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GA文庫

泥酔彼女 2.「弟クンがんばえー」「助けて」 ★★★☆   



【泥酔彼女 2.「弟クンがんばえー」「助けて」】  串木野たんぼ/加川壱互 GA文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

「弟クン、早く成人してよー。弟クンと一緒に飲ーみーたーいー! 」

アンチ酔っ払いの俺の家に入り浸る酒好きダメ美人・和泉七瀬。鬱陶しいけど、でも、そんな彼女がいる日常も思っていたほど悪くない――。そう感じ始めた矢先、俺は自分の恋愛トラウマの元凶と再会してしまう。

「先輩を“私に"酔わせてみせます」

大ブレイク中の若手女優・月浦水守。再会するなり俺とヨリを戻そうとし始めた彼女と、犬猿の仲の羊子は一触即発状態に。さらに、その面倒な状況を酔った七瀬さんが面白半分でひっかき回し――ってなんで七瀬さんが複雑そうな顔してるんだ?

2月14日に笑うのは誰だ! 距離感激近宅飲み青春ラブコメ第2巻!

甲斐甲斐しく手取り足取り気配りが行き届いたお世話を七瀬さん、というよりも穂澄の場合は役者という括りにある人間に対しては、かもしれないけれど、兎に角細やかなフォローから演技力向上のためのプロジェクトまでその有能さを発揮する主人公くん、穂澄だけれど……かと言って彼が精神的に大人なのか、というとやっぱり違うんだなあ、と深く頷かされた次第。
結局、月浦や姉の手のひらの上なんですよね。今、月浦を毛嫌いしている事すらもお釈迦様の手のひらの上、になるんじゃないだろうか。自分の納得できる自信ある脚本を書き上げたら演劇部に戻ろう、なんて考えているのもちょっと子供っぽいじゃないですか。
確かに色々何でも出来る子かもしれないのですが、彼が居ることで七瀬さん達が何倍も能力を発揮できる無くてはならない人になってるかもしれないですけれど、大きな枠組みで見ると穂澄って女性陣に対してまったくイニシアチブを取れていないんですよ。彼女たちに大きな影響を及ぼす事は出来ているかもしれないけれど、彼女たちを自分の思うように動かしたり変えたりすることは全く出来ていない。なんだかんだと根っこの部分が子供っぽくて幼くて、そこを女性陣たちに首根っこ抑えられてると言ってイイ。これじゃあ勝てないですよね、勝負にすらなってないんじゃないだろうか。
だから、実のところ女性陣は穂澄を相手にしているのではなく、同じライバルとなる恋敵の方に視線の焦点をあてながら、穂澄を引っ掻き回していると言ってイイのかもしれない。特に月浦。まったくそれが出来ていない独り相撲というか勝手に自爆し逃げ回っているのがヒツジちゃんで、七瀬さんはそもそも一歩距離をおいてお姉さんとして彼らのラブコメを他人事として見守っていたのが、まーそれはそれは尽くしてくれまくる穂澄くんにキューンときてしまい、やっぱり誰にもあーげない、となって確保に動き出した、といったあたりですか。
ヒツジちゃんはほんとなにやってたんだろうこの娘。ライバル不在で独壇場、いかようにも料理できただろうに、指くわえて眺めてるだけだったんだから、ほんとになにをやってたんだろう。
そりゃ、月浦にも呆れられますわ。主人公、ニブチンの極みですけれどどの分チョロいなんてもんじゃないですからね。イレグイもいいところだったろうに、勿体ない。

さても、主題と言うか問題は月浦が突然アプローチをしかけてきた、ということもよりも本来は七瀬さんの演技ベタの解消、克服だったんだと思うのですが、兎にも角にも月浦の小悪魔っぷりとその積極攻勢が強烈すぎて、穂澄どころか物語そのものが翻弄されてしまった感がある。その存在感の異様なまでの凄まじさが幾度も語られる月浦水守ですが、実際に彼女が喋り彼女が動くとそれだけで物語の焦点が彼女に集中してしまって目が離せなくなるんですよね。何をしでかすかわからない、何を考えているかわからない、という未知というところも魅力的だったのでしょうけれど。なにより、穂澄がなんだかんだと嫌悪丸出しにしながら全然無視できずにいるんだから。
まあでも、本当に何を考えているかわからない、というわけではなく、穂澄に対してべた惚れなのはあからさまなくらいでしたけれど。
これ、五股されて失恋した、という穂澄のトラウマ話、まず事実とは食い違ってるんでしょうね。穂澄の証言以外で月浦がそれらしいことをしてたという話が全然出てきませんもの。当時を知る関係者でもある羊子ですら、五股を責める様子はありませんでしたもんね。月浦に対して穂澄以上に嫌悪感を丸出しにしながらも。
何があったか詳しくは語られていませんけれど、余程拙いことになってたんですかね。穂澄が月浦に狂って散々やらかしてたみたいですし。もう月浦自身にも止められないことになっていたのだとしたら、距離を置くという選択肢を取る、あるいは強制的に取らせるだけの力を持っている人がマネージャーだったり姉だったりする人あたりにはありそうですし。
穂澄の七瀬への献身的なまでのお世話って、役者へのリスペクトにとどまらず彼自身の性格もあるでしょうからね。ちょっと偏執的なところすらある献身性は、のめり込むと、或いは恋愛に絡むとボーダーラインを越えやすい性質なのかもしれません。本質的にヤベえやつ、という可能性も結構ありそう。まあ、今の彼はそれを強く自覚し戒めているのですが。そうなるように誘導されたんだろうなあ。

七瀬さんの演技ベタの原因、わりとサクッと突き止められて克服への道がつけられてしまいましたけれど、本筋は七瀬さんの初恋の自覚と、恋敵達との真っ向勝負への宣戦布告、ということになるんでしょうか。七瀬さんがどうして演技下手だったのか、についての考察はけっこうあれ彼女の闇に繋がっている気がしたのですが。
いやでも、七瀬さんのあのタフさは、闇を闇として惑わされないんだろうなあ。月浦にプレッシャーにもまるで動じず応えず上から笑って宥めてるくらいですし、何気に尋常じゃない大物感が備わっている。酒に酔って気が大きくなっている、というんじゃなくてw
シラフでも、ある意味月浦水守が相手にされなかった、という面すらあったわけですしねえ。そりゃ月浦もモリモリ好敵手感強めますわ。それでいて、本気で仲良いという関係性も結構好きかも。月浦って言動が陰湿なタイプに寄っていると思うのですけれど(それでいて根っこはカラッとしている気もしますが)、七瀬さんってそういう彼女の湿度を諸共しないどころか乾燥させちゃうキャラクターなんだろうなあ、あれ。ヒツジちゃんは逆にさらに湿度に潤いを与えてしまうタイプに思える。おかげで月浦、常にツヤツヤしてそう、ヒツジちゃん相手だとw

なんか人間関係なにも決着していないけれど、ある意味スタートラインが成立して何となく話もまとまった感あるので、もしかしたらこれで完結なんだろうか。
続くと言えば続きそうだし、終わると言えば終わってもおかしくないような、まあ何となく一区切りついた感じのある終わり方でした。




転生魔王の大誤算 3 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート ★★★☆   



【転生魔王の大誤算 3 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート】  あわむら赤光/kakao GA文庫

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ケンゴー陛下と結婚パーティーに同行するのは、どの魔将だ!?

人畜無害なヘタレチキン高校生、うっかり魔界の名君に!?
誤算続きで予期せぬ名声を得まくって、魔族全軍から心酔される最強魔王爆誕!
大人気シリーズ第3弾は、【嫉妬】のレヴィ山の真なる力が明らかに……?
魔王の自覚に目覚め始め、魔将たちとの絆がさらに深まってきたケンゴー。
占領した王都の再建を待つ間、しばしの休息を兼ねてレヴィ山の妹の祝賀パーティーに赴くことに。

「で、誰を同伴者に選ぶんです?」
女性同伴がマナーとされる中、ルシ子、マモ代、アス美、さらにはベル乃までもがケンゴーの『正妻』役を名乗り出て一触即発の事態に!
一方ケンゴーを迎えるアザゼル男爵領では魔界の四大実力者に数えられる大物アザールが魔王に認められたいあまり、極上の接待を用意していた。
だが、それがケンゴーの逆鱗に触れる大誤算で――!
“愛する”部下を守る“理想”の魔王の爽快サクセスストーリー第3弾!!

今回はほぼレヴィ山くんが主人公と言って良かったんじゃないだろうか。
まるっきりチャラ男で軽薄そうな態度とは裏腹に、レヴィ山ってマジでイイ男なんですよね。真面目ですし義理堅いですし気配り上手ですし情に厚いし。そもそも、今のチャラい態度もどうしてそうなったのか、どうしてそうしているのかを知ってしまうと彼の人間的な魅力に繋がってくるので、その軽薄さがなんとも愛おしくなってくる。
というか、彼の人生愛される事とそれを理不尽に喪うことの繰り返しで、よく人間性が歪まなかったよなあ、と思えるほどの山あり谷ありなんですよね。これだけの体験をしながら、今のようなレヴィ山になっている事自体が彼の強さを示しているようじゃないですか。
でなかったら、どこかで憎しみや恨みに囚われますよ。どこかで憤懣を抱え、世を嫉み、人を妬んでしまったでしょう。「嫉妬」を司りながら、レヴィ山の嫉妬ってネガティブな側面をあまり持たない。どちらかというと、それは憧れに近いもののように見える。自分にはないもの、持ち得ないものに凄いなあと憧れ、尊敬し、自分もそう在りたいと願う。ちょっと健全なくらいじゃなかろうか。リスペクトが常にある。
その分、それに見合わない詰まらない相手には一顧だにもしない所もあるんでしょうけれど。
彼は常に望まぬ立場を得てきました。今のレヴィアタン家の当主になったのも決して望んでの事ではなく、また魔将としてケンゴーに仕える事になったのも渋々の事でした。でも、彼はそこで掛け替えのないものを与えて貰うのである。
だからだろう、レヴィ山は一際家族や身内への愛情が深いし、実母と引き離され自分を愛してくれた兄たちと死別した事で大切なものがいつ喪われてもおかしくない儚いものがという事を身にしみて実感している。実の息子でない自分を、義母が自分の本当の息子たちを喪いながらもなお立ててくれる事を心から尊敬し、多分尊敬する以上に敬愛してるんじゃないだろうか。そんな義母に倣ってる所も見受けられるし。
そんなレヴィ山ですから、ケンゴーへの過剰なくらいの評価や称賛も実のところ決して的外れだったり誤解や勘違いでもないんですよね。ケンゴー自身は過剰評価されて変に勘違いされてると思ってるみたいですけれど、むしろケンゴー自身が気づいていない所もちゃんと見てる感じですし、ケンゴー自身が評価していない所を正しく認めているとも言える。ケンゴーが戦いを好いていないのもちゃんと知っているし、ケンゴーが思っているよりもずっとケンゴーの事ちゃんと理解してるんじゃなかろうか。
だから、ケンゴーが変に繕って魔王スタイル維持してなくても、レヴィ山の敬愛は何も変わらないんじゃないのかな、と確信して思えるようなレヴィ山くんの回でした。
レヴィ山が一人で抱え込んで我慢しようとした事を、ケンゴーが自分の戦争嫌いを飲み込んで、レヴィ山兄妹を苦しめるやつらは絶対許さん、と勇気振り絞ってレヴィ山への愛情を示してくれた時点で、レヴィ山の忠誠度はもうとどまる所を知らずでしょう。あれはレヴィ山でなくても、惚れる魔王様の御姿でしたし。
あの場面で、ケンゴーと同じノリ、ではないんだけど、ウチの身内になにさらしてくれとんじゃー! と、ばかりに他の七魔将たち全員がやる気みなぎらせて喧嘩売りにいったあたりも大好きなんですよね。
七魔将たち、こいつらもなんだかんだと仲いいなー、と。ちゃんと身内認定なんですよね。同じ上司に仕える同僚ってクールな関係じゃなく、魔王様の寵愛を奪い合うライバルでもなく、魔王様を頂点とした悪ガキ集団、みたいな感じで。一応、魔将ってからには大貴族で大将軍であるはずなんだけど、ケンゴーと魔将たち七人で身内で友達で、打ち解けた家族みたいな雰囲気にいつの間にかなってたんだなあ。
そう考えると、あのダサいレヴィ山とかルシ子というあだ名も、立場とか家柄とかいと高き名前とかうっちゃって、身内同士の中で呼び合う特別な関係の証拠、みたいなもんなんですよね。レヴィ山の妹のシトレンシアが、最後にあだ名つけてもらうシーンで、思わずなるほどと納得してしまいました。

色々と怪しげに暗躍する黒幕の様子が垣間見えてきましたけれど、それ以上に魔王と七魔将たちの関係が勘違いとか思い込みで出来た虚飾の関係じゃなくて、何だかんだと心通じ合った仲間たちである事がわかってきて、敵がどうであろうと心強い限りじゃないですか。うむ、面白くなってきた。




やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 3 ★★★★   



【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 3】 ふか田さめたろう/ふーみ GA文庫

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小雪の思いも寄らないキスに、大いに動揺する直哉だが、そのことを小雪は全く覚えていない様子。素直になりつつある小雪の無自覚な触れ合いに、直哉は今までのような調子を出せなくなってしまう。
そんなとき、直哉と小雪、ふたつの家族で一緒に旅行に出かけることになる。
不甲斐なさを払拭するため、旅行中の特別な計画を立てる直哉。首尾よく計画通りに進み、小雪との仲もより深まっていくのだが、思いがけない出来事によって、ふたりの関係に転機が訪れる――
「好き」同士が織りなす、すれ違いゼロの甘々ラブコメディ、第3弾!

だだ甘すぎやしませんかーーっ!? いやもう、前巻から付き合っていないにも関わらずイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ、ひたすらイチャイチャしかしてなかったような気がするのですけれど、以前にも増してイチャイチャイチャイチャイチャイチャ。
これでまだ付き合っていないんですよ? 正式に付き合ってないってだけで実質付き合っている以外ないのですけれど。事実婚ならぬ事実恋人なのですけど。
直哉の方からはもう告白しているので、あとは小雪のほうが返事をくれればOKという状態にも関わらず、好きが一杯一杯になりすぎててこれ以上好きになると死んでしまいかねないので告白を保留しているというような状態、ってどんな状態だよ!
もうあとはもっと好きになるしかないような状態にも関わらず、ここで溜めをつくってしまうと余計に大変なことになりそうなのですが、辛うじて耐性というか慣れが出てくるという勘定なのだろうか。
しまいには、直哉の方にも事故でのキスをきっかけに小雪と同じ症状が発症してしまい、小雪が好きすぎてまともに顔も見れなくなってしまう、というオーバーフロー状態に。あれだけイケイケドンドンでぐいぐい行ってたくせにこの男案外キャパ小せえなあ!!
おまけに友人たちからアドバイスを受けた小雪が、逆にぐいぐいと意識的にセクシーアピールしだした上に無意識でもぐいぐい攻め立てはじめて、いつもと逆に直哉のほうがぐいぐい来られてあたふたするという逆転状態に。
動転しまくる直哉の様子は、普段の隙なく余裕で逃げ道潰して詰めてくる姿と裏腹で、これはこれで可愛げあるよねえ、という有様に。小雪さんの変な性癖が目覚めなければいいのですけれど、これ。
ともあれグイグイ行くついでに、今度はこっちから告白し返してやるんだから! と、なぜか告白する相手当人に宣言布告する小雪さん。それもうその布告自体が告白になってやしませんかね!? しかし、二人の間では「告白する」という行為はどうやら必定のもののようで。気持ち自体はお互いに好きというのはもう確かめあっているようなものなので、あとは儀式として告白することでやっと次のステップに進むのだ、という共通認識でいるということなのだろう。
まだ付き合っていないにも関わらず、ここまでだだ甘状態な二人が本当に付き合いだしてしまうと、これタガが外れてしまうんじゃないか、となんだか心配になってくるんだけれど大丈夫なんだろうか、これ。これ以上イチャイチャされてしまうと日常生活に支障が出てこないだろうか、周りにハザード的な悪影響が出やしないだろうか。
まあ今から心配しても仕方ないのだけれど。

ついでに、海外に出てた直哉の両親が返ってきて、これで完全に小雪と直哉の両方の両親のお墨付きの関係になってしまいました。しかしこの直哉パパ、完全に息子の上位互換なのか……いやこれもう化け物じゃね!?
現代に蘇ったシャーロック・ホームズかなにかか。推理する必要もなく、見れば全てがわかってしまう、というこれもう読心というレベルじゃないですよね。心を読む以上にその人の周りで起こっている状況から展開からすべて見えちゃってますよね。もはや千里眼か何かなんじゃないだろうか。
そして、その眼力を惜しみなくつかって、目につく人のトラブルを片っ端から解決しまくるという世界を股にかける屈指のトラブルメーカーっぷりたるや……。
なんか、小雪のパパが偶然直哉パパと巡り合った挙げ句にワトソンくんのポディションに収まっちゃってるんですが。ひっきりなしにトラブルや事件、大騒動に巻き込まれて今回絶叫絶叫を繰り返している小雪パパ、ご愁傷さまである。でもなんか良いコンビになっちゃってるんですよね。
まさかここに来て、直哉パパ、生涯の相棒を見つけてしまったのではないだろうか。
直哉パパと息子の会話が、完全に過程すっ飛ばして顔を合わせた瞬間結論だけで会話してるの、普通に怖いわw 動じないママが大物すぎるw
そしてこんな直哉にベタぼれで、心も行動も何もかも読まれきっているのに好き好き大好きで染め上がってる小雪さん、ある意味踏み外してしまっているのかもしれない、これw

エピローグで、次回小雪の婚約者が登場するという情報が出てきたのですけれど、速攻登場人物全員が婚約者くんが直哉に速攻ぼろくそに処刑される前提でえらいこっちゃー! と騒いでるの、草生えますわw 
それはそれでほんと、楽しそうなのですけど。


泥酔彼女 「弟クンだいしゅきー」「帰れ」 ★★★☆   



【泥酔彼女 「弟クンだいしゅきー」「帰れ」】  串木野たんぼ/加川壱互 GA文庫

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聖夜に近所の年上美人と二人で過ごすことになった。全男子にとって、夢のようなシチュだと思う。相手が泥酔一歩手前でさえなければだけど。
「弟ク~ン、おつまみま~だ~?」
ありえないほど顔がいいのに、それが霞むレベルのお気楽マイペースなダメ女・和泉七瀬。聖夜に俺と残念なかたちで出会ったこの人は、勝手に家に来るしやたら酒好きだし隙あらば弄り倒してくるし、とにかくひたすら面倒くさい。いくら顔がよくても、距離感バグってるタイプの近所のお姉さんって普通に悪夢だろ。
無自覚&無頓着。顔がいいくせに絶妙にガードが緩いハタチのダメ女に男子高校生が付き合わされまくる、酒ヒロイン特化型宅飲みラブコメ!

