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HJ文庫

魔界帰りの劣等能力者 2.神獣の契約者 ★★★☆   



【魔界帰りの劣等能力者 2.神獣の契約者】 たすろう/かる HJ文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

最弱の少年が、ヒロインたちの助っ人に!?

異能者試験を襲った準魔神級の吸血鬼を退けた祐人。どうにかランクD異能者になった彼の初仕事は、アジアの小国ミレマーで護衛任務を行う瑞穂とマリオンへの増援だった!!
ランクAの彼女らを煙に巻く不穏な敵に、ランクDでは力不足に思われたが――
さらに、仕事の準備に帰宅した祐人は、何故か宴会を開いていた人外たちと鉢合わせ!!立ち退きを迫られ、美しく強い神獣たちと戦う羽目にもなってしまい――!!
新たな出会いと再会を経て、“最弱"にして魔神殺しの少年は恐るべき陰謀に立ち向かう!!


封印された能力を解放する代償として、人の記憶からその存在が消えてしまう祐人。幸い、身近な友人たちは幼馴染のお陰で初対面からやり直すなんて真似をせずに済んでいたのだけれど、能力者機関の方は試験責任者の日紗枝さんからして祐人のこと覚えてなかったんですよね。
これ、誰からも忘れられちゃってるのなら、機関からの仕事なんかも来ないんじゃないの? と危惧してたら、ほんとに仕事来なくて日雇いバイトするはめになってた祐人くんが不憫すぎるw
学校終わったあとに、肉体労働ですもんね。色々と切羽詰まりすぎているw
幸い、消えるのは人の記憶からだけで書類やデータなんかはちゃんと残ってたお陰で、たまたまバイト先で出会った能力者機関の秘書さんが問い合わせてくれたお陰で、こんなやつ試験に居たっけ? と首を傾げられながら、仕事を割り振られることに。
それで、どうして瑞穂とマリオンの増援で海外に行くことになるのやら。新人とはいえAランクの二人が派遣された、紛争地帯として名高い治安悪い国というだけでもアレなのに、事前の想定と違って面倒なことになってる所にどうして誰も覚えてないけどデータ上ではわけのわからない評価になってる祐人を送ることになるのか。人手不足が極まったせいだけど、日紗枝さんこの人想像以上にいい加減だぞw

能力者機関とか知らない普通の人から見たら、傍目には完全にヤバい仕事である。バイトで高校生を海外に派遣、しかも外務省通達で渡航が制限されている紛争国に、ですもんね。それも学校休んで一週間。なぜこれを何も知らない茉莉たちに相談しようと思った、祐人くん。いや、報告連絡相談は大事でそれよくわかってるこの子はある意味良識的なんだろうけど、普通こんなん相談されたら反対するわぃ! 絶対止めるわい!
友達がなんかヤバい所に首突っ込んでる、と思っちゃうよ。金に心底困っているのは前回知ってしまったわけですし。まさか、この流れで一悟に異能者云々のことまでまるっとばらしてしまうとは思わなかったけど。自分から話すのかー!! いや、一悟が祐人のこと忘れていた件をかなり真剣に悩んでいるのを知ってしまったら、祐人としても黙ってるわけにはいかなかったのだろうけど。
特に危険が及んだりトラブルが発生した流れで告白するのではなく、一悟の謝罪から告白するのは祐人の誠実さを感じられて、むしろ良かったとは思うんですけどね。祐人としても、一悟が忘れていた事よりも思い出してくれた事の方が、そして先日の件では忘れずに居てくれたことが彼にとってもとても嬉しい事だったのでしょうし。この二人はほんといい親友関係で、素敵だと思います。直後にさっさと祐人が社会的に死ぬのを見捨てて、むしろ積極的に売っちゃってましたけどw

しかしこの作品、徹底して異能者のお仕事編と、学校と家周りの日常編は分けて進行するんですね。殆ど、別の2つの話を進めているようなもので、そりゃこの一巻じゃ収まらなくて前後編みたいになりますわ。かなり贅沢な構成で、これそれなりに長期シリーズになる目算が立ってないとできませんよねえ。
場合によっては下宿先の屋敷の話はさらに分けて別枠になるかもしれませんし。まさか、学校の友達グループとも異能者グループとも違う一団を、一気に同居人として参入させるとは。祐人の同居人になる神獣たちは、仙道関係に近しいので、異能者のお仕事にも学校サイドにもどっちにも首突っ込めそうな立ち位置っぽくはあるのですけど。
でも、ただでさえお金ないのにこんなに居候増やして生活費深刻に大丈夫なんだろうか。この人外ども、とてもじゃないけど自分で稼いできて家にお金入れてくれるようなタイプに見えないんですけど。いや、性格的に云々じゃなくて人間の社会に関与していないという意味でも。性格的に、食うばっかりになりそうな奴も多いですけどw

というわけで背に腹は代えられないので、ヤバい仕事である海外派兵に参加することに。海外派兵ですよね、これ実質。
試験の時の記憶はないものの、感覚的には祐人の事覚えているかして、すんなりとマリオンと瑞穂に受け入れてもらう祐人。ここで彼が見せる顔はのほほんとしつつも、修羅場をくぐり抜けてきた経験豊富な前線経験者、という貫禄なんですよね。こればっかりは初陣の瑞穂たちでは意識が及ばない領域で、ぶっちゃけこの祐人の見識や防諜に関する実践知識、作戦立案能力だけでも能力関係なしに凄く有能なんですけど。自分で戦わない参謀役でも、祐人くん全然行けるじゃないですか。
あくまで自然体で、普段着のように慣れた様子でテキパキと指示する姿は、瑞穂たちとしても頼もしいなんてものじゃないでしょう。これはどんどん好感度バキバキあがっていくのも当然ですわなあ。

というわけで、ミレマー国編は祐人が加わって逆襲の段取りを整えたいい所で次回に続く、となっているので、早い内に次読もう。


魔界帰りの劣等能力者 1.忘却の魔神殺し ★★★☆   



【魔界帰りの劣等能力者 1.忘却の魔神殺し】 たすろう/かる HJ文庫

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最弱の体質を規格外の才能で覆す!!

堂杜祐人は霊力も魔力も使えない落ちこぼれ異能者。だが実は、魔界へ赴き人知れず魔神を殺した――“最強"の少年だった!!
高校進学の傍ら異能者の認定試験を受ける祐人は、劣等能力者として場違いだと見下されるはめに。
そんな中、祐人はマリオンと瑞穂という天才美少女二人と仲良くなり、さらに試験で他を圧倒する力を見せつけ、本人の自覚なく注目を集めることに――!!
美少女二人を襲う凶悪な敵を相手に、“最弱"にして魔神殺しの少年は無双する!!
劣等×最強の異能アクションが堂々開幕!!

異能者の認定試験受けに行った理由が、生活費を稼ぐためという世知辛さ!
いやまじで、祐人くんの困窮具合……同居の爺さんが放蕩で散財してしまって家を出るはめになり、紹介された下宿先はガチの廃屋で暮らすに暮らせず庭にテントを張って野営暮らし、という高校入学早々にえらい境遇になってるのを切々と語られてしまったので、収入が確保できそうな試験に応募する祐人の必死さがよく伝わってくるんですよね。藁にもすがる思いなのが身につまされる。
元々、異能者とはいえ堂杜家は業界には知られてない存在であると同時に、祐人自身はその堂杜家の能力も使えなくて、周囲の人たちの尽力によって第三の道で異能界隈では謎とされてる仙道を学んだ、上で魔界という現世とは時間の流れが違う世界に三年間とある事情から渡って戦った経験の持ち主。
つまり、祐人の能力というのはこの現世で幅を利かせている異能者の知るルールからはかなり外れていて、彼らの見地や規範では測れない部分が多々あるということ。
祐人自身も、生活費目当てで試験に飛び込みしたので、そのへんよくわかってないのでのほほんとしているのだけど、試験管たちも今までの試験基準ではうまく測れないので書類としてはDクラスでの認定になったけれど、彼が規格外というのはちゃんとわかってるんですよね。その意味ではDクラスで、とはいえちゃんと合格にしたというのはむしろ柔軟な対応とすら言えるのかも知れない。試験内容を受けての試験官同士での講評会議でも、判断基準に当てはまらない結果を前に頭を悩ませつつ結構妥当な意見を述べあっていましたし。前例にならって、それに当てはまらないのはどうあってもダメ、なんて頭の固い事をいうような人もいませんでしたし、組織としてもこの能力者機関ってだいぶ健全なんじゃないでしょうか。
そんな混乱をもたらしている祐人なんですけど、本人はとにかく生活費、下宿の修繕費、先立つもの!という目的があるために、合格のために必死、それはもう必死なんで正当な評価とかそういうのは全然頭にはなく、結果に見合わないDクラス合格でもとにかく合格できたという事で大喜び、という一杯一杯な姿がねえ、なんか可愛いんですわ。
魔界での三年間があるために、実際は同世代よりもちょっと大人なはずなんですけど、どの場面でも……それこそ戦闘の場面だろうと学校生活のなんでも無い一幕でも同じように一生懸命で、わたわたと頑張っている様子がなんか愛嬌があっていいんですよねえ。力量と裏腹の増長していない自然体、あんまり余裕なくあたふたしている姿がなんとも可愛げがあっていいんですよ。
幼馴染の茉莉がついつい口うるさく面倒見てしまうのがよく分かる、なんだか頼りない立ち居振る舞いなのだ。でも、いざという時はビシッと引き締まって頼もしい姿を見せてくれるあたりなんぞ、実に魅せてくれる主人公なのである。
その魔界で生き延びた能力にも相応以上のリスク、代償があって、それがために軽々に封印を解く事が出来ないんですね。その代償が、とてつもない心の傷を彼に刻んできたのだけれど……。
この作品って、異能者界隈のパートと日常の学生生活とのパートが結構はっきりと別れていて、学生生活の方のパートにも結構な分量が割かれてるんですよ。そこでのワイワイと賑やかな、等身大の十代の若者たちの青春模様なんかも祐人の貧乏生活含めて実に楽しいのですけれど、彼の代償を鑑みるとこの日常生活がかなり大事、重要になってくることがわかるんですよね。
幼馴染である白澤茉莉、中学からの親友である袴田一悟、茉莉の友人で祐人とも中学での同級生だった水戸静香。この学校での仲の良い彼らとの関係が、本当の意味で祐人の支えになってくるんですね。
特に、一悟がこいつ滅茶苦茶いい奴なんですよね。友達思い、なんてもんじゃないんですよ、彼の祐人への友情は。
どうやら、祐人の代償へのカウンターとなっているのは茉莉みたいなんだけれど、一悟の後悔の言葉を聞いてしまうと、一悟がどれほど本気で祐人を心配しているのか伝わってきて、感動すら抱いてしまったんですよね。あの告白を聞いた静香なんか、ちょっとグラっとキてもおかしくないんですけど。自分はめちゃグラっと来ましたし。惚れるわー。
一方で茉莉の方は幼馴染拗らせちゃってまあ、本来大勝利確定だったにも関わらず、大失敗しちゃってるんですよね、この娘。そのせいで、魔界の三年間を挟んでしまって、大敗北してしまっているのである。自業自得! 自業自得の極み!!
それをギリギリセーフで首の皮一枚つなげたのが、彼女の特性であり、幼馴染拗らせたが故の祐人への執着なんですよねえ。それがお陰で、祐人の精神の救いとなっているわけですけれど。
あのラストでの、何事もなかったかのように祐人のこと覚えていて、いつも通りに声かけてくる茉莉たち三人の姿は、本当に救いそのものでした。祐人にとって、彼らはそれこそ心の支えになるんだろうな、これ。あのキツイなんてものじゃないひどい代償に対して、彼らの存在はもう「よすが」そのものですよ。
茉莉ちゃん、これ滅茶苦茶チャンスなんですけどねえ。この娘の場合、それを活かせるのかどうか。ほんとがんばれー。

クロの戦記 4 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです ★★★★   



【クロの戦記 4 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです】 サイトウアユム/むつみまさと HJ文庫

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『死地においてこそ――笑え!!』
ちょっと過激な王道戦記、王国戦争編開幕!!

帝都からクロノの元に届けられた召集令状。
それは、『神聖アルゴ王国との戦争に従軍せよ』という緊急事態を知らせるものだった!!
すぐさまクロノは頼れる部下たちと共に、生き残るための準備を開始する。新装備や新武器など、これまでに生み出してきた全てを賭けて、クロノは英雄への一歩を踏み出す!!

「皆、生きて帰ろう」

シリアス&エロスなエロティック王道戦記、王国戦争編開幕!!

