FORTHシリーズ

FORTHシリーズ 連射王(下)4   

FORTHシリーズ 連射王<下> (電撃文庫)

【FORTHシリーズ 連射王(下)】 川上稔 電撃文庫

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ついに一区切りとなる目標を果たした高村・昴。だがその時、彼が感じていたのは達成感よりも喪失感であった。「君は、ここで降りますか?」その問いに対する答えが見いだせぬまま、ついにゲーマ“竹さん”が大連射2との計り知れぬ勝負に挑む日がやって来た。降りるか、続けて行くか?その答えは―。「君が問うところ、ゲームは必ず待っています」『GENESISシリーズ境界線上のホライゾン』『AHEADシリーズ終わりのクロニクル』の川上稔が贈る、異色の青春“ゲーマー”小説“下”巻。
セッションしましたか?(失礼
熱冷めやらぬまま、数日置いてなお思い返せば余韻が胸の奥にこだましている。指の先にまで充ち満ちた何かがピリピリと弾けている。
何とも、凄い小説だった。それが、終わらないまま、掴み取れないまま取りすがる手を巧みに躱して、通りすぎていってしまった。喪失感も虚脱感も置いていってはくれなかった。だから、もどかしくも擽ったい感覚がいつまでもいつまでもエコーし続けている。熱は未だ冷めやらない。
わざとなんだよなあ。わざと、置いてけぼりにされた。夢中という心理の先にある「本気」。その本気の更に先は、連射の向う側にある答えを見ていいのは高村・昴だけであり、自分だけのそれを見るのは各々が各々の特権を駆使するべきなのだろう。こればっかりは、与えられては色褪せるばかりなのだから。
でも、昴も竹さんも、本気に到達した時にその他すべてを投げ出す事によって突き詰めるのではなく、ちゃんと傍でその本気を見ていてくれている人をゲットしてるんですよね。この本気というのは、自分だけの世界を構築して閉じこもってしまうこととは正反対なんだろうなあ。もしかしたら、何かに本気になるということは、自分以外の誰かがその本気を信じてくれる事が必要なのかもしれない。それが勇気となって、本気に至れる。それが支えとなって本気の向こうに辿り着ける。そうやって、人が連なりあい支えあうことでそれぞれが答えを見つけあい、答え合わせが出来たら幸せなことなんだろうなあ。
一度、ワンコインクリアにたどり着き、そこから先に行こうとして、先を歩いている人を追いかけようとして振り落とされ、どん底まで落ちて全部なくした気になり、そこから一つ一つ立て直し、取り戻し、新たに手に入れて、そうして信じるべきものと信じてほしいものを見出して、再び辿り着いたスタート地点。ファーストプレイ・ワンコインクリアという領域への挑戦、すなわちファーストにしてラストゲームのスタート。こっから、怒涛の150ページ弱。
150ページである。
シューティングゲームの一面からクリアまでの流れが怒涛のようにスクロールしていく150ページ。熱がうなぎのぼりに上昇し、ヒートアップしていく150ページ。彼女が現れ、昴がプレイしながらその傍らで彼女―蓮が竹さんの残した手紙を読み聞かせてくれるくだりは、もはや伝説的な名シーンと呼ぶに相応しいのではなかろうか。
ゲームセンターでシューティングゲームをしているだけの場面、それがこれほど感動的で情熱的で詩情あふれるシーンとなるものなのか。
改めて思う。本作は、読む人の心に熱い火を灯すような作品だった。そうして、とんと背中を押していってしまうような話だった。そうか、置いてけぼりにされたんじゃない。前に去っていったわけじゃない。
見送られたんだな、竹さんがそうしたように。

高村・昴と岩田・蓮、この二人のラブストーリーも必見。川上さんの作品はどれもLOVEが重要な項目となって生きているのでありますけれど、この二人ほど真っ当な青春やってるのは珍しいというか他にないというか。小山田先生と親友の仲くんの少ない出番が全部重要で存在感タップリだったところとか、思い返してみても文章量が多い割に不要な部分が少ないんですよねえ。全部、大事で必要で、意図が込められている。
二人が苗字ではなく、お互いを昔のように名前で呼ぶタイミングが、また実に届いてるんですよね。ここしかない、というタイミングに届いている。後半なんぞ、二人の一挙手一投足に至るまで行き届いていた感がある。蓮がゲームをプレイする昴の隣に座る、あのシーンの自然さ、いや在るべくしてこうなった、収まるべくして最後のピースが収まったかのような美しさは脳裏に焼き付いて離れません。

