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GA文庫

ただ制服を着てるだけ 2 ★★★★   



【ただ制服を着てるだけ 2】  神田暁一郎/40原 GA文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

「私、あなたの『彼女』ですよ? ちゃんと『彼氏』らしく、優しくエスコートしてよね?」
同居生活を送る社畜・広巳とニセモノJK明莉。ヒミツの関係は広巳の店の従業員、舞香にバレてしまう。
「……え? マジに付き合ってないんですか? キモ〜い!」
バレても構わない明莉と職場の人間関係的に困る広巳、そんな中、明莉の職場の店長にもバレてしまう。
「あゆみ、直引きしてるだろ?」
店長の疑いを晴らすため二人は恋人関係を演じることに!? そんな日常の中、明莉の過去を知る人物が現れ、トラブルが起きてしまう――。
いびつな二人の心温まる同居ラブストーリー第2弾!

JKビジネスという夜の世界に生きる19歳のニセモノJK。その彼女を通して描かれる、その夜の世界から抜け出せずに藻掻く女性たちの姿を浮き彫りにする異色のライトノベル第二弾。
誰にも頼らずに独りで生きていくという強烈な自立心、誰かに依存して生きることへの拒否感にも似た反発心。そんな矜持を明莉が抱くに至った転落の人生がここでは語られている。
明莉の自分の半生を語ったエッセイの内容は決して軽はずみな事情ではなく、家庭家族の問題や環境によってどうしようもなく追い詰められ、JKビジネスの世界へと足を踏み入れ、そして昼の世界から足を踏み外して二度と這い上がれないまま、ズルズルと底へ底へと落ちていく、その悔しさに塗れた人生が赤裸々に描かれている。
母親が陥った精神的な病と依存症、それが明莉を追い詰めたのですから、彼女が誰かに頼り切りになって生きる依存という関係に忌避感を抱くのも当然だったのでしょう。
搾取されるのは絶対に許さず、だからといって無償の施しは受け入れられない。何も求めず、ただ与えてくれる広巳の存在に、彼によって助けられ今生活できている事実に一時は反発し彼のもとを飛び出した理由もよくわかります。
でも、広巳のそれはただ無償で与えるものではなく、哀れみや施しなんかじゃなかった事は、明莉にも何となく伝わっていたのでしょう。だから、彼女は戸惑いながらも彼にもとに戻ってきたのでした。
だからといって、広巳との関係が安定したわけでも定まったわけでもありません。周りに言い訳するために恋人という関係をでっち上げましたけれど、その関係を本物にしてしまって寄りかかるのは彼女の生き方に反してしまう。でも、本音を言うと彼の傍にいるのはただただ心地よい。
それでも広巳に住む所を提供してもらう以上は求めず、リフレを続けて彼に頼り切りにならずに生きていこうとした彼女ですけれど、広巳への頼り方というのはもう少し違った形もあったとは思うんですよね。でも、頼ること自体、彼女にとっては依存になってしまう忌避感に繋がっていたのでしょうか。
そんな彼女の自縄自縛に切れ目を入れてくれたのは、昔から明莉のことを見てくれていた
NPO法人の代表として夜の街を駆け回っている千秋というおばちゃんでした。なんていうんだろう、こういう人って本当にいるんですよね。上から目線の善意の人じゃなく胡散臭い鼻につく格好つけでもなく、自分は可哀想な人たちを助けてるんだという自負に鼻の穴を膨らませているのでもなく、幸せになるのが義務なんですと押し付けてくるでもなく、本当に同じ目線から寄り添う事を厭わず、想いを共有しようとしてくれる尊敬に値する人たちが。
千秋さんの言っていた、依存することは人が自立するためにむしろ必要な事なんだ、というセリフはちょっとした衝撃でありました。
誰かに頼れ、自分ひとりで背負い込むな。そんなたぐいの言葉は聞き飽きるくらい聞いた事があります。千秋の言葉はそれらと意味としては変わらないのかもしれません。でも、依存していいどころか依存することは必要なことなんだ、とまで強い言葉で言われるとハッとさせられるんですよね。普通なら届かない所まで言葉が届く。
勿論依存体質の人にそんな事を言えば逆効果ですし、千秋さんも正しい依存とは誰か独りに頼り切りになってしまうものではない、と。一つの依存を深めるのではなく、小さな依存を増やすのがいいんだ、とちゃんと言葉を尽くしてくれるのですが、依存という関係に過去の出来事から強烈な忌避感を抱いていた明莉にとって、むしろ依存は必要だという真逆の言葉は素直に受け入れられず納得いかないものだとしても、届きはしてるんですよね。しっかりと、明莉の心に刻まれることになる。
それは確かに、明莉の勇気に繋がったと思うんですよね。
誰かに頼る勇気。広巳という人に頼ってもいいんだ、と思える勇気。そして彼に頼り切りに寄りかかるのではなく、本当の自分を知ってもらうことで本物の自分を受け入れて貰うことで対等になる、そのためにすべてを打ち明ける勇気を。
どんな転落人生だろうと、それは明莉にとって必死に生き抜いてきた人生だった。ニセモノの制服を来て仮初の時間を与える仕事についている自分だけれど、後ろめたい間違いだらけの落ちぶれていくばかりだったこれまでだけれど、それこそが明莉にとっても本物だった。
それを彼は理解しようとしてくれた。彼女の、彼女たちの苦しさを辛い思いにお為ごかしじゃない優しさを投げかけてくれた。
それこそが、明莉に自分のこれまでの人生が「本物」だと、後悔はしても否定しない、それだけの勇気を与えてくれたのでしょう。
広巳との出会いは、そして今この夜の世界にいる自分に良くしてくれた人たちの出会えたことは幸せだった、と思える勇気を。
そうして積み重ねていけた勇気は、彼女に「本物の制服」を着る踏ん切りに繋がっていったのでした。
ああタイトルの【ただ制服を着てるだけ】ってここに繋がっていくのか、とエピローグを見て思わず感じ入ってしまいました。
そうして、広巳と明莉の関係は、こうしてお互いを「支え合う」関係に至ったんじゃないだろうか、と思いつつ、読後の余韻を噛みしめるのでした。


我が驍勇にふるえよ天地 11 ~アレクシス帝国興隆記 ★★★★   



【我が驍勇にふるえよ天地 11 ~アレクシス帝国興隆記】  あわむら赤光/ニリツ GA文庫

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吸血皇子と冷血皇子。
ともにクロードの皇子として生をうけながら、母親の身分の低さゆえに侮られ続けた二人の怪物が激突す。

「――俺の覇業に立ちはだかるのは、レオナートかもしれん」

かつての予測を見事に的中させたキルクスは万全の軍備を整え、一切の容赦も斟酌もなく、途上にある尽くを蹂躙しながら迫り来る!
その進軍を遅らせんと寡兵で挑むアランの命運や如何に? 半分血を分けた兄との決戦に臨むレオナートの命運や如何に?
そして暗闇より放たれた刃にシェーラの命運は――

痛快にして本格なるファンタジー戦記、堂々完結の第11弾!!
これ、一旦シェーラは完全に戦略的に負けちゃってるんですよね。アレクシス軍が敗北を避けられたのは、個々の将帥が献身的にその全身全霊を傾けて各々の戦場で粘ってくれたからであって、一箇所でも敗走していたら全軍が瓦解していたと思うと、ゾッとしないですわ。
恐るべきは、アレクシス軍にはシェーラに匹敵する人類史最高峰の戦略家が在籍していたということで、レイヴァーンが味方にいるってなんかバグってないですかね、戦力比。
重ね重ね、アドモフ帝国になんで勝てたんですかね!? あの国の人材と戦力をそのまま吸収できたことで、実質倍どころか3倍5倍とアレクシス軍って強化されてたんじゃないだろうか。内部分裂してなかったら、どう考えても勝てなかったでしょう、あれ。
そんでもあって、アレクシス軍に吸収された結果、アドモフ帝国の分裂していた政軍がほぼ統一された形で全力発揮できるようになった、というのはもうなんというか敵対国からすると反則としか思えなかったんじゃないだろうか、これ。
にしても、まさかよりにもよってトラーメさんが退場することになるとは思わなかった。キャラクターとして一番しぶとく生き汚い人でありポディション的にも一番死ににくい人であり、戦力的にもアレクシス軍の中で替えの居ない唯一無二の人材であってこの人が居なくなった場合のアレクシス軍が受けるダメージ、機能不全起こしかねないレベルのものだっただけによりにも寄ってこの人が死戦に身を投じることになるとは本当に想像していなかったです。
こんなトラーメさんですら、自らを省みずに自分の死と引き換えにしてでも、と思わせてしまうほどの魔性が、レオナートのカリスマだったのやもしれません。
これ、結果的に見ると無茶振りされまくり限界ギリギリのきつい仕事ばかり押し付けられた挙げ句に、使い潰されてしまったとも言えなくもないんですよね、トラーメさん。本人としては命の賭けどころを見つけてしまって、それで良かったのかも知れませんが。
この人はもっといいとこ取りの美味しい思いをして戦後を暮らして欲しいとも思ったんだよなあ。
実際、トラーメさんを喪ったことで以後のアレクシス軍は相当不具合が出てしまったらしいことは、巻末の評伝でも触れられていて、頷くばかりでありました。

しかし、これで完結巻と謳いながらも、今回の包囲網こそ食い破りながらも戦争自体は全然終わりそうにないのに、これどうやって完結まで持っていくんだろう。打ち切り!?それとも、もしかしてシェーラまで逝ってしまうことで描くべきものがなくなってしまうの!? とか、混乱していたのですが……天下統一までの道のりで一番山場というか危地というか、戦力的にも敵と釣り合いが取れていたのがここまでで、以降は圧倒的にアレクシス軍が優位になって、ほぼほぼ消化試合になっていたんですね。
なので、戦記としては以降は思い切ってバッサリと切って落とす形で終わらすことにしたんですなあ。
これは戦記物としては納得ではあるんですけれど、素直になれないジュカと余裕なアランとの恋模様とか、個々のキャラクターそれぞれにスポットを当てた物語を見ていたかった身としては、そのあたりもバッサリと片付けられてしまったのはちょっと肩透かしではあったんですよね。
巻末の列伝でそれぞれ個人の後日談についてちゃんと書いてくれていたのはありがたい限りなのですけれど、やっぱりその辺のラブコメ的な展開については直接話として見たかったなあ。特にジュカ関連は。
しかし、シェーラはなんで表舞台から消えなくちゃいけなかったんだろう。ジュカが大いに活躍して列伝残しているように、他にも侍女出身者でも名臣伝に名を残し重臣として遇された人は何人もいるのに。
まあ戦略結婚的に、絶対に子供が出来ないレオナートとメリジェーヌを差し置いて他の側室が子供作ったら、クロードとアドモフの国家統一事業に罅が生じるから、というのもあるだろうし、実質シェーラが表舞台に立つなら宰相以外の何物でもなく、シェーラひとりに権力が集中しすぎる、しかもレオナートがシェーラの言う事全部受け入れてたら傀儡に見えてしまう、と確かにまあ逆にシェーラの立場が危うくなってしまいかねないのも確かな話。
その上でシェーラ個人の幸せのため、そんでもって彼女の叡智をレオナートが全面的に受け入れて活かすためには、表舞台から消えて裏の女主人にして影の王妃になるのが最適だったんだろうなあ。
でも、確かにシェーラの件のみならず、他の人の列伝にしても真実から程遠い記述や情報隠蔽がこれほど沢山あると、ウイリアム・レイバッヘが歴史家としてはド三流と言われるのも仕方ないよなあ。記述者の恣意が入りすぎだよw
でも、ウィラン帝、表舞台から完全に去って隠遁生活送り続けるのかと思ったら、史書官でありながら安楽椅子探偵さながらに、助言を求めて訪ねてくる人にアドバイスを与え続けてズバズバとあらゆる問題解決に活躍しまくっていた、ってめちゃくちゃ表舞台で活躍してるじゃないですか、この隠遁者w
なんでこの人が皇帝やってる国に勝てたんだろう。振り返ってもちょっと信じられないんだが。

にしても、こうして見ると本作って信長の野望とか三國志といったコーエーの歴史シミュレーションゲーム的な側面がありますよねえ。内政とか戦争パートじゃなくて、人材方面で。
本来の史実だと、敵対した相手の家の武将どころか大名とかをまるごと吸収、登用するとか出来るもんじゃないのですけれど、信長の野望とかだと武田信玄とか上杉謙信とか大英雄たる戦国大名も自分の勢力の武将として登用できるじゃないですか。
そんな感じで、本作ではアドモフ帝国のレイヴァーンはじめとした諸将どころか皇帝陛下もこっそり登用していたわけですけれど……まさか、後日、この巻で決戦していたキルクス王子や、ガビロンの四兄弟まで降伏させたあとに首切らないで全員臣下にして、以降の大陸統一事業に投じていた、ってちょっと反則もいいところじゃないですか、これ!?
どんだけ世界最強の軍にしたかったんだよ、というくらいの人材の確保っぷりである。
これ、最後まで残ったヂェン帝国が一番割り食ってるんですよね。レオニート率いるアレクシス軍に、キルクス、ガビロン四兄弟、レイヴァーンにアレン。これに各国の名将勇将知将が揃って襲いかかってくるんですから、どんなフルボッコだよ、と。
さながら、織田信長に率いられた武田信玄、上杉謙信、北条氏康、毛利元就、島津四兄弟、徳川家康、三好長慶、今川義元、大友宗麟、などなどといったオールスターキャストに攻められる伊達政宗といった様相である。
もうやめてあげて、と言いたくなる人材力差なんだよなあ。
まあノブヤボなんかも、勢力がある一定のラインを超えるとあとはもう消化試合になるわけで、だらだらと続けずにすっぱりと物語を〆たのはやはり最善だったのかもしれません。
でもまあ、やっぱりもうちょっと後日談的な形での短編集みたいなものは欲しいですよねえ。特にジュカに関しては!

なにはともあれ、11巻にも及ぶ痛快なる英雄戦記、完結お疲れさまでした。


転生魔王の大誤算 4 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート ★★★★   



【転生魔王の大誤算 4 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート】  あわむら赤光/kakao GA文庫

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憤怒の魔将が挑む、絶対に怒ってはいけない侵略作戦!?

