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駒田絹

アンゲルゼ 永遠の君に誓う5   

アンゲルゼ―永遠の君に誓う (コバルト文庫)

【アンゲルゼ 永遠の君に誓う】 須賀しのぶ/駒田絹 コバルト文庫

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この四巻で完結と情報を戴いたときはびっくり仰天したものでした。まだまだ中盤、これから本番って感じだっただけに。実際、本来は五巻完結だったところを大人の事情で四巻に纏めたそうで、ところどころどうしても早足だったり、伏線が触れられなかったり、飛ばされちゃったりしたらしき場面が見受けられたわけですが。
それを考慮に入れてなお。

凄まじかった。

圧巻でした。ったく、須賀さんの描く物語はどれもこれも、クライマックスは圧巻としか言いようがないのが正直困る。嬉しい悲鳴が迸るゼ。

淡々と繰り返す日常に埋没し、ウジウジと周囲の環境、母親や友人たちに侮蔑と絶望を抱きながら、何よりも自分に絶望し未来に何の展望を抱けないまま、腐ったように日々を過ごしていた、つまるところ普通の思春期の内向的な少女でしかなかった陽菜が、天使病の感染をきっかけに人生を一変させることになったこの物語。
自分とは関わりのない世界の話でしかなかったアンゲルゼとの戦争の渦中に叩き込まれ、さらに自分に秘められた出生の秘密、封印された過去などが明らかになるにつれ、残酷な現実を何度も何度も目の前につきだされ、叩きつけられ、だからこそ強くならざるをえなかった彼女。
そう、強くなったよ、陽菜は。最初の、あの引っ込み思案な大人しい少女がよくもまあ、ここまで、と思うほどに。須賀さんの作品の主人公としたらこういうタイプはちょっと見たことなかっただけに、どうなるかと思いましたけど、逆に最初が弱かっただけにその分ガシガシ叩いて鍛え上げられたのかもしれないですね。泣いて怯えて怒って挫けて、でも最後にはいつも歯をくいしばって立ち上がった少女。
やっぱり、須賀さんの女主人公はみんなカッコイイや。

最初に彼女が憎み、絶望していた周囲の人間たちの醜い姿が、平和な日常が覆されていくたびに、その真意、真相が明らかになり、陽菜が思っていたのとは全く別の姿となって現われてくる。みんな、本当に陽菜の事を心から想い、心配し、助けようとしていてくれたんですよね。それに気づいていくことは、セピア色だった陽菜の世界が鮮やかに色づき、彼女が日々を過ごしていた世界がつまらなくくだらないものでは決してなく、とても素晴らしいものだったと理解していく行程であったのと同時に、皮肉なことにそれらを失っていくものだったわけで。
何も知らなかった自分を後悔し、与えられ続けていた優しさ、慈愛に報い応えるために陽菜は強くなっていけたのでしょうけど、そうやって気づいた優しい世界を守ろうとすればするほど、せっかく気づいたそれらを遠ざけ、突き放し、無くしていかなければならないこの矛盾。

陽菜と合わなくなった後の、遥母さんのあの空っぽの状態は、辛かったなあ。読んでても辛かった。
だから、この人が色々と報われる展開を迎えたことは、ある意味この物語の中で最も嬉しかった事だったのかもしれない。
過去に負った傷を癒され、陽菜がああなってしまった後も、ああして彼女を待つのにお互い支える相手を見つけることが出来たんだから。
うん、陽菜と覚野の不器用な想いのぶつけ合いも、切ない純愛でとても好ましいものだったけど、この物語の中で一番胸に残ったのは、この血のつながらない母娘の繋がりだったように思う。遥母さん、頑張ったもんな。ほんとに、この人の哲也父さんとの別れや、そのあとの陽菜との生活は辛いことばっかりだっただろうに、陽菜に疎まれ憎まれても最後まで彼女を育て上げ、最後にはやっと陽菜と気持ちが通じて、本当の母娘らしくなったと思えば、その陽菜は戦争の最前線に駆り出されて、娘の安全を祈りながら彼女を待つ日々。彼女こそが、報われて欲しいひとだったからなあ。

一人蚊帳の外に置かれ、離れていく陽菜を追いかけようとするもーちゃんの覚悟。若者の浅慮と言われようと、彼の覚悟はすげえなあ、と思うしかない。湊にとっては、彼のそんな強い意志は彼が示している以上に鮮烈に感じるものだったのかもしれないなあ、と彼が有紗のことで敷島少佐に容赦のない指摘を受けた時の事を思うと色々と想像してしまう。
確かに、湊は最後まで有紗には腰引けたまんまだったもんなあ。彼の優しさは周囲の人間を明るくし、幾度も挫けそうになった陽菜を支え続けた間違いなく彼の長所そのものだったんだろうけど、同時に有紗との関係では短所となって出てしまったのでしょう。
でも、有紗も嫌いじゃなかったんじゃないかな。彼の、そんなところ。最後まで敷島以外と打ち解けなかった彼女だけど、陽菜が現れてから敷島以外の仲間に対して意識を向けるようになった彼女は、ちゃんと湊の優しい性格を認めていたように思う。だからこそ、あんな餞別をくれてやったんじゃないかと。
でも、湊からしたら、後悔ばっかりだよな、あの結末は。なにも、本当に何もできなかったんだから。
有紗は、悔いも思い残すこともなく、生き切ったんだろうけどさ。

