徒然雑記

終日のたりのたりかな  
  オロチのまどろむ庭TOP  読書メーター  月刊書籍発売カレンダー  書籍感想・殿堂作品
  書籍感想・著者索引(表紙絵附) 書籍感想・著者索引(シンプル版)  書籍感想・作品タイトル索引(シンプル版)
  12月の漫画新刊カレンダー  12月のライトノベル新刊カレンダー
  1月の漫画新刊カレンダー  1月のライトノベル新刊カレンダー
 

HJ文庫

<Infinit Dendorogram>ーインフィニット・デンドログラム-9.双姫乱舞 ★★★★   



【インフィニット・デンドログラム 9.双姫乱舞】 海道左近/タイキ  HJ文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

遺跡を巡った戦いは激化し、皇国の切り札として二人の超級職がその姿を現す。さらに遺跡では先々期文明の希望であったはずの決戦兵器が目覚めようとしていた。王国の危機に至り、仮面の王女はその力をふるうことを決め、レイの籠手に潜む鬼もまたその姿を現さんと機会を窺う。舞台となるはカルチェラタン。数多くの危機から、この地に生きる人々をレイたちは守り切ることができるのか―。激熱VRMMOファンタジー待望の第9巻!
このサブタイの「双姫乱舞」ってアズライトとガルドランダの事のはずなんだけれど、ガルドランダの出番少なすぎやしませんか!? 秒単位ですよ、秒単位。いや、ちゃんと数えるなら6分ちょいは出ているのでウルトラマンよりも上等なのですけど。それに、活躍としては魔将軍戦で文字通り一番良いところで登場して美味しいところを全部掻っ攫っていく大活躍だったので、前半のメインと言ってもいいのかもしれませんが。
いやでもやっぱり出番少ない感じ。ガルドランダ、彼女ちゃんと意志がある存在なんだけれど、今回に関しては召喚獣的な扱いに徹していて、戦闘だけして帰っちゃったという風なので圧倒的にコミュニケーションが足りない!! でもガルドランダは意志があってもネメシスみたいに常時現出していられる存在じゃないっぽいので、普通にコミュニケーション取れないんだよなあ、勿体無い。
魔将軍はまあ見事な噛ませな悪役なんだけれど、この程度の小物にかつてアルターの重要人物たち、キャラクターの大切な家族なんかが殺されていると思うと何ともやるせない。レイが片をつけてくれたのはいいのだけれど、こいつ懲りてなさそうだしなあ。絶対反省しないタイプだろ、このお子様。
それはそれとして、やっつけたのはレイにも関わらず「ざまぁ」をしてるのフランクリンというのがまた美味しいところをかっさらいやがって、と苦笑いしてしまう。まあフランクリン、後でさらに煽った挙げ句に徹底的に叩き潰してくれているのだけれど。
かつてアルターに侵攻して、先にもフランクリン主導とはいえアルターを壊滅させる作戦を敢行してきた皇国。優位に立って弱小国を侵略して回っている国かと思ったら、むしろかの国も追い詰められたがゆえの危機を脱するための行動だったのか。とはいえ、その皇国を救うための生贄に選ばれてしまったアルター王国としたら、そんな皇国の事情は知ったコッチャないですわな。
でも、話を聞いている限り、マスターを参戦させようとせず、またティアン最強戦力であったアズライトを合戦から遠ざけた王様、人としては優しく思想に信念を貫き通した立派な人物なのかもしれないけれど、それで結局自分が死んで国を傾け人を多く死なせて国民や娘たちを苦しめてしまっているのだから、王族としても父親としてもこれ愚王でダメパパなんじゃなかろうか。
おかげで一人で色々と背負う羽目になったアズライトですが、ここで吹っ切れたことでアルター王国の主役としても、この作品のヒロインとしても大いに羽ばたいてみせてくれました。それでも、あのシーンでキスに至らないというのはレイがあまりにも鉄壁過ぎる!!
しかし、この姫様ガチでめちゃくちゃ強いんですけど、これでも全然バランスブレイカーにはならないんだよなあ。

今回、遺跡で眠っていた決戦兵器のエピソードを通じて、先々期文明時代の話がどんどん出てきて、秘められていた歴史の謎の一端が明らかになってきたのだけれど、にゃんこ先生の立ち回りが明らかにゲームから逸脱しているんですよね。うすうすとただのゲームじゃないんだぞ、という気配をこれまでも匂わせてきたものですけれど、ここで一気に真実の領域にまで踏み込んできたなあ。
最後のアクラ・ヴァスターには思わず貰い泣き。だから、ああいう人の意志や願いを、ちゃんと受け取って自分たちなりに飲み込んで血肉にして、それを叶えんと健気に振る舞う機械ってのには弱いんですよ! ただのプログラム上の反応ではない、魂の存在を確信させるような……それでいて機械らしく自身を顧みない振る舞いには、思わず心震わされてしまうのです。
シルバーも、あのワイズマンが託した想いを今果たしていると思えば、ただのアイテムなんて風には思えないですよ。

シリーズ感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 8 ★★★★   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 8】 手島史詞/COMTA  HJ文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

旧友マルクの行方を追うザガンだが、街では<アーシエル・イメーラ>という祭に向けて浮かれた空気が漂っていた。どうやらそのお祭りは、大切な人にプレゼントを送るイベントとのこと。
祭りに出遅れて右往左往するザガンとバルバロス、脳天気にも遊びにくるステラとアルシエラ。そしてなぜか黒猫の姿になってしまった黒花。彼女は何者かに追われており、どうやらこの事件もまた<魔王>が関わっている様子で――。
大人気ラブコメファンタジー絶好調の第8巻!
帯の方にはあからさまに「メリクリ」とか書いてあるじゃん!
というわけで、クリスマスをモチーフにした聖人の生誕祭<アーシエル・イメーラ>を前にして各人の悲喜こもごも、というイベント目的だけでクリスマスと似たお祭りを創ったのかと思ったら何気にこの<アーシエル・イメーラ>という祭り自体がストーリー上の重要なキーワードとなっていたのである。
お祭り自体は教会主導でもなんでもなく、宗教的イベントというよりも大衆が楽しむためのイベントになっていて、その意味でも現代のクリスマスそのものなのですが、これ「誰」の誕生祭か、というのが何気に重要だったんですなあ。
まあその部分に関してはシリーズ通じての根幹につながる部分ではあっても、この巻の主題ではないので置いておいて、まずはクリスマス的イベントに向けての各人の動向にこそスポットがあたってくる。
ザガンとネフィに内緒でパーティーを開催スべく、ザガン一派の魔術師たちを巻き込んで密かに準備に勤しむフェル。ネフテロスとシャスティルという女性組で大事な人にプレゼントを送るためにこれまた準備に勤しむネフィ。ひとり、<アーシエル・イメーラ>なる祭りの存在自体知らないままマルクの痕跡を調べるために街に繰り出し、祭りの存在に気づくザガン。
そして、謎の存在に襲われて黒猫と化してしまい、運命の人と出会う黒花。
そんな幾つかのグループに別れて状況が進行し、また偶然行き合いながらラストに向かって収束していく、いつにも増しての群像劇となっております。
若い女性三人でキャピキャピしたガールズトークを繰り広げながら、ザガンへのプレゼントを買うためにちょっとバイトをしてみたり、お店を巡ってみたりとホント普通の今どきの女の子そのものなことをしているネフィが、もうこれ以上なく幸せそうでなんとも言えないですわー。ネフテロスとシャスティルもそれぞれ、こんな風に女の子同士で遊んだり買い物したりバイトしたり、なんて経験をするような境遇ではなかったでしょうから、いやはや良い時間を過ごせてますなあ。
その出自から、浮浪児でも知ってる<アーシエル・イメーラ>の存在自体を知らなかったザガンですが、その段階からちゃんとお祭りの存在に気づき、そのお祭りの内容についてもちゃんと知って、ちゃんとネフィへのプレゼントを用意出来てしまうのだから、その卒の無さは侮れません。なんだかんだと彼って着実に正解へとたどり着く堅実さには定評があるんですよねえ。
プレゼント、ネフィだけじゃなくて知り合いみんなに用意するあたりがこの魔王の可愛いマメさなんだよなあ。
一方で今回の主役でもある黒花。故郷や家族を滅ぼされた仇討ちのために魔術師を目の敵にして教会の刺客として暗躍してきた過去は、やはり未だに彼女に引っかかりを覚えさせていたんですね。ネフィからの提案である、魔術によって傷つけられた目を治せるかも、というそれに応えられずに保留していた理由がそれだったのか。
しかし、かつての仇の残滓とも言える希少種狩りの出現と、思わぬことから黒猫と化してしまった黒花をただの猫と勘違いして助けた、ザガン派閥下の医療魔術師であるシャックスの登場が彼女の停滞を解き放つこととなるのである。
黒花の過去に大きく関わっているこのシャックス。これぞ冴えないおっさん、という感じの草臥れていささか鈍くて自己評価も低い枯れたおっさんなんだけれど、拾った猫相手ですら手厚く世話してくれて、命がけで助けてくれるような優しいおっさんなんですよね。やる気なさそうに見えてやたら真面目なところなんぞ、生真面目な黒花とお似合いとも言えるんですよね。まめまめしそうな黒花って、他人に優しく自分には優しくないタイプの草臥れたおっさん相手だと、まめまめしく世話しそうですし。それでいて、このおっさん包容力ありまくるので肝心なときは絶対に守ってくれそうなのでちっこい黒花とすれば安心感ありますし。
黒花って、別に年上趣味じゃないとは思うのですけれど、義父であるあの凶顔の執事さんに大事に育てられた分、年上の人に対しての寄り添い方というものを心得てる風があるんですよねえ。
ただ、シャックスのあの鈍感さは、恩義としても親愛としてもまだあるかわからない恋情にしても、ちゃんとキャッチしてくれなくて、黒花が空回りしまくりそうな気もするのですが、誤解してても勘違いしてても、そのから回っている上から受け止めてくれそうな包容力があり、どう転んでも黒花を泣かしたり辛い思いをさせることだけはなさそうな、新キャラながら大した存在感を示してくれたキャラクターでした。ラーファエル執事長にもれなくぶっ殺されそうですがw

あと、さらっと明かされたゴメリ婆ちゃんとキメリエスの出会い。二人が常々言ってる腐れ縁、なんてもんじゃないじゃないですか! 今ではキメリエスの方が保護責任者みたいな扱いで暴走するゴメリ婆ちゃんを引き受けてる感じですけど、最初の様子だともうガチンコでゴメリ婆ちゃんがキメリエスのお母さんみたいなもんだったんじゃないだろうか。母にして姉にして育ての親みたいなもので、果たしてどれだけの想いがあれば、キメリエスを今の紳士で聡明な人物へと仕立てあげられたのか。キメリエスとしても、恩人という一言では済ませられない関係ですよね。この二人に関してはまだまだ踏み込んでいけそうな余地があって、先行き楽しみである。

前回予期せぬ再会を果たした幼馴染のステラも、ちゃんともとの人格を取り戻して今度こそ本当の再会を果たすことが出来て、なんかもう完全に「お姉ちゃん」枠としてでかい顔をしだすw
でもこの姉というのが何気に重要で、嫁であるネフィと娘であるフォルという家族は既に出来ていたのだけれど、ザガンを子供の頃から知っている姉という存在はネフィとは違う意味で家族であり、ネフィにとってもお姉さんになるんですよね。もうひとり、家族が加わった、戻ってきたわけだ。
みんながプレゼントを送り合うパーティーの様子はもう幸せの造形そのもので、見ているだけで心がほんわかしてくる。そんなラストに、幸せのただ中にあるみんなから誕生日を祝福される人がひとり。みんなからの「おめでとう」の言葉が響く夜。ラストの恥ずかしがりながらも口元がどうしても緩んでいる「彼女」のイラストが最高でした。
次回あたりは、もう一度ネフテロスへの試練が待っていそう。いや、ネフテロスというよりも彼女へと想いを寄せる彼への試練か。ちょっとラーファエルどころじゃなさそうだぞ、お父さんは許しませんよ圧がw

シリーズ感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉9 ★★★★   

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 8 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉9】 SOW/ザザ HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