魔将たちの心を見事にまとめ上げ、魔王としての器にさらに磨きがかかるケンゴー。
次なる作戦にサ藤、マモ代、ベル原を指名、三カ国を同時に無血攻略させるゲームを立案する。
マモ代やベル原が自信ありげなのとは対照的に、難題に苦悩するサ藤。
「バカな……殺すだけで減点だと!?」
憤怒の魔将だけどキレるの禁止!
存在意義を真っ向否定されるルールに、七転八倒するサ藤を見かねて、ケンゴーが差し伸べたとある救済策とは――サ藤のことを見てるだけ!?
「はい、ありがたき幸せです!!」
わずかなきっかけで劇的な急成長をさせる嬉しい誤算が止まらない!
愛する部下を熱く育てる最強名君の爽快サクセスストーリー第4弾!!
こういう勘違いで主人公が過剰に持ち上げられるように見える作品って、その勘違いや誤解ってなかなか解消されないんですよね。場合によってはすれ違ったまま最後まで行ってしまう。
相互理解が致命的に破綻したまま、主人公の本当の気持ちや価値観、素の顔なんて知らないまま、見向きもしないまま、理想を押し付けることで主人公は他人からの理想を演じるハメになる。
或いは、主人公が成長してそうした一方的な理想に追いついていく、という展開もあるのだけれど、本質的にそういった立場に立たされている主人公って孤独なんですよね。
その点、本作においては幼馴染のルシ子がケンゴーの最大の理解者で、彼が本当はヘタレチキンだと知った上で支えてくれている、ヘタレチキンだけれど彼の一番芯の部分にある強さや勇気や、履き違えていない優しさの持ち主だというのをちゃんとわかってくれている人が側にいるだけで、最初から随分と違ってはいたんですよ。
最初から、ケンゴーは孤独ではなかったわけだ。
それどころか、前巻では嫉妬の魔将レヴィ山くんが、ケンゴーのヘタレチキンのことはよくわかっていないものの、ケンゴー自身がよくわかっていないケンゴーの良いところ、長所、優れた所、残虐な魔王らしくないけれど魔王という支配者にして統治者として相応しい要素、ある意味ケンゴーの本質的なところを、もしかしたらルシ子よりもわかってるんじゃないか、という理解者だったというのが明らかになった話でもあったんですよね。
ルシ子にしてもレヴィ山にしても、ケンゴーのこと大好きなの、上辺とか見た目とか勘違いじゃなくて、ケンゴーの本質を理解した上で大好きでいてくれるし、ケンゴーの方も七大魔将たちのこと強大な魔族としてビビってるし反逆されないかいつも恐れてるし、過剰な評価や期待を押し付けてくるのに疲れているんだけれど、それ以上にケンゴーの方も彼らのこと何だかんだと大好きなんですよね。
マモ代をはじめとした他の魔将の面々も何となくケンゴーの素の方との距離感縮まってきた感もありましたし。
すれ違ってお互いのこと見えてなくて砂上の楼閣みたいないつ崩れてもおかしくないいびつな関係に見えていた魔王ケンゴーと七大魔将たちの関係、どんどん気心の知れた身内みたいな、主君と部下というよりも遊び仲間みたいな、すごくよい関係になってきていたんですね。

ただ、そんな七大魔将の中で、サ藤君は特にケンゴーとすれ違い食い違っている人物のように見えていました。冷酷にして残虐、怒りに任せての殺戮を厭わないキレ易い若者代表、憤怒の魔将サ藤くん。その在り方や思想は誰もが思い描く悪魔そのもので、穏健路線で人間とも出来れば戦争したくないし血を見るようなことは避けてほしい、という方針のケンゴーとは全く真逆なのである。
ところが、サ藤はケンゴーの事を崇拝と言っていいほど敬愛して、ケンゴーこそは魔族の中の魔族、冷酷非情なる魔王に相応しい人と思い込んで、自分の理想を当てはめているのである。
ある意味、魔将の中で一番ケンゴーの事を慕いながら、ケンゴーを理解していない人物でもあったわけだ。理解しようとすらせず、理解する気もなく、一方的な崇拝を押し付けていたのである。
ケンゴーの方も、彼の前では従順で大人しくて健気な少年という顔しか見せないサ藤の事を可愛い弟分として甘い顔ばかり見せている一方で、サ藤の残虐で恐ろしい性格の方はなるべく見ないようにしていた節があるんですよね。
そうした二人の乖離は途方もなく広がっていて、これいつか破綻して破滅的なことになるんじゃないか、と思ってしまうほどに、相互理解が壊れていたのでした。
こういう思い込みの激しく頑なで、ある意味純粋ですらある子って、ほとんど変わることがないから、もう彼に関してはずっと勘違いさせたまま、誤解させたままで行くのだろうか、とも考えていたのですが。

そうかー、この物語はケンゴーの方だけじゃなく、部下たちの方も成長させてくれる物語なのか。幼い固定観念を打ち壊して、すくすくと健やかに伸ばす機会が訪れる物語でもあったのか。
お互いに、成長していける話だったんですねえ。

契機は、サ藤が人を殺したりとかあんまり酷いことをしないで国を征服せよ、という課題のために離島しようとした魔王軍への降伏派に属していた幼き才媛リモーネ王女との出会いだったのです。
言われてみると、サ藤もまだ魔族としては若者どころか、少年と言ってもいい歳頃だったんですねえ。
聡明なる知性と勇気と天真爛漫さを兼ね備えた小さな姫は、頑迷な古くからの魔族の固定観念に縛られていた幼き魔族の、まさに蒙を啓いていくのである。そうして、サ藤の思い込みを解きほぐし、彼とケンゴーの間にあった錯誤をすり合わせていってくれるのである。
それも、サ藤の信じるケンゴー陛下の素晴らしい魔王としての姿を全肯定したまま、ケンゴーの魔王としての事績、その統治思想や考え方を説いていくわけである。
同時に、サ藤がゴミクズとしか思っていなかった人間という存在を、リモーネ自身がひっくり返しながら。
最初はお互いになんだこいつは!? と面食らいドン引きしながら、でも衝突を繰り返していくうちにお互いの存在に惹かれ合っていく幼い少年少女の育まれていく関係がまたいいんですよ。
いけ好かない小僧だったサ藤が、リモーネに言い負かされ諭され、いつしか我慢を覚えて、ときに自分の中の固定観念を壊されて幼い年相応の顔を見せ、そんなみるみると成長していくサ藤を、リモーネが憧憬とも慈しみともつかない表情で見守るという、このボーイ・ミーツ・ガールはこれがまた微笑ましくてねえ。
ついには、自分がボロボロになりながらも、足手まといのリモーネを決して見捨てず身を挺してかばい続ける、まるで騎士のように耐え続けるサ藤の、今までの彼からするとありえない姿を見せられた時は、なんかもう感動を通り越してしまいそうでしたよ。
この弟分の成長を、ケンゴー陛下が喜ばないはずがなく、そしてその弟分がゴミクズのように痛めつけられる事を許せるはずがなく。
ヘタレチキンが怒るとほんと怖いんやでえ。
かわいいかわいい身内が痛めつけられた際の、魔王陛下の憤怒は留まる所を知らぬのである。こういう時、もう誰も文句が言えないくらいカッコいい姿見せてくれるんだから、七大魔将たちの敬愛も尊敬も、何も勘違いでも過剰評価でもないんですよね。最近は、その辺がっちり噛み合ってきてすらいるし。
ってか、ケンゴーってば最後おっさん仲人みたいになってるじゃないですか。いやもう、手をつないでギュッと握り合うサ藤とリモーネの小さなカップルが尊すぎて気持ちはわかる!





ゴブリンスレイヤー 15 ★★★☆  



【ゴブリンスレイヤー 15】  蝸牛くも/神奈月昇 GA文庫

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「姫様をどこにやった! 」
辺境の街へきた馬人(ケンタウルス)の少女は重戦士を詰問した。犯人とされた重戦士はゴブリンスレイヤーに調査を依頼。
「都市の冒険(シティアドベンチャー)は苦手なんだよ。あと腕っこきの斥候は他にいないからな」
「…………俺は、戦士のつもりでいるのだが」
馬人の姫君の行方を追い、一党は水の街を訪れる。彼らを迎えた剣の乙女はゴブリンスレイヤーに囁く。
「――銀星号をご存じ」?
馬人競走が盛り上がる水の街で、消えた銀星号を探せ――。
欲望と陰謀が入り交じる中、行き着く先は賽の目次第。鬼と出るか、蛇と出るか。

蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー第15弾!
ある意味正道なるウマ娘ことケンタウルス女子。いやウマ娘はないだろう、と思ったら銀星号のデザインが思いの外ルドルフ寄せだった。あの流星は特徴的だからなあ。
というわけで、重戦士から依頼を振られたことで人探しの旅に出ることになったゴブスレさんとその一行。
クエストである。
つまりは冒険者のお仕事、だ。最近自分は小鬼殺しに邁進していなくて、普通の冒険ばかりしているがいいのだろうか、これでいいのだろうか、と小さく悩んでいるゴブスレさんであるが。
いいんだよ!
良いのである。これに関しては衆口一致。知人友人みんな同意見だろう。そしてパーティーメンバーみんなして、そんな普通のクエストでもリーダーはゴブスレさん、なんですよね。最初の頃は妖精弓手が、今度こそゴブリン殺しじゃなくて普通の冒険に連れ出してやる、引っ張り出してやる、なんて奮起していて、当時はそんな冒険者らしい冒険なんて自分には関係ない、と振り向きもしなかったゴブスレさんを無理やり引っ張り回そうとする側だったんですよね。引っ張っていけた試しもなかなかなかったのですが。そう、ゴブスレさんは引っ張られて連れられる側だったのに。
もう普通の冒険でも、リーダーとして率いる側なんですよね。まあ、メンバーはもうみんなベテラン揃いで今更ゴブスレさんがあれしろこれしろ、なんて指示する必要もないのですが。女神官だって、手慣れたもの。
でも、ゴブスレさんが出す指針と大まかなれども方向性、そして選択を迫られた時の判断は、そんなベテランたちをしてスムーズに行動判断を行う助けとなり導きとなるものだからこそ、全部ゴブスレさんに預けるわけだ。
信頼である。
今回は旅慣れない上にツンツンしてなかなか打ち解けようとしない馬玲姫が旅の同行者だったから、余計に旅慣れた面々の様子がよく見られた気がします。特に女神官のお嬢ちゃん。フォローされる側だった彼女も、今やフォローする側。彼女のさりげない気遣いと親切は警戒と不信で全身を鎧った馬人の少女をして、思わず差し伸べられた手を取ってしまうもの。掛けられた優しい言葉に、反発がわかずに素直にうなずいてしまうもの。
こうした頑なな人だろうとなんだろうと打ち解ける、というわけじゃないけれど、心開いて貰える。そう相手に話を聞いてもらえる、そして相手の話を親身になって聞く、という神官にとって大切なスキルをこの子は体得しつつあるんだなあ、となんだか微笑ましくなってしまいました。
なんだかんだとゴブスレさんのパーティーは、寡黙なゴブスレさん以外みんな人当たりは良いものの癖のある人物ばかりだから、女神官が相手だと安心できるんでしょうね。
それでいて、今や女神官はゴブスレさんの一番弟子的なポディション。今回、ゴブスレさんがシティアドベンチャーするにあたって、裏の筋に挨拶と情報収集に出向いた場所にも彼女を連れて行った、というのは彼女に裏のツテを与える、関わらせるわけじゃないけれど、こういう世界があるのだという知見を与えるためなのですから、立派な「教え」なんですよね、これ。
彼女がこういう裏の社会を利用することはないだろうけれど、こういう裏のすじものと組んだり利用し利用され、という仕事のやり方があって、それも冒険者の仕事のウチというのを受け入れる、というのは大きいんだと思いますよ。聖職者だけれど、冒険者。穢れのないものばかりを見てそれ以外を拒絶していたら、冒険者なんてやってられない。
そういう意味では、彼女はすんなりそういう裏で仕事をしてる人達もいるんだなあ。そして自分たちと助け合うこともあるのだろう、と清濁併せ呑むことを受け入れられているので、器大きいんですよね。
ただでさえ、考え方とか思考パターンとかゴブスレ流儀に染まりつつあるのに。
以前からも、女神官はもう立派な冒険者として成長したけど、その成長の方向性がゴブスレに似すぎてて大丈夫かしら、なんて言われることも侭ありましたけれど、今回は特にそこらへん顕著にゴブスレさんの影響が垣間見えた言動が散見された回でもありました。
ゴブスレさん並に、あの身も蓋もないGMが想定していなさそうな、え!?なにそれ!? とか言われそうな作戦を、ゴブスレさんに先んじて、やりませんか!?と提案しちゃってるあたり、毒されているというか朱に染まっているというか。みなさん、苦笑いですよ。
これだけ色んな意味でタフになってしまうと、女神官も将来は彼女がリーダーになってパーティーを率いる、みたいな事もあるのかもしれませんねえ。少なくとも、もうそれができてもなんら不思議ではない頼もしさを感じさせてくれる、今回の冒険でありました。
「冒険者(アドヴェンチャラー)に任せてください!」
「冒険者に任せとけ」はこのゴブリンスレイヤーという作品世界の決め台詞的なものですけれど、ついに彼女がそれを叫ぶようになったのか、と思うとなんだか感慨深いです。

そして、冒険が終われば冒険者はみな、宿や住処に戻っていく。
そんな中で、ゴブリンスレイヤーには帰る家がある。その家には、いってらっしゃいと送り出してくれる人がいて、その人は帰ってきた彼を「おかえりなさい」と言って迎えてくれるのだ。
冒険の中で手に入れたお土産を受け取って喜び、彼の語る拙い冒険の話をニコニコと笑って聞いてくれながら、温かい夕食を用意して一緒に食べてくれる。
今回は特に、本当に当たり前の冒険者がするようなクエストだっただけに。それを、牛飼娘にちゃんと今回は冒険に行ってくると伝えて「行ってきます」と言って旅立っただけに。ゴブスレさんが、家に帰るまでが冒険です、的な感じでちゃんと家に帰ってきたシーンは、なんだかジーンとなるものがありました。
ああ、今。ゴブリンスレイヤーはただただ当たり前の幸せの中にいるんだな。
それがなんとも、温かく染み入るのでした。



『ずっと友達でいてね』と言っていた女友達が友達じゃなくなるまで ★★★★   



【『ずっと友達でいてね』と言っていた女友達が友達じゃなくなるまで】  岩柄イズカ/maruma(まるま) GA文庫

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男だと思っていたゲーム友達が、実は白い髪がコンプレックスの内気な女の子だった!?
引っ込み思案な少女と織りなす、もどかし青春ラブコメディ!

「シュヴァルツって、女子……だったの……?」
オンラインゲームで相棒としてやってきたユーマとシュヴァルツ。男同士、気のおけない仲間だと思っていたが……リアルで対面した“彼”は、引っ込み思案な女の子だった!?
生まれつきの白髪がコンプレックスで友達もできたことがないという彼女のために、友達づくりの練習をすることにした二人。“友達として”信頼してくれる彼女を裏切るまいと自制するが、無自覚で距離の近いスキンシップに、徐々に異性として意識してしまい……。
内気な白髪美少女と織りなす、甘くてもどかしい青春グラフィティ。
ふぁーー。これはイイなあ、主人公とヒロインの初々しさに心洗われてしまいそう。
杉崎優真と上城ゆいがはじめて出会ったのは、リアルではなくオンラインゲームの中でした。その頃はまだ中学生の年代だった二人ですけれど、現実でうまく人付き合いできずウチに籠もって自然と他人を拒絶して生きていました。それはゲーム上でも同じで、なるべく人と関わらないようにしながら遊んでいたのです。そんな中で偶々一緒に行動するようになった二人は意気投合、ゲームの中で相棒として一緒に遊ぶようになったのです。
それまで他人を遠ざけるようにして生きてきた優真にとって、相棒…シュバルツと過ごす時間は自分の価値観を塗り替えてしまうほど楽しく、彼と遊ぶことをきっかけにして現実での自分の在り方も変えてみようと思い、努力を重ねることになります。以降、優真のリアルは見違えるように彩りを変えていきました。上手く行っていなかった家族関係も良い形で回るようになり、優真は自分の人生を変えるきっかけになってくれたシュバルツをリアルでは会った事もないけれど親友と思うようになったのです。
このように、二人はお互い本名も本当の顔も知らないネット越しの関係だけれど、そんな事は関係ないくらい信頼を寄せ合う友達同士だったのです。でも、そんな二人だからこそ、もっと相手の事を知りたい、もっと仲良くなりたい、と思うことは必定だったのでしょう。
高校への進学を機に、お互いのリアルの情報を話し合った時偶然、自分たちが同じ学校に通うことになっていて、家も思いの外近所だとわかったとき、リアルで会おうとなったのもまた当然のことでした。
でも、それはシュバルツ……ゆいにとっては途方も無い勇気がいる事でもありました。
白い髪という他人にない特徴のせいで、幼い頃からいじめられていたせいで、酷いトラウマとコンプレックスで他人とまともに目を合わせる事も喋ることもできない、対人恐怖症に近いものを抱えているゆいにとって、人と会うために外出するということは本当に勇気のいることでした。
その相手が、自分を受け入れてくれるのか。この白い髪に変な顔をしないか、今まで女の子だというのを黙っていた事を怒らないか。不安や恐怖でどれほど胸を締め付けられていたでしょう。足が震えていたでしょう。
でも、その勇気を振り絞るだけの絆を、優真に会ってみたいという願いを抱くほどに、出会う前の段階で二人の仲は深まっていたんですね。
そうして出会った男の子は、彼女の想像を超えるほどに優しく、自分の怯えや痛みを理解してくれる人でした。
他人とうまくコミュニケーションを取れない時期が長かった優真にとって、ゆいの焦ってうまくしゃべれない様子やそんな自分に嫌悪を覚えて余計にパニックを加速させていく姿は、身に覚えのあることで、だからこそどうすれば彼女の緊張を紐解いていけるか、よく理解できていたんですよね。
上から保護する形ではなく、寄り添って傍らから支える形でゆいと交流していく優真のそれは、もうパーフェクトコミュニケーション以外のなにものでもありませんでした。これから高校に通うというくらいの年齢なのに、ほんとよく出来た子だわー。
でも、同時にみたこともないきれいな女の子にドキドキしてしまう思春期の男の子であることも間違いではなく、相手が女の子だとわかった途端に初めて友達と会うというそれとは違った浮ついた気持ちになってしまう自分に、下心をどうしても抱いてしまう自分に嫌な思いを抱いてしまうところなど、誠実でもあり可愛くもあり、いい子なんですよね。
そんな男の子に対して、ゆいがどんどん心を開いていくのも当たり前で、高校に進学する前にゆいの人と接することへの忌避感を弱める練習として、いろんな所に連れ出して一緒に遊んでくれる優真への信頼が加速していくのである。しばらくしたら、もうべったりと懐いて無防備なくらいにくっついて離れなくなってしまった所なんぞ、ワンコみたいな所もあり、可愛らしくて仕方ないんですよね。
そりゃもう、優真も困る。
優真の義姉がまた破天荒な人物で、自分でブティックなんかも経営している才媛なんだけれど、このお姉さんがまた良い相談相手になってくれるんですね。
お姉さんの手で、それまで人前に出る事がなかったので髪の手入れや服装など野暮ったい格好しかしていなかったゆいが、見違えるように身だしなみを整えられて、素材だけでも傑出していたのに、それを磨ききった形でとてつもない美少女として完成されて出てきた彼女を、ただでさえ全力でしっぽを振りながら懐いてきてくれるゆいにグラグラしていた優真がノックアウトされないはずがなく、完全に女の子として意識するようになってしまうのである。
最初に、恋をしたのは優真の方だったんですね。でも、友達として慕ってきてくれるゆいにこんな気持を抱いてしまうのは不誠実なんじゃないか、こんな下心を抱いて接してしまうのはダメなんじゃないのか、と悩む少年に率直な助言を与えてくれるのがネネお姉さんなのである。
まあ、傍から見ていてお互いを深く信頼していてピトッと引っ付きながら恋にもまだ至らずにふわふわと寄り添ってる二人は、初々しいやら尊いやら、見ていてたまらなくなる関係なだけに、ネネさんが悶絶するのもよくわかるんですよねえ。
下手に手を出さなくても、意識するかしないかの境目で甘酸っぱい雰囲気をたたえている二人は、応援せずには居られないでしょう。悩める少年に細やかなアドバイスを与えるのは、ほんと良いアシストでした。
この時点では、まだゆいは恋に至ってはいなかったんですよね。優真のことが大好きで大好きでたまらなくて、彼のことを信頼しきって頼りにしきって彼の喜ぶことなら何でもしてあげたい、と思うまでになっている彼女ですけれど、それはまだ恋じゃなかったのである。
それは、どうにも自分を異性として意識しはじめているらしい優真の様子に気づいて、優真は自分が彼女として付き合ってくださいと言ったら喜んでくれるかしら? なんて悩み始める姿からも明らかでした。
彼女のそれが恋ならば、そんな風に優真のためだけに、彼が喜んでくれるから、という理由で彼女になろうとなんてしなかったでしょう。
でも、そうした些細な機微に気づくのが、ネネの助言で腹を決めてゆいと一緒にいると決めた優真だったんですね。彼女が自分のことを好きになってくれたら嬉しいし、好きになって貰うために頑張るし努力するつもりだったけれど、これはちょっと違うんじゃないか、と。
ちゃんと察してあげられる。無分別にがっつかずに、しかし安易に拒絶せずに、彼女の心の動きをしっかりと理解してあげられる優真少年のそれは、本当に良く出来ていたと思います。
ゆいへの友情と愛情と優しさが、気遣いが、心配りが、行き届いているんですよね。こんなイイ男の子はいないですよ。
そして、そんな彼の良さを、素晴らしさを一番理解しているのもまたゆいなんですよね。彼がどれだけ自分のことを大切にしてくれているか、想っていてくれているか。これまでも十分伝わっていたけれど、それがオーバーフローするくらい自分の器を満たして溢れ出して、そうして彼女はついに自分の中のドキドキを発見するのである。
彼のことを考える時、思う時、自分でも制御できないくらい心が弾むことを、押さえきれないくらい胸がドキドキしはじめる瞬間を、彼女は自覚するのである。
恋が、そうしてはじまるのだ。

