徒然雑記

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MF文庫J

やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい 3 ★★★★  



【やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい 3】 芝村 裕吏/片桐 雛太 MF文庫J

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ガーディ VS 10万の大軍――異端のヒロイック・ファンタジー第3弾!

僅かな仲間と共に森州平定という大偉業を成し遂げながらも、相変わらず俗世に疎いガーディ。そんな彼を放っておけないフローリン姫の近侍に取り立てられた矢先、次なる戦いが忍び寄っていた。沿海州リエメンを率いる女王ニフレディルが、国の存亡を賭けて10万の大軍を率いてイントラシアへの侵攻を準備していたのだ。その動きを事前に察知したガーディはフローリン陣営の指揮官として、思わぬ人物との同盟を提案する。そして、種族を分け隔てない“究極の優しさ”が、決死の侵略軍すらも救う軍略へと至る時、誰もが予想しない結末が待ち受けていた――!
こうしてみると、ガーディというこの時代において異質すぎる存在を虚飾も偏見も少なく一番深く理解しているのって、アンドゥイレドとシンクロのおっさん二人なんじゃないだろうか。
ナロルヴァやフローリン姫、テイといったガーディと近しい子たちは、近しいが故にガーディの人となり、その性格の優しい所や抜けている所危うい所なんかをよくわかっているけれど、近しいが故に近すぎてその凄まじいとすら言える巨大な能力については頭ではわかっていても実感として把握しきれていない部分があるし、テイに至っては崇拝に近いものがあるからガーディの実像を正確に認識しているかは怪しいところがある。これは臣下になったモノたちも同様で神格化とまではいかないけれど、美化していたり凄い人という固定観念を持ってしまっている節がある。一方でタヘーや幼母は軍師としてのガーディを全く知らないからこそ、よく知っている彼の人柄だけに目がいき、その持ち得る能力については全く関知できていない事からも、見る人によってガーディという人物の捉え方がこれほど幅広くなるのは興味深い。
ナロルヴァあたりは、最近武将としてガーディからちょっと離れた所から前線に立つ者の視点でガーディの業績を目の当たりにしているので、実感を得始めている所もあるのだけれど。
彼を知らない人たちなら、尚更その実像は伝わらないし敵対者として対面する者たちからすれば、その圧倒的な能力ばかりに直面することで、本来の姿とはかけ離れた姿を見出してしまう。もっとも、実像を知らないからこそ、本質を見抜いている節もあるのだけど。

その点、アンドゥイレドとシンクロの二人はガーディという天才のバケモノじみた能力も、逆にその人並み外れた無垢さや弱点、世知の疎さなどちょっと考え方が抜けているのもちゃんと把握してるんですよね。まあ、凄さもダメさもたびたび想像を遥かに越えてしまうので、そのたびに振り回されてしまうのですが。
それでも、このおっさんにしてフローリン陣営の文武のトップを担う重臣二人がガーディの最大の理解者にして後援者であるという事実が、どれほど皆にとっての幸いであるのかは、彼らがほぼガーディの好きなようにやらせて、彼の望むようにすべての準備を取り計らってくれた事からも明らかでしょう。もちろん、これまでにガーディは彼ら二人のお眼鏡に適うだけの実績を立て、信用を勝ち取り、その能力を示し人となりを知らしめたからこそ、なのですけど役職も重く実績も多分にあり経験も深いだろうこの二人が、判断の殆どをガーディという新参に任せきっている(そして恐らく責任の方は自分達で引き受けるのだろう)事は、この二人がどれほどの傑物かを示しているのではないだろうか。
この二人が後ろ盾だと、ほんと何の邪魔も入らないどころかガーディの思う通りにスムーズに準備段階から事が運ぶんですよね。
軒並み、反対勢力を粛清し尽くさなければならなかったニフレディル女王と比較するのも可哀想になるくらい。リエメン側の人材の払底は目を覆わんばかりでしたからね。実質、この幼女王一人であらゆる実務をやってのけざるを得なかったのを見れば尚更に。
忠臣と言える人は僅かも居ましたけれど、実務能力はほぼ役に立つことなし、みたいでしたし。
今回はガーディも三方から迫る敵軍に対するために、自分は後方に待機して各戦線を手ずからではなく他人に任せる必要があったわけですから、ガーディも自分だけで全部やってしまうという訳にはいかなかったんですよね……まあお膳立てはこれでもかというくらい丁寧にやってのけたわけですけれど、これに関してはニフレディル女王も一緒ですからね。
ただ、ガーディには後ろにも前にも自分の代わりに任せられる人が居て、足りない部分も「自分じゃわからないので紹介お願いします」と頼める人が居て、その人は適切な人選で適格者を引っ張ってこれる人だったりするんですよね。
こうしてみると、英雄譚のような戦記物のように綺羅星のごとく将帥が揃っている、というわけではないのですけれど、ガーディ陣営には質実剛健の頼もしい土台を担える人材が揃っているのがよく分かる。そして、ガーディを慕って集まることになったゴブリンや人狼、トロールなどの異種族による精鋭諸兵科部隊という槍の切っ先。
まあそれ以上にやっぱり、精霊魔法、或いは占いという名称で語られる高等数学による演算に基づくガーディの先見が並外れているからこそ、すべてが適切に配置されていくのですが。
ガーディって情が深いように見えてそれらに左右されない完全に理系軍師なんですよね。政治はわからないどころか人の世界の常識も知らない世知に疎い人物だし、あれほど優しさに特化した性質でありながら人の心理というものにも疎い。
今回、リエメンの侵攻をまるで予知したように侵攻の開始から軍勢の数、侵攻ルートに戦略目的まで見抜いてみせたのは、それだけニフレディル女王による侵攻計画が合理性と必然性の塊だったから、と言えるのかもしれません。不合理の入る余地のないほどの完璧に整えられた計画だったからこそ、ガーディには手にとるように予測できた、と見るならばそれだけニフレディル女王が完璧な計画を完璧に実行していたという事実に突き当たるわけで、この幼女王ガーディと遜色ないバケモノなんじゃないだろうか。
惜しむらくは、彼女が才能を発揮せざるを得ないリエメンという国の状況が、災害によって破滅を避けられない状況であり、動ける間に生きるための食料を確保するために他国に全国民ごとなだれ込まなければならない、という時間制限付きの絶望的な状況であり、それを理解していない現状を把握できていない者たちを排除したために、人材という人材が払底しきってしまったという事なのでしょう。軍は糧食がなく、ただただ前に進んで略奪しなければそのまま枯死するしかない。前提条件が悪すぎた。
この幼い女王の身を確保できたことは、森州にとってどういう意味を持ってくるのか。リエメンという国が崩壊しながら、その国民の少なくない数を難民としてではなく移民的な形で森州に吸収できそう、というのはフローリン姫の立場にとっても重要な意味を持ちそう。
すでに、ガーディを近侍としたことでフローリン姫は独立領主としての道を歩みだしている、と周囲からは認識が持たれはじめているし、アンドゥイレドとシンクロのフローリン姫の両輪も、ここにきてガーディとフローリン姫の婚姻を本気で進めに掛かってますし。本国から独立独歩の道を歩もうという気満々なんだよなあ。
そのフローリン姫はというと、もう王族として仮面をかぶるのは完全にやめてしまって、今は公然とガーディの世話を焼くと公言して実行してますからねえ。それはもう好意以上のものだと思うのだけれど、この姫様は浮世離れして危なっかしいガーディの世話を焼かねば、という使命感に燃えているので彼が旦那様に、とかは果たしてどこかで現実味をもって捉えているのか。
むしろ、一旦婚約しそうになりながら引き離されたナロルヴァの方が、ちゃんと自分の気持ちというものに向き合えている様子が見える。
それにしても、世話を焼きたくて仕方ないフローリン姫がまたかわいらしすぎてたまんないんですよね。作中でも繰り返し語られてますけれど、近侍とは本来主君の世話をするような役職のはず(まあ実際は建前に縛られない必要に応じた自由度の高い立場みたいだけど)なのに、なぜか主君のフローリン姫が彼のお世話をしようと彼の住まいまで毎日訪ねてくるような様子で。森州の最高幹部が集まって今後の方針を決めよう、という会議に姫様が直々にガーディ呼びに来て、手を引っ張って会議室まで連れてきた挙げ句に「連れてきました!」ですもんね。なんだこのかわいいお姫様は。
それをみんなが微笑ましく見守っている、というのがこの森州の雰囲気を一番最適に現しているような気がします。
アンドゥイレドさんも、「ワシは、意外に小僧のことを小僧と呼ぶのが好きだったのだな。ガーディさまと呼ぶのが惜しい」という一言でこれまでも好きなキャラだったのですけれど、なんかもう大好きになってしまいました。こういう露悪的で周りからは嫌われているけれど、有能だし実は情も深いしというキャラはやっぱり好きですわー。

ついに「信長公記」の太田牛一みたいな、武将でありながら後にガーディの業績から日常的な様子まで書き残すことになる人物まで登場してるんですよね。
さながら現代から当時の人が残した資料を元に歴史家の視点で、ガーディたち当時の人たちの現代での評価を語ったり、歴史的事実に関しての見解や論説を述べたり、という歴史小説風味の語り口はやはり本作の大きな魅力の一つで、うん面白いなあ。面白い。


いつか僕らが消えても、この物語が先輩の本棚にあったなら ★★★★☆   



【いつか僕らが消えても、この物語が先輩の本棚にあったなら】 永菜 葉一/なび  MF文庫J

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青春の全てを捧げた、小説の世界は――戦場だった。

柊海人の日常は全てが灰色だった。可愛い妹と何かと気に入らないことがあればすぐに激昂してしまう父。アンバランスな家庭を守るため、アルバイトに明け暮れ、将来のことなんて考えられなかった。
天谷浩太の日常は全てが虹色だった。幼いころから欲しいものは何でも与えられ、何をしたって上手くいった。そんな二人に文芸部部長・神楽坂朱音は小説の世界の素晴らしさを説いた。そして、囁く
「君たちのどちらかがプロデビューして、私を奪って欲しい――」
いびつな関係の3人が小説という名の戦場に出揃うとき、物語は動き出す。小説に魅せられた少年少女が贈る、本物の青春創作活劇!
ああ、珠玉を見た。
これには「小説を書く」という行為にまつわるあらゆるものが詰まっている。
小説を書いた事のある人は、まず最初に自分の中からこみ上げてくる「物語」を文字にして打ち出そうとする行為そのものに、とてつもない大きな壁を感じ、恥ずかしさに躊躇い、清水の舞台から飛び降りるような心境を抱いた事があるのではないだろうか。
あの書いてみたいという欲求と、書くという分不相応とも思える行為への抵抗感のせめぎ合い。かつて二次創作という分野ではあるが、物語を書くという経験がある身としては、朱音に促されて海人が初めて自分の文章を書きはじめるまでの躊躇う姿に、随分と懐かしい思いを抱いてしまった。
あの越えた瞬間から、筆が走りはじめた時の開放感のような、未知の世界に踏み入った高揚感は未だに克明に思い出すことが出来る。
そんなふうにして、この海人ともうひとりの主人公、浩太の作家として歩んでいく二人の姿を見ていると気付かされるのだ。これは、思い出だ。経験であり、体験であり、過去から今に至るまで抱き続けた感情であり、モノを書くという事への理解であり、認識であり、未だ結論に至らない道程で振り返り、足元を見て、空を見上げて、これから征く道の先へと目を凝らす。そんな、作家としての有り様、在り方を一つ一つ腑分けして、分け与え、魂を吹き込んだのがこの作品の登場人物たちなのだ。
だから、彼らの叫びは生の叫びだ。青臭かろうと、演出過多に見えようと、ディフォルメされていようと関係ない。それは余分なものを飛び越えて、直截に此処に届く、響いてくる。
そこには、小説を書くことへの一切が詰まっている。書く喜び、書くことの楽しさ、苦しさ、辛さ、恐怖があり、高揚があり、喜悦があり、絶望があり、迷いがあり、達成がある。何故書くのか、何故書きたいのか、どうして書き続けるのか、書かなければならないのか。理性の産物であり、本能からの欲求ともなる執筆という行為。その根源を、ここに現れる登場人物たる彼らはすべて曝け出してくれている。
その中でも、彼ら主人公の海人と浩太はその体現者だ。そして二人はそれぞれ、小説を書くという行為に対しての人生における位置づけが異なっている。それは光と闇という表現で区別され、二人はまったく別のスタンスで小説を書くことに人生を賭している。
その対比が重要なのだろう。主人公が二人いて、二人それぞれの視点で小説を書くという行為に向き合うことが、視野や焦点を狭めることなく、たった一つの答えではない幾つもの作家としての在り方を肯定することに繋がっている。ひいては、文学部の先輩達それぞれの作家としてのスタンスの違いもまた、小説を書くという事への向き合い方への多様性を肯定していると言えよう。どれもが間違いではなく、尊重され、肯定されるに相応しい立ち方なのだ。
それは、浩太と海人にも該当する。生い立ちも、その人生の歩みも正反対のように異なる二人は、作品への向き合い方も、小説を書くという行為に対する在り方もまったく異なっている。しかし、彼らはお互いを否定はしない。むしろ、相手の在り方にこそ憧れている、と言っていい。そして同時に、自分の在り方に確かなものを見出している。もちろん、迷いが生じるときもある。反発が生まれるときもある。しかし、誰よりも相手を認め、尊敬し、だからこそライバルとして鍔迫り合い、時としてその選択を許せずに己の信念をぶつけることになる。
そうやって際立っていくのだ。相反するかのように見えた光と闇の、作家としての在り方はどちらもまた本物なのだ、と。その両方が、きっと彼の人、この作品を手掛ける永菜さんの中に内包されていて、両立しているのだと。それを描き出すのには、主人公はどちらか一人では足りなかったのだ。海人と浩太の二人であったからこそ、相乗させ全部引き出せた、描き出せた、と思えるのだ。
だからこそ本作は論ではなく、談である。
これほど自分自身を腑分けして直接それらを叩きつけながらひとり語りになるのではなく、登場人物たち一人ひとりの「人生=生きる事=書く事」への全力を描き出した青春物語と成しえて見事に完成させた事に、感嘆を禁じえない。
一読者として、心揺さぶられる作品でした。心に沁み入る作品でした。

ラストシーン、海人くんの現況は色々とご自身のそれが投影されてる感じもありますが、打ち切りなんかにゃ負けん欲しいです。わたしゃ、永菜さんの作品、どれもこれも大好きですよぉ。てか、なんでどれもこれも一巻だけなんだよ、どれもべらぼうに面白いのに!! 納得いかーん!!


永菜葉一・作品感想

異世界はジョーカーに微笑んだ。 ★★★☆   



【異世界はジョーカーに微笑んだ。】 赤月 カケヤ/かかげ  MF文庫J

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権力を振りかざし偉そうにしている奴らは、全員死を持って償え――。

罪を犯しても裁かれることのない権力者を趣味で殺害していた頭脳派凶悪犯罪者【ジョーカー】は、異世界に転生した。異世界で授かったあらゆるものを騙す【偽装錬金】の能力と、殺人鬼としての異常性。それらが重なり合い、彼は最強の救世の殺戮者となる。
《人は首を切断しても数秒は意識があるという。死の間際に己が愚行を反省しろ》
「第5回小学館ライトノベル大賞」にて優秀賞を受賞した問題作、『キミとは致命的なズレがある』で鮮烈デビューを果たした赤月カケヤが贈る、腐った上級国民は全て駆逐!系ダークファンタジー!!

