徒然雑記

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B.A.D.

B.A.D.チョコレートデイズ 44   

B.A.D.チョコレートデイズ(4) (ファミ通文庫)

【B.A.D.チョコレートデイズ 4】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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「人間は、さ。わけわかんねぇ方向から、なんでっていうことで、無理やり救われちまうことがある」
蟲の怪異に怯える私に名も知らぬ金髪の人はそう言った。そして古書店で働く霊能探偵を紹介してくれたのだが――『B.A.D. AFTER STORY』。
狐との決戦後、白雪は未だ小田桐と再会できずにいた。
一族の掟と自らの恋心に悩む彼女の前に婚約者を名乗る男が現れ……『恋しき人を思うということ』
他3編を収録したチョコレートデイズ・セレクション第4弾!
『小田桐は今日も理不尽と戦う』『七海は幽霊を信じない』
毎度の如く怪異に巻き込まれ、肉体的にも精神的にもひどい目にあってきた小田桐くんだけれど、それは大概にして自業自得、起こってしまった事に対して自分から余計な首を突っ込むからで、決して繭さんの事務所で働いているから、という訳ではありませんでした。そりゃあ、繭さんのところに来た依頼にひっついていくから巻き込まれるわけですけれど、その時に余計な事をしなければそれほど酷い目に合わなくても済むケースも多かったですしね。そもそも、彼が繭さんの側に居なくてはいけなくなったのも、何だかんだと彼本人のせいという部分が大きかったわけですし。
とはいえ、何もかもが彼の自業自得というわけじゃあありません。実は彼が余計な被害を被るのは、繭さんじゃなくてとある人物が巧妙に厄介事を押し付けてくるから、という場合も少なくなかったのです。そう、大家代理の小学生七瀬七海の暗躍であります。この短篇集にも二編、彼女によって怪異の解決を押し付けられてしまった小田桐くんの苦闘が描かれております。小田桐くん、その人の良さもあってか自分が七海に厄介事をおしつけられた、という認識が全くないのも哀れなのですが。
この七海ちゃん、自称小学生で実際小学生にも通っている自他共認める小学生なのですけれど、小学生離れした得体のしれない、不気味なところが散見されてある意味繭さんよりも謎な子だったんですよね。あまりにも賢すぎる上に、賢さの方向性がどこか仄暗くて魔女めいたところがあったのです。
長らく、本当の大家である彼女の祖母は、実はとっくに死んでいて七海がそれを隠しているんじゃないか、という疑惑がつきまとっていましたしね。今回、ようやく大家の生存が確認されて、疑いが払拭されたのですけれど。
彼女が本当にいい子だということは、綾とのエピソードでちゃんとわかっていますし、彼女なりに小田桐くんをちゃんと慕っているのも理解しているのですけれど、小田桐くんを巧妙に利用するあのこなれた手腕は彼女が大人になった時が恐ろしくなってきます。あれで、決して他者を利用することを楽しんでいる訳でもなさそうなんですけどね。なんか息をするようにやってるあたりが、ヤバいなあ。

『愛しき人を、思うということ』
白雪さんが、小田桐くんへの愛を貫き通す決意を固めるエピソード。当の小田桐はあの白雪さんに出した酷い手紙以外は登場せず、水無瀬家本邸で話の一切が纏まってしまうあたりに、小田桐という青年の残念さが詰まっているような気がしないでもない。
小田桐くんを愛してしまいながら、白雪さんにはどこか儚げで叶わぬ想いを抱えながら遠くから見つめ続けるような印象が強かっただけに、一度離れて小田桐くんが手紙を送ったあとに再登場したあとの、あの不退転の決意で破滅の道をひた走る小田桐くんの体にしがみついて留めようとする白雪さんの、あの強い意思、断固とした想いにはちょっと圧倒され、驚いたものです。結局、最後まで小田桐くんを救い続け支え続け自分を放棄するのを許さなかったのは白雪さんで、彼女が居なかったらまずこの物語は文句なしのBADエンドだったのでしょう。離れている間に一体彼女に何があったのか、それを物語るのがこのエピソードだったわけですな。
最愛の兄との決別への気持ちの整理、水無瀬家の当主としての責任、それらもろもろに決着をつけて女として一回りも二回りも大きく強くなったお話に、肝心の小田桐くんが直接何も関わらず、白雪さんが一人で乗り越えたというあたりに、最初に書いたように小田桐くん……(苦笑)な気持ちが湧いてきてしまいます。
もちろん、白雪さんの中に小田桐くんへの想い、という捨てられず揺らす事の出来なかった支えがあったからこそ、なんですけれど……でも、この時小田桐くん、白雪さんフッてるんだもんなあ。フラれた事で余計に奮起した白雪さんには感心せざるを得ないです。


『繭墨は今日も僕の隣で微笑む』
時系列としては、繭墨と小田桐くんが一緒に過ごすようになってからまもなく、初期のエピソードにあたるのか。
原点に帰るような、人間の残酷さと醜悪さがこれでもかと詰め込まれたグロテスクな惨劇であり、尤も繭墨が好むお話でありました。案の定、小田桐は巻き込まれ、繭墨は何もせずに惨劇を鑑賞するばかり。誰も救うこと無く、しかし事態はしっかり解決に持ち込む繭さんは、確かに悪趣味なのだろうけれど、彼女は決して状況を悪化させようとはしていないし、ちゃんと自分は誰も救わないと明言して、確認して、念を押してるんですよね。決して理不尽ではないのです。
それでも、この頃の小田桐くんは中々彼女の邪悪な誠実さを飲み込めずに、怒り苦しんでいる。自分がかなり巻き込まれ酷い目にあっているから、というのもあるんだろうけれど。
この頃の様子を思うと、最後のあたりは小田桐くん、随分繭墨に歩み寄り、彼女を理解してるんだよなあ。

『B.A.D. AFTER STORY』
理解しその在り方を受け入れることが出来ても、ずっと一緒に居られるわけではない。本編のあの終わり方からして、繭墨の事務所を辞めた小田桐くんはそのまま繭さんとは縁が切れてもう二人は逢う事もなくなってしまっているのだろうと思っていた。
だから、何だかんだと普通の友人のように、折があえばちゃんと会っているというのが分かって、なんだかホッとしてしまった。良かった、良かった。
本当に、芯からバッドじゃないエンディングだったんだなあ。
後日談であります。果たしてあの後、みんながどのように過ごしているのか、というのが異能に目覚めてしまった一人の少女の目線を通して描かれるのがこのエピソード。
繭墨の事務所を辞めた小田桐くんが、一体どうしたのかは一番気になるところだったんですよね。無職ですよ、無職。その経歴からもまともな職にはつけるはずもないし、これはもう白雪さんに養われるしかないよなあ、と思っていたのですが、何と自立していました。薄給だし繭さんのところに勝るとも劣らずな変な本屋だけれど、ちゃんと就職できたのか……おまけに霊能探偵なんて続けてるとかw
本人は霊能探偵なんかじゃない、と言い張ってますが。実際、雨香もいなくなって当人には何の力も無いですけれど、見える目はちょっと残ってるみたいですし、何より人脈が凄い。繭さんともまだ連絡取り合っているし、舞姫のところにもコネがある。そして、何より白雪さんの水無瀬との繋がり。小田桐くん当人も何だかどっしりとして頼りがいが生まれちゃって、これも嫁さん貰ったからかねえ。まだ、正式には結婚してないみたいですけれど。幸仁がラスボスとして立ちふさがってるみたいですけれど。リアル『神』の試練(笑
でもこの野郎、ドヤ顔で俺の嫁、とか白雪さんの写真掲げてのたまってるあたり、本当にこの野郎め、爆発しろ! あの雄介が辟易とするほどですから相当です。その様子を見てる七海さんがガチで怖いです。まあ雄介もなんだかあの後輩ちゃんとよろしくやっているようですし、舞姫と久々津もあのまま幸せそうで、あさとですらもフラフラとしょっちゅう旅に出て根無し草ですが、あの『猫」と一緒で……。
しっかりと、これ以上無くしっかりと、皆のその後が、不幸も悲劇も惨劇もないその後が描かれて、安心しました。ちらりと語られた、目撃された雨香の様子も……。彼女も、もうひとりの繭墨も決して不幸ではなさそうで。あとはもう一度、あの父娘が再会出来たらいいのになあ、と願うばかり。でも、いつか叶う気がします。いつか、いつか……。

これにて、【B.A.D. Beyond Another Darkness】は終幕。
本当に、素晴らしいシリーズでした。良き物語との出会いに感謝を。

シリーズ感想

B.A.D. 13.そして、繭墨は明日もチョコレートを食べる5   

B.A.D. 13 そして、繭墨は明日もチョコレートを食べる (ファミ通文庫)

【B.A.D. 13.そして、繭墨は明日もチョコレートを食べる】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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彼女は、僕の運命だった――

「諦められませんよ、繭さんを」
繭墨あざかは異界に沈んだだけだ。だが、早く迎えに行かなければ、彼女は本当に死んでしまうだろう。
再び異界にゆく手段を探す僕の前に、繭墨分家の長・定下が現れた。あざかを紅い女に捧げたままにしたい彼に“あさとと共に繭墨家の新たな呪いを解く"ことを協力の代償として求められた。
そして再び訪れた繭墨本家で僕は決定的な間違いを犯してしまい――。
残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー完結。

……小田桐くんという青年は筋金入りの偽善者で、どうしようもない愚か者だった。彼の偽善のせいで、死ななくてもいい人が何人も死に、彼が愚かだったせいで幾度も惨劇が繰り返された。やることなす事裏目に出て、彼が救いの手を差し伸べることで悲劇の引き金が引かれてしまうこともしばしばだった。
もう何もするな、と思ったこともある。願ったこともある。自分のせいで起こる悪夢に、彼は身も心も傷ついてボロボロになるばかりでしたから。それ以上に、彼に善意を強いられることで、多くの人が踏みにじられていったのを見ていられなかった。
それでも、彼は周囲がどれほど止めても、呆れても、憎まれても、呪われても、偽善者であることをやめなかったし、愚者であることを省みなかった。そうして、本来ならば絶対に救われなかったであろう人たちを、彼の偽善と愚かは血みどろになりながら、或いは相手を血塗れにしながら救い上げていったのです。ふと、最後に彼のために集った人たちの顔を見渡して、そのあり得ない顔ぶれに愕然とするばかりでした。果たして、小田桐くんが居なければ、生きてこの場を迎えられたヒトがどれだけ居たでしょう。雄介が侵された狂気は絶望的でした。彼が生きて正気に戻ることなどありえないはずでした。舞姫と久々津が、生きてその想いを遂げることがあったでしょうか。何よりも狐が、繭墨あさとが、あの悪意の権化が、繭墨という家の歪みが結晶化したような青年が、心改める日が来たでしょうか。未だに、この顔ぶれが揃っていることが信じがたいです。本当に信じがたい。その信じがたい結末を手繰り寄せたものこそが、小田桐くんでした。
小田桐くんにとっての運命が繭墨あざかならば、確かに雄介の言うとおり、彼らや白雪にとっての運命は小田桐くんだったのでしょう。この愚かで無力で間が悪く何も出来ずに怯えて藻掻くばかりのこの青年が、成したことは終わってみればあまりにも偉大でした。
数多あったであろうバッドエンドを、こうしてひっくり返してみせたのは間違いなく彼の功績です。この作品は、この物語は明確に悪意に溺死するような醜悪な結末を指向していたにも関わらず、その指向性を、空気感を、世界のあるべき姿を、すべて塗り替えてみせたのが、この冴えなくみっともなく無様な青年の無駄な足掻きだったという事実に、今更ながら呆然とするばかりです。
白雪にきちんと筋を通したことも相まって、この愚か者は最後の最後まで見事に愚かを貫いたのでした。終わってみて、なおさらにそう思います。本当に、大した男でした。

