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HJ文庫

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 16.黄泉返る可能性 ★★★☆  



-インフィニット・デンドログラム- 16.黄泉返る可能性】  海道左近/タイキ HJ文庫

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カルディナに散らばった『UBM』の珠を求めて新たな街にたどり着いたユーゴーたち。
しかしその街では珠の力を求める強者たちが集ってきており、それぞれの思惑により事態は急速に進み始める。
『IF』所属【殺人姫】エミリー、『セフィロト』所属【撃墜王】AR・I・CA、そしてレイとどこか重なる青年【冥王】ベネトナシュ。
『超級』たちが集う街に隠された秘密とは――?
大人気VRMMOバトルファンタジー、混戦必至の第16巻!

今回は主人公であるレイが登場しない完全に別の場所、国となるカルディアを舞台に繰り広げられる事件が物語として綴られる。こういう事がわざわざスピンオフ作品などにせずに本編にぶっ込めるあたり、それだけ世界観とキャラクターの強度が半端ない作品であることの証左なんですよね。レイ/スターリングに頼らなくても、誰でも主役になれるだけの物語を登場人物たちが背負っているという事なのだろう。
そして今回の主人公、てっきりユーゴーなのかと思っていたし間違いではないのだろうけれど、一番描きたかったのは表紙にもなっている冥王ベネトナシュとそのメイデンであるペルセポネである事は読んでいれば疑う余地はないだろう。
作者曰く、レイとネメシスの対比として描かれるキャラクターたちのようですし。善と悪ではなく、同じ不屈の精神を持つものとしての方向性の違い、ベクトルの違い、重きを置く見つめる先の違い、というべきか。同じ者であるがゆえに、このインフィニット・デンドログラムの世界に訪れた最初の時に体験してしまった事で異なる道を歩んでしまったもの。或いは、レイにもベネトナシュにもそれぞれ、真逆の道を歩む機会があったのかもしれない。
いやでも、レイがちょっと一般人というにはアレな家庭環境にあり、兄がこの世界の根幹に足突っ込んでいるなどの要素がある事を考えると、容易にベネトナシュのような道を歩んでいたかは疑問を覚えるところだけれど。
むしろ、ベネトナシュの方がリアルでは本当にただの学生っぽいのが逆にヤバさを引き立たせてるんですよね。このゲームのプレイヤーにはリアルを犠牲にしている、或いは重きをなしていない、放り捨てちゃっている人は結構たくさんいるみたいだけれど、それが許される、或いはそうするしかない環境に置かれている場合が多いんですよね。
ただ、ベネトナシュは違う。明らかに、そんなキャパシティが余裕があるような現実の環境ではないにも関わらず、それらすべてを投げ捨ててしまっている。両立を自ら放棄してしまっている。

このゲームの上澄みを形成するプレイヤーたち。超級に至った人たちというのは大概リアルの方でもぶっ壊れているような人たちであり、そういう人間になる環境に置かれている人たちであり、そもそもそういう素質がある人達だったといえる。でも、ベネトナシュに関しては確実に、このゲームをはじめたことで、この世界の中で変質してしまった。或いはライトスタッフを獲得してしまった人物だ。必然、その鋳型はイビツとなる。彼の抱く願いの異質さを思えば尚更だ。この世界を「現実」と変わらないと認識していながら、あの願いを抱けるというのはもう破綻してしまっていると言っていい。折れないという事は真っ直ぐであり続けるというわけじゃないんですよね。折れぬが故に歪んでしまうケースも有る。
いやこれ、彼一人の事ならまだいいんですけれど、彼にはパートナーがいるわけですよ。レイにネメシスがいるように、ベネトナシュにはペルセポネというパートナーが存在する。一蓮托生の存在であり、彼の末路を見守るもの。その変質を見つめ続けるもの。自分の能力が、ヨスガとなってしまったがゆえに彼をこの世界に縛り付けてしまった事を、彼女はどう感じているのか。
元々明るくて聡明な少女であるという事は、ユーゴーたちとのコミュからも伝わってくる所なのだけれど、だからこそ尚更にこの娘が目を背けることも許されず、自分のマスターが生命を削って魂をすり減らして願いを叶えるために邁進するのを、見守り続ける、支え続ける、共犯として共に犯し続けるその気持ちはいかばかりか。
こうしてみると、ネメシスは幸せだよなあ。
そして、IFにサポートメンバーとして加わった途端にその真面目さから苦労人枠に収まってしまった張さんがほんとお気の毒というか、クソ真面目すぎやしませんか、と思ったり。イイ人なわけはないはずなんだけど、上司に仰いだエミリーがピンチになった時には身を挺して救おうとしたり、と仕事に対してほんとクソ真面目というか面倒見が良いというか忠誠心が高いというか。
同じ常識人枠であるラスカルにスカウトされてしまったために、同じ苦労人のカテゴリーに押し込まれてしまったんだろうか。
そんな張さんの上司、というか被保護者としてあてがわれたエミリーが、これまたプレイヤーなのに野良のラスボスみたいな性能で。プレイヤーの性能じゃねえでしょ、これw
いや、性能云々はぶっちゃけ問題じゃなくてその能力の発現のさせかたが完全にイカレている。彼女は自動的なんだよ、とでも言うのかしら。
リアルからして闇が深すぎる。
……こうなると、ガーベラさんはIFでも癒やし系にあたってしまうんだろうかw

次回は完全に書き下ろしで、先程完結した漫画版のスピンオフである【クロウ・レコード】の面々が活躍するそうなので、ジュリエットのファンとしては実に楽しみ。


クロの戦記 6 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです ★★★☆   



【クロの戦記 6 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです】  サイトウアユム/むつみまさと HJ文庫

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新たな領地で港&塩田作り!!

戦争が終わり、クロノは論功行賞で手に入れた領地・カドの開拓に着手する。乏しい現代知識を用い塩田や港の整備を計画するが、人手が足りずにいた。
その解決策として、副官であるミノの故郷の人たちを呼ぼうと、別の貴族領まで出向くことになるが……。
一方、エラキス侯爵邸ではクロノとの夜伽の順番を巡って、女の戦いが勃発していた――!!

「異議ありだ!! どうして、お前が四回も夜伽をするんだ!?」

エロティック王道戦記、内政と夜の性活に大忙しな第6弾!!

多くの親しい者たちの死を背負い、それ以上の多くの期待を背負う覚悟を決めたクロノ。しかし、そこに雄大な展望があるわけじゃなく、目の前にある喫緊の課題をクリアしていく事に汲々とするわけだけれど。
元々、理想とか野望とか持ち得るタイプじゃないんですよね。流され流されてどうしても許容できない事にだけ徹底して反抗し、あらゆる手段をこうじて生き残る事に終始する。だから、新たに得た領地であるカドの整備開拓も、将来に向けて構想を抱いてというんじゃなくて、領地の人たちの暮らしを少しでも良くするため、部下であり身内である亜人たちが安心して暮らしていける土地にするため、という眼の前のことから一歩一歩固めていく、というそういう姿勢の賜物なのだろう。
でもだからこそ強靭なのである。目の前のことにかかりきりになるから、夢中になれる。頑張れる。タフになれる。
理想を高く持っているわけじゃないから、ちょっと突かれたくらいじゃグラつかないんですよね。ミノさんたちの一族を引き取る際にだって、あれだけの屈辱に耐えてみせた。
自分でも語っているけれど、自分からプライドを捨てる事と一方的に誇りを踏みにじられ恥をかかされる事は全然違う事なんでしょうね。それでもなお、頭をさげてみせた。地べたに擦りつけてみせた。屈辱を受け入れるのが必要ならば、この男はいくらでも我慢できる。自分が恥をかくことを、彼は厭わない。その事実が、その姿がどれほどその背に守られた人たちにとってかけがえのないものに見えるのか、クロノは計算してやっているわけじゃないから始末に終えないんだよなあ。
そういう背中の男だから、絶望を味わった者ほど希望を寄せる。何もかも託せてしまう。クロノが普段だらしなく、へらへらとしたドスケベ男だとみんなわかっていても、クロノの為に生命を惜しまなくなる。先の戦いでクロノを守るために率先して死んでいった連中の想いの根源はここにあり、それは今も他の皆の心に宿っている。

ティリア皇女は、野生化してクロノに襲いかかって搾り取っているばかりのようで、なんだかんだと上に立つ者の姿勢や在り方というものをちゃんとクロノの姿から見て取っているんですよね。
上に立つ者として果たして自分は忠義に対して相応に報いていたのか。
ヤることしか考えてないように見えるんだけど。次の日仕事に支障が出るほど貪り食ってるんだけど。
ちゃんと成長してるんだな、という姿をティリア皇女が見せてくれたのは嬉しいところでありました。それはそれとして、暴君である所は変わっていないのですが。まあ、暴君とは言っても可愛げのようなもので、理不尽を振りまくようなものではなく、双子エルフを手下にして顎で使っているのがせいぜいなのですが。
と、ここでついにあの双子エルフとティリアが出会ってしまうんですよね。そして誕生するポンコツトリオ。双子二人だけでも姦しいのに、そこに傲岸不遜のティリアが加わることで何ともはた迷惑で騒がしい三人組が生まれてしまったわけで。どちらかというと、ティリアに気に入られてしまった双子エルフの受難の日々のはじまり、というべきなのかもしれませんけれど、この頭の悪いポンコツトリオの行脚は何かと楽しく面白いのでホント好き。

しかし、戦争は戦争でいつも死にかけてるクロノだけど、内政パートになっても仕事抱え込みすぎて死にかけてらっしゃるなあ。それでいて、夜のベッドでのお仕事も欠かさないあたりは若さのようにも見えるし、女性陣が貪りすぎというべきか。今日は疲れたもうムリー、ってなってても問答無用で襲われているわけだし。
そんな状態でも、主導権を徐々に奪い返してティリアに対してもいつの間にかマウントポジション取っているあたり、じわりじわりとタイトルに負けないベッドの上での強さを獲得してきたというか、変態度に歯止めがかからなくなってきたというか。いずれにしても、最強と言っても最初からチート無双ではなく、叩き上げのドスケベ根性と言った風情なんですよねえ、クロノ様w

さて、色んな意味で過労死ラインに乗っているようなクロノですが、新たな戦の気配がまたぞろ彼の元へと持ち込まれてくる。再び、戦争の季節である。



聖剣士さまの魔剣ちゃん 3 ~魔剣ちゃんは常にかわいいので、今回はハイエルフに注目していきます~ ★★★★   



【聖剣士さまの魔剣ちゃん 3 ~魔剣ちゃんは常にかわいいので、今回はハイエルフに注目していきます~】 藤木わしろ/さくらねこ HJ文庫

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魔剣ちゃん大好き仲間を求め、いざ行楽都市へ!?

折れた魔剣ちゃん=セレスタの復活を目指すケイルたち。
そこで心強い味方を増やすべく、かつては魔剣の所持者であった謎多き幽霊(?)美女ハワワさんに会うため、ケイルたちは行楽都市ヴェルミアへの遠征を決める。
海に温泉にとレジャーを楽しむ傍ら、金欠から魔獣絡みの依頼を受けるケイルだが――

「それじゃリーシュはどうしたいんだい」
『とりあえずわたしの気が済むまでボコボコにして欲しいです』

コミカライズも絶好調な魔剣ファンタジーラブコメ、第3弾!
ハト! ハトがズルいよ!! ハト頭のムキムキ男出現のビジュアルイメージのあまりのキモさに爆笑してしまったんですけど! 殆ど一発ネタだけでも面白いのに、そこからヨロイ騎士化ハトにフルアーマー・ハトの畳み掛けるようなコンボはギャグのテンポが良すぎて、ちょっともうお腹痛いw
いやー、ほんとこのコメディのノリといい間といい、自分にはどストライクでめっちゃ好きですわー。
何気に根幹となっているストーリーラインは緩いどころかむしろ一直線にシリアスなんですよね、これ。そもそも魔剣という存在自体が少女たちを生贄にして生まれているようなもので、それを聖剣という殻の中に押し込めて使っていたようなものですしね。
そして、魔剣というものが世の中で忌み嫌われているのも、その戦略兵器並の強力さよりも印象操作の方が原因としては強いようですし、世に生まれてしまった魔剣とその使い手は影で処理されてしまっている、というかなり残酷な歴史が遙かな過去から続いているという。悪意と悲劇が連綿と今に至るまで続いているような、なかなか極悪な状況だったりするんですよね。
件のハワワさんとその魔剣であるセレスタが殺され、封印され、ハイエルフ(犬)が永きに渡って流離うことになったのもそれが理由ですし。
もちろん、その悪意は今も健在でリーシュとケイルにもいつ襲いかかってきてもおかしくないのが現状。なので、ふと気を抜くと途端に話はシリアス方面へと傾いていってしまう。

それを自らテコ入れして、シリアスには行かせない、と頑張る主人公たち……w
いやこの、魔剣ちゃんの顔を曇らせないために、とにかく何があろうと緩く行くぞ! という気合入りまくったコメディ路線堅持には、そこまでやられるとちょっとした感動まで芽生えてくるね!
口だけではなく、ちゃんと身体も張ってるし。

シリアスな空気を出すと装着者に骨が透けて見えるほどのビリビリ電撃を食らわせてくれる腕輪! とかいう、どうしたらそんなものを発想するんだ、という魔道具まで自分たちで作って自分たちで装着するケイルたち。引っ張り出してきたケイルだけじゃなく、渦中の当事者であるハイエルフ(犬)まで流れで一緒になって装着するの、さすがは歴戦の(犬)だよなあ、セリスw
おかげでどんなシリアスな展開になっても、ケイルとセリスがビリビリしてるもんだから、どうやってもシリアスにならない! 超無理やりコメディ路線を堅持するその気合っぷりは、もうお見事としか。
元魔剣所持者であるハワワさんと、件の折れた魔剣セレスタを見る限り、歴代の魔剣使いは全員が魔剣ちゃんダダ甘路線の変態みたいだし、魔剣ってわりと全員ナチュラルドSなのか。
魔剣サイドの登場人物たちが濃ゆすぎて、黒幕サイドがシリアス感を目一杯だしながら真面目に悪者ムーブしようとすればするほど、シリアス殺されるという悲劇。
敵側、コメディに乗るようなキャラじゃなくほんとに真面目に悪者なので、もうコメディ展開に蹂躙されてメタメタにされるの可哀想なくらいなんだけど、元々がゲス野郎なので悪党ムーブをギャグで潰されるという屈辱がざまぁ感出てて素晴らしいですもっとやれw

ともあれ、濃ゆいキャラばかりとはいえ、女の子はみんな可愛く、仲良く、ギャグでコメディではあっても永きに渡り離れ離れになっていた大切なモノ同士が再会するという感動展開はいささかも減じないのでありました。ひたすら尊い、てぇてぇ、てぇてぇ。
こういう温かい空気を守るために体張ってシリアス潰すケイルくんは、多少ヤバい人だろうとちゃんと主人公してると思いますよ。ヤバいやつだけど。


魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 12 ★★★★☆  



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 12】  手島史詞/COMTA HJ文庫

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ザガンとネフィ、お互いの誕生日が判明!?

アルシエラからザガンの誕生日を聞き、来週と差し迫っていることに気づくネフィ。
その一方、ザガンもオリアスからネフィの誕生日の情報を得る。
姉妹であるネフテロスの誕生日も同じ日に設定し、祝う準備を進めるザガンだが、彼女のホムンクルスとしての寿命が差し迫っていることにも気づいており、解決方法を模索していた。
その頃シアカーンとビフロンスの暗躍組も動き始め……魔王同士の思惑が交差していく――!!
大人気ファンタジーラブコメディ激動の第12巻!