世には「正義の殺人鬼」などと呼ばれていた彼だけれど、自分でそれを名乗るような厚顔の輩でもなく正義に酔いしれる愚か者でもない。主人公はただ殺人を趣味と公言するように自他共見える社会不適合の異常者である事に違いはない。
実際、彼は正義の味方なんかではなく、弱者を守ったり助けたりするような事もない。やる事と言ったら、復讐の代行くらいのものだ。彼、復讐という行為の正当性について、復讐そのものを借り物の「復讐は無限の連鎖をうむからだめ」みたいな事を言う結奈を論破するために散々に言い負かしていたけれど、さてどこまで彼自身が自分の語った復讐の正当性について信じているのだか。あれは詐欺師の論法で自分も信じていないようなことをさも正しく唯一の解法のように語って相手に有無を言わせなくするだけのもので、とても自分の信念に基づいた思想とか正論を語っているものではなかったですし。まったくもって、騙りである。
彼の場合、だいたいがその騙りなので、正直に本心を口にしている場面がどれほどあるのか。殺人鬼という以前に詐欺師の類なんだよなあ。
そして、彼は誰も救えていない。救おうとしたのかも定かではないけれど、実際問題として彼に関わり好意的に接してくれた人々は、概ね無残な形で惨死を遂げている。おそらくは、彼が亡くした妹にほど近かった少女まで、結局彼は救うことが出来なかった。
殺人という行為に目覚めるのが遅かったために、救えなかった妹の存在はたしかにこのジョーカーに根ざしている。でも、殺人を行うようになっても、結局どれだけの人を助けることが出来ているのか。
彼の中に残り続けているもうひとりの「結奈」もまた、そうしたうちの一人なのだろう。
結局、彼は誰かを幸せにできる存在ではないのだ。それを、彼自身弁えているのだろう。彼が出来るのは、報いを受けさせる事だけなのだ。

極悪非道の人面獣心の悪人どもに、その悪行の報いを受けさせ、彼らが殺した者たちと同じかそれ以上の苦しみと痛みを与えて後悔させ尽くしてから殺す。無残に殺す。人々の尊厳を踏み躙ってきた者に、尊厳を奪い尽くしてやってから殺す。辱めて殺す。絶望させて殺す。
でも、それはそれだけの悪行を彼らが嬉々としてやり尽くしたあとの事なんですよね。それだけの惨たらしい、穏やかで善良な人たちが酷い殺され方をして、残された人々が絶望に打ち震える様子をこれでもかと見せつけられたあとに、行われる始末である。
それを、痛快には思えない。胸糞の悪さを払拭するためのただの憂さ晴らし程度のものだ。気すらも晴れない。それでも、この連中が報いも受けぬまま、後悔も絶望もしないまま、これまで通りに振る舞い続けるのを見せられるよりはよほどマシ。最低限の精算である。後味の良くない、それでもこれ以上悪くならないための一線を画する、という行為だ、これは。虚しくとも、ケリをつけなければ誰も前に進めなくなる、酷いゴミ処理のお話。
それを、ジョーカー自身も決して楽しんではいないのだろう。趣味だと語るし、自身の絶対優位を確信している強者が絶望に顔を歪ませるのを見ることに愉悦を感じるのも嘘ではないのだろうけれど、彼の中にあるのはそういう「楽」ではなく、本質は「怒」の方に見える。
報いは、彼にも訪れるのだろうか。彼の奥底に安らぎを与える可能性があっただろう人物は、妹も「結奈」も結局は踏みにじられてしまった。その彼の心に平穏は訪れるのだろうか。理解者は現れるのだろうか。何の因果か彼の使徒になってしまった元警察特殊部隊の隊員だった坂西結奈は、まあ正直おバカで結構思考も凝り固まってる所もあってジョーカーの根源を揺るがせるものがある娘には見えないのだけれど、おバカであるが故に煙に巻くジョーカーの一番深い部分を直感的に見ている節がある。理解者となり得る可能性も、あるのだろうか。
救いは、彼にもあり得るのだろうか。
なかなか際どいライン上を踊る作品で、色んな意味でドキドキさせられましたが、さて次回以降もあるとしてどこまで攻めるつもりなのか。やっぱりドキドキさせられるなあ、これ。

赤月カケヤ・作品感想

鬼畜先生の博愛教育 ★★★☆  



【鬼畜先生の博愛教育】 藤川 恵蔵/小森 くづゆ MF文庫J

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目には目を、歯には歯を。異能で荒れる学園を異能でねじ伏せ更生させる!

学園島タルタロス――ごくまれに異能を持つ者が産まれるようになった現代において、政府がそういった特殊な能力を持つ者たちを管理・教育するために、いくつもの異能学園をまとめて作り上げた巨大な教育施設である。そこに新任教師として赴任した神永カムイは、異能学生の集まる今の学園がいかに荒れているかを目の当たりにする。ただでさえ異能に対応できる教師が少ない上に、異能によるイジメや喧嘩、果ては異能を狙う外部の悪党たち――荒れ狂う学園を、かつて自らも異能学生として“異能バトル”に明け暮れていたカムイが、学園の問題と真っ向からぶつかり、豪快に力業で解決していくことに――!

鬼畜か? これ鬼畜かしら!? カムイ先生のこれって、脳筋って言うんじゃないの!?
わりと力任せに物事を解決してますけど、結果としてそうなっているだけで、ちゃんとその場その場では対応をよく吟味し思慮しているので何も考えずに暴力に訴えたり、という真似をしてるわけじゃないんですよね。
よく考えた結果、パワーに訴えているだけで。うん、脳筋ですね!
ただ、その能力で残虐ファイトとか……まあ多少蹂躙戦なんかはしていますけれど、必要以上に生徒たちを痛めつけたり傷つけているわけではないですし、そんな「こいつはひでえ」という有様を現出させているわけではないので、鬼畜呼ばわりはちょっと可哀想なんじゃないかな。
カムイ先生、ちゃんと理想をもって先生やろう、生徒時代にかまけていた能力バトルにはもうウツツを抜かさずに生徒を育て導いていこう、とちゃんと真っ当な若き情熱をたぎらせて先生になったんですよ。熱血教師じゃないですか。
鬼畜はむしろ、そんなカムイ先生を騙して呼び寄せ、「先生が一人もいない」という超絶ブラック環境な学校タルタロスに赴任させた白銀校長の方じゃないかな!?
いきなり新任教師、学校唯一の教師になる、である。
まあ授業の方はオンラインで外部から講師が画面を通じてやるので、学業に関してはそんなに問題ないみたいなんだけど。
白銀校長の目論見としては、カムイ先生に期待しているのは教師としてではなく、異能者として学園内の治安維持をはかるための常駐警備員だったんですよね。教師として理想に燃えるカムイ先生に対してそれは、結構な鬼畜だと思うんだけどなあ。
とはいえ、カムイ先生、おおらかというか鷹揚というかあんまり深く悩まない性質なのか、おおむね「まあいいや」という感じで流しちゃうんですよね。そして、構わず先生として日々起こる学園内のトラブルに首を突っ込んでいくのである。というか、向こうから舞い込んでくるんですけどね、トラブル。学校唯一の先生狙い撃ちで。
それは、同時に生徒たちが抱えているそれぞれの問題にも起因していて、カムイ先生も受け身にはならずに、積極的にその問題解決に生徒たちに踏み込んでいくのである。
まあ短気で手が早いカムイ先生であるからして、その解決方法は腕力!のケースが多いだけで。
難しい問題は力づくで、となってしまうだけで。知恵の輪を解くには引きちぎるのが一番早い、ってなってるだけで。
生徒思いの先生なんだよぉ、本当に。
勤務初日に十人以上の生徒に襲われて、返り討ちにボコボコの半殺しにしたりしていますが、本人は暴力反対なのです。力づくで無理やり問題を解決するのはよくない、とちゃんと思っているんです。だいたい力づくになってますけど。
むしろ、物騒な考え方をしているのは年の離れた幼馴染でこの学校の生徒でカムイ先生の助手みたいな役回りを自認している雪姫の方なんですよね。ヤンデレだろう、この娘。先生に振り向いてもらうとか好きになってもらうとかを既に通り越して、既にガチ嫁のつもりで侍ってますしね。思考の方向が超暴力的で、まず先生の邪魔するやつは処す、事情があろうと処す、という考え方の人ですし。やられたら百倍返しだ!(物理)の人なので、何気に先生が赴任してきて再会したときも超ボッチ状態でしたし。いや、ボッチというより孤高、敵も味方も関係なく周辺に人はおらず、という感じで。色んな意味で無敵の人、なんじゃないだろうかこれ。
わりとカムイ先生への当たりは普通でコミュニケーションにも難があるタイプには見えずにカースト上位の友達多そうなキャラに見えたのでしばらく気づきませんでしたけれど。
やばいね、うん。
ただ、振り返ってみるとこの作品のキャラって、大半がヤンデレ気質な気がするので雪姫も別にヤンデレが売りってわけじゃないんですよね。標準装備? 白銀校長も、雪姫曰くカムイ好きを拗らせきった上で、ペットを籠に閉じ込めって好きが高じすぎて弄り殺すタイプみたいですし、数々のトラブルを引き起こしてカムイ先生を犯罪者に仕立て上げて失職させようとしていた都城雅という少女も、正義感の拗らせすぎで相当に思い込みの激しいタイプでこれ惚れられるとヤバい系でしたし、さらのその背後で暗躍し、カムイ先生をトラブルの渦中に放り込んでいたライバルとも旧友とも言える人物も、カムイを憎んでいるんじゃなくてむしろ好きすぎてちょっかいかけるのが高じすぎてちょっとテロリズムになってるだけですし。だけって……。うん、十分ヤンデレしてますよね。
敵も味方も、ヒロインも総じて病んでる気がするんだけどなあ。例外はほんと、常識人の焔ちゃんだけなんじゃないだろうか。
こういう連中に囲まれているので、脳筋なカムイ先生だけど情熱は真っ当だし、生徒時代のやんちゃを反省して大人になった今は何とか立派な大人として生徒たちを導いてあげたい、という考え方は親身に接する姿は博愛とも言えるし、豪快でいい先生なんですよね。
まあ、若干頭のネジ外れている感もありますし。自分に対する敵意とか頓着しない、鈍感というか
精神が鉛という所もありますけど、行動論理もしっかりしてますし倫理観もそれなりにちゃんとした人ですし、鬼畜先生はほんと言い過ぎだと思いますよ。せめて脳筋先生で勘弁してあげてください。

そして、日向くんは確かに登場人物全員がこいつやべえ、というだけあってヤバかったです、いろんな意味でw
いやでも、完全に踏み外して思考回路もズレているようで、時々本質をズバッと突くような事も行っているので、夢の世界だけで生きているわけじゃなさそうなんですよね。悪い子ではないのだ、悪い子では。ヤバいけど。


藤川 恵蔵・作品感想

Re:ゼロから始める異世界生活 12 ★★★★   



【Re:ゼロから始める異世界生活 12】 長月 達平/大塚 真一郎  MF文庫J

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繰り返すたび、記憶と異なる展開を見せる『聖域』――四度目の機会を得たその場所で、スバルはついにあってはならない存在、『嫉妬の魔女』との邂逅を果たす。影に呑まれる集落、敵であるはずのガーフィールの助力、実験場と呼ばれた『聖域』の真実。――そして、白い終焉を迎える世界でスバルの覚悟を嘲笑う魔人。希望に裏切られ、真実に絶望し、それでも未来を諦められないスバルは魔女との再会を求めて墓所へ臨む。そこでスバルは、『ありうべからざる今』と対面し――。「――もう、立てなくなってしまいましたか? スバルくん」大人気WEB小説、期待と裏切りの第十二幕。――置き去りにした世界の、声を聞け。

情報量が、情報量が多い! 前のVS白鯨&大罪司教編は死に戻りの度にジリジリと前に進んでいた感じだけれど、この聖域編は死に戻りするたびに、次に死んでしまう展開がどんどんと早まってしまうという恐怖。状況を打開するどころか、前回の出来事を踏まえてそれをクリアしようと別の行動をとったらどんどん想定外の事が起こるわ、ガーフの行動が過激化するわ、エルザの襲撃が早まるわ、とむしろ対処の余裕がなくなっていく始末。これほんとどうするの?
という時に、困った時のエキドナさん。我らが強欲の魔女である。エキドナがばっちりスバルをサポートするよ! とばかりに手を差し伸べてくる。
そりゃあスバルからしたらはじめて自分の死に戻りを告げることが出来た相手である。心だって許すよなあ。
しかし、相手はやっぱり魔女なのだ。
とはいえ、今回の周回は収穫が多かったのも確か。情報量が多い! と叫んでしまうほど。
リューズの正体、朧気ながらもガーフの行動原理も見えてきて、ロズワールが隠していたものも。そして、何よりあの小さな図書室の精霊ベアトリスの圧倒的な孤独と絶望を、知るに至ったのだ。あの子の絶望と諦観の海に溺れながらも、幾度もスバルを助けてくれた優しさも。
こうしてみると、スバルの死に戻り周回というのは目の前の絶望をどう回避し乗り越えるのか、という点からスタートしつつ、それとはまた別に何度も繰り返す中でそれまで見えていなかった状況、周りの人たちが抱えている事情、幾つもの秘められた真実が解き明かされていき、その中からただ危機を、絶望を乗り越えるだけではなくて、達成スべき目標や命題というものを見出していくことに繋がっているんですね。
此度はまさに、聖域を脱出し大兎の襲来をなんとかし、館へのエルザの襲撃をなんとかし、という大前提の状況回避を図る中から、ガーフィールの心情に向き合うことになり、またこうしてベアトリスの解放をこそ命題とすることになる。
また、スバルがある意味神聖視して直視していなかった、エミリアという少女の脆さについても向き合わなければならなくなったんですね。エミリアも、あれだけボロボロになりながらいざ目の前にボロボロのスバルが現れたら、速攻で自分の精神状態とか後回しにしてスバルにかかりきりになっちゃうから、スバルの方も勘違いしちゃうんですよね。それはエミリアの強さであり優しさであるのだけれど、同時に不安定さでもあり無理やりつま先立ちで走り回っているようなものなのだろう。そんな心身を支えるために、どこかで誰かに頼っている。それがパックであり、彼がいなくなった今となってはどうしたってスバルになってしまっていた、と。
彼女が好きと言ってくれたはじめての瞬間が、あの有様というのはスバルにとっては無残としか言いようがないよなあ。そしてそのエミリアの姿は自ずと嫉妬の魔女と重なってしまうと。確かに、ああなったエミリアは、嫉妬の魔女に重なって見えるもの。

そして何より衝撃的だったのが、スバルが巻き込まれた第二の試練。そこで示されてしまった、彼の死に戻りがすべてリセットされた上での巻き戻し、ではない可能性。すなわち、スバルが死んでしまった世界はなかったことになるのではなく、そのまま続いている可能性が示されてしまったんですな。
「ありうべからざる今を見ろ」
これがスバルにとってどれだけ衝撃だったか。足元を崩されるような、まさに崩壊だったんじゃないだろうか。ある程度自分の死を前提として、捨て回という概念すら得て、苦しみと痛みに満ちた狂うような死を許容して、次に至る。その覚悟を、示された可能性は踏みにじるものだったのですから。
ただ、捨て回とか自分の死を軽んじる捉え方は弊害も生み出しはじめてたんですよね。ガーフが度々、自身の死を踏まえて動くスバルに凄まじい嫌悪感を見せていたように、それはまともな在り方ではなく狂気に足を踏み入れた在り方なのだ。どうせ死んでも生き返るから、という前提をガーフや他の人間は知らないから、狂気に見えるのだという見方も出来るかも知れないけれど、やっぱり異常ですしそうした人間を周りの人間はどうやったって忌避していってしまう。
またスバルの側も、どうせやり直すから、という風に今いる世界、時間軸を捉えていたら、そこで黒広げられる惨劇にも、身近な人間な死にもどんどんと鈍感になっていってしまう。実際、ロズワールに鋭く指摘されてるんですよね。目の前で起こったガーフとラムの死に、反応が鈍かったことを。それは、スバル自身が気づいていなかった精神の摩耗であり、死に対する鈍感でもあったわけだ。
でも、試練が見せた可能性は、そのスバルの鈍磨した世界の捉え方を根こそぎ吹き飛ばしたとも言える。
もうとてもじゃないけれど、スバルは安易に容易に自ら死を選ぶことは出来ないだろう。自分の死を前提とした選択を取れないだろう。そうして自分が死んだ後に残った者たちの、慟哭を絶望を見てしまった以上は、自らの手でそれらを作り出すことなんて選べるはずもなく……。
でもそれは、同時に今生きている時を絶対に諦めずに頑張り通す、という覚悟を定めるきっかけにもなれるはず。土台ごとふっ飛ばされたけれど、やはりこれはとてつもない大きな分岐点だったんだよなあ。