この物語は、二人の男の子と女の子がかけがえのない親友になり、そこから恋がはじまるまでの過程をとても丁寧に柔らかく描き出してくれたとても素敵な作品でした。
作中時間としては結構短いんですよね。学校が始まるまでの春休みの期間。でも、そんな短い時間だけれどとても密度の濃い、人生が書き換えられていく、人の心が、想いがページをめくるように進展していく様子が描かれたものでした。色づく季節、とでも言うんでしょうか。ああ、春なんだなあ。
まさにこれ、タイトル通りのお話でした。

ここからは、恋しはじめた二人のお話。高校という新しい生活に、二人で踏み出すお話であり、意識せずには居られなくなった初々しく可愛らしいカップルのお話。
ぜひ、ここからの二人のお話、読んでみたいです。もう、二人共めちゃくちゃ可愛かったッ。

岩柄イズカ・作品感想

処刑少女の生きる道(バージンロード) 6.塩の柩 ★★★☆   



【処刑少女の生きる道(バージンロード) 6.塩の柩】  佐藤真登/ニリツ GA文庫

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彼女が彼女を殺すための物語、破戒の第6巻。
「お前は、忘れない。ここで死ねるのなら、お前は幸運だ」

メノウと導師「陽炎」。
塩の大地での師弟の戦いは、メノウへと天秤が傾きつつあった。
アカリとの導力接続で手に入れた膨大な導力と、行使可能になった疑似概念【時】。
新たな力を得たメノウの勝利で終わるかと思われた訣別の戦いは、しかし、見え隠れする【白】の存在により予想外の方向へ向かいはじめる。

その頃、“聖地”跡では万魔殿が「星の記憶」へ足を踏み入れていた。
マノンの遺した一手が彼女に致命的な変化をもたらすことも知らず――。

そして、最果ての地にひとつの破局が訪れる。
彼女が彼女を殺すための物語、破戒の第6巻。
そして貴女は落ちていく。
地面に横たわる姿にはじまったこのシリーズの表紙絵は、5巻でついに立ち上がり戦う決意を見せた。そこから立つべき地面を失ったようにメノウはどこかへ落ちていく。墜ちていく。堕ちていく。

メノウは自分の生きざまをふらふらと蛇行しながら前進していると言っていたけれど、同時に師匠のことを悪でもなく前でもなく中道で、合理的で残酷でありながらも人間的だと語っている。フレアは、冷たく硬い鋼のような人間だった。その在り方は最初から最後まで変わらなかった。
でも、彼女は冷たいまま、金属のように硬いまま、無二の友情を得て、一人の弟子を慈しんだ。
友を殺し、弟子も利用した挙げ句に殺そうとして、そこに後悔も罪悪感も持たないのに、それでも彼女にとってあの日本人はたった一人の友人だったのだ。メノウは、自分の手で育てた娘だった。
だから、友人を殺したことを後悔もしていないのに、彼女の敵を討つために20年を費やした。その20年掛けた罠のためにメノウを育てて、利用して殺すつもりは一切揺らがずやり通したのに、フレアは娘を愛していた。その双方が矛盾せず両立していたのが、フレアという人物だったのだろう。彼女はあまりにもその在り方が一貫しすぎていて小揺るぎもしなかったが故に、矛盾すらも貫いてしまったのか。
後悔も罪悪感もなかったフレアにとって、自分の人生に不満も痛みもなかっただろう。彼女は最後までゆるぎもしなかった。ただ、揺らぎたかったのだろう、という願望だけは透けて見えた。友人と旅していた頃、自分の人殺しの生き方にずっと罰を欲していたことを思えば、メノウの在り方はかつて自分が望んだものだったのだろうか。
最後に至っても、フレアの心のうちは理解の遠く向こうだ。フレア自身が自分をわかる必要を認めていなかったように、自己分析の欠片も思い描いていなかった事もあるのだろうけれど。その奥底にある真実は彼女の言動や回想の欠片から一つ一つ拾い上げていかないと見えてこないし、そうして組み上げたものが本当の真実かなんてわからない。
ただ、事実だけを見るならば、フレアは自分の人生の大半をかけて、自分が友人を殺すことになった原因である白を討とうとしていた。そして、そのために利用し尽くすつもりだった弟子に、彼女はずっと選択肢を与え続けていた、ということだ。
彼女が最期に撫でようとした腕の位置は、幼い女の子の頭の位置だった。
その事実さえ覚えていれば、きっと事足りるのだ。

これまでずっと鳴りを潜めていた勇者・白。それが、アカリという少女がこの地に降り立ったことで、そして日本帰還の術式の準備が整ったことで、ついに千年の長き時を経て動き出す。
あの白の名前とは裏腹の凄まじい黒穴の如き眼が描かれた姿の挿絵は、やべえの一言。これ、夜中に見たら本気で「ひぇ!」となる絵だったりする。マジ怖い。
こんな眼をしているやつがやばくないわけがないという逆説が成り立つくらいヤバイ。どういう塗り方したんだ、この眼。

しかし、白が動き出したことでアカリとメノウの繋がりが断ち切られたと同時に、一気にパーティーの再編が行われるんですよね、これ。
シャッフルされたというべきか。モモと姫様が現場を一旦離れたのに合わせて、まさかの人災(ヒューマンエラー)サイドからの参入である。そのおぞましいというほかない、存在自体が災害であり呪いであり破滅そのもの、という悍ましさをこれでもかと今まで見せつけてきた以上、人災たちの存在というのは倒したり乗り越えたりするべき敵であるか、それ以上に逃げなければならない厄災天災そのものか、というスケールだったのに、まず最初にそれをひっくり返したのがマノンだったんですね。
まさか、あんなあっさり退場するとは思っていなかったのだけれど、それ以上に置き土産が盤上をひっくり返すどころじゃない、とんでもねー一手だったわけだ。
ある意味それは神を零落させたようなもので、理解が全く出来ないが故に脅威だったものを理解できるものに堕としてしまった、或いは昇華させてしまったとも言えるんだけれど。いずれにしても、話ができる相手になった、というのは大きいどころじゃないんだよなあ。
そして、なんであんな根っからの小物なのに、大きな仕事ばっかりするんでしょうかね、サハラさんは。こいつ、自分では何しようとしてもろくなことにならないんだろうけれど、他人から強制されながらイヤイヤやる気なくむしろ失敗してしまて、と思いながらやると大成功するみたいな業を持ってるんだろうか。
なんか思わぬところからお姉ちゃんが出来てしまったところとか、笑っていいのか呆れていいのか、わからんのですけどw まるで話が通じなさそうなところとか、サハラにばっちり合いそう。しかし、このお姉ちゃんも所謂計り知れないヤバイ枠なのだから、メノウの新パーティーってかなり意味不明なことになってるんですがw
いや、相手が相手だからこれくらい揃ってないといけないのかもしれませんけれど。
というか、これ人災両方サハラに紐付きになっちゃったんだけど、この小物どこまで行ってしまうんだw

そして、モモはまだ正期の昇進を果たしたのでいいのですけれど、姫ちゃまの行く末がかなりヤバそうなことになってるんですよね。あの姫ちゃまが大人しく他人のイイようになるとはこれっぽっちも思わないのですが。むしろ、待ち受けている使徒の方が酷いことになりそうな予感w



やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 4 ★★★★   



【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 4】 ふか田さめたろう/ふーみ GA文庫

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お互いの気持ちを確かめ合い、晴れて恋人同士となった小雪と直哉だが、恋人としての関係を意識して小雪は逆に固くなってしまう。
そんな折、小雪の許嫁として、イギリスからの留学生アーサーがやってくる。しかし彼は一緒にやってきた義妹のクレアと相思相愛だと見抜いた直哉。小雪との両想いぶりを見せつけることで許嫁として諦めさせ、クレアとの恋を成就させるべく立ち回ることに。
なかなか素直になれない二人をたきつけ見守りながら、自分たちの関係を省みる小雪と直哉は――
天邪鬼な美少女と、人の心が読める少年の、すれ違いゼロの甘々ラブコメディ、第4弾。

ラブコメってラブコメディというだけあって、甘酸っぱい恋愛模様が描かれると同時に、それを明るく楽しくテンポよく、のコメディチックに描くジャンル、と言えます。
そのラブの部分に比重を置くのか、コメディの部分に重きを置くのはそれは作品それぞれで違ってくるのでしょうけれど、本作は特にこの「コメディ」としてのテンポの良さ、リズム感みたいなものが数あるラブコメ作品の中でももう突出してるんですよね。ある種、ラブコメの究極系として一つの完成を見たんじゃないか、と思ってしまうくらい、最初から最後まで見事なほど息切れの一切ない畳み掛けるような勢いと、展開の連なりの調和が取れた話の転がりかたになってるんですよね。
キャラクターの個性と押し出し、ストーリーラインのスムーズさも相まって、交響曲かという重奏さと軽妙さが合わさってる。
一言でいって、めちゃくちゃおもしろかった。
正直、小雪と直哉が両思いになることで、こんな以心伝心二人一組で物語そのものを牽引するユニットになるとは思ってなかったんですよね。読心能力かという能力持ちの直哉が、素直になれず本心を口にできないのにあっさり本心をぶっちゃけられて右往左往振り回される小雪、というのがこのシリーズのパターンでしたけれど、両思いになってもう開き直っちゃった小雪は、本心全部バレバレなのが当たり前という前提で直哉と付き合うようになってます。
じゃあ本心を素直に口にするようになったか、というとそうとも言えないあたりがまた小雪の可愛らしさなのですけれど、本心を読まれることを前提に物事を考え動くようになったものですから、もうこのカップル、完全に以心伝心になってしまって、二人して動く時一旦立ち止まって相談したり考えをすり合わせたり、というラグが全然なくなっちゃったんですよね。
なので、一切この二人の行動に淀みや停滞がなくなってしまったものですから、話の展開まで全く停滞がなくなって、直哉と小雪の邁進に合わせて話がどんどん進む進む。展開もどんどん転がる転がる。オマケに小雪もなんだか旦那に影響を受け始めたのか、やたらと察しがよくなってきている傾向があり、他の人の言動や思考を先読みするようになりはじめているんですよね。
それどころか、なんか直哉以外と会話する時一から十まで全部話す内容を口に出して話しながら話さないといけないので、なんか最近直哉以外との会話に面倒臭さを感じ始めている、という危険な兆候がw いやそれ、もう完全に直哉専用に調律されはじめてやしませんか? 大丈夫か? そのうち、他人とまともに会話できなくならないか?w

本来なら、徐々に明らかになってくるだろう新キャラクターである小雪の婚約者にして海外からの留学生、アーサーとクレアの事情も、空港で出迎えた初対面の時点で全部明らかになってしまったので、とにかく話が早い。直哉のみならず小雪まで加わって、ガンガンと話を進めていくものだから、余計なエピソードを挟む余地なく最大効率でアーサーとクレアの本心が暴かれていった上に、この兄妹完全に勢いのまま引きずり回されて、気がつけばお互い思いを秘めた両片思いだったのが想い通じ合っている、という怒涛の展開。いや、怒涛すぎるでしょう、RTA(リアルタイムアタック)かよ!
それでいて、直哉と小雪当人たちはというとよそのカップルにかまけて自分たちはどうなんだと言えば、僅かな暇さえあればひたすらイチャイチャ甘酸っぱい雰囲気を出してるのですから、余裕すら感じるダダ甘カップルっぷりでした。
いやー、ここまでしてくれるともうひたすら楽しいばかりでした。この直哉と小雪のカップルは延々見ていられそうですわ。

ちなみに、毎度巻末で繰り広げられる、直哉パパと小雪パパの世界を股にかけたトラブルバスターズも、これスピンオフで見てみたいくらいハッチャケてて面白いんですよねえ。

さて、次は直哉と小雪のカップル反対勢力の本命となる小雪のお祖父様が登場するのか。既に会ったら直哉相手に即陥落だよね、と皆の意見が一致しているあたり、まったく障害になりそうにないけれどw




天才王子の赤字国家再生術 10 ~そうだ、売国しよう ★★★★   



【天才王子の赤字国家再生術 10 ~そうだ、売国しよう】  鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

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ウルベスでの独断専行が家臣達の反感を買い、しばらく国内で大人しくすることにしたウェイン。
その矢先、大陸西部のデルーニオ王国より式典への招待が届き、妹のフラーニャを派遣することに。
しかしそこでフラーニャを待ち受けていたのは、数多の思惑が絡み合う国家間のパワーゲーム。一方で国内に残ったウェインの下に、大陸東部にて皇子達の内乱が再燃という報せが届く。
「どうやら、東西で両面作戦になりそうだな」
グリュエール王の失脚。皇子達の陰謀。東レベティア教の進出。野心と野望が渦巻く大陸全土を舞台に、北方の竜の兄妹がその器量を発揮する、弱小国家運営譚第十弾!