マイッツァーを狙った機械兵の襲撃により、スヴェンが機械であるとルートにばれてしまう。二人が状況を理解する間もなく、ダイアンとブリッツドナーまで現れ、混迷を極めるトッカーブロート。普段ならこの混乱を収める側に回るジェコブも、突然の父親登場にその場を立ち去ってしまう…。スヴェンが看板娘になっておおよそ一年。ついにすれちがい始めたスヴェンとルート。聖女が裏で動き出す中で、スヴェンとルート、二人の未来の行き先は―。トッカーブロートの「驚天動地の九日間」、幕開け!!
ルート、男を見せる。
いやね、これまでスヴェンの正体について薄々察しながらも、それについて一切言及しようとしなかったのはスヴェンがそれを知られたくなかったから気づかないふりをしていた、という理由だけではなくルート自身、触れることで現状を壊してしまうことを恐れていた部分は多分にあったと思うのです。
なあなあの関係で良しとしていた、とも言えますし、核心に踏み込もうとしないルートはヘタレていたとも言えるのでしょう。ただまあ、様々な事件に見舞われたとはいえ、まだスヴェンが現れて一年。時間で考えるなら、一組の男女の関係が進展するに早いとも遅いとも言えない期間ではないでしょうか。だから、ルートのその知らんぷり、な態度はまだ非難されるほどの段階ではなかったと思うんですよね。
ただ、スヴェンの父親を名乗る存在が現れて、曖昧だったルートとスヴェンの関係についてはっきりしなさいよ、という主旨の指摘を切り込んできた上で、スヴェンの正体がこれまでの暗黙の了解とは異なり、これ以上なく明示されてしまったわけです。
ここまで事態が急変した以上、以前のままではいられない。何らかの意思表明はしないといけない。
にも関わらず、この巻はじまった当初のルートの態度は、スヴェンの正体など知らないかのように以前のまま。これはさすがに、スヴェンが立場的にも気持ち的にも宙ぶらりんにさせられて、可哀想過ぎる! と随分と構えてしまったのですが……さすがに彼もそこまでヘタレ尽くしたドぐされ野郎ではなかったようで、スヴェンには内緒でサプライズの企画を周囲の人達を巻き込んで企てていたのです。
って、それでも女の子を不安にさせた時点で女心をわかってない朴念仁、という汚名は頭から被っておかないといけないと思うのですが。
ルートってば、スヴェン相手だけじゃなくソフィア姐さんにまでドキツイのカマしちゃいましたからねえ。いや、マジで姐さんが自分に懸想してたことまったくこれっぽっちも気づいてなかっただなあ。でなければ、あんな残酷な役目、ナチュラルにお願いしたりしないでしょう。ってか、このサプライズで一番サプライズされてしまったのって、スヴェンよりもソフィアさんの方だよね、絶対。
あそこですぐに再起動して、ルートのポカをフォローする姐さん、マジ男前である。大丈夫だ、姐さん。あんな朴念仁よりもずっと大事にしてくれそうなイケてる男がすぐそこに居るじゃあないですか……。イケてるかどうかは定かではないか。あと、まともでもないし頭おかしいし人としてどうかというレベルでマッドサイエンティストだけれど。とても家庭人として役に立たなさそうだし、ほんとアレだけれど。
でも、ちゃんと人の心を持つイイ男なんですよねえ、ダイアン教授。
まさか、この人がルートに対してスヴェンのこと、あんな風に忠告してくれるなんて場面を見るとは思わなかった。それも、スヴェンの心を、気持ちを慮っての助言であり叱責ですよ。それを、あのダイアンが言うような展開が訪れるとはねえ。
ダイアン教授といえば、登場当初から悪役ムーヴ、絶対にこいつがシリーズの黒幕に違いないという怪しい態度、マッドな思想、胡散臭い言動、真っ黒な暗躍、という姿を見せっぱなしで、いつルートたちを陥れる動きを見せるのか、いつスヴェンたちを苦しめる企みをはじめるのか、いつ黒幕として敵対行動をはじめるのか、とずっと警戒を解けないままシリーズ続いてきたのでした。
にもかかわらず、ついにこの最終局面に至るまで敵側に回るわけでもなく、しかしはっきりと味方になるわけでもない、という不思議な立ち位置のままここまで来てしまったわけです。その意味では、非常に興味深いというか面白い立ち回りをし続けたキャラだったんですよねえ。これだけ曖昧な立ち位置にいながら物語の枠外にいるのではなく、何気にルートたちよりも物語の核心部分に立ち続けてもいたわけですから。
どうやらソフィア姐さんに対する好意が、単なる玩具を愛でる人でなしの興味や好奇心の類ではなく、胡散臭い言い回しとは裏腹にこれはガチで好きなんじゃないのか? と思われるような態度を見せ始めたあたりから、ようやくこれは黒幕じゃないんじゃないのか、と疑念が晴れてきて、でも本当の本当に確信を持って大丈夫敵側じゃない、と思えるようになったのはダイアンの過去が明らかになり、目的が明らかになり、そしてこの世界の本当の敵が明らかになった前巻でようやくでしたからねえ。
そう確信出来てから、ダイアンのソフィアへの態度を見ると何気にずっと一途で献身的であったようにも見えてくるわけで、いやまあなんだかんだとソフィア姐さんがガチで毛嫌いしていたのが絆されていったのもわからなくはないのである。
ソフィア姐さん、今晩はガチで羽目外してしまいそうだなー。この人はやらかす、絶対やらかすw

ブリッツドナーもドサクサに紛れて家族と再会。紆余曲折ありつつも、ようやく家族と一緒の時間を過ごせることになり、スヴェンとルートの関係もついにあるべきところへと辿り着き、と大きな変化を幸福にして平穏な方向へと迎えることになったパン屋とその周囲の愛すべき人たち。
しかし、大きな物語としてはこれぞ前哨。まさにここから、世界は究極の局面へと突入するのである。
そして、スヴェンの抱いた「人間になりたい」という願いもまた……。
戦うパン屋が戦う必要なくなり、機械仕掛けの看板娘が機械ではなくなる、そんなタイトルが雲散霧消するような結末が訪れるのか。クライマックスとなる次巻が待ち遠しい。

シリーズ感想

VRMMO学園で楽しい魔改造のススメ 3 〜最弱ジョブで最強ダメージ出してみた〜 ★★★  



【VRMMO学園で楽しい魔改造のススメ 3 〜最弱ジョブで最強ダメージ出してみた〜】 ハヤケン/晃田ヒカ HJ文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

4人で立ち上げたギルド《悪魔の仕業(デモンズ・クラフト)》のアイテムショップも、オープン早々大繁盛となり、名実共に絶好調な蓮たち。そんな中、客として訪れていたNPCのお姫様が誘拐される限定クエストが発生! すぐに事件解決へと動く蓮たちだが、途中で意外な人物がパーティーに臨時加入!? さらにギルド対抗の英雄育成イベントでは、最弱NPCをあえて選び、ここぞとばかりに魔改造を始めることに!? Wソードダンサーによる華麗なバトルも必見の、大人気VRMMOバトルファンタジー第3巻!
ゲーム内でもTPOに反し過ぎたら垢バンとかありそうなんだけどなあ。全裸ならともかく、ブーメランパンツまではありなのか。
赤羽兄の変態装備の強烈なインパクト! と言いたい所なんだけれど、ブーメランパンツ一丁に赤いマフラー、鉄仮面という装備、それほどインパクトなかったような。これが変態仮面みたいなVフロント水着だったら立派な変態としての存在感もあったのでしょうけれど、そこまでするとさすがにお縄になってしまうのか。
彼の場合は見た目よりも、いちいちセリフの頭につける「だが待ってほしい」が気になって気になって。いやだって、全然待ってほしい場面じゃなくても毎回つけるので、今関係ないじゃんという違和感がどうしてもつきまとってしまいました。だが待ってほしい、はやはりここぞというシーンで使わないと言葉の持つ強さが損なわれてしまう。それだと、ただセリフの頭に意味なくつけてるだけだもんなあ。
これなら、まだ姫様のやたら死語を使いたがるくせの方が、ちゃんと意味通っているだけ引っかからずにすみました。ってか姫様の死語って昭和レベルだぞ。今の若い子は知らないどころか、三十路レベルでも知らないんじゃなかろうかw
戦闘シーンは、わりとオーソドックスにゲーム的でトレイン戦術にしてもAP貯めにしてもイメージしやすくはありました。でも、敵NPCの思考パターンはかなり古いゲームのAIっぽいなあ。まあパターンがはっきりしている、というのはゲームとしては大事なのかもしれないけれど。
わざわざ最優先で選択権を得ていながら、優秀なNPCを選ばずにわざわざ最弱のキャラクターを選んで、魔改造に走るあたりは主人公のブレない方針である。
ただ、蓮の育成方針に沿ったスキルとかが現れてしまうというのは、蓮がゲームシステムの間隙をついて本来存在しないところから有効な戦術を編み出す、というよりもゲームの運営が既に用意していた育成ルートを発見するという感じで、運営の思惑を超えてという風ではないのは若干ジャイアントキリング!という盛り上がりに欠けるところかもしれない。
今回は一連のエピソードが完結する前に途中で中断と相まってしまいましたしね。本番は次回か。

シリーズ感想

<Infinit Dendorogram>ーインフィニット・デンドログラム- 8.遺された希望 ★★★☆  



ーインフィニット・デンドログラム- 8.遺された希望】 海道左近 / タイキ HJ文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

【聖騎士】のジョブもカンストし、次のジョブを探していたレイのもとに、失われていたジョブが再発見されたという報が入る。それは、つい最近、遺跡で発見されたジョブ【煌騎兵】。
転職条件を満たしていたレイは、ジョブにつくために遺跡があるアルター王国とドライフ皇国の国境付近にあるカルチェラタン伯爵領へと向かう。
道中出会った仮面の女剣士・アズライトと共に赴いた遺跡では、発掘物をめぐって各国の思惑が渦巻いており――
激熱VRMMOファンタジー第8巻!
ジョブって案外すぐにカンストしちゃうんだ。いやそれよりもですよ!? レイくんレイくん、女性の裸で一切興奮しなくなってるってそれって普通に「ED」じゃないですか!? 裸で興奮しないのに、あとなにで興奮するんだよ!? シチュエーション? 雰囲気? もしかして自力で頑張れって立派に出来るの!?
異性に感心がないまで枯れてしまっているわけではないようなのでその点については安心したけれど、若い男の子として色々と心配になってしまいますよ。レイのお姉ちゃんのおかげでレイもまともな人間、というにはちょっとハズレちゃってるかな、という部分がチラホラと垣間見えていましたけれど、なんかそれどころじゃなく深刻な被害を与えてるんじゃないのか、お姉ちゃんw
まあこれまでその辺が浮き彫りにならなかったのは、ネメシスを除くとヒロインらしいヒロインが登場していなかった、というのもあるんですよね。これまで女性キャラはたくさん出てきましたけれど、ヒロインかと言われると「ヒロイン?」と真剣に首を傾げてしまうような人たちばかりだったんですよね。可能性のありそうな人は勝手にフェードアウトしてあんまり出てこなくなったり、別の人にフラグ立ててたり、レイくん主人公のくせにヒロインに全然縁がなかったじゃないかー。
それだけ、ネメシスが盤石だったとも言えるんですよねえ。
そんなこんなしているところに、ついにまっとうなヒロインらしい振る舞いをしてレイに対しても色々とヒロインらしい反応を示してくれる女性キャラがついに登場ですよ。長かった。おいでませアズライトさん♪
……この人、あの仮面つけて平然と出歩いている時点でわりとレイとセンスかぶってるんじゃないだろうか。あの仮面変だって、どう見てもw
別にレイが自分の暗黒装備に自信満々だったりするのと違って、自分の仮面にドヤ顔して似合うだろうみたいな態度はしていないのだけれど、正体隠すためだけにあの仮面は怪しすぎて当人のセンスしか感じない!
わりと装いも仮面に似合うような格好をコーディネートしているあたり……いや、デザインは挿絵の人のあれかもしれないけれど。
ともあれ、レイの在り方からしてヒロインってやっぱりプレイヤーよりもこっち側の人の方がしっくり来る気もするので、ネメシスとアズライトの二大巨頭の確立という展開は喜ぶべきところかも。
ネメシスもなんかこう刺激してくれる相手がいないと、レイの相棒としてすっかり収まってしまってなかなかそこから動こうという気配もありませんでしたし。色々と考える場面も必要だしなあ。
ドライフ皇国も動き出し、これは実質「戦争」と変わらない規模にまで発展してますし、次回大きく動きそう。ドライフ側の重要人物が思わぬ形で戦場となる場所と関わっているようだし、単純に勝った負けたで話も収まらなさそう。こういう複雑な絡み方をする展開は大好物です。次巻の動向が実に楽しみ。

シリーズ感想

魔術破りのリベンジ・マギア 5.救世の屍王と恩讐の行方 ★★★   



【魔術破りのリベンジ・マギア 5.救世の屍王と恩讐の行方】 子子子子 子子子/伊吹のつ  HJ文庫 

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

中華魔術と激突! “邪悪の樹"から鴨女を救え!

祭宴が終わってすぐ、鴨女が突然姿を消した。彼女の両親の仇が米国内で目撃されたため、復讐を果たしに向かったというのだ。
その仇の名はフー・マンチュー。【邪悪の樹】序列第九位『不安定』を司る狂気の道士。“救済"を謳い、人類の同時鏖殺を目論む彼の男の圧倒的な力を知った晴栄たちは、
謎の包帯美女・リンタンを仲間に加え、鴨女の救出に向かうが……!?
屍霊渦巻く廃坑の街・セントラリアに魔術の火花が散る!
フー・マンチューって名前だけちらっと聞き覚えある、というくらいの人だったのですが、本作に登場するゲストキャラクターはみんなその筋では著名な人物ばかりなので、この人もそうなんだろうと調べてみたらこれがまた、滅茶苦茶有名な人じゃないかー!
とは言え、彼に関しては実在の人物ではなく、名探偵ホームズの敵役であるモリアーティ教授のような創作上の悪役なのだけれど、一作品に留まらない活躍を見せてるんですねえ。しかも、探偵小説におけるノックスの十戒で、中国人を出してはならないという項目が加えられたのはまさにこのフー・マンチューという怪人の存在があったからこそ、という話を聞いてしまうとその存在感が当時の欧州においてどれほどのものだったかというのも伺い知れるのではないでしょうか。
そんでもって、彼がまたキョンシー使いなのですよ! いや、そういう単純にカテゴライズされてしまう術士ではないのですが、霊幻道士とかストライクの世代なんでこれくるものがあるんですよねえ。
まああの古典名作のキョンシーみたいな両手前に突き出してぴょんぴょんと跳ねて移動するようなのは殆ど出てこないのですけどね。その意味では、相変わらず魔術に関する資料の練り込み具合は瞠目に値する質量であります。参考文献も相変わらずの量ですしねえ。キョンシーが上級になると空を飛ぶ!というのも昔件の番組で見たなーと思いつつ、どうしてもそのイメージに引きずられて、ワイヤー見えてるワイヤーアクションな、思いっきりぶら下げられて平行移動みたいな情景ばかり浮かんできてしまうw
凄いなー、と思ったのがクトゥルー神話体系と既存魔術の融合である。クトゥルー神話というのは、どうやったって独自性が強すぎる代物だけに、色として既存の文化文明を背景に成立し形成されていった魔術大系とはなかなか混じりえないものなんですよね。
それをフー・マンチューのあの外の神の召喚法は、見事にすり合わせてたんですよね。見立てとしても類感魔術としても面白いアプローチで、非常に興味深いものでした。
本作って、ほんと魔術関連に対しては徹底して掘り下げもするし、それらを応用しての演出にも凝っていて魅せ方として一つの確立を得ているところは感心させられるばかりです。
ただ、それらに妙に比べて物語自体の「語り口」という点に関しては若干単調さがあって盛り上がりの加速のノリがちと鈍いんですよねえ。
物語のテーマとしては、今回も復讐について、というもので元々実家への復讐の念を募らせていた晴栄の変化に、鴨女の両親の仇の登場、その仇であるフー・マンチューもまた恩讐を原動力にしているキャラクター、と敵味方、主人公本人とヒロインとの関係の中に主題を絡ませた上でそれを解いていくと同時に、登場人物の心のうちにそれまで囚われ続けていたモノのその先へと踏み出させる、という構成としても非常に堅実に練り上げたものを感じさせるものとなっていて、ビシッと真ん中に一本筋の通った良い物語だと思うんですよね。
ただ、それを語って聞かせる言葉の色合い、音調、冴えとかそういうのなんだろうかなあ。変に状況の推移を単調な説明で語っちゃってるなんてところもあるし、展開の見せ方やセリフなんかもちょっとなあ。そういうところが、作品に感じるポテンシャルに対して物足りなさを感じる部分なのでしょうか。

あと、晴栄。それは誰がどう聞いてもプロポーズにしか聞こえないじゃないかな!? あれで勘違いも付け入りもしない鴨女は物分りがヨすぎると思いますよw
ラスト、鴨女のあの告白まがいのセリフに対してまんざらでもないどころか、ええんかい!? というようなセリフこぼしちゃってる晴栄は、もしかしたら無自覚ではなくプロポーズでも良しという気持ちがあったかもしれないけど。でもそれだと、ガチで鴨女が本命になってしまうんですが、いいのか!?

