

SHINCとの合同チームで挑んだクエスト《ファイブ・オーディールズ》。その壮絶なバトルから間髪入れず開催が発表された第5回スクワッド・ジャム。
スポンサー作家によって課せられる今回の特殊ルールは『ゲーム途中で、チームメイトが運ぶ別の装備一式にスイッチ可能』という、全プレイヤー混乱必至のものだった。
当然のごとくSJへの挑戦を決めたレンたちは、首都・グロッケンの酒場で作戦会議を敢行するのだが、思いもよらぬ知らせが彼らのもとに届く――。それは『今回のSJでレンを屠ったプレイヤーに1億クレジットを進呈する』というもので……。

「わたし、賞金首になったくらいで、 SJから逃げないもん!」
時雨沢恵一×黒星紅白が贈る痛快ガンアクション、第11弾が登場!
およそ一年半ぶりの新作! もう出ないのかな、とも思っていたので正直嬉しい。好きなシリーズなだけに。時雨沢さん、違うシリーズ手掛け始めてましたしね。
さて毎度はじまりました、アレな作家がスポンサーの大会スクワッド・ジャム第五回。当たり前みたいにシャーリーとクラレンスがメンバーとして参加してくれてるのは嬉しいなあ。相変わらずシャーリーは隙あらばピトは殺す、と言ってますけれど。いや照れ隠しじゃなくてこの人はホント殺す気だと思いますけれど、前回までのチーム自体裏切ってでもという雰囲気ではなくなって、ピト以外とはちゃんとチームとして協力してくれそうなので、それでよし。ピトさんはちょっと一度殺しちゃってもいいくらいだと思ってるし。
しかし、今回の大会ルールとはまた別に、謎の依頼人からこの大会においてレンの殺害に成功したものに賞金を出す依頼が出され、参加者たちが沸き立つことに。事実上の賞金首となってしまったレン。
もちろんその賞金とはゲーム内マネーなのだけれど、これリアルマネーに換算すると100万円にもなるという話で、そりゃあちょっと無視できない金額だよ。ついつい手が滑ってでも殺りたくなっちゃう金額だわ。
この件に関しては、上巻では少なくとも誰がこの賞金を賭けたのか、についての話は進まなかったのだけれど、ポンと100万円もの金を出せる人間ってそうそういないと思うので、自然とポンと100万円出せる人間の顔を伺ってしまうのですが。
いやまじであんたじゃないの? ピトさんや。
ピトさん完全否定してるけれど、この人の場合真顔で否定しておきながらあとでシレッと実はわたしでしたー♪とかほざいても全然おかしくない人だからなあ。
今の所、なぜわざわざレンに賞金をかけたのか、という理由も原因も推測すらもあがってきていないので、想像のしようもないのだけれど。

本編の方は今大会用の特殊ルールがいくつか。事前に公表していた装備品のスイッチ機能は、説明されてもよく頭に入ってきませんねー。こればっかりは実際に使用してもらわないと。
そしてもう一つゲーム開始と同時にチームメンバーがフィールドの各所にバラバラに配置されることに。このメンバー同士の居る場所が異なってしまう、という事を加味してのスイッチ機能だったんろうか。
ともあれ、いつもワケわからんルールでむしろ行動が縛られて展開が狭くなっていくばかりだったのに比べると、このメンバー分散は面白い試みかも。
自然と、違うチームのメンバーとの協力プレイ、時間制限だけれど共闘なんて選択肢が生まれることで、いつもと違うメンバーと一緒に戦うというなかなか見られない戦争シーンが見られることになりましたし。前巻の女子高生チームとの共同戦線も面白かったけれど、あれをよりシャッフルした形か。それ以前の4巻のイベントでもVSNPCで他の全チームとの共闘があってあれ凄く良かったんですよね。ああいうのをもう一度見られるという展開は楽しかったです。
それに今回は個別に臨時チーム組むという形で、他のチームの人間と組む形で相手の人となりとかより深く知れる話になってましたしね。あのマシンガンラバーズの新女王の人、前回優勝を掻っ攫ったわけですけれど、その辣腕振りは思い知らされましたけれど意外とどんな人なのか、というのはマシンガンラバーズの様子を外からチラッチラッと見かけるだけだったので、本当の意味で詳しくはわからなかったのですけれど、今回レンと二人で行動することになったので改めてどんな雰囲気の人なのかわかってきましたしね。とはいえ、まだまだ底知れないところのある人なのですが。
しかし、別チームのメンバーと共闘しながら、偶発的な戦闘を繰り返していたら、いつか同じく別チームのメンバーと組みながら戦っていた同じチームのメンバーと遭遇戦になってしまうのではないか、という懸念は最初からあったわけで。
二人で組むとかなら、声をかけて戦闘を止める、ということも出来るでしょうけれど、今回のレンは最終的に4人で組んで全員他のチーム、という形になってしまっていたわけで、こんがらがって同士討ちになるんじゃ、と思ってたら案の定……どころか、臨時リーム内で不意打ち銃殺ってやらかしおった奴が出おった!! なんて邪悪、なんて卑怯! こいつはゲロの匂いのするクズやろうの登場かーー! と、ここは敵役の登場により一致団結の流れか? と手に汗握ったところで、出てきたやつがあれですよ〜〜。
うん、まあ何となくわかってた。まあ、ピトさんだとありがちすぎて、拍子抜けしてたと思うくらいなのですが。奴なら、やらかしてもおかしくはないなあ、うんうん。
いやもうこれ、レンちゃん普通に今の臨時チームで頑張ったらいいんじゃないですかね!? 元チームのメンバーって半分くらいこの際殺ちゃってもむしろスッキリ気分爽快な気分にさせてくれそうですし。
いや、クラレンスちゃんは普通に凹みそうなので、勘弁してあげるとして。



僕らのセカイはフィクションで ★★★★   



【僕らのセカイはフィクションで】 夏海 公司/Enji 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

自作小説のキャラが現実世界に? 作者の知識で理想のヒロインを守り抜け!

学園事件解決人・笹貫文士の高校生活は忙しい。学園内外のトラブルを引き受けながら、創作活動――Webで小説を連載する作家としても人気を博していた。
最新作『アポカリプス・メイデン』の評価は高く、有名イラストレーターがファンアートを描いてくれるほど。しかし今、文士の筆は止まっていた。この先の展開に詰まっていたのだ。
定期更新の締切が迫る中、学校からの帰り道でも、ヒロイン・いろはが活躍する山場のシーンに思考を巡らせる。ようやくイメージがまとまりそうになった瞬間──そのいろはが文士の目の前を駆け抜けて行くのだった──。
超常現象(ファンタジー)と現実(リアル)の境界を超えて、作者知識で無双せよ!? 謎が謎を呼ぶボーイ・ミーツ・ヒロインここに開幕!

うおおお、怒涛の展開じゃあ! 一巻完結なんですよね、多分これ。それ故の凝縮された密度とドライブ感。それ以上に足場からひっくり返されるどんでん返し。
そうだったそうだった、夏海さんと言えば電撃文庫でももう古参作家であると同時に屈指のガチガチSF者だったんでしたっけ。自作キャラであるはずのヒロインが登場するまでの初っ端の段階で、もう既に主人公の文士のキャラと活躍がインパクト強で面白すぎて、その辺さっぱりと忘れてましたわ。

そもそも、自作の小説のキャラクターが現実に現れて、という設定の作品はこれまでもありましたけれど、だいたいそういう作品って「痛さ」から逃れられない宿命を背負ってたんですよね。自分の妄想が現実に具現化する、というのは多かれ少なかれ痛々しさを伴うものです。
それ故か、そういう設定の小説の主人公、自作の妄想であるキャラクターと対面することになる人物というのは往々にして内向的だったり繊細で引っ込み思案だったり、とどうしても消極的だったり人当たりが弱かったり、と言うたらば陰キャ系統の主人公が多かったんですよね。
ところが、この作品の主人公である笹貫文士ときたら……いや、あらすじの段階で学園事件解決人なんて呼ばれている時点で、自分の世界に引きこもっているタイプじゃないよなあ、とは思っていたのですが。
ちょっと想像以上にアクティブでアグレッシブで、というか何こいつ!? という名探偵コナンくんでもそうはならんやろ! というくらいの超有能探偵だったんですよね。それも、あらゆる事件を解決するどころか、事件が事件として発生する前に事前に解決してしまうこともしばしば、というよく警察や探偵が感じているジレンマ。事件が起こってからしか、警察も探偵も活躍できない。自分たちは事件そのものを防げない、というのをこの文士は類稀なる情報収集能力で事件が起こる前の段階で防ぐことに成功しているケースが多々あるようなんですね。
冒頭の依頼なんぞ、依頼人が電話を掛けてきた段階で依頼人が依頼内容を口にする前に、事件は解決しました! と、その解決の経緯を喋りだすのですから、なんぞ!? となりますわ。
依頼人がなんで私まだ何も話していないのに、もう事件が解決してるんですか!? と、度肝を抜かれるのもわかるってなもんです。
そんなドアクティブな切れ者、自分から様々な事件を解決、事件になる前に解決、を繰り返すトラブルシューター、警察にも顔を知られ、学園内にとどまらずその能力を知られている学生探偵笹貫文士がそうやってあらゆるトラブルに首を突っ込んでいるのは……自作小説のネタ集めのため、というまあ凄まじい理由だったわけです。そりゃ、何事も取材して自分で体験した方が書き物には有効活用できるでしょうけれど、だからといって自作小説のためにこれだけトラブルに首突っ込んで片っ端から解決していくって、なんかこう……目的のための手段が吹っ飛びすぎてないですかね?
でも世界が羨むようなトラブル解決の才能を持つ文士が、心からやりたいことが小説を書くこと。トラブル解決ほどの際立った才能はないものの、それでも緻密な設定とシナリオを駆使してコツコツと人気を集めていくその努力家でもある姿勢は好感を持てるもので……。
っと、つまるところこの文士という主人公は、自作小説のキャラが現実に現れて、という設定のお話の主人公としてありがちな内向的なキャラクターとは、ちょっと想像を絶するほどベクトルが逆向いちゃってる個性的すぎるくらいの主人公だったんですよね。
だから、敵に追われている自作小説のヒロインと遭遇してしまったときも、そして実際にこの現実世界にはありえない異能を振りかざして襲いかかってくる自作小説の敵組織の幹部を目の当たりにしたときも、当たり前ですけれど混乱の極みに陥りながらも何故自分の作品のキャラクターが現実に現れてしまったのか、という理由原因要因は一旦脇に置きながら、今現実に襲いかかってくる脅威にアグレッシブに対処していくことになるのです。
巻き込まれ、じゃなくて明らかに自分から首突っ込んでってるんですよね。そりゃ、自作のキャラが現れてたら無視できないにしても。パニックになりながらも、的確にヒロインを追いかけ、敵の弱点をつき、何の異能力も持たないのに、いくら敵幹部の異能の詳細を知っているとはいえ現実に滅茶苦茶な現象を引き起こして破壊などを引き起こしている相手に、あれだけ見事に対応してみせるって……こいつマジすげえわ、と文士くんに感嘆するばかりで。
異能バトルもので、異能力に異能力で対応するのじゃなくて、現実的な手段と現実にある道具とその果断さ、発想やタフなネゴシエーションで勝利するって、それだけでもなかなか出来ない面白さなんですが、それをバリバリとやり遂げていく文士くんがもう面白すぎて、これはすげえ、すげえ主人公だ!
と、若干興奮気味に感じ入っていたのですが。
考えてみると、そうした感想を抱いてしまうことすら、予定通りの掌の上だったんですなあ。つまるところ、笹貫文士は紛うことなき「主人公」だったわけだ。
でも文士って、これまでの夏海作品に出てきた主人公らしい主人公でもあったんですよね。この人の書く主人公の少年って、普通に見えていやお前半端なさすぎだろう!? というとんでもないタフさの持ち主が多かったですし、ありえない舞台に引っ張り出されて立たされてこそ輝く、みたいな所も。
だから、そのまま受け取ってたんだよなあ。
そして何より、笹貫文士という主人公に魅せられていたという事でもあります。俄然、魅力的でしたもの。冒頭の掴みから思いっきり食いつかされましたし、彼が何するにしてもいちいち面白かった。
だからこそ、文士に負けず劣らずあのどんでん返しには愕然とさせられたわけです。
そして否応なく突きつけられるSF展開。これ以上は実際物語を読んでテンション揺さぶられることを推奨します。
いやあ、面白かった。久々にこう、ぶん回された感覚を味わわせてもらいました。初っ端から文士に心掌握されたが故のこの振り回され感でしたねえ。
おそらくは一巻完結でキレイに終わっていると思うのですが、読後も含めてキレの良い満足感を与えてくれる逸品でした。



プリンセス・ギャンビット ~スパイと奴隷王女の王国転覆遊戯~  



【プリンセス・ギャンビット ~スパイと奴隷王女の王国転覆遊戯~】  久我 悠真/スコッティ  電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

奴隷王女×スパイが挑む、学園に集う傑物との王座を賭けたロイヤルゲーム!