華々しい戦士同士の闘争、名将同士の戦術の競い合い、そんなドラマティックでヒロイックな絵になる戦争は、この作品においてはどこにもない。
血と泥に塗れた地べたを這いずるような戦争、何も思い通りにならず偶然と悪意と理不尽に翻弄されるばかりのどうしようもない戦争、それがこの物語で描かれる戦いだ。
実際、アルゴ王国側のイグニスや、帝国側でも優秀な将兵は決して少なくないんですね。だけれど、彼らが本領を発揮して思う存分力を発揮できる機会なんて然程も訪れないのである。なぜなら、優秀な人間以上に、愚かで考えが浅く欲望にかまけた人間の方が多いから、そのような人間の方が権力を握っているから、軍を左右する立場にあるから。そして、物事というのはそういう感情に任せた大きな声の方が通りやすいものなんですね。
お陰で、敵も味方も最適とは程遠い行動を選択し続けた結果、戦争はよりグダグダで目的も定まらず被害ばかりが増えていく消耗戦へとなだれ込んでいく。ほんと、状況に流されるのと一部の暴走が相まってホント素人目にも右往左往してるような有様に、帝国軍はなってしまうんですね。
そんな隙を敵がついてくるのなら、戦況は一気に傾くのでしょうけれど、敵は敵で同じように客観よりも感情任せに軍勢を動かすような人間が一番上にいるために、イグニスのような有能な将が苦虫を噛み潰したような顔つきを固定したまま、その尻拭いに駆け回るはめになる。お互いに判断ミスや油断や暴走を突き合わせて、ひたすらにグダグダに流れていくのである。
むしろ、これが戦争、と実感させられるような酷さでもあるんですね。

これ、上層部が全部無能、とかならまだ分かりやすいのですけれど、実質帝国軍の指揮をとっている副軍団長のベティス伯爵。あのフェイを虐めていて、彼女がクロノのもとに来るきっかけとなったあの人物なのだけど、フェイへの仕打ちを含めてろくな人間じゃないように見えていたのだけれど、実際戦場に立ってみるとこの人、普通以上に優秀なんですよ。軍人として見識高く、亜人などの運用にも理解が深い。決して亜人の立場に同情しているというわけじゃないのだけれど、差別的な意識はかなり少ないし、色々と口を挟んでくるクロノに対してもうるさいやつと邪険にするのではなく、むしろ便宜を図ってくれたり、素直に提言を受け取ったりと偏見で目を曇らせたりする事なく、物事をフラットに見られる将帥なんですよね。
いや、それどころか成り上がりという立場上、同じ立ち位置の大隊長たちから敵意を浴びせられるクロノに対して、かなり親身に接してくれたり。フェイの事でむしろクロノとの間ではトラブルを抱えているはずなんだけれど、結構気を使ってくれるし、イイ人っぽいんですよねえ。
なのだけれど、お飾りの軍団長であるアルフォート皇子は約立たずを通り越して、お飾りの役目も果たせない臆病者の無能で、余計な命令を連発してベティルを困らせるし、部下である大隊長たちは彼らも貴族であるせいか、傲慢で不見識な言動が目立ち、ベティルの足を引っ張ることになる。
上も下も無能で愚か者が揃っていて、そういう人物ほどトラブルを起こし問題を拗らせ余計なことをしでかしてくれるために、しわ寄せが全部ベティスにかかっていちゃうんですね。
うん、そりゃマトモで使えるクロノも頼りにしちゃうわなあ。でも、利用するつもりだけじゃないのは、クロノに対して慰めの言葉をかけたり彼が罪悪感を抱かないように言葉を尽くしてくれたり、というところからも垣間見えるので、どうにも好感度あがってしまうんだよなあ。苦労人というのがよくわかるだけに。
振り返ってみると、フェイの問題だってフェイが要らんトラブルをよく引き起こしていた、というのも原因の一つなんですよね。騎士団長として組織を乱す要素を見逃すわけにはいかないし。
フェイって、クロノの所に来た時も似たような問題起こして、クロノからお仕置くらってましたからね。場合によっては追い出されかねない勢いで。
まあそれをセクハラにつなげてしまうあたりが、ベティル伯爵の俗な所なんだろうけれど。
でも、俗人であるが故に出世にこだわり、貴族という立場に抗えず、皇族であるアルフォートに対しても強く言えない。中間管理職的な苦労を背負うはめになっているわけだ。
でもこれ、クロノもあんまり変わらないんですよね。成り上がり貴族として、出る杭打たれないようにおとなしく目立たないようにしておかないといけないし、同じ大隊長たちの僻みや敵意も真っ向から向き合わずにうまく受け流さないといけない。そうやって保身保身に努めている。
臆病で小心者でわりとネクラで野心もそんな大したものを持たないクロノにとっては、それは当たり前の生存戦略だったりするのだ。でも、真面目で勤勉なクロノは自分の仕事を蔑ろには絶対にしないし、小心故に自分や部下がしなないように努力を欠かさない。それが、彼を生き残らせていると言っていいし、他の愚か者どもとの決定的な違いなのでしょう。
そして、そんな彼を英雄たらしめるのは、人並み以上の怯えや恐怖を押し殺して前に出る「勇気」なんですね。
いや、クロノにとってその「勇気」とか罪悪感や恐怖そのものなのかもしれない。自分の立場が失われたり場合によっては死んでしまう事よりも、怖くて恐ろしい、耐えられないという小心さ故なのかもしれない。
でもその臆病者の「勇気」によって、身を挺して庇ってもらった者、救ってもらった人にとっては。自分達が死地に送り込まれる絶望の中に、本来必要がないにも関わらず共に身を投じてくれるクロノは、英雄そのものなのだ。
勇気を振り絞るとき、クロノの内面はいつもみっともない程無様な顔を見せている。英雄なんてとんでもない、情けない男の顔を曝け出している。誰もそれを知らなくても、クロノ自身は誰よりもそれを思い知っていて、だから彼は増長なんてするどころか、いつだって自分を卑下して、卑しい心根を恥じている。
でも、クロノのそれこそが「本物の勇気」なのだろう。
アリデットとデネブを助けるために、身を挺して飛び出した時も。亜人部隊が死地に送り込まれようとしている時、自身がその指揮官として残った時も。
彼が示したものこそが「本物の勇気」なのだ。死地においてこそ部下たちに笑ってみせる、彼こそが英雄なのだ。

覇逆のドラグーン 2.彷徨王国の竜機士たち ★★★☆   



【覇逆のドラグーン 2.彷徨王国の竜機士たち】 榊 一郎/もねてぃ HJ文庫

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一夜にして変貌してしまった「世界」。正体不明の敵に精神を支配された大人たちに追われ、同じ16歳の仲間たちと旅を続けるクロウ。ルティエ姫を頂点とする「彷徨王国」となった浮走艦ジェナス号だったが、思わぬ人物が彼らに襲いかかる!その後訪れた悲劇―仲間の死―をきっかけに、クロウとベアトリスとの絆は急速に深まっていく。そしてなおも続く絶望的な状況の中、ついにクロウの中で異形の力が目覚めて…?若き竜機士たちによる英雄譚、待望の第二巻!

妊婦のお腹の中にいる時期に一年に一度、特定の日に輝くオーロラの光を浴びる儀式がある世界。そこで、火山の大噴火が原因でオーロラの光が見えずに儀式を行えなかった世代がある。それがクロウたち主人公の世代なのだけれど、ある日を境にして世界中の人間がこの「祝福されざる世代」の子らの存在に気づくと、途端に意識や精神がシャットダウンされたように無機質化し、機械的にこの世代の子供たちを殺害にかかる、という虐殺が行われるようになってしまったのです。親子であろうと、恋人であろうと全く見ず知らずであろうと関係なく。そして殺戮のあとは何事もなかったかのように死体も、その世代の子の存在すらも見向きもされなくなったまま、人々は普段の日常の営みに戻っていく、という狂気の世界。
まあ明らかに、オーロラの光によって全人類の精神が支配されている、どころかどうも脳に寄生されてるっぽいんですよね。そんな虐殺の中を軍学校の生徒たちが辛うじて生き残り、何とか集まり協力して奪取した大型飛空艦で逃げ延びて、自分達だけで生きていく事を覚悟するために建国宣言をする、という所まで描かれたのが一巻でのお話でした。
自分達のグループ以外とは意思の疎通も叶わず、気づかれれば襲われ殺されるという完全に世界から孤立してしまった状況は、ゾンビパニックのようなバイオハザードもの、社会の崩壊と世界の終末を描くアポカリプスものとも言えるのだけれど、それらとは異なってくるのは彼ら祝福されざる世代の生き残りを除いて、世界は普通の営みが続いている、という事なんですね。飛空艦から足元を覗き込めば、そこでは人々による当たり前の日常が続いている。しかし、彼らは絶対にそこには入り込めない。こっそりと世代のものであることを隠して忍び込む事は出来るのだけれど、気づかれれば即座に人々は町ごと、ロボットかゾンビのようになって襲いかかってくる。
これほど周りから拒絶され、孤立して、取り残された感覚に見舞われる状況はそうはないですよね。
だからこそ、クロウたちは余計に連帯感を強めていく、どころじゃなくて運命共同体……国という建前を使ってますけれど、無人島とかゾンビばかりになった世界で創り上げたコロニーのように、生き残り続けるという事を主眼にしたコミュニティを形成しだしている。
それは、もう他の全人類とは一切交われない、という諦めと覚悟。だから、自分達だけで生きていかなければならない、ひいては自分達だけで世界を作り、子供を作り、次世代へと繋いでいかなきゃんらないんじゃないか、という考えが彼らの中にうまれはじめてるんですね。
だから、グループのなかで男が三人だけ、という事に関してもまだ先のことをちゃんと考えられないにしても、ある種のねっとりとした、或いは切迫感のある感情が入り交じるのである。男女間の恋愛感情にしても、青春の甘酸っぱさよりももっと追い詰められつつ、急き立てられつつ、本能的に求め合うような空気感があって、独特なんですよね。
明日をも知れない、という刹那的な想いと、先々子供を作って自分達の中だけで次の世代を育んでいかなければならない、というどうしようもなく未来を見据えた考えが並列的に存在している不思議な感覚。これは、アポカリプスものでも見受けられるものなんだけれど、この手の孤立した集団サバイバルでこそ得られる感覚なんですよねえ。
登場人物みんなが多かれ少なかれ生存本能をたぎらせているような状況、とでも言うのか。生存本能を掻き立てられる状況、とでも言うのか。
群像劇、という体もなしているので尚更そのあたり盛り上がってるというか、テーマの一つになっているような気がします。

意外とメンバーの中ではクロウが一番慎重、とにかく今後も生きていけるだけの環境を整えるのが優先で、男女間のあれこれは落ち着くことが出来てからにしてほしい、という考えなのは偉いというべきか、それだけリーダー格の一人として全体を見ているという事なのでしょう。
でも、グループの精神的支柱であるルティエ王女はそのへん難しく考えていないポワポワした人ですし、実質全体の指揮を取っている「仕切り屋」のクラリッサは、クロウよりも口うるさいようでいて責任感故に精神的に不安定になる部分を、唯一の年上な男性のカイルに預けまくってて、何気に一番生存本能にかまけてるのがクラリッサである可能性もある、というような有様なんで、やはりクロウが一番風紀を気にしているんですよね。
まあ、そんなクロウが結局一番先に先走ってしまうのですが。

ともあれ、世界がずっと祝福されざる者の世代とそれ以外、に分けられてしまったままなのか、というと全人類を洗脳した、或いは寄生したと思われる謎の生命体、宇宙人? みたいなのの存在は確認されているわけで、それの正体を突き止めて対峙していくことで、何らかの形で人類の洗脳が解かれて、という可能性はあるにしても、結局は意思疎通不可能、相互理解不可能な相手との戦いであり、彼らだけの生存をかけた孤独なサバイバル、という体は続くはずだったのですけれど……。
クラリッサの父親である軍高官だけ、前回の怪我が原因で半端に意識が戻って人間的な感情、それが謎の生命による誘導なのか、それとも機能不全を起こしての事なのかわからないけれど、人間的な憎しみという感情をもってクロウたちを襲ってくるのである。
これ、ちょっと微妙に余分だったかな、と思わないでもないんですよね。謎の生命体も、支配された人間たちも、無機質なくらい何の感情もなくただバグを排除するためのように、クロウたちを殺しにかかってくるから不気味さ悍ましさが増すわけで。
そんな中で憎しみをもって襲われるというのは、ちゃんとこっちを認識してくれている、ある意味人間扱いしてくれている、とも言えるわけで、逆に孤立感が紛れる感覚すらあるわけです。
結構キツイ展開もあるのですけれど、ゴミのように処理されるより、変な話ですけれど無常観や無力感は目減りしたような気がするんですよね、自分にとっては。
展開的に、敵の中に明確な敵意を持って襲ってくる相手が居ないと話が進まない、というのがあるのかもしれませんけれど、あの人の存在はちょっと世界観というか物語の趣旨からすると蛇足じゃないかな、とちょっと思ったり。

なんにせよ、色んな意味でみんなそれぞれ一線を越えた所があるだけに、次回以降の人間関係も含めた変化は気になる所。犠牲が出たことでより切羽詰まった感情も芽生えてくるでしょうし。


魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 11 ★★★★☆   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 11】 手島史詞/COMTA HJ文庫

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夢の中で理想のデートを!?

温泉の恩返しにリリスは、ザガンとネフィのデートを自らの能力で夢の中で行えばいいと提案をする。
しかし想像力の低さゆえ結局いつも通りになり、ザガンは懊悩してしまう。
そんな時訪ねてきたのは<魔王>ナベリウス。
彼の依頼は消息不明の<魔王>を夢の中に捜しに行くことで――。
大人気ファンタジーラブコメディ第11巻!

先輩後輩なザガンとネフィもいいんだけど、カラー口絵で膝枕されてる二人の後ろでラブコメしてるシャスティルとバルバロスがまたいいんですよね。バルバロスが典型的な不良っぽい男の子で、パン咥えてるシャスティルは委員長っぽくて、どれだけ王道のラブコメしてるんだ、とw
そして、本編冒頭10ページかからず凄まじい糖度のイチャイチャっぷりを見せつけるザガンとネフィにゴメリおばあちゃんも満願成就の出血死である。
最近、愛で甲斐のあるカップルの甘酸っぱいムーヴが各所でひっきりなしに起こるために、さすがのゴメリおばあちゃんも全部カバーしきれなくて、遠方で発生しているラブラブに地団駄を踏むばかりなんですよね。そのうち、おばあちゃん分身分裂の術とか憶えてしまうんじゃないだろうか、と心配にすらなる。
これでこのおばあちゃん、【妖婦】ゴメリとして自分の左腕とザガンが呼ぶほどの魔術師なんですよねえ。右腕として絶大な信頼を置いているのが【黒刃】キメリエス。んで、背中合わせというか背中を任せるという感じなのがバルバロスか。これに元最強の聖騎士団長ラーファエルが執事として控え、義娘のフォルは実力ではもう魔王級。これに今居候として魔王オリアスことネフィ母ちゃんと、吸血鬼の始祖である天使狩りのアルシエラがいるわけで、ザガン一党の戦力の充実っぷりとキたら見た目の厳つさと合わせても、もう魔王軍と呼んでもいいんじゃないだろうか、という偉容なんですよねえ。
そんな連中が顔を突き合わせてなにをやっているかというと……。