世界の謎やアザゼル、ザガンの過去に銀眼の王たちの話など結構深刻な話も同時進行しているのだけれど、それはそれこれはこれ、という感じでザガンたちが自分の大事な人や家族たち、ザガンファミリーの日常の方をもっと大事な事として最優先にするの、やっぱりいいなあ。
ネフテロスの寿命の件だって、義理の妹がそんな事になってたんじゃ、みんなオチオチ誕生日祝えない、てのが頭にあるんですからね。まあ彼女に関しては、ネフィが悲しむからというのが建前で、ザガンももう本気でこの娘の事を義理の妹として大事にしているから、というのもあるのでしょうけれど。でなかったら、ネフテロス自身の意見や希望はきかないでなんとかしようとしちゃってたかもしれませんし。
差し当たって誕生日である。誕生日は祝うもの、という当たり前の行事、人間的習慣について知らなかったり経験がない人たちが多すぎる、このファミリーw
案の定というべきか、ザガンとネフィ、お互いの誕生日の話に留まらず、ファミリー全体に誕生日お祝いブームが波及していくのである。カップルたくさん成立しているにも関わらず、誕生日というイベントをスルーしている子たちが大半だったのか、なんというこれまでの人生の殺伐具合。
ほんと、みんな幸せになってほしい。
この世界に生まれた事を祝う日、というのが刺さる人が居すぎるんですよね。そういう生まれた事を祝われなかった人たちが、今こうして家族や友人と集まって一緒にこうやって生まれた日を祝いあえるということだけでも尊いんですけどね。その中でも愛する人と、というのは特別なのだ、やっぱり。
しかし、こうしてみるとザガンとネフィ以外のカップルで一番安定して甘酸っぱいイチャイチャを繰り広げてるのって、シャステルとバルバトスなんだよなあ。
リリスとシャステルがポンコツ繋がりでいきなりこんな仲良くなるとは思わなかったけど、同じレベルのポンコツだからか、シンパシーが通じたのか、シャステルがこんなに恋バナを吐露する事は滅多なかったのでちょっとワクワクしてしまいましたが、ほんとに惚気けるなあ!
最初ザガンのことちょっと好きだったシャステルが、失恋したあとバルバトスといい雰囲気になったこと、シャステル自身もちょっと気にしてたのかー。とはいえ、それを引きずるわけでもなく今はバルバトスに一途なのは可愛らしいというかなんというか。あとでお互い辿々しく誕生日教え合うところなんぞ、ほんと可愛らしいカップルになってしまって。
この完全に両思いが成立しちゃってるカップルと比べると、他の連中はまだイチャイチャしながらもハッキリしない所があるんですよね。大概、一方が日和っているのですが。
いい加減しびれを切らせて積極の鬼になってるのが黒花さんなのですが、この子ついに18歳になったのか! いや、マジでそんな歳だったの!? もっと小さいかと思ってた。もう普通に大人じゃない。そりゃ、シャックスも相手が子供だからなんて言い訳できんわ。

なかなかおもしろいことになっているのが、前回登場したフルカスで。記憶喪失のはてにリリスに恋して積極的にアプローチはじめて、リリスの方もまんざらでもなさそうだからこれでカップル成立かと思ったら……まさかのリリスの幼馴染のセルフィのガチ百合恋愛参入である。
真面目に恋愛相談されたザガンの混乱ぶりが笑えたのなんの。それでいて、ちゃんとごまかしたり曖昧に濁したりせず、真剣に向き合ってセルフィの迷いを吹き飛ばすようなしっかりとした応答してみせるザガン様、超偉いです。恋愛相談なのに、ちゃんと応えられてるじゃないですか、この人。頼もしすぎるぞ、この魔王様。
おかげで、リリスを間に挟んでの三角関係な修羅場が実現してしまうという。リリスってば、どっちにも満更でもなさそうでドキドキしてるので、いやこれどうするんだ!? フルカス君の方はまだ良くわかってないみたいだけど、セルフィは完全に恋敵として敵意漲らせているし。
ちょっとどうなるかわからなさすぎて、ここの人間関係は面白すぎる。

と、あちらこちらで甘酸っぱい誕生日模様が繰り広げられている一方で、またぞろビフロンスが暗躍して酷い事に。なんでそんなにネフテロス虐めに走るのか。こいつ、ほんとに好きな子には意地悪したくてたまらないガキなんだよなあ。やってることはそんな甘い話ではないエゲツない事ばかりなのだけど。
今回はリチャードが良く頑張った。これまではひっそりとネフテロスの側に侍るばかりで、あまり目立たないし存在感もないし、モブっぽかったのだけれど、ついにネフテロスが切羽詰まった状況になったことで前に出てきてくれました。こいつ、はじめてデザイン明らかになりましたけど、作中でも屈指の美形イケメンじゃないか! 王子様かよ!
他のキャラに比べてバックグラウンドもないただの騎士なんですけど、そんなモブっぽいからこそこの青年には頑張ってほしいんですよね。ネフテロスがえらいことになってしまったことも相まって、リチャードには再度男を見せてほしいところ。ビフロンスなんぞからちゃんと奪い取ってやってくれ。

そして、何気にザガンファミリーの中で王子様度が高いのって、キメリエスだと密かに思っていたのですが、まさかのゴメリお婆ちゃんが囚われのお姫様という展開の急襲に、盛り上がってきましたよ。いや、もうお姫様扱いが一番似合わない変態お婆ちゃんが、と思うところですけど、キメリくんにとってはお姉さんでお母さんでお姫様だもんなあ。それこそ乙女ゲームの王子様並のイケメン度
を見せて欲しいところである。顔、ライオンだけどさ。心は作中屈指の好青年なんだから!










魔界帰りの劣等能力者 6.二人の仙道使い ★★★☆  



【魔界帰りの劣等能力者 6.二人の仙道使い】  たすろう/かる HJ文庫

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魔神殺しVS死鳥
二人の超越者が激突する!!

闇夜之豹による襲撃を返り討ちにした祐人たちは、呪いの一件に大国が絡んでいると知る。
にわかに緊張感が高まっていく中、敵の狙いがマリオンではないかと気づいた祐人は護衛役を買って出る。そして、街中にもかかわらず実行された敵の再度の襲撃。
そこには、最凶の暗殺者の姿があった――

「俺は死鳥! その名の通り死を運ぶ、冥府への案内人だ」

襲いかかるは祐人と同じ仙道を用いる最強最悪の敵!! 魔神殺しと死鳥による本気の激闘がここに開演する!!

こうして見ると、祐人って戦力としてほぼ完成しきってるんだよな。仙道使いとしての能力だけでなく、魔界での戦闘経験に大切な人を亡くしている事と自分の存在を忘れられるという呪いを耐えているメンタルの強さも含めて。おまけに最近は神様クラスの契約人外がわんさと周りに集まってしまったために、ほぼほぼワンマンアーミーならぬ一人で一組織並のあれこれが出来るようになってしまっている。
そりゃもう、同じ仙道使いでも引っ張ってこないと敵側も相手にならないんじゃないだろうか。
とはいえ、敵側も一筋縄ではいかない相手ですしあの手この手で状況を絡め取っていくので、祐人という突出したキャラを無理やり不自由にして縛るなんて無作法な真似をして、ストレス感じさせるような展開になっていないのは巧いなあ、と思うんですよね。
こういう強すぎるが故に扱いどころが難しいキャラは、やたらと理由つけて雁字搦めに動けなくしてしまいがちなのですけど、このシリーズでは味方サイドは祐人が最善を尽くすのを邪魔しませんし、無理やり強引な展開で彼の足が止められる展開にもなりませんし、彼が出来る範囲での最短距離を走りつつ、それでも相手の仕掛けと戦力によって一手一手ストーリーとして確実に詰めていく展開になっているのは、物語としてもすっきりとしていて盛り上がりやすいなあ、と。
まあ祐人の場合、本当に最短距離を目指すなら脇目もふらずに契約人外を根こそぎ大動員してしまうという反則もあるので、制限掛けていると言えなくもないのですが。
でも、今回はわりと遠慮なく使える人外動員しての事ですから、結構本気で遠慮なしだったんじゃないかなあ、と。それだけ、死鳥という存在が祐人と拮抗しているという事なのですが。
その死鳥さんですが、この人もまた思惑が見通せないというかスタンスが見えないというか。どうやら家族同然の子供たちを保護という名の人質扱いで確保されているため、意に沿わず敵組織に使われている、という風情なのですが……。
その子供たちの筆頭で死鳥さんを一番心配して心砕いている子が、女の子じゃなく弟分の男の子というあたり、死鳥さんキャラとして硬派だなあ、と思ってしまったりw
これ祐人だったら絶対女の子だぜ、年頃の。
とはいえ、彼もイヤイヤ従っている、という様子でもなく、たとえ人質という担保を確保された上でとはいえ、契約したという事実に従うのがポリシーなのか、任務の途中で遭遇した同じ仙道使いの祐人の存在に興味を持ったのか。祐人と戦うことに関しては積極的なんですよね。
戦意はあっても敵意はない、というべきか。敵意はなくても、やる気は満々というべきか。

一方で本命である敵組織の黒幕、というか隣国の政府の暗部をさらに裏からこっそり操っている謎の二人組。前回の事件の黒幕もそうでしたけれど、半分人外に首をツッコンでいるような連中なんですよね。本来あるべき人の在り方からハズれてしまった者たち。それが魔界と、それも魔神となんらかのつながりを有していることを示唆されている、という事はつまり祐人にとっての因縁でもあるわけだ。
そろそろ、本格的に魔界の方の話が広がってくる頃になるのかしら。
いずれにしても、またぞろ話の途中で終わっちゃったんですけど! こういう時はほんと前後編でも前中後編でもいいので、ちゃんと表記してほしいなあ。全く話として区切りがついていない、強敵との激闘の真っ最中、というところでバッサリだもの。さすがに読んでる意識もつんのめってしまいます。


<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 15.<GAME OVER> ★★★★   



-インフィニット・デンドログラム- 15.<GAME OVER>】  海道左近/タイキ HJ文庫

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大賢者ついに登場!!

講和会議の裏で起こっていた、盗賊王たちによる王都襲撃。
世界の謎を暴くため、譲れないものを貫くため、己の力を刻み込むため、かけがえのない日々を守るため。
未曾有の混乱の中で、様々な思惑と信念がぶつかり合う。
大賢者、管理AI、そして邪神とはいかなる存在なのか。
世界に潜む謎を解き明かす一端となる戦いが今始まる――!!
大人気VRMMOバトルファンタジー、熱戦必死の第15巻! !
大賢者インデグラと盗賊王ゼタが表紙ですか。大賢者ってロリババアだったのかー!(まだ二十代)
レイたちが獣王・衝王と激闘を繰り広げていた講和会議(講和会議なのに激闘とは此れ如何に)と同時進行で行われていた王都襲撃事件。
主人公不在で繰り広げられる死闘は、これまで厚いベールに覆われていたこの世界の真実の一端を閃かせる秘密開示の一幕でもありました。と、同時にアルター王国第三王女のテレジア・セレスタイト・アルターと黄河帝国から訪れていた第三皇子のツァンの秘されていた正体が明らかになる回でもありました。
二人共、まだ幼いと言ってもいいくらいの年齢に過ぎないのに、背負っている業がおもすぎる。片や、生まれた瞬間から世界の終焉のトリガーとなる存在であるが為に死ななければならない宿命を背負ったテレジア。生まれた瞬間に母体となった母をバラバラに引き裂き、母親殺しの業と家族からの憎しみを背負ってしまったツァン。特にテレジアはジョブ<邪神>の特性として、歴代邪神たちの記憶を引き継いでいるという宿業まで背負っている。歴代の邪神たちと人格は違うとはいえ、記憶は人となりの形成に大きな意味を持つだろうし、テレジアは生まれ落ちたその瞬間から明確な意識を持っていたのだから、生まれたその時から自分は死ななければならないと思い定めた人生とはどんなものだったのか。それでも捨て鉢になったり投げやりにならず、粛々と宿命を受け入れながらも王女として思いの外平穏に続く日々を喜び、自分を慈しんでくれる家族を愛するテレジアが本当にイイ子でねえ。
一方のツァンも、家族から愛されるどころか憎まれて、乾いた人生を送りながらこの子も実直に生きてきたんですよね。それは諦めだったかもしれないけれど、憎まれたからと言って家族を憎み返さず世界を呪わず、彼自身に罪は無いはずの母殺しの罪を濯ぐように生きてきたツァン。
そういう彼だからこそ、エリザベートという最愛を抱くに至る人に出会えたのだろう。
なんか、この作中で一番まっすぐに男の子してるのって、この蒼龍くんじゃなかろうか。レイの方もまっすぐはまっすぐなんだけれど、ちょっとぶっ壊れている節もあるし純真とはまた違う真っ直ぐさな気もするし。
まだ10歳の男の子と9歳の女の子との、純真で命懸けの人生を賭した純愛物語。何よりも真剣で何よりも必死な幼い恋の物語。この二人がともに歩む人生は幸せであって欲しい、祝福されたものであってほしいなあ。
邪神と龍帝という、過去から延々と引き継がれていた宿命、或いは宿業を引き継ぐことで人生そのものを苦難に塗りつぶされたものに変えられてしまっているテレジアとツァンは、だけれどそのジョブに引き摺られることなく、二人共彼らなりに今の自分の人生を自分のものとして歩んでいる。
でももうひとり、同じ過去から<大賢者>として記憶と使命、そして宿業を引き継いでいるインテグラはどうなのだろう。生まれたその時からジョブを引き継いだ上記の二人と違って、インテグラは教育を受けた上で先代の死と共に大賢者を引き継いでいるんですよね。その記憶の継承がどのような形で行われたのかは詳細よくわからないのだけれど、彼女もまた<大賢者>が代々引き継いできた使命感、或いは妄念と呼ばれるものをそのまま受け継いでいるように見える。
記憶を継承しても魂は違うから人格も異なっている、という邪神の継承は大賢者にも該当するかわからないのだけど、怨念みたいなものがそのまま引き継がれているような印象がこびりついてるんですよね。ただ、インテグラとして幼馴染であるリリアーナやアズライトを想う気持ち、彼女らへの友情もちゃんと抱いているようなので、彼女がインデグラなのは間違いないんでしょうけれど。
それでも、彼女が抱いている使命感、信念、或いは妄執は果たして彼女のものなのか。そのあたりが、同じ過去から延々と宿命を引き継ぐ邪神や龍帝とはちょっと様相が異なっているように見えるのだ。
俯瞰してみると似たような境遇に在るこれら<邪神><龍帝><大賢者>のジョブの持ち主たちが、しかし三者三様に異なった在り方を示しているのがまた面白い。
これは、今回王都強襲に送り込まれた改造人間たち、改人と呼ばれるティアンの成れの果てたちも似たようなところがあるんですよね。四者四様、人であったにも関わらず人から外れてしまった者たち。改造された結果とはいえ、それぞれ思う所あって人である事を捨て去る事を受け入れてるんですよね。その末路も含めて、四人ともが突き進んだ方向が違うのは面白いなあ、と。その中で、もっとも流された選択を続けたモーターが生き残る、というのもまた面白味がある。
そんな改人と対峙した騎士テオドール、マスクド・ライザー、ツァンという面々が捨て去るのではなく、受け継いで守るために戦って、彼らを下していったというのもまたシチュエーションの妙なのでしょう。
人とは多様な側面を持ち、その一点を研ぎ澄ませていくか、その多様を混在させたままで進んでいくのかも人それぞれ。そうした複雑さは、管理AIたちも同じように背負っている、或いは内包しているように見えるんですよね。AIでありながら情を持ち、それぞれの方向にその情を炸裂させて邁進している彼らをただの機械と称するのは難しいでしょう。彼らもまた、この世界の「人間」なのか。
世界の行く末のためには、テレジアを邪神として目覚めさせないまま殺す事が一番と合理的に理解しながら、その選択を取ることをためらってしまうドーマウス。彼らが元はマスターとともにあるエンブリオだった事を思えば、その情も理解できるのだけれど、大半がぶっ壊れた感性と妄執に捕らわれているのがなんともはや、なんだけれどそれもまた人らしいと言えるのかも知れない。
彼らに比べれば、IFの犯罪者たちの方がよっぽど「人でなし」なんですよね。倫理がぶっ壊れている、というよりも彼らの内面が非常にシンプルで、ある種の自分ルールを絶対遵守しているように見えるからこそ、そのブレの無さが非人間的に見えてしまうのか。
こいつら、こんな人間性でリアルの方でまともに生活出来ているのか、と心配になるのですけど、心配しなくても出来てない人の方が多いのかw

ともあれ、ついに動き出す犯罪王。終焉を巡る世界の秘密の一端も明らかになり、幾つもの思惑が多数の勢力とともに錯綜しはじめる。果たしてそんな中で、主人公レイ・スターリングはどんな役割を得ていくのか。
今の所、彼は幾つもの事件の中心に居たものの、核心には殆ど触れないまま表層で活躍している、とも言えるんですよね。そのままネメシスとイチャイチャしててもいいんですよ?
ネメシスに、なんかもうプロポーズみたいなセリフ吐きやがってまあ。テレテレなネメシス、かわいいですよ?





