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029

はたらく魔王さま! 21 ★★★☆   



【はたらく魔王さま! 21】 和ヶ原 聡司/ 029 電撃文庫

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魔王城を打ち上げ、エンテ・イスラでの人間同士の争いも治めた魔王たち。残すは天界で神討ちに挑むのみ──だったのだが、その前にやるべきことがあった。魔王と勇者はじめ、一同が正装で向かったのは、千穂の自宅、佐々木家だった。
 千穂の父と会い、日本にやってきた当時のケジメをつけた魔王。しかし頂点会議から続く体調不良で、日常生活にも影響が出ていた。決戦を前に、見かねた恵美は魔王を心配するのだが──?
 最後まで格好つけられない魔王たちを待ち受ける、天界の真実とは。神討ちは成るのか。成ったとして日本での生活はどうなるのか――フリーター魔王さまと元テレアポ勇者の長い戦いもついに決着、庶民派ファンタジー、感動の完結!

10年も続いたのか。長い間お疲れ様でした。終わってみれば……これ、漆原がニートから脱却する話だったんじゃないの?
いや、このラストバトルってなんだかんだと漆原が主体になっていた、とも言えますし、親の軛から脱することでフラフラと当て所なく彷徨っていた彼が地に足をつけて生きていけるようになった、とも見えますし。
ただ漆原ことルシフェル、本当に長い時間フラフラしていたせいで大事な記憶も朧気になっていて、肝心の部分もこの最終局面に現場にたどり着いてようやく思い出す、という感じだったのでそもそも本人に当事者意識がなかったもんなあ。ダァトに関しても一番最後になって現れて、その姿がルシフェルそっくりだった、というのが結構重要な問題になっていた事に殆ど誰も気づいていないという顛末でしたし。
まあこの最終決戦である神討ちって余談は余談だったんですよね、本作においては。そのために千穂ちゃんが槍ゲットするためにエンテ・イスラではっちゃけたり、魔王城飛ばすためにみんなとっかえひっかえエンテ・イスラと日本を行ったり来たりと大忙しだったりしたわけですけど、やっぱり本作においてはエンテ・イスラの政治的な部分だったり戦争の部分だったり、決戦なんてものは余談だったわけですよ。そういう風な作りにしていた、とも言える。そういうのを、日本での日常生活と天秤にかけて日本での生活の大事さの方に比重をかけたかったのでしょう。少なくとも、日本で生活していた主要人物たちにとっては、日本での生活こそが大事という意識になっていたわけですから。
だから、最終決戦なんてものはアルス=ラムスの兄妹たちを開放して小さい娘を喜ばせる誕生日プレゼントであったわけですし、最終目標というのは千穂が思い描いた日本の小さなアパートの一室でみんなが賑やかにごはん食べてる光景をいかに守るか、てなものだったわけです。
守るだけではなく、先々までその光景を継続する、というのが千穂の願いであり彼女が本来の身の程を越えて頑張った理由でもあったのでしょう。千穂にとって、もうハッピーエンドに等しい時間はとっくの昔に彼女の前にあったわけですから。あとは、それを以下にして将来まで維持できるか、という問題が前にあり、恵美たち含め異世界組が元の世界に戻ってしまうなど憂慮すべき問題は山積みだったのを、あれこれ努力して解消していき、自分の願望をみんなにとっての願いであり望む光景として共有していくことに、千穂は見事に成功した、と言えるんですよね、これ。
最後には、みんな一致団結してそれを叶えるべく動く形になっていましたしね。
千穂個人の幸せとしては、真奥とお付き合いする関係になる、というのは勿論無視できない要素ではあったと思うのですけれど、最重要ではなかったと思うんですよね。そういう関係になれるのを踏まえて、みんな一緒の光景の一要素になれれば、という感じで。だから、真奥に対する独占欲みたいなものが薄かったんじゃなかろうか。彼女にとって、アムス・ラムスという娘を間に挟んでパパとママしている真奥と恵美、というのも彼女の望む光景にとって欠かせない要素だったわけですし。
恵美との関係についてもうるさく言わないどころか、寛容な態度をみせていたのはそのせいではないかと。
まあ、その千穂当人がなにやらエンテ・イスラの方に就職しそうな勢いではあるのですが。結構簡単に帰ってこれるだけにハードルは高くないとは思うのですが、あっちに行くとそのまま政治家ロード一直線っぽいしなあ。
個人的には、周りに変に気を使って忖度したりもせず、自分の感情に背を向けて色々繕ったりもせず、まっすぐに本心を曝け出して直向きに恋していた鈴乃のことは応援していたんですけどね。
一番こう、登場人物の中で乙女していたと思いますし。
しかし、なんでこの大司教さまは、異世界宗教の頂点近い地位に立ってるのにお遍路さんなんて仏教ロードに凝りだしてるんだ!?w

ちなみに、真奥と千穂の関係ですけれど真奥が何となく流れで受け入れるのではなく、ちゃんと千穂との出会いまで遡って彼女に対する気持ちを自己分析した上で、彼女が大事という気持ちに特別な感情があるのだと発見して、ちゃんとそれを踏まえた上で千穂に返答したことは評価してあげたい。
でも、悪魔だから恐怖を力に出来て、逆に愛情には拒絶反応、という設定は構造上は誠実に捉えてあって然るべき設定ではあったかもしれないけれど、物語上はちょっと面倒くさくてあんまり必要性がない設定だった気がするなあ。というか、真奥以外の他の魔族はこの問題どうするんだろう。真奥も先々種族間の分断に繋がりかねない問題だと認識していたけど。魔族でなくしてしまえば、解消されるにしてもそれ恵美がして回るわけにもいかないだろうし。
ちょっと、リヴィクォッコと岩城店長の関係に期待してしまったのですが、あれはまったく職務上の関係以上ではなさそうだなあ、うん。
逆に度肝を抜かれたのはやっぱりサリエルと木崎さんで、うんあれが一番驚いた。なにがどうしてそうなったんだろう。想像がつかないのだけれど、木崎さんのあの娘に対した時のキャラ崩壊してるんじゃ、という声音みると、あの人知らざる一面がまだあるに違いない、うん。
お付き合い、という面でみると三年後の場面の方で真奥と話す千穂ちゃん、もう敬語が抜けてるんですよね。あれは新鮮でしたけれど納得でもあり、順調にお付き合い進んでるんだなあ、と実感させてくれる小さくも丁寧な描写であったと思いますし、ちーちゃんが大人の女性になったんだなあ、と感じさせてくれるシーンでもありました。
芦屋と梨香はもうワンチャンないかなあ。

というわけで、結構ややこしくもなっていたセフィラやら天使関連の話もなんとか伏線を回収し終わり、三年後の場面と並行しながらの最終決戦はあんまり盛り上がらない事は想定済みだったのでしょう。そういう構成でしたし、というかこの作品の方向性そのものがラストを決戦で盛り上げるものではなかった、というのを徹底して貫いたとも言えるのかも。そういう手かせ足かせを嵌めたまま外さなかった、とも言えるのかも知れません。それは四角四面であったとも思いますし、また誠実でもあったとも思うんですけどね。
恵美ことエミリアはもうちょっと許されざる秘恋に葛藤するというかドロドロするというかねっとりしても良かったかなあ、と思うのですが、彼女なりにあの一夜のキスは精一杯のそれだったと思うので、それなりには堪能させて貰いました。
神は細部に宿る、を体現するような日常シーンの細かすぎるほど繊細な描写によって他の追随を許さない生活感のリアリティを常に物語そのものに根ざしつづけた本作、存分に楽しませてもらったと思います。長い間お疲れさまでした。完結、おめ♪

シリーズ感想


……でも、昨今のコロナ禍がこっちにも直撃してたら、真奥さんの会社もろにやられてそう、とか思っちゃうのがリアリティありすぎる世界観ゆえか。図らずも、梨香に語ったまおう組の顛末繰り返しかねないか、恵美のヒモですね、うん。

勇者のセガレ 4 ★★★☆   



【勇者のセガレ 4】 和ヶ原 聡司/029 電撃文庫

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異世界アンテ・ランデでディアナと再会し、魔導機士フィーグライドも仲間に加えた康雄。翔子に取り憑いたシィを分離する方法を探るため、一行は大国バスケルガルデの博物館で、最初の武機・破軍のオリオンを調べることに。だがその瞬間、翔子の左目の炎が激しく燃え、4人は黒い炎に呑まれてしまう―。気がついた康雄の前に現れたのは、翔子に取り憑いたシィ・ライアであった。彼女は、死者がシィとして現世に復活した理由を康雄に語り掛け―。勇者のセガレの普通の男子高生は、世界の危機を救えるのか!?ディアナと翔子との微妙な三角関係(?)の行方は!?クライマックスの第4巻!

【聖者】康雄かー。さすがに勇者や聖女と比べても【聖者】という呼称は現代日本人からするとハードル高いですわねえ。よっぽど敬虔な聖職者とか、自分の身を削って弱者救済に生涯を費やした人とか、カルト教団関係者、くらいですもんね、イメージ湧くの。
ここは異世界の人との価値観ギャップですわな。まあ、現代でもサブカルチャーに馴染んでいない人なら、聖者も勇者も聖女も変わらないくらい呼ばれて恥ずかしい呼称かもしれませんが。

シィの正体、或いはシィと呼ばれる死者たちがどうして現世に現れるようになってしまったのか、という物語の根幹とも言うべき謎がここにきて明らかに。って、そのあたりまでは良かったんだけれど、中盤越えたあたりからかなり進行早くなりましたよね。さすがに、撒きに入ったな、というのがわかってしまいました。アンテ・ランデ編はもうちょっと続けたかったでしょうし。
ともあれ、翔子に取り憑いていたシィが人格を取り戻してしまった上に翔子の身を乗っ取って動き出す、なんて真似まではじめてしまい事態は急展開。
シィの問題って誰かがいらんことをした、というのではなくてこうして話を聞くと完全に既存のシステムが現状におっつかなくなってオーバーフローしかけている、というものでこれどうしようもないやつじゃん。
そもそも、死後の世界というのが何故出来た、誰が作った、そもそも人の生と死の循環だから一方通行だかわからないけれど、この魂の流れるシステムを作ったのが誰なのか、という所までは話突っ込めなかったか。はたしてそれは本当に神様と呼ばれる高次元の存在なのかもしれないけれど、こうしてシステムが破綻しかかっているのをみると、全知全能ではないのは確かな模様。先の魔王の侵攻も、この崩壊をなんとかしようとした行為の一貫で、今暗躍している人も方法は違うけれど目的は同じ、となるとさてどうしたものか。
などと他人事で言っていられなくなったのは、この死者がシィとして溢れ出す、という現象が実はアンテ・ランデに留まらない、という事実が発覚してしまったからなんですね。
これは地球も無関係ではいられない危機だったのだ。
その発覚のきっかけは、かつて勇者と大魔法使いとなり長じて二人の子供の両親となる日本の少年少女が、どうやってアンテ・ランデに来てしまったのかという召喚の原因がわかったからなんですね。
そしてその原因がわかったのは、今回円香たちがバスの事故でコチラ側に迷い込んでしまった、という事故が起こってしまい、それに連鎖する形で理由が関連付けられたから。この畳み掛けるような連鎖して次々と状況が詳らかになっていく怒涛の展開は中々「おおぅ」と驚かされるものでした。

もちろん、翔子の中のシィが自分勝手に動き出すわ、秘密裏に動いていたはずが外国に自分たちの正体がバレそうになってしまうわ、円香がこっちに迷いこんでしまうわ、と康雄にとっても余裕なんざこれっぽっちもなく、いっぱいいっぱいになりながら切羽詰まるばかりの所だったのですけれど、彼が何だかんだと肝座っているのは、どれだけ精神的にいっぱいいっぱいになっていても、それでも浅慮せず深慮して判断を下せるようになった所なのでしょう。賢者というほど聡明でも、冷静沈着でもないのですけれど、物事を深く考え捉えて答えを出し選択する姿勢は見事にリーダーシップを取れていたのではないでしょうか。彼自身は自分は何もしていないと自己評価低いですけど、拘束された時のあの判断は翔子にしてもディアナにしても、この人頼りになる! と思って然るべき行動でした。
妹ちゃん、兄ちゃんへの評価低いけど、この兄ちゃん土壇場でこそ頼りになるから、ホントに。
とはいえ、女性への浮ついた感情をうまいこと操れるほどの余裕は残っていないので、ディアナと翔子への対応はもうアップアップもいいところでしたけれど。ディアナの方も経験値がない上に自分の感情を整理出来ていなかったのでコチラもアップアップになってましたけれど、それでも要所要所で適切にアプローチしているあたりは、さすが女の子だなあ、と。
翔子は、2巻から怒涛の後方一気で凄まじい追い上げを見せていましたけれど、やはりスタートの出遅れは大きかった、というのは彼女自身別の意味ですけれどちゃんと自覚していたところでしたので、これはさすがに白旗あげたのかなあ、と思っていた所でラストでさらなる二枚腰を見せてゴールで追いついてみせる、という奇跡の根性を見せてくれて、やっぱりヒロインとしての強度では翔子さんこのシリーズでは最強でした。状況設定からして不利な部分ばかりで、有利な部分、皆無に等しかったのにただただ自らの女っぷりと根性だけで対等以上の舞台に這い上がってみせたんですからね。
親の世代の引き継ぎ、あるいは後始末などではなく、自分たちだけの自分たちによる冒険譚がはじまる! というところで終わってしまったのはやっぱり勿体無いというか惜しいというか。世界の危機の対処にしても、人間関係にしてもここからが本番、という所でしたからね。ともあれ、うまいこと纏めてちゃんと区切りをつけて終わらせてみせてくれたのはさすが、というべきか。もう少し見ていたいお話であり、キャラクターたちだったのですが、ここでお疲れ様でした。

シリーズ感想

はたらく魔王さまのメシ! ★★★☆   



【はたらく魔王さまのメシ!】 和ヶ原聡司/029  電撃文庫

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今回は、魔王と勇者と二人を取り巻く者達の「メシ」に注目するグルメ編!未知の食材「コメ」を食べるのに四苦八苦する芦屋。ポテトをきっかけにパソコンを手に入れたことを思い出す漆原。愛するうどんを食べることを全力で拒否する鈴乃。忘れていた趣味を思い出し散財してしまう魔王。突然同居することになった「娘」の食欲不振に「母」として悩む恵美。エンテ・イスラからの来訪者達がそれぞれに日本の「メシ」に向き合う中で、千穂はエンテ・イスラの豪華な料理に舌鼓を打っていた!「電撃文庫MAGAZINE」に掲載された六話に書き下ろし短編を加えた特別編が登場!『メシ』がテーマの庶民派ファンタジー・グルメ編!