シリーズ感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 7 ★★★★   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 7】  手島史詞/COMTA HJ文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

せっかく海に来たということで、海で遊ぶことにしたザガンたち一行。海といえば水着! ということで着替える面々だが、男性陣は女性陣の麗しい姿にタジタジ。
それでも仲睦まじく過ごしていたザガンとネフィだったが、彼らの前に聖騎士長と呼ばれるミヒャエルがその姿を現す。
どうやら敵対するつもりはなさそうな、軽い調子の彼からもたらされた情報によると、<魔王>の一人を撃破した魔術師が次なる標的にザガンを狙っているらしく――。
大人気ラブコメファンタジー絶好調の第7巻!

それが伏線とは気づかんわー! いやさすがにこれは後付だと思うんだけど、うまいこと話に乗っけて膨らませてくるなあと感心させられる。マンガ連載の方はちょうど該当箇所に差し掛かっていたので、
このあたりきっちり描いているみたいですけど、もし漫画がこの場面まで行くとしたらかなりシリーズ続くことになるんだが、あの作品非常にできの良いコミカライズなので、出来たら続いて欲しいものであります。
しかし、師匠に首輪つけられたにも関わらず、命がけで遊びに来る、というか少女たちを愛でに来るゴメリ婆ちゃんがなんかもう色んな意味で輝いてるよ。このお婆ちゃん、確かにラブコメを映えさせ進展させるのに尋常でなく役に立つキャラクターだけに、作者も使いやすいんだろうなというのは強く感じるところであります。なにしろ、放り込んでさえしまえば周りを巻き込んで誰彼構わずラブコメ時空へと突入させてくれるし、いい具合に男性陣も女性陣もバカになりますものねえ。
魔王と最高峰の魔術師たちが集まって、なに「REC」の魔術創作しちゃってるんだこいつらわ。正確には念写寄りみたいですけど。これって脳内妄想も映像化画像化出来かねないので、ゴメリ婆ちゃんが使えるようになると非常に危険である。
それはそれとして、ゴメリ婆ちゃんも愛でられる方にそろそろ回ってもいいと思うんだけどな。キメリエスとの間について突かれたときの反応を見ると、えらい可愛いことになりそうですし。
どうなるかと思われてたシャスティルとバルバロスの件がトントン拍子に進んじゃってるのを見るとねえ……いや、この二人進展早すぎだろう! シャスティルもバルバロスもまさかここまで早く自覚してテレテレになるとは想像してなかった。特にバルバロス! お前純情中学生か、というくらい初々しい反応で。もっと根性ひん曲がって紆余曲折たどるかと思ったのに、案外素直なのな!
初期のザガンとネフィみたい、とか言われてるけれど、自覚がある分二人のときよりもよっぽど甘酸っぱいことになってますよ。
それに比べて前途多難なのが、ネフテロスとリチャードの方でしょうか。ってか、リチャードのがどうしてもぽっと出すぎてキャラが確立してないんですよね。というよりも個性が足りてないというか。いやもう、いいヤツで性格もイケメン、騎士らしい騎士として格好いいですし、個人的には非常に応援しているので、もっと頑張ってネフテロスから意識されるようなキャラかエピソードを持ってきてあげて欲しいものです。なぜか、お義兄ちゃんなザガンがうちの義妹はやらん状態から速攻で密かに応援モードになっていたのには笑ってしまいましたが、気持ちはわかる。ザガン的にも力足りずとはいえこういう一途なタイプは、気にいるでしょうし。
これだけキャラが増えると、いかな主人公でみんなのご主人様である魔王でもあるザガンとは言え、一人ひとりに目配りするのはともかくとして、一人ひとり丁寧に踏み込んで助けて、とはいかなくなるんですよね。いや、出来なくはないのでしょうけれど、人間関係が一方的なものになるより多角的になる方がまたいいわけで、内面的に追い詰められているその人の心に踏み込むのは別に違う人でもいいのであります。家族もいるし、親友同士という関係も居る。そうやって、リリスと黒花の二人でザガンやネフィが介在せずに問題を解決できた、というのはファミリーとして良い形なのではないでしょうか。ちゃんと見守っているあたりが、ザガンとネフィ、みんなのお父さん役お母さん役にちゃんとハマってますし。
さて、ストーリーの進展の方もアザゼルという存在の謎について色々と仕込みが入ってきましたけれど……また他の魔王出てきましたけれど、何気にどの魔王さまも実はまともな人ばかりじゃないですか!? いやまあネフテロスの親たるビフロンスはかなり歪んでましたけれど、彼は彼なりに純朴な愛情を持ち得ている人でもありましたしねえ。
オリアスにしても、ザガンの先代となるマルコシアスにしても、非常に真っ当な部分を有していたわけですし。そうなると、魔王たちが対抗措置を練っている外なるモノ。魔神たちのヤバさが浮き上がってくるわけで。なるほど、仕込みは着々とって感じですわな。

シリーズ感想

常敗将軍、また敗れる 2 ★★★★☆  



【常敗将軍、また敗れる 2】  北条新九郎/伊藤宗一 HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W
「あ、やっぱりティナじゃない」
突然そう声を掛けてきたのはティナと同じフードを被った小柄な人物。ティナだけはその声に聞き覚えがあった「初めまして。私はリィス・ヴァサームント。ティナの姉です」
姫将軍であるシャルナ、傭兵団長アイザッシュと共に常敗将軍ダーカスに付き従っていたティナだったが正に最悪の人物と出会ってしまった。
同じヴァサームント一族のリィス。生まれてから一度も勝ったことの無い腹違いの姉である。『常敗将軍』ダーカスを中心に繰り広げられる一大ファンタジー戦記第2弾!

ううー、これはやはり面白いぞー。
常に敗北し続ける傭兵将軍がなぜこうも名高く、伝説のごとく扱われ、多くの信頼を寄せられているのか。前回とはまた違う形で伝説の傭兵の在り方を見せつけられる物語でありました。
前回は十年近くかけた仕込みを駆使しての大どんでん返しで事前の準備は大事というのを思い知らされる内容ではあったのだけれど、今回はそういう仕込みは一切なく、急遽頼られて駆けつけた戦だけに数少ない手札を駆使して臨機応変に対応していくことになる。
当然、状況は想定外の連続であり、予定通りに進むことは非常に少ない。ダーカスにくっついてきたティナたちは、先の戦で初陣を飾ったもののまだまだ精神面は子供のまま。ダーカスは実質子供の引率をしながら、大規模な内乱における重要な戦線を最前線の移動から担うことになってしまった一都市の防衛を任されることになってしまったわけですけれど、相変わらずというかそもそもが勝てる戦ではないんですよね。戦力差は圧倒的、そもそもダーカスがいる場所は広がっている戦線の一部に過ぎず、そこの陥落は本来なら味方の側の軍の作戦に組み込まれてしまっているのである。
もはや、勝敗は度外視。最重要視すべきは、勝ち負けではない場所なのである。だからこそ、ダーカスという男にお鉢が回ってくるのですが。
面白いのは、前回もそうだったんですけれど、ダーカスは決してわざと負けるような真似はしてないんですよね。与えられた手札を駆使して、最善を尽くそうとしている。その最善の中には「勝利」はちゃんと存在しているのである。勝つに越したことはないんですよね。もちろん、勝ってしまうとまずい場合というのも状況いかんによってはあるのかもしれないけれど、ダーカスって意外とそういうリスクの高い真似はあんまり選択してないようなんだなあ。負けるにしても、味方の被害は最小限。犠牲や被害も計算のウチ、なんていう小賢しい真似はしていないのである。許容しなくてはならないと弁えながらも、それを良しとしてはおらず、全力を尽くしているのだ。
それでも、儘ならないのだけれど。
今回なんぞはかなり裁量を任されてはいたけれど、それでもティナの暴走や領主の怖じ気などで手足を縛られたような形での戦を強いられる羽目になりましたしね。
驚くべきは、これほど苦しい状況でありながらもダーカスが、連れていた子供たちに対して「教育」を欠かさないところなのでしょう。今も活躍している高名な傭兵の中には彼の直弟子、教え子というべき者も少なからずいる、というのも納得の指導で、身内からもおそらく若死にするだろうと目されていたティナが見識を得るに至ったのも、まだまだ未熟だったアイザッシュが指揮官として一皮剥けるお膳立てを丁寧に仕立てていたのを見ると、人を育てるのが上手い人なんだなあ、と。
彼の最大の武器というのが人脈だというのは前回から伝わってきていたところなんだけれど、彼の場合有名所にツテをつくるというよりも、無名だったりまだ若かったり埋没してたりしている人物を後押ししたり支えたり育てたりすることで、そういう人材を各界の一線に立てるように後押ししてるって感じなんですよねえ。そして、請われれば助けることを惜しまないから、ダーカスに対する信頼は絶対的なものになる。ある意味素晴らしく真っ当な、そして感嘆すべき人脈作りなんだよなあ。
今回の戦いも、振り返ってみれば見事なくらいに全戦全敗。片っ端から負けまくり。どれも予定通りに行かずに思わぬ要素によって敗戦を余儀なくされる展開。全部がダーカスの手のひらの上、なんてことは全然なくて、ひたすらダーカスは負けの対処を余儀なくされるのである。
にも関わらず、終わってみれば全部負けたにも関わらず、ダーカスが最初に依頼された内容はきっちりと達成しているのである。
終わってみれば、戦争そのものがひっくり返っている。
なにこれ、どうなってるの? と、全部つぶさに見てきたにも関わらず、魔法にかけられたかのような不思議な有様に。いや、一つ一つ事象を追っていくと何も不思議なことなどないんですよね。起こるべくして起こった顛末となっている。
だからこそ、まさにマジック。これこそが、常敗将軍の伝説なのである。ダーカス自身、決して突出した英雄的なキャラクターではなく、実直で優秀だけれど飛び抜けたところのない、結構俗っぽいおっさん、的な風情なのもなんかえ?なんでこうなったの? という感覚に拍車をかけてるんでしょうねえ。
戦略的目的を達成するのに、必ずしも戦場における勝敗は絶対的な意味を持っているわけではない。勝利自体が目的なのではなく、勝利によってもたらされる内容が重要なのだ。だから、その目的達成のために勝敗以外の要素が用いられるのなら、勝利は必須ではない。敗北しようと、目的が達成されるならそれで十分なのだ、というのがとても良くわかる物語でした。
ただ、繰り返しになるけれど、そのためにダーカスはわざと敗北しているわけではないし、犠牲を最初から計算しているわけでもない。自ら最前線に立って傷だらけになり、味方の死なせず被害を出さないようにすることを身を挺して証明し続けてもいるわけだ。だからこそ、どれだけ敗北を重ねようと一緒に戦った味方の信頼は揺るがないし、部下や兵卒からは慕われる。
軍師ではなく、将軍である所以がこのへんなんでしょうなあ。うんうん、面白かった。これはどんどん続けば続くほどうなぎのぼりに面白くなりそうな期待のシリーズであります。

一巻感想

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 7.奇跡の盾 ★★★★   



【インフィニット・デンドログラム 7.奇跡の盾】 海道左近/ タイキ HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W


奇跡の盾は、ここに在る

リューイを送り届けたトルネ村で、風星祭が始まる。しかしその時、過去に封じられたと言われる怪物・コクテン様の封印が解ける。
その正体とは、古代伝説級のUBM【黒天空亡モノクローム】だった。そのモンスターに対抗しようとしたレイやビースリーだったが、混乱に乗じたPKもレイたちに襲いかかる。
ティアンの村人たちの安否は、そしてかつて村を救った英雄であるリューイの義父の行方は――。
「『来るがいいモンスター。奇跡の盾は、ここに在る』」
「起きないから奇跡って言うんですよ」と言われるとだいたい奇跡さん起きる法則。これはもう奇跡さんが天の邪鬼だから、としか言いようがありませんよね、うん。
まったく関係ないのだけれど、本作のUBMって全部じゃないのだけれど、その大半が四文字の仇名持ちなんですよね。今回の「黒天空亡」然り。これって、中華武侠モノの二つ名みたいで結構好きなんですよ、私。二つ名とか異名持ちとかライトノベルでは定番も定番、昨今では揶揄の対象になって目減りはしていますが、それでも良く散見されるわけですけれど、不思議と漢字四文字のって意外と少ないんですよね。音としても韻を踏むことが出来て耳触りも良いと思うのだけれど。
なので、本作ではこうした漢字四文字の冠を持つUBMがたくさん出てくるので、それだけでもなんだか幸せな気分になります。マスターの通り名の中にもけっこう四文字があるので、それはそれで見てるだけで嬉しくなります。