【王位選争】――次代の国王の座を王の子たちが奪い合うロイヤルゲーム。
傑物ぞろいの王族が通うロアノーク王立学園に足を踏み入れたのは、奴隷の少女・イヴ。現王と奴隷の間に生まれ、このゲームに巻き込まれた頭脳明晰な才女。そして、彼女を補佐する少年・カイは、国益のために傀儡政権の樹立を狙う敵国のスパイだった。
人間の本質をさらけ出す数々の頭脳戦。候補者同士が《騙し》《謀り》《裏切り》《潰し合う》、このゼロサムゲームの先に待ち受ける揺るぎない真実とは――?
女王になれなければ無惨な死と嘲笑を運命づけられた少女と、彼女を利用しようとするスパイの少年――奇妙な共謀関係にある二人による、命を賭した国奪りゲームが始まる。

こういう知力を振り絞り、駆け引きや謀略を駆使して相手を陥れ、場を支配して勝利を目指すゲーム系の物語というのは、ポッとでの真面目さ誠実さだけが売りの主人公では乗りこなせない。そのせいか、在る種の超常的な精神の持ち主や知力チート、曲者食わせ者といった常人とはかけ離れた突き抜けた人物が主人公になることが多い。賭博黙示録のカイジみたいな俗物の塊みたいなのはむしろ珍しい方なんじゃないだろうか。
同じ作者でもアカギの方だったり、【賭ケグルイ】の蛇喰夢子みたいな向こう岸に渡ってしまっている狂気を孕んだ人物が主人公というケースが、このたぐいの作品では多い傾向にあるんじゃないだろうか。そして、怪物たるその主人公たちゲームを、物語そのものを支配して対戦相手を、観客たちを、読者たちを魅了し夢中にさせてしまう。
そんな主人公たちは、怪物であるからこそ人知を超えたキャラクターである。彼ら彼女らは得体が知れず図りしれず未知であり理解が及ばない存在だ。だからこそ、畏れを抱きその狂気に魅せられてしまう、引き寄せられてしまう。絶対にわからないそれを理解したいと思ってしまう、もっと見たいと思ってしまう。
未知であるからこそ、彼らは魅力的であると言える。
だから、この手の作品の主役となる人物が得体が知れず、正体が知れず、何を考えているかわからない、というキャラクターであるのはむしろ方向性としては王道であると思うんですよね。
しかし、奴隷王女であるイヴの未知は、はたして魅力的だろうか。彼女の理解できない部分をもっと覗いてみたい、と思うだろうか。
奴隷という生まれにも関わらず、人を手玉に取り言葉巧みに取り込んで本人の意思のまま操ってみせる人身操作の手腕。それを元手に奴隷である彼女を買った主人を籠絡し、とても奴隷とは思えない境遇を得て教養や知識を得て王女らしい品格を手に入れたという彼女。それは、生まれながらの資質だったのか。彼女はどうして、王位を狙っているのか。いったい、その腹のそこで何を考えているのか。味方につけたスパイである主人公に語った内容はその奥底を見せること無く、上辺だけで踊っている。彼女が何を考えているか、何を思っているか、その薄ら笑いの向こうで何を望んでいるのかわからない。
わからなさすぎて、なんだか遠い。遠すぎて、共感を抱かない。ゲームのプレイヤーとして読者側の登場人物という感じがあんまりしないんですよね。
だから、誰にも肩入れできることもなく、淡々と目の前で繰り広げられるゲームを眺めている感じ。その勝敗に一喜一憂ができない。ぼんやりと眺めている。
ゲーム自体が面白ければ、そこから没入できるのだろうけれど、ルールばかりがぐるぐるとこねくり回されて、プレイヤー同士の攻防にそこまで動きを感じられなかったりする。
そもそも、奴隷王女の事前の予告どおりにしか状況は進まない。そこには予想外も予定外もなく、彼女が言った通りに事が運び、彼女が言ったとおりに他の人間たちは物事を考え、行動し、発言する。
こうなってこうしたら、彼らはこう考えこのように行動するでしょう。と彼女は語り、で、そのとおりに話が進む。
でも、だからといって奴隷王女すごい、というふうには感じられないんですよね。彼女が言った結果ありきで物事が進んでいるだけで、最初から脚本展開としてそう決まっていたから、というくらいにしか見えないんですよね。そこに彼女の説明、予告がそのとおりになる論理に説得力を与える、補強する状況や背景、論理はあまり見えず。
だから、カタルシスのたぐいを感じることがなかった。
ゲームにも関わらずドキドキもワクワクも出来なかった段階で、まあこれはあんまりあわなかったかなあ、というところで。


わたし、二番目の彼女でいいから。 ★★★★★   



【わたし、二番目の彼女でいいから。】  西 条陽/Re岳 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

俺たちは「二番目」同士で付き合っている――危険な三角関係の行方は?

「私も桐島くんのこと、二番目に好き」

俺と早坂さんは互いに一番好きな人がいるのに、二番目同士で付き合っている。
それでも、確かに俺と早坂さんは恋人だ。一緒に帰って、こっそり逢って、人には言えないことをする。
だけど二番目はやっぱり二番目だから、もし一番好きな人と両想いになれたときは、この関係は解消する。そんな約束をしていた。
そのはずだったのに――

「ごめんね。私、バカだから、どんどん好きになっちゃうんだ」

お互いに一番好きな人に近づけたのに、それでも俺たちはどんどん深みにはまって、歯止めがきかなくて、どうしても、お互いを手放せなくなって……。
もう取り返しがつかない、100%危険で、不純で、不健全な、こじれた恋の結末は。

これは凄いっ、凄い作品が来たぞッ!
タイトルやあらすじから、爽やかな青春モノとは裏腹のドロドロの男女関係をねっとりと描いてくれそうなラブストーリーとして期待を募らせていたのですが……。

期待を遥かに上回る不純で倒錯的で不健全な恋物語だったっ! これは本気で凄いし、それ以上にやべえよ、やべえよ、不健全だよ、倒錯してるよ!
でも、恋物語なんです。ドロドロの泥沼のような話でありながら、予想外に青春の物語でした。恋に盲目的なほど全力な若者たちの物語でした。
でも、性癖歪んじゃってるよこれーー!!

二番目だけれど恋は恋。早坂も桐島も、二番目の恋を決して疎かにはしていない。たとえ一番ではなくても、その好きは本気の好きだから。みんなには秘密にしているとは言え、二人は彼氏彼女の関係だから。
この時点で倒錯しまくっているのだけれど、主人公の桐島くんがまた性癖歪んでるんですよ、こいつやばいよ。彼が密かに思いを寄せている橘ひかりにはもう既に彼氏がいるという。その彼氏と思しき男の人と一緒の親密そうな写真を、橘は毎日のようにSNSにあげているのだけれど、桐島はマメにそれをチェックしているのだ。好きな人が自分以外の男と仲良くしている、という胸が掻き毟られそうな写真を食い入るように見入って嫉妬に血を吐きそうになって悶えながら……この男、その狂おしいまでの嫉妬心に恍惚となっているフシがあるんですよね。
……それ、寝取られ属性だよ!!
もう趣味習慣になっていると思しき桐島のその行為を、もちろん早坂あかねは知っていて、同時に嫉妬もしている。二番目の好きな彼が自分以外の女に夢中になっている姿に、いずれもし彼がうまく言って一番目に好きな彼女と上手く行ったとしたら、喜んで送り出してあげると決めておきながら、心定めておきながら、早坂あかねは嫉妬に狂うのだ。脳髄を、焼け付くような妬心に湯だたせるのだ。
そしていずれ、橘ひかりもまた、桐島のそんな性癖を、自分のSNSを偏執的にチェックして嫉妬心を募らせている実情を知ってしまうのだが、この娘は……橘ひかりはドン引きするどころか、むしろ前のめりにその事実を利用して、彼の嫉妬心をかき乱すことになる。
彼女の過去、そして現状が徐々に明らかになっていくことによって、この娘もまた倒錯と執着に囚われまくって歪んでいる娘だとわかってくる。

早坂あかねも、橘ひかりもイラストデザインからすると小悪魔的というか自己主張の強そうな娘に見えるのですが、早坂の方は大人しくて引っ込み思案でクラスのマスコットみたいな可愛い系。橘ひかりの方は無表情で感情的にならない人形のようなクールな美少女。と、決して押しの強いタイプの少女ではないんですよね。
それは、基本的に桐島と二人きりになっても変わるわけじゃない。二人共、猫をかぶっているわけじゃなくて、それが決して器用ではない彼女たちが表で出せる顔だから。
でも、桐島相手には心許せる相手だからこそ、隙を見せてくれて緊張を解した顔を見せてくれる。でも、それ以上に恋という感情が彼女たちを急き立てるのだ。冷静さを、理性を、取り繕うべき外面を、恥ずかしさを、何もかもが引き剥がされていく。
でももし、その恋がお互いを見つめるばかりの落ち着いたものだったら、彼女たちはもっと冷静に穏やかに自分の中に芽生えてくる恋心を制御できただろう。
でも、桐島を含めて早坂あかねも橘ひかりも、その根源に在るのは好きな人が絶対に自分のものにならない、という焦燥であり、狂おしいまでの嫉妬心だ。
それでいて、その恋は届かない所にあるわけじゃない。恋する人は、触れられる近さに居てくれる。その身体を捕まえていられる、抱きしめていられる場所にいてくれる。なんなら、心だって寄せてくれている。一番目だろうと二番目だろうと恋は恋だ、好きは本当の好きなのだ。でも、独占だけはできない。その人の心は、自分だけのものじゃない。いつだって、自分と違うあの人に向けられている。それが正気を発狂させる。なまじ、触れられるだけに抱きしめられるだけに、夢中になって求めてしまう。
そうなると、容易に理性は剥がれていく。夏の外気にさらされたアイスクリームのように、とろとろと溶けていくのだ。そうなれば、現れるのは剥き出しの欲望だ。独占欲だ。この人を自分のものにしてしまいという、原初の欲望だ。
この作品が倒錯しているのは、そうした溶け切った理性の果ての感情が誰か一人の一方的なものではなく、少なくとも桐島くんと早坂あかね、そして橘ひかりの三人の間で完全に共有されてしまっているところなんですよね。そして何より、その狂おしい感情を抱え込んでいる事を三人共が認めあっている、知っている、わかっている、という所なんですよ!
そして、お互いに彼氏彼女という関係を見せつけることで、一番目に好かれているという事を見せつけることで、決して結ばれないという現実を見せつけることで、見せつけ合うことで恋敵を、恋する人を嫉妬で悶え苦しませて、悦に浸るのである。
もう、倒錯してる以外のなにものでもないよ、これ。
そしてその倒錯は、四人目の当事者。早坂あかねが一番に好きな人、橘ひかりの付き合っている人、そして桐島くんが最も信頼し信頼されている人物が、同一人物であることがわかった時に、そしてその人と橘ひかりとの本当の関係が明らかになった時に、圧倒的なまでに加速していくことになる。

改めて見ても、もうむちゃくちゃエロいんですよね、この話。あらゆる場面にエロスが充満している。でも、決して直接的なエロがあるわけじゃないんですよ。誰も裸になんてならないし、肉体的接触もせいぜいキスが一番上。
でも、死ぬほどエロい。好きという気持ちが募りすぎて、理性がポロポロと剥離していく早坂あかりのエロスが、果たしてどれほど突き抜けているか、これは見てもらわないとわからないだろう。理性が吹き飛んでしまった時の男女が、どれほど獣のようになってしまうのか。頭から冷静に考える機能がなくなってしまうのだ。目の前に好きな人が居て、その人に触れるという事実だけが体中を支配する。その甘くてとろけていくような快感が、天上にも登るような心地が、ここには余すこと無く描かれている。
そして、橘ひかりとの逢瀬はそれにも勝る官能だ。部室の奥に眠っていた恋愛ノートと呼ばれるかつてのOBが書いたという、女の子と仲良くなれるという頭の悪いゲームを、橘ひかりに請われて二人きりでプレイしはじめたときの、あの頭が茹だっていくような時間と空間。ねっとりと、理性が蛇のようなものに絡め取られ動けなくなっていく空気感。
甘く囁かれる声が吐息が、全身を痺れさせていく。触れる指先が、唇が、舌先が、理性をドロドロに溶かしていく。体温が際限なくあがっていくのが、目の前にモヤがかかって目の前にいる人のことしか見えなくなっていく様子が、目に浮かぶようだ。ただ、目の前の人を求める原始の感情。
これを、官能と言わずしてなんというのだろう。
ってかこれもう、官能小説だろう!?

そして、それだけ理性を蕩かせながら、その相手を彼も彼女も独占できないのだ。自分だけのものに出来ないのだ。三人とも、人並み以上に独占欲が高く深いにも関わらず、心も体も手に入れられるのにそれを別の人に分け与えなければならないのだ。その狂いそうな感情を、この子たちは甘く苦い飴玉のように舐り尽くしている。苦しみながら、悦んでいる。
なんて、不健全!! 不純! 倒錯的!! 

ラストシーンの橘ひかりのあの台詞は、その極地でもあり、同時にタイトルに多重層の意味を持たせる構成の凄まじい妙を見せつけるすごすぎる台詞でもあって、あれを見せつけられたときには思わず放心してしまった。全身が痺れて震えるほどに、キてしまった。完全にヤられてしまったと言ってイイ。
うわああああ! もう、うわああああ! ですよ。叫ぶしかねえ!

なんかもう脳内物質がぶっ飛んだ。ヤバいですよ、これ。やばいやばい。すげえラブストーリーが来た!! 来たぞーー!!

七つの魔剣が支配する ★★★★   



【七つの魔剣が支配する 察曄 ̄野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第7弾!