これホントに「メシ」の話であって、「メシウマ」なこの料理美味しい! というメシの美味さを堪能する話でも絶賛する話でもないんですよね。なので【ベン・トー】や【異世界食堂】、【かくりよの宿飯】みたいな読んでるとその料理や食べるシーンのあまりに美味そうな描写で、こっちまで涎が出てくる、腹が減ってたまらなくなる、という類とはまた全く異なる種類のメシ・もの小説と考えてもらった方がいいでしょう。
料理云々じゃなくて、とことん「メシを食う」という行為に対して様々な視点・観点からアプローチを仕掛けて、日常の中で飯を食うということそのものを改めて捉え直す作品になってるんですよね。その意味でも非常に「はたらく魔王さま!」的なグルメ短編集となっていると言えるでしょう。
そもそも、冒頭からはじまる一編が、炊飯器どころか「米」という食材を見たこともなく、どうやって食べるのかも知らない真奥と芦屋が、米袋と炊飯器という彼らにとっては謎の物体を前にして手探りで「米を炊いて食べる」という正解を手繰り寄せるために幾つもの大失敗をしながら、試行錯誤していく、というドラマになっているのである。ただ、米を炊くだけである意味スペクタクルな物語になっているのだ、これが。米を知らない以前に、食事という概念すらまったく知らなかった段階からお米を炊く、という行動にたどり着くまでの紆余曲折は人類が思考する生物であるというのを改めて発見させてくれるなかなか感動すら感じられる一大叙事詩でありました。まあ、食べられるように炊く、というところに至るまでがまだ長く辛い試練のときが続くのですけれど。
本編はじまった段階では、貧乏暮らしながらある程度生活基盤を整えることに成功していた真奥たちですけれど、今回人間界で暮らし始めた当初の話を聞いているとかなりギリギリの崖っぷちを綱渡りしていたのがわかって、他人事ながらヒヤヒヤしてしまいます。大家さん、数ヶ月家賃免除してくれてたんだ。そりゃそうだわな、でないと無一文からどうにも出来ないもんなあ。
それでも、住が確保できても食と衣がなんにもない状態で、もちろん職歴もなにもなく、戸籍も身分保障も最低限しか獲得できていない状況なんですから、めちゃくちゃ苦労したんだなあ。最初期の芦屋の吝さも、この崩壊寸前の極貧生活をギリギリ半分転げ落ちかけながら維持してきた時期を見せられてしまうと、大いに納得させられてしまいます。そりゃ、節制するわなあ。
比して、今がどれだけ食生活恵まれているのか、よくわかるというものです。ベルがうどん差し入れしてたの、そりゃ拒否せず受け取るわなあ。
これに比べたら、恵美の方は最初からうまくやってたも同然ですし、ベルに至っては殆ど苦労らしい苦労もせず、ですからねえ。恵まれてるや。
カレーうどん、その汁のハネない食べ方はちょっと難しいよ! それって、結局一本一本ちまちま食べることになってしまうし、端にたどり着くのに麺についた汁を箸で削ぎ落としてしまうとも言えるのでなんかもったいないし、ってかうどんはもっとまとめてズルズル行きたいじゃないですか。
とりあえず、着物でカレーうどんはやめとけ。前掛けするとかした方が早そう。

なかなか考えさせられたのが、恵美のアラス=ラムスの育児メシ。いやこれ、実際に育てた人でないとわからん感覚じゃなかろうか。料理自体に問題はなくて、食事の時間帯がひっかかってた、ってこれよくベル気がついたなあ。シングルマザーがどツボにハマってしまう部分を恐ろしいくらい丁寧に描いてるんじゃないだろうか、この短編。変に完璧に拘ってしまったりとか、真奥の方で暮らしていたときは問題なかった理由が、あっちはお父さん役とお母さん役二人が揃っていたから、というのは考えさせられるところ。手抜きできる部分は手抜きした方がいい、というのは大いに頷かされる。
育児という側面から考えると、アラス=ラムスって幼児としては尋常じゃなく手がかからない優良児なんですよね。ほんとのこの歳くらいの幼児なら、桁一つ二つ違うレベルで手がかかるんじゃないだろうか。そんなアラス・ラムスですら恵美が育児ノイローゼ気味になりかかるほどの育児の上手く行かなさ、という部分が出てきてしまうわけで。育児の大変さというものが断片的ながら伝わってくるというものです。これ、ほんとに相談とか出来る人もいなかったら、パンクしちゃうのも無理ないよなあ。

そして、ラストの真奥が木崎店長のマグロナルドに面接して働き始める話。いやあ、あのレベルで面接の受け答えされたら、バイトなら多少履歴書おかしくてもだいたい受かるでしょう。社員でも大手企業じゃなく、人手足りないところなら拾う所事欠かないんじゃないだろうか。いやうん、職歴は大事だけどね、所詮は参考に過ぎないとも言えるので、これだけしっかりとした受け答えされたら自分なら諸手を挙げて、この人取りましょう、って言いますわ。バイトレベルでこれは出物ですよ。これに関しては木崎さんに見る目があったというよりも、ごくごく当たり前の推移だったように思います。千穂ちゃんはその意味では、高校生らしい面接風景でしたよね。あれは木崎さんの着眼点面白いなあと思ったけれど。
この話、優秀な人が集まる現場には、集まるなりのちゃんとした理由がある、とも言えるわけで、これは木崎さんの手腕だよなあ、と感心したり。

メシ話、と言いつつ各巻や各キャラクターの隙間を埋める幕間集にもなっていて、非常に満足感がある内容でした。面白かった。


シリーズ感想

はたらく魔王さま! 20 ★★★★  



【はたらく魔王さま! 20】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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「勇者が魔王の城に攻め込むのは自然なことです!魔王が勇者の自宅に来るなんてことはあり得ません!!」
アシエスの暴走した食欲に続き、姉であるアラス・ラムスにも異常が発生してしまう。娘を救うため、頑なに拒否する恵美を説得し、永福町にある恵美の自宅に行くことになった魔王。玄関で履かされたスリッパ、大きな冷蔵庫、部屋についているお風呂と、六畳一間の魔王城との格差に圧倒されつつ、親子三人の同居生活が始まるのだが…。一方、異世界エンテ・イスラでは各国の調整が最終段階となり、いよいよ魔王城が打ち上がるのか―!?

真奥と恵美のバイト先であるマグロナルドの主要なメンバーに事情を明かしてしまうという千穂ちゃんの行動、確かに後々真奥たちも動きやすくなるし、アエシスの食糧事情からも事情を知っている先があったら助かる、というのもあったのだけれどそれだと岩城店長と木崎さんさえ知ってたらなんとでもなるし、スタッフの川田くんと大木さんにまで教えるというのはどういうことなんだろう、と思ったら。そういうことだったのか。いやそれなら、志波さんの一族をまるごと巻き込んで、というのも納得できる。
襲撃云々以外にも、要は外国からの賓客を私邸に招くことと、公館に招くことは政治的な意味合いが大きく変わってくるということなんでしょうね。政治的な立場からの拠点を持たない真奥と恵美、魔王と勇者からしてマグロナルド幡ヶ谷駅前店は臨時応急の公的な迎賓館みたいなものに仕立て上げられた、と。政治的立場からエンテ・イスラからの来訪者が勇者と魔王に面通ししたという実績がここで生まれるわけですな。エメラダが、わざわざ正装してここを訪れたというのも実際意味が生まれるわけだ。同時に、現状における魔王と勇者の在り方を目にすることで、千穂ちゃんがやろうとしていることへの理解と信用も生まれますしね。そうなると、一連の事情をスタッフ含めてマグロナルドの面々が承知していないと、これはえらいことになってしまっただろうし、主要株主である志波さんからのバックアップがなかったら混乱は助長されるばかりだったろうし、全部必要なことだったというのもなるほど理解できた。
にしても、次々と異世界の偉い人がマグドに来店するという絵面がちょっとおもしろすぎるんですけどこれw
一番大変なのはこれ、岩城店長だよなあ。まあある意味、木崎さんの残した超絶人気店を引き継ぐというプレッシャーからは開放されたかもしれませんが。それどころじゃなくてw
リヴィクォッコが気配りの人になってて、なんか魔王軍の中で実はこいつ一番大人なんじゃないだろうか。何気に適応具合が半端ないのだけれど。

さてもう、なんか千穂ちゃんが超人的な活躍をしている一方で加速度的にポンコツをマシているのが鈴乃さんことデスサイズベル。千穂が好きという気持ちを時間をかけて醸成し続けていたのに対して、ベルの場合は空気中に充満していた気化燃料に、バチッと火花が散って火がついた、みたいな感じだからなあ。完全に自分の荒れ狂う感情を持て余している。千穂のそれを愛と呼ぶのなら、ベルのそれはまさしく恋なのだろう。大神官という立場を得てしまった彼女だけれど、勇者として云々のみならず魔王軍との戦争の被害者でもある恵美と違って直接的なしがらみのない鈴乃はその点自由とも取れる立場なわけで、この娘の動向が一番予測つかないかも。
一方で、勇者と魔王としての対立軸が解消されてなお、戦争という過去が大きく溝として横たわっていることが明らかになってしまった恵美と魔王。いやもう、実のところ当人同士はもうそういうの拘る必要のない場所に落ち着いてしまったのだけれど、恵美の理性的なところは同時に周囲を慮ってしがらみに囚われる、という要因にもなるわけで。エメラダの過去がそういうことだったとこうして明らかになってしまうと、親友からの感情を無視して自分の感情を優先するということが果たして恵美に出来るのかどうか。あくまでエメラダは魔王軍への負の感情の代表格として登場しただけで、実のところ他にも無数に憎しみを持つ人は恵美の知人の中にもいるだろうし、何より父は無事だったにしても故郷の親しい人を多くなくしているのは恵美自身も同じですしね。
忘れてはいけないことを忘れられないのが、恵美という女性の良いところでもあり儘ならないところでもあるのでしょう。それでもなお、という強い感情が……千穂や鈴乃のような自分自身を変えてしまうほどの想いが果たして今後生まれるのかどうか。現状、淡いものはあったとしても鈴乃みたいに火がついているわけじゃないからなあ……。ただ、鈴乃が危惧してしまったように、可能性はあるんですよね。鈴乃自身がそうだったから、身をもって体験しているわけだし。
だからこそ、恵美と真奥の同居という状況の変化にあれほど激しく反応したのだろうし。
しかしまあ、まさか疑似家族が本当の家族として一緒に暮らすことになるとはなあ。この構図は想像できなかった。何しろ、アラス・ラムスの出現からこっち、恵美ってばずっとシングルマザーの様相を呈していたわけで、つまり最初から恵美と真奥とアラス・ラムスというのは別居、あるいは離婚して時々子供のために一緒に過ごすことはあるだけの、既に終わった家族という観だったんですよね。
それを遡るか巻き戻るか、一緒に暮らすという選択肢が出てくるとは思わないじゃないですか。でもそれって、親の観点からのものであって、子供視点からすればそりゃ勿論両親が一緒に居てくれるというのが一番なんだろうなあ。どうしても大人側からの視点に寄ってしまって、子供からの感情というものに考えが及ばないというのは至らないところである。
アラス・ラムスは変にわがまま言わないいい子でしたしねえ。シングルマザーになる、ということには往々にして理由があり都合があるもので、それは無視してはいけないし配慮もしなくてはいけない。その意志も立場もまた社会的にも守るべきものであり、否定されるべきものではない。
でも、配慮というならそれは、大人だろうと子供だろうと関係なく誰に対しても必要なものなんでしょう。なかなかどうしたって難しいことなんでしょうけれど、恵美と真奥はそういう意味では子供を優先することに躊躇いのない、親として大変だろうとやるべきをやろうとしているという点を鑑みても、大したもんだと思いますよ、本当に。
まあその意味で、恵美の真奥に対する主張を要求はまったくもって正しい!
養育費問題である!
芦屋が頭抱えながらも全面的に受け入れたのも当然と言えば当然。ってか、親子ってんならそりゃ当然その問題は出てくるわなあ。なにしろ「認知」してるんだしw
むしろ、真奥が称賛しているようによくまあ一年での出費をこれだけに抑えられたもんである。幼児に往々にして必要な医療費の類が一切かからない点を考慮しても、この金額は驚異的だと思う。
作品通じて恵美に一番感心したところかもしれないw

さて、物語の方も千穂ちゃんの大活躍によりようやく収拾のめどが立ち、クライマックスへ。かつて千穂ちゃんが悪魔大元帥に指名された際は、見てるこっちも千穂ちゃん実質魔王軍のトップで大宰相になれるねー、なんて無邪気に笑っていたものですが、それがガチの真実となるとは今更ながらおののくばかり。エンテ・イスラと地球との行き来については、このままだと非常に難しいことになりそうだけど、その問題さえなんとかなったらホント向こうの婆ちゃんの言じゃないけれど、エンテ・イスラの方で何にでもなれそうなだけに、大学卒業後の進路についてはよくよく考えて欲しいものです。こればっかりは、なろうとしてなれるものではないだけに。
しかし、ラストのあれは真奥、精神的なショックというだけではない症状ですよね、あれ。むしろ、種族的な問題なのか。悪魔ゆえのものなのか。だとすると、火種がまた生まれてしまったと言えるのかも。

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 19 ★★★★☆  



【はたらく魔王さま! 19】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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フリーター魔王さまの庶民派ファンタジー、真奥が男気を見せる!?第19巻

マグロナルドを辞めて受験に専念する千穂のもとに、鈴乃から一本の電話が。なんでも、大法神教会の最高意思決定機関である、六人の大神官の一人に選ばれてしまったとのこと。しかも聖征総司令官に任命され、魔王軍率いる芦屋と激突することになり、重圧と先々の事を考え意気消沈の様子。日本に戻ってきた鈴乃を、千穂や恵美はうどん屋で慰めることに。
そんな中、異世界の危機に何も関与できない魔王は、このままでいいのかと自問自答していた。新たに同居するリヴィクォッコとバイトに励んでいると、アシエスに謎の体調不良!?が発生してしまう。対応に追われる中、鈴乃と千穂は魔王に対する想いを再認識し、まさかの恋愛模様に異変が発生!?
全然男気見せれてねえ!!
いや、千穂ちゃんがやっぱりすげえわ。この娘が大前提をちゃぶ台返しするのって何度目だろう。状況が二進も三進もいかなくなった時にいつもこの娘が行き詰まっている現況に対する認識そのものをひっくり返すんですよね。
今の真奥や恵美たちは、決して頭が固いわけでも柔軟な発想が出来ないわけではないのだけれど、どうしてもこうあるべきという固定概念に捕われていて、それを千穂ちゃんが根底からひっくり返してくれるのである。この場合、千穂ちゃんを褒めるしかないよなあ。普通はこういう発想の転換は出来ないもの。みんな、自分の手の届く範囲の限界まで精一杯手を伸ばして頑張っている。その尽力は並々ならぬものだし、状況内で出来うるあらゆる方策が検討され、導き出されている。これらは、並の頭脳じゃ出来ない処理でしょう。
ところが千穂ちゃんのこれは、手の届く距離を伸ばそうという努力じゃなくて、手を届かそうとしている先を、向こうから届くところまで来てもらうように盤面をひっくり返すようなものだったんですよね、これ。
断絶していた日本側の日常と、エンテ・イスラ側の事情とを見事に連結させてしまったわけだ。真奥たちが忌避していた日本側を無理やり巻き込んでしまう、という形とはまた違う形である。
結局、多大な無理が生じていたのは日本側の日常に影響を及ぼさないようにしながらエンテ・イスラ側の問題に対処しようとしていたことが一番大きかったのを思えば、これはまさに発想の転換なんですよねえ。勿論、巻き込む形になった人たちが協力してくれる、という純粋な信頼がなければ成り立たない部分ではありますけれど。
千穂ちゃん個人としても、エンテ・イスラサイドと日本サイドの断裂が将来への展望に行き詰まりを生じさせていたとも言えるので、この連結は千穂ちゃんの将来どうしたいかという希望と現状における彼女がやりたい事を橋渡しすることにもなったわけで、一気にこの娘の活躍できる範囲を広げることになったのである。
まー、この娘が肝据えて開き直ると、ほんと凄いわ。みんなが一目置くどころか、こぞって頼りにするのも無理からぬ所である。

さて、受験に際して活動を休止するどころか八面六臂の活躍をするはめになった千穂ちゃん。もうヒロインというより主人公並の駆けずり回り方でありますが、今回一番ヒロインしていたのはやはり鈴乃の方なんでしょう。
ほとんどテンパってただけのような気もしますが、テンパってイッパイイッパイになることで深刻な乙女モードになるあたりが、ベルらしいというかなんというか。色んな意味でわかりやすすぎるんですよね、彼女って。それでいて自分のことはあんまり良くわかってないし。
まさか一足飛びに告白までこぎつけてしまうとは予想だにしませんでしたけれど。
予想外といえば、真奥のヘタレっぷりもまあ予想外極まりましたが。それはあかんやろう!!
千穂ちゃんの時はまあ状況が状況でしたし、後々のタイミングというものがありましたから、仕方ない部分があるような気がしないでもなかったですけれど、今回は反論の余地なく完全にアウトでした。
恋愛偏差値が中学生以下なんじゃないだろうか、この魔王陛下。
乙女力の低さが鈴乃や千穂ちゃんと比べて目を覆わんばかりの恵美と、ある意味真奥さん。お似合いというか釣り合ってるような気がしてきました。勇者、傘ごときで一人で煩悶してる場合じゃないからね、ホントに!! 他の娘ら、そういうレベルでもうどうこうしてないですからね!

