魔女と猟犬

魔女と猟犬 4 ★★★★   



【魔女と猟犬 4】  カミツキレイニー/LAM ガガガ文庫

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4年前に処刑された”お菓子の魔女”争奪戦

“首飾りの森”近くの村エイドルホルンで、魔女災害が発生。

4年前にこの村で捕らえられ処刑された“お菓子の魔女”が復活したのだという。その真偽を調査すべく王国アメリアより異端尋問官のカルル、アビゲイル、ザミオ、そして見習い尋問官のエイミーと、その冒険譚を記録すべく宮廷詩人のリオ・ロンドが村へと派遣される。

だが村ではすでに、魔女集めを行っているという“キャンパスフェローの猟犬”と、“鏡の魔女“と思しき人物の姿が目撃されていた。その情報が本当なら、彼らに先を越されて”お菓子の魔女“を奪われることはなんとしても避けねばならないと躍起になるカルルたち異端尋問官。

そんな彼らをよそに、宮廷詩人のリオは見習い異端尋問間のエイミーとともに、村人たちの証言から独自に“お菓子の魔女”へと迫っていく。やがて二人は驚くべき真実に行き当たる……。

そして異端尋問官たち一行は、魔女の潜むという“お菓子の家”がある森へと足を踏み入れる。この先に、彼らの想像を絶する驚愕の事態が待ち受けるとも知らずにーー。

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魔女と猟犬 3 ★★★☆  



【魔女と猟犬 3】  カミツキレイニー/LAM ガガガ文庫

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“鏡の魔女”テレサリサと“雪の魔女”ファンネルは、キャンパスフェローの女騎士ヴィクトリアと共に船に乗り、大陸を南下していた。
そして、彼女たちの傍らには、九使徒の一人・召喚師ココルコとの死闘で酷い重傷を負ったままファンネルの魔法で凍らせた黒犬ロロの身体――。

一行が向かっているのは共和国イナテラの<港町サウロ>。大陸最南端の町だ。
そこには、とある人魚のおとぎ話が伝わっている。大切なものと引き換えに、どんな願いも叶えてくれる“海の魔女”が登場するのはその物語だ。
“海の魔女”には、死にかけた男を蘇らせたという逸話もあった。
肉体に何らかの変化を作用させる魔法の使い手なら、ロロの重傷を癒し、瀕死の状態から復活させることができるかもしれない。
だが、“海の魔女”は、イナテラ海で名を馳せる海賊の一人だ。
海を行き来する貿易商人や探検家たちにとって彼女はまさに海の厄災。話が通じるかどうかもわからない相手だった……。
一方、王国アメリアもまた“鏡の魔女”たちが船で南下中との報告を受け、九使徒たちが行動を開始していた。
「このライトノベルがすごい!2022」にもランクインした、超人気ダークファンタジー第3弾!


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魔女と猟犬 2 ★★★★   



【魔女と猟犬 2】  カミツキレイニー/LAM ガガガ文庫

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静寂に包まれた“氷の城”で巻き起こる殺戮

“鏡の魔女”テレサリサと共にレーヴェを脱出したロロは、魔力の影響で眠り続けるデリリウムを連れてキャンパスフェローへと戻ってくる。だが、王国アメリアによって陥落された故郷は、流血と破壊に蹂躙され見る影もなかった……。

ロロとテレサリサは城下町に作られた隠れ処にて、城から逃げ延びた者たちと合流する。領主バド・グレースの留守を預かる宰相ブラッセリ―と、<鉄火の騎士団>の副団長であり、ハートランドの妻であるヴィクトリアをはじめとする九十二名の者たち。

彼らは隠れ処を捨て、<北の国>へ向かうことを決断する。そこには、バドが生前に同盟を結んだ雪王ホーリオが治める<入り江の集落ギオ>がある。きっと助けになってくれるはずとの目算からだった。そして、ロロには<北の国>へ行くもうひとつの目的があった。それは、氷の城に住むという“雪の魔女”を味方につけること――。