うわーーっ、今回はウェインは完全に盤外にあって、一から十まで主役はフラーニャだ!!
マジかー。これまでも一部の局面でフラーニャ主体となって状況を動かす事もあったし、物語としてもフラーニャ主役で動く場面もありましたけれど、一冊丸々フラーニャ主人公として描くとは。
それだけ、王女フラーニャの役割がこの作品の中で重要も重要、最重要になってきたという事を意味しているんだろうけれど、それにしてもフラーニャの活躍が予想を遥かに上回るもので、まだまだこの娘の事を見縊っていた事を思い知らされた。
今までも既に政治の表舞台に立ち、戦火の最前線に立たされた都市で演説をふるって市民の指示を取り付けたり、意外なカリスマや政治センスを見せてくれていたし、お飾りを脱して自分で考える事が出来る王族として、ウェインの代理で外国に使節として派遣されるなど、大きな仕事をこなせるようになってきたフラーニャでしたが、それでも今までは兄ウェインの指示を受けていたり、突発的なことに襲われても受動的に対処する、という方向に徹していたんですよね。
でも今回は……間違いなく、自分で考え自分で介入し政略謀略が渦巻く国同士のパワーゲームのという盤上で自ら局面を動かす「プレイヤー」の一人として動いていたんですよね。
それはウェイン王子やロワ皇女、グリューエル王といった世界を動かしせめぎ合うプレイヤーたちと同じ土俵の上に立ったということ。
それどころか、同じようにシジリスの後を継いだデルーニオ王国の宰相や、王女という立場から国を動かし世界情勢に関与するウェインたちと同じ立場に立とうとしたトルチェイラ王女といった野心家どもと同じ盤面で指しあった結果、役者が違うとすら言っていいかもしれない手練手管を見せつけてくれたのですから、もう刮目して瞠目ですよ。
まさか、ウェインのプレゼントという決め手があったとはいえ、トルチェイラを手玉にとって見せるとは。トルチェイラにとっては敵として相対したいのはウェイン王子であって、フラーニャなんて眼中にもない、と思いたがっていたのに、完全にしてやられたわけですからね。実際は、色々と着実に実績を上げていたフラーニャのことめっちゃ意識していたくせに、取るに足らない相手と無視するから。油断であり傲慢であり、プライドの高さが足を引っ張ってしまったか。
その点、フラーニャは素直で人の話も良く聞きますし、一方で自分の意見をちゃんと持っているし、兄ウェインを尊敬している分、自分の能力を過信しませんし。
何より、その善良さが悪い嘘をつかない姿勢が、騙そうとしないあり方が、人から信頼を寄せられ、味方を増やすカリスマになっていて、こればかりはウェインを含めて他のプレイヤーにはないフラーニャ独自の武器なんだよなあ。
ロワも表看板では似たような路線で評判上げてますけれど、中身がウェインと思いっきり同類なだけにフラーニャと比べるとすげえパチモン感がw
いや、ちゃんとロワはウェインと同レベルの大陸屈指の謀略家であり政治家なのですけれど、あの中身のポンコツさを見てるとなあ……パチモン感あるよなあw
今回もウェインの謀略の片棒担いで悪巧みしまくって、他の皇子たちの勢力を削ぎまくった挙げ句帝国の実権をほぼ握るという躍進を見せているのに、「だるーん」とか言ってるユルユルの姿を見せられるとねえ……ロウェルミナってもしかしてこの作品のマスコットじゃないのかと思えてくる。
……かわいい。

今回の一件でシリジスの心からの忠誠を勝ち取ったフラーニャですけれど、実際にプレイヤーとして動いたことで、遠く離れた土地で事の推移をすべて見通していた兄の凄味を本当の意味で思い知る。同時に、彼女の知見が高くなり鋭くなるほどに、ウェインという兄の真の姿が見えてくる。
果たして、あの愛する兄にナトラという国を預けていて、本当に大丈夫なのか。そんなフラーニャの心のなかに芽生えた僅かな疑念に、シリジスの野心や復讐心からではない心からの忠信ゆえの指摘が突き刺さる。
プレイヤーとして立ったがゆえに、フラーニャ自身自分が歩むべき道、その岐路に立たされるという凄まじい回でありました。
でも、そのフラーニャの選択ですら、ウェインの思惑の上っぽいんだよなあ。いったいどの段階からフラーニャのことをここまで成長すると見込んでいたんだろう。当初は政治の何も知らないお兄ちゃん大好きなふわふわとした王女様だったのに。そんなフラーニャをただ猫可愛がりしているだけに見えたのに。
まあ、猫可愛がりしているのは今も変わらないのですが。

ついに毒蛇にニニムの正体がばれ、彼女がウェインの心臓というのみでなくこの大陸の行く末を握る心臓であることが発覚し、表舞台に引きずり出されそうな気配が漂ってきたことで、さて事態はどう動いていくのか。
いやー、先が読めないしドライブ感のとどまらない政治劇、謀略劇に、ワクワクが止まらんですわー。


ただ制服を着てるだけ ★★★★☆  



【ただ制服を着てるだけ】  神田暁一郎/40原 GA文庫

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同居相手は19歳 彼女が着てる制服は、ニセモノ。
若手のエース管理職として働く社畜 堂本広巳。日々に疲れていた広巳は、偶然から関係を持った少女 明莉が働く、ある店にハマってしまう――
「今日も……抜いてあげるね――」
そんな毎日の中、休日の職場トラブルで呼び出された広巳を待っていたのは、巻き込まれていた明莉だった!?
「私行くとこないんだよね―― お願い、一緒に住ませて! ! 」
突如始まった同居生活の中、広巳と明莉は問題を乗り越え、二人で新たな道へと歩み始める。
社畜×19歳の合法JK!?
いびつな二人の心温まる同居ラブストーリー、開幕。
JKリフレって良く知らなかったんだけど、リフレクソロジーというのは簡単なマッサージの意。それにJKになりきった女の子にマッサージしてもらったりお喋りしたりという演技型のお店の事を言うそうだ。
一応、明莉が所属している店は健全の範疇にあり、いかがわしい行為はしていない。しかし、JKリフレ自体はJKビジネスと呼ばれる未成年を性風俗の働き手として搾取する社会構造のコンテンツの一つとして利用されてきた一面を持つという。そのへん、詳しく作中でも説明されている。
明莉は今は純粋に癒やしを提供する健全なタイプのお店に勤めているけれど、以前はガッツリとこのJKビジネスに関わっていたという。
ハマり込んでいたと言ってもいい。
現役の女子高生という売りを利用して、自分の身体で春を鬻いでいたのだ。
同じJKビジネスの沼にハマりこんで抜け出せなくなった同輩たちが、本当にどうしようもない悲惨な形で人生を失っていく様子を目の当たりにしていく事で、明莉はこのまま行けば自分も彼女たちのように破滅する、という自覚を持つに至り辛うじてビジネスに関わる人間たちの悪意や欲望が、しがらみが彼女を捉える前に自力で抜け出すことが出来たのだという。
でも、ドップリとそうした日本社会の陰の部分にはまり込み、そこから徒手空拳で放り出された時、明莉は何も出来なかった。何にも成れなかった。現役女子高生という肩書から脱却し、しかしまだ成人にもなっていない19歳の彼女は何にもしがみつけないまま、またJKビジネスという陰の軒下に舞い戻ってしまう。たとえ健全な業務内容だとしても、彼女は自分を切り売りするコンテンツから抜け出すことが出来なかったのだ。
今はまだいい。ギリギリ瀬戸際で踏ん張っている。でも、彼女自身予感している。遠くないいつか、自分もまたズルズルとかつての同輩たちと同じ沼に沈んでいくと。

また、明莉は今、男と同棲している。
友人の紹介から知り合い、そのまま何となく付き合う事になり男の家に転がり込んだのだという。だが、果たしてそこに恋愛が介在するかというと、微妙な所だ。
ラブコメなお話に慣れた身からすると忘れがちになってしまう事だけど、現代の男女交際はそこに恋愛感情がなくても成立することが少なくない。彼氏彼女の関係というのは、思いの外ハードルが低いのだ。ただ彼氏が欲しい彼女が欲しいという考えが先に来て、関係が成立する。そこから関係が本物になっていくかは二人次第。合わなければ別れるし、場合によっては合わなくても別れない。別に好きじゃなくても、一緒に居るという距離感にこそ縋ってズルズルと関係を続けてしまう事も多いのだという。
藤村明莉は恋をしたことがあるのだろうか。
少なくとも、この作中では彼女はそんな感情を抱いた様子は一切見せない。この物語のもう片方の主役である堂本広巳に対してもそうだ。彼の人となりへの好意や感謝はあるだろうが、そこに恋愛感情という淡いものはまるで見えない。
彼女にあるのは独りで生きてきた、という自負心か誇りか矜持か。そこには人を利用することはあっても、頼り切ったり甘え切ったり、誰かに依存する事を良しとしない強烈なまでの自立心がある。それが薄っぺらなハリボテにすぎないという自覚をどこかで持ちながら、それでも彼女には矜持があった。
だからだろう、一方的に搾取されることも逆に一方的に対価もなく養われる事も明莉は受け入れられなかった。
同棲相手の部屋を飛び出したのも、ただでさえギスギスしてきていた所に自分が都合の良い女にされそうになったからだ。愛想が尽きた、というのだろう。自分の要求ばかりを押し付けてきて、搾取してこようとするダメ男にのめり込んでしまうほど、対処に困る男の趣味をしていなかったのは幸い、というべきなのだろう。
でも、彼女の場合は逆の立場でも許容できなかったんですよね。
リフレの常連客で友人の上司、という間柄の堂本広巳と縁あって、上手いこと彼の部屋に転がり込んだ明莉だけれど、ただでさえ思っていたのと違って対価を求めず無償で部屋に住むことを(しぶしぶだけれど)許してくれただけでも彼女にとっては想定外だったのに、それ以上の返しきれない借りを明莉は広巳に負ってしまう。
あるいは、広巳が居なかったらこの一件が明莉をもう一度身体を売って金を稼ぐ二度と逃れられない沼に沈むきっかけになっていたのかもしれない。それは間違いなく、彼女にとっての人生の分岐点だったはずだ。
それほど大きな借りを、広巳は僅かなりとも返させてはくれなかった。
その事実は、明莉をどうしようもないほどに動揺させ、怒りすら抱かせ、揺らがせてしまう。
彼女がどうしても、堂本広巳から与えられるばかりで何も受け取って貰えない状況に耐えられなかったのは、きっと対等ではないと思ってしまったからじゃないだろうか。対等の同じ人として見てもらえていないと感じてしまったからじゃないだろうか。
惨めさを、感じてしまったんじゃないか。

堂本広巳が過去の心の傷から、保護者たらんとしなければ耐えられない、与え受け入れ守り続けなければ心が持たない、そんな今も血が止まらない心の傷口をそんな風にしか押さえられない彼のあり方と、明莉の自らを辛うじて奮い立たせている心の芯は合わなかったのだ。
広巳にとって、明莉を保護するというのは明確な代償行為だった。それは独り善がりと言われても仕方ないものだったのだろう。でも、彼女から対価として肉体関係を提供してもらうことは、明莉が庇護しなければならない弱者であるという認識がある以上、彼の心傷には耐えがたいことだったのだ。
明莉にとって、対価を受け取らない無償の……野放図ですらある厚意は不安でしか無く、一方的に与えられ庇護される状態というのは自分の力で生きてきた彼女にとって居たたまれなさと惨めさと共に拠り所をなくしてしまうような恐怖ですらあったのだろう。
二人共お互いに、孤独に寂しさに途方に暮れていたというのに。ようやくそれを埋めあえるだろう可能性と出会えたのに。
広巳にとって明莉は突然現れた迷惑な居候だった。同時に、自分の喪失感と虚無感を埋めてくれる代償行為の相手でもあった。ずっと空っぽだった彼の心の隙間を、代替えとはいえ確かに埋めてくれていたのだ、彼女は。
結局、広巳は自分の過去を明莉に語ることはなかった。それでも、彼の心の空隙は明莉にも伝わったのだろう。それを、自分が確かに一部でも埋められていたことも、感じ取れたのだろう。
ただ与えられるだけではなく、微かにでも自分も彼に与えられていたのだという実感は、彼女のプライドを、寄って立つ柱を立て直すに足りているかはわからないが、それでも足しにはなったのだろう。
詳しく話を聞かなかったのは双方にとっても良かったのだろう。もし詳しい広巳の心の傷を知ってしまえば、明莉はそこに付け込まずにはいられなかっただろうから。それが彼女の処世術であったから、多分彼女自身が好きになれない自分のあり方の一つだっただろうから。

彼らは改めて同じ部屋で暮らし始める。
そこに恋愛感情はない。肉体関係もない。心も繋がっていない。信頼もあるだろうか、疑問だ。
それでも、二人はしばし一緒にいることを選んだ。そこに二人は確かにささやかでも「幸せ」を見出したのだ。
二人にとって縁遠かった、その手に掴むことがないと思われた、その手に届くことがないと思われた、当たり前の幸福感が。
それが本物になるのかは、まだわからない。愛は、まだきっと目覚めていない。

ついに、というべきなんだろうか。ライトノベルというジャンルでここまで直球で、社会構造の搾取と収奪の最下層に位置するだろうアングラ界隈の実像と、その際で足掻いている人間たちの生々しいまでの息遣いを描く作品が出てくるとは。
ぶっちゃけ、一般文芸で出ててもまったくおかしくないんだけれど、ライトノベルだからこそのインパクトか。最近流行りの同居モノの範疇ではあるんだろうけれど、土台となる部分の毛色がまったく違っている。似たような構図として某髭を剃るが思い浮かぶかもしれないけれど、男のあり方も女側のスタンスも彼らが立っている土台もだいぶ違っているように見える。
人の生き辛さ、当たり前の幸せというものの意味、現代社会の虚、心を蝕む寂しさ、そういったものを苦味とともにじっくりと味わえてしまう、刺さるものが多い一作だった。
是非、続きを、彼らの行く末を、顛末を見届けたい。

泥酔彼女 2.「弟クンがんばえー」「助けて」 ★★★☆   



【泥酔彼女 2.「弟クンがんばえー」「助けて」】  串木野たんぼ/加川壱互 GA文庫

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「弟クン、早く成人してよー。弟クンと一緒に飲ーみーたーいー! 」

アンチ酔っ払いの俺の家に入り浸る酒好きダメ美人・和泉七瀬。鬱陶しいけど、でも、そんな彼女がいる日常も思っていたほど悪くない――。そう感じ始めた矢先、俺は自分の恋愛トラウマの元凶と再会してしまう。

「先輩を“私に"酔わせてみせます」

大ブレイク中の若手女優・月浦水守。再会するなり俺とヨリを戻そうとし始めた彼女と、犬猿の仲の羊子は一触即発状態に。さらに、その面倒な状況を酔った七瀬さんが面白半分でひっかき回し――ってなんで七瀬さんが複雑そうな顔してるんだ?

2月14日に笑うのは誰だ! 距離感激近宅飲み青春ラブコメ第2巻!