しかしビースリーの兄貴は、挿絵なかったらイメージが完全にガテン系兄貴ですよな。実際はフルアーマー兄貴なんだけれど、イメージではタンクトップ兄貴しか浮かんでこない。これを誤解せずに先輩と見抜く、見抜くとかじゃなくてキッチリした清潔でスマートな女子大学生な先輩とこのバルバロイな先輩に差異を見出してないって感じの認識なんですよねえ。マリーのときもそうだったけれど、これはレイのリアルでも有している特質なんだろうか。
そうすると、彼がゲーム内のNPCであるティアンたちを普通に生きている人間として、自分たちと区別していない、というのはかなり意味深なものがあるんじゃなかろうか。他にもティアンを人間と思う人たち、この世界をリアルに受け止めている人たちがある一定以上の割合でいる、というのを考慮しても、それと別にしてレイの彼特有の認識力に基づくティアンに対する認識には無視できないものがある。
月世会が以前から医療目的でVRの開発企画に幾つも出資していたけれど、ダイブ型VRMMO<Infinite Dendrogram>が唐突に現れて、しかし月世の会はまったくこれを把握していなかった、という情報はなかなか意味深じゃあないですか。
まあそういう世界の秘密に関しては追々進行していくのでしょうけれど、実際にティアンとマスターとの間に子供が生まれる、という事例が現実のものとなりつつある、という時点でなんかもう吹っ飛んでるんですよねえ。
果たして、このティアンの奥さんと結婚した旦那さん。シジマ・イチロウの顛末についてはこの巻において存分に語られるのだけれど、彼にとってもう現実がどっちとか果たして意味のあるものになっているのかどうか。おそらく、本来のゲームのルールからは完全に逸脱しただろうシジマ氏の騎獣グリンガムの行動は、魂魄実装ともいうべきそれがこの世界の人間だけではなく、モンスターにまで至っていることを証明するようなものでしょうし。これ、実際に生きているもの、心持つモノと何が違うというのだろう。
それはそれとして、暗殺王さん。その言い方は絶対に誤解するから。話の流れからしても。月夜さん、後始末させる方とばかり思ってたけれど、何気に後始末させられる方も経験豊富なんじゃないですか?
本番のVSモノクローム戦はついにネメシスの第三形態発動ということで、これロマン武器だわなあ・【不屈】にふさわしいと言えばふさわしいのでしょうけれど。
しかしこれ、モノクローム戦にはピッタリの兵装だったとは言え、他の使い勝手とかどうなんでしょうね。かなり面倒くさいけれど、使いようはけっこうあるのか。

恒例の番外編はルーク探偵、反知能犯罪者と相対する編でありました。ミステリー特有の探偵の犯人探しって、キレキレの知能犯との頭脳勝負という側面があるものですけれど、ここまでことごとく予想と想像を下回る! 下回る犯人が相手だと、そりゃ探偵怒るね! とりあえず、ヒントの暗号文素で間違えるのはアウト!! なにかそこに作為があるのでは、と疑ってしまうの当然ですから。
これは探偵としても怪盗としても、許しがたい認めがたい相手でしたなあ。これで相手に自覚があればまだ救いがあるのですが。最後探偵とか関係なしに心理カウンセラーみたいになってましたよ、ルークくん。いやアノ場合あれをカウンセリングと言っていいのか、人格を暴き出す心理攻撃と言うべきなのか。
ラストに出てきた監獄在住の【犯罪王】。またこれが字面から想像するキャラとは全然違って。アル・カポネ系の犯罪王なのかと思ったら、違う方向でヤバイ人だこれ。


シリーズ感想

やりなおし英雄の教育日誌 3 ★★★☆   



【やりなおし英雄の教育日誌 3】 涼暮 皐/桑島 黎音 HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

全てを知る灰色の魔女登場。

かつて辿った仲間との旅を夢に見たアキ。懐かしい記憶に感傷を覚えながら目を覚ますと、その枕元には《灰色の魔女》を名乗る少女が姿を現していた。
ソニカたちを攫って消えた魔女を追ったアキはその終着点で世界の真実を知ることになる。
人類とは、魔族とは。そして、過去にアキを送った灰色の魔女の真の狙いとは。
失敗した未来を覆す、元英雄によるバトルファンタジー第3巻!
灰色の魔女って、失われているアキの記憶の件もあるし、その存在自体が謎すぎて、彼女こそがこの物語の最重要キーパーソンなんだと思ってたんですよね。
いかにして、この時代にもいるはずの灰色の魔女を見つけ出すのか。その探索が一つの山場になってくると思っていた。こういうのって、RPGに毒されてるのかもしれません。クエストは能動的に動いて待っている鍵となる人物、フラグとなる人のところへとたどり着く、みたいなのが定番という意識があるのでしょう。
まさか、向こうからひょいひょい来るとは思わなんだ。
昨今ではラスボス魔王もラストダンジョンの魔王城におとなしく鎮座しておらず、気軽に徘徊する時代であるので、珍しくもないことなのかもしれないけれど、なんちゅうか主導権を握れていないというのは確かだよね、アキたちが。
結局の所、未来から戻ってきたアキをして、自分たちが戦う魔神のことも、魔族のことも、自分を助けてくれて未来へ送り出してくれた灰色の魔女のことすら何も知らず、世界の真実を何も知らない以上、主導権なんか握れるはずもないのだろう。
灰色の魔女が賭して現れたのは、ある意味アキたちに力を与えるためというよりも情報を与えるためだったのかもしれない。それでも、彼女が負うリスクに対してそれに見合うリターンだったのかはかなり疑問でもあったのだけれど。
まあ端からパワーバランスというか、敵と味方の彼我の戦力差が酷いんですよね。スタートラインから無茶苦茶出遅れて態勢も何も整えることの出来なかった過去は問題外としても、話聞いてるだけで魔族の側の九王位とかデタラメもいいところで、これ一人ひとり魔王と呼ばれる存在なんじゃないの? よく考えると、ラスボスの魔神って文字通り神なわけで、その前に魔王が9人いるってどんだけ無理ゲーなわけですか。先述したとおり、昨今では魔王も平気であっちこっちうろついているわけで、わざわざ敵の陣地に乗り込まなくても向こうからホイホイやってくる時代なわけですよ。
アドバンテージなんてどこにもありゃしない。
それでも、未来からアキを過去へと送り返したように、もう一度かすかな可能性を手繰り寄せるための綱渡りを、あの灰色の魔女は選んだわけだ。何気に生き方在り方が、アキや過去の勇者パーティーの面々と一緒なんですよね。その正体と出自を考えるなら、それは当然のことかも知れませんけれど。
しかし、彼女がもたらしてくれた圧倒的な密度と量の真実によって、あらかたのあれやこれやは説明がついたにも関わらず、何気に一番最大の疑問点、違和、相違点、正体不明の存在が尚更に正体不明になってしまったわけだ。
原点に戻る、じゃないけれど。一番最初の「え?なんで?」がさらに補強された形で「え?なんで?」になったわけで、ほんとなんなんだろう、アミちゃんこの娘。
それはそれとして、イフリアが可愛いなあ可愛いなあ。素直かつ積極的になったこの娘さん、パねえっすわっぁ。ソニカたじたじじゃないですか。このままソニカ右往左往してたら、一方的になっちゃいますよ?

1巻 2巻感想

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 6.<月世の会> ★★★☆   

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 6.<月世の会> (HJ文庫)

-インフィニット・デンドログラム- 6.<月世の会>】 海道左近/ タイキ HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

王国最強宗教クラン、動く。

大学の始業までの間思いっきり遊ぶことを決めたレイは、ルークやマリーと共に海へ行く約束をしてゲーム内の宿屋で仮眠をとった。
そして目が覚めた彼の前に現れたのは見知らぬ天井。レイは、王国最大の宗教クラン・<月世の会>に拉致されていた!!
現実でも宗教組織のトップに君臨し、王国最後の<超級>であり、実は大学の先輩でもあった月夜の目的とは――。
「うちは、【女教皇】扶桑月夜。<月世の会>のオーナーや――よろしゅう」
ゲーム内だけでもタチ悪いのに、リアルでも出会ってしまいました宗教の人、ってヤバイなんてもんじゃないじゃないですかー。
って、まあタチは悪くてもそんな宗教的に危ない人、という感じでは月夜さんも月影さんもしないので、その点は安心かもしれませんが。
宗教的には危なくなくても、人間的には十分危ない気もするけどなー。
とはいえ、レイくんの場合ゲームよりもむしろリアルの方が特殊な人間なので、そこまで危機感を覚える必要もないのかも知れませんが。常識人を気取っているけれど、家庭環境から何からズレている分、けっこう感覚もズレてるっぽいしなあ。ってか、あんまりリアルでもまともな人ってこの作品いませんねえw その中でも、椋鳥一家は図抜けているようですけれど。お兄ちゃんだけでも嘘のような経歴の持ち主なのに、長女の人なんて伝聞だけでも何そのリアルハリウッドアクション俳優、てなもんですし。
しかしレイくん、大学入学までの春休み中とは聞いていたけれど、通う学校あそこだったのか。パねえなあ。
ともあれ、現実でもゲームでも月夜さんなんていうヤバイ人に絡まれてますが、物語的には大きな事件と事件の幕間みたいなもので、珍しく落ち着いた時間が流れている様子。
逆にそういう何も起こっていない時の方が、じっくりとナイナイのことについて考えに耽る余裕が生まれる、ということでこれまでわりと脇に方に追いやられていてネメシスの成長、というよりもゲーム内の存在とリアルの存在との関係と未来、についてようやくスポットがあたってきたのでした。
と言っても、問題に直面しているのはネメシスの方で、レイの方はその点自覚や認識にまだ薄いところがあるようだけれど。
ゲームをリアルと同じように感じるマスターの存在、というのは度々語られていて、その筆頭が主人公であるレイなのだけれど、そういう人がいるという曖昧なものではなく、その存在ってこのゲームの根幹にも関わっているようなんですよね。
理論上は、ゲーム内の存在であるティアンとリアルの存在であるマスターの間にも子供が出来る、って情報、実はものすごい爆弾なんじゃないだろうか。別に実証もされず仮説にもならない段階なのかもしれないけれど、それが本当なら電脳上とはいえ新しい生命が誕生するってことですしね。それも、未知の種が。
しかし、一方でティアンとマスターとの関係というのはあくまで一方的なものでも在り、リアルとゲームの両方で生活していると言っていいマスターは、きっかけさえあれば簡単にこの世界から居なくなってしまう存在でもある。ゲーム内の存在はリアルへと行くことは絶対に出来ないし、リアルの人間であるマスターたちは、現実を放棄してゲーム内に専住することは絶対に出来ない。
あちらとこちらを行ったり来たりすることが必定なマスターを、一方で待つしか無いティアン、そしてエンブリオであるネメシスの不安を、果たしてレイはどうやって拭い去ることが出来るのか。
なかなか踏み込んだ題材である。

一方で、現実世界の大学で出会った先輩とゲーム内でも一緒に遊ぶことになったレイ。BBBと名乗るその人は、何気にこう、裏があるわけじゃないけれど「過去」がある人物のようで……。
って、色々あって知名度あがりまくってるレイと一緒に遊ぶのを、有名人と一緒に行動するの緊張しますね、みたいなこと言ってるけど、貴方も実は有名人でしょうに。
その隠している人格、みたいなものに対してレイくんがどんな反応するか、けっこう楽しみである。リアルの彼女知っているのが余計に色々といや増しそうw




僕専属のJK魔女と勝ち取る大逆転〈ゲームチェンジ〉 ★★★   

僕専属のJK魔女と勝ち取る大逆転〈ゲームチェンジ〉 (HJ文庫)

【僕専属のJK魔女と勝ち取る大逆転〈ゲームチェンジ〉】 六升六郎太/ 装甲枕 HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

魔法が実在する世界。魔法の乗り物を用いたレース競技で、かつて「最強」と呼ばれながら引退した少年・明日葉進也はある日、東雲早希という魔女と出会う。自分とペアになってレースに復帰してほしいと進也に頼む早希だが、魔女の才能に恵まれなかった彼女の魔法は「進也に3秒先の未来を見せる」だけのささやかなものだった。しかし彼女の魔法に意外な可能性を見つけた進也は、伝統あるレース「大如月祭」での一発逆転を目指す―!!