キンバリーの今後を左右する一大イベント、決闘リーグの開幕が迫る。三年生に進級し成長を見せるオリバーたちは、そのために三人一組のチームを組むことになった。同学年の中でも実力上位と目されるナナオらは、他チームから徹底的にマークされて厳しい戦いを強いられる。
一方で、例年以上に豪華な報酬と特殊なルールは、教師殺しの犯人を探すための教師陣の罠でもあった。さらに次期学生統括の座を巡る選挙戦もその影響を受け、駆け引きは激しさを増す。
そんな中、ユーリィが追いかけていた「骨抜き事件」の犯人、サイラス=リヴァーモアが動き出す。激動のキンバリーで、屍漁りの魔人は何を企むのか――。

決闘リーグというか、なんかアスレチック競争みたいな……そう、これってなんか大昔の大人気ゲーム「熱血硬派くにおくん」シリーズの「熱血大運動会」をちょっと思い出してしまったんだがw
それはともかくとして、キンバリーの生徒たちが一年生を除いて各学年が全部参加する決闘リーグというイベントが開幕。図らずも次回生徒会選挙の行く先を占う代理戦争、派閥戦の様相をも内包するイベントになってきたのだけれど、それはそれとしてオリバーたちもそれぞれ三人一組のパーティーを作って参加することに。いつもなら、剣花団の6人が3人ずつに別れてパーティーを編成するんだろうけれど、ミシェーラが家の事情もあってステイシーとフェイと組むことに。家の事情とか関係なく、かつて揉めてた従姉妹とこうして仲良く組めるようになったというのは素直に嬉しくなりますなあ。
また、カティとガイ、ピートが3人で組むことになったので、自然オリバーとナナオが前回登場したあの「探偵」ユーリィと組むことに。
剣花団では特に戦闘面ではまだまだ未熟のカティたちが、3人で頑張る、となったのは相変わらず向上心が高くて微笑ましくなる。未熟といっても最初の頃から成長著しく、それぞれの得意分野を順調に伸ばしているだけに、優勝候補のアンドリュー組といい勝負になっていて見ごたえある対戦でした。
アンドリュー、ロッシ、オルブライトの同年代ではオリバー、ナナオ、ミシェーラと並ぶ最強格の三人がチームを組んだのは面白いなあ、と。彼らも最初の頃は色々と能力的よりもむしろ人格的に甘いところや隙や油断、傲慢さが見られたものですけれど、そういった余計なものが削ぎ落とされてホントに強いキャラになりましたよね。アンドリューなんて話の転び方によっては噛ませ犬のまま小物落ちしそうな危ういポディションだったのに、見事に立て直して風格すらある強キャラになりましたし。
なんて、感慨深く思ってたらオリバーたちが戦うことになったバトルロイヤルの他の三組を率いるリーダー格含めた面々が、これまたモブとはとても思えない凄味を見せてくれることに。
いやマジでミストラル、リーベルト、それにメカクレ剣豪ことエイムズの三人にリーベルトチームの狙撃手カミラはこれまで名前を聞かなかったのが不思議というかありえないくらいの強キャラで、特にカミラの狙撃は戦闘中も神業の連発で背筋がゾクゾクするほど研ぎ澄まされたプロのお仕事だったんですよね。
そしてまさかのオリバーやナナオに比肩するほどの剣士だったジャスミン・エイムズ。あとがき読んでびっくりしたんですけれど、ミストラルやエイムズって前に読者から募集していた投稿キャラだったんですね。そうとはまるで想像できないくらい作り込まれたキャラクターに、主人公たちと対等に渡り合う能力以上にその個性と存在感が作者の手の内にあって、まさか投稿キャラとは思いませんよ。
オリバーやナナオの実力はこれまでに嫌というほど知らしめられているにも関わらず、静かに剣でなら渡り合えると自負する、おとなしそうに見えて結構強気でメンタルも動じない不動感があるキャラクターはまさに強キャラでしたよ。ナナオとは違うタイプの静の型の剣客という風格で。
実際、同年代ではまじで最強の一角に入るみたいですし、出番がここだけ、というにはあまりにももったいないので、せめてロッシくん並には今後も登場して活躍してほしいですね。

他の3チームが結託してオリバーのパーティーが集中的に狙われることになったバトルロイヤル。カマセ役とは程遠い練達の技、急造とは思えない巧みな連携、そして得意の分野では他の追随を許さない魔術の粋を見せてくる怒涛の攻勢を、ギリギリの瀬戸際でしのいで3チーム相手に渡り合うオリバーたち。躍動感あり、頭脳戦あり、詰将棋さながらの指し合いあり、と思っていた以上に読んでる側をぶん回してくる楽しさ満載の攻防で、いや満足の面白さでした。
これは観客も盛り上がっただろうなあ。見た目も派手でしたし、見応えたっぷりでしたよ。

まだまだ決闘リーグは開幕したばかり、とこんなガッツリと続く、になるとは思っていなかったのですが、ラストでイベントとは無関係の、以前から起こっていた骨抜き事件がイベントの最中に発生、その被害者があの人、ということでイベントの裏の意義でもある生徒会選挙にも影響が出そうな勢いなんですよね。
それよりも、犯人であるリヴァーモア先輩の目的がなんかヤバそうなのですが。またぞろ魔術の闇を覗き見る展開になりそう。

それはそれとして、先生がちょっと大暴れしすぎである。最上級生含むあの大多数相手でも無双するのか。お互い、殺し合いじゃないので切り札は切らないにしても、化け物しか残っていない上級生相手に、手も足も出させない、というのはさすがキンバリーの教師ということか。
ってか、これらを殺さなきゃならない、以前に二人すでに殺ってるのよねえ。
こんなん相手にしてたら、あと何人犠牲者が出るものやら。その犠牲者候補であるあの子を、成長譚のなかに組み込んでいるの、結果次第では邪悪極まるやりくちですよねえw

あと、今回オリバーたちと同じパーティーで戦ったユーリィ。今まで得体のしれないというか掴みどころのないキャラでいまいちどういうキャラなのかわからなかった所に、前巻の最後でその正体が明らかにされた事で、どういう取り扱いのキャラになるのかと思っていましたけれど。
結構、がっつりとオリバーとナナオのコンビにからめて一緒に戦うことになって、掘り下げたみたいな感じになってるんですよね。正体わかっているにも関わらず、なんか仲間感が出てきてしまったのとか、それこのやり口よw
こうなってくると、ユーリィは正体が明らかにされて底が知れた、のではなく与えられた役割に留まらない可能性を持ってるんじゃないか、と思いたくなってくるんですよね。無知の知であり真理に届くための存在だからこそ、本来の役割を越えた彼だけの発見、到達があって欲しいなあ、と。

なんにせよ、ストーリーとしては続く、になったので早い目に次巻が来てくれることを願うばかりです。6巻と7巻の間そこそこ空きましたしね。まあ、私自身7巻発売されてから読むまでちょっと間あいてしまいましたけど。って、9月にもう出るんだ。ありがたや。


となりの彼女と夜ふかしごはん ~腹ペコJDとお疲れサラリーマンの半同棲生活~ ★★★☆  



【となりの彼女と夜ふかしごはん ~腹ペコJDとお疲れサラリーマンの半同棲生活~】  猿渡 かざみ/クロがねや 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

となりの彼女が「おかえりなさい」と「いただきます」を言ってくれる生活。

大手スーパーの文具部門で新任マネージャーとなった俺・筆塚ヒロトは、仕事漬けの毎日にすっかり憔悴しきっていた。そんな俺の唯一の楽しみは、深夜帰宅後につまみを作って酒を飲むことだけだった、んだけど……いつの間にか、隣に住む腹ペコ女子・朝日さんと賑やかな半同棲生活をすることになってました。

「し、深夜に揚げ物は犯罪なんですよ!」
「今夜こそ誘惑に負けませんからね…!」
「こんなに美味しいなんて優勝ですぅ…」

優勝――それは大切な人と美味い料理で食卓を囲う瞬間のことを言う、らしい。
腹ペコ女子があなたの暮らしを彩る深夜の食卓ラブコメ、召し上がれ!

いやこれ、腹ペコJDと深夜ご飯食べるのがメインじゃなくて、職場の総合スーパーで働く模様を描く方がメインのお仕事モノじゃないですか。
てっきり、仕事で疲れ切って帰ってきたところを、JDとイチャイチャしながらご飯食べて癒やされる日常ものというスタイルかとタイトルや粗筋から想像していたのですが、思っていたよりもかなりガッツリお仕事モノでした。
突然前の部署から慣れない文具部門のマネージャーをやらされて、売上も現場管理も部下との関係も何事も上手くいかず疲弊しきった主人公ヒロト。そんな彼が疲れ切って自宅のマンションに帰ってきた時、隣室のJDが居酒屋で鍵をなくして困っていて、縁あって彼女を部屋に入れて深夜ご飯を振る舞うことに。
そこで実に美味しそうにご飯を食べ、缶ビールを飲む朝日さんと愚痴を言い合うなかで、ヒロトは朝日さんに職場での部下への姿勢にお叱りを受けてしまうのです。
不本意だった部署の移動に余裕を失った事と不満から内向きになったことで、部下とちゃんと向き合わず現場を把握せずいい加減な仕事をしていた事に気付かされたヒロトは、心入れ替え今の部署のマネージャーとしてやるべき事をやり、部下ともちゃんとコミュニケーションを取って、おかしくなっていた現場を立て直し始める。
まあ言ってしまえばこういうことか。だいたい誰が悪いかというと、文具部門がおかしくなったのはヒロト自身の問題だし、彼のモチベーション管理を全くせずに放り出した人事部門の問題だし、しわ寄せは全部現場に来ていました、というのは仕事あるあるだよなあ。
実際、ヒロトはほぼ現場の人間の信頼を失っていたので、いきなりあんな新しい事をはじめようとしても、知らん顔されても不思議なかっただろうに、よくまあ助けてもらえたものである。パートの人たち、聖人だろう、これ。
まあ破綻状態にあった現場の環境が改善される、となったら協力するのもやぶさかじゃないのかもしれないですけど、いきなり一人でやろうとされてもねえ、というところもあるし。今まで現場出てこなかったのに、いきなり顔出すようになって特に話通さず相談もなく勝手にあれこれ動かされだしたら、相手が偉い人でもなんやねん、と思っちゃうんじゃないでしょうか。
去年の売上の百%超えも、前年がよっぽど低かったんじゃない?と意地悪なことを考えてしまう。
正直、心改めたからってそれからの彼のやり方はうまいもんじゃなかったと思います。本当にパートの皆様のお陰サマサマじゃないでしょうか。

さてJDの朝日さんとのお話の方ですけれど、女子大生っつっても高校卒業したばかりで右も左もわからない上京したての初々しい女の子、というわけじゃなく。そんな娘を餌付けしてご飯食べさせて癒やされる話、というふうではなく、朝日さんもう二十歳になってるんですねえ。なったばかり見たいではあるんだけれど、酒が飲める年齢である。
というわけで、夜食作って一緒にご飯食べて一緒にパカパカとビールの缶開けながらゲームしたり愚痴言い合ったりと二人して管を巻く、これ普通に宅飲みじゃないですか?
合コンの居酒屋で鍵なくして、部屋に入れなくて困っていた朝日さん。なんかぐだぐだな理由でヒロトの部屋に入り浸り、というほど図々しくはなく、むしろ申し訳無さそうに家事手伝ったり、と決して居心地良さそうにしているわけではなかったので、あんまり半同棲とかそういう雰囲気ではなかったですね。後半、住居侵入トラブルがあったあとは別の人の部屋に避難してしまったから、結局ヒロトの部屋にいたのは3日程度でしたし。
ただ、変に半同棲なんて言わず、夜中に宅飲みしてぐだぐだになって、ついつい二人して寝落ちして朝になってた、という実際の状況の方がよくある話である分生々しくて二人の間の雰囲気としては良かったんじゃないでしょうか。意図せず同じ部屋で寝ちまった、というのが何度か続いた方が意識してしまう所も大きいでしょうし。
それに、朝日さん、なんか最初こそ頼りなかったものの、よりどころ無くフラフラしてる女子大生じゃなくて、学生ながらしっかりと稼ぎを持ち、それ以上に自分の生き方をしっかりと見定めている大人の女性だったんですよね。むしろ、今現在迷走して鬱屈を溜め込んでしまっていたヒロトよりも、ここぞというとき大人びていたかもしれない。だからこそ、ヒロトは彼女の芯ある言葉に影響を受け、自分を見つめ直すことになったのですから。
とはいえ、彼女の方も自分の生き方を定めていたとはいえ、周りからそれを叩かれ否定されることも少なくなく、彼女の方もまたヒロトに負けず劣らず精神的に疲弊していた部分は少なくなかったのでしょう。
彼が困り果てていた自分を助けてくれたこと、そりゃもう美味しい夜食を振る舞ってくれて、お酒かぱかぱ煽る余裕をくれたこと、色々と吐き出させてくれたことは、間違いなく救いであり、張り詰めていたものへの癒やしだったのでしょう。他でもない彼に、自分の書いた2冊の本についての講評を求めたのは、彼が抱えていた仕事の苦しみの中に自分が耐えているものと共通したものを見出したから、だからこそこの人の意見を聞きたかった、というのもあるのでしょうけれど。
優しくしてくれた彼にこそ、自分の選択を認めてほしかった、という風に見えたのはラブコメフィルターの働きですかね。

あと、最後のは間違いなく犯罪なので、ちゃんと警察に通報しましょう。勝手に取引のネタにするの、余計に拗れると思うし、朝日さんの身の危険に直接関わるだけに、拙いんじゃないかなあ。



恋は双子で割り切れない 2 ★★★★   



【恋は双子で割り切れない 2】 高村 資本/あるみっく 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

割り切れないからこそラブコメは続く? 双子姉妹の誕生日、どうする!