ほろ酔い美人ってイイですよね。ほんのりと上気した顔色とトロンとした眼差しでほわほわとしている姿の色気と来たら。
これが、酔いが進んで泥酔まで行くと酷いことになります。喚く騒ぐ大声で奇声を発する、軟体生物みたくグデグデに横たわり、酒臭い息を吐き散らしながら理不尽な命令を飛ばしまくる。絡む絡むウザ絡みで鬱陶しく、ピークをすぎると汚物を撒き散らしだす。
飲んでない人からすると災難以外の何者でもないのが、酔っぱらいてなもんである。美人だろうがなんだろうが、酔いどれはご勘弁、という主人公の気持ちもわからなくはない。
わからなくはないのだけれど、この弟くん、酔っぱらいの相手がウマすぎるというか胴が入りすぎているというか、酔っぱらいに対して至れり尽くせり過ぎやしませんかね!?
同じく酔いどれの姉に鍛え上げられてしまったとはいえ、こんなん酔っぱらいにとっては居心地良すぎでしょう。七瀬さんが入り浸ってしまうのもちょっと理解できてしまう。酒飲みと言えど、酒が飲めればいいって人ばかりじゃないですからね。どうせなら、気持ちよく飲みたい。酒の品質も然ることながら、やはりシチュエーションというのは大事で、それ以上に飲酒環境だって大事なのである。
一緒に飲んでくれるわけじゃないけれど、手厚くお世話してくれてツマミまで作ってくれて文句を言いながらもいつだって最善のタイミングで欲しい物を寄越してくれて、して欲しい事をしてくれる。
話し相手にもなってくれるし、ウザがられながらも絡んでも絡んでも相手してくれる。嫌がってるけど、それもエッセンス。楽しいお酒だ。
にしても、気を許すにも程がある無防備っぷりですが。
幾ら酔っ払いに対しての忌避感があると言っても年頃の青少年が、無防備に酔っ払って転がっている美人に対してピクリとも食指が動かないというのは若干どうか、とも思うのだけれどこの瀬戸穂澄という男も少々オカシイたぐいの人間であるように見える。

酔っぱらいとそれに翻弄される少年の日常ラブコメに見える本作だけれど、その実は役者の卵であるヒロインたちと脚本家の卵である主人公のクリエイターストーリーでもある。
彼らは年頃の男女という以前に、演者でありクリエイターであるという生き様に囚われてる狂気の沼に片足をツッコンでしまっている人間たちだ。所々でその行動原理、判断、決断に常人とは異なる狂気が混じる。まともな顔をしているが、穂澄はその筆頭であろう。こいつは大概他人を見る基準がどこかオカシイ気がする。斜に構えているけれど、他人に対する判断基準が純粋なんですよね。純情であると言ってすらいいかもしれない。純情な理想を他者に当てはめている。だから、七瀬がどれだけ美人でも、泥酔してグダグダになっている姿を見せられるとピクリとも魅力を見いだせなくなってしまう。ところが、彼女の中に役者としての気概と根性、才能の煌めきと心意気を見出した途端、彼の思い描く役者の理想像の一端に彼女が足を掛けている事に気がつくと、その一挙手一投足が気になって仕方なくなってくる。
異性としての七瀬への関心と、役者としての七瀬への関心が入り混じっていてどうにもおかしい事になってるんですね。そして、彼のそういう傾向というのはどうやら以前からのものらしく、同級生で一番身近な友人であり役者としてプロからも目をつけ始められている野原羊子へのスタンスもそうなんだけど、前カノである人物に対してもこれ、ただカノジョのタチが悪かったというだけじゃない穂澄の方にも原因があったんじゃ、と思うところがあるんですよね。
月浦水守という娘の関しては、作中でも屈指の狂人、役者としての沼に頭までずっぽりとはまり込んでいる類のやばい人という認識はあるのですけれど、単に役者としての肥やしにするためだけに穂澄とああいう関わり合い方をしたとは思えないんですよねえ。彼女の狂気と化学反応を起こすだけの何かが、ヤバいものが穂澄の方にもあったんじゃないかなあ、と。

月浦水守と言えば中盤までえらい意味深というか、幾度も話題のあがる強烈な存在感を示しながらも微妙に視線が向かない、焦点が合わない扱いに首を傾げていて、実は七瀬さんがあの今躍進中の女優月浦の正体なのでは!? と疑ってもいたんですよ。年齢詐称とか、芸能界あるあるですし。
【アイドランク】という漫画など、10代の美少女を詐称した本当は成人のアイドルたちがこっそり酒飲みまくる、という酔っぱらい漫画の前例もあったことですし。
でも、本当は既に一流の女優、というのじゃなく、才能はあれど現在下積み中の叩き上げの役者、という七瀬さんの立ち位置はいいですねえ、そそるものがあります。
まだ脚本家の卵である穂澄と、二人三脚で女優としての殻を破って輝いていく、というシチュエーションは大変好みです。彼女の役者としての致命的な欠点も含めて。今井雄太郎かよ!

そしてラストの大爆弾。ヒツジちゃんも現場に居合わせさせるとか、修羅場への殺意が高すぎるw
でもシラフだとえらいことになりそうなシチュでも、酔っぱらいが介在すると果たしてどうなるのか。常識も消し飛び空気も読まない酔っぱらいは、狂気をも呑めるのか。
ある意味、舞台が整ったとも言える第1巻。だからこそ、大きく物語として動き出しそうな2巻の動向には期待してしまいます。


僕の軍師は、スカートが短すぎる~サラリーマンとJK、ひとつ屋根の下 ★★★   



【僕の軍師は、スカートが短すぎる~サラリーマンとJK、ひとつ屋根の下】  七条 剛/パルプピロシ GA文庫

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「おにーさん、助けてくれたお礼に、定時帰り、させてあげよっか」
ブラック企業に勤める史樹。終電帰りのある日、家の前に少女がうずくまっていた。その少女・穂春は、助けてもらったお礼として、史樹の抱える仕事上のトラブルをたちどころに解決してしまう。
どうしても定時帰りしたい史樹と、身を寄せるところを探していた穂春。史樹は衣食住を提供する代わりに、穂春のアドバイスに頼ることにする。
「人は先に親切にされると、お返ししなきゃって思う生き物なんだよ」
二人の同居生活が始まると同時に、史樹の社畜生活は一変するのだった。
サラリーマンとJK の、温かくも奇妙な同居生活ラブコメディ、開幕。
タイトルからすると、生足を見せびらかして誘惑してくる小悪魔的な女子高生がヒロインだと連想してしまいそうになりますけど、むしろこの穂春、そういう女の子を強調するようなアイドルっぽい可愛い衣装は苦手……というよりも自分には似合わないというコンプレックスみたいなものを抱えてるっぽいので、むしろ嫌がってます。
でも、それをわざわざスカートが短い、なんてタイトル引っ張ってくるあたり、ヒロインである彼女が抱えている問題の最重要案件なのかもしれません。
彼女が自分からアイドルをプロデュースしてデビューさせた事を含めて、ずっと引きずっていた家庭問題に関しては、ラストで主人公の北条くんがさらっと解決してしまうのですが。
こうしてみると、北条はけっこう行動力あるんですよね。ぼんやりしているようで、穂春が拘っている部分をちゃんと察して調べ上げ、彼女の父親と連絡を取って穂春のなかで雁字搦めになっていたものを解きほぐした上で解決策を提示する、なんて真似をするのですから。
ただ、若干的外れなところがあり、無自覚であるだけで。穂春が元々求めていた事は、喪われてしまった家族の想い出のヨスガを取り戻すためだったのが、想い出じゃなく新しい家族の温もりと幸せを図らずして穂春に与えてしまったわけで。穂春としては、なんかもう心理的にひっくり返されちゃったんだな、これ。
父親を通じて習い親しんだ心理学を駆使して、デビューからアイドルをプロデュースし、また北条の勤務環境を改善するなど、人の心の動きを読み誘導することに長けた「軍師」としての手腕を振るう穂春。だから、他人の心理を読み取るなんて事はお手の物、のはずなんだけど、案外と自分自身の心理は自覚できないし、家族である父親に関しても一方的な感情が邪魔をして冷静な判断が出来ていなかった、というあたりを見ると人の心を手玉に取り操るような魔女とは程遠い、未熟な少女である事が伺えるんですよね。
そして、頼まれたら断れないという他人からすると都合の良い人間であるはずのおにーさん、北条についても穂春はどうにも思う通りには動かせていないんですよね。いや、ちゃんと口で頼んでお願いすればホイホイというとおりに動いてはくれるのですが、心理を誘導したり気持ちや心を思う方に動かしたりという事になるとどうしても空振りするというか手応えがなく躱されてしまうというか。
お陰で北条相手には、穂春もなんだかモヤモヤしたりヤキモキして気を揉むことに。
そのあたりが、彼女の可愛げにもなっていると思うのですけれど、北条の方が完全に妹扱いで女の子として見ていない証明にもなっちゃってるんですよね。
その北条ですけど、個人的にはあまり好きではないタイプ。頼まれたら断れない、というのを自覚していながらちょっと度が過ぎた引き受け方してるんですよね。それ、好きでやってるなら文句ないのですけど、妹を引き取るという明確な目的があるにも関わらず、どうでもいい頼まれごとの方を流されるように優先して、妹を引き取る条件の方を破綻させてしまっているのは本末転倒もいいところ。
主体性がないのかと思えば、穂春の件では積極的に自分から動いているし、穂春の言われた通りにやっているとはいえ、会社内でも結構派手な立ち回りをしてるんですよね。いや、それだけ自分から動けるなら、なんであんなに流されて無茶振りも悪意ある押し付けもホイホイと引き受けるのか。そういう状態から、穂春と関わってちょっと変わった、というのもあるのかもしれないですけど、どうにもキャラがチグハグというか、よくわからないボンヤリと印象の定まらない人だなあ、という感じでした。
嫌がらせしてくる相手が、本当にしょうもない小物だったのもなんともはや。
しかしこれ、わかりやすい会社内の障害は排除されちゃいましたし、ここから話どう広げるんだろう。軍師としての話よりも、穂春自身をプロデュースみたいな展開になっていきそうに思えるのだが。

七条 剛作品感想

竜歌の巫女と二度目の誓い 2.薬を探す子供 ★★★☆   



【竜歌の巫女と二度目の誓い 2.薬を探す子供】  アマサカナタ/KeG GA文庫

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「初めまして。僕はこの館のかかりつけ医です。彼女は僕のお手伝い」
あの誓いから1か月。平穏な日々を過ごすルゼとギルバートだったが、ドミニクと名乗る青年とラティナという名の女性の訪れによって、静かな時間は急変する……。
「竜の遺骸が、移送中に盗まれた」
それは竜が関わる不穏な報せと、その件に関する調査依頼――事件を追っていく中、ルゼとギルバートは、十二年前に交わした怪我を負った一人の少年と小さな竜の叶うことのない願いから始まった、悲しい誓いにたどり着き……
「ボクの足が治ったなら……お前の背に、ボクを乗せてくれるかい? 」
大切な誓いを巡る物語、第二弾。

お互いをこれ以上無く想いあったからこそ、より深く結ばれるために交わした「約束」が、その想いの深さ故に果たされなくなった時に「呪い」に変わる。
これは前回のルゼとギルバートの話と全く同じ構図になる。約束したらあかんのかい! と思わず思ってしまいそうになるけれど、呪いとなった約束こそが途切れてしまった絆を辛うじて繋ぎ止めていたからこそ、もう一度新しい誓いを交わすことが出来たと思えば、呪いも転じて祝福になるのだろうか。
そもそも約束が誓わなければ、何もかもが潰えてしまった可能性もあるんですよね。とはいえ、それはルゼとギルバートの場合。果たして、ラティナとドミニクのケースではどうだったのか。12年もの離別は彼らに必要だったのか。ラティナが犯してしまった幾多の罪は、負うに足る罪だったのか。
ルゼとギルバートのケースはちょっと他の場合と比較するには重すぎるんですよね。こっちは本当にもうどうしようもない柵と罪業に塗れてしまっているだけに。
裏切り裏切られ殺し殺された関係。どちらも正しくどちらも罪深く、故にお互いをこの上なく強く想い合いながら、お互いに踏み込めない。それは人との繋がり方が不器用というのもあるのだろうけれど、それ以上に内包するシチュエーションが特殊すぎる側面もあるんですよね。
ルゼとギルが行き違ってしまうのも、それぞれに抱える相手に対する罪の意識が強いが故に、というのもあるんでしょうね。二人共自分にこそ罪がある、と思っているだけにどうしたって自分の方を蔑ろにして、相手の方を大事にしようとする。二人共がそうしたら、そりゃ行き違うよね。相手を大事にしようとしたら、相手は自身を思いっきり蔑ろにする。それはもう、自分自身を完全否定されるようなものだ。
そうして苛立つあまり八つ当たりしてしまえば、それもまた大事にスべき相手を傷つける行為で、自分のあり方の否定そのものになってしまうという追い打ちで。
ネガティブスパイラルだなあ。
これ、オズワルドが八面六臂の働きで間を取り持とうとしてくれなかったら、完全に行き詰まっていたんじゃないだろうか。そりゃ荒治療で余計に拗れてしまったけれど、一度お互い致命的な所まで踏み込んで酷い事にならないと自覚すらしなかっただろうし。
オズってはそこまであれこれ世話して手配りして間取り持とうとしてって、過保護もイイ所だと思うほどなんだけど、ルゼたちの関係はあまりにも重すぎるので、それくらいしてやっとこ、なのかもしれない。いやほんと、オズ様様である。働きすぎじゃないのか? 気を使いすぎてストレスマッハじゃないですか?