個人的には、リヴィクォッコがかなり速攻で日本の生活に適応してしまったのも予想外でしたけれど。バイトの方もそつなく熟しているのは千穂ちゃんたちの指導の賜物なんでしょうけれど、アパート生活の所帯じみたあれこれまで速攻で馴染むとは。粗暴で扱い難しそうだったリヴィクォッコでこれなら、魔族の適応力ってかなり大したものなのかもしれない。

それにしても、今回一番えらい巻き添え食ったのって、岩城新店長ですよね。木崎さんや他のバイトの同僚は相応に関係深かったり長かったりで下地はありましたけれど、新店長いきなりすぎる巻き込まれである。何気にこの人も大人物な気がしてきた。
あと、これで木崎さん魔王軍大宰相ルートの可能性ワンチャンあり?

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 18 ★★★★   



【はたらく魔王さま! 18】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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マグロナルド幡ヶ谷駅前店に新店長がやってきた。年度の変わり目でベテランクルーたちの退店も相次ぎ、さらには受験に専念するため、千穂も店を去ることになってしまう。
新体制にバタつく中、魔王はペット禁止のヴィラ・ローザ笹塚でトカゲ姿の悪魔キナンナを飼育し、部屋をボロボロにしたことが大家にばれ、大問題に。退去は免れたが、修繕費として多額の請求書が届けられてしまい!?
一方異世界では、天界の危機に対処する準備として、五大陸各国の調整に芦屋や鈴乃が奔走していた。人間と悪魔の共存を目指す魔王は、マグロナルドの人手不足と合わせて解決する方策を考えるが──。
ひぃぃぃ! ちょっとこれ、想像するだに寒気しかしない状況なんですけど、マグロナルド。そうだよなあ、一番キツイのってこの場合、出ていく木崎店長じゃなくてむしろ新店長として木崎さんの後釜に座ることになる岩城店長なんですよね。
既に現状、考えうる限りの最高峰のもはや異次元ともいえる業績を挙げている店舗。木崎店長の辣腕もさることながら、彼女によって集められて鍛え上げられたスタッフたち。ここにあとから飛び込むのって、もう撤退戦なんですよね。ここからさらに業績アップさせてやるぜ、なんて自信満々でいられる人なんて早々居ないでしょう。
実質、どれだけ業績が落ちるのを食い止められるか、という話なんですよね。それでも、これだけのスタッフが揃っていたらなんとかなりそうなものなんですけれど、千穂ちゃんに辞められたらヤバイなんてもんじゃないんですよね。彼女のみならず、話を聞いてたら学生のみならずこの人抜けたらあかんやろう、という人まで抜けるうえに単純にやめる人数がヤバい。
木崎店長居なくなるタイミングで、これはキツイなんてもんじゃないですよ。おまけに、数カ月後には魔界の方の大作戦で真奥と恵美も一ヶ月丸々シフトから外れる予定が組まれてる、って。
岩城店長が引き継ぎ直後から血の気引いてるのもわかりますわー。いやマジで。質が伴った量がごっそり抜けた後のカバーって、ちょっと取り返しがつかない部分がありますし。
だいたい、バイトに限らず使える人材集めるのって何気に至難なんですよね。あれって、宝くじめいたものがありますし。面接で人となりや使えるかどうか把握するって、多分特殊スキルなんじゃないでしょうか。自分も面接する側にまわることもあるのですが、あれは本当にわからん!
しばらく仕事してみないと、わかんないですよ。その人がどういう人だとかなんて。
まあ、「あ、この人やばいわ」というのが露骨に見える人もいるのですけどね。逆に、この人当たりだ!と一発でわかってしまう人も中にはいるのですけれど。
それに選り好みしてられない状況というのもありますしね。求人って、広告出すの何気にけっこうお金掛かるんですよ、あれ。マグロナルドみたいな大手なら、そのへん予算問題ないんでしょうけれど。ってか、ドタキャンするやつが昨今多すぎる!!
って、話が変な方向行ってしまいましたが、木崎さんみたいな見極め方なんか出来る人は早々いないと思いますよ、うん。まあバイトくらいなら普通にしてれば、だいたい受かると思うんですけどね。
……普通にデキる人って、実は思いの外少なかったりしますし、うん。

とまあ、うん、読んでて黄金の貧乏くじを引かされた岩城新店長の方に思いっきり感情移入してしまったのですが、辞める方の千穂ちゃんの方も大変なんですよね。ってか、作品的にはこっちが主軸の大変さなんでしょうけれど。受験を前にして、周りの友達が真剣かつ具体的に進路について考えている中で、自分はまだ曖昧模糊にしか受験を捉えておらず、一方でエンテ=イスラの方の作戦や地球サイドの安全保障にも関わってくるだろう国際情勢の緊迫化に直面して、果たして喫緊なにに集中すればいいのか、若干混乱状態に追い込まれてる千穂ちゃんの現状、受験生としてはキツイものがあるのも確かな話で。でも、ちゃんとここで一人で抱え込まずに近い境遇にある梨香や、社会人である木崎さんに相談しているあたり、しっかりしているなあ、と感心してしまいます。何気に、大人に相談するのって、高校生くらいだと壁があって難しいものだし、具体的に自分が抱えているものを言葉にして問いかけるのってめちゃくちゃ難易度高いですしね。
……でも、そんな相談にこうもしっかりアドバイスを返せる梨香や木崎さんがまた半端ねえと思っちゃうんですよね。こんなん相談されても、自分だったらまともに助言らしい助言とか出来ませんて。通り一辺倒の一般論以外に実のある言葉が紡ぐことが出来るだろうか、と自問してしまいます。

一方でエンテ・イスラの方でも芦屋がえらい頑張ってるというか活躍しているというか。もう真奥関係なく、というわけじゃないけれど、腹心とか参謀とかではなく完全に独立して独自の判断で外交交渉をつなげて、同盟や協力者の輪を広げてますもんね。真奥とか魔王軍という看板ではなく、アリシエルという個人を信用して、協力してくれている、という感じですし、魔界の住人の移民問題にしても魔王軍首脳部による政策ではありますけれど、完全に芦屋が主導してるもんなあ。
いい意味で、今までべったりだった真奥と芦屋が離れて個人個人で動けているのが、なんとも頼もしいというべきかなんというか……これだけ一人でやれてるなら、芦屋さん……梨香のこともちゃんとしてあげたほうがいいですよ、ほんとに。

色々とエンテ・イスラ側でも地球……というか日常サイドでも激動と言っていいくらい状況が動いているようで、未だ準備期間ではあるというなんとも錯綜した状態なのですが、魔界の住人の未来という点に関しては、真奥や芦屋たちが着実に将来の展望というか戦略に基づいて動いているので、そこだけは何とも安心感みたいなものがあります。まさか、リヴィクォッコが人化して地球サイドに来て、働く魔族さまやるとは思いませんでしたけど。ってか、よりにもよってこいつかよ! 強面すぎるでしょうに。
てか、その強面外国人をビシバシと現場でうまく教育してのける千穂ちゃんが、やっぱりすごすぎる。ある意味、エンテ・イスラ側で魔族たちに元帥としてうまく統制していたのを見たよりも、こっちのほうがインパクトありますわー。木崎さんからも岩城さんからも高校生としては破格、ってか高校生にしてはなんていう前置きは取り除いて、超出来まくるスーパーアルバイター的な評価を受けている千穂ちゃんですけれど、本人は不安ばかり抱いているようですけれど、この娘ならホントどこに行っても全然問題なしにやれるに違いないでしょうね。
木崎さん、ちくっと迷走しかけてた彼女に厳しいこと言ってましたけれど、逃避の結果だろうとなんだろうと来てくるなら絶対に確保、捕獲、ゲットしておくべき人材だよなあ。ってか、真奥にサリエルの二人を独立の際に抱え込むつもりって、無茶苦茶贅沢なんですよね。どれだけ確実に勝ちに来てるんだろう。

しかし、梨香に千穂ちゃんが相談してるときに、真奥との恋愛話に発展してましたけれど……梨香から、恵美はない、と断言が出るとはちょっと驚いた。一番親しい友人の一人である梨香から、そう見えてるのか。ただ、現状の恵美の内面描写を見ると、これはなかなか、ねえ。千穂ちゃんの勘は外れてないと思うんだけどなあ。ただ、鈴乃に関してはどうだろう。最近、鈴乃本人が自重している節もあるんだけれど、確かに千穂ちゃんが最初の方に危機感を感じてたのは鈴乃の方だったんですよね。
次回あたり、鈴乃がメインになりそうですし、最近ちょっとそっち関係ベルは大人しかったんで、どう動くか楽しみなところであります。

シリーズ感想

勇者のセガレ 3 ★★★☆  



【勇者のセガレ 3】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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度重なるシィの襲撃に耐えかね、異世界アンテ・ランデへと渡る決断をした康雄の父、英雄。シィを身体に宿す翔子も同行させるため、剣崎家&ディアナの5人は、翔子の両親の説得に向かう。
元救世の勇者と大魔導士、そして異世界の魔導機士を含む一同だったが、日本に住む普通の人達へ『異世界』の説明をするという難題に、魔王討伐やシィとの戦闘よりも緊張してしまい!?
何とか理解を得て異世界に通じるゲートに飛び込むと、元勇者の英雄に異変が発生! 見知らぬ森に一人投げ出された康雄は、そこが地球ではない『異世界』だと確信する。勇者のセガレとして、いよいよ冒険が始まる!?な、第3巻!
次の巻になっても直ってなかったですよ、マイホームw
ギャグ時空ではないので、破壊された家はもちろん業者に頼んでなおしてもらわないといけないわけだけれど、これ保険とかきかないですよね。ここまで壊れると建て直しとまではいかなくても本格的なリフォームとか必要そうだし、果たして何百万が飛んでいくのか。場合によってはもう一桁あがりかねない。現職一般的なサラリーマンである勇者・親父どのでありますから、これ死活問題なのである。ここで日本で状況の推移を見守っていても、またぞろ襲撃されて家壊されたら本格的に日本で生活できなくなりそうなので、とにかくアンテ・ランデ行ってなんとかしよう、ということになってしまったわけで。げに金の問題は良きにつけ悪しきにつけ、物事を推し進めてしまうものなのでありましょう、世知辛い世知がらい。
ともあれ、過去に勇者と大魔法使いやってました、という剣崎家のご両親ですから、元はと言えば関わり合いがあったのもの確かな話。一方で、本当に無関係で偶然巻き添えを食ってしまって、シィに憑依されるという状況に陥ってしまった翔子ちゃん。
前回の感想で、翔子ちゃん過去の関わり合いも決して濃いわけでもなくてポッと出の印象が強くて、ヒロインとしてここから果たして巻き返せるのかしら。とか書いてたら、物凄い勢いで巻き返してきましたがな! 
最後方からの直線一気ばりの捲りあげである。
というか、勢い良すぎてこれヒロイン通り越して、貴女が主人公じゃないですか!?という八面六臂の大活躍。ある程度シィの力を制御できることになったために、戦闘力皆無のヤスくんを守って、仮面ライダーばりの大アクション、殴って蹴ってとお嬢さん度胸在りすぎ!
いくらパワーアップしたからと言って、そうそう「敵」なるものに対して殴りかかったり、攻撃したりって喧嘩もしたことないような子がそんな勇気出ないですよ。
でも、やっちゃう翔子ちゃん、すげえ男前である。肝が座った乙女のど根性を見せられてしまった。もう完全にヤスくんヒロインである。元々、聖女属性の後方支援どころか、戦闘終了後に浄化してまわるような役回りなんで、立場が完全に入れ替わってます、はい。
恋愛的にも、無自覚に気を持たせるような言い回しばかりしてくるヤスくんにやきもきしっぱなしで、ある意味吹っ切れたのか言いたいことガンガン言っちゃう開き直った翔子ちゃん、初登場当時のいかにも存在感がなかなか発揮できない感じの雰囲気を消し飛ばして、実にパワフルで魅力のあるキャラクターにグイグイと競り上がってまいりましたよ。
図らずも、異世界のどこかもわからない場所に二人きりで放り出されるはめになり、異世界サバイバルをやるはめになってしまったヤスくんと翔子ちゃん。はっきり言ってこれまでで一番のピンチと言って過言ではない状況だっただけに、だいぶお互いの存在を意識してしまうことになったんじゃないでしょうか、これ。まあ、それどころではないくらい切羽詰まってた、とも言えるのですけれど。
でも、ヤスくんも醜態をさらすことなく、きちんと冷静さを保ってこのピンチを乗り切ったわけですし、相応に頼もしいと思ってもらえたんじゃないでしょうか。まあ、物理的なピンチの時に騎士のごとく活躍しまくったのは翔子ちゃんの方でしたけれど。圧巻の頼もしさだったなあw

しかしこれ、事前に翔子ちゃんのご両親に頭下げにいって、危険はありませんから、と保証したにも関わらずこの事態ですからねえ。助かったとは言え、あとでご両親にどう謝るかを考えると他人事でも胃が痛くなりそうです。ただでさえ、異世界とか魔法とかわけのわからんことについて、まともに説明せにゃならん、凄まじい苦行というか難行を乗り越えたあとだったというのにもう。
これ、ハリーヤさんが事前に魔法とか翔子ちゃんのご両親に見せて、ある種の情報の共有をしておいてくれたから、話スムーズに進みましたけれど、いきなり来ていきなり異世界の話されたらえらいことになってただろうなあ。
翔子ちゃん家の呼び鈴の前で、親父さんが胃を押さえて泣きそうになってたのなんか染みるようにわかるわー。フィクションでちゃんと説明せずに秘密にするの、余計にトラブル増やすだけなんだからちゃんと説明すればいいのに、というの実際にやるとなると「高確率で社会的に死ぬから無理!」という剣崎さん家の人々の悲鳴を聞いていると、なるほど納得である。

しかし、これでしばらく異世界編が続くことになるのか。置いてかれたお母さんと妹、そのままおとなしく待機してられるんだろうか、これ。

1巻 2巻感想

はたらく魔王さま!17 ★★★★☆  

はたらく魔王さま!17 (電撃文庫)

【はたらく魔王さま!17】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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フリーター魔王さまの庶民派ファンタジー、大魔王の遺産を探す第17巻!