わたしの妹は昔から賢くて、変わり者で、自由だった。
純と付き合うよう仕向けたわたしの狙いにも容易く勘付き、結果、那織の策略によって三人のこじれた関係がリセットされるに至ったのが先日のこと。
那織曰く、「単純明快な三角関係でしょ? 私はもう手加減しないからね」
だからこれからは正々堂々の勝負……なはずだけど、やっぱりこじれてばかり。
友達の慈衣菜は純に勉強教えて欲しいとか言い出すし、那織は機嫌が悪いみたいだし、純は恋愛そのものから距離を置こうとするし。わたしはと言えば、まだこの状況を素直に飲み込めなくて。
そんな中、わたしたち姉妹の誕生日が近づいてくる。……だからちょっとだけわがままを言ってみたい。昔みたいに、キスをして、って。
くわー、どちゃくそ面白いなあ。
1巻はほぼほぼ那織の手のひらの上、という感じで彼女の頭の回転の速さと突出した感性に振り回されたものですけれど、2巻はそんな彼女も思うがままに学校生活すいすいと泳いでいるわけじゃない、大きな弱点もあれば逆に振り回される展開もあり、ままならなさに頭抱えているのは彼女も変わらず、というのがよく見えてくる回でした。
というか、一旦視点をちょいと俯瞰的にした感じですよね。というより焦点を純と双子姉妹からちょっと後ろにさげて、琉実と那織、そして純の三人の交友関係にまで広げて改めて三人を取り巻いている環境を描いた、というべきか。
意外と三人はそれぞれのグループで離れて過ごしているんだけれど、同時にその3グループ間の交友もあって……いや、那織は人見知りもあってか琉実のバレー部の部活仲間とは接点持たないようにしてるわけだけれど。運動部で活発なバレー部の面々をやたら罵倒しまくってたくせに、いざそのグループに囲まれたら途端に寡黙になって表情閉ざしちゃうの、申告よりも酷い人見知りの内弁慶だなおい! どうせその際も内心ではめっちゃ早口に複雑でサブカル知識満載した罵詈雑言をつぶやいていたに違いないの容易に想像してしまえるのが、なんか笑える。
そんな彼女の頭の回転の速さについていける、というか対等に面突き合わせる相手っているのかねえ、とその役割を担っているらしい「部長」をどこか胡乱に見ていたんだけれど……いやあ、この娘はこの娘でとんでもねえなあ! むしろ対人能力ある分、那織より物事への柔軟度高いんじゃないだろうか。
まさか前回の那織に匹敵する人間関係を巡る謀略を見せられるとは思わなかった。関係者の殆ど、知らず識らずに手玉に取られてたって事じゃないですか。いや、前回の那織みたいに結論がひねくれているわけではなく、友人のあの子と仲良くなりたいという要望を叶えてあげただけ、ではあるんですけれど、やり方の迂遠さが! もって回っているうえに悪戯心満載なやり方が、那織曰くの邪悪!というの、わかっちゃうわー。
いやー、この歳でその悪魔的な蜘蛛の糸的なシナリオの描き方、エグくない!?
本質的な意味で那織と対等なのがよくわかった。
それでいて嫌がらせではないんですよね。那織にとって最適でスムーズな交友関係の広がり方をしたわけですし。散々、引っ掻き回されて悩まされて地団駄を踏むはめになったのは兎も角としても。
いやー、邪悪だw
でもほんとに那織みたいな子は「友達」足り得ると自認できる相手が、本当に少ないだろうから、もし友達になったとしたら一生モノなんですよね、それを見繕えるんだからなあ。
まあ、相手側からは友情ではない、というカードを伏せちゃっているあたりが実に邪悪ですがw 
最初、部長と那織の出会った当初が不倶戴天の敵同士だった、というのもこうなるとよくわかりますねえ。こんなん、最初から息が合うわけないじゃないですか。元々敵を作りやすい那織ですけれど、その敵というのは那織という存在を理解しきれず未知であるからこそ、その尖りっぷりばかりが突き刺さって敵意を抱いてしまうと思うのですけれど、部長の場合は同じステージに立ってしまったからこそぶん殴り合う以外なかった関係とも言えるので、ある意味本物の敵だったんだよなあ。
最後の那織の独白で引用されてた詩の作者であるテニスンの言葉を借りれば、He makes no friend who never made a foe(一人の敵も作らぬものは一人の友も作れない)という感じですか。
那織は敵を作ってしまうところもあるけれど、意図的に相手を敵認定していくところもあるんですよね。慈衣菜は元より、純を巡っての恋模様に関しても姉の琉実をしきりに敵としようとしている。
まあ、琉実相手はどれだけ那織が敵扱いしようとしていても、実際那織がやってることは琉実に助け舟出してばかりで、口で言う敵だ敵だという台詞は狼が来たぞにしか聞こえなくなってきているのだけれど。
それを一番わかってるの、琉実ですしねえ。この姉妹、仲が良すぎる。
実際問題、那織が仕掛けをして一旦拗れてしまった純との関係を三人でリセットしたの、今回の安定した琉実と純の様子を見ていると、あれ本当に正解だったんだなあ、というのがよくわかるんですよね。
ああやってリセットしていなかったら、元の幼馴染の気安い関係にも戻ること出来なかったでしょう。気軽にお互いの家を行き来することも、普通に学校で会話することもなく、疎遠になっていってしまったのが容易に想像してしまえる。
リセットしたからこそ、幼馴染以上恋人未満という淡い関係でもう一度、リトライする環境が整えられた。あんな、ハグしてとか甘えられること出来なかったでしょうし。
結局、早すぎたんですよね、付き合うの。幼馴染という関係を喪失して恋人になってしまった以上、その恋人という関係が終わってしまった時に日々激しい変化を迎えている高校生じゃ元に戻ることも出来ない、はずだった。
まああのままズルズルと幼馴染という関係を続けていった結果、関係そのものが腐ってしまう可能性もあったので、三人の関係に大きな刺激を与えるという意味で琉実が純と付き合ったこと自体は否定されるべきじゃないのでしょうけれど。ことを姉が起こすことで起動に成功し、その後始末というかリカバーを妹がして、というのはよく出来た手順じゃないですか。
一方で、純が何も出来ていない、というのもまあ確かな話なんですよね。わりと卒なく、姉妹の機嫌とって対処もスマートにこなしているのは結構凄いとは思うのですけれど(誕生日プレゼントの渡す順番とか、かなり気を遣ってるのが見受けられましたし)、それでも受け身のままなあなあで過ごしちゃってる。自分でどうこうしようとせず放棄してしまっている、という指摘は彼にとっては痛いものだったんじゃないだろうか。
まあでも、だからといってどちらかを選べ、というのもナンセンスな話だとは思うのですけどね。姉妹側もそういうのを求めてるんじゃないでしょうし。いや、最終的に自分の方を選んで欲しい、とは思ってるんだろうけれど、でも選んで欲しいと思ってるんだろうか。
那織は自分では好戦的に行動を起こそうとしているつもりみたいだけれど……あれで、琉実に純となにかやってるのかを秘密、というか特に言う必要も感じずに後回しにしてたというくらいなのですけれど、やたらと拗ねてましたしねえ。あそこで拗ねるのって、出し抜かれる云々というよりも除け者にされたという感覚の方が強いみたいで、それって三人一緒という意識が強くないと生じにくい感覚でしょうしね。那織ってそういう所、自分で思ってるよりも相当に現状維持派に見えるんだよなあ。

いやー、ほんとこの作品、登場人物見ているのがやたら楽しいですわ。人間関係が多角的な分、いろんな方向からキャラの側面が見えてくるし、掘り下げ方も深さから方向から多種多様でそのキャラを覗き込むのがほんと面白い。1巻のようなインパクトは、あの展開のひっくり返し方を何度もやられたらたまらんという所もあって、ありませんでしたけれど、その分縦横に世界が広がり奥行きもさらに覗けるようになって、噛めば噛むほど味が滲み出てくる感じでどちゃくそ面白かった!
これは先々も楽しみだなあ。


ドラキュラやきん! 3 ★★★☆   



【ドラキュラやきん! 3】  和ヶ原 聡司/ 有坂 あこ 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

虎木と未晴がまさかの婚約!? コンビニ夜勤吸血鬼たちが京都で大暴れ!!

日常に戻り、コンビニ夜勤に勤しむ吸血鬼・虎木のもとに未晴から依頼が。それは、許嫁との縁談を破棄するため、虎木に恋人のフリをして京都の比企本家まで来てほしいというもので!?
納得のいかないアイリスと詩澪を尻目に、これ見よがしにイチャつこうとする未晴と、流されるがままな虎木。そんな虎木の態度に悶々とするアイリスは決意する――そうだ、京都行こう。
だが道中、性急に未晴の縁談が進んだワケが明らかになるにつれ事態は一気にきな臭い方向へ――!!
『はたらく魔王さま!』和ヶ原聡司が贈る、ドラキュラ日常ファンタジー。ポンコツシスターやきもちを焼く?な第3弾!

アイリス、行っちゃダメって言われたのに行っちゃうんかー! そうだ、京都行こうじゃないよ、じゃないですよw
軽々に命令違反とかしちゃう娘じゃないのに逸ってしまったのは、それだけアイリスがメンタル的にどん詰まってしまったからだろうか。この娘、自分の本音をぶち撒けて相談できる相手って居ないんですよね。未晴は基本的で恋敵ですし詩澪も気持ちを吐露できるような相手じゃない。同僚や上司はプライベートを打ち明けられるような関係じゃないですし、強いていうなら由良なのでしょうけれど思いっきり当事者だもんなあ。店長の娘の灯里とは連絡取り合っているみたいだけれど、ファントム絡みの件は相談できないし……そう考えるとアイリスってかなり孤立していて由良にベッタリなのもわからないではないんですよね。
自分の中で虎木由良への結論のないまま、もやもやとした正体のわからない気持ちを持て余したまま、自問自答を繰り返してたらそりゃ煮詰まるってもんである。
京都へ行こう、もあれ気の迷いみたいなもので、アイリス自身七雲に出会わなければ京都駅についた時点でとんぼ返りに帰っていた可能性も高いですしねえ。
とはいえ、京都に来たことでハッキリした事が幾つもあるので、アイリスとしては結果的には良かったのかもしれないけれど、でも命令違反は確実なのでこれ始末書では済まないんじゃないだろうか。クビで済めばいいんだけど。下手したら協定違反で日本のファントムとの戦争勃発、の可能性すらあったわけですし。
しかし、アイリスが最初から由良には吸血鬼にも関わらず忌避感なかったのはそういう理由があったのか。でも、男性恐怖症なアイリスが由良に対してだけ最初から症状が出なかったのは、吸血鬼だからという理由だけではないと思うのだけれど。これ、ファザコン若干入ってませんか?

七雲くんはこれはこれで結構好きなキャラなんだけど、女性にはモテなさそうだなあ。能力的には優れているし人格的にも善良で目端がきく方だと思うのだけれど、メンタルがナヨってるw
これ、未晴と幼小中高全部いっしょで常に四六時中一緒にいるようなタイプの幼馴染関係だったら、ワンチャン、この男は自分が見ていてやらないと、的な感情が発生していた可能性もあるけれど、幼馴染といってもそこまで密接な関係がなかった今の状態だと、ちょっと無理めですよねえ。
よっぽどこれからカッコいい所見せ続けないと意識は変わらない気がする。なにより、未晴はずっと由良にぞっこんなのですから。
結構悪くない男だと思うんだけどなあ。

日本のファントムを牛耳る比企家と六科家。近代化した社会の中で生き延びるファントムたちを、人間社会の上位に食い込むことで地位を安定させ、ファントムたちを庇護下に置いている彼らだけれど、人間社会の中に溶け込み隠れ住むという事自体に不満を溜め込んでいる層も居たんですね。
ほぼ人間同然の由良だとて、吸血鬼として日光を遮断しなくてはならない関係上、普通の生活に非常に苦労している事を思えば、人型以外のファントムなどマトモに生きることも難しいのでしょう。絶滅している種も多いみたいですし。
一個人である由良はぶっちゃけ、そんなファントム全体の事に関しては責任はないし無関係なのだけれど、因縁ある室井アイカがそうした勢力と深く関わっている以上、無視は出来ないか。
今回、可能性だけとはいえ由良が人間に戻れる方法が見つかったわけだけれど、それが叶うとして果たして一抜けして終わり、になるんですかね。アイカを通じて何らかの決着がやはり必要となってくるのか。
何にせよ、アイリスは自分の気持ちに気づく事が出来たし、由良の方も今までみたいに自分にまとわりついてくる女、というだけの認識だけではなく、この娘の事をもっと知っていかないと、とアイリスの事を思えるようになったのは一歩前進になるのかな。



ユア・フォルマ II 電索官エチカと女王の三つ子 ★★★★   



【ユア・フォルマ II 電索官エチカと女王の三つ子】  菊石 まれほ/ 野崎つばた 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

謎のアミクスによる連続襲撃事件。鍵を握るのは女王の三つ子、最後の一人!

★第27回電撃大賞《大賞》受賞のSFクライムドラマ★
哀切怒濤の第2弾開幕――!!

再び電索官として。歩み出したエチカに新たな事件が立ちはだかる。RFモデル関係者連続襲撃事件――被害者の証言から容疑者として浮上したのは、他ならぬ〈相棒〉ハロルドの名前だった。

「きみの思考に入り込めたらいいのに」
「あなたに潜れたらどんなにいいか」

ままならない状況に焦るほど、浮き彫りになる<人>と<機械>の絶対的違い。埋められない溝に苦しみながらも捜査を続ける二人を待ち受ける衝撃の真相、そしてエチカが迫られる苦渋の選択とは――!

前回の事件を通じて、心から通じ合い認めあったパートナーとなれたエリカとハロルド……と、思ってたらいきなりぶっこんでくる「アミクス」には心なんてないよ、というRFモデルに携わる技術者の発現。いや、開発者であるレクシー博士の態度はまた違うんだけれど、アミクスに携わる科学者たちの見解は、等しくアミクスというロボットが行っているのはあくまで状況に合わせた言葉を用意された「辞書」から引き出しているに過ぎず、そこに思考や意思は介在しない。「中国人の部屋」というロボットSFで良く語られる設問を引き合いに出して語られるそれは、アミクスに心は存在しない、という大前提に基づくものであったのです。
いや、あるだろう心。ハロルドにも、前回登場したRFモデルにおけるハロルドの兄であるスティーブにも確かに心は存在した。エチカは、それと間違いなく繋がったのだ。だから、彼らRFモデルに心があるのは自明の理なのだ。
でも、RFモデルが通常のアミクスと同じ延長線上にあると考えているアミクスの専門家たちには、そんな見解は端からない。
面白いことに、専門家じゃない素人である捜査関係者たちやAI倫理委員会(素人か?)の人たちにはその絶対の大前提が理解できないんですよね。だから、外部からの干渉によってRFモデルが起こした事件を引き合いに出して、不具合がない他のRFモデルも危険視して停止させるべきだと主張する。
技術者たちは、ちゃんと技術的チェックをして不具合の有無を確認し科学的根拠をもって、RFモデル全体の危険性を否定する。そこにはハロルドへの個人的な信頼とかはなく技術的科学的根拠に基づくものしかない。一方で倫理委員会などの面々たちは、漠然と根拠なくあっちがダメだったんだからこっちもヤバいだろ、と危険視してくる。話がそもそも噛み合ってないんですよね。
でも、ハロルドがアミクスというただのロボット、ただの道具、という見解については一致している。だから、ハロルドを心ある存在と認識しているエチカにとっては、両者とも何をわけわからない事言ってるんだ? と、話の噛み合わなさ理解出来なさに苛立つはめになる。
三者三様、相手が何を言っているか全然理解できていないんですよね。
ロンドン警察の捜査部は、さらにアミクスに人権が認められてるせいか、システムチェックじゃなくハロルド当人と拘束して尋問、という人間にするみたいな事を平気でしながら、一方でRFモデル全体の問題トラブル危険性なんじゃないか、とハロルド個人を認めるでなくロボット扱いしているわけで、いやなんか端から端まで矛盾してませんか?と思うんだけれど、彼らとしては一貫してるんですよね。

人間同士ですら、同じ言葉を喋りながら会話を交わしながら、どこかで根本的に意思疎通すら出来ていない、理解が噛み合わないのに。
そもそも、根本的に違う存在であるアミクスと人間が理解し合えるのか。
そもそも、アミクスであるハロルドに意思がある、心がある、という科学的技術的根拠が存在するのか。

