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SOW

剣と魔法の税金対策 4 ★★★☆   



【剣と魔法の税金対策 4】  SOW/三弥 カズトモ ガガガ文庫

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「税天使」ゼオスが絶体絶命のピンチ?

「我が配下となれば世界の半分をくれてやろう!」
「え、マジ?わかった!」
魔王♂と勇者♀が交渉成立!と思ったら、天から「贈与税がかかります」の声。
絶対なる税金徴収者である「税天使」が現れた!え、神様に税金とられるの!?
“世界の半分”という莫大な資産にかかる超高額の贈与税に焦った勇者♀は税金逃れのために魔王♂と偽装結婚!そして、そんな二人を助ける『ゼイリシ』の少女も登場!
みんなでいろいろ頑張って、超赤字経営のトンネルの先の光が見えてきた!と思いきや、なぜか、城の設備が次々と「テキタイテキバイシュウ」され始めた!
そんなことをするやつは…え!!魔王たちに恨みを抱く、元魔族宰相のセンタラルバルド!?
こんな時にはこわーい税天使ゼオスが味方になってくれる!ゼオス召喚!…ところがなぜか、ゼオスが現れない。ゼオスに一体何が起こった??
こうしている間にもどんどん「テキタイテキバイシュウ」は進んでいく…!「異世界初の異世界税制コメディ」、グイグイきてる第四弾!

敵対的買収ってのは、本来は目的の企業の株式を買い集めることなんですが、魔王軍って株式上場してたっけ? と思ったら、なんか直接魔王城の施設を勝手に値段つけて所有者に無断で買収しはじめて、何じゃそれー!?となったんですが。
いやそれはさすがにルール無用すぎるでしょう。税悪魔きたない! そりゃ邪法だよ、なんでもありじゃないか、それ。
ここまで無法を押し通せる税悪魔に対して、法の執行者として非常に厳密な中立性を強いられる税天使とでは税悪魔の方が有利すぎないだろうか、これ。実際、前回クゥたちに立場で許されない以上の肩入れをしてしまったためにゼオスは罰せられてしまい、封印刑に処せられてしまったわけですし。
もちろん、恣意的な運用を法の執行者が出来ないように、その振る舞いが厳しく監視されるのは当然なのですけれど、法の悪用をこれほど大仰にやってしまっている税悪魔に対して、マルサのような積極的能動的に違反者を摘発して回る税天使はいないのだろうか。
ゼオスがその権限も持っている税天使なのかもしれないけれど。

さて、今回はそのゼオスの過去がメインとなってくる。数百年前、まだ彼女が人間だった頃の昔の話。敵対的買収という現代の経済活動と、徴税人という近代には消滅した過去の税法の徒花が同じ巻で語られるというのは面白い構成ではあるんだけれど、過去の戦乱の時代に徴税人という制度を廃止したザイ・オーの先進的な思想をより引き立てさせるためにも、現代パートではもっと徴税人制度などと対比させる形での現代の税法を見せてほしかったかなあ、とちょっと思った。今回は現代パート、ちょっと税法とは関係ないかなりハチャメチャな邪法がまかり通っていましたし、あんまり税法の勉強にはならない展開でしたしね。
しかし、ゼオスの過去があんなだったとは。今のクールで融通の聞きにくい堅物天使とは、人間時代はキャラが違っていた、みたいな話は前からありましたけれど、キャラが違うどころじゃなくてもう別人じゃないですか。
これはブルーやメイが気づかなかったのも無理はない。ってか、完全にメイ互換の考えるより手が出る方が早い脳筋キャラじゃないですかー。これがどうやったら今のゼオスになるんだ? その変遷が想像できなさすぎる。
それだけ、彼女が税天使になるに至った後悔が大きく、人格を変えるほどのものだったのか。まあそりゃそうだろうね。彼女が自ら語った過去からすれば。
メイも、ブルーを喪ってそのきっかけに自分の判断があったとしたら、ゼオスみたいになる可能性もあるんだろうか。
いや、それよりも「手段を選べないときほど手段を選ばなければならない」というゼオスの後悔。それに反する形でかつてのザイと同じように、手段を選べないほどの大ピンチの中で手段を選ばなかったクゥ。その判断がどう影響してくるのか。これって、大きなターニングポイントだったんだろうか。