さて、今回の黒幕、というよりも悪役であるガーウィン。彼はそもそも、約束すら交わして貰えなかった存在なんですよね。誓いもなく、だからこそその想いは彼の中にのみ淀む方向性を喪った呪いとなってしまった。
ギルバートの場合は自分が手を下した、巫女を殺したからこそ、その罪の意識は自分自身へと向けられたけど、ガーウィンの場合は自分の想いを受け取っても貰えず行所もないまま淀み腐り、救えなかった事実は救わなかったものたちへの憎悪へと変換されてしまった。彼の呪いは、竜に、世に向けて解き放たれてしまった。
もし、ギルバートが巫女を裏切らなかったら。世界をこそ裏切り、その果てに巫女を喪ってしまっていたら。彼の想いはどこへと向かっていただろうか。自身に向けて渦巻く殺意が、果たしてどこに放たれていたのか。
ギルバート自身が思い描いたように、ガーウィンというのはもうひとりのギルバートのあったかもしれない可能性だったわけか。
ならば、たとえ呪いに変わろうとも繋がりである事は間違いなかった約束は、祝福に至るものだったのか。
罪の意識を抱えながら、それでも二人で先に進もうと二度目の誓いを結ぶことができたドミニクたちの姿を、ルゼとギルは指針と出来ればいいのですけれど。もう少しオズに楽させてあげてくださいホント。
さて、ドンキーの存在が不明であり不穏のまま今回の話はひとまず片付いたのですが、彼の正体相当怪しいよなあ。そもそも、いったい「いつ」から活動してるんだ、この男は。



ゴブリンスレイヤー 14 ★★★★   



【ゴブリンスレイヤー 14】  蝸牛くも/神奈月昇 GA文庫

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ゴブリンスレイヤーの様子がおかしいという――。そんななか、彼は一党に「冒険」を提案する。
「北の山の向こう。暗い夜の国」
かくして北方辺境に向かう一党。雪山の向こうには、蛮人の英雄譚の舞台、いつもと異なる異文化、言語、そして、この地を治める頭領の美しい奥方がいた。
彼の地の北方の海には幽鬼が潜み、船が戻ってこないという――。
彼らの話を聞いたゴブリンスレイヤーは頷く。
「やはり、彼の人々はゴブリンなぞに負けるわけがないのだ」
そして女神官も誇り高く告げる。
「冒険者に、任せてください! 」
蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー第14弾!
ゴブスレさんが、あのゴブスレさんがテンションアゲアゲで浮かれてるーー!? 子供みたいにはしゃいでるーー!?
いや、流石にあからさまにキャラ変わっているわけじゃないのですけど、明らかに鉄兜の奥で目をキラキラさせて、北の地のはじめてみるものに目移りして、自重出来ずにあれこれと質問して回ってるんですよね。こんなゴブスレさんはじめて見た。
北の山の向こうの国は、入り江の民(ヴァーキング)たち戦士の国。それは少年たちが憧れる英雄譚の舞台となった地だ。
あのゴブスレさんが童心に帰る、ということ自体がなんとも心擽られる思いである。受付嬢さんが思わず抱き締めたくなるほど愛しさを感じてしまった、というのも凄くわかるんですよね。
この北方辺境の視察という「冒険」を請け負ったのがほかならぬゴブスレさん当人というのも感慨深い。今回の依頼には本当にひとかけらもゴブリン関係なかったですもの。それを「冒険」に行こう、と仲間たちから誘われていくのではなく、ゴブスレさんの方から誘う。行く地はかつて子供の頃に憧れ、いや今もなお憧憬の中にある「物語」の大地。
これ、誘われる方の仲間たちも嬉しかっただろうなあ。にべもないゴブスレさんに、何度も冒険に行くぞと無理やり引っ張り出していた彼らである。それが向こうからだもんなあ。そりゃあ、寒さ全然ダメどころか死活問題のリザードマンな蜥蜴僧侶も頑張ってついてきますわー。
今回の彼は寒さもあって本当に動きが制限されてなるべくじっとしていましたけれど、それが逆にのっそりと寝蔵に横たわる「竜」の風情を醸し出しはじめていて、逆にちょっと大物感すら感じられたのが面白かった。
さても、辿り着いた北方辺境は野蛮な海の蛮族たちが支配する薄暗き国、というのは中央からの偏見の目なんですよね。そこは異なる文化の世界。野蛮とは違う、その土地に合ったルールによって成り立つ世界なのである。初手から、嫁取りのために戦をするという風習に遭遇し面食らう女神官ちゃん。そのあとも、南の常識では仰天させられる様々な風習習慣、神の解釈などに彼女は目を白黒させることになるのですが、驚きながらも素直にそういう文化もあるのかー、と受け入れる彼女は神の使徒としてもおおらかで気持ちの良い器の大きい子なんですよね。
その純真さ、直向きさは間違いなく人を引きつける魅力である。それは文化風習の異なる文化圏の人間にも相通じる人としての魅力。盤上遊戯を通じて、強い弱いじゃなくて、この娘に構ってやらねば、とついつい思わせるその人柄で、信頼を得る……なんて野暮な言葉じゃなくてもっとシンプルに、ヴァーキングの巌のような男たち、そんな男連中を尻に敷く女衆と仲良くなり可愛がられ、輪の中に受け入れられる女神官ちゃん。なんかこう、おっきくなったよなあ。妖精弓手が思わず目を細めるほどに。
そんな北方の地で出会ったヴァーキングたちの頭領とその奥方、この人たちがまた気持ちの良い魅力的な人物で、というか頭領が元は南の王国の騎士というのがまた面白いなあ。それは政治の結果であると同時に甘酸っぱい恋物語の結果でもあり、リアルタイム英雄譚なんですよねえ。
王国の王様たち、結構したたかに政略を進めているんだなあ、と感心した次第。それも、双方がWin-Winになるような形で進めているのがまた素敵。
ゴブスレさんたちを派遣したのもその一貫。冒険者という職業が存在せず、ならず者のたぐいとしか認識されていない北方の地に、ゴブリンスレイヤー一行というメンバー構成見てもあまりにも特殊で、同時にこれ以上無く「冒険者也」というパーティーを派遣することで、北方の地に冒険者という存在を印象づかせようとする試み。何よりゴブスレパーティーをあり方、心意気を見てのチョイスというのがいいんですよね。
いや、このシリーズに出てくる主だった冒険者パーティーって、古参から新参までどこに出しても恥ずかしくない気持ちの良い連中ばかりなので、ぶっちゃけどこを派遣しても悪いことにはならなかったと思いますけど。
それでも。
ゴブリンの船団とヴァーキングの船団が繰り広げる海戦の中に乱入してきた海の怪物を前に、モンスター退治は冒険者のお仕事、そしてこれこそが「冒険也」と勇躍飛び込んでいくゴブスレさんたちの勇姿は素晴らしかった。
合戦に挑む戦士たちの勇気たちとはまた異なる、冒険者たちの勇気。個を尊び同時に一つの生き物のように連携する以心伝心の冒険者の戦い方。そんな心映えが、背中が、闘志が、北方の戦士たちの心をも震わせ奮い立たせる。
自分達とは異なれど、共に戦うを誉れと思えるものたち。まさに「冒険者」なる存在を、北方の地に刻んでいく姿は、カッコいいという以上に胸が熱くなるものがありました。
後にこの地を訪れるようになるだろう後続の冒険者たちと、この地に住まう戦士たちの間に育まれるもの。その最初にして一番大事な芽を、彼らはこの大地と住まう人々の心に植え付けたのでした。
なんか今回は全体的に心をキューッと奮わせてくれるものがありました。異なる文化の国で、お互い心から認め合い尊敬しあい共に戦って笑って別れる物語ほど気持ちの良いものはありません。
そして「家」に帰り着いて、待っていてくれる人にただいまと応えて思い出話とお土産とともに振り返るのだ。
「ああ、楽しかった」と。
今回はその全部がギューッと目一杯詰まっていた、まさに「冒険!」でありました。


天才王子の赤字国家再生術 9 ~そうだ、売国しよう ★★★★   



【天才王子の赤字国家再生術 9 ~そうだ、売国しよう】  鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

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「よし、裏切っちまおう」
選聖侯アガタの招待を受けウルベス連合を訪問したウェイン。そこでは複数の都市が連合内の主導権を巡って勢力争いに明け暮れていた。
アガタから国内統一への助力を依頼されるも、その裏に策謀の気配を感じたウェインは、表向きは協調しながら独自に連合内への介入を開始する。それは連合内のしきたりや因習、パワーバランスを崩し、将来に禍根を残しかねない策だったが――
「でも俺は全く困らないから ! 」
ノリノリでコトを進めるウェイン。一方で連合内の波紋は予想外に拡大し、ニニムまでも巻き込む事態に!?
大人気の弱小国家運営譚、第九弾!
ウェイン王子、お見合い斡旋仲人オジさんと化す!
いやなにやってんだ、と言いたくなるけど、これ真っ当な勢力間の際どいパワーゲームが繰り広げられている中で三面指しで盤面しっちゃかめっちゃかに蹂躙しているの図なんですよね。
ともあれ、選聖侯アガタの協力を得るために彼の領地であるウルベス連合の政争に助っ人として介入する事になったウェインですが、この巻における肝ってウルベス連合云々じゃなくて、ここでのウェインの行動、或いは事件の推移が将来起こる大戦の過程や結果を示唆している、という話が冒頭から置かれたことである。
話としては徹底してウルベス連合という国の旧弊的な柵と閉塞感、自分達ではどうにも出来ない雁字搦めの凝り固まってしまった関係を、ウェインという外部からの刺激物を通り越した劇物、毒物のたぐいによって引っ掻き回されたことで、ようやく突破口が見えてきた、というこの国のお話になっている。将来を暗示するような露骨なエピソードや情報は描かれていない。
ただ、後世にウェインの妹であるフラーニャがこの連合国で起こった出来事が、のちの大戦でのウェインたちの結末を暗示していた、と述懐しているとの記述を見るに、直接は関係ないけれど過去から続く旧弊に捕らわれて身動きが取れなくなった柵を、暗黙の了解を、破壊してしまうにはどうするべきだったのか。とか、一時連合所属国の首班の二人が駆け落ちして行方不明になった、という展開とか。色々と先々に起こりそうな顛末の中でウェインとニニムに当てはめて起こりそうな出来事、というのを想像してしまうのでした。
これまで言葉を濁してきた、ニニムたちフラム人がどうして被差別民になったのか。彼らがフラム人が民族結集して作った国がどうなったのか。そういったかなり重要そうな歴史の話も出てきたわけですしね。
それに、ここにきてウェインの動きがやたら怪しくなってきたんですよね。フラーニャが幾度かの外交で成果をあげ、諸外国でも名望を高めつつあるのにともなって、フラーニャ閥というものが生まれ始め、ウェインではなくフラーニャの方を女王として擁立しようという動きが出はじめているわけですが、これまでもウェインはそれを不自然なくらい「黙認」という形で見逃していたのが、さらに暗に後押しすらしているような素振りを見せ始めているんですよね。
元々、売国しようぜ、なんて言ってたように国民に対して責任は感じて放り投げようとはしていなかったものの、国王という立場に拘りは見せていなかったウェイン王子。むしろ、ナトラ国の王というのは彼にとって足枷になりかねない、とでも思っているのだろうか。
彼の本当の目的がどこにあるか、によるのだろうけれど。
その目的というのも、ほぼ「ニニム」に絞られるだろう事は想像できるんですけどね。
そう言えば、ウェイン王子が「いい人」「優しい人」と思われているという話にちょっとびっくりしてしまったのですが、彼の公的な言動を見ていたら確かに彼のそれは客観的に見て善良公平な賢王(まだ王子だけど)と見られても不思議ではないんですよね。直接対面した人は彼の空恐ろしさを実感するだろうし、決していい人などではない事は理解しているんだろうけど。
でも、彼が売国上等とまで言ってのけるほど、ある種他人に対してどうでもよい、という考えを根底に持っているようなタイプの人間だとわかっている人はどこまでいるのか。
いくらやばくても、王として国を背負って立つ覚悟と責任を持った人物だ、と捉えられているのはおかしくないですしね。実際、ナトラの国民に対して責任を投げ出していないし。
身内に対しては優しいのは間違いないんでしょうけどね。その身内認定がどの範囲までなのか。
今回、ちょっとニニムの身柄に危険が迫っただけでも国一つ潰しかねないラインを綱渡りしたように、ニニムが関わると途端に狂気の魔王化するウェイン王子。こいつって、もしシリーズ開始以前にニニムを喪ってたりしたら、普通によくRPGゲームとか長編大作とかで世界を破滅に追いやるラスボスとして登場してきそうなキャラなんだよなあ。
そんなラスボス系主人公が、果たして一体何を目論んでいるのか。むしろ、このシリーズここからが本番と考えていいのかも知れない。


貴サークルは"救世主"に配置されました ★★★☆   



【貴サークルは"救世主"に配置されました】  小田一文/肋兵器 GA文庫

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GA文庫大賞《金賞》受賞作
100部売れなきゃ世界が滅ぶ!? 同人誌に懸ける青春ファンタジー
「ずっと……ずっと、あなたを探していました、世界を救うために」
自分の同人誌によって、魔王の復活が防がれる。突如現れた女子高生ヒメにそう諭された同人作家のナイト。
ヒメの甲斐甲斐しい協力のもと、新刊制作に取り組むのだが……
「えっ、二年間で六部だけ……?」
「どうして『ふゆこみ』に当選した旨を報告していないのですか?」
「一日三枚イラストを描いて下さい」
「生きた線が引けていません」
即売会で百部完売しないと世界が滅ぶっていうけど、この娘厳しくない!?
「自信を持って下さい。きっと売れます」
同人誌にかける青春ファンタジー、制作開始!

これ、誰にとっての青春かというと、ナイトよりもヒメの方かもしんないね。
同人誌即売会で100部も同人誌を売らないと世界が滅ぶ、なんてフレーズを聞かされると、ついついコメディよりのラブコメで、その世界の危機というのもゆるい感じの話しなのかな、と思ってしまうのですがどうしてどうして。

ガチで人類滅亡じゃないですかー。

人類文明そのものが崩壊しちゃってるし、種の存続そのものがヤバいことになっちゃってるし。ガチのアポカリプスである。
それも予測ではなく確定未来。ヒロインのヒメが実際に何度も体験してきた正史であり、タイムリープによって何度も何度もやり直した末にそれでも変わらなかった未来、という当事者実体験済みの代物である。
いやこれが、なんで同人誌売るのと関係してるんだよ? と思うくらいのシリアスさである。
これでいきなりヒメが、同人誌100部完売してください、でないと世界滅びるから! と押しかけてくるトンチキならコメディ路線一直線なのですけど、ナイトを探して訪ねてきた時はヒメ自身も彼が世界を救うための重要な鍵となる人物であり、救世主なのだ、という事実は知っていても、彼がどのような役割を果たして世界を救うのかはわかってなかったんですよね。
彼女も最初は、ナイトがとてつもない力を秘めた勇者様的な救世主だと思っていたようですけれど。普通はそう思いますよね。強大な「人類の敵」を打ち破るのにはそれ以上に強力な力を持った存在の助けが、と考えるのは破壊と死が渦巻く戦場でずっと生きてきた人間にとっては当たり前の思考のたどり着く果てなのでしょう。
しかし、ようやく見つけた救世主には、何の力も秘められていなかった。
このあと、ヒメがナイトの住むアパートの隣に引っ越してきて、彼の同人誌づくりを手伝い始めるまでにはしばらく間がある。
同人誌なるものの存在すら知らず知識を持たなかった彼女が、それを調べるまで。自分が仲間からもらった最後の、「ナイトと彼の所属する星霜煌炎騎士団同盟が世界を救う。ナイトを支えることが貴女の役割」という預言を、ナイトが同人誌を作ることを支え守ることが世界を救うことに繋がるのだと解釈して、自分の使命を果たすために訪れるわけだけれど。
そんな解釈に至るまでにヒメの中にはどれだけの葛藤があっただろうか。そもそも、ナイトに何の力もないと解った時に絶望を感じなかったわけがないだろう。あれだけストーカーじみた事までして必死に脇目も振らずナイトの存在にたどり着き、彼のもとまで押し掛けてきた彼女である。それが素直に一端引き下がった、というのはそれだけ彼女も混乱しショックを受けていたとは考えられないだろうか。
ヒメがそれでも諦めず、自分が仲間から託された預言を必死で解釈し直してこじつけでも無理矢理にでも納得できる理屈をみつけるまで、決してすんなりいったとは思えない。
そもそも、売れっ子でもない即売会で一部も売れない事も少なくないなんて底辺同人作家の同人誌作りを手伝って、それに何の意味があるのか。同人誌、という存在自体を理解していなくて即席で知識を身に着けたことが逆に偏見を抱かなかった、というのもあるんだろうけれど、もうヒメに預言を疑うだけの余地が、余裕がなかった、とも言えるんですよね。
それだけ、彼女は絶望を繰り返してきた。世界の破滅を目の当たりにしてきた。人類が滅ぶ光景を目にしてきた。何度も何度も、大切な仲間たちが目の前で死んでいくのを、自分の腕の中で冷たくなっていくのを体験していた。
これが最後だと、本当に最期だと思い定めてきたタイムリープである。果たして、平和な時代を生きてきたナイトには想像もつかない感じ取ることもできない狂気が、不退転の覚悟が、彼女の中に蠢いていたとしても全然不思議ではないんですよね。
それ以上に、ヒメにとって預言を託して逝った仲間である、恐らく年齢としてはだいぶ下になるだろう妹みたいな娘であったクラリスという子の遺した言葉を、預言を、疑うなんて出来なかったのだろうけど。