シアカーンとビフロンスという魔王同士の同盟がちょっかいをかけてきている状況に、さらに魔族、そしてアザゼルという謎の世界外からの侵略者の影が忍び寄り、世界そのものの危機が迫っているという結構切迫しているような現状で、ザガン一党の最高幹部と言っていい面々が深刻な顔をしてザガンに進言するために集まってきた日には、ついに一党全体で動き出さざるを得ない重大事件が起こったのか! と、読んでるこっちも緊張に手に汗握ったのに。
ラーファエルにオリアスにアルシエラにキメリエス、そしてバルバロスまで揃って何の話かと思えば……フォルに彼氏の影が疑惑である。
知り合いに恋バナを聞いて回るフォルの様子に、まさかの男が、それとも恋愛についに興味を抱くような年頃に、という疑惑が生まれてしまったのだけれど。
全員、ガチで真剣なんですけどw
いや、親バカなザガンはわかるんですけど、シャスティルに突撃されて巻き添えくらったバルバロスはともかくとして、他の四人もザガンに負けず劣らず本気で深刻な様子で顔を突き合わせて話し合ってるわけで。いや、あんたら過保護すぎやしませんか!?
直前に、娘と孫娘が可愛すぎてちょっと精神的に耐えられないから家に帰ります、とか言い出してるネフィ母ちゃん、あんたそんなキャラでしたっけ。そうでしたっけ。そうでしたか、そうか。
……平和だなあ、としみじみ思ってしまった。
いや、彼らにとって世界の危機も家族の危機もまったく同列だと思えば、アザゼルやシアカーンたちの思惑について真剣に話し合うのも、フォルのおかしな行動に焦燥しながら喧々諤々論じ合うのもそりゃ同等で変わらないことなんですよね。だから、同じ調子で同じ意識で同じように話し合える、と。
それだけ、かれらにとって仲間や家族、身内のことが大切で大事、というのがこういう風に伝わってくるのは、それはそれでキュンキュンしてしまうんですよね。
大幹部会議の面々は年長者も多いので、思わぬ所でフォルの恋バナ探求の煽りで彼らのいろんな話も聞けたのだけれど……ラーファエルさん、黒花とはホントに血は繋がってないんですよね? だとすると、黒花は想い人だった女性の忘れ形見という事になるのか。実の娘同然に可愛がっていた、というけれどそれでは済まない思い入れだわなあ。そりゃ、黒花にまとわりついてくる虫には過剰反応してしまうわ。シャックスくん、超頑張れ。いや、超頑張ってるのは黒花の方なんですけどね。
あんまりにも察しが悪いものだから、最初の頃はまだ淡い想いを自覚するかしないかあたりで持て余しているような塩梅だったのに、シャックスの反応があまりにも鈍いわりに、そりゃもう丁寧に大切に大事に扱われるものだから、黒花の方に完全に火がついてしまっている状態で。
黒花の不運体質がこの際、ラッキースケベ的な効果を発していて、思わぬ強烈なアプローチになってしまっているのが面白い。さすがのシャックスですらも、気づかずにはいられない強烈さで、これ何気に一番進展しかけてるんじゃないだろうか。
そのシャックス、何気にザガンからの評価も滅茶苦茶高いんですよねえ。魔術師としての実力は、そりゃバルバロスやゴメリ、キメリエスなんかとは比べ物にならないくらい並なんですけど、それでもザガンが魔王継承候補に名前を上げるくらいなんだから、凄い評価してるのなあ。

とまあ、いつものように甘酸っぱいカップルたちのキャッキャウフフに蕩けていたら、思わぬところから「アザゼル」の正体に急接近することに。何気にアルシエラの恋バナのほうにも紐付けがしてあって、やはりアルシエラの存在そのものが鍵だったのか。
彼女の語る銀眼の王。それがザガンの父親でもあり、なんかリリスにも重要な関わりがありそうなんだけど……これって、話聞いてるとおりに受け止めると、アルシエラがリリスとザガンの……という可能性もあるのか、もしかして?
わりと当たり前の顔して、パパとかママとか出てくるお話だしなあ、これ。オリアスとか、オリアスとか。
ここで一気にアルシエラ退場か、と焦ったけれどリリスよく頑張った、偉い! いや実際、アルシエラの過去はまだまだ不明な点も多いし、ザガンたちとの本当の関係なんかも知れてないし、そこには絶対ゴメリおばあちゃんが悶死しそうな愛で力が眠っているはずなので、まだまだ掘り出せるはずなんですよね、退場は早い!
その頑張ったリリスの方にまで新たな彼氏候補が! また新たなカップル誕生ですか!? いや、まだリリスの方はピンとキてないようですけど、いきなり告白とお付き合いを求めだしたあたり、これだけ積極果敢な男性サイドはいなかっただけに、ニュースタイルのカップルになりそうで、ゴメリおばあちゃんこっちですよ!!

でも、この少年、アルシエラに初恋して彼女を探すうちに拗らせて歪んで魔王にまでなっちゃったわけですから、記憶をなくしたとは言え「彼女」を探すことへの執着は相当だったはず。そのアルシエラの面影を、リリスに見出したということはそれだけ重なる部分も多かったということですし。そう言えば、アルシエラが初登場した時、リリスと共通点が多いみたいな事も言ってたんですよね。名前もリリスって本当はリリシエラですし。
リリス、登場した時はそこまで重要キャラとは思わなかったんだけど、これはこれは……。

あと、もうひとりの初登場の魔王ナベリウス。だけど、これナベリウスだからナベにしたんじゃないでしょうね、もしかしてw


デッド・エンド・リローデッド 1.無限戦場のリターナー ★★★★   



【デッド・エンド・リローデッド 1.無限戦場のリターナー】 オギャ本バブ美/ Niθ HJ文庫

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時空に関連する特殊粒子が発見された未来世界。第三次世界大戦を生き抜いた孤高の凄腕傭兵・狭間夕陽は、天才少女科学者・鴛鴦契那の秘密実験に参加する。しかしその直後、謎の襲撃者により、夕陽は契那ともども命を落としてしまう。だが気がつくと彼は、なぜか実験開始前の時間軸で目覚めていた…。繰り返される死とループ現象の中、次第に強まる契那との絆と、解き明かされていく謎。果たして夕陽は、契那を絶望の死から救い、世界を混沌の未来から守り抜けるのか!?超絶タイムワープアクション、第13回HJ文庫大賞・大賞受賞作。

ちょっ、これガチシリアス! 硬派硬派! おふざけやコメディの要素が介在する余地のない、真面目一辺倒のハードSFアクションじゃないですか。
いやだってこれ、作者の名前ぇぇ。これ見てしまったらどうしたって「んんん?」てなるじゃないですか。これを「予断」抜きに捉える事はやはり難しいですよ。なんだかんだ、積んだまま読むのを後回しにしてしまっていたのは、何となく大丈夫かこれ?と思ってしまう部分があったわけですし。
ただ名前通りのバブみに関してはこれもガチである。いや、ここまでガチでいいの!? と思ってしまうくらい真剣シリアスにヒロインである契那のバブみが凄いんですけど。だいたい、幼女の母性なんてのはラブコメを盛り上げる一要素に留まるものなんですけれど、本作においては契那という幼女博士の包容力、慈愛、母性こそが物語の根幹であり、原動力であり、救済なのだ。
物語はほぼ主人公である夕陽とメインヒロインである鴛鴦契那の二人によって成り立っている。謎の襲撃者によって、何度も何度も目の前で無残に殺される契那を救うため、夕陽は実験の影響で得てしまったループ現象を繰り返し、彼女を救う方法を探すことになる。何度も何度も、目の前で惨たらし死に様をさらす契那を目の当たりにしながら。
彼がそれに耐えられたのは、既に一度絶望を甘受していたからだろう。いや2度か。一度目は両親を戦争によって失った時。絶望に流されながら諦念と共に少年傭兵として生きていた彼を救ったのは、自分と同じ境遇で死にかけていた、しかし生きようとしていた少女を救った時。
自分と鏡写しだった、しかし自分よりも生きようとしていた少女を救うことで、再び生きる意志を得た夕陽の側には、いつしか妹としてあの時救った少女が共に戦うようになっていた。
そうして二人で戦って、生きてきた彼に突き付けられたのが、自分を救うために散っていった妹の死。自分の命よりも大事なものの死。自分を救ってくれた、生き返らせてくれた人の死である。
夕陽が契那博士の元で実験に参加するようになったのは、博士の実験が時空に関する粒子の利用を鑑みたものだったからだ。絶望の端にこびりつく僅かな願い、妹の死を覆せるかもしれない微かな期待。
それは博士によって、過去の不可逆性という理由で明確に否定されたわけですが。それを理解し受け入れながらも、夕陽が博士のもとを去らなかったのは、どうしても諦めきれない思いもあったのでしょうけれど、それ以外にも契那博士の夕陽への誠実で親身な態度があったのでしょう。デザイナーズチルドレンとして作られた天才である彼女は研究者の中でも孤立していて、だからこそ外部者・余所者として隔意とともに見られる一時雇用の傭兵である夕陽にも親身親切に接してくれて、いつしか懐くように親しくなっていたんですね。契那博士の方には、夕陽に一方的な負い目が有り、それに端を発して色々と夕陽に便宜を図ったり、何かと心配りをしていたわけですけれど。
この夕陽という男、年齢こそまだ十代なのですけれど、見た目ゴツすぎて少年には全く見えないんですよね。というか、絶対三十代のおっさんだろうこいつ。
でも、見た目の厳つさとは裏腹に夕陽って凄まじく物腰が低くて丁寧なのですよ。誰にでも敬語は欠かさないし、口ぶりはいつも穏やか。年下、どころか実年齢もまだ11歳で幼女の範疇にある契那に対しても子供扱いとかせず、見縊ったりもせず、しかし壁を隔てるでもなく、ちゃんと上司として博士として、何より女性としてレディとして尊重して敬意を以て接するわけですよ。好青年、どころじゃない好人物なんですよね。見た目イケメンよりも、こういうゴツい男の方が物腰丁寧に態度も低く穏やかに落ち着いた姿を見せてくれた方が、なんかぐっとくるものがあるんだなあ。

これで単に弱腰だったり気が小さいとかいうんだったら拍子抜けなのですけれど、夕陽は歴戦の傭兵らしくいざとなれば果断でまさに鋼鉄の意志を以て覚悟完了できるまさに兵士の鑑のような男。
でも、そんな男でも絶望に身も心も侵されていれば、なすすべなく朽ちた大木のように折れてしまうもの。そんな彼を、一度でも気が狂うような、いや自分の死だけならともかく、必ず目の前で自分に笑顔を向けてくれていた幼女が、まともな死体も残らないような死を何度も繰り返すという地獄が永遠と続くのを心壊されずに耐えられたのは、乗り越えられたのは。
まさに契那のバブみなんですよね。
夕陽の置かれているループ現象、その信じがたい状態を契那博士は毎回ちゃんと信じてくれるんですね。それは時空粒子の研究者としての理性的な判断でもあるのだけれど、同時に夕陽への絶対的な信頼であり、夕陽の地獄の苦しみを受け入れてくれる、抱きしめてくれる包容力なわけですよ。彼の絶望を察して労り、慈しんでくれる愛情であり、母性なのですよ。
そんな支えによってようやく立ち続け、戦い続けられる一方で、そんな慈愛を注いでくれた幼女がその直後、目の前で死体に変わるというより地獄度が増すというスパイラル。
それでも彼女は夕陽を許してくれる。絶対に彼の味方になってくれる。
弱音を吐きながらも、それをなかったことにして立ち上がろうとする夕陽を、後ろから抱きしめて彼のすべてを受け入れる、励ます、共にゆくことを誓ってくれる契那博士とのシーンは、まさにバブみの極致のようでした。相手は幼女とか茶化せませんって。神聖不可侵の純愛を物語るワンシーンですよ。
それは、やがて明らかになる襲撃者の正体と目的をも含めて、狭間夕陽と鴛鴦契那の物語として完成しているのである。幼女の死によって絶望し、その幼女によってその絶望と立ち向かい乗り越える。
テーマを絞り込み、一連なりの物語として枠組みを整え、美しいとすら呼べる配置によって中身を埋め尽くした、完成度と拡張性を並列させたまさに大賞に相応しい作品でありました。
率直に言って、素晴らしく面白かった!
しかしバブみが根幹にあるとは言え、幼女がここまで庇護されるモノでも上位者でもなく主人公の対等の相手として、ここまでガッツリとメインヒロインとして座している作品はホント珍しいんじゃないだろうか。

クロの戦記 3 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです ★★★★   



【クロの戦記 3 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです 】 サイトウアユム/むつみまさと  HJ文庫

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領地改革がようやく軌道に乗り始めたころ、突如皇女ティリアから舞踏会へのお誘いが届く。クロノは王都へ向かう準備を始めるが、ネグリジェ姿のエレナが夜這いを仕掛けてきて―「ご奉仕します。だから、帝都に連れて行って下さい」これまでの功績から徐々に注目を集め始めたクロノ。彼を王都で待っていたのは、異世界での養父、クロノを狙う騎士団長、渦巻く権謀術数、そして、レイラによるメイド姿のご奉仕だった!!シリアス&エロスな、大人気エロティック王道戦記、第3弾!!
義父となる親父さん、クロード・クロフォード卿がまた濃いキャラだなあ。名前似てるんで転生モノかと思ってしまう所なんですが、クロノって転生じゃなくて転移してこの世界に来てるんですよね。他の作品と被るだろうそのあたりの描写ばっさり省いているのですけれど。
そして異世界転移して右往左往している所をクロードに拾われて、紆余曲折あってクロフォード家の嫡子となっているのである。義父と地の文では表現しているけれど、公的には本当の息子と偽装してるし、何よりクロノも今となっては本当の父親のように思っているし、クロードの側もクロノの事を実の息子同然に可愛がってる。クロードのこと、濃いキャラと称したけれど、それ以上に現国王の即位時に起こった反乱で活躍し、蛮族の侵攻にも多大な戦功をあげた英雄であり、今や辺境を開拓して一大穀物地帯を築き上げた名領主であり、ある意味中央と距離を置いた辺境勢力の看板でもあり、何よりクロード本人が豪傑然とした人物で一筋縄ではいかない人なんだけれど、その人と協力関係や利害関係じゃなく、本心からの親子になってしまっているあたりにクロノの資質というか本質が垣間見えるんですよね。
本人、どこか卑屈なところもあるし助平だし決してコミュ力が高いタイプでもない。わりと傍目には侮られるタイプなんじゃないのかな。
でも、彼と深く関わった人たちはクロノに大きな信頼を寄せることになるのである。軍学校時代、仲の良いわけじゃなかった同級生たちとも何だかんだと今となっては打ち解けているし。学校では落ちこぼれだったのに、今や侯爵なんて立場になってるクロノにも壁を作ることもありませんでしたし。あれはよほどクロノの事をちゃんと認めてなかったら出来ない姿勢ですよ。
クロノのちゃらんぽらんにすら見えるやる気のない態度の奥にある責任感の強さを知れば知るほど、彼がどれだけ信頼できる人物かというのは自ずとわかってくるし、一方では英雄とかとは程遠いどこか頼りない姿は自分がなんとかしてやらないと、という気分にさせられる。でも、時々ゾッとするような冷徹な目で人を見て、物事を見下ろす姿を見ると侮るなんて真似は決して出来ない。
こうしてみると信頼され親しまれながら畏怖されるクロノの周りからの評価がよくわかる。
あの冷たい目に関してはクロノはまったく自覚ないみたいですけどね。滅多に他人に怒らない彼が怒ってると相当怖いみたいなんですよね。ただ怒る時の理由が馬鹿で愚かな考えで周りに被害を出しそうに為った時、が大概なのでその意味では指導者向きの怒り方なのですが。反省しないで同じことを繰り返すようなら無言で切り捨てる、みたいな怖さが確かにある。
なので、クロノの部下ってリラックスはしていても気が緩んだり好き勝手はまずしないのよねえ。フェイは今回、その洗礼を思いっきり食らってしまった、と。どれほど腕が立っても、馬鹿のままでは切り捨てられますよっと。まあ一度のやらかしではいお終い、とせずにフォローするあたりが優しいのですが。それ以前に、部下に配慮できる気の利いた面々をつけたり、と最初から最大限お膳立てしてあげてるんだから、これで失敗したらフェイの方が悪いですよねえ。いや、失敗するのは構わないけど、自分からぶち壊しちゃーそりゃ評価も下がるわなあ。

