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高殿円

シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱 ★★★★   



【シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱】  高殿円/雪広うたこ ハヤカワ文庫JA

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

2012年、オリンピック開催に沸くロンドン。アフガン帰りの軍医ジョー・ワトソンは、早々に除隊したものの、物価の高さと仕事のなさに鬱々としていた。このままでは路頭に迷ってしまう。そんな折、友人ミカーラからフラットシェアをすすめられた。シェアの相手はシャーリー・ホームズ。ちょっと変わった女性だという。だが、実際に会ったシャーリーは、ちょっとどころではなく変わっていた。乗馬服に身を包んだ清楚な美貌、人工心臓を抱えた薬漬けの身体、初対面で経歴を言い当てる鋭い観察眼、死体置き場で寝起きする図太い神経。なにより驚いたのは、彼女が頭脳と電脳を駆使して英国の危機に立ち向かう、世界唯一の顧問探偵であることだった。 ベイカー街221bで同居を始めてまもなく、ヤードの女刑事グロリア・レストレードが訪ねてきた。死体がピンク色に染まる中毒死が続発しているらしい。いまだ無職のジョーはシャーリーに連れられて調査に赴く。それは二人がコンビを組む、初めての事件だった。 表題作に短篇「シャーリー・ホームズとディオゲネスクラブ」を加えた、目覚ましい独創性と原作への愛に溢れた、女性化現代版ホームズ・パスティーシュ登場!
登場人物全員女性! 高殿さんの作品はもっとガンガン読みたいんだけれど、なかなかタイミングがなかったんだけれど、いざ読み出すとめちゃくちゃ面白くてサクサク読めてしまうので、まずページさえ開けばいいんだよなあ。

冒頭からアフガン紛争帰りの軍医ジョー・ワトソンの登場で引き込まれてしまう。本来のワトソン君もアフガン戦争帰りの軍医だったのに、舞台が現代になっても変わらずアフガンに首突っ込んでるイギリスになんだかなあ、という気持ちになる。まあ、現代のアフガン紛争は9.11を端緒にはじまった対テロ戦争の一貫でアメリカ主導だったんだけれど。でも、巡り巡ってそもそもこの地域の紛争がはじまった原因はイギリスだからな!
というわけで、時代背景はがっつり現代。2012年のロンドンオリンピックが開催されている真っ盛りの頃。それでももう10年前になるのだが。
高殿先生、めっちゃロンドンに取材にいっている上に短期だけれど実際に旅行じゃなくて住んだりもしてたんじゃなかったっけか。それだけに、ロンドンの情景描写にはリアルな色彩と息遣い、そして生活感を感じさせるものがあって、眼に心地よい。
とはいえ、ワトソンちゃん、戦地から帰って早々就活に失敗して引きこもるわ、金なくて住む所もなくて、モルグ……病院の死体置き場に勝手に潜り込んで、死体袋を寝袋代わりにして宿代わりにする、というすげえことを平然とやらかしてくれるのだが、そこで図らずも同じく死体袋に入って仮眠を取っていたシャーリー・ホームズと運命の出会いをかますのでありました。
出会いの絵面が酷いなんてもんじゃないんですがw
ホームズシリーズのワトソン君と言えば、凡人の聞き役として頭脳明晰なるホームズ氏の推理に実にわかりやすい反駁と疑問を呈してくれる狂言回しの王様みたいな存在で、この作品におけるワトソン女史も普段のホームズの奇行に苦言をていして常識を諭したり、事件の推理パートに際してはわかりやすい答えにとびついて、と実にワトソンしているワトソンなのである。見事なワトソンっぷり、と言っていいでしょう。
しかし、彼女が平凡か、凡人か、というと……実際の所シャーリー・ホームズに勝るとも劣らない奇人なんじゃ、と疑ってしまうんですよね。ダメンズ趣味なのを除いても。
いや、その前に物語の主役であるシャーリー・ホームズを語らねばなるまい。
自分には心がない、と語る彼女は、胸に人工の心臓が埋め込まれた半機械化人間である……いや、マジで。ただ心臓疾患で人工心臓を胸に埋め込んでいる、というだけならアンドロイド呼ばわりはしないのだけれど、彼女の場合その心臓がどうにも特別性である上に、ネットワークと繋がりミセス・ハドソンというAIと連携していたりするんですね。
ハドソン夫人が人間じゃないんですけど! というのもアレなんですが、シャーリーの電脳との繋がりっぷりが、2012年が舞台なのに一人だけ攻殻機動隊!
ハドソン夫人も「Hey Siri!」とかでは済まない異様に高度なAIですし。ちゃんと元のハドソン夫人という人間は居たらしく、亡くなった彼女の人格モデルを用いているAIらしいのですが、いずれにしてもシャーリーってばホログラムとか普通に使ってるし、技術レベルがひとりだけ100年単位でおかしくないですか? という様相なんですよね。
ワトソン、なんで気にしてないんだ? なんかもうそういうものなんだ、とさらっと受け流しているのですが、彼女の受容力ってちょっと異様なんですよね。
シャーリーのどこかロボットじみた非人間的な挙動、停滞した感情、絶世の美貌が余計に人形めいた雰囲気を増しましているところなど、最初の頃こそシャーリーの異様さがワトソンの目を通じて浮き彫りになるのですけれど。
ワトソンとのシェアハウス生活の中で、一見してわかりにくい中でシャーリーは実は結構表情が動いていたり、感情的な部分が見え隠れしてくるんですね。家族……姉の突拍子のなさに振り回され、自分に与えられた役割に頑ななほどに拘る意地の張り方、そして自分の存在意義、生きる価値についての苦悩など、シャーリーの人間性、人間臭い部分は後半に行くほど顕著に見えてくるのである。
んで、面白いことに逆に平凡な人間に見えたワトソンの異様さがチラチラと見えてくるんですね。その人生の岐路に、いつも男の影がある、男運の悪い要領も悪いお人好しのハーレクイン好きの医者崩れ、というわりとダメっぽい女性という姿の奥底に、シャーリーと普通に友人として付き合えている、シャーリーを取り巻く異常な環境を特に気にせず受け入れて何の隔たりもなく一緒に暮らしている、という所からなにやらワトソンという女性の得体のしれなさが垣間見えてくるんですね。
それは、彼女のアフガン紛争での戦地での経歴が明らかになった時に、はっきりと突きつけられるのである。
いや、ジョー・ワトソンのアフガン時代のプロフィールがちらっと開示された時の、あのゾッとするような感覚は忘れられない。アフガンでなにやってたんだ、このワトソン女史!? そして、なんで平然とした顔でロンドンに戻ってきてるんだ?
巻末の中編で、シャーリーの姉がワトソンの人となりを危惧して個人的に喚び出して面談したその気持も、その危惧も、ワトソンという女性の中にある異様さを見せられると、わからなくもないんですよね。
そんな姉に呼び出されたワトソンを、めっちゃ心配するシャーリーが可愛いのですが。あの姉のちょっとやべえくらいの変態っぷり、人間として明らかに踏み外している人格を身内としてこれ以上無く思い知っていたら、そりゃ心配だわなあ。ジョー・ワトソンが喰われちゃうッ!(性的に)と焦りまくるシャーリーは十分以上に人間らしくて、可愛かったです。
個人的に、シャーリーって妹属性強いし、ワトソンからも普段からよくお世話されているのを見ると、妹属性強い感じがして、イメージとしてはチンマイ容姿を連想してしまうのですが、実際はワトソンよりも背が高い女性としては長身のスラリとしたスタイルなんですよね(ブラはしなさい)。
イメージはメチャクチャ綺麗だけれどちびっ子、なんだけどなあ。

っと、事件の方はシャーロック・ホームズ最初の事件である「緋色の研究」のシナリオとはだいぶ異なっていると思われる。主要人物が全員女性になっている、という事もあってかもちろん、刑事であるレストレード警部や被害者、犯人も全員女性となっている。てか、レストレード警部、ママさんデカなんですが。シングルマザーで、子供もいる中国系の切れ者刑事で、仕事が忙しい時はなんでか子供をシャーリーとジョーのアパートメントに預けていく、という最初からの親密さ。
まあそれはそれとして、事件の方は殺害方法がわからない、被害者たちの共通点がわからない、という謎の連続殺人事件。そもそも殺人なのか、それも連続殺人なのかすらわからない状況で、にも関わらず連続殺人事件じゃないかと想定して動いていたスコットランドヤードは素直に優秀なんじゃないか、と思う。被害者の全員が女性ということもあるのだけれど、様々な意味で女性的な事件であり真相であったと言える。これ、解決側が男だったらなかなか平静な顔して推理とかしにくかったんじゃないだろうか。
と、本作の注目点はこの連続殺人事件が単発の事件ではなく、最初から某教授が絡んでいた、という所なんですよね。宿命の敵は、既にシャーリー・ホームズと運命の糸によって結ばれているのである。そして、その運命に対して、シャーリーは決して超然としていられない。彼女は真実に怯え、IFに苦悩し、正義を果たすことが正しいのか迷い果てている。
そんな彼女を、ジョー・ワトソンは傍らで見守ることになる。果たしてジョーは、シャーリーの友人で居られるのか。その異様な受容性は、彼女たちを救うのか突き落とすのか。
いずれにしてもこの物語において、ライヘンバッハは既に約束された未来なのだ。

そこに至るまでに起こるだろう様々な物語が、シャーリーとジョーの冒険は想像するだに楽しみなんですけれど、まだ続刊一冊しか出てないんですよね。コロナが収まらないとロンドンを訪れることも難しいでしょうし、首を長くして待ちたいところです。その前にバスカヴィルを読まねばですが。


高殿円・作品感想

主君 井伊の赤鬼・直政伝 ★★★★   

主君 井伊の赤鬼・直政伝

【主君 井伊の赤鬼・直政伝】 高殿円 文藝春秋

Amazon
Kindle B☆W

2017年NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』で話題沸騰!
井伊直虎を描いた『剣と紅』に続き、井伊家第17代当主・井伊直政と家臣木俣守勝の歴史ドラマ。

人はなんのために人に仕えるのか。
家康に寵愛され、
「赤鬼」と呼ばれた井伊直政の生き様とは――
というわけで、大河ドラマ『おんな城主 直虎』が終わったタイミングで、井伊直政が主人公……ではなく、その直政の家老職を務めた木俣守勝を主人公とし、彼の目から見た井伊直政という戦国武将の生き様を描いたのが本作である。
ちなみに、木俣さん、大河ドラマの方でもちらっと出ていて、最終回に家康から派遣された新たな家臣団の一人として紹介されていた人で、小牧・長久手の戦いの戦いで「兜寄越せぇぇ!」と直政に自分の兜取られて、大将のくせに一番槍で突っ込んでいってしまった直政に、慌てて井伊勢に突撃を命じていたあのひとである。
ちなみに、この本の本編でも概ねそんな感じであるのが笑えるというか、大河ドラマでの直政とまんまキャラ被るので、大河ドラマその後、として見るのにも十分耐えられるんですよね。
いや、こっちの直政の方がもっと酷いかもしれないけれど。戦場の分別とか、大河の万千代の方がついてそう……ってこともないか、あの小牧・長久手の戦いの様子を見てると。
これは物語の重要なポイントにもなるのですけれど、この木俣さん、正式に井伊直政の家臣、というわけではありません。元々徳川四天王の榊原康政や本多忠勝らと近い世代で小姓として一緒に働いていた人であり、一族内の内紛に絡んで一度徳川家を出て明智家に仕え、本能寺の変を前に徳川家に出戻ったという経歴の人であり、衰退した国衆の一族である直政には仕える累代の家臣が少なく、身代が大きくなった際に二進も三進も行かなくなるがために、家康が井伊谷周辺の国衆や自分の直臣を出向という形で派遣した中にいたのが、かの木俣さんなんですね。なので、直政とともに行動しながらもあくまで家康の直臣であるという体裁を取り続けるのであります。
これら出向家臣たちと井伊直政との関係は、長年彼のもとで戦い続け、また内治も任された結果自然と井伊家の名実ともに家臣という形になっていくのですが、その中でも木俣さんだけは直政の親族である嫁さんを貰ったりもしながらも、あくまで自分は井伊家から禄を貰っているのではない、徳川本家の家臣である、という立場を揺るがさずに時代を経ていくのである。
それは、彼のプライドの問題であると同時に、井伊直政という武辺の苛烈過ぎる凄まじい生き様を掣肘するのに、主家の直臣という立場が大きくものを言った、という理由もあったのですが、それでも井伊家の軍の指揮権を任されたり家老職を忠実に務めることで井伊家の発展に尽力していく中で、木俣さんは自分が一体誰に仕えているのか、誰に忠義を尽くしているのか、そもそも忠義とは、仕える主君とは、という疑問が、疑念が織々積み重なっていくその果てに、答えを見出すまでの人生が物語として語られている、というのが本作の主題とも言えるのだ。だからこそ、タイトルが「主君」なのであろう。
それはそれとして、やっぱり井伊直政のキャラクターがとんでもないんですよね。普段は理知的で外交面でも取次なんかを務めて活躍する能吏としての姿を見せながら、戦場では常に軍勢の指揮をほっぽりだして突撃していってしまうバーサーカー。お陰で、軍配を預かるというか押し付けられた木俣さんは毎回毎回赫怒しながら「殿はどこじゃーー、どこいった万千代ぉぉ!!」といった感じで叫び狂いながら駆けずり回って軍勢をまとめる日々である、可哀想。
直政のバーサーカーっぷりは戦場のみならず、ふとした瞬間にその凶暴性を剥き出しにするわけで、臣下に異常に厳しく、ちょっとした失敗で部下を斬って捨てたこと数知れず。付いた字名が「人斬り兵部」。おかげで、井伊兵部のもとでだけは働きたくない、と就職先として避けられ、家臣の中からも逃げ出すもの多数。大河ドラマのあの近藤さんの子供たちも、あまりの厳しさに耐えられなくなって直政のもとから飛び出していってしまってますしね。
そして、自他共認める「秀吉絶対殺すマン!」で、事あるごとにあいつ殺す、秀吉殺す、とりあえず殺そう、殺っちゃえべいびー! と天下人を殺そうとするので、木俣さんの胃がえらいことに。
それでなくても、徳川を出奔して太閤秀吉の家臣となっていた石川数正をぶっ殺そうとして、必死で木俣さんが止める羽目に。
「清左衛門……」
「挑発に乗ってはなりませぬ!」
「斬りたい」
「堪えてくだされ。駿府に戻れば石川めによく似た案山子を用意いたしまする!」
こんなやり取りまで繰り広げられてまあw
そんなハチャメチャすぎる直政についていけないと思いながらも云十年。家康には万千代を頼むと懇願され、直政からも何だかんだと小狡い手管まで使われて引き止められて、井伊家の身代がどんどん大きくなる様に付き合っているうちに、ついにあの関が原を迎えてしまうんですね。
鮮烈なまでに生き急ぎ続けた直政。その行動原理をついに理解できぬまま、振り回され引きずり回され、いつの間にか直政のお守役として徳川家内のみならず諸国にも知れ渡ってしまう中で、嫌悪と、そして憧憬にもにた目で仮の主君を見守り続けた木俣清右衛門守勝の人生が晩年を迎えるのである。