魔女王の呪いによって「操縦」という技能が魔女の中から失われてしまった世界。なので、「加速する箒(アクセラレーション・ブルーム)」という箒の乗り物を乗りこなすには、魔女と普通の人間がペアを組まないといけないわけだ。
箒と言っても、挿絵を見る限り掃除用具の箒じゃなく、完全にレーシングカーというか小型の二人乗り飛行機である。魔女はその魔力を燃料にして箒―ブルームを駆動させ、それぞれの魔女が持つ固有の魔法によって妨害ありのレース競技で競争相手を妨害し、人間のドライバーがブルームを操縦する、という仕組みになっている。
レースである以上、ドライバーの技量というのは無視できないと思うのだけれど、何しろレースでメインとなるのがド派手な魔法の方なので、ドライバーの方はまったく注目されず、世間から評価もされない。そのために、進也は幼馴染の魔女蘭奈とのペアを解消してブルームレースから遠ざかっていた。
彼としては、世間から評価されない事は我慢できても、パートナーである蘭奈が幼馴染としての自分を強く求めて一緒にいることを望んでいながら、操縦者としてはまったく評価もなにもしていなかった、というのは耐えられるものじゃなかったのだろう。
だからこそ、操縦者としての技量とブルームレースの経験を見込んで求めてくれた東雲早希の三顧之礼に応え、そこから魔女と操縦者としての関係から東雲早希と明日葉進也という個人の信頼関係を深めていき、本当の絆を育んでいくことになるわけだけれど、そこでちょっと気になったのが進也の代わりに蘭奈のパートナーとなった一人の女の子なんですよね。
少なくとも、操縦者としては何の想いも抱いていなくても進也は幼馴染としては蘭奈に強く求められていたのです。そばに居てくれるだけでいい、というその意図がどこにあったにしろ、強く求められてはいたのです。
でも、その子はただの据え物。操縦技術はもとよりパートナーとしても代用品。蘭奈は、再び進也とパートナーになるんだと公言し、次のレースで勝利すれば進也にパートナーとして戻ってくるように約束までしてしまうわけです。そうなれば自分はお払い箱。自分が進也よりも操縦者として優秀であることを証明しても、それは蘭奈の勝利であって、自分は彼女のパートナーから外されてしまう。
そんな立場で、全力を尽くして蘭奈の勝利のために戦う少女カエデ。
物語が進也と早希の底辺から這い上がる展開へと集約されていたので、スポットらしいスポットが当たらなかったんですけれど、彼女の心情は非常に気になるものでした。図らずも、進也のホームグラウンドであるゲームセンターで進也と出会い、交流があっただけに尚更に。
初っ端から心折れていて、レースの最中にもポキポキ折れてしまう進也に比べて、というか比べるのもおこがましいほど、このカエデという小さな女の子のメンタルって作中最強レベルだったんじゃないでしょうか。彼女がどういう思いでレースに挑んでいたのか、その内面もう少し描いてほしかった。なんか、メインよりもそっちの方が気になってしまって。
レース自体は、ここぞというときに繰り出す魔法という妨害要素が、一度使用してからのインターバルの時間なんかもあって、ゲーム性が高いものでした。それぞれの魔法も特徴的で、レースの戦略性に大きく関わってくるものでしたしね。確かに、蘭奈の魔法はあれ、操縦者の技量とかどうでもよくなるものだわなあ。
ただ、肝心のレースの臨場感というか、その光景が目に浮かぶ、とかスピード感をリアルに感じる、という点にはいささか描写に乏しいものがあって、もうちょいって感じでした。レース描写がもっと迫力あったら作品としてももっと面白さが増したと思うんですけどね。


Zの時間 ★★★☆  

Zの時間 (HJ文庫)

【Zの時間】 榊一郎/活断層 HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

久しぶりに外に出ると、世界は滅亡していた。

廃人FPSゲーマー・出庭博明が久しぶりに外に出ると、世界は既に滅んでしまっていた。
偶然にも出会ったゾンビオタクの少女・樹堂乙羽と共に、生き残るための準備を整えていく博明。
一息ついた頃、彼はゲームサポートAI・レイヴンが不審な挙動をとっていることに気づく。
画面にに表示されたのは、見慣れぬキャンペーンとメッセージ――『生き延びろ。世界をやり直す為に』
誰も見たことがない最高のハッピーエンドを、一芸に秀でたオタクたちでつかみ取れ!!

……あれ? あれれ? 
本作、いわゆるオーソドックスなゾンビ映画っぽいゾンビもの。突如発生したゾンビパニックによって現代文明が崩壊してしまった中で、生き残った僅かな人間たちがサバイバルしていく、という映画や漫画だとよく見る展開なんですよね。本邦だけでも、あまりにも有名な【バイオハザード】をはじめとして、【ハイスクール・オブ・ザ・デッド】とか最近では【がっこうぐらし!】とか。
ただふと振り返ってみると、ライトノベルだとこの手のオーソドックスなゾンビものって実は殆どなかったんじゃないだろうか。全然、読んだ記憶がないんですよ。
辛うじて、大樹連司さんの【オブザデッド・マニアックス】(ガガガ文庫)が思い出されるくらいか。
他はというと、十文字青さんが異世界でのゾンビハザード【断末のミレニヲン】なんてのを描いてらっしゃるのだけれど、やっぱり思いの外少ない!
他にもあるのかもしれないですけれど、少なくとも自分は知らないです。
他の媒体ではわりと定番なジャンルなだけに、これはちょっと意外でした。何気に話作るの難しいのか?
ともあれ、本作を手がけているのはベテランも超ベテランな榊先生であるからして、堅実な王道路線をしっかりと描いてくれるので非常に安心感が在る。その上で、オーソドックスな展開にも関わらず他に類型が見当たらないせいか新鮮味が多分にあって、これがまた面白かったんですよねえ。
そんなメイドが居てたまるか、というのもまたご愛嬌。アメリカのホームセンターならともかく、日本のホームセンターってそんなに凶器になりそうなものあるかしら、てなところもご愛嬌。いや、ホームセンター根城にしつつも、そんな大した活用はしていなかったあたり、ゾンビオタクの乙羽ちゃんの兎にも角にもホームセンターに籠もらねば、という使命感によるものだったような気がしないでもない。
なぜか要塞化された高級住宅があって、そこに知り合いが籠もっているのも定番ですよね!
一応、世界は殆ど滅亡しているようで、まともに生きている人の気配はなく、将来も未来も絶望的、という状況なのですが、そのわりに登場人物たちはそこまでネガティブにならずにどこかコミカルに描かれているのも特徴的と言えば特徴的。特にヒロインの乙羽がゾンビオタク、という以上にどこかピントの外れたキャラクターをしていて、面白い子なんですよね。榊先生、【棺姫のチャイカ】のチャイカ以来、わりとこの手のキャラクターを武器にしてヒロインとして多用してきてるなあ。
しかし、作品の雰囲気自体暗くせずわりと呑気というかライトに展開していく一方で、この災害の中で主人公もヒロインたちも身内を亡くしているのも確かな話で、家族仲が良くなかったメインの二人はショックを受けつつも、まず目の前の対処を優先していくのですが、あとで出会うもうひとりのヒロインであるところのお嬢様は、自身の家族との別れを真正面から克服しなければならない場面に直面していくことになります。
生きるために戦い、活路を見出し、先のない未来に閉じこもるのではなく、当て所のない果てを目指して旅に出る。結局のところ、ゾンビものの中でも世界崩壊してしまうものは、安住の地を求めてのロードムービーみたいなものになっていくのですかねえ。
ただ、本作に関しては果たしてこれ「現実」なのか、という謎がまだ残っているのですが。果たして大どんでん返しのひっくり返される舞台がどこまで広く深く根ざしているのか。乞うご期待、って感じで楽しみです。

榊一郎作品感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉8 ★★★★   

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 8 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉8】 SOW/ザザ HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

ある日、トッカーブロートに謎の男・マイッツァーが現れる。彼は自らをスヴェンの父親と言い張るが、機械仕掛けの彼女に血のつながりなど存在しないはずで……。一方王都では、ソフィアがヒルダたちと新大陸国家ノアから来た正体不明の将軍を出迎えていた。また、ダイアンはある物の調査で、ブリッツドナーと共に敵国オーガストへと潜入していた。離れた場所の別々の事件が次第に交わり、より大きな事態に繋がっていく。登場キャラ総動員で動き出す人気シリーズ第8作!!

ロボ子のスヴェンに父親なんているわけがないじゃん。仮にいたとしても製作者はダイアンとわかっているので、父親扱いするならそっちだろうし。
だから、今回は父親を名乗る詐欺師の話かー……と思っていたらどうしてどうして。
あれ? 本当に父親なの!?
これはまったく予想外。そういえば、だいたい心を持つ機械人形って製作者を父親みたいなものとして認識していることが多かったのだけれど、ダイアンに関してはスヴェンはもとよりレベッカなんかもダイアンに対してボディの製作者という以上のものは何も感じていなかった。それは、彼女らの人格であるAIがルートたちが乗っていた猟兵機の支援AIであって、ダイアンが一から作り上げたものではなかったから、という認識だったから特に不思議とは思わなかったのである。
ダイアンを父と呼ばないのはそういうもの。スヴェンやレベッカが搭乗者であったルートたちを慕うのもそういうもの。そもそも、彼女らが機械にも関わらず人間のような心を持つに至ったのも、まあそういうものだから、というファジーな受け止め方をしていて、それで済む話なのかと思っていたのだけれど。
それでは済まなくなったのかー。
何気に、ルートがスヴェンの正体を知っているのかいないのか、というあたりにも容赦なく答えが突きつけられてしまったわけだ。もう素振りからだいたいのことは察せられていたのだけれど、そう言えばなぜルートがその事についてスヴェンについて問いたださないのか、という点については深い疑問を抱かなかったように思う。
それも、それがルートの優しい性格からくるものであり、そもそもスヴェンがそれを知られたくないと思っている以上、ルートから踏み込むことはないよな、という確信があったからなんだけれど。
言われてみると、それは停滞そのものなんですよね。関係性は、そこで行き止まりになってしまっている。それが悪いのか、と言われると首を傾げてしまうのだけれど、そうだよねー、何の関係もない他人……じゃなくても、友達や親しい仲でもこれに関してはなかなか言うことも言えないけど、女性側のお父さんからしたら、そういうなあなあな関係って認めがたいものがあるわなあ。
それでも、スヴェンが機械人形である以上、現状維持以外のどんな進展があるんだ、という話でもあるんだけれど、その前提がひっくり返るとなると、そりゃあもう話は変わってくる。
ってか、その前提ひっくり返るの!?
どうやらスヴェンの出自には、えらい歴史の深淵が関わっているようで、今まではルートの過去からいろんな罪やら想い出やらが追いかけてくる展開だったけれど、ここに来てついにヒロインであるところのスヴェンが、核心となって物語が動き出すのか。
何気に、前回確保されてしまったマリーさん。単にゲーニッツの残党に捕まったのかと思ったら、もっととんでもないモノに絡め取られてしまっていたみたいだし、想像以上に闇が深すぎる。
本来なら関わったり触れたりした途端に100%抹殺されるだろう展開から生還してみせるダイアン博士、この人なんだかんだとやっぱり凄えわ。
今回、ルートのパン屋さんが舞台のところと、ダイアンとブリッツドナーの門探索、そしてソフィアとヒルダのダグラス将軍接待編の三パートが同時展開していたわけですけれど、結構毎回違う場所で起こっている事件を同時進行で描いたり、という構成はあったものの、今回はさらに特別なクライマックスへと持ち込んでいて、これ物語そのものがクライマックスに突入したという盛り上がり、ばっちりですよね。何気に、全員揃ったのって初めてだろうし。まさにこの面子が主要人物として動いていくことになるのか。
これはラストに向けてテンションあがっていきますぞ。

シリーズ感想

最底辺からニューゲーム! 4.奴隷商人は愉快な奴隷たちと共に世界を変えていきます ★★★☆  

最底辺からニューゲーム! 4 ~奴隷商人は愉快な奴隷たちと共に世界を変えていきます~ (HJ文庫)

【最底辺からニューゲーム! 4.奴隷商人は愉快な奴隷たちと共に世界を変えていきます】 藤木わしろ/柚夏 HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

「さぁ――世界を敵に回しに行こうじゃないか」

絶体絶命であるはずの異端審問を逆手に取り、敵対する三大公が一人、エルヴィスを失脚させた奴隷商人タクミ。
同時に女神の代行者としての地位も得た彼は、十五年前の女王陛下殺害事件の真相を明らかにし、《鈴蘭》の首領であるミルトこそが殺された女王の実子だと断言する。
そして戸惑うミルトに神王国家リヒテルトを女王として治めて欲しいと頼むが――「はい、質問ですっ! 女王と奴隷は兼任できますかっ! 」
奴隷美少女たちと突き進む異世界転生ニューゲーム、最高潮へ!!
あとがきを読んではじめてそうだったのか、と気付かされたのだけれど、本作の世界って【ダメ魔騎士の英雄煌路】の世界だったのか。ってか、女神フィリアって前作の登場人物なの? 該当する人一人しか居なさそうなんだけれど。ミルトが蒼天剣引き継いでたりとかの関係からしても。いやでも、こんなノーテンキなキャラだったか!?
前作、二巻で打ち切りになっちゃったのでその後の世界観とか不明のままだったのですけれど、この様子だと色々と設定詰めてたんでしょうねえ。断界国のお姫様とか、思いっきり前作の主人公と関わりあったみたいだけれど、こんな娘登場してなかったもんなあ。もしかしたら、某魔女さんが名前変えただけなのかもしれませんが。
まさか、ラスボスのエルヴィスまでそっちの関係者だとは思わなかったですけれど。しかも、その原動力って前作での描かれなかった結末、あるいは成果か。その守護だったと知ってしまうと思うところは色々とあるのですけれど、やっぱり前作が結末までしっかりと描かれていたらもっとインパクトは強かったんでしょうねえ。
それはそれとして、タクミですよ。てっきり、世界皇帝とかにまで成ってたんじゃないかと思ったら24歳で前世は病死してたって、そんな前世ではやることやり尽くしたみたいな事言ってたのにそんな年齢でいったいどうやって、と思っちゃいますよね。
結局、前世でタクミがいったい何を成し遂げ、どんな人生を送ったのかというところに関しては一切描かれることもなく、タクミ本人も前世でのやり方の後悔を語るばかりで具体的な様子については口を開くことはなかったので、なんとも曖昧な印象でしか捉えられなかったんだけれど、少なくとも国家元首くらいにはなってたと思ったんだけどなあ。二十歳すぎとはなあ。そこらへん、もっと盛っても良かったろうに。
エルヴィスと改めて決着をつけつつ、身内の連中にはしっかりと未来へのビジョンを植え付けて、ミルトには女王としての自覚を促しつつ、国全体を盛り上げて新たな価値観を立ち上げて、そうやって隣国の代表を呼び寄せて宣戦布告、と今まで何年もかけて準備し続けてきたものを一気に開帳して、という盛り上げ方は非常に良かったのですけれど、同時にこれでシリーズ終わりっぽいのがここまであげておいて、終わりなの!? というはしご外された感もありありなのがなんともはや。
いやまあ、最後となったら盛大に打ち上げ花火連発するのはむしろ溜め込んでいたものを死蔵せずに打放つという意味では大いにやってほしい方向ではあったんですけれど。
若干、メインヒロインを絞りきれなかったところもあるかなあ、と。ミルトもカリンも微妙に話の都合で出番なくなることありましたし、結局タクミの信頼できる仲間ではありながら、もっと個人的に深いところまで踏み込むまで至らなかった、というかメインストーリーの進行に忙しくてそこまでやってる暇なかったというか。
もしシリーズが続くなら、むしろ放出しきった此処からそういう部分を期待していきたいところなんですが、なんか微妙ぽいのがちと寂しい。できれば続いてほしいんですけどねえ。

シリーズ感想

魔術破りのリベンジ・マギア 4.絶唱の歌姫と魔女たちの祭宴 ★★★☆   

魔術破りのリベンジ・マギア 4.絶唱の歌姫と魔女たちの祭宴 (HJ文庫)

【魔術破りのリベンジ・マギア 4.絶唱の歌姫と魔女たちの祭宴】 子子子子 子子子/伊吹のつ HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

学園祭でデートにライブに大盛り上がり!?