さて、ティリアの招待をうけて帝都で行わるという舞踏会に参加することになったクロノ。皇位継承者であるティリアが開く舞踏会なんだから、そりゃもう盛り上がる、のかと思ったらなんか内実が色々と残念だぞ!?
もうティリア自体がどこか残念皇女なところがあるので仕方ないのですが。色々と優れた面はあってもポンコツで考えなしの部分の方が多かったりするからなあ、ティリアって。
だからこそ、このタイミングで起こった政変でティリアがああなってしまったのは一概に悪いことではなかったと思うんですよね。ちゃんとした後ろ盾もなく、本人も短慮な面が強くあるティリアである。彼女が順当に皇位を継いだとして、果たして国の運営がうまくいったかというと相当疑わしい気がするんですよね。
貴族の腐敗や軍の機能劣化はかなり進んでしまっていますし、帝国という国そのものがそろそろ老朽化しているんじゃないか、という感じすらするわけで。この段階でティリアが女帝になったとして立て直せたか、というと。
今度の政変も、別に前から計画されていた策謀陰謀とかではなく偶然の産物でしたし。機会に乗じて動いた人たちが居たのは確かですが、それも悪意や個人的な野心からというわけでもなく。
宰相アルコルが積極的に動いてこの情勢を作り出していましたけれど、彼が黒幕や悪役というわけではなかったですからね。決まった黒幕がいるのではなく、ある種の警戒心や過去から精算出来ていなかった負債が反応してというもののようですし、その意味では個人や特定の勢力の思惑によるものではなく「時勢の流れ」によって起こってしまった、というのがよくある陰謀劇と違っていてちょっと面白いなあ、と思ったり。
まあ本作って、主人公であるクロノに限らず誰も彼もが思う通りにいかなくて、もがきながら泥沼に沈んでいく、というような全体的に何もかもが上手く行かないのを必死にあがく人たちを描く物語、という風情もありますし。
その意味では、物語そのものの泥沼化はまさにここから始まったと言えるのかなあ。

鮮烈な登場の仕方をして、強烈な存在感を見せた近衛騎士団のリオ・ケイロンも、まあヤンデレ系の人なんですけれど、この人も何もかも上手く行かないまま苦しみ足掻いていた所にクロノに出会って、彼に希望と救いを見た娘なんですよね。それで単純に救われるには、この娘の歪みは大きすぎてティリアにすげえ寝取ってやったムーブとかかましてるわけですけれど。
リオに限らずティリアも拗らせてますし、エレナはもう元から性格歪んでますし、その意味ではレイラがやはり一番献身的でクロノの責任を一緒に負おうとしてくれる娘に見えるよなあ。
メイドプレイ含む。
ただ、レイラには戦争の時クロノは負い目あるのがやや引っかかってるみたいだけど、まだ外に出していないクロノの内心だけでのことなのに、未だに引きずっているあたりにクロノの性格を感じるんですよね。それも含めてわかって受け入れている感が、レイラにはあるのでやはり一番感があるんですよねえ。

さあ、様々な思惑が複雑に絡んでの事とは言え、とばっちりはは現場に飛んでくるのが常の常。その一番前の方にいるクロノに訪れるのは、当然のように再びあの血と泥にまみれた戦争の季節だ。



クロの戦記 2 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです ★★★☆  



【クロの戦記 2 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです】 サイトウアユム/むつみまさと HJ文庫

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武勲を立てたことで侯爵領の領主となったクロノ。山積みの問題を前にして、元の世界の知識を総動員し、女神官や女騎士を仲間にしながら、どうにか領地改革を進めていく。しかし、その知識に違和感を覚えた皇女・ティリアに詰め寄られて―「正直に言え。そうすれば死なずに済むかも知れん」クロノは無事に領地改革を、さらにハーレムを達成できるのか!?そしてまた一人、美少女がベッドに引きずり込まれる!!シリアス&エロスな、大人気エロティック王道戦記、第2弾!

クロノって性欲だけは有り余っているくせに、その手の人にありがちなバイタリティの類は全然ないんですよね。活力に欠けているというか覇気がないというか。
侯爵位を得てしまったにも関わらず、出世欲とか野心が皆無なのはティリアに告げている通りで、この青年どこか草臥れ果てたおっさんめいた所があるのである。すけべえな所も、若者というよりもおっさんじみているし。
一方でやる気がないからと言って、怠惰なのかというとむしろ見ていると勤勉ですらある。決して崇高な理念とか虐げられている亜人たちの社会的地位をあげてあげたいとか、高尚な事は考えていないんですよ。
ただ無責任ではいられない。軍の司令官として、自分の指揮に従った者たちは人間亜人の区別なく、公平に彼らの果たした義務に対して責任を果たさなければならないと考えているし、領主となれば自分が収める土地の住人に対して為政者として責任を果たさなければならないと思っている。
しんどいなあ、と思いながらも、無責任に何もかも放り出すことだけはどうしてもできないのだ。
そういう所こそ、このどこか頼りなくてすけべえなくたびれた青年を、彼の周りに集った者たちが信頼し慕う要因なのだろう。亜人だろうと元盗賊だろうと、やるべきこと為すべき事を誠実にやっていれば、まっとうに報いてくれる。正当に扱ってくれる。身分や種族の差があれど、それは対等な関係をクロノの方から望んで結んでくれるという事なのだ。こちらから後ろ足で砂をかけない限り、彼は絶対に責任を果たしてくれる。
理不尽な境遇に置かれ続けていた人々にとって、それがどれほど尊いことなのか。
亜人部隊の連中も傭兵のケインも、常に理不尽の中にあった人たちなんですよね。今回、クロノのもとに左遷まがいに送られてきた女騎士のフェイも、没落貴族の鈍くさい女騎士という立場で常に虐げられてきた経験の持ち主ですし、エレナもまた女という事でその才を活かせず苦汁をなめ続けてきた。
彼らにとって、当たり前に真っ当に報いてくれるクロノという存在は、理不尽が当たり前にまかり通る世界において無二の存在だったんですね。それに彼、何だかんだと身内になれば善良さと小心さ故に酷いことになるの放っておけない人ですし。後で罪悪感とか後悔でしんどい思いするの嫌で嫌でたまらない、というタイプですし。
でも、軍の司令官らしく「切り捨てる」事も出来るんですよね、彼。罪悪感に苛まれながら、必要な犠牲を冷徹に割り出して、本当に必要なのかと散々苦しみぬくことになるのだけれど、最終的な決断を過たない。これもまた、資質なのでしょう。

面白いのが、長年貧困対策のために農作物の品種改良やクローバーによる土壌改善について研究を続けてきながら、報われること無く研究者でもあり聖職者でもあった父を失い、今も独りで細々と研究を続けながら聖職者として奉仕活動を続けていた神官のシオン。
クロノと出会うことで、彼女とその父の研究は日の目を見ることになるのですが……シオンはそれに対して泣いて喜ぶのではなく、むしろ逆で「なんで!?」と涙混じりに憤り、恨み妬み怒りといった感情をクロノに対してぶつけてしまうのです。
それはもう、八つ当たりという他ない感情なのですけど、理解も出来る情動なんですよね。これまで自分たち親子がどれほど苦しみもがいても、効果を見せても結果を出しても、前例主義や偏見、先入観などから認めて貰えず、受け入れて貰えず、取るに足らないものとして無視され踏みにじられていたものが、クロノが一声あげただけで簡単に受け入れられ、実行に移されることになってしまった。
自分たちのこれまでの苦労はなんだったのか。父は失意のまま没してしまったのに。自分もまたずっと無視され続けていたのに。
「なんで!?」
と、思ってしまう感情は、決して無視できないものなんですよね。
功績を奪われたわけではなく、むしろその知識を生かした農業指導や、新たに立ち上げる幾つかの関連事業の責任者として抜擢される、というこれまでの苦労が報われる状況であったとしても。
理屈と感情は別なのです。勿論、これが八つ当たりにすぎず、理不尽な怒りにすぎず、当然のように別の御仁から正論でバキバキに言われてしまうのですけれど、それでもこういうある種の理屈じゃない生々しい感情を、どうしようもない情動というものを無視せず描き出していくあたりに、この作品の特徴というか面白みが感じられるんですよね。
シオンほど激しいものではないにしろ、他の人達も多かれ少なかれ、この手の理屈じゃないけど自然と起こってしまうもやっとした気持ちとか、ブワッとまとわりついてくる不安とか、迷走気味の思考のよろめきとかが描写される。それが、個々のキャラクターに不思議な存在感というか、息遣いを感じさせてくれるんですよね。

しかし、やっぱりお気に入りは騒がしいアホ双子エルフのアリデッドとデネブである。彼女らのアホっぽい快活さは、なにかと作品そのものを明るくしてくれるんですよね。なにげに、ティリア王女とのファーストコンタクトも果たしてしまってますし。ある意味、化学反応を引き起こしてしまう組み合わせなんだよなあ、双子エルフとティリア王女は。


<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 13.バトル・オブ・ヴォーパルバニー  



【インフィニット・デンドログラム 13.バトル・オブ・ヴォーパルバニー】 海道左近/タイキ HJ文庫

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アルター王国とドライフ皇国の間に講和会議が開かれることに。レイは交渉が決裂した場合を考え、戦争に参加するため一時加入先のクランを探すが、色々な理由から難しいことが発覚。途方にくれたレイだが、周りの超級を巻き込んで新クランを発足させることになり―。そして一方、王国のランカーたちが次々に襲撃されデスペナルティに追い込まれている事件が多発。不穏な空気が漂う中、暗躍するものの正体とは…?大人気VRMMOバトルファンタジー、策謀渦巻く第13巻!!

表紙も飾ってジュリエットメイン回!! かとちょっと期待してしまったんだけれど、そこまでメインじゃなかった。
むしろ、後ろにいる抜刀神のカシミヤ君こそが主役だったんじゃなかろうか、というくらいに兎神との超高速戦闘がシリーズでも屈指の名勝負でした。やっぱり超高速戦闘は燃えるなあ。速さが極まると、むしろ詰将棋みたいに一手一手の描写が凄まじく濃厚になるんですよね。
ここで戦闘内容の描写密度と実際に行われているバトルのスピード感を両立させる事が叶うと、戦闘シーンの映えがビリビリと痺れる熱いものになるのです。兎神VS抜刀神はそれに叶う好カードでありました。特にカシミヤは、ゲームで付与された能力じゃなくほぼほぼ本人の純粋な技倆によるもの、というのがイイんですよ、イイんですよ。
ってかここまで速いと、他の超級でもどうやったら対抗できるんだ? と思ってしまいますが。兎神に関してはまともに一矢報いれたのって、ジュリエットだけでしたし。あれに関してはまたぞろ運営側の「ズル」を噛み締めさせられるものでしたから、実質相打ちでしたもんね。なので、ジュリエットの強かさというか、あれでかなりの戦巧者、戦闘の組み立てが際立っているのがよく伝わってくる。彼女が決闘ランカー4位なのも、その巧さにあるんでしょうね。彼女が主役の【クロウ・レコード】でも結構そういう描写はうかがえますし、彼女のビルド構成も戦闘構築に長けていないと中途半端になってしまいかねないものですし。
そう、スピンオフとはいえ主役張れるだけあってイイ子なんだよなあ。彼女、本来ならレイの作ったクランに加入するのに何の障害もないはずなんですけど、友人のチェルシーの傷心事情に付き合って保留してたりしますしねえ。でも、ジュリエットがあんなにレイに惹かれてるとは思わなかった。そりゃあ、趣味完全にあいますもんね。しかも、特異なジュリエット語を母国語かというくらい完全に読み取ってくれるわけですし。ってか、なんであんなに完璧にジュリエットが何言ってるかわかるんだ!?w
あ、そう言えば件のスピンオフ漫画のクロウレコードで登場してジュリエットとチェルシーの友達になってよくつるむようになってたマックスちゃんが、本編でも登場してましたね。
こっちだと名前、マックスとしか描写されてなかったけど、正式名は「グレート・ジェノサイド・マックス」ですぜ。なんか見る目が生暖かくなりそうである。

さて、本編の方ですが、アルター王国と皇国との間で講和会議が行われる事になる一方で、万が一戦争が再開された時のために、参加条件をクリアするためにクランに加入しなければならなくなったレイ。ところが、一時参加させてくれそうなクランが、急に潰れてしまったりレイを目の敵にしていたり、レイを宗教勧誘してリアルまでえらいことになりそうな団体だったり、と目星が立たないことに。
ここで、自分でクラン作ればいいじゃん、と相談に乗ってくれた上にストライクなアドバイスをくれる迅羽さん。ほんと、作中もっとも頼りになる広い見識を持つ常識人ではなかろうか。小学生女子だけど。小学生女子とわかっていて相談して頼りにしてしまうレイ君ぇ。でも、実際頼りになるからなあw

で、出来上がったクランが見事に大惨事である。おおむね、レイのファッションセンスの末の格好と似たような傾向かもしれないけど。いずれにしてもクラン名が完全に悪の組織である。昨今、悪の組織でもここまで直球の悪そうな名前しないよね、というくらいアレである。
でも、参加メンバー見てると、どいつもこいつも凶状持ちだったり札付きだったり見た目アレだったり、とあれ? むしろ名前ピッタリなんじゃね? と思えてくる不思議!
なんかもう普通に極悪クランだよね! 見た目的にもあと堕天使と海賊が入っても違和感ないよね?