正社員登用試験に落ちた悔しさを仕事にぶつけ、いつも以上に神クルーっぷりをみせる魔王。だが、異世界エンテ・イスラから日本にやってきて以来ずっと掲げていた目標を失い、見た目とは裏腹に落ち込んでいた。
さらには、何者かに襲撃され可愛いニワトリの姿で弱ったままのカミーオや、「大魔王の遺産」最後の一つ「アストラル・ジェム」の行方など、解決すべき問題も山積みだった。
そんな中、カミーオ襲撃の鍵を握ると思われる存在が代々木周辺で目撃される。天祢と共に現場に向かった魔王は、そこでワニのような悪魔と遭遇。なんとか確保したものの、六畳一間のヴィラ・ローザ笹塚201号室で世話をすることになり、仕事にプライベートに、魔王は心の休まる暇がなくなってしまい……。
一方マグロナルドでは、店長の木崎に異動命令が出たことで、恵美や千穂を始めとしたクルー達に動揺が広がっていた。木崎と今後について話す魔王を見て、恵美と千穂は魔王が日本に留まる理由がなくなるのではと、不安を覚え始める。エンテ・イスラに戻るのか、日本で仕事を続けるのか、今後のキャリアをどうするか悩み始めた魔王のとる選択肢とは──。
お仕事成分多めでお贈りする、庶民派ファンタジー第17巻!
木崎店長の実年齢が27歳であるという事実にショックを隠しきれない!
いやあ、これほどのやり手の女性の年齢が未だ三十にも届かない27歳ですよ。すごいなあ、すごいなあ。
ぶっちゃけねえ、出来る人って年齢関係ないんですよね。出来る人は若い頃からバリバリできる。もちろん、歳を積み重ねることで出来ることの増えていく晩成の人も少なくはないでしょうけれど、それはあくまで一つの要素であって、年齢ってのは出来る出来ないを左右する大きな要因にはあんまりなりえないんじゃないだろうか。
不惑に至って自らを省みて、また様々な年齢の人と関わる機会があってしみじみそう思うのですけれど、それでも二十代後半というのは得るべき経験もまだ足りなく手探りの時期でしょうに、木崎さんほどの能力と、能力を発揮する意欲と、その能力を向けるべき方向性への確固たる指向性。尊敬の念しか浮かびません。何度生まれ変わっても、こんな風になれるとは思えんなあ。
果たして、こういう女性ってどういう男性を好むのでしょう。木崎さんに関してはもう男の影なんて微塵も見えないだけになおさらにその好みとかが気になってしまう。サリエルは信奉者であって、異性としてはなんか違うだろうし、木崎さんてばサリエルに対してはなんかもうこれどういう扱いなんだ? 今回の「お話」でのサリエルへの対応見てたら全然わかんなくなったぞw
真奥に対しては好感度はそれこそ最高級に高いだろうけれど、異性に対してのそれでは全然なさそうだからなあ。こういう人に限って、ダメンズウォーカーだったりするのだけれど、木崎さんに限ってはなんか想像できないし。温厚な家庭人タイプの優しい男性とかなんですかねえ。
いやいやうん、今回はほんと木崎さんの異動通達にはじまるあれこれが発端だっただけに、木崎さん回とも言える彼女のお話で、色々と考えさせられました。彼女も色々悩み、妥協や迷いに向けるべき足先を踏み出せないときもある、という普通の人……いや、この時点で普通の人の範疇よりもずいぶん上な気がするけれど、決して完璧超人じゃないんだよ、という側面を見せる……ことで、むしろさらに完璧度をあげているような気もするのだけれど、ともかく木崎店長という一個人、大人の女性としての魅力というか、器?みたいなものを否応なく知らしめさせられるお話でした。そりゃ魔王さまもこの人に対しては敬すべき上司から揺らぎようがないよなあ。
それはそれとして、マグドの正採用試験に落ちてしまった真奥。本命とはいえ、一回落ちたくらいでなんだよー、と思うところでもあるのだけれど、一回でも一社でも落とされるというのは深刻にキツイものでして。それを何十何百と繰り返す就職活動は、あれ精神的に死にます。ただ、真奥に関しては別に正社員にならなくても、本業で「魔王」という活動が残っているわけで、そこに生きるための必然性はないのであります。そこを、ヒロイン衆は危惧してるんですよね。まあそりゃそうだよなあ。こちらの現代日本と真奥の縁というのは今となっては彼の意志一つで断ち切れるものになっている。まあそう簡単に切り捨ててしまうには、こっちの暮らしは彼らにとってもそんな軽いものじゃなかったんですけどね。でもまあ、彼女たちからすれば心配は心配なのだ。それを払拭するには、明確な真奥の意思表明みたいなものが必要だったわけで、そうかー、それでこの間のバレンタインとつながるわけだ。この構成は実にうまい。真奥がなんだかんだと要所のイベントは抑えている、という気の利いた一面も見せてくれたわけですしね。まあ真奥側からすれば、いくら身辺がドタバタしていたからといって、このイベントを忘れて放っておけるほど無神経ではありませんし、周りの人間関係蔑ろにしてないですわな。むしろ、気遣いの魔王さまなんですから。
でも、恵美のあの内面乙女モードは素直に可愛いです。この娘さんはもう本当に、目覚めてしまいましたなあ。変な妄想してたら、千穂やベルに女子力の違いを見せつけられて、恥ずかしさのあまり顔を覆ったまま動けなくなってるところとか、特に特にw
一方で、この局面で「老人介護」の展開をぶっこんでくるとは思わなかった。それも、重度の認知症の介護生活。相手はトカゲ型の魔族とはいえ、状況は完全にそれ。これはもう本当にキツイ。お客さん相手にする接客業というのがなおさらにキツイ。まだ一緒になって手伝ってくれる人たちがけっこうたくさんいる、というのはまただいぶ助かっているんだろうけど。何気に隣に住んでるベルがこの「老人介護」に限らず、いろんな局面で真奥の生活支えてるよなあ、と今更ながらに実感させられる。内助の功? 千穂ちゃんも受験も迫って大変だろうにまめに通ってきてくれていて、色々と助けになってくれているのはもちろんわかっているのですけれど、隣に住んでいるというのはやっぱり即応性が違いますもんね。近所付き合いの重要性は現代になってもなお変わらんのです。彼女が近所付き合いの範疇か、というと大きな疑問が生じるところですけれど。

と、日本の生活の方は色々とトラブルではないけれど、問題が多発しながらなんとかみんなで協力してしのいでいる一方で、エンテ・イスラの方はアイテムの奪取などなんやかんやとハードルはあるものの、ある程度順調に進展しつつ、ナイナイの協力体制もある程度安定して結束出来ていたので安心していたら、天使側もここに来てキツイ一手を指してきた。これはもう、戦争への一直線。それも前のような魔族と人類というわかりやすい構図ではなく、混迷しきった泥沼になりかねない危機である。矢面に立たされるベルが、これえらいことになりそうですよ。
そして、ほんと肝心なときには席を外している魔王と勇者!!

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 0−供 ★★★   

はたらく魔王さま! 0-II (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 0−供曄]促原聡司/029 電撃文庫

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アルシエル率いる鉄蠍族が加わった新生魔王軍内で、幹部ルシフェルの謀反が発生! 待遇への不満から、魔王城を破壊して飛び出して行ってしまったのだ。
ルシフェルが向かったのは、マレブランケ族の勢力圏である南方。魔王やカミーオは、いずれ南進をすべく計画を立てていたが、最強のハグレ悪魔と恐れられるルシフェルとマレブランケ族との接触を危惧し、予定を早めて進軍を決断する!
魔王軍を迎え撃つのは、頭領格のマラコーダ率いる大軍勢。幻術を操り戦場を混乱に陥れる戦術に、魔王たちは大苦戦を強いられる。さらにはマラコーダと組んだルシフェルが敵として現れ――?
魔界の統一を目指す魔王の許に、後の魔王軍四天王となるアルシエル、ルシフェル、アドラメレク、マラコーダが集うまでを描いたエピソード・ゼロ第II弾。大会戦の果てに、魔界と天界の真実が明かされる!
サタン・ジャコブが魔界の王になるまで。そして魔王軍四天王が集うまでの魔王軍勃興編第二弾。表紙見ると、サタン確かに体格もたくましくなってるんだけれど、本編の頃の魔王サタンと比べるとまだスマートで真奥寄りなんですよねえ。
それだけ、まだこの頃は魔王としての貫禄はなかったんだ。まだ、寄せ集めのごった煮集団のリーダーであって、王様と呼ばれるには相応しくはなかった。というよりも、まだみんなから認められてはいなかった、というべきか。それとも、王という存在に対してまだ悪魔たちは誰もどう捉えるべきかわからなかった、というべきか。
サタンは既にこの頃、マレブランケ族を攻める前までに王としての在り方、目指すべき形を示してるんですね。それを承知していたのはカミーオとアドラメレクだけではあったのだけれど、今を生きるだけで汲々としていた悪魔たちに、あくまで自分たちの種族だけで生存する、というだけだった悪魔たちに、未来を見せ、魔界全体の繁栄を約束してみせた。それこそが、サタン・ジャコブを魔王足らしめたものだったのだ。決して、彼が誰よりも強かったから彼を魔王として崇めたのではない、というのがこの巻を読むとよくわかる。
サタン・ジャコブとカミーオ、そして魔王軍四天王と呼ばれた四人は野心や欲望だけではなく、確かに魔界全体のことを考えていたのだということがよくわかった。
でもだからこそ、彼らは人間界に攻め込まなくてはならなくなった、とも言えるんだろうなあ、これ。現状のままでは、遠からず魔界は持たなくなる、という判断があったからこそ人間界に攻め込んだはずだったし。
この、まだ破れて従属したとはいえサタンに心服など全然していなかったアルシエルが、サタン・ジャコブが考えていたこと、そのスケールのデカさを知るに連れて心動かされていき、彼が姿を消したときに彼の抱いていた夢を、サタンが自分に託すつもりだった、と知った時の、そして彼以外の者が継いだとしてもその夢を引き継げるだけの枠組みをしっかりと作り上げていたことを理解したときの、衝撃。後々、勇者に破れたときも魔王を助けて一緒に地球に流れてくるほどにサタンに心服しきったアルシエルにどうやってなったのか。この反抗的な彼の姿からは想像つかなかったのだけれど、ちゃんとそうなるだけの大きな変転がアルシエルの中にあったんだなあ。
意外だったのがマラコーダでした。対人類との戦いっぷりからこの人、マッドサイエンティストタイプのヤバイ人なのかと思ったら、思いの外理知的で全体のことを考えて動ける人だったんですねえ。好奇心強くて色々やらかすタイプかもしれないけれど、裏で悪いこと企むような人ではなさそうだし。謀略家ではあったかもしれないけれど、他者から誠実とみなされるタイプの謀略家だったのかもしれん。
色んな思惑があったとはいえ、四天王全員冷たい関係なんかじゃなく、ちゃんと絆があったんだなあ、と思うと感慨深い。
ルシフェルもちょっと見方変わったんですよねえ。言われてみれば、彼こそがサタンと一番付き合い長いわけで、ルシフェルとサタンって部下とかじゃなく、こうしてみると対等の友達だったんだなあ、と。精神面で幼いだけに、なんだかんだと弟分扱いみたいになっちゃいますけれど、アルシエルにかまけてばかりだから拗ねちゃったりとか、そりゃあれだけれど。でも、サタンが真奥になってもなんだかんだとルシフェルに甘いというか気安いのって、こういう付き合いの長さもあるんだろうなあ。
傅役としてのカミーオ翁も必要不可欠だったでしょうけれど。最初からこのお爺がサタンを立ててくれて支え続けてくれたからこそ、サタンもちゃんとやれたわけですしねえ。この巻で、それまでの保護者としての振る舞いを切り替えて、臣下としてサタンを魔王として仰ぎ見たシーンなんぞ、魔王軍の屋台骨が誰だったのかを知らしめたのではないでしょうか。お爺のあの振る舞いの切り替えこそが、真の意味で魔王軍を新生させたとも言えますし。
しかし、ちょっと残念だったのは魔界が思いの外狭い感じだったことかなあ。距離的な広さじゃなくて、勢力の少なさが。アルシエルの一族とマレブランケを支配下に入れただけでほぼ魔界統一状態になるとは思ってなかった。印象として尾張・美濃を支配下に置いたとか、畿内を抑えたくらいの感じで、ここから魔界全土を制圧していくぜ、的な盛り上がりを勝手にこっちでしてしまっていたので。もっと有象無象の様々な勢力が跋扈しているのかと思ってたんだが。それだけ、族滅が進みすぎて魔界全土が衰退傾向にあったのかもしれないけれど。
とはいえ、サタン・ジャコブ魔王として立つ。普段の日常ものとは毛色が違いましたけれど、面白かったです。女っ気、さっぱりなかったけど! 女悪魔出てたっていうけれど、全然女性としての存在感なかったよ!