そんな彼を、果たして繭墨あざかはどんな風に見ていたのか、ずっと気になっていたところではあったんですが……彼女の小田桐くんについての独白は、やはり辛辣であきれ果てているのが一目瞭然の厳しいものでしたけれど、それ以上に慈しみにあふれていて、どこか優しい眼差しを感じさせるものでした。突き放してはいるけれど、決して目を逸らさず、いつでもじっと見守っている。小田桐くんがどれほど傷ついても慰めてはくれなかったけれど、いつでも傍に居てくれた。彼がどれほど馬鹿なことをしでかそうと、愚かな判断をしようと、明らかに間違っているだろう決断をしても、彼女はそれを許し続けたし、文句を言いながらもいつも一緒に巻き込まれてくれた。何度か、シリーズ途中でも繰り返したけれど、繭墨あざかというヒトはずいぶんと優しいヒトだったと思う。決して甘やかさない人だけれど、何も共感してくれない人だけれど、やっぱり優しい人だった。

そして、雨香である。男である小田桐くんの腹の中に収められた、異形の子、真なる鬼の娘。
最初、何もかも喰らい果てるだけの怪物、不気味で気持ちの悪いいびつな化け物としか捉えられなかったそれは、成長するにつれてなおも怪物性を増しながら、同時に人間性をも獲得していく、可愛くも可哀想な子でした。こんないびつな生まれ方をしながら、こんなおぞましいあり方をしながら、それでも徐々に人の心を得て、小田桐くんからちゃんと愛情を注がれて、鬼でありながら同時にちゃんと人の娘として育っていきました。
まさか、当初こんなにもおぞましく思えた怪物が、こんなに愛おしく思えるなんて、ついぞ想像すらしなかった。こんなにも健気に、一心に、小田桐くんからの愛情を受け止めて、娘として振る舞うなんて思わなかった。
怪物であれば、鬼であれば、こんなにも苦しまずに済んだだろうに。本能と愛情の間で、こんなにも絶望せずに済んだだろうに。それでも、この娘を自分の娘として、人の子として愛を注いだ小田桐くんの父親としてのあり方は、雨香を幸せにしたのでしょう。この鬼の子に、幸せというものを与えてあげられたのでしょう。良かったなあ、と思うのだけれど、それ以上にやっぱり哀しいです。悲劇ではないかもしれないけれど、大好きな父親と一緒にいられなかった、父親を守るために離れることを選んだこの子の健気さを思うと、胸が痛いです。
救いは、なおも小田桐くんが彼女のことを諦めていないということか。連れ戻すことは叶わなくても、鬼である以上そちらに在ることが誰にとっても良きことなのだとわかっていても、父親として娘が元気かちゃんと確かめたいとする彼の姿勢は、敬服に値します。白雪さんとのことといい、今回最後の最後で小田桐くんも彼なりに男をあげたものですなあ。

今振り返っても、いったいどこでこのルートへの道筋が出来たのか。何人も哀しい結末をたどった人がいました。おぞましい末路に落ちていった人も居ました。大切な人も何人も逝ってしまった。綾のように。
でも、それでも、こんなにも優しく温かい結末にたどり着けるなんて、果たして誰が信じられたでしょう。本当に、本当に頑張った。絶対に無理だったはずのものをひっくり返した、その頑張りには敬意すら覚えます。
もう少しだけ、短篇集という形でこの後の物語も描いてくれるようですけれど、それまで今しばらくはこのあり得なかったはずの、甘やかな優しい幕引きに浸りたいと思います。

シリーズ感想

B.A.D. 12.繭墨は自らの運命に微笑む4   

B.A.D. 12 繭墨は自らの運命に微笑む (ファミ通文庫)

【B.A.D. 12.繭墨は自らの運命に微笑む】 綾里けいし/ kona
ファミ通文庫


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「そう、繭墨あざかと小田桐勤――――――――最後の事件だよ」

「小田桐君、何故、内臓は落下するんだと思う?」再び内臓落下事件が起きた。
いつかどこかで見た怪異を、繭墨は紅い女の罠だと言い、反撃の切っ掛けになるかもしれないと涼やかに笑った。
最近の繭墨はなんだかいつもの彼女らしくない。
人の死を嗤い、不幸を悦び、惨劇を望む最低で最悪な少女。
それでも僕は彼女の力がなければ生きられず、だからこそ救わねばならないはずだったのに……。
残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第12弾。
思い返してみれば、小田桐くんの善意の行動は、幾度も幾度も裏目となり、余計に事態を悪化させ、引き金となって惨劇を起こしてしまう結果になることばかりでした。どれだけの犠牲者が、惨たらしい最後を迎えてしまったのか。彼の偽善のせいで、何人の死者が生まれてしまったのか。それでもなお諦めず、懲りず、飽きずに、人を救おうと、命を助けようとし続けた小田桐くんの精神はもはや狂気の淵に佇んでいるものだと思えるほどでした。
何度も無駄に終わり、無為に終わり、無力に打ちのめされ、のたうちまわりながら、それでも泣き叫ぶように、呪うように生命を繋ごうとした彼の足掻きは、ああ無駄ではなかったのです。何人もの人が死んでいった中で、僅かながらも生命をつないでくれた人たちが居たのです。小田桐くんが行動しなければ、絶望に暮れて憤怒に塗れて生命を捨て去り踏み躙ってしまったであろう人たちが、僅かながらも生き残ってくれていたのです。
小田桐くんの偽善は、決して無駄ではなかったのだ。その証拠となる人たちが、小田桐くんを助けるために集まってきたのを見て、思わずこみ上げてくるものがありました。これまで、読み手である自分も何度も小田桐くんが事態をこじらせ、藪蛇となり、彼のせいで人が死んでしまうケースを何度も見せつけられていたため、この物語は救われないことが前提なのだと、思い知っています。塗り込められるように、刻み込まれるように、バッドエンドを見せつけられてきたのです。だからこそ、そんな悪夢塗れの中に、奇跡のように繋ぎ止められたものがあると示された時、思いもよらぬほどの感動が生まれてしまったのでしょう。
どのケースも、破綻しか見えない事案でした。いつものように、いつもよりも最悪に、目も覆わんばかりの救いのない結末が訪れるのが必然ともいうべき状況ばかりでした。
それなのに、白雪さんも、雄介も、久々津も舞姫も、生き残って、生命をつないで、その上人に戻ってくれたのです。救われてくれたのです。その上で、救われたのは小田桐くんのおかげなのだと、彼を助けるために駆けつけてくれたのです。なんて、奇跡なんでしょう。彼は、報われたのです。
そして、繭墨あさと。狐と呼ばれた、一度は怪異にまで変じてしまった堕ちた形骸。彼をすら、小田桐くんは最後に人にまで戻してみせたのです。正直、狐までをも助けた時には、こいつは正気か、と愕然としたものでした。狐がやった事は、彼が地獄に百度落ちても濯げないほどの惨たらしい惨劇ばかりで、彼の引き起こした悪夢の犠牲者は、本当に数えきれないほどで……何より、この男が心を入れ替えるなどあの当時、とても考えられないことでした。繭墨あさとは、壊れ果てた末に人間であることをとうの昔に辞めてしまった化け物だったはずなのに……。
この巻で小田桐くんの前に立ちはだかった彼は、どうしようもなく人間で、小田桐くんが学生時代に親友と信じて疑わなかった男、その人でしかなかったのです。
あれほど何も成せない偽善者でしかなかった小田桐くんが、いつの間にかこれほど多くを成せていたんだなあ。でも、だからこそ、そんな彼にすべてを捧げてしまった綾が、今居ないことが辛くて、哀しくて。
七海が、泣いちゃったじゃないか……。怒って、泣いて、傷ついて……。
ちゃんと、綾のことを七海に報告するシーンがあったのは良かったんだけれどさ、辛すぎるよこれ。辛いよ。

傷ついて、傷ついて、それでもしがみつくように繭墨あざかを助けようとする小田桐くん。彼女は決して救われるに足る善人などではなく、救いがたい邪悪だと小田桐くん自身もが認めながらも、それでも彼女が運命に負けて死んでしまうことを許そうとしない。認めようとしないのだ。
私は、言うほどあざかが邪悪とは思わない。彼女は惨劇を好むのかもしれないが、少なくとも彼女から惨劇をつくろうとしたことは一切ないし、惨劇を助長しようと導いたこともない。いつも、彼女はただ傍観するだけで決して手を出そうとしなかった。いつだって、事態を最悪の方向に導いていったのは、小田桐くんの方だった。最悪を目の前にして茫然自失する小田桐くんを、繭墨あざかは嘲笑うでもなく、慰めるでもなく、ただただ現実を突きつけて、しかし突き放さなかった。いつだって、彼女は小田桐くんに好きにさせ、彼を見守り続けたのだ。
彼女は優しくなんてなかったかもしれない、でも彼女の冷たさは優しさだったように思える。そんな彼女が邪悪なものか。
だから、小田桐くんはあきらめないでいいのだ。いつものように、みっともなくあがけばいいのだ。
最後の一文、彼の決意を目にして火が灯った。そう、それでこそ、その無様さこそ、小田桐だ。
頑張れ、小田桐。最後まで。

シリーズ感想

B.A.D.  11.繭墨は紅い花を散らす4   

B.A.D. 11 繭墨は紅い花を散らす (ファミ通文庫)