ところであの赤毛繋がりなど共通性の高さは、メイとゼオスに何らかの血縁関係とかあるんだろうかねえ。ゼオスとザイが実際どういう関係になったか、についてはゼオスは語ってくれませんでしたしね。それこそ無二というほど親しく近しい関係だったことは間違いないのですが。
で、過去の世界ではブルーたち魔王の一族の始祖となった少年タスクと、その兄貴分であり盟友でもあったザイ・オーという魔界統一の立役者であり改革者、と将来になる若者たちと出会うのだけれど……、これってモデルは徳川家康と織田信長ですよね。エンド国って思いっきり尾張だし、トライセン国って三河じゃまいかーw



剣と魔法の税金対策 3 ★★★☆   



【剣と魔法の税金対策 3】  SOW/三弥 カズトモ ガガガ文庫

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今度はマンドラゴラ商売で税金対策!?

「我が配下となれば世界の半分をくれてやろう!」「え、マジ?わかった!」
魔王♂と勇者♀が交渉成立!と思ったら、天から「贈与税がかかります」の声。絶対なる税金徴収者である「税天使」が現れた!
え、神様に税金とられるの!? “世界の半分”という莫大な資産にかかる超高額の贈与税に焦った勇者は税金逃れのために魔王と偽装結婚!
そんな二人を助ける『ゼイリシ』の少女!いろいろ頑張っても焼け石に水の税金対策(泣)。とにかくお金を稼がなきゃ!ということで思いついたのが、魔族・人族共同の産業振興計画!
不思議の妙薬の原料マンドラゴラ栽培・輸出でがっぽりだ!しかし、そこに、高級マンドラゴラブランドを持つエルフの国から横槍が!
「ぶっ飛ばす!」とイキりたつ妻メイを宥めてなんとか挑んだ国際交渉。しかしその先に待っていたのはめんどくさーい「関税」がらみの陰謀だった!!
せっかくのマンドラゴラ事業がふいになるどころが、またまた魔族の国がすっからかんになるピンチ!!
「異世界初の異世界税制コメディ」、待望の第三弾!
今回のテーマは関税!
……いや、関税って一般家庭関係なくないですか!? 強いて言うなら企業法人で輸出入に業務での関わりがある場合は、税理士によるアドバイザリーやコンサルティングなどが設けられる場合があるみたいですけど。
って、そう言えばこれってブルーとメイのご夫婦の家庭内のお話じゃなくて、魔王を頂点とする魔族国家が主体なのですから、他国との貿易に際しての関税問題というのは出てきますか。いや、そこまで行くと税理士は関係ないような気がするのですが、専門家として適切な知識の開陳と助言を行うという意味でクゥはすでに魔族国家の重要なポディションについている気がします。これ、税理士としての契約だけじゃなくて、政策スタッフとしてのお給料も払わないとダメなんじゃないだろうか。前からだけど、がっつり国家運営の方に噛んでますしねえ。
というわけで、今回も「関税」という貿易にかけられる税金について色々と詳しいお話がありました。知識皆無のメイを出汁にして、非常にわかりやすく簡潔端的に例えを用いて噛み砕いて教えてくれるので概略としてこんなもんだよー、というのがすんなり頭に入ってくるのはホントありがたい。
ついでに、今回はなかなか忙しくて折角の新婚生活の甘酸っぱさを味わえなかった今までを取り戻すように、新婚旅行であーる!
と、言っても貿易問題の解消を兼ねてのお仕事兼任だったので、そんなゆっくり出来る展開はなかったのですけれど、それでも今回の話にはブルーとメイが夫婦、という点が大きなポイントになっていた気がします。それに、ちゃんと夫婦っぽい雰囲気も醸し出してましたもんねえ。