本筋の方の王国と皇国の講和会議の方は、先だってから皇国の国内事情の逼迫とカルディナの方が不穏でむしろ皇国側も被害者サイドなんじゃ、という雰囲気が醸成されていたので、ある程度無難に落ち着くのでは、とも思っていただけに、皇国側の行動はある意味予想外。いや、講和会議でそこまでやってしまったらもう後戻りはできない、というのは作中でも語られている通り。
何らかの形で国として終止符がうたれない限り、中途半端な形ではもう妥協の余地がなくなってしまっている。アルター王国としてはアルティミア王女としては、先の戦いの遺恨を割り切ってここで最大限の妥協を示すつもりだったはずなだけに。
そこまで皇国側がする必要があったのか。少なくとも国単位ではそのへんうかがい知れないだけに、クラウディアとラインハルトの個人的な事情にあるのか、それとも大賢者絡みの対運営で動いている連中の思惑が深く絡んでいるのか。アルター王国側にも、先の戦争前後で意味のわからない意思決定がなされていたのを見ると、かなり根が深い問題が王国と皇国、場合によっては各国の最暗部にはびこっているのかもしれない。
運営は運営で相変わらず「理不尽」を強いる事こそが正しい手段とすら思っているようだしなあ。トムさんがそんな運営の中でひとり奮闘していて、なんか不憫ですらある。

さてもはじまった絶望的なアルティミアを守っての撤退戦。いきなり月夜先輩が真価を見せてくれてましたけど、あれ実際やられるとメチャクチャだな!! まさにグローリアの理不尽をそのまま引き継いで体現してるじゃないですか。これはエグいわー。
……でも、これでもう最大の見せ場が終わってしまったような気がするのは気の所為だろうかw
と、いういい所で次回に続く。

シリーズ感想

夢見る男子は現実主義者 1 ★★★☆   



【夢見る男子は現実主義者 1】 おけまる/さばみぞれ HJ文庫

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同じクラスの美少女・夏川愛華に恋い焦がれる佐城渉は、彼女との両想いを夢見て、めげずにアプローチを続けていた。
しかし、ある日突然、夢は醒める。

「あんな高嶺の花と俺じゃ釣り合わなくね……?」

現実を見て適切な距離を取ろうとする渉の反応に、愛華は呆然。

「もしかして、私、嫌われたの……?」

勘違いの末、焦り慌てる彼女からは無自覚な好意が見え隠れ!?
両片思いのすれ違いに悶絶必至の青春ラブコメ、開幕!

押してダメなら引いてみな、というのは恋愛格言的なものの中では王道定番誰もが知ってるあれやこれ、てなもんでもっとも有名なものかもしれないけれど、意外とこれに従った形のラブコメってあんまり見た記憶がないんですよね。それなりに珍しいパターンじゃないだろうか。
実際、引いて相手を意識させるという展開はそれなりに書くのも難しそうですし。
もっとも、本作では意図して企み、或いは恋愛の駆け引きとしてわざと引いてみた、というものではなく、これまで暴走気味に夢中になり、熱中し、過剰に押し掛けまくっていたのがふとしたきっかけで我に返り、これまでの行状を反省して距離を置こう、とした結果によるもので、下心とか無い考えによるものだから主人公の行動に嫌らしさなどはないのだけれど……。
うん、いきなりこんな風に距離置かれだしたら、冷められた?とか嫌われた? と思われても仕方ないよね。かなり強烈に、関心が失せた、ような態度に見えてしまいましたから。

もっとも、ちらっとだけ描写されていた渉が夏川愛華にまとわりついていた様子は、めっちゃ拒絶されてるし嫌がられてるし人の話は聞かないでまとわりついてくるし、で冷静に見てそれあかんのちゃう?という有様なので、反省した渉がこれあかんやろう、と距離置こうとしたのもわからないでもないんですよね。
とはいえ、実際はどうだったのだろう。周りの反応はあれもう付き合ってるカップル、扱いだったんですよね。愛華の親友である芦田圭も微笑ましく見守っていたのを見ると、決して渉からだけの一方的な関係だったとは思えないんですよね。本気で嫌がってたら、周りだってわかるでしょうし、もし本気で嫌がっていて周りの理解も得られず、だったら愛華の精神面はもっと一杯一杯となって疲弊しきっていたでしょう。つまり、周りから見ても言葉ヅラほどには嫌がっているように見えなかった、それどころかイチャイチャしてるように見えた、という事なんでしょうね。
そのへん、物語の始まりが渉が冷静になっちゃうところから始まって、長きに渡って渉が続けていた愛華へのアプローチがどのようなものだったのか、この物語がはじまるまでの二人の関係が具体的にどんなものだったのか、それを見せてもらっていないというのは前提を見せて貰っていないという感じになっていて、夏川愛華の抱くモヤモヤがいまいち具体的にどんなものなのかが見えてこないんだなあ。

これに限らず、若干置いてけぼりに主人公、登場人物、或いは作者だけが委細承知している納得しているわかっているようなんだけど、読んでるこっちは説明とか描写がないまま間をすっ飛ばされて、わかっている前提で話が進んでいる、みたいな所がちらほら見受けられたような気がします。
物語の展開上必要な「本心が見えない」状態ならいいんですよ。風紀委員長が渉の言動に何か彼女なりに納得したか考えている素振りが見えましたけれど、ああいうのは必要なその登場人物の中だけで生じている考え、であってそれは読者側は想像するだけで今の所はまだ具体的にわからなくても、それはそれで物語としての描写技巧の範疇です。
それとは別に、所々一人合点してそれを前提に話が進んでいく所があって、そのたびに居心地の悪さみたいな置いてけぼりにされてるような感覚を憶えてしまうのでした。
それに、この物語の主題は夏川愛華の引かれて逆に意識してしまう、という展開のはずなんだけれど、その肝心の愛華本人が本当にほったらかしにされて、渉はというと他の女の子の事情に首を突っ込んでそちらの話になっちゃうんですよね。なので、愛華のモヤモヤはこの一巻では本当にただモヤモヤしているだけで、彼女自身困惑しているもののまだ本当に真剣にその感情に疑問を抱き悩みだす段階までは至らないのである。いや、ぐるぐると悩みだして正体がわからないまま憤懣やるかたなくなってはいるのですけれど。
肝心の彼女放ったらかしというのは、どうなんだろうなあ。

では、そのメインたる夏川を放っておいて、ならば主人公である渉について掘り下げていく、或いは現状の彼がどのような心境であるのか、どのような状態であるのかを他の女の子たちと関わる話を通じて詳らかにしていくのか、というと……。
どうなんだろう。よくわかんないんだよなあ。本人は冷静になっただけ、と言ってるんだけれど、自分に自信を失っている、卑屈になってるという風に見られても仕方のない事を言ってるようにしか見えないんだよなあ。本人としては理性的にも自己評価としてもフラットで客観的になっている、と思っているみたいなんだけど。
あれ、姉ちゃんが自分が貶してばかりいたからだ、とショック受けて影で泣いちゃってたのも無理からぬよ。姉ちゃんは悪くないし、普段のクチの悪い思うがままに身内には忖度せずに言いたいこと言ってる姉ちゃんでいいんだ、という彼の言い分は本心だろうし、家族にまで気を使ってほしくない、と思う彼の心持ちはとてもイイと思うんだけれど……でも、実際問題現状のその卑屈で変に身の程を弁えてます、という態度なんとかしないと姉ちゃん絶対気にしたままだぞ。
今の所、渉の精神状態って決して冷静になってるようには思えないんですよね。夢から醒めた、われに返った、と自分を評しているけれど、どうにもふわふわしていて足元がおぼついていないように思えるんだよなあ。なんか変な所で感情的になったりえ? そこで? と思うような所でムキになってたりして、どうにも精神的にも安定しているように見えない、不安定に見えてしまう。
ただ、それが作者が企図したものなのか、それとも本当に渉が冷静に理性的になっているつもりで描いているのかが判別できない微妙さがあるんですよね。
とにかく、ちゃんと夏川愛華と向き合って二人の話にしてくれないと、渉の状態やら何やらも曖昧模糊としてよくわかんないです。本筋を進めておくれ。

魔術破りのリベンジ・マギア 7.再臨の魔人と魔術破りの逆襲術士 ★★★★   



【魔術破りのリベンジ・マギア 7.再臨の魔人と魔術破りの逆襲術士】 子子子子 子子子/伊吹のつ HJ文庫

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九曜に告げられた「己が何物であるかを知れ」という命題に向き合うべく、晴栄は自身の母親・葉子の足跡を辿っていく。幸い、大和へ帰国していたことで調査の足掛かりを掴むが、同行していたティチュを発端に、陰陽寮を揺るがす大事件が発生。その事件の中で、兄・晴雄から語られる真相とは―!?「―この土御門家は、俺が完膚なきまでに終わらせてみせます」かつての復讐者と、今もなお憎悪の炎に身を焦がす復讐者。二人の邂逅と激突の先に、新たな物語が紡がれる。

シリーズ完結編は、最終巻に相応しくオールキャストによる総力戦。それ以上にシリーズ通してのテーマを見事に帰結させた集大成となっていたのが素晴らしかった。
物語のはじめは、母を殺した土御門の家そのものを憎み、当主に成り上がってこの家そのものを滅ぼそうと復讐の念を滾らせていた主人公の晴栄。彼の孤独な憎悪と復讐心は、留学先で出会ったティチュをはじめとした様々な人達が抱え持っていた苦しく辛い人生を目の当たりに、彼らに寄り添い時には向こうから手を差し伸べられ、共に困難を乗り越えていく中で徐々に晴栄の心は解きほぐされていきました。
そうやって心の余裕を持ち得て今まで自分が歩いてきた人生を振り返ってみると、新たに得た友人だけではなく、復讐の同志だった狐狼丸や幼馴染の鴨女をはじめとして故郷日本でも様々な人に助けられ、一度実家に帰ってみれば兄・晴雄やその側近である斎藤藤子や剣の師匠であった法麗らに暖かく迎え入れられ、憎しみの対象でしかなかった土御門の家ですら本当は晴栄を孤独にはしていなかったと気付かされたのでした。
晴栄の心が晴れ渡っていく過程は、その様々な出会いの描写もあり丁寧なもので、彼の復讐はこうして周りの人たちによって癒やし解きほぐされる事で消え去ったのでした、めでたしめでたし、でも十分綺麗な纏め方となるだけの晴栄の変化は良きものでした。
でも、それで終わらずにさらに一歩踏み込んで、晴栄と全く同じ復讐を、晴栄と同じ孤独にまみれた憎悪と怨念ではなく、なくなった晴栄の母への敬愛と晴栄という弟への愛情によって成し遂げようとしていた人を、復讐を辞めた晴栄の前に立ち塞がらせたことで、この復讐の物語はステージを一つ駆け上がったように見えたのでした。
実際、晴雄の思惑はこの最終巻に至るまで判明せず、決して悪い人には見えなかったけれど結局自分の都合で何かを企んでいる人で晴栄を利用するつもりだったのか、と思っていたのが理由が判明してみれば、そりゃもう凄く情愛溢れた人ゆえの思いつめた行動で、弟への愛情が満ち満ちていて思わず目尻が熱くなるほどだったんですよね。
愛深いからこそ、その一念は決して止められない。止められるのは、それこそ同じ復讐者であった晴栄だけ、という構図がまた素晴らしかった。
お互いを愛し何よりも大切に思うが故に、刃を交えることになる兄弟。この熱量は、熱かった。

ラスボスも、最終決戦に相応しい大物で、それを前にこれまで出会ってきた人たちの助力と、これまでの旅路で知ることになった母の出自に基づく家族としての縁あるアヤカシたちの支えも受けて、最終決戦に挑むという構図は実にオールキャストの決戦に相応しいもので、それに加えてスペックや数の過多で押すのではなく、相手の仕掛けを逆利用して術を反転させて起死回生の一手とする、というのは歴史における魔術という媒体をふんだんに取り入れ、丁寧に解きほぐして物語の中に取り入れて、目玉にしてきた作品らしい、ギミックでありました。

それに、怨念無念を晴らした、という意味では土御門兄弟だけではないんですよね。シリーズ通して多くの登場人物が経てきた行程であり、多かれ少なかれ皆が気持も新たに自分の未来を歩みだしている。それが、ラスボスの彼にまで当てはめてくるとは思わなかっただけに、彼の執念怨念があの一言で祓われたのは、清々しくもありました。

しかし、邪悪の樹の首領の正体についてはちょっと吃驚でしたけどね。その行動原理というか目的も含めて、思いもよらぬ方向からボールを投げられて、なんかこう「うわっ、そう来たか!」とちょっと心跳ねるような驚きでした。邪悪とかそういう方向性じゃなかったもんなあ。というか、この人ありなのか。歴史上の実在の人物をちょくちょくガチの登場キャラとして放り込んできた本作ならではの横入りでありました。

このシリーズ、設定や魔術の使い方などは非常に面白く、物語の展開そのものはオーソドックスな面もありつつ紆余曲折あって良いな、と思いつつそのお話の語り口がちと固かったり運び方が性急だったり、と物足りない面が垣間見えることもあったのですが、この最終巻はキャラの内面描写も含めて最初から最後まで勢いよく情緒も揺さぶられる緩急もあり、前のめりにのめり込まされました。良かったよー。特に主人公の物語としては、見事に完成を見ていてお見事でした。
次回作も、この調子この勢いで期待したいです。

……しかし、エピローグってば晴栄くん、もう自分に何の疑念もなく女装してましたなw

シリーズ感想

聖なる騎士の暗黒道 3 ★★★☆   



【聖なる騎士の暗黒道 3】 坂石遊作/ へいろー HJ文庫

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マーニという心強い師匠と出会い、暗黒騎士への道をようやく進み始めた歴代最強の聖騎士セイン。彼はメイドのメリアと共に、学園が開催する魔法武闘祭に力試しとして参加することに。当日、アリシアたちとお祭りを楽しむセイン。しかし、聖騎士を憎む生徒会長カインも武闘祭に参加していて――「生徒会長。貴様は一度、負けた方がいい。そして、自分が一人ではないと知るべきだ」コミカライズも絶好調なアクションコメディ、激闘の第3弾!!