RFモデルが引き起こしつづけている連続傷害事件の捜査を通じて、エチカはほんとうの意味でのハロルドという存在そのものへの理解を迫られる事になる。
一旦はハロルド自身が事件の犯人なのでは、という疑いをかけられ任意同行を求められたものの、その容疑は別の事件が発生したことで早々に拭われるのですが、RFモデルそのものへの危険視は増すことでかなり面倒くさいことになってしまうんですね。
ハロルドの容疑を晴らすため、さらに巻き添えになったハロルドの「家族」のために、真相究明のため捜査を行うエチカなんだけど、その過程でRFモデルそのものの誕生の秘密に踏み込むことになる。
そもそも人を遠ざけてきたエチカにとって、他者への理解は避け続けてきたものだった。人の記憶に潜りその感情そのものを体験する電索官でありながら、彼女は人間そのものへの理解が遠い。
だからこそ、結婚詐欺じみたやり方で近づいてきたハロルドに、なんだかんだと心許してしまったわけだけれど、本当の意味でハロルドの心のうちを理解する事は難しく、でも理解したいと願った、願ってしまった。
電索官として捜査官として以上に、私情でハロルドの心を追いかけてしまった。彼の心が誕生した起源に踏み込んでしまった。いやほんとに私情込み込みで、捜査官としての在り方よりもハロルドを優先してしまうほどに。
ある意味彼女、一線を越えてしまっているとも言えるんだけれど、一線を守ろうとするとハロルドの停止は余儀ないんですよね。彼の在り方を世間は許容出来ないことは、一連の各方面の対応からも明らかなわけで。でも、こうなるとハロルド自身が一線を越えようとしたとき、それに干渉できるのはエチカだけになってしまった、という事でもあり、エチカの葛藤はその時が来るまで止まないことになってしまったわけだ。
アミクスに備わっているはずの大前提が、あそこまで徹底して皆無であることがわかった以上は、もうハロルドの心ひとつ、心ひとつなんですよねえ。
結局、彼の「心」に訴えるしかない、という事なのか。
そのハロルドの心はというと、揺れに揺れまくっているのですが。エチカが片っ端から揺り動かしている、と言えるのですが。グチャグチャじゃないか、ハロルドの心。グチャグチャすぎて、処理落ちしてるじゃないか。エラーが出てるじゃないか。
ハロルドもまた、理解したいと乞い願っている。切ないほどに、心引き裂かれんばかりに、切に切に、求めてる。彼女の辛そうな顔を見たくないと願ってる。
それが心でなくて、何なのか。それが人の心と何が違うのか。ハロルド自身が、その存在を頑として認められなくても。

二人のお互いを想い合う切なる気持ち。それは本来とてもシンプルなものなのかもしれないけれど、それを人と機械の相互理解というSFのテーマとして丁寧に描くことでこんなにも深い沼としてズブズブにしてしまえるのか。
シトシトとした雨に降られるような読後感に、しばし染み入るのでした。





虚ろなるレガリア Corpse Reviver ★★★★   



【虚ろなるレガリア Corpse Reviver】  三雲 岳斗/深遊 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

少女は龍。少年は龍殺し。 日本人の死に絶えた世界で、二人は出会う!

その日、東京上空に現れた巨大な龍が、日本という国家の崩壊の始まりだった。
魍獣と呼ばれる怪物たちの出現と、世界各地で巻き起こった“大殺戮”によって日本人は死に絶え、日本全土は各国の軍隊と犯罪組織に占領された無法地帯と化してしまう。
ヤヒロは数少ない日本人の生き残り。龍の血を浴びたことで不死の肉体を手に入れた彼は、無人の廃墟となった東京から美術品を運び出す“回収屋”として孤独な日々を過ごしている。
そんなヤヒロを訪ねてきたのは美術商を名乗る双子の少女ジュリとロゼ。二人がヤヒロに依頼したのは、魍獣を従える能力を持つという謎の存在“クシナダ”の回収だった。
廃墟の街で出会った少年と少女が紡ぐ、新たなる龍と龍殺しの物語、堂々開幕!


ドラゴンものはデビュー作以来って、【コールド・ゲヘナ】のことかー! 懐かしいなあ。って、あれはファンタジーじゃなくてガッツリSFでしたけどね。それ以上に人型ロボットものだったじゃないか。ド派手で何よりスピーディーな高速戦闘は読み応えたっぷりでのめり込んだのを覚えています。まさか20年以上経ってもこうして第一線で活躍し続けているとはさすがに思いもしませんでしたが。というか、そんな先のこと考えもしなかったんだけど。

さても今度の新シリーズは、前作の吸血鬼モノだった【ストライク・ザ・ブラッド】から、龍と龍殺しの物語。ドラゴンスレイヤーというのは本邦でもファンタジー小説やゲームの黎明期から活躍するある意味勇者の代名詞。かのドラゴンクエストからして竜王殺しの話でしたし、それよりも前、ファミコンのアクションゲームでも黎明期からドラゴンスレイヤー的な作品は山程ありました。ライトノベルでも、ロードス島戦記や海外から翻訳されたファンタジー小説なんかでもドラゴンスレイヤーとは最強の戦士、みたいな感じで常に最上位に位置し続けたジョブなのではないでしょうか。
吸血鬼に並ぶ、王道とも言えるでしょう。
しかも、本作の主人公ヤヒロのそれは現代に合わせて様々な形にアレンジやら改造やらされた龍殺しのそれらと比べると、むしろ原典に近いんですよね。古典的と言っていいくらい正統派な形で誕生した竜殺し、と言えるのかもしれません。

魍獣と呼ばれる謎の化け物たちの出現に加えて、世界中の国家、組織、個々の人々からの虐殺によって国家として日本は滅び、民族として日本人は絶滅した。
日本列島は都市の廃墟に魍獣が跋扈し、その縁側で世界各国の軍隊が基地を置く滅びの地と化していた。という、ポストアポカリプスものと言えなくもないけど日本限定終末後、というなかなか類をみない壮絶な世界観である。
でもこれだと、世界中が滅びてしまった後に比べて、他の世界の国々は健在なので物資の面では不足がないので、ガンガンとフルスペックの軍隊をアクションの中に放り込めるんですよね。その上で住民の被害を考えないで、日本の各地各都市各名所を戦場にして吹っ飛ばせるという自由度の高さ。なにしろ無人ですからー。日本人絶滅してますからー。文句はどこからも出ませんね、善き哉。

そんな根絶やしにされたはずの日本人の生き残り、主人公の鳴沢八尋には目的がある。死んでも成し遂げなければならない目的だ。死なないけど。
その死なない身体になった原因と、目的がまた覚悟決まりまくっていて壮絶極まりないんですよね。
まだ十代の若者にも関わらず、背負っている業が重すぎる。彼にとってはこれまでの人と関わらない、関われない孤独ですら、禊だったのかもしれない。
でも、彼はここで出会ってしまうのである。さて、その運命の相手がクシナダヒメであったのか、それとも悪魔(ベリト)の双子の方だったのか。
何もかもが双子の目論見通り、ではあったものの、なにげに双子との邂逅こそがヤヒロにとっての転換点だったのは確かなんですよね。それを運命と呼ぶのは恣意が介在しすぎているか。
でも彼女たちに目的と企みはあり利用する気満々でも、扱いとしては誠実であり好意的であり、駒とか道具扱いじゃなく、ちゃんと同じ人として、共犯者として、仲間としてベリトの双子のみならず、ベリト隊のなかなかに個性的な面々は接してきてくれてるんですよね。
孤独のまま走り抜けるつもりだったヤヒロにとっての、初めての仲間というべき人たち。
日本人の生き残りとして迫害され続けてきたヤヒロにとって、経験のない好意的な交友は戸惑い狼狽えるしかないものだったのだけれど、それでも仄かに嬉しそうで、ついつい警戒を緩めてしまう姿はチョロいとは言うまい。可愛らしいくらいじゃないですか。
憤怒と罪悪感にだけ塗れて生きて死ぬには、まだまだ若すぎるんだから。
にしても、ジュリエットとロゼッタの双子のキャラクターは良かったですねえ。半分マフィアみたいな連中ですけど、天真爛漫でどこか喰えないジュリに、クールでそっけないようでイイ性格しているロゼと、強烈な存在感を残してくれた二人でした。まさに天使のような小悪魔、といった周りを翻弄するジュリの明るさもとらえどころのなさも魅力的なのですが、クールなロゼみたいな子がデレるのは是非見てみたいなあ。
この二人に比べると、メインヒロインの彩葉は裏表のない真っ直ぐな性格していて、色んな意味で汚れていないなあ、とw
ただ行動力というかパワフルさは全然負けてないんですよね。結構グイグイくるタイプだぞ、この娘。こういうブレのないストレートにまっすぐ進める子でないと、超ヤベえレベルの凶悪なヤンデレには対抗できないのかもしれない。

初っ端からしっかりと強烈な世界観を叩きつけると同時に、そこで躍動するメインとなる登場人物たちの存在感を確立し、壮大なストーリーの始まりを強く意識させる。一巻目としては文句なしの、長期シリーズの開始を確信させる盛大な号砲でありました。このあらゆる意味でも面白さと安定感は、さすがとしか言いようがない期待の新シリーズでありました。


男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 1. じゃあ、30になっても独身だったらアタシにしときなよ? ★★★★   



【男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 1. じゃあ、30になっても独身だったらアタシにしときなよ?】  七菜 なな/Parum 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

永遠の友情を誓った親友ふたりが――ふとしたきっかけで〈両片想い〉に!?

 とある田舎の中学校で、ある男女が永遠の友情を誓い合った。1つの夢に向かい運命共同体となった二人の仲は――特に進展しないまま2年の歳月が過ぎる……!
 未だに初恋がこない陽キャ女子・犬塚日葵と、花を愛する植物男子・夏目悠宇は、高校2年生になっても変わらず、二人だけの園芸部で平和に親友やっていた。
「悠宇が結婚できなかったら、アタシが責任取ってやんなきゃねー」「日葵がそれ口走ってから、おまえの兄さんが『義弟くん!』って呼んできて辛いんだけど」
 ところが、悠宇が過去の初恋相手と再会したことで、突如二人の歯車が狂い出す!? 果たして恋を知った日葵は「理想の友だち」脱却なるか?

それはそもそもから恋だよ!
惹かれ惚れ込み独占しようとする。恋愛という枠組みに押し込むことで形にしてしまうことを恐れ、友情という雛壇で飾ることで何時までも変質させることなく、維持しようとする心は純情の粋じゃないですか。
あまりにも大切なものは、はっきりと形にしないほうがいいんですよね。形質を得てしまうと、それははっきりと明晰になるけれど、同時に形を失うというリスクを負うことになる。
これを日葵は非常に自覚的にやっている。彼氏を作って即座に別れる、というアレだ。人間関係を、一度付き合う、彼氏彼女になるという「形」を現出させることで、否応なく誰にでも分かるように破壊しているのだ。そうして、人間関係を終わらせている。
こういうことをしている娘だ。尚更、壊れてなくなってしまう可能性のある「恋愛」の成立を怖がる事も理解できる。曖昧模糊にしておくことで、友情という枠組みにおさめておくことで、彼女は大切に悠宇との関係を護っている。
でも、それはもう最初から恋だよ。
若者の時ほど、人は衝動的で十代でのお付き合いなんて続かないのが当然(その考え方には頷けないものがあるけれど。人間、どれほど年取ったって衝動的だよ)、という意識があるからこそ、30になってもお互い独身なら結婚しようぜー、なんて言い回しで婚活期間ゴール地点(近年ではもう三十路程度若い若いまだ折り返し地点になっている気がするが)での目標確保を狙っているのかもしれないけれど、この日葵さん……やや俗欲に堕している節がある。わりと、我慢が効かないタイプなのだ。友情という枠組みの方に自分を隔離して悠宇との関係を維持しようとしていながら、他の誰かが悠宇の恋愛圏に入ってくるとそれに全然耐えられなかった。耐えられなくて、友情枠から転げ落ちんばかりに身を乗り出して恋愛圏に割って入ろうとしだしたのだ。
覚悟も何も決まっていない。
そりゃ、だいたい見通している次兄は怒る。この人はどちらかというと狂気サイドの人に見える。線を引っ張ったアチラ側だ。
そんなアチラ側からの理屈なら。本気で勝ち逃げを狙うなら、日葵は決して恋愛圏に首を突っ込んではいけないのだ。友情枠、それも親友枠で居続けないといけない。恋愛圏とは交わらない、しかし恋愛圏よりも上位の、不可侵の、唯一絶対の、一番で居続けないといけない。
恋愛圏なんていう、同じ土俵で戦おうとしてはいけないのだ。それでは、恋敵と勝負になってしまう。そもそも勝負にならない高みを掴み続けないといけない。達観して悟りを開き、何もかもを覚悟して受け入れて受け入れなければならない。最後には、自分の所に戻ってくるのだから、という確信を、一切の疑念のない確信を抱き続けなければいけない。
まあそこまで来ると、狂気の領域で、その狂気を親友同士で共有しないといけない、なんて感じなんだろうけどさ。
あんまり達し尽くしてしまうと、いい加減恋とか愛とか友情とか、分けるのが不可能なくらい溶け合ってしまうのですけれど。定義なんて、どうでもよくなっていくのだけれど。

その点、日葵は至るには俗すぎるんですよね。目の前の欲望に弱すぎる。だから、容易に自覚してしまった恋心に振り回される。自分こそが悠宇にとっての唯一無二だと確信できない。彼氏彼女という関係の形がないことを不安に思ってしまう。キスや肉体関係を証として求めてしまう。
その意味でも、この娘は普通の女の子なのだろう。
ところが、悠宇の方は日葵よりもよほど覚悟決まってたんですよね。日葵のことが唯一無二である事について一切ブレなかった。自分の人生を、生涯を、一生を、この娘に捧げるのだと決め込んでいた。悠宇も日葵ほど俗じゃないけれど、頭がおかしいわけでもイッちゃっているわけでも、果てに達しているわけでもない普通の子だ。でも、覚悟は決め込んでいたんですよね。
おかげで、二人の友情という枠は続いてしまった。彼らは親友であり続けることになった。最後の最後に確実に勝ちを掴むために。
日葵にとってはなかなかの修羅の道だけど、果たして安易に目の前の餌に食いつかずに、最後まで我慢できるのか……この娘本気で目の前の欲望に弱そうだからなあ。
悠宇が日葵とも関係を大切に思っているからこそ、安易にセフレみたいな関係になるのに抵抗を覚えているのが案外とネックで、もう大親友だし莫逆の友なんだし子供でも作っちゃう? くらいの摩擦係数がゼロの関係になれば日葵の欲も安定しそうなんですけどね。
ただ、悠宇も覚悟決めている一方で、達観しているわけじゃなく普通に日葵の事を女の子として好き、という恋愛感情があるので、彼らの親友関係って表と裏が存在しているだけに、何がどうなっても、キスしてもセックスしても子供作っても結婚しちゃっても、二人は無二の親友なのは変わらないなんていう行き着く所に至っちゃった関係じゃないだけに、決して強固な関係じゃないんですよね。
今回、日葵が自覚しブレた途端にレッドゾーンに突入してしまったみたいに。だから、悠宇が下手に日葵と一線超えるようなスキンシップは避けているのは、間違いじゃないのでしょう。
でも、それだけ薄氷の上を歩いているとなると、決着は思いの外早いのかもしれない。少なくとも、30までは全然持たんでしょう。どこにでもある男女の当たり前の関係に落ち着くのか。
男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) とタイトルで反語で断言してるくらいですしねえ。

何にせよ、陽キャの完璧超人に見えて、メンタル弱々な日葵が果たして完走できるのか。二人の決着がどういう形でつくことになるのか。先がめちゃくちゃ楽しみなラブコメのスタートでした。うむ、面白いぞ!!