というか、ちゃんともう夫婦という関係、二人の間でも定着してるんだ。嫁さんにダダ甘なブルーは元よりメイの方も照れはするものの、今更夫婦という関係について他人から言われても否定とか誤魔化したりとかしないですし、妻、奥さんという立場で紹介されても受け入れてるんですよね、照れるけど。
いやー……新婚生活、思った以上に順調なのでは、これ?
何気におっとりとして庶民的だけれど、ちゃんと魔王として王侯貴族の品格や立ち居振る舞い、貴種としての視点を持つブルーと、最下層から生きるためになんでもやって這い上がってきたが故にアンダーグラウンドというアウトローの世界を熟知しているメイが、それぞれの持ちえる知見、スキル、ネゴシエーションスタイルによって、この貿易問題がどこから生じているのか、の真相にそれぞれのルートから手繰っていって辿り着くの、これはこれで面白い形の夫婦の共同作業だったんじゃないでしょうか。
それにこれって、異種族間の結婚という以上に貴種と最下層民の身分違いの結婚という側面があったんだなあ、と改めて認識させてくれた気がします。
そもそも、生き方が違っていた二人が同じ道を歩き同じ幸せを共有しあう、という姿こそが、今回の問題を突破する鍵になっていたのでしょう。
そう考えると、その鍵と鍵穴を無視しして強引に扉をこじ開けようとしたクゥは、まだまだ人生経験が足りていない、という事になるんでしょうかね。呪いの魔具に引っ張られてしまっていた、にしても。
そこは、敢えてメイとブルーが止めてあげるべきだったのかもしれませんけれど、何気に二人共クゥには甘いからなあ。これまでの実績もあることで、彼女に絶対の信頼を寄せていた、というのも大きいのでしょうけれど。
だから、ブルーとメイはクゥの家族には成れても、彼女の師や先生にはなれないのかもしれません。まあ、基本クゥはむしろこの夫婦に助言し知識を授け方針を告げる立場なわけですしね。
クゥの未熟な部分を教え導く立ち位置は、ずっとゼオスがやってくれていたということか。
彼女も、なかなか思いもよらぬ過去を持っているようで。ってか、ゼオスが過去にどういう存在だったかって、明かされたのこれが初めてですよね。まさか、そうだったのか。
これまでも、何くれとなくアドバイスしてくれてたゼオスですけれど、今回はほんと無関係のところで私的にあれこれと手助けしてくれたのは、税天使としてはそりゃ拙かったですよね。
法に携わる人は、だからこそ厳格に恣意を排し無くてはいけないのですから。今までもめちゃくちゃ贔屓してくれてた気もしますけれど、あれギリギリセーフだったの多分に有情ではあると思うのですが、今回そのライン超えちゃったかー。
ゼオスがどうなったか、それも気になるところですけれど、何気に天使と反対側となる勢力が出てきたのは気になるところだなあ。ってか、あいつらって「ゼイホウ」的にはどういう存在になるんだろう。




剣と魔法の税金対策 2 ★★★☆   



【剣と魔法の税金対策 2】  SOW/三弥 カズトモ ガガガ文庫

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勇者&魔王の偽装夫婦。税金対策は宝探し!

「我が配下となれば世界の半分をくれてやろう!」「え、マジ?わかった!」
魔王♂と勇者♀、交渉成立!と思ったら、天から「贈与税がかかります」の声。絶対なる税金徴収者である「税天使」が現れた!
え、神様に税金とられるの!? “世界の半分”という莫大な資産にかかる超高額の贈与税に焦った勇者は税金逃れのために魔王と偽装結婚!そんな二人を助ける『ゼイリシ』の少女!
いろいろ頑張っても焼け石に水の税金対策、次なる一手は、埋蔵金を掘り当てて一発逆転完納作戦!
ところが蓋を開けたら税は増えるわ、おっかない呪いの「負債」はついてくるわで、もっとピンチ!!