100部、という部数はヒメやナイトの間から出た数字ではない。たまたま、仲の悪い同業者とのトラブルから偶然飛び出した条件だ。しかし、それを目標とすることで彼らは具体的に達成に向かって動き出すことになる。
それまでは、ヒメのナイトへのお世話、日常生活のサポートや同人誌制作のお手伝い、というのはどこか責任感とか義務感に後押しされたものであって、熱量のベクトルはあくまで世界を救うため、あの未来をもう見ないため、というベクトルに向かっていて、必ずしもナイト個人や同人誌というものに向いていたわけじゃないと思うんですよね。
でも、具体的な目標が定まってそれに向けて、プラス1名加わった二人だけのサークル「星霜煌炎騎士団同盟」が動き出したときから、ちょっとずつヒメの意識は変わってくるように見えるのだ。

これまで何度も何度も、彼女の言葉を信じるならば延べ数百年にもなるだろう長い長い時間、繰り返し繰り返し、「魔王」の送り出す正体不明の怪物と戦い続けてきた、戦うことが、破壊と死がいつも隣り合わせで日常だったヒメにとっての、もう思い出せないくらい昔に遠ざかっていた平穏な日常。一つの目標に向かって、毎日毎日ドタバタと大騒ぎして、時に大声を張り上げて意見をぶつけ合い、主張を叩きつけ合いながら、仲間たちと一心不乱に邁進する日々。それは確実に、ヒメの中の熱量の向かう先を変えていく。脇目も振らない、振る余裕もない切羽詰まっているのが常態だった日々が、いつしか「夢中」のなかに埋もれていく。
それは、時守緋芽にとっての、間違いなく青春だったのだ。数百年越しの遅れてきた青春。

これ、本当は主人公ってヒメの方じゃなかったのかな、とすら思えるほどに、彼女は生き生きとしてウンウンと唸るナイトの背中を叱咤激励する。
未来では共に戦った戦友の、平和だった頃の想像もしなかった思わぬ姿を目の当たりにして、でも中身の芯の頼もしくも一本気通った所は何も変わっていないのを実感して、地獄のような未来がどれほど多くの人の将来を歪め潰えさせてしまったのかを改めて実感する。
また今の自分と同じように、いやそれよりも遥かに入れ込んで自分の趣味に、好きな事に夢中になって一途に直向きに邁進した結果を持ち寄ったコミケットというイベントの凄まじい熱気を、集った人々の尋常でない数を目の当たりにして……平和だからこそ人はこんなにも好きな事に打ち込める、こんなにもいっぱいの人たちが夢中になって好きな事に挑める。お祭りだ。こういうものが、自分が守ろうとしてきたものなんだ、と。
ずっと戦ってきたいつしか擦り切れて摩耗してわからなくなっていた平和、いつしか自動的に妄執的にただ世界を救うのだと思い定めて突き進んでいたことを実感し、その救おうとしていた世界がどんなものだったのかを、今こうして思い出し噛みしめることが出来たことに喜びを感じる。
責務でも義務でも使命でもない、ただ心からこの世界を守りたいと思えた。

ヒメとナイト、二人三脚の努力に他にもデスメイドなど手助けしてくれる人たちの友誼も加わり、今までろくに売れることがなかった同人誌が、はじめてどんどん売れていく、その流れと熱を逃さないようにナイトがさらに力を振り絞ってスケブなんかをスタートして場を盛り上げていくという熱さと、会場の外で思わぬ敵からの横槍を未だかつてない意気込みで世界を守るという願いを叶えるために激闘するヒメの熱量が、折り重なって上昇していくクライマックスは実に素晴らしい流れでありました。
トンチキな条件に思えた、同人誌100部売らないと世界が滅びる、逆に言うとナイトが同人誌100部売ったら世界が救われる、という条件がちゃんと真っ当な意味を持っていた。それが本当に世界を滅ぼす、あるいは世界を救う鍵でありきっかけだった、という所なんぞはストーリー展開としてピッタリとピースがキレイにハマる感覚があって、うん良かったです。

これ、続くとなると妙にハードルあがりそうな感じもあるのだけど、これ1巻でもうまく纏められていて面白かった。

我が驍勇にふるえよ天地 10 ~アレクシス帝国興隆記 ★★★☆   



【我が驍勇にふるえよ天地 10 ~アレクシス帝国興隆記】  あわむら赤光/ニリツ GA文庫

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世に常勝不敗の将軍、二人あり。
一人はアレクシス侯レオナート。
いま一人はガビロン三太子マルドゥカンドラ。
ともに百戦して百勝という稀代の名将が、多士済々の勇者賢者英雄女傑を幕下に従え、万の軍を率い、遂にいくさ場にて相見える!
これ矛盾の故事なりや――激戦死闘の果てになお不敗の旗を掲げられるのは一方のみ!
真の常勝将軍は、果たしてレオか? マルドゥカンドラか?
武勇、知略、用兵、戦略、策略、情報、人材、国力――全てを駆使し激突する、シリーズ最大の総力戦に刮目せよ!
魔法がないから面白い、痛快にして本格なるファンタジー戦記の大本命、待望の第10弾!!

古来より戦記小説多々あれど、片方が将星の抱負さ……人材の質と量の両方の高さ多さを強味とする軍勢に対して、同じ多士済々の人材の質量で真っ向から勝負してかかってきた展開は、ちょっとはじめて見たかも知れない。
ただでさえレオナートのアレクシス軍って並の戦記物よりも多種多様なキャラクターの将星が揃っているんですよね。アドモス軍を吸収したものだから、さらに拍車がかかっていますし。
光武帝の雲台二十八将かってなもんで。いや、文字通り雲台二十八将がモデルになってるんですかね。同じ二十八神将なんて名前が後世につけられるみたいですし。
そんなレオナート軍と真っ向から此度かち合うことになったガビロンの常勝将軍マルドゥカンドラ。その不敗の軍団こそ、レオナート軍と同じく様々な得意分野に秀でた人材の宝物庫。オールスターキャストに対して、オールスターキャストで戦いを挑んできたようなもので、レオナート軍の将星たちのお株を奪うような逸材たちが、将棋やチェスで同じ駒が両陣営に揃っているように相互に対応するように、レオナート軍と真っ向からぶつかり合うことになるのである。
まさに、人材と人材の勝負、てなもんでした。そりゃ、これだけ敵方の一軍団にこれだけキャラの個性を考え、戦い方考え、レオナート軍との千差万別の戦闘を考えてたら時間かかりますよ。惜しげもなくネタを掘り起こして投じていくようなものですし。

でもこれ、人材と人材の勝負、と言いはしたものの、終わってみると何気にシェーラとジュカのレオナート軍の二大軍師によって、決戦がはじまったときにはだいたい決着はついていた、という様相になるんじゃないですか、これ。
残念ながら、マルドゥカンドラには盤上を自在に操る智将のたぐいは幾人も居たようですけれど、盤面そのものを用意する軍師は見当たらなかったみたいなんですよね。かといってマルドゥカンドラが自身でそれを成すかというと過去の戦歴を見ても、マルドゥカンドラは提供された戦場で戦うタイプの将軍であって、自分で戦場を用意したり作り上げるタイプじゃないみたいですし。これもアドモスの妖怪爺さんが語っていた、あの兄弟は優秀で仲が良すぎるが故に相手の職分を侵さない、という弱点にあたるのかもしれません。マルドゥカンドラもあくまで軍人に徹していて、言われたところに向かいそこで本分を尽くす、というような行動が伺えますし。
かといって、長兄は政治家としても軍政家としても化け物級みたいですけれど、大戦略家として国家戦略を先々に至るまで見通して操っている、というタイプでもなさそうですし、次兄は謀略家にして情報屋ですけれど、だからこそ裏方に徹しています。天才と言ってもいいんだろうけれど、三人とも限定された局面にしか手を伸ばそうとしないようで。だからこそ、彼ら兄弟は末弟に期待しているのかもしれないなあ。

ともあれ、終わってみれば「役者が違った」と言ってしまっていいくらいに、差が浮き出てしまった感があります。結局、レオナートの側の将星に勝てるような、決定的に上回るような逸材はあれだけ人材が豊富に居たにも関わらず、誰も現れなかったわけですしね。それに、あまりにも多種多様にキャラを出してしまったために、個々に当たるスポットが小さくなって結果として一人ひとりの印象も薄くなってしまった気がします。一番印象に残っているのが、性格最悪のクティルというのがなんともやは。
肝心のマルドゥカンドラも、人の扱いのうまさ、カリスマ性こそが常勝を担ってきた要因なのでしょうけれど、レオナートがトラーメという曲者を意外にもうまいこと使っているのに対して、マルドゥカンドラの方はクティルをはたして上手く使えていたかというと、もろに軍団の弱点になってしまった点を鑑みても、これを重用していた時点でどうなんだろう、と思ってしまった部分もありますし。
部下たちの意見を良く聞く、という点は彼の強みでもあったのでしょうけれど、物語としてはマルドゥカンドラの存在感そのものが薄まっていたような感じがありました。なんとなく軍団全体に主体性というか、主導する強烈な牽引力が見当たらなかったというのもありますし。
レオナート軍の方はシェーラとジュカ、特にジュカがガッツリ手綱握って主導権握って全体を動かしてくれてますしね。既に戦争全体の行程を整えた上で、戦場現場での対応をガンガンとジュカが指揮していってくれるこの安心感安定感。
おまけに、今回の戦いはオスカーとクルスという自ら先頭に立って切り込む個の武勇で活躍していた二人が、後方から一勢を指揮する将帥として一皮むけるステップアップに至った話にもなりましたしね。
こういうところに「役者が違った」という感があったんですよねえ。

やはり、拮抗し得るのは同じステージで戦う相手。この場合はシェーラと同じ目線で戦争を動かせる相手、となるのか。シェヘラザード、そしてキルクス皇子がやはり一番の強敵、ということになるんでしょうな。
作者としての難所を越えたことで、これからはガンガンと続きだしてくれると嬉しいんですけどね。勢い付けて頑張ってほしいな。


処刑少女の生きる道(バージンロード) 5.約束の地 ★★★★   



【処刑少女の生きる道(バージンロード) 5.約束の地】  佐藤真登/ニリツ GA文庫

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「私は清くもないし、強くもないし、正しくもない。そんな悪い奴だもの」
アカリを連れ去った導師「陽炎」を追い、“聖地"に足を踏み入れたメノウ。せめて自分の手でアカリを殺す。そう決意した彼女の目的は、【白】の遺物・塩の剣の確保だった。
幼き日のメノウと導師がかつて辿った旅路の果て。塩の剣が眠る、清浄なる塩の大地。第一身分に封印されたそこへ至るには、【使徒】魔法使いが守護する聖地の中枢・大聖堂の突破が絶対条件。「陽炎」によるアカリ処刑のタイムリミットが迫るなか、圧倒的戦力差を覆すためにメノウが選択した禁忌の手段とは――。
師を超える時は、今。彼女が彼女を殺すための物語、決別の第5巻!!


アニメ化ですって! これはびっくり。これにはびっくり。GA文庫が怒涛の7作品アニメ化(続編含む)に打って出た一環なのですが、それにしてもこの作品が選ばれるとは……。でも、本作もGA文庫の大賞作品なんでしたっけ。それに、この作品のストーリー展開と世界観、ビジュアルはアニメ映えするものだと思うので、これは素直に期待してしまうなあ。

かくして、物語はクライマックスへ。

……クライマックス? いやいやいやいや、ちょっと待ってちょっと待って?
最後の最後で今までの前提全部真反対にひっくり返されちゃったんですけれど。なにこの構成? 本当に全部裏返しになったぞ!?
これ、終盤まで見事なくらいにメノウという少女の成長譚であり覚醒の物語であり、革新に至る真っ当なストーリーだったはずなんですよね。いびつながらも美しく磨き抜かれた師弟愛の物語であり、尊いまでのメノウとアカリの二人の少女の友情を超えた友情の物語であったはず。
二人の間に育まれた絆によって、メノウは自分に課していた枠組みを壊して、人として生きる道をついに見つけた、ついに掴み取った。この5巻までの間に丁寧に丁寧に積み重ねられていったものの集大成であり、メノウが自分を見つめ直して本当の望み本当の自分の姿に気づく、そんな話だったはず。お互いにどこか一方的だったアカリとの友情が、ついに混じって交ざって繋がった、そんな回だったはず。
克服の物語として、越えられなかった壁を超える物語として、新たな自分に出会う物語として、美しいまでに綺麗な線を描いて辿り着いた、天王山だったはず。

……だったんですよ。

しかして明かされた真実は、メノウのあのどこか寄り固まった在り方もアカリとの深すぎる繋がりにも世界の在り方にすら深い深い納得を与えてくれてしまった。凄まじいまでの納得だ。怒涛のような得心だ。
でもそれは、今まで彼女らが歩いてきた道の情景を根こそぎひっくり返すものなんですよね。彼女たちが旅の中で掴んできたものの意味が、そっくりそのまま反転してしまう。ひっくり返されてしまう。
メノウの原点が「白」にある、というのは半ば承知されていた事でしたけれど……その関わり方はあまりにも予想外でした。そこまで残酷な、酷薄で無情な意味を持っているとは思わなかった。
名前からしてそうですよ。普通メノウって……宝石の名前じゃないですか。なんですか、その意味。酷すぎませんか? 名付けたんじゃなくて、自ら名乗ったという無意識な所が余計に酷薄じゃないですか。でも納得なんですよね。それは、メノウのあの自らをどこか突き放したような淡々とした定義づけに、実に沿う。役割であるという事がこれほど似合う子はなかったんじゃあないだろうか。
サハラのメノウへの嫌悪や敵対心の根っこって、実は良いところ突いてたんだなあ、と。今回この巻だけでも、感性感覚のまま振る舞っているサハラだけれど、なかなか侮れないんですよね、この人。

でも、メノウは人形じゃなく、そのはじまりから師匠に憧れあの人のようになりたいと望んだ。役割でありながら、あまりにも彼女は人として生きる道を求め続けてた。
その最果てでアカリと出会い、自分の根源を揺さぶられひっくり返され、自分に課していた壁を乗り越えることが出来た。
その全部が、意味を失いかねない。一番大切なアカリとの繋がりですら、嘘になりかねない。アカリと繋がることで望むことが出来た、善き人を殺さずに世界を変えるという願いも……善き人ってなんだよ!? てことになる。
メノウの覚悟も決意も望みも願いも、これまでのメノウの全部が、ここまで至ったメノウの人生の何もかもが、無価値にされるようじゃないですか。無意味へとひっくり返されたみたいじゃないですか。無造作に踏み躙られたようじゃないですか。
幼い頃から師匠に憧れあの人のようになりたいと思い、成った処刑人としての在り方。それを自分で粉々に砕いてしまい、なにをどうしたらいいのかわからなくなって途方にくれたことも。
虚無の虚脱に呑まれながら生きたいという衝動にすがりついたことも。
ゼロの中から本当に大切なものを見つけて、アカリのもとに辿り着いたことも。
アカリと手を携え一緒になれて、彼我を混ぜ合い分け合って、一心同体というほどにお互いを理解し合えたことも。
二人で自分の生きる道をついに見つけて、そこを歩いていこうと決意して覚悟して、立ちふさがる師匠を超えていくのだと決心したことも。

マノンが見つけた「彼女」は、その登場とともに、その存在を知らしめることで、メノウが示したそれらの意味を、勇気も愛情も友情も罪悪感も、ぜんぶが裏返り台無しにししまった。

きっとこれを冒涜というのだろう。

それをまだ、メノウは知らない。アカリも知らない。フレアですらも知らないのかもしれない。いや、師匠は「知って」いるのかもしかして? 彼女のセリフは、ラストを見てから振り返ると意味深に取れる部分が幾らでもあるように見えてくる。だからもしかして?

そしてそれを知ったマノンは、文字通り……白紙になった。いやマジで? これ本当に? 

未だ知らないメノウたちにひたひたと近づいている真実は、試練と呼ぶには余りにも悍ましい。果たして、メノウたちはこれに耐えられるのだろうか。ここでメノウたちが結実させた輝きは、その真実を前にした時一切の光を泥でもぶちまけられたみたいに無価値にされてしまうだろう。
見事なまでに力強くあげて美しいまでにあげて、見事なまでの落とし方。いや、奈落の落とし穴を開いてみせただけで、未だそこに足を踏み入れず、その少し手前で走り出しているというのが現状か。敢えて未だ落としていないのが逆にエグい。えげつない。

あと、みんなもっとフーズヤースさんに優しくしてあげて! 今回一番ひどい目に遭いまくってたの、この人なんじゃないだろうか。彼女自身、あんまり酷い目にあってる自覚なさそうなのが、自分の有能さに気づいていないところも相まって、不思議な愛嬌と絶妙の存在感がのってるキャラだったんですよね。良いように振り回され翻弄されまくってたフーズヤースさんですが、ある意味一番今回美味しいキャラだったのかも。それにしても、モモはもうちょっと本当に他人に対して丁寧に、というか他人を人間扱いしましょうよw
そんな人非人なモモに対して、メノウちゃん幻想を抱きすぎ!!
 