いっつも塩対応な幼なじみだけど、俺に片想いしているのがバレバレでかわいい。1 ★★★☆  



【いっつも塩対応な幼なじみだけど、俺に片想いしているのがバレバレでかわいい。1】  六升六郎太/ bun150 HJ文庫

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こうちゃんのこと 大・大・大好きだけどバレてないから問題ないよね

《今日こそ、こうちゃんに告白するんだから! 》

特にモテる訳でもない男子高校生・二武幸太(にたけこうた)に、いきなり聞こえてきた声。
それは、いつも彼にそっけない態度をとる幼なじみ・夢見ヶ崎綾乃の心の声だった!
綾乃が自分にベタ惚れなんて全く知らなかった幸太だが――。

《本当はこうちゃんの方から話しかけてほしかった……。》

いきなり筒抜けになった綾乃の片想いに彼女を意識しだす幸太。
しかしそこで「心の声」の意外な副作用が見つかって――!?

タイトルぅ!! 足りない、このタイトルだと肝心の部分が抜けてるんですけど!
バレバレなのは決して態度が実はわかりやすい、とかではなくあらすじにもある通り、サトリさながらに異性の声が聞こえるようになってしまったため、なんですね。
それだけなら、表向きとは裏腹に幼馴染が本音では自分のこと好きで好きでたまらなくて、そんな素直になれない彼女が可愛くて仕方ない、という聞こえてくる心の声をうまく活用してすれ違いのないようにちゃんと相手の本当の意を汲んでひたすらイチャイチャしてダダ甘なラブコメをやりましょう、てなりそうなものなんですけど……。
ここに、詐欺よろしく契約書の隅っこに見えないような小さな文字で書き記してあるが如く、大事な続きが……。

但し、告白されれば死にます。逆に異性からの好感度が下がりすぎても死にます。学校から転校退学しても死にます。無関係の人に知られても死にます。

死にます!

……無理ゲーだぁーー!!

異性の心の声が聞こえるようになった代償がこれである。
ちなみにこの能力、主人公の幸太くんがたまたま見かけた交通事故に遭いそうになった猫をとっさに命懸けで救った恩賞として、猫の姫神様がくれた神様アイテムによって付与された能力である。
いや別にそんなつもりじゃなかったので要りませんて、と固辞してる幸太に強引に与えたものである。
……幸太、何にも全然一つの悪くないやん!!
なんでこの子、こんな酷いを通り越したえげつない目にあってるの!? 恩を仇で返すどころじゃないよこれ!?
まだこれ、猫神様に悪意があった邪神とかなら納得もいこうというものなのですが、猫姫様も詐欺紛いの宣伝に騙されて購入したもの、という酷いオチ。いやこれでまだ猫姫さまが罪悪感から一生懸命この呪いを解くために奔走してくれるならいいのですけど、このくそ神様、あっさり飽きて知らん顔しだすわ、説明書の解読サボってるの怒ったら逆ギレするわ、ちょっとガチで殺意湧いてくるんですけど。むしろこの呪いをかけてきた嫉妬の神様とやらよりも、猫姫さまのほうに怒りが煮立ってきたんですけど。幸太がなにか悪い子とした報いでえらい目あってるならともかく、善いことをした上に望んでもいないのにあんたが強引に押し付けてきたもので彼、こんなえらい目にあってるのに、その態度はなんだーー!!
幸太くん、メチャクチャ良い奴なので、余計に腹が立ってきてしまいました。もう、幸太が助けた猫の白夜を変わりの猫神さまに昇神させて、この駄猫は放逐してしまえればいいのに。

んでそう、幸太めっちゃいいヤツなんですよ。
いきなりわけのわからん理由で自分の命がやばい、という状態になりながらこの子自分のことばかり考えずに、むしろ心の声を通じて知ってしまった幼馴染や親友の境遇に心痛め、心配し、彼女らが傷つかないように一生懸命立ち回るのである。
……このヒロインたちが、また色んな意味で「やべえ」娘らなので、幸太の配慮を全力で明後日の方向にぶん投げて自爆していってしまうのですが。
気持ちが、気遣いが、配慮が、心配りが、これっぽっちも通じねえーー!!
幸太、心の声が聞こえているから本来ならその場に応じた最的確の行動や言葉選び、選択肢を選んでいるはずなのです。実際、幸太の行動はこっちから見ても最も無事に着地させようとしている行き届いたものだと判断できるものばかりでした。幸太がんばった、ほぼ無茶振り同然の反応を要求されていた場面にも関わらず、超頑張って配慮した。気遣った!
 
それらを全部地面にぶちまけて台無しにしていくスタイルの幼馴染の綾乃とクラスメイトのみずき。
こ、こいつらわー
特に綾乃の方は本性が完全にストーカーな上に妄念にとりつかれた変態という、ヒロインとしてそれもうアウトなんじゃないですか? というあれな心の声を垂れ流しにしちゃってるんですよね。
幸太、よくドン引きしてそのままズリズリと後ろにさがっていってフェイドアウトしちゃわないよなあ、と感心してしまうほどの変質者っぷりですし。
この幸太くん、決して呪いの制約があるから仕方なく綾乃に付き合っている、という事は一切ないんですよね。ここまでやべえ妄念を常時浴びせられている上に、色々とやべえ彼女の妄想手帳の中身までばっちり見ちゃったにも関わらず、むしろ気を遣ってあげるところとか、この子聖人じゃないだろうか。義務感や親切心といったよそ行きの心配りでもなく、本当に綾乃に親身になって彼女に心寄せてるんですよね。幼い頃に、綾乃に妹ともども兄妹が一番苦しかった時に心救われた、人生そのものを救われた事を今でも恩として大事に抱え込んでいるし、アレな内面はともかくとして小説家の母と真剣に向き合い、自分の夢と掛け合わせてひた走っている綾乃の事を本気で尊敬もしてるんですよね、彼。
だから綾乃が家庭環境のこともあって追い詰められた時に奔走しているとき、幸太は自分の命の危機に関しては殆ど考えていないんですよ。あんまり入れ込んで彼女のこと助けてしまうと、余計に惚れ込まれて告白されてしまう危険性は、致命的なほど高かったにも関わらず、その危険性を無視して綾乃の苦難を取り払おうと走り回るのである、この子は。
そりゃ、惚れられるよ。めちゃくちゃ良い奴であると同時に、イイ男なんだから。
綾乃はそんな彼にずっと一途だったわけですから、男見る目はありますよ。まあ、男を見る目云々の前に、自分のその性癖というか人間性というか、妄想に殉じて生きてるようなネチャネチャした性質、なんとか治した方が良かろうに。もう手遅れっぽいけれど。もう駄目だわ、この娘。
残念ながら、幸太くん器が大きすぎて、こんなヤバいのですらあっさりと受け入れてしまいそうなのがなんともはや。
いや、呪いのおかげで受け入れられなくなってる現状なのですが。

しかしこの呪いって……言っていいのかな? 愛の告白を「されたら」死ぬって言うのなら……ねえ?
これは抜け道、あるのかな?

聖剣士さまの魔剣ちゃん 2.~主のために頑張る魔剣を全力で応援しようと思います ★★★☆   



【聖剣士さまの魔剣ちゃん 2.~主のために頑張る魔剣を全力で応援しようと思います】  藤木わしろ/さくらねこ HJ文庫

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魔剣ちゃん、まさかの冒険者デビュー!?

世界一かわいくて危険な魔剣ちゃんことリーシュの主として日々幸せを噛みしめる聖剣士の青年ケイル。
そんなケイルの真摯な想いに応えるべく、人間になりたいと願うようになったリーシュは魔剣化防止のストレス解消も兼ねて冒険者デビューをすることになるが――

「僕も付いて行くけど、後ろで見守っているだけにしようかな」
「いえ、ケイル様はお留守番です」
「………………え?」
かわいいが炸裂する絶好調ファンタジーラブコメ、第2弾!
ケイルさま、本当にただ応援してるだけで何もしてないやん!
魔剣が危険視される現状と今後について説明されたために、ちゃんと事情を理解した上で人間らしくなろうと頑張るリーシュ。
一巻では純真無垢に何をしでかすかわからない、実際しでかしてしまうリーシュのフォローの為にあれこれと走り回り後処理やら事前のカバーなど必死に走り回っていたケイルでしたが、リーシュが上記のようにちゃんと弁えてくれたお陰で前みたいにフォローに走り回る必要なくなっちゃったんですよね。青い顔しながら駆けずり回る必要がなくなってしまったわけだ。
そうなるとどうなるかというと、ただひたすらリーシュかわいい、と言うだけの生き物になってしまってまあ……。
魔剣という事に拘らないようにするリーシュは、つまり四六時中使い手であるケイルにひっついている必要もなくなり、それどころか人間になるために一人で頑張ることになり、冒険者デビューして町の外に出たり、矢文ちゃんと一緒に買い物したり、と自立して動くことも多くなったわけです。
それを、四六時中ついてまわって見守るケイルと、ケイルと同じ方向性の変態であるハイエルフ犬のセリスのストーカー二人組。
こいつらが、もう常時ハイテンションでドタバタ大騒ぎしながらリーシュを付け回すわけですよ。なにこれ!?ってくらいもう作品の空気感が、ハイテンション!
影で見守るストーカーと化したケイルとセリスが薬でもキメてるんじゃないかというテンションで、リーシュの行動の一部始終を漫才実況するという、なんかもう意味不明な展開にw
お互いボケとツッコミを自由自在に入れ替えながら繰り広げられる漫才実況は、ここぞというタイミングで「リーシュかわいいぃぃぃ!」でケイルとセリスが見事にシンクロして区切りを付けて間を入れるのが無闇に高度なテンポ構築になっていて、なんか悔しいんですけどw
真っ当な人間になろうと頑張るリーシュの影で、どんどんと人間としてあかん領域にダイビングしていく聖騎士とハイエルフのコンビの対比が、なんともかんとも。
ただ、リーシュ可愛いのは真理なだけに、仕方ないと言えば仕方ない。これに加えて矢文ちゃんがもう当たり前みたいに姿を見せてリーシュと並んで、これまた可愛らしく女の子二人の可愛いコンビネーションを見せてくれるので、相乗的に可愛いが加速して変態二人がさらにハイテンションになるのも、まあ仕方ないかなあ、と。だって可愛いし。そして変態二人は気持ち悪い!

いや、わりとちゃんと物語の方も進行していて、魔獣とかドラゴン退治、みたいな血腥いことには一切ならずに、前に仲良くなったワイバーンのワイワイとの交流から古き竜とコンタクトが取れることになって、なぜ聖剣がしゃべる魔剣となるのか。人間の間で残されている歴史上からは隠れてしまった世界の真実の一旦が、徐々に垣間見えてくる展開をしっかりやっているわけですが。
なんでかもう、ケイルとセリスのハイテンション漫才実況ばかりが印象に残っちゃって。ストーカーのくせに声でかいよ、ふたりとも! そして特に意味なく七色に発光し続けていたケイルくん。
この主人公、なにやってんだ、ほんとに今回なにやってたんだ?

ともあれ、この最初から最後まで一向に衰えないままだったハイテンションのノリに、キレキレの会話の応酬は読んでてひたすら楽しかったです。いやマジでこのノリで最後まで突っ走るのは凄えわさw



元世界最強な公務員 1.帰還勇者、身分を隠してたのに新人冒険者の世話をすることになりました ★★★★   



【元世界最強な公務員 1.帰還勇者、身分を隠してたのに新人冒険者の世話をすることになりました】  すえばし けん/キッカイキ HJ文庫

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隠遁した元勇者がお世話役……!?

久住晴夏はかつて、地球と繋がってしまった異世界を勇者として救った。その闘いの日々に嫌気がさした彼は、地球に戻った後に安定を求め公務員を目指して就職活動を始める。
しかし、異世界に飛ばされたことで職歴も無し、学校も中退の彼が選べる仕事は少なく、その知識を利用して異世界交流課に勤めることに。
その最初の仕事とは、ワケありな三人の新人女子冒険者をサポートすることで――。
隠遁したい元勇者による、現代バトルファンタジー開幕!