甲斐甲斐しく手取り足取り気配りが行き届いたお世話を七瀬さん、というよりも穂澄の場合は役者という括りにある人間に対しては、かもしれないけれど、兎に角細やかなフォローから演技力向上のためのプロジェクトまでその有能さを発揮する主人公くん、穂澄だけれど……かと言って彼が精神的に大人なのか、というとやっぱり違うんだなあ、と深く頷かされた次第。
結局、月浦や姉の手のひらの上なんですよね。今、月浦を毛嫌いしている事すらもお釈迦様の手のひらの上、になるんじゃないだろうか。自分の納得できる自信ある脚本を書き上げたら演劇部に戻ろう、なんて考えているのもちょっと子供っぽいじゃないですか。
確かに色々何でも出来る子かもしれないのですが、彼が居ることで七瀬さん達が何倍も能力を発揮できる無くてはならない人になってるかもしれないですけれど、大きな枠組みで見ると穂澄って女性陣に対してまったくイニシアチブを取れていないんですよ。彼女たちに大きな影響を及ぼす事は出来ているかもしれないけれど、彼女たちを自分の思うように動かしたり変えたりすることは全く出来ていない。なんだかんだと根っこの部分が子供っぽくて幼くて、そこを女性陣たちに首根っこ抑えられてると言ってイイ。これじゃあ勝てないですよね、勝負にすらなってないんじゃないだろうか。
だから、実のところ女性陣は穂澄を相手にしているのではなく、同じライバルとなる恋敵の方に視線の焦点をあてながら、穂澄を引っ掻き回していると言ってイイのかもしれない。特に月浦。まったくそれが出来ていない独り相撲というか勝手に自爆し逃げ回っているのがヒツジちゃんで、七瀬さんはそもそも一歩距離をおいてお姉さんとして彼らのラブコメを他人事として見守っていたのが、まーそれはそれは尽くしてくれまくる穂澄くんにキューンときてしまい、やっぱり誰にもあーげない、となって確保に動き出した、といったあたりですか。
ヒツジちゃんはほんとなにやってたんだろうこの娘。ライバル不在で独壇場、いかようにも料理できただろうに、指くわえて眺めてるだけだったんだから、ほんとになにをやってたんだろう。
そりゃ、月浦にも呆れられますわ。主人公、ニブチンの極みですけれどどの分チョロいなんてもんじゃないですからね。イレグイもいいところだったろうに、勿体ない。

さても、主題と言うか問題は月浦が突然アプローチをしかけてきた、ということもよりも本来は七瀬さんの演技ベタの解消、克服だったんだと思うのですが、兎にも角にも月浦の小悪魔っぷりとその積極攻勢が強烈すぎて、穂澄どころか物語そのものが翻弄されてしまった感がある。その存在感の異様なまでの凄まじさが幾度も語られる月浦水守ですが、実際に彼女が喋り彼女が動くとそれだけで物語の焦点が彼女に集中してしまって目が離せなくなるんですよね。何をしでかすかわからない、何を考えているかわからない、という未知というところも魅力的だったのでしょうけれど。なにより、穂澄がなんだかんだと嫌悪丸出しにしながら全然無視できずにいるんだから。
まあでも、本当に何を考えているかわからない、というわけではなく、穂澄に対してべた惚れなのはあからさまなくらいでしたけれど。
これ、五股されて失恋した、という穂澄のトラウマ話、まず事実とは食い違ってるんでしょうね。穂澄の証言以外で月浦がそれらしいことをしてたという話が全然出てきませんもの。当時を知る関係者でもある羊子ですら、五股を責める様子はありませんでしたもんね。月浦に対して穂澄以上に嫌悪感を丸出しにしながらも。
何があったか詳しくは語られていませんけれど、余程拙いことになってたんですかね。穂澄が月浦に狂って散々やらかしてたみたいですし。もう月浦自身にも止められないことになっていたのだとしたら、距離を置くという選択肢を取る、あるいは強制的に取らせるだけの力を持っている人がマネージャーだったり姉だったりする人あたりにはありそうですし。
穂澄の七瀬への献身的なまでのお世話って、役者へのリスペクトにとどまらず彼自身の性格もあるでしょうからね。ちょっと偏執的なところすらある献身性は、のめり込むと、或いは恋愛に絡むとボーダーラインを越えやすい性質なのかもしれません。本質的にヤベえやつ、という可能性も結構ありそう。まあ、今の彼はそれを強く自覚し戒めているのですが。そうなるように誘導されたんだろうなあ。

七瀬さんの演技ベタの原因、わりとサクッと突き止められて克服への道がつけられてしまいましたけれど、本筋は七瀬さんの初恋の自覚と、恋敵達との真っ向勝負への宣戦布告、ということになるんでしょうか。七瀬さんがどうして演技下手だったのか、についての考察はけっこうあれ彼女の闇に繋がっている気がしたのですが。
いやでも、七瀬さんのあのタフさは、闇を闇として惑わされないんだろうなあ。月浦にプレッシャーにもまるで動じず応えず上から笑って宥めてるくらいですし、何気に尋常じゃない大物感が備わっている。酒に酔って気が大きくなっている、というんじゃなくてw
シラフでも、ある意味月浦水守が相手にされなかった、という面すらあったわけですしねえ。そりゃ月浦もモリモリ好敵手感強めますわ。それでいて、本気で仲良いという関係性も結構好きかも。月浦って言動が陰湿なタイプに寄っていると思うのですけれど(それでいて根っこはカラッとしている気もしますが)、七瀬さんってそういう彼女の湿度を諸共しないどころか乾燥させちゃうキャラクターなんだろうなあ、あれ。ヒツジちゃんは逆にさらに湿度に潤いを与えてしまうタイプに思える。おかげで月浦、常にツヤツヤしてそう、ヒツジちゃん相手だとw

なんか人間関係なにも決着していないけれど、ある意味スタートラインが成立して何となく話もまとまった感あるので、もしかしたらこれで完結なんだろうか。
続くと言えば続きそうだし、終わると言えば終わってもおかしくないような、まあ何となく一区切りついた感じのある終わり方でした。




転生魔王の大誤算 3 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート ★★★☆   



【転生魔王の大誤算 3 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート】  あわむら赤光/kakao GA文庫

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ケンゴー陛下と結婚パーティーに同行するのは、どの魔将だ!?

人畜無害なヘタレチキン高校生、うっかり魔界の名君に!?
誤算続きで予期せぬ名声を得まくって、魔族全軍から心酔される最強魔王爆誕!
大人気シリーズ第3弾は、【嫉妬】のレヴィ山の真なる力が明らかに……?
魔王の自覚に目覚め始め、魔将たちとの絆がさらに深まってきたケンゴー。
占領した王都の再建を待つ間、しばしの休息を兼ねてレヴィ山の妹の祝賀パーティーに赴くことに。

「で、誰を同伴者に選ぶんです?」
女性同伴がマナーとされる中、ルシ子、マモ代、アス美、さらにはベル乃までもがケンゴーの『正妻』役を名乗り出て一触即発の事態に!
一方ケンゴーを迎えるアザゼル男爵領では魔界の四大実力者に数えられる大物アザールが魔王に認められたいあまり、極上の接待を用意していた。
だが、それがケンゴーの逆鱗に触れる大誤算で――!
“愛する”部下を守る“理想”の魔王の爽快サクセスストーリー第3弾!!

今回はほぼレヴィ山くんが主人公と言って良かったんじゃないだろうか。
まるっきりチャラ男で軽薄そうな態度とは裏腹に、レヴィ山ってマジでイイ男なんですよね。真面目ですし義理堅いですし気配り上手ですし情に厚いし。そもそも、今のチャラい態度もどうしてそうなったのか、どうしてそうしているのかを知ってしまうと彼の人間的な魅力に繋がってくるので、その軽薄さがなんとも愛おしくなってくる。
というか、彼の人生愛される事とそれを理不尽に喪うことの繰り返しで、よく人間性が歪まなかったよなあ、と思えるほどの山あり谷ありなんですよね。これだけの体験をしながら、今のようなレヴィ山になっている事自体が彼の強さを示しているようじゃないですか。
でなかったら、どこかで憎しみや恨みに囚われますよ。どこかで憤懣を抱え、世を嫉み、人を妬んでしまったでしょう。「嫉妬」を司りながら、レヴィ山の嫉妬ってネガティブな側面をあまり持たない。どちらかというと、それは憧れに近いもののように見える。自分にはないもの、持ち得ないものに凄いなあと憧れ、尊敬し、自分もそう在りたいと願う。ちょっと健全なくらいじゃなかろうか。リスペクトが常にある。
その分、それに見合わない詰まらない相手には一顧だにもしない所もあるんでしょうけれど。
彼は常に望まぬ立場を得てきました。今のレヴィアタン家の当主になったのも決して望んでの事ではなく、また魔将としてケンゴーに仕える事になったのも渋々の事でした。でも、彼はそこで掛け替えのないものを与えて貰うのである。
だからだろう、レヴィ山は一際家族や身内への愛情が深いし、実母と引き離され自分を愛してくれた兄たちと死別した事で大切なものがいつ喪われてもおかしくない儚いものがという事を身にしみて実感している。実の息子でない自分を、義母が自分の本当の息子たちを喪いながらもなお立ててくれる事を心から尊敬し、多分尊敬する以上に敬愛してるんじゃないだろうか。そんな義母に倣ってる所も見受けられるし。
そんなレヴィ山ですから、ケンゴーへの過剰なくらいの評価や称賛も実のところ決して的外れだったり誤解や勘違いでもないんですよね。ケンゴー自身は過剰評価されて変に勘違いされてると思ってるみたいですけれど、むしろケンゴー自身が気づいていない所もちゃんと見てる感じですし、ケンゴー自身が評価していない所を正しく認めているとも言える。ケンゴーが戦いを好いていないのもちゃんと知っているし、ケンゴーが思っているよりもずっとケンゴーの事ちゃんと理解してるんじゃなかろうか。
だから、ケンゴーが変に繕って魔王スタイル維持してなくても、レヴィ山の敬愛は何も変わらないんじゃないのかな、と確信して思えるようなレヴィ山くんの回でした。
レヴィ山が一人で抱え込んで我慢しようとした事を、ケンゴーが自分の戦争嫌いを飲み込んで、レヴィ山兄妹を苦しめるやつらは絶対許さん、と勇気振り絞ってレヴィ山への愛情を示してくれた時点で、レヴィ山の忠誠度はもうとどまる所を知らずでしょう。あれはレヴィ山でなくても、惚れる魔王様の御姿でしたし。
あの場面で、ケンゴーと同じノリ、ではないんだけど、ウチの身内になにさらしてくれとんじゃー! と、ばかりに他の七魔将たち全員がやる気みなぎらせて喧嘩売りにいったあたりも大好きなんですよね。
七魔将たち、こいつらもなんだかんだと仲いいなー、と。ちゃんと身内認定なんですよね。同じ上司に仕える同僚ってクールな関係じゃなく、魔王様の寵愛を奪い合うライバルでもなく、魔王様を頂点とした悪ガキ集団、みたいな感じで。一応、魔将ってからには大貴族で大将軍であるはずなんだけど、ケンゴーと魔将たち七人で身内で友達で、打ち解けた家族みたいな雰囲気にいつの間にかなってたんだなあ。
そう考えると、あのダサいレヴィ山とかルシ子というあだ名も、立場とか家柄とかいと高き名前とかうっちゃって、身内同士の中で呼び合う特別な関係の証拠、みたいなもんなんですよね。レヴィ山の妹のシトレンシアが、最後にあだ名つけてもらうシーンで、思わずなるほどと納得してしまいました。

色々と怪しげに暗躍する黒幕の様子が垣間見えてきましたけれど、それ以上に魔王と七魔将たちの関係が勘違いとか思い込みで出来た虚飾の関係じゃなくて、何だかんだと心通じ合った仲間たちである事がわかってきて、敵がどうであろうと心強い限りじゃないですか。うむ、面白くなってきた。




やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 3 ★★★★   



【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 3】 ふか田さめたろう/ふーみ GA文庫

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小雪の思いも寄らないキスに、大いに動揺する直哉だが、そのことを小雪は全く覚えていない様子。素直になりつつある小雪の無自覚な触れ合いに、直哉は今までのような調子を出せなくなってしまう。
そんなとき、直哉と小雪、ふたつの家族で一緒に旅行に出かけることになる。
不甲斐なさを払拭するため、旅行中の特別な計画を立てる直哉。首尾よく計画通りに進み、小雪との仲もより深まっていくのだが、思いがけない出来事によって、ふたりの関係に転機が訪れる――
「好き」同士が織りなす、すれ違いゼロの甘々ラブコメディ、第3弾!

だだ甘すぎやしませんかーーっ!? いやもう、前巻から付き合っていないにも関わらずイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ、ひたすらイチャイチャしかしてなかったような気がするのですけれど、以前にも増してイチャイチャイチャイチャイチャイチャ。
これでまだ付き合っていないんですよ? 正式に付き合ってないってだけで実質付き合っている以外ないのですけれど。事実婚ならぬ事実恋人なのですけど。
直哉の方からはもう告白しているので、あとは小雪のほうが返事をくれればOKという状態にも関わらず、好きが一杯一杯になりすぎててこれ以上好きになると死んでしまいかねないので告白を保留しているというような状態、ってどんな状態だよ!
もうあとはもっと好きになるしかないような状態にも関わらず、ここで溜めをつくってしまうと余計に大変なことになりそうなのですが、辛うじて耐性というか慣れが出てくるという勘定なのだろうか。
しまいには、直哉の方にも事故でのキスをきっかけに小雪と同じ症状が発症してしまい、小雪が好きすぎてまともに顔も見れなくなってしまう、というオーバーフロー状態に。あれだけイケイケドンドンでぐいぐい行ってたくせにこの男案外キャパ小せえなあ!!
おまけに友人たちからアドバイスを受けた小雪が、逆にぐいぐいと意識的にセクシーアピールしだした上に無意識でもぐいぐい攻め立てはじめて、いつもと逆に直哉のほうがぐいぐい来られてあたふたするという逆転状態に。
動転しまくる直哉の様子は、普段の隙なく余裕で逃げ道潰して詰めてくる姿と裏腹で、これはこれで可愛げあるよねえ、という有様に。小雪さんの変な性癖が目覚めなければいいのですけれど、これ。
ともあれグイグイ行くついでに、今度はこっちから告白し返してやるんだから! と、なぜか告白する相手当人に宣言布告する小雪さん。それもうその布告自体が告白になってやしませんかね!? しかし、二人の間では「告白する」という行為はどうやら必定のもののようで。気持ち自体はお互いに好きというのはもう確かめあっているようなものなので、あとは儀式として告白することでやっと次のステップに進むのだ、という共通認識でいるということなのだろう。
まだ付き合っていないにも関わらず、ここまでだだ甘状態な二人が本当に付き合いだしてしまうと、これタガが外れてしまうんじゃないか、となんだか心配になってくるんだけれど大丈夫なんだろうか、これ。これ以上イチャイチャされてしまうと日常生活に支障が出てこないだろうか、周りにハザード的な悪影響が出やしないだろうか。
まあ今から心配しても仕方ないのだけれど。

ついでに、海外に出てた直哉の両親が返ってきて、これで完全に小雪と直哉の両方の両親のお墨付きの関係になってしまいました。しかしこの直哉パパ、完全に息子の上位互換なのか……いやこれもう化け物じゃね!?
現代に蘇ったシャーロック・ホームズかなにかか。推理する必要もなく、見れば全てがわかってしまう、というこれもう読心というレベルじゃないですよね。心を読む以上にその人の周りで起こっている状況から展開からすべて見えちゃってますよね。もはや千里眼か何かなんじゃないだろうか。
そして、その眼力を惜しみなくつかって、目につく人のトラブルを片っ端から解決しまくるという世界を股にかける屈指のトラブルメーカーっぷりたるや……。
なんか、小雪のパパが偶然直哉パパと巡り合った挙げ句にワトソンくんのポディションに収まっちゃってるんですが。ひっきりなしにトラブルや事件、大騒動に巻き込まれて今回絶叫絶叫を繰り返している小雪パパ、ご愁傷さまである。でもなんか良いコンビになっちゃってるんですよね。
まさかここに来て、直哉パパ、生涯の相棒を見つけてしまったのではないだろうか。
直哉パパと息子の会話が、完全に過程すっ飛ばして顔を合わせた瞬間結論だけで会話してるの、普通に怖いわw 動じないママが大物すぎるw
そしてこんな直哉にベタぼれで、心も行動も何もかも読まれきっているのに好き好き大好きで染め上がってる小雪さん、ある意味踏み外してしまっているのかもしれない、これw

エピローグで、次回小雪の婚約者が登場するという情報が出てきたのですけれど、速攻登場人物全員が婚約者くんが直哉に速攻ぼろくそに処刑される前提でえらいこっちゃー! と騒いでるの、草生えますわw 
それはそれでほんと、楽しそうなのですけど。


泥酔彼女 「弟クンだいしゅきー」「帰れ」 ★★★☆   



【泥酔彼女 「弟クンだいしゅきー」「帰れ」】  串木野たんぼ/加川壱互 GA文庫

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聖夜に近所の年上美人と二人で過ごすことになった。全男子にとって、夢のようなシチュだと思う。相手が泥酔一歩手前でさえなければだけど。
「弟ク~ン、おつまみま~だ~?」
ありえないほど顔がいいのに、それが霞むレベルのお気楽マイペースなダメ女・和泉七瀬。聖夜に俺と残念なかたちで出会ったこの人は、勝手に家に来るしやたら酒好きだし隙あらば弄り倒してくるし、とにかくひたすら面倒くさい。いくら顔がよくても、距離感バグってるタイプの近所のお姉さんって普通に悪夢だろ。
無自覚&無頓着。顔がいいくせに絶妙にガードが緩いハタチのダメ女に男子高校生が付き合わされまくる、酒ヒロイン特化型宅飲みラブコメ!