【B.A.D.  11.繭墨は紅い花を散らす】 綾里けいし/ kona
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「ねえ、小田桐勤。君は繭墨あざかを、殺さなくていいのかい?」

「繭墨あざかは、必ず殺される運命にあるんだよ」
その言葉の意味に改めて気づく。
未来を見る御影粒良は繭墨と自らの死を予言した。だが、運命は自分の手で変えられなければおかしい。粒良は死の条件を覆すため協力を求めてきたのだ。
二人の死を回避するには粒良の左眼を潰さねばならない。そのため僕らは、自らの肉を食事としてふるまう代わりに、自殺を求める少女の宴に参加するのだが……。
残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第11弾!
うわああ、うわあああんっ!! なんでや、なんでなんや。あんないい子がなんでこんな末路を歩まにゃならんのや!! 最近、雄介が助かってバットを持ち歩かなくなったり、と最悪を回避できる展開が増えてきて完全に油断していました。



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B.A.D.  10.繭墨は夢と現の境にたたずむ4   

B.A.D. 10 繭墨は夢と現の境にたたずむ (ファミ通文庫)

【B.A.D.  10.繭墨は夢と現の境にたたずむ】 綾里けいし/ kona
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陰惨な痛みを味わわされれば、時に、人は鬼になる。

「胡蝶の夢」それが繭墨からのメールだった。繭墨霊能探偵事務所にはまたも退屈が満ちている。
そして繭墨の限界を見計らうように依頼人は訪れた。
『友人宅の水槽に人間の手が沈んでいた』『夜に土を掘る音がして眠れない』。
しごく退屈な依頼を繭墨はひき受け、僕も事件が少しでも真っ当な結末になるよう走り回る。
それはいつもの日常だったはずなのに――残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー、繭墨あざかの運命に迫る最終編、開幕!
やばかった、今回はいつにもましてヤバかった。顔色を青くしながら読んでたんじゃないだろうか。兎角、読中の不安定感が半端無かった。本気で現実と夢の境目があやふやになってわからなくなってくるような、足元がぐらぐらと柔らかくなって立っていられなくなるような、体温が体の芯から抜け落ちていくような、薄ら寒さと気持ちの悪さ。参った、シャリシャリと精神がゆっくりと摩り下ろされていくような感覚だった。
まだ、あからさまに非現実的な情景や展開が広がっていたなら、まだきちんと構えることができて大丈夫だったのでしょうけれど、ぼんやりと読んでいたらそのままスルーして読み過ごしてしまいかねない自然な書き方で異常な事態がさらっと描かれているものだから、もう何がなんだか。何がおかしいのか、何がおかしくないのかの判断が段々とつかなくなってくるんですよね。認識がゲシュタルト崩壊を起こしたように変になってくる。明らかに、同じ場面が繰り返し起こっていたり、繭さんが変な行動をとっていたり、現実として起こってはいけないような事が起こっているのに、描写や文章構成がまったくそれを意識させないように普段と変わらない冷淡でそっけない描き方をしているものだから、立ち止まってあれ? と思うだけの取っ掛かりがないんですよ。ホラーや怪奇モノとして常套の、違和感や異質性を強調して突きつけて意識させて読み手の精神を揺さぶってくるのとは全く異なるやり方で、しかしだからこそコチラの感覚が麻痺してきて、どんどん精神的に不安定になってくるというやり口なんですよね。参った。
思えば今回は、最初の方から繭さんってこんなキャラだったっけ、という居心地の悪さがあって、しきりと身動ぎしてたんですよね。繭さんって悪趣味だし冷淡だけれど、あそこまであからさまに惨劇を欲して喜ぶような邪さは持ち合わせていない、と今まで見てきて感じていただけに、幾ら退屈しているとはいえちょっと嫌な感じだなあ、という感覚があったのですが……なるほど、その感じた違いこそが「あちら」と「こちら」の明瞭な差だったのかもしれません。
にしても、まさかあそこから食い違っていたとはさすがに予想していなくて、思わず部屋の魔窟を掘り返して前作9巻を読み返してしまいましたよ。場合によっては、全部が全部嘘っぱちだったかもしれない、なんて事実が突きつけられてしまいましたからね。本気で血の気が引きました。9巻で得た安堵感が、全部否定されたら立ち直れませんよ。
幸いにして、食い違いが生じていたのは、ラストもラストで取り返しの付かない場面からではなかったので、心底安堵の吐息を漏らしてしまいましたが、あそこまで読んでて青ざめたこともちょっと記憶にないなあ。それまでの段階で相当に精神的に疲弊してフラフラになってましたから、余計にきつかったです。
なるほど、これが繭墨あざか編か。最終編に相応しい、恐ろしい話でした。ある意味今まで以上に、繭さん頼みというか、その足にすがりつきたくなるような話でした。ラストで繭さんの姿を見た時には本気で安心しましたし。
サブタイトルにある通り、境目を見失うと同時に、そこに繭墨あざかの姿を二重の意味で見出すお話でした。いやはや、今回はホンマに読んでて疲れた……。

シリーズ感想

B.A.D. 9.繭墨は人間の慟哭をただ眺める4   

B.A.D. 9 繭墨は人間の慟哭をただ眺める (ファミ通文庫)

【B.A.D. 9.繭墨は人間の慟哭をただ眺める】 綾里けいし/ kona
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せめて、知る人間は幸せであれと望む――――たった、それだけのことが。

「嘆こうが悔やもうが、それが君という人間だよ」チョコレートを囓りながら繭墨あざかは言う。
唐繰舞姫の足を奪い、復讐を果たした嵯峨雄介は失踪した。
久々津は雄介を殺し、自身の死をもって主を守れなかった償いをするという。
この憎悪の連鎖を止めなければいけない。彼が死ねば僕は一生後悔する。
久々津の拷問から逃れた僕は、駆けつけた白雪の助けによって雄介の行方をつきとめるが--残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第9弾!
かつてこれほどの絶望があっただろうか、と思うまでに読んでいる此方までズタズタにされた前回。救いも何もあったもんじゃない。惨劇以上の悲劇が視界を真っ黒に塗り潰す勢いで見舞っていた。最期に残された雄介の遺言状は、もうその時点ですべて終わってしまったのだと思わざるをえない程に、信じざるをえない程に悲しくて痛々しくて疲れきったものでした。何故、誰もこの子を助けてやれなかったのか、と悲鳴をあげてしまいそうなほどに。
もはや、何もかもが取り返しの付かない所に行き着いてしまったのだと、信じて疑いもしませんでした。この9巻は、そんな終わってしまったところから始まる、どうしようもない諦めの先にある物語だとばかり、思っていたのでした。
【B.A.D.】という物語は、常にそんな差し伸ばした手で断崖から相手を突き落としてしまうような救いのないお話ばかりだったのです。
だからこそ、泣いた。諦めきっていたからこそ、ここに現れた優しい結末は、身を切るように全身を震え上がらせたのです。何度も何度も何度も何度も繰り返し繰り返し、助けようとして逆に余計な惨劇を招いてしまい続けた小田桐くん。それでも諦めずに、狂ったように諦めずに身を粉にして救いを求め続けた結果がこれだというのなら、報いはあったのでしょう。彼が諦めなかったからこそ、この救いが訪れたのなら、報いはあったのでしょう。
良かった。良かった。本当に良かった。思わず咽び泣いてしまうほどに、この結末には安堵させられた。
雄介というこの壊れきってしまったように見えてきた少年は、これほどまでに多くの人達に愛されていたのだ。絶望の淵から引き上げられるほどに。既に死んでこの世から居なくなってしまった人達からさえ祝がれるほどに。死者たちが生者たる雄介を同じ黄泉へと引きずり込もうとするのではなく、生きた世界に押し返そうとする現世に焼き付いていた彼への愛情の残滓に、ただただ涙する。
彼への愛情ばかりではない。今回は、人が人を愛する気持ちがどれほどの救いをもたらしたか。人を捨てて犬として生き、犬として侍ることで舞姫の傍にいようとして失敗した久々津。犬にも人にもなれずに復讐に狂いかけた彼を救ったのもまた、舞姫の純然たる愛情であり、破滅していく雄介や久々津を助けようとして傷つき打ちのめされ這いずるしか無かった小田桐くんを支え励まし自らも破滅しようとする彼を守り続けたのもまた、白雪さんの献身的な愛情でした。
舞姫が、久々津に向けていた気持ちがあれほど純然たる愛情だったと知った時、久々津の悲惨な過去と現在の苦悩を目の当たりにしていた中で、それがどれほど救われた気持ちをもたらしてくれたか。常に血迷う小田桐くんを、正しては支え叱咤しては守り続けてくれた白雪さんの存在がどれほど頼もしかったか。
特に白雪さんは、もう無くてはならない人ですよ。小田桐くんにとって、この人はもう掛け替え為さすぎる。どう考えても、小田桐くんを支えられるのはこの人だけですし、添い遂げられるのもこの人だけだ。この人が居なければ、小田桐くんはどうしたって破滅してしまうに違いない。決して幸福な普通の家庭は築けないかもしれません。白雪さんも小田桐くんも、幸薄すぎる人ですしとても長く生きれるような人にも思えません。それでも、この二人なら一時の安息を得られるのではないか、そう思えるほどに今回の白雪さんは強かった。本当に強い女性でした。
まさかまさかのBADEND回避。誰も不幸にならない結末は、【B.A.D.】史上初めてだったんじゃないでしょうか。それぐらいに予想外で、救われた心地にさせられた雄介編でした。
しかし、不穏な要素はなおも消えず。小田桐くんが幽冥の世界で遭遇した妖しの唐傘の女。彼女がもたらした奇跡と、未だ明かされぬその代償。すべてが丸く収まったようで、致命的な爆弾を飲み込んでしまったような不安感。そんな陰りを抱いたまま、次からはついに最終章―繭墨編。最期にして本当の、繭墨あざかの物語。

シリーズ感想

B.A.D. チョコレートデイズ 33   

B.A.D. チョコレートデイズ(3) (ファミ通文庫)

