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高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない

高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない 2 ★★★★   

高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない2 (一迅社文庫)

【高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない 2】 瀬尾つかさ/kakao 一迅社文庫

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書き換わった歴史の中、最善を尽くしつつ現代への帰還を目指すダナン魔導学院の生徒たち。古代文明の遺産を利用した積層都市アルフェで開催される西部都市の魔族軍対策会議にダナンからも人員を派遣するのだが、洞窟都市グリンデのハルメス・ザルダート議長はケーネの姿を見て驚愕する。「あなたこそ、今代の星の神子!」一方、エルドは歴史上の重要人物、魔族軍と苛烈に戦い最後のひとりまで殺し尽くした女将軍シルテシア・アルフェミティと出会う。しかし、エルドの前に現れたシルテシアは、まだ争いとは無縁の優しい母親でしかなかった。星の神子に祀り上げられたケーネの運命、後世に虐殺者として知られるシルテシアの真実、そして積層都市アルフェで蠢く陰謀の影とは―。

難しいところだよなあ。目の前で起ころうとしている悲劇を回避するために力を貸してしまうと、それがそのまま人間サイドの戦力を強化してしまいかねない。人魔大戦と呼ばれた大戦争に対するダナン学院のスタンスは、歴史の改変はもう仕方ないものとして、とにかく人も魔族も被害を少なくしたい、というものである以上、一方の必要以上の強化はより被害を拡大させかねないわけで。かと言って、手の届く範囲で多くの人が死のうとしているのを見過ごす、なんて割り切りが出来るほど学生たちは達観していないわけだし。
これは図らずも魔族側に入り込むことになってしまったガゼットも同じくで、とにかく出来ることをやって酷い有様の現状を改善していたら、著しく麾下の魔族軍が強化されちゃってるわけですし。でも、ガゼットってただのナンパなチャラ男かと思ってたら、どこのチート転生者かと思うくらい様々なジャンルに万能なんですけど、こいつ。全部、付き合ってた女の子から教えてもらったり、話を合わせるために習得したり、というあたりすげえとしか言いようがないんですが。
もしかして、戦闘特化型のエルドより主人公力高いんじゃなかろうかw 伊達に学園から離れてたった一人で魔族側に入り込むことになってしまっただけあるよなあ。助け得られないんですし。
それでも、使い魔を通じてある程度連絡は取れるだけマシなのか。エルドとガゼットの、立場も何もかも離れきってなお、あのお互いに信頼しきった親友関係はいいなあ、と思うんですよねえ。自分の命を預けるどころじゃない、自分の大切な人の命を預けられる、って大変なことだと思いますよ。
ダークエルフ姉妹の全幅の信頼を得ているとはいえ、秘密を抱えて一人奮闘しなくてはならないガゼットと違って、エルドたちはまだだいぶマシではあるんですよね。何よりも、この時代の人間でありながらダナン学園の秘密を知ってなお、味方になってくれたスピカ。時代に埋もれて後世には名前も残っていない彼女ですけれど、政治・智謀99はあって不思議じゃないんですよね。それが、ダナンのために全面的に力になってくれているわけで、この頼もしさたるや。何しろ、この時代の人間であり権力者サイドに立っていた娘ですから、各都市の上層部にも顔が通じてますし、何より国家間の事情や情報に明るい。ダナンの風紀委員長であるケーネも、末端とはいえ後世の統一帝国の皇族の一員であり、彼女も十分政治お化け、謀略妖怪の類いなんですけれど、政治力ってイコール人脈でもあるのでやっぱりスピカの存在は大きいんですよねえ。
まあ、そのケーネもまさかの「星の神子」認定によって、ただの政治交渉能力どころか、宗教系の影響力まで保持してしまったので、こちらはこちらで別方向から政治無双を発揮しだすのですが。
その星の神子認定も、どうやら帝国の血筋に関わりがあるようで、人魔大戦後の人類史においてケーネの帝国って相当裏で色々やってるみたいなんだよなあ。その原点が、丁度この人魔大戦まで遡ることを考えると、歴史上ではこの大戦当時では動きがなかったはずの冥神の使徒が暗躍している件も含めて、まだまだダナンがこの時代に来てしまった理由も絡んで、裏で大きな策謀が蠢いてるっぽいのよねえ。
ある意味、冥神の連中がダナンと同じステージに立っていることがわかった、ということそのものがこれから本番、という雰囲気を醸し出しているのですが……シリーズは一旦ここで一区切りのようで。
でも、また違う形で続き出します、と明言されているので、担当編集の移籍が要因だそうですけれど、これ一迅社文庫そのものの再編が絡んできそうだなあ。一迅社が講談社の子会社になった一件が、一迅社文庫に何の関わりもないまま、ということもあるわけないですし。

しかし、今回ひたすらスピカ推しだったですねえ。スピカのお兄さん登場によって、普段の賢さ爆発している余裕たっぷりの姿とは裏腹の年相応の感情を制御できずにプンスカしている可愛い面も見られましたし。
ケーネさん、ケーネさん、頑張らんとガチ婚約者にぜんぶ持ってかれますよ。当のスピカに全面支援してもらってるのになあ。とかそうこうしている間に、NEW婚約者になりそうな娘まで出てきてしまいましたし。続きが出るなら、ちゃんと巻き返していかないとw

1巻感想

高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない ★★★★  

高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない (一迅社文庫)