いったい、自分は誰に仕え続けてきた人生なのか。誰に忠義を尽くしてきたのか。関が原の戦傷を悪化させ、急速にその生命の灯火が消え失せようとしている直政に、彼は最後までその答えを見いだせぬままそのときに辿り着いてしまうのである。
そして、その後に知った井伊直政という男の死生観、生き様の真実。彼の在り方と、徳川家康という男の特別な関係。
最後のそれは、ちょっとわかりにくい部分もあるのだけれど、捉えるべきは捉えたのではないかと。
なんにせよ、井伊直政という一代の武将とその風雲児に振り回され続けた一人の苦労人の一代記として、非常に読み応えある面白い作品でした。今年の大河を見た人にはなおさらおすすめ。

高殿円作品感想

トッカン 特別国税徴収官4   

トッカン―特別国税徴収官― (ハヤカワ文庫JA)

【トッカン 特別国税徴収官】 高殿円 ハヤカワ文庫JA

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面白くってためになるお仕事小説決定版、待望の文庫化!カフェの二重帳簿疑惑や銀座クラブの罠に特別国税徴収官付きの新米徴収官が体当たり!
税金滞納者から問答無用で取り立てを行なう、みんなの嫌われ者――徴収官。そのなかでも、特に悪質な事案を担当するのが特別国税徴収官(略してトッカン)だ。東京国税局京橋地区税務署に所属する、言いたいことを言えず、すぐに「ぐ」と詰まってしまう鈴宮深樹(通称ぐー子)は、冷血無比なトッカン・鏡雅愛の補佐として、今日も滞納者の取り立てに奔走中。 納税を拒む資産家マダムの外車やシャネルのセーター、果ては高級ペットまでS(差し押さえ)したり、貧しい工場に取り立てに行ってすげなく追い返されたり、カフェの二重帳簿を暴くために潜入捜査をしたり、銀座の高級クラブのママと闘ったり。 税金を払いたくても払えない者、払えるのに払わない者……鬼上司・鏡の下、ぐー子は、人間の生活と欲望に直結した、“税金”について学んでいく。
仕事人たちに明日への希望の火を灯す、今一番熱い税務署エンターテインメント第1弾!
ぐわぁ、主人公のぐー子、ずたぼろじゃないか。ここまでギッタンギッタンに切り捨てられる主人公は滅多と居ないですよ。
人間、一番心にダメージ食らうのって、自分の弱さや未熟さを突きつけられた時、じゃなくて自分が不満に思ってた事が全部自業自得だった、とか自分がどれだけ薄っぺらくて中身を伴わない人間だったかを突きつけられた時なのかもしれない。自分がどれだけ恥知らずだったかを思い知らされた時かもしれない。言い訳、きかないもんなあ。自分がむちゃくちゃ嫌な奴だった、と理解してしまった時に生まれる自己嫌悪、立ち直れないですよ。
人間、自分の短所や欠点、嫌な部分をわかっているつもりで、結構本当に分かってない事が多いんですよね。他人から見ると、どうしてコイツわかんないんだろう、と思うようなところでも案外気がついていなかったりする。
人間、言われなきゃわからないんですよ、これ。ところが、そういう根本的な人格に根ざす問題を面と向かって指摘するような事はまずありません。そりゃそうです、そんなの人間関係破綻しますよ、人格否定ですもん。そんなもの、よっぽどの時しか起こらないし、そういうケースではどちらも冷静さに欠けて何を言われようが胸襟を開いて受け入れるなんて出来るもんじゃない。そうじゃなくても、自覚のない欠点はどれだけ指摘されようと、なかなか受け入れられないものです。
そう、人間、言われなきゃわからないようなことは、言われたって分かんないんですよ。たとえ、わかってしまったとしても、なかなか受け入れられるもんじゃない。これまでの生き方、在り方を根本から否定して、変える事の出来る人は、やっぱり滅多と居ないと思うんですよね。
だから、ズタボロになりながら、でも言い訳せずに目を塞がずに、容赦なく自分を切り刻む全否定の言葉を、ああそうだったのか、とガッツンガッツン避けずに全部喰らったぐー子は、偉いんですよ。どれほど傍からすると嫌な子だったとしても、偉い子なんですよ。鏡さんの見立ては、これまた見事に本質を貫いてたんだなあ。
そんでもって、言いたいことを言えなくてグッと詰まってしまうくせのある彼女ですけれど、言わなきゃいけない言葉は決して手放してないんですよね。工場の夫婦に対しても、クラブのママに対しても、そして鏡さんに対しても、自分の誤った対応を無かったことにせず、一線の向こう側に行ってしまいそうだったのを、なりふり構わずしがみついて、言わなければならなかった事を詰まらず全部吐き出すことが出来ているのです、この娘は。恥ずかしかったでしょう、情けなかったでしょう、それでも必死にリカバリーしようとして、それを果たしている。そうして、自分の仕事にキチンと向き直ろうとしている。
それは、尊敬に値する姿でした。どれほどみっともなくて不細工であったとしても。

企業やでっかい脱税を追求するマルサなどの花型と違って、一般市民や自営業を相手にする事の多い税金を徴収する側の人間、というなかなか見ることの出来ない景色の中で務めている人たちの人間ドラマは、生活の間近に根ざした物語でもあり、ぐー子の血を吐くような心の叫びがガンガンと突き刺さり、税金というものを介して彼女と関わることになる人達の人生を目の当たりにする、迫真と切実を以って胸を突く話でありました。

プリンセスハーツ 大いなる愛をきみに贈ろうの巻4   

プリンセスハーツ 大いなる愛をきみに贈ろうの巻 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 大いなる愛をきみに贈ろうの巻】  高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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『ルシードはアジェンセン大公の血を引いていない』その秘密を知ってなお、支持すると言ったはずのリドリスの裏切りに、意気消沈するルシード。一方ジルは、ジョングー=ガーグと共にテジムに捕らえられてしまっていた…。王座奪取へ邁進するルシードに贈られる、リドリスの、メリルローズの、…そしてジルの贈り物。全ての謎が明かされる中、ふたりの運命は!?王宮ロマン、グランド・フィナーレ。
前巻の感想で、血縁関係が入り組みすぎてもうわけがわからない、助けてーー、と悲鳴をあげたら、ちゃんと最後の巻で家系図をつけてくれました。ありがとうございます。
って、改めてこうして整理された血縁関係見ると……見ても訳わからん!! ちょっとこれ、入り組みすぎだろう!! しかもこれは血縁だけなので、さらに個々の人間関係まで絡めると、本気で網目状の関係図になってくる。高殿さんは、よくまあこれ把握して書いてるよなあ。自分の作品とは言え、前後不覚に陥らないのだろうか。高殿さんは、このプリンセスハーツだけにとどまらず、銃姫世界の前史からバルビザンデの宝冠に至るパルメニア全史を掌握していらっしゃるのですから、プリハの1シリーズくらいどうって事ないのかもしれませんけどね。でも、この家系図見ると絶対吹くよ。もうこれ、どうしてこうなった、という凄まじい代物だもんなあ。その「どうしてこうなった」というすべての事情が、この最終巻で殆どすべて種明かしされているので、この幾多の偶然と思惑と必然が解けないほどに入り組んだ真相を御覧じろ。ほんと、頭痛くなるから。誰か個人の、或いはひとつの組織の思惑が強く作用しているならば、それを黒幕として固定し、その思惑に対して抵抗することで悲劇と立ち向かうことが可能なのだけれど、このお話のように無数の想いが複雑に絡み合ったが故に生まれてしまった時代の流れというものには、明確な悪意や目的のない分、逆に抗いがたいものなのだ。それも、功利や損得の計算に基づいた流れではなく、個々の思いが深く刻み込まれた感情主体の流れともなればなおさらに。
だからこそ、過去から押し寄せてくる因果の嵐に負けることなく、自分たち自身の想いを失わずに貫き通して幸せを掴んだ人たちの強さには、敬意を抱く。その幸せは奇跡なのだろう。でも、奇跡とは待っているだけでは飛び込んでくるものじゃないのですから……ハクラン王は待ってたら飛び込んできたような気もするけど!!
そんな中で一番無茶苦茶やってたのって、ナンセ公爵夫妻だよなあ。てっきりこの二人は、自分たちの想い人との関係をちゃんとして別れるのだと思ってたのに、まさか結婚したまま子供作るとは。特にケイカ。こっちはもっと揉めると思ってたのに、オース王子とそんな事になってしまうなんて。もうねー、夫妻両方が子供産むって何サ(笑
でも、ふたりとも幸せそうで良かったよ。

そんな風に現世での幸せをてに入れた人たちがいるのと同時に、幸せの形を別のところに求めた人たちも。リドリスは死ぬしかなかったにしても、一人で境遇を満喫しすぎだ。あれじゃあルシードが可哀想だよ。生きたとしても、ルシードやジルがどれほど庇ってくれたとしても、正当なアジェンセン唯一の後継者が生き残っていたら、どうしても権力闘争の焦点になって、兄のパルメニア統治のウィークポイントとなってしまう。最良は、やはりリドリスが思っていたように、幽閉されたまま消えるように死ぬことだったのだろう。リドリスが牢から出され、兄弟が和解して子供時代を取り戻すように仲良く過ごしてしまったからこそ、リドリスの裏切りと死はルシードをさらに傷つける事になってしまったのだから。でも、この交流がなければリドリスの愛情は伝わらなかったわけだから、ルシードはどれだけ辛くても悲しくても、リドリスと一時でも一緒に過ごせた事を尊ぶのだろう。本当なら、やっぱり生きて欲しかったんだろうけどなあ。辛いよなあ。
そして、もう一人の愛に殉じた人、メリルローズ。一時はすべての陰謀の黒幕か、ヤンデレか、と疑ったこの人でしたが、この人はこの人で純粋にルシードを一途に愛しただけだったんだなあ。ルシードの記憶にあった、一心に彼を愛してくれた少女の姿が、嘘でも偽りでもない本当の姿だったことに、悲恋とは言えホッとした。
その最期もまた、ルシードの腕の中で逝けたのなら幸せだったのだろう。ただその時を待ち望んで、現世にしがみついていたようなものなのですから。願いが叶ったのなら、幸せだったのだろう。

様々な因果の荒波を乗り越えて、ついに本当の夫婦になれたルシードとジル。感動のシーンだったはずなのに、一夜明けたあとのドタバタに……脱力。マシアスよりもあの場面はリュリュカだよ。そりゃ、これまでずっとルシードとジルのどうしようもない夫婦関係に一番胸を痛め、心労をためていたのはリュリュカさんですけど……あの雄叫びは年頃の女性としてはどうなんでしょう。オッサンか、あんた(爆笑
ジルに課せられた運命と、ルシードとの別れ。二人の愛の行方もまた悲恋に終わるのか、と息を飲んで見守ったエピローグの、想像以上の幸せな結末に、そしてこの大河ロマンスの完結に心震わせ感動に万感の吐息をこぼしながら、あとがきに目を通そうとページを開いた。そして目に飛び込んできたあとがきの最初の一文……

うおい!!!