【B.A.D. チョコレートデイズ 3】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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どうしてこうなった……。七海【ななみ】が挑発し、白雪【しらゆき】がプライドを賭け、繭墨【まゆずみ】が油を注いだ料理対決という惨状に、僕は頭を抱える――『クッキング・オブ・ヘル』。学校の時計塔で少女たちが消えてゆく。友人を助けるため、立花梓【たちばなあずさ】は再び嵯峨雄介【さがゆうすけ】に助けを求めるが――『さよならの時計塔』。桜の下で、繭墨あざかはただ不吉に美しい。それ故に僕は絶望するしか出来なかった――『僕が彼女を理解できない不条理』他、全4編で贈るチョコレートデイズ・セレクション第3弾!
本編で雄介が辿ったあまりにも残酷な末路を前にして、私は涙に暮れながらもずっとしこりのように思っていました。彼を正気の世界に留める、日常の世界に押しとどめる最後のくびきのような役目を果たしていたあの後輩ちゃん、立花梓はどうしてこの顛末に寄与する事がなかったんだろうと。
小田桐くんとはまた別に、あの梓という子は純粋なまでの真っ当さを以て雄介に接し続けることで、雄介を絶望から救い続けていたんですよね。彼女は本当に唯一と言っていいくらい、雄介の正気の部分を見抜き、まっすぐに信じ続けてくれていた子でした。雄介は戸惑いながらも、彼女の真っ直ぐさを眩しそうに見守り続けていたのです。そうして、彼は普通の学生というくくりの中に半ば逸脱しながらではありますが、片足をとどめ続けていたんですね。
そんな、雄介にとって重きをなしていた梓が、どうして雄介の破滅に一切関わることがなかったのか、ずっと疑問を抱いていたのです。
その答えが、この短篇集の中で綴られていました。
皮肉にも……彼女の純朴なまでの真っ直ぐさが、雄介を遠ざける結果になっていたなんて。彼女は、梓はあまりにも真っ当すぎたんですね。それも狂ったような真っ直ぐさ、真っ当さなんかじゃなく、朴訥で普通なまでの真っ当さ。それでいて、とても強靭でしなやかな意志を持つ、陽の光の下で後ろ暗い事など何もなく生きていける少女でした。
この子、本当に良い子なんです。普通に負の感情だって持ってます、でもそれに飲み込まれない、怒りや憎しみや絶望に染まり切らない、いつだって俯かずに上を向いて笑える子でした。だからこそ、雄介の本質を見逃さず、彼の見てくれの恐ろしさ、発狂した言動に惑わされず、心から懐いてくるような子でした。
だからこそ、雄介は闇を抱えた自分とは、相容れないと、自分なんかとは関わってはいけない子なのだと、思ってしまったのでしょうか。
梓が巻き込まれた、少女たちのおぞましいまでの捻くれた負の感情に端を発する神かくしの怪異の事件は、この【B.A.D.】においては在り得ないような、誰もが救われ拗れていたものがすべて解きほぐされ、皆が笑顔になり幸せになって終わることができた、奇跡のようなハッピーエンドで幕を下ろしました。
そして、そんな奇跡のような結末を手繰り寄せたのは、立花梓その人だったのです。その事実こそが、【B.A.D.】ではありえない、四方が丸く収まり、闇の残らぬ終わり方を導いた事こそが、梓がこの作品の異端であることを示しているのでしょう。彼女が、繭墨あざかが鎮座し、小田桐くんが首まで浸かり、雄介がたゆたい続ける、腐った血の海の地獄に似た闇の世界とは、決して相容れない人間である証明だったのでしょう。決して、こちらがわとは関わってはいけない、太陽の子だったのです。
闇に落ちた人間には、まぶしすぎる子だったのです。

この子は、とても強い子でしたけれど、本当にただの普通の女の子でした。この子をこれからも傷つけないまま守るには、自分たちのような外側にいる人間は関わらずにいるのが一番だ、と雄介が判断したのは、多分間違っていないのでしょう。この世界の闇は、あまりにも冷酷で嗜虐的で残虐です。数々の事件の悲惨な顛末が、真理を物語っています。これ以上関わり続けるなら、梓も決して無傷では居られない。いつか、致命的な闇を覗きこんでしまうでしょう。
雄介の判断は正しかった。自らの救済を求めず、この子を守るために遠ざかる。その姿は、紛れもなくヒーローです。梓にとって、危ない時にいつでも颯爽と現れてくれた、危なっかしいヒーローは、最後までその雄姿を損なわないまま去っていったのでした。去ったまま、二度と戻って来なかったのでした。
それは安堵を伴う、胸を疼かせる切なさ。
すべてが断ち切られていた事に納得し、ようやく、今になって雄介の末路を飲み込めたような気がします。彼は、戻らぬ先に逝ってしまったのだと。
でも、それがひたすらに哀しいのです。哀しいのです。

シリーズ感想

B.A.D. 8.繭墨は髑髏に花を手向けない4   

B.A.D. 8 繭墨は髑髏に花を手向けない (ファミ通文庫)

【B.A.D. 8.繭墨は髑髏に花を手向けない】 綾里けいし/ kona
ファミ通文庫


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「救われますよ…………………………何よりも救われます」

「二人が殺されたからと言って、ボクに困ることは何もない」繭墨あざかは柔らかな声で断言する。
彼女の言葉は理解できるが、怒りは募る。
ヒルガオを失った嵯峨雄介は、唐繰舞姫と繭墨あさとを殺すと言い、失踪した。
この復讐を止めなければ、今度こそ彼の心は崩壊するだろう。
焦りと後悔に苛まれる僕に、繭墨が告げたのは、あさとが座敷牢から抜け出したという最悪な事態の訪れだった――
残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第8弾!
前の巻の感想で、私はこんな事を書いた。
雄介に救いを、と願うことすらもうできそうにない。もう、全部終ってしまったのだから。もう、取り返しはつかないのだから。だから、これからあとはもうきっと、

ただの惨劇だ。
……今になって思う。そう、むしろ「ただの惨劇」であってくれれば。
ここで起こったことは、惨劇ですら無かった。惨劇である事すら、許してくれなかった。
今にして思う。「ただの惨劇」だったなら、それはむしろ救いだったのだ。どんなに無残で虚しくても、それは救いであったのだ。
この物語は、そんな絶望的な救いですら、許してくれなかった。
涙が止まらない。胸が掻き毟られて、血が滲んできそうに痛い。胸が痛い。心が痛い。こんな酷い話があるものか。こんな残酷な話があるものか。雄介が、どうしてこんな目に合わなきゃいけないんだ。どうしてこの子が、こんな地獄を味わわなけりゃならないんだ。かわいそうだ。かわいそうだ。あまりにも、雄介がかわいそうだ。
ああ、ああ、ああ。
だれか、この子を助けて。

でも、いつだって地獄の底でのた打ち回り、悪夢に咽ぶしかない人たちを助けようなんて真似、小田桐くんくらいしかいないのだ。そして、彼の善意は、容易に人を更なる地獄へと叩き落とす。善意が心を踏みにじる。必死でもがき息を吸おうと水面にだそうとする顔を、差し伸べた手で沈める。ボロボロに傷ついた体を暖めようと着せてくれた着物は、いつだって針の筵で、さらに心も体もズタズタに切り刻むのだ。
それを、小田桐くんは何度も何度も目の当たりにしながら、自分のした事の無残さを何度も何度も思い知りながら、決してやめようとしない。善意で人を傷つけることを、決して諦めない。
だから、誰も彼もがこの青年を憎み、恨み、呪い、嫌悪しながら、憎み切れない、恨み切れない、呪い切れないのである。心のなかの大事なものを踏み躙られ、大切に守ってきたものを切り刻まれ、尊厳を冒涜され、頑なに貫き通してきたものを惨殺され、何も成しえず破滅させられながら、それだけのことを彼に犯されながら、彼に感謝の気持ちを残して朽ち果てて行かなければならないのだ。誰も彼もが、彼に未来も希望も信念も誇りも怒りも怨嗟も人間らしさもグチャグチャにすり潰されながら、恨んでいるのに、憎んでいるのに、そんな気持ちを押し殺して、感謝して死んでいく。消えていく。去っていく。滅びていく。
こんな、むごたらしい話を、私は知らない。ここまで醜悪で冒涜的な話を、私は知りたくもない。

いっそ、壊れてしまえば楽なのに。

そう、そんな境地にすらたどり着いてしまうほどに、雄介たちの姿は見ていられなかった。あれほどグシャグシャに壊れてしまったと思えた雄介ですら、壊れ切れずにまともな心を保ち続けてしまっていた。あさともそうだ。あれは、異界から連れ戻され、今更どうしようもなく正気を取り戻させられた。久々津も、犬であらんとする安息の領域から人間である事を強いられた。ヒルガオは人間に戻ろうとして耐えられずに死んでしまった。あの舞姫ですら、矜持を保つことで人で在り続けようとあがいている。
いっそ、人である事を辞めてしまえれば。心を捨ててしまえれば。そう願ってしまうほどに、彼らの有様は地獄だった。火で焼かれるような無残さだったそれなのに、小田桐くんは彼らに人であることを求めるのである。正気で居る事を強いるのである。彼岸から此岸へと、引き戻そうとするのである。
もう、ヤメてあげてくれ。その人達を許してあげてくれ、と喘ぐ私もまた、人でなしと言う事になるんだろうか。
繭墨あざかの無関心は、冷徹さは……慈悲であり優しさなのだという事を、此処に来てようやく理解した気がする。
でも、みんな小田桐くんに「ありがとう」と言うんだよね。
苦界を這いずれと無邪気に強いる小田桐くんを呪いながら、ありがとうと言い残すんですよね。
それはおぞましいはずなのに。見るに耐えない醜悪さだというのに。
たとえそれが心をすり潰し、身を切り裂き、骨を炭へと焼かれる程の破滅だったとしても、それでも彼らは小田桐くんの善意を光だと、温もりだと、救いだったと感じるのだろうか。

だとしたら、そうでなくても、何れにしても、あまりにも救われない、「悲劇」だよ……。

B.A.D.  7.繭墨は人形の悲しみをかえりみない4   

B.A.D. 7 繭墨は人形の悲しみをかえりみない (ファミ通文庫)