「異世界初の異世界税制コメディ」、勢いに乗って第二弾!

税天使さま、メチャメチャ贔屓してくれるな! そもそも役所が向こうから出向いてきて助けてくれる、なんてのはないですからね。取り立て督促は向こうから来るけれど、控除やら救済、過払返金なんかはこっちから言わないと知らんぷりしてスルーするのが常套なのが役所だ、という認識!
でも税天使様のゼオスときたら向こうからわざわざ来てくれて、露骨にクゥたちが陥っている問題を解決するためのあれこれにヒントくれるわけですから。
どれだけクゥたちのことご贔屓にしてくれているのでしょう。
まあそこまでやってくれるのなら、ヒントを匂わして気づかせようなんて回り道をせず、ストレートに助言くれても良かろうに、と思うのですから。税制に反しているわけではなく、法制度に則った解決法なわけですしね。税天使という中立の立場でどこまでの範囲、アドバイス出来るかというのは難しい所なのか。税制が必要に応じてとはいえ複雑難解になってしまったが故の弊害なのだろう。近代税制はこうしてみると決してただ毟り取るだけじゃなく必要以上に毟り取らないための制度である事がわかるのですけれど、税を収める方も収められる方もどうにもそれを忘れがちなんですよね。
ともすればどこからどこまでが中立かもわからなくなる。だからこそ、依頼人の側に立って税制を解釈する「税理士」という存在が必要になってきてしまうのでしょうけれど。
そんでもって、ゼオスが全部助言してくれちゃうと、クゥの出番なくなっちゃいますもんね! それにしても、ゼオスのお膳立てが万端行き届いているのですが。

しかし今回の黒幕、かなり陰険でしたたかなヤツで周到な罠も相まって勇者メイと魔王ブルーの夫婦は大ピンチに陥ってしまうのですけれど、逆に言うと力押しに転じるとまるでこの二人には敵わなかったとも言えるんですよね。特に勇者メイは正面からの切った張ったはやっぱり滅法強いんだよなあ。魔王ブルーの世界半分あげるよ、の取引に危機として応じてしまうような銭ゲバな所がピックアップされてしまっているせいで、身内以外では色眼鏡で見られて場合によってはナメられてる節もあるようなのだけど、事戦闘という事に関しては劣勢に陥ったこともないんじゃないだろうか、この娘。
とは言え、初手に罠によって「負債」を押し付けられてしまった事はあまりにも致命的で、相続税という税制によって掴まされた絶体絶命の危機は、やはり同じ税制をもって取り組み対抗し逆転するという制度解釈バトルへと突入するのである。
そして、ジャッジメントである税天使による露骨なヒント! あからさまな示唆! 無言のアピール! 中立?なにそれ美味しいの? というあからさまなご贔屓があったものの、今回は相手があまりにも税制の悪質な悪用をしていたというのもありましたからね。税制をプラットフォームとして利用した殺人事件ですもんね。そりゃ税天使としては、制度を凶器として利用されるのは不本意極まりないでしょうし。

しかし、ギリギリの綱渡りをしながらの法解釈バトル、というのは類を見ない法廷バトル的なノリがあって面白かったのですけれど、初手からかなり緊急事態に見舞われたせいもあってか、ブルーとメイのせっかくの新婚生活が殆ど色気も甘酸っぱさも味わう間もなかったのが結構残念でもありました。ラブコメ分が足りなかったって事ですよぃ!
ただでさえ資金難でそれどころじゃない状況で、ブルーがあんなんなっちゃいましたからね。キャッキャウフフする余地がなかったが故に仕方ないのですけれど。子供の話になって夫婦である事をなんかすごく意識しちゃったり、ブルーにすがって泣きじゃくっていたというメイの姿はなかなかキュンキュンくるものがあるだけに、次回あるならラブコメ成分もうちょい濃い目だと嬉しいなあ。




剣と魔法の税金対策 ★★★★   



【剣と魔法の税金対策】  SOW /三弥 カズトモ ガガガ文庫

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勇者と魔王、税金対策のために偽装結婚!?