あまりにも身も蓋もないシリーズ全体の要約に、もう息が出来なくなるほど爆笑。さっきまでの感動を返せーー!! なんか納得しちゃったじゃないか! ああ、そういう話だったんだ、って刻み込まれてしまったじゃないか。
それでも、感動の結末でした。感慨深いです。感無量です。終わったなー。終わっちゃったなあ。
大満足です、ご馳走様。

高殿円作品感想

神曲奏界ポリフォニカ ネバーエンディング・ホワイト3   

神曲奏界ポリフォニカ ネバーエンディング・ホワイト (GA文庫)

【神曲奏界ポリフォニカ ネバーエンディング・ホワイト】 高殿円/凪かすみ GA文庫

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 グローリアーナ軍によって、国や街が次々と占拠されるなか、レスロス内部に進入したジョッシュやデイジーたちは行方が知れなかったプリムローズに再会した。彼女はしかし、なぜかエリュトロンを従えており、スノウを異界へ飛ばしたのは自身の意志であったことを語ったのである。

 一方、異界へ迎えに来たブランカと再会できたスノウは、彼の口から今回の事件のあらましを聞いた。その事実に衝撃を受けるスノウだったが、もう一つ、彼女が異界へと戻された、その本当の理由をも知ることとなるのだった――。

 運命の渦に交差する想いの行き着く先は――!? 感動の最終巻!
ポリ白こと、神曲奏界ポリフォニカ・ホワイトシリーズもこれにてついに完結。
さすがは【銃姫】にて圧倒的な終末を描いた高殿さんだけあって、世界の根幹を支える精霊島の墜落に伴う世界の終りを前にした人々の混乱と祈りの切実さには迫真のものがあった。世界のあり方が一変する出来事だったんだもんなあ。被害が少なく済んだとはいえ、一国が消滅してしまったほどの出来事であったわけだし。
この大破局の一端を担うことになってしまったプリムローズ。炎帝の生まれ変わりという出自もあり、中盤の危うい描写から終盤にかけてのラスボス化には、何者かに心を乗っ取られたか、精神に悪い影響を受けて汚染されてしまったのか、と考えていたのだけれど、まさか最初から一貫して変わらずスノーのお嬢様であるプリムローズ自身そのままだったとまでは思っていなかった。たとえ、何かに憑かれていなくても、エリュトロンやダンテあたりに騙されたり、誘導されたりした部分があると思っていただけに。
だけれど、その行動原理がひとえにスノーのため、というのなら彼女の暴走も納得できる。一貫してプリムローズは何も変わっていなかった、というのも腑に落ちる。すなわち、スノーのためならば女神を敵に回し、世界を滅ぼす事も厭わないほどの愛情を、思えば最初からプリムローズは持っていたと言われても、そうだったよね、と思えるわけで。
でも、そんなスノーしか眼中にないはずのプリムローズが、ちゃんとデイジーの事友達として好きで居てくれたのは嬉しかったな。スノーを除けば、デイジーはプリムローズにとっての特別だったのかもしれない……にしては、若干扱いが酷かった気もしないでもないけれど、お嬢様基本的にSだもんな。

スノーがエターナリアの生まれ変わりであり、新しい白の女神だった、というのは既に前回までに明らかになってたんでしたっけ? 非公式にそれらしい、という話は随分前から持ち上がってはいましたけど。他のシリーズにもチラッと登場してましたしね。
しかしまー、女神化したら女神化したでここまで破天荒な女神らしくない女神になるとは。何も変わらずスノーだった、と言ってしまえばそれまでなのですけれど、メイド女神とは新しいな! って、スノーはメイドとしては失格なキャラなんだが。ともあれ、女神らしい常識から外れまくっているのは間違いなく、少なくともこのポリ白の時点では明らかに人間としての特性の方が強いよなあ。元・人間であり、神曲楽士だったという特性があったからこそ、女神となり神曲を得る立場になっても、ブランカへの神曲が弾けたりもしたんだろうが……そうなると、神曲というものがそもそも何なのかについても考えどころなのかもしれない。
刀をぶん回すのは、メイドとしても女神としても大いに前代未聞かとも思いますがw

スノーとプリムローズの結末については意外な展開でもあり、これ以外にはないと思える終わり方でもあり。お嬢様としては、もうこれ以上ないほどの幸福な人生だったのかなあ。ある意味、最後まで一番幸福な時代で止まってしまったままだったような人生だったわけですし。複雑ですし、寂しいですけれど、これもまた一つのハッピーエンドだったんでしょうかねえ。なんとなく物思いに耽ってしまいます。

今回の話で一番可哀想だったのは、スノーの両親でしょう。あれは辛いよ。折角戻ってきたと思った娘が、また同じように消えてしまったわけですから。果たして残された両親はあの別れに耐えられたんだろうか。せめて、もうちょっとちゃんとスノーにはお別れをしてあげて欲しかった。

そしてもう一人可哀想だったのがサラサですよ。もうなんちゅうか、いい面の皮じゃないですか(苦笑
ゲンナリと投げやりになって諦めてしまったサラサが可哀想になるやらなんやらで。もっとパワフルに押して押して、傷心のジョッシュの心の中に土足で踏み込むぐらいの厚かましさがあれば、リシュリュー相手でもがぷり四ツに組めだんでしょうけどねえ。そう考えると、優しさにかまけて押しが足りなかったというべきか。やっぱり既成事実は大事ですよ(結論

一方で、デイジーは一番お幸せに状態で……。はいはいごちそうさまごちそうさま。ただ、トレバス神曲学院の前身となる施設を立ち上げたのが、他でもないこのデイジーだったというのはなかなかのサプライズだった。
まさか初代がこの娘だったとはなあ。

当初からブランカの身勝手っぷりにイライラさせられたりもしたシリーズでしたけれど、終わってみるとこのお馬鹿聖獣もずいぶんと精神的に成長したなあと感慨に耽りました。いやあもう、本当に思い込みと独善でスノー振り回して、いい加減見捨てられても仕方ないだろうと思うこと度々だったのが、きっちり分別と気遣いとを取り揃えた大人になりましたからね。ある意味これ、ブランカの成長物語だったのか、と思いたくなるくらい。
振り返ってみると、女神も聖獣も、世界でもっとも高位な存在というわりには精神的に幼かったり、短絡的で思慮に欠ける者が多く、様々な問題や世界の危機って大本を辿るとだいたいこの人達の不始末が原因だったりするので、厄介だよなあ(苦笑

これで、今のところ続いているシリーズはクリムゾンだけになってしまったのか。あのシリーズもそろそろクライマックス入ってますし、新しいシリーズはもう出ないんでしょうかねえ。そうなると、いささか寂しいのですが。

銃姫 −Phantom Pain− 13   

銃姫 −Phantom Pain−(1) (シリウスコミックス)

【銃姫 −Phantom Pain− 1】 漫画:椋本夏夜/原作:高殿円 シリウスKC

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最初はただのコミカライズかと思っていたので食指も動いていなかったのだけれど、原作のスピンオフ。しかも漫画を手がけるのが椋本夏夜。トドメに肝心の物語が原作【銃姫】の完結後のアフターストーリーときた。これは見たい! すごく見たい! という事で俄然読む気満々で勇んで購入したのですが……ちょっ、100年後!?
あのラストの大海嘯による文明崩壊後から100年が経ったという時代背景。
……これ、もしかして本格的に【銃姫】と【パルメニアシリーズ】を繋ぐ幕間の話になるんだろうか。
大海嘯からパルメニア建国までってどれくらい期間があいているんだろう。高殿円ワールドの年表って何処かにないもんだろうか。さすがに同人誌にまで手を伸ばすのは躊躇われるところだけれど。
アンゲリオン星教は既にこの時代にはもう立派な宗教組織として確立しているし、半人半霊(ヘスペリアン)という後のパルメニアシリーズでも時折重要な登場人物の中に出現する種族?もここで現れているし。
というか、ヘスペリアンなんてものが生まれ始めたキッカケは大海嘯にあったのか。でも、宿主を失って溢れ出した精霊が人間の死体に宿り、死霊みたいになってよみがえる、なんて話は聞いた覚えがないんですよね。いずれこの問題は解決されるのだろうけれど、ヘスペリアンだけは生まれる余地が残ってしまったんだろうか。
そういえばヘスペリアンって無性別のはずなんだが、このマテリアって完全に女の子だよなあ。胸あるし。のちのアルフォンスやオリガロッドは無性別から女性化しているけれど、マテリアも既に転化したあと? どうも、パルメニアの時代とやや設定がずれている、あるいはまだ法則が違っている、という可能性も考えておいた方がいいかもしれない。
マテリアの容姿が銀髪というのもなかなか興味深い。初代パルメニア王オリガロッド・スカルディオから続くスカルディオ一族の特徴が、色素の薄い髪、銀髪なんですよね。ただ、スカルディオの瞳の色が碧であるのに対して、このマテリアの目は鮮やかな紅ということで関係ないのかなーとは思ったのですが、裏表紙に描かれている主人公のコジの眼の色、はっきりとした色彩が出ていないので判断しづらいのですがこれ……碧眼じゃないのか?
わざわざ銀髪ヒロイン出すからには、何らかの意味があると捉えたほうが面白いと思うんですよね……。

しかし、まだ魔銃士(クロンゼーダー)が残ってたとはなあ。てっきり、あの大海嘯で殆どの魔法と銃は失われてしまったものだとばかり思っていた。実際、パルメニアの時代にはもう「銃」なんて残っていなかったし。
ただ、確かに魔銃士が存在していなかったらそれはもう【銃姫】とは違う作品になっちゃうと言えばそうなんだよなあ。でも大海嘯前と比べても相当に希少な存在になっているみたいだし、そもそも教会の高位の聖職者以外には使えない、みたいな事も作中では言われていることから考えても、使える人間はかなり限定されるみたいだな、これ。
そして、主人公の「コジ」の方ですよ。神殿のキメラってどういう意味なんだろう。あの異形といい、血の異様さといい、色々と「銃姫」関連で予想は幾つか立てられるんだが……ふーむ。

と、設定ばかりを追うのではなく、ヒロインと主人公の関係もまたいいんですよね。鉄面皮でどこか浮世離れした天然、でコジをヘタレ呼ばわりして憚らない唯我独尊なヒロインのマテリアに、そんな彼女に子犬のように付き従う、健気でヘタレな少年コジ。このツンツンしながらも、どこか常識がなく一本ズレてるところに愛嬌があって、なんだかんだと主人公の事を気にかけてやまないヒロインは、さすがは高殿円作品のヒロインと言ったところか。この手のキャラはデレはじめると、エラいことになるんだよなあ。既にコジの方はデッレデレのご様子だし、二人の関係がどう進展していくのかも興味津津である。
椋本さんの繊細ながら綺麗で丁寧なデザインは、残酷で無慈悲な話の中にも、決して消えない優しさと慈しみを引き立たせてくれる。切なさの終わりにかすかに灯る暖かな想いが伝わる結末が、何かホッとさせてくれる原作小説【銃姫】を知らなくても、この作品単体で楽しめる漫画になってます。
期待してた以上に手応えありましたね。嬉しいことに、二ヶ月連続刊行で来月には2巻が出る模様。これは次、楽しみだ。

プリンセスハーツ 〜たとえ遠く離れていてもの巻〜4   

プリンセスハーツ 〜たとえ遠く離れていてもの巻〜 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 〜たとえ遠く離れていてもの巻〜】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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恋と野望の王宮ロマン、クライマックス直前!