シリーズ感想

勇者のセガレ 2 ★★★☆   

勇者のセガレ2 (電撃文庫)

【勇者のセガレ 2】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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高校3年生になって一発目のテストで、まさかの赤点を3つもとってしまった剣崎康雄。原因は異世界の危機を救うための勇者修行とあって、康雄を指導する魔導機士ディアナは責任を感じ家を出ると主張。剣崎家ではまたしても緊迫の家族会議が開催されることに。
そんな康雄たちの前に、異世界からの新たな使者、ハリーヤが現れる。ディアナの上司だという銀髪美女は康雄の勇者修行に反対で、学校にまで追いかけてくる始末。追試の勉強もままならない中、ディアナとの関係を誤解した同級生の翔子ともギクシャクしたままで……。
異世界を救う前に康雄の追試が大ピンチ!? 一体どうなる庶民派ファンタジー!
あ、そうかー。そういうことだったのか。勇者の子供でしかも男の子で、そんでもって親父の代わりになる、て宣言したからヤスくんも剣と魔法で戦う二代目勇者になるものだと思い込んでたんだけれど。いや、これに関してはヤスくん当人や周りも基本その路線で考えていたからそれにつられてたのもあるんだろうけれど、彼の能力って客観的に見ると勇者じゃなくて「聖女」系統なんだ、これ。しかも、自分で戦うタイプじゃない戦闘能力が皆無なタイプの。
でも、ハリーヤさんに真っ向からダメ出しくらったように、伝説の勇者の代わりとして異世界に赴くにはヤスくんはあまりにも力不足であり、政治的にも無力すぎて向こうに行っても当人にとってもあちら側の世界にとっても不幸な結果にしかならない、というのは至極まっとうな意見で否定のしようがなかったのですけれど、もしヤスくんの持ってた能力が件の通りなら、伝説の勇者の代理ではなく、まさしくヤスくんの力が求められる事態であるんですよね。ぶっちゃけ、あの「シィ」という存在の異質さは往年の勇者の力であっても圧倒は出来たとしても果たして「噛み合う」のか、と疑問符が浮かぶところでありますし。
でも、歌で死霊を浄化する聖女さまが男、というのはちょっとビジュアル的にどうなのよ、という状況でもあるのですが。ヤスくんがカリスマ歌手とかロックバンドのボーカルとか演歌の若手ホープとかだったら、それはそれで、なのだけれど。
それから、ちょっと勉強が疎かになってたからって、三年生にもなっていてテストで3つも赤点、っていくらなんでも普段から授業に身が入ってなかったとしか思えないなあ、あかんぞヤスくん。いくら使い回しとはいえ、追試で90点以上取れてるんだから、出来ないってわけじゃないんだし。
と、ここで翔子がこんな形で深く絡んでくるとは思わんかったなあ。ぶっちゃけ、彼女クラスメイトでもないし、中学時代の同級生ってだけですごい縁が薄いんですよね。そこに昔お互いちょっと気になってた、みたいな関係があったとしても、そもそも友人とすら言えなかった関係だったというのはやはり弱い。もうちょっと以前からの交流が深くないと、なんかぽっと出の印象が拭い去れないままなんですよねえ。ここから巻き返せるのか、というところなんだけれど、それならもうちょっとディアナとの関係の方を踏み込んでいった方がちとどこもかしこもが中途半端になりかねないんじゃ、といささか心配でもあるわけです。
普通にディアナ、スポットがあたると世間知らずなところも含めて非常に可愛い反応が多いだけに、もっと彼女に重点あてて攻めていってくれた方が好みではあるのですけれど。
ともあれ、向こうに行く行かないもはっきりしないし、シィの正体や黒幕も匂わされつつも、こっちの日本でどれだけ真相に踏み込んでいけるのか、これからどう転がしていくのやら。
いい加減、剣崎家のマイホームが破壊されると、世間的にもやばいんですけど。家の修復って、簡単じゃないんですからね! 次の巻になったら直ってる、ってなわけにはいかないでしょうし、ドアくらいならともかく。
あと、出費!!

1巻感想

勇者のセガレ ★★★   

勇者のセガレ (電撃文庫)

【勇者のセガレ】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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所沢市の一般家庭、剣崎家では緊迫の家族会議が開催されていた。謎の金髪美少女ディアナが、異世界から剣崎家のリビングに現れたのだ。「私は救世の勇者、ヒデオ・ケンザキ召喚の使者としてやってきました」…って、ヒデオって俺の親父じゃねーか!平凡な高校生の俺こと剣崎康遊にゲームみたいな展開が降りかかると思いきや、親父が勇者で、若い頃異世界を救ったって!?どう見ても普通の中年な親父が「勇者」だとか信じられる訳がないし、ディアナは「勇者の息子」である俺に憧れの眼差しを向けてくるし…。異世界を救う前に、家族の平和が大ピンチ!俺の日常は一体どうなる!?
母ちゃん……。あ、あの格好はさすがになあ。【はたらく魔王さま!】のアパートのオーナーに勝るとも劣らない破壊力なんじゃないだろうか。しかも、本人含めて誰も望んでないッ!
せめて、もう少し美魔女とまでは言わないまでもスレンダーにお年を召してくれていたらまだ良かったんだけれど、普通のふくよかなおばちゃんじゃないですかー。無関係のヒトでも「うわぁ……」となりそうな姿なのに、ましてや実の息子や娘が目の当たりにした時のショックを想像すると……南無。
かつて異世界を救った勇者のその後、というのは多種多様のものがあると思うのだけれど、このお父ちゃんたちは元の地球に戻ったものの、力自体は普通に持ったままだったんですね。しかしそれにも関わらず、普通に就職し普通に結婚し普通に子供を作って普通に生活してたわけだ。まあねえ、むしろこの現代日本で勇者力だの魔法だのの力を持ってたからって何の役に立つんだ、という話なんですよね。役に立つどころか活用することすら案外難しいだろう。だから、この普通の大人であり普通の両親になっていた、というのは一番リアルな結末だったのかなあ。どころか、こうして地に足の着いた生活を送れるだけの落ち着きと割り切りを出来ていた、というだけでも敬服に値する。特殊な経験は容易に「普通」を維持するバランス感覚を失わしめてしまいますからねえ。
一方で危機となれば即座にスイッチを切れかえられるあたり、この両親本当に秀でた英雄だっただろう。それこそ現在進行形で。でも、連絡手段を忘れていく当たり、やや平和ボケしていたとも言えるのかもしれないが。
まあそんなこんなで、普通の親として別に特殊な経験を生かした子育て、なんてことは一切せずに普通に健やかに育った勇者のセガレと娘はどうやったって普通の平和な日本の子どもたちであって、両親が経験してきた「荒事」に落ち着いて対処できるなんてこと、出来るわけないのだ。
いや、かつての両親が異世界に迷い込んだ時はどうだったんだろう、と「敵」が現れた時の普通の反応を示す子どもたちの様子を見ると、ふと考え込んでしまう。
ともあれ、だ。セガレの反応は無理ないというよりも大人げない、いやちょっと現実から目を背けすぎ、という対応で主人公としては格好悪いことこの上ない。この点、むしろディアナの方が物分りが良すぎる上に無理を頼んでいる自覚が必要以上にあるので、余計にセガレの反応が格好悪く見えてしまうんだなあ。この件に関しては、彼だけではなく両親も家族に対するフォローが足りて無くて、みんなが多分に適切な対応を撮り損ねたことで最初の段階が拗れてしまった気がする。あの親父殿、やや息子に対する気配りが無神経なのは過去のエピソードの言動からも伺わせるものがあるし。
その時必要な言葉はそれじゃあないんだよ、というすれ違いがなかなかに生々しい。ただまあ、全体的に居心地悪い話ではあるんですよね。フィットしてない、という感じの気持ち悪さじゃないんだけれど、みんなが収まりの悪い中で身じろぎしているような。
かつて勇者だった親父殿が、新たな異世界の危機に再び召喚を請われてその気になって、じゃあ現在の生活は、家族はどうするの? という現実の問題提起を家族それぞれの感情を、思春期のややピーキーになってる内面の尖りも含めて描き出していく話ではあるんですが、まあ初っ端からずっと行き詰った展開が続くだけに、読んでてしんどいわりに面白味に関しては足りない物語ではあるんですよね。後半、予想外の転がり方をして緊迫感ある怒涛の展開になっていくんですけれど、それも息詰まりに風穴を開けるという感じではなかったですからねえ。
セガレの決断に関しても、いやそれでいいのか、とその内容について不安と懸念が募る方が大きい感じでしたし。
シリーズのはじまりの掴みとしては、やや鈍さを抱いてしまう一巻でしたかねえ。もうちょい、次巻以降は推進力が欲しいところです。

和ヶ原聡司作品感想

はたらく魔王さま! 16 ★★★★★   

はたらく魔王さま! (16) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 16】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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魔王さま、義理チョコを貰う!?
異世界で始まった大魔王の遺産捜索の裏で庶民派バレンタインが開幕の、第16弾!

『大魔王サタンの遺産』捜索のため、六畳一間の魔王城からは、生活用品一式が異世界エンテ・イスラへと移されていた。通勤時間の問題により、魔王はそんなからっぽのヴィラ・ローザ笹塚201号室で寝泊まりをすることに。独り身の生活に寂しさを感じながらも、正社員登用研修に参加する魔王。そんな中、研修で一緒になったゆるふわ女子に思いがけず義理チョコを貰ってしまう。アシエスの食い意地によりその情報が知れ渡った時、女性陣に動揺が広がるのだった――!
一方エンテ・イスラでは、大魔王の遺産の一つ『アドラメレキヌスの魔槍』を手に入れるため、鈴乃、ライラ、アルバート、ルーマックが北大陸に旅立っていた。日本のジンギスカン屋そっくりの店では、「囲いの長」と呼ばれる北大陸の代表が待ち受けており……? 庶民派ファンタジー第16弾!

千穂ちゃん、まじすげえ。この娘のくそ度胸と聡明さには何度度肝を抜かれれば済むのか。悪魔大元帥の称号は決して名誉職のそれじゃないのだ。称号にふさわしい働きを、常にこの娘は示している。だからこそ、何の力も持たない女子高生という点は最初から殆ど変わらないのに、彼女の名望はヴィラ・ローザ笹塚の小さなコミュニティに留まらず、魔王軍の幹部たちも人類諸国の名立たる者たちに広がっていくのも当然だろう。
事態がエンテ・イスラを中心に動くことになって、千穂ちゃんが蚊帳の外になってしまうんじゃ、という危惧なんてどこへやら。むしろ、真奥と恵美の方が大っぴらにエンテ・イスラで動くわけにはいかないから蚊帳の外になってるくらいじゃないか。
その清々しいまでの威風堂々とした振る舞いと、意思の強さによって、今は亡き前魔王軍大元帥アドラメレクの遺産、いや彼の魂の後見を得た佐々木千穂。もはや、名実ともに誰もが認める、魔王軍大元帥筆頭である。
今回の一連の話を鑑みると、この16巻の表紙絵は白眉なんじゃなかろうか。千穂ちゃんの凛々しい姿に、奮闘しながらもすっ転ぶベル、そして完全に乙女の表情になってしまっている恵美。三者のヒロインのこの巻における動向を、一発で表してしまっているのだから。
それにしても、真奥さんはもっとしっかりしなさいよねえ。芦屋たちがエンテ・イスラの方に生活の比重を置いてしまったが故に、逆単身赴任みたくなって部屋に一人取り残されてしまった真奥。ベルもエンテ・イスラの方で忙しく、千穂ちゃんは男の一人住まい状態になってしまった201号室には簡単に足を運べなくなってしまったせいで、孤独感に打ち震える真奥のメンタルがマッハで消耗してしまっているんですが、飯事情が寂しくなって、おまけに人恋しくてみるみる元気がなくなっていく魔王さまって、どんだけだよww
まさかここまで真奥が軟弱だとは、そりゃあ芦屋やっつけてたら魔王軍勝手に自壊してたんじゃないか、というベルたちのコメントは的を射すぎてて笑えない。
一方のベルも、エンテ・イスラの政治的なバタバタ騒ぎでも十分大変なのに、そこに真奥のハッキリしなささが原因で千穂や恵美、その他もろもろの女性関係のもやもやした状態に神経をすり減らすことに。自分では傍観者というか中立の立場で居るつもり、でいるのが余計に拍車をかけているような気がするなあ、彼女は。ベルも当事者なんですよね、それを認めていないから余計に真奥の考えが足りない言動に過剰反応して感情を滾らせることになる。この点、ひたすら自分と戦っている恵美がひたすら内圧を高め続けているのとは裏腹に、活火山並みに小規模噴火を繰り返しているのは、まだマシと考えるべきなんだろうか。
ただ、真奥へのイライラが色んな側面でベルに踏ん切りをつかせてしまっているのは何とも面白い状況で、ベルの場合は冷静にさせるよりもむしろ暴走させる方がガンガン閉塞を打開していくんですよねえ。その意味では、彼女も魔王軍大元帥として派手に思い切って振る舞った方がいいんでしょうなあ。でも、人魔共同戦線の陣中でも教会の幹部ではなく、本気で魔王軍の立場で物言いしてるのは笑ってしまいましたけれど。あれは八つ当たりみたいな状態だった、としても。
あと、チビカマはストライクすぎて、もうこれ絶対定着して離れなくなったぞ。
いずれにせよ、今回の一件は魔王も勇者もそっちのけで、悪魔でも天使とのハーフでもなく、ただの人間でありながら魔王軍大元帥の看板背負った二人の少女の活躍で、様々な行き詰まりやらしがらみやらをふっ飛ばしてくれたのは、痛快の一言でした。
梨香さんもここにきて、ベルの企みにも一枚噛んでエンテ・イスラにも出入りしていたように、完全に仲間入りしてきた上に、芦屋に対しても一歩も引かない姿勢を見せてきて、肝を据えた女性陣はほんと気持ちいいですわ。芦屋も、タジタジなんだけれど彼の場合は実のところ既に心中かなり傾いてるからなあ。
そして、完全に内面は乙女とかしてしまっていて、口に出して言っている言葉が本当に建前だけになってしまっている恵美。彼女、マジでどうするんだろう。うちに篭めてる熱量がどんどん凄いことになってるんだけれど。

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 15 ★★★★   

はたらく魔王さま! (15) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 15】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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魔王、ついに正社員!! ……になるための登用研修を受ける!
真冬の大騒動な第15弾!