【B.A.D.  7.繭墨は人形の悲しみをかえりみない】綾里けいし/kona ファミ通文庫

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「君は、知らないと繰り返しただけだ。それだけさ」

「どうせ、退屈だ。暇潰しにはなるだろうさ」そう言い繭墨あざかは依頼を受けた。
弟の死の真相を知りたいと依頼人は語った。さらには弟の恋人が、彼の髑髏をもって逃げたのだという。
同じ日、僕は事務所内に隠れていた少女を発見する。
みすぼらしい格好で繭墨のチョコレートを食い散らかした幼い少女は僕に無邪気な笑顔をむけてくる。
その腕に、乾いた髑髏を抱きしめながら――残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第7弾!
結局……小田桐くんの行動がことごとく裏目に出て、物事が悪い方悪い方、どころじゃなく最悪のルートへと突入してしまう。それは狐の画策があったからというだけではなく、そもそも小田桐くんの運命みたいなものだということが、狐である繭墨あさとが本当に何もしていないにも関わらず、ついに最悪の展開を迎えてしまった今回の件で明らかになってしまった。今回の仕掛け人であるところの「彼女」のやり方というのは、狐のように綿密で細部に至るまで行き届いた芸術的なまでの奈落落としとは程遠いやり方だ。雑で杜撰で運任せ。最初から上手くいかないことを前提として、ピンポイントで標的を狙うのではなく、適当に数をばら撒きそのどれかに引っかかれば御の字、というシロモノだ。
あろうことか、小田桐くんは良かれと思い、考えうる最悪の選択をとり続ける。そして、おそらく仕掛け人の思惑すらも超えたであろう最悪の結果を招き寄せることになってしまった。
本当に、最悪の結果を迎えてしまった。
ほんとになんで、この人はやることなす事こんなに裏目にでるんだ!? はっきり言って今回については小田桐くん、特に悪手を選んではいなかったと思うんですよ。その時点では、どの判断も選択も行動も、後々こんな事になる要因とは思えなかった。ひるがおを雄介に任せた事だって、雄介の刻々と悪化し続ける精神を思えば悪いことじゃなかった。でも結果としてみれば、そのことごとくが最悪の結末へと繋がっているのだから始末に悪い。そのどれもが、起こったあとでなければ悔やむことすら出来ない選択なのだ。まだ、狐の時は彼の思惑や謀を見抜けていれば、と思うことも出来たのに、今回に関してはそれも出来ない。
小田桐くんは誰も救えない。他人を食い潰すしか出来ない人間だ。
それはとうの昔に覚悟した歴然とした事実だったのだけれど、それでも打ちのめされずにはイられない真実だ。そして、その真理は雄介をすらもターゲットから逃さないのか。彼をこんな事にしてしまったのは、小田桐くんが緩やかに破滅していく彼を、助けようとしたからなのか?
だとしたら、あまりにもあまりにも救いがない。救いようがない。
雄介はもうダメだ。もうどうしようもない、どうしようもなくなってしまった。完全に終わってしまった。これまで何とか持ちこたえてきたのに、辛うじて此方側に踏みとどまってきたのに。ここまで来て、ここまで来て、こんな事になってしまうなんて。酷い。酷いよ。ひどすぎる。
ヤバい、泣けてきた。かわいそうだ。雄介が、かわいそうだ。小田桐くんが、まず嘆くでも悲しむでも打ちひしがれるでもなく「よりにもよって!」と憤りにも似た絶望を抱いたのもよくわかる。選りにも選って、選りにも選ってだ。
狐の章は6巻で終わり、ここからはじまるのは雄介の章だという。これが、はじまりだというのだ。この終わりが、始まりだというのである。
途方に、暮れそうだ。
雄介に救いを、と願うことすらもうできそうにない。もう、全部終ってしまったのだから。もう、取り返しはつかないのだから。だから、これからあとはもうきっと、

ただの惨劇だ。


こうなってしまうと、合間に挟まれた『神』にまつわる少喜劇が、何とも滑稽な形になってくる。この短編を見ていると、何気にこの人シリアスやサイコホラー、ダークなオカルトものだけじゃなく、ドタバタのコメディもレベル高いんじゃないかと思えてくる。もし次回作が出て、まるで方向性が違ったとしてもこれなら素直に期待を募らすことが出来る。
ってか、普段から常に超然としている繭さんのキャラ崩壊が見れるのはこの『神』語りだけだからw
なんかもう、物凄い繭さんを見てしまった。二度と見られない繭さんである。挿絵がまたグッドジョブすぎるw

シリーズ感想

B.A.D. チョコレートデイズ 24   

B.A.D. チョコレートデイズ(2) (ファミ通文庫)

【B.A.D. チョコレートデイズ 2】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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『B.A.D.』な日常と過去に迫る短編集第2弾!

「小田桐【おだぎり】君の好みは、ビキニだよ」繭墨【まゆずみ】あざかの手紙に水無瀬白雪【みなせしらゆき】は首を傾げた。一族の復興と、亡き兄を思い胸を痛める日々に降って湧いた疑問。彼が喜ぶビキニとはなんだろうか――『白雪は「びきに」を知らない』。私は繭墨あさとが怖い。その親友、小田桐勤【つとむ】も苦手だ。彼らの前で表情を作りそびれたあの日から、私の平穏な学校生活は不安に苛まれるものとなった――『私と異分子な彼と彼女と狐』。他2編で贈るチョコレートデイズ・セレクション第2弾!

短篇集というと、本編より軽めのコメディタッチな話になるものなんだけれど……【B.A.D.】だもんなあ。いや、まあ確かに本編に比べてみれば確かに明るめの前向きのコメディタッチな話なんですよ、だいたいどの話でも。ただ、あくまで相対的に、であって元々【B.A.D.】が底抜けにダークネスな話だけあって、それからやや明るめになったとしても、一般的な観点からしたら暗めの話だよなあ。
うん、でもそれでもどれも前向きに終わっているあたりは、ちゃんと短編集しているのかもしれない。


『白雪は「びきに」を知らない』
び、ビキニも知らないのか! というかこの人、水着自体知らないっぽいぞ!? 浮世離れにも程がある。さすがは小田桐くんなんかに惚れ抜いてしまうだけある。件の静香の件もあって、もしかしたら小田桐くんはヤバい系の女性に好かれるたちなのかとも疑ったのだけれど、白雪さんは世間知らずではあるけれど人間的にはとてもちゃんとした人なのでどうやらその可能性はないようだ。単に、男の趣味が悪いんだな、というほど小田桐くんが悪い男とは思わないけれど、彼は静香やあさとのお陰でいい具合に人間としてひしゃげちゃってるからなあ。
そんな、ある意味人として終わっちゃっている男に惚れてしまった白雪さんですが、この人の偉いところは決して小田桐くんの存在に依存しているわけじゃないところなんでしょうね。彼のお陰で異能の一族の当主として押し殺していた少女としての弱さを取り戻してしまった彼女ですが、その弱った部分を小田桐くんで穴埋めしようという心づもりは全くない。それどころか、この短編では敬愛する兄に裏切られ挙句に喪ってしまった心の傷と、取り戻してしまった弱さを白雪さんは自らの力で克服していくのだ。取り戻した弱さによって、閉じ込めていた思い出を掘り返し、兄との関係が痛みと絶望だけで彩られたものではなく、確かに温かいもので結ばれていた時間があったのだという大切な記憶を手に入れる。そうして、彼女は硬くも脆い殻で覆われた異能の一族の長としてではない、弱く柔らかくも内に芯が通り、折れる事も砕けることもない本当の強さを持った人間へと自ら成長していっているのだ。
あの、小田桐くんを叱咤しに現れた白雪さんは、こうして織りなされて言ってたんだなあ。
そんな白雪さんの成長を支えていたものこそ、小田桐くんへの思慕なのだけれど……叶わぬ恋になってしまうんだろうか。白雪さんには幸せになって欲しいのだけれど。

『テディベアに願うこと』
繭さん、そんなに「神」のこと苦手にしてたんだ。あれが絡むと普段では絶対に見られない繭さんの一面が垣間見れて面白いw 繭さん繭さん、動揺しすぎ、ビビりすぎ(笑
さてもこれは、終わりが爽やかすぎて本当に【B.A.D.】か、というレベル。幸仁の人の良さ、純真さがまっすぐに良い結果を手繰り寄せたような話だったなあ。微妙に報われなさそうな、幸薄そうな、虐めたくなるような幸仁のキャラクターは、当人からするとご愁傷様としか言いようがないのだけれど、本作でも数少ない癒し系なので、どうにかそのままで居て欲しい。


『七海と雄介の危険な一日』

こうしてみると、雄介って本当に人間として人生終わってるんだなあ。狂気と正気の狭間をふらついている彼だけれど、彼に関しては正気に戻ることは決して幸せなことじゃないんですよね。むしろ、正気に帰れば自分がほんとうの意味で壊れてしまうことを彼は自覚している。狂気に溺れていることが唯一彼がまともで居られる道だなんて、それこそ狂った話である。
そんな、とても人間の世界で生きていけなさそうな男とガチンコで接しているこの七海さんという小学生は何者なんだろう、ホント。事情は何も知らないはずなのに、感覚的に七海って雄介の狂気と正気をまるごと受け止めている節があるんですよね。その上で嫌いまくってるようなんだけれど、少なくとも彼の狂気と正気をより分けようとは一切していない。それもこれも、雄介という人間として区別なく丸ごと捉えている。小田桐と繭さんを除けば、この七海こそが雄介の理解者、というのも不思議な話だ。これだけお互い嫌ってるのにねえ。まあ、嫌っている割に憎みあっちゃいないし、わりと一緒に行動するし、罵倒の応酬とはいえ無視せず喋っているあたり、実際どうなんだろうと首を捻りたくなるところだけれど。


『私と異分子な彼と彼女と狐』

高校時代の小田桐くんとあさとと静香の過去話。お、小田桐くん、全然キャラクター違うじゃないか。この頃、本当に普通の主人公みたいな子だったんだなあ。それが、こんな酷い有様になっちゃって。人間マジ変わってるし。……これ見てると、あさとが仕組んだとはいえ、小田桐くんを完璧に破壊してしまったのってどうみても静香だよなあ。この女、怖すぎ。なんでこんな二人に関わっちゃったんだろう、彼は。そこまで悪いことしたんだろうか。なんかもう、かわいそうになってきた。自業自得と言える要素なんて何処にもないのに。

B.A.D.  6.繭墨はいつまでも退屈に眠る3   

B.A.D. 6 繭墨はいつまでも退屈に眠る (ファミ通文庫)

【B.A.D.  6.繭墨はいつまでも退屈に眠る】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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「君の依頼を叶えよう—————」