そんな価値観というか在り方から根こそぎふっ飛ばされ、絶望し、恐怖し、混乱し、支えすらも失って、途方に暮れるスバルに手を差し伸べる強欲の魔女エキドナ。
うん、まったくもって後ろ暗さを欠片も感じさせない、好意的で親身で自分の欲望をさらけ出しつつも相手に寄り添うとても優しい、支えとなる手。
唯一、死に戻りという地獄を告白できる相手であり、相談できる相手であり、心の苦しみを打ち明けられる相手である。スバルにとって、この異世界に転移してきて以来、無二の相手だったはず。
縋るよねえ、そりゃ差し伸べられた手を握ろうと思うよねえ。
実際、その態度は常に胡散臭くも好意的で、いっそ胡散臭さも親しみに繋がるような要素になってて、ちょっとこれを疑えというのは難しい。疑っていても、信用していなくても、それでもちょっと手を借りるくらいなら、と思ってしまえるエキドナの言動だったわけで、これはスバルを責められない。
だが魔女である。
一皮剥いても魔女である。ってか、質悪い。この異質さを、さらっと覆い隠して見せない事のできる狡猾さがまたたちが悪いこと極まりない。自分とスバルたちとでは何が異なっているのか、どれだけ理解と価値観が異なっているのか、本当の所まるでわかっていないくせに。それはベア子の扱い方についても、スバルが何に怒っていたかについてもさっぱりわかっていない事からも明らかなのに、その差異を、異質さを気づかせない振る舞いが出来るというのは、ほんとうにたちが悪いったらありゃしない。
此度は他の魔女たちが味方してくれたから、スバルはやべえ契約書にサインするのを回避できたわけですけれど、しかしその他の魔女たちもやっぱり魔女たちなわけで。
しかも状況は今の所なにも改善されていないどころか、死に至る過程。死の要因である大兎やエルザの出現理由がまだ全然わかってないんですよね。なんか今回すげえ色々と伏線とか真実とか秘密とかが明らかになってわかった気にさせられたものの、まだまだ解決クリア編へと移行するにはあまりにも何もかもが足りてなく集まっていない。そこにどんどんスバルを追い立て追い詰める展開ばかりが積み重なっていく。さあさあ、毎度ながらどこまでスバルを追い詰めきるのか。あいも変わらず半端ねえ。

シリーズ感想

異世界、襲来 02.王の帰還 ★★★☆   



【異世界、襲来 02.王の帰還】 丈月城/しらび  MF文庫J

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激化する対異世界革命的戦記。舞台は関西へ――

水上租界《那由多》に辿り着くもその矢先、分断された一行。ユウとアインは大魔術師クアルダルドの《ポータル》に囚われ、伊集院たちは《那由多》を統治している亡命エルフの理事会と接触していた。理事会と国防軍との間に生じる不穏な空気を感じながらも、久々の文化的な生活を満喫する伊集院たち。一方のユウとアインはクアルダルドの歓迎に戸惑いつつ脱出方法の模索を開始する。そんななか、ユウは三号を継承することに対して抵抗を感じていた。皆の希望となって戦うこと、ヒーローとしての資質に対して悩み始めた彼が出した答えは……。丈月城×しらびによるヒーローVS異世界の革命的戦記、怒濤の第2巻! 今、王は帰還する――。


正義のヒーローになんかなれない。国が崩壊してからこっち、人間の、大人の醜い行いに何度も痛い目を見て、嫌な目にあわされ、傷つき続けて。きっと彼は失望していたのだろう。
そんな嫌な人たちまで、なんで身を挺して守らなければならないのか。それは至極当然な気持ちだ。
ユウは今、アスラフレームという誰にも有無を言わせない圧倒的な力を持ってしまった。それを如何ようにも振るえるのが今の彼だ。そして、着装者3号という偶像に人々は期待を重ねヒーローが助けてくれると願い信じている。
その期待に応えることが嫌だからこそ、ユウはずっと不調だったんですよね。そこからどうやって折り合いをつけるのか。
丈月さんの描く物語の主人公は、みんな精神的にタフ、を通り越してどこかしらに突き抜けたメンタルを持つある種の超越者でもあり、自分の行動の芯の部分に不動の揺るぎないものを持っている完成した人間でも有りました。
だから、ユウが普通にこうして悩むというのはいっそ新鮮ですらあるんですよね。分不相応の力を手にしてしまったものの、当たり前の苦悩。
尤も、そこで等身大の少年らしい答えを出してしまうのではなく、ある種の突き抜けた着地点へと到達してしまうところが、さすがというべきなのでしょう。
仮面の英雄、という正体不明で個人の特定がかなわない存在であるからこそ、誰もが望む偶像になり得る。ユウ個人が受け入れられない理不尽も、着装者3号という英雄ならば呑み込んで守ることが出来る。
あれほどの力を得ながら、その力と自分とを分けて考えることにした、という事なのだろうか。その在り方は戦士というよりも、まさに王。個として威を発する存在ではなく、集の意を束ねる王様という座こそが、ユウが継承したものだ。
同じ王……門主たるダルヴァの大魔術師たちとはまったく正反対の在り方なのだろう。
それに着装者3号はユウが身に纏うとは言っても、ドローンなどの運用含めてアインや伊集院などの仲間たちのサポートがあってようやく万全の力を振るえる存在でもある。ユウ個人ではなく、仲間たちとともに着装者3号というヒーローを創り上げ、形成する。そこにはエルフの賢人たちの支援も必要で、国防軍の軍人たちや市民の協力だって必要だ。そうして、バラバラだった衆を束ねて一つの意志に基づく集団となっていく。
今までユウたちが遭遇してきた人々は、国や組織の統制を失い無秩序にバラバラに動き回り、末端の人たちに負担を押し付けながら、バラバラの方向を向いたまま小さく固まって結局千々に砕けて滅びようとしていた。
だからこそのとにかく皆を守るのだというヒーローであり、希望を集めることで皆を束ねる王という偶像だったのだろう。
かつてユースのサッカープレイヤーだったユウが、途中で野良サッカーの試合に参加するシーンがありましたけれど、そのサッカーのシーンこそが示唆でもあったのでしょうね。チームの指令塔として、その意図を理解する者も理解しない者も含めてまとめあげ、誘導していく姿。パス出しに徹するようで、最後に自分でゴールを決める戦術。チームで唯一ユウの意図を理解して支援してくれていた最大の味方であった人物が、現実ではユウたちの今を一番理解しておらずぶち壊そうと動いてる国防軍の佐久間だったというあたりなど。
何事も表裏一体。それをどう呑み込んでいくか。元々の資質ももちろんあったのでしょう。アインが見込んだのもそのあたりでしょうし。しかし、苦悩する少年に道筋をつけてくれたのは、なつきさんなんですよねえ。この傾奇者な女子高生、年齢的にも姉御になるのか。その明るい性格とは裏腹に、あっけらかんと喋ってくれますけれど国家崩壊からこっち彼女がくぐり抜けてきた修羅場は、ただの生き死にの場どころではなく、津波のように押し寄せてくる人間の悪意そのものを切払いながらのすさまじい経験だったはず。ゾンビ映画にたとえてますけれど、相手は生身の人間だったはずですしね。
それでこれだけ明るさと豪快さを保って、ユウたちに対してもどんと構えてくれているのですから、頼もしいなんてものじゃないんだよなあ。女子高生というキャラの枠組みから完全に中身が溢れかえってますよ。
彼女自身、もうヒーローそのままで偶像になりそうなものなんですけれど、敢えてこの娘は戦士の方向に突き進むのか。まさかこんなに早々に強化イベントが来るとは思いませんでしたけど。これ、実質ユウと同格なんですよね。ちょっと特化しすぎではあるんでしょうけど。
アスラフレームって、全部スーツタイプだと思ってたので、これは予想外だった。
アリアも何気に重要なポディションであることが発覚しましたし、アスラフレーム12体が全部揃うのそれほど遠くはないのだろうか。何体かは情報出てますし、最後は別の着装者も出てきましたし。
まあ、全部が味方ってわけじゃないのでしょうけど。一致団結して最強の敵にあたろうか、というシチュエーションで速攻嬉々として同属で潰し合いの内戦はじめたカンピオーネは忘れんぞw




終焉ノ花嫁 ★★★☆   



【終焉ノ花嫁】 綾里 けいし/村 カルキ  MF文庫J

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拘束を、隷属を、信頼を、貴方に――約束しよう、貴方のために全てを殺すと

突如出現した脅威【キヘイ】が世界を蹂躙して幾百年。人類は対抗手段として魔導学園・黄昏院を設立し、日夜戦闘が繰り返されていた。
運命の日、魔導研究科所属のカグロ・コウは【キヘイ】の死骸回収のため、とある遺跡に出向き、不運にもその命を散らした……はずだった。【キヘイ】の少女に救われるまでは――。
「初めまして、愛しき人よ――我が名は【白姫】。これより先、私は永遠に貴方と共にあります」
物語の中の騎士のように、御伽噺の中の姫のように、目覚めた少女は告げる。それが終わらない地獄の始まりになろうとも知らず――。
『異世界拷問姫』の綾里けいしが贈る、希望と絶望が織りなす、感動のダークファンタジー!

「キヘイ」なる存在と結ばれた特別な唯一無二の一組、というわけじゃないんだ、主人公と白姫のカップル。秘されているとは言え、丸々一クラス分の人数、キヘイと「結婚」した人間がいるわけね。それも、白姫のような喋れる人と変わらぬ姿のキヘイのみならず、魔獣型としか言いようのない甲型・乙型・特殊型のキヘイとも「結婚」している生徒たちが、二十数人。
なので、コウと白姫がただ二人きりの特別な存在として孤独な戦いを繰り広げるのではなく、ちゃんと同じ境遇の仲間たちと一緒に戦い、一緒に学校生活を送る学園モノとしての体も整っている。
同時に過酷な絶滅戦争の只中、その最前線を担う最強のクラスのメンバーとして、全員戦う覚悟と死ぬ覚悟が決まっている子たちでもあるのだ。だから、彼らは穏やかで朗らかに日常を謳歌し、その上で戦うことを厭わない。その末に死ぬことすらも受け入れている。
そんな仲間たちなので、白姫と出会いこのクラスに配されるまで、周囲から白面と侮蔑されるほど感情の動きが鈍い主人公でも全然浮かずに馴染んでいる。彼をありのまま受け入れる彼らキヘイとの婚姻者だけで編成された特殊部隊「百鬼夜行」の面々の精神性は、やはり普通の生徒たちからは逸脱しているのだろう。主人公カグロ・コウのように。だからこそ、仲間意識もまた強く結びついているのだろうけど。
コウとパーティーを組む面々もまた個性的なんですよね。ミレイさんだけは、個性的の方向性が一人だけ明後日の方向にいっちゃってる気もしますけれど、彼らとは日々の訓練と日常生活を共に過ごすうちに掛け替えのない友人となっていくのである。みんなの兄ちゃんという感じのヒカミと、ミレイのなんか幼馴染み感のある距離感は、本人たちは全くその気ないようなのだけれど傍から見てると間に入れない雰囲気があって、ちょっとこれどうにかなるんじゃないかしらと期待してしまうくらいでして。
ただ、全体的に話の展開に余裕がなくてイベントがとにかくギュウギュウに詰め込まれてしまっていた感がある。コウと百鬼夜行のクラスメイトたち、特にヒカミたちと交流を深めて得難い友人たちとなっていく描写こそ丁寧に描かれていたものの、その中の個人個人と人間関係を深めていくだけの猶予はなかったので、ほとんど掘り下げるまでいかなかったんですよね。ヤグルマくんが変な道に目覚めそうになってたり、と気になる要素はタップリあったのに。
それどころか、肝心の白姫との描写もコウと二人の関係の深さを実感として感じられるだけの積み重ねが、ちと物足りなかった気がする。ほぼはじめから、お互いが絶対という密度の濃い所からスタートしていて、それは全然構わないのだけれどその関係の深さを色付けする様々なエピソードを体験する間もなく、クライマックスに突入してしまったような。
なので、二人の関係を核として物語の根幹に横たわる真実や、様々な謎が怒涛のように明らかになり、それまでの前提などがひっくり返った時も、ひっくり返す台の上に乗った事実に重みを感じるだけの積み重ねが少なかったので、衝撃が軽く済んでしまった所がある。永遠のような地獄、もその地獄の辛さを痛切に感じるまでの削れていく失う痛みが、軽かったんですよね。
その意味では、この内容を一巻に詰め込んだのはちょっとバタバタしてしまった感があります。もしこれ、3巻とか5巻とかの重ねを経て、それだけ人間関係に想いを重ねてしまっていたら、衝撃にのた打ち回るはめになっていたかも。
ササエと紅姫とか一番割食って、ほとんど最強という以外どういうキャラかも見せて貰えなかったし。紅姫チャンなんぞ、ほとんど喋らんかったもんなあ。ちなみに、超寡黙なはずのササエはわりと喋ってたぞw
とはいえ、ここまでを全部プロローグにして、本格的にスタートするのは次から、というのであればとんでもないところまで突っ走って行きそうなだけに、まだまだ期待はしていきたい。
すでに2巻も9月に準備されているようですし。


今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。2.先輩、ふたりで楽しい思い出つくりましょう! ★★★☆   



【今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。2.先輩、ふたりで楽しい思い出つくりましょう! 】 涼暮 皐/あやみ MF文庫J

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天ヶ瀬まなつ。同じ学校の一年生で、幼馴染の妹・双原灯火のクラスメイトでもある。同級生曰く、天真爛漫な完璧美少女。上級生曰く、守ってあげたくなる正統派。そして「うちの高校で彼女にしたい後輩No.1」でもある。そんな学校の人気者である彼女と、学校の不人気者である僕は恋人同士というわけだ。つくづく幸せ者だな。
「いおりん先輩! 遊びに行きましょう! 楽しみにしてたんですからっ!」
つまりは僕は、僕だけが知っている。いつも明るく振る舞う彼女がふとした瞬間に見せる儚げな表情や、少し油断してぼーっとしている瞬間を。望まれる「美少女」を演じるのが上手い、素の彼女の魅力は僕にしか見せないことも。けれど――今の僕は、何か大事なことを忘れてないだろうか。