ほろ酔い美人ってイイですよね。ほんのりと上気した顔色とトロンとした眼差しでほわほわとしている姿の色気と来たら。
これが、酔いが進んで泥酔まで行くと酷いことになります。喚く騒ぐ大声で奇声を発する、軟体生物みたくグデグデに横たわり、酒臭い息を吐き散らしながら理不尽な命令を飛ばしまくる。絡む絡むウザ絡みで鬱陶しく、ピークをすぎると汚物を撒き散らしだす。
飲んでない人からすると災難以外の何者でもないのが、酔っぱらいてなもんである。美人だろうがなんだろうが、酔いどれはご勘弁、という主人公の気持ちもわからなくはない。
わからなくはないのだけれど、この弟くん、酔っぱらいの相手がウマすぎるというか胴が入りすぎているというか、酔っぱらいに対して至れり尽くせり過ぎやしませんかね!?
同じく酔いどれの姉に鍛え上げられてしまったとはいえ、こんなん酔っぱらいにとっては居心地良すぎでしょう。七瀬さんが入り浸ってしまうのもちょっと理解できてしまう。酒飲みと言えど、酒が飲めればいいって人ばかりじゃないですからね。どうせなら、気持ちよく飲みたい。酒の品質も然ることながら、やはりシチュエーションというのは大事で、それ以上に飲酒環境だって大事なのである。
一緒に飲んでくれるわけじゃないけれど、手厚くお世話してくれてツマミまで作ってくれて文句を言いながらもいつだって最善のタイミングで欲しい物を寄越してくれて、して欲しい事をしてくれる。
話し相手にもなってくれるし、ウザがられながらも絡んでも絡んでも相手してくれる。嫌がってるけど、それもエッセンス。楽しいお酒だ。
にしても、気を許すにも程がある無防備っぷりですが。
幾ら酔っ払いに対しての忌避感があると言っても年頃の青少年が、無防備に酔っ払って転がっている美人に対してピクリとも食指が動かないというのは若干どうか、とも思うのだけれどこの瀬戸穂澄という男も少々オカシイたぐいの人間であるように見える。

酔っぱらいとそれに翻弄される少年の日常ラブコメに見える本作だけれど、その実は役者の卵であるヒロインたちと脚本家の卵である主人公のクリエイターストーリーでもある。
彼らは年頃の男女という以前に、演者でありクリエイターであるという生き様に囚われてる狂気の沼に片足をツッコンでしまっている人間たちだ。所々でその行動原理、判断、決断に常人とは異なる狂気が混じる。まともな顔をしているが、穂澄はその筆頭であろう。こいつは大概他人を見る基準がどこかオカシイ気がする。斜に構えているけれど、他人に対する判断基準が純粋なんですよね。純情であると言ってすらいいかもしれない。純情な理想を他者に当てはめている。だから、七瀬がどれだけ美人でも、泥酔してグダグダになっている姿を見せられるとピクリとも魅力を見いだせなくなってしまう。ところが、彼女の中に役者としての気概と根性、才能の煌めきと心意気を見出した途端、彼の思い描く役者の理想像の一端に彼女が足を掛けている事に気がつくと、その一挙手一投足が気になって仕方なくなってくる。
異性としての七瀬への関心と、役者としての七瀬への関心が入り混じっていてどうにもおかしい事になってるんですね。そして、彼のそういう傾向というのはどうやら以前からのものらしく、同級生で一番身近な友人であり役者としてプロからも目をつけ始められている野原羊子へのスタンスもそうなんだけど、前カノである人物に対してもこれ、ただカノジョのタチが悪かったというだけじゃない穂澄の方にも原因があったんじゃ、と思うところがあるんですよね。
月浦水守という娘の関しては、作中でも屈指の狂人、役者としての沼に頭までずっぽりとはまり込んでいる類のやばい人という認識はあるのですけれど、単に役者としての肥やしにするためだけに穂澄とああいう関わり合い方をしたとは思えないんですよねえ。彼女の狂気と化学反応を起こすだけの何かが、ヤバいものが穂澄の方にもあったんじゃないかなあ、と。

月浦水守と言えば中盤までえらい意味深というか、幾度も話題のあがる強烈な存在感を示しながらも微妙に視線が向かない、焦点が合わない扱いに首を傾げていて、実は七瀬さんがあの今躍進中の女優月浦の正体なのでは!? と疑ってもいたんですよ。年齢詐称とか、芸能界あるあるですし。
【アイドランク】という漫画など、10代の美少女を詐称した本当は成人のアイドルたちがこっそり酒飲みまくる、という酔っぱらい漫画の前例もあったことですし。
でも、本当は既に一流の女優、というのじゃなく、才能はあれど現在下積み中の叩き上げの役者、という七瀬さんの立ち位置はいいですねえ、そそるものがあります。
まだ脚本家の卵である穂澄と、二人三脚で女優としての殻を破って輝いていく、というシチュエーションは大変好みです。彼女の役者としての致命的な欠点も含めて。今井雄太郎かよ!

そしてラストの大爆弾。ヒツジちゃんも現場に居合わせさせるとか、修羅場への殺意が高すぎるw
でもシラフだとえらいことになりそうなシチュでも、酔っぱらいが介在すると果たしてどうなるのか。常識も消し飛び空気も読まない酔っぱらいは、狂気をも呑めるのか。
ある意味、舞台が整ったとも言える第1巻。だからこそ、大きく物語として動き出しそうな2巻の動向には期待してしまいます。


僕の軍師は、スカートが短すぎる~サラリーマンとJK、ひとつ屋根の下 ★★★   



【僕の軍師は、スカートが短すぎる~サラリーマンとJK、ひとつ屋根の下】  七条 剛/パルプピロシ GA文庫

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「おにーさん、助けてくれたお礼に、定時帰り、させてあげよっか」
ブラック企業に勤める史樹。終電帰りのある日、家の前に少女がうずくまっていた。その少女・穂春は、助けてもらったお礼として、史樹の抱える仕事上のトラブルをたちどころに解決してしまう。
どうしても定時帰りしたい史樹と、身を寄せるところを探していた穂春。史樹は衣食住を提供する代わりに、穂春のアドバイスに頼ることにする。
「人は先に親切にされると、お返ししなきゃって思う生き物なんだよ」
二人の同居生活が始まると同時に、史樹の社畜生活は一変するのだった。
サラリーマンとJK の、温かくも奇妙な同居生活ラブコメディ、開幕。
タイトルからすると、生足を見せびらかして誘惑してくる小悪魔的な女子高生がヒロインだと連想してしまいそうになりますけど、むしろこの穂春、そういう女の子を強調するようなアイドルっぽい可愛い衣装は苦手……というよりも自分には似合わないというコンプレックスみたいなものを抱えてるっぽいので、むしろ嫌がってます。
でも、それをわざわざスカートが短い、なんてタイトル引っ張ってくるあたり、ヒロインである彼女が抱えている問題の最重要案件なのかもしれません。
彼女が自分からアイドルをプロデュースしてデビューさせた事を含めて、ずっと引きずっていた家庭問題に関しては、ラストで主人公の北条くんがさらっと解決してしまうのですが。
こうしてみると、北条はけっこう行動力あるんですよね。ぼんやりしているようで、穂春が拘っている部分をちゃんと察して調べ上げ、彼女の父親と連絡を取って穂春のなかで雁字搦めになっていたものを解きほぐした上で解決策を提示する、なんて真似をするのですから。
ただ、若干的外れなところがあり、無自覚であるだけで。穂春が元々求めていた事は、喪われてしまった家族の想い出のヨスガを取り戻すためだったのが、想い出じゃなく新しい家族の温もりと幸せを図らずして穂春に与えてしまったわけで。穂春としては、なんかもう心理的にひっくり返されちゃったんだな、これ。
父親を通じて習い親しんだ心理学を駆使して、デビューからアイドルをプロデュースし、また北条の勤務環境を改善するなど、人の心の動きを読み誘導することに長けた「軍師」としての手腕を振るう穂春。だから、他人の心理を読み取るなんて事はお手の物、のはずなんだけど、案外と自分自身の心理は自覚できないし、家族である父親に関しても一方的な感情が邪魔をして冷静な判断が出来ていなかった、というあたりを見ると人の心を手玉に取り操るような魔女とは程遠い、未熟な少女である事が伺えるんですよね。
そして、頼まれたら断れないという他人からすると都合の良い人間であるはずのおにーさん、北条についても穂春はどうにも思う通りには動かせていないんですよね。いや、ちゃんと口で頼んでお願いすればホイホイというとおりに動いてはくれるのですが、心理を誘導したり気持ちや心を思う方に動かしたりという事になるとどうしても空振りするというか手応えがなく躱されてしまうというか。
お陰で北条相手には、穂春もなんだかモヤモヤしたりヤキモキして気を揉むことに。
そのあたりが、彼女の可愛げにもなっていると思うのですけれど、北条の方が完全に妹扱いで女の子として見ていない証明にもなっちゃってるんですよね。
その北条ですけど、個人的にはあまり好きではないタイプ。頼まれたら断れない、というのを自覚していながらちょっと度が過ぎた引き受け方してるんですよね。それ、好きでやってるなら文句ないのですけど、妹を引き取るという明確な目的があるにも関わらず、どうでもいい頼まれごとの方を流されるように優先して、妹を引き取る条件の方を破綻させてしまっているのは本末転倒もいいところ。
主体性がないのかと思えば、穂春の件では積極的に自分から動いているし、穂春の言われた通りにやっているとはいえ、会社内でも結構派手な立ち回りをしてるんですよね。いや、それだけ自分から動けるなら、なんであんなに流されて無茶振りも悪意ある押し付けもホイホイと引き受けるのか。そういう状態から、穂春と関わってちょっと変わった、というのもあるのかもしれないですけど、どうにもキャラがチグハグというか、よくわからないボンヤリと印象の定まらない人だなあ、という感じでした。
嫌がらせしてくる相手が、本当にしょうもない小物だったのもなんともはや。
しかしこれ、わかりやすい会社内の障害は排除されちゃいましたし、ここから話どう広げるんだろう。軍師としての話よりも、穂春自身をプロデュースみたいな展開になっていきそうに思えるのだが。

七条 剛作品感想

竜歌の巫女と二度目の誓い 2.薬を探す子供 ★★★☆   



【竜歌の巫女と二度目の誓い 2.薬を探す子供】  アマサカナタ/KeG GA文庫

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「初めまして。僕はこの館のかかりつけ医です。彼女は僕のお手伝い」
あの誓いから1か月。平穏な日々を過ごすルゼとギルバートだったが、ドミニクと名乗る青年とラティナという名の女性の訪れによって、静かな時間は急変する……。
「竜の遺骸が、移送中に盗まれた」
それは竜が関わる不穏な報せと、その件に関する調査依頼――事件を追っていく中、ルゼとギルバートは、十二年前に交わした怪我を負った一人の少年と小さな竜の叶うことのない願いから始まった、悲しい誓いにたどり着き……
「ボクの足が治ったなら……お前の背に、ボクを乗せてくれるかい? 」
大切な誓いを巡る物語、第二弾。

お互いをこれ以上無く想いあったからこそ、より深く結ばれるために交わした「約束」が、その想いの深さ故に果たされなくなった時に「呪い」に変わる。
これは前回のルゼとギルバートの話と全く同じ構図になる。約束したらあかんのかい! と思わず思ってしまいそうになるけれど、呪いとなった約束こそが途切れてしまった絆を辛うじて繋ぎ止めていたからこそ、もう一度新しい誓いを交わすことが出来たと思えば、呪いも転じて祝福になるのだろうか。
そもそも約束が誓わなければ、何もかもが潰えてしまった可能性もあるんですよね。とはいえ、それはルゼとギルバートの場合。果たして、ラティナとドミニクのケースではどうだったのか。12年もの離別は彼らに必要だったのか。ラティナが犯してしまった幾多の罪は、負うに足る罪だったのか。
ルゼとギルバートのケースはちょっと他の場合と比較するには重すぎるんですよね。こっちは本当にもうどうしようもない柵と罪業に塗れてしまっているだけに。
裏切り裏切られ殺し殺された関係。どちらも正しくどちらも罪深く、故にお互いをこの上なく強く想い合いながら、お互いに踏み込めない。それは人との繋がり方が不器用というのもあるのだろうけれど、それ以上に内包するシチュエーションが特殊すぎる側面もあるんですよね。
ルゼとギルが行き違ってしまうのも、それぞれに抱える相手に対する罪の意識が強いが故に、というのもあるんでしょうね。二人共自分にこそ罪がある、と思っているだけにどうしたって自分の方を蔑ろにして、相手の方を大事にしようとする。二人共がそうしたら、そりゃ行き違うよね。相手を大事にしようとしたら、相手は自身を思いっきり蔑ろにする。それはもう、自分自身を完全否定されるようなものだ。
そうして苛立つあまり八つ当たりしてしまえば、それもまた大事にスべき相手を傷つける行為で、自分のあり方の否定そのものになってしまうという追い打ちで。
ネガティブスパイラルだなあ。
これ、オズワルドが八面六臂の働きで間を取り持とうとしてくれなかったら、完全に行き詰まっていたんじゃないだろうか。そりゃ荒治療で余計に拗れてしまったけれど、一度お互い致命的な所まで踏み込んで酷い事にならないと自覚すらしなかっただろうし。
オズってはそこまであれこれ世話して手配りして間取り持とうとしてって、過保護もイイ所だと思うほどなんだけど、ルゼたちの関係はあまりにも重すぎるので、それくらいしてやっとこ、なのかもしれない。いやほんと、オズ様様である。働きすぎじゃないのか? 気を使いすぎてストレスマッハじゃないですか?

さて、今回の黒幕、というよりも悪役であるガーウィン。彼はそもそも、約束すら交わして貰えなかった存在なんですよね。誓いもなく、だからこそその想いは彼の中にのみ淀む方向性を喪った呪いとなってしまった。
ギルバートの場合は自分が手を下した、巫女を殺したからこそ、その罪の意識は自分自身へと向けられたけど、ガーウィンの場合は自分の想いを受け取っても貰えず行所もないまま淀み腐り、救えなかった事実は救わなかったものたちへの憎悪へと変換されてしまった。彼の呪いは、竜に、世に向けて解き放たれてしまった。
もし、ギルバートが巫女を裏切らなかったら。世界をこそ裏切り、その果てに巫女を喪ってしまっていたら。彼の想いはどこへと向かっていただろうか。自身に向けて渦巻く殺意が、果たしてどこに放たれていたのか。
ギルバート自身が思い描いたように、ガーウィンというのはもうひとりのギルバートのあったかもしれない可能性だったわけか。
ならば、たとえ呪いに変わろうとも繋がりである事は間違いなかった約束は、祝福に至るものだったのか。
罪の意識を抱えながら、それでも二人で先に進もうと二度目の誓いを結ぶことができたドミニクたちの姿を、ルゼとギルは指針と出来ればいいのですけれど。もう少しオズに楽させてあげてくださいホント。
さて、ドンキーの存在が不明であり不穏のまま今回の話はひとまず片付いたのですが、彼の正体相当怪しいよなあ。そもそも、いったい「いつ」から活動してるんだ、この男は。