七菜なな・作品感想

昔勇者で今は骨EX 小骨集 ★★★★☆   



【昔勇者で今は骨EX 小骨集】 佐伯 庸介/白狼 電撃文庫

Kindle BOOK☆WALKER

WEB限定!! 骨になっても心は勇者な冒険者(※ただし骨)の珠玉の短編集が登場!
大人気お気楽異世界ファンタジー『昔勇者で今は骨』の短編集が電子書籍で登場!
電撃文庫MAGAZINEや小説投稿サイト「カクヨム」にて掲載された短編などを大収録!!
さらに新規書き下ろしの短編『心の師匠のためならば』も収録!

電子書籍限定ながら、【昔勇者で今は骨】の短編集が登場。こうして電書限定でも続きが出てくれると嬉しいですねえ。しかも、短編集ということで色んなキャラにスポットが当って結構贅沢ですよ、これ。
今まで存在だけが示されていた勇者アルヴァスの婚約者だったお姫様たちも、在りし日のアルヴィスと共に描かれていますし。このお姫様方もなかなかに濃いキャラだったんだなあ。濃い以上に王族としても一人の女性としてもイイ女であり、人類危急の時に在るべき王族であり、と人物たる人たちで。
アルヴィスも政略としての婚約であったというから、建前の付き合いだったのかなー、と思ったらちゃんと公私の私の部分でも仲良かったんだ。帝国のパンデー皇女なんか姉御呼ばわりですもんね。
エイン王国のエルデスタルテ王女の方はだいぶ年少さんで当時まだちっちゃい幼女だったのだけれど……アルヴィスってフーチ相手でもそうだったけど、子供相手でも適当に子供扱いせずしっかりと相手を見て相手を立ててちゃんと話してくれるので、子供の方は凄く慕っちゃうんですよね。本当の意味でちゃんと話を聞いてくれる大人、というのを子供というのは求めてやまないものですし。
おかげさまで、王女様の方は勇者オタクを拗らせてしまうのですが。姉御の方はすでに大人だったから変な屈折は……いや、アルヴィス戦死をきっかけに帝位目指しちゃったらしいのでこれはこれで拗らせたのか? いずれにしても、二人共勇者の死ではなくアルヴィスという個人的に親しい人の死を嘆きショック受けただろうことは想像に難しくない。政治的立場故に、アルヴィス死んだけどまだ健在、というのを知らされていない、というのはちょっと可哀想だなあ。特に王女は未だに……ねえ。

知っててなお、苦しんだのがフブルさんとイザナなんだろうけれど。
フブルさん、こうして過去編見ると魔法の師匠であるという以上にまだ子供だったアルヴィスを預けられて育てた親代わりでもあったんだなあ。フブルさんもこれ、弟子という以上に我が子のように思っている様子が伺えるんですよね。そんな子を、天賦の才に魅せられて魔法の粋を授けてしまった。何より、勇者にしてしまった。人類の危機を救う切り札としてしまった。結果として、彼は運命のまま人類の決戦兵器としてその役目を果たしてしまった。果たさせてしまった。果てさせてしまった。
死なせてしまった。
フブルさん、毎夜魘されのたうち回るほどに苦しんでたのか。そりゃそうだよね。息子に等しい子を自分の手で死する運命へと叩き込んでしまったのですから。
ただでさえ、頼まれたから、そうしなければ全滅していたからとはいえアルヴィスを死霊に変えてしまったイザナが、フブルさんが苦しむ様子を見せられて思う所なかったわけがないんだよなあ。思いつめた結果が、本編でのあれだったわけですけれど。
いや、アンデットになって太平楽決め込んでたアルヴィスは、ほんとそういう所ですよ、てなもんで。


とは言え、アンデットになってまで現世にしがみつき続けることにアルヴィスもこれ結構深刻に悩んでたんだなあ。そんな彼の心を救ったのが、プーチであり、この幼女をアルヴィスが心の師匠と呼んで憚らない理由なのだけれど……書き下ろしで久々にプーチ登場しましたけれど、マジでアルヴィス、この娘への接し方というか対応というか態度が特別ですよね!
いや、特別というとイザナへの接し方も他の女性陣と比べるとちょっとした違いと特別感があってちょっとした正妻感漂ってるんですけど(子供?もいるし)、プーチへのそれはまたさらに特別で、そりゃハルベルとミクトラが最大のライバル出現?!と顔色変えるのもわかりますわー。


元堕竜王ディスパテのダイスも、なんか転生して人間に生まれ変わってから順調に主人公かよ、という道を歩んじゃって……結構真面目に学生してるのがなんともはや。ハルベルの学友だったペリネたちパーティーと一緒に行動するようになってるわけですけど、これダイスくんルートのヒロインってペリネなの? いや、あんまりラブコメ臭は漂ってこないのですが。ダイス、中身竜王でも一応実年齢四歳だしなあw

書き下ろしは、プーチも含めてこれまでの主だった登場人物が登場しての大騒動。骨になっても勇者しているのは相変わらずですけれど、いい意味で任せられる仲間が増えたもんですわ。
時系列的にも最新5巻のその後になってて、なんか6巻の伏線らしきものも匂わされてるんですけどー!? ってか、完全に話続いてるんですけどー!?
あとがき見ても、6巻続く可能性あり、ってなもんで、これはぜひ続いてほしいなあ。まだまだ、この飄々とした骨と元気いっぱいのキャラクターたちの和気藹々とした世界を見ていたいものですから。
短編集、一話一話があんまり短いという気がしないくらい密度濃いしテンポ良いしキャラが生き生きしていて、実に読んでて楽しかった。満足感、かなりのもんでしたよ。面白かった!
印象的な話も多かったのですけれど、冒頭にあのお伽噺を持ってきたのは掴みとしては強烈でしたよね。この世界に伝わるお伽噺とも言うべき掌編。ほんと短いお話なのですけれど、凄く雰囲気が深くて沁みるようで、なんか心に残りました。魔王オルデンとの繋がりは否定されてるみたいですけれど……さてこうしてみると倒された魔王についてはほとんど知らないんだよなあ。

シリーズ感想

恋は双子で割り切れない ★★★★☆   



【恋は双子で割り切れない】 高村 資本/あるみっく 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

いつまでも、ただの幼なじみじゃ居られない。初恋こじらせ系双子ラブコメ!

我が家が神宮寺家の隣に引っ越してきたのは僕が六歳の頃。それから高校一年の現在に至るまで両家両親共々仲が良く、そこの双子姉妹とは家族同然で一緒に育った親友だった。
見た目ボーイッシュで中身乙女な姉・琉実と、外面カワイイ本性地雷なサブカルオタの妹・那織。そして性格対照の美人姉妹に挟まれてまんざらでもない、僕こと白崎純。いつからか芽生えた恋心を抱えてはいても、特定の関係を持つでもなく交流は続いていたのだけれど――。
「わたしと付き合ってみない? お試しみたいな感じでどう?」
――琉実が発したこの一言が、やがて僕達を妙な三角関係へと導いていく。
初恋こじらせ系双子ラブコメ開幕!

これ、あらすじだと琉実の一言から波乱のラブコメがはじまるかのような語りになっていますけれど、実はこの一幕があったのは中学の時。この物語がはじまる高校一年の時点では、なんと琉実と純はすでに別れているのである! そして、純は那織と付き合っているのである! それも、琉実のたってのお願いで。冒頭からこの双子と純の三人の独白から物語ははじまるのですが、このはじまった時点で三人の関係が絡みに絡まった沼に首まで浸かった状態、というのはちょっと凄まじくないですか?
端からここまで拗れた関係ではじまったラブコメは覚えがありませんわ。
試し読みして、初っ端からのあまりの濃さに躊躇なく予約してしまいましたが、このビリビリくるような感触は間違いありませんでした。むちゃくちゃ密度濃くて想いが深さゆえに拗れまくった面白いラブコメだ!

物語はこの三人が交互に一人称視点で語ることで進んでいくのですが、さらに面白いのは状況だけじゃなくてキャラ描写そのものにもあるんですよね。一人称ってのは、その対象となる人物の心象と語りによって表現されていくものなんですけれど、これびっくりするくらい三人が三人ともその語り口が全然違うんですよね。頭の中身がまったく違うというか、思考の成り立ち方というか色彩というか、とにかく考え方の質がそれぞれ三人とも全く違うのである。これ、ここまで一人称を毛色違うようにそれぞれの特色持たせて描いてる作品ってなかなかないんじゃないだろうか。
特に異質なのが、妹の方、神宮寺那織でこの娘、頭の中身がほんと並と違うんですよね。根本的にメチャクチャ頭いいんだろうなあ、というのがひと目でわかるし、思考の密度が異様に濃いのである。その知性の大半をサブカル方面に費やしているとはいえ、根っこの部分の思考の速さ、広がり方は天才と呼ばれる人種のそれなんだろう。サブカル方面とはいえ、教養の深さは尋常じゃないし、なんだろう、気取ってるわけじゃなくナチュラルにシェークスピアの引用を使いこなしてる人種と同じ類なんじゃないだろうか。
ただ、頭がよい人特有の自分は全部わかっている、という万能感に若干なりと彼女自身、那織自身が振り回されてる感があるんですよね。三人の関係を俯瞰し、姉である琉実の想い、幼馴染である純の抱いている想いを見通した上で、主導権を握って状況を整えてコントロールしようと目論んでいるのが彼女なのだけれど、案の定というべきか、自分がどう見られていたか、どう思われていたかについては自分で勝手に合点してしまっている所があって、それが彼女を若干迷走させることになるのである。
いやこれ、最後に至る前に教授から、純の初恋は自分である、と知らされたから良かったけれど、知らないまま動いていたら、彼女が導き出していた結論は違ったんじゃないだろうか。
最初から最後まで全部自分はお見通して思い通りに引っ張り回しましたよー、みたいなしたり顔してましたけれど、結構な方向転換したんじゃないだろうか、これ。
終わってみると、このタイトルってほんと秀逸なんですよね。
琉実は、妹に初恋している幼馴染をいきなりの告白で横から掻っ攫った事への罪悪感から、一年で別れを告げて、今なお純に恋している妹の那織と付き合って貰うことで罪を精算し、無理やり恋を割り切ろうとしたものの、未練を引きずりに引きずることになる。
純は、那織を掴まえられず初恋を諦めようとした所で琉実に告白され、付き合っているうちに本当に好きになったのに突然別れを告げられて、初恋がまだくすぶっている那織と付き合うことになって彼女のコトも今改めて好きだと自覚して、どんどん割り切れなくなっていき苦しむことになる。
那織の動向はなかなか謎なんですよね。この娘、地の文でも現実の方でも実に雄弁多弁で怒涛のようにいろんなことを喋っているし、考えているのだけれど、その多量さで本当に何を考えているかについては微妙に迷彩かけている印象があるんだよなあ。姉の気持ちには気づいていて、純が今も琉実に未練があることにも気づいてた。ただ、幼い頃から中学の頃まで純が自分に恋していた事は知らなくて、自分のことを一生懸命追いかけていることにも気づいていなかった。自分がずっと好きだった人が、自分のことをずっと好きで、その独特さ故に他人ともちょっとした距離感を感じていた自分をずっと追いかけてくれていた、と知った時の那織の様子と来たらもうメロメロじゃないですか。
でも、この娘がそれからしようとした事は、その恋を独占することじゃなかったんですよね。こいつ、お姉ちゃんの事も好きすぎるだろう。そして、根っからの享楽主義者なのか、これ?
この娘だけ、割り切れないなら割り切らなきゃいいじゃん! というスタンスなんですよね。そのために、企み謀ってみせたわけだ。一旦関係をリセット、するんじゃなくて。三人が抱いている「好き」という気持ちを詳らかにして、お互いの中にあった誤解や思い込みを解消してみせたのだ。その上で、引けない所までお互いの関係を踏み込ませてしまわせた。
割り切れないからこそ、一旦双子両方と別れて距離を置こうとした純の退く根拠を雲散霧消させてしまい、自分たち双子の事がどうしようもなく好きだという気持ちだけを引っ張り出してみせた。
琉実についても、純が義理で自分と付き合っていたという誤解を解き、燻ぶらせている未練を後ろめたさを消し去って、姉ゆえに妹たる自分に感じていた責任感や引け目も感じないように状況を整えた。まあ、姉妹関係については琉実は一歩退こうとする気持ちはなくなったものの、余計に妹への愛情を拗らせてしまった感があるようにも見えるのだけれど。
ともあれ、那織は割り切れない恋を苦しいもの、辛いものじゃなくて、割り切れなくていいじゃん! 三人ともお互い胸の内をさらけ出しあった、好きという気持ちも全部ぶちまけた。機会は平等、チャンスも同等、ならばあとは楽しくラブコメしよう。恋を楽しめ、好きにときめけ、駆け引きは後ろ暗さなく、誘惑は正々堂々と。牽制は笑ってつつき合え。てなもんで、こう泥沼でネガティブに陥りそうな要素を見事なくらいにふっ飛ばしちゃったんですよね。
いやあ、すげえわ。琉実も純も苦笑いしながら、こいつには敵わねえ、と誇らしく思うのもよくわかる。色んな意味でとんでもねーヒロインでした。エロいし、エロいし。エロすぎじゃねえかい、この天才巨乳w

生中のオタクを軽々と突破した、深層の趣味人とも言うべき那織の語りは元より、その影響を濃く受けている純も、普通の体育会系JKであるはずの琉実も、微妙にサブカルの沼にハマっているところがあって、会話や地の文の各所にサブカル系の引用やネタが散りばめられていて、普通に読んでてもやたらと濃厚で読み応えある文章でありました。
その上で、さらに濃いキャラたちの生々しいような躍動感のあるような、息遣いを感じる学生生活に、溌剌としたデートなど外で遊ぶ様子に、趣味に生きるじっとりとした日常感。
読み終えたときには、もう久々に「読んだわー」と満腹感を感じさせてくれる、満足度マックスとなる作品でした。いやー、読んでて楽しい作品は多々アレど、こんな濃厚さで楽しさを味わわせてくれる作品は滅多ないですわー。色んな意味で最高でした。良かった良かった。
そして、ぜひ続きが読みたい。ある意味、制限解除されたこの三人の然るべきラブコメ、読んでみたいです。

グリモアレファレンス 2.貸出延滞はほどほどに ★★★★  



【グリモアレファレンス 2.貸出延滞はほどほどに】 佐伯 庸介/花ヶ田 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

図書委員の仕事は迷宮探索だけじゃない!? 未返却の魔書を回収せよ!