前回のお話の感想で、自分はこんな風に〆たんですよ。
それは辛いけれど、酷い話かも知れないけれど、きっと悪くないことだったのだ。
悪くないということは多分、良かったね、で良いんだよ、と。これはだから、そんなお話。
そしたらさ、この2巻は
「これっぽっちも良いわけあるか、このボケがーー!!」
とばかりに新ヒロイン・天ヶ瀬まなつが飛び蹴り食らわしに来たお話だった。いや本当に。
まあそれがわかるのは終盤も終盤、最後も最後なわけですけれど。
前回の灯火もそうでしたけれど、そもそもこれって彼女達との交流から、ヒロインの抱えている思惑や意図を読み取り、その真意を解き明かしていくという構図になっているんですよね。
そうやって彼女達の秘めたる目的を暴いてようやく、彼女達と対峙する事が叶うようになっている。
灯火にしてもまなつにしても、本来なら伊織にはそれを知られぬまま事態が完結してしまえば目的達成だったのに、この男ときたら目ざとく違和感に気づいてえげつないくらいにグイグイとこっちの懐に踏み込んでくる。彼女達としては目的の内容からしてどうしても伊織とは絡み続けないといけないわけで、伊織の関与しない所で勝手にすすめるというわけにはいかないから、攻めているようで実際は無闇矢鱈に距離詰められて仰け反って顔赤くしてアップアップになりながら、それでもワタワタと手を振り回してリミットまで押し切ろう、と必死こいて頑張ってるという状況で。
なんだか可哀想になってくるな。
でもまあ、余計と言えば余計な茶々を伊織に入れようとしてしまったのは彼女達の方なのだからこれは自業自得の部類になるのか。
飛び蹴り食らわしにきたまなつも、その蹴り足を掴まれて逆にぶん回されて放り投げられるような末路を辿ってしまったわけですし。
うん、それ自爆特攻でしたね。目にぐるぐる渦巻き浮かべながらの。だから、灯火といいどうしてこの作品のヒロインはそんな自爆特攻してくるんだよ。
献身と言えば献身なんだろうけれど。自分自身を引き換えにして代償にして、というと美しいのかもしれないけれど、なぜか彼女達の場合そういう綺麗で儚い絵図じゃなくて、腹にダイナマイト巻きつけて、死んだらーとドタバタ突っ込んでくるように見えてしまう不思議。
そしてそれを容赦なく叩き潰してゲシゲシと踏みつける伊織くんの図、という感じ。いや、良いこと言って彼女達の献身を受け止めつつ、自分を犠牲にするのは否定して、という定番の形だとは思うのだけれど。
うん、これも灯火がこの巻に至って、どうしようもないレベルのクソ雑魚ヒロインになってしまったのが悪いのだ、うん。お陰で、この作品のヒロインはゲシゲシと踏みつけると嬉しそうにゲヘゲヘ笑いそう、というイメージが湧いてしまった。ぞんざいに扱えば扱うほどクソ雑魚キャラ的に輝く、みたいな。まなつさん、完全に巻き込まれである。
やー、でも伊織ってSっ気の塊風味なところあるので、ヒロインの思惑を挫く際の説得のやり方が散々弄り倒してもう勘弁してくださいと屈した所に、盛大に飴くれまくって甘い言葉囁いて陥落させる、みたいな……こいつ完全にジゴロだよな、的なやり方するので、彼女らMっ気引っ張り出されたあとで調教されましたー、みたいなイメージががが。元々、灯火にしてもまなつにしても尽くす系を重くして拗らせて、自爆特攻!というアレな感じで、ある意味受けの文化圏の人たちでしたし。
そして、ついには釣った魚には餌は絶対やらんとばかりに放置プレイでのたうち回る前回ヒロインの灯火ちゃん。
この娘、確か前回では献身的で健気の局地みたいなヒロインムーヴしてたはずで、凄くちゃんとメインヒロインしてた覚えがあるのですけれど、記憶の彼方に消えてしまいましたね。凄いぞ、灯火ちゃん。素のキャラだけで、かつてヒロインであった歴史を星の涙なしで消し飛ばしに掛かってるぞ。
まなつはまだイイ性格している方なので、次回灯火とおなじ末路を辿るハメにはならないと思うのだけれど。灯火はこのままクソザコ系を前面に押し出していくんだろうか。ちょっと見事なくらいクソザコキャラがハマってしまって、ここまでハマると本気でヒロインとして大丈夫かと心配になるのですけれど。

この二人に比べると、3人目は強度高そうだがさて、肝心の星の涙に纏わる謎はまなつの話を介在してさらに複雑化してきた感がある。時系列もちょっと錯綜している部分があるし、まだ記憶から消されている所が大きい部分を占めてるんでしょうね、これ。次回はそこに大きく踏み込んでいく話になりそう。
しかし、てっきり自分、まなつもタイトルの「幼馴染の妹」の範疇に入ってるのかと穿ってみていたのですが、さすがに違ったのか。病室にいる認識できない親友、のお見舞いにまなつ連れて行ったの、最初は実は関係者だった、という顛末を予想していたので。実際は全く違う形で彼女をお見舞いに連れて行った事が別の因果に絡むことになるのですが。
いやそうなると、次回の娘がやっぱり「幼馴染の妹」という可能性も無きにしもあらずかしら。


異世界、襲来 01 プロジェクト・リバース ★★★☆   



【異世界、襲来 01 プロジェクト・リバース】 丈月城/しらび MF文庫J

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世界を救うのは、いつだってヒーローだ。

突如、現代社会に現れたポータルから、異世界文明は人類への侵攻を開始。ドラゴンが飛来し、大魔術師が襲撃する世界へと変貌した。中学生の一之瀬ユウは国家プロジェクトの幼年従事者として、国防軍所轄のナノテクノロジー研究所に徴用される。彼は運命の導きにより、かつて国防の要であった人型戦闘機械『アスラフレーム三号』の継承者として選ばれる。それは『着装者三号』の愛称で親しまれ、日本に平和をもたらす救世主としてグッズ化、映像化もされるなど、社会現象になるほどの人気だった。大人も子供も憧れた彼はまさしく、ヒーローだった――。丈月城×しらびによる、ヒーローVS異世界の革命的戦記、ここに開戦!

こりゃあもう、アポカリプス・デイ……「黙示録の日」のその後だ。
異世界文明の襲来によって崩壊した現代地球文明。描かれているのはとりあえず日本のみだけれど、国防軍は組織だった反抗が粉砕され、首都圏は水没。政府は九州に疎開したものの、統治能力を失い、他の本土大都市も大規模魔術によって壊滅。社会体制は崩壊し、日本国内で難民が発生。もはや治安は守られず、異世界から送り込まれてくる魔獣たちの襲撃に怯えながら寄り集まって暮らす市民たちからはモラルは消え去り、暴力で弱い人々を従える組織構図が自然とできあがっている。
荒廃した未来なんて世紀末絵図ではない。現在が、現代が、今こうして日常を失い荒れ果てていくその最中なのだ。
ゾンビパニックなんかでも起こりがちな人心の荒廃だけれど、ニンゲンの手ではどうしようもない上位存在からの徹底した攻撃、文明そのものの破壊という意味ではまさに黙示録の日なんですよね。

そんな絶望的な天意に抗えるのは、亡命者であるエルフたちが持ち込んだ技術などによってもたらされた「アスラフレーム」。その装着者のみ。
人形戦闘機械というけれど、乗り込むんじゃなくて着込むようなタイプなんですよね。そして見た目はまさに仮面のヒーロー。黄色いマフラーが聖骸布として意のままに動くどころか自律して動く武器であり防具というあたりも、まさに仮面のヒーローなんだけど……。
ここまで社会体制がボロボロにされてしまった状態から果たして挽回できるんだろうか。
偶然なのか運命なのか、前任者の戦死から稼働する事なく沈黙を続けていたアスラフレーム三号と、眠らされていたエルフの姫のクローンとに認められ、新たな装着者となった少年兵の一之瀬ユウ。中学生の彼は、決して才気煥発とした意気軒昂な主人公というわけではないのだけれど、年齢の割にクレバーで強かなんですよね。こういうさっぱりとした粘り強さを感じられる主人公は、丈月さんらしい。同時に、この絶望的な状況に心折れないソルジャーとしての気質の持ち主でもあると言えるし、絶望的な状況に達観し割り切っているとも見て取れる。しかし捨て鉢になってるわけじゃないんですよね、いざというときの覚悟を決めているとは言っても。
中学生にここまでの覚悟をさせてしまうほどの、どうしようもない状況であり、それまで彼とその友人である伊集院が経験してきた世界が亡びていく日常が鏖殺されていく現実の過酷さ、凄惨さがそれほどのものだった、とも言えるのでしょう。
果たして、たった一人のヒーローと僅かな数の仲間たちとで、この終末極まった世界を救うことなんて出来るのだろうか。異世界側も、何気に少数の超強力な魔術師のもとに侵攻を行っているみたいなので、首刈り戦術を行っていけばワンチャンあり、なのかもしれないけれど。
仮面のヒーローと言っても、パンチやキックで怪人をぶっ飛ばすどころじゃなく、殆ど戦略兵器なみの強力さを誇るだけに。まあ敵側も同レベル以上に単体で戦略兵器そのものなんですが。
アスラフレームの話題からして、少なくともあと二体は3号と同レベルで似たコンセプトの機体みたいなので仲間か味方になりそうではあるのですけれど。

尤も、この一巻に関しては強大な敵と戦うよりも前に、モラルが崩壊してしまった同じ日本人たち相手にどうやって日々を無事にやり過ごし、また生き残るかという方にエネルギーが費やされていた気がします。それだけ、荒廃した現状を噛み締められたとも言えたのですけれど。
同時に、そんな世界でユウと伊集院、研究所仲間のハーフエルフのアリアとエルフクローンのアインの四人で、サバイバルしながら逞しくなんだかんだと賑やかに生きていく姿がなんとも心惹かれるものがありました。
この四人の関係、ここにあとで波多野なつきという姉御が加わるのですが、この仲間たちの一蓮托生で運命共同体でこの亡びかかった世界で一緒に生きていこうというパーティーとも家族とも取れる関係は、なんか凄く好みでした。不思議と誰かがリーダーシップとるわけではなく、みんなで色んな意見出し合いながら方針決め合うのとか、下手すればグダグダになるし人間関係も難しくなるパターンもあるのかもしれませんけれど、この子たちはある意味現状や生き死にに腹が据わっている分、結束が強く自然なんですよね。
彼らのこの黙示録後の世界での旅は、あまりに絶望的なんですけれど同時に生きるために前に前にぐんぐんと歩いていく冒険譚でもあって、うんなんか好きだったなあ。
とはいえ、ここからは本格的に異世界側の勢力との対決になっていくのでしょうけれど。えらいところで次回に続く、となってしまっているけれど、2巻は速攻来月刊行みたいなので待たされずに済みそう。

聖剣学院の魔剣使い 4 ★★★☆   



【聖剣学院の魔剣使い 4】 志瑞祐/遠坂 あさぎ MF文庫J

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見た目は子供、中身は魔王なお姉さん達との学園ソードファンタジー第4弾!
第〇三戦術都市での任務から帰還した第十八小隊。〈六英雄〉の聖女を滅ぼし、女神ロゼリアに託された〈魔剣〉の使命を思い出した最強魔王レオニスは、決意を新たに魔王軍の再編を進めていた。そんな中、第〇六戦術都市〈アレクサンドラ〉を迎え、〈聖剣学院〉では大規模な学園祭が催されることとなる。あわただしくコスプレ喫茶の準備に追われるレオニスたち、「レオ君も着るのよ、きっと可愛いと思うわ」「なんでだ!?」アルバイトにいそしむシャーリ、「魔王様、おいしいお菓子が焼けました!」。だが、祝祭に沸く学院都市に、一〇〇〇年の時を超え、永久凍土で発掘された〈魔王〉が運び込まれようとしていた!

セリアさんのコスプレがエチエチすぎる! なに、この人こんなわがままボディだったの?
あの格好で接客に出ようとして、誰も止めなかったんだろうか。レギーナもエルフィーナさんもむしろ積極的にやらせそうだし、無理かー。
折角の学園祭でしたし、お化け屋敷をモチーフにした喫茶店というイベントも元々の寮の幽霊屋敷じみた雰囲気に、リーセリアが吸血女王となった影響で闇の眷属!(カラス)がわんさと集まっているという状況もあって、実に味わいのある出来栄えになってたと思うので、その辺のイベントもうちょっとスポットを当ててやってくれても良かったと思うんですけどね。
レオくんの女装というド級の展開もあったわけですし。
というか、お姉様方に押し負けて女装を受け入れちゃうレオくん。そういう所ですよ! ほんと、そういう所が精神面までショタ化してると言われても仕方ない所なんですからね。あらすじの見た目は子供、中身は魔王というフレーズ相当怪しくなってきてる気がするんですがw
中身も子供になってるっぽくなってきてるから。
冒頭の、配下のスケルトンたちに勲章を与えるシーンも、お子様が手作りの勲章作ってご満悦、というふうにしか見えないし。セリアさんには骨の玩具と勘違いされてるしw
強制的にさられた女装は、ついにはもうこんな可愛いんだから女の子でもいいじゃない、とまで言われる始末。いやもうほんと、見てくれも可愛いんだけれど中身も背伸びしたショタにしか見えなくて、中から可愛いw

眷属のメイドさんは食べ歩きを堪能しまくっているし、黒鉄モフモフ丸はトリマーに連れてって貰って毛並みフサーとやってご満悦だし、ほんと魔王軍の方々現世堪能しまくってますねー。
というか、毎回堪能しかしてないし。
と、思ってたらメイドさんのシャーリーが今回はちゃんとお仕事していました。今更といえば今更なのですけれど、魔王様を猫可愛がりするセリアに段々と嫉妬を見せるようになるシャーリーなんですが……このメイドさんもいつの間にかショタに毒され出してないんですかね? 過去のアンデットキングで見た目もドクロっぽかったレオニスには、シャーリーも尊崇も敬愛も思慕もあったとしてもセリアと手を繋ぐショタに羨ましいと裾を噛んだり、自分の作ったお菓子を食べてもらおうと頑張ったり、という方向性は見せなかっただろうし。

さて話の本筋はというと、進んでいるのかいないのか。かつての勇者の仲間たちの成れの果てがヴォイドに冒された状態で出現したり、という展開が続いていた中で今度はついにレオニスと同輩の眠れる魔王が同じようにヴォイドに冒されて、復活する。と、新しいパターンではあるのですけれど、前までとそれほど変わらないパターンとも言えるわけで。
ただ、ヴォイドの正体は未だわからずもそれを利用して侵食させた勇者の仲間たちや魔王を復活させていたのは件のネファケスで確定しましたし、まだその目的も定かではないものの、女神関連ということは明らかになってきました。もうちょっと明確に新事実、新展開というのがあったらシャキシャキしてたんでしょうけれど。
今の所まだレオニスの存在は誰にもバレていない、というアドバンテージは保持していますし、ショタ化して弱体化しているとはいえまだまだ魔王としての力は顕在で、他の追随を許していないようなので果たして同格の敵はいつ出てくるのか。というか、いったい誰にちょっかい出しているのか気づいたネファリスが、どんなザマァを見せてくれるのかが地味に楽しみでもあるのですが。

そして竜王、なんか名前が女性っぽい、という時点でうん、この展開はわかってたw


探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる ★★★★★   



【探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂/悠理 なゆた MF文庫J

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私ならその事件・疑問・憂鬱、秒で解決だね——。可愛くて、どこか抜けていて、無邪気でキレッキレな山田さんと、思考フル回転 《本格派》学園ミステリーラブコメ!
新学期——俺は失敗した。
親の仕事が探偵だと口走ってしまったせいで、クラスメートから相談が持ち込まれるようになったのだ。絶版した小説の犯人当て、美術部で振るわれたナイフの謎、面倒なことになったと頭を抱える俺だったが−−

「それさ、そもそも事件じゃないね〜」
「多面的な考え方も取り入れたらどう? 戸村君」

何があっても山田姉妹は平常運転、鋭い推理でスパッと解決していく。最初は気に食わなかったけど、本気で推理する彼女たちは今では尊敬の対象だ。……が、話すときの距離、近すぎない!? 熱くなるのは分かるけど、これ完全に狙ってるよね!?
山田さんたちと俺の少し甘めな、本格派学園ミステリー。

もう好きーーーッ!!