全ての謎を解くために、【墓場】へ向かうジル。一方、シングレオ騎士団でマシアスと再会したルシードは、騎士団と星教会の後ろ盾を手に入れ、一路、パルメニアの首都ローランドを目指していた。パルメニアの王座奪取に向けて、なにもかもが順調に見えたその時―あるまぎれもない真実―が、離れ離れのジルとルシードに明かされる。二人の運命ははたして……? 身代わり王女の王宮ロマン、怒涛のクライマックスへ!
怒涛のように明かされていくこれまで謎とされてきた血縁の真相。王女メリルローズの相似であり、義母の想いもよらぬ正体、実の両親が誰かも不明、と身辺が派手な秘密と謎に彩られていたジルの方にばかり気を取られていて、まさかルシードの方にも秘密が隠されていたとは思いもよらなかった。完全に意識の死角だったな。あるいは、囮として、ジルの方の事情に余計に注目が集まるようにしてあったか。それに、誰と誰が双子である、実はあの二人は双子でした、という話があちこちで暴露され始め、さらには双子を利用した陰謀を歴史の裏側から企てていた墓場なる組織まで出てきて話のメインになっていたので、まさか逆に逆に双子じゃありませんでした、という展開が待っているとは思いもよらず。
ただこうなってくると、登場人物の血縁関係がすさまじい勢いでからみ合っていることになってしまい、ちゃんと整理しないとかなり訳の分からない事に……ってあれ? 事実がこの通りだとすると、ジルとルシードって従兄妹になるのか!?
さすがにルシードの秘密は想定どころか予想だにしていなかったので、相当に驚かされた。何しろ、作中で一番情報に精緻していたジルが全くコレに関しては知らないどころか疑うことすらしていなかったからなあ。オース王子も噂が出回るまで全く感知していなかったようだし、秘密は元から知っている人以外にはほぼ完全に守られていたようだ。それを、何故パルメニア王が知っていた、かもしれないというのはなかなか大きな疑問点だぞ。

と、この時点でもこの急展開には相当ドギマギさせられたのだが、ルシードは一旦凹みまくって折れそうになるものの、ジルに鍛えあげられた心身とリドリスの応援もあって何とか立ち直り、王の器量を証明してくれるのだけれど……まさかの止めのちゃぶ台返し。一度ひっくり返されたちゃぶ台を直してくれたと思ってホッとした途端にもう一度ひっくり返されたよ!!
ちょ、直前までのやり取りはなんだったんだ!? いや、だからこそ明らかにこれはおかしい。どういう意図があるっていうんだ!? 
一応、ルシードがアジェンセン大公でなくなることはないはずなんですよ。だって、パルメニア王国の史実でそうなってるわけですし。彼の孫のあたるオリエ――遠征王アイオリアはパルメニア王であると同時にアジェンセン大公の位にも付いていますから。ここはまず揺るがないはず。だからこそ、歴史の真実はいったいどうなっているのか。
史実といえば、ミゼリコルドの主が誰か、というのも問題なんですよね。ミゼリコルドの言い分からすると、メリルローズっぽいような気もするんだよなあ。ただ、遠征王ではミゼリコルドはオリエの祖母にあたる女性を守護していた、と語られているっぽいんですよね。普通に考えたらジルなんでしょうけれど……今回ようやく初登場となったメリルローズ、やはりというか浮世離れした人ではあったんですが、思ってたのと違ってちゃんとルシードを愛してるようなんですよね。単にルシードが片思いを高じさせ、拗らせた挙句に一方的に求婚していた、という勘違いではなかった模様。ちゃんと両思いだったのか。そうなると、これまでジル応援一辺倒だったのが、ルシードが変心してメリルローズからジルに乗り換えた事にモヤモヤした気持ちを抱いてしまうのでした。ずっと迎えに来てくれると信じてた人が、自分の偽者に心奪われて挙句に見捨てられた、という形になったらそりゃ哀れですよ。尤も、そんな単純な乙女ではなさそうですけれど。
一方で、こちらは紆余曲折の上でちゃんと両思いになったジルとルシードですが……りょう、おもい? なにかこう、本質的にはちゃんと両思いなんだけど、ギャグ的な意味で相当すれ違ってないか、この二人の恋愛感情。主にジルさんが変なんですが。そもそも変なんですけどね、この女。だいたい、食欲に色々と傾きすぎだろう、この女。食い物に釣られてプロポーズをOKするなよ!! 今はルシードに夢中になってしまったのはいいのだけれど、それが食欲として表現されるのはなんなんだ!? 「恋の感覚は、食欲に似ている!」 けだし名言である。このままだとルシード、男と女の意味でじゃなくて普通に食事的な意味で喰われかねないぞ。ジルの妄想がある意味女体盛りと変わらないものになってて危ないんですがw 夢でとはいえマジで齧り付いているし。飢えてる飢えてる。なるほど、これが冬眠明けの樋熊というやつなのか。

それに比べると、同じ両思いでも、感情的に拗れまくっているとはいえ、まだオース王子とケイカの方が健全に思えてくる。あのケイカの反応見ると、明らかに王子にベタぼれだもんなあ。オース王子だって何気にベタぼれだし。この二人、どうなるんだろう。ケイカ、仮面夫婦とはいえ公式に結婚しちゃってるんだもんなあ。こっちの決着もどうするのか気になって仕方がないですよ。

ともあれ、一番気になるのは最後の一文の真相に尽きるのですけどね。こればっかりはどこにどんな真意があるのかサッパリですよ。
というわけで、早く続きぷりーず。

高殿円作品感想

プリンセスハーツ 〜これが最後の恋の巻〜4   

プリンセスハーツ 〜これが最後の恋の巻〜 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 〜これが最後の恋の巻〜】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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ついに暴かれ始めたジルの正体、マシアスの目的…! 
“あの夜の約束”を胸に、それぞれの戦いに乗り出した
ジルとルシードだが……


パルメニア王冠を目前についにシングレオ騎士団攻略へ歩を進めたルシード。世界会議の舞台で自分の正体を知る他国王たちに挑むジル。“あの夜”の約束を胸に、それぞれの戦いに乗り出した二人だが、大公夫婦のいないアジェンセンにはオズマニアの脅威が迫り……!? さらに姿を消していたマシアスも再登場! ジルとルシードに協力していた理由もついに明らかに……! 王宮ラブロマン、いよいよ怒濤の最終章へ突入!
そうかっ、ジルの正体がパルメニア王女メリルローズの偽物であり娼婦の娘という事実は、もう秘密にならなくなってきたところで、さらに当人も知らないジルの本当の出自の秘密こそが、これ以降重要なキーワードになっていくのか。
そもそも、ジルたちの母親だったクリスの正体が、びっくり仰天だったよ。いきなりハクラン王の過去回想が始まった時には、今になっていったいどういう話なんだろうと思って読んでいたのだが、まさかそんな所に着地するとは。あの人がハクラン王の前から姿を消した、という話になった段階でも全然気付かなかったし。実は彼女はあの人だったのです、と答えを提示されて、ようやく「えええっ!?」と驚いた次第。この件に関しては恐ろしく自分は察しが悪かったみたいだ。
しかし、ジルと二人の姉妹の血が繋がっていない事はだいたい予想がついていたけど、まさかキキとあの男女が……ねえ。びっくりだよ。びっくりだよ。
そうなってくると、気になってくるのがジルの正体だ。彼女が思わず漏らしているように、この物語には双子が多すぎる。いつの間にか、分たれた兄弟姉妹こそが秘められていた主題だというように浮き上がってきている。あの「墓場」という存在がこんな形で深く関わってくるとはなあ。
となると、メリルローズとジルは、単に他人の空似じゃないと考えるべきなのか。場合によっては、ジルはメリルローズの身代わりやニセモノとしてではなく、ジルとしてルシードの本当の王妃になれる可能性も出てきた、って事になるんですよね。ある意味前途は開けてきたと言えるんだろうけど……まだ、何か予見できない恐ろしいトラップが潜んでいる気がする。
なんにせよ、ハクラン王がどちらかというと、ジルの味方になってくれる人で良かった。ルシードと離れて行動しないといけない今、これまでになくルシードと心つながった今のジルは、だからこそ一人で頑張らせるには不安な所があったから。
と、心配する必要もなかったんですけどね。まだまだ、この女の恐ろしさを甘く見ていたかもしれない。オズマニアの鍍金王と雹王子の巧みにして嫌らしい攻勢は、ジルとルシードにとって瀬戸際に追い詰められるものであり、今の状況下において最悪のピンチなのだとばかり思っていたのだけれど……なんだよこれ、全部ジルの手のひらの上だったんじゃないか。
まさに、コテンパンに打ちのめされるオズマニアの親子の惨憺たる有様に、喝采をあげるよりも呆気にとられたのであった。隙に見えた所には、全部ジルが罠をしかけていたんだな。でも、尋常な罠ではない。まともな罠に、あのオズマニア王と雹王子が引っかかるはずがないんだから。一癖も二癖もある人物だけど、二人とも飛びっきり有能で優秀な指導者であり王族だったのだから。それが、ああも鮮やかに引っ掛けられるとはなあ……参った。

一方でルシードも、宝剣エヴァリオットこそゲット出来なかったものの、無事シングレオ騎士団の忠誠を得る事ができ、さらには……。
まさかまさか、ですよ。マシアス、ただ姿を消していたんじゃなかったのか。それはもう、これ以上ないルシードへの助けを携えての再登場。正直、シングレオ騎士団を味方に付けることは大きいけれど、それだけでパルメニアを掌握できるか、というといまいち条件を満たしていない気がしていたんですが、マシアスが携えてきたものは、シングレオ騎士団を指揮下に収めること以上に、パルメニアの王冠を手に入れるためのお墨付きとなるもので、これ両方揃ったら情勢は一気に変わり、ルシードの野望は夢物語などではなくなるはず。
同時にそれは、ルビコンを渡るということでもあり、もはや後戻り出来ないところまで踏み込んでしまった、という事。尤も、ジルの為にももうルシードに躊躇や迷いはない。あとは突き進むのみ。
マシアスも、居なくなったことで散々とルシードとジルを悩ませ苦しめた罪は、これだけのものを持ってきてくれたなら清算してもらっていいよ、許す。おかげで、ルシードも独り立ち出来たわけだしね。

あとはジルの正体を明らかにし、メリルローズとの直接対決を待つばかりか……いや、それが一番怖いんですけどねッ。

高殿円作品感想

プリンセスハーツ〜今宵はせめて夫婦らしくの巻〜4   

プリンセスハーツ〜今宵はせめて夫婦らしくの巻〜 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ〜今宵はせめて夫婦らしくの巻〜】 高殿円/明咲トウル

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ああ、ついに……。長らく、契約上の仮面夫婦という建前に縛られて、自分の気持に気づくことすら出来なかったジルとルシードの二人が、ついについに、恋を自覚し想いを繋げることに。
いやあ、ぶっちゃけもしかしたら二人の気持ちが通じ合うなんて無理なんじゃないかと思う時期もありました。なにしろジルがなあ(苦笑
この女の恋愛スキルの酷さは凄まじいとすら言えるレベルでしたから。いい雰囲気に盛り上がっても、平然と踏み出す一歩を間違えた挙句に踏みつぶして蹴っ飛ばして台無しにしちゃってたもんなあ。
実際、もう大丈夫だろうと思われた今回だって、盛大にやらかしてくれたわけですし。なんだよ「山盛り!」って。幸い、もう何度も痛い目を見ていたルシードが、ジルの恋愛関係にまつわる内心の気持ちを言語化する機能が致命的に破綻していることを実感して理解していたお陰で、最大のピンチも乗り越えられたわけですが。ルシードえらい、ここまで彼が男前に見えたことはなかったよ! もう随分と前から普通にかっこいい、女も男も惚れるような男っぷりを見せてくれた上に、献身的とすら言えるジルへの態度もあって、男前としては上等以上に上等だったんですが、なにしろ相手があのジルだったからなあ(苦笑
とはいえ、こいつはこいつで偏屈者で多少ヘタレの入ったひねくれ者の僻み屋なところがあるから、ルシードもジルへの想いがなんなのかを自覚するのを拒否していたところがあったのですが、うん、リドリスが今回いい仕事してたなあ。彼に関しては腹に一物あるんじゃないか、とずっと疑ってたわけですけれど、ルシードとジルの間を裂くどころか取り持とうとしている姿を見ている限りは、ルシードに変な執着を持っているわけでもなく、本当に信頼できる弟としての立場を続けるつもりなのかと思いたくなってくる。でも、彼のその態度の根拠がまだわからないので、信用しきれないんだよなあ。