図書館の地下に広がる迷宮を探索する一方、通常のレファレンスもこなす図書隊のメンバーたち。
そんな中、守砂は大学教授の紙珠から地下に収められた魔導書の貸出を依頼される。初めて直接受けたレファレンスに張り切るものの、探索はトラブルの連続で……!?
「無いん! です! けどぉぉぉぉ!!」
未返却の図書の回収や男子の夢が詰まった隠し部屋の攻略など、図書委員として順調に探索をこなしていく守砂隊だが、迷宮のすべてを解き明かそうとする彼らに対し魔書生物たちが明確な敵意を持ち襲い来る――!!

紙珠櫛子教授、という守砂くんと過去に繋がりのある先生が登場してきましたけれど、名前の櫛からはついつい櫛名田姫が思い浮かんでしまって、すわメインヒロイン登場か! とざわついたのですけれど、むしろ紙珠……かむたま、と読むのだそうですけれど、そこから連想される神魂命―神産巣日神の方がモデルになるのかな。この神様は祖神として援助者としての側面を持っているそうで、紙珠教授も学者という立場から色々と知恵を貸してくれたり、直接勉強を教えてくれたり、と守砂くんたちのパーティーを熱心に手助けしてくれるんですよね。面倒見の良いお姉さん、といういい感じの人でねえ。
同時に、この人が守砂くんたちに初めてレファレンスの依頼を出してくれた人でもあり、ってフブルさん通して回ってきたのでありますけど、探索だけじゃない図書委員としてのお仕事を体験させてくれるきっかけになったわけです。書庫から目的の本を見つけてくる、というレファレンスのお仕事はその場所が図書館迷宮ということで中々に大変なのだけれど、苦労して見つけてきた本を直接依頼人に手渡しして、喜んでもらえるという体験は図書委員ならではの充実感なんですよねえ。いや、普通の図書委員でそんな体験することじたい少ないでしょうけれど。
迷宮探索云々じゃなくても、そもそも図書委員でレファレンスを体験するような本格的な図書館を擁した学校で図書委員を本格的にやる、なんて経験する人は少ないでしょうしねえ。
ともあれ、これはこれで学生らしい、委員としての体験の一つでもあるわけだ。
今回はちょっとした短編集的な体裁なんだけれど、迷宮探索者としての図書委員としてよりも、学生、生徒という立場としての登場人物たちの日常の様子を垣間見るような構成だったんですよねえ。
ちゃんと、学生として青春を謳歌しているなー! 毎日、充実した時間を過ごしてるなあ。というのが伝わってくる内容で。図書館迷宮の探索って、お仕事ではあるんだけれど、社会人という立場からのお仕事とはまた違って、ちゃんと学生としてのお仕事……なんていうんだろう、学校業務を補完するためのお仕事というんじゃなくて、学生として学びを充実させるためのお仕事って感じがするんですよねえ。知識を得たりとかのお勉強としての学びじゃなくて、学生の時しか出来ない体験としての学び、という風に言えばいいのかな。
ミカ姉との二人での延滞督促を兼ねた迷宮探索も、改めて二人の関係がどんなものなのかを実感させてくれる、ミカ姉的にはデート回と強弁してもまあ否定出来ない内容でしたし、エロ本を巡る男子と女子の攻防(一方的)なんかはもう、もろに若いなあと微笑ましくなってしまうものでしたし。男の子たちの熱の入れようといい、女子たちの激烈な拒否反応といい、思春期だからこその溌剌さなんですよねえ。
加来くんとの仲悪いにも関わらず、なんだかんだと協力してしまうエロへの欲求よw
加来くんとのあの複雑な関係は、単純に仲が悪い、で表現しきれないものがあるんですけどね。守砂くんサイドからは加来くんには別に思う所なかったり、加来くん自身過去の守砂くんには深い嫌悪めいた感情があるものの、現状の守砂くんはかつてとは違うという理解もあって、でもやっぱり嫌い、でも誰よりも認めている、認めているからこそ信用できなくて、でも信頼もしていて、という無関心では居られない複雑な思いが絡みついてる所は、ほんと好きですわーw

こういうのを見せられると、青春してるなあ、とやっぱり目を細くしてしまいますよ。こういう温かい熱がじんわりと伝わってくる生き生きとした描写は、ほんと好きですわー。
しかし、ミカ姉さんは本気で色んな意味でヤバい人だったのかw
この人、魔書のバフ抜きでも化け物なんじゃないだろうか。迷宮の外でも人外魔境出来そうなんだけど。その分、ポンコツさも残念なことになっていますが。
守砂くんの好みがモロにミカ姉さんだったのはちょっと笑ってしまいましたけど。いや、マジでストライクに好みが見た目から性格に至るまで彼女のことを指しているのに、未だ女性として意識されてないのって、完全にミカ姉の接し方の問題なんだろうなあ、これw
いやでも、ちゃんとメインヒロインがミカ姉っぽくて良かったですよ。

そんなメインヒロインの座を、ある意味脅かす人も出てきましたけれど。そうだよなー、中学時代からの友人、という文句を最初は普通にそうなんだー、と流してましたけれど、守砂くんの中学時代に友人とか明らかに厄ネタじゃないですかw あのひでえ中学時代に友人やっているという時点でちょっとおかしいですし。
最後にちらっと見せてくれた本心は、ミカ姉に引けを取らない守砂くんへの執心を見せながら、同時に方向性がまったく逆だという事実が、彼の妖しさを引き立たせてくれる。
生中な暗躍では、あのクレバーの塊のような守砂くんを引きずり回す姿は想像もできないのだけれど、本質的に守砂くんが中学時代のあの魔王のような在り方を失っていなければ、理解者であればあるほど、その本質を引き出す妙手を見つけることができるだろうしなあ。
本当に守砂くんは昔と何も変わっていないのか。それとも、今仲間を得て、新たな楽しい時間を得て、確かな変化を内側で芽生えさせているのか。その真価が、友人であるという彼……八十間雅の活動を通して見えてくるかもしれない。
でも、八十間って元ネタは八十神になるのかな。元ネタ的にはむしろ、大国後輩の敵役っぽいんだけどなあ。でも、守砂の天秤を自分の方に傾けるために対決する、綱引きする、取り合いする、という意味ではミカ姉じゃなくて大国後輩との方が噛み合うのかしらこれ。


わたし以外とのラブコメは許さないんだからね 2 ★★★☆   



【わたし以外とのラブコメは許さないんだからね 2】  羽場 楽人/イコモチ 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

小悪魔系後輩登場! 恋人になってから始まるラブコメ戦線、第二弾!

「俺と有坂は付き合っている。ヨルカは俺の恋人だ」
ザ・平均値な男子高校生の俺と、完全無欠のハイスペック美少女・有坂ヨルカ。二人の秘密の関係はクラスメイトに向けての恋人宣言により晴れて公認に。だがそれはハッピーエンドなどではなく、新たな騒動の序章でしかなかった!
中学時代から俺と親しかった小生意気な後輩・幸波紗夕との再会をきっかけに俺達の両想いが揺さぶられる事態に!?
「きー先輩、好きです。私と付き合ってください」
俺、案外モテている? いやいや、ヨルカ一筋ですから! 告白で幕開けるラブコメ戦線、第二弾。

「わたし以外とのラブコメは許さないんだからね!」と仰ってるヨルカさんですけど、他の女子とは一切関わるんじゃねえ、という風には言ってないんですよね。それどころか、紗夕が引きずってしまっていた恋心に決着をつけるのに、むしろ希墨の背中を押してるくらい。
ラブコメするは許さん。だけど青春するのは推奨します、て事なのかしら。
希墨の心が既にヨルカにあって揺るぎない、という点にはヨルカ自身も自信があるのでしょう。実際、希墨は恋愛感情という面においては一切ブレることがない。でも、恋愛感情はなくても友情や後輩への親愛ではすごく悩むんですよね。希墨としては、ラブコメではないんだろうな、これ。

希墨本人はどうやらまったく自覚ないみたいなんだけど、こいつって人の良い所を見たらそのまま口に出して言う傾向があるっぽいんですよね。褒める事や良い所を指摘することに躊躇いがない。それも上っ面じゃなくて、本質をえぐるような鋭い指摘なものだから言われた方は平静では居られないわけだ。ああ、この人自分のことわかってくれてる。自分のことよく見てくれている、と思ってしまう。
実際、よく見てるもんだから間違ってはいないんだけど。
それは、その人だけをよく見てるわけじゃなくて、別け隔てなく色んな人のことをよく見てるんですよね。色眼鏡や偏見を介さず下心もなく……、朝姫たちなんかは後で気づいて、別け隔てなくフラットに見る人なのだ、と述懐していましたが。
でも、言われた方からするとなんか特別感感じてしまうじゃないですか。そりゃ、彼に失恋する娘がわんさと出てきてしまうのも当然なのかもしれない。
ある意味たちが悪いのは、彼は振ったあとも態度変わらないフラットのまま、という所なのでしょう。そのお陰で友人としての立ち位置に戻れる娘もいれば、消化不良のままくすぶってしまう娘もいる。態度が露骨に変わってしまったり、気まずくなってしまったら自然と距離を置くことになったり疎遠になったり、という形で関係も終えられるのでしょうけどね。それが良いのか悪いのかはわかりませんが。
紗夕はある意味、一番可能性が高かった娘でした。ヨルカと会う前の希墨と、星の巡りさえ良ければ付き合うことが出来ていたかもしれない娘でした。
タイミングが悪かった、とも言えるのでしょうけれど、チャンスを片っ端から逃してしまったのは紗夕の自業自得でもあるんですよね。勇気があれば、決断力があれば、希墨先輩を好きになる人がいるわけがないという油断が、希墨先輩が誰かに夢中になるなんてあるはずないという思い込み。それが、掴もうと思えば掴めた魚をスルリと逃してしまう痛恨のミスとなってしまったのでありました。
後悔先に立たず。チャンスがあったからこそ尚更に、未練が残ってしまう。
失恋も出来ていない、そう鬱屈を深めていく後輩の懊悩に、希墨は当事者だからこそ最も手が届く所から遠い場所にいる。
ここで紗夕にきっちり引導を渡してくれるのが、希墨じゃなくてヨルカというのがまたイイんですよね。生の恋人だからこそ出来る、両思いの熱を伝えてあげられる。自分を向いてくれない希墨の恋心だけじゃ、紗夕は置いてけぼりにされてしまうだけだったんですよね。でも、ヨルカからも希墨への熱い揺るぎない恋の熱をそっと教えてもらうことで、ようやく紗夕の置いてけぼりにされてしまっていた心が、現実に追いついてくる。
ああ、青春だなあ、とようやく泣くことの出来た紗夕の号泣と、それを優しく見守るヨルカの姿に感じ入るのでした。変化球抜きの、ただただ真っ直ぐに恋と青春に向き合ったお話でした。
こういう段階になると、男がどうこうするのは野暮ですよねえ。女の子同士で後腐れなく想いを吐き出し合うという意味では、ヨルカさんしっかり彼氏をラブコメからは遠ざけたんじゃないでしょうか。




ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 ★★★★   



【ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒】  菊石 まれほ/ 野崎つばた 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

孤独な天才捜査官。初めての「壊れない」相棒は、ロボットだった。
★第27回電撃小説大賞《大賞》受賞作!!★
最強の凸凹バディが贈る、SFクライムドラマが堂々開幕!! 

 脳の縫い糸――通称〈ユア・フォルマ〉ウイルス性脳炎の流行から人々を救った医療技術は、日常に不可欠な情報端末へと進化をとげた。
 縫い糸は全てを記録する。見たもの、聴いたこと、そして感情までも。そんな記録にダイブし、重大事件解決の糸口を探るのが、電索官・エチカの仕事だ。
 電索能力が釣り合わない同僚の脳を焼き切っては、病院送りにしてばかりのエチカにあてがわれた新しい相棒ハロルドは、ヒト型ロボット〈アミクス〉だった。
 過去のトラウマからアミクスを嫌うエチカと、構わず距離を詰めるハロルド。稀代の凸凹バディが、世界を襲う電子犯罪に挑む! 
 第27回電撃大賞《大賞》受賞のバディクライムドラマ、堂々開幕!!