ライラから異世界の危機について話を聞いた魔王だったが、悲願の正社員への登用研修が始まり、それどころではなかった。
魔王の留守中、千穂と鈴乃はアラス・ラムスのためクリスマスパーティーを企画していた。初めてのクリスマスに浮かれて靴下を大量購入するエメラダや、梨香のことを気に掛ける芦屋、母親が世界の危機に関係していてもまったく気にしない漆原たちをまとめあげ、パーティーを無事開催することはできるのか!?
天使たちの過去、天界の悲劇も明かされ、庶民派ファンタジーにまさかの新展開も!?
こうしてみると、真奥って主人公とは違うよなあ。【ラブひな】後半の景太郎、というとたとえが古すぎるか。たまにあるパターンなのだけれど、真奥自身は物語の主軸でありキャラクターたちからその動向を注視される存在なんだけれど、悩んだり迷ったり一歩一歩進んでいく内面や人間関係の紆余曲折に一喜一憂する様子を詳細に描写されるのは周囲の人間たちなのである。だから実際の主人公は周りの人間たちであるとも言えるし、群像劇とも言えるのかもしれない。真奥も勿論、決断や判断に迷ったり右往左往しているのだけれど、一番芯の部分が揺るがないと同時に、その一番肝心な部分に関してはなかなか踏み込まれずに描かれることがないので、主人公でありながらもしかしたら登場人物の中で一番その人物像が未知でもあるんですよね。一番肝心な部分で一体何を考えているのか、教えてくれないというかわからないようになっている。
だからこそ、彼に好意を抱いてしまったヒロインたちは真奥という男が何を考えているのか、この局面において何を選ぼうとしているのか、常に迷い悩んで考え込んでしまっている。
今回は真奥が本編に殆ど登場しない構成になっているせいか、普段よりもそのへん顕著になってるとも言えるんですよね。
風雲急を告げているにも関わらず、生活自体は落ち着いているという状況も拍車をかけているのだろう。
今の自分達について、そして将来について、みんなが立ち止まって考える機会を得てしまってるんですよね。
ただ今までと変わらない日常が続いていくなら、深く考えずにそのまま流されるように現在を延長していけばいい。危機が訪れ渦中に放り込まれたなら、考えている暇もなく現状を切り抜けなければならない。
でも今回に関しては、今までの日常を捨てて違う世界に旅立つ、という選択肢を突きつけられた上で、考える時間が与えられている。否応なく、立ち止まって周りを見渡して、先のことを具体的に考えなきゃいけない局面なのだ、これ。
まず、みんな思い描いたのは、誰も不幸にならず穏便に、みんなが幸福でいられるにはどうしたらいいか。で、ここでみんな考え込んでしまったわけですね。
そもそも、幸せになるってなんじゃらほい。
真奥はずっと正社員になることを目指してきていて、今は正社員研修までたどり着いて夢までもう一息、のところまで来ている。ところが、そもそも真奥の能力的ではマッグの正社員という枠組みは合致しないんじゃないか、なんて疑惑が出てきている。彼のマッグ店員としての優秀さ優良性は木崎店長の下でこそ発揮されるものなんじゃないか、という疑惑。
或いは、長命種である天使や悪魔と、短命種である人間との恋愛。サリエルやノルド、ライラ夫妻が語る寿命の違う存在との恋、幸せになるということの経験譚は、エミリアを揺さぶり梨香の告白に背を向けた芦屋に大きな衝撃を与えることになる。
特に、ある種の固定観念に縛られていた芦屋なんぞは、その価値観からひっくり返されるような思いに晒され、大いに煩悶することになる。今の彼は立場や種族の差、建前なんかをペリペリと引き剥がしながら、ようやく自分の想いの形というものを自分で覗きこみ始めているところなので、こういう初々しい煩悶は見ていてニヤニヤしてしまうんですよね。あんまりズルいとか酷いとか言ってあげないで、何もかもが初めての経験なんだよ、芦屋も。恵美もそうだけれど、ある種の慣れや健気さが在る千穂や梨香は試行錯誤や立ち止まってしまってる時がんばれがんばれと応援したくなるタイプなんだけれど、本当に初心で一歩一歩が恐る恐る、何かあると途端平静を保てなくなる初心者な恵美や芦屋のそれは、より甘酸っぱさが増々で思わずジーっと見守りたくなるというか、突っつくのも勿体無いという感じで、いやはや。ベルはもうちょっと存在感出したほうがいいと思うけれど。

一連の天使誕生にまつわる事情から、さらに悪魔の正体や大魔王サタンの過去など、エンテ・イスラにまつわる謎の殆どが開示されたわけだけれど、なんか思ってた以上にファンタジー要素が抜けたSF展開だったのね。そして、ラストの急展開。あれだけエンテ・イスラの危機を救うために今の生活を犠牲にすることを拒絶する雰囲気だったのが、どうして一転ああなってしまったのか。最後の最後まで理由が想像できずに首を傾げていたのだけれど……なるほど、あれはみんな全会一致で意見をひっくり返すのも仕方ないわ。
みんなで幸せになるには、の大原則を無視することは出来んわなあ。
いやそれにしても、エメラダさんがどれだけ政治的に大暴れしたんだが。でないと、あのラストの光景はなかなか現実のものと出来ないぞ。そして、ちゃっかりガチで悪魔大元帥に就任している千穂ちゃんにワラタw

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 14 ★★★★  

はたらく魔王さま! (14) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 14】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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異世界エンテ・イスラから、魔王を追って時空を越えた勇者エミリア。無事東京へたどりついたものの、魔王を見つけられず、たった一人街を彷徨っていた。そんな勇者が迷い込んだのは、永福町に建ついわくつきの高級マンション。偶然開いていた窓から部屋に忍び込んだ勇者が、地球人と出会うことになる『勇者の部屋探し』。
さらには、恵美と千穂がお寿司を食べながら友情を深めた『回転寿司』。マグロナルド幡ヶ谷駅前店店長・木崎が幼なじみと激闘を繰り広げた『マグロ店長会議』。いつも通り仕事に出掛ける真奥だが、何かお尻に違和感が……な『魔王の破けたズボン』ほか、『芦屋の圧力鍋』『魔王新しい携帯を買う』も収録。
電撃文庫MAGAZINE本誌と、電子限定号掲載の5編に加え、書き下ろし中編を追加。エピソード大盛りでお贈りする庶民派ファンタジー第14弾!

【勇者と女子高生、友達になる。】一巻で真奥たちの正体を知ってしまった千穂ちゃん、やっぱり相応に動揺し、悩んでたのね。そりゃそうだ。どれほど出来た高校生だって、こんな突拍子もない事態をなんでもないことのように飲み込めないもの。でも、そのぐちゃぐちゃになった思いを整頓して飲み込む助けになったのが、魔王と対立する勇者ご一行だった、というのがまたいいなあ。
まあ実質、異世界からきたエメとアルバートが初めて地球で食べるご飯(回転寿司編)でもあるのですが。
ともあれ、この問題に対して勇者たちに率直に相談してしまう千穂ちゃんの肝の座り方には、相変わらず感嘆を覚えるほか無い。それに対して、自分たちのことは気にするな、と行ってのけれる恵美たちも飛び切りなんだよなあ。両サイドともに、尋常じゃないくらい公平であろうとしてるんですよね。どちらかというと、感情側の問題にも関わらず、だからこそ感情的にならずに理性的になろうとしている。このあたりが、知恵ちゃんにしても恵美にしても尊敬に値する部分なんだよなあ。


【魔王、節約生活を振り返る】
商店街の福引で圧力釜があたってテンションあがりまくる魔王軍大元帥アルシエルww
喜びすぎだろう、悪魔大元帥なのに。とドン引きする恵美やベルが何ともはや。でもそれ以上に、芦屋の家事スキルが圧巻過ぎて、もう笑えてくる。
節約料理がそもそも準備段階や調理方法が全然節約じゃないよ! という話には目がウロコ。そうだよなー、単に食材が残り物だったり処分品だったりしても、油を大量に使ったり調理器具がそこそこ揃えないとダメでお金がかかる、ってなら本末転倒だもんなあ。


【魔王、勇者の金で新しい携帯電話を手にする】
ボロボロになった携帯電話使い続けてて、危ないからとお店の人にガチで怒られる真奥さんがもう、ダメだよ。そこまで壊れたものを修理してもらおう、という時点でちょっとせせこましすぎる。というより、無理と言われてるのに未練がましくゴネるのは、恵美に買い換えてもらうことに引け目を感じてるのか何なのか。自分から弁償しろと言っておいてねえ……このあたりから、真奥の攻めっけが空回りしはじめるのよねえ。思った通りに恵美側が打ち返して来なくなった、と。
アニエスがくっついてるのはおまけとして、アラス・ラムスを連れた恵美と真奥ってもう完全に若夫婦にしか見えんなあ。何も考えてないようで、意外と気ぃ使いのアニエスが恵美とちょっとお近づきになる話でもある。
そういえば、本編ではちょうどゴタゴタしていて、恵美のお父さんにアニエスが娘として一緒に暮らしていた件について、娘同士の初対面から距離感の構築に関してはちゃんとやれてませんでしたもんね。それを短編とはいえ、きっちりこうして話書いてたのか。


【勇者、敵幹部の力に驚嘆する】
やべえわ、すげえわ芦屋さん。昭和三十年か四十年代くらいまで遡らないと、ここまでの裁縫スキル持ってるオカンってなかなか居ないんじゃないだろうか。ちーちゃんも相当にレベル高いはずなのに、彼女ですら太刀打ち出来ないハイレベルすぎる家事マスターだ。
ズボンの破れ方については、すげえ実感篭ってるなあ。こんな破れ方したかなあ、というところだけれど、誰も指摘してくれないあたりには苦笑してしまった。女性陣、それはみんな逆にデリカシーありすぎなんじゃなかろうか。


【魔王、上司の過去を知る】
おお、この水島さんてアニメで真奥が応援いった店の店長か。友人関係という設定を此処で活かして来たのね。しかも、幼馴染。
もう一人、腐れ縁、好敵手、天敵と言っていいのか。ケンタのエリアマネージャーとして現れたもう一人の幼なじみと、思いっきり火花飛ばし合って衝突する木崎店長。
以前、自分の店を持つ、という将来の夢を語ってくれたけれど、そんな彼女の過去から今に至る背景やそのスタイルの元となった部分がわかる話である。ってか、これぞ本物の意識高い系だよなあ。言動にきっちり中身と結果が詰まってるタイプの。もう学生時代から、がっつりと目的意識が構築されてるんですよね。
面白いのは、その向上と練磨が姫子との激しい衝突によって磨かれたフシがある、というところか。誰よりもお互いを認めながら、しかし絶対に認められない相容れぬ関係。難儀やなあ、と思いつつも、その関係を巧みに維持し続け傍から面白がってる水島さんが一番ヤバイのはよくわかった。
ラストの口説き文句は、もう真奥がちゃんと目的持ってなかったら絶対陥落するそれだよなあ。ぶっちゃけ、木崎さんにくっついていく回り道もありなんじゃ、と思うほどに。


【はたらく前の勇者さま! ―a few days ago―】
なんか、事故物件に住んでいた幽霊に日本について教えてもらった、みたいな話を以前していたけれど、違うやん、幽霊あんたのほうやん!!
幽霊なんて非常識な、とは異世界だのこの世界でも神様みたいなのが出てる以上、否定するものじゃなくて、普通に幽霊居たんだー、と思い込んでたんだけれど、普通に違ったやないですかー。
ってか、遊佐恵美ってちゃんと由来あったんですね。勇者エミリアのもじり、だけではなかったのか。こればっかりは後付だろうけれど、納得はできる。
しかし、真奥が芦屋と二人だったのに比べて、やはりエミリアの方は一人で異世界に放り出されて相当に苦労したんだなあ、というのが伝わってくる。相談する相手も弱音を吐ける相手もいない状態で、手探りでかなりの綱渡りをしながら最初の時期をくぐり抜けていたわけで、これ冒頭に関しては真奥たちよりもやばかったんじゃないだろうか。速い段階で大家さんに拾ってもらったわけですしね、あっちは。一方でエミリアの方は、ボロだしまくって下手打ちばかりでしたもんね。
それでも、一山越えたらあっさりそこそこの暮らしをゲットしてるあたりに、エミリアと真奥たちとの違いを実感してしまうわけで……勇者すごい。


シリーズ感想

はたらく魔王さま! 13 5   

はたらく魔王さま! (13) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 13】 和ヶ原聡司/ 029 電撃文庫

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天使と勇者の母娘喧嘩は落ち着いたものの、依然仲が悪いままの恵美とライラ。二人の関係にうんざり気味の真奥に、ライラから異世界を救うための“お仕事”の内容が伝えられる。しかしそれに不信感を抱いた真奥は、ライラに自宅を見せろと提案。全力で拒否するライラを尻目に、皆で練馬の自宅へ行くことを決める。
一方千穂は、恵美のために動く真奥を見て落ち込んでいた。二人が仲良くなることを望んでいたはずなのに、ヤキモチを焼いてしまったのだ。しかも二人が異世界に帰ってしまうのではないかと、授業も手につかない。その日の夜、思いがけず梨香から声をかけられた千穂。芦屋と食事に出掛けていたという梨香と、「悪魔に恋する乙女達の女子会」をすることになって――!?
女子会の行方は、そしてライラの自宅で真奥が目にしたものとは!? 庶民派ファンタジー、異世界の真実に迫る第13巻!

……面白いなあ。いや、なんだろう。今回いつもにもまして本当に面白く感じたんだが、なんでなんだろう。なんちゅうかね、千穂にしても恵美にしても梨香もベルも、女性陣の自分でも制御できない感情の揺さぶられ方がねー、生々しいというかダイレクトなんですよね。迫真、というべきか。元々、気持ちの動き方や感情表現、心理描写など細やかで丁寧なものがあったからこそ、この作品の肝ともいうべき「生活感」に、登場人物たちが溶け込んで生きている生っぽさがあったのだけれど、ついにそこに「恋愛」という要素が女性陣のサイドから怒涛のごとく押し寄せてきたわけだ。二桁の巻数を費やした上での満を持しての大攻勢である。それだけの積み重ねと下地をこしらえた上での、発現であり一線を越えて踏み越えてきたわけだ。そりゃあ、面白くないわけがない。まさに、盛り上がりどころ、ですもんねえ。
それもね、これまでずっと仲良くなって親身になって付き合ってきた女性陣が、そのまま仲良しこよしのままじゃなくどうしようもなくお互いの存在を刺激しあうものになってきたわけですよ。勿論、これまで築き上げてきた仲間とか親友とかを通り越した、一種の家族みたいな関係は崩れていなくて、お互い好意と敬意を抱いたままなんだけれど、ただ一点、同じ人を好きになってしまった、ということが彼女ら自身の感情をどうしようもなく刺激して波打たせてしまっている。相手をどうこう、じゃなくて自分に対して大きく意識を持って行かれているあたりが、彼女たちらしいところなんですが。
このあたり、真奥は男として非常に難しい舵取りを強いられる場面なんですけれど、確かに千穂ちゃんに対してかなり一方的に負担を押し付けていたのは間違いないんだよなあ。周りから寄ってたかって叱られるのも無理からぬところなんだけれど、じゃあどうすればよかったのか、というと首をひねらざるをえないところもあって。まあ、お叱りを受けた内容が千穂に対するフォローが足りない、という部分だったので、これはもう真奥当人も納得済みの不徳。
で、あるのだけれど、このへんの恵美の方の感情も面白くてねえ。もう、めちゃくちゃ面白くてねえ。真奥とライラの話を立ち聞きしてしまっている恵美の、あのシーンの心の動きは本当に面白かった。
あの後の、ベルに恵美が吐露した気持ちの形容は、あれは表現としては絶賛に値すると思う。ものすごく具体的なんですよね。持って回った言い回しでありながら、あれだけ生々しく恵美が今現在抱いている真奥への気持ちを表現したものは、なかなかないんじゃないだろうか。あれ、変にダイレクトに言うよりもよっぽど気持ち伝わってきた。伝わってきたからこそ、それを聞かされたベルはベルで、あの瞬間どれほどいろんなことを考えたかを想像してしまって、それがまたゾクゾクするわけですよ。

さて、それぞれの恋愛模様が加速し始めている状況で、だからこそ再びスポットがアテられつつあるのが、ただの人間と、それ以外の悪魔や天使たちといった人外の存在との種族差である。今、真剣に自分たちの関係の先を考えるようになった時に、どうしてもこの人種差という厳然とした壁の存在が突きつけられてきたわけですね。一方で、ライラと恵美パパの人種を超えた夫婦の存在、というものも、彼らの登場によって実例を伴って現れてきたわけで。
面白いのは、同時に明らかになりつつある世界の真実の内容が、悪魔と天使が元々「人間」と同じ存在だった、というところだったりするんですよね。一つのテーマに対して、様々な方向から提議が集束していくんですよね。面白い。