ほぼ4年ぶりくらいの、すえばしけんさんの新作だー! あとがきの書き方だと、別名義でなんか書いてたのではないか、という風にも見えるのですけれど。
今どき寄りのタイトルですけれど、ちょっと世知辛いくらい生活感ある登場人物たちの日常風景に、わりと重めの政治的要因が絡んでいたりするあたりは、変わらぬすえばし作品で染み入りますわー。
主人公にしてもヒロインにしても、そして敵役にしても一人ひとりじっくり寄り添ってその心の在り方を浮き彫りにしていく描き方は相変わらずなんですよねえ。そして、自分そんなキャラ描写が好きで好きでたまらなくて、この作者さんのファンであり続けてるわけです。
もう好き。

今回の話の主人公である久住晴夏は、異世界で邪竜を倒した元勇者。普通の異世界召喚ものと違って、異世界と地球が繋がった上に日本の地方都市が崩落のような形で異世界に落ち、凄まじい数の死者行方不明者を出し、異世界に遭難する形で大量の日本人が異世界に放り出された、という大災害になってるんですね。
ハルカは、その災害で家族を失い、紆余曲折あって適合した神具を使って、その災害を引き起こしたという邪竜を倒した人物であり、ノインの名だけが知られる謎の勇者、だったわけです。
本名名乗らなかったのはファインプレイなんだろうなあ。お陰で、再び異世界と日本が繋がってゲートが固定された際に、誰にも気づかれずに日本に戻れたのですから。
下手に有名人、それも戦略兵器に匹敵する勇者としての力を持った個人、となるとまともな人生は送れなくなりますし、個人情報特定された人間がどうなるか、昨今の情報社会では明らかですからねえ。
軽い感じの話だと身分とか英雄勇者だった事実を隠して隠遁するのって、奥ゆかしさとか実力を隠して過ごす俺カッコいい、という感じの代物でしたけれど、重めの話となるとガチのリスク回避だったりするんですよね。そうでなくても、有名税とか力あるものの義務とかで片付けるには面倒どころじゃない事になりますし。自己承認欲求とか英雄願望とか目立ちたい気質がなかったら、持て囃される毎日というのは本気で苦痛でしかないので、正体を隠して生きるというのは結構切実な面も大きいと思うんですよね。これは、物語のタイプにもよるんでしょうけれど。

ただ、本作においては……これらとはまたちょっと理由が違うんですよね。
これが明らかになった時には、ちと絶句してしまいました。ハルカが元勇者という正体を隠し、さっさと日本に逃げ帰ってしまったのも、これは無理からぬ事ではなかったでしょうか。彼本人が語る内容から推察するしかないですけど、当時は精神的にもほんとにギリギリ一杯だったんじゃないでしょうか。
というか、神具に適合して以降、よく持ったなあ、と。この事実をよく受け止められたなあ、と。いや、今も受け止めきれていないのかもしれませんが。
邪竜討伐の旅、あんまり仲間が居た様子もありませんし、実質妹の玖音との一人旅だったんじゃないでしょうか。ほんとにメンタルよく持ったなあ、と繰り返しになりますけど。
彼当人の責任なんて一切ないはずなのに、彼はすべての責任を背負って生きていく羽目になったのですから。

でも、彼が世界を救ったのは、事実だったんだなあ。ハルカはそのことに何の意味も価値も見出していなかったわけだけれど、三人の新人冒険者との交流が彼に違う見地を与えてくれたということなのか。

バイト生活に汲々としていたハルカが、募集を見つけて応募したのは公務員と言っても市役所の非常勤職員。それも、異世界との交流プログラムで市に常駐することになった新人の冒険者三人の案内役で、まったく戦闘とかとは関係ないお世話係みたいなものでした。
その新人たち。エウフェミア、リュリ、マリナの三人は、多少経験のあるリュリを除いて、冒険者になりたて。実力を見込まれて送り込まれてきたのではなく、あくまで市の交流事業のシンボル的な扱いだったのですけれど、それぞれ邪竜との戦争の様々な形の被害者でもあったわけです。
あの戦争で人生に大きな影響を受け、戦争が終わった世界でそれまでと違った生き方を得ようと、このプログラムに応募してきた子たち。それぞれ志があったり、家族の生活のためだったり、平和になったが故に放逐された身の上だったり、と事情は様々だったのですけどね。
最初はそれぞれが抱えている事情なんかわからないので、第一印象から深くまで踏み込まない段階でのコミュニケーションから受けるそれぞれのイメージなのですが、これが付き合えば付き合うほど目まぐるしく印象が変わっていくんですよね。
人となり、というのは絶対にシンプルでは収まらない。若くとも十数年の歩んできた人生に基づく、様々な側面がヒトには根付いている、というのがなんとなく伝わってくるんですよね。覗けば覗くほど、色んな顔が見えてくる。こういう幾層も重ねたようなキャラクター付けと、それを一枚一枚広げて様々な方向からヒカリを当てて見え方を変えていく、キャラの掘り下げ方はこの作者であるすえばしさんらしさが色濃く出ていて、なんとなく染み入ってしまいました。
それに、三人が影響を与え合うことで三人娘たちは新しく違う自分を見つけたり身につけたりしていくわけです。刻々と成長もしていくわけだ。
特に顕著なのが、対邪竜の兵器として扱われてきたが故に、戦闘狂という側面ばかりが磨き上げられ、それ以外の情緒がまったく育っていなかったエウフェミアでした。
いや、ここまでガチの戦闘狂って珍しいくらい、強さ以外に何の価値観も持っていないエゲツない子で、それを温厚でぽやぽやしたキャラクターでキレイに覆い隠していた、色んな意味でヤバい子だったのですが、この子が他の弱っちくて何の関心も持っていなかったはずのリュリとの衝突から、自分の中に芽生えた経験のない感情に戸惑い、そこから手繰り寄せて一つ一つ階段を登っていく様子は感慨深いものがありました。

そんな三人娘の現状というのは、ハルカが邪竜を倒して世界を救ったことによって発生したものであるんですね。邪竜を倒した後すぐにとっとと異世界から帰ってきてしまったハルカにとって、邪竜を倒すことというのが清算であり、証明に過ぎずにその後のことなんて何の意味も見出していなかった彼にとって、彼女たちはある意味自分が成したことの結果そのものだったわけです。
自分がやったことの影響を、彼はこの仕事を通じてはじめて目の当たりにして実感することになったのでした。勇者なんて、自分で名乗ったわけではなく、すべてが終わったあとで誰かが勝手につけた称号。世界を救った自分は、しかし誰も救ってくれなかった。
でも、自分が救った世界で救われた人がいる。救ったはずの世界で苦しんでいる人たちがいる。自分が成した事を仰ぎ見て、それを追いかけている人がいる。その先を、未来を自分の力で掴み取ろうとしている人がいる。
その事実は、誰も救ってくれなかった勇者の心を、確かに救ってくれた。

後始末で戦後処理が多く絡むお話でしたけれど、それ以上に終わった後にしっかりと前に進めるようになる、未来に向けた話だったんだなあ、と。それを、戦って勝ち取るのではなく、隣人となった異世界の人たちとの交流で、寄り添うことで紡いでいく。育てていく。
そんな噛みしめれば噛みしめるほど味わい深さが滲み出してくる、そんな逸品でありました。
堪能した!!

しかし、あのリュリの意識高い系キャラは面白かったなあ。何気に現代地球の科学技術への理解や習得も柔軟で早いし、意識高いが故に自分にも他人にも厳しくてほかを置いてけぼりにしそう、に見えて急き立てながらも他の二人とちゃんと歩調をあわせる機微もありますし、キャラがわかってくればわかるほど頼もしく思えてくる良いキャラでした。
エウフェミアの方はもうすげえ、としか言いようがないヤバい子でしたけれど。いや、あのぶっ壊れ方はほんと凄いよなあ。なまじ、傍目にはまともに見える分、余計に。インパクト大でした。


すえばしけん・作品

クロの戦記 5 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです ★★★★  



【クロの戦記 5 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです】 サイトウアユム/むつみまさと HJ文庫

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『僕は――この国を変える』
ちょっと過激な王道戦記、緊迫の撤退戦が始まる!!

戦況が覆り、帝国軍は追われる立場となった。神聖アルゴ王国を相手に、クロノは仲間を逃がすための絶望的な戦いに身を投じる。

「大丈夫、去年ほど戦力差はないよ」

千五百人の亜人を前に、平凡な少年でしかなかったクロノは笑う。内心の恐怖を押し殺し、必ず帰るという誓いを守るために――
一方帝都では、幽閉されていた皇女ティリアが帝都から追放されることに。その行先はエラキス侯爵領で……
エロティック王道戦記、策謀渦巻く泥沼の戦争を戦う第5弾!!


泥沼の撤退戦。烈火の如く攻め寄せてくる敵の大軍を、寡兵で押し止める事を求められた決死の殿戦。そう書くと壮絶で勇壮な合戦絵巻を思い起こせるのだろうけれど、ここで繰り広げられるのは敵も味方もボロクズのように次々とくたばっていく、尊厳も何もなく殺し殺されていく血まみれのゴミ捨て場だ。
そこで戦えと強いられた哀れな兵卒たちが死んでいく、みんなして死んでいく。自分が生き残るために、殺して殺して、殺されていく。
人間も獣人も関係ない、この場この瞬間ではある意味この上なく平等な空間だったのかもしれない、とふと思った。
だが、現実はそこに集められたのは愚者どもの愚かな行いとはるか天上でうごめく政治的な思惑というやつに駒として動かされた最底辺の掃き溜めが集められたに過ぎない。ここには等しく価値がない人間が集められたに過ぎない。そんなものは、平等でもなんでもない。
目の前で次々と自分の部下たちが死んでいく。自分の無能さで、自分の無力さで、自分の命令に従った部下たちが死んでいく。辛うじて生き残りながら、クロノは苦しむことになる。
自分の能力の無さに。どうして自分の為なんかに部下たちが生命を捨てて戦ってくれたのかわからずに。自分が軽く放った言葉が、彼らを死地に走らせてしまったのか。彼らを庇護する自分の立場が、彼らに生命を賭けさせてしまったのか。
そして、トドメにこの戦いそのものが、自分たちが命を懸けて、部下を犠牲にして戦ったこの戦いそのものが茶番に過ぎなかったことを知らされて、彼は怒り狂い、絶望するのだ。
あの戦いが無駄だった。部下たちの犠牲がすべて無駄だった。使い捨てにされ、生きたかっただろうに殺されて、自分に理想を託して死んでいった。そんな託された自分は、駒である事も知らず好き勝手に動かされるだけのぼんくらだった、という事実。期待の重さに耐えきれず、自分の無能さに呆れ果て、絶望し、逃げ出して……そこで、彼は本当に素朴で簡単な事実にたどり着くのだ。
スラムで出会った小さな少女との会話で、彼はごくごくシンプルな答えにたどり着く。
ただ、自分は死んだ彼らのことを好きだったことを。今も生きて自分を慕ってくれる部下たちのことを好きなことを。家族が、友人が、自分が大切に思う人たちの事を愛していることを。
そんな彼らのために、自分には出来ることがある。大好きな彼らのために、彼らを好きな自分のために、理想を掲げる覚悟を。世界を敵に回す覚悟を、臆病者が振り絞る勇気の行く先を、彼は決めたのだ。
悩んだはての、苦しんだはての、向こう側だ。クロノの苦悩は続くだろう。これからもどうしようもなくままならない現実を前に、もどかしく思い通りにならない自分の無能さにため息を吐き絶望し続けるだろう。
それでも、彼は為すべきを決めた。その一事を以て、彼は成ったのだ。英雄ではないとしても、望みを掴もうと足掻く者に。

登場人物を見渡してみると、その多くが自分のあるべき姿、在りたい形すら見つけられず、息苦しい現実に喘ぎながら、場の流れに流されいく。流されながらも苦しみ悩みながら、自分のできることを探して模索して、それすらもままならずに天を仰いでいる。
中間管理職を強いられているベティス隊長や、英雄であるはずのラインハルト、イグニスなどもそれは変わらない。まったく、変わらない。
優秀で有能で人並み外れた英雄だったり才人だったりと謳われている人であろうと、何も変わらず自分の愚かさ、無力さ、矮小さにいつだって打ちひしがれている。思い通りになることなど、ものが見える人ほど少なくて、力ある人ほど力を振るえない現実を思い知らされている。

逆に物が見えない愚か者ほど、悩みもしないし考えもしない。そういう輩こそ、現実を見ないし、見ないからこそ好き勝手振る舞える。自分が何でも出来ると思っているし、何でも知っていると思っている。そんな在り方のまま、現実をより地獄の方向へとかき回していくのだ。
中には、レオンハルトの侍女のように聡くなく無知であり考えもしない愚か者だからこそ、もっとも真理に近しく物事の本質を理解しているような人物もいるけれど、そういう人はやはり稀だ。

クロノは決めた。これからも悩み苦しみ続けるだろうけれど、建前でも柵でもない自分の中の、自分の奥底の欲するものを見つけて、それを掴むと決めたのだ。
訪れようとしているのは、時代の変革期だ。激動の時代がはじまろうとしている。現実のままならなさに、立ち向かえずにただ流されているだけなら、どこまでも押し流されていくだろう時代が。
自分の弱さ愚かさ矮小さを受け入れて、その上で自分の往く道を決めたものだけが、切り開いて進んでいける激流の時代が。
きっと地位や身分に関わらず篩は平等にかけられる。

ティリアは、ティリア皇女は……うん、今まさに現実に翻弄され振り回されてる真っ最中。皇太子としての立場を追われてクロノのもとに払い下げられるという屈辱を味わわされているのも、現実に思い知らされている真っ最中なら、夜な夜なクロノの寝室の隣の部屋に忍び込んで彼の女性関係をでばがめして、愛欲まみれの日々というやつを目の当たりにして寝不足になるのも、まあ現実を目の当たりにしている真っ最中の中の一事なのでしょう。
自ら、そのさなかに飛び込む勇気、自分のクロノへの気持ちを自覚する一方で、クロノを利用してやれ、と目論むのもまた、選択したと言える行動なのでしょうけれど。
その選択の結果、自分の前に広がるだろう、自分の行く先に強いられるだろう現実の厳しさ、重さを彼女はまだ知る由もない。彼女はまだ、知らない。本当の現実の苦しみも、懊悩も。
ティリアはまだ、自分の進むべき道も望むべき先も、決めていない。

エルフのアホい双子はあれどうなんでしょうね。彼女らに限らず、クロノの部下の亜人たちはもうとっくに決めているとも言えるのでしょうけれど。レイラは悩める分、それだけメインヒロインという事なのでしょうか。でも、デネブとアリデッドの二人は過酷だった戦場の中でもあの明るさのおかげで癒やしでした。この娘たちのお陰でどれだけ心救われたか。この娘らには幸せになって欲しいなあ。


魔界帰りの劣等能力者 5.謀略の呪術師 ★★★☆   



【魔界帰りの劣等能力者 5.謀略の呪術師】 たすろう/かる HJ文庫

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闇迫る女学院を舞台に 魔神殺しの少年による潜入&調査ミッション開始!!

皆の記憶から消えつつも神獣たちと共にミレマーを救った祐人。
ようやく平穏な日々が戻った……と思いきや、彼の元に緊急依頼が届く。その依頼とは瑞穂の同級生を蝕んでいる呪いについてだった。調査のため、祐人は瑞穂たちの通う女学院に試験生として潜入することになるが、何故か茉莉たちまで一緒で――!?

「祐人……私、祐人のこと……祐人のことが! 」

ついに一堂に会するヒロインたち。祐人を巡ったヒロイン争いも激化する、バトルも恋も詰め込んだ異能アクション第5弾!!