「なぜ眼球を抉るんだろうね?」平穏な日々を嘲笑うかのように繭墨【まゆずみ】あざかは問いかける。近隣を騒がす"目潰し魔"。そいつに眼球を狙われていると、チョコレートを囓りながら優美に語る。まるで危機感のない繭墨を急かし、事務所から避難させようとした矢先、傘を掲げたヤツが現われた。その紅く濡れた傘が僕の頬を掠めた瞬間、鋭い痛みが眼孔を貫き 僕の視界は血に染まり消失した。残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第6弾!
表紙の印象が今までと一変して純白を基調としたものになっていて随分と驚かされたのだけれど、よくよくこれまでの表紙を振り返ってみると必ずしも黒一色という訳じゃないんですよね。実際、2巻やチョコレートデイズでは背景が今回と同じく白色となっている。てっきり今までずっと黒っぽい暗い色調の表紙ばかりだと思っていただけに、なかなか意外でした。
まあ今回の表紙も清純そうに見えて何気に目を凝らすと、両手に眼球が乗っていたりとダークさは些かも減じていないのですが。中身の挿絵の方もそうなのですが、イラストレーターのkonaさんの絵は力があって好きだなあ。
小田桐くんは相も変わらず無様だ。醜悪で救いようのない人の邪悪を目の当たりにしながら、彼は人を救おうとするのを諦めない。そして、彼の手によって救われる人はいない。彼は誰も助けられず、いつもと同じように哀れな犠牲者にして加害者たちは彼の手からこぼれ落ち、無残な最期を迎えていく。誰も救われない、無明の結末を幾度も幾度も繰り返す。
小田桐くんは、これまでと同じく誰も救えない。
だが、小田桐くんは狐を助けたことをきっかけに、自分の無様で救いようのない生き様に、少なくとも迷いを持たなくなりましたね。無力感に打ちひしがれることはあっても、無力感に立ち上がれなくなることはなくなった。自分がこういう無様な生き方しかデキないことを悟り、自分があさましかろうと死ぬことを忌避し生きたいと願っている事を受け入れた結果、どれほど報われなかろうと結果を伴わなくても、むしろ逆に恨まれ呪われようとも、人を助けたいと願い思い、行動に出ることを躊躇わなくなった。自分を偽らなくなったと言っていい。
でもそれって、自分が幸せになることを諦めた、とも言えるんですよね。彼の選んだ生き方というのは、ひたすら自分の心を削り、打ちのめしていくだけで、自分も周りの人間も救うことができない、冴え冴えとうそ寒い生き方なわけです。彼自身、自分が他人を食い潰してしまう人間だという自覚がある。
小田桐くんが繭墨に拘るのは、彼女だけが雨香を孕んだ自分の腹を塞げる、という理由だけじゃなく、彼女の辛辣で容赦なく、肯定も認めもしてくれず、慰めも救いも与えてくれない冷酷なくらいの姿勢こそが、小田桐くんにとって安堵を与えてくれるからなのではないでしょうか。時として甘さや優しさは脆くなった心を余計に傷つけるものですから。それに、繭墨は小田桐くんの生き方を厳しく嘲るように見下しているものの、実は決定的に突き放しはしないんですよね。彼女は受け入れてくれないものの、常に手を差し伸べてくれている。
彼は幸せにはなれないだろうけれど、繭墨が居る限り孤独にはならずに居る事が出来るのです。

……ところが、そんな小田桐くんを再びあの人が見舞うのです。

水無瀬白雪、再臨!!

いきなり小田桐くん、フルボッコ。ボッコボコである。綾に対する七海といい、白雪さんといい、彼女たちの愛には鉄拳が溢れている。照れ隠しとかじゃなくて、マジ殴りだからなあ。女の子がグーパンですよ。容赦呵責もありませんよ。
ともあれ、小田桐くんを夫と慕う白雪さんの再登場である。一旦、小田桐くんが彼女の告白に対する断りの手紙を送って以来、音信不通でこれは縁が切れたのかなあ、と内心落胆していたのですが、やはりそんなやわな女じゃありませんでした。
一見フラレてもフラレてもしつこく詰め寄ってくる危ないヤンデレさん、と見えなくもないのですが、白雪さんはそんな安っぽい自分本位のヒロインなどではありません。もし、小田桐くんが普通に幸せをつかめるような健常の人だったとしたら、白雪さんももしかしたら大人しく身を引いたのではないでしょうか。
でも、彼は自分の幸福を諦めた人間でした。もう誰かを愛する事も思うことも「無理だ」と思っている、思い込んでいる人間でした。白雪さんは小田桐くんの救いがたい生き様を否定はしていません。好ましくは思っていないとしても、それが小田桐という人間の人となりだと受け入れている。でも、彼の生き様に伴う諦めだけは許していないのです。認めず、受け入れず、否定しようとしている。その考え方に激怒して、真っ向から立ち向かおうとしている。
異能の家に生まれ、生き方どころか考え方まで縛り上げられ固定されていた彼女が初めて得た心の自由。白雪が貫こうとしている想いに掛ける覚悟は、気高く誠実で、眩しいくらいに高潔でした。故にこそ、自分に自由を与えてくれた小田桐の心が自由を失うことを、彼女は決して認めない。
彼が不幸を受け入れることを、白雪は決して許さない。その決意表明こそが、あの宣言なのでしょう。たとえこの恋が実らずとも、想いが届かないとしても、彼女は自分の心に忠実に、また彼女なりにその生き様を貫くつもりなのです。
その強い純心は見惚れるほどに美しく、水無瀬白雪という女性は惚れ惚れするほどイイ女でした。
たとえその想いを受け取らなくても、小田桐くんは幸せ者ですよ。ただその一点だけで、彼の人生はただ不幸なだけじゃなくなったんでしょうね。
まったく、大した女性ですよ、白雪さんは。

シリーズ感想

B.A.D. 5.繭墨は猫の狂言を笑う3   

B.A.D. 5 繭墨は猫の狂言を笑う (ファミ通文庫)

【B.A.D. 5.繭墨は猫の狂言を笑う】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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「始まりの先には――――――終わりしかないんだよ」
「忌ま忌ましい」燃えさかる炎を前に繭墨あざかは囁いた。麗泉女学園生徒の自殺に端を発する、奇怪な紅い花にまつわる一連の事件。その裏に見えるのは、異界へ置いてきたはずの繭墨あさとの影だった。そして学園で出会った、猫の仮面に黒いマントを纏った少女、神宮ゆうり。少女は芝居じみた格好と仕草、あさととよく似た歪んだ笑みで僕たちに告げる。「――猫は狐の使者だ」と……。残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー、第5弾!

小田桐くんは、筋金入りだなあ……。彼の選択は、言ってみれば狂気の沙汰だ。正気を疑われても仕方のないものだ。あの繭墨あざかをして、眉をひそめる常軌を逸した選択である。他の誰かが選んだものなら、冷笑し蔑み唾を吐いて、建前だけ苦悩して見せて、現実を直視せず甘っちょろい理想や正義感、信念だとかいう中身のないスカスカの看板を振りかざしたバカの仕出かす気色の悪いルーティーンだと嘲笑うだけだっただろう。
だが、小田桐くんは違う。彼は、徹底的に希望も未来も理想も夢も、日常も友情も愛する人も、いや、愛していたという感情の履歴でさえ歪められ奪われてグチャグチャに踏み躙られた人間だ。心を陵辱され、精神をズタズタに引き裂かれ、絶望というものを死んでもなお引き剥がせないほど癒着させられてしまった人間だ。ささやかな善意や正義感、好意や友情といったものまで利用されつくして、やることなすことすべてが惨劇への引き金となることを強いられ続けてしまった人だった。正直、これほど酷い目に合わされ続けた人を他に思いつかない。
だから、彼の選択は決して信念や正義といったものに基づいたものではないはずだ。彼にはもう、貫く信念や生き様といった強いものは何も残っていない。だから、彼の選択はもっと根源的で、後ろ向きで、むしろ弱さに基づくものなのだ。それは、逃避と言っていい。この期に及んでの、自己防衛の手段の一つと言っていい。ズタズタに引き裂かれ陵辱されボロボロにさせられた心を守るための選択だ。彼は、自分の弱い心を守るために、怒りや憎悪や殺意といった、人間らしく在るための感情をすべて投げ捨ててみせたのだ。本来、まともな人間なら抱いてしかるべき「正しい想い」を、彼は自分を守るためだけに殺した、いや無きものとして無視して見せたのだ。
まさしく、狂気の沙汰である。
しかし、絶望の海に沈められ、生きることに疲れ果て、死に惹かれながら、なおも「死にたくない」という浅ましくも正直であまりにも人間らしい本能をあらわにすることで、人が生きるという事の尊さを垣間見せてくれた小田桐くんという人にとって、その人間らしさから逸脱した、しかし浅ましいまでに人間らしい選択は、まさに相応しいものだったと言えるのだろう。正しいとか間違っているとか、優しさとか誰かのためだとか、そういう事では全然ないのだ。ただ、これは徹頭徹尾小田桐くんが自分の為だけに選んだ選択だったのだ。ただ、それだけの事だ。
彼は、必ず自分の選択を後悔するだろう。さらに、絶望するのだろう。自分の選択が導いた惨劇のありさまに慄き、震え、恐怖して改めて心をズタズタに引き裂かれるに違いない。それでも、もう一度同じ選択肢を前にしても、彼は同じ選択をするに違いない。彼にとって、自分を守るというのはそういう事なのである。
そういう意味で、彼の弱さは筋金入りで、その浅ましさ、愚かさ、無様さ、醜さは人として極まっているのだろう。それでも、彼のそんな「人間らしさ」が何故かどうしようもなく愛しい。その弱さに共感してしまう。きっと彼を否定できるほどに、自分は強くないのだ。

シリーズ感想

B.A.D. チョコレートデイズ 13   

B.A.D. チョコレートデイズ(1) (ファミ通文庫)