邪神官に、ちょろい天使が堕とされる日々 2 ★★★☆   



【邪神官に、ちょろい天使が堕とされる日々 2】  千羽十訊/えいひ GA文庫

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「雌獅子の女神が復活した――このままだと、人類は絶滅する」

英雄アウグストがイフリートと相討ちになり死亡して数日後、祈師が殺される事件が教皇顧問団で問題となった。事件現場は、山脈が抉り、消し飛ばされたという。
「丁度いいスタッフがいるではありませんか。有能かつ、死んだら死んだで構わない、そういう祈師が」
そんな事件に送り込まれることになったギィたちは、教団と敵対する亡神結社の刺客と邂逅する。
「で、こいつはチェルシー・ザラ。オレの嫁」
「誰が嫁だ! 」
不良神官と彼に甘やかされる天使が紡ぐファンタジー第2弾!


アストリッド、年齢的にもチェルシーよりも一回り上(アストリッドが千二百歳でチェルシーが八百歳だそうで)ですし、神格でも星の女神アスタルテとして魔王を冠するほどのものであり、月の大天使たるサリエルなチェルシーよりもまあ上かなって所なんですけれど、関係性としてはチェルシーが姉でアストリッドが妹、というポジションに収まってしまうんですか。
逆じゃね? と、思ったんだけれど、アストリッドが一緒に旅するようになってからチェルシーって確かに甘ったれた行動は取らなくなってるんですよね。ギィにはだだ甘えてますけれど、三人一緒のときは先達としてアストリッドの面倒をよく見ているし、どこか落ち着いた雰囲気すら醸し出すようになってるんですね。
これ、無理してお姉さんぶって背伸びしているわけじゃないという所が味噌で、ごく自然にアストリッドの事を見守って、気遣って、寄り添ってあげてるわけですよ。
アストリッドも、天真爛漫で無邪気な子ですけれど別に短慮だったりちゃんと見てないとどこに突っ走るかわからない暴走グセがあるわけでもない。むしろ、裏表のないバカっぽい言動とは裏腹にとても聡明で思慮深いすらあるし、我儘言ったりもしないイイ子なのである。でも、どこかその純真さは見守ってあげたいという庇護欲を掻き立てるので、チェルシーが何だかんだと面倒見てしまうのもわかるんですよね。
それに、今回の事件はアストリッドと縁の深い神様と対決することになり、彼女も恩人であり家族のようでもあった人を討たなければならない、という状況に深く苦悩することになるから、余計にその明るい笑顔を曇らせている彼女には寄り添ってあげたい、と思わせてしまうのでしょう。
もっとも、アストリッドは苦悩はしても迷いは一切していなかったのですが。
その意味では覚悟据わった魔王でもある、と言えるんですよね。同時に、チェルシーやギィ、そして共闘する事になった亡神結社のエドとシャルロットの人神コンビがアストリッドの心の内をかき乱すことなく、彼女を支えるようにその悲しみに常に寄り添ってくれていたから、迷うだけの隙間がなかったんですよね。
ギィもエドも、その意味ではイイ男すぎるし、チェルシーとシャルロットがイイ女で良き友で姉妹同然の同志であった、というべきなのか。
特にエドゥアルドとシャルロットのコンビは、さながらもう一組のギィとチェルシーで以心伝心、息ピッタリだし、価値観もギィとほぼ似通ったものだけに、義もあり仁もあり、という感じで気持ちの良い二人組だったんですよね。って、いきなりギィと故郷での幼馴染という設定が飛び出してきて、びっくりしたんですけど。故郷を滅ぼされて以来、の再会になったんでしたっけ。そして、お互い対立する組織の掃除屋みたいな立場にありながら、変にすれ違って衝突することもなく、いや出会い頭はお互い誰かわかっていなかったので戦闘になりましたけど、お互い幼馴染だった相手とわかったら信じたり疑ったりという概念すら必要ないとばかりに、一緒に行動するようになって……いや、男同士の幼馴染というのもこうしてみると、いいもんだなあ、なんてちょっと思ってしまいました。
ともあれ、そんな連中がアストリッドの苦悩に何も余計なことを言わずに寄り添い、命令や何かを強いる事無くアストリッドの在り方をそのまま受け入れてくれていたから、彼女も迷うことなく暴走する恩人に対して自分が何をするべきかを貫けたんですよね。
その迷いの無さが、覚悟が、またアストリッドの健気さを引き立てていて、天真爛漫でムードメーカーで聡明で可愛らしくて健気な年上の妹格って、パーフェクトかよと言いたくなるんですけど!
エドとシャルの亡神結社のコンビの登場に、アストリッドの掘り下げ、チェルシーのちょっとした成長と、キャラクターに関しては大いに味わわせていただきましたけれど、ストーリーとしてはあんまり進展なかったんじゃないかな。天罰神の復活は遠大な計略かもしれませんけど、怨敵ヤオダバオトの側の動きは見えなかったわけですし。
ただ世界観はやはり面白いなあ。今回はエジプト神話の天罰神が登場、そこにアストリッドの神格であるアスタルテが色んな神話大系に様々な名前で登場しているのを運用して、関わりを持たせて、という形になっていましたし。各地の神話の残滓が今、人の間に入って生き残り、今この世を支配する疑神ヤオダバオト打倒のために雌伏している、というのもワクワクしますし。スクルドって、盾の戦女神でもあるのか、このへんあんまり知らんかった。


転生魔王の大誤算 2~有能魔王軍の世界征服最短ルート ★★★   



【転生魔王の大誤算 2~有能魔王軍の世界征服最短ルート】  あわむら赤光/kakao GA文庫

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臣下達の重すぎる忠義と愛に後押しされ、しぶしぶ世界征服を続けるケンゴー。
ベクター王国を一瞬で攻め落とすと、統治体制を確立するため民心獲得政策を打ち出す。
金と物をバラ撒き、魔王の体面を保ちながら、どれだけ民に媚びることができるか、ヘタレチキン魔王の政治《たたかい》が始まる!
意外にも臣下達も協力的で、むしろ有能すぎてケンゴーもほくほく顔。
「これはうれしい誤算だな! 」
だが、魔族と人族の融和を望まぬ者達が暗躍。
まさかアイツまでもが謀略の糸を張り巡らせ、ケンゴーの優しさ溢れる占領政策を妨害する!?
魔王の自覚が芽生え始め、臣下達の愛もますます深まる、誤算だらけのサクセスストーリー第2弾!!

媚びる媚びる、これでもかとゴマをすって媚びまくる。
これが誰かに仕える立場なら佞臣路線一直線なのだけれど、ケンゴー君は一番偉い魔王なのである。それが偉そうな顔をしながら、幹部である魔将たちに媚を売り、征服した人間の都市の市民たちに媚を売り、と大安売りもイイ所なんですよね。
自分の意図が伝わって無くて、独自解釈で盛大にやらかしてドヤ顔の魔将たちを叱責したり罰を与えたり、なんて小心者の彼に出来るはずもなく、まず褒めて褒めてその上で自分の思ってたのとちょっと違うなあ、というのを伝えつつこれはこれで素晴らしい結果を出していると褒め称え、その有能さと忠誠心を褒め称え、君たちは間違ってはいないしよくやってくれたけれど、ちょっとだけ方向修正するからね、悪く思わないでね。という趣旨の話をふんぞり返って尊大な物言いで覆い隠しながら、実質低姿勢で全力で媚びを売りまくる魔王ケンゴー。
いや、ここまで偉そうにおもねることが出来るのって、それはそれで才能かもしれない。いやいや、ちゃんと話聞いてたら無茶苦茶言ってるなあ、というのが露骨にわかるので別に全然上手いこと言ってるわけじゃないんですよね。凄まじくボロボロとボロを出しまくっていると言える。
それでも魔将たちが褒められたと喜び、超好意的に解釈してくれて、尊敬を深めてくれるのはそれだけ普段も最初からちゃんと話聞いてくれてない、という証左でもあるのかもしれない。
今回は、間違ってぶっかけられた魔法薬によって、冷静さを保てなくなると内面の凶暴さが表に出てしまうという副作用によって、魔将たちが思いえがく理想の魔王様像を何度も実演してみせてしまったのが、思い込みを助長させる結果になってしまっていたのかもしれないが。
いやでも、この副作用状態のケンゴー、ただの性癖全開の中二病に掛かった変態、でしかなかったような。これ、ただのエロ魔王ですよね。
おかげで、ケンゴーの正体を知り小心者としての彼をフォローし守ろうとしてくれているルシ子が、火消しに苦労するはめになるのですが。傲慢を司る彼女があくせくとケンゴーのやらかしをフォローしケアして回ってるというのは何とも皮肉な姿でもあるのですが、彼女の場合傲慢ってのはただのツンデレだから別にいいのか。むしろ、実体は健気で献身的、と言ったところですもんね。自分だけが本当のケンゴーを知っている、という優越感も持っているみたいだし。ある意味、彼を独占しているとも言えますからね。なので、自分だけに弱音を吐いてくるケンゴーに対して、つんつんしているようでこの娘だだ甘で、やたらと甘やかしてやがりますし。ケンゴーも、ルシ子にベタベタなものだから、二人きりになると途端にイチャイチャしてばかりなんだよなあ。

ただ、そのルシ子の優越感もいつまで保てるか。
ケンゴーの中身を理解せず、勝手に自分の理想像を彼に被せてファンか信者のように盛り上がっているように見える魔将たち。実際、ケンゴーはその幻想を裏切らないために四苦八苦しているわけですけれど、本当に一から十まで全部誤解と思い込みで、魔将たちの忠誠心と信仰が成り立っているかというと、彼らは見事に能力はともかく見る目はなくてぼんくらもイイ所ですけれど、完全に何も見ていないし話も聞かない、というわけじゃあないんですよね。
少なくとも、ケンゴーが本当にカッコいい魔王様だというのはわかっている。
小心者で臆病者だけれど、ケンゴーは卑怯者とは程遠い男である。平和主義者で本心ではまず話し合い優先で戦う事は怖いし嫌だし面白いとも思っていないけれど、引いてはいけない場面では決して退かない。理不尽に対して心から怒り、自分を困らせてばかりの部下たちだけれど、その忠臣には本当に感謝して有能さには尊敬すらしている。いざ、彼らがピンチになった時に自ら身体を張って守り助けることに何らの躊躇も抱かない。
魔将たちがオーディエンスと化して、魔王様かっけぇぇぇ! とやんや喝采してる時は本当にちゃんとカッコいいんですよね、魔王ケンゴー。いやそれにしても、ひたすらテンションマックスで大騒ぎしてアゲアゲで居続けるのって、疲れないかな、と思ってしまうのだけれど、推しに夢中な連中というのはこういうものなのかもしれない。
ってか、魔将たちって忠誠心というよりもこれファン心理ですよね。推しのアイドルを一心不乱に応援するドルオタのようなメンタルである。
果たしてそんなファンと理想像と推しの実像には乖離があることは不思議ではないのですけれど……こうして見てるとその乖離は徐々に埋まっていっているような気もするんですよね。徐々に、魔将たちはケンゴーの本質を、実像を理解しつつあるように見える。誤解や思い込みと実像の乖離が埋まりだしてなお、彼らのケンゴーへの敬愛が薄れないとしたら。
ルシ子も、いつまでも自分だけが彼を知ってるのだ、みたいな優越感に浸ってはいられないんじゃないだろうか。既に、アス美あたりはケンゴーの中身について察しはじめているようなきらいもありますし、マモ代は別の意味で盲目的にケンゴーのカッコいい側面に夢中になりはじめているし、レヴィ山くんもあれ、結構ケンゴーのことわかってるんじゃないだろうか。
そんな風に、いつの間にか魔将たちとの距離感詰まってるような感じがあり、面白くなってきた。
しかし、天使サイドはこれ完全に悪役なのか。聖女さまも、見事に狂信者ですし、ケンゴーの怒りに触れる理不尽には事欠かなさそう。





俺とコイツの推しはサイコーにカワイイ ★★★   



【俺とコイツの推しはサイコーにカワイイ】  りんごかげき/DSマイル GA文庫

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「お前ッ!! いつからギンガちゃんの正体に気づいてた!?」
俺こと、南アズマは電脳アイドル『∞ギンガちゃん』の激推しフォロワー。そんなギンガちゃんの中の人は幼馴染の星夜アゲハなのだが――。

「お前じゃない!……西条院ロコよ」
もう一人の幼馴染・ロコもギンガちゃん推しと判明し、俺たち二人でこっそり応援しようと結託するが??

「ふふ……心から、愛しあっている」
なぜかアゲハちゃんは俺×ロコが【恋人同士】と勘ちがいしちゃう!?

すれ違う幼馴染たちは本当の友達になり、ギンガちゃんをメジャーにできるのか?
これはネットと現実が交差する、ぼっち三人組の交信録。
第12回GA文庫大賞<銀賞>作品。

こ、これって幼馴染なのか? 馴染んでないぞ? 全然馴染んでませんよ!?
正直、これだけ疎遠……昔は仲良かったけど大きくなって疎遠になりました、じゃなくてはじめから今までずっと疎遠! 仲良くないどころか、ろくに話したこともない、というのは果たして幼馴染と言えるのだろうか、と最初真剣に首を傾げてしまいました。
とは言え、小さい頃から同じ学校同じクラスだった三人。アズマとロコとアゲハは、生来のボッチ気質ということもあり、友達同士でグループ作ってー! というアレ、あれをやられると見事に毎度余ってしまう屈指の三人だったがために、幼い頃からなにかと三人一緒にまとめられ、一緒に行動していた、という三人でした。
それなのに疎遠て。ほとんど喋ったことがないて。……逆にもう、すごいな!
あらすじなどから、この作品って仲の良い幼馴染三人組が、一人がこっそり電脳アイドルデビューをしたのをきっかけに、残りの二人もこっそりファン活動をはじめて、それがラブコメに繋がっていくみたいなのを想像していたので、まさか全然仲の良くない幼馴染同士、というシチュエーションはまったく予想していませんでしたぜ。
本来、幼馴染というのはそれだけ人間関係が「完成」されている関係でもあります。ラブコメにおいては、その揺るぎない完成度を楽しむ関係でもあり、その完成された関係を揺るがすような爆弾を投下することで起こる関係の距離感の撹拌を楽しむものでもありました、幼馴染というのは。
ところが、この三人は完成されるどころかまるで始まってもいなかったわけで、アゲハの電脳アイドルデビューをきっかけにして始まったそれは、三人にとって全部が初体験だったわけです。
電脳アイドルデビューしたものの、まったくフォロワーが集まらずに、元からそれがアゲハだと知っていて追いかけたアズマとロコ以外ファンがいない、という閉じたサークルでもあったわけです。
そこで、唯一のアゲハ……ギンガちゃんフォロワー同士ということで交流することになったアズマとロコが、相手の正体を知ってしまった上で協力して推し活動をはじめるわけですが……、ギンガちゃんのファン活動とは別に、ずっと気にしていた幼馴染の一人と仮にも打ち解けて、一緒に行動することになって、という方にアズマもロコも完全にウカレてしまってるんですよね、これ。
もう距離感もむちゃくちゃ。突き放せばいいのか、ベタベタすればいいのか、さっぱり判断できずにテンパったように時につたなく、時に前のめりに交流する様子は、幼馴染の完成度なんてどこにもなく、不器用で初々しいばかりなんですよね。
孤高でいながら、実はアズマとロコのことずっと気にしてずっと見守ってきたアゲハが、二人のこと付き合いだした、と勘違いしたのこれ無理ありませんよ。街でなんかおしゃれして一緒に歩いている二人とバッタリ会ってしまった、というのが決定打ではありますけれど、以前は視線も合わせなかったのがあれだけ露骨に意識しあっている様子を学校でも見せてたわけですから、そりゃなんかあったなー、と思いますし、それだけじゃなくなんかいい雰囲気になってる、と見えてしまうのも仕方ないですよ。
実際、いい雰囲気になってたわけですし。

この三人、これだけ今まで疎遠だったのに。ろくに話もしなかったくせに。まともに視線も合わせられなかったくせに。三人とも、実はお互いの事よく知ってるんですよね。ずっと、相手のこと気にして見続けていたから、相手がどんな人かすごくわかっちゃってるんだ。
だからこそ、アゲハが電脳アイドルはじめたのも速攻気づく、というかその前身であるブログからずっとチェックしていたわけですが。アズマもアゲハもロコのやたらと攻撃的な理由も、その本質が臆病でメンタル弱々な所もちゃんと知ってるし、ロコもアゲハもアズマがどういう男の子かちゃんと知っている。もちろん、アズマとロコは自分たちが推しまくってるギンガちゃんの中の娘がどういう娘か知っているから、あの娘が大好きで応援しているわけだ。
でも、三人ともお互いが自分のことを知っている、見ている、気にしているなんて微塵も思っていなかった。お互いを見つめ合う勇気を持てなかったからこそ、今までずっと疎遠なままだった。
それが、アゲハが自分を変えたいとはじけた電脳アイドル活動をきっかけに、それを追いかけた残る二人が勢い余ってぶつかって、お互いが相手のことをどう思っていたのか、知ることになるのである。
自分のことをわかってくれている、と知ることは、勇気の後押しになるんだなあ。