さて、二人の想いが通じたのはいいけれど、それは同時に二人が目指すパルメニアの打倒という目的を叶えるためには許されない関係であるんですよね。
パルメニアと対決するということは、偽のメリルローズであるジルはどういう形にしてもルシードの前から立ち去らなければならない。
念願叶う状況がようやく見えてきたときに、いつの間にか自分にとって一番大切になっていた者を引換にしなければならなくなっていたなんて、大した皮肉じゃないですか。
特にルシードにとっては複雑でしょう。パルメニアを乗っ取ろうとするのは、愛するメリルローズを手に入れるためだったのに、今や彼女よりもジルの方を愛するようになってしまっていた自分に気づいてしまった。それでも、アジェンセン大公として、彼の国のため、彼についてくる国民のために、彼はもう止まれない。大公としての責務を放り出せるような、彼は無責任な王ではないがために。
果たして、彼はどうやってこの難局を乗り越えるのか。さすがに、彼が最後にジルに誓ったよなことは、幾ら何でも難しすぎるように思えるのだけれど。それでも、言われたジルとしては死ぬほど嬉しかっただろうなあ、あれは。
そんなジルは、今回もうエンドレスで可愛かった。もう、恋する少女そのものみたいで。あのジルが、ですよ?
出来れば、想いは遂げさしてあげたかったけれど、せめてあと小一時間は待てなかったものかしら。

しかし、いつの間にかジルの正体を知る人が増えてきたものだ。以前はマシアスを含めた三人だけの秘密だったのに。でも、ここであの四騎士団長にそれを打ち明けるとはなあ。ルシードも思い切ったもんだ。彼の人間不信の深さを思えば、それがどれだけ勇気のいることだったかが想像出来るだけに。大きな男に、なってきてるじゃないか。
一方でオース王子の方も、今更ケイカに執着を示しだして……。こいつ、自分がケイカに対して抱いている感情について一切言及していないんだけれど、意図的に目を逸らしてるのかな。傍から見てると、どう見ても惚れているようにしか見えないんだけれど。
もしかいたら本当に、サラミスが言うように二人の間に新しい恋が始まる可能性もあるのかしらねえ。

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プリンセスハーツ 君は運命の人だからの巻4   

プリンセスハーツ〜君は運命の人だからの巻〜 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 君は運命の人だからの巻】 高殿円/明咲トウル  ルルル文庫

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プリンセスハーツ第七段(でいいんですよね?)は短編集。本編での政治的な綱引きが無い分、どの話もラブ成分が濃い目に設定されております。

【恋のたまご】
王妃付きの女官としてレギュラー出演しているリュリュカが主人公の話。王宮で働く女官さんいうのは良いところの家柄の娘さんが花嫁修業と中央の良い血筋や役職の人と結婚して実家のためにコネ作るのが目的みたいなところがありまして、リュリュカもさっさといい人見つけないと実家に連れ戻されて、従兄弟の若ハゲと結婚させられてしまうというので、焦りに焦って相手を見繕うために走りまわる事になったのでした、という話。
元々リュリュカってテンション高い元気娘というイメージはあったんだけど、仮にも貴族の娘さんだからそれなりに上品な印象があったんですよね。それが……うははは(笑
この娘、切羽詰まると内心の言葉遣いがえらい荒れるんですよね。スラングが入る入る。あげく、付き合ってる人がいるから大丈夫、と親元に手紙送ったらひょいひょい親父殿が恋人と合わせろと上京してきたときのセリフがもう最高。あんた、仮にも上流階級なのに(爆笑
いやあ、ちょっと見損なってました。挿絵のデザインも快活そうでバイタリティに溢れてそうだし、この娘って高殿さんが好みの主人公タイプなんじゃないだろうか。そのときシリーズのフランチェスカっぽいし、この元気よさは。
それ以上に見直したのが、彼女が本当に恋をしてしまった瞬間からの、彼女の無心の心から出てきた言葉。この娘、こんな事を言える子だったのか、と正直驚いてしまいました。元からそれだけの資質はあったんでしょうけれど、相手が持つ闇の深さを感じ取りながら、いや感じ取ったからこそ必死に光の下に手繰り寄せようとする本能の働き。
いやね、その相手というのがあのマシアスなのですが、彼の壮絶極まる過去からして、彼にはとてもじゃないけどお相手になるような女性は出てこないだろうな、と思ってたんですよね。高殿作品の中でも屈指の壮絶さだもんなあ。
それが、リュリュカのおかげでちょっと考え変わりましたよ。彼女は基本的に平和に幸せに苦労なく暮らしてきた子なんですけど、むしろだからこそ、マシアスを無明から救い上げられるんじゃないだろうか、とマシアスに自分自身をもっと大切にして欲しい、と必死に訴えかける彼女を見て、思えたんですよね。本編ではマシアスがまたえらいことになってますし、彼には幸せな結末はないんだろうなあ、と思ってたのが、ちょっと希望が持てるようになりました。このリュリュカなら、やってくれるはず。
この話の素晴らしいところは、まさに恋に落ちる瞬間が描かれているところなんですよね。話の前半でマシアスと遭遇したときにはリュリュカ、マシアスには何も関心抱いていませんでしたし。その恋も、自分の欲求や感情を押し付けるものとは少しベクトルが違っていて、マシアスのもつ闇を垣間見てしまったことで、彼が自分を蔑ろにしているのに気づいてしまったことで、矢も盾もたまらない感情に駆られてしまったところから、駆け巡って広がっていくんですよね。まず衝動があり、そこから気持ちが付いて行き、そこに名前が生まれていく。彼を見て、彼を見る自分の至らなさに気づき、もっと彼を知りたくなり、彼を知るために自分の在り方を見つめ直す。この流れがとても秀逸で、輝かしかった。恋が生じる物語としては、とても凝縮された刹那を切り取ることに成功した逸品じゃないでしょうか。
この話で、モブキャラとしか認識してなかったリュリュカが、すごい好きなキャラの一人になりましたよ。


【月色賛歌】
ルシード、貴方は何も間違ってない。気になる女性に対するアプローチとしてはほぼ完璧にやり遂げてる。途中まで確かに上手くいっていた。それに変なオチがついてしまうのは、絶対にジルが悪い、このアホが悪い(笑 この女、女として根本的なところでズレてるよ!!
なんでこの女はいつもいつもあれだけいい雰囲気になりながら、最後のところで思考がわけのわからないところに飛ぶんだ!? いっそ、彼女なりの防衛反応だと解釈すれば格好もつくのかもしれないけど、どうも素の天然っぽいもんなあ。
ルシードがまいどがっくりと肩透かしを食らうのも仕方ないよなあ。貴方は悪くない悪くない。この女に普通の女の反応を期待する時点で間違ってるのかもしれないけど、じゃあどうしろといわれたら、どうしたものか全然思いつかないもんなあ(苦笑
最初からズレてたら諦めもつくけど、殆ど最後までは上手くいってるんだから、やり方としては概ね間違ってないはずだし。
結論は変にしても、気持ちはきちんと伝わってて、感謝されてるし喜ばれてるし、関係は進展していると思えなくもないんだから、我慢しないと、うん。

しかし、ここに至ってルシードはジルのこと、ほんとどう扱うつもりなのかね。もし、ジルがあの雰囲気の良さの結末を、普通の女性のように受け止めてしまったら、それは仮面夫婦の終了を意味するんだし。
メリルローズのことがある以上、この二人の関係というのははっきりさせてしまうことが非常に危険なのも確かな話。ジルが自分の抱く感情の、ルシードが自分に抱く感情の結論を無意識に回避しているのは、やっぱり防衛反応なのかもしれない。でも、それもそろそろ限界に来てるんですよね。ルシードは自分の気持ちに名前をつけることこそ避けているものの、ジルに自分に振り向いて欲しいという気持ちを押えきれなくなっている。現に、彼女のために、彼女のためだけにアジェンセン大公としてではなく、ルシード個人として何度も動いているんだし。
あとがきによれば、ジルもそろそろもう、自覚の大波が押し寄せてくる予定らしいし。波乱含みだよなあ。
二人の関係ってのは、メリルローズが存在する限り、どうやっても落ち着かないものなわけだしねえ。


【ひとたび、王女に生まれたならば】
今は険悪極まりない関係になってしまったオズマニアのオース王子と、彼の従姉妹であるケティクークの、まだ仲の良かった幼い頃の物語。
今となっては雹王子と呼ばれるほど無感情の冷徹者として知られる王子だけど、まあ昔からあんなではあったのね。でも、生真面目でプライドが高く澄まし屋のくせにちょっと抜けてて、本人は不本意だろうけど、愛嬌のある子だったんだなあ。ケイカはケイカで気の強い子で、いい意味での喧嘩友達。そんな二人の仲が、ああいう形で引き裂かれ険悪化してしまったのは、哀しい話である。オースは何考えてるかわかりにくいのは昔からで、ケイカは彼の分かりにくい感情を察せられるほど感情の機微に優れている子でもなかったわけで、うん、でもわかったからと言って上手く言ってたかというとそうでもないだろうし、難しいところだ。理解しあうことが余計に拗れる結果になってしたかもしれない、あの情勢を考えると。
オース王子の本当の気持ちはどこにあったんだろう。姉姫に淡い思いをいだいていたのは間違いないんだろうけど、ケイカが思っているほどにはオースはケイカの事を邪険にはしてなかったように見えるんですよね。それどころか、非常に大事にしていた素振りすらある。ええい、オースも不器用だよなあ。姉姫に対してもケイカに対しても、もっと上手く出来なかったものか。
まだ、ケイカに対しては希望はあるのかもしれないけど。ふたりとも、まだ生きているんだし。ケイカの心は、ただ憎むことだけを生きる糧とししがみついていた頃に比べれば、オズマニアを出て、サラミスと寄り添うことで余裕を取り戻すことができたみたいだし。
どうやらまだ、オース王子の逆襲が待っているみたいだし、いい意味で二人の仲が近づいてくれればいいのだけれど。オースは敵だけど、こういう面倒くさい不器用な男の子はやっぱり嫌いになれないし。


【大公殿下の温泉休日】
気楽に読める短編、というか掌編。ルシードがジルを振り回しているのか、ジルがルシードを振り回しているのか、二人の関係ってなかなか判別しにくいや。とりあえず、女が無理ならガチムチを送り込んでくる王妃はパねえっす!!


【私の願いを叶える者よ】
前々から疑問だったんですよね。ミゼリコルドがジルに代償を要求し、彼女の表情や涙を奪ってしまったこと。星石の精霊って、別に力を振るうのに持ち主に代償を要求するなんてことなかったはずなのに、と。
なるほど、ジルはミゼリコルドの本当の主人じゃなく、他にちゃんとした主人がいるのか。
ヘスペリアンが誕生する理由というのも興味深い情報。これって、他でも書かれてたっけ。やっぱり細かい設定はさすがに憶えてないんだよなあ。


本編の方はあまり間を置かず、7月には出るみたいなので、待たされることはなさそう。なかなかすごいところで終わってたもんなあ。

高殿円作品群感想

プリンセスハーツ 誰も代わりにはなれないの巻4   

プリンセスハーツ 誰も代わりにはなれないの巻 (小学館ルルル文庫 た 1-7)

【プリンセスハーツ 誰も代わりにはなれないの巻】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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これって、もしかしたら何にも事情を知らない他人の方が、ルシードとジルの関係を本質的に把握出来るのかも知れないなあ。いや、それとも分かっていないのは当人たちだけで、周りの人間はみなちゃんと分かっているのかな。少なくともリドリスはちゃんとわかっているみたいだし。
既にお互いをこれ以上無く愛してしまっているにも関わらず、二人の関係の発端である仮面夫婦という軛が、ルシードとジルに相手が自分のことを本当に愛していること、それ以上に自分が相手を愛してしまっている、という事実に霧を吹きかけ、誤解に誤解を重ねる結果となってしまっているのが、なんとももどかしい限り。
二人とも、相手のことを一心不乱に見つめ続け、その人のことばかりを考えているにも関わらず、前提として相手は自分を愛していない仮面の結婚相手だ、という意識があるだけに、肝心なところで相手の考えや想いを誤解して受け取ってしまっているんですよね。こんなにも気持ちが通じているのに、どうしてこんなにもあの人の考えていることがわからないのだろう、とジルが思い悩むシーンがあるのですが、そりゃあ貴女、分からないのも無理ないて。どんなに簡単な方程式だって、入力する元の数字が間違えていたら、そりゃあ正しい答えが出てくるはずもない。
本来それを正してくれる可能性のある、唯一の仲間であり共犯者でもあるマシアスは、今回えらいことになってて、それどころじゃなくなったもんなあ。彼がああいうことになってしまった影響で、ルシードもずいぶんメタメタな精神状態になってしまっているし。
ルシードは元々人間不信、というかこれは自己不信、自分は愛されない人間であるという意識があるのか、唯一心を許せる相手となっているマシアスとジルに対しても、いつか自分から離れていく人間だ、と受け止めていて、本当の意味で相手の心の中まで踏み込むことができていなくて、その御陰でルシードがどれほどマシアスという人間に対して、自分の魂の比重を置いているのかわからなかったのだけれど、これほどヘコむほどだったのかぁ。それこそ、自分ひとりでは立っていられないほどの。
だからこそ、ああやってリドリスへと傾倒していくことになったんだろうが。