実は先月には既に読んでいたのだけれど、感想書くの忘れてたみたいで。索引整理していたらどうしても3巻の感想記事が見当たらず、あれえ? と思って読書メーターで既読確認したらこれが読了登録するのを忘れてたみたいなんですよね。自分、この読書メーターの記録で確認しながら感想記事書いていくものだから、まるごと感想書く事自体抜けてしまっていたみたいです。
他抜けてないだろうか、大丈夫だろうか。
ともあれ、本作読んだのほぼ一ヶ月前だったので流石にちょっと読了直後の感覚が抜けちゃってたのでザッとではありますが、改めて読み直したり。これが読了から数日後、くらいだったらよい感じで感想を取りまとめるにも熟成が進んでいたりもするのですが。

さても、こうして改めて読んでみるとセイン君ってほぼほぼ精神的には完成しているんですよね。未熟で歩むべき道を誤ったり、その方向性を見失って迷走したり、というのは既に聖騎士時代にぶち当たり乗り越えてきた後なんですな。
今となっては確かな目的を見定め、それに向かって一途に進んでいる。と、同時に自分の現状を含めて周りにしっかりと目を配る余裕も持っている。暗黒騎士になるつもりではあっても、聖騎士としての義務を果たす事は怠っていませんし、その意味では人間性が完成された主人公なんですね。
とは言え、性格まで完成されてしまっているわけではなく、年相応の中二病を発症し暗黒馬鹿呼ばわりされる奇行に走ってしまったり、メリアにからかわれてあたふたしたりする男の子らしい側面も見せて、可愛げや愛嬌というものをタップリと備えているんですよね。完璧か!
その意味では、生徒会長のカインもまたまさに完璧超人という人なんですけれど、心に遊びがなく周りを見る余裕もない。復讐という一念に視野狭窄に陥っていて、彼もまたブレのない一途な生き方をしているわけだけれど、明らかに道を失ってしまっている。
アリシアやマーニ、そして出会った頃のメリアのように道を見失い迷走している子たちにとって、セイン君というのはさながら道を照らす灯火になってくれる存在なのでしょう。
その生き方の発端を同じくするメリアとカイン。カインはセインに出会わなかったメリアだ、と作中で語られていますけれど、カインも全然手遅れなんかではなかったんですよね。今まで出会わなかった。でも、ここで出会ったわけだ。
いや、しかしまさか同じようにカインまで従者になるとは思わんかったけど。別に従者になるのが女の子だけ、とは思っていませんでしたが、カインほど完成された人材でも従者にしちゃえるのかー。
というかね、セインが最終的に聖騎士辞めようとしているの、理由はまさに物語の根幹なのでわかるんですけど、じゃあセインが聖騎士辞めたらその後釜とかどうするんだろう、聖騎士史上最高最強なセインが居なくなって、あとどうするのよ、と思う所は最初の方からあったんですよね。まさか、ここまで直球で後釜候補用意してくるとは。後顧の憂いなくなっちゃうじゃんw

今回は先に既に従者になっていたメリアがメインの話でもあり、学園祭でメイド喫茶なんかが出店されててセイン君が思わずガン見してしまったりするのを目撃して、他のメイドなどには目移りも許さぬ、とばかりにメイドアピールしまくるメリアに、彼女なりの独占欲みたいなのあるんですねー、とほっこりしたり。従者の中でも一番に付かず離れず相棒のように付き従ってきたメリアなりのプライド、いややっぱり独占欲か、そういうのはあるんだなあ、と。
でもこの暗黒馬鹿、最終的には女神様しか眼中ないわけで、その点女性陣としては複雑ですよねえ。ここ決着どうするんだろう。


ワーウルフになった俺は意思疎通ができないと思われている 1 ★★★☆  



【ワーウルフになった俺は意思疎通ができないと思われている 1】 比嘉智康/福きつね HJ文庫

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ある日、目覚めたら異世界でワーウルフに転生していた竜之介。しかもワーウルフは人間はおろか他の魔物とも意思疎通ができない種族だった! 超ハードモードな状況に戸惑う竜之介だが――「……わたしと一緒に、テイムロイヤル、出てほしい」テイマーを目指す美しいお嬢様・エフデを救ったことで、彼女のパートナーとして生活することに! しかしこのお嬢様、名家出身のはずが貧乏でバイト三昧と、何やら訳ありのご様子……!? 言葉はなくても心でつながる異世界ワーウルフ転生譚、開幕!

たとえ言葉が通じ合っても、意思疎通出来ているかというと一概にそうとも言い切れない。話している言葉の意味はわかっても、理解する気がなければ何も伝わらないしそもそも聞いちゃいない場合もある。自分勝手に好きな解釈をして意図を汲んでくれない時もある。
時として、言葉が通じても意思疎通は一方通行だ。ドドリアさんのエピソードなんてその最たるものだろうし、妖精アアリッコの言動も好意と善意に基づいているのだろうけれど一方通行で竜之介の意志なんて確認なんざしちゃいない。
ブレイクのエフデさんへのアプローチも意思疎通なんて一切考慮していない一方通行の押し付けがましい搾取に過ぎない。
ザボンさんの告白イベントに関してだけはあれよくわからないんだけど。うん、あれどういう事なの?
ともかく、意思疎通というのは気持ちを通じ合わせるというのは決して言葉が通じてこそ叶う、というものではない、という事だ。ドドリアさんの一件でどれだけ言葉を尽くしても、母親はそれを信じてくれなかったこともある。あとで誤解は解けたにしても。
だからなのだろうか。竜之介が発した言葉が伝わらないワーウルフになってしまっても絶望しなかったのは。いや、それとも言葉が通じなくてもコチラの気持ちを理解しようとしてくれる、自分の気持ちを一生懸命伝えてくれるエフデと出会えたからだろうか。
やはり言葉が通じない以上、エフデとだってちゃんと意思疎通が叶うわけじゃない。コチラがいいたいことをトンチンカンに受け止めてしまうことがほとんどだ。伝わらないことに、もどかしい気持ちを抱くことだって度々だ。
でも、通じることもある。
ちゃんと、意志が通る時もある。ちゃんと、わかってくれることもある。そのときに、伝わったと感じた時の嬉しさを竜之介は本当に大事にしている。伝わないはずの気持ちを意志を汲み取ってくれたときの感動を忘れられず、とても素敵に思っている。
だから、誰とも言葉が通じないこの世界で、でも竜之介は一度も孤独を感じなかった。
幸せだったのだ。
その幸せは、果たして人の幸せかどうかはわからないけれど。でもどうせ、アアリッコに誘われて浮上世界に行ったとしても、そこにあるのは意図を誰も汲み取ってくれず決めつけで押し付けてくるだけの家畜の楽園だ。

エフデさんとキズナと名付けられた竜之介の関係は、エフデの側から見たらペットと飼い主のそれなんだろう。どれほど心繋がり大切なパートナーとなっていたとしても、二人の間には決定的な隔たりがある。認識の差がある。それは、言葉が通じないというだけで説明がつかない断絶だ。でも、現状はともかくエフデさんが一族の彼岸として目指している、ワーウルフの低脳種からの知恵ある種族への復活は対等以上の関係を目指すもののはず。
家族を失い、他者には見捨てられ、社会システムには望まぬ結婚を強いられ、周りには言葉が通じる相手ばかりなのに誰よりも孤独だったエフデさん。その下に現れた言葉の通じないワーウルフのキズナは、でもエフデさんにとっても唯一心通じ合わせられる相手だったのだ。今は対等でないにしても。ペットと飼い主の関係に留まっているのだとしても。それでも、二人は家族になったのだ。
多分、これはきっとそんなお話。そんなテーマをお話するには、ちと色々ととっ散らかって集約できていなかった気もするけれど。
ともあれ、この健気な二人の人外カップルには、それこそ本当に人外カップルになれるように願うばかりでありました。

比嘉智康作品感想

クロの戦記 1 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです ★★★☆  



【クロの戦記 1 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです】 サイトウアユム/むつみまさと  HJ文庫

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異世界に転移した3年後、クロノは亜人千人の指揮官となって、なぜか一万の敵軍を迎え撃っていた!!絶望的な戦力差の中、どうにか撃退したクロノは、今度は領主に祭り上げられていく!!現代日本の価値観と乏しい知識だけを武器に、領地改革に乗り出したクロノの周りにはどんどん美女・美少女が集まってきて―。戦い、内政、そして夜の性活で大忙しなエロティック王道戦記!!

なぜこのタイトルにしたし! 確かHJ文庫で再出発するまでは【クロの戦記】だけだったような記憶があるのだけれど。
元々「オーバーラップノベルス」から出ていた作品がHJ文庫に移籍してのリスタート版。単行本から文庫本になった事で手を出しやすくなったので購入しました。ウェブ版も既読なんだけど、それなりに古参の作品なだけに最初の方の内容はうろ覚え。
なので、いきなり捨て石にされての絶望的な防衛戦からはじまってちょっとびっくり。あれ? こんな所からだったっけ? と戸惑ったのですがウェブ版の方を見直してみるとたしかにシチュエーションとしてはこの状況からのはじまりでした。
でも! 全然内容の濃さ違うから! ウェブ版ではかなり簡略にサラッと流されてしまっていた戦況が詳しくより臨場感たっぷりに描かれていて、はっきり言って別物。このシリーズを書き始めた当初と最近に至ってからの筆力の向上っぷりが目に見えて伺えます。
タイトルからだと、ベッド上の夜戦のみに特技が特化した主人公が女を誑すスキルを駆使してのし上がっていく、みたいに思えてしまうかもしれませんけど、クロノくん別に夜がお強いとか上手いとかではないんですよね。床上手とか百戦錬磨というわけではなく、こいつ単に節操がないだけだから。単にド助平なだけだから。
むしろ、彼の特筆スべきはその凡庸さにあるのかもしれません。凡庸というにはあまりにも出来物なのですけど、才気走るところがあるわけでもなく根性なしだし愚痴ばっかり零しているし、普段から覇気なく傍目には情けない気合の抜けた凡人風情なんですよね。
しかし、彼こそは偉大なる凡人というべきなのでしょう。

圧倒的な戦力で攻め込んできた敵国の軍勢を前に、とっとと逃げ出してしまった辺境伯とその正式な兵士たち。残されたのは被差別民である亜人によって編成された千人部隊と急遽指揮官にさせられた士官学校を出たばかりの辺境貴族の子息であるクロノだけ。
誰がどう見ても捨て石にされた状況で、しかしクロノは逃げ出さないのである。今逃げても追いつかれて殺されるだけ、という醒めた視点はあるものの、犠牲を亜人たちに押し付けて自分だけとっとと逃げ出す、という真似だけはしないのである。決して華麗な戦術を持って数的不利を見事に覆し、なんて戦争芸術を描けるわけじゃない。彼が出来るのは血と泥に塗れて部下を効率的に殺しながら死戦をくぐり抜ける泥臭い戦い方だけだ。しかし、クロノは自分もまた亜人たちと同様に一緒に肩を並べて地と泥に塗れる。
嘆き罵り愚痴りながら、それでも彼は「為すべき事」から決して逃げ出さない。見た目こそ決して格好良くない無様さすら伺える物腰は、しかし彼に率いられる亜人たちの自分たちを虐げるばかりだった貴族の、人間の、指揮官であるクロノへの信望へと繋がっていく。
クロノは決して博愛の人格の持ち主というわけでもないのだけれど、価値観が現代の素朴で善良なそれなので、亜人たちに対して自分たちと同じ「当たり前」を適応するんですね。ただ普通に人間として接する、人間として遇する、彼らの働きに対して当たり前の報酬を与え、能力に応じた待遇を与える。
その「当たり前」をする人間、出来る人間がこの世界には殆ど居ない稀有であることを知らないまま。
指揮官が先頭で戦うのも、どれほど嫌でウンザリする状況でも最善を尽くすのも、領地を得たらそこに暮らす人々に当たり前の生活を保証するために頭をひねるのも、彼にとっては当たり前の事なのである。その当たり前の事が困難すぎてうまく出来なくて、悩み苦しみ投げやりになったり嫌がったりとジタバタして自分の無能さに七転八倒したりするのだけれど、その当たり前を実行しようとする事自体が並の人間には出来ない、その意志を持てない、持ったとしても維持できない放り出してしまう事だということを、彼は自覚なく実行し続けているのだ。
クロノ自身は自分への評価は決して高くなく、低めですらあるのだけれど、それ故に周りが与える評価とズレが生じてるんですね。また自己評価が低い分、人の意見は良く聞くし、わからない事は専門家に任せて信任できる。
新米士官として、自分が戦場での経験が不足している事を当たり前のように受け止めているクロノは、大事な場面や自分では判断できない所なんかで結構副官であり補佐役である下士官のミノタウロスのミノさんに意見を聞いたり、色々任せたりしてるんですよね。新米士官でありながら、部下の使い方が異様に上手い。
同時に、こうしてみるとミノさんも少尉付き下士官としてメチャクチャ有能なんですけどね。一応貴族であるクロノへの最初の距離感の図り方なんかも慎重だし、経験不足な新米士官への押し付けがましくない教育教授も的確だし、細かい配慮から部隊の実際の運用なんかも卒なくどころかかなり敏腕にこなすし。
お世辞じゃなく、ミノさんて戦場においてはクロノの片腕なんだよなあ。

情けない顔を見せることは多いものの、愚痴の多さとは裏腹にその心底の一番奥底ではどこか飄々とした達観とも楽観ともつかないものを抱えているクロノ。そして本人には自覚ないものの、時折垣間見せる底冷えするような冷たく相手を見定めるような眼差し。どこか掴みどころ無く愛嬌があるような胡散臭いような、このぼんくらスケベな偉大なる凡人のおっかなびっくりの立身出世の戦記物語は、ここからが開幕である。

キャラとしては、やたらとから回る傲岸不遜な皇姫のティリアもいいのだけれど、アリデッドとデネブのポンコツエルフ姉妹がやっぱりアホ可愛くて好きだなあ。

インフィニット・デンドログラム- 12.アイのカタチ ★★★☆   



-インフィニット・デンドログラム- 12.アイのカタチ】 海道左近/タイキ HJ文庫

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決闘都市ギデオンにて、愛闘祭という街を挙げての大きなお祭りが開かれることになった。アズライトからの依頼により、護衛をしつつ、参加することになったレイ。愛をモチーフにしたその祭で、様々な人々の恋模様が咲き乱れる中、ある意味最高のタイミングで監獄から出所してきた“狂王”ハンニャがついにフィガロと邂逅する―!!レイたちは無事祭りを成功させることはできるのか!?大人気VRMMOバトルファンタジー、恋は戦いの第12巻!!