これまで一切交差することのなかった異能者パートのヒロインである瑞穂・マリオンと、日常パートのヒロインである茉莉。それがついに邂逅する事に。修羅場、修羅場必至の事態である!
しかし、この異能・日常の両パートのヒロインが顔を合わせるシチュエーションって、絶対に瑞穂たちの方が祐人の日常の側に乗り込んでくる展開だと思ってたんですよね。瑞穂とマリオンは祐人の日常の方にも興味津々で彼の学校の所在なんかも知る機会を得てましたからね。なんだかんだと理由をつけて、祐人たちの学校に乗り込んでくるのかなあ、と。
まさか、祐人の方が茉莉・一悟・静香の一般人三人を連れて瑞穂たちが通う女学院の方に乗り込む展開になるとは。これは予想もしていなかったので面白い、まさかそう来るとは!
いやだって、瑞穂たちの学校って女子校ですよ。普通、祐人の方が行くとは思わないじゃないですか。祐人だけなら女装して、みたいな展開もあるパターンですけれど、彼の日常を象徴する茉莉たち三人も一緒に、というのは思いもしなかった。
まあ友人に掛けられた呪いの調査のために、瑞穂が強引に祐人を学校に招く裏工作をしたら実家の権力を使ったのが裏目って、茉莉たちも一緒にねじ込まれたわけですから、ある種の瑞穂の自爆でもあったわけですが。
なにしろ、今回の一件をきっかけに茉莉が祐人が異能者である事を知り(いや、前に祐人自身がちゃんと告白したのに茉莉が信じなかったのですが)、祐人が度々周りの人の記憶から消されているという話が真実だと理解することになるのですから。
祐人の仕事の現場を、異能者として戦う姿を見せるきっかけになってしまったわけですからね。それがひいては茉莉自身が気づいていなかった、祐人への恋と自分が一方的に彼に押し付けてきた期待を自覚させてしまう事になったわけですからね。やぶ蛇である。
いや、友達を助けるためという理由があったわけですから仕方ないっちゃ仕方ないのですが。祐人に逢いたいからという邪な気持ちがあったからとはいえ。実際、呪いの件は相当に深刻なもので、呪詛を仕掛けてきている呪術師は並々ならぬ相手だったのですから、祐人に協力を求めたのは大正解だったのですし。
ただ茉莉が祐人への恋心を自覚した事は大きいですよ。今の所、瑞穂もマリオンもなんだかんだと理由をつけて自分の気持ちを正確に把握することは避けて曖昧にしたままにしている段階ですし。
それに、茉莉は一方的にのぼせ上がったのではなく、同時に祐人が周りの人から忘れられる事にどれほど辛い思いをしてきたか。それに自分は気づかずに、彼に自身がどれだけ期待を押し付けてきたか。勝手に自分の理想を押し付けてきたのか。祐人への負債の部分に気づいたのですからね。
自分が相手に対してやってきた事を自覚する、というのはある意味恋を自覚するよりも大事な事なのではないでしょうか。距離感を狭める上で大きな事ではないでしょうか。
おまけに、祐人は茉莉の罪悪感や後悔を丸ごと受け止めて、茉莉がずっと覚えていてくれた事が救いだった、と逆に包み込んでくれたわけですから、茉莉がもうメーター振り切ってしまうのも無理ないですよ。
まあ茉莉の問題は、肝心の祐人が茉莉に対しては以前告白してフラれた件が深く刺さっている上にその後遠征していた魔界の方で新たな恋をした事もあって、茉莉とは終わっているとはっきり割り切っちゃってる所なんですよねえ。まだ、茉莉にはドキドキさせられる事はあっても、一度ケリがついてしまった関係をもう一度進展させるのは、茉莉の方に相当の奮闘が必要なだけに今回得たアドバンテージはそれでようやくハンデを埋めに掛かれた所なのかもしれません。
茉莉は完全に一般人というわけではない、彼女自身知らない実家絡みの背景があるっぽいだけに、異能パートになっても置き去りにされっぱなしでは終わらなそうなので、その意味でもやはり有利はあるのか。

しかし、今回一緒にくっついてきて、祐人の事情を知っている一般人側の人間として多岐にわたってサポートしてくれる事になった親友の一悟が、もうなんていうか完璧な友人キャラっぷりで感動してしまうほどでした。【友人キャラは大変ですか?】の小林少年よ、君が理想とする友人キャラ像を体現するキャラがここにいるぞ!
ムードメーカーとして深刻になりそうな雰囲気をおちゃらけて和ませつつ、主人公の祐人とは軽快なやり取りで場を盛り上げ、一方で縁の下の力持ち的にあれこれと祐人が異能者としての仕事で被る日常での不都合をカバーしてくれたり、色々と辛い思いをする友人を精神面で支えたり、今回は直接異能者関連の事件に一緒に関わることになりながら、一般人の視点から助言したり発破をかけたり、とパーフェクト、パーフェクトな仕事っぷりなんですよね。
祐人に取り付いている神霊たちとも一番深く関わっているのが彼ですし、何気に祐人の事情に一番深く踏み込んでいるんじゃないだろうか、彼。一方で余計な好奇心は抱かずに本当にプライベートな部分にまではズケズケと入ってこないし。
彼がいることで、物語自体がかなり引き締まっているんじゃないだろうか。呪詛の大元が国家規模の国際謀略にまつわるものだとわかって、国際紛争に繋がりかねないと組織の一員として事態の踏み込んだ解決に二の足を踏まざるを得なくなった異能者側の面々に発破をかけつつ、その反応から本当に無理筋なのだという感触を得た途端、即座に自分が無茶を言ってると謝ってのける所なんぞ、此処ぞという時に背中を押すことの重要性と所詮外野からの口出しだという認識の両者をちゃんと理解しているのが見受けられて、ほんと出来物なんだよなあ、彼。

さて、事件の方は状況がだいたい明らかになったところ。相手が用意したワイルドカードが、どうにも本当にヤバい相手みたいなので一方的な蹂躙とはいかないだろうけれど、相手方が知らず虎のしっぽを踏んだのは間違いないわけで。次からはこちらからの逆襲編だ。痛快な展開を期待してしまいます。あと、お留守番を任されて、ついでに身代わり役の大迷惑神霊たちの相手をまたぞろ任されることになった一悟くんの悲喜劇に関しても。ほんとイイやつなので、手加減してやってあげて、ほんとにw


聖剣士さまの魔剣ちゃん 1~孤独で健気な魔剣の主になったので全力で愛でていこうと思います~ ★★★☆   



【聖剣士さまの魔剣ちゃん 1~孤独で健気な魔剣の主になったので全力で愛でていこうと思います~】 藤木わしろ/さくらねこ HJ文庫

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聖剣士ですが最強にかわいい魔剣の主になりました。

国家を守護する誉れ高き聖剣士に任命された青年ケイル。
そんな彼は自らの聖剣を選ぶ儀式で聖剣ではなく、人の姿になれる聖剣を超えた伝説の存在――魔剣を目覚めさせてしまった!
強大すぎる魔剣の力が周囲から危険視される中、自分を主と呼ぶ可憐な魔剣美少女リーシュを前に、ケイルはただただ、思った。

「かわいい」「えっと、主様」「?かわいい。すごくかわいい」

かくしてケイルは孤独な魔剣ちゃんを幸せにするべく全力を尽くした結果、王都を離れて辺境で冒険者を始めることに!?

魔剣ちゃんはかわいい、とにかくかわいい。それである意味話は完結している。可愛い女の子を幸せにしてあげたい、という欲求は世界の真理の一つだ。とても純真で素直で健気で主さまとなったケイルを慕ってくる魔剣ちゃんリーシュ、彼女がただの女の子なら幸せにするなんて簡単だっただろう。何しろ聖剣士ケイルは性格も能力もパーフェクトイケメンなのだから。
問題はただひとつ、彼女が人ではなく魔剣であったということ。戦争など遠い昔のことになった平和な時代、魔獣災害という危機はあるもののそれも冒険者を中心とした対処するシステムが安定的に構築され、人々は平穏に健やかに暮らしている。
そんな中に突如強大な、それこそ一撃で都市を吹き飛ばすような、森を一薙ぎで切り払うような戦略兵器モドキが現れたらどうなるか。当然のように危険視され、封印されかかった魔剣ちゃんを救うため、彼女の行動と使用に全責任を負って監視のもとに国を追われることになったケイルであった。
これで、魔剣ちゃんがその優しい性格通りに自分の力についても抑制的であったのなら、或いは強い自制を持っていたならさほどの問題はなかったのだろうけれど。
彼女は自分を女の子ではなく、魔剣として自認していて、剣である事に強い自負を抱いていた。プライドであり生き方として、剣であったのだ。
そして何より、価値観として荒ぶる魔剣そのものであり、血に飢えた妖刀のそれであったのである。
つまり、切り裂くのが大好きで血を見るのが大好きでぶっ殺すのが大好きな女の子であったのだ、やばい。
可愛い子猫や子犬を愛でるように、とても純真な目でキラキラ輝く笑顔で斬りましょう殺しましょう、と訴えてくる魔剣ちゃん。……それもまたかわいい。
歴代の魔剣の持ち主が、魔に魅入られて人類の敵に成り果ててしまった理由も、こうしてみるとわからなくはない。なにしろ、かわいいのだから。
かつて賢人は語ったものである。「かわいいは正義!」
しかし、そこで可愛いのみに屈しなかったのが聖剣士ケイルであった、よっ主人公! 彼女を幸せにするということは彼女の望むままに魔剣として振るって上げる、というのも一つの道だろう。しかし、人々を守り世界を平和に保つことを至上の命題としてきた聖剣士として、その道はどうしたって選べない。かと言って、魔剣ちゃんに剣としての自分を捨てろ、ただの女の子として生きろ、というのもまた彼女の生きる理由そのものを踏みにじる事。お前はいらない存在だ、と突きつけることになる。世界の平和と魔剣ちゃんの幸せ、その矛盾する双方を両立するために男ケイルは奮闘するのである。これぞ、パーフェクトイケメンにのみ許される崖っぷちの綱渡り。若干転げ落ちても猛スピードで崖を這い上がってこれるスペックと根性の持ち主だからこそ頑張れるインポッシブルミッション。
というわけで、つい気を抜くと斬殺を強請ってくる(それ以外はとても善良で穏やかで健気な少女なのだ)魔剣ちゃんを言い包めてその力の開放を防ぎつつ、途中「性癖・犬」と化したハイエルフや監視役として姿を隠したまま矢文でしかコミュニケーションを取ってこない矢文ちゃん(通称)を仲間?に加えつつ、冒険者稼業(魔剣ちゃんが仕えなくて他の剣や武器を使うと魔剣ちゃんが拗ねるので素手で)で無双しながら、魔剣ちゃんをその呪縛から解き放つために駆けずり回る聖剣士のハイテンションコメディ。
この畳み掛けるようなギャグとコメディにノれて、ひたすら可愛い魔剣ちゃん(&矢文ちゃん)を愛でられたら結構楽しい作品でした。
いや、ケイルくんいい具合に乱心してて、結構繊細な行動を求められる立場のはずなんだけれど、かなり豪腕で物事を解決するのがまたイカしているというか頭おかしくなってるなあ、と。魔剣ちゃんの可愛さに完全にヤラレながら正気でもあるというある意味複雑なキャラがかなり面白おかしく成り立ってるのが地味に凄い。魔剣ちゃんの事となると脊髄反射でとんでもねー行動に打って出てそれをスペックで押し切りやがるし。
また完全汚れ役の変態ハイエルフがいい味出していて、色々便利な上にオチ的にもだいたいコイツが悪い、で収まってくれるので、ある意味美味しいところを一人で請け負っているキャラである。
あと、矢文ちゃんもこれわりと魔剣ちゃんに匹敵するひたすら可愛い枠なんですよね。屋内でどうやって矢文してたのかについては追求しない。あと、どれだけ矢を持ち歩いているのか無限錬成か、というところも追求してはいけないし、途中で我慢できなくなって監視役にも関わらずさらっと合流してきたのも追求してはいけない。だってかわいいし。
おおむね、可愛いから、で解決できるし許してくれる平和で優しい世界である。まあそれで押し切るケイルくんの豪腕唸ってこそだけれど。


魔界帰りの劣等能力者 4.偽善と酔狂の劣等能力者 ★★★☆   



【魔界帰りの劣等能力者 4.偽善と酔狂の劣等能力者】 たすろう/かる HJ文庫

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最強のランクDがスルトの剣をぶっ潰す!!

『スルトの剣』の首領ロキアルムによる最悪なショーは開始された。召喚された万を超える妖魔の軍勢が、ミレマーの七つの主要都市に襲いかかる。
家族が夢見た祖国、その未来が壊されるのを前に、自らの無力に涙するニイナ。
その姿は祐人が本気を出すには十分すぎるほどの理由だった!!

「お前の計画はこの劣等能力者の……このたかがランクDの偽善と酔狂で! 跡形もなくぶっ潰してやる! 」

最弱劣等の魔神殺しが無双する、大人気異能アクション第4弾!!


伊達と酔狂で戦争をやっていたのは【銀河英雄伝説】のダスティ・アッテンボローでしたか。対して、この堂杜祐人は偽善と酔狂で戦うのだという。でも、彼のそれを偽善と自嘲するのは流石に卑下が過ぎるだろう。彼のそれを酔狂というにはあまりに真摯で直向きすぎる。
義を見てせざるは勇なきなり。
ミレマーという国を救うために、多くを費やし自らの人生を焚べた二人の男の戦いは、彼らの戦いに共感し臥薪嘗胆耐え続けた同志たちの忍耐は、胸打たれる尊さでした。これを義と言わずして何という。でも、これがこの国の中だけの事で完結していたのなら、余計な手助けは必要なかったでしょう。彼らの戦いは彼らのものでもあったのですから。
でも、スルトの剣というよそ者が、この国の人達の思いも事情も何も汲まず、徹底的に無視した上ですべてを踏み躙ろうとしたことは、まさに彼らの戦いを穢すものでした。理不尽で、悪意にまみれた醜い欲望の発露でしかありませんでした。
彼らの悪意に、志半ばに無念に倒れる人が居て、本来流すはずではなかった悲しい涙を流す娘がいました。いつか、別れ離れた行道が交わり、少女には実の父と育ての父という尊敬できる二人の父親が出来て、二人に共に可愛がられ慈しまれるときが来るはずだったのです。
辛い思いを乗り越えて、悔しい気持ちを克服し、約束を遂げて、報われるべきときが、彼らには来るはずだったのです。
それを、あまりにも一方的で自分本意な正義で虫けらのように踏み躙った。それを怒るのに、理由が必要でしょうか。当たり前に抱くであろう当たり前の義憤であり、怒り。これこそ、正しき怒りというやつなのでしょう。
尤も、祐人が自分の行為を偽善と酔狂と称したのは、そんなツマラナイ理由で虫けらのように踏みにじられる無念さを、黒幕に味わわせてやりたい、という想いからのようにも見えたので、決して本気で言っているわけではなかったのかもしれませんが。
でも、あれだけ怒り心頭で激高しきっている姿を見て、偽善や酔狂と思う輩はそうはいないんじゃないだろうか。
怒りという感情は、それだけ火のように激しいものだけにその生々しい激烈さを文章に乗せるのは、案外と難しかったりする。言葉の上では怒っているのはわかっても、その声色を、声の震えを、怒りのあまりの抑揚の欠如を、言葉の中から感じさせるような「生の感情を乗せる」というのは、絶妙なニュアンスを台詞をはじめとする文章に込めることが必要なんですよね。
どうしてそんな感情を抱くに至ったのか、というバックグラウンドをそれまでに積み重ねて起爆剤として溜め込む、というのも勿論必要なんだけれど、それだけではやっぱり爆発の火力が足りなくなってしまうのである。
だからこそ、怒りの表現は、特にこいつは絶対に許さない、という頭が真っ白になるような凄まじい感情を溢れさせた描き方は、描き切られた時にその熱量は読み手にまで火を付けるのである。
そしてその怒りが正しく振るわれ、相手がこれ以上無く徹底的に無様にやられるカタルシス、痛快さ。黒幕のロキアルムがまた、見事なくらいのやられ役というのもあったわけですけれど、今回の祐人の戦いには実に良い「怒り」がノッていました。
神獣連中はせっかくの出陣だったのですけれど、相手が数多いとはいえ雑魚妖魔というのもあってか、こっちはちょっと思ったよりも目立たなくてちょっと勿体なかったかも。驚き役が異能を知らない普通の将兵だと、彼らがどれだけ隔絶しているかというのがわかんないですしねえ。戦闘シーンもあんまりなかったですし。

