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駅徒歩7分1DK。ユズハ

駅徒歩7分1DK。JD、JK付き。2 ★★★★   



【駅徒歩7分1DK。JD、JK付き。2】  書店ゾンビ/ユズハ オーバーラップ文庫

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芽生えた想いは抑えきれない――

独身リーマン・陽史、女子大生・詩織、女子高生・彩乃。
ひょんなことから始まった同居生活にも慣れ、3人はいつもと同じ日常を過ごしていた。
いつまでもこの生活が続きますように――
そんな思いとは裏腹に、とある出来事をきっかけに動き始めた3人の関係。
さらに、弁護士で陽史の元彼女でもある千里が現れたことで、いよいよ同居生活は崩壊の危機に見舞われることになり……?
「好きな人に好きになってほしい。それは……イケナイことなの? 」
「待ってくれた、話を聞いてくれた。そんな陽史さんが大好きだから」
サラリーマンとJD、JKが1DKから始めるホームラブコメディ、第2幕。
色んな同居モノのシリーズがあって、その中には甘酸っぱいもの、ドタバタと騒がしくていつも明るい雰囲気なもの、様々な形の家族の肖像があったけれど、本作の陽史と詩織、そして彩乃の三人の生活空間は他と比べても一番、リラックスして安らげる場所だったように感じている。
もうずっと何年もそうだったように、自然に三人は同じ部屋でくつろいでいる。誰かがテレビを見ていて、誰かが台所に立ってご飯を作っている。でかけていた誰かがただいまーと帰ってきて、それを他の二人が一瞥して、でもそれまで続けていたことの手を止めないまま、おかえりー、と声をかける。
彩乃がバイトをはじめたときも、日曜日の朝に彼女がいってきま〜す、とでかけていくのを、まだちょっと眠そうにしつつ、並んでソファーに座ったまま朝の特撮番組を見ていた陽史と詩織が、何気ないやり取りの末に二人していってらっしゃい、と送り出すシーン。
あそこはホントに何気ないシーンなんですけれど、特にこの三人の間の空気感、距離感、日常を感じさせてくれるシーンで好きだったんですよね。
彩乃のバイト終わりに、彼女の勤める喫茶店に陽史が顔を出して、雨に降られてずぶ濡れになってじ彩乃にじゃれつかれながら帰ってきたのを、呆れ混じりに詩織が迎え入れるまでを含めて。
このとき、彩乃は陽史がバイト先まで来てくれたら喜びますよ、って送り出してくれたの、詩織なんですよね。一方で彩乃もここぞというタイミングで詩織と陽史が二人きりになれるように取り計らってる。それは、恋敵に塩を送る、みたいな大げさなものでもなく……。
彩乃も詩織も、もしこの時陽史が来てくれたら、一緒に居てくれたら、/彩乃ちゃんは/しぃちゃんは/嬉しいだろうなあ、喜ぶだろうな。そう、考えて自然に陽史の背中を押してるんですよね、二人とも。
無心で、ただただ本来なら恋敵にあたるだろう相手を想ってる。多分、陽史のことと同じくらい大切な人だと感じながら。
二人の関係は、家族のようで姉妹のようで、でも事情に踏み込みすぎない遠慮があって、でもそんな遠回りの気遣い以上の親愛を以て触れ合っている。元々他人だからこそなれる家族みたいな関係って、あるんですねえ。それはきっと親友という関係でもあるのだろう。歳に差がある同性特有の、不思議な親友関係。
彩乃と詩織の想い合う関係は、もしかしたら陽史という要の存在がなかったとしても、女性二人の同居生活という形で一つ、物語ができたかもしれない密接で温かいつながりだ。そしてその温かさは、陽史を間に挟んでも断ち切られない。
陽史が学生時代に撮った映像サークルの映画作品。そこに、当時彼が付き合っていた元カノが映っていて、映像からは陽史が彼女に夢中な様子が伝わってきた時、二人は無言で両側から陽史の腕にしがみついて、無言のままギューギューと両側から陽史のことを押し込んでくるシーン。あくまで何も言わず、でもあからさまに抗議を示しながらギューギューと圧してくる様子は、ほんと可愛らしくて微笑ましいシーンだったんだけれど、コレは同時に彩乃と詩織の共同作業でもあるんですよね。二人からの抗議なのだ。それが、どうしようもなく微笑ましくて、彼女たちの関係に癒やしを感じてしまうのでした。