そうか、これは「フィガロの結婚」だったのか! って、別に当該オペラの内容に符号した展開だった、ってわけじゃないのだけれど。
カップルで盛大に祝う大祭に、カップルを見ると大暴走するハンニャを放り込むってそりゃあある意味怪獣映画か無双系ゲームみたいなド派手なありさまになってしまって、それはそれで何気にギャグ時空なら見たくなるような大惨劇だったのですが、さすがに実現せず。
というか、思っていた以上にハンニャさん、理性的だったんですけど。普通に話通じる人じゃないか。まあ通じないときは通じないのですけれど、スイッチ入らない限りは穏当というのはわりとマシな方なんじゃないだろうか。
しかし、もっとハンニャとフィガロ、当人同士の感情的行き違い、或いは認識の差異によって拗れるのかと思ってたのですけれど、こんな外部からの余計なちょっかいがあるとは思わなかった。悪意ある作為によって、誤解が仕掛けられ暴走が誘導される。
これが当人同士の問題なら、余人が介在する余地はなかったんですけどね。てっきりフィガロはああいう人ですから、愛とか恋とかを字面以上に認識していなくて、必要以上に認識しまくっている愛の重いハンニャと、その誤差故に逆にうまくハマるのではないか、或いはフィガロが本当の愛という事象を認識してそこでようやく二人の間を隔てていた壁が取り払われるのでは、という方向性を想像してたんですよね。
ちょっと、フィガロという人をこれは見くびっていた、と言わざるを得ない。ってか、シュウ兄さんをはじめとして、みんな見縊ってただろ!
ある意味想像していた以上に純真で無垢な人柄だったと言えるのかもしれない、フィガロは。純真で純粋だからこそ、ハンニャの愛の重さに重量なんか感じずに、そのままあるがままに受け止められる人だったのだ。その重さこそを、純真が純真をかけ合わせるように好ましく思える人だったのだ。
愛を知らないなんてとんでもない、家族に誰よりも愛された彼は愛というものを誰よりも純粋に理解していて、そこに恋をかけ合わせれば女性を異性として愛することの素晴らしさを誰よりも体感出来る人だったのだ。
……フィガロってば、リアルだと心拍数あがると死んじゃうらしいけど、これ普通に死ぬんじゃね?
本気で大丈夫なんだろうか。思い出しドキドキだけで死にかけてたのに、当人目の前にしてドキドキせずにいられるんだろうか。

今回はやはりメインのフィガロとハンニャにスポットがあたっていたせいで、特にほかのカップルたちにも光があたって、という事はなかったのだけれど、一番普通にデートしてたのってネメシスとレイですよね。ファッションセンスがアレな上に暗黒騎士そのままな鎧姿でうろつくことを当たり前にしてしまっているレイのために、普段着を見繕おうとレイを引っ張って服屋を見て回ろうとするネメシスって、普通に彼女してますよねえ、これ。
アルター第二王女のエリちゃんと、迅羽が連れてきた黄河の第三王子のツァンロンとお見合いという運びになってましたけれど、このちびっ子カップルはお似合いなのでうまくいってほしいなあ。
何気に迅羽もテナガアシナガを取っ払ってちびっ子アピールしてましたけどw

しかし、AIたちはホントにトムさん以外は迷惑な人ばっかりだなあ。迷惑どころじゃなくアルターの人死がバンバン出る勢いなんでとんでもねー話なのだけれど、こうも作為だらけであれこれと手出しされると、遊戯派みたいな純粋にゲームとしてこの世界を楽しんでいる方としても、ゲームとして楽しめなくなるんじゃないだろうか。まあAIの意図なんかプレイヤーは知らないので、普通のイベントとして捉えるだけかもしれないけど、今回なんぞマスターのリアルでの人間関係にまで及びかねない悪意ある誘導だったわけですしね。トムさんが問題視するのもこれ無理からぬところだわな。
かといって、マスター至上主義のAIもあれはあれでどうかと思うし。今回に関しては、確かにこういう展開にならなかったら、果たしてフィガロが愛を告白できたかわからなかったかもしれないけれど、友人でもなんでも無い外部のAIが勝手に手を加えていいものか、という観点もあるだろうし。

それはそれとして、最近女化生先輩がリアルでもゲームでもオチ担当になってきてる気がするぞ。どちらでも残念な人、を極めてきてしまっているような。結果も残念なものを引き込んでしまっているし。特に今回は悪いこと考えて暗躍していたわけではなく、とばっちりで酷い目にあってましたし。まあ、小狡いというかセコい真似しようとしていた結果でもあるので、自業自得なのかもしれませんけどw
最初の方でビースリー先輩とアルター王族とで三すくみの関係とか言われてましたけれど、段々王族相手にも頭あがらなくなってきてませんか、これ?w

海道左近作品感想

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 11.栄光の選別者 ★★★★   



【インフィニット・デンドログラム 11.栄光の選別者】 海道左近/タイキ HJ文庫

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かつてアルター王国を襲った災害、【三極竜グローリア】。そのモンスターに近づけば死があふれ、遠くからの攻撃は効かず、打つ手をなくしたプレイヤーやティアンたちに暗雲が立ち込めていた。
そんな中、それぞれの闘う理由を胸に3人の超級が立ち上がる。<月世界>、<無限連鎖><正体不明>。
3人の超級が、“アルター王国三巨頭"と呼ばれるきっかけとなった史上最大の事件が今始まる。大人気VRMMOバトルファンタジー超激熱の第11巻!!

怪獣映画じゃんこれ! この間モンスターバースで見たよ!?
グローリアがはじめて人間たちの前に姿を現すシーンなんか、古式ゆかしい初代ゴジラからの伝統の登場シーンですもんね。あの山の向こうから山よりもでけえモンスターが現れるというシーンは、その巨大さを恐怖させるという意味でも特に印象的な手法でもありますし。
にしても、このグローリアって幾ら何でも無茶苦茶すぎやしませんかね!? 普通に国を滅ぼすどころか文明を無に帰すレベルの大怪獣なんですけど。キングギドラより理不尽じゃね!?
いやだって、所有ギミックがアホじゃん! ゲームバランス崩壊しきってるじゃないですか。うん、まだこれが自然発生した災害としての大怪獣ならまだ仕方ないと理解できるかもしれないけれど、これが明確な意図をもって投下された時点で酷い話以外なくなっちゃうじゃないですか。管理AIたちが鬼畜外道の類だというのは理解した。ティアンの命もこの世界の人々が紡いできた歴史も、塵ほどの価値も見出していないのか。目的を達成するためにはあらゆるものを犠牲にする、いや犠牲という意識すらなく単に消費するというくらいの考えしかないんじゃないだろうか。
それはもう、「邪悪」と定義されるものじゃないのか?
もちろん、猫さんのように彼らの中でも意見が別れ、価値観も変わってきているというのはわかるんだけれど。人の生死をこんな風に上から好き勝手されたらたまらない。もしこの世界をゲームと認識しているにしても、ゲームの運営では絶対にしないような恣意的なやり方をされてしまうとやっぱりたまらない。いつか絶対に対決する相手として見込んでしまいますよ、これ?

しかし、てっきり表紙の三人が並び立つ姿からして三人で共闘でもするのかと思ったら……。違うのか! 違うのか! いや、フィガロさんが他人と一緒に上手く戦えない体質というのは覚えていたので、んんん? と疑問は感じていたんだけれど、なるほどこの三人らしいといえばらしいのか。でもこれ客観的に見ると「ごっつい」戦い方やなあ……。
まだフィガロさんが一番「まとも」な戦い方だったんじゃなかろうか。最後のシュウ兄さんなんか、もうパシフィック・リムになっちゃってたじゃないですか。それともマクロスですか? あんなんアリなんかー!? 一人世界観がぶっとんでやしないですか? いや、わりとロボットとかもたくさん出てくる世界観ですけど、それにしてもそれにしても、である。
そのシュウ兄さん、何をどうしてそうなったのかこの時点で世界の裏事情について色々と踏み込んで知っちゃっているんですね。なんでそんな知っちゃってるの? なにやらかしたのホント?

そして、こっそりと阿鼻叫喚の地獄絵図になりそうだった無茶苦茶を、止めていた犯罪王。この人て、実は操縦の仕方知ってたらわりとコントロールというか誘導しやすいんじゃ……。今回も竜王さまにめっちゃ誘導されてたし。黒幕として様々な謀略・策略を張り巡らして犯罪芸術を描き出す、みたいなタイプの人ではないっぽいのな、犯罪王。でも、彼の場合はだからこそたちが悪い、という事になりそうなのがなんともはや。

結果として、アルター三巨頭と呼ばれる三人が名を挙げたものの、この事件でとてつもない被害が出てしまっているし、まだこの頃は仲の良かった皇国との戦争の遠因の一つになってしまったわけですから、これを引き起こした管理AIへの不信と嫌悪はばっちりと張り付いてくれました。大賢者さまが色々と拗らせて化身絶対殺すマンに成り果てているのもわかる悪辣さなのだけれど、彼らには彼らの理由があるわけで享楽的な悪意があるわけではないにしても、それでもジャバウォックはちょっとやりすぎだったわなあ。少なくとも、レイとは絶対に相容れないんだろうな、これ。

シリーズ感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんんだが、どう愛でればいい? 10 ★★★★☆   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんんだが、どう愛でればいい? 10】 手島史詞/COMTA HJ文庫

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「これより、我が城に大浴場を作る! 」
大きいお風呂が欲しいというリリスからの訴えを受け、部下の慰労や、ネフィのためザガンは城に大浴場を建設することに。
彼は東方の建築を研究したり、なぜか魔王殿に存在した大浴場を参考になんとか完成までこぎつける。
大浴場を楽しむネフィやシャスティルたち、覗きをしようとするバルバロスと防ぐザガンなど、バタバタした魔王たちの日常は変わらず続いていく。
しかし、暗躍するビフロンスの魔の手は忍び寄っており、さらにはアルシエラが存在をひた隠しにしていた<アザゼル>がその姿を現し――
大人気ラブコメファンタジー絶好調の第10巻!

ニヤニヤ、ニヨニヨ、ゴロゴロゴロ〜。悶絶である。なにこれももう、愛で甲斐のあるカップルがたくさん居すぎて、顔面の筋肉が崩壊しそう。四六時中、あっちこっちでイチャイチャしてるもんだから、休んでいる暇がない。愛でカップルを見守る会員なマニュエラ姉さんとかこの世の春なんじゃないだろうか。その愛で力の信奉者の筆頭であるゴメリおばあちゃんはというと、師匠のオシリスが娘のネフィのいる魔王城に居座ってしまってコソコソする他なく自由にやりたい放題出来なくなってる上に、他のカップル愛でてたら自分の方にも流れ弾飛んでくるもんだから、自分が愛で力の餌食になってて、それはそれで! キメリエスに惚気けられてフニャーーっとなって崩壊しているおばあちゃんが可愛すぎて、正直たまらん!
お互い隠し事なく睦み合ってるザガンとネフィの安定カップルとは裏腹に、ごたついているのが黒花とシャックスの年の差カップル。あっちこっちから、シャックスのメチャクチャ有能で気が回るのに察しの悪さだけ致命的、というツッコミでおっちゃんフルボッコである。そうだよねえ、ザガンは物言いこそ不器用だったけれど、察しは悪くなかったし言うべきことを間違える事も言葉足らずという事もなかったですもんねえ。ネフィがしみじみと、シャックスの察しの悪さをザガンと比べて嘆息している様子には思わず苦笑してしまった。
黒花が拗ねちゃうのも仕方ないんですけど、シャックス自身はメチャクチャ黒花のこと大切に扱っている事は伝わっているのでみんな生暖かく見守っているのが何ともはや。でももう、黒花の方はシャックスの事好きとちゃんと自覚して固まってるんですねえ、これ。あれだけ意識して、その上で女扱いしてもらえないと拗ねちゃってるのだし。
ちなみに、黒花の軍服風ファッションは控えめにいっても最高でした。可愛らしい系は他にもたくさんいるだけに、小さくも凛としてカッコいい系の娘は希少で見栄えもよく、カッコよくて凛として可愛いというハイブリッドはやはり最高です、さすがですマニュエラさん。
ギクシャクしている黒花たちとは裏腹に、最近もうネフィとザガン並にお互い青信号で、でも恐る恐る手を出し合ってちょっと触れると引っ込めちゃうような微妙な距離感を楽しんでいるのが、シャスティルとバルバロスなんですよねえ。もう、このカップル最高じゃね?
バルバロスの乱暴ながら凄くシャスティルの事気を遣ってるダダ甘っぷりもさることながら、バルバロスが暴れているのを、思わず関係ないのに謝っちゃって、無自覚にバルバロスのことを自分の連れ合いのように認識しちゃってて、それを指摘されて悶絶してしまうシャスティルさんが、可愛い、ほんと可愛い!!
バルバロスはほんと、いいキャラに育ちましたよねえ。登場当初は噛ませみたいなキャラだったのに、魔王ザガンの悪友にしてライバルとしてある意味肩組んで歩くような対等さがあって、実際能力の方もいつの間にか魔王級に育っちゃってて、普通に作中の化け物キャラたちの中でもトップクラスになってるんですよね。んで、その力の大半をシャスティルを護衛するのに使っちゃってるという尊さ。こいつ、これで献身キャラなんだよなあ。
いやまあ、俯瞰してみると何気に男キャラみんな献身系だったりするのですけれど。キメリエスくんとかその最たるものだし。かと言って女性陣の方が自由気ままかというと、此方も色んな意味で献身的な娘たちばかりなので、どのカップルも様々な形でお互い支え合う優しいカップルになってるのが、ほんと尊い、尊いの。
そして、新たにステラ姉さんの方にも春が到来。というか、この場合はギニアス君の方に春到来というべきか。生真面目ショタっ子騎士団長、自由闊達な野良猫お姉さんに恋をする! 13歳のお子様が人生に膿んでしまっていたところを、あらっぽい手段ながら吹っ切らせて貰って、ある意味凄く甘えさせて貰うという真似されちゃったらねえ。立場上子供ながら子供でいられなかったギニアスくんとしては、あんな風に抱きついて泣かせて貰って優しく頭撫でて貰っちゃったら、キュンとなっちゃいますよね。ステラの方も、同世代じゃなくて一回り小さい子が真面目に堅苦しく頑張ってるの、放っておけなくて面倒見てあげたくなっちゃう、というお姉さん属性を芽生えさせちゃってるみたいだし。いやでも、ギニアスくんの真面目さって凄く健気なので、応援してあげたくなるのも確かなんですよね。ザガンも確かに気に入ってたみたいだし。ついついぶっ殺そうとしてしまってましたが。
あれで何だかんだとギニアス君も、ザガンの事正体知るまではストレートに慕ってただけに、また再会した時もっかい懐いてきそうだな。

と、各地各所でカップルたちがイチャイチャし、そうでなくても友達同士でもイチャイチャし、親世代の連中とは温かい交流を繰り広げ、と多幸感を味わわせてくれながら、何をしているかというと部下たち家族たちの福利厚生充実のために、大浴場の新設である。魔術師、魔王という屈指の実力者たちが集まって、いったい何をやってるんだろう、と思う所なんだけれどみんな実に楽しそうなので、良き、良き。
と、完全に日常回なのかと思ってたら、予想外の方向から本筋の話がグイグイと進展することに。ザガンの兄貴分だったマルクの正体がついに判明し……って、マジかそれ!?
ほんとに最初から、魔王勢力と教会勢力ってズブズブの関係だったのか。いやでも、そうでもないと筆頭聖騎士団長が魔王兼任してたり、魔王オリアスが実は聖騎士たちの装備作ってる人だったり伝説の聖騎士だったり、という関係もまあ不自然ではなくなるのか。
でも、それ以上に五年前に各勢力の主要人物が片っ端から死んでしまっているというのが、その事件の壮絶さを想起させることになる。
アリステラやミヒャエルといった上の世代の生き残りは、事情に通じてるんだろうけど未だなかなか口を割ってくれないし。何らかの理由があるのは確かみたいだけど。
ビフロンスもおそらくすべてを承知している一人なんだろうけど、底が知れたと思ってたこの魔王、思っていた以上にヤバい奴だったのか。ネフテロスが最初ビフテロスの元にいたのも、複雑な事情があるっぽいし。というか、まさかネフテロスにまだこんなヤバいものが仕込まれているとは。
ラストの衝撃的な展開といい、不穏な自体がどんどん進行してきていて、ついに次回あたりに世界の置かれている状況とか明らかになりそう。俄然、ストーリーも動き出したか。

特典の書き下ろしショートストーリーは、シャスティルの聖騎士の装束がなんであんなヒラヒラのミニスカートになってしまったかという。あんな短いと中身見えちゃうじゃん、という指摘は以前からありましたが、まさかむしろ見えちゃってもいいじゃない、という精神に基づくものだったとは。教皇、教皇猊下、あんたという人は……グッドジョブb

シリーズ感想


異世界からJK転生した元妹が、超グイグイくる。1 ★★★   



【異世界からJK転生した元妹が、超グイグイくる。1】 はむばね/鉄人桃子 HJ文庫

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平野庸一は、異世界からの転生者である。だが彼は、前世の冒険者生活のことは黒歴史として封印し、現代でごく普通の学生生活を送っていた。そんなある日、彼の前に転入生の美少女JK・環が現れる。なんと彼女は、天才魔術師にして「お兄様大好き」な、前世での「妹」が転生した姿だった!「現世では、兄様との血の繋がりは消滅!もはや『血縁負けフラグ』はあり得ません!」「…いや、しょせんお前は妹だし」超ブラコンな元妹がグイグイ迫る、超ハイテンション・ラブコメ!

