魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate (GA文庫)

【魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate】 西乃 リョウ/藤ちょこ GA文庫

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神は、二人のささやか過ぎる願いすら赦さない――

これは、正邪を超えて運命に抗う、少女の物語。
これは、人であることを棄てて英雄に挑んだ、少年の物語。

「弱くてもいい。あなたがいいの」
ウィズにはわからなかった。偶然出会っただけの少女アローンがなぜ自分を慕うのか。彼は凡夫で、秀でた才能もない二流の傭兵。遠い故郷を目指すアローンの護衛役にはふさわしくない、そう思っていたが……。

「……同じだったから。あなたもわたしも同じ……選ばれなかった人間」
少女が告げる言葉の意味、そして待ち受ける残酷な運命を知ったとき――ウィズは決意する。守りたい……守ってみせる。たとえかつての親友、救世の英雄を敵に回しても――

これは『選ばれなかった少年』と『見放された少女』が紡ぐ、誰も知らない“世界の裏”の英雄譚。第9回GA文庫大賞<優秀賞>作品。
英雄のアルルクル、てっきりヒロイン枠だと思ってたら男の子だったのか。いや、見た目完全に女の子だし、作中でも見た目女の子っぽいと表現されてるし、実は女の子の幼馴染かと思ってたのにそんな事はなかったぜ。ただこの子のウィズへの依存心がパなくてねえ。それが、強くなれないウィズ自身を追い詰めていく事にもなるんだけれど、アルルクルの精神的な弱さへと繋がっていたように思われる。普遍的な正義感の持ち主であり野心もなく、ただ弱きを助ける博愛と、大いなる魔を討つ勇気を持つという意味で本当にまっとうな英雄なんだけれど、それだけに残酷な選択を迫られたときの決断というものに直面したことがなかったんだなあ。ある意味可哀想である。仲間の女性たちに決断するという機会を、判断するという時間を、問題を認識するという状況さえ奪われていたわけですしね。甘やかされていた、とも言えるのだろうけれど。
一方でウィズの方は、アルルクルが運命に選ばれたのを目の当たりにしたその日から、常に選択を迫られ続けてきた。無力感に苛まれ続けてきた。それだけずっとゴリゴリと大切なものを削られ続けていたからこそ、選んだ選択が先鋭化しすぎていたような気もするのだけれど。そのような有り様になりつつも、自分自身の価値を大暴落させていたとしても、咄嗟に自分よりも見ず知らずの少女の安全を優先して守ろうとするところとか、根本的なところの英雄性はアルルクルよりもウィズの方が深いところに根ざしていたのではないだろうか。まあその英雄性が行き着く所まで行ってしまった上にアローンへの共感も相まって、ああなってしまったのだろうけれど。
でもあれはあれで、ウィズによってアルルクルが選ばれず見放されてしまった、とも言えるので一番欲していたものに捨てられたアルルクルが可哀想な部分が大きいんですよねえ。
そして、始まった時には終わっていて、だからこそはじめからすべてを決断してしまっていたアローン。そんな彼女にとって、苦悩し彷徨いながらも、無力でありながらも自分のような娘を見捨てず見放さない彼は救いだったのでしょう。その縋り付くような最期の甘えが、彼を道連れにしてしまったのを責めるのは、さすがに可哀想だよなあ。怖くないはずがないのだ。どれほど覚悟を決めていても恐ろしくないはずはないのだ。だからこそ、自分の最後の拠り所である「心」を守ってくれる存在にまだ子供である彼女が手を伸ばしてしまうことが果たして悪しきことなんだろうか。
アローンの目的が、彼女の聡さと自身の末路への覚悟に対してよくわからなかったんだけれど、はっきり言って壮絶なものだったからなあ。尚更に、独りで頑張り続けることに耐えられなかったことに共感を覚えてしまう。
ある意味、このまま悲劇で終わることこそ相応しい物語だったのかもしれないけれど、そこから希望を手繰り寄せようという決意があるのなら、二人で頑張るといい。二人でなら、頑張れる。