そして、もう一人の主人公とも言うべき、敷島。
最後まで何を考えているかわからない、その真意がどこにあるか見つからない、一癖も二癖もある面倒で厄介でわけのわからない人だったけど、最後の手紙を見たら、なんかもうこの人の心の内側の正体に首をかしげていたのが馬鹿らしくなってきてしまった。
この人はとてもシンプルで、わかりやすくて、だからこそきっと当人にも自分の事が分かっていなかった複雑怪奇な人だったんだな、と。
片腕だった東さんなんか、その辺よくわかってたんじゃないかな。
そんな彼が、娘から与えてもらった平穏な日々。
陽菜が世界を愛おしいものと知っていったのと同じように、彼も陽菜をはじめとしたアンハッチの子供たちと過ごす中で、きっとかつてどこかにしまいこんでしまった世界や人を愛する安らぎを、取り戻していたんだろうなあ。
うむむ、思い返してみると、須賀さんって死亡フラグがビンビンに立ちまくってるオッサン、意外と殺さんなあ(笑

そして、圧巻のクライマックス。
陽菜の決断と残された人々の想い、少年の誓い。
最後に陽菜が残した言葉には、ちょっと泣きそうになったです。出来れば、敷島と陽菜の関係への複雑な思いは、もうちょっとじっくり醸成してれば、もっと良かったんだろうけどなあ。二人の関係の真相とか、わりとあっさり過ぎちゃったのは、マキ入ってたからなんだろうなあ。
他にもやっぱり、色々と畳まれた話があるっぽいし、五巻で読みたかったところだけど。やはり、現代軍隊モノはキツかったんだろうか。もったいないもったいない。
それでも、物語としてこの上なく見事にまとめてくれたのも確か。
傑作でした。傑作でした。ああ、素晴らしかった。

アンゲルゼ ひびわれた世界と少年の恋4   

アンゲルゼひびわれた世界と少年の恋 (コバルト文庫 す 5-67)

【アンゲルゼ ひびわれた世界と少年の恋】 須賀しのぶ/駒田絹 コバルト文庫


あとがき読んで、爆笑。
先生、今までの自分の作品の主人公のキャラを<アレ>呼ばわりはどうかと思いますよ?(笑
そりゃあ、今までの須賀先生の作品の主人公と比べちゃ、陽菜は内気でヘタレでネガティブだけどさ。……うん、まあアレと言いたくなるのもその通りなんだけど。カリエにしても、キャッスルにしても……アレとしか言いようのない女性たちだったしなあ(苦笑
それでも、最初のころに比べたら、陽菜もたいぶふてぶてしくなってきましたよ。あれだけ追い込まれりゃ、些細なことで引っ込み思案になってる場合じゃないですもんね。
まあ、単にその内向的な思考の向う方向が、日常生活から現在の環境に対するものに変わっただけ、という気もしないでもないので、単純に陽菜が精神的にタフネスになってきた、と言いきれないのも確かな話。
でもまあ、考えてみると不思議な話なんですよね。最初の頃、自分の内向的な性格と上手くいかない家庭、学校での生活に鬱屈を抱えていた時、彼女の目から見て、周りの人間はどいつもこいつもろくでもないような輩ばかりに映っていたのに、段々と陽菜の置かれた立場が悲惨で救いようのないものになればなるほど、逆にそれまで彼女が軽蔑し、おそれ、不信の目で見ていた人々が、みんなそれぞれに自分にとっての精一杯の事を成しつつ、陽菜のために努力し、尽力してきたことが分かってくる。
ふと、改めて彼女の周りにいる人たちを見直すと、みんな人間的に信頼でき、陽菜の事を真剣に思ってくれている人たちばかりなんですよね。ところが、陽菜が立たされた境遇は平穏だったころと激変し、希望も何もない救いようのない残酷なモノでしかない。
皮肉がきいているというべきか、底意地が悪いというべきか。
ただ、彼女が抱く絶望は変わらなくても、周りの人々に支えられることで少なくとも、陽菜には自分の運命に立ち向かおうという意思や気概が生まれつつあるのは確かなんですよね。
それは、果たして救いなのか。
そんな彼女の置かれた立場の、そして小心者で周りの目を気にするばかりだった少女の性格の、その急激な変化に置き去りにされたのが、今回のもーちゃんこと覚野だったのかもしれない。
陽菜の目からすれば、完璧に見える覚野もまた、彼女と同い年のまだ精神的に成熟しているとは言い難い思春期の少年にすぎないわけです。自分の行動力の起源とも言うべき想いの正体から目をそらし、肥大する我をもてあますただの少年に過ぎなかった。
でも、変わってしまった陽菜と相対することで、彼も必然的にそうした未熟さから脱皮しなければならなくなったわけで。そこで自分の衝動に背を向けず、殻に閉じこもろうとせず、彼なりのやり方とは言え立ち向かったことは、やはり偉いやっちゃと思うのである。
もーちゃん頑張った、と賛辞オウライ。
たとえここで、陽菜が置かれた状況に手が出せない無力さを思い知らされたとしても、今の彼ならしがみついて這い上がってくる意志を持ちえたのではないだろうか。
……これ、作中でもけっこう年月過ぎる長丁場の物語になるんかもなあ。でないと、もーちゃん関わり様がかなり難しくなるし。
敷島の最後の発言は、真相にしてもその発言から派生する展開についても興味津津なんだけど、はたしてどうなるやら。
……にしても、敷島少佐のキャラクターは未だに把握しづらいな。見る人によって印象かなり違ってるし。まあ陽菜の視点はかなり色眼鏡入ってる風だけど。でもまあ、陽菜への態度を見る限り思ってたより不器用な人なのかもしれないね。容易に真意を見せないところは器用なんだけど。……逆にこっちが考え過ぎてて、副官とのプライベートで見せる態度が、素なんじゃないかと思ってしまう時もあるんだけど(苦笑
まあ、三巻に至ってだんだん把握できてきたかなあ。と、見せかけて、というパターンもあるから、油断できんがw
 
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