ほんとにグイグイ来るな、この元妹!! いや実際グイグイどころじゃない勢いで押しかけてくるの、昭和のギャグアニメな勢いである。再会の時にお兄ちゃんが半年ぶりにあった従妹程度の反応しか示さなかった反動だったんじゃないか、と思ってしまう程度には平野くんのスルーっぷりはエグかったぞ。
前世からの様子を見ていると、わりとこのお兄ちゃんもシスコンの卦があって妹のことは随分と大切にしていたのに、どうして再会のときだけこんなサッパリ対応だったんだろうか。前世で命を落としたのは、妹を守ってのことだったというのに。
これ、素直に感動の再会になってたらもっと穏当な前世では妹だったけれど、今世では他人なんだからお付き合いするの何の問題もないよね、な男女の初々しい青春恋愛物語になってもおかしくなかったのに、と言ってしまうには元妹のガツガツ食いついてくる様子が肉食すぎるか。
普通ならたとえ妹でも、いや妹だったからこそドン引きしそうな恋愛の駆け引きも何もあったもんじゃない、棍棒外交のような攻勢に晒されても、「あはは、元気だなあ〜」くらいの微笑ましいと言わんばかりに流してしまって、動じもしないお兄ちゃん、相当の変人ではなかろうか。許容度深すぎて鷹揚すぎる!w
高校生にもなって前世前世と公言してはばからない、いや公言はしてないけど元勇者や元魔王と一緒になって前世思い出話をナチュラルに雑談してるんだから、あの人たちはそういう人たちなのだ、と生暖かい眼差しに見守られるグループに属しながら、まったく自然体で普通の学校生活を送っているのだから、大概おかしい。
まあ中学までは前世前世と連呼しながら、今と違って色々と実行に移してしまっていたそうなので、その意味では落ち着いたというか更生したのかもしれないが、遠巻きにされているという意味では変わってないよな、うん。
そんな前世祭りグループの中で、どうしてか魔王だけが前世の記憶を実は持っていなくて、知ったかぶりして付き合っているだけ、というのが面白い。のじゃロリな容姿といい喋り方といい実家が超名家だったりと一番中二拗らせてそうな見てくれ外装なのに、本気な親友たちのそれを「こいつら中二設定にハマりすぎてて大丈夫か?」と常々心配しつつ、付き合ってるあたりがなんというか、可愛そうな常識人ポジションだったりするのね。元勇者の方も相当にかわいそうな役回りを押し付けられている気もするけれど、ツッコミやらフォローに忙しい魔王がなんだかんだと苦労人なんですよねえ。
何気に、この生ではこの魔王が一番平野くんと付き合い古くて、幼馴染枠にぎりぎり入れてもいいんじゃないか、というくらいの深い関係だったりするし。
逆に記憶がない、というのが爆弾にもなってるんですよね、これ。記憶があってこの人生では和解したつもりになってる他の面々だけど、もしこれから記憶が戻ってしまったとき、果たして魔王はこれまでどおりの人間としての彼女で居られるのか。居られたとしても、前世で今大切な人をこの手で殺した事実を前にどうなってしまうのか。
……これ、魔王の方がわりと正ヒロインポジの可能性もあるんじゃないの?

はむばね作品感想

覇逆のドラグーン 1 ~落伍竜機士は運命の姫と、暁の極光世界を翔け上がる~ ★★★☆   



【覇逆のドラグーン 1 ~落伍竜機士は運命の姫と、暁の極光世界を翔け上がる~】 榊 一郎/もねてぃ HJ文庫

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16歳の竜機士たちの反逆英雄譚!

科学と竜の力が共存する世界。竜機士を育成する軍学校に通う少年・クロウは、ある日突然、異常事態に遭遇する。空を覆うオーロラの下、大人たちが突如、劣等世代とみなされていた「16歳」の少年少女を虐殺し始めたのだ。
学内随一の戦闘力を持ちながらも、反抗的態度から落伍者扱いされていたクロウは、混乱の中、同じく16歳の王国の姫・ルティエと出会い、軍の浮走艦を奪取。仲間とともに謎の敵と戦いつつ、一団を結成し空に旅立つ……!
若き竜機士たちが「世界」を取り戻すべく牙を剥く、反逆の英雄譚!

群像劇、群像劇ですぞ。今までとはアプローチを変えて、敢えて難しい多数の登場人物を描こうという意欲作。さすがはベテラン榊先生というべきで、短い描写やシチュエーションで見事にメインの登場人物たちのキャラを立てることに成功している。むしろこれ、脇の連中の方に力入ってないだろうか、と思うくらいに。
男性キャラも三人いるのだけれど、何気にそれぞれが今までの榊作品の主人公っぽいキャラ立てがされてるような気がするぞ。ヤサグレ系に真面目な優等生タイプにうらぶれた退廃系という三点セット。その中でもうらぶれた三十路のおっさんが委員長キャラな娘とガッツリフラグ立ててしまっていたのには唆られてしまいましたがな。生真面目系のお嬢様が頼りになるけどだらし無い大人の男性に絆されてハマってくというのは、こう、うん、いいね!!
いやまだ、フラグがたったくらいでなにも始まってもいないのだけれど、心折れて立ち直れなくなりそうになっていた所に、そっと背中を支えられて大人の包容力にキュンと来て、みたいな展開があったらそりゃあねえw
今回は群像劇ということで、これまで培ってきたストックを惜しげもなく投入するかのように、最近得意の無感情に見えて感情豊かな我道をゆくタイプのヒロイン、しかも幼馴染というキャラも登場。この娘、完全に【棺姫のチャイカ】のアカリタイプだよなあ。

さて肝心のストーリーですけれど、生まれて来る子を祝福するのに年に一度輝くオーロラの光をお腹に赤ちゃんがいる妊婦に浴びさせる、という世界で気候変動によりオーロラの光を浴びることの出来なかった世代、祝福されざる者たち16歳の男女が主人公となるわけですが、ある祭りの日を境に突然、この16歳の子どもたちをそれ以外の年代の人間たちが無慈悲に、というか無感情に殺戮しはじめるのが、物語のはじまりとなります。
差別感情とか信仰とかによる個々の意志や社会の雰囲気によるものではなくて、この世代の子たちを殺そうとしている時の人間たちは、まるで意志を失った人形かロボットかみたいな感じになってるんですね。そこに意志や感情はなく、まるで原理原則に基づくように機械的に殺戮が行われていくのである。元は仲の良かった親子や知り合いであっても、突然無感情にゴミを廃棄するように殺しにかかってくるのですから、これもうホラーである。
そんな、世界中の人間が敵に回ったような、自分たち以外が全部怪物と化してしまったかのような悪夢の中で、必死に集い身を守りあい生き抜くために戦う少年少女たち。
異世界ファンタジーでありつつも、どこかコズミックホラーかゾンビパニックものの様相もていしている本作。この惑星外からの光とか電波を定期的に浴び続けていた人間たちがおかしくなって、世界が狂ってしまう中でその光だかを浴びることがなかった人たちだけが正気を保っていて、その原因を探りながら生き延びようと抗うサバイバルもの、って前にも似たようなのを読んだような気がするのだけれど、なんだったかなあ、思い出せない。
ともあれ、孤立した少年少女の集団が生き残るために結束して集団を作り、というサバイバルなシチュエーションはやはり燃えるものがあるんですよね。カップル厨的にも色々とくっつきそうなカップルが既に幾つも見受けられるし、メリダ、シビル、カトリーナの三人トリオがまたいい味出してるんですよね。何気に、全員修羅場潜ったのが良い方に作用して、覚悟も決まってて、無闇に暴走する方向に走っていないのも好印象。覚悟が理知に繋がってるんですよね。主人公のクロウも、粗野に見えて非常に気遣い上手な方ですし、この凄惨な状況に一番ダメージ受けていた委員長なクラリッサもアラサーなおっさんのカイルのおかげで立ち直っていますし、メリダたち含めてみんないい意味で自立した優秀さを兼ね備えているので、よく纏まったグループになってるんですよね。
まあこのシチュエーションだと、誰かが馬鹿やってしまった途端に全体がデッドエンドになってしまいかねない過酷さなので、みんなが最善を尽くさないとどうしようもないのですが。
取り敢えず、この絶望的な状況を打破するための糸口が見つかって、そこへと進むことに。でも、この段階で姫を中心に建国を宣言するあたり、最悪自分たちだけで生きていくという覚悟も決まっているんですよね。これは次回以降の展開が非常に楽しみ。

榊一郎作品感想

聖なる騎士の暗黒道 2 ★★★★   



【聖なる騎士の暗黒道 2】 坂石遊作 /へいろー HJ文庫

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学園に入学して一月、闇魔法を使いこなせないまま「暗黒騎士になる」と繰り返すセインは、周りから『暗黒馬鹿』と呼ばれ、教師にも見放される。
そんな折、闇魔法を得意とするダークエルフの美少女・マーニと出会ったセイン。
「どうか俺を弟子にしてくれないだろうか!?」と、教えを乞うが、人嫌いなマーニに冷たく断られてしまう。
それでも、諦める気のないセイン。その本気で暗黒騎士を目指す姿に次第にマーニも絆されていき……
コミカライズ開始で絶好調なアクションコメディ、第2弾!!

前巻でも散々褒め称えたけれど、主人公のセインくんが素敵な男の子すぎてもうキュンキュンしてしまう。
誠実さ、とは彼のような在り方をいうんでしょうね。ダークエルフのマーニに対して師匠になってくれ、と何度もお願いしにいくのですけれど、つきまとうような真似はしていないのですよ。自分の都合を押し付けて強要するような真似は決してせず、あくまで常識の範囲内でのアプローチであったのでマーニが心変わりしたのは、押し切られたのではなくセインの普段からの直向きさを度々目にしたからなのである。
どうしてもうまく使えない闇魔法を使いこなすために、不断の努力を続けて汗に塗れる姿からは彼がどれだけ闇魔法に対して本気で取り組んでいるのか、どれだけ真剣にそれを習得したいと考えているかが伝わってくる。信頼というものは簡単に得られるものではなく、だからこそセインから見えてくる日々欠かさない積み重ねが、滲み出てくる誠実さがマーニを動かしたのでありましょう。
そうやって培われた信頼というものは、簡単に揺らぐものではないんですよね。耳障りの良い言葉やちょっとした行動で動かされてしまった心は、ちょっとした不信であっさりと揺らいでしまう。
あれだけダークエルフに対する人種差別に傷つき、自分と親しくする事で敵意や害意が周りにも及ぶことを恐れて他人を遠ざける優しさを兼ね備えていたマーニが、他者を受け入れるというのは決して生半可な意志ではなかったはず。それだけの決断を促させるだけのものがセインにはあった、ということなんですよね。
またセインの正体がマーニにバレて、一瞬疑われかけた時も、すぐにセインの説明をちゃんと聞いてそれを信じてくれたのも、それだけしっかりとした信頼があったからこそ。彼の普段からの言動にはそれだけの重みと説得力があるのだ。
まだ12,3歳の若人にも関わらずこれだけの人間力を備えているのだから、ほんと大したものである。それだけ、聖騎士として働いてきた時に酸いも甘いも噛み分けなければならない修羅場をくぐり続けてきたという事なんだろうけど、面白いことにそれだけ実戦経験豊富で実際対応力は非常に優れているにも関わらず、聖騎士としての力が関係ない部分だと確かに戦闘の「技術」に関しては基礎的な所が培われていなくて、力任せな部分が垣間見えるんですよね。聖騎士の力を借り物だ、と常々セインくんが力説していた理由がようやくわかってきた。
でも、彼の努力家な一面はその基礎的な未熟さなどあっという間に克服してしまいそうな勢いでもあるんですよね。聖騎士としての力を封印し、一から修行しなおしているような状態の現在、もしかしたら聖騎士としても今、大幅な底上げが行われている真っ最中なのかもしれない。素の状態で歴代聖騎士でも最強と謳われてるのに、ね。
そんな努力は決して彼を裏切らず、聖騎士としての力が使えない場面でしっかりと彼を助けることになるのである。
しかし、ようやく彼が聖騎士をやめて暗黒騎士になろうとしている理由が明かされたのだけれど……うん、凄くセインくんらしい理由ではあるんだけれど、それって何気に従者となった娘さんたちに対してはなかなか厳しい選択になってしまうんじゃないだろうか。アリシアとか地味に告白までしているのに、納得しているんだろうか。それとも、セインくんの目的が叶えられるのって暗黒騎士になって年季が明けて寿命を迎えてから、みたいな時間の猶予あり、なんだろうか。まだ、細かい部分は定かではないので、なんとも言えないけど。
それに、セインくんのあの性格からして、断罪者的な役割を与えられている暗黒騎士が果たして務まるのだろうか、とちょっと心配になってしまう。現役暗黒騎士さんのコメントからすると、相当に汚れ仕事みたいだし。まあセインくん、なってしまえば自分なりに業務改革してしまえばいいのかもしれないけど。



 
12月3日

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11月9日

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