やだなあもう、やっぱり自分て玩具堂さんのお話大好きですわ。もう好きすぎて、途中から心がピョンピョンしだして終盤読みながらゴロゴロ転がりまわってしまった。
相変わらずこの作者さんは情景描写が神がかっている。戸村くんを挟んで両隣に座った山田雨恵と山田雪音。この三人が並んで色んなやり取りをしている光景が、もうありありと目に浮かんでくるのです。ただ話しているだけじゃなくて、特に雨恵なんだけどフリーダムな性格のせいか動きも多いんですよね。机の上に寝転がるわ、靴下脱いで素足でブラブラしてるわ。足の指をくにくにと動かしながらあれこれ考えている様子がまた、なんか好きなんですよねえ。戸村くん、めっちゃ見てるし。爪が小さくて真珠みたいだ、とか思っちゃってるのって相当ガン見してますよね。
こんな風に細かい仕草まで自然な流れで丁寧に描写されるので、ただおしゃべりしているシーンでも誰かしらが情景の中で動いていて、言葉として発せられる以外の部分もそんな仕草や表情から雄弁に語られるのだ。誰かの発した台詞で、聞いていた人の反応から様々な心情が物語られる。
情景描写が、そのまま心理描写へと連結されているのだ。キャラクターの心の動きが、言葉で語られる以上にその人の仕草や表情、声の調子は僅かな反応などからさらに積み重ねられていく。其上で、言葉でもちゃんと心の動きをとても繊細に描いてくれるんですね。

ただ席が隣だった、いや何だかんだ仲の良い双子に挟まれて居心地の悪い思いをしていた大人しそうな戸村くんに、果たしてあの性格正反対の双子がどんな風に興味を持ち、彼といっしょに「探偵」をするのを楽しく感じるようになっていったのか。
このクラスになって初めて会って、話すのも初めてだった男の子、どんな風に仲良くなっていき、段々と彼の存在が自分たち双子の間で無視できないものになっていき、ちょっとした「特別」になっていくのか。
この過程がまた一つ一つ些細な積み重ねなんだけれど、その些細な影響、変化が双子の間で反復していくうちに大きくなっていくんですね。二人一緒、ではなく片方片方にそれぞれちょっとした揺らぎが起こることで相手の様子が気になり、無視できなくなり、段々と揺れ幅が広がっていく。これがほんと素晴らしくてねえ。
この双子、性格が正反対なのです。片や雨恵は天才肌の自由人。博識で真面目だけど人付き合いが不器用な雪音。仲の良い二人だけれど、同時にいつも喧嘩ばかりしていて雪の方は姉にコンプレックスめいたものを抱いているし、雨も不器用な妹のことを気にかけて、同時に何だかんだと自分に内向きだけど充実した高校生活を送っている雪のことを羨んでいる。
そんな二人の間に文字通り割って入ってきた戸村くん。いや、彼に構い出したのは雨であり、それに引っ張られる形で間にいる戸村くんに戸惑いながらも関わりだした雪であって、戸村くんは困ってばかりだったのだけれど、無理やり押し付けられた探偵仕事を推理という形だけれど助けて貰った事もあって、無視するでも拒絶するでもなく、二人の間になんとなくすっぽりと収まる事になる。
単に、席が二人の間、というだけではない本当の意味で二人に挟まれた関係になっていくんですね。それは二人の間に割って入るということでもあり、二人の姉妹の間を繋ぐということにもなるのである。
この戸村くん、お父さんが探偵で、それも名探偵とかじゃなく本当にただの興信所の運営者という意味での現実的な探偵であって、彼自身別に推理好きとか頭がいいとかじゃなく、傍目に見てるとほんとにただの何の特技もない普通の少年、に見えるんですよね。
でも実は……というわけでもなく、いやもう本当に普通、普通の子、のはずなんだけれど……うん、ちょっとおもしろいなあ。雨は、悪意に対する悪意の持ち主、なんて表現をしていたけれど、観察眼が特に人間関係での相手に対する心情、の部分で聡いというか察しがいいんですよね。マリーの彼氏への気持ち然り。美術部での友人関係の複雑な感情の在処然り。そして、実はなかなか難しいところのある山田姉妹のお互いに対する感情然り。
そういう察しの良さは、相手への気遣いにも向いていて、踏み込むべき所と無造作に手を突っ込んでは行けない所をちゃんとわかっているんですね。双子が喧嘩した時、雪の所に話しに行った時。美術部の人間関係に不用意に言及しようとした雪をとっさに止めた時、などにそれが伺えるのだけれど。
その理由というか根源に、上の姉が父親と喧嘩して家を飛び出し、家庭が軽い家庭崩壊になってしまった時の後悔があるようなのだけれど
決してコミュ力が高い、という風には見えないのだけれど、一番肝心な時に間違えずに相手を慮れる本当の優しさがある。山田姉妹って、方向は違うけどかなり難しい性格していて、自分たち二人のテリトリーに余人を踏み込ませる事をしないように見えるんですよね。雪はまずもって他人を寄せ付けられないし、雨は雨で軽く広く付き合いは気安く誰とでも仲良く出来るけど、本当の意味で踏み込んだ関係は煩わしがるタイプ。そんな二人の間に、わずか数週間でスルスルと入り込んでしまった。いや、戸村くん当人からすると入り込んだなんてもんじゃなく、二人に絡まれたくらいの感覚なんだろうけど、終わってみれば二人のこと、名字じゃなく名前で呼ぶ関係になってるんですもんね。
それに、最後のエピソード。姉妹が彼にパンダのアクセをプレゼントしようという話になったの、あれ双子が自分たちの「守護獣」を二人で揃える事が幼い頃からのエピソードからして、本当に特別なんですよね。これに関しては親すら踏み込ませない、二人の特別だったと思うんですよ。
それが、戸村くんの「守護獣」を選んで二人でプレゼントすることにした。これ、双子本人たちも気づいているとは思わないのだけれど、明確な特別なんですよね。双子を挟んで間に戸村くん。これが単なる教室の席順、では収まらなくなった象徴のようにも思うんですよねえ。

さて、本筋である日常ミステリー。作中では3つの事件、いや事件は最後の一つだけで前の2つは「探偵」に対する調査依頼というべき内容だったのですけれど、これがまた3つともべらぼうに面白かった。親が探偵やってます、と初クラスでの自己紹介で口走ってしまったが故に、無理やり頼まれてしまった依頼であり、以降の二人は最初の一件の評判によって持ち込まれた案件だったのですが。
実際の探偵業の後ろ暗さと後味の悪さを知っている戸村くんの心情として、謎を解くことで誰かに不幸になってほしくない、という思いがあり、それが彼に探偵をすることに気が進まないという思いを抱かせていたのですけれど、この3つの案件はどれも……2つ目はちょっと違うか、でもどれも謎を解くことによって誰かの不幸せを遠ざけられ、誰もが笑顔になれる、というエピソードだったんですよね。
なので、推理し謎を解く、という結果がどれも清々しくて、素直にああ良かったなあ、と思える形で終わっているのです。それが、双子と戸村くんに、探偵も悪くない、楽しいね、という共通の思いを抱かせ、より三人のつながりを深めていく所以にもなっていくのです。
発想の面白さとしては、やはり二番目の事件でしょう。表紙カバーだけ残された既に絶版となったライトノベルのミステリー作品。シリーズものの第五巻。それを中身を読まずに(何しろ中身の本がない)、カバーの登場人物紹介と作者の執筆傾向という情報だけでこの巻の事件の犯人とその動機を推理しろ、という内容。いかにも無茶振りなんだけれど、三人寄れば文殊の知恵、のごとく三人でああだこうだ話しているうちに推理が繋がっていく、この展開は面白かった。
この三人、戸村くんが方向性を見出し、雪が知識を駆使して情報を引き出し整理し、揃った材料から雨が閃く、という結構ちゃんとした分担になっているのがまた興味深い。
3つ目の事件は、彼ら三人の前の席の三原さんが依頼してくるのだけれど、前の席に座っている、ということで三原さん、この三人の会話をよく聞いていたから、美術部の事件の解決を彼らに依頼してきたそうなんだけれど、この娘が戸村くんと山田姉妹のこと、ファンなんだ、と微笑むシーン、すっごく分かり味だったんですよね。そうだよね、この三人の会話聞いてたら、好きになっちゃうよねえ。
ちなみに、この三原さんもえらい属性過多というか個性的な娘で、最後のエピソードだけの登場だったにも関わらず、存在感やたらパなかったです。最初にチラッと、自己紹介の時にこのクラス個性的なやつが想像以上に多かった、と印象が語られてたけれど、三原さんみたいなのがわんさかといるのか、もしかしてw

まあそんなクラスの中でも、この戸村くんと山田姉妹はトップクラスに個性的なトリオになっちゃってると思いますけど。あれ、三人の間では雑談してたらなんか真相が見えた、という感じで最初の事件も二番目の事件もあんまり当人たちは深く考えてないかもしれないけど、依頼した側からすると相談した次の日に、あっさりと真相を掴んでくるわ、本の中身のないミステリーの犯人と動機まで僅かな情報から探り当ててくるわ、なにこの人たちガチの名探偵じゃね!? と仰天しますわなあ。
実際、マリーにしても図書館の彼にしても度肝抜かれてましたし。客観的に見ても、訳解んないですよこの三人w

さて、かつて幼い頃に親から貰ったパンダのぬいぐるみは、双子ふたりの取り合いでついにはボロボロになって壊れてしまったそうで。さあ、新しいパンダは、もし双子ふたりの取り合いになったら耐えられるのか。
「ま……ぬいぐるみよりは丈夫でしょ」

なかなか不穏なことをおっしゃいますなあ、雨恵さんw

この三人の顛末、まだはじまったばかりで関係もまた本当の意味で「三人」になったばかり。これがどんな風に転がっていくのか、もう見たくて見たくて仕方ない。
名前で呼べと命令しながら、実際呼ばれると擽ったさに悶てしまう雨恵に、あとになって姉に対抗しようとして挫折して、「雪さん」と呼ばれるようになってやっぱり悶てる雪音。
このあたりの名前呼び関係の話はもうほんと甘酸っぱいというか擽ったいというか、たまらんかった! 名前で呼ぶだけでこれですよ、これ以降どうなるかもうたまらんじゃないですか。

あとがきでは、二巻以降はまだ決まっていないそうですが、絶対見たいです、読みたいですヨ!
そう叫びたくるくらい、素晴らしく面白く最高に素敵なお話でした。これくらい心がピョンピョンしてしまう物語は、滅多ないんですよぅ!

玩具堂・作品感想

超高度かわいい諜報戦 ~とっても奥手な黒姫さん~ ★★★★☆  



【超高度かわいい諜報戦 ~とっても奥手な黒姫さん~】 方波見咲/ろるあ MF文庫J

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"一見普通"の高校生による「だまし愛」ラブコメ、開幕!

「凡田君と、もっと仲良くなりたいの!」
高校生にして秘密諜報機関を指揮する天才少女、橘黒姫は初恋の真っ最中。好きな人のために組織の力を濫用し、超高度な諜報技術で接触を図る。
「……誰かに監視されている?」
それに勘づいたのは初恋相手・凡田純一。一見影の薄い、平凡な男子生徒の彼は、実はある秘密を持っていて……?
「私が……凡田君と友達になるの!?」
そんな中、組織の命令で凡田と接触することになった暗殺少女・芹沢明希星。友達の作り方なんて知らない彼女の行動は、とんでもない波乱を巻き起こす!
高校生の三角関係に裏社会の命運が揺るがされていく超本格学園スパイ・ラブコメ、開幕。

わははは、なんだこれなんだこれ、滅茶苦茶面白い!!
あらすじでは「だまし愛」とか銘打たれてますけれど、実際の所誰も関係者意図的に騙してはいないんですよね。勝手に誤解しているだけで。いや、これ正確に見ると誤解らしい誤解や勘違いもしていないんじゃないか?
とにかく、錯綜具合が神がかってるんですよね。表向きの立場と裏の本性、そのオモテウラが本来の意図と違った形で噛み合ってしまい、お互い誤解したまま進行してしまうラブコメ、というのはこれまでも幾つか見たことがありましたし、それもお互いの言動が正確には伝わってないのに噛み合っちゃってる、という形態が大変面白かったのですけれど、本作はそういう凸と凹がハマったような展開からさらにこねくり回して捻られてるんですよね。
さながらルービックキューブだろうか。てんでバラバラの色のパネルが、ガチャガチャと回していたら綺麗に色が揃って完成してしまったような、なんでそうなるの!? と思わず唖然としてしまうような芸術的なまでの本来誰も意図していない形での無茶苦茶な錯綜からの綺麗な噛み合い方だったわけですよ。

メインヒロインな黒姫ちゃん、ラブコメするつもりで諜報戦を仕掛けてたら、対象である凡田が本物の裏側で指名手配されている重要人物だったがために、黒姫ちゃんも誰も知らない間に本格的な諜報戦がはじまっていた!
でも、その諜報戦を展開するために用いられた要員である明希星が凡田に近づく選んだ手段がラブコメ! 
なので傍目にはどう見ても甘酸っぱいラブコメがはじまってしまい、最初から一貫してラブコメのつもりな黒姫ちゃんは目の前で繰り広げられるラブコメに大パニック(明希星が自分の組織の手勢と知らないので!)。
しかし凡田も明希星も相手の正体も不明なまま、それぞれ必死に片や正体を隠すため、片や任務のために諜報戦に勤しんでいるだけ。
だったのだけれど、凡田も明希星も相手をエージェントではなく、ただの素人と誤解してしまったがために、ラブコメに見える諜報戦を仕掛けているようで実際にラブコメみたいになってしまう。
が、ここで凡田の正体が黒姫にも明希星にもバレてしまい、改めて本格的な諜報戦に。なのだけれど、いつの間にか明希星の感情的にもラブコメになっていて、初恋を切り捨て組織の長として動き出した黒姫も、土壇場で明希星と正対することで恋模様が再燃し、と。
うん、時系列的に書いてても本気のラブコメと本格的な諜報戦がパタパタとそのキャラの目線から目まぐるしくひっくり返って止まらないんですよね。
というか、これは本人がエージェントとして頑張っている時にはラブコメになっていて、ラブコメ気分で動いている時には諜報戦になっているというべきか、或いは場合によっては完全に同時進行になっていたり、エージェントとして鍛えられた能力をフルに発揮したら、その御蔭でシリアスな展開だったのがそれが決め手となって決定的にラブコメ展開になってしまったり、と見事なくらい統制されたシッチャカメッチャカになっている。
とにかく構成がめちゃくちゃ凄えや。なんだこれ。

肝心のエージェントたちの仕事っぷりが、なんちゃってとは程遠い結構ガチめの描写が多いのも特徴で、彼らの裏の社会の人間としての心構えとか底冷えするような在り方とか、きっちりとした仕事っぷりなどが際立っているのだけれど、その御蔭でギャップとして彼らの仕事がそのままラブコメに直結してしまうのがやたら笑えてしまうんですよね。明希星も、スリーパーの殺し屋として機械じみた在り方をしていたのに、畑違いの情報収集に駆り出されてしまったために、本人は真剣なのに傍目には一匹狼だったぼっちな女性が恋をして、不器用に凡田くんにアプローチしてなんだかんだとうまく言ってカップルになりましたー、というふうにしか見えないのが微笑ましいのなんの。
本人たちは全くそんなつもりなかったのに。
でも、回り回って最終的には少なくとも明希星の方は気持ち的にかなり「傍目」通りに寄ってしまうのは、一周回って……ってやつになるんだよなあ。
黒姫ちゃんの、一人外野で大騒ぎしながら回りを振り回しているのか、自分で自分に振り回されてるのかわからないはしゃぎっぷりは、ほんとポンコツ可愛くて、いやそれにしてもまったく凡田くんに直接関われない奥手っぷりはどうしようもなさすぎるんですけど、でもかわいい、うん。
側近の女性の、命令されれば黒姫さまのために自分の命も当たり前に使い捨てる、というハガネのような覚悟と敬愛を備えながら、それはそれとしてこのご主人、くそ面倒くせえ。いい加減にせえよ!? とうんざりしてる姿がなんとも面白すぎて、いやはやw
いやでも、明希星の迷走しまくりながらも、使い捨ての駒から傍目通りの初々しい恋する少女にすっ転んでいく様子なんかも、なんかたまらない微笑ましさがあってねえ。

うん、なんかもうまとまらなくて困ってしまいましたが、この誰の思惑通りにもうまく行かないのに、変にうまく噛み合いまくってる構成の絶妙さといい、キャラクターたちの有能さとポンコツさが並列起動している可愛らしさといい、実に素晴らしいラブコメであり物語でありました。
いやもう、ほんと面白かった、最高!