ゴブリンスレイヤー 14 ★★★★   



【ゴブリンスレイヤー 14】  蝸牛くも/神奈月昇 GA文庫

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ゴブリンスレイヤーの様子がおかしいという――。そんななか、彼は一党に「冒険」を提案する。
「北の山の向こう。暗い夜の国」
かくして北方辺境に向かう一党。雪山の向こうには、蛮人の英雄譚の舞台、いつもと異なる異文化、言語、そして、この地を治める頭領の美しい奥方がいた。
彼の地の北方の海には幽鬼が潜み、船が戻ってこないという――。
彼らの話を聞いたゴブリンスレイヤーは頷く。
「やはり、彼の人々はゴブリンなぞに負けるわけがないのだ」
そして女神官も誇り高く告げる。
「冒険者に、任せてください! 」
蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー第14弾!
ゴブスレさんが、あのゴブスレさんがテンションアゲアゲで浮かれてるーー!? 子供みたいにはしゃいでるーー!?
いや、流石にあからさまにキャラ変わっているわけじゃないのですけど、明らかに鉄兜の奥で目をキラキラさせて、北の地のはじめてみるものに目移りして、自重出来ずにあれこれと質問して回ってるんですよね。こんなゴブスレさんはじめて見た。
北の山の向こうの国は、入り江の民(ヴァーキング)たち戦士の国。それは少年たちが憧れる英雄譚の舞台となった地だ。
あのゴブスレさんが童心に帰る、ということ自体がなんとも心擽られる思いである。受付嬢さんが思わず抱き締めたくなるほど愛しさを感じてしまった、というのも凄くわかるんですよね。
この北方辺境の視察という「冒険」を請け負ったのがほかならぬゴブスレさん当人というのも感慨深い。今回の依頼には本当にひとかけらもゴブリン関係なかったですもの。それを「冒険」に行こう、と仲間たちから誘われていくのではなく、ゴブスレさんの方から誘う。行く地はかつて子供の頃に憧れ、いや今もなお憧憬の中にある「物語」の大地。
これ、誘われる方の仲間たちも嬉しかっただろうなあ。にべもないゴブスレさんに、何度も冒険に行くぞと無理やり引っ張り出していた彼らである。それが向こうからだもんなあ。そりゃあ、寒さ全然ダメどころか死活問題のリザードマンな蜥蜴僧侶も頑張ってついてきますわー。
今回の彼は寒さもあって本当に動きが制限されてなるべくじっとしていましたけれど、それが逆にのっそりと寝蔵に横たわる「竜」の風情を醸し出しはじめていて、逆にちょっと大物感すら感じられたのが面白かった。
さても、辿り着いた北方辺境は野蛮な海の蛮族たちが支配する薄暗き国、というのは中央からの偏見の目なんですよね。そこは異なる文化の世界。野蛮とは違う、その土地に合ったルールによって成り立つ世界なのである。初手から、嫁取りのために戦をするという風習に遭遇し面食らう女神官ちゃん。そのあとも、南の常識では仰天させられる様々な風習習慣、神の解釈などに彼女は目を白黒させることになるのですが、驚きながらも素直にそういう文化もあるのかー、と受け入れる彼女は神の使徒としてもおおらかで気持ちの良い器の大きい子なんですよね。
その純真さ、直向きさは間違いなく人を引きつける魅力である。それは文化風習の異なる文化圏の人間にも相通じる人としての魅力。盤上遊戯を通じて、強い弱いじゃなくて、この娘に構ってやらねば、とついつい思わせるその人柄で、信頼を得る……なんて野暮な言葉じゃなくてもっとシンプルに、ヴァーキングの巌のような男たち、そんな男連中を尻に敷く女衆と仲良くなり可愛がられ、輪の中に受け入れられる女神官ちゃん。なんかこう、おっきくなったよなあ。妖精弓手が思わず目を細めるほどに。
そんな北方の地で出会ったヴァーキングたちの頭領とその奥方、この人たちがまた気持ちの良い魅力的な人物で、というか頭領が元は南の王国の騎士というのがまた面白いなあ。それは政治の結果であると同時に甘酸っぱい恋物語の結果でもあり、リアルタイム英雄譚なんですよねえ。
王国の王様たち、結構したたかに政略を進めているんだなあ、と感心した次第。それも、双方がWin-Winになるような形で進めているのがまた素敵。
ゴブスレさんたちを派遣したのもその一貫。冒険者という職業が存在せず、ならず者のたぐいとしか認識されていない北方の地に、ゴブリンスレイヤー一行というメンバー構成見てもあまりにも特殊で、同時にこれ以上無く「冒険者也」というパーティーを派遣することで、北方の地に冒険者という存在を印象づかせようとする試み。何よりゴブスレパーティーをあり方、心意気を見てのチョイスというのがいいんですよね。
いや、このシリーズに出てくる主だった冒険者パーティーって、古参から新参までどこに出しても恥ずかしくない気持ちの良い連中ばかりなので、ぶっちゃけどこを派遣しても悪いことにはならなかったと思いますけど。
それでも。
ゴブリンの船団とヴァーキングの船団が繰り広げる海戦の中に乱入してきた海の怪物を前に、モンスター退治は冒険者のお仕事、そしてこれこそが「冒険也」と勇躍飛び込んでいくゴブスレさんたちの勇姿は素晴らしかった。
合戦に挑む戦士たちの勇気たちとはまた異なる、冒険者たちの勇気。個を尊び同時に一つの生き物のように連携する以心伝心の冒険者の戦い方。そんな心映えが、背中が、闘志が、北方の戦士たちの心をも震わせ奮い立たせる。
自分達とは異なれど、共に戦うを誉れと思えるものたち。まさに「冒険者」なる存在を、北方の地に刻んでいく姿は、カッコいいという以上に胸が熱くなるものがありました。
後にこの地を訪れるようになるだろう後続の冒険者たちと、この地に住まう戦士たちの間に育まれるもの。その最初にして一番大事な芽を、彼らはこの大地と住まう人々の心に植え付けたのでした。
なんか今回は全体的に心をキューッと奮わせてくれるものがありました。異なる文化の国で、お互い心から認め合い尊敬しあい共に戦って笑って別れる物語ほど気持ちの良いものはありません。
そして「家」に帰り着いて、待っていてくれる人にただいまと応えて思い出話とお土産とともに振り返るのだ。
「ああ、楽しかった」と。
今回はその全部がギューッと目一杯詰まっていた、まさに「冒険!」でありました。


天才王子の赤字国家再生術 9 ~そうだ、売国しよう ★★★★   



【天才王子の赤字国家再生術 9 ~そうだ、売国しよう】  鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

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「よし、裏切っちまおう」
選聖侯アガタの招待を受けウルベス連合を訪問したウェイン。そこでは複数の都市が連合内の主導権を巡って勢力争いに明け暮れていた。
アガタから国内統一への助力を依頼されるも、その裏に策謀の気配を感じたウェインは、表向きは協調しながら独自に連合内への介入を開始する。それは連合内のしきたりや因習、パワーバランスを崩し、将来に禍根を残しかねない策だったが――
「でも俺は全く困らないから ! 」
ノリノリでコトを進めるウェイン。一方で連合内の波紋は予想外に拡大し、ニニムまでも巻き込む事態に!?
大人気の弱小国家運営譚、第九弾!
ウェイン王子、お見合い斡旋仲人オジさんと化す!
いやなにやってんだ、と言いたくなるけど、これ真っ当な勢力間の際どいパワーゲームが繰り広げられている中で三面指しで盤面しっちゃかめっちゃかに蹂躙しているの図なんですよね。
ともあれ、選聖侯アガタの協力を得るために彼の領地であるウルベス連合の政争に助っ人として介入する事になったウェインですが、この巻における肝ってウルベス連合云々じゃなくて、ここでのウェインの行動、或いは事件の推移が将来起こる大戦の過程や結果を示唆している、という話が冒頭から置かれたことである。
話としては徹底してウルベス連合という国の旧弊的な柵と閉塞感、自分達ではどうにも出来ない雁字搦めの凝り固まってしまった関係を、ウェインという外部からの刺激物を通り越した劇物、毒物のたぐいによって引っ掻き回されたことで、ようやく突破口が見えてきた、というこの国のお話になっている。将来を暗示するような露骨なエピソードや情報は描かれていない。
ただ、後世にウェインの妹であるフラーニャがこの連合国で起こった出来事が、のちの大戦でのウェインたちの結末を暗示していた、と述懐しているとの記述を見るに、直接は関係ないけれど過去から続く旧弊に捕らわれて身動きが取れなくなった柵を、暗黙の了解を、破壊してしまうにはどうするべきだったのか。とか、一時連合所属国の首班の二人が駆け落ちして行方不明になった、という展開とか。色々と先々に起こりそうな顛末の中でウェインとニニムに当てはめて起こりそうな出来事、というのを想像してしまうのでした。
これまで言葉を濁してきた、ニニムたちフラム人がどうして被差別民になったのか。彼らがフラム人が民族結集して作った国がどうなったのか。そういったかなり重要そうな歴史の話も出てきたわけですしね。
それに、ここにきてウェインの動きがやたら怪しくなってきたんですよね。フラーニャが幾度かの外交で成果をあげ、諸外国でも名望を高めつつあるのにともなって、フラーニャ閥というものが生まれ始め、ウェインではなくフラーニャの方を女王として擁立しようという動きが出はじめているわけですが、これまでもウェインはそれを不自然なくらい「黙認」という形で見逃していたのが、さらに暗に後押しすらしているような素振りを見せ始めているんですよね。
元々、売国しようぜ、なんて言ってたように国民に対して責任は感じて放り投げようとはしていなかったものの、国王という立場に拘りは見せていなかったウェイン王子。むしろ、ナトラ国の王というのは彼にとって足枷になりかねない、とでも思っているのだろうか。
彼の本当の目的がどこにあるか、によるのだろうけれど。
その目的というのも、ほぼ「ニニム」に絞られるだろう事は想像できるんですけどね。
そう言えば、ウェイン王子が「いい人」「優しい人」と思われているという話にちょっとびっくりしてしまったのですが、彼の公的な言動を見ていたら確かに彼のそれは客観的に見て善良公平な賢王(まだ王子だけど)と見られても不思議ではないんですよね。直接対面した人は彼の空恐ろしさを実感するだろうし、決していい人などではない事は理解しているんだろうけど。
でも、彼が売国上等とまで言ってのけるほど、ある種他人に対してどうでもよい、という考えを根底に持っているようなタイプの人間だとわかっている人はどこまでいるのか。
いくらやばくても、王として国を背負って立つ覚悟と責任を持った人物だ、と捉えられているのはおかしくないですしね。実際、ナトラの国民に対して責任を投げ出していないし。
身内に対しては優しいのは間違いないんでしょうけどね。その身内認定がどの範囲までなのか。
今回、ちょっとニニムの身柄に危険が迫っただけでも国一つ潰しかねないラインを綱渡りしたように、ニニムが関わると途端に狂気の魔王化するウェイン王子。こいつって、もしシリーズ開始以前にニニムを喪ってたりしたら、普通によくRPGゲームとか長編大作とかで世界を破滅に追いやるラスボスとして登場してきそうなキャラなんだよなあ。
そんなラスボス系主人公が、果たして一体何を目論んでいるのか。むしろ、このシリーズここからが本番と考えていいのかも知れない。


貴サークルは"救世主"に配置されました ★★★☆   



【貴サークルは"救世主"に配置されました】  小田一文/肋兵器 GA文庫

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GA文庫大賞《金賞》受賞作
100部売れなきゃ世界が滅ぶ!? 同人誌に懸ける青春ファンタジー
「ずっと……ずっと、あなたを探していました、世界を救うために」
自分の同人誌によって、魔王の復活が防がれる。突如現れた女子高生ヒメにそう諭された同人作家のナイト。
ヒメの甲斐甲斐しい協力のもと、新刊制作に取り組むのだが……
「えっ、二年間で六部だけ……?」
「どうして『ふゆこみ』に当選した旨を報告していないのですか?」
「一日三枚イラストを描いて下さい」
「生きた線が引けていません」
即売会で百部完売しないと世界が滅ぶっていうけど、この娘厳しくない!?
「自信を持って下さい。きっと売れます」
同人誌にかける青春ファンタジー、制作開始!

これ、誰にとっての青春かというと、ナイトよりもヒメの方かもしんないね。
同人誌即売会で100部も同人誌を売らないと世界が滅ぶ、なんてフレーズを聞かされると、ついついコメディよりのラブコメで、その世界の危機というのもゆるい感じの話しなのかな、と思ってしまうのですがどうしてどうして。

ガチで人類滅亡じゃないですかー。

人類文明そのものが崩壊しちゃってるし、種の存続そのものがヤバいことになっちゃってるし。ガチのアポカリプスである。
それも予測ではなく確定未来。ヒロインのヒメが実際に何度も体験してきた正史であり、タイムリープによって何度も何度もやり直した末にそれでも変わらなかった未来、という当事者実体験済みの代物である。
いやこれが、なんで同人誌売るのと関係してるんだよ? と思うくらいのシリアスさである。
これでいきなりヒメが、同人誌100部完売してください、でないと世界滅びるから! と押しかけてくるトンチキならコメディ路線一直線なのですけど、ナイトを探して訪ねてきた時はヒメ自身も彼が世界を救うための重要な鍵となる人物であり、救世主なのだ、という事実は知っていても、彼がどのような役割を果たして世界を救うのかはわかってなかったんですよね。
彼女も最初は、ナイトがとてつもない力を秘めた勇者様的な救世主だと思っていたようですけれど。普通はそう思いますよね。強大な「人類の敵」を打ち破るのにはそれ以上に強力な力を持った存在の助けが、と考えるのは破壊と死が渦巻く戦場でずっと生きてきた人間にとっては当たり前の思考のたどり着く果てなのでしょう。
しかし、ようやく見つけた救世主には、何の力も秘められていなかった。
このあと、ヒメがナイトの住むアパートの隣に引っ越してきて、彼の同人誌づくりを手伝い始めるまでにはしばらく間がある。
同人誌なるものの存在すら知らず知識を持たなかった彼女が、それを調べるまで。自分が仲間からもらった最後の、「ナイトと彼の所属する星霜煌炎騎士団同盟が世界を救う。ナイトを支えることが貴女の役割」という預言を、ナイトが同人誌を作ることを支え守ることが世界を救うことに繋がるのだと解釈して、自分の使命を果たすために訪れるわけだけれど。
そんな解釈に至るまでにヒメの中にはどれだけの葛藤があっただろうか。そもそも、ナイトに何の力もないと解った時に絶望を感じなかったわけがないだろう。あれだけストーカーじみた事までして必死に脇目も振らずナイトの存在にたどり着き、彼のもとまで押し掛けてきた彼女である。それが素直に一端引き下がった、というのはそれだけ彼女も混乱しショックを受けていたとは考えられないだろうか。
ヒメがそれでも諦めず、自分が仲間から託された預言を必死で解釈し直してこじつけでも無理矢理にでも納得できる理屈をみつけるまで、決してすんなりいったとは思えない。
そもそも、売れっ子でもない即売会で一部も売れない事も少なくないなんて底辺同人作家の同人誌作りを手伝って、それに何の意味があるのか。同人誌、という存在自体を理解していなくて即席で知識を身に着けたことが逆に偏見を抱かなかった、というのもあるんだろうけれど、もうヒメに預言を疑うだけの余地が、余裕がなかった、とも言えるんですよね。
それだけ、彼女は絶望を繰り返してきた。世界の破滅を目の当たりにしてきた。人類が滅ぶ光景を目にしてきた。何度も何度も、大切な仲間たちが目の前で死んでいくのを、自分の腕の中で冷たくなっていくのを体験していた。
これが最後だと、本当に最期だと思い定めてきたタイムリープである。果たして、平和な時代を生きてきたナイトには想像もつかない感じ取ることもできない狂気が、不退転の覚悟が、彼女の中に蠢いていたとしても全然不思議ではないんですよね。
それ以上に、ヒメにとって預言を託して逝った仲間である、恐らく年齢としてはだいぶ下になるだろう妹みたいな娘であったクラリスという子の遺した言葉を、預言を、疑うなんて出来なかったのだろうけど。

100部、という部数はヒメやナイトの間から出た数字ではない。たまたま、仲の悪い同業者とのトラブルから偶然飛び出した条件だ。しかし、それを目標とすることで彼らは具体的に達成に向かって動き出すことになる。
それまでは、ヒメのナイトへのお世話、日常生活のサポートや同人誌制作のお手伝い、というのはどこか責任感とか義務感に後押しされたものであって、熱量のベクトルはあくまで世界を救うため、あの未来をもう見ないため、というベクトルに向かっていて、必ずしもナイト個人や同人誌というものに向いていたわけじゃないと思うんですよね。
でも、具体的な目標が定まってそれに向けて、プラス1名加わった二人だけのサークル「星霜煌炎騎士団同盟」が動き出したときから、ちょっとずつヒメの意識は変わってくるように見えるのだ。

これまで何度も何度も、彼女の言葉を信じるならば延べ数百年にもなるだろう長い長い時間、繰り返し繰り返し、「魔王」の送り出す正体不明の怪物と戦い続けてきた、戦うことが、破壊と死がいつも隣り合わせで日常だったヒメにとっての、もう思い出せないくらい昔に遠ざかっていた平穏な日常。一つの目標に向かって、毎日毎日ドタバタと大騒ぎして、時に大声を張り上げて意見をぶつけ合い、主張を叩きつけ合いながら、仲間たちと一心不乱に邁進する日々。それは確実に、ヒメの中の熱量の向かう先を変えていく。脇目も振らない、振る余裕もない切羽詰まっているのが常態だった日々が、いつしか「夢中」のなかに埋もれていく。
それは、時守緋芽にとっての、間違いなく青春だったのだ。数百年越しの遅れてきた青春。

