【34歳カードゲーマー和泉慎平 信金営業は魔法少女を狩る】 楽山/みゅとん  Novel 0

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マジメだけが取り柄の信用金庫職員、和泉慎平。しかし、神にも等しき存在に遭遇したことをきっかけに、彼の人生は一変した。対戦型カードゲームを通して仲良くなった憧れのアイドル・冴月晶―人類の守護者たる魔法少女でもあった彼女を打ち倒したことで、その仲間たちに命を狙われていく。
「偉大なる王からの贈り物です。さあ和泉様、ご命令を」
手に入れたのは、ただの人間を最強の悪魔召喚士に変えるカードゲーム『デモンズクラフト』と、悪魔に堕ちて慎平に忠誠を誓う晶。後戻りはできない。手にしたカードで戦うしかない。おっさんカードゲーマーVS.最強魔法少女、ここに開幕!

パワハラ上司に虐げられ、苦痛なだけの仕事に追われるばかりの日々。生活に潤いはなく、家族も居ない独身生活。わずかに正気にしがみついていられるのは、趣味としてアイドルと子供の頃から時間と金を費やし続けたカードゲームという拠り所があったからだろう。それも、日々摩耗していく心身に果たしてどこまで続けていけるか。趣味すらも楽しめなくなった時、果たして自分はどうなってしまうのか。
こんな男に、生きる価値が存在するのか。
そんなすり減るばかりの日々に、彼を救ってくれたのは推しのアイドル冴月晶との邂逅だった。彼女自身カードゲームを趣味として、大会で玄人好みの攻防で存在感を見せた慎平に感動し、何より扱いにくいはずの自分――冴月晶のカード(彼女たちの所属するアイドルユニットがコラボとしてキャラクターカードになっている)をメインに使用しての大活躍。
カードマスターとしての慎平のファンとして、彼のカードの腕前を全肯定して尊敬してくれる晶。それは、彼のうだつの上がらない人生の中で拘り続けた唯一のものを、他でもない自分が推しアイドルとして追い続けた晶に認めてもらったのだ。肯定してもらったのだ。
報われた、そう感じただろうこの瞬間は。
よりにもよって、そんな自分の人生の肯定者を、その手に掛けてしまったと理解するまでは。

和泉慎平は正義ではない。何かの信念あって戦う者ではない。ろくでもない世界を破壊したいわけでも、自分を虐げる社会を壊したいわけでもない。この世を良くしたいと、あえて悪行に手を染めている者でもない。
彼はただ巻き込まれただけで、ただ生き残りたいだけだった。確かに、自分の生に価値はないかもしれない。生き残って、あの地獄のような仕事の日々に戻ってどうするのか。そんな苦痛に塗れた日々に戻ることに、一体何の意味があるのか。
それでも、おっさんは生きたかったのだ。死にたくなかったのだ。このまま惨めに理不尽に何の価値もなく殺されてしまうことが我慢できなかったのだ。
でも、もし無力なだけで何も出来ないなら、嘆きながら抵抗もしなかったかもしれない。だが、彼の手の中には不思議なカードがあった。使い慣れ馴染んだそれではないものの、正体を隠してただの少年として慎平の前に現れていた「魔王」が持ってきて、一緒に遊んだカードゲームだった。
それを駆使して、生き残れと魔王は言う。彼が人生のすべてを費やしてきて、冴月晶が肯定し憧れ尊敬してくれた、カードゲームの腕前を以ってして。それは、彼に残されたすべてだった。和泉慎平の矜持そのものであり、自負であり、彼の人生の証明であった。
魔法少女から悪魔に堕した冴月晶が、彼の罪の象徴として彼のカードの一枚傍らに寄り添って、襲いくる正義の魔法少女たちと相打たせる。
見っともなく無様に這いつくばり、命乞いをして理不尽を叫び、だが和泉慎平は決して諦めない。諦めない泥臭さこそが、彼のプレイスタイルだった。それは、彼の命が掛かったこの土壇場でも変わらない。圧倒的な魔法少女の能力を前に、耐えて足掻いて凌いで抗って、その姿に勇壮さは微塵もない。ただボロボロになった小汚い中年男の煤けた背中が震えているだけだ。
それでも、最後に残された矜持を捨てない男の背中は、諦めることだけは知らない男の覚悟を据えたあり方は、魔王の責めに陥落して悪魔に堕した少女にとっての最後の拠り所で在り続けたにふさわしい、格好良さなのだ。そのみっともなさこそが格好良いのだ。それこそが魔王も認め、晶が憧れ支えとした強さであり、傲慢をねじ伏せ理不尽を叩き伏せる彼の力だ。

和泉慎平は正義ではない。しかし、生き残りたいという願いは邪悪ではなく、自分のために堕ちた少女を救いたいという願いは善である。彼の抗いは、戦いは、紛うことなく「オトコの戦い」でありました。
正直、晶はあそこまで堕落させてしまったのは、ヒロインとしてはちともったいなかったかな、と。晶の慎平に対する想いに、色んな意味で邪まなものが混じり入ってしまって、あれラストで開放されたあともそのまま残っちゃってますよねえ。あれで逆に慎平からアプローチしにくくなってしまった感もあるんですよね。それ抜きでも、既に好感度はほぼ全開状態だったと見えるだけに、尚更に。
しかし、これ続くとなるとどういう展開になるのか。少なくとも、タイトルは若干変えないといけないんじゃないのかしら。