……で? セッションしましたか?w
親、居ないんだもんなあ、ねえ、川上作品的には(超失礼

これをハードカバーで買った人は、後悔しなかったんだろうなあ。でも、やっぱり手を出しにくかったのは確かなので、この文庫化を機にもっと多くの人に手にとって貰いたい。そう願わざるをえない傑作でした。
凄い作品でした。


上巻感想

FORTHシリーズ 連射王(上) 4   

FORTHシリーズ 連射王<上> (電撃文庫)

【FORTHシリーズ 連射王(上)】 川上稔 電撃文庫

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川上稔が贈る異色の青春小説が、待望の文庫化!

「俺、何かに対して本気になれるのかな?」
 何事にも本気になりきれない高校生の高村・昴。そんな彼は一人のゲーマーに出会い、“己の本質”と真剣に向き合うことになる。
 将来の進路を考え決めていく友人や幼馴染み。変わっていく周囲との人間関係の中で、彼の答えはどこにあるのか──。
「──敢えて問いますが、君は、ゲームが好きですか」
『GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン』『都市シリーズ』の川上稔が贈る、異色の青春“ゲーマー”小説が待望の文庫化&上下巻連続刊行決定!
以前単行本として出ていたものの文庫落ち版であります。ちなみに、単行本の方は買ってませんし読んでいませんでした。単行本だったので文庫化にあたってもイラストの方は一切なし。これについてはちっと未練あり。岩っちのイラストは見てみたかった。
しかし、本作は氏の作品の中でも唯一系統樹から外れた独立した作品なのだと思っていたのですが、文庫化するにあたって、タイトルの【連射王】の前にFORTHシリーズというのがくっついてびっくり。氏の描く作品群は一つの連なった世界観によって統一されており、<FORTH><AHEAD>< EDGE ><GENESIS><OBSTACLE>< CITY >と名付けられた時代によって区切られていて、それぞれのシリーズタイトルの頭に付与されているのはご存知の通り。【都市シリーズ】は< CITY >、【終わりのクロニクル】には<AHEAD>、現在も続いている【境界線上のホライゾン】には<GENESIS>というように。これは、本の裏表紙にも毎度記載されているので、ひょいと裏返してみてください。
さて、本作の舞台となる時代<FORTH>とは、<GENESIS>までの基礎時代の最初の最初。まだ異世界の技術も種族も法則も何も入ってきていない、旧技術の生まれた場所。言うなレバ通常の現代社会。異能も魔法も異種族も何もない、変哲なき現実世界。
というわけで、このお話は一切合切少しの不思議もない徹底した青春ゲーマー小説なのであります。
しかも、シューティングがテーマということで、かなり偏執的、或いは変態的なオタクゲーマーのシューター日記みたいなものだと思い込んでいたのですが、これがまた恐ろしくまっとうな青春小説だったんですよね。驚き! まさに驚き! 
変態がいないよ!? 一人も変態がいないよ!? 変態っぽい人すらいないよ!?
これこそが大いなる不思議である。
主人公からして、普段は野球部で汗を流すスポーツマン。ゲームセンターというものも、運命の出会いをするまでは時間を潰すために偶に格闘ゲームなどをして遊ぶだけの、自身の世界の中では余分なものに過ぎなかったのだけれど、彼はそこで自分の人生観を揺るがす出会いに遭遇することになる。
川上さんという人は、とにかくキャラの行動にしても心理描写にしても微に入り細を穿つような描写にこだわる人で、突拍子もない言動ばかりしているようでどこキャラクターも深く沈降するように自分のあり方、世界との繋がり方というものについて思索を重ねている。周りの状況のドタバタさ加減や、キャラの脊髄反射的なすちゃらかブリからなかなかそうは見えないんですけどね。