その元カノである海野千里と、陽史は別れて以来久々に再会するのだけれど……。
大人な関係だよなあ。
あくまで、終わった関係なんですよね、もう。そのへん、二人共割り切っていて、だからこそ友達として気安く付き合いなおせたわけだ。陽史が詩織と彩乃との生活を経てある種心の余裕みたいなものを得ていた事も大きいのでしょう。千里と別れざるを得なかった原因は、陽史の方にあるようだったのですが、彼が迎えた良い変化は彼らが別れる原因となる部分を解消していたんですねえ。
彼の危うさ、というのは彩乃の家庭の事情を巡る話の中で一瞬垣間見えているのですが……こうしてみると詩織が彼のそうした一面を押し留め、彩乃が吐き出させているんですよね。
二人が居てこそ、陽史のともすれば凝り固まってしまいそうな部分が解きほぐされ明るい光に灯されている、というのがよくわかったお話でもありました。
ほんとこの生活空間、優しくてほんわかと明るくてリラックスできてあんまりにも居心地良いものだからか、千里がなんとなく入り浸りだしてしまったのも、なんとなくわかるなー。
いまさら陽史にちょっかいかける気は毛頭ないんだろうけれど、思わずここでゴロゴロしたくなる。普段弁護士として休む暇なく働いて、結構疲れている様子も伺えるので、リラクゼーション空間というか癒やし空間、欲しくなるよねえ。美味しいご飯も食べさせてくれるし。

いつまでもこのままでは居られない。学生である彼女たちはいずれ、卒業してそれぞれの道に進まなくてはいけないし、そうでなくても他人同士の三人が一緒に暮らしている今の状況は無理を重ねている。変化の訪れは、必然だ。
でも今の幸せが変わってしまってなくなってしまう事を恐れる彩乃を、陽史は自分自身も迷走しながら、でも彩乃と詩織こそが教えてくれた変化もまた愛しい日常になっていくことを、改めてこの寂しがり屋の女子高生に伝えるのである。
どれだけ変化してしまっても、陽史も詩織も彩乃と一緒にいると、寂しがらせることだけはしないとと約束するのである。
いつか、どちらかの恋が実っても、それが残る一人を孤独にはしないと、信じることが出来そうです。


駅徒歩7分1DK。JD、JK付き。1 ★★★★☆   



【駅徒歩7分1DK。JD、JK付き。1】  書店ゾンビ/ユズハ オーバーラップ文庫

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面倒な家事も、些細なイベントも、女子大生と女子高生が一緒だとちょっと楽しい。

「泊めてくれたっていいじゃん。そっちのエッチな人も泊まるんでしょ? 」
「ええっ! あっ、その、私は……エッチな人では……」
谷川陽史26歳、黙々と激務をこなす独身リーマン。
ひょんなことから幼なじみの女子大生・詩織を自宅で預かることになったのだが、とある行き違いで女子高生・彩乃も転がり込んできて――。
「お風呂、先にしますか? それとも、お食事に……」
「あたしが寝付くまででいいからさ、添い寝してくんない? 」
そして始まった奇妙な同居生活。
それは、想像以上に楽しくて、刺激的で……?
サラリーマンとJD、JK。
そんな3人が1DKから始める、ホームラブコメディ。