欧州での事件を解決した晴栄たちは魔女学園に帰還する。折よくセイレムでは収穫祭としての魔女の宴<サバト>を迎えており、学園総出でお祭りの準備中。
久々の学生生活でゆっくりできると思っていた晴栄だったが、当然のようにその盛り上がりに巻き込まれていく。
ティチュやフラン、露花といったヒロインたちとの学園祭デートに加え、学園の成績優秀者<七虹の魔女(セブン・カラーズ)>とのエキシビジョンマッチまで組まれて、気付けば学園祭の中心に……?
お祭りムードでお送りするハイテンションな第4巻が登場!

第一巻にて日本からアメリカのセイレム魔女学園に転校してきたにも関わらず、二巻以降欧州各地の別の魔術学園を転戦してまわり、実はセイレムでちゃんと学園生活送ってなかった晴栄くん。一巻でも学園内で起こっていた事件を解決するのに奔走していて、授業もろくに受けてませんでしたしねえ。
というわけで、4巻にてようやくセイレムでの学園生活編なのであります。自分の学校にも関わらず、速攻で違う学校行ってしまったために、本来ならホームとなる学校の学友たちも知らない子ばかり。学園内の著名な実力者たちについてもまったくわからず、という実は今回が転校初日なんじゃないか、と思ってしまうような初対面のオンパレードだったりする。七虹の魔女なんて人たちがいるのも知らなかったしねえ。
落ち着いて周りを見渡してみるならば、ちゃんとセイレムにも個性あるキャラクターの持ち主たちに世界各地から流れてきた優秀な魔術師たちが揃っているわけで、改めてある程度この学園で物語を熟成してから外に出ても良かったんじゃないか、と思わないでもない。まあそれは改めてこの巻からはじめよう、というところなのかもしれないけれど。
外部とのコネは既に作ったので、あとは落ち着いて判明した蠢動する敵方との対決に物語を移行していくだけ、という段階に至ったのかも知れないし。
しかし、改めて判明したこの敵味方の構図が面白いことになってますね。魔術サイドの描写が緻密なだけに、その色んなジャンルの魔術系統が揃ってくるのってオールスターキャスト的な感覚が湧いてくるものなんだけれど、これ敵方の組織の正体が既存の魔術系統と全く異なる「アレ」サイドなやつなだけに、余計に対決構図に映えが出てきている気がします。全世界の既存魔術大系VSアレ、みたいな感じで。
セイレム魔女学園自体が、様々な系統・大系の魔術師を受け入れいれていて、晴栄自身も今回セイレム魔女学園の一員としての意識を強くすると同時に、学友たちとの交流を深めることで自分とは異なる価値観の相手との付き合い方、或いは自身の価値観を頑なに守るのではなく、緩やかに影響を与え合う健全な友人関係というものを構築していくことで、多種多様な価値観を守る側に立ち位置を据えることが適ったようですし。復讐者として自分を定義づけていた彼の、考え方の変化は主人公としての成長でもありますし、このセイレム魔女学園という場所の得難さを示しているとも言えます。
そこを、多種多様な傾倒の魔術師の友人たちと協力して、脅威となる敵組織と対決する、という物語の根幹となる芯棒を明確化するための準備回だったのかもしれません、今回は。
学園長先生の普段だらしないのにいざというときの格好良さ、頼もしさなんかも今後頼りにする大人の姿として重要でしたでしょうし、陰陽術と他の魔術大系と混ぜ合わせたハイブリッドの魔術を使うロカを、セイレム魔女学園が穏やかに受け入れてくれたところなんかも、先々のためには大切なシーンだったんだろうなあ。

しかし、シナトラでありますよ。シナトラといえば、あの著名なミュージシャンであるところのフランク・シナトラしか思い浮かばなかったので、珍しい名前だなあ、しかも音楽使うというか歌う魔術で歌手兼任らしいし、でもフランク・シナトラ男だし本作別に男女性別逆転させてるタイプの作品じゃないしなあ、と思ったら実は男の娘でガチでフランク・シナトラでした。ひゃー。
本作って、前回も実在の詩人ウィリアム・バトラー・イェイツを登場させたように、歴史上の人物を出演させてくるんですけれど、人選がまた思いもよらぬところから持ってくるのでビックリさせられるし、面白い。

1巻 2巻 3巻感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 6 ★★★★☆  

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 6 (HJ文庫)

【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 6】 手島史詞/COMTA HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W


娘が大きくなったが、俺が小さくなった!?

フォルの強くなりたいという願いのため、一時的に成長ができる魔術を使用したザガン達。だが、儀式の暴走で、フォルは大きく、ザガンが小さくなってしまった!
オリアスの助言から、魔術とは違う力を求めたザガン達は、極東にて執り行われる“大陸種族長老会議"に出席することに決める。
そこで待ち受けていたのは悠久の時を生きる夜の一族の一人・アルシエラ。会ったことのないはずの彼女はどうやらザガンとネフィを知っているらしく――。
大人気ラブコメファンタジー絶好調の第6巻!
今回もうタイトルと真逆で、嫁エルフのネフィの方がちっちゃくなったザガンを愛でまくるという、ネフィ無双回でありました。
ネフィも強くなったよなあ。能力的なものではなくて、威厳というか貫禄というか。実力的には彼女を上回る魔術師たちはなんぼでも居るのに、誰もネフィに頭あがらない状態になってましたし。
ザガンが小さくなったところで、以前のネフィの幼児化と違って彼の精神状態や記憶は大人の彼のまま、まあ若干容姿に引きづられている部分はあるにせよ、魔王ザガンが居なくなった、というわけではないにもかかわらず、ナチュラルにちっちゃくなったザガンを膝にのせて頭をなでながら、玉座のの上からザガンの配下たちを凄まじく恐ろしい笑顔で見回すシーンなんか、完全に魔王の王妃さま、魔王城の女主人、て感じでしたもんね。
みんなから、怒ったネフィ怖ぇぇ、とビビられる貫禄たるや。
初登場当初の無感情で殆ど反応を見せない頃のネフィ。心開いてた頃のでも内気で儚げだった頃のネフィと比べても、格段の変化である。ほんと、感情ゆたかになったよねえ。それでいて、怒っていても笑っていても、ザガンを撫で回しているときも、どんな表情も絵になる。かわいい、とにかくかわいい。
そりゃイチャイチャしたくなりますよ、こんな奥さんいたら。今回はむしろ奥様にイチャイチャされる方、愛でられる方、可愛がられる方になってましたけれど、ザガン氏。
恋人に成り立てで初々しい関係の頃というのはどうしても両者手探りになってしまいガチなんですけれど、ザガンが小さくなったことでネフィがもう無意識領域でザガンのこと抱っこして離さなくなってしまったので、微妙な距離感とかもう関係ないよね、みたいな感じになってしまったのはこの際イイ方に作用したのでしょう。まあ、放っておいても順調にデートして順調にいい感じになってた気もしますけれど。今の二人の場合、何がどうなっても順調に進展しそうなんだよなあ。

一方で、好きな人と両思いになったことに浮かれてばかりではなく、ザガンってしっかりとフォルに対して父親してるんですよね。手探りで色々やってはいるものの、過保護にはせず、しかし突き放さず本当に真剣にフォルのことを考えて、彼女の成長に手を貸しているのがよくわかるんですよ。まだ若いしフォルぐらいの歳の子を育てるにはそういう経験も少ないだろうに、またそれを自覚して彼自身悩みながら、失敗したんじゃないかと不安になりながらも、ものすごく愛情深く、健全な成長の促し方をしているのである。
いや、話聞いているだけでも父親としてすごく頑張ってるし、ちゃんとやってるんですよ。めちゃくちゃ偉いですわ、この魔王様。敬服します。自分ひとりでやってしまわず、周りの経験多い年長者たちの意見も聞いたりしているので、そのあたりの対応も偉いですし。周りの人たちも、変人揃いではあるんですけれど、なんだかんだとしっかりしたちゃんとした大人ばかりだから、ちゃんとした実りある意見もくれるし、親身になって一緒に考えてくれるし、周りの人たちにも恵まれてるんですよねえ。
その人材も、ザガンの魅力とカリスマによって集まってきた人たちなので、まさにいい意味での自業自得なのですけれど。

そう言えば、このまま曖昧に進むかと思われたシャスティルとバルバトス、変に濁してなあなあで流していくのではなく、双方に自覚を促してちゃんと関係を向き直させるあたり、本作って容赦ないというかそのあたり躊躇なしというか、凄いよね。
シャスティルは第三者からあっさりと、バルバトス君のこと好きだよ、と告げられてめっさ意識しだすわ、バルバトスの方は意外なことに自分で自覚があったみたいで、真剣に悩みだしてるし。
この二人は二人でなんとかうまいこといって欲しいものであります。
ネフテロスの方にも、彼女に好意を抱く騎士みたいなのが現れてるけれど、こっちはどうなんだろう。ネフテロスまだ精神年齢的にも子供だしなあ。
しかし「お義兄ちゃん」は定番だけれど、定番だけに強烈だった。ひゃあ。
これ、ようやくネフテロスが妹みたいな存在だってネフィが知ったわけで、まだ戸惑ってる状態だけれど、ネフィの性格からするとすぐにこう……猫可愛がりしだしそう。フォルの可愛がり方や、ザガンが小さくなったときのあの「愛で力」を見れば、わかるというものである。絶対、この妹可愛がりまくる、うん。ネフテロスも何気に屈指の可愛がられ上手だもんなあ、この娘。なんだかんだと、シャスティルにも可愛がられてるし。
くそう、どのシチュエーション、どのキャラクターを見ても全方向愛で甲斐のある場面、光景ばかりで、愛で力の教祖であるところのゴメリばあちゃんがここ数巻ほどテンションあがったまま全く落ちないでひたすら暴走し続けてるの、気持ちわかるよ。どこ見ても愛で甲斐ありすぎてテンションさげる隙が一切ないものねえ。
ほとんど、ゴメリばーちゃんと同じテンションでニマニマしてますよ、こっちも。ネフィとザガンのそれも順調に進展していて、まだ仲が深まるの?と思ってしまうくらいまだまだ仲良くなっていく、愛情が深まっていくザガン・ファミリー。まったくもって、善き哉善き哉。

シリーズ感想

常敗将軍、また敗れる ★★★★   

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

【常敗将軍、また敗れる】北条新九郎/伊藤宗一 HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W
「貴様はこれまで父ローディアスと二度、長兄シャルクとは一度戦っているはず。そして、どの戦にも負けた」「しかし、まだ生きている」ティナの声が少し弾んだ。
 世界最強の「ヴァサームントの騎士団」当主の娘、ティナは初陣にて『常敗将軍』と渾名される異端の英雄、ドゥ・ダーカスと出会った。
陰謀に満ちた戦乱の世界で破格の生き様を見せる英雄ダーカスと、その姿を追いかけるティナや姫将軍・シャルナら魅力的なキャラクター達が織り成す一大ファンタジー戦記!
おお!? 負けてる、負けてるよ!? 結構ガチ目に負けてるよ!?
てっきり常敗と言っても負けるが勝ちとか試合に負けて勝負に勝つ、みたいになんやかんやわざと負けて実際は勝ってるとか最終的に勝ってる、というたぐいの話かと思ってただけれど、ほんとにちゃんと負けてますよ?
後々になってみると、そう単純な話じゃなかったというのはわかるのですけれど、わざと負けているという体ではないんですよね。
作中でも本人を前にして推察されていたところですけれど、敗戦処理係的な……絶対に負けるしか無い戦況で何とかあとに繋げられる負け方をしてのける、とか負けの責任を一手に負う役割を担う専門職、みたいな感じなのかなあ……と、思いますよね、普通は。
いずれにしても、こんな「常敗将軍」なんてあだ名までつけられたら疫病神扱いされそうなものなのに、逆に配下につけられた兵士や将校たちからは全幅の信頼を寄せられるカリスマ性を見せるのである。というのも、たとえ負け戦でも絶対に無駄死にさせられることはないし、生き残ることが出来る。もし絶体絶命の局面に追い込まれても逃げずに戦うに足る意義が与えられている、と思わせてくれる信頼があるのである。
ダーカスは決して万能ではない。力及ばずの場面もあるし、彼の意見が通るほうが少ない。それでも彼を知る者たちは、彼を知った者たちは彼に全幅の信頼を寄せることになるのである。常敗であるはずの彼を、だ。
そんな常敗の英雄の実像を掴むべく、ティナという最強傭兵団の跡取りである娘がダーカスの副官のような立ち位置を得て、彼にくっついて見守り続けるわけだけれどなかなかその正体は見えて来ないんですよね。これはティナに限らず、ダーカスという人物への対応はまさに真っ二つに割れるのである。間近でその姿を見続けていたティナは、彼の計り知れない部分に気づいていてだからこそそれを見極めんと余計にくらいついていくのだけれど、わざわざ彼を注視しない人々にとっては彼はただ負け続ける将軍に過ぎないのである。このギャップというか、見る人によってまったく異なる
常敗将軍の姿の相違がまた不可思議な魅力となってるのでありました。
いや実際に、このダーカスという男、その正体、実像が明らかになればなるほどにむしろ謎が深まり得体の知れなさが広がっていくという不可思議な人物なんですよね。
本当に人間なのか。ある種の条件をクリアすることによって絶対の味方になってくれる、というやたら確固とした定義付けを見ると、人間の姿をした概念か契約神なんじゃないか、と思えてしまう部分すらありますし。だいたい、ネタバラシとなる過去回想でのあの君主との会話からすると、ダーカスって何歳なの!? と素で首を傾げてしまうところもありましたし。
大体から、戦場における常敗将軍というのは嘘偽りのない真実であったのだけれど、彼の持ってるスケールって現場レベルにとどまらないんですよね。これまで、戦術での勝利で戦略上の敗北をひっくり返す、みたいな勝ち戦の不敗神話が描かれることは珍しくはなかったかもしれませんけれれど、戦術上での敗北を前提として組み立てられた大戦略を操る者のお話、というのはかなり珍しいんじゃないかと。これ、敗戦処理じゃなくて計画倒産だよなあ。
でも、全部ダーカスの思惑通りに行っていたわけではないんですよね。彼の提案通りに全部物事が運んでいたら、犠牲や被害は全く比べ物にならないくらいに少なくなっていたはず、というのも終わってみればわかる話で、実際の戦場での働きも堅実一途で大仰な奇策に頼ること無く地味だけれど確かな働きに終始している。その堅実さが、実直さがダーカスに地に足の着いた存在感を与えている。だからこそ、ラストに明らかになる大どんでん返しにも驚きと納得が伴われていたのだろう。
いや、これは面白かった。地道な展開ゆえの読み応えとそれを踏まえた上での真実が明らかになることへの爽快感、何より報われるべき人が報われる、という展開が思わぬ予想外のところから突っ込まれてきて、なんかやられた!という痛快な気分にさせられてしまったんですよね。
厳つい様相のわりと冴えないおっさん風な装いのダーカスも、それにつきまとうティナもくるくるとよく立ち回る躍動感のあるキャラクターで、最初から最後まで没入させられてしまいました。
これは一等、面白かったなあ。ここからさらにストーリーが展開していくのを期待してしまう。戦記モノはやっぱりシリーズ続いてくれないとね。

