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魔王2099

魔王2099 2.電脳魔導都市・秋葉原 ★★★★   



【魔王2099 2.電脳魔導都市・秋葉原】  紫 大悟/クレタ 富士見ファンタジア文庫

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伝説の魔王――奇怪なる進化を極めた“秋葉原”に君臨する!

秋葉原市。革新的な発展を続ける“電気街”と古き伝統を重んじる“魔法街”が対立構造を呈する未来都市に、魔王・ベルトールは降臨した……超名門学園への留学生として。新たな舞台を駆ける、未来の魔王譚第二幕!

魔王ベルトールさま、ゲーム実況動画の配信者を生業としてしまったために、頭ゲーム脳になっちゃってるよ!
前回で電脳ジャックして顔と名前を売りまくったお陰もあって、登録者も増えまくってるのか。300万というのが多いのかどうなのかわからないけれど、金銭的な収入的にも魔王信者として魔力供給源としても、この数は生活の余裕に繋がるには十分なのだろう。
そろそろ、マキナのヒモからは脱出できたんでしょうか。というか、マキナも不死者という身分証明が出来ない立場なのでフリーターという不安定な職にしかつけなくて結構カツカツだったのですから、逆に養うくらいの甲斐性を魔王様には見せてほしい所です。
というわけで、目下の目標は行方不明の魔王軍大幹部七魔侯の面々の行方を探すために、魔侯の現在の状況がわかるという散逸している魔侯録の確保。その一つが秋葉原にある魔法学校の宝物庫に収められているということで、物語はいざ異世界魔法学園編へ!
ベルトールって見た目の年齢二十代前半くらいかと考えてたんだけど、学生でもいけるの!?
教師枠とかいう変化球ではなく、直球で転校生としてマキナと高橋を引き連れて秋葉原の名門魔法学園へと乗り込むベルトールたち。魔力計ふっとばしたり因縁つけてきた貴族っぽいのをふっ飛ばしたりと、ノリが完全に転生モノの異世界学園無双なんですけど!
そこで出会うは秋葉原御三家の一角の跡継ぎにして、没落した貴族家のご令嬢。これでお家復興のために意気軒昂、というのならそのまま転生学園モノのパターンなのだけれど、彼女山田=レイナード・緋月はどちらかというと落ちぶれ自身も落ちこぼれ、本来は快活活発な人柄なのだろうけれど、諦観と周囲からの悪意に心へし折れている状態で、鬱々と日々を過ごしている娘さんなんですよね。
それがベルトールに目をつけられたことによって、散々振り回されるうちに鬱屈を無理やり振り払われ仄かに楽しくなってきて、心に明るさを取り戻していく。
こちらはどこか乙女ゲーのようなノリなんですよね。
緋月って娘は同世代からは孤立して疎まれ見下されているし、両親は秋葉原という地をめぐる政治的なゴタゴタのせいで亡くなり、家自身も没落してしまったものの、緋月自身は御三家のうちの二家の当主の二人から目をかけられ、可愛がられているんですよね。
ありそうな展開として下心ありの付き合いだろう、親身になっているふりをして緋月が持っていると思しきレガリアを狙っているんだろう、と思いきや、このゴブリンの大親分とフルサイボーグ化したエルフの学園理事長という二人、本当に心から緋月の事を実の娘のように可愛がって心配して世話して面倒みようとしてたんですよね。
だからこそ、余計に悲劇的になるのですが。
緋月も自分に注がれている愛情をちゃんと知っていただけに、心折れて鬱屈を抱えてしまっていてもそこから歪まず僻まず屈折せずにじっと耐えていられたんでしょうなあ。
ある意味、その愛情こそがしがらみとなっていたのかもしれませんけれど、彼女にとっては二人からの愛情は救いであり支えであったのは間違いないはず。両親が遺してくれた愛情と指針だけでは、思春期の娘さんが我慢できるものではなかったでしょうから。