「我が配下となれば世界の半分をくれてやろう!」「え、マジ! わかった!」
とある“奇妙な法則”が支配する世界。勇者と魔王が手を取り合いかけたとき、現れたのは「贈与税がかかります」絶対なる税金徴収者である天使。
そう、この世界の“奇妙な法則”とは、神への“税金”であった。“世界の半分”という莫大な資産にかかる超高額の贈与税に焦った勇者は税金逃れのために魔王と偽装結婚をする!
そんな二人を助けるのは『ゼイリシ』の少女?
お人好し魔王と銭ゲバ女勇者の財産分与と偽装結婚からはじまる、異世界税制コメディ!

国とか魔王軍が、神様に税金払わないといけないの!? しかも、お金で。
いやそれって国民とかからすると、二重課税って事にならないの!? と、思ってしまったのだけれど、話を読んでいくうちに作中の国家や魔王軍は「国」じゃなくて「企業」と捉えるべきなんだな、と理解した。法人税は!? とも思ったけれど、それはそれでちょっと棚上げしておいて、はい。
細けーところはいいんだよ、てなもんである。
つまるところこれ、税制とは単なる理不尽な富の収奪ではなく、社会が叡智を集めて築き上げた誰もが幸せになるためのシステム。徴収と分配の機構なんだ、ということがわかってくる。
ただし消費税、テメーはダメだ!w 
あと、人類の叡智を結集しすぎていて、常人にはまったく理解できない難物になっているので、素人では対処できません。ちゃんと専門家、税理士に頼りましょう、という話にもなっている。
先日、支配というのは本来「配って支える」ことなんだよー、という言説を目にする機会があって、なるほどなあ、と思った所だったのですが、こうしてみると税制というのもまた、再分配にまつわるものなんですよね。単純に税を集めてそれを徴収した人たちに還元する、というところに留まらず。
税天使による税務調査によって発生した魔王軍の未納の税金の追徴課税を解消するために、納税控除が可能になる項目を、税理士の女の子とともに辿っていくことになるんだけれど、その控除内容って大半が経費計上から福利厚生、超過勤務手当といったもので、言わば税金を経ずに直接企業の財産を還元してるから、わざわざ税金を減る必要ないよね、というものなんですよね。これもまた、分配。
途中から、これ税理士の範疇じゃないよね、という国家規模の財務の話にもなってくるのだけれど、ってかゼイリシのクゥ・ジョちゃん、それ財務大臣のお仕事じゃないですか!? というくらいのすさまじい財政出動をやりはじめるのですけれど、彼女の目的こそは「誰もが幸せになれる状況」の構築だという。あくまで「状況」の構築であって、手ずから幸せを配るわけじゃないのですけれど、ある意味「ゼイセイ」と同じ分配のための状況の構築なんですよね。これもまた、言わば「支配体制」の構築なわけだ。
翻ってみると、銭ゲバ勇者メイが漠然と抱いていた大目標ってのは、最底辺の環境で一方的に搾取されていた幼い頃の自分のような人間を減らすために、富がかつての自分のような者にも行き渡るような再分配を行えるような立場を手に入れたい、というものでした。
そんな彼女にとって、魔王による世界の半分上げるよ、というお誘いはある意味渡りに船だったのでしょう。彼女が世界の半分の「支配」にあれだけ拘って、贈与税をかわすために魔王と偽装結婚してでもしがみついて確保しようとしたのは、まあ一度手に入れたものは離したくない銭ゲバ根性もあったのでしょうけれど、それ以上に彼女メイの最終目標にダイレクトに近づけるのが、世界の半分の支配だったからなのでしょう。
もっとも、その支配のやり方を彼女は何も知らなくて、だからクゥや魔王ブルーと一緒に追徴課税の解消のために駆け回るなかで、税理士クゥが教えてくれる税制の実態を通じて、具体的に富を分配するというのはどういう事なのか、というのを体験していくわけですなあ。