個人的に、どうしてもあの主人公アズマの茶化したような口語の一人称、合わなかったんですよね。真面目なシーンでも本人は真剣なのかもしれないけれど、茶化したようなふざけたような軽薄なノリと口調で浮ついたように語っていくので、なかなか話にも入り込めなくて、正直読みづらくはありました。
電脳アイドル……Vチューバーのことなんでしょう。これも、さっぱりわからなくて、ギンガちゃんの動画面白いのかどうか全然わかんないし、推しコメントのほうも面白味があってノリのよいというものではなくて、正直何が推しポイントなのか本当にわかんなかったんで、これに関してはわかりませんでした、としか言いようがなく……。
ただ、幼馴染とはとても言えない昔から一緒にいる機会の多かった顔見知りが、本当の意味で幼馴染となり、友達になり、とてもとても固い絆で結ばれるお話としては読み込ませられるものがあったと思うのです。
唯一二人だけ、はじめた時からずっと見ていてくれて、応援してくれていて、ずっと支えてきてくれたファンが、ずっと気にしていつか仲良くなれたらと思っていた幼馴染二人だった、と知ったときのアゲハの想い。あの、ギュッと抱き竦める抱擁がすごく伝えてくれるんですよね。あれは本当に良かった。良きよ、良き。

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 6 ★★★★   



【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 6】  大森 藤ノ/ヤスダ スズヒト GA文庫

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「ヘスティア、君に『戦争遊戯(ウォーゲーム)』を申し込む!」 「な、なんだとアポロン!?」  『戦争遊戯(ウォーゲーム)』──対立する神々の派閥が総力戦を行う神の代理戦争。勝者は敗者の全てを奪う。そして敵神の狙いは──「君の眷族、ベル・クラネルをもらう!」 戦争開始まで期限は一週間。更に追い打ちをかけるように今度はリリが【ソーマ・ファミリア】に捕らえられてしまう! もはや絶望的な状況。それでも少年と『出会い』、幾多の『冒険』を経た絆が今ここに集結する。全ては勝利のために! 「上等だ、アポロン! 僕等は受けて立ってやる、この戦争遊戯(ウォーゲーム)を!」 これは、少年が歩み、女神が記す、──【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】


年の暮れということもあって、部屋を掃除ならぬひっくり返していたら、これを発掘。比喩ではなく発掘。これを読めていなかったがために、シリーズここで止まっちゃってたんですよね。
一応アニメでは視聴したんだったか。なので、話の流れは知っているのだけれど改めて小説で読み直し。
とりあえずアポロンはクズ野郎、でいいんですね。いいですね?
少年大好きヤベえやつなアポロン様は、最近名を馳せてきたベルくんが可愛い美少年兎であることをイイことに見初めてしまい、ヘスティアから奪ってしまおうと策略を企てるのでありました。
元々、欲しい男の娘や女の子がいたら、強引に他にファミリアに因縁しかけて嫌がらせをした挙げ句に目的の男女を奪ってしまう、という悪行を重ねていたアポロンさま。
神話においてアポロンにえらい目にあわされたダフネやカサンドラが、彼のファミリアに所属しているというあたりにこのファミリアの因業を感じる。
これ、ファミリアに力があれば弱小ファミリアに何シてもいい、というオラリオの状況って結構酷いですよね。ギルドの縛りとかガネーシャファミリアによる治安維持活動なんかがあるにしても、ヘスティアファミリアへの嫌がらせを通り越したヤクザの詰めみたいなのを真っ昼間に堂々とやっても咎められないのって、つまりほぼやりたい放題。
これから逃れるには、大人しく傘下に入るか他のヤクザ……もとい大手ファミリアの傘下に入るしかないんじゃなかろうか。ギルドは罰則なんかあっても、積極的にこれを掣肘するような意思も戦力もないみたいだし。
ほぼ、ヤクザに牛耳られた悪徳都市みたいなものじゃない。
神様たちは、これに眉をひそめるどころかむしろやんやと喝采をあげて、盛り上げるばかり。神たちの無責任さが伝わってくるお話である。
むしろ良識ある神様は、自分のファミリアへの影響や立場を考えて積極的には動かないし。
もちろん、助けてくれる神様たちもいるものの、そういう立場の柵がないか少ないからこそ動ける少勢力なんで、なかなか大勢には影響を及ぼせないんですよね。タケミカヅチもミアハも、ヘファイストスも。
ヘスティア様に人望がない疑惑w いやまあそんな事ないよね。むしろ、神々のある種突き放したような関係性の中で、これだけ手助けしてくれる神様たちがいる、という事がヘスティア様の人望を物語っている、かもしれない。
まあ、人望についてはやはりベルくんなのだけど。
戦争遊戯(ウォーゲーム)において、先だってベルと何度もいざこざを起こして衝突したモルドなんか、今や完全にベルくん派になっててベルくんにえらい金額賭けて応援してたしなあ。あれはなんというか、微笑ましかったw
ともあれ、窮地に追い込まれオラリオで行き場をなくし、敢えて不利な『戦争遊戯(ウォーゲーム)』を受けることで死中に活を求めるベルくんとヘスティア様。
あの『戦争遊戯(ウォーゲーム)』の対戦方法のクジ、本当に偶然なんだろうか。ヘルメス様、いい神様に見えるんだけれど常に胡散臭いからなあ。でも、ここまではずっと味方なのは間違いないんですよね。腹になにを抱えているにしても。ベルくんがアイズとダンスできたのも、ヘルメスさまの手助け以外のナニモノでもないわけですし。
ファミリアとしては助けられないものの、ベルくんを鍛えるという形で最大の応援をしてくれるアイズにアマゾネス姉妹。毎度のごとく、ベルくんのピンチとなれば真っ先に駆けつけてくれるお助けリューさん。
そして、自分のファミリアを離脱してヘスティア・ファミリアに入ってまで、ベルくんを助けたいとするリリ、命、そしてヴェルフの兄貴。かつてリリの人生を踏み外させた神酒の魔力にも抗って、発狂しかねない魅力を振り切って、ソーマになしをつけてみせたリリもさることながら、師であるヘファイストスに義理を通して、友のため自らの意地も捨てて、封じた魔剣をも開放して戦いに参加するヴェルフ兄貴がカッコいいのなんの。
ヘファイストスさまも、これは誇らしく送り出しますわ。むしろ、自分がベルのもとに駆けつけることこそ、貴女の心に叶うでしょう、とまで言われたらねえ。貴女の心意気、在り方を尊ぶからこそ、自分はかっこよく言われるんだ、とされたら、もうきゅあーーっと来ちゃうじゃないですか。
嫁が八人くらい居てもおかしくない漢じゃねえですか、兄貴は。

こうやって、絶対不利の『戦争遊戯(ウォーゲーム)』に、ベルのために参陣結集してくる得難い仲間たち。これはやっぱり燃えますわー、ちりちり鳥肌立ちますわー。
こういう盛り上げ方に関してはやっぱり本家小説は練達ですよね。魅せ方というものを、心得ている。それぞれが最大限の役目を果たし、堅牢にして敵の数こちらの何十倍という敵城塞を一気呵成に突破する攻城戦の一部始終、手に汗握る面白さでありました。
そりゃ神様たちもやんやと喜び盛り上がるわなあ。ベルくん、ほんと戦い方が魅せますし。

ベルとヘスティアさまの二人きりだったヘスティア・ファミリアの、ここからが本当の活動開始。
頼もしい仲間たちが加わっての、物語のスタート。その号砲として、実に良いカマセっぷりでありました、アポロンw

大森藤ノ・作品感想

〆切前には百合が捗る ★★★☆   



【〆切前には百合が捗る】  平坂読/ U35 GA文庫

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美人小説家と家出少女の日常系百合ラブコメ!

「〆切直前に遊ぶゲームって、なんでこんなに楽しいのかしら……」
家出少女の白川愛結は、従姉妹の白川京の紹介で、人気作家、海老ヒカリの世話係&監視役のバイトをすることになる。
原稿をサボってゲームをしたり釣りや旅行に出かけるヒカリに翻弄されながらも、そんな日常に幸せを感じる愛結。
一方ヒカリも、突然始まった愛結との同居生活の中で、これまで感じたことのない気持ちが芽生えるのだった。
社会から排斥された少女と、容姿才能家柄すべてに恵まれながらも自堕落に生きる小説家、二人の関係の行き着く先は……?
"普通"に生きにくいすべての人に贈る、珠玉の日常系ガールズラブコメディ、誕生。

家出娘というから、もっと不良じみた理由とか自由を求めて家を飛び出してきて、なんやかんやと作家先生の家に上がり込んで、そのフリーダムさで引っ掻き回して引きこもりの固定されがちだった作家生活を破壊して、という想像を勝手にしていたのだけれど、白川愛結が家出するに至った理由が本気で深刻だった! 
いや、これは家出と言っていいのか? 現代では家出としか言いようがないのかもしれないけれど、出奔とか絶縁に等しいものですよ。もう家に戻るという選択肢がない、実家や故郷と縁を切るに等しい二度と戻れない家出じゃないですか。
友人や家族との関係が破綻するに至った理由こそが、愛結のセクシャルマイノリティ、自分がレズビアンである事の告白でした。どれほど口で理解を示していても、それも所詮他人事だからこそ。自分の寛容さを表現するためにあれこれと理解あるような事を宣う人は多いですけれど、いざ自分が当事者になると関係者になると途端に嫌悪と拒絶を示す人の何と多いことか。あくまで少数であるだけで正常の一つであり当たり前の一つである事を理解しようとしない人は決して珍しくない。
そもそも考え方自体が古臭い家族にも自分を全否定され、強固な偏見に居場所を失って家を故郷を飛び出さざるを得なかった愛結が頼ったのは、東京で働く従姉の白川京でした。
って、京!? 【妹さえいればいい】のメインキャラクターの一人だった白川京!? しまった、妹さえの方、あと数冊のところで積んじゃってた。あれからどうなってるんだ!? 幸い京が正式にライトノベルの編集者になっている事以外はあちらの作品については特に関係ある話は入ってこないので、あっちをさっぱり読んでいなくても途中で読むの止まっていても問題なさそうなんですけどね。
そう言えば、作家先生の海老ヒカリこと海老原優佳理は【妹さえ】の終盤に出てきた新人賞受賞作家たちの、その次の世代、次の新人賞の大賞受賞者で尊敬する作家がカニらしいのですけどね。エビのくせにカニを尊敬しているのか。
ともあれ京は自分を頼ってきた従妹を、担当作家の一人でありまともな生活を遅れていないヒカリのもとに住み込みバイトとして送り込む。わりと思いつきみたいに決めちゃったように見えるけれど、前作から京を知っている身からすると、かなり深刻な事情を抱えている風情の親戚の子を考えなしに他人に預けてしまうような女性ではないと知っているだけに、いやそれどころか非常に面倒見が良い上に人間関係にも敏い人で海老ヒカリのみならず、社会不適合者も含む変人クリエイターと何人も深い交流をして信頼関係を築いてきた人物だけに、愛結をヒカリの元に送り込んだのも何らかの考え、或いはそうした方がいいという感覚があったのでは、と思えるんですよね。これは前作を知っているがゆえのキャラに対する信頼なのでしょうけれど。
さても、そうやって生活サポート、家政婦めいた仕事を振るという名目でヒカリのマンションに住み込むことになった愛結。東京に来た際に勢いで派手な服装や髪型を決めた愛結ですけれど、本来は古風な家柄故に礼儀作用や花嫁修業として家事一切を厳しく仕込まれている少女であり、どちらかというと固い真面目寄りの娘であり、だからこそ自分の性向についても深く悩んでしまった所もあるのでしょうが。
ともあれ、最初に想像していたようなフリーダムさで相手を振り回すのは、飛び込んできた家出少女の方ではなく、むしろ飛び込まれた作家先生の方だったのです。
そうですよね、平坂先生の描く作家なんてどいつもこいつも、アレですもんね!
自由人、或いは自堕落民なヒカリ先生に振り回され、からかわれしながらも、その実家で鍛え上げられた家事能力と生来の几帳面さ、ひたむきさで一生懸命ヒカリに奉仕するなかで、美しくも優しく、自分を東京という知らない世界に、都会に、大人の世界に連れ出してくれるヒカリ先生にどんどんと惹かれていく愛結。
一方の優佳理の方も、いつも可愛らしい反応を見せてくれて無垢に自分に懐いてくれる愛結に、今まで知らなかった感情が芽生えてくるのを自覚し始める。
優佳理の方が抱えている闇もこれ、相当なものが伺えるんですよね。複雑な家庭環境ながら、過剰なほどの愛情を注がれて育ってきた優佳理。その家族からの愛情を疎んでいるわけではないのだろうけれど、どうにも彼女は他人からの干渉を鬱陶しいと思っているようで究極的に他人を必要としていない人のようなんですね。
それどころか、他人から求められる事を拒否しているような向きも伺える。新人作家の時代に、相当なことがあったようなのだが。
だからなのか、衣食住に満たされた彼女は本質的に何も欲していない。誰にも何も求めていないし、逆に自分を重く見られる事も何かを背負わされる事も嫌っている。作家としての活動も、どこか本来海老ヒカリという作家が必然的に書かざるを得ない方向性をあえて無視して逆方向に進んでいるように見える。
白川京は、そのへんどう考えているのだろう。愛結を送り込んだのも何かを期待しての事なんだろうか。ヒカリ先生の内側を垣間見ると、この人に担当編集として信頼されるのってかなりの難事であったことが想像できるんですよね。京が担当する前に、海老ヒカリという作家としてズタズタになる何かがあったと思しきことが伺えますし。
遠慮なくズケズケとヒカリ先生に言いたいことを言ってガンガン背中蹴っ飛ばして急き立てているように見える京ですけれど、まだ本当の意味では踏み込まずにじっくりと様子を伺っている段階なのではないかしら、今のこれ。編集者として、海老ヒカリに賭けているという凄みすら見える白川京の姿からみると、今の海老ヒカリはどうにも全力ではないように見えるだけに。
踏み込んでいない、という意味では愛結もまた海老ヒカリの最奥には足を踏み入れていないと言える。まだ愛結は海老ヒカリという外側しか見ていない、見せてもらっていない、というべきか。
最初の分岐点に気づいて、愛結との決別を怖れて愛結の内側に踏み込んだのは海老原優佳理の方でしたが、いざ二人の関係がより深いものに変化した以上、愛結もまた海老原優香理の闇に触れざるを得なくなってくる。
本番は、これからなのだろう。
わざとかき分けているのか、愛結視点のパートだと作家先生はヒカリと呼称されているのだけれど、作家先生視点の方だと自分のことは優香理と表記されてるんですよね。一人称ではなく三人称の作品なので、地の文での事なのだけれど、この書き分けを明確にしているのはちゃんとした意味が込められているんでしょうね。
果たして、この地の文の書き分け部分が変化する時が訪れるのでしょうか。いずれにしても、二人の百合生活の本番はこれがスタート。自堕落が、堕落しきった生活!にならなければ良いのですがw

竜歌の巫女と二度目の誓い ★★★★☆   



【竜歌の巫女と二度目の誓い】  アマサカナタ/ KeG GA文庫

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大切な誓いはね。
違えた時に“呪い"になるの。

これは果たされなかった誓いを巡る
再会と約束の物語。


「私を守ってくださいますか」?
かつて幼き騎士ギルバートと誓った約束は呪いへと変わり、竜歌の巫女は名もなき少女となり再びこの地に生を受けた。
少年に裏切られ、全てを呪いながら生涯を終えたこの世界。十二年の月日が経ち、生まれ変わった少女は奴隷として売られそうになっているところ、青年となった騎士ギルバートに拾われる……それは彼女にとって望まぬ再会。ルゼという名前を与えられ、やがて始まった彼の屋敷でのメイド生活。新鮮な日々、暖かい人たちとの触れ合いと久々に訪れた優しい時間は止まっていたルゼの時間をゆっくりと動かし――。
世界を呪った少女と英雄となった騎士。誓い合った二人が、輪廻を超えて再び巡り合う再会と約束の物語。