しかし、ここから「学校に突然テロリストの集団がー!」という定番のアクションサスペンスまで盛り込んでくるとは。
1巻でもファンタジーにSFをごたまぜにした挙げ句にサイバーパンク、というやりたい放題な詰め合わせでもって作品自体を賑わせた本作ですけれど、2巻をまったく同じ基盤に乗っけたまま先にすすめるのではなくて、こうやって違う種類の山盛り詰め合わせのやりたい放題で来るとは思いませんでした。
このカオスを、しかし魔王ベルトールのキャラは易易と波乗りこなすんですよねえ。魔王さま、常にノリノリである。どんなウェーブが襲ってきても、全部ベルトールの世界にしてしまうんだよなあ。そこんところ、存在強度がやたらとつよいです。どんな波が来ても、ノリノリで楽しそうに乗りこなして我が物にしてしまう。おかげで、ひたすら面白い。
それにこの人、魔王と名乗っているけれど覇道の人ではなく王道の人なんですよねえ。信義にあふれた義侠の人ではなかろうか。好漢でありカリスマでもある。そりゃ、周りに人も集まりますわ。この男に任せた、と言われる事が何よりの喜びになってしまう。何気に人を乗せるのもうまいですしねえ。
ともあれ、あの裏切り者マルキュスも所属していたという組織の暗躍が発覚して、黒幕の存在がにわかに浮き上がってきました。
魔侯たちの行方も含めて、話も順調に広がってきた。
しかし緋月ってば、あの欠片を中に残したままだと勇者と魔王の両方惹かれてしまうことになるんじゃないだろうか。彼女が乙女ゲーの主人公ならそれも順当なのかもしれませんがw


魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿 ★★★★   



【魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿】  紫 大悟/クレタ 富士見ファンタジア文庫

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統合暦2099年――新宿市。究極の発展を遂げた未来都市に、伝説の魔王・ベルトールは再臨した。巨大都市国家の輝かしい繁栄と……その裏に隠された凄惨な“闇”。新たな世界を支配すべく、魔王は未来を躍動する!

これはまた、やりたい事ごた混ぜにしてやってやったぜー!感があって好きだなあ。
伝統的魔王と勇者の戦いに破れ、滅び去った魔王ベルトールが500年の時を経て復活してみれば、そこは見慣れたファンタジー世界アルネスではなかった。かと言って、単純に文明文化が発展して技術水準が上がった「現代系異世界」でもなく、異なる次元の魔法のない科学文明世界「地球(アース)」でもない。
そこは、別次元同士の衝突によって生じた魔法文明惑星アルネスと機械文明惑星アースが融合した世界。異文明の衝突によって起こった大戦争によって、神も国家も秩序も滅び崩壊し、魔法と科学の文明が融合して発展して80年の月日が流れた未来世界。
ファンタジーも現代も通り越して、魔導と電脳が支配するオカルトサイバーパンクと化した世界。人間も魔物もすべてがファミリアと呼ばれる電脳具を体内に装着してネットワークに繋がった電子都市・新宿。
そんな見知らぬどころじゃない、見たこともない考えたこともない想像すら出来なかったわけのわからない世界に放り出された旧世界の魔王の明日や如何に。

不死の魔王として数千年に渡って君臨し続けた魔王ベルトールは当然一般ピープルに紛れるような言動は出来ないわけで、尊大にして傲岸……シンプルにいうとどこのお大尽かというような偉そうな物言いしか出来ないのですけれど、別に物事の道理がわかってなかったり現状についていけない、というような周りが見えてない人ではないんですよね。
世界征服の志こそ失わなかったものの、この新宿という場所が自分の想像もつかないロジックで成り立っている世界で、自分がまったくそれについていけていない事もちゃんとすぐ理解しますし、いくら魔王と名乗っても誰も相手にしてくれない事も勿論わかっている。
そもそも彼ベルトールは、魔王と言っても邪悪の化身というわけではなく、不死人と呼ばれる様々な要因で不死者に至った者たちの王、という立場であって、世界征服も自分の野心や欲望という以上に理念のため、という人物なのである。
だから、王としても崇められて当然、奉仕されて当然、というような傲慢な意識は持っていなくて、忠節に対してはちゃんとそれに相応しい報いを与えてやらなくてはいけない、という部下に対しての責任感も感謝や情も持ってるんですよね。また、直接自分に関係ない相手でも自分を助けてくれたり、何かを与えてくれたら、この魔王素直にお礼言えるんですよね。
多分、道を訪ねて教えてくれてもちゃんとありがとうと言うだろうし、道すがら落とし物をした時拾ってもらっても「ありがとう助かった」と言える人物なんですよね。こういう人として当たり前の側面を備えているのは、何気に大事なところだったように思います。
かつて魔王全盛期だった頃は、権力者特有の酷薄さや残酷さを持っていたようですけれど、そういう当たり前の部分は新宿に復活して苦労してから身につけたものではなく、そもそも備え持っていたものなんじゃないかな。
だからこそ、500年ずっと待ち続けて自分の復活を助けてくれたかつての側近、マキナが魔王軍の崩壊や「現想融合」と呼ばれる次元融合事件や世界大戦を経て、長きに渡って苦労し、今や小さなプレハブ規模のアパートメントの一室に居を構え、日銭を稼いで糊口をしのぐような生活を送っているのを目の当たりにした時。
魔王たる自分を迎えるのにこんな惨めたらしい環境しか用意できないのか、みたいな不満や哀れみを覚えるのではなく、こんな苦労をしてまで自分を復活させてくれたことに深い感謝と、こんな辛い日々を可愛い部下に送らせてしまったことに感極まって謝罪と労りを込めてマキナのこと、ギューッと抱きしめるんですね。
その直前、ベルトール自身、かつての臣下に裏切られ、自分が時代遅れの存在だと突きつけられ、誇りも矜持も打ち砕かれて惨めな思いに打ちのめされていたのも大きかったのでしょう。自分が今味わっている惨めさ、屈辱に倍するものを、この少女然とした腹心は500年に渡って味わい続けた、辛酸を舐め続けた。その上でなお、自分の復活を待ち続けてくれた。激動の時代を生き続けたマキナは、きっとベルトールが復活したとしてもかつてのように魔王として君臨する事も復権する事も難しいかもしれない、とわかっていただろう。それでも、魔王としての価値を喪っているだろうベルトールを、迎えてくれた。かつてと変わらぬ忠義を、親愛を、捧げてくれた。その価値を、重さを、掛け替えのなさを、ちゃんとこの魔王様は十全理解し感じ取ってくれたんですよね。マキナも、これほど報われたと思えることはなかったでしょう。ベルトールのこういう人間味の在るキャラが好ましくてねえ。
ここでマキナに衣食住全部任せて、お前が働いて養え! と魔王ならぬヒモにならず、速攻でとりま生活のために働くぞ! となるところ、ベルトール偉いと思うし何気に適応力高いですよね。
マキナとしては、ワンルームに魔王様とたった二人きりの睦まじい生活、というだけで満たされていたみたいですけど。むしろ、ヒモになってほしかったんじゃw
まあ案の定、面接で片っ端から落とされて存在全否定された就活生みたいになってしまうのですが。就職活動、あれほど自分の存在価値を見失ってしまうものないもんなあ。イオナズン・ネタをここで見ることになるとは思わなかったが。