しかし、またぞろ祐人があの自分の存在が忘れられてしまう、人との縁を消費する力を使ってしまったわけですけれど、縁深い人はもう忘れる事無く覚えていてくれるので、むしろ祐人の正体が他に知られないようになる助けになってるみたいなんですよね。機関にも忘れられているし、今回の大事件を解決した人物が誰なのか、捜査の手もこの場合かなり強引に絶たれてしまう事になるでしょうし。祐人自身は特に工作しているわけではないのに、彼の存在が秘されていくという。
一方で、誰もがその存在を忘れ去り覚えていないにも関わらず、ミレマーで共に彼と戦った人たちの心のなかには、確かに掛け替えのない戦友として顔の見えない誰かの姿が心に焼き付いている。忘れていても、決して忘れられない英雄の雄姿。図らずもそれが裕人のヒーロー性を色濃くしている一因にも見えるんですよねえ。

にしても、なんか、この祐人忘れられ事件の一番の被害者が、本人の祐人じゃなくて彼の日常パートをサポートしてくれている親友の一悟というのがかわいそうと言うかなんというか。純粋に友情から、彼の無断欠席をフォローしてくれていただけなのに、この扱いはちょっとかわいそうだぞw
彼、マリオンと瑞穂が襲来してきたときも、幼馴染の茉莉との間に仲裁に入らされて場合によっては祐人よりもひどい目に合いそうなんですよねえw なんか、そういう星の下に生まれてそう。
ってか、祐人はマリオンと瑞穂が自力で思い出してくれたの嬉しかったのはわかるけれど、唯一祐人の事を忘れずにいる茉莉が起点に思い出してくれた一悟や静香とはまた別に、茉莉関係なく起点なく思い出してくれたから特別!みたいな言い方をしてしまったら、そりゃ彼女らいい気分なっちゃうじゃないですか。この微妙に口がうまいというか無意識にノセてしまうところは禍の元ですよ、うん。
しかし、瑞穂とマリオンはともかく、ニィナまで引き続きヒロインとして参戦というのは予想外でした。そこまで深い付き合いでもなかったですし、現地のゲストヒロインという立場かと思ったのに。ここまで片っ端から出てくるヒロイン拾って落とさないようにしてたら、ちょっとヒロインの数がえらいことになりそうなんですけど。同居の神獣たちだってたくさんいるのにねえ。
次回以降、瑞穂たちに学校と住所を教えてしまった以上、襲来してくるのは間違いないでしょうし、そうなると今まできっぱりと分けられていた異能者パート、学校パート、自宅パートがついに合流することになるのでしょうか。どう顔を合わせても修羅場になりそうw


インフィニット・デンドログラム- 14.<物理最強> ★★★★   



 インフィニット・デンドログラム- 14.<物理最強>】 海道左近/タイキ HJ文庫

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対するは、<最強>

二国間による講和会議も決裂し、戦闘状態へと移行する両陣営。
レイvs<.物理最強>【獣王】ベヘモット。
アズライトvs【衝神】クラウディア
シュウvs【怪獣女王】レヴィアタン
お互いに譲れないもののため、各々全ての力をかけて衝突するこの戦いの行方は果たして――。
レイがゲームを始めて以来、最も過酷な戦いの幕が今上がる!
大人気VRMMOバトルファンタジー、決死の第14巻! !

クラウディアの抱えていた真実、そういう事だったのか。いや場合によっては、兄貴と合体とか融合なんていう可能性も想像していたんですよね。アズライトなどの回想からして、クラウディアの双子の兄というのは実在してアズライトと交遊もあったようですし。それが、現状一つの身体に同居しているのを示唆するような描写が続いたとなるとねえ。
ドライフ皇国はただでさえ、機械帝国! って感じで生体改造とかもガシガシやっている以上、二人の人間の精神を移植して、とかもっと物理的に合体融合して、みたいなのもやっても不思議でない印象がありましたし。【衝神】と【機皇】の二重取得とか、どう考えても普通の人間じゃないじゃないですか。
さすがにそこまでの最悪の予想通りとはなってなくて安心した、というべきかむしろクラウディア一人でこれ賄っていたと考えるとこれはこれで最悪なんじゃ、と思わないでもない。
いや、それもう天才すぎるを通り越して、バケモノじゃないですかー。ともあれ、アズライトへの愛は紛うことなき彼女独りのものだったわけですな。アズライトに一目惚れしてしまったが故に、今の性格を瞬時に構築してしまった、とか凄いは凄いんだけど、重いわー!
ただ、アズライトはその重さに平然と耐えれてしまう、というか重いとか感じないタイプだよなあ。きっぱりと友情までで線引きしちゃってますが。
二人の決闘は辛うじてアズライトに軍配があがりましたけれど、終わってみるとクラウディア、このときの全力ではあったけれど、まだ余力はあったんだよなあ。というか、月夜先輩の治療でパーフェクトクラウディアになってしまったのでは。
対獣王戦は、まさにこれぞジャイアントキリングというような、圧倒的強者の攻略戦になっていて燃えました。ここまで差があると、もはや詰将棋並に一手一手最善を尽くし、振り絞れるだけの全力を発揮して、ミスも無駄も一切なくして、ようやく届かないはずの頂きに指を引っ掛ける、くらいなんですよね。いやほんとに、まさに一手一手を時間を凝縮したようななかで打っていくんですよね。それも場当たり的にその時効果あるものではなく、先々のための積み重ねであり、伏線であり、埋伏であり、仕掛けであり。後々になって決定的な効果を発する手を瞬間瞬間打ち放っていく。一方で、その場その場も凌がないと、まさに瞬殺されてしまいますから、綱渡りの綱を全員で全力疾走するようなものだよなあ。
しかし、これぞジャイアントキリング、という見どころたっぷりの熱い戦いでありました。
てか、地味に月影先輩の影に潜る能力、これ自分だけでなく味方のユニットも、というあたりで実質MVPだったんじゃないでしょうか。これのお陰で、圧倒的弱者側だったこっちが主導権を握り続けられたようなものですし。
ここに来て、ネメシスによってレイのあの不屈の名前の由来ともなった、諦めず体中ボロボロになりながらも決して倒れず屈せず不可能に手を届かせるあの意志力の根源が語られていましたけれど、やっぱりあの「後味が悪い」というセリフは決め台詞なんかじゃなくて、本音も本音、精神の負荷をこぼしたものでもあったんですなあ。ネメシスがあれだけ深くレイの内面のことを理解している、というのも実に恋女房らしくて良いのですけれど、この娘はこうしてみると献身の娘よなあ。

そして、皆がディスペナも加味して、全員の力でなんとか獣王の身に致命の一撃を届けたところで、最後に月夜先輩の出番である。月夜先輩も、最善と全力を尽くしました。尽くしてしまいました。この人、頑張るとクソ外道の卑しんぼムーブになってしまうの、どうにかできませんかねw
獣王も自分事よりもクラウディアのことで追い詰められているの、あからさまだったのも悪いんですけれど、実際問題イーブンか月夜先輩の方が分が悪い状況だったと思うのですけれど、そこから平然と倍プッシュするこの強欲さ。いや、そこで素直に言い分を聞くのではなくさらに奪えるものは奪ってしまう強かさはまさにタフネゴシエーターなんですけど、ちゃっかり自分の懐にも利益を忍ばせるこの守銭奴っぷりたるや! こういう所カルト教団の教祖というより悪徳商人だぎゃ。いや、正しく現代のカルト教団の教祖らしい、というべきなんだろうか、これ。みんなの力で勝ち取った判定勝ちだったにも関わらず、自分だけこっそり金巻き上げるあたりが流石としか言いようがない。

しかし、辛うじて判定勝ちを勝ち取れましたけど、そのままやってたらアウトでしたでしょうし、獣王もこの戦いでは随分と自分に制約をつけていましたし、それ以前に本来ならば獣王はレヴィアタンとセット、コンビで戦ってこそ、なわけですから、実際問題半分の力で戦ってたようなもんだよなあ、これ。
改めて交渉で、今度こそ戦争で決着。それもティアン抜きのマスターだけで、という形になりましたけど、まだまだクライフ皇国余力あり、ですよねえ。まあまだ王国側も今回参戦出来なかったマスターも結構居ますから、挽回の余地はあるのでしょうけど。
と、その前にまだ王都強襲の方が正式に決着ついていないみたいですし、むしろあっちでの出来事の方がこの世界にとっては本命みたいなんですよね。管理者側にえらい不穏な動きを、この王都襲来に合わせて見せてきていますし。次回にもまだ動乱続く、か。


デッド・エンド・リローデッド 2.不倶戴天のトゥーム・レイダー ★★★★   



【デッド・エンド・リローデッド 2.不倶戴天のトゥーム・レイダー】 オギャ本バブ美/ NiΘ HJ文庫

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時空支配技術をめぐり、夕陽が宿敵と激突!超絶タイムリープアクション、第二弾!
失われたはずのヒトガタ【旭】の頭部パーツが、海中から引き上げられた挙句、何者かに強奪された!?
激戦を終えたばかりの夕陽(ゆうひ)と契那(けいな)のもとに、息つく暇もなく、そんな情報が飛び込んでくる。
二人は、直ちにその情報の発信源である東南アジアの街・ザイコンに向かうことに。
そこで夕陽は、かつて自身が所属していた傭兵部隊「葬儀社」を裏切った男「墓荒(はかあらし)」と激突する!
謎めいた美女・西比嘉(にしひが)その他、新キャラも多数登場する超絶タイムリープアクション、第二弾!

そう、そうなんだよ。重火器やヘリでドンパチ、さらに人型ロボットまで出てきて市街地で交戦、となるとそれなり以上に発展していてほしいんですよね。そして治安が悪く、街のどこかしこでケンカどころか発砲音が響いていたらなおよし。雰囲気的には無国籍都市、という風情ならとびっきり。
と、まあスパイ・アクション! エージェント同士が街中で命がけで機密や最重要人物を奪い合うというシチュエーションとしてはこの東南アジアの海辺の若干リゾート地が入りつつも警察が役に立っていないような治安最悪でマフィアやギャングが街を支配している都市、というのが最高の舞台の一つなんですよ。分かってる、うん分かってるね。
前回はいわばタイムリープによる繰り返しモノだったのが、今回大胆にスパイ・アクション映画にフォームチェンジ。こうなると、メインとなる登場人物も夕陽と契那というある意味二人だけに限定されていた所から、夕陽たちが追うことになるテロリストグループに、夕陽たちに協力してくれる元戦友の葬儀社以来の仲間たち。そして夕陽たちと同行しながら社の幹部として彼らを監視し、一方で独自に暗躍する謎の仮面の女。と、重要キャラが一気に登場してくるわけだけれど、これが全員個性的で存在感があって、登場するだけでシーンが華やぐピリッとしたキャラクター揃いで、わんさかと作中のキャラを増やしてもごちゃごちゃになるどころか、余計勢いづける書き手だったのだと再認識することが出来た。
敵であり夕陽にとっては妹の仇でもある裏切り者の「墓荒」。こいつがまたとびっきりの変態で、言動が突き抜けてぶっ飛んでいるのがある意味分かりやすい悪役として跳ね回ってくれる。対して、かつての戦友たちであるドゥウェインとジョーがまたこれ、強いわ頼もしいわ、何より見た目のゴツさとは裏腹にまだ18歳な夕陽のメンタルを気遣い、色々と配慮してくれる大人として得難いキャラなんですよね。また見た目からしてごっついしw うん、オネエキャラは古来より敵でも味方でも極めて強キャラであると同時に精神面での支えにもなるんだよなあ。
とまあ、敵味方の陣営が揃ったところに、さらにCIA(ラングレー)の特殊作戦チームが別件から墓荒を追いかけて街に現れたものだから、獲物を奪い合う三つ巴の争いに。そうそう、別の勢力が首突っ込んでくるのもアリなんですよね。さらに背景となる街の様相は、新旧のマフィアとギャングが街の支配権をかけて抗争中、というドンパチ真っ盛りなものだから、治安的にも火を吹く寸前なところに火の付いた火薬を持った三者が飛び込んでくるものだから、大爆発ですよ大爆発。
この街中でもお構いなしのド派手なアクションの連続。潜伏先をそれぞれが探し回る探索パートから、一転カーチェイスあり、地下鉄での追いかけっこあり、重火器にヘリに人型ロボットになんでもござれの市街戦。逃げ惑う市民たち、打ち合うマフィアたちをかき分けながらの、追跡劇。
うんうん、これぞエンターテインメントアクション映画でありますよ。

意外だったのが、夕陽たちの監視役でもあった皇和重工の秘書である西比嘉実麻が予想以上に表では動かなかったこと。彼女の正体については、次巻以降か。ってか、ほぼ登場した時点で予想はしてしまえるのだけれど。それを補完するような情報が、彼女の僅かなアクションからえらく克明に描かれていましたし。
今回は相手が夕陽の仇という事もあり、夕陽もメンタルに余裕なく切羽詰まっていたのですが、それを癒やして慰めてほぐしてみせる契那さんの言動が、完全に幼女じゃなくて「女」なんですよね。アクション主体ということで研究者である彼女は同行しつつも出番はやはり限定されてしまったのですが、その少ない出番でスナイプ決めてきましたがな。
ほんと、この娘さんメンタルにも幼いところないですし、精神面は完全に大人であると同時に女としての武器や長所も弁えきっていて、その上で純粋に夕陽を愛している事を偽らずまっすぐ指し示しているわけで、そりゃ年に似合わぬ妖艶さも兼ね備えてしまいますわー。
夕陽くん、あれでまだ18歳の初心な少年なのですから、ちょっと敵わないでしょう。絵面は完全に犯罪なのですが。作中でも敵味方問わずに、顔面ゴリラすぎて見た目と年齢があってなさすぎる、と言及される彼ですが、実際こいつ20代にすら見えないんだよなあ。30代でも全然不思議でない見た目なのですけど!

さて、内容としては派手なアクション映画さながらのドンパチで楽しかったのですが、話としては次回に続く伏線回であり、新しい登場人物の紹介でもあったのでしょう。墓荒の依頼人が気になるところであり、実麻がどうしてそのポディションにいるのかも興味深いところですが、ともあれ次回が楽しみです。うん、面白かった。


魔界帰りの劣等能力者 3.二人の英雄 ★★★★   



【魔界帰りの劣等能力者 3.二人の英雄】 たすろう/かる HJ文庫

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少女たちの一撃が、妖魔の大軍をうち滅ぼす!! 瑞穂とマリオン、覚醒の刻!!