しかし、今回色々と激動にして驚愕の真実が明らかになりましたけれど、やっぱりライラが一番度肝抜かれたですよ。うん、びっくりした。
真奥たちが彼女に抱いていた不信感のひとつはよくわかるもので、つまるところ彼女にだけ地に足の着いた生活感がなかったんですよね。ちゃんと、この地球に生活基盤を築いている節が感じられなかった。仕事して収入を得て、衣食住を手に入れて、生活している気配が感じられなかった。これがないものだから、彼女は真奥たちが守ろうとしている生活というものに対して、根本的に理解が及んでないんじゃないかと、不信感を持ってたんですね。ところがどっこい、彼女は彼女でちゃんとこの日本で住むところと収入を得るための仕事を持っていたわけです。思っていた以上にちゃんとした。もう凄いわ。この作品、凄いわw
ライラみたいな存在ですら、ちゃんと生活実態を持たせているとか、すごいわw
これはもう、有無を言わせず真奥も恵美も納得したんじゃないだろうか。一発で不信感の大半は吹っ飛んだ気がする。とりあえず、話をちゃんと聞くくらいの聞く耳を持つ納得は得たんじゃないだろうか。

それから、今回ジャケットで大いに自己主張している梨香さん。ついに芦屋との関係に自ら踏み込んでいった彼女ですけれど、なんちゅうかこの人、姉御やねー。想像していた以上に、根性あるわ。正直、芦屋との関係は難しいんじゃないかな、と思ってたんだけれど、今回彼女が見せてくれた色んな顔は、凄く良かったんですよね。なんか、凄く好きになったわ、この人。決して千穂ちゃんに見劣ってないと思う。敬語とかすっ飛ばした、あの素の表情は、思ってたよりも芦屋とお似合いな気がするんだよなあ。
うん、見る限りではこれ、十分脈ありな気がします。当人、もう完全に斬り捨てられたつもりみたいですけれど、むしろあれ、逆にあそこで芦屋の方、撃ちぬかれた可能性すらあるんじゃないか?
なんか、芦屋は芦屋で妙な動きしているっぽいですけれど。千穂が気づかなかったら、読んでるこっちはさっぱり違和感感じなかったレベルですけれど。これって、先日芦屋がさらわれてエンテ・イスラに連れて行かれた件、けっこう重要な伏線になってくるんだろうか。

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 12 4   

はたらく魔王さま! (12) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 12】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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銀髪となった漆原の病室に集まった一同。皆の前で恵美の母親であるライラがこれまでのことを告白すると、勇者として、娘として、恵美の怒りが大爆発!過去の真相を知った恵美は、ライラとの大喧嘩の末に病室を飛び出してしまう。追いかける千穂と鈴乃だったが、二人は恵美を見失ってしまい…。一方マグロナルド幡ヶ谷駅前店では、新サービスのマッグデリバリーがスタート。レッド・デュラハン一号(店のバイク)で街を駆け巡る魔王も、母親と大喧嘩した恵美のことを気に掛けていた。庶民派ファンタジー、混沌の第12弾!勇者と天使の壮大な母娘喧嘩に挟まれて、魔王さま大ピンチ!?
これ、これを単なる親子喧嘩に矮小化してしまってはいけないよなあ。恵美サイドからすると、これは喧嘩なんて上等なものにすらなってないじゃないですか。ライラの事を、親と認める以前の問題になってる。これ、すっごいデリケートな話なんですよね。恵美の心の機微にえぐり込む話であって、それを恐ろしいほど繊細に取り扱っている。面白いことに、恵美の内面について直接描写することはせずに、徹底的に誰か他人の目から見た恵美の様子、として描いている為に、恵美の心の中で渦巻いている気持ちがいったいどんなものなのかは、はっきりとわからないように描いてるんですよね。実のところ、恵美もまた具体的に言葉にする形でそれを形象化できていないのかもしれない。
この、心の内面、心の動き、感情の内実というものを直接的には書かずに間接的に伺わせる形で見せていく、というのは本作一貫して行ってきた描写方法なのだけれど、ちょいとここに来て極まった感がある。
彼女の抱いている怒りというのは、多分読者も含めてかなり理解が届かない領域なんですよね。それは他の登場人物たちも同様なのだけれど、その「分からない」という事に対する対応が個々によって全然違うわけですよ。ライラやガブリエルたちと、ベルや千穂たちとでは理解できないことに対する理解の仕方が違うんですよねえ。単に親しさ親しさの違いではなく、千穂たちとエメラダでも対応が違うあたりはちょっと感嘆してしまいました。人間関係とその距離感の複雑な在りようをとことん突き詰めているからこその、各人の反応の違い、とも言えるわけです。
その上で、度肝を抜かれるのが真奥のそれなんですよね。
恵美にとっては、自分自身ですらうまく形に出来ないまま暴れて手の付けられず、一番やわらかいところまでむき出しになってしまったソレを、かの魔王さまはすっぽりと手のひらで包み込んでしまわれたわけですよ。
恵美の今回の崩れっぷりはかつてないものでした。
父親が母の味方について自分の全面的な味方ではない、というのを行動で示してしまったせいか、拠り所を失ってしまい、必死に一人で自立しようと自分を叱咤する風にすら見えて……逆にその姿を目の当たりにして、エミリアがまだ18歳になったばかりの「子供」だというのを、今更のように認識させられた感すらあります。これまで、テレアポとして働きながら一人暮らし、というOL生活をしていた恵美って、ちゃんとした大人、自立した社会人、というイメージが最初に植えつけられていて、そこにさらにアラス・ラムスという子供まで出来て母親としての振る舞いまで求められるようになることで、重ねて大人の女性という印象を強く焼き付かせてたんですよね。たまに弱い側面を見せても、それは女性としての弱さであって、幼さからくる弱さとは思わなかったのです。
ところが、今回彼女が見せた脆さというのは、そんなイメージを根底から打ち崩すもので、「ああ、そういえば恵美って、本当ならまだ高校も卒業していない年齢なんだよな」と、テレアポ時代の同僚の家で大学進学について真剣に聞く彼女の姿に、思わず呻いてしまったのでした。
まあねえ、これだけメタメタに参ってて、心が疲弊し切って立ち上がれなくなりかけているところに、あんな台詞聞いちゃったらねえ……。
これで何も思わないほうが、感じ入らない方がむしろおかしいですよ、というくらいに説得力のある陥落の仕方でした。いや、ヤバいわ、これはもう好みドストライクの展開ですわ。こんだけ文句なしに、筋道立てて、勇者エミリアが魔王サタンに惚れてしまう展開をやってくれるとは。なあなあで済まさず、とことんやってのけてくれましたよ。真奥は真奥で、自覚なさそうだけれど、ガブリエルとの会話見てると、千穂ちゃんと恵美のこと同列に扱ってるんですよね。千穂ちゃんと恵美に怖い思いをさせた奴は排除するって、そこで二人の名前並べるか、と思わず二度見したくらい。
正直、恵美の方は一時の気の迷い、とは言わないけれど、ファザコンこじらせた延長線上、みたいな節も若干見受けられるし、そうそうトントン拍子に行くとは思わないんだけれど、でもラストの魔王城での一幕にはニヤニヤが止まらんどころか、顔面崩壊しそうになりましたがな。
千穂ちゃんからすると、まさか恵美が同じ舞台の上に乗っかってくるとは思いもよらんかったんだろうなあ。そりゃ、思わんよなあ、勇者と魔王のあの関係見てたら。たとえ、信頼が芽生え仲間になったとしても、男女の機微云々にまつわる展開になるとは、まあ思わんでしょう。
さり気なく、鈴乃は鈴乃でこっそり凄いことしてたりするんですけど、あれは本気か、ハートマークw

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 0 4   

はたらく魔王さま! 0 (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 0】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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少年時代の魔王サタンが登場!
魔王軍設立までのエピソードを描いた『魔王さま!』始まりの物語!

赤い空と大地が覆う魔界の地。弱小部族出身の少年悪魔が、かつて魔鳥将軍と呼ばれ恐れられた漆黒の翼の老悪魔カミーオと激しい口論をしていた。少年の名はサタン。後に魔王サタンとしてエンテ・イスラ征服に乗り出すのだが、今は非力な一悪魔であった。
サタンは周辺の二大勢力である蒼角族と鉄蠍族に対抗するため、砂塵の荒野で気まぐれに生活し、一度動き出せば周辺の勢力図に影響を与える程の力を持つルシフェルを味方にしようとしていた――。
サタンとルシフェルの出会い、そしてアルシエルとの激突までを描いた魔王達の出会いの物語を、200ページ超えの大ボリュームでお届け。さらに、勇者エミリアがエメラダ達仲間と旅をしていた時代の書き下ろし短編、魔王達が笹塚に来たばかりの年末年始を描いた電撃文庫MAGAZINE掲載の短編を収録。
エピソード・ゼロとして、庶民派成分控えめの特別編でお贈りします!!
カーミオって初登場時、いまいちイメージ掴めなかったんだけれど、なるほど爺ちゃん役だったのか。それも、サタンの後見役か傅役みたいな感じの。一番最初からサタンの側にいて、というかそもそも無力で何の力もない子供だったサタンを保護して守り育てたのがカーミオだったわけで。その上で、突っ走るサタンの諌め役でもあり庇護役でもあり、とそりゃあ重要なポディションだ。
今更過去編、と読む前には思ってたんだけれど、これって何気に重要なパートだったんですよね。この巻、だいぶ積んでいてこれを読んだ後にすぐに新たに出た新刊の本編を読んだのだけれど、本編側での真奥の考え方の骨子みたいなのが、この過去編の方でしっかりと描かれていて、過去のサタンがどういう人物かここでキッチリ描き表していたからこそ、より現代編での彼の動向に意図と芯が通って見えたんじゃないかな。
実のところ、今まで現代の真奥にはその内面形成に得体のしれない部分はやっぱりあったと思うんですよ。それは、彼の為人が結局現代に人間になってからしか描かれていなくて、魔界やエンテ・イスラでの魔王時代にいったい何を考え、何を目的とし、何を思想思考の規範骨子として動いていたかがほとんど描かれていなかったからだと思うのです。魔王サタンとはそもそもいかなる人物だったのか、それがあやふやなまま現代での真奥が描かれていたために、彼の一番深い部分が肝心なときに、その内面が容易にうかがい知れない言動を取った時に、やはり不気味に感じる部分があったわけですよ。
しかし、最新刊の12巻を読むと、真奥にそういう得体のしれない部分が残っているのは正直まずい展開だったわけです。あの内容、かなり繊細というか心の機微を問うものになっていて、真奥という人間、というか存在が根底でどういう規範を持っているかわかってないと、難しい展開だったんですよ。逆に言うと、それがわかっているからこそ、威力がダイレクトに伝わって物凄いことになってしまったわけだ。
と、まあ次の展開への言及は次巻の感想に書くとして、本作で一番驚かされたのが、サタンが四天王を配下に得たのが、実は彼らを実力で圧倒的に上回る前だった、というところなのでしょう。力で従えたのではなくて、理想と夢で従えたというところなのでしょう。まさか、一番最後だと思っていたルシフェルが一番最初に味方にした四天王だったというのは意外も意外。しかも、実力的にはまったくサタンが敵わない時期に、である。アドラメレクも、一対一だと勝てるか怪しい時期に、あんな形で味方につけることになるとはねえ。なんちゅうか、サタンってマジでちゃんと魔王をやっていたというか、立身出世をガチでやってのけていたというか。乱世における下克上を真面目にやり遂げていたというか、面白い人生やってたんだなあ。
ちなみに、三番目に仲間になることになったアルシエルさん……しばらく、こいつ誰だっけという以前に、噛ませのやられ役だと思ってました。芦屋の方の名前で馴染み過ぎてて、アルシエルとかいう本名わりと本気で忘れてたりw
いや、芦屋さんが鉄蠍族だなんて変な種族だとか知らなかったし、忘れてたし。でも見直しましたよ。魔王軍随一の智将とか言われつつ、戦いは腕力任せの脳筋じゃん、と常々思ってて智将(笑)だとわりと信じつつあったのを、見事に覆してくれました。ほんとに頭良かったのね、戦い方も智将だったのね。そもそも魔族全体がどれだけ脳筋か、というくらい策も連携も何も持たない存在であったので、アルシエルの統率と戦い方は際立っていたのですが、エミリアの母ちゃんの天使との接触という要素があったサタンと比べても、何の概念も残ってない状態からあれだけキッチリとした組織を打ち立てていたアルシエルは規格外だったんでしょうね。そりゃあサタンも欲しがる逸材だわ。
真奥の本名はサタン・ジャコブ。これは以前にも出てたんでしたっけ。黒羊族という種族だったのは確か初耳だったぞ。あれで羊さんだったというのは、マジで「ええ!?」となりましたわ。ジャコブというと、ジャコバン派が連想されたけれど、むしろジャコブの原名であるヤコブの意味があったのかな。
ともあれ、このまま魔界統一編を見てっても面白いんじゃないかというくらい、ファンタジー戦記の第一巻みたいなノリは面白かったですし、真奥さんの見ている風景の核心みたいなモノに触れられた感じもあり、先に進むためにも重要な振り返りパートだったように思います。
最後の短編は、まだ新生魔王軍のみんなが出会っていない状態で、結構すれ違ってたのよ、というわりと世の中狭いのだというお話でした。これはこれで。