その頃、王国アメリアの王都にあるルーシー教の総本山“ティンクル大聖堂”には、魔術師の最高位を冠する九人の者――“九使徒”が集められていた。

これはッ、マジかーー!
いやあ、これは驚いた、マジかロロよ。一巻のあの怒涛すぎる展開もあまりにも予想外で驚愕させられたけれど、今回のそれも常道からは大いに外れていって、まさかそんな事に!? と、唸らされる事になってしまった。
容赦ないと言えば容赦全然ないよなあ。というよりも、主人公であるロロに優しくないというべきか、或いはロロにとって彼に背負わされてしまったものが重すぎた、という事なのかもしれない。
当代黒犬。殺す覚悟を決めた彼の実力は、それこそ比類なきものなのは疑いようもありません。アメリアに対抗するために魔女を集める旅ですが、ぶっちゃけ黒犬ロロはその魔女に引けを取らない「戦力」でもあるんですよね。魔法という未知すぎる力に惑わされ苦境に立たされますけれど、テレサリサが丁寧に魔法について講義してくれたお陰で、何もわからない意味不明の存在ではなく、ちゃんと戦う前から相手を考察する余地ができた。それは黒犬にとってゼロからとてつもないアドバンテージを得たも同然のことで、歴戦に魔術師を相手にしても一方的にやられてしまう可能性は大いに減じたのではないだろうか。
とはいえ、九使徒に連なるアメリアの魔術師たちは、謎多く対峙して相手の必殺を躱しながらその正体を見極めなければならないというハードルの高さなのですが。
突然、首が90度捻られる、とか完全に初見殺しじゃないですかー、怖いなんてもんじゃねえ。ホラー映画かよ。
そういうのを相手に出来るだけでも、化け物じみた戦力なんですよね、黒犬。
でも、戦闘力が高いこととロロという人間が強いことは、また別の話だったんですよね。真面目で責任感が強く、忠誠心も高く……それでもまだ十代の幼さが拭いきれない若者だったのだ、このロロという少年は。
そんな彼に、王の遺命が背負わされた。王が殺され使節団は全滅し、生き残った姫も目を覚まさず、それでもなお姫を守り、魔女を集めろ、という王の遺命に従い、アメリアの追手と戦いながら蹂躙された故郷を後に戦い続ける日々。
そんな素振り、一切見せていなかったけれど、見せていなかったことこそがロロがどれだけ張り詰めきり、限界に達していたかの証左だったのか。
我武者羅に必死に限界を踏み越えて頑張り続け……でもその重さに苦しさに辛さに、どこかで楽になりたいという願望が鈴を鳴らし続けていたのだ。
稀代の暗殺者、その後継であろうとも。この子は思いの外、普通の子だったのだ、きっと。

テレサリサにとっては、これはしごを外されたようなものなんだろうか。でも、ロロが本当はもう疲れ切り心折れて死にたがっていた事に気づいたテレサリサは、そのまま彼を死なせてあげたほうがいいんじゃないだろうか、と思ってしまうんですよね。そう考えてしまうところが、この魔女の優しさなんでしょうね。
それでも、彼女は雪の魔女ファンネルと共に彼の生命をつなぐことになる。それは、ロロがテレサリサの目的に必要な人間である、ということも理由なのだろうけれど。
それ以上の想いも、ロロに抱きつつあるのだろうか。ファンネルもそうだけれど、ロロへの「よすが」が感じられるんですよね。そこまで深く心交わらせるような関係はまだ無いはずなのだけれど、魔女となり人との交わりを絶たれていたテレサリサにとって、ファンネルにとって、ロロは魔女を恐れず怯えず人として接してくれた数少ない一人。それが使命ゆえであったとしても、ロロは常に誠実だった。そんな彼によすがを感じてしまう。心を幾ばくかでも寄せてしまう。それは、とても人間らしい情動なんじゃないだろうか。

魔女とはなんなのか。
同じ人と隔絶した存在として、アメリアの九使徒たちがいるけれど、あれらは本当に不気味で人として完全にハズレきってしまっているのがよくわかるんですよね。異常者たちであり異端であり、人の心を感じさせない、或いは人としての心を修復不可能なまでに歪めてしまっているかのような、異なる者ども。
それに比べて魔女たちは……その心根が人としてあまりに情深かったが故に魔女になった、そんな存在にも見えるんですよね。あまりにも人らしいからこそ人でなくなってしまった者たち。
その壮絶さは、美しさとなって容貌に映し出されている。表紙絵に描かれた一巻のテレサリサ、この二巻のファンネル。ともに、目に焼き付くような強烈な存在感であり、息を呑むような凄絶なまでの美しさだ。
そこに垣間見えるのは、一心不乱の生き様か。
こうして読み終えてみると、タイトルの魔女と猟犬というそれがすごくしっくり来る。確かに、この物語は魔女と猟犬が主人公の物語だ。彼と彼女らの切々とした在り方を書き記した物語だ。