【高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない】 瀬尾つかさ/kakao 一迅社文庫

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いくつもの戦争を経験した人類と魔族は一人の英雄の尽力により種族対立を乗り越え、千年の時の中で平和な世界の実現と技術発展を遂げていた。魔導技術に秀でた魔導学院の学生エルド・アルウェンは、高熱を出した妹のナナリーを見舞うため、特別に学院女子寮を訪れていたそのとき、学院を巨大な地震が襲い、閃光とともに学生女子寮は見知らぬ大地へと転移していた。そこは千年前、世界が混沌としていた戦乱の中世時代だった……。女生徒たちとともに過去へ転移したエルドは風紀委員のケーネ、そしてしっかりものの生徒会長にして騎士科の優等生アレミアとともに元の世界へ帰る手立てを探すが、手違いから大戦を終わらせた英雄の命を奪ってしまい――――
科学文明の発展した未来・現代の人間が過去、或いは中世レベルのファンタジー世界に転移して、という話は山程あれど。ファンタジー世界のまま発展した高度魔法文明の学徒たちが、古代のファンタジー世界に転移して、その昇華された魔法理論で無双する、というのは何気にありそうでなかった設定だなあ。
知るかぎりでは【異世界魔法は遅れてる!】くらいか。これは現代地球の魔術師が異世界に召喚され、という話だったけれど。
ただ、本作における魔法文明の現代ってこっちの21世紀相当じゃなくて、それより遡って19世紀から20世紀初頭くらいっぽいんですよねえ。社会システムに対する意識や認識が近代に入っている過渡期、くらいなのが面白い。国家規模での戦争は遠のいている一方で、戦闘技能がエリートを集めた大学内で一定数の割合で必須技能として求められる程度には、それが必要とされるあれこれがあるわけで。
まあだからこそ、戦乱の世に飛ばされてなお統制が行き届いていたわけですけれど。
でも、高度に発達した、というわりには魔法理論が古代から飛躍していたように見えなかったのはちと残念だったけれど。威力と効率は見違えるように古代からあがっていたとしても、それって元々あった理論の強化発展に過ぎず、古代の人たちから見ても、それは凄いものではあっても訳の分からない未知のものではないと思うんですよね。古代の人間が戦車や飛行機を目の当たりにする驚き、火の明かりしか知らない人が電灯を目にした時の理解、工業技術・医療技術、物理法則や過去ではまだ存在しない概念の数々。高度に発達した未来文明との遭遇、というのは大きな断絶があるものなんだけれど、本作だとどれも過去からの延長線上に存在しているものに過ぎないわけで、タイムトラベルという要素の面白味としては些か物足りない感じがしてしまうんですよね。
一方で、重要となるのが人魔大戦という人と魔族との人種対立が高じた末の殲滅戦争的な大戦の最初期に飛ばされたこの学院では、既に人族と魔族の垣根が完全に取っ払われて、総じて同じ「人間」という括りになっているということ。そもそも、この魔導学院が大戦の終結に伴って、人族と魔族の融和を願って創設されたという理念によって成立している、というのが重要なんですよね。

過去の世界では突出した高度な魔法を使える、というアドバンテージは、大きな武器ではあっても道具に過ぎず、まず生存と元の時代に戻ることを目的としている彼らだけれど、彼らの持つアドバンテージというのはただ生存のために用いるためのものではない、という流れなんですよね、これ。
すでに初っ端で、未来を決定的に変えてしまう歴史的人物の殺害、という改変を行ってしまっている彼ら。本来なら鏖殺され歴史上から消え去っていた街を、図らずも救ってしまったこと。もはや、冒頭で既に過去を変えることなく未来に戻る、という選択肢は喪われてしまっているわけで……。
ある意味、縛りが最初から消えてしまっている、ということでもあるんですよね。既に、周りに関わらずに生き残り続ける、という道も不可能になっていて、必然的に歴史的な大戦に関わらずを得なくなってしまっている。
そこで、ただ戦う、という道だけではなく、魔導学院の創立理念である「融和」が鍵になってくるわけで。果たして、彼らは人類史における最大の悲劇を回避できるのか、という話になってくるのがまたダイナミックなストーリーに出来る拡張性を感じさせてくれるんですよね。
でも、その学院の方向を決めるための戦略眼や政治力、地に足の着いた思考力と未来の影響を受けた社会理念を持っている人物が、学院内には居ないんですよねえ。主人公のエルドはいわゆるサバイバリティは高くても自分で考えるのは苦手な脳筋だし、アレミアはリーダーシップは非常に高いもののあれこれ自分で算段立てていくタイプじゃないし、ケーネは実務能力高くて喫緊の問題の処理能力は高いし将来的な予測とその対処方法もしっかり立てられるけれど、大きな未来図を描いたり戦略的に物事を想像し、方向性を示せるタイプじゃないんですよね。
それが出来るのが、まさか現地から現れるとは。まさに、この学院のターニングポイントって、彼女を完全にこっちサイドに取り込めたことなんでしょうね。真実から何から全部詳らかに明らかにした上で、本来なら現地の利益代表者だった彼女を、完全に味方に引き込めた。どう考えても、今後この学院国家の陰の宰相になるのって、この子なんだよなあ。
とはいえ、元々は外部の人間だった彼女が全部決めるはずもないので、漠然とこうしたい、という決断だけは主人公たち、というか学生全員で決めるんだろうけれど。

しかし、メインヒロインが堅物の風紀委員、というのは珍しいので面白いなあ。ケーネ、面倒くさいんだけれど瀬尾作品はヒロインの攻勢がほんとに容赦ないんで、グダグダやってるとあっさり脱落しかねないし、グズグズしてると尋常じゃない煽りを食らうので、心底をごまかしてられないのでわりと早々にケーネも丸裸で縛り上げられて、エルドの前に放り出されそうw

瀬尾つかさ作品感想
 
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