その過程で、一緒に駆け回ることで魔王ブルーと親密になっていき、彼の人となりを隣で実感し、また彼と自分が同じ方向を向いて走っていることがわかってきて、と偽装夫婦が段々と偽装じゃなく成っていくラブコメ成分もまた濃厚で素晴らしかったんですよね。
魔王よりも魔王らしいと魔王から太鼓判を押された苛烈過激なワンオペ勇者メイ。彼女もまた、幸せの再分配の当事者だった、というのもお話の妙でありました。
敵の黒幕達の陰謀を打破するきっかけが、魔王ブルーがお忍びで配り歩いていた「不幸をせき止める幸い」のおかげだったんですよね。これも、魔王の支配、の一つだったと思えば面白く。そのブルーの分配が回り回って、みんなの幸せへと還元されていく。メイも、そのサイクルの中に入っていた一人で、魔王が配った幸いのおかげで志を得て、勇者になって、その結果ブルーの元に幸せを運び一緒に受け取る人になる、というのはなんともこう、微笑ましいというか素敵なお話じゃあないですか。

実際の税制がそんな有徳なシステムになっているかというと、まあそこは人間社会の限界とか不具合とか理不尽が相まって、どうしたって機能不全を起こしていて、不満がたまるものになっているのですけれど。現実は厳しい、辛辣。でも理念、そう理念として税制とは、支配のシステム、幸せの分配機構として在るのだと、それを感じることが出来ただけでも、なんか読んで良かったなー、と思える作品でした。
いやほんとにこの理念的なもの、財務省各位には是非とも身に沁みてほしいなあ。

ツボったのが、勇者専用装備が個人専用のために市場価値がまったくなし、資産価値ゼロ! と評価され、芸術品、歴史的遺物としての価値を問われても、人類共有財産なので、つまり勇者へ貸与、レンタル品だから、税の徴収対象には当たりません! と味方のはずのクゥちゃんに無茶苦茶言われてて、メイがへこむシーンでした。いやこれ、ドラクエなどのRPGで専用装備が店で売れないの、そう理由だったからなのか! と、めっちゃ納得した。そりゃ、リース品だったら売っちゃダメだよね!


ワトソン・ザ・リッパー ~さる名探偵助手の誰にも話せない過去~ ★★★   



【ワトソン・ザ・リッパー ~さる名探偵助手の誰にも話せない過去~】  SOW/りーん LINE文庫エッジ

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「俺の名はジョン。ジョン・H・ワトソンだ」

十九世紀、世界の半分を所有したと言われる大英帝国の首都・倫敦(ロンドン)。
これは名探偵『シャーロック・ホームズ』と同じ時代、同じ場所で、世間を騒がせたもう一つの伝説『切り裂きジャック』の物語。

英国国教会が牛耳るこの街にカトリックの若き神父、ジェイムス・H・オーランドは、裏の顔であるヴァチカンの汚れ仕事専門部隊『贖罪者』の一員として、倫敦を賑わす殺人鬼『切り裂きジャック』に狙われる少女・マーガレットの警護にあたる。簡単な任務と思われたが、突如現れた異能の悪魔、そして英国警察(スコットランドヤード)の秘密兵器・蒸気甲冑までもがオーランドに襲いかかり、事態は予測不可能な展開へと舞台を進めていく。
「世界最悪」と言われる倫敦の貧民街を舞台に、国教とカトリック、英国警察の思惑が絡み合う。そしてカギとなるマーガレットと、『ブラッディマリー』とは!?