今回、マシアスの過去が明らかになったわけですけど、これは想像を絶したなあ。確かに、今のマシアスからはまるで連想できない。ほとんど別人に近いじゃないか。
まさにかつての彼は一度粉々に打ち砕かれ、ほぼ零から再構築されたのが今のマシアスなんだろうか。となると、今のカレを形作ったのは間違いなくルシードであって、彼の独白からも伺えるけど、ルシードの存在はマシアスにとって、丁度【銃姫】のエピソードに当てはめると、彼の中の神、と言うことになるのかもしれない。元々星教会の使徒である彼が、与えられた神ではなく、こうして自分自身の中の神をみつけると言うのも、星教会の祖となった女性の物語を知っていると、因果を感じてまた面白いなあ。

そう、今回はちょうど【銃姫】の最終巻と刊行時期が重なたせいか、関連するエピソードや史実がふんだんに盛り込まれているんですよね。悪神ゼフリートの正体とか、ここではもろに書いてあったもんなあ。彼がやった事を客観的に事実のみ羅列して並べてみたら、そりゃあ悪神としか言い様がない凄まじいことやってるといえばやってるんですけど。
それから、ミゼリコルドの目的が人間になること、というのもまた感慨深い話なんですよね。ただ、それが目的となるとミゼリコルドのやり方というのは盛大に間違っている気もするんですけど。ここでジル相手に契約と称して様々な感情などを代償として奪い去っているミゼリコルドが、後世を舞台にした別のシリーズでは、こういう事をしていないのを考えると、また色々となんかあるんだろうなあ、ミゼリコルドに関しても。

リドリスは、勿論このままじゃ済まないんだろうなあ。どうも、彼の中には通り一辺倒の復讐心や利己心というものがなさそうなのが、余計にたちが悪そうなんだよなあ。彼が敵意を持っていないことは、ルシードの本能やジルの洞察力が断定しているように、間違いないんだろうけれど、時として敵意の無い相手の方が厄介だというケースもあることだし、リドリスの場合、どうも兄であるルシードに対して異常な執着があるみたいだし。ジルが、何となくルシードとリドリスの仲の良さに嫉妬心や危機感をいだいてしまっているのは、決して的外れなんかじゃないんですよね。彼女の女の勘は、ここでは正しく機能していると見てよさそう。問題は、それがどういう形で発露するのか、と言うところだけど……。
やっぱり、ここでマシアスがいないのは痛すぎる。

と、身内のゴタゴタと並行して、国際情勢は複雑怪奇、ルシードもいくつかの政治的決断を要求される事態に陥っている。これ、かなりシビアな情勢だよなあ。わかりやすく現状と選択肢の内実について説明してくれているおかげで、ルシードやジルが抱く切実感が実感を伴って伝わってくる。問題はこの選択肢、外すと彼らの目的からするとかなり致命的な事になりかねないにも関わらず、正解を導きだすための情報が少なすぎる所なんだよなあ。でも、情報を得ようとすると逆にやぶ蛇になりかねないという危険性もあるし。ジルのパペットを使った情報収集力は強力だけれど、ここで必要なのはどこまでも届く長い手、というよりもとても広い範囲まで聞こえる耳の方なわけだし。私的ではなく公的で大規模な情報収集システムが欲しいところだよなあ。まだルシードの力では公国にそれだけの機関を作るには至らないか。味方、まだまだ少なそうだし。
それでも、ジルが得てくる情報は確実に、不鮮明な状況に色を加えてくれるのだから、とても頼みになるのだけれど。


巻末の短編は、短いながらこれは面白かったし、何気に次の舞台の主のお話でもあるから、先々の話を見る上でもかの人の人柄を知る上で、かなり興味深い話でもある。
これって、純愛だよなあ、ひとつの。現実に疲れ愛に疲れたひとりの王を癒すのは、無邪気で気まぐれな猫一匹。それが、ジルのもう一人の姉妹、というのは運命なのか、因果なのか。
どうでもいいけど、キキとジルとヒース。この三姉妹って、ホント、どういう姉妹だったんだ? 三人ともあまりにも個性的すぎて、一緒に居る姿が全然想像できないんだが(苦笑

銃姫 10.Little Recurring circle/11.The strongest word in the4   

銃姫 11 (MF文庫 J た) (MF文庫J)

【銃姫 10.Little Recurring circle/11.The strongest word in the】 高殿円/エナミカツミ MF文庫J

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うわあ、うわあ、うわあ。なんというスケール! これまでも銃姫の世界とパルメニアワールドとの関連性はそこはかとなく示唆されてきましたけれど、ここまで明確に繋がっていたのか!!
パルメニアワールドの時代性と比べ、此方の世界は銃火器が発展し、地には鉄道が、海には帆の頚木を解かれた艦船が走り、空すら飛空挺が誕生しものすごい勢いで席巻していくという、まさに銃姫の時代は近代への幕を開けた技術発展の時代が到来しつつある事は、この激変していく世界の在り様に置いていかれないように必死な姿によって強調されてきたわけですけど、まさかこの世界がパルメニア世界の遥か古代にあたることになるとは。
いや、古代どころか神話上の時代にあたるわけなんですよね。
エルウィングのあの鋼鉄の脚に【タンクレード】とルビを振ってあったのを見たときは鳥肌たちまくりましたよ。【そのとき】シリーズを読んでいる人なら分かると思いますが、これそのまま考えるなら、セドリックって後世ではあの名前で呼ばれていると言う事になりますし。
他にも遠征王シリーズなどを初めとするパルメニアシリーズ、今シリーズが続いているプリンセスハーツもそうですね。各種シリーズ読んでると、符合するものに多数遭遇して戦慄しっぱなしです。どちらかというと近代寄りの世界観の話を読んでいたはずなのに、これらのシリーズを読んでいると今まさに神話として語られていた、伝説として僅かに伝わっていたものを、今まさに目の前で目撃しているのだという実感が押し寄せてきて……いやはや。
お陰で、魔窟に沈んだ高殿さんの著作を発掘したり、高殿スレを覗いてみたりと、興奮冷めやりません。まだ、プリハの新作積んだまま読んでないんだよなあ。
そうかあ、ジェスさんが作ってたらあれらが、バルビザンデたちだったのか!! うわぁ、あの遠征王で歌われてた話、ジャンヌとヨシュアの顛末なのか!? 星教会って、そうか彼女は神を見つけたのか、それとも見つけられなかったからこその教会だったのか。
こうしてみると、銃姫の物語って小さなエピソードを含めてまで書き始められるその前からある程度形があったってことなんだろうなあ。パルメニアクロニクルって、いったいどこまで具体的に完成しているんだろう。
どうやら、プリハの新作にはもっと具体的に悪神ゼフリートについて語られているみたいで、うん、早く読んでしまおう。

しかし、最後のすさまじいまでのディエス・イレを目の当たりにしてしまうと、セドリックの心の在り様は真っ直ぐだったとしても、その実際に成した事だけを客観的に見るならばそれこそ神話として残るほどの大悪だわなあ、これ。灰海での五万もの軍勢との対峙にしてもそうだし、元々彼はデスパニックでひとつの町を消し飛ばし、無辜の民を生きたまま蒸発させ、恐ろしい数の人間から怨嗟されている存在でもあるんですよね。
その上、結果的に、それこそ礎にされていた人々本人の意思だったとしても、この世界を支えていた礎を崩すきっかけを作ったのは間違いなくセドリックだったわけですし。
世界と愛する人の命、どちらを選ぶのかという選択を迫られるケースというのはもう定番に近いものなんですけど、大体の場合は何だかんだと両方救えてしまうものなのですが、そこで敢えて滅ぼしてしまうあたりは、やっぱり作者は少年系ラノベレーベルを主戦場として書いている人とは一線を画しているんだよなあ。
最後にいたってようやく竜王が何を考えていたのか明らかになったわけですけど、そうか彼はあくまで王として民を守るための責務を果たそうとしていたわけか。彼は間違いなく世界を守るための正義を執行していたのか。それでも、きっと辛かったんだろうなあ。嫌で嫌でたまらなかったんだろうなあ。竜王にミトという二つ目の人格が生まれた理由を、精霊王としての障害と理由付けられていたけれど、それよりもむしろ彼が押し殺さざるを得なかった人間としての良心が、耐え切れなくなって二重人格として発現してしまったという方が真相のように思えてくる。実際、ミトとなった竜王は王としての責務から逃げ出して世界を放浪していたわけだし。
彼は最後行方不明になってたけど、エピローグ直前で闇に光をもたらしていたのはやっぱり彼ですよね。残酷すぎる責務から解かれた彼が、笑えていたのは救いと考えたい。

この物語の核心だった銃姫の謎も怒涛の勢いで明らかとなり、いや銃姫だけではなく様々な複線や人間関係の絡みが怒涛のように収束していき、ぶっちゃけよく収まったと驚嘆するくらいきれいにみんな片付いたんだけど、その怒涛さ加減が凄すぎてちょっとアップアップと溺れそうになたなあ。急展開とか畳みかけたというような無理やりさ加減はそんなになかったかと思うんだけど。いやでも、ここまで見事に広げた風呂敷を畳んじゃったんだから、やっぱり拍手ものですよ。打ち切りや執筆途絶なんかで終わってしまわなくてよかったよー。
オリヴァントことルーカとの関係も見事に消化していたし。なんとなく最初から感じていたというか分かっていたけど、やっぱりオリヴァントってセドリックとそういう関係だったんですねえ。彼とその母親の関係、どんなだったんだろう。垣間見えた回想見る限り、かなりひどいっぽいような気もするんだが。いやだって、あの擬音ってバッキバキのボッコボコじゃね?(笑
どうやら漫画版はセドリックたちではなく、オリヴァントやジェスが主人公の話みたいだし、いつか機会があったら手にとってみようかなあ。

これでめでたしめでたし、のはずではあるんだけれど。あの赤ん坊とか、あとがき読むと、わりと先々穏やかでないことが待ち受けていそうではあるんですよねえ。
エル姉執念の大勝利!! って、具体的にいったいどういうことなんだよ!(苦笑
なんか作中で、魔力を取り戻す手段を取ったときジェス師が言っていた副作用の中に不穏極まりないものがあったことだし、ゼフリートの伝承からしても色々あるんだろうなあ。

あの三兄弟の中で、せめてギースだけでも幸せになれそうだったのは、嬉しかったなあ。ヨシュアにしてもプルートーにしても、そしてギースにしてもあまりにも生き方が不器用で、このまま報いなく終わってしまうにはあまりにも辛いと思わされる人たちでしたし。ヨシュアも、遠征王で歌われた歌だとちょっと怖いんだけど、伝承はあくまで伝承で事実はちょっとでも違っていてほしいなあ。

なんにせよ、実際の歴史と神話との転換というか、現実にこうして生きている人々の時間が、いずれ歴史となり、その果てには伝説に至り、ついには神話となっていく過程と瞬間を目の当たりにしたかのような戦慄は、これはほかではきっと感じられない味わいなんだろうなあ。こればかりは、パルメニアクロニクルとして膨大な年代記を手がけている高殿さんのシリーズを追いかけている身でないと。
あーあー、堪能させていただきました。

プリンセスハーツ 初恋よ、君に永遠のさよならを の巻5   

プリンセスハーツ―初恋よ、君に永遠のさよならをの巻 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 初恋よ、君に永遠のさよならを の巻】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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いやすげえ。前巻でのジルとオース王子との熾烈な外交戦争、あれほどのレベルでまだ前哨戦なのか、と前の感想で書いていたのだけれど、本気であれで前哨戦のレベルでした。
凄まじいまでの、あらゆる手段を使い、タイミングを掌握し、搦め手、正攻法、口八丁手八丁、国情や国際情勢をも加味した外交闘争、謀略の嵐、苛烈な駆け引き。いやはや、凄かったー。時に形勢が片方に傾き、また思わぬ一手で状況がひっくり返り、と息をのむような緊張の連続。
ここでジルとオースのみがやりあうのかと思いきや、帰還したルシードの活躍がまたハンパないんだわ。まさに王の威厳。この存在感には圧倒すらされる。この男、まさかここまで王としての大きな器を有した男だったのか。
いや、それ以上に今回ルシードが輝いていたのは、ジルへの想いと、ジルのための行動そのものでしょう。ルシードがジルに訴える言葉の多くは、今回至言というべきものばかりで、この男は決して知恵者ではなくても、賢者が得てして見失いがちな真理を、純真な目で真っすぐ見つめている、というのが良く分かった。
ジル、今回ほんとにメロメロにされたんじゃないのか、これ。
オース王子との対決で頼もしく支えられ、またトーナメントでは思いもよらぬ形で彼が自分をどれだけ大切に想い、気遣い、守ってくれているのかを思い知ったのですから。
この時のジルは、まるでときめく少女のようで、なんかすっごい可愛かったなあ。最後のあのセリフは反則だろう(笑
本人、自分が言ってる言葉の意味、まるでわかっていないのはひっくり返りましたけど。この点に関してはルシードの方が常識人だ。普通はそう考えるって。しかし、どうしてこの女は甘酸っぱい恋や愛情の言葉じゃなくて、管理だとか調教だとかいう物騒な単語しか頭の中から出てこないんだ。