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 11 4   

はたらく魔王さま! (11) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 11】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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魔王たちの尽力で異世界エンテ・イスラから無事帰還した恵美。しかし長期の無断欠勤により、テレアポのバイトをクビになってしまう。追い打ちをかけるように、魔王は救出に掛かった経費を払えと、請求書片手に恵美へと迫る。その額、なんと三十五万円! 悪魔に借金などプライドが許さないのか、恵美は貯金を崩しながら新たなバイトを見つけ、返済しようとするのであった。一方その頃、大家のミキティによって病院に隔離されていた漆原の身体には、ある異変が起きていた…。フリーター魔王さまの庶民派ファンタジー第11弾。勇者の新たなバイトのせいで、勤勉な魔王がまさかの出社拒否に!?
35万って、微妙に金額が生々しすぎます、魔王さま。この、明らかに高いんだけれど出そうと思えば出せなくもない金額なのが、嫌らしいったらありゃしない。そりゃ、心象悪いですよ。100万越えて吹っかけられるより、さらにたちが悪いかも。
ただまあ、最初から恵美には思惑はお見通しだったようですけれど。と、この点魔王の狙いは的外れではなくて、エンテ・イスラに行く前の恵美なら、まず魔王の思ってた反応したと思うんですよね。それが、予想されていたのとは全然違う反応を恵美が見せた、というのが、彼女の変化を如実に示しているのでしょう。
女の子は素直になったら、強いんです。
面白いのは、これまでずっと真奥が握っていた主導権がここで恵美に移行しているところなのです。これまで恵美と真奥の関係というのは、感情の種類はともかくとして、とにかく恵美から真奥への一方通行だったわけです。真奥は恵美に対して、徐々に信頼や仲間意識を培ってはいましたけれど、あくまで受け身であり反応であり対応であり受動的であって、真奥の側から恵美に対して動的に感情を向けることはこれまでなかったのですが……。
今回の経費取り立ての失敗を契機に、真奥の側から恵美に対して→が向くようになったんですよ。これは、大きな、とびっきりの驚きでした。恵美の存在をどう扱っていいのかわからない、自分の中でどう位置づけたらいいのかわからない、ものすごく意識してしまい、狼狽えている魔王さま。正直、ここまで足元覚束ずにあたふたしている真奥を見るのは初めてじゃないでしょうか。
まるでラブコメじゃないかッ。
面白いなあ。ここに来て、鈴乃といい恵美といい、本当の意味で真奥と対等に、というか真奥から見て対等の高さに立ち始めてるんですよね。真奥にとって、彼女たちは何だかんだとあしらえる相手だったわけですよ。ところが、ここ最近の状況の激変を通じて、鈴乃や恵美を精神的に下に見ることが出来なくなってしまったわけです。同時に、彼女たちがその高さまであがってしまってきたことで、すでにその高さに楔を打ち込んでいた千穂についても、線を引いているわけにはいかなくなったのが、チラホラと垣間見えるのです。
結局、真奥って千穂との関係も、自分は悪魔で彼女は人間、という種族の違いから、ちょっと棚上げにしてたっぽいんですよね。どうせ、寿命やらなんやら、どうにもならないんだし、と捉えていた節がある。が、恵美や鈴乃の事を意識し始めたことで、千穂の事もちょっちスルーしていられなくなってきた。真奥の動転具合には、そのあたりも関係してるんじゃないかなあ。
それでも、種族の差というのがもし本当にどうしようもないものなら、割り切りは済むはずなんですけれど……明らかになってきた世界の真実は、どうやら天使や悪魔という存在の定義すら揺るがすものであることがわかってきたことから、どうもこれまでの考え方のままでは済まない感じになってきたわけで……。
大家さんの話す世界の真理は、かなり根本からちゃぶ台をひっくり返すものになりそうなんですよね。そして、世界の真理という大枠は、真奥たちの人間関係や行く末という小さな枠にも直結しているというのは要注目、かと。
とりあえず、新・悪魔大元帥筆頭が佐々木千穂なのは、厳然たる力関係の結果としてもう決定していいんじゃないですか? ほんとに誰も頭あがらないんだし。
しかし、この作品は魔王も勇者も社会人スキル高いよなあ。

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 104   

はたらく魔王さま! (10) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 10】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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恵美と芦屋を連れ戻すためエンテ・イスラへやってきた魔王と鈴乃は、アルバートと合流し、皇都蒼天蓋に近づいていた。しかしアシエスとうまく融合できなくなった魔王は、鈴乃から戦力外通告されてしまう。仕方なく千穂へのお土産を物色していると、アシエスに異変が起こる。同じイェソドの欠片であるアラス・ラムスに危機が迫っているのではと考えた魔王は、地球から持ち込んだスクーター「機動デュラハン参號」を爆走させ、力を行使できないことを知りながらも、恵美たちのもとへ向かうのだった!緊迫のエンテ・イスラ編。悪魔と勇者、そして天使と人間の戦いの行方は!?
パラリラパラリラ〜♪
いやあ正直、ここまで行き詰まった段階からどうするんだ、と危惧していましたけれど裏から表から皆がそれぞれの立ち位置から事態を打開するために動いたことで一気に停滞が吹き飛びましたね。天使とオルバが見誤ったのは、新生魔王軍の絆の深さだったのでしょう。まあ、まさか彼らも魔王たちがあれだけバラバラにバラけた状態から一致団結して同じ方向に向かって協力するとは思っていなかったんだろうなあ。利害が一致しているから協力し合っている、というレベルでは成し遂げられない事でしたし、まさか人間と悪魔がこれほど密接に繋がっているとは、傍からしか状況を見ていなかったオルバや天使では思いもよらぬ事だったのでしょう。
今回に関しては謀略に絡め取られていたエミリアとアルシエルサイドからも積極的に動かなければどうにもならなかったでしょうし、鈴乃に至っては世界中駆けずり回っての大活躍。一番のMVPは彼女で間違いないよなあ。一方で魔王は何をしていたかというと……スクーターで武装してパラリラパラリラ〜、である。なにやってんだ、こいつわ(笑
いやしかし、これで彼の登場こそが溜めに溜め込んだ堰を切る為の一番肝心な要なんだから、彼こそが皆にとっても一番重要、というのは間違いないのでしょう。エミリアなんか、今回で完全にデレたっぽいもんなあ。あそこまで精神的に縋るとは。あの瞬間、人質になっていた父親との思い出も、新たに得た日本での平和な生活も、その両方を放り捨てても構わない、という気持ちにまで感情を高ぶらせたのは無視できない心の動きですよ。特に、日本での生活すらも諦められる、というのは父親の畑のように過去の郷愁に根ざすところではありませんからね。彼女はもう自分が完全に勇者として在れなくなった、と自答していましたけれど、それ以上に女っ気の萌芽が出てしまったんじゃないでしょうか、これ。
そして、エミリア以上に大暴れしてしまったのが鈴乃。元々暗部とはいえ権力サイドの人間だけあって、握った権限の使い方に躊躇がない。訂教審議会筆頭審問官と新生魔王軍大元帥の立場を両方自在に使い分けて、あっちこっちの跳ねっ返りを叩いて回る暴れっぷり。ほぼ現状、大法神教会の首根っこを掴んだ上で、勇者の仲間として世界的にも名声を得て、さらには新生魔王軍大元帥としてアルシエルに並んで魔王軍にも睨みをきかせる形となり、と今現状において世界でもっとも権威と権力を握ってるのって、この日本では家事手伝いの娘さんなんじゃないだろうか。本物の天使を公式に異端指定してしまったことで、大法神教会の宗教としての在り方を根本からひっくり返してしまったんですよね、これ。日本に来たことで改められた彼女個人の宗教観が、まんま公式のものとして大法神教会に反映されそうな勢いで、これって単に大法神教会の権力を掌握したという以上にえらいことになりそうだ。

ともあれ、これで公の形で人間と悪魔が真っ当な交渉を持ち、停戦に合意がなされた、ということで交渉の余地無く潰し合う形しかなかった人間と悪魔の交流に、これで本当に新しい道が提示されたわけです。
真奥の戯言に近かった新生魔王軍が、なんやかんやで本当の意味で稼働し始めてしまった、ということでもあり、悪魔サイドも日本で暮らしている三人以外の魔界在住組でも、新生魔王軍体制がこれで機能し始めてしまいましたしね。リヴィクォッコあたりなんぞ、鈴乃の下についてもおかしくない感じでしたし。
そういえば、アルシエルがなんかえらい人に見込まれてたなあ。あれって、重要な伏線になるんだろうか。

さて、天使のさらに上位に存在する「ナニカ」とデウス・エクス・マキナというにはドギツすぎる大家さんの登場によって、事態は混沌を迎えつつも一先ず沈静化。停戦がなり、鈴乃とエメラダの暗躍でエンテ・イスラの混乱も一応の決着がつき、一行はなんとか日本への帰途につくことが成ったわけですけれど……迎えてくれたちーちゃんは、なにか厄介な真実を知ってしまったようで、胸に重たいものを抱えてしまった様子でやや心配。ってか、それも彼女の明晰さがなければ突けない「真実」だったみたいだから、新生魔王軍筆頭大元帥としての試練ですね、これは!
一方で一番ショックだったのは、やはりエミリアのテレアポの仕事がクビになってしまったことでしょう。そりゃ、無断欠勤続けてたら仕方ないけどさ!! 生活レベルからしても、あの割のいいお仕事を喪ってしまうのは痛すぎる。もう、あのマンションぐらしも続けていけないんじゃないか。となると、彼女もアパートに越してこないといけなくなってしまうのでは。みんな一緒に暮らすのは悪くないけれど、あのマンション暮らしからあのボロ屋に都落ちは辛いぞぉw
しばらくは、恵美さんの求職三昧と生活苦がテーマになるのか。可哀想に。
鈴乃みたいに、エンテ・イスラの資産を持ち込むとかいうずるはダメなんだろうかw

シリーズ感想

はたらく魔王さま!9  

はたらく魔王さま! (9) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま!9】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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異世界エンテ・イスラから戻らない恵美と、ガブリエルに攫われた芦屋を救うため、世界を渡る決意をした魔王たち。必死にバイトのシフトをやりくりする魔王は、鈴乃と何を持って行くかについて喧嘩したりしながらも、エンテ・イスラを目指しゲートに飛び込む。一方、恵美がオルバの手に落ちた理由とは何だったのか―。故郷の村へと向かった恵美が父ノルドの残した記録の中から気付いた秘密。それは、自らの母や、世界の成り立ちに関わるもので…?
お前ら、早くエンテ・イスラ行けよ!!(笑
えらくノンビリとエンテ・イスラ行きの準備を整えてる真奥と鈴乃。なんかノリが異世界に行くというよりもインフラの整っていない未開地にキャンプに行きます、なノリで、自然準備もそれに準じたキャンプ用品の買い揃えになってしまうのだけれど、二人共元飲食の必要のなかった魔王に、異端審問官として高い身分にあったベルである。実のところ、自分一人で旅の準備を整える、なんてことはしたことがなかったために、最終的に現代日本人であるちーちゃんや梨香のアドバイスでキャンプ用品のお店の人に相談して道具を揃えることに。おい、異世界人w
この件に関しては、勇者として旅の一切を周りのメンバーにまかせっきりにしていたエミリアも随分と苦労するはめに陥っている。というか、完全に日本の環境に慣れきってしまったエミリアにとって、未開の中世的な世界であるエンテ・イスラのあまりの不便さは耐え切れるものではなく、子連れということもあってか、初っ端から泣き事だらけ、という……いや、あんたもうエンテ・イスラ、戻れないだろう、それw
異世界編になったら、この作品の特徴であるリアルすぎる生活感が消えちゃうんじゃないか、という一抹の不安があったのですが、むしろ異世界の不便さを通じて現代社会の暮らしやすさ、便利さ、何気ない日常のあれこれがどれほど恵まれた環境だったか、という何だかいつもよりもさらに生活感が切迫感を伴って身に沁みる展開になってましたがな。レトルト食品の何たる偉大さ(笑
日本で食されている農作物は、まあ色々と問題があるにせよ、長い歴史と努力によって培われてきた品種改良の末に出来上がったものですからねえ。エンテ・イスラの原種に親しい野菜や果物じゃあ、味には比べ物にならない差があるのでしょう。
何気に、鈴乃や真奥が降り立った東大陸では、二人とも食事に関しては全然文句を言う必要がなかったのを見ると、エミリアの故郷である西大陸と、東大陸とでは相当に環境が異なっている、ということもあるんだろうけれど。
この「食べ物」については、今回はちょっと唸らされました。ついに、真奥の口から魔界からエンテ・イスラに魔王軍が侵攻した理由と、その侵略と支配が失敗した理由について語られているのですけれど、真奥があげた支配が失敗した理由というのが、思わず唸ってしまうほどの含蓄ある意見だったんですよね。まさに根源的な理由、とでも言うのか。ある意味、なぜ人間がこのような緻密な社会システムを築き上げるに至ったか、の一番原点の部分が指摘されてるのです。そして、それは真奥たち悪魔では決して理解できなかったものであり、そして真奥が現代日本に飛ばされてきて知るに至ったものであった、というのもすごく納得出来ました。なるほどなあ、人間の有り様のすべてはそこから始まっているわけだ。
この真奥の見識には、本気で感心してしまいました。これは、それが当たり前である人間では中々思い至らない部分じゃないだろうか。
同時に、この部分を真奥がエンテ・イスラに侵攻することにした理由と絡めると、この作品の最終的な着地点が見えてくる、とも言えるんですよね。それは、天使と悪魔の正体にも掛かっていて、ガブリエルの暗躍や真奥の今の状態など、まさに幾多の要素がそこに収束を始めてる、という感じなんですよね。面白い!!

そして、今回の一番の肝は、何よりも鈴乃の度肝を抜かれるようなヒロイン勇躍! でしょう。いやこれ、ある意味ちーちゃんを上回る勢いでベルさん、ヒロインみたいになってるんですけど。
まさか、ベルさんがここまでデレた姿を見せるとは。マジで、デレてるんですけど!! マジでヒロインみたいなんですけど!! 普通に考えると、ベルさんが真奥に心傾く要素は最初からたっぷりあったんですけれど、ちーちゃんに遠慮する部分が大きかったのか、今までほとんどそんな素振りがなかったのですよね。それが、エンテ・イスラに戻った時、あの欠片の娘がくっついてきているとはいえ、余人を混じえない真奥と二人の旅というのは、よほど彼女の心に隙を作ってしまったのか、なんだかポロポロと本心がこぼれてくることに。
ただ、それだけ親身になることで真奥の方も随分心をひらいてしまって、こちらもついつい滅多と明かさない本心をポロポロと鈴乃にこぼすことに。ってか、この真奥が弱音吐くの、初めて見たよ!?
確かに、こればっかりは部下である芦屋たちや、後輩であるちーちゃん、複雑な関係にある恵美には決して明かせないもので、ある意味唯一フラットに寄り掛かることができるポディションに鈴乃がいて、鈴乃の側にもそれを受け入れる、というより積極的に引き出して身の内に入れてあげたい、という気持ちがあったからこそ成り立ってしまった告解なんだろうけれど、随分と踏み込んだ形になったよなあ、これ。真奥も、これだけ鈴乃に心許すとは、自分自身でも驚きだったんじゃないだろうか。
鈴乃自身、決してちーちゃんや恵美の場所に割って入るつもりはなさそうだけれど、正直これはかつてないガチヒロインシーンでしたからねぇ。
一方で、頑として保存食としてうどんを持って行こうとこだわったり、変な寝袋に入って満悦してたり、と変な娘属性もなんだか加速していたような……。ベルさん、ちょいと色出しすぎですw

で、今回の最大の衝撃の事実は……デュラハン号命名の真実w
デュラハンて悪魔は、エンテ・イスラには存在しなかったんだ!! じゃあ、なんでそんな名前を自分の自転車に名づけたのか、というと……全然魔王とか悪魔とか関係ないじゃん!! な、なんせ切ないというか世知辛いというか、情けない願掛けだw

ともあれ、状況はあまり進展していないものの、エミリアがオルバのもとに捕まっている理由や東大陸の悪魔侵攻の真実、他にも物語の根幹に関わるような話が色々と見えてきて、全体的に鳴動してきましたよ。
かなりメンタル的にやばいことになってるエミリアが、果たして真奥と再会した時どうなるか。今からちょっと楽しみになってます、これ。

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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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11月6日

(角川書店単行本)
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(SQEXノベル)
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11月5日

エンターブレイン
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(ドラゴンノベルス)
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(PASH!コミックス)
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(フロース コミック)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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