あれ? ワトソンは? ホームズは? と、冒頭にチラッと謎解きしている探偵らしい人が出た以降は肝心の名探偵もその助手なお医者さんの影も形もなく、メインとなる登場人物はカトリック教会の特殊部隊の工作員なオーランド神父にその関係者ばかり。切り裂きジャックの謎を追うのもオーランド神父。首を傾げながら最後まで読んでみたら……ちょっとまって、これって実質、前日譚じゃね?

とまあ、これをホームズとワトソンの話だと思って読んだら肩透かしかもしれないが、19世紀の霧の魔都を舞台にしたダークファンタジーにしてスチームパンクとして読むなら、どっぷりと雰囲気に浸ることが出来るだろう。
世界帝国の首都というにはあまりにも光届かない薄暗さに包まれた街ロンドン。そこはまさに覗いてはいけない深淵の縁。霧の中は、もう異界そのものと化していたのかもしれない。
そんな只中で、切り裂きジャックと呼ばれるあまりにも不可解な殺人鬼の正体を、任務であるマーガレットという少女を護衛する上で追求していくオーランド。ただその解き明かされていく事件の真相は、どこを切り取っても救いのない無常の断片ばかり。
その身その生まれその生命そのものが罪であると断じられた異能者オーランド。生まれてきてはいけない者だったと定義された存在である彼が望むのは、祈るのは、この世に生まれてきてはいけないものなどいないのだ、という優しい真理。だが、世界はそんな彼を嘲笑うように生まれながらに許されざる者たちの存在を、彼に突きつけていく。
それでもなお、彼は自身の祈りを貫けるのか。
楽を食って生きる悪魔は、そんなオーランドに目をつける。それは彼の苦しみを楽しむためなのか、それとも彼が希望を諦めない姿の輝かしさを楽しく思うが故なのか。少なくとも、この悪魔の趣味趣向は決して悪趣味なものではなく、人の善性を楽しんでいる気がするんですよね。いや、このフェイという女悪魔が悪趣味なのは間違いないけれど、その享楽は決して人を陥れ傷つけるものではないと思いたい。むしろ、オーランドを庇護するいと高き方の方がどうかと思うところか。果たしてかの方はオーランドの祈りを尊いと思って彼を守っているのか、それとも嘲笑い永く永く弄ぶために彼を守っているのか。いずれにしても、オーランドの試練に安易な死による逃避は存在しないのだろう。苦しみは続く。その果てに救いがあるのかはわからない。

しかし、オーランドはともかくとして、フェイが腰を据えた配役は予想外過ぎて吹いた! そしてホームズの存在がトリックスターすぎるんですけど、ある意味こいつの存在が一番謎なんじゃないだろうか。


戦うパン屋と機械じかけの看板娘 10 ★★★★☆   



【戦うパン屋と機械じかけの看板娘 10】 SOW/ザザ HJ文庫

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皆に祝福され、結婚式を挙げたルートとスヴェン。しかし、人と機械では生きる時間が違いすぎた。だから、スヴェンは人間になることを決意し、人化の方法を知るマイッツァーを探すのだが、彼は保安部の手によって誘拐された後だった。マイッツァーの救出に動いたルートたちは、否応にも聖女が画策する次なる大戦の火種に飛び込むことになり――今はもう英雄でもなく兵器でもない、普通のパン屋店主と看板娘が贈る街角パン屋繁盛記、感動のフィナーレ!!