【B.A.D. チョコレートデイズ 1】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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繭墨あざかの元、腹に鬼を孕み、苦悶の日々を過ごす小田桐勤。彼の前に現われた、"天国"への誘いとは——『僕が「繭さん」と呼ぶ理由』。立花梓は知りたかった。通り魔から助けてくれた嵯峨雄介のことを。彼がいる、違う世界のことを——『私が先輩に恋した非日常』。繭墨あさと、14歳。"繭墨あざか"となる役目を降ろされた彼は、己を失ったまま生きていた——『狐の生まれた日』。「B.A.D.」が詰まった非日常的チョコレートデイズ・セレクション第1 弾!
小田桐もあさとも、彼らに限らず繭墨あざかという知る人は皆、彼女のことを化け物のように語る。その精神の在り方を人から逸脱したもののように言う。さながら神のように、悪魔のように、化生のように。
でも、それって主観なんだよな。果たして客観的に見たとき、繭墨あざかという人はそこまで異常たる人間なのだろうか。勿論、普通の少女でない事は間違いない。善悪の彼岸を超えた所に視点を置く価値観の持ち主には違いない。その死を愛好する性癖が倫理的に歪んでいるのも確かだ。ただ、化け物呼ばわりされるほどイカレているのだろうか。神のように崇められるほど、人からかけ離れた存在なのだろうか。
繭墨あざかと、彼女を特別視する人たちを見ていると、今は亡き富士見ミステリー文庫の【SHI−NO】シリーズをふと思い出す事があるんですよね。あの作品のヒロインであった志乃ちゃんは、繭墨あざかとはかけ離れたキャラクターではあるんだが、他者からのその特異性の見られ方、というものにそこはかとない共通性を感じるんですよね。かつて志乃ちゃんが歩み、帰着したその特異性の変遷とあざかが同じ道を辿るとは思いません。あざかのキャラクター的にも、このシリーズの在り方としてもそれはあり得ない。ただ、他者の目から見た姿と実際の姿の僅かにして大きなズレ、についてはやっぱり似てるなあ、と。恐らく、このズレはあざかにとっては望むべきもの、意識する必要もないくらい当然な乖離として維持されるべきものであって、小田桐くんがもしトチ狂ってその乖離を埋めようなんて思っても、あざかはスルリと躱してしまうんだろうな。
と、なんでこんな話をしてしまったのかというと、この短編だと普段のシリーズ長編よりも、小田桐くんやあさとの思い込みのかたくなさが明瞭に描かれていたが故に、彼らの色眼鏡の分を考慮しながら落ち着いてあざかの人となりを観察出来た気がしたもので。結局、小田桐もあさとも見ないほうが気がつかない方が楽だ、という道に進んでる、ということなのかな。それでも、小田桐くんについては、無意識だろうと何だろうと、あざかの元から離れない分、蜘蛛の糸を離さないようにしているという意味で賢明なのだろうけど。
蜘蛛の糸を離さないようにしている、離せないでいる、という観点で見るなら、より強くその傾向があるのは、むしろ雄介だったかもしれない。三巻で、彼の抱えていたものが暴露されてしまった訳だけど、非日常が介在しない彼の学校生活と、彼に関わることになってしまった普通の女子高生である梓との交流を見ていると、雄介の印象ってガラリと変わりますよね。変わるというか、三巻で知った彼の内面が補強される、というべきか。意図的に壊れている彼は、結局本当は壊れてないんだろうなあ。もしかして彼だけは、後戻りできる位置にいるのかもしれない。初めて、雄介には幸せになってほしいな、と思ってしまった。彼は、まだそう慣れる可能性があるはずだから。少なくとも、自分から蜘蛛の糸を離さない限り。
梓よー、頑張っておくれよ。貴方が頑張れば頑張った分、雄介はそこに留まれるのだから。
でも、具体的な分岐点が出来てしまうということは、そこが壊れれば留まる理由も一緒に消え失せてしまうということ。今度こそ一気に奈落の底に落ちかねない危険も孕んでいるわけで、大事なものを得るというのも、この作品の場合考えものなのかもしれない。怖いですねえ。

怖いといえば……なんか、この作品の登場人物で一番怖い人って、あの小学生な気がしてきたぞw

シリーズ感想

B.A.D. 4.繭墨はさしだされた手を握らない4   

B.A.D. 4 繭墨はさしだされた手を握らない (ファミ通文庫)

【B.A.D. 4.繭墨はさしだされた手を握らない】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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「それじゃあ、行こうか──小田桐君」いつものように紅い唐傘の影で繭墨あざかは囁いた。白雪があさとに捕まった。無力な僕ができることは少なく、結局はこの異能の少女に助けを求めるしか術がない。だが、あさとへの手がかりを掴み、事務所に戻った僕が目にしたのは、引き千切られた繭墨あざかの姿だった。無惨な光景を前に、僕はようやく決意する。狐を殺そう、と──。残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー。因縁と対峙する第4弾!

望みもない、光もない、希望も未来も何も無い。大切なモノを失ってしまった絶望は、自分の無力さが招いてしまった悪夢は、人から生きる気力も何もかもを奪い去る。何も無い、空っぽの魂。虚のような心。人は、なぜそんな有様になってまで生きるのか。生きている事ができるのか。
その答えを、雄介が叫んだ時、読んでて思わず泣きそうになった。
そうなのだ。突き詰めれば、ただそれだけのことなのだ。どれほど酷い有様になりながらも、生きる希望も何もかもを失いながら、生きたいとすら思わないのに、辛いのに、苦しいのに、それでも生きてしまうのは、本当にただそれだけのことなのだ。
死にたくない。
ただ、それだけなのだ。そして、それはどれほど大きな絶望をも超えて、人の本能を縛り続ける。
人の生命をゴミクズのように軽く消し去ってしまう、無残に無常に無慈悲に失わしめるこの作品だからこそ、その浅ましく醜くあざといまでの本能の叫びが、なぜだか途方もなく尊い真理に見えたのだ。
この巻で訴えられる叫びは、とてもシンプルだ。どれほどみっともなく壊れた振りをしながらもしがみついてしまう、死にたくないという想い。残酷で悪趣味で悪意に満ちた作為に対して、ただ怒ればいいのだ、という示唆。人は考えを巡らすものであり、その知恵こそが人という存在を高めてきたと言っていい。だが、それは時に人を泥沼のような迷宮の底に突き落とす。自ら足を踏み外し、誘われるように深みへとハマっていく。複雑な思索に溺れ、自責に浸り、一歩も動けなくなり、絶望を積み上げていく。
そんな悪夢を前に、提示されるのは、とてもシンプルな本能に基づいた行動だった。ただ、それが正しい事、正解だと明示しているわけではない。奸智に長けた悪意を振り払うために、小田桐たちが必要としたのが、それだったというだけだ。結果として、小田桐は狐の悪意を振りきったけれど、それで彼が救われたとは言えないのだろう。彼にはもう、救いといえる未来など無いのだから。
それでも、今回の一件で彼は「死にたくない」と思う自分を否定する事はなくなったのではないだろうか。積極的に「生きたい」と思わなくても、自分自身が生きる事に罪悪感を抱いたままなのだとしても、生きていたくない、とまでは思わなくなったんじゃないだろうか。
だったら、それで十分な気がする。繭墨あざかの死に怒り、その生を喜び、自分の周りに居る人々を気にかけ、自分を気にかけてくれることを感謝する事が出来ているなら、それで彼が生きる事を肯定するには十分なんじゃないだろうか。幸せなんて見え透いたものを、人は絶対に必要としている訳ではない。自分が生きることを肯定できる分の何かがあれば、それで十分という人は決して少なくないような気がする。
繭墨あざかは、小田桐を救わない。でも、彼を決して絶望させ続けない、という意味において、誰よりも今の彼を守り続けているように思う。優しいよ、この人は。他人の悲劇を楽しむ趣向の人なのかもしれないけど、自ら悲劇を作り出す事は概してやらない事からも、それは伺える。
自分が死んだら、小田桐が怒ると信じて疑いもしなかったあたり、面の皮が厚いだけじゃなく、随分と機微にも通じているのではないだろうか。悪しきなりとも、邪ならざりき、という奴か。

狐の物語が終わって、この作品も終わりなのかと思ったら、まだ続くのか。そろそろ、本当の繭墨あざかの話になるのかな。
繭墨はさしだされた手を握らない。このサブタイトルが、繭墨あさとの事なのか、それともあざかの事なのかは定かではないけれど、少なくとも繭墨あざかは、さし出された手を握らないのだとしても、彼女自身からは手を差し伸べてくれる。手を取り握れば、握り返してくれる。そういう人なのだと、忘れないで置きたい。たとえ、これからどんな話になっていこうとも。

1巻 2巻 3巻感想

B.A.D. 3 繭墨はおとぎ話の結末を知っている4   

B.A.D. 3 繭墨はおとぎ話の結末を知っている (ファミ通文庫)

【B.A.D. 3.繭墨はおとぎ話の結末を知っている】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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「きみはただの人間だ──神様じゃない」

「善悪の判断のある者に頼みたまえ。ボクみたいな人間は役に立たないよ」繭墨あざかは知人からの頼みを断わった。『人魚』に関する悪趣味な"娯楽"に飽きたのだ。だが、あるおとぎ話を読んだ彼女は一転、依頼を受けると言い出した。その微笑みは不吉な兆しにしか思えない。それでも、僕はもう馬鹿げた怪異による犠牲者を出したくなかった。たとえこの手が届かないものであったとしても──。残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー、第3弾!
ああ、イカレ狂った狂気の世界からニンゲンの物語になった、と2巻を読み終えたときに感じた安堵が、どん底に叩き落とされた。
これは、ニンゲンの物語になったが故の、悪夢の物語だ。小田桐をはじめとした登場人物たちが正気の人間だからこそ、心臓を抉られ目の前で握りつぶされるような絶望にさらされる。
人の持つ当たり前の正義感が、善性が、良心が、ただ助けたいと願った心が、無残に人を殺していく。
これは……非道い。本当に非道い。小田桐は、ただ自分の出来る範囲で、できるだけのことをしようと思って行動しただけなのに。自分の良心に従って、善良な人間なら誰しもが持っている素朴な正義感に基づいて、真摯に行動しただけなのに。ただ、目の前で苦しんでいる人を助けようと思っただけだったのに。
今回、小田桐がとった行動は尽くが、本当に尽くが裏目に出てしまう。全部が逆効果になってしまう。救助の手が、破滅の引き金になってしまう。ザクリザクリと、心が削られていくような絶望、自分を憎悪してしまいそうなほどの悪夢。
でも、彼はいったい何を後悔すればいいというのだろう。彼は、当たり前のことをしようとしただけなのに。ハッキリ言って、今回の彼の行動に悪い点は何も見当たらない。先走ったわけでも判断を誤ったわけでもない。ここがいけなかったのだ、と指摘するべき点が何も見当たらないのだ。
もちろん、判断が甘かったと糾弾は出来るかもしれない。思慮が浅かったと言われてもおかしくないかもしれない。でも、だったらどうすればよかったのか。あの場面で、彼らを、彼女らを助けようとしたとき、他に一体なにが出来たというのか。
彼を責めるのは、あまりにも残酷すぎる。
それでも、事実として彼は惨劇の引き金を立て続けに、かたっぱしから引き続けてしまった。後悔に身を震わせていた人を追い詰め、絶望の淵に居た人の梯子を落とし、本来死ぬ必要のなかった人まで死なせてしまった。助かるかもしれなかった人たちを死に追いやった。
図らずも、一連の件についてひたすら酷薄に、無情に、悪趣味に、突き放すような弄ぶような態度を取り続けていた繭墨あざかの対応こそが、最低でありながら最善の回答であり、必死に奔走する小田桐への忠告であったことが、すべてが終わってしまったあとに理解できてしまう。
彼女は残酷で、きっと悪趣味なのだろう。恐らく、事の真相を見ぬいては居なくても、小田桐の行動が何を引き起こすかについては、漠然とその結末を予期していたのではないだろうか。だが、彼女は積極的に彼を止めようとはしなかったのだから。それをして、彼女を責めるのは筋違いというものだろうけれど。彼女は小田桐への忠告を惜しまなかったし、遠まわしに制止もしている。明確な根拠が無い以上、その忠言は曖昧で気まぐれで非情で悪趣味にしか聞こえなかったとしても、だ。
それを振り払ったのは小田桐本人であり、彼の行動は彼の意志に帰属する。繭墨あざかは、小田桐に同情もしない、干渉もしない、彼の行動を妨げない。
それは、彼を一人の人間として尊重しているとも言えるし、甘やかさないとも言える。
それでも、彼女はきっと情が薄いなりに優しいのだ。彼女は彼を見捨てないし、冷たく突き放すようだけれど、慰めの言葉を掛けてくれる。
その優しさに、傷付いた心を癒してくれるような温もりまではないのだけれど。
その辺の甘やかしは、白雪さんにお任せ、だな。この人は本当に小田桐くんのこと、好きなんだなあ。今回ばかりはあまりにも小田桐くんは打ちのめされすぎているので、白雪さんが傍にいて優しくしてくれないと潰れてしまいそうだ。