方波見咲作品感想

転生ごときで逃げられるとでも、兄さん? ★★★★  



【転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?】 紙城 境介/木鈴カケル MF文庫J

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俺を監禁していた妹が、この世界のどこかに潜んでいる――。

高校卒業から5年間、妹に監禁されていた俺は、やっとの思いで逃げ出した矢先にトラックに轢かれ、異世界に転生。悪魔のごとき妹からようやく解放された……。
新しい、自由な世界での名はジャック。貴族の一人息子として、愛に溢れた両親と優しいメイドのアネリに囲まれ、幸せに満ちた、新たな人生が始まった――はずだった。
そう、一緒に死んだ妹も、この世界に転生しているのだ。名前も容姿も変えたあいつが、どこに潜んでいるかはわからない。だが、今の俺には神様にもらった、世界最強クラスの力がある。
この能力であいつを退け、俺は今度こそ、俺の幸せと、周りの人たちを守ってみせる――!

ウェブ版既読済み。【継母の連れ子が元カノだった】で今青春ラブコメ界隈をぶっ千切る紙城境介さんの新シリーズは、最恐最悪の妹の魔手、或いは神の手に抗うある兄ともうひとりの闘争史であり、ダークホラーファンタジーであり、きっと世界を超える愛の物語。
彼女は今まで自分が見てきた中でダントツのヤンデレ妹である。もちろんヤバい意味で。本気で怖気が走り背筋が凍り肝が冷えて、ヒュンとさせられた本物のサイコキラー。うん、ただの殺人鬼ならまだこんなにも怖くなかった。だってただの殺人鬼なら倒せるもの、捕まえられるもの。しかし彼女はそんなレベルじゃない、そんな領域でもない、果たして本当に人間か? 彼女本人がデウス・エクス・マキナのようなものなのだ。愛に病み狂ったお釈迦様だ。その掌の上から逃げられずに弄ばれる。
まさに、転生ごときでは逃げられない、恐怖の権化。それがこの名前も口にできない妹なのだ。
この一巻の時点で涙目になりそうなほど怖いのだけれど……恐ろしいことにまだ序の口なのだ。心せよ、備えて構えよ、でなければ精神的に死にかねない。
白目剥いて「アッバババババア」とリアルでなってしまったあの経験は、あの体験はちょっと忘れられないというか、若干トラウマである。その意味でも、心慣らすために最初の試練はしっかり受け止めておくべきだろう……。
ってか、一巻の表紙にメイドのアネリを持ってくるとか最初どういうつもりなんだろう、と深刻に悩んだんだけれどこれってあれだ。製作サイドが「邪悪」極まってるということなのだろう。或いはあの女神よろしく後ろから刺されかかっているか。
転生モノでは、生まれたての赤子の頃から意識を持ち、備え持った能力を伸ばしていくという通常の人とはスタート地点の早さから違う、という展開がままありますけれど、さすがに生まれて一歳になろうかという時点で速攻人生クライマックスに放り込まれたケースは滅多とないだろう。
いやもうこれ、本当に怖いよ。現世で死んで、死んで逃げて、他の世界に転生してやっと妹の手から逃げられて、ホッとしたと思ったらこれである。妹からは逃れられない、にも程があるわー!!
乳幼児の時点でありえないレベルの死線を潜らされて、必死過ぎる死闘を繰り広げなくてはならなくなったジャックの人生たるや。負けたときの悪夢具合が、本当に死んだほうがマシ、というレベルなんですよね。というか、死んだ方がマシな結果がこの転生だったわけで、その先ですらとなると精神的に死ぬどころじゃなく、発狂シかねないです。
完全にホラー。

この乳幼児期のエピソードこそが、この作品の原点であり本質。それを杭を打つように叩き込み、忘れないように刻みつける、そのための最初のエピソードなのでしょう。
だってね、このあとの少年期。黄金の少年期と銘打たれる青春時代の展開が本当に素晴らしいんだ。まず運命の出会いとなる幼馴染のフィルと、師匠となるエルフのラケル。この二人にはじまり、ジャックの世界はどんどんと広がっていく。生涯の友ができ、運命を共にする仲間ができ、恋をして、切磋琢磨して能力を伸ばす喜びを知る。まさに輝ける時代のはじまりなのだ。
それを象徴するのが、繰り返しになるけれどフィルとラケルとの出会いなのである。まだ幼いフィルとジャックの、甘酸っぱい恋模様が本当に素敵でねえ。
シーツの奥で幼い二人が交わす愛の言葉と約束の口づけには、キュンキュンしてしまいましたがな。

そう、これは悪魔のような妹の負の極限のような愛に、正の極限たる愛で打ち勝つ物語なのである。
愛を呪う物語じゃなく、愛の讃歌、なのだ。
しかし、妹の愛に負けぬだけのもうひとつの愛は、そこにもう在れどもまだ日の目を見ていない。その姿を見える場所には現していない。それは未だ眠り続け、目を覚ましてはいない。
しかし、その残影と断片はすでに幾つかのシーンで垣間見ることができてるんですよね。これは既にウェブ版読んでいるが故の気付きだなあ。先を知っているが故に、書籍版として最初から読むことで気付かされることがある、驚かされることがある、ああこの場面、このシーンこそがアレだったのか、と感動にも似た思いを噛み締めさせられたのは、母の客だという二人のフードを被った来客とジャックが行き合ったシーンだろう。そうかー、ここだったのか(涙

第一章のタイトルに併記されている愛の言葉。この言葉の意味が明らかになるのは、どれだけ先になるのだろう。
そして、盗賊団「真紅の猫」のあの惨たらしい末路が示していた「異様さ」の正体が明らかになるのは……。

でもまずは、ここからはじまる黄金期を堪能しよう。怖気も恐ろしさも忘れてしまうほどに、ここから繰り広げられるジャックの冒険は明るく輝かしい。学園編と来たらもうめちゃくちゃ面白すぎて、ワクワクとドキドキがとどまるところを知らない楽しさの快進撃がはじまるのである。
本当に、悪夢を忘れてしまうほどに。この物語が、どういう話だったのかを忘れてしまうほどに、それほどまでに面白く、楽しい時代がここからはじまるのである。
恋と友情と冒険の物語のはじまりだ。乞うご期待。

だがしかし、これだけはしかと心に刻むべし。

妹は 忘れた頃に やってくる



わたしの知らない、先輩の100コのこと2 ★★★☆   



【わたしの知らない、先輩の100コのこと2】  兎谷 あおい/ふーみ MF文庫J

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おはようございますせんぱい。『今日の一問』してもいいですか?

"最寄り駅が同じ"以外接点がなかった先輩と後輩がある日、朝の通学時に約束を交わしました。その内容とは『1日1問だけ、どんな質問にも絶対正直に答える』というもの。
そうして先輩と後輩は毎日質問をし続け、お互いのことを少しずつ知っていき……もう最近では『今日の一問』と言いつつ、お互いのプライベートをどんどん知っちゃう関係に。そうして1ヶ月が経ち――冬目前。2人の距離は普通の先輩と後輩よりも、ちょっとだけ近い距離になりました。さて今回は、どこまで2人は距離を縮めるのか。どうぞお楽しみください。

まだ50問!? 二ヶ月経ってなかったの!? と、ちと本気で驚いてしまった。それくらいには、この二人の距離感が近くなってるんですよね。それも、長年とは言わずとも一年以上交友が続いてると思えてしまうくらいには。それだけ、二人のお互いへの理解度が深まっている、という事なのだろう。
まあ真春のぐいぐい攻める姿勢が積極的どころじゃない、というのもあるんだろうけど。付き合ってもいないのに、出会って一ヶ月経たないで家まで来るってなかなかの勇気ですよ、怖いもの知らずですよ。
それでなくても、休日に出不精な慶太を連れ出すことに早々に成功して、それ以降度々休みの日になるとデートみたく一緒に遊びに行くようになって、家にもチャンスあれば上がり込むようになり、慶太の母とはLINEでやり取りするような仲になり、通学時だけじゃなく学校内でも交流するようになり、と着実に進展していく二人の仲。というか、これもうただの友達とか先輩後輩の関係じゃないですよね。時間と空間の共有が明らかに特別で、お互いのために多大なプライベートを割いている。慶太に関しては本を読む時間が確実に大幅に減っているにも関わらず、これを負担や損害に感じていない。それは真春と一緒にいる時間の方が彼にとってもう優先事項になってるんですね。
そうやって二人での時間の過ごし方は、交際している男女のようにしか見えない。見えないですよね? え? 若い子って異性の友達でもこのくらい普通にしてます? してないですよね?(ジェネギャップ!
なんにせよ、彼ら二人の一緒にいるときの日常感は、なんともリアリティがあって感心してしまった。ラブコメラブコメしてなくて、自然体な感じがすごく「普通」のリアリティがあったんですよね。だからこそ、余計に付き合っている交際している男女関係、という空気感を感じてしまうのですけれど。
二巻に入って、お互いへの一問一答に探りがなくなってきた、というのもあるのでしょう。自分たちでも自己分析して、質問の仕方や内容について段々と変わってきていると認めていましたけれど、もうプロフィール情報を得るためじゃなくて、二人にとってのより良い一日、より良い時間を過ごすためにこの時に何を求めているか、何が必要だと思うか、どうしたらいいか、というのを率直に聞きあっているような内容なんですよね……。
意外と、相手に意見を聞く、という行為自体、交際の有無に限らず人間関係のなかでやってない事なんじゃないだろうか、とふと思ったり。一問一答を一日の中で義務付けている、というか権利付けているおかげか、相手に問う、という行為がこの二人の間では常態化しているのだけれど、これが思いの外お互いへの理解度を深めるだけではなくて、今この瞬間の相手の気持ち、考えを放っておかない事に繋がっているようなんですよね。
それが、二人の関係が育まれる時間の短さを補うだけの密度の濃さをもたらしているのではないだろうか。わずか一ヶ月半にも満たない交流の中で、これだけ深く気心が知れた関係になれたのは、率直に問うことで相手のことを知り合う機会を、一日一回以上という多大な回数得ているから、というのはアリ得る話じゃないだろうか。
もちろん、相手のことを知るために一気に情報を得る、という方法もあるのだろうけれど、それは単に上っ面の情報を入力しているだけで、相手のことを本当の意味で知ったわけじゃない、というのは真春の前の交際が早々に破綻したことからも明らかだろう。その意味でも、一日一問だけ、というのは想像以上に有効な方法だったのかもしれない。その一日一度知った情報をその一日の中で味わい噛み締め活用し身に染み込ませることで、そこから派生した出来事、エピソードが血肉となって思い出の中に残ることになる。
そう、それは単なる情報ではなく、積み重なる思い出の一つとなるのだ。そんな思い出を、毎日毎日積み上げていく。真春は毎日の一問一答をちゃんと日記に残しているようだし、全部振り返って思いかえることが出来るんですよね。そうやって積み重なっていった50日は、本当に密度の濃い50日だったのだろう。
時折、交際からわずか3ヶ月とか半年とか、一年にも満たない期間でスピード結婚するカップルとかが居て、今まではそういうの何を考えているんだろう、と胡乱に思えていたのだけれど、この作品の二人のように毎日密度の濃い一日一日を過ごしての三ヶ月とか半年なら、それは全然早くなんてないのかもしれないなあ、なんて事を思ったりもしたのでした。

さて、この物語における二人も順調に進展する関係をそのままただの先輩後輩、同じ時間に通学する同行者、という枠組みで囲い込むには無理が生じてきたようで。うん、ごく自然に次のステップへと進む心積もりが、二人の間に生じていく。まあ最初から真春はそのつもりだったのだけれど、慶太の心境の変化を目の当たりにすると、真春の行程はまったく見事としか言いようがない。
タイミングとしては絶妙すぎる59日目のあれは、まさか狂言か? と疑いたくすらなったのだけれど、どうやらガチだったみたいで、まあ真春としても焦るタイミングではなかったので急かす意味はなかったものね。
ともあれ、この件で慶太としても腹が据わり、でもここで焦って一気に飛び越えることをせずに着実に目標を定めるあたりが、この生徒会長の性格が見えてきて面白い。なるほど、真春とこういうところでバランスが取れているのかもしれないなあ。


異世界拷問姫 9 ★★★★★   



【異世界拷問姫 9】  綾里 けいし/ 鵜飼 沙樹 MF文庫J

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「どうか、皆、みーんな、一緒に死んでください」
最愛の父・ルイスを失い、【異世界拷問姫】アリスは世界を壊し始める。
かつて最愛の従者・瀬名櫂人を失った【拷問姫】エリザベートは世界を守り続ける。
それは鏡映し、共にあり得た可能性。
それ故に決定的に交わらない二つの道。
だから二人の拷問姫は“彼ら”の遺志を継ぎ、各々に世界へと立ち向かう。
「どうして、私だけお父様を失うの? 『瀬名櫂人』のエリザベートは生きているのに!」
「この【拷問姫】が全てを賭けるのだ──【異世界拷問姫】が受けずして、どうする?」
これが神話に至る物語。
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る至高のダークファンタジー、最終巻。


……冒頭の、見開きのカラー口絵。表紙絵がその一部分なのだけれど、これがもう美しすぎて、呆然と見とれてしまう。どこぞの美術館に飾ってあってもおかしくないと思えてしまう。初っ端から魂を鷲掴みにされて、そうして始まるのは生命の讃歌だ。