傑作。
これだけ、登場人物の心の内側を掘り下げてくれると読み応えがあるなんてものじゃなかった。それに内面と言っても、単純に直滑降に掘り下げてそこから見えない感情を汲み出していくものではなくて、矛盾……そう、相反する矛盾した想いを抱えたまま二度目の生を生きる主人公である少女の心の行方を描ききった傑作でした。
竜たちと通じる一族として繁栄しながら、圧政を敷き悪徳を振りまいた領主一族が、ついに蜂起した民衆によって族滅の憂き目にあったその中に、彼女は居た。
竜歌の巫女。領主の末娘であり、竜たちと交感する能力を継いだ巫女として隔離され、孤独に過ごしていた少女は、革命の折に領主一族の血を引いている事から囚われ、一年の牢獄に閉じ込められた後に断罪の場に引き出され、領主の血を引くという罪によって処刑される事になった。
一族からは遠ざけられ、人里離れた館に隔離されて生きてきた彼女は圧政について何も知らず何も関わりなく、ただ悪徳の一族の血を引いているというだけで、民衆から責められ詰られ罵声を浴びせられ、咎人として殺されることになった。何もしていないのに、何の恩恵も受けていなかったのに。
そして、彼女を捕らえ彼女を殺すのは、館で暮らしていた穏やかな日々に彼女の元を訪れ、親しくなり、やがて誓いを交わす間柄になった少年でした。何があっても絶対に守ると、世界中が敵になろうと自分だけは味方になると、そう騎士の誓いを交わした少年は、革命の立役者たる英雄の弟として、断罪者として処刑台の上で彼女の前に立ったのです。
幼い少女の無垢な思いを、淡い思慕を、踏みにじる裏切りでした。彼女にとって紛れもない理不尽であり、何もかもを信じられなくなる絶望でした。優しく穏やかだった少女の心に、憎しみが宿ることに何の憚りがありましょうか。自分の預かり知らぬ理由で人としての尊厳を踏みにじられ、石を投げられ、言葉で傷つけられて、どうして怒りを抑えられるでしょうか。
呪いあれ、呪いあれ。真っ黒な感情に塗りつぶされながら、彼女は少年を、自分を殺そうという民衆を、こんな末路を負わせた世界を憎みながら、呪いながら、壮絶な自死を選ぶのです。
魔法で、自らの首を切り落とすという凄まじい死に様を、少年に見せつけながら。

さながら、魔王でも生み出してしまいそうな一つの結末からの、生まれ変わり。
記憶はすべて前から引き継がれ、しかし竜と意思を疎通する竜歌の巫女としての力は喪われ、目覚めた場所は自分が死んだ街のスラム。そこで一人、這いずるように孤児として生きながらえながら、彼女は自分の血族によって荒廃し人々が死んだように生きていた灰色の街が、みるみると力を取り戻し、人々の顔に笑顔が浮かび、活気があふれ色彩をおびていく街の姿を、新たな生の中で見続けるのです。再生の、恩恵が殆ど受けられない底辺の世界から、見上げるように見続けたのです。

怒りも憎しみも、消えては居ない。でも、革命はきっと正しかったのだ、という納得が彼女の中に生まれていきました。人々の間に笑顔が戻っていく様子を見て、自分はどうしても死ななくてはならなかったのだ、という理解が得心が、彼女の中に根ざしていきます。
裏切りは悲しく辛く、悔しく、どうしたって許せない。でも、彼の行動はきっと正しかった。人々は彼の行いによって救われた。自分には、確かに罪はあったのだ、と。
ならば、生まれ変わってしまった自分は何なのか、という疑問が彼女の中でずっと渦巻くのです。
存在自体が罪として裁かれたのが正しいのなら、この身に生きる価値はあるのだろうか。
疑問を抱え、生まれ変わってしまった事に迷い苦しみ、何も選べず何も決められず彷徨うように生きていた彼女は、12年の時を経てついに再会してしまうのです。
かつて少年だった、そして今、青年となった、この街を統治する身となった彼に。

憎しみの対象であり思慕の対象であった彼、ギルバートとの再会から、彼に引き取られて彼のもとで従者として暮らすようになってからの、彼女の中で生じる葛藤の複雑さ、その懊悩を丁寧に紐解いていく描写は、凄まじいものがありました。
ギルバートのことをどう捉えればいいのか、ルゼと名付けられた彼女自身、自分の心が分からず彼の姿に、言葉に、揺さぶられ揺れ動く様子の迫真たるや。
そうなんですよね。人の心とは決して単純ではないのです。自分でも全くわからないくらい、幾つもの側面を重ね持っている。同時に並列的に矛盾した感情が併存している。混在している。それは相反する気持ちかもしれないけれど、あるんだから、確かにそこにあるんだから、どうやったって否定できない。
時として吹き上がりそうになる怒り。ふとした瞬間に過去に帰り、胸を締め付けるかつてと同じ淡い情動。場合によっては、その相反する2つの気持ちが、同時に湧き上がってくる。それどころか、言い表せない不定形の感情としてルゼの心を締め付け、急き立てるのである。

そして同時に、そうした懊悩は彼女だけのものではなく、登場人物の殆どが抱えているものだったのですね。あの革命が、竜歌の巫女の壮絶な自死が遺したものは、悪夢の時代が過ぎ去り希望の時代が訪れている真っ最中のこの街にも根強く残っていて、人々の中にしこりとしてこびりついている。
革命の当事者たちなら、尚更だ。
そこにあるのは、後悔。多くの後悔だ。それを、皆が抱えている。
ルゼは、ギルとの再会でそれまで知らずにいた事を多く知ることで、さらに新たな後悔を得ることになる。抱えきれないほどの、後悔を抱くことになる。
こんなにも辛い思いをするために、彼女は生まれ変わったのか、と思ってしまうほどに、彼女は後悔を積み重ねていくのである。
それでも、これは奇跡だったのでしょう。彼女の再誕は、無数の後悔に縛られて囚われて、その重さに辛さに虚しさに耐えられなくなって潰えるはずだった悲劇を、回避する唯一の道だったのです。
ルゼの後悔こそが、皆の後悔という呪いを祓うために必要な鍵だったのではないでしょうか。そして、それこそがルゼ自身の清算へと繋がる橋だったのです。
あの日、わからないまま突き放されたギルバートの心の在り処を知ることで、今度こそ嘘偽り無く心から語り合うことで、怒りも憎しみも後悔も抱えたまま、それでもケリをつけることができた。
許すことを、選べた。許されたいと、望むことが出来た。
竜歌の巫女ではなく、ただのルゼとして生きることを選ぶことが出来た。
そして、彼女を本当の意味で救ったのは、この街の過去と関係ない、革命とは関係ない新しい時代に生まれ、今この時を生きている若者たち。同じメイドのリンナと人の世界に交わるようになった若い竜たちだったのでしょう。何の縛りも過去の後悔もなく、ただ純粋に心からルゼのことを守ると言ってくれたリンネ。そんな彼女と連れ添ってルゼの元を訪れた青の兄弟竜。これはきっと、タイトルにある二度目の誓い、ギルと交わした二度目の誓いに勝るとも劣らない、ルゼにとっての祝福のような守るという誓いだったのではないでしょうか。
人の心の激しさ、繊細さ、奥深さに直接触れるような一作でした。
心に触ると、心が震えるのがよく分かる傑作でした。


やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 2 ★★★★   



【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 2】 ふか田さめたろう/ふーみ GA文庫

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お互いの「好き」という気持ちを確かめあい、小雪に告白した直哉だったが、小雪が素直な気持ちを伝えられるようになるまで返事は「保留」になった。
直哉とのやり取りを繰り返す中で、直哉以外との付き合い方も少しずつ柔らかくなっていく小雪。クラスメイトに直哉とのデートをそそのかされたり、思わぬ恋のライバルが登場したりと、周囲も騒がしくなっていく。そんな中、小雪の「毒舌」を決定づけた過去も、また身近にあったのだった……。
WEB小説発。ハッピーエンドが約束された、すれ違いゼロの甘々ラブコメディ、第2弾。


あっまーーーい! いやもうね、甘いなんてもんじゃないですよ。ひたすらイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ。
正式に恋人、彼氏彼女の関係になってないだけで実質自他共認める恋人同士だし、もうこれ事実婚の恋人バージョンでいいんじゃないですか? 
恋人未満、な関係だと恋人同士じゃないという事実を盾にしてフリーだというのを前提にして、他の男女が横槍を入れて割って入ってくる、挑戦してくるケースは珍しくはないのですけれど、この直哉と小雪の場合はそれがほぼ不可能なんですよね。本契約こそしていないものの、仮契約的なお互いの意思の確認は済ませていますし、それも周りに周知されている。割って入る余地がどこにもないんですよ。両片思いなんてもんじゃなく、まさに両思いですし。直哉は既に告白済み。小雪もそれを受けていて、ただ素直に好きと返事できていないから保留にしているだけで、直接の言葉以外では直哉を好きという感情は一切隠しもしていないし、本人に直接言葉で伝える以外のあらゆる手段でほぼ伝えているも同然ですし、それを友人達にも親兄弟にも表明していて、周りの人たちもそれを理解して受け入れている。
……事実婚じゃないですか。内縁関係じゃないですか。実質的に恋人同然じゃないですか。
実際、それからの二人がやっている事と言ったら、なりたての恋人と何が違うんだ、って言うくらい仲睦まじくお互いに好き好き光線を撒き散らしながらイチャイチャイチャイチャ。
照れ隠しに毒舌吐いても、もうすぐに折れて撤回してほんとの気持ち言っちゃうようになったし。ってか、ほぼ好きって言っちゃってるよね? どう解釈しても好きとしか言ってないようなこと言いまくってるよね? ちょっと好きすぎてどうしようもないです、というくらいにはのぼせて浮かれてますよね、小雪さん。
もはや、隠そうという意識すら微塵もないw じゃなくて、小雪も自分の気持ちを直哉に知られているのは、彼の察しの良さもあって分かった上で色々とやってるわけですし、友達にも伝わっているのはもう理解しているわけで自分が何を言っても照れ隠しだとバレてるのも分かってるから、完全にオープンマインドだ。
というわけで、友達のアドバイスも素直に聞いて、積極的に直哉のことをデートに誘ったり、直哉がグイグイと来るのに負けないようにグイグイ押し返そうとしたり、といやもう一体何を見せられているんだろう、これw
こんなズブズブの恋人未満関係はあんまり見たことないぞ。これを恋人未満、と言ってしまうと「恋人とは!?」と概念への疑問が生じてしまいそうである。
小雪の対人スキルが未熟でついつい直哉相手にやらかしてしまう場合でも、直哉がもはや察し良いどころじゃなくお前「サトリ」だろう、という読心能力で片っ端からフォローして気持ちも汲んで拾ってすくい上げてくれるので、ある意味完全安心しようである。直哉に誤解される恐れがまったくない、という事実は小雪にこの場合勇気を与えてくれている、というのは面白いなあ。
それだけ、小雪が彼に対する好きという気持ちに自分でも疑う余地がなく、気持ちがぐいぐい伝わっていく事に何の不安も抱いていない、という事でもあるんでしょうなあ。
この気持ちが伝わるという経験は、小雪にとって直哉と交流する以外にもコミュニケーションのリハビリになってるんですなあ。どうしても対応に刺々しいものが含まれてしまい失敗しがちだったクラスメイトなどとの会話も、どんどんと自分の本当の素直な気持ちを出せるようになってきて、周囲との関係も目に見えて軟化していく。
いや、元々クラスの人たち、うまく対応できない小雪に対して温かく見守ってきてくれていた節があるので、彼女の対応の変化にも不器用な子の成長を喜ぶ年長者的な生暖かい眼差しが多分にあったような気が……w
とはいえ、心根の気持ちのよい連中なのも確かなわけで。その中でも筆頭が委員長だったのですけれど、さすがに小雪と直接過去に因縁ある人物だったとは予想外だった。
彼女を猛毒の白雪姫にしてしまった幼い頃のトラウマ。小雪が本当に成長し、素直になれない自分を脱却するにはどうしたってこのトラウマを克服する必要があったのでしょう。直哉たちに支えられてちょっとずつ自分を変えていけたとしても、心の奥底でシコリはずっと消えないまま残ってしまう。
人間、多かれ少なかれそうやって心の傷痕をどこかに遺したまま成長していくものだけれど、解消できるものなら解消できた方がいいですもんね。
妹や幼馴染たちが温かく見守り、また大いに囃し立て盛り上げてくれる中で、順調に仲睦まじく事実恋人関係を深めていく小雪と直哉。さらに重ねてどんどんとお互いを好きな気持が高まっていき、ちょっと双方とも好きすぎてテンション上がって酔っ払ってるんじゃ、というくらいにまで盛り上がっちゃってるけれど、大丈夫か? 取り敢えずもう先に結婚して生活が落ち着いてから告白の返事してもいいんじゃないですか? その辺、もう前後しても問題ないでしょうw

しかし、直哉の察しの良さはもう超能力の域に達してるんじゃないの? 完全に読心かサトリみたくなっていて小雪に本気で怖がられてるぞw 
この主人公なら、ミステリーで犯罪が起こった途端に犯人から完全犯罪のトリックから関係者の因縁から皆の顔見ただけで見通してしまいそう。いや、それ以上にどんな名探偵にも出来ないだろう、犯罪が起こる前に実行者から被害者から犯罪トリックから動機から全部暴いて事件の発生事態を阻止してしまう離れ業すら平然とやってしまいそう。怖っ!!




天才王子の赤字国家再生術 8 ~そうだ、売国しよう~ ★★★★☆   



【天才王子の赤字国家再生術 8 ~そうだ、売国しよう~】 鳥羽徹/ファルまろ GA文庫

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選聖会議。大陸西側の有力者が一堂に会する舞台に、ウェインは再び
招待を受けた。それが帝国との手切れを迫るための罠だと知りつつ、西へ
向かうウェインの方針は――
「全力で蝙蝠を貫いてみせる! 」
これであった。
グリュエールをはじめ実力者たちと前哨戦を繰り広げつつ、選聖会議
の舞台・古都ルシャンへと乗り込むウェイン。だが着いて早々、選聖侯
殺害の犯人という、無実の罪を着せられてしまい!?
策動する選聖侯や帝国の実力者たち、そして外交で存在感を増していくフラーニャ、天才王子の謀才が大陸全土を巻き込み始める第八弾!

大陸の東側を占める帝国と、西側諸国の間でずっと綱渡りを強いられてきたナトラ王国。ウェイン王子の活躍の元、領土も増えて景気も活況を迎え、数々の戦争での勝利と外交交渉で見せた存在感は既にナトラ王国を小国と侮るものは大陸全土に存在しない。ましてや、それを手動してきたウェイン王子を況や。
前回名を成し始めた際におまけで呼ばれた選帝会議と違って、今回のそれはナトラを、ウェイン王子を狙い撃ちにした彼を追い詰めるための招待である。これを断れば、ナトラ王国は帝国側に味方したとして西側全土を敵に回し、しかし会議に出席すればどうやっても帝国との手切れを迫られ西側諸国の尖兵として帝国との敵対を強要される。
まー、どうやったって詰んでる状況なのだこれ。
それを顔色を無くして絶望感に苛まれながら西に向かう馬車の中で鬱屈する、なんて事もなく「コウモリ外交を貫いてやるぜー!」とテンション高々なウェイン王子。いや、どうやったらそんな意気揚々と会議に赴けるのか。まあ、もはや頭の抱えようもなくて開き直ってる、とも彼のキャラクターからは言えるのだろうけれど。本当なら頭抱えてのたうちまわってても不思議じゃないもんなあ。
ただ、今回わりと余裕ありそうだったのは、それだけ想定して会議を乗り切る自信があったからだろう。まあ、いつものように想定外に全部台無しにされてひっくり返されるのだが。

ただ、今回彼を狙い撃ちにした謀略は、ある意味明確な悪意と企図によるものだったんですよね。何気にこれまでウェインを追い詰めてきたどんでん返しって、誰の意図というものではなく偶然の産物だったり関係者の思惑を超えた事態だったり、馬鹿がバカバカしいにも限りある事をひょいっと越えてやらかしてしまったり、複数の意図が絡み合った挙げ句に訳わからんことになってしまったり、と本当に誰にとっても予想外想定外、という事が多かったわけです。
そういう事態って、人の思惑が入っていない分もう道理も何もあったもんじゃないからマトモに対処のしようがないケースだったんですよね。それを人智を超えたリカバリー能力で対処しきった上に逆に利益引っ剥がしてきたのがウェイン王子の凄まじい才覚であったわけです。
今回のある意味ストレートなウェイン王子を狙い撃ちにした謀略って、むしろ思惑が分かっている分彼にとっては対応が容易だったのでは? とすら思えるんですよね。それくらい、どう転がってもウェイン王子が詰んでいるはずの状況が、片っ端からひっくり返されていく様は鮮やかなものでした。
相手の思惑、狙いを読みきった上でそこから仕掛けられているだろうさらなる謀略、そして起こり得る展開を予想し読み切り、対処するどころかそれを利用して逆に全部自分以外の会議参加者に有無を言わせぬ決着へと持っていく。
今回の会議参加者は一人残らず凡人無能はおらず、将来を嘱望された辣腕の政治巧者であり、それ以上の怪人怪物魑魅魍魎たちが揃っていたにも関わらず、である。いや、ある意味全員が無能ではなく有能である、というのはそれだけ彼らの思考を読みやすい、という意味でウェインにとってはやりやすくすらあったのか?
参加者の中でも特に怪物たる一人であるグリュエール王は、もう主導的にウェインにちょっかいを掛けるつもりはなく、変に肩入れはしないものの、ウェインに自由にさせて彼のやらかす事を楽しむ方に好奇心が寄っているようですし、隙を見せれば食いついてくるとは言え大きく見れば味方側と言えなくもないですし、そうなるとやはり相手はカルドメリアとシュテイル、そして聖王シルヴェリオとなるのか。この三人はある意味わかりやすい現世利益や権力とは違った所に重きをなしている節があって、ウェインとは価値観が違っている所がある分、思惑が読みきれないところがありますし。
今回の謀略は、言わば西側諸国、教会としての真っ当な、というとあれですけれど、政治家として順当な価値観に基づく動きであった、というのもウェインが掌の上に乗せやすい状況であったとも言えるのでしょう。
言わば、ウェインの土俵の上だったんだよなあ。
既にウェインの手、というのは帝国中枢や大陸外縁にまで及んでいて、会議に影響を及ぼすためにロワに遠方で動いてもらったり、先に深く関わることになったパトゥーラのフェリテ首長やミールタース市長のコジモにも協力を求めたり、とその手は長く大陸全土に及ぶようになっている。
どうやら今回の会議の結果として、大陸西側の奥地の方にもツテは広がりそうだし。