息が詰まる、一緒に居ると気が休まらない。そんな窮屈な人間関係は家族間にだって存在する。でも、彩乃の家族はそんな窮屈という範疇にも留まらないものだったのだろう。
彼女の家の事情は詳しくは語られない。彼女がそれについては触れようとしない。ただ断片的に漏れ聞こえる様子を見れば、彼女が家族と同じ空間に存在することすら耐えられなかっただろう事が伺える。夜は街を徘徊して時間を潰し、学校で寝ることで辛うじて体を休める。そんな破綻した生活はあっさりと限界を迎えていた。肉体的にも精神的にも摩耗していた彼女は定期を落とした若いサラリーマンに声をかけたことで。正確には、定期に記されていた名前を呼んだことで、彼女の運命は変転する。
丁度、田舎から出てくる十何年ぶりかに会う幼馴染。と言っても一回りも年齢が違う年の差があり、幼い頃に毎日遊びに来ていたものの長らく顔も見ていなかった女性だ。母親からの依頼で、大学進学のために上京してきたものの、住む所が見つからずにしばらく一緒に住まわせてあげて欲しい、という話を了承し、その彼女・詩織と会うのがその日だったのだ。
たまさか自分の名前を呼んで声をかけてきた彩乃を、件の幼馴染と勘違いした結果、彼・陽史は家まで連れ帰ってしまう。預かった合鍵を使って部屋で待っていた詩織とばったり鉢合わせるまでがプロローグである。
かくの如く、この三人には深いつながりなどなにもない。詩織と陽史は幼馴染ではあるけれど、随分と年の差もあり、詩織が大きくなるにつれて疎遠になってしまいこれが久々の再会だった。彩乃に至っては二人と面識すらなかった。

でも、この三人が家族になるのに、時間なんて殆ど必要なかったのだ。
共同生活をはじめたこの三人の間に流れる時間は、読んでいるこっちまでリラックスしてしまいそうになるほど穏やかで、心地いい。自然体で気負わずあるがままに。
家主である陽史が、いい意味で大雑把であるのがいいのだろう。飛び入りで居候させてもらうことになった彩乃も、必要以上に気を使わずかしこまらず、ようやく呼吸できる場所を得たように陽史と詩織の横でゴロゴロとくつろいでいる。
気配りは、詩織の担当だ。おっとりとした物静かそうな彼女は、細かい所に気が付き世話好きで彩乃の不調に気が付き、彼女を泊めてあげられないかと陽史に頼んだのも彼女だった。
世代も性別も趣味も性格も違う三人は、だけれどまるで凹凸を埋め合うように収まるところに収まって、日々を過ごしていく。朝起きて、ご飯を食べて、それぞれ仕事や学校に向かい、帰りに買い物なんかして、休みの日には一緒に遊んだりして。それぞれに好きな事を教え合ったり、教えてもらったり。二人がゴロゴロしている横で、残る一人が干した布団を叩いていたり、なんて光景が十年前からずっと繰り返してきたかのように、流れていく。
一つ一つのエピソードは派手でもなんでもない。本当にただの日常の一コマだ。どこでも見かけるような風景だ。騒がしかったり、逆に誰も喋らず静かだったり。そのどちらでも、そこに窮屈な空気はない。穏やかに流れる時間は、息が詰まることがない。
当たり前に息が吸える。ただいま、いってきますを自然に口にできる。じんわりと、今幸せだなあ、なんか楽しいなあ、と染み入る空気がたゆたっている。

こうしたじわりと染み込んでくるような生活感を描き出すのは、派手ではないからこそ難しいでしょう。空気感、流れる時間の速さというものをこんなに穏やかに、心地よく描き出すのは、ただドタバタとラブコメさせているだけでは決して引き出せない、絶妙さなんですよね。

この手の同居モノも増えてきましたけれど、本作の空気感はそれらの中でも自分の好みとしては頭一つ二つ図抜けている、と思わせてくれる自然なリラクゼーションの粋でした。
そして、そんな穏やかな時間の積み重ねだからこそ、ふわりふわりと「好き」が降り積もっていくのも伝わってくるのである。今が幸せだからこそ、それを壊したくない、ずっとこのままで居たいと思いながら、幸せだからこそ好きが降り積もっていく。それはもう、溶けない雪だ。
姉のような詩織と、妹のような彩乃。他人だった女二人が、家族同然、姉妹同然になっていき、お互いがかけがえのないモノになっていく、これ以上なく大切な存在になっていってしまうことが、より三人の関係を複雑に、離れがたいものにしていってしまう。
幸せに満ちてしまったからこその想いの決壊、行き着く先の切なさが、ラブストーリーとしての速度を早めていく。果たして、三人の今が続くことを願いながらその先をも望んでしまった矛盾の結果がどうなるのか。不安と期待に、心拍数があがってしまいます。

ほんと、素晴らしい一作でした。ちょっともう大好きかもしらん!


 
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