不思議だ。皆が皆、死んでいく。片っ端から、消えていく。惨たらしく、残酷に、血塗れになりながら、ろくな死体も残さず死んでいく。
なのに、これほど皆の「生」を、生きたという実感をどうして感じるのだろう。彼らは死んだ。だが、生きたのだ。生きて生きて、生き抜いた先での死だったのだ。それは惨劇ではない、悲劇ではない、そう思えてならない。そして、彼らの死は終わりではなかった。結末ではなかった。終わるためではなく、終わらないための、その繋ぐための彼らの生き抜いた証だったのだ。だから、彼らの死は犬死であっても無為ではなかった。その先へと続いていくための、橋渡し。不要ではあっても、証明だったのだ。世界は、人は、生きるということは、美しいモノだという事実を証立てる証明だったのだ。
瀬名櫂人とヒナが去ってからずっとエリザベートが自問し続けた問いかけ。果たして、世界は守るに値すべきものなのか。この人々の愚かさと醜さで彩られる世界は、瀬名櫂人が命を掛けるに値するべきものだったのか。救われるべきものだったのか。滅びてしまえばよかったのではないのか。愛するに、値しないものだったのではないか。
どうしようもない争いを目の当たりにしながら、何度も彼女が問いかけた疑問。そんな彼女を支え続けたのは櫂人の世界を愛し守ると願いであり意志であったけれど、この醜い世界で幾度も彼女が目にした美しい人の心がエリザベートを進ませ続けた。そんな美しい光そのものだった人たちが、キラキラと輝きながら散っていく。醜いと、愚かだと思えてならなかった人々すらも、この滅びの最果てで答えを得たかのように光り輝いていく。
そう、みんなこの世界の滅びゆく最果てで、各々に自分にとっての答えを得ていくんですね。迷いは払われ、それぞれが未来を思い描く。果たして、そこに自分がたどり着けないのだとわかっていても、思い描く未来が実現するのなら、それはきっと素晴らしいことなのだと。
だから、皆が胸を張り、ほほえみながら自分の成すべきことを見出して、成し遂げていくのだ。
聖女もまた、ついに自分の腕からこぼれ落ちていたあの「肉屋」を思い出し、彼の献身に思いを馳せ、愛おしさを胸に宿して、彼の愛に応えるように胸を張ってかつての自分の思いを取り戻し、貫き通していった。
神に身も心も捧げたはずの聖人たちも、兵器と成り果てていたはずの彼らもまた、一人一人が神と別れ自ら立ち、それぞれが思い描いた未来のために戦ってくれた。教会の人たちもそうだ。誰かに言われたからでも命じられたからでもない。その信仰は己の心のうちにあり。神の意志ではなく、彼ら自身の意志でその信仰を貫いた。
エリザベートを隊長と仰いだ治安維持の隊員たち。彼らこそが、いわばエリザベートを拷問姫というくびきから救い出した張本人たちだと言えよう。櫂人とヒナのいない世界で、エリザベートを人の子へと変えていき、解き放ったのは間違いなく彼らだ。
亜人たち。間違いだと知りながら敢えて間違いを貫いた者たち。綾里さんがちらっと某所で長い後書きを書いていてそこで触れているのだけれど、行き着く果に先のない亜人の彼らの絶望のなかで、あの父子は対局の立場に立ちながらそれぞれ同じ方向を向いて、先のない未来に立ち向かったんですね。そこには、確かに愛があった。同族への、家族への深い深い愛情が。

そして、愛があったのはアリスとルイスの疑似親子にもまた確かに。
愛があったからこそ、アリスはルイスの最期の願いに答えざるを得なかった。もう、それしかなかったから。ああ、なるほど。確かに、アリスはエリザベートと対極だ。世界を呪った者と世界を愛した者に遺されたもの同士、その遺志に寄り添う以外にその存在に意味はない。でも、ジャンヌとイザベラの愛しあう二人の姿にアリスは心打ち砕かれ、一方でエリザベートの世界への愛情は櫂人からの預かりものだけではなく、彼女自身が多く関わった人たちから貰ったもの。彼女自身が抱いた想い。彼女自身の意志でもあり、願いともなっていた。その違いだろう。それだけの、違いなのだろう。

アリスにはもうなにもない。でも、確かに彼女は愛されていて、父を愛した。その事実と過去だけを胸に、もう何もない彼女はそれからどうやって生きていくのか。残酷な結末でもあり、小さな希望の結末なのかもしれない。

皇帝は、ほんとね、こいつ悪魔だったはずなのに。契約者があのヴラドと櫂人であったのが災いしてしまったのか。もういつの間にか、悪魔であるという存在すら突破して違うものになっていた気がする。彼は彼で証明したのかもしれない。悪魔もまた、悪魔でなくなり自ら選んだ存在になれるのだと。誰よりも誇り高く、共に駆けてくれた戦友だった。

リュートはもう、なんというか、ほんと登場当初から彼はこの物語の救いそのものだった気がします。だからこそ、彼はいつでもどこでも無残に無為に死んでしまいそうだった。他の誰よりもただリュートであるというだけで死亡フラグそのものみたいな存在だった気すらする。
故に、彼が生きている限り。エリザベートを支えてくれている限り、この物語は希望を失っていないのだと信じることができた。実際、そのとおりであったことに、深い深い感謝を。

そして、ジャンヌとイザベラのカップル。多分、この物語で一番幸せだった二人。もっとも幸福だった二人。世界を愛し祝福し、だからこそ愛され祝福された二人。結婚おめでとう。最後まで、最期まで二人は二人でいることが目一杯幸せそうで、良かったね、という言葉を送ることができる。
でも、同時に泣いてしまうのは仕方ないですよね。泣いて泣いて、目が痛くなるほど泣けてしまって、でもやっぱり祝うのだ。おめでとう。ずっとずっとお幸せに、と。

そうやって、みんなやるべきを見出し、己の中の答えを得て、生きて生きて生き抜いて、やり尽くして去って逝く。
そんな彼らに問いかけたい。満足だったか? 満ち足りたか? 救われたか? 幸せだったか? 想いを果たせたか?
潰えることに無念はあるだろう、でも後悔はないに違いない。だから皆が皆、起立して胸を張って悠然と、笑顔すら浮かべて、去っていく。その胸に、目いっぱいの愛を宿し抱きしめて。
だからだろう、世界はこんなにも惨たらしく血塗れで死と破壊に侵されていたのに、切ないほどに美しい。
こんなにも、優しい。
だからこれは人間讃歌の物語。綺麗な夢のおとぎ話。

生きて生きて生き抜いて、途中で進めなくなった人たちに背中を押され、多くのものを預けられ、辛くでも苦しくても寂しくても悲しくても、背負いきれない罪を背負いながら、それでも進み続けたエリザベートの辿り着いた結末は。皆が思い描き、託したそのさき、その未来に辿り着いたエリザベートは。
拷問姫でなくなった、ただのエリザベートは。ようやく、ようやく、焦がれ焦がれた幸いをその手にとり戻す。
小さな小さな、幸せの夢を。

これは、ヒトが小さな幸せを手にする物語だ。



やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい 2 ★★★★   



【やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい 2】  芝村 裕吏/片桐 雛太 MF文庫J

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のちの大軍師ガーディ、覚醒の時――王道ヒロイック・ファンタジー第2弾!

グランドラ王との戦争での功績により、金貨姫フローリンから故郷タウシノの領主に任命されたガーディ。その役職は名ばかりながらも、ガーディの存在を警戒する姫の臣下も現れた。そんな中、ガーディは自身の存在価値を証明する必要から、亜人種や土着勢力が入り乱れるタウシノの平定を名乗り出る。だが、兵士も連れず傭兵も雇わずに味方は無理矢理ついてきたナロルヴァ一人だけ。誰もが無謀な絵空事だと考えた、たった二人の森州平定戦――それは、大軍師が冴え渡る軍略によりその名が歴史の表舞台に刻まれる燦然と輝く偉業の始まりだった――異端のヒロイック・ファンタジー。第2弾!

中庭で微睡むガーディを、遠く窓から眺めて心慰めていた金貨姫フローリン。近侍などに取り立てる事もなく、ただその姿を様子を見守っていることで満足……はしていないか、我慢していたように姫がガーディに求めていたのはその才能ではなく、慈しみ愛おしんでいたのはその純真無垢さであったと言っていいだろう。直属の上司であるナロルヴァも、金貨姫もガーディの才能は勿論わかっていたかれど、愛したのはその人柄なんですよね。なので、彼の無垢さを打ち消してしまうかもしれない出世は、決して求めなかった。
そんな彼女たちであるからこそ、ガーディもその力を惜しみなく注ごうという気になったのだろうけれど。まあ彼に人の好き嫌い、というのはあまり見当たらないのですけどね。見た目にも言動にも騙されず、その人の言葉や行動の奥底、真意よりも深くにある善意、善心を汲み取っていく。
誰にでも優しくあってしまうという彼の権能は、彼のあり方とまったく矛盾していないが故に彼にとっての苦しみにはつながっていない。つまり、心の底から優しく慈しむ彼の態度は嘘偽りのない強制されたものではないんですよね。その優しさを前にして、多くの人は自分の中の悪意を取りこぼしてしまう。どうしてか、優しさには優しさをもって報いてしまうんですよね。それが、彼のカリスマに繋がっているのではなかろうか。
尤も、彼自身は自分の優しさが報われることについては、とんと無関心なのだけれど。
何気に、森州で隣国の収奪部隊が各地の村落を荒らし回っているのを、ナロルヴァとたった二人で助けて回った時も、決して救った恩に報いるために人が集まってくる、みたいな考え方はしていないんですね。
そこのところは酷く冷徹に、集って反抗の一勢を立ち上げなければ生き残れず、各地を助けて回っている自分たちがその旗頭として必然的に持ち上げられ、その旗のもとに反抗勢力は糾合することになる、という計算が働いている。そこに優しさという感情は計算のうちに含まれていないっぽいんですよね。そしてその計算とは全く別に、彼は本心からみんなを助けたくて、あちこち飛び回っているのだけれど、そういう感情と計算は完全に分け隔てられているのがまた興味深い。

本作が面白いのは、小説でありつつ後世の視点から様々な史料に基づいて語られている話でもある、という所であります。特に今回の戦いからは、ガーディが本格的に歴史の表舞台にあがった戦いとされているからか、多くの史料が残っているという設定らしく、後世からの視点ということでこの物語を書いている作者が作中の地の文にコメントを付与してるんですね。それは歴史的な解釈や解説であったり、エピソードの歴史上の意義であったり、歴史上の人物の史料から推察される心境だったり、幾つも残されている当時の人の手紙や日記から導き出される情景だったり、それらに対する作者自身の感想だったり。
いやあ、読んでてなんかこういう描き方って見覚えがあるなあ、とずっと頭に引っかかりながら読んでたんですが、ふと司馬遼太郎の名前が思い浮かんだんですよね。
そう言えば司馬先生もこういう書き方をしてやしなかっただろうか。あの方の余談の挟みっぷりには定評?がありましたからねえ。
かの御仁に限らず、歴史小説家には少なからず見受けられる描かれ方かもしれないのですが、そう思うとなんだか本格的な歴史小説を読んでいる気になってきて、何ともワクワクしてくるような気分になってくるのでした。
加えて、森州の戦いはリエメンからの侵攻軍による収奪によって、点在する集落が片っ端から襲われ殺され奪われる事により、軍ではなく住民自身が武器を手に取り反抗の軍をあげる、という展開になりました。そういう展開を引っ張り出したのは、ナロルヴァとたった二人でリエメン軍の侵攻を防ぐために乗り込んできたガーディの思惑があったわけですけれど、いずれにしても奪われる側の反抗という枠組みの中には本来森州にも深く根ざしていた人種間の断絶は挟まれる余地がなくなったわけです。まあそこにも、人種を差別する、種族が違うということで分け隔てるという発想を持たないガーディの存在があったからなのですが。
そうして出来上がったのが、種族を問わずに糾合された反抗軍。そして、種族で分け隔てる視点は持たなくても、戦力としては諸種族の特徴、短所長所を見出してそれぞれに合わせた運用を導き出し、それを組み合わせることに何らの戸惑いも持たないガーディによって、各種族の特徴を組み合わせて相互に欠けている能力を補い合い、相互に持ち得る能力を相乗させる戦闘単位。諸兵科連合ならぬ諸種族連合(コンバインドアームズ)。
MBTと書いて「メイン・バトル・タンク」ではなく「メイン・バトル・トロール」と称する所とか、往年の傑作ファンタジー戦記【A君(17)の戦争】を彷彿とさせてくれるじゃないですか。
ちなみに、運用の仕方はもろにタンク――戦車のそれなんですよね、トロール兵。そして、ちゃんとその足回りを狙われると弱い、という弱点を補強するために戦車随伴兵を伴って動かしているところとか。
それ以前にも相互通信可能な羽妖精たちを使っての、戦闘管制を実践していたりするところとかガーディの発想は近代的な軍事運用に繋がるものが散見されたのだけれど、今回本格的に百人を超える人数を動かすに当たって、それがより顕著に顕在化してきたのではないだろうか。つまり、面白い!

しかし、ガーディの手脚となって動く羽妖精たち、彼女たちがガーディの戦術を、近代的な軍事用語に言い換えて好き勝手に喚いているんですけれど、これって単なるお遊びの類なのかと思っていたのですが……。羽妖精たちの声を聞いて、トロールのお嬢さんが何かを未来の一旦を知ったような素振りを見せるんですね。
タイトルの【やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい】って、未来を知っている誰かからガーディ自身が聞いたような言葉じゃないですか。特にこのタイトルが作中に意味を持ってくるとは思っていなかったのですけれど、トロールのお嬢さんはこの「やがて」という言葉をこぼしてるんですよね。
羽妖精たちが未来の言葉を使っているのって、もしかして意味があるんだろうか。

たった二人で反抗軍を立ち上げ、リンメイ軍を打破してみせたガーディは、ついにその名望を確かなものとする。確かなものとしてしまう。この戦いを通じて、多くの弱き者たちが彼の知恵と優しさに希望を見出し、その身を寄せようとしはじめる。それに値するだけの結果と能力を、彼は示したと言っていい。それに縋ろうとするもの、期待し守り立てようとするもの。能力に着目しそれを利用しようとするもの。危険視して排除しようとするもの。様々な思惑が彼を中心に飛び交うなかで、フローリン姫とナロルヴァだけが……いや、あえていうなら彼の養子になったテイも含まれるか。ガーディの庇護者たらんと尽力しようとしているのは興味深い。特に彼女たちだけが、ガーディの優しさ故のやわさ脆さ危なっかしさを心配して、守ろう守ろうとしている。特に、権力者である自分に近づけまいとする事でエルフに育てられたが故に人間社会に馴染まないガーディを危険から遠ざけようとしていたフローリン姫は、今回の一件で放っておいても自分の手の届かない所で危ない目に自分から飛び込んでいくガーディにとことん思い知ったようで、彼を近侍に任命することで身近に置くようになる。身近に置いて、手づから世話を焼くつもりであったらしい。世話させるのではなく、自分が世話を焼くために近侍にしてそばに置く、というのは姫様もまあその本性は随分と変わっている。その優しい変さこそが、ナロルヴァと共にガーディが人の世に身を置く理由なのだろう。忠誠とも違う、愛ともまた少し違う、優しい関係。それで成り立つこの主従の、乱世での戦いをこのままもっと最後まで、歴史の行き着く先まで見てみたい。そう切に思う面白さでありました。






今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。 せんぱい、ひとつお願いがあります ★★★★  



【今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。 せんぱい、ひとつお願いがあります】 涼暮 皐/あやみ MF文庫J

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こんなに素直な女の子に慕われて、まさか1ミリも嬉しくないんですかっ!?