もうどう見ても、仮面夫婦なんか今更の話。それぞれが想いを寄せている相手、メリルローズとグリフォンに匹敵する大切な存在として、お互いの想いは繋がっているはずなのに……。

それなのに、不穏の影は消えないんですよね。高殿さんって、ときどき思いっきりハッピーエンドとは真反対の方に決着持ってくときあるからなあ。いや、ハッピーエンドに終わる場合も多いんだけど。それだけに、どこに落ち着くか予想がつかん。


今回の一件の真相に関しては、殆ど最初でバラしてましたよね。彼の独白を読めば、だいたい想像はつく。それだけに、ジルの最後の一手には仰天させられましたけど。なんで!? と思った。思わされた。これは、うまい事逆手に取られた。
オース王子もなあ……この子は器用なんだか不器用なんだか。13歳にしてあれほどの才を見せ、大人の振る舞いを見せつけながら、それを成し得た動機というのは実に大いなる不器用の結果だものなあ。
彼の想いが真に彼女に向いていたら、というのは考えてしまうことだけれど。オズマニア王女の複雑に絡みきってしまった想いと言うのも、ひたすらに重たい。結局、ほどけないほどに絡まりきってしまったんだなあ。あれは、もう切って捨てるしかなかったのだと、考えざるを得ない。その意味では、ジルの一手は彼女にとって本当に救いとなったわけだ。
その派生として、サラミスたちの人生は大いに変転してしまったのだけれど。味方の少ない、というか殆どいないに等しいジルとルシードだけに、この二人については真に味方になって欲しかったところだったんですよね。二人とも、若いながらも才能は実に豊かで個性的だったんだし。
まあ、味方にはなりつつも、すべてを打ち明けあう仲間にまではならなかったか。惜しい話だけど、あの男の子の気持ちはわからないでもない。男って、ああいう風に考えちゃうんだよなあ。ダメだよなあ……。
でも、二人ののちのちの話を読むに、二人にとって最良ではなくても、なんだかんだとうまく結ばれたみたいだし。うん、良かったなあ。


さて、物語の方は、最後の最後にまた大きな進展を迎えることに。これ、パルメニアシリーズを読んでる人なら、あの騎士団からああいう申し出が来た、というのは、ほんとに衝撃的で仰天するような事だとすぐにわかるでしょう。
遠征王にしても、マグダミリアにしても、その時…シリーズでも、この儀式に関しては何度も繰り返し語られてる、国事に関わる最重要の一件ですもんね。そのパルメニア王国の最重要秘事が、アジェンセン公国のルシードに向けて発せられたわけですから。
これは、ほんとに大事だわ。

プリンセスハーツ 恋とお忍びは王族のたしなみの巻4   

プリンセスハーツ―恋とお忍びは王族のたしなみの巻 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 恋とお忍びは王族のたしなみの巻】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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前巻であれだけ管理の徹底を誓ったくせに、管理できてないよ! 管理が足りない!(笑

しかし、ルシードとジルの仮面夫婦生活がはじまってからもう二年になるのか。二人の当初の利害関係だけで繋がった冷たい関係を思い起こせば、随分と変わったものです。思慕するメリルローズの偽物ということでジルにつらく当たっていたルシードも、今となってはジルの事を誰よりも信頼し、頼りにしているわけですし。ジルだって、最初はルシードを自分の目的のために利用するだけの相手、として感情なんかこもってなかったはずなのに、今の彼女の行動原理って本来のパルメニア打倒の目的からずれて、純粋に王妃としてルシード第一。ルシードを名君として盛りたてていくことしか考えてないみたいになってる気がします。
もちろん、アジェンセン公国の戦略目標としてパルメニアの併吞があるわけですから、彼女の目的としてはズレてはいないのでしょうけれど。今の彼女はその前にルシードありき、の感じがするんですよね。
そのわりに、自分のルシードへの感情、彼からどう思われているかの認識が相当鈍い。今のルシードにとって、半身といったら誰がどう見てもジル本人しかいないじゃないか。
二人の関係性については、むしろルシードの方が正確に把握しているのかもしれない。彼がマシアスに語ったトーナメント出場の動機なんて、ちょっと感動ものだったですよ。よっぽどジルのこと想ってなかったら、あんなこと言えないですよ。
でも、彼の場合複雑なのは、その感情を認めるわけにはいかないってところなんでしょうね。ジルはあくまで彼が愛したメリルローズの偽物として送り込まれてきた存在。その彼女を愛してしまうのは、メリルローズへの裏切りになってしまうわけですし。彼にとっては辛い現状なんですよね。もしメリルローズの存在がなければ、ジルが本当の意味で王妃でも何の問題もないのだけれど、そもそもメリルローズの存在がなければジルが王妃としてルシードの前に現れる事もなかったわけで。
結局のところ、この二人が本当の意味で夫婦になれるには、メリルローズとの決着が必須となってくるんでしょう。
それに加え、ジルにはグリフォン、という心を占める男性がいることをルシードは知っているわけで。それが、ジルをいずれ自分から離れていく存在だと思い込んでる要因となって、彼が躊躇する鎖となっている。自分にとってのメリルローズ、ジルにとってのグリフォン。二重の鎖は、ルシードに二の足を踏ませる戒めとしては重すぎるくらいのものだ。

そのルシードだけど、前回で一気に単なる脳筋君主からいっぱしの王の器を示したわけですけど、やっぱり王としての存在感が増してます。
今までだったら、今回のケースだとジルが一人で対処しても、こんな風にルシードの不在を心細く思うようなことはなかったはず。ルシードは決して智者でも政治家として傑出した存在でもないけれど、居ると居ないとではジルの判断に迷いが生じるほどの重きを為すようになっている。
この辺は、ジルの女性としての感情を抜きにした、純粋な王としての重みに見える。成長したなあ、うんうん。

そのルシード不在の中での、オズマニア王子オースとジルとの剣を持たない戦争は、もう凄まじい見応え。こうしてみると、武力による戦争というのが単なる政治の延長の一手段に過ぎない、というのも納得の、言葉と言葉のギリギリの鬩ぎ合い。この手の国家間で手持ちのカードを切り合う外交戦は、やっぱり読んでて面白いったらありゃしない。並みの合戦よりも手に汗握る緊張感ですしね。
これでも、ある意味前哨戦。あくまで本番前の主導権争いですからね(それでも、場合によっては息の根止めにきてますけど)。実際、政争の本番となったらどうなることやら。

帰城が遅れているルシードの方も、意外な人物との出会いで面白いことになってるし。味方の少ないルシードだけど、ここで何とか身内が増えることになるんだろうか。
しかし、ほんとに女に見えんな、あの人。

プリンセスハーツ 乙女の涙は最強の武器!の巻5   

プリンセスハーツ 乙女の涙は最強の武器!の巻 (小学館ルルル文庫 た 1-4)

【プリンセスハーツ 乙女の涙は最強の武器!の巻】 高殿円/香代乃 小学館ルルル文庫



くわぁぁぁっ、キタ、キタキタキタ、これはキタ!

MARVELOUS!!

産休明けで育児も大変でしょうに、高殿先生、完全にギア入ってきました、これは。何気にルルル文庫最厚をぶっちぎったらしいし。
実に、実に読み応えのある政争劇!!

いやはや、今回のルシード陛下の成長ぶりには目を見張りましたよ。この野郎、王様で主人公格だというのに、これまでいわゆる<脳筋>でかなり頭使う作業についてはダメダメだったんですよね。
光栄シミュレーションゲームの数値でいうなら武力80以上、知力政治力30〜40、みたいなww
かといって人間的魅力にあふれてて、自然と他人を惹きつける君臨するタイプかというとそうでもなく、コンプレックスが強く野心家で、色々と心にひずみを抱えて容易に他人に心を開かない、わりと屈折したタイプなんですよね。
そのせいもあってか、味方がとにかくいない。政略的味方はそりゃいますけど、いざって時に心から信頼して頼りにできる相手がいない。
その数少ない仲間が、王妃であるジルと秘書官のマシアスだったわけですけど、当初はこの二人だってお互いの目的のためにお互いを利用し合うドライな関係だったわけです。
おまけに、男としても未熟者でジルに対しても何度も心無い言葉を投げつける始末(まあ、ジルと結婚するにいたった過程や関係、お互いの性格を鑑みるに仕方ない部分はあるんですが)。このルシードの女性に対する接し方の歪さは、今回さらりとジルが分析してたりしますけどww

そういう、わりと武張った不器用な王様だったルシードなのですが、ジルが感慨深く思うように、彼は今回の一件を通じて確かに草原の民を束ねる族長から、近代国家の国主として発想、着眼点、行動力の方向、我慢強さに腹芸と、べろりと一皮剥けた感があります。
政治の相談役であり知恵袋であるジルが、傍にいないという緊急事態であり、すべて彼が判断しなければならなかった、という状況があったにしろ、今回はルシード、ほんとに必死で頭使ってたもんなあ。
ただ、それが単にジルに頼れなかった状況が導きだしたものではなく、ジルを助けるため、さらにはジルを危険にさらし国家の危機を招いてしまった自分の王としての不甲斐なさへの憤りからきた覚醒だったのは、なんとも感慨深い。
これって、ジルが不要というのではなく、ジルが自分にとってかけがえのない存在だという思いが引き出したようなパワーだったわけでして。

しかし、クライマックスの緊迫感あふれる政争劇は二重三重に仕掛けられた罠といい、ギリギリの綱渡りの駆け引きといい、素晴らしかった。剣と剣のファンタジーも面白いけど、こういう歯応えのある政略戦・謀略戦、情報戦、頭脳と知略と機転がカチ遭い攻防優劣が二転三転する戦いも面白いったらありゃしない。
とはいえ、なかなかここまでガッチリ政争を書ける人はいないので、今回は大変満足でした。数ある高殿作品の中でも今回は屈指の攻防だったんではないでしょうか。
一方でルシードとジルを中心とする恋愛模様も今回のジルの危機を機会に一気にガツガツ進展したみたいだし。ルシード、あの言動を見る限りもうジルのこと十分意識してしまってるようですし。むしろ、恋愛感情への自覚のなさからいったらジルの方が遥かに鈍チンなのかも。
なんだよ、管理って!! (爆笑
ルシードずっこけるのも無理ないですよ。なに勝手に自分の感情理解した気になってスッキリしてるんですか!!
コイツ、ひどい女だ(笑

でも、この二人の関係が進展すればするほど、二人の間に前提として横たわっている爆弾が、威力を増していくんですよね。
元々は偽の夫婦。愛する女性の偽物として送り込まれてきたジルと愛情を育むことは、やがて本当の姫・メリルローズが登場することで個人間の関係も国家の政治体制にとっても致命的な爆弾として作用するわけで。
真打ち登場、メリルローズ……この人、なんか物凄くこえぇぇぇ!

プリンセスハーツ 両手の花には棘がある、の巻  

プリンセスハーツ 両手の花には棘がある、の巻 (小学館ルルル文庫 た 1-2)

【プリンセスハーツ 両手の花には刺がある、の巻】 高殿円/香代乃 小学館ルルル文庫


ちょっ、そこで終わるのか!? やられた。完全に前後篇じゃないですか。こんな場面で終わられたら、どれだけやきもきして待たないといけないんですか!!