個人的には、あの雪の国の姉と弟には、もう一歩踏み込んだ再会が欲しかった。別れも、再会も、弟はついに姉と向き合うことが出来ないままだったのだから。姉は、弱虫だからべつにいい、と言うのかもしれないけれど。この姉弟のお互いに対して抱いているだろう複雑な情念を、ぶつけることも交わすこともなく、通り過ぎていってしまったから。願わくば、もう一度何らかの形で再会と決着があれば、と思わずにいられない。

そして、まさかのカプチノ一人旅。しぶとい、このメイドしぶとい!


魔女と猟犬 ★★★★   



【魔女と猟犬】 カミツキレイニー/LAM   ガガガ文庫

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使命は、厄災の魔女たちを味方につけること

農園と鍛冶で栄える小国キャンパスフェロー。そこに暮らす人々は貧しくとも心豊かに暮らしていた。だが、その小国に侵略の戦火が迫りつつあった。闘争と魔法の王国アメリアは、女王アメリアの指揮のもと、多くの魔術師を独占し超常の力をもって領土を拡大し続けていたのだ。
このままではキャンパスフェローは滅びてしまう。そこで領主のバド・グレースは起死回生の奇策に出る。それは、大陸全土に散らばる凶悪な魔女たちを集め、王国アメリアに対抗するというものだった――。
時を同じくして、キャンパスフェローの隣国である騎士の国レーヴェにて“鏡の魔女”が拘束されたとの報せが入る。レーヴェの王を誘惑し、王妃の座に就こうとしていた魔女が婚礼の日にその正体を暴かれ、参列者たちを虐殺したのだという。
領主のバドは “鏡の魔女”の身柄を譲り受けるべく、従者たちを引き連れてレーヴェへと旅立つ。その一行の中に、ロロはいた。通称“黒犬”と呼ばれる彼は、ありとあらゆる殺しの技術を叩き込まれ、キャンパスフェローの暗殺者として育てられた少年だった……。
まだ誰も見たことのない、壮大かつ凶悪なダークファンタジーがその幕を開ける。

初っ端からハードモードすぎる!
いや、ハードモードを攻略するために魔女を集めようとしたら、結局ルナティックモードに入ってしまった、というべきか。
最初から実は詰んでいたのを、現実のものとして突きつけられたというべきか。
表紙の魔女は、明らかに見るからに見た目からして危険極まりない危険人物である。そもそも話が通じるかどうかも怪しい風貌をしている、正気とは思えない目をしている、まともな言葉を弄するのかも信じられない舌をしている。
こんなのを、味方につけるという時点で困難は予想されていた。実際、この魔女を集めて対アメリア王国の決戦戦力とする、という領主バドの案は臣下からも多くの反対を受けていたのをバドが押し切った形となる。
或いは、表紙の魔女はそのまま世間のイメージを具象化したものだったのかもしれない。人々にとって、噂される魔女とはまさにこのような見てくれの、狂気の、魔性の存在だったのだ。
しかし、バドだけはそうは見ていなかった。魔女を評判通りの邪悪で人心を持たぬイカレた魔物だとは思わなかった。
集めた直接魔女を見聞きして実際に目の当たりにした人の証言を聞き、その評判通りの残虐な行動の中に彼だけが違う真実を見出していた。
そういう人だったのだ、バド・グレースという人は。