これ、本当は主人公ってヒメの方じゃなかったのかな、とすら思えるほどに、彼女は生き生きとしてウンウンと唸るナイトの背中を叱咤激励する。
未来では共に戦った戦友の、平和だった頃の想像もしなかった思わぬ姿を目の当たりにして、でも中身の芯の頼もしくも一本気通った所は何も変わっていないのを実感して、地獄のような未来がどれほど多くの人の将来を歪め潰えさせてしまったのかを改めて実感する。
また今の自分と同じように、いやそれよりも遥かに入れ込んで自分の趣味に、好きな事に夢中になって一途に直向きに邁進した結果を持ち寄ったコミケットというイベントの凄まじい熱気を、集った人々の尋常でない数を目の当たりにして……平和だからこそ人はこんなにも好きな事に打ち込める、こんなにもいっぱいの人たちが夢中になって好きな事に挑める。お祭りだ。こういうものが、自分が守ろうとしてきたものなんだ、と。
ずっと戦ってきたいつしか擦り切れて摩耗してわからなくなっていた平和、いつしか自動的に妄執的にただ世界を救うのだと思い定めて突き進んでいたことを実感し、その救おうとしていた世界がどんなものだったのかを、今こうして思い出し噛みしめることが出来たことに喜びを感じる。
責務でも義務でも使命でもない、ただ心からこの世界を守りたいと思えた。

ヒメとナイト、二人三脚の努力に他にもデスメイドなど手助けしてくれる人たちの友誼も加わり、今までろくに売れることがなかった同人誌が、はじめてどんどん売れていく、その流れと熱を逃さないようにナイトがさらに力を振り絞ってスケブなんかをスタートして場を盛り上げていくという熱さと、会場の外で思わぬ敵からの横槍を未だかつてない意気込みで世界を守るという願いを叶えるために激闘するヒメの熱量が、折り重なって上昇していくクライマックスは実に素晴らしい流れでありました。
トンチキな条件に思えた、同人誌100部売らないと世界が滅びる、逆に言うとナイトが同人誌100部売ったら世界が救われる、という条件がちゃんと真っ当な意味を持っていた。それが本当に世界を滅ぼす、あるいは世界を救う鍵でありきっかけだった、という所なんぞはストーリー展開としてピッタリとピースがキレイにハマる感覚があって、うん良かったです。

これ、続くとなると妙にハードルあがりそうな感じもあるのだけど、これ1巻でもうまく纏められていて面白かった。

我が驍勇にふるえよ天地 10 ~アレクシス帝国興隆記 ★★★☆   



【我が驍勇にふるえよ天地 10 ~アレクシス帝国興隆記】  あわむら赤光/ニリツ GA文庫

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世に常勝不敗の将軍、二人あり。
一人はアレクシス侯レオナート。
いま一人はガビロン三太子マルドゥカンドラ。
ともに百戦して百勝という稀代の名将が、多士済々の勇者賢者英雄女傑を幕下に従え、万の軍を率い、遂にいくさ場にて相見える!
これ矛盾の故事なりや――激戦死闘の果てになお不敗の旗を掲げられるのは一方のみ!
真の常勝将軍は、果たしてレオか? マルドゥカンドラか?
武勇、知略、用兵、戦略、策略、情報、人材、国力――全てを駆使し激突する、シリーズ最大の総力戦に刮目せよ!
魔法がないから面白い、痛快にして本格なるファンタジー戦記の大本命、待望の第10弾!!

古来より戦記小説多々あれど、片方が将星の抱負さ……人材の質と量の両方の高さ多さを強味とする軍勢に対して、同じ多士済々の人材の質量で真っ向から勝負してかかってきた展開は、ちょっとはじめて見たかも知れない。
ただでさえレオナートのアレクシス軍って並の戦記物よりも多種多様なキャラクターの将星が揃っているんですよね。アドモス軍を吸収したものだから、さらに拍車がかかっていますし。
光武帝の雲台二十八将かってなもんで。いや、文字通り雲台二十八将がモデルになってるんですかね。同じ二十八神将なんて名前が後世につけられるみたいですし。
そんなレオナート軍と真っ向から此度かち合うことになったガビロンの常勝将軍マルドゥカンドラ。その不敗の軍団こそ、レオナート軍と同じく様々な得意分野に秀でた人材の宝物庫。オールスターキャストに対して、オールスターキャストで戦いを挑んできたようなもので、レオナート軍の将星たちのお株を奪うような逸材たちが、将棋やチェスで同じ駒が両陣営に揃っているように相互に対応するように、レオナート軍と真っ向からぶつかり合うことになるのである。
まさに、人材と人材の勝負、てなもんでした。そりゃ、これだけ敵方の一軍団にこれだけキャラの個性を考え、戦い方考え、レオナート軍との千差万別の戦闘を考えてたら時間かかりますよ。惜しげもなくネタを掘り起こして投じていくようなものですし。

でもこれ、人材と人材の勝負、と言いはしたものの、終わってみると何気にシェーラとジュカのレオナート軍の二大軍師によって、決戦がはじまったときにはだいたい決着はついていた、という様相になるんじゃないですか、これ。
残念ながら、マルドゥカンドラには盤上を自在に操る智将のたぐいは幾人も居たようですけれど、盤面そのものを用意する軍師は見当たらなかったみたいなんですよね。かといってマルドゥカンドラが自身でそれを成すかというと過去の戦歴を見ても、マルドゥカンドラは提供された戦場で戦うタイプの将軍であって、自分で戦場を用意したり作り上げるタイプじゃないみたいですし。これもアドモスの妖怪爺さんが語っていた、あの兄弟は優秀で仲が良すぎるが故に相手の職分を侵さない、という弱点にあたるのかもしれません。マルドゥカンドラもあくまで軍人に徹していて、言われたところに向かいそこで本分を尽くす、というような行動が伺えますし。
かといって、長兄は政治家としても軍政家としても化け物級みたいですけれど、大戦略家として国家戦略を先々に至るまで見通して操っている、というタイプでもなさそうですし、次兄は謀略家にして情報屋ですけれど、だからこそ裏方に徹しています。天才と言ってもいいんだろうけれど、三人とも限定された局面にしか手を伸ばそうとしないようで。だからこそ、彼ら兄弟は末弟に期待しているのかもしれないなあ。

ともあれ、終わってみれば「役者が違った」と言ってしまっていいくらいに、差が浮き出てしまった感があります。結局、レオナートの側の将星に勝てるような、決定的に上回るような逸材はあれだけ人材が豊富に居たにも関わらず、誰も現れなかったわけですしね。それに、あまりにも多種多様にキャラを出してしまったために、個々に当たるスポットが小さくなって結果として一人ひとりの印象も薄くなってしまった気がします。一番印象に残っているのが、性格最悪のクティルというのがなんともやは。
肝心のマルドゥカンドラも、人の扱いのうまさ、カリスマ性こそが常勝を担ってきた要因なのでしょうけれど、レオナートがトラーメという曲者を意外にもうまいこと使っているのに対して、マルドゥカンドラの方はクティルをはたして上手く使えていたかというと、もろに軍団の弱点になってしまった点を鑑みても、これを重用していた時点でどうなんだろう、と思ってしまった部分もありますし。
部下たちの意見を良く聞く、という点は彼の強みでもあったのでしょうけれど、物語としてはマルドゥカンドラの存在感そのものが薄まっていたような感じがありました。なんとなく軍団全体に主体性というか、主導する強烈な牽引力が見当たらなかったというのもありますし。
レオナート軍の方はシェーラとジュカ、特にジュカがガッツリ手綱握って主導権握って全体を動かしてくれてますしね。既に戦争全体の行程を整えた上で、戦場現場での対応をガンガンとジュカが指揮していってくれるこの安心感安定感。
おまけに、今回の戦いはオスカーとクルスという自ら先頭に立って切り込む個の武勇で活躍していた二人が、後方から一勢を指揮する将帥として一皮むけるステップアップに至った話にもなりましたしね。
こういうところに「役者が違った」という感があったんですよねえ。

やはり、拮抗し得るのは同じステージで戦う相手。この場合はシェーラと同じ目線で戦争を動かせる相手、となるのか。シェヘラザード、そしてキルクス皇子がやはり一番の強敵、ということになるんでしょうな。
作者としての難所を越えたことで、これからはガンガンと続きだしてくれると嬉しいんですけどね。勢い付けて頑張ってほしいな。


処刑少女の生きる道(バージンロード) 5.約束の地 ★★★★   



【処刑少女の生きる道(バージンロード) 5.約束の地】  佐藤真登/ニリツ GA文庫

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「私は清くもないし、強くもないし、正しくもない。そんな悪い奴だもの」
アカリを連れ去った導師「陽炎」を追い、“聖地"に足を踏み入れたメノウ。せめて自分の手でアカリを殺す。そう決意した彼女の目的は、【白】の遺物・塩の剣の確保だった。
幼き日のメノウと導師がかつて辿った旅路の果て。塩の剣が眠る、清浄なる塩の大地。第一身分に封印されたそこへ至るには、【使徒】魔法使いが守護する聖地の中枢・大聖堂の突破が絶対条件。「陽炎」によるアカリ処刑のタイムリミットが迫るなか、圧倒的戦力差を覆すためにメノウが選択した禁忌の手段とは――。
師を超える時は、今。彼女が彼女を殺すための物語、決別の第5巻!!


アニメ化ですって! これはびっくり。これにはびっくり。GA文庫が怒涛の7作品アニメ化(続編含む)に打って出た一環なのですが、それにしてもこの作品が選ばれるとは……。でも、本作もGA文庫の大賞作品なんでしたっけ。それに、この作品のストーリー展開と世界観、ビジュアルはアニメ映えするものだと思うので、これは素直に期待してしまうなあ。

かくして、物語はクライマックスへ。

……クライマックス? いやいやいやいや、ちょっと待ってちょっと待って?
最後の最後で今までの前提全部真反対にひっくり返されちゃったんですけれど。なにこの構成? 本当に全部裏返しになったぞ!?
これ、終盤まで見事なくらいにメノウという少女の成長譚であり覚醒の物語であり、革新に至る真っ当なストーリーだったはずなんですよね。いびつながらも美しく磨き抜かれた師弟愛の物語であり、尊いまでのメノウとアカリの二人の少女の友情を超えた友情の物語であったはず。
二人の間に育まれた絆によって、メノウは自分に課していた枠組みを壊して、人として生きる道をついに見つけた、ついに掴み取った。この5巻までの間に丁寧に丁寧に積み重ねられていったものの集大成であり、メノウが自分を見つめ直して本当の望み本当の自分の姿に気づく、そんな話だったはず。お互いにどこか一方的だったアカリとの友情が、ついに混じって交ざって繋がった、そんな回だったはず。
克服の物語として、越えられなかった壁を超える物語として、新たな自分に出会う物語として、美しいまでに綺麗な線を描いて辿り着いた、天王山だったはず。

……だったんですよ。

しかして明かされた真実は、メノウのあのどこか寄り固まった在り方もアカリとの深すぎる繋がりにも世界の在り方にすら深い深い納得を与えてくれてしまった。凄まじいまでの納得だ。怒涛のような得心だ。
でもそれは、今まで彼女らが歩いてきた道の情景を根こそぎひっくり返すものなんですよね。彼女たちが旅の中で掴んできたものの意味が、そっくりそのまま反転してしまう。ひっくり返されてしまう。
メノウの原点が「白」にある、というのは半ば承知されていた事でしたけれど……その関わり方はあまりにも予想外でした。そこまで残酷な、酷薄で無情な意味を持っているとは思わなかった。
名前からしてそうですよ。普通メノウって……宝石の名前じゃないですか。なんですか、その意味。酷すぎませんか? 名付けたんじゃなくて、自ら名乗ったという無意識な所が余計に酷薄じゃないですか。でも納得なんですよね。それは、メノウのあの自らをどこか突き放したような淡々とした定義づけに、実に沿う。役割であるという事がこれほど似合う子はなかったんじゃあないだろうか。
サハラのメノウへの嫌悪や敵対心の根っこって、実は良いところ突いてたんだなあ、と。今回この巻だけでも、感性感覚のまま振る舞っているサハラだけれど、なかなか侮れないんですよね、この人。

でも、メノウは人形じゃなく、そのはじまりから師匠に憧れあの人のようになりたいと望んだ。役割でありながら、あまりにも彼女は人として生きる道を求め続けてた。
その最果てでアカリと出会い、自分の根源を揺さぶられひっくり返され、自分に課していた壁を乗り越えることが出来た。
その全部が、意味を失いかねない。一番大切なアカリとの繋がりですら、嘘になりかねない。アカリと繋がることで望むことが出来た、善き人を殺さずに世界を変えるという願いも……善き人ってなんだよ!? てことになる。
メノウの覚悟も決意も望みも願いも、これまでのメノウの全部が、ここまで至ったメノウの人生の何もかもが、無価値にされるようじゃないですか。無意味へとひっくり返されたみたいじゃないですか。無造作に踏み躙られたようじゃないですか。
幼い頃から師匠に憧れあの人のようになりたいと思い、成った処刑人としての在り方。それを自分で粉々に砕いてしまい、なにをどうしたらいいのかわからなくなって途方にくれたことも。
虚無の虚脱に呑まれながら生きたいという衝動にすがりついたことも。
ゼロの中から本当に大切なものを見つけて、アカリのもとに辿り着いたことも。
アカリと手を携え一緒になれて、彼我を混ぜ合い分け合って、一心同体というほどにお互いを理解し合えたことも。
二人で自分の生きる道をついに見つけて、そこを歩いていこうと決意して覚悟して、立ちふさがる師匠を超えていくのだと決心したことも。

マノンが見つけた「彼女」は、その登場とともに、その存在を知らしめることで、メノウが示したそれらの意味を、勇気も愛情も友情も罪悪感も、ぜんぶが裏返り台無しにししまった。

きっとこれを冒涜というのだろう。

それをまだ、メノウは知らない。アカリも知らない。フレアですらも知らないのかもしれない。いや、師匠は「知って」いるのかもしかして? 彼女のセリフは、ラストを見てから振り返ると意味深に取れる部分が幾らでもあるように見えてくる。だからもしかして?

そしてそれを知ったマノンは、文字通り……白紙になった。いやマジで? これ本当に? 

未だ知らないメノウたちにひたひたと近づいている真実は、試練と呼ぶには余りにも悍ましい。果たして、メノウたちはこれに耐えられるのだろうか。ここでメノウたちが結実させた輝きは、その真実を前にした時一切の光を泥でもぶちまけられたみたいに無価値にされてしまうだろう。
見事なまでに力強くあげて美しいまでにあげて、見事なまでの落とし方。いや、奈落の落とし穴を開いてみせただけで、未だそこに足を踏み入れず、その少し手前で走り出しているというのが現状か。敢えて未だ落としていないのが逆にエグい。えげつない。

あと、みんなもっとフーズヤースさんに優しくしてあげて! 今回一番ひどい目に遭いまくってたの、この人なんじゃないだろうか。彼女自身、あんまり酷い目にあってる自覚なさそうなのが、自分の有能さに気づいていないところも相まって、不思議な愛嬌と絶妙の存在感がのってるキャラだったんですよね。良いように振り回され翻弄されまくってたフーズヤースさんですが、ある意味一番今回美味しいキャラだったのかも。それにしても、モモはもうちょっと本当に他人に対して丁寧に、というか他人を人間扱いしましょうよw
そんな人非人なモモに対して、メノウちゃん幻想を抱きすぎ!!
 

 
12月3日

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(角川スニーカー文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJコミックス)
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(HJコミックス)
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11月30日

(GCノベルズ)
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(GCノベルズ)
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11月29日

(ヒーロー文庫)
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(ヒーロー文庫)
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(ファミ通文庫)
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(エンターブレイン)
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11月28日

(Mノベルス)
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(Mノベルス)
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(Mノベルス)
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(Mノベルス)
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11月27日

(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(アクションコミックス)
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11月26日

(エンターブレイン)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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11月25日

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(ガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(コロナ・コミックス)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップノベルス)
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(オーバーラップノベルスf)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(KADOKAWA)
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11月22日

(MFC)
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(MFC)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス フラッパーシリーズ)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスpixiv)
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11月20日

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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(GCN文庫)
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11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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11月18日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガブックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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11月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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