でも、攻殻機動隊の電脳化に代表されるようなサイバーパンクの定番とも言える脊髄に装着する情報端末、ここではファミリアと名付けられた魔導機器となっていますけど、こういうネットワークに接続していないと身分保障も仕事も得られない、というのはディストピア感がありますよね。
そして、スラムにたむろする身体の違法改造を施した半機械のアウトローたち。この中に、オークやゴブリンといった魔物たちが当たり前のように混ざり、電脳ハッカーが情報屋としてビルの一角に棲家をこしらえて潜んでいたり。やっぱりこういうサイバーでオカルトな世界観、好きですわー。
そして、そんな世界のネットワークで、ユーチューバーとして生計をたてはじめる魔王様w
人気配信者になってるし。魔王のカリスマをそんなところで発揮していいのか、おい。

ただ、魔王としての力を取り戻すには信仰度という認知が必要らしく、ポジティブでもネガティブでも認識され強い感情を向けられることで、それぞれ正と負の信仰の力を得られるという寸法なので、ネットワーク上で知名度をあげる、というのは見事に時代に適応している、と言えるのかもしれない。
そして、幾ら技術的にいくら時代遅れになろうと、彼が魔導師として天才を越えた存在であることは変わりなく。時代遅れ、なんてのは過去に固執さえしていなければ、時間さえあればいくらでも更新していけるんですよね。ベルトールの場合、一々発展史を丁寧に辿らずとも、理論さえ理解すれば容易にブレイクスルーしてしまえる、どころか新たな理論に到達できる、というあたりやはり本物の化け物なんだよなあ。

この時代まで生き延びて、目的も見失って流浪していた勇者との再会や、魔王としての在り方の変化など、新たな時代に復活して自分の価値を見失い辛酸を舐めたからこそ、かつての魔王としての自分とは違う、新しく見出したもの、ベルトールとして大事に思えるものが出来る、というあたりこそ、物語の主題だったようにも思うのですけれど、ちょっとそのあたり突き詰めきれずに物語の進行の流れに任せてしまったかな、と思う部分もありました。
マキナとの二人きりの狭い部屋での生活、ちゃぶ台囲んで過ごす日々の様子、もうちょっと見てみたかった気もしますし。
まだ未登場で行方不明の六魔侯たちも、ただ不死狩りから身を隠している、という風でもないですし、裏切った臣下もずっと秘めていた野心を開放した、というだけではない何らかの事情もあったようですし、むしろここからさらに世界観も広げていく余地もありそうで楽しみ。
ベルトールさまのキャラが本当に良かったので、サイバーパンクな世界観を発射台に、主人公をはじめとしたキャラの魅力を推進力に、ここからグイグイと面白くなって欲しいものです。期待したい♪

 
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