おおっ、SFだ! 設定がどうのじゃなくて、作品の雰囲気がライトノベルでありつつも「ハヤカワ文庫」風味が効いてるんですよね。敢えて言うなら、【マルドゥック・スクランブル】風味というべきか。
いや、設定も非常に硬派の近未来SFとしての根が張り巡らされていて世界観だけでもとても読み応えあるのですけれど、そこにガッツリとした外国ドラマ的な刑事バディもの、クライム・サスペンスとしての要素が満載されているので、作品の雰囲気そのものが洋風なんですよね。変に緩い和テイストを混ぜてないのも硬め感があって直球のSF作品としての体となっている。

また、物語の主体が電子犯罪の追跡にある一方で、ガンガンと主人公のエチカの内面へと切り込んでいく登場人物の心理面を丹念に掘り下げていき解体していくテイストになってるんですね。
キャラクターのトラウマ、精神的な傷をグリグリと抉りあいぶつけ合うという、精神的な殴り合いみたいなバディの衝突というべきかコミュニケーションというべきか、ともあれそうした一種の容赦ない対立をもって人間関係を構築していく、そして個々を掘り下げていく手法というのは外国ドラマや外国小説のバディもの、近未来SFでも人間にスポットをあてた作品なんかでは顕著に見られるパターンだけに、余計に洋モノの味わいを感じるのかも知れません。

それはそれとして、エチカの相棒として派遣されてくるアミクス…ここではアンドロイドやロボットというべき機械じかけの存在であるハロルド。彼は人間の隣人にして親愛なる友人たるべき存在として定義されているアミクスの中でも、特別な製造品として作られた存在なのですけれど、彼個人の特別な体験を経ることでさらに特殊な個体へと成長? 進化? 発展? している個体です。
人間味が普通のアミクス以上、というだけでなくちょっとした特技なのか、名探偵めいた観察力と推理力を持ち合わせて、それに独特の話法、よく回る口をもって自分の望む方へと誘導する技法を得意としてるんですね。
それを彼は刑事としてのテクニック、あるいは探偵みたいなスキルとして振る舞っているのですけれど……よくよく見ると、或いは聞いているとこれってある種の「詐欺師」の論法なんじゃないだろうか。それもあれです、結婚詐欺師的な?
女の人をうまく騙して良い気分にさせて、自分の思う通りにコントロールして誘導してしまう、的な?
そんな彼のことを胡乱な目で見ているエチカは、アミクスという存在自体に忌避感を強く抱いている人であり、彼が相棒として派遣されてきた段階から拒絶感をあらわにし、慇懃でありながら妙に馴れ馴れしいというか「イイ性格」をしているハロルドに対して嫌悪に近いものを抱いて、かなり辛辣な対応に終始するところからはじまるのです。
そもそも、エチカはアミクスだけじゃなく、人間そのものに対しても盛大に距離を置いていて、幼少からのネグレイトを主体とした虐待の体験から、深い心の傷を抱いている。人と接するのを毛嫌いしている、或いは恐怖に近いものを抱いているのかもしれない。最初から諦めていると同時に、刺々しい対応をとることで相手からも拒絶されることで、安心感を抱いているような……それでいて孤独感に震えている。人を遠ざけながら、どこかで人を求めている。アミクスへの拒絶感も、かつて父と暮らしていた頃のことが深く絡んでいるんですね。
ともあれ、自身の孤独に翻弄されている、独りである事を強く望みながら独りである事に耐えられない寂しさを抱いてしまっている、そんな女性だ。
こういうハリネズミみたいな人は、決してチョロいとか絆されやすいとかとは程遠い、一種の難しい人間である。この手の人の内側に入るのは容易ではない。
容易ではないのだけれど……往々にしてこういうタイプの人ほど結婚詐欺のカモになりやすい、というパターンだったりするんですよね。
チョロくはない、チョロくはないよ? でも、正しい手順を踏むとびっくりするくらい、コロッと行っちゃうのだ。非常に押しにくいところにあるけれど、押してしまうとコロッと全面反転してしまうスイッチがあったりするのだ。
そして、ロボットにして結婚詐欺師(違)な手法に長けているハロルド氏の登場である。
……なんかこう、エチカさんまんまと餌食になってませんかね、これ?
ハロルドがその心の深奥にそれはもうドロドロとした情念を抱えていて、エゴイスティックな目的を持っていて腹黒一直線だったりするので、余計にその手管に絡め取られてしまった感ががが。
ただ、本来人造の創造物として純真無垢な精神構造をしていただろうハロルドが、ロボットにも関わらず尋常ならざる情念を、狂気を抱えてしまうほどの凄まじい惨劇を味わってしまっているからこその、闇落ちなんですよね。かといって、本当に狂いきってしまっているわけではなく、被造物としての純真さはある意味失われていない。失われていないからこそ、彼は闇をはらまなければならなかったとも言えるのでしょう。被造物であるからこそ壊れてしまうことで、本物の心が芽生えてしまった、というべきか。元々、彼の心は本物だったからこそ、あの惨劇を目の当たりにして壊れてしまった、という順番も考えられるのですけどね。
しかし、どれほど深い情念に囚われていようとも、彼の精神は正常に動いている面も確かにあるわけで。その正常の部分が、エチカという存在に激しく反応してるんですよね。それを、恋と呼んでいいのか。少なくとも、アミクスである彼にとって計算ずくの範囲の外に見つけたそれは、とても素敵で心浮き立つものなのだろう。
不協和音を奏でていた二人が、本当の意味で心から通じ互いを認めたパートナーとなり、再出発を迎えるラストはこれからも続いていくシリーズものとして素晴らしいスタートを切ったような爽やかな幕引きで、実に心地よい幕引きでありました。
この巻ではずっとお互い探り探りで、エチカの拒絶もあって意図も気持ちも混ざり合わない重なり合わないギスギスとした居心地の悪さがずっとつきまとっていたコンビですけれど、次回以降は息ピッタリ、とまでは言いませんけど、同じ方向を向いて呼吸を合わせられる以上の関係にまでは至れたと思うので、そんな二人の事件簿を見るのは実に楽しみです。

ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います ★★★   



【ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います】  香坂 マト/がおう 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

強くてカワイイ受付嬢が(自分の)平穏のため全てのボスと残業を駆逐する!
 デスクワークだから超安全、公務だから超安定! 理想の職業「ギルドの受付嬢」となったアリナを待っていたのは、理想とは程遠い残業三昧の日々だった。すべてはダンジョンの攻略が滞っているせい! 限界を迎えたアリナは隠し持つ一級冒険者ライセンスと銀に輝く大槌(ウォーハンマー)を手に、自らボス討伐に向かう――そう、何を隠そう彼女こそ、行き詰ったダンジョンに現れ、単身ボスを倒していくと巷で噂される正体不明の凄腕冒険者「処刑人」なのだ……!
 でもそれは絶対にヒミツ。なぜなら受付嬢は「副業禁止」だからだ!!!! それなのに、ボス討伐の際に居合わせたギルド最強の盾役に正体がバレてしまい――??
 残業回避・定時死守、圧倒的な力で(自分の)平穏を守る最強受付嬢の痛快異世界コメディ!

 第27回電撃小説大賞《金賞》受賞作!

往々にして自分は受付しにいく側で、受付する側になった事はないのだけれど、あれはあれで大変なお仕事だというのは多少なりとも理解しているつもりである。
ただ笑顔浮かべてお客さん相手に受け答えしているだけじゃないのだ。受付業務というのは、まーあれやこれやアホみたいに事務処理だのなんだのが積み重なっているものだというのはよく聞く話。お客さん相手に話しているのなんて氷山の一角なのである。そのへん、ちゃんとわかった上で敬意と礼節をもって接しましょうね。
なんて言っても、受付カウンターを隔てたあっちとこっちはまさに別世界。あちら側の苦労や悩みなんてのはどうやったって理解はされないし、理解も出来ない。
冒険者なんてヤクザで夢見がちな職業に人生賭けている連中は、当然「価値観の隔たり」なんてものは概念すら知らないだろう。受付カウンターの向こうでニコニコと笑っている受付嬢たちの笑顔の下で一体どんな罵声と呪詛と怒声と怨念が飛び交っているか、なんてのはまー想像すらしていないに違いない。
……こういう荒くれ者相手の受付業務って、平素でも結構なハードワークだと思うけどなあ。しかも単純な肉体労働者ではなく、冒険者というのは命かけて切った張ったをしている連中でもある。見知った人が突然来なくなることも度々だろうし、直接死亡報告が飛び込んでくることもあるだろう。救援要請依頼、なんてのもあるかもしれない。必然、受付嬢って人たちはお得意様の死を間近で体験することの多い仕事、ということにもなる。精神的にもなかなか来るものがある職業だと思うがなあ。

アリナが選んだのは、そういうお仕事ということだ。本当に心の平穏が保てて安全で安定した仕事、というのなら選ぶ先は幾らでもあっただろう。なにげに事務処理、というのはこのくらいの文明度なら十分高等な職務にあたるはずですし。大きな商家や官庁でも普通に重宝されると思うスキルである。
にも関わらず、アリナは自由だけど不安定でローンも組めない保証のない、いつ死んでもおかしくない人たちの相手をする受付嬢を職業として選んだ。安定を、安全を望みながら、それを放り投げて生き急いでいる人たちを見送り迎え入れる仕事を選んだ。
最初、特に難しい理由があるとは思っていなかったんですけどね。単純に話として面白いから、ギルドの受付嬢というのを主人公にしただけの、メタな理由しかないお話だと思ったんですけどね。
でも、アリナにはアリナなりに、ずっと冒険者という人たちを間近で見続けたい、という彼女自身意識していたかどうかわからない、ちゃんとした彼女なりの理由があったわけだ。
なんらかの形で、カウンターを隔てていたとしても、冒険者という人たちと関わっていたい、という願いが彼女の中でポゥと火を灯していたのだなあ、というのが後々になってちょっとだけわかってくるんですね。

それはそれとして、定時に帰りたい! 残業したくない! お休みの日はのんべんだらりとゆっくり過ごしたい! という切実な願いは別なのである。
残業ってほんと嫌だよね。わかるー。
いまだかつてないほど主人公に共感してしまったかもしれない。
命が掛かっているわけじゃないかもしれない。人生の行く末がかかっているわけじゃないのかもしれない。でも、早く家に帰りたい!! という願いだって、心の底から吹き上がるような鮮烈で強烈で切実で迫真に迫った願いなのである。心の叫びなのだ。切羽詰まって、悲鳴のように響き渡る魂の絶叫なのだ。
それがその日、街の中で誰よりも何者よりも強く強く心の中で願われた願いだとしても、さもあらん、としか思いませんな、はっはっはっ。

なんでそれが、攻撃系スキルになって与えられるのかはよくわかりませんが。
ただ、アリナのスキルの活用法を見る限りでは、神様の意図は的外れではなかったようなんですよね。パワーあげるから自力でなんとかしんしゃい、ってなもんにしか思えませんけどw
ただ、パワー与えられたからって、それを使って業務滞る原因となってるモンスターやダンジョン、取り敢えず自分でぶっ壊しにいって、すっきり滞りをなくして定時帰れるようにしましたー、という風にヤるのって、それはそれでこうなんというか、別方向に働いてませんかね、これ?
休みの日とか退勤してからいそいそと出かけていって、暴れ倒してくる、という行程、これはこれで勤勉なような気がするなあ。わりとサービス労働じゃないですか、これってw

しかしこのアリナさん、神域スキルが使える身ではありますけれど、生粋の受付嬢なんですよね。
ギルドの受付嬢が実は強い!みたいなパターンの話はそれなりにあったと思うのですけど、そういうキャラってだいたい前職が冒険者とか英雄職で実績をあげていて、それがひっそりと隠居したり転職したりして受付業務につくようになった、というパターンでつまり技術職とか現場職からの転向組で、受付相手の事はよくわかっている。戦闘なんかも経験者、なのですが。
アリナさん、別に冒険者でも何でもなかっただけに、実はこれ素人なんじゃないの? 素人でも押し切れる人外魔境のパワーゆえのゴリ押しプレイ、みたいな所があってなんともはや。いやアリナ当人も真面目に冒険者したりダンジョン攻略しようとしているわけではなく、業務の滞りを解消するため以外眼中にないので、これでいいのかもしれないけれど。
正体を知ったにも関わらず、それまで「処刑人」をパーティーに引き入れようと運動していたのに、アリナが本当に嫌がっていると知ったらピタリと勧誘をやめたジェイドくんはなかなかのイケメンだと思う。
それはそれとして、かわいい女の子だったので欠かさずちょっかい掛けにいくようになったのは、ストーカーとまでは言わないけれど結構しつこい系男子ですよね、こいつ。
それでなんだかんだと絆されてるアリナさん、チョロいとは言わないけれどわりとうん、そうだね、こういう余分なものは眼中に入れようとしない娘は、無理矢理にでも眼中に押し入っていないとそもそも意識もしてもらえないだけに、彼のやり方は相応に成功だったのかもしれない。

ただ、お話としては1巻できれいに纏まっているものの、発展性があんまりあるように見えない、個々の主だったキャラクターはみんな書ける所書いちゃったようにも見えるので、続けていくにしてもどう話を広げていくのかちょっと心配ではある。

 
1月27日

(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


電撃コミックスNEXT
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W

1月26日

(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


角川コミックス・エース
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W
1月25日

(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルス
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon KindleB☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月21日

(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(イブニングKC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


Amazon KindleB☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月20日

(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(チャンピオンREDコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングチャンピオン烈コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングチャンピオン烈コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(単行本コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングマガジン サード)
Amazon Kindle B☆W

1月19日

(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーGXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(裏少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W

1月18日

(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガブックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガブックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


1月17日

(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月15日

(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


1月14日

(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GAノベル)
Amazon Kindle B☆W


(GAノベル)
Amazon Kindle B☆W


(GAノベル)
Amazon Kindle B☆W

1月12日

(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグ コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スター コミックス) Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月10日

Amazon Kindle B☆W

1月8日

(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス)
Amazon Kindle B☆W

1月7日

(少年チャンピオン・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W

1月6日

(KCデラックス)
Amazon


(KCデラックス)
Amazon


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W

1月5日

(ヒーローズコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヒーローズコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W

1月4日

(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W

12月28日

(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグ コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

12月27日

(ヒーロー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(YKコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(YKコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(B's-LOG COMICS)
Amazon Kindle B☆W

Categories
最新コメント

Archives
記事検索
タグ絞り込み検索