ウェイン王子の思惑が、帝国側にも西側諸国にも河岸を預けることなく、その間でフラフラと行き来して利益を甘受する事にある、と会議参加者の誰もがわかっている、どころかウェインも堂々と表明、まではしていないもののその思惑を隠しもせずに胸を張っている。
にも関わらず、彼を糾弾しきることも出来ず、彼に旗幟を鮮明にすることを強いることも出来ない。本来なら2大勢力の間に存在する小国なんて、食い物にされ良いように利用されるのがイイ所なのに、主導権を握っているのは明らかにナトラ王国であり、ウェイン王子なのだ。
彼のコウモリ外交を、誰も非難できない、指摘すらし切れない。有無をも言えず、首根っこを押さえられ、彼の思惑に振り回される。何をやっても、その手のひらの上から逃れられないと思い知らされる。
これほど堂々と立場を曖昧にして立つ蝙蝠がいただろうか。
並み居る猛獣猛禽どもに、心底恐れられ戦慄される蝙蝠がいただろうか。
こんな凄まじい暴威を振るうコウモリ外交があっただろうか。
会議は踊るよグダグダに。
何も決まらず進行もせず時間ばかりが無為に流れていくばかりのグダグダ会議。普通なら、誰も目的を果たせない無駄で無能の結果、のようにしか見えないグダグダ会議が、これほど明確な意図を持って引きずりこまれた結果だと、これほど凄味を感じさせられるモノになるんだなあ、と感嘆してしまいました。

とまあ、西側諸国とウェインとの会議における壮絶な綱引き、駆け引きを中心に描かれた本編ですけれど、冒頭では拡大するナトラ王国の中で大陸全土で被差別民であるフラム人がどう影響力を及ぼしていくかでフラム人たちの間で意識の変化があったり、妹姫であるフラーニャが順調に成長することでナトラ王国内でフラーニャ派閥というものが生まれ始めていたり、とナトラの拡大のお陰でまた別の問題が起こり出していることが描かれているのだけれど……。
うーむ。
どうにもね、このあたりってウェイン王子には想定済み、な節があるんですよね。それどころじゃなくて、大陸全土を股にかけてナトラ王国の影響力を拡大させていっているウェイン王子の活動、これってスケール的にマクロに思えるんだけれど……ウェイン王子的には今やってることってマクロじゃなくてミクロな事じゃないのか、と思える所があるんですよね。
彼って、ウェイン王子って、ナトラのために動いてるんだろうか。もう随分昔のことで忘れてしまいそうになりますけど、最初ウェイン王子、この国派手に売っぱらおうとしてたんですぜ? タイトル「そうだ、売国しよう!」なんですぜ?
実のところ、この初志、王子は忘れてない気がするんだよなあ。
そもそも、ウェインはびっくりすることに「王子」であって「王」でないのだ。もうやってることは王様以外の何者でもない権限と責任を振るって負っているにも関わらず。
ここに来てのフラーニャの躍進は、そして彼女がウェイン王子に遺恨ある他国の追放された宰相を参謀に迎え入れたのも、それをウェインが許可したもの、そしてかの宰相がフラーニャを担ぎ上げるつもりであるつもりなのも。こうなってくると、ねえ。
そこに一番重要になってくるのが、なるほどフラム人に秘められた、ニニム個人に秘められているはずの秘密、となっていそうなんですよね。
そもそも、ウェインの初志って一貫して、そう、ニニムについてなんだもんなあ。
会議は踊る、の裏側でこのシリーズの根底に関わるものがついに動き出した気がするぞ。

しかし、馬車で移動してる時、ウェインが眠り込んでいるときのニニムがこっそり甘え尽くしている姿、可愛いなんてもんじゃなかったなあ。ダダ甘えじゃあないですか。
一方で、ニニムの髪染めしてるときの二人のイチャイチャは、二人の中ではイチャイチャにカウントされないという、妹たちに見られても何もおかしいと思っていない、あの甘々な雰囲気。フラーニャがこりゃあ邪魔しちゃいけねえや、と赤面しながら逃亡するのも無理からぬ特別感。
昔からこんなの見せられてたら、そりゃあ妹姫も兄にはニニムしか居ないし許さん、とニニム贔屓になるのも当たり前だよなあ、うん。


週4で部屋に遊びにくる小悪魔ガールはくびったけ! ★★★☆   



【週4で部屋に遊びにくる小悪魔ガールはくびったけ!】 九曜/小林ちさと GA文庫

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転校してきた無気力な高校生の比良坂聖也。その彼にやけにかまってくる女の子がいる。黒江美沙――マンションのお隣りさんの彼女は中学生ながらスタイルもよく、大人びていて、聖也をからかうのが得意。それも体を使って。
彼女は聖也のことを気に入り、週4のペースで部屋に遊びにくるように――。プロをも目指したバスケをあきらめ、無気力な『余生』を過ごす聖也は、戸惑いつつも彼女と日常を過ごしはじめる。
小悪魔ヒロインによるおしかけ系ラブコメディー、開幕です。

いくら何でも初対面でこの好感度、このぐいぐい来る姿勢はおかしいぞ、とは思ったんですよね。本当に初対面から好感度MAXなんてラブコメ、よっぽどですからね、よっぽど。
むしろ、やたら最初から構ってくる年下の美少女を、鬱陶しく思ったり面倒に感じたり、という感触は持っているにも関わらずさして「疑問」を抱かない時点で、聖也くんアレなんですよ。
これを疑問に思わなくても差し支えない環境に適応した人類なんですよっ。自分を陰キャと主張する聖也に転校先で親しくなったクラスメイトが「お前が陰キャかよ」と嘯くのも、当然ですよ、当然。
なんちゅーか、青いなあ、としみじみ思ったり。彼、そういうキャラとして描かれてるんだろうか、それとも作者さんの素で意識されずにそういうキャラになってるんだろうか。
利き腕の怪我でこれまで人生そのものを費やしてきたバスケを辞めるという挫折真っ最中の聖也。
打ちひしがれ絶望し、何もかもを失って、これからも得られる事はないのだと諦めきってしまっている彼は、心機一転という心づもりもなく、自らを抜け殻と評し、あとはもう余生を過ごすだけ、と自認している。そのくせ、未練がましく町中で見つけたバスケコートに度々足を運び、もうコートを見ても動揺なんてしないんだぜ、と自己確認しながら落ちてるボールを見つけると、ついつい手にとってしまう。選手時代は絶対にしなかった足でボールを扱う、なんて冒涜的な真似をしてみたりしつつ。
あーおーいー! なにこの子、なんかもう色々と突き抜けすぎて青臭さが可愛らしさに見えてきてしまうんですけど。
いやいやいや、彼は本気なのである。若者の絶望感を、今が全てという在り方を年寄りが後ろからどうこう言うのはナンセンスなのはわかるんですよ。それは傲慢てもんだ。って、理解を示してみる事すら傲慢のうちなんでしょう。若者にとって、本当に今現在こそが全てで未来とか実感のないものなのだ。これからもずっと長い長い時間が君には待っている、なんて訳知り顔で言った所でその実感は決して伝わらない。彼らの絶望感を、年寄が思い出せないように。
それを加味しても、加味しても、ちょっとこの子ナルシー入ってるよね!?って言いたくなっちゃうんですよね。現状に、陶酔してるよね!?って言いたくなっちゃう! ごめんね!? ほんっとごめんね? でも、抜け殻云々、余生云々、全部自認なんですよね。空っぽだってのも自分で言ってる。別に、周りの人からお前はもう抜け殻みたいだ、とか指摘されたわけでもなく。
繰り返すけど、彼は本気でそう思ってるし、本気で絶望して、人生を諦めて気力を失って自棄にもなってる。本心で純粋にそう感じて、重くて黒くて苦いものを噛み締めながら足を引きずって俯いて歩いている。その絶望感は恥ずかしいものじゃない。若者の特権、なんて若者括りにしてしまうのもあれだなあ、上から目線だよなあ。うん、難しいなあ。
バスケを捨てたと言いつつ、試合に参加すれば本気出しちゃったり、その癖過去をつつかれると激高しちゃって心にもない事言っちゃったり、昔の仲間に後ろ足で砂をかけるたり。まあ、昔のチームメイトに対しては、彼らのやった事の酷さとそれを謝って勝手にスッキリされたくない、という聖也の心情は「然るべき」だと思ったので、それはそれでいいと思うのだけれど。
ともあれ斜に構えて偽悪振るというあたりも青臭いなあ、と。若いなあ、と。未成熟のある種の一途さなんですよね。迷走しているようで、青々しい一途さという点できっと選手全盛期と一貫しているのではないだろうか。
美学、なんだろうか。バスケ選手としての理想の自己像というのがあって、それに自己を重ねられなくなったから選手としてまだやれるのに辞めてしまったという所があったわけで。それは同時に、挫折した自分の理想像、というものも彼の中にあったんじゃなかろうか。挫折してバスケをできなくなった自分のあるべき姿。それは若くして全てを喪った抜け殻でないといけないし、残りの長い人生をだらだらと余生として過ごすだけの存在でないといけない。バスケを捨てたようで、バスケに未練を感じ続けて、しかし遠くから斜に構えて眺めているだけでないといけない、みたいな。
バスケ、本当に好きで、大事だったんだな。大事だからこそ、バスケを忘れてなかった心機一転新しく生きる聖也、じゃなくてバスケを失ってその欠落を埋められなくてずっともだえ続ける自分でなければならなかった。それだけ自分にとってバスケが大事だったと証明できるから、と。
そんな風に考えると、なにげに自己陶酔してませんか。とかちょっとナルシスト入ってね? と感じちゃった部分は少し違ってくるかもしれない。
すべてを持っていようとも全てを失おうとも、彼にとってバスケこそが基軸で基準だったのだ。

黒江美沙という存在は、そんな聖也にとって初めて現れた「バスケ」以外だったのかもしれない。
一方で、彼女と自分を繋いだのもまたバスケであり、かつての自分のバスケ選手としての雄姿だ。まったく関係ない所から飛び込んできた異物ではない。
それが許容の理由、というには美沙が聖也を知っていた事を告白するシーンは随分とあとなので、異なってはいるのだろうけれど。彼女の存在を最終的に自分の価値観の中に受け入れることにおいて、決して意味がなかったとは思わない。
バスケ馬鹿、なんだよなあ。青春かよ。うん、青春だ。青々とした青春だ。ただ、やっぱり陰キャとかとは程遠いぞ、美沙ちゃんも含めて。
だいたい美沙ちゃん、この娘中学生って主張するのもう犯罪じゃね? というくらい育っちゃってるんですが。ファッションも含めて、なにこの娘へそ出しコーデを当たり前みたいに着こなしてるんですけど。
中学生って、まだ子供だよ? というのが通じない人種が存在するからなあ。まぢで同じ中学生か? その辺通学してる子ら、ほんとただの子供だよ?
ちなみに、彼女の方が抱えていた悩みに関してはあんまり掘り下げず。よくある話、以上には踏み込まないまま、表層の所で片付けちゃったんですよね。
そのあと、彼女のお母さんが件のことについてはあっさり撤回しちゃった事からも、黒江美沙というキャラクターを描くにおいてその問題は重きを為す部分ではなかったのでしょう。彼女については、聖也との関係を通じて描いていくという事か。
ってか、そういう理由で撤回しちゃうって事は、美沙のお母さんかなり認識が甘かったんじゃないだろうか。どう転がってもしち面倒くさいことになってたと思うぞ。
ともあれ、今回の一件が美沙の意識をひと味変えてしまったのも間違いなく。憧れが恋に、ってやつだろうか。まあそれに相応の事を彼女にしたわけですしねえ。
そして、自分ひとりで完結していた所で黒江美沙という少女に引っ掻き回された末に、自分自身で彼女の存在を自分の世界の中に受け入れることを選んだことで、いつまでも自分の世界に酔っ払ってるわけにはいかない、と思ったのかそうでないのか。ともかく彼女と自分をさらけ出して本音で話すことで、色々と整理ついたのかな。母親と二人で支え合って暮らしていく、お母さんの事についても思う事があったのかもしれない。自分の内側にだけかまけてたら、母親に対する意識も薄れてしまいますしね。もう一度改めて、母親の事を考える機会にもなったのかもしれない。
美沙に対して年上ぶって偉そうなことを言った手前、ひねてるわけにはいかない。なんて、襟を正そうと思う所がまた、青いんですよねえ。一途で真っ直ぐな良い青さ。涼やかな青なのである。こういう青臭さは、ほんと可愛らしいと思ってしまう。こういうイケメン系の青年に対して可愛いなんて褒め言葉じゃないのでしょうけどね。ただ、それもまあ年寄りの特権ってやつなのですよ、きっと。

九曜・作品感想

 
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(モンスター文庫)
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(GCノベルズ)
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(GCノベルズ)
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(GCノベルズ)
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(GCノベルズ)
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(ヒーロー文庫)
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(ZERO-SUMコミックス) Amazon


(ビッグコミックス) Amazon Kindle B☆W


(モンスターコミックス) Amazon Kindle B☆W


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7月29日

(講談社ラノベ文庫)
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(講談社ラノベ文庫)
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(Kラノベブックス)
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(Kラノベブックス)
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(Kラノベブックス)
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(Kラノベブックス)
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(Kラノベブックス)
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7月28日

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7月27日

(REXコミックス)
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(REXコミックス)
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(REXコミックス)
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(KADOKAWA)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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7月26日

(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース・エクストラ)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(KADOKAWA)
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(KADOKAWA)
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7月25日

(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップノベルス)
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(オーバーラップノベルス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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7月21日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(MFブックス)
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(MFC)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス フラッパーシリーズ)
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(アフタヌーンKC)
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(アフタヌーンKC)
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(アフタヌーンKC)
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(モーニングKC)
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(モーニングKC)
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(モーニングKC)
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7月20日

(4コマKINGSぱれっとコミックス)
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(4コマKINGSぱれっとコミックス)
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(4コマKINGSぱれっとコミックス)
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(4コマKINGSぱれっとコミックス)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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7月19日

(HJ NOVELS)
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(HJ NOVELS)
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(HJ NOVELS)
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(HJ NOVELS)
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(HJ NOVELS)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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(チャンピオンREDコミックス)
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7月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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7月16日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(角川文庫)
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(角川文庫)
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7月15日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(マガジンエッジKC)
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(コロナ・コミックス)
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(コロナ・コミックス)
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7月14日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GAノベルス)
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(GAノベルス)
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(ハヤカワ文庫JA)
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(ハヤカワ文庫JA)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(モーニングKC) Amazon Kindle B☆W

7月13日

(リュウコミックス)
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7月12日

(アクションコミックス)
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(アクションコミックス)
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(アクションコミックス)
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(アクションコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグ コミックス)
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(YKコミックス)
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(YKコミックス)
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(YKコミックス)
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(ガンガンコミックスONLINE)
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(アース・スターコミックス)
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(アース・スターコミックス)
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(アース・スターコミックス)
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(メテオCOMICS)
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(メテオCOMICS)
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(メテオCOMICS)
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(メテオCOMICS)
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7月10日

(TOブックス)
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(TOブックス)
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(モーニングスターブックス)
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7月9日

(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(講談社)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(電撃コミックスNEXT)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(KCデラックス)
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(星海社COMICS)
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(ブレイドコミックス)
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7月8日

(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC
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(宝島社)
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7月7日

(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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(幻冬舎文庫)
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(アフタヌーンKC)
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(ガンガンコミックスUP!)
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(ガンガンコミックスUP!)
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(ガンガンコミックスUP!)
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