双原灯火。幼馴染の妹で、同じ高校に入学してきた後輩でもある。自称・あざとい小悪魔系。自称・温もり大好きスキンシップガチ勢。そして「自称・先輩を慕う美少女」だそうだ。そんな小悪魔系(?)美少女後輩は、今日も早朝からわざわざ僕を迎えに来ている。ポイント稼ぎに余念がないな。
「せんぱい! 手! 手繋ぎましょう! 温もりくださーい!」
けれども僕は、僕だけは知っている。灯火が本当は照れ屋な子犬系で、手が触れるだけで赤面し、僕をからかいながらも内心テンパっていることを。小悪魔キャラは演技でしかなく、僕に近づく口実でしかないことも。そして――今はまだ、僕を好きではないことも。

これ、タイトルも真相を知ってから見直してみると、『今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。』というフレーズ、相当に意味深だったんですね。
途中までこういう方向性の作品だったとはまったく気づかなかったものだから、意表を突かれたというのが正直な所。そうかー、こう来たかー。いや、薄々当の幼馴染のあの子が今どうしているかについては早々に察しがついてはいたのだけれど。古の鍵っ子としてはズビズバきてしまう内容でした。最近、この手のタイプお目にかかってなかったからなあ。
本来ならばそれは絶対に叶わない願い。何を引き換えにしても、実現しない結果であるはずだったのに。奇跡は不可能を可能にしてしまった。
そう、可能にしてしまったのだ。たとえ代償が必要だろうと、望めば叶うという事実が選択肢を生んでしまう。願いを持ってしまった人に二者択一を突きつけるはめになってしまうのだ。残酷な、選択を。
そう、誰を救い……誰を見捨てるか。本当なら最初から終わってしまっていた話なのに。願わないという行為が、既に喪われてしまっていたモノを改めて自分の意志で放棄する、捨てる、見捨てる、見殺しにするという「罪」に繋がってしまう。
その人には、何の責任もなかったはずなのに。ただ悲しみを、取り戻したかっただけなのに。奇跡が、彼らに罪を背負わせる。

冬月伊織は、この主人公は、この青年は……全部承知していた。全部わかっていた。理解した上で、彼は敢然と覚悟を持って選択してみせた。すごい、男だ。敬意を抱かざるを得ない。
まあとはいえ冒頭から色々と諦めちゃってるし、自分が傷つくことで周りを守ろうとするようなやり方をしてしまう困ったちゃんだ。そして、その痛みを他人に渡そうとしない。独り占めしたがり、それを自分本位のためだと思っている。こういうやつは、得てして親しい人ほど余計に傷つける。でも、無神経ゆえではなく、彼の場合それが決して一人合点した間違えた対応ではないのがまた困るのだ。
でも、与那城はずっと苦しんでいたぞ。
それを知った上で、そして謝ってなお、譲らないし渡さないし独占しようとするあたり、確かに彼は自己認識通りに自分本位なのかもしれない。
優しいけど甘くはない、或いは優しくすらないのかもしれない。そういう男だ、この主人公は。
そうと分かった上で、受け入れ譲らず言いたいことを言ってのける与那城は、実は最大のパートナー候補なんじゃないかと、思ってる。

ともあれ、冬月伊織は真相に行き当たり急展開する自体を前に、選択してみせた。
この「幼馴染の妹」を守るために。その存在と生命と意志と心を守るために、彼は悔やみ苦しみながらも迷わなかったと言えるだろう。彼女のために、この娘の分も罪を背負おうとする覚悟を見せた。
その揺るぎなさこそが、「妹」のトモシビになると信じて。彼がそうやって毅然としていることで、彼に選ばれ自分もまた彼を選んだ現実を、彼女……灯火が後悔しないように、良かったのだと思えるように。胸を張って生きていけるように。耐え難いだろう心の痛みを、噛み殺せるように。
そうして、彼女が笑顔でいられるのなら、それはきっと悪くない選択だったのだろう。
双原灯火は頑張った。防御力皆無なくせに無理なキャラ作って、勇気を振り絞ってガンガン攻めて自爆して、恥ずか死んで、色んな意味で頑張った。その結果だと思えば、たとえ諦めた先の結末だとしても、悪くはないのだろう。彼女は望んだものを何も取り戻せなかったけれど、何も出来ないまま無力に取りこぼして喪ってしまったものを、今度は自分の意志で手放せたのだ。選択できたのだ。
それは辛いけれど、酷い話かも知れないけれど、きっと悪くないことだったのだ。
悪くないということは多分、良かったね、で良いんだよ、と。これはだから、そんなお話。

涼暮皐作品感想

聖剣学院の魔剣使い 3 ★★★★   



【聖剣学院の魔剣使い 3】 志瑞祐/遠坂 あさぎ MF文庫J

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魔王軍再興の野望を胸に転生した最強の魔王レオニス(10歳)は、王女来訪の裏で暗躍した“魔剣使い"たちの計画を圧倒的な力で捻り潰し、眷属のリーセリアばかりでなく、レギーナからもこれまで以上に甘やかされる学院生活を満喫していた。〈吸血鬼の女王〉の力に目覚めつつあるリーセリアの活躍もあり、学院の合同演習でも頭角を現しはじめる第十八小隊。そんな中、六年前に〈ヴォイド〉の襲撃で滅亡したはずのリーセリアの故郷〈第〇三戦術都市〉が出現したとの報告が入る。調査に赴いたレオニスの前に現れたのは〈女神〉ロゼリアの転生体だった――。
「花嫁のドレスです、受けとってください」
「……~っ、レ、レオ君!?」

メイドとワンコ、シャーリとブラッカスというレオニスの側近二人、現代堪能しすぎじゃないですか!? レオくん以上に馴染んじゃって、馴染んだ上で楽しんじゃってるような気がするぞ。ブラッカスとか、普通に飼い犬になってるんだけどご満悦でいいのかそれ? メイドはメイドで油断しまくりで色々と目撃されて幽霊メイドと噂になってるし、スイーツ買うために勝手にアルバイトはじめてるし。レオに忠実は忠実なんだけど、わりと自由に好き勝手してるよな、この娘。
レオくんはレオくんで相変わらず可愛いったらありゃしない。ほんと、魔王ムーブかまして偉そうにしている姿が、ちっちゃい子が背伸びして偉そうにしてカッコつけてるようにしか見えないのがホント可愛くて可愛くて。中身が大人とは思えない愛らしさである。むしろ、澄まして真面目な顔してる表の顔の方が大人っぽいくらいである。
セリアたちが、レオくんに対してダダ甘お姉ちゃんと化しているのって、決してレオくんの見た目が可愛い男の子、というだけじゃないよなあ。内面から可愛らしさが滲み出しているからこそ、ついつい可愛がってしまうという方が納得できる。
だいたい、セリアなんかレオニスの正体や能力についてある程度知っているにも関わらず、ダダ甘お姉ちゃんは変わらないですもんねえ。
まあセリアの方だけではなく、レオくんの方もセリアにダダ甘なのですけど。セリアが優秀なのは当然なのですけど、それにしてもセリアがどう行動しようと「ふふっ、さすがは我が右腕ッ!」とセリアが活躍するたびにドヤ顔になってるし。もうセリアが何をしようとも、ドヤ顔になってる気がするぞ。セリア好きすぎだろうコイツ。
セリアのために召喚したエリートスケルトン三人衆も、なんかえらい漫才コンビみたいな愉快なトリオなんですよね。なんか、レオニスの魔王軍って実はおもしろ軍団だったんじゃないだろうか。出てくるやつどいつもこいつも実力は図抜けてても性格は愉快なやつばっかりなのですが。

むしろ、人類側の英雄たちのほうが余裕なかったんじゃないだろうか。まあ、実際生前の英雄たちの様子は描かれていなくて、現代に現れた彼らはヴォイドに乗っ取られた暴走状態ですから、元がどんな人物だったのかはここからは想像できないのですけれど。
そんな中で、ヴォイドとは関係なくある意味レオニスと同じように封印じみた眠りによって、数百年の時代を経てこの時代に目覚めたエルフの勇者アルーレは、貴重な人類側の古の時代の生き証人なのですけれど、やたら堅苦しそうで融通きかなさそうでいわゆる余裕なさそうなんですよね。
この時代来た途端、お菓子やスイーツや甘いものや、と食べまわり始めたメイドをちょっとは見習ったら、と言いたい所だったのだけれど……こいつもお菓子に餌付けされだしたぞw

レオニスが探す反逆の女神、この時代に復活すると予言を残していたものの、どうにも予言どおりにはいかないようで。まだ予言がズレてしまった背景が見えてこないので何とも言えないのだけれど、レオニスの時代の記録が途絶えて、伝承が残されていないはずの中で、どうしてセリアの父親が魔王に言及していたのか、ヴォイドを生み出している元凶とその思惑が何なのか、まだそれ一つ一つでは何のことかわからないけれど、後々これはそうだったのか、とわかってくるような手がかりとなるものや情報がちらほらと手元に集まって来ている気がする。

―異能― ★★★☆   



【―異能― 】 落葉沙夢/ 白井 鋭利 MF文庫J

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この世界には確実に主人公側の特別な人間がいる。でも、それは僕じゃない。

自分の凡庸さを自覚している大迫祐樹には成績優秀で野球部エースの赤根凜空と学校一可愛い月摘知海という友人がいる。――自分は二人の間を取り持つモブキャラなのだ。しかしある日大迫は知海と二人で映画に行くことになってしまう。「デートだね」とはにかむ彼女に戸惑いながら帰宅した大迫の前に、見知らぬ少年が現れて問う。「君の願いは、なにかな?」それは異能を秘めたモノたちへのバトルロワイヤルへの招待だった。「僕……の中にも異能があるのか?」だがそれすらも完全な思い違いだったのかもしれない――!! 予想を覆す怒濤の展開。審査員評が完全に割れた事件的怪作、刊行。

やたらとタイトルが長くなる昨今に敢えて単語一つのタイトルを持ってくるとか、ガガガ文庫みたいじゃないですか。MF文庫Jは特に口語なタイトルが多い印象だっただけに、敢えてこのタイトルで攻めてきた所に本作の特殊な立ち位置を連想させる。
それにしても、いきなりのちゃぶ台返しには驚かされた。いや、それだけならよくある手法で珍しくはなかったかもしれないけれど、注目スべきは一回ひっくり返しただけでは終わらなかった所だろう。
いや、この「ちゃぶ台返し」こそが本作のルールだったわけだ。そして、それが物語の構成という作者のぶん殴ってくる武器としてだけではなく、ちゃんとストーリー上でも確かな意味を持っていたことがラストに突きつけてくる。
いや、そんな事になっていたとはホント、最後の方まで全然気づいていなかったし、まさかそんな方法で引き戻されるとは。ちょっとあの娘の能力って桁外れじゃね? 致命傷まであっさり回復させちゃっているし、やれる範疇が蘇生どころじゃないですし。それも彼の異能があってこそ成立したんだろうけど。
ちなみに、ラストの戦いって何気に相手の方が完全に詰んでいたんじゃないだろうか。相手の方、最後まで気づいてなかったようだけど、あの場合勝っても負けても生き残るのは彼だったわけですし。彼の異能の正体を知らずにあそこまで油断してるのなら、直前のときみたいに「身体」を動かして、というのも難しくなかったような気がしますし。

もっとも、あれで本当に倒せたのかまだ微妙に怪しい気がしてますし。というか、あからさまに怪しい人がひとり残ってるんですが。あの人の力も異能の類だとすれば、どうして選ばれなかったのか。月摘刑事の認識がまだ誤魔化されてるっぽいのがどうにも、ねえ? そもそも、どうしてタチバナが選ばれたのか。一応、次回に繋がる要素は残してある、ということなのか。ここで終わるのも綺麗ではあるんですけどね、微妙にスッキリしないものは残るにしても。

正直、個々のキャラに関してはそれほど立っているとは思えないですし、話の転がし方はともかくストーリーの流れそのものはアカが辿った末路を見れば、パターンとして固定されて目新しいものはなかったですし、次々と決して行く勝負に関しても劇的なものではなく、バトルとして見てもキャラ同士の関係にしても当たり障りのない感じに終始していた気がします。
それでも、ついつい先が気になってグイグイ引っ張られるような牽引力には確かなものがありました。あの次々と変わる視点こそが、牽引力の源だったのでしょう。続きを読みたいと思わせられるパワーがあった、それは間違いなく「面白さ」だったのではないでしょうか。

Re:ゼロから始める異世界生活 11 ★★★☆   



【Re:ゼロから始める異世界生活 11】 長月 達平/大塚 真一郎 MF文庫J

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『試練』を乗り越え、元の世界に残してきた両親への想いを克服したナツキ・スバル。エミリアを支え、レムを取り戻す―その決意を新たに奔走する覚悟を決めた矢先、スバルは懐かしき苦痛によって再び命を落とし、『死に戻り』する。『腸狩り』のエルザ、それは異世界で初めてスバルを殺した戮殺者との再会。強敵との再戦に戦慄するスバルは、『死に戻り』を生かして最善策を模策する。しかし、二度目の『聖域』は、スバルの記憶と全く違った展開を辿り―。
「俺様ァ、お姫様以外が『試練』に挑むのは認めねェ。てめェだけは、絶対に」
大人気Web小説、波乱と混沌の第十一幕。―螺旋の歯車が狂い始める。

エッグいなあ、この展開は。死に戻りしてしまうような、つまりナツキが殺されて死んでしまうような事態に見舞われることを障害、壁と定義するなら基本的にこれまでって割合とその「壁」となる死の原因まで辿り着いて、それを攻略解決して壁を乗り越え、しかしそこに新たな壁が聳え立っていて、みたいな感じで一つ一つ未来へ進むための壁をクリアしていく、みたいな感じではあったと思うんですよね。そうだよね? 前章読んだのだいぶ前なのでうろ覚えなのであまり自信がないのだけど。
ともあれ、それと比べても今回はエゲツないことになっている。死に戻りしてしまった原因を排除解決するどころか、どうやって乗り越えるか、それ以前になぜ死ぬ羽目になったのかわからないまま、試行錯誤している最中に別のトラブルが発生し、死んでしまうというケースが多発。
結果として、死亡案件を解決できないまま次々と別の案件が持ち上がり、どう動こうとも周囲を「壁」で囲まれてしまいにっちもさっちもいかない状況に追い込まれてしまったような塩梅なのである。或いは、借金を清算する前に別の借金が、さらに別の借金、別の借金、と多重債務に苛まれて返済の目処がまったく立たなくなってしまった、というべきか。そして、人生には自己破産は存在しないのである。死に戻りあるだけでも破格なんだけど、そのお陰で余計に絶望感が深まってしまった、というべきか。ほんとこれ、どうするの? という状態なんだよなあ。
特に難題なのがガーフィール。こいつだけは今の段階では特に「トリガー」となる要素がまったくわかんないんですよね。気まぐれ気分でむちゃくちゃしてくるような暴威にしか見えない。こいつが立ちふさがるお陰で、どうして前回死んだのか、どうやってその死を回避するのかを調べて原因を見つけてそれを回避するための準備を整え、という工程をまったく辿れないどころか、同じ死んだ場面までたどり着けすらしない有様で、とかくこいつが筋道を引っ掻き回してグチャグチャにしてくれている、と言っていい。
とはいえ、それはまだ情報が出揃っていないから。ガーフィールにも何らかの基準があるはずなんだけど、それがわからないということはこの聖域という場所にまつわる秘密にもまるでたどり着けていない、ということになるんでしょうな。それを調べようとしていたらことごとくコイツが邪魔してくる感じではあるのだけれど。
それでも問題が当面ガーフィールだけなら良かったのに、そこからさらに大兎、いや多兎なんて白鯨と同レベルの魔獣が突然エントリーしてくるわで。
これ、エキドナがいなかったら本気でここで終わってたのか。いくら死んでも生き返れると言っても、スバルの精神が死んでしまえば、発狂してしまえばもうどうにもならないもんなあ。
この段階ではエキドナを信じなければ、彼女の助けを請わなければいずれにしても詰んでしまうのか。でも魔女エキドナにどんな思惑があったとしても、ここで誰にも告げられなかった死に戻りを他人に告げられたという事実は、スバルにとって間違いなく救いだったんですよね。

それに、フレデリカが無実で敵側ではなかったとわかったのは大きいし、ロズワースとある程度とはいえちゃんと話せて事情の一端を明かさせたのは、長らくロズワースに色々聞きたくても聞けない状態が続いていただけに、一歩前進出来た感はある。そして、ベア子についての事情にもようやく踏み込めだしたことも。
レムのことでまだ傷つくことの多かった今回だけれど、絶望に追い詰められ荒み始めたスバルの精神に涼風を吹き込ませたオットーの友情やパトリシアの献身は、この一人と一頭がどうしようもなく掛け替えのない存在だと噛み締められたのと同時に、一筋の救いであり拠り所だったのではないでしょうか。パトリシアは前々からだけどね。ほんと、このお嬢さんの献身には頭が下がる。

しかしラストこれ、ついに死に戻った直後にあんな状態になっちゃって。普通はもうイイだろうというところを満足せずにこれでもかこれでもか、と詰んだ状態をさらに積み上げていくとか。エグいにも程がありすぎ!!


 
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(GCN文庫)
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11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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11月18日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガブックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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11月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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11月6日

(角川書店単行本)
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(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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11月5日

エンターブレイン
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(エンターブレイン)
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(ドラゴンノベルス)
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(PASH!コミックス)
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(フロース コミック)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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