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉7 ★★★  

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉7 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉7】  SOW/ザザ HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

新章突入!過去の亡霊と決別を。スヴェンの前に広がったのは、強盗犯が立てこもるトッカーブロートの姿だった。立てこもり自体はルート(と、突入したスヴェン)によって無事解決したものの、これは最悪の始まりでしかなかった。“善意”の市民団体による抗議活動で客は減少、証人として出頭した裁判所では、ルートが戦時中に行なった作戦が槍玉に上げられる。さらに、死んだとルートが思いこんでいたマリーまでも姿を現し、ルートは再び過去の亡霊に悩まされることに…。パン屋を諦めかけた相棒にスヴェンがとった行動とは!

マリー、以前からこっそり動いていてかなり入念に調べ回っていたので、もっと社会的に一撃必殺のクリティカルショットをキメてくるのかと戦々恐々としていたのだけれど、思いの外こう……大きく振りかぶりすぎてあっちこっちに隙のある攻め方をしてきてしまったなあ。
これ、彼女自身がルートをどうするのか決め切れないまま高ぶった感情を抑えきれずに攻め込んでしまった、というところなのか。マリーの経歴からしてその優秀さは折り紙付きだっただけに、彼女が本気でルートを抹殺するつもりだったなら、事態が動き出した時点でもう取り返しのつかない致命的なところにルートが追い込まれてもおかしくなかったのに、こんな穴だらけの裁判に持ち込んでしまっているわけですからね。ルートの弁護士が裏で相手とつながってた以上、スヴェンが居なかったらやばかったのは確かですけれど。
ルート自身が、マリーが直接訪ねてきて虐殺事件について語れと言ってきたら自分は正直に告白した、と述懐しているように、ただルートが犯した罪を、軍が起こした事件を弾劾するだけならやりようはいくらでもあったはず。それを、こんな形でルートを陥れるように動いてしまったのは、彼がパン屋を営んでいるという事実を否定し、貶めたかったのであろうし、以前変装して会いに行ったときにまったく気づいてもくれなかった事に、想いの分だけ憎悪が滾ってしまったのだろう。
それはすなわち、それだけルートへの想いが深かった、ということでもあるんでしょうね。愛するが故に憎むしかなかった。
彼女の観点で抜けていたのは、もうすでにルートが1人ではなかったこと。彼の営むパン屋が欠かせない日常の一部として、周囲から受け入れられていたこと。
もし、最初の頃のルートなら、自分ひとりで完結していて外につながりを持っていなかったルートなら、あっさり諦めてこの結末を受け入れていたのでしょう。でも、これまで彼がパン屋として働いてきた日々は、それが失われればその分、彼のパン屋に関わってきた人から日常や幸せを奪ってしまうまでに、密接に繋がるに至っていたのだ、と落ち込むルートにスヴェンが叩きつけていたんですよね。
ロボ娘であるスヴェンの方が、そういうのちゃんとわかってるのがこの作品の醍醐味であり、多分最初の頃では出来なかっただろう、スヴェンがルートを叱って立ち直らせるなんて真似が出来たのは、それだけスヴェンもまた成長してる、って事なんでしょうなあ。

と、本筋こそルートの抱えていた罪が過去から追いかけてきた、というものでしたけれど、それを枝葉にして国際情勢の裏側で蠢いているのが、今回露呈した平和教と呼ばれる正しさを振りかざして息巻く者たちとゲーニッツの思想を継ぐものたち。前者はそのあり方の質の悪さが迷惑を振り切って思想テロになってるし、後者は後者である意味ゲーニッツという重石が外れている分余計にやばいことになってそうだし、さらに暗躍している者もいる、となるとこれかなり混迷が深くなってるなあ。
果たしてこれ、どこまで「パン屋」が関わる話になるのか。

シリーズ感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?5 ★★★★☆   

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 5 (HJ文庫)

【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?5】  手島史詞/COMTA HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

盲目の獣人少女と聖剣の謎とは――。

気持ちを通じあい、順調に仲を深めつつあるネフィとザガン。ようやく恋人となった彼らだが、そもそも恋人というものがどういうことをすればいいかわからない。
アドバイスを聞き、デートとやらをすればいいことを知ったザガンは下調べに街を散策する。
そこで偶然にも助けた盲目の獣人少女・黒花は、新たに教会へと派遣された司祭だと言う。
そして一方、出自を知ったネフテロスはビフロンスのキメラに追われてザガンの領地へと逃げ込んでおり――。
大人気ラブコメファンタジー絶好調の第5巻!

尊い!!

なんかこの尊いという概念がわかったような気がする。自分解釈だけれど。
ネフィとザガンのイチャイチャっぷりって、ダダ甘なそれだけじゃなくて、二人とも常にお互いのことを思いやり気遣い考えて居るが故にそうなってるという部分が大きいんですよね。
で、本作はそんなメイン二人だけじゃなく、沢山いる登場人物みんながそれぞれに他の人を深く思い遣っているのである。それは恋情だけでなく、親子の愛情だったり師弟や主従の情であったり、友情であったり、様々な形をとっているんだけれど、他者を想うという意味で共通している。それが、みんなこう、深く胸を震わせる熱かったり優しかったりする想いなんですよね。
シャスティルとネフテロスの友情然り、ザガンとフォルの親子の愛情然り、ラーファエルと黒花とのそれ然り。それらもみんな、それぞれふたりだけで閉じているわけじゃないのだ。キャラクターたちの中にある優しさは特定の1人だけに向けられるものではなく、今やザガンとその愉快な仲間たちの間で蜘蛛の巣のように張り巡らされ、行き来して相互に思いやりが行き交ってるのである。
だから、もうどの方向を向いても、全方位で思わず「尊い!」と両手で顔を覆ってしまいたくなるような優しさが交わされているのである。信頼であり、親愛であり、友情であり、愛情である、温かなものが繋がり、結ばれあっているのである。
だからこそ、余りにも一方的だったビフロンスのそれは、孤立し敗北してしまうのである。もっとも、無慈悲で残酷な情の欠片もないただ享楽のままの行為がビフロンスという魔王の行動原理なら、それはもう敵ですらなかったのだろうけれど、形は違えど彼のネフテロスへの想いもまた、愛情だったわけだからなあ、たとえ歪んだものであったとしても。
しかし、それを堂々と指摘できるまでになったザガン、最初の頃の愛だの優しさだのを概念そのものから知らなかった男からすれば、凄まじい成長である。特にこの巻からは、ザガンって意識的に在り方変えていっているんですよね。
バケモノとしての魔王ではなく、「王」たるものとして魔王となる。その意識と目標を確立したからか、尋常じゃない風格みたいなものが出はじめている。
そんなザガンをして、背中を預けることのできる盟友、とある意味対等以上の評価を得ているシャルティス。プライベートのポンコツはどこへやら、今回はお仕事モードだったせいかお前誰だよ、と作中のキャラたちからもツッコまれる頼りになる聖騎士さまっぷりで。それ以上に、心身ともにボロボロになったネフテロスを助け、彼女のためにガン泣きしながらネフテロスの心を守りきったシャルティスがもう存在そのものが尊い!! ある意味、もうひとりの主人公、と言って過言ではない存在感を示してるんですよね。
今回、メインキャラの幾人かはザガンの元ではなく、シャスティルの元へと落ち着いちゃったわけですし。緩やかではありますが、ザガンの魔王軍とシャスティルの聖騎士団の2つのグループが出来上がってきてるわけだ。とはいえ、両者の関係は今すごい良好な協力体制にあるのですが。まさか、ザガンとシャスティルのトップのつながりだけではなく、末端の騎士と魔術師の関係も普通に密接になってるとは思わなかった。
今回、シャスティルがついに失恋を自覚してしまったわけですけれど、その分バルバトスくんがすごい健気に頑張っているだけに、報われてほしいのう。何気にキメリウスがゴメリ婆ちゃん気にしてて、思わずニマニマしてしまった。ゴメリ婆ちゃん、他人のラブコメ楽しんでる前に足元確認した方がよかないですか!?
今回、結局デート本番までたどり着けなかったので、次回こそデートに漕ぎ着けられるか否か。わりともう膝枕とかマフラーとかで十分お腹いっぱいなんですけど、デートは別腹ですよね、はい。

シリーズ感想

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 5.可能性を繋ぐ者達 ★★★★   

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  5.可能性を繋ぐ者達 (HJ文庫)

-インフィニット・デンドログラム- 5.可能性を繋ぐ者達】 海道左近/タイキ HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W


王国へ仕掛けられたテロは、レイたちルーキーの活躍によって鎮静化しつつあった。しかし、“勝つ"ためには手段をえらばないフランクリンによる最後の切り札が発動し、大量のモンスターが王国へと進撃を開始する。
限られた人数、閉じ込められた上級マスターたち。再び王国が危機に陥ったその時――あの男がついに動き出す!!
『今夜お前が開いたゲームで、お前は最大のミスを犯した――それは“弟"と“俺"を敵に回したことだ』
勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負け無し、という名言はジャンルを問わないのですねえ。王国側からすれば、この勝利は幾つもの偶然と運と奇跡が幾人もの奮迅の活躍によって紡がれたもので、まあなんで勝てたんだろうという代物だったのに対して、フランクリン側からすると明確にフランクリン教授の歪んだ性格によってもったいぶった戦争計画がなんもかんも悪かった、と。まあ作中でも指摘されていますけれど、典型的な戦力の逐次投入ですよね。さらに、作戦目的の度々の変更。ただ、これがゲームの難易度バランスという観点で見ると実に絶妙な塩梅なんですよね。まあ、折々に触れて特定の強キャラの投入がないとクリアできません、というのはクソゲー以外のなにものでもないのかもしれませんが。
しかし、フランクリン徹底的に悪キャラで行くのか。この段階でなんでそこまで歪んでいるのかわからないのもモヤモヤするのだけれど、妹の方ではなくこのお姉ちゃんの方がリアルでレイに縁ができそう、というのが大きなポイントなのかも。あれ? もしかして、フランクリンの方がヒロイン枠なの、まさかまさか。
ともあれ、満を持してクマニーサン出撃。破壊王の名は伊達ではなかった、どころか貴方出るゲーム間違えてませんか? というレベルで。これ超級とそれ以外に格差ありすぎやしませんかね!? むしろ、ちゃんと準超級レベルの人っているんだろうか。ジャイアントキリングって主人公以外でも出来るんだろうか。いや、マリーさんは確かそれを成し遂げていたんだったか。
マリーの正体、レイがとっくに気づいていたというのは流石に驚きましたが。そのへんもっと鈍感なのかと思ってた!!
しかし、クマニーサンの戦闘スキルがリアルのプレイヤースキルに寄ってるとなると、どれくらいリアルの技術とか身体機能とか反映されるんですかねえ。ってか、このお兄さんをして比べ物にならない、という一番上のお姉さんが何者なのか気になって仕方無いんですけど!! 既にアラサーらしいですけど、言及だけされて登場しないリナ・インバースの故郷の姉みたいなポディションなんだろうか。
さて、なにやらどうもビジュアル的に変な方向に言っているらしいレイくん。イラストがそのへん、写実的じゃなくて茫洋とした作風なんで、具体的な今のレイくんのデザインがわからなかったんですが、そんな凶悪なことになってたのか!! いや、職業的に「聖騎士」のわりに周りからの反応がそっちの清廉な白系の正義の騎士、という感じがしないなあ、と思ってたんですが……。そう言えば、装備品、どれも怨霊系とか血塗れ系とか獄卒系だ!!