アジアの小国ミレマーで将軍の護衛任務につく祐人、瑞穂、マリオンの3人を、膨大な数の妖魔、魔獣が襲う。
すぐに飛び出した祐人は二人を守るためサポートに回るが――ただ守られているだけだった少女たちの姿はもうそこにはなかった。

「……行きます!私と私の仲間を守るために!」

新人試験の屈辱をバネに、祐人に追いつかんとする瑞穂とマリオンの無双が始まる!!
そして、一国を揺るがす大事件に、最弱にして“魔神殺し”の少年もまた徹底抗戦の覚悟を決める――
サブタイトルの二人の英雄、これがメインキャラとなる能力者たち、瑞穂とマリオンの事だけではなくて、ミレマー国の未来のために人生を賭して戦う男達のことだったんですよね。
この人達の生き様がまた格好いいんだ。
祖国の未来のために、国民の希望のために、という夢や理想というものだけではない。痛みと哀しみを乗り越えて、愛した人のために残された家族のために、この国の未来を切り開くのだと決意して。
同じ女を愛した友として、影と日向に別れてなお同じ志のもとに戦うと誓った。
まさに二人の英雄なのである。
そんな生き様を示す人たちに手を差し伸べてこそ、ヒーローでしょう。
この男達の生き様には、思わずウルウル来てしまいました。これ、マットウ将軍とグアラン宰相が出世することになったデモの鎮圧作戦を見てたら、とても二人が組んでたなんて思わないですよ。偽装は本当に完璧だったんじゃないだろうか。まず、気づかれてなかっただろうなあ、これ。
図らずもマットウ将軍の護衛任務についた祐人たちは、彼ら二人の英雄の歩みの前に立ちふさがる生涯を切り開く剣の切っ先のような活躍をみせる。それだけの理不尽が、祐人たちが大活躍しないといけないほどの脅威が彼らに襲いかかっている、とも言えるんですよね。
本来ならこの国で起こるはずだった革命はもっと穏当な形ではじまりと終わりを迎えたはずなのに、独裁者が自分を守るために呼んだフリーランスの能力者が、とんだ厄災だったわけだ。
でも、二人の英雄の確かな覚悟を見せてもらったあとだけに、思い入れも全然違ってくるのですよ。ただの護衛対象とは見れなくなるし、彼らのもとで戦う兵士たちもただ言われるがまま戦う一兵卒ではなく、未来を信じて命がけで戦う戦士に見えてくる。
実際、みんなが一丸となって戦うんですよね。
祐人たちは獅子奮迅の活躍をみせるわけですけど、同時に個人である彼らだけではどうしても立ち回りきれない部分を、マットウ派の兵士たちが思いの外頑張って戦ってくれるんですよ。一般兵なんて、そこらへんの作品じゃ十把一絡げに蹂躙されるだけがお仕事みたいなモブ扱いが常套なのですけど、本作だとほんと頼りになるし、グエンさんはじめとして皆が同志という感じなのですよ。向こうからも異邦人である瑞穂たちに厚い信頼を寄せてくれてるし、逆に祐人たちサイドも兵士たちに頼れる部分は頼って任せて、とこちらも信頼しあってるので、祐人が立案した一連の作戦も綱渡りながら破綻せずにギリギリ耐えきって進んでいくんですね。
一方で、情報が敵側に流れている可能性を常に考慮して、防諜にしっかりと心配りをしているあたり、祐人の戦慣れが感じられますし、また自分ひとりで全部なんとかしようとせず、実際個人でどれだけ強くても支えられるのは一局面だけ、というのを心得た作戦立案は柔軟性があって非常に頼もしいんですよね。逆に強い一個人なら一局面を支えられる、という考え方で瑞穂やマリオンを頼みにしている、という含みもありますし。
これにしっかりと、期待以上に応えて予定外の展開にも臨機に対応して作戦の破綻を防ぎフォローするような、戦場慣れした視野の広さを見せてくれたり、と瑞穂たちの成長も著しくて、相互の信頼の厚さがほんと心地よいものがありました。
ピンチピンチの連続だけれど、むしろそれを打開していく様子が痛快なんだなあ。

能力者機関も、一連のミレマー国での事件の裏に非常に危険なテロリストの暗躍がある、と察知した途端に全力で迅速に動いて戦力の投入を図っているあたり、前にもちらっと思いましたけれどこの組織、変に凝り固まってなくて健全充実した運営がなされてる感じなんですよね。組織自体、結構若いみたいだし、所属する組織としてはこれ頼もしい限りで。

今回は祐人が最初から最後まで海外勤務なので、日常学校生活の方はパートがないのかと思ったら、祐人の無断欠席をフォローすべく親友の一悟が奮闘しようとして、一人苦労を背負い込む話になってて、なまじ事情を聞いてしまったがためにえらい面倒を背負うはめになったな、この親友w
ってか、あの人外の若イケメン、本気で出自がとんでもねーんですけど。土地神風情じゃねーじゃん!! ってか、傲姓なんで気づかなかったんですけど、敖の字の方じゃないのかしら。
これ、他の面々も傲光さんと同格ってことなんですよね。そりゃ、ひっくり返るわ。

しかし、2巻3巻と続いてまだエピソードが終わらないとは思わなかった。長期シリーズが珍しくなかった十年二十年昔でも、シリーズ2巻目という最序盤からいきなり上中下の三巻で1エピソードというのは珍しかったと思いますよ。贅沢な構成ですが、それに見合うだけの盛り上がりは見せてくれていると思うので、次巻は見合うだけのクライマックスを期待してしまいます。



魔界帰りの劣等能力者 2.神獣の契約者 ★★★☆   



【魔界帰りの劣等能力者 2.神獣の契約者】 たすろう/かる HJ文庫

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最弱の少年が、ヒロインたちの助っ人に!?

異能者試験を襲った準魔神級の吸血鬼を退けた祐人。どうにかランクD異能者になった彼の初仕事は、アジアの小国ミレマーで護衛任務を行う瑞穂とマリオンへの増援だった!!
ランクAの彼女らを煙に巻く不穏な敵に、ランクDでは力不足に思われたが――
さらに、仕事の準備に帰宅した祐人は、何故か宴会を開いていた人外たちと鉢合わせ!!立ち退きを迫られ、美しく強い神獣たちと戦う羽目にもなってしまい――!!
新たな出会いと再会を経て、“最弱"にして魔神殺しの少年は恐るべき陰謀に立ち向かう!!


封印された能力を解放する代償として、人の記憶からその存在が消えてしまう祐人。幸い、身近な友人たちは幼馴染のお陰で初対面からやり直すなんて真似をせずに済んでいたのだけれど、能力者機関の方は試験責任者の日紗枝さんからして祐人のこと覚えてなかったんですよね。
これ、誰からも忘れられちゃってるのなら、機関からの仕事なんかも来ないんじゃないの? と危惧してたら、ほんとに仕事来なくて日雇いバイトするはめになってた祐人くんが不憫すぎるw
学校終わったあとに、肉体労働ですもんね。色々と切羽詰まりすぎているw
幸い、消えるのは人の記憶からだけで書類やデータなんかはちゃんと残ってたお陰で、たまたまバイト先で出会った能力者機関の秘書さんが問い合わせてくれたお陰で、こんなやつ試験に居たっけ? と首を傾げられながら、仕事を割り振られることに。
それで、どうして瑞穂とマリオンの増援で海外に行くことになるのやら。新人とはいえAランクの二人が派遣された、紛争地帯として名高い治安悪い国というだけでもアレなのに、事前の想定と違って面倒なことになってる所にどうして誰も覚えてないけどデータ上ではわけのわからない評価になってる祐人を送ることになるのか。人手不足が極まったせいだけど、日紗枝さんこの人想像以上にいい加減だぞw

能力者機関とか知らない普通の人から見たら、傍目には完全にヤバい仕事である。バイトで高校生を海外に派遣、しかも外務省通達で渡航が制限されている紛争国に、ですもんね。それも学校休んで一週間。なぜこれを何も知らない茉莉たちに相談しようと思った、祐人くん。いや、報告連絡相談は大事でそれよくわかってるこの子はある意味良識的なんだろうけど、普通こんなん相談されたら反対するわぃ! 絶対止めるわい!
友達がなんかヤバい所に首突っ込んでる、と思っちゃうよ。金に心底困っているのは前回知ってしまったわけですし。まさか、この流れで一悟に異能者云々のことまでまるっとばらしてしまうとは思わなかったけど。自分から話すのかー!! いや、一悟が祐人のこと忘れていた件をかなり真剣に悩んでいるのを知ってしまったら、祐人としても黙ってるわけにはいかなかったのだろうけど。
特に危険が及んだりトラブルが発生した流れで告白するのではなく、一悟の謝罪から告白するのは祐人の誠実さを感じられて、むしろ良かったとは思うんですけどね。祐人としても、一悟が忘れていた事よりも思い出してくれた事の方が、そして先日の件では忘れずに居てくれたことが彼にとってもとても嬉しい事だったのでしょうし。この二人はほんといい親友関係で、素敵だと思います。直後にさっさと祐人が社会的に死ぬのを見捨てて、むしろ積極的に売っちゃってましたけどw

しかしこの作品、徹底して異能者のお仕事編と、学校と家周りの日常編は分けて進行するんですね。殆ど、別の2つの話を進めているようなもので、そりゃこの一巻じゃ収まらなくて前後編みたいになりますわ。かなり贅沢な構成で、これそれなりに長期シリーズになる目算が立ってないとできませんよねえ。
場合によっては下宿先の屋敷の話はさらに分けて別枠になるかもしれませんし。まさか、学校の友達グループとも異能者グループとも違う一団を、一気に同居人として参入させるとは。祐人の同居人になる神獣たちは、仙道関係に近しいので、異能者のお仕事にも学校サイドにもどっちにも首突っ込めそうな立ち位置っぽくはあるのですけど。
でも、ただでさえお金ないのにこんなに居候増やして生活費深刻に大丈夫なんだろうか。この人外ども、とてもじゃないけど自分で稼いできて家にお金入れてくれるようなタイプに見えないんですけど。いや、性格的に云々じゃなくて人間の社会に関与していないという意味でも。性格的に、食うばっかりになりそうな奴も多いですけどw

というわけで背に腹は代えられないので、ヤバい仕事である海外派兵に参加することに。海外派兵ですよね、これ実質。
試験の時の記憶はないものの、感覚的には祐人の事覚えているかして、すんなりとマリオンと瑞穂に受け入れてもらう祐人。ここで彼が見せる顔はのほほんとしつつも、修羅場をくぐり抜けてきた経験豊富な前線経験者、という貫禄なんですよね。こればっかりは初陣の瑞穂たちでは意識が及ばない領域で、ぶっちゃけこの祐人の見識や防諜に関する実践知識、作戦立案能力だけでも能力関係なしに凄く有能なんですけど。自分で戦わない参謀役でも、祐人くん全然行けるじゃないですか。
あくまで自然体で、普段着のように慣れた様子でテキパキと指示する姿は、瑞穂たちとしても頼もしいなんてものじゃないでしょう。これはどんどん好感度バキバキあがっていくのも当然ですわなあ。

というわけで、ミレマー国編は祐人が加わって逆襲の段取りを整えたいい所で次回に続く、となっているので、早い内に次読もう。


魔界帰りの劣等能力者 1.忘却の魔神殺し ★★★☆   



【魔界帰りの劣等能力者 1.忘却の魔神殺し】 たすろう/かる HJ文庫

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最弱の体質を規格外の才能で覆す!!

堂杜祐人は霊力も魔力も使えない落ちこぼれ異能者。だが実は、魔界へ赴き人知れず魔神を殺した――“最強"の少年だった!!
高校進学の傍ら異能者の認定試験を受ける祐人は、劣等能力者として場違いだと見下されるはめに。
そんな中、祐人はマリオンと瑞穂という天才美少女二人と仲良くなり、さらに試験で他を圧倒する力を見せつけ、本人の自覚なく注目を集めることに――!!
美少女二人を襲う凶悪な敵を相手に、“最弱"にして魔神殺しの少年は無双する!!
劣等×最強の異能アクションが堂々開幕!!

異能者の認定試験受けに行った理由が、生活費を稼ぐためという世知辛さ!
いやまじで、祐人くんの困窮具合……同居の爺さんが放蕩で散財してしまって家を出るはめになり、紹介された下宿先はガチの廃屋で暮らすに暮らせず庭にテントを張って野営暮らし、という高校入学早々にえらい境遇になってるのを切々と語られてしまったので、収入が確保できそうな試験に応募する祐人の必死さがよく伝わってくるんですよね。藁にもすがる思いなのが身につまされる。
元々、異能者とはいえ堂杜家は業界には知られてない存在であると同時に、祐人自身はその堂杜家の能力も使えなくて、周囲の人たちの尽力によって第三の道で異能界隈では謎とされてる仙道を学んだ、上で魔界という現世とは時間の流れが違う世界に三年間とある事情から渡って戦った経験の持ち主。
つまり、祐人の能力というのはこの現世で幅を利かせている異能者の知るルールからはかなり外れていて、彼らの見地や規範では測れない部分が多々あるということ。
祐人自身も、生活費目当てで試験に飛び込みしたので、そのへんよくわかってないのでのほほんとしているのだけど、試験管たちも今までの試験基準ではうまく測れないので書類としてはDクラスでの認定になったけれど、彼が規格外というのはちゃんとわかってるんですよね。その意味ではDクラスで、とはいえちゃんと合格にしたというのはむしろ柔軟な対応とすら言えるのかも知れない。試験内容を受けての試験官同士での講評会議でも、判断基準に当てはまらない結果を前に頭を悩ませつつ結構妥当な意見を述べあっていましたし。前例にならって、それに当てはまらないのはどうあってもダメ、なんて頭の固い事をいうような人もいませんでしたし、組織としてもこの能力者機関ってだいぶ健全なんじゃないでしょうか。
そんな混乱をもたらしている祐人なんですけど、本人はとにかく生活費、下宿の修繕費、先立つもの!という目的があるために、合格のために必死、それはもう必死なんで正当な評価とかそういうのは全然頭にはなく、結果に見合わないDクラス合格でもとにかく合格できたという事で大喜び、という一杯一杯な姿がねえ、なんか可愛いんですわ。
魔界での三年間があるために、実際は同世代よりもちょっと大人なはずなんですけど、どの場面でも……それこそ戦闘の場面だろうと学校生活のなんでも無い一幕でも同じように一生懸命で、わたわたと頑張っている様子がなんか愛嬌があっていいんですよねえ。力量と裏腹の増長していない自然体、あんまり余裕なくあたふたしている姿がなんとも可愛げがあっていいんですよ。
幼馴染の茉莉がついつい口うるさく面倒見てしまうのがよく分かる、なんだか頼りない立ち居振る舞いなのだ。でも、いざという時はビシッと引き締まって頼もしい姿を見せてくれるあたりなんぞ、実に魅せてくれる主人公なのである。
その魔界で生き延びた能力にも相応以上のリスク、代償があって、それがために軽々に封印を解く事が出来ないんですね。その代償が、とてつもない心の傷を彼に刻んできたのだけれど……。
この作品って、異能者界隈のパートと日常の学生生活とのパートが結構はっきりと別れていて、学生生活の方のパートにも結構な分量が割かれてるんですよ。そこでのワイワイと賑やかな、等身大の十代の若者たちの青春模様なんかも祐人の貧乏生活含めて実に楽しいのですけれど、彼の代償を鑑みるとこの日常生活がかなり大事、重要になってくることがわかるんですよね。
幼馴染である白澤茉莉、中学からの親友である袴田一悟、茉莉の友人で祐人とも中学での同級生だった水戸静香。この学校での仲の良い彼らとの関係が、本当の意味で祐人の支えになってくるんですね。
特に、一悟がこいつ滅茶苦茶いい奴なんですよね。友達思い、なんてもんじゃないんですよ、彼の祐人への友情は。
どうやら、祐人の代償へのカウンターとなっているのは茉莉みたいなんだけれど、一悟の後悔の言葉を聞いてしまうと、一悟がどれほど本気で祐人を心配しているのか伝わってきて、感動すら抱いてしまったんですよね。あの告白を聞いた静香なんか、ちょっとグラっとキてもおかしくないんですけど。自分はめちゃグラっと来ましたし。惚れるわー。
一方で茉莉の方は幼馴染拗らせちゃってまあ、本来大勝利確定だったにも関わらず、大失敗しちゃってるんですよね、この娘。そのせいで、魔界の三年間を挟んでしまって、大敗北してしまっているのである。自業自得! 自業自得の極み!!
それをギリギリセーフで首の皮一枚つなげたのが、彼女の特性であり、幼馴染拗らせたが故の祐人への執着なんですよねえ。それがお陰で、祐人の精神の救いとなっているわけですけれど。
あのラストでの、何事もなかったかのように祐人のこと覚えていて、いつも通りに声かけてくる茉莉たち三人の姿は、本当に救いそのものでした。祐人にとって、彼らはそれこそ心の支えになるんだろうな、これ。あのキツイなんてものじゃないひどい代償に対して、彼らの存在はもう「よすが」そのものですよ。
茉莉ちゃん、これ滅茶苦茶チャンスなんですけどねえ。この娘の場合、それを活かせるのかどうか。ほんとがんばれー。

クロの戦記 4 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです ★★★★   



【クロの戦記 4 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです】 サイトウアユム/むつみまさと HJ文庫

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『死地においてこそ――笑え!!』
ちょっと過激な王道戦記、王国戦争編開幕!!