そんな作者の丹念な、或いは職人的な積層の描写力を、純粋に思春期の少年少女の心の移ろい、すなわち青春模様へとつぎ込むと、驚くほど繊細で真っ当な青春小説へと昇華した、それがこの【連射王】なのであろう。
この人、こんな真面目な話書けたんだ(失礼)。書いたら書いたで、恐ろしい勢いでガンガンと心揺さぶられるお話なんですよね。自分の在り方というものに果たしてこれだけ純粋に、かつ切実に向き合い、手繰り寄せようと力を振り絞る時代があっただろうか。多分、大人になる前のしかし子供では居られない僅かな期間でこそ起こりうる探求の時期なんだろうなあ。
この主人公の高村は、これまでの変態ばっかりの作者の作品の主人公とは異なって、凄く真面目な性格をしている。その無理をしているわけではないのに、自然と曖昧な答えを認めずに自分の中の答えを求め続ける姿はいっそ生真面目糞真面目とすら言えるかもしれない。決して、思考思索に瞬発性がないのも頑なな生真面目さを感じさせる要素なのだろう。ひどく理屈的でとにかく何事にも筋道を立てて物事を考えている姿は一つ一つ答えを積み上げていくうちに出来上がっていく答えの塔の美しさと相まって、整然とすらしている。それでいて機械的な歪さは感じさせず、むしろどちらかというと周りからはわりと角ばったところのない緩いタイプと目されてるっぽいんですよね。その意味では、見てるだけでも非常に面白く興味深いキャラクターなんだよなあ。
シューティングについての話も実に面白い。自分もこの手のゲームは苦手の口なんですが、ド素人だった高村が一つ一つクリアに至るための回答を見つけ出し、面をクリアしていくシーンには得も知れぬ感動を呼び起こされるのです。
そして、彼にシューティングゲームの魅力、いや「魔」というものに魅入らせてしまった張本人であり、高村の追い求める答えを知る人物の語った野望、
「ファーストプレイ・ワンコインクリア」という壮大過ぎる言葉の響きには、高村と同じように背筋に電撃が走りました。なんかこう……凄い。じわじわと、体の芯から熱が生まれるような感覚。
人間、本気になったことがどれだけあるだろう。高村は好きな野球に真剣に打ち込みながら、それを楽しむことに終始してどこか他の仲間と同じような「本気」にはなれていない、という感覚に苛まれ続けていた。真剣にやることと、「本気」になることは違うのか。違うんでしょうね。この「本気」という言葉のニュアンスに込められたものには、もどかしい程の覚えがある。
あなたは、何かに本気になったことがありますか?
自分はどうだろう。多分、指先にとっかかったことはあると思うんです。その感覚を、確かに感じ取り味わったことはある。でも、結局それを握り締めることは叶わなかった。届かなかったとも言えるし、恐れてしまったとも言える。それはもどかしくも遠くて、触れることに尊さすら感じてしまう自分の中の真実。嘘をつけない本物。そう、自分に嘘をつけないからこそ、後戻りできないボーダーライン。
本気になるには、きっと「勇気」が必要なのだろう。
ならば、これはきっと「勇気」を得るためにのた打ち回る物語。その手法として、シューティングという魔に道筋を見出した少年の物語。
願わくば、同じく自分の中で模索を続けながら、勇気を得る先に共に歩く人を求めているだろう一人の少女と、その答えが重ならんことを祈る。
高村と幼馴染の少女・岩田との無造作に手を突っ込むと何もかも台無しになってしまいそうな、繊細で脆くてキラキラと輝いているやり取りは、もう見ているだけで胸がいっぱいになりそうな代物で、正直いろいろと辛抱たまらん!! この岩ちゃんのヒロイン度の高さは、川上作品の中でもかなり別格。いやあ、どのヒロインもアレな要素が敷き詰まっているだけに、これだけ穢れがないと眩しくて眩しくて。個人的には【奏(騒)楽都市OSAKA】の結城・夕樹に匹敵する逸材でした。

川上作品感想
 

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