シリーズ感想

魔術破りのリベンジ・マギア 3.はぐれ陰陽師の越境魔術 ★★★  

魔術破りのリベンジ・マギア 3.はぐれ陰陽師の越境魔術 (HJ文庫)

【魔術破りのリベンジ・マギア 3.はぐれ陰陽師の越境魔術】 子子子子 子子子/伊吹のつ HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

ドイツから戻る晴栄のもとに、学園長と陰陽寮から共同の依頼が舞い込む。
アイルランドの暁星学園で起きた殺人事件の容疑者として陰陽師が捕らえられたので、その真相究明に向かえというのだ。
嫌な予感を覚えつつも、囚われた少女と対面する晴栄だったが……
「な……なんであんたがここにいるのよ!? 土御門、晴栄ァーッ!」
そこにいたのは幼少期の晴栄と因縁深い少女、蘆屋 露花だった!
陰陽術×アブラメリン術式、ハイブリッド魔術を使う幼馴染を救い出せ!ハイエンド魔術バトルアクション第三弾!
アイルランドとはまた渋いところに行くんだなあ。ってか、このまま巻ごとに世界各地の魔術学園を巡回していくのでしょうか。ラストの展開からして一度、セイレムに戻りそうな感じではあるけれど。
しかし、相変わらず魔術関係についてはよく練られて考察されている。陰陽術とアブラメイン術式とのハイブリッドって、適当にくっつけりゃいいってなもんでもないはずでしょうに、種類の違うジグソーパズルを上手く合体させたような合致感が垣間見える。
イェイツ学長のオリジナルの魔術もそうなんですよね。アイルランドの民間伝承に本来の詩人ウィリアム・バトラー・イェイツとしてのそれをアレンジした魔術。ってか、彼やアイルランドのジャンヌ・ダルクと呼ばれたモード・ゴンなんかについては、もっと薀蓄として話を盛り込んでも良かったんじゃないかな。本邦での知名度に関しては殆ど無いに等しいと思われますし、彼とモード・ゴンとのラブストーリーがどれほど情熱的で情緒的で魂の接続を感じさせるものであるかがわからなければ、その娘イズールトのIFストーリーである本作におけるイェイツとイズールトの関係の深み、イズールトの抱く闇とも光ともつかない代替物としての恍惚の衝撃がなかなか伝わらないでしょうからね。作中でも、モードへのイェイツの求愛については頻繁に書かれていましたけれど、惜しむらくは彼らがサブキャラクターであったことか、早々比重として割けないものでもあってかそこまで深く掘り下げて描けなかったみたいですしね。
そもそも、彼らが史実の人物であるとか、後書き読むまで思いもしませんでしたし。
今回のメインとなる露花の苦悩と苦痛に満ちた人生。追い落とされ、彷徨いながらそれでも手が届かなかったものへの無力感を受け入れず、逆に撥条として努力して頑張って積み上げてきたものを、かつて憧れたその人に認められる。彼女の過去回想からラストの展開に至る露花の弱さを積み重ねて強さを手に入れた女の凛とした姿は、実に格好良かったです。まあそれだけに、登場当初の型にはめたようなテンプレート以上でも以下でもない露花のキャラ描写は如何なものか、と思わないでもないんですけどね。あんな薄っぺらな台本棒読みするみたいなセリフや反応じゃない、蘆屋 露花という少女の過去と現在を踏まえたに相応しい再会から事件解決までのキャラクター描写が出来なかったものかしら。
後半が熱いだけに、導入から前半にかけての退屈なそれが惜しまれます。

1巻 2巻感想

最底辺からニューゲーム! 3.奴隷商人は捕まっていても、必ず相手の一歩先をいきます ★★★☆  

最底辺からニューゲーム! 3 ~奴隷商人は捕まっていても、必ず相手の一歩先をいきます~ (HJ文庫)

【最底辺からニューゲーム! 3.奴隷商人は捕まっていても、必ず相手の一歩先をいきます】 藤木わしろ/柚夏 HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

貴族殺害の冤罪で異端審問にかけられることが決まった奴隷商人の青年タクミ。実質的な死刑宣告に等しい状況だが、部下であるカリンたちは「タクミなら自分でどうにかするだろう」と、あえて放置を決め込むことに!そんな中で唯一、タクミを救おうと奮闘を始めた大司教リーゼをミルトに託し、カリンたちは先ごろ任命された叙勲騎士の義務として、魔獣被害を訴える領地へと赴く。しかし到着早々、亜人というだけで領民から受け入れを拒否されてしまい―!?
あははは、これはあかんわ。そんな先の先まで時勢と展開を読んで周到に準備してたら、そのへんの一流どころの悪党じゃ太刀打ちできんわ。少なくとも、行動原理がバレバレになってしまってたら読み切られてしまうわなあ。何か強烈な目的を持つ有能にして容赦呵責のない人物というのは、だからこそ行動が最適化しやすいとも言えるし。
それにしても、これだけの事を易易とやれてしまうタクミ、前世では最初から多くを持ちすぎていたが故に有利すぎてそれが不満だった、という話だけれど、この能力とその扱い方を見てると出自とか生まれた時のスタート時点の有利不利って殆ど誤差でしかないでしょう、これ。よっぽど何か極端な縛りプレイでもしないと大したハンデにならんのじゃないだろうか。
まあある意味自由に動けてても拘束されて牢屋に入れられてても関係なくやらかすであろうタクミは、せめて牢屋でおとなしくさせておいて、当面の活躍は残ったメンバーで、というのが今回のお話でした。死罪確定の投獄を食らったにも関わらず、仲間の誰もが心配すらしていない、というのはそれだけ信頼されているのか、手に負えないと思われているのか。まだ仲間になって間もないリーゼだけが一生懸命に助けるために駆けずり回るのが、なんとも健気で可愛らしかったのですが、最終的に彼女も「タクミぇ〜〜」と半眼になってしまうので、まあ順当ですな。
それにしても、いつの間にかタクミの商会の面々も、彼に関わる周りの面々もタレント揃いになってきて、主人公不在でも物語そのものが躍動しているのはとても良い感触でありました。さすがに、相手の悪役も一筋縄ではいかず、正直取り返しがつかないようなキッツイどんでん返し、ちゃぶ台返しを食らってしまって、あの展開はなかなかに想像を絶するもので有無を言わせぬ厳しいものだったはずなんですが……、完全にあれ、この展開を逆手に取って大逆転どころか、むしろ先を見据えた足がかりとして利用したに過ぎない流れなんですよね。
恐るべきは、これが完全にタクミの計画通りに進行した、というわけではなく、色んな人の窮地を救うために非情に徹すること無く危険を飲み込んだ上で、その上で相手の謀略すべてを踏み台にしてみせたというんだから、どれだけ余裕を見込み柔軟性を仕込んでいたのか。
お陰で、一気にえらいところまで駆け上ってしまったわけですけれど、こっからどこを目指すんだろう、って既に女神様との談話から最終結論は出ているのだったか。ここからさらにスケールアップしていくとしたら、それは楽しみである。

1巻 2巻感想

あんたなんかと付き合えるわけないじゃん!ムリ!ムリ!大好き! ★★★★   

あんたなんかと付き合えるわけないじゃん!ムリ!ムリ!大好き! (HJ文庫)

【あんたなんかと付き合えるわけないじゃん!ムリ!ムリ!大好き!】 内堀優一/希望つばめ HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

高校入学から数ヶ月。大貫悟郎(おおぬきごろう)はその日、長いこと片思いをしていた幼なじみの美少女・杉崎小春(すぎさきこはる)に告白した。
「小春! 好きだ! 俺と付き合ってはくれないだろうか!!?」 「いや、無理ですから」 この一言であえなく玉砕! さらに小春は何を思ったのか悟郎に、「悟郎、あんた彼女作りなさいよ」とムチャぶりまでしてきて!?
両思いなのに付き合えない!? 一途過ぎる少年と本当は彼のことが大好きな少女の、どうしようもない青春大暴走ラブコメ開幕!

これはぁ!! そうか、そうか、そう来たか。そう来たのか!!!
いや、うん、これは絶妙。正直、途中までまったく違和の類いは感じなかった。ラスト近辺に至ってようやく「あれ?」となって、まさかまさか、と狼狽えているスキにもはや取り返しのつかないところまで進んでしまったところで、豹変である。物語の豹変である。
凄いというより素晴らしいのは構成の妙も然ることながら、文章のこうなんというか、握りしめる握力?みたいなものが前半の柔らかなそれが、後半のクライマックスに突入した途端にギュッと固く握りしめられたそれになる、硬度……いや密度というべきか、込められた情感の密度の変化の入り方が、後から振り返ってみると目覚ましいものがあるんですよね。
クライマックスに至るまでの軽快なラブコメ模様、これが周囲の友人たちとの掛け合いも含めて本気も本気、作者の持つ甘酸っぱい恋模様とそれを取り巻く環境醸成のスキルをありったけ詰め込んだ逸品で、ぶっちゃけこのまま進んだとしても作者が手がけた作品の中でも有数の良作になったんじゃないかと思われる出来栄えであり、力が込められていた全力のラブコメだったんですよね。
そこにこの構成を被せてきて、重ねてきて、わずかにひらいた出口めがけてすべての勢いやら展開やらを殺到させた挙句に、その場に立った登場人物たちの、特に悟郎のあの凄まじいまでの想いを、もはや狂気に至ったであろう覚悟を、決心を、執心を、固く固く握りしめきった拳でもって一発で振り抜いて殴りつけてきたわけですから、こちとら一発ダウンどころか殴られた頭が消し飛んだんじゃないでしょうか。
おおう。
これはもう、次巻をもって真価を問われるところだけれど、どうするんだと問うのも無駄だ。ここまでやった以上はもうとことんヤるのだという凄味を、既に味わわされている。覚悟を問われるのはむしろ、読み手側なのだろう。報いなど、定かにあらずというものだろう。読む覚悟は、耐える覚悟は、堪える覚悟は、有りや無しや。

内堀優一作品感想

VRMMO学園で楽しい魔改造のススメ 2.~最弱ジョブで最強ダメージ出してみた~ ★★★☆  

VRMMO学園で楽しい魔改造のススメ 2~最弱ジョブで最強ダメージ出してみた~ (HJ文庫)

【VRMMO学園で楽しい魔改造のススメ 2.~最弱ジョブで最強ダメージ出してみた~】 ハヤケン/晃田ヒカ HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

バトルトーナメントでも魔改造で大暴れ!

中学からのネトゲ友達・あきらを筆頭に、3人の美少女たちと入学早々に自分たちだけのギルドを結成した蓮。時を同じくして、彼は別のゲームでのネトゲ友達が、学園での先輩・山村雪乃であると知る。
対人戦をこよなく愛する雪乃の誘いで、蓮とあきらは彼女がマスターを務めるギルド【神秘の武技(ミスティック・アーツ)】が主催するバトルトーナメントに選手として出場することになるが――
「いくよ――!」「ああ、3、2、1――!」「「勝負ッ! 」」
強敵との連戦でも、蓮の快進撃は止まらない!!
相変わらずめちゃくちゃ楽しそうに遊んでいるこの子たちなのである。
いや、これだけ高技術なVRMMOにドハマリして大いに遊んでおきながら、ちゃっかり前にやってたネトゲも時々戻って遊んでいるとか、この子ら本当に根っからのネトゲーマーでありますなあ。そして、そのレベルのネトゲ廃人がより廃人化するために集ったのがこのVRMMO学園なわけで。そりゃ、前にやってたネトゲの同じレベルの廃人仲間が、同じ学校に通っていても何の不思議もないのである。業界は狭いのだ。ネットは広大ではあっても人間の行動半径は往々にして狭いのである。
さて、相も変わらず一般には人気のないジョブやスキルの可能性を探り、組み合わせや魔改造によって思いもよらぬ効果を発見して使いこなすのを生きがいとする検証勢の鑑とも言うべき主人公。しかし、それだけ特殊でピーキーな運用法だと対策が立てやすいのもまた現実なのである。特にゲームともなれば、一度表に出ると一瞬にして観察され検証され対策を立てられ攻略法を確立されてしまうのが常。否、それを息をするようにやってしまうのがゲーマーという種族なのである。そのゲーマーの煮凝りをさらに増々て煮詰めたようなやからが集まるこの学園、相手がパターン的な動きしかしないエネミーならともかく、対人戦ともなれば初見殺しは本当に初見しか通用しない。そして、そうした無効化対策を取るのはまったく卑怯でもなんでもないのである。トーナメントで概ね蓮くんのスタイルが見極められた途端、図ったようにみんながしっかり対策法を取り出したのには笑ってしまった。さすがはゲームである。とはいえ、あの対策法、地味に自分にダメージが入り続けるわけでもあり、ただでは無効化させないあたり、実にいやらしい主人公である。
前回のアホみたいなダメージを弾き出す投げ銭戦法とは裏腹に、この巻で開発できるように至った新兵器は、あれこれとスキル組み合わせて検証してみても、その効果は一発目の劇的なそれと比べると非常に地味で、しかし本来の効果と比べるとやっぱり変なんだけれど、こういうトリッキーなものを使いこなすのが面白いんだろうなあ。
ややも肝心のバトルではアイテム採取やこっそり援助してもらったりとラッキーの要素が多すぎたきらいもあるんだけれど、様々に対策立てられ既に明らかになった手口、戦法を無効化されながらもなおヒャッハーとばかりに楽しそうにあれやこれやと手を変え品を変えて遊び尽くしていく主人公。対戦相手の皆々様も、みんな同じくらい楽しそうにして主人公とチャンチャンバラバラしていらっしゃるので、いやもう楽しくて良かったねえ、という感じである。これも青春の謳歌よなあ。満喫してるなあ。

1巻感想
 
1月18日

(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月17日

(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月15日

(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


1月14日

(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GAノベル)
Amazon Kindle B☆W


(GAノベル)
Amazon Kindle B☆W


(GAノベル)
Amazon Kindle B☆W

1月12日

(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグ コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スター コミックス) Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月10日

Amazon Kindle B☆W

1月8日

(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス)
Amazon Kindle B☆W

1月7日

(少年チャンピオン・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W

1月6日

(KCデラックス)
Amazon


(KCデラックス)
Amazon


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W

1月5日

(ヒーローズコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヒーローズコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W

1月4日

(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W

12月28日

(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグ コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

12月27日

(ヒーロー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(YKコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(YKコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(B's-LOG COMICS)
Amazon Kindle B☆W


(B's-LOG COMICS)
Amazon Kindle B☆W


(B's-LOG COMICS)
Amazon Kindle B☆W


(REXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(REXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(REXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(REXコミックス)
Amazon Kindle B☆W

12月26日

(モンスターコミックス)
Amazon Kindle B☆W

12月25日

(ZERO-SUMコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ZERO-SUMコミックス)
Amazon


(DNAメディアコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルスf)
Amazon Kindle B☆W


(ファミ通文庫)
Amazon Kindle B☆W


(PASH!ブックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスEX)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(まんがタイムKRコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(まんがタイムKRコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(まんがタイムKRコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ライドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ライドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ライドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W



Categories
最新コメント

Archives
記事検索
タグ絞り込み検索