隣国騎士の国レーヴェにて捕らわれたという鏡の魔女を、交渉で引き取るために領主バド自らとキャンパスフェローの重鎮たちと騎士団精鋭を引き連れて向かう使節団の中に、彼は居た。
通称【黒犬】。代々キャンパスフェローに仕える暗殺者の一族。その当代ロロ・デュベルである。
代々語り継がれる【黒犬】の威名は諸外国まで響き、国内でも畏怖される血まみれの血族。冷酷非情の殺し屋一族の結晶たる魔刃。そうした風評、評判を背に、彼は一族の長としてバドとその一族に仕えている。
彼が背負うのもまた評判だ。口さがない者たちが語るうわさ話であり、独り歩きしている詩である。バドが特にお気に入りとして傍に置き、遇しているのロロの真実はまた違う。バドが彼を好み可愛がっている理由こそ、彼が備える真実だ。
バドが持っていたのは、そういう評判に惑わされない人の真実を見極める目だったのだろう。善き部分を見逃さない目だったのだろう。
そういう人だったのだ。
だからこそ、彼は多くの人の支持を集め、尊敬を勝ち得、忠誠を捧げられていた。
思えば、レーヴェ王もまたそうだったのだろう。彼もまた、目の前の真実を見逃さない人だった。人を人のまま愛せる人だった。
こういう人たちだからこそ、逆に人の「悪意」や秘められた「邪」を見抜けなかったのかもしれない。

レーヴェへと赴いたバドたちは、そこで魔女とされる女性のよる結婚式での国王以下列席した国の重鎮たちの虐殺事件の決着と次期国王を巡る混乱に巻き込まれる。
そこで直面するのは、魔女を処刑せよという世論の要求に対して、事前の交渉どおりに魔女が引き渡されるか、という問題であり、虐殺事件に際して行方不明になっているレーヴェ王国の姫スノーホワイトの行方であり、魔女とされる虐殺事件の犯人、新たな王妃となるはずだったテリサリサは果たして本物の魔女なのか、という問題だった。
そして何より、虐殺事件の真相が話が進むにつれてどんどんと曖昧模糊となっていく。
物語は、サスペンス・ミステリーの様相を呈していく。
はたして、虐殺事件は本当に魔女の仕業だったのか。犯人は王妃なのか。これは、実はクーデターではなかったのか。
そもそも、本当の魔女は誰なのか。

バドの命で影に潜み、囚われている王妃テレサリサに接触し、またスノーホワイトの探索を行ってたロロは、徐々にこの国を覆う悪意へとたどり着いていく。
影に覆われた真実を、一つ一つ紐解いていく。
そうして、何もかもが最初から詰んでいたという最悪の真実に気づいたときには、すべてが手遅れであり、しかし最後の希望だけは辛うじてつま先に引っ掛けることが出来た。

魔女は居たのだ。

これ、本当に何もかもを取りこぼしていく、全部が無残に崩れ去っていくクライマックスの展開は辛かった。ロロは黒犬の名に相応しい辣腕だったけれど一線をまだ越えられない甘さを抱えた子であったし、何より作中屈指の凄腕である事は事実でも、何もかもを単騎で覆せるような無双の騎士、みたいな無敵キャラとは程遠く、そして何よりその時その場に居られなかった以上、彼の腕前は何の意味もなさなかったんですよね。いや、無意味ではなかった。ハートランド団長をはじめとしたキャンパスフェローの意地を、そのまま潰えさせずに希望を持ち帰ることが出来たのだから。
ハートランド隊長は、まさに騎士の鑑でござった。
一度は助けたカプチノを、一緒に連れていけなかったというだけでも、彼らがあまりにもギリギリだった事が伝わってくる。あの子、どうなるんだろう。

この作品に出てくる魔女のモチーフはどうやら童話に出てくる魔女たちらしい。この鏡の魔女はまさに「白雪姫」に出てくる真実の鏡を操る王妃様だ。もっとも、話の内容は白雪姫とは何の関係もない波乱の様相を呈するのだけれど。スノーホワイトと王妃様の関係も全然違ってきているし、獅子王と彼に見初められたメイドの愛の物語は、多くの人々に祝福されるはずのものだった。
童話とは異なる悲劇が、これからも繰り返されるのか。それとも、悲劇をねじ伏せる結集された魔女たちのワルプルギスがはじまるのか。
ともあれ、タイトルの【魔女と猟犬】。そして表紙絵から受けるタイトルへのダークな印象は、読み終えたあと見事に反転しているだろう。
これは魔女と猟犬という人ならざる化け物の物語ではない。託された希望を胸に、どうしようもない絶望と理不尽に敢然と抗う、真っ向から立ち向かう「人間たち」の物語だ。

カミツキレイニー・作品感想

 

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