帝都からクロノの元に届けられた召集令状。
それは、『神聖アルゴ王国との戦争に従軍せよ』という緊急事態を知らせるものだった!!
すぐさまクロノは頼れる部下たちと共に、生き残るための準備を開始する。新装備や新武器など、これまでに生み出してきた全てを賭けて、クロノは英雄への一歩を踏み出す!!

「皆、生きて帰ろう」

シリアス&エロスなエロティック王道戦記、王国戦争編開幕!!

華々しい戦士同士の闘争、名将同士の戦術の競い合い、そんなドラマティックでヒロイックな絵になる戦争は、この作品においてはどこにもない。
血と泥に塗れた地べたを這いずるような戦争、何も思い通りにならず偶然と悪意と理不尽に翻弄されるばかりのどうしようもない戦争、それがこの物語で描かれる戦いだ。
実際、アルゴ王国側のイグニスや、帝国側でも優秀な将兵は決して少なくないんですね。だけれど、彼らが本領を発揮して思う存分力を発揮できる機会なんて然程も訪れないのである。なぜなら、優秀な人間以上に、愚かで考えが浅く欲望にかまけた人間の方が多いから、そのような人間の方が権力を握っているから、軍を左右する立場にあるから。そして、物事というのはそういう感情に任せた大きな声の方が通りやすいものなんですね。
お陰で、敵も味方も最適とは程遠い行動を選択し続けた結果、戦争はよりグダグダで目的も定まらず被害ばかりが増えていく消耗戦へとなだれ込んでいく。ほんと、状況に流されるのと一部の暴走が相まってホント素人目にも右往左往してるような有様に、帝国軍はなってしまうんですね。
そんな隙を敵がついてくるのなら、戦況は一気に傾くのでしょうけれど、敵は敵で同じように客観よりも感情任せに軍勢を動かすような人間が一番上にいるために、イグニスのような有能な将が苦虫を噛み潰したような顔つきを固定したまま、その尻拭いに駆け回るはめになる。お互いに判断ミスや油断や暴走を突き合わせて、ひたすらにグダグダに流れていくのである。
むしろ、これが戦争、と実感させられるような酷さでもあるんですね。

これ、上層部が全部無能、とかならまだ分かりやすいのですけれど、実質帝国軍の指揮をとっている副軍団長のベティス伯爵。あのフェイを虐めていて、彼女がクロノのもとに来るきっかけとなったあの人物なのだけど、フェイへの仕打ちを含めてろくな人間じゃないように見えていたのだけれど、実際戦場に立ってみるとこの人、普通以上に優秀なんですよ。軍人として見識高く、亜人などの運用にも理解が深い。決して亜人の立場に同情しているというわけじゃないのだけれど、差別的な意識はかなり少ないし、色々と口を挟んでくるクロノに対してもうるさいやつと邪険にするのではなく、むしろ便宜を図ってくれたり、素直に提言を受け取ったりと偏見で目を曇らせたりする事なく、物事をフラットに見られる将帥なんですよね。
いや、それどころか成り上がりという立場上、同じ立ち位置の大隊長たちから敵意を浴びせられるクロノに対して、かなり親身に接してくれたり。フェイの事でむしろクロノとの間ではトラブルを抱えているはずなんだけれど、結構気を使ってくれるし、イイ人っぽいんですよねえ。
なのだけれど、お飾りの軍団長であるアルフォート皇子は約立たずを通り越して、お飾りの役目も果たせない臆病者の無能で、余計な命令を連発してベティルを困らせるし、部下である大隊長たちは彼らも貴族であるせいか、傲慢で不見識な言動が目立ち、ベティルの足を引っ張ることになる。
上も下も無能で愚か者が揃っていて、そういう人物ほどトラブルを起こし問題を拗らせ余計なことをしでかしてくれるために、しわ寄せが全部ベティスにかかっていちゃうんですね。
うん、そりゃマトモで使えるクロノも頼りにしちゃうわなあ。でも、利用するつもりだけじゃないのは、クロノに対して慰めの言葉をかけたり彼が罪悪感を抱かないように言葉を尽くしてくれたり、というところからも垣間見えるので、どうにも好感度あがってしまうんだよなあ。苦労人というのがよくわかるだけに。
振り返ってみると、フェイの問題だってフェイが要らんトラブルをよく引き起こしていた、というのも原因の一つなんですよね。騎士団長として組織を乱す要素を見逃すわけにはいかないし。
フェイって、クロノの所に来た時も似たような問題起こして、クロノからお仕置くらってましたからね。場合によっては追い出されかねない勢いで。
まあそれをセクハラにつなげてしまうあたりが、ベティル伯爵の俗な所なんだろうけれど。
でも、俗人であるが故に出世にこだわり、貴族という立場に抗えず、皇族であるアルフォートに対しても強く言えない。中間管理職的な苦労を背負うはめになっているわけだ。
でもこれ、クロノもあんまり変わらないんですよね。成り上がり貴族として、出る杭打たれないようにおとなしく目立たないようにしておかないといけないし、同じ大隊長たちの僻みや敵意も真っ向から向き合わずにうまく受け流さないといけない。そうやって保身保身に努めている。
臆病で小心者でわりとネクラで野心もそんな大したものを持たないクロノにとっては、それは当たり前の生存戦略だったりするのだ。でも、真面目で勤勉なクロノは自分の仕事を蔑ろには絶対にしないし、小心故に自分や部下がしなないように努力を欠かさない。それが、彼を生き残らせていると言っていいし、他の愚か者どもとの決定的な違いなのでしょう。
そして、そんな彼を英雄たらしめるのは、人並み以上の怯えや恐怖を押し殺して前に出る「勇気」なんですね。
いや、クロノにとってその「勇気」とか罪悪感や恐怖そのものなのかもしれない。自分の立場が失われたり場合によっては死んでしまう事よりも、怖くて恐ろしい、耐えられないという小心さ故なのかもしれない。
でもその臆病者の「勇気」によって、身を挺して庇ってもらった者、救ってもらった人にとっては。自分達が死地に送り込まれる絶望の中に、本来必要がないにも関わらず共に身を投じてくれるクロノは、英雄そのものなのだ。
勇気を振り絞るとき、クロノの内面はいつもみっともない程無様な顔を見せている。英雄なんてとんでもない、情けない男の顔を曝け出している。誰もそれを知らなくても、クロノ自身は誰よりもそれを思い知っていて、だから彼は増長なんてするどころか、いつだって自分を卑下して、卑しい心根を恥じている。
でも、クロノのそれこそが「本物の勇気」なのだろう。
アリデットとデネブを助けるために、身を挺して飛び出した時も。亜人部隊が死地に送り込まれようとしている時、自身がその指揮官として残った時も。
彼が示したものこそが「本物の勇気」なのだ。死地においてこそ部下たちに笑ってみせる、彼こそが英雄なのだ。

覇逆のドラグーン 2.彷徨王国の竜機士たち ★★★☆   



【覇逆のドラグーン 2.彷徨王国の竜機士たち】 榊 一郎/もねてぃ HJ文庫

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一夜にして変貌してしまった「世界」。正体不明の敵に精神を支配された大人たちに追われ、同じ16歳の仲間たちと旅を続けるクロウ。ルティエ姫を頂点とする「彷徨王国」となった浮走艦ジェナス号だったが、思わぬ人物が彼らに襲いかかる!その後訪れた悲劇―仲間の死―をきっかけに、クロウとベアトリスとの絆は急速に深まっていく。そしてなおも続く絶望的な状況の中、ついにクロウの中で異形の力が目覚めて…?若き竜機士たちによる英雄譚、待望の第二巻!

妊婦のお腹の中にいる時期に一年に一度、特定の日に輝くオーロラの光を浴びる儀式がある世界。そこで、火山の大噴火が原因でオーロラの光が見えずに儀式を行えなかった世代がある。それがクロウたち主人公の世代なのだけれど、ある日を境にして世界中の人間がこの「祝福されざる世代」の子らの存在に気づくと、途端に意識や精神がシャットダウンされたように無機質化し、機械的にこの世代の子供たちを殺害にかかる、という虐殺が行われるようになってしまったのです。親子であろうと、恋人であろうと全く見ず知らずであろうと関係なく。そして殺戮のあとは何事もなかったかのように死体も、その世代の子の存在すらも見向きもされなくなったまま、人々は普段の日常の営みに戻っていく、という狂気の世界。
まあ明らかに、オーロラの光によって全人類の精神が支配されている、どころかどうも脳に寄生されてるっぽいんですよね。そんな虐殺の中を軍学校の生徒たちが辛うじて生き残り、何とか集まり協力して奪取した大型飛空艦で逃げ延びて、自分達だけで生きていく事を覚悟するために建国宣言をする、という所まで描かれたのが一巻でのお話でした。
自分達のグループ以外とは意思の疎通も叶わず、気づかれれば襲われ殺されるという完全に世界から孤立してしまった状況は、ゾンビパニックのようなバイオハザードもの、社会の崩壊と世界の終末を描くアポカリプスものとも言えるのだけれど、それらとは異なってくるのは彼ら祝福されざる世代の生き残りを除いて、世界は普通の営みが続いている、という事なんですね。飛空艦から足元を覗き込めば、そこでは人々による当たり前の日常が続いている。しかし、彼らは絶対にそこには入り込めない。こっそりと世代のものであることを隠して忍び込む事は出来るのだけれど、気づかれれば即座に人々は町ごと、ロボットかゾンビのようになって襲いかかってくる。
これほど周りから拒絶され、孤立して、取り残された感覚に見舞われる状況はそうはないですよね。
だからこそ、クロウたちは余計に連帯感を強めていく、どころじゃなくて運命共同体……国という建前を使ってますけれど、無人島とかゾンビばかりになった世界で創り上げたコロニーのように、生き残り続けるという事を主眼にしたコミュニティを形成しだしている。
それは、もう他の全人類とは一切交われない、という諦めと覚悟。だから、自分達だけで生きていかなければならない、ひいては自分達だけで世界を作り、子供を作り、次世代へと繋いでいかなきゃんらないんじゃないか、という考えが彼らの中にうまれはじめてるんですね。
だから、グループのなかで男が三人だけ、という事に関してもまだ先のことをちゃんと考えられないにしても、ある種のねっとりとした、或いは切迫感のある感情が入り交じるのである。男女間の恋愛感情にしても、青春の甘酸っぱさよりももっと追い詰められつつ、急き立てられつつ、本能的に求め合うような空気感があって、独特なんですよね。
明日をも知れない、という刹那的な想いと、先々子供を作って自分達の中だけで次の世代を育んでいかなければならない、というどうしようもなく未来を見据えた考えが並列的に存在している不思議な感覚。これは、アポカリプスものでも見受けられるものなんだけれど、この手の孤立した集団サバイバルでこそ得られる感覚なんですよねえ。
登場人物みんなが多かれ少なかれ生存本能をたぎらせているような状況、とでも言うのか。生存本能を掻き立てられる状況、とでも言うのか。
群像劇、という体もなしているので尚更そのあたり盛り上がってるというか、テーマの一つになっているような気がします。

意外とメンバーの中ではクロウが一番慎重、とにかく今後も生きていけるだけの環境を整えるのが優先で、男女間のあれこれは落ち着くことが出来てからにしてほしい、という考えなのは偉いというべきか、それだけリーダー格の一人として全体を見ているという事なのでしょう。
でも、グループの精神的支柱であるルティエ王女はそのへん難しく考えていないポワポワした人ですし、実質全体の指揮を取っている「仕切り屋」のクラリッサは、クロウよりも口うるさいようでいて責任感故に精神的に不安定になる部分を、唯一の年上な男性のカイルに預けまくってて、何気に一番生存本能にかまけてるのがクラリッサである可能性もある、というような有様なんで、やはりクロウが一番風紀を気にしているんですよね。
まあ、そんなクロウが結局一番先に先走ってしまうのですが。

ともあれ、世界がずっと祝福されざる者の世代とそれ以外、に分けられてしまったままなのか、というと全人類を洗脳した、或いは寄生したと思われる謎の生命体、宇宙人? みたいなのの存在は確認されているわけで、それの正体を突き止めて対峙していくことで、何らかの形で人類の洗脳が解かれて、という可能性はあるにしても、結局は意思疎通不可能、相互理解不可能な相手との戦いであり、彼らだけの生存をかけた孤独なサバイバル、という体は続くはずだったのですけれど……。
クラリッサの父親である軍高官だけ、前回の怪我が原因で半端に意識が戻って人間的な感情、それが謎の生命による誘導なのか、それとも機能不全を起こしての事なのかわからないけれど、人間的な憎しみという感情をもってクロウたちを襲ってくるのである。
これ、ちょっと微妙に余分だったかな、と思わないでもないんですよね。謎の生命体も、支配された人間たちも、無機質なくらい何の感情もなくただバグを排除するためのように、クロウたちを殺しにかかってくるから不気味さ悍ましさが増すわけで。
そんな中で憎しみをもって襲われるというのは、ちゃんとこっちを認識してくれている、ある意味人間扱いしてくれている、とも言えるわけで、逆に孤立感が紛れる感覚すらあるわけです。
結構キツイ展開もあるのですけれど、ゴミのように処理されるより、変な話ですけれど無常観や無力感は目減りしたような気がするんですよね、自分にとっては。
展開的に、敵の中に明確な敵意を持って襲ってくる相手が居ないと話が進まない、というのがあるのかもしれませんけれど、あの人の存在はちょっと世界観というか物語の趣旨からすると蛇足じゃないかな、とちょっと思ったり。

なんにせよ、色んな意味でみんなそれぞれ一線を越えた所があるだけに、次回以降の人間関係も含めた変化は気になる所。犠牲が出たことでより切羽詰まった感情も芽生えてくるでしょうし。


 
6月17日

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5月31日

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(電撃コミックスEX)
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(Gファンタジーコミックス)
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(まんがタイムKRコミックス)
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(モンスター文庫)
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(Mノベルス)
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(Mノベルス)
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(Mノベルス)
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(Mノベルス)
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5月26日

(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(エンターブレイン)
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5月25日

(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップノベルス)
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オーバーラップノベルス)
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(オーバーラップノベルス)
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(オーバーラップノベルスf)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(KADOKAWA)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ガンガンコミックスONLINE)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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5月24日

(あすかコミックスDX)
Amazon


(あすかコミックスDX) Amazon

5月21日

(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(アフタヌーンKC)
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(アフタヌーンKC)
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(アフタヌーンKC)
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(イブニングKC)
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(イブニングKC)
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(モーニングKC)
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(モーニングKC)
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(モーニングKC)
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(モーニングKC)
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(ワイドKC)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(アルファポリス)
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(アルファポリス)
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(アルファポリス)
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(アルファポリス)
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(アルファポリス)
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5月20日

(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(チャンピオンREDコミックス)
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(チャンピオンREDコミックス)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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