1巻 2巻感想

B.A.D. 2.繭墨はけっして神に祈らない4   

B.A.D. 2 繭墨はけっして神に祈らない (ファミ通文庫)

【B.A.D. 2.繭墨はけっして神に祈らない】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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ああ、ニンゲンの物語になった。
デビュー作である一巻は、ゾッとするくらいに悉く、そう完膚なきまでにその登場人物の悉くが人の皮を被ったバケモノたちであり、その舞台は現実感がすり切れた彼岸であったがゆえに、余計に強くそう感じる。
という印象を抱いたのは、やはりゲストヒロイン?であるところの白雪が、その異能、出自とは裏腹に、真っ当で常軌に基づいた精神の持ち主だったからだろう。確かに彼女は旧家の当主として世間知らずで頑固で意固地で頭が固く旧弊に縛られたプライドが高い少女だったけれど、その異端の家の出身者として尋常ならざる責務と苦行を負わされ、人として半ば壊された娘ではあったけれど、この殆ど発狂しているかのような世界観の中では、あまりに清涼であり清純であり健やかな心根の持ち主であった。
異常な世界の中で生きるのを、辛いと、苦しいと思える普通の子供であった。
彼女独りがいるだけで、清風が吹き抜けたようにこの物語は人が正気のまま居ていい世界になっていたように思う。
とはいえ、それはあくまで一巻との比較論。それだけ一巻の魔性が凄まじすぎたと言えるのだけれど、随分と普遍に近づいたこの巻だって、同種の作品と比べれば充分常軌を逸している。これを、まともになったと感じる時点で異常なのである。
加えて言うならば、一巻からさらに魔性を濃くされるよりは、多少なりともマトモな方に舵を取られたことに安堵したのも確かだ。あのまま発狂した世界観に邁進されてしまうと、正直どこまでついていけていたか。狂気とは魂を魅入られる魔性であると同時に、やはり恐怖を抱き忌避される対象でもあるということだ。
元よりこの手のゴシックホラーは狂気と正気のバランス感覚が要求される系統でもある。どちらかに傾きすぎてしまうと、途端にエンターテイメントとして逸脱してしまう。
その点、このシリーズのバランス感覚は空恐ろしいほど芸術的であった。発狂した甘く蕩かすような世界観に、人としてその在り方が完全に狂い果てた登場人物たち。同時にこのキャラクターたちは、壊れているにも関わらず普通人としての部分をも喪ってはいないんですよね。主人公の小田桐にしても、雄介にしても、ヒロインにして最もミステリアスな繭墨ですら、その存在の異常さと相反するようにその精神性には平凡性を兼ね備えている。
この彼岸と此岸の間をたゆたうようなキャラクターと、独特の世界の濃度こそがこの作品の特徴であり特異点だと思うんですよね。
だからこそ、どちらかに傾きすぎてしまうのはよろしく無い。その意味では、この巻の趣向は絶妙とは言わないまでも、決して間違ってはいなかったと思う。

それにしても、カラー口絵の白雪は素晴らしいなあ。この二巻のカラー口絵では、二つの場面での白雪がそれぞれ描かれているんだけれど、殆どまったく別人なんですよね。この描き分けは、白雪というキャラクターのこの物語内での変遷を、見事なまでに完璧に描き出しているんじゃないだろうか。ちゃんと内容を読み込んでないと、こうは描けないと思うんだが……。

ちょっと意表をつかれたのが、雄介がレギュラー化してしまったことですか。まさかまさか、だよなあ。こいつは、あのまま人として壊れ、世間から外れながら、それでも飄々と世を渡っていくのかと思ったら……いや、まんまそのとおり生きてるんですけどね。うむむ、考えてみるとそのように生きるのなら、繭墨や小田桐につきまとうのが一番の道なのか。なんでまた、小田桐たちにベッタリなんだろうね、この子は。気に入ったものにはとこトンつきまとう性質なんだろうか。この子、間違いなく人として壊れてるし、メチャクチャ危険なヤツなんだけど、妙に小田桐のこと気に入ってるんだよなあ。その気に入ってる部分というのが、どうも彼の中の人としてまだ壊れていない部分にあるような気がして、興味深い。

結末は、この作品としては異端とも言えるかも知れない優しくも切なく、虚しくも温かいという結末に。白雪というキャラクターを考えると、この着地点も悪くはない。意外とこれって、異常には異常の報い、まともさにはまともな終端という律儀な因果応報さに基づいているのかも。
ああ、でもラストの恋文には、古風な可愛らしさがあって、思わずニヤニヤしてしまったさw
やあ、まあ途中から小田桐くんのことを見る彼女の目があれだったので、色々と勘ぐってほくそ笑んでいたんだけれど、まさかあれほど(彼女みたいな性格の娘にしては)ストレートな行動にでるとは、と意表を突かれた。
かなり多種多芸な娘だし、立場上そう簡単に動け回れないかもしれないけど、雄介みたいにレギュラー化するのかもなあ。

B.A.D. 1.繭墨は今日もチョコレートを食べる5   

B.A.D. 1 繭墨は今日もチョコレートを食べる (ファミ通文庫)

【B.A.D. 1.繭墨は今日もチョコレートを食べる】 綾里けいし/kona ファミ通文庫

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うわああああ、これはヤバイ。とてつもなくヤバい。危険すぎる。危なすぎる。
呑まれかけた。溶かされかけた。
魅入られかけた。

まず、ここまで真にイカレ狂っている話を、常軌に指先の爪先すらも残さず踏外した話を描いてしまっているという時点でおかしい。度肝を抜かれた。しかも新人と来た。このご時世、人間の狂気を主題にして描かれた作品と言うのは決して珍しくはないのですが、その大半は所詮常識に囚われた狂気であり、一生懸命筆者が考えて考えてひねり出した人造の狂気に過ぎないわけです。その多くが造り物然とした部分を消しきれておらず、読み手にある種の白けた冷静さを取り戻させてしまうのです。
ですが中には、時折、造り物だの何だのと言う意識そのものを塗りつぶしてしまうような、おぞましいものも混じっている。本物と呼ぶのもバカバカしい、ただただ描かれ出されている狂気に肌が粟立ち、胃が窄まり、体中がおののき震えてしまう凄まじいモノが出てくるわけです。
これは、間違いなくその一つ。
だいたい、主人公の男がお腹にあんなものを孕んでいる、そう「孕んでいる」という時点でもう、その発想からなにからイカレ狂っているとしか言い様がない。
そして、これがマジでヤバいと思ったのは。本来なら、そうした狂気、イカレ狂った人間の見る景色、踏み外した世界の有様、そうしたものには強烈な忌避感、嫌悪感、おぞましさや恐れを抱くものなのです。そうした、常軌を逸したモノを目の当たりにすることに対して、自分の中にあるものと似ているようでまるで違うもの、決して巡りあうはずのないものだと認識することで、見てはいけないモノを見てしまったという禁忌を犯したその後暗さにこそ、こうした類の作品に対する妙味というものがあるはずだったのに。
この作品、甘いんですよ。
狂気が甘くて、蕩けそうで、食べてしまいたくなる。
ヤバいことに、魅入られそうになる。
最初読みはじめた時、なんでこんなにチョコレートが協調されているのかと頭の片隅に疑問が浮かんでいたんですが、本来吐き気をもよおすような場面で、鳥肌が立ち、寒気に震え上がるような場面で、漂ってくる甘い香りが、浮かべるべき嫌悪感や気色の悪さといった部分を塗り潰していってしまうのです。
凄いよコレ。チョコレートという小道具が、作品全体に恐ろしいまでに影響を及ぼしている。呪術の触媒みたいに、作用してしまっている。あれだけの血生臭いグロテスクさが、粘性の闇が、チョコレートという要素を介することで、妖しい甘さへと変換されてしまっている。
ううっ、なんか胸焼けが……。ヤバいなあ。
狂気の質が、今まで観てきたものとは何か違う。ヒロインたる繭墨あざかにしても、、あれだけハズレておかしくイカレた人間なのに、同時におそろしくまともで良識的で普遍的で常軌に則ってるのです。正気と異常さが、並列して存在している、のではなく、完全に混じり合って溶け合って、全く別の何かになってしまっている。お陰で、異常なようで普通なようでそのどちらでもないという、ワケの分から無い存在になってしまっている。これまでこの手の作品に出てくるキャラクターというのは、正気か狂気かどちらかの側に立っているか、その両者の間で揺れているか、大概そのどちらかだっただけに、このどちらでもありどちらでもないという有様に成り果てているようなキャラクターはあんまりお目にかかった事がなく、読んでいるこっちは平衡感覚を失って依って立つべき足元を見失って、フラフラと酔っ払っているうちに、引きずり込まれそうになっていた。
ゾッとした。ほんとにヤバい、これ。私、甘いもの、好きなんですよ。
主人公たる小田桐勤にしても、作中では極々普通の人間の区分に置かれているし、実際その通りなのでしょうが、同時にこの人も哀しいくらいに踏み外してしまっている人で、その混在振りには酩酊させられるんだよなあ。主人公として依って立つ所が無茶苦茶なんだ、この人は。無茶苦茶というか、見失っているというべきか。それを探求するのがこの物語における彼の役割だったのかも知れないけれど、付き合わされた身としてはこの胸焼けから来るような気持ちの悪さをなんとかしてくれと愚痴りたくなる。巻き添えを食って、地獄の底まで覗かされてしまった、この途方に暮れた感覚と、どこか得体の知れない幸福感は、ほんと勘弁して欲しいと同時にどこまでもずぶずぶとハマッていってしまいそうで……だからヤバいんだって。

またもう、とんでもない化け物が出てきたなあ。戦慄を抑えきれません。

 
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