それにしても、このプリンセスハーツのジルは、歴代の高殿円作品のヒロインの中でも一番可愛いんじゃないでしょうか。いや、可愛い。かわいすぎる(言い切る
自覚症状の無い嫉妬心が飽和しきった途端、やけ食いに走る鉄面王妃(笑
元々ルシードとは利害関係に割り切った共犯者に過ぎず、仲間ですらないという間柄に、双方ともが自分をはめ込んでますからねえ。それに片やルシードは戦場でこそ活き活きとする完全脳筋系で頭固いは依怙地だわ女心はさっぱりな上に、精神面は少年そのままの純朴さで繊細ですらあるという厄介な性格。片やジルの方も政治的辣腕や宮廷内の陰謀を未然に防いだり操ったりする狡知に長けてるくせに、根はお人好しで人の善意をあんまり疑わないわ、勉学ばっかりにかまけて年頃の女性としての振る舞いには疎いわ、感情の動かし方が不器用すぎるわ、男心はさっぱり理解してないわ、とてつもない厄介な性格をしているわけで。
そんな二人じゃ、うまくいくものもいかないですわな(笑
その上、ルシードが本当に愛しているのは、ジルと全く同じ容姿をしたメリルローズなわけで。ルシードがジルに抱き始めている感情がどういうものなのか、分からないほど鈍くて不器用というのもあるんでしょうけど、それ以上に非常に認めがたいものがある、というのもわかるんですよね。
だから、ルシードがジルに辛辣にあたったり、逆に気を遣ったりと支離滅裂な対応をしてしまうのもわかるし、傍目には自分が愛妾の方に靡いてることにジルが表面的にまったく反応を見せないことに拗ねる姿も、まあ可愛いんですよね(苦笑
いや、ジル嫉妬してるから。めちゃめちゃ機嫌悪くしてるからw
破滅的なのは、そうした自分の感情にジルが事態が致命的な展開を迎えるまでまったく気がついていないあたりですけど。

でも、この二人にマシアスを加えた三人の同盟関係は非常に興味深いですね。パルメニアを滅ぼすために結んだ手。余人には知られてはいけない秘密を共有した共犯関係。で、あるからこそ逆に言えば本心から相手に気を許してはいけない関係、という形になってしまっているところとか。
ルシードも、ジルも、おそらくマシアスも、お互いを建前の関係以上に信頼し、親愛を感じて、できうるならばもっと近しい関係になって欲しいと思っているにも関わらず、それぞれが抱えた闇と秘密、そして互いに規定してしまった関係と念願叶えばそれぞれ違う道を行くはずという未来が、お互いの距離を近づけるのを阻んでいる。
何もかもを取っ払ってしまったら、きっと彼らはとても近しい距離にいるはずなのに、実際はそれぞれ孤独感を募らせ、罪悪感を抱きながら、それを抑え込むだけの決意や決心に突き動かされている。
まったく複雑怪奇な関係で、雁字搦めで容易なことでは解けないようなものになってしまっているわけですけど、やはり突破口となるのはメリルローズの真実と、ルシードとジルの間に芽生えつつある恋心となるんでしょうか。

なんにせよ、あんなところで終わられたら気になって仕方ないじゃないですか。続きをはやく、はやくーー!!

カミングアウト!  

カミングアウト!

【カミングアウト!】 高殿円


【パルメニア】シリーズや【銃姫】の高殿円さんの現代劇。そういえばこの人が現代の話を書くのは初めてかしら。といってもこの本は一般文芸っぽいのでライトノベルの系統からは少し外れている気がするけど。
しかし、この人はさりげなくて気がつきにくいんだけど、作品のジャンルによって書き方変えてるっぽいんですよね。どれを読んでも高殿円の作品にも関わらず、少女系レーベルから出てるパルメニアシリーズと、少年系からの銃姫とじゃ筆致の立地点がそれぞれに合わせて変わってきてる。これを意識してやってるならすごく器用だと思うし、無意識ならセンスがずば抜けてるってことなのか。
というわけで、この【カミングアウト!】は一般文芸という立ち位置から、これまでとはかなりまた違った書き方になっている。
だけど、やっぱりどうしようもなく高殿円! な作品で。

すっごく面白かったーー!

買ってから長らく部屋の魔窟の中に沈んでて、先日部屋をひっくり返した際に湧き出てきたものだから、これを逃せばまた読む機会が遠ざかるとばかりに、仕事場に持って行って昼休みなんかに暇を見て読んでたんだけど。

面白かったー!

初っ端から、援助交際にどっぷり浸かった女子高生が主人公の話が来て、内容もドロドロとして、こりゃあ鬱々とした話になるのかなあというのが第一印象。その後も、29歳というがけっぷちの年齢の上に、人様にはあまり知られたくない秘密の趣味を持ったOLの話とか、セックスレスに悩む専業主婦とかの話がきて、読んでるこっちの気分も重くなってきたところで、
最初の女子高生の話と直接つながる、婚期を逃し、孤独を噛みしめる独身男性の話に及んだところで、「おっ!?」と思わせる風向きの変化が。
そして、横暴な夫に三行半を突き付けるべく十年の長きにわたって準備をしてきた老夫人の話に至ったところで明確に話の雰囲気が激変。
ここから一気に、それぞれの話が収束。
社会的な常識、しがらみや固定観念に囚われ、縛られ、雁字搦めになっていた彼ら登場人物たちが、自分たちを不安や焦りに陥れていたもの、縛り付けていたものの正体に気づいたとき、内なる衝動に突き動かされるように、それまでため込んできたものを爆発させる。

カミングアウト! なるほど、こりゃあ素晴らしいタイトルだ。
もう読んでてスカッとした。痛快にして爽快!!
前半のストレスを溜める構成からの、一気の解放。読み終わったあとの清涼感。あれだけ重々しい曇り空だったような雰囲気が、隅々まで青く晴れ渡ったような青空のごとき結末に。
これぞまさしくハッピーエンド。それは単なる開き直りだったり勘違いだったりするのかもしれないけど、でも思いきり、正面から向き合い立ち向かうことはきっと大切なことなんでしょうねえ。
これに出てきた現代に生きる主人公たちに幸有らんことを。

個人的には、「骨が水になるとき」の主人公。サラリーマンの臣司が一番好き。すみません、私も男なんで、無性に…ね?(笑
まさか幸実との話が彼の話とつながることでこういう形になるとは、予想もしてなかったんで。ああいうエンド、大好きなんですよ、ええ。

プリンセスハーツ 麗しの仮面夫婦の巻  

プリンセスハーツ 麗しの仮面夫婦の巻

【プリンセスハーツ 麗しの仮面夫婦の巻】 高殿円/香代乃 小学館ルルル文庫
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し、しまったーー! これ、パルメニアシリーズだったのか! ある程度、公式サイトの紹介文とかは見てましたけど、詳細に調べてはいなかったので読み始めるまで気がつかなかった。
というか、これはいつの時代なんだ? パルメニア王家の家系図が掲載されてた本があったはずなんだけど、どれだか思い出せない。遠征王と秘密の花園だっけか。もし思い出しても、魔窟から発掘できるかどうか。
ちょいとウェブ上で調べたら、作品中のパルメニア王ゾルターク?世はミルドレッドの甥っ子で、アイオリアの曾祖父に当たる人物であるらしい。
ということは【そのとき】シリーズと【遠征王】シリーズの間にあたるのか。
しかし、こんなところで何をやってるんだミゼリコルドは(汗

というわけで、新レーベル、ルルル文庫における高殿円氏の新作はパルメニアシリーズの新作でした。世界観はガッチリ固まってるし、構想もおそらく古くから組み立てていた話の一つなのだろうから、ある意味、手堅いなあ。
ところで、この作品中にゲルマリックという言葉が幾度も出てくるのだけれど、パルメニアシリーズって【銃姫】とも繋がってるんでしたっけか。そこらへん、以前別の作品のどっかで描写あったっけ。あったような気もするんだけど。

これは良い高殿円。
この人は、マグダミリアといい、遠征王といい、そのときといい、宮廷内の陰謀劇に個々人の鬱屈した感情や狂気を絡めた話を作ると、物凄くエッジの利いた歯応えのある作品になるんですよねえ。
少年時代、嫡子にも関わらず両親に疎まれ、保護国であるパルメニアに人質として送られていたアジェンセン公国公子ルシード。そこで彼は第一王女メリルローズと恋に落ちる。国に戻り、内乱を起こして父王と母を倒し、弟を幽閉して大公となったルシードは、国王の失政で国力の凋落著しいパルメニアから、メリルローズを娶ることに成功するのだが、パルメニアが送ってきたメリルローズは偽者で……。

というわけで、偽メリルローズとして輿入れしてきたそっくりさん、高級娼婦の娘ジルとルシードの仮面夫婦生活のはじまりはじまり。
いや、これは面白かった。
まずは第一巻ということで、二人のキャラクターとお互いの関係、彼ら二人を中心としたアジェンセン公国の内情と、パルメニアとの微妙な関係、といったところに焦点を当てた話になっている。
でも、どうしてジルが偽メリルローズとして送られてきたのか。ジルの本当の目的。ルシードとジルと腹心マシアス、この三人の間に結ばれた盟約の詳しい事情。ジルがどうしてミゼリコルドと契約しているのか。ルシードが内乱を起こした本当の事情と、幽閉している弟との見えてこない関係。本物のメリルローズは、今どうしているのか。とにかく、伏せられているカードがやたらと多く、それが意外と効果的に機能しているような気がする。
いやーーーーー、どうにも黒幕はあの人にしか思えないんだけど。動機はまだあっちの事情も皆無に近いのでさっぱりわからないのだけれど。
なんか、遠征王でアイオリアがものすげー酷い目にあってるという前科もあるわけで、ルシード、かわいそうなことにならなきゃいいけど。

思いの他、ジルの内面が天然系入ってて……妙に気に入ってしまった、この娘。鉄面皮でクールで理知的で冷徹。悪魔的な才知をもって、短気で単純でわがままでお人よしなルシードを国政面から支えているのだけど、中身はわりと普通の少女……なようでやっぱりちょっとどっかズレてるな、これはw
でも、想定外の事態には頭真っ白になってしまったり、自分の感情面については致命的なくらいに鈍かったり、心を読むといわれるほど人間観察に長けているくせに、一番近いところにいるルシードについてはわかっているようで、理解しきれない部分があって混乱したりと。
まあ、よく見ると可愛らしい女の子そのままじゃないですか(笑
とはいえ、国政に対しての手練手管は、可愛らしい女そのまま、なんて悠長なことを言えない酷薄さなんですけど。怒ったときも。

ルシードもいい意味でバカな頑固者だし、この二人の関係は見ててニヤニヤしてしまいます。
でも、あんまり酷いことを言ってやるなよ、ルシードよ。大人げないぞ、ガキか、君は。甘え方が下手くそなのは、両親に愛されなかったからなのだろうけど。子供時代を一緒に過ごした本物のメリルローズならともかく、ジルにその態度はちょっと酷だぞ。

今回の事件の黒幕については、最後の方まで予想してなかったので、ちょい愕然。てっきり、レギュラーとしてこのシリーズを引っ張っていってくれるキャラの一人になると思っていたので、わりとショックかも。
そして、あの悲痛な独白も。
悲劇におけるこの迸るような悲痛さの描写は、ほんと上手いなあ。

余談だけど、私は高殿さんの惚けたギャグ調の描写も、けっこう好きですw

カーリー  

カーリー ~二十一発の祝砲とプリンセスの休日~
【カーリー 二十一発の祝砲とプリンセスの休日】 高殿円

こらこらこらこらこらこらっ!
と、思わず待ったを掛けたくなるくらいに、女生徒に化けてルームメイトで親友であるという立場を利用しまくってシャーロットにちょっかいかけまくり、独りで悦に浸ってる王子さま。
この変態えろ助!!
この王子、遠征王ばりの変態入ってるぞ(w

というわけで、自分の正体が知られていないのを利用してシャーロットから好きな男性のタイプを聞き出して、背が高いのが好きと知った途端、憑かれたように牛乳・小魚・卵に執着しだしたり、ヒンドゥー語の勉強と称して、意味のわかっていないままのシャーロットに自分への愛の告白を復唱させて恍惚となったりと、なんだかどうしようもない王子様。凄まじく低レベルな王子。おまえ、キャラ変わってるぞ。完全無欠の大人びた女生徒皆の憧れのカーリーはどこへいった。英国情報部をも翻弄するキレモノのアムリーシュ王子はどこへいった。
こいつ、シャーロットの前だとただのバカだ(w

と、若干酩酊しそうなエピソードを挟みつつ、第二次世界大戦の勃発したこの時代のインド亞大陸は、欧州の戦況から徐々に情勢の不安定化が増していく。暗躍する英国諜報部、インド有数の藩王国の王女パティの少女としての想いと、王族としての誇りは、裏返しのようにシャーロットを愛するアムリーシュ王子の置かれた立場への葛藤を浮き彫りにする。
切ないなあ。

次回は作中四年後ということだけれど、シャーロットはどうなってるんだろう。どうにも運命は有無を言わさず彼女を英国情報部のエージェントへと押しやろうとしているように見える。そうなると、やっぱり悲恋だよなあ。と、それ以前にこの二人、血の繋がった兄妹だったっけ。どうなるんだろう。続き、でますよね? 打ち切り反対!

や、しかしシャーロットはカワイイなあ。
 
10月22日

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10月21日

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10月20日

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10月7日

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10月6日

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10月5日

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10月4日

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10月1日

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9月25日

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9月22日

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