エピローグまでしっかりやってのやるべきをやり尽くしての終演でした。これからも続いていく登場人物たちの人生を見送る形の終わりではなく、その行く末を見届けてのエンディングは満足感に浸れると同時にひどく寂しさも感じるんですよね。読み終えたあと、しばし感慨を噛みしめる。そうしないといけないくらいには、この作品のキャラクターたちには愛着を感じていました。
思えば登場当初から機械人形らしからぬ感情豊かさ、我の強さがロボ子の定型からは随分と外れていて、それがスヴェンというヒロインの魅力だったのを覚えています。そんなスヴェンですけれど、当初は機械的、というよりもマスター至上主義な所があってそれ以外に関しては酷く冷徹な所もあったんですよね。でも、パン屋の看板娘として多くの人と関わるうちに、ルートを経由するのではなくスヴェンが一人の個人として大切に思う人、関係が生まれてきてますます人間らしくなっていったんですよね。
そんなスヴェンですが、幾ら心を持とうと身体は機械。人間であるルートとの時間の流れの差は、結婚という関係の刷新を行ったからこそ尚更に彼女自身に現実を突きつけることになりました。
だから、マイッツァーを助けに渦中へと赴いたのは世界の危機を救うためではなく、ルートにとっては義父に会うため。スヴェンにとっては円滑な結婚生活のため、というあくまで個人的な理由によるもの、という建前で。
いやでも、実際建前でもないんですよね。
この物語、個々のキャラクターに焦点を合わせてみるとそれぞれ概ねみんな幸せを掴むに至っています。でも視点をマクロに広げて世界的な観点から見ると、ルートをはじめとするみんなの行動は聖女という悪意を退け、大きな意味での人類の行く末の破滅を防ぐことは出来ましたし、直接的な大被害をなくすことは出来ましたけれど、世界の危機そのものを回避することは叶わなかったんですよね。
これがもし、世界を救うための旅や戦いの物語だったとしたらこの結末はバッドエンドとすら言っていいかもしれない。でも、パン屋の新婚夫婦の物語としてみたら、苦労も多く背負うことになったかもしれないけれど、多くの別れを経たかもしれないけれど、でも大切な人たちの間では殆ど不幸を得ることがなかった、とても幸せなハッピーエンドだったと断言できるでしょう。
だから、これは間違いなくただのパン屋の店主と看板娘のお話だったのです。
まったく、ただのパン屋が幸せになるために潜らなきゃならない鉄火場のレベルじゃなかったんですけどね、一連のあれやこれやは。
結果的にですけれど、多分多くの友人たちとは二度と会えない形になってしまったと思いますし。ミリィが一番苦労したんじゃないかな、いきなりだっただろうし。
レベッカはあれ、人間になれたんでしょうか。レベッカとリーリエに関してはスヴェンが人間になる方法を用いることで、つまりスヴェン次第でなれてもおかしくないんですよね。二人とも、ズヴェンと同じく大切な人と一緒にいたいと願うでしょうし。挿絵ではレベッカ、少女然としたままでしたけど。
でもって、一番ままならなかったのはこれソフィア姐さんなんだろうなあ。多分、本人たちはこれで満足なのかもしれないし、報われていないとは露ほども思わないのだけれど、ただでさえルートの件で恋破れてしまったソフィアさんが、次の恋も傍らに置いておけなかったというのは胸に来るものがあります。でもあれ、ちゃんと恋人にはなったんですよね、ダイアンと。
あの結末はむしろダイアンの方が寂しがっていそうですけれど。それに、もっと後年になって戦後も遠くになりにけり、というくらいに戦争が過去のことになったら、また会える機会も一緒に過ごすことも叶わなくはない、と思えば……。
そのダイアン博士。この人もまた随分と定型から外れたキャラクターでした。いや登場当初って絶対に黒幕ですし、ラスボスかエクストラボスだろうというキャラだったじゃないですか。それがいつ裏切るか、いつ本性を現すか、と戦々恐々としていたら怪しげな素振りは欠かさないままズルズルとソフィアから離れないまま終盤まで来てしまい、終わってみれば全編通して味方側の黒幕として常に痒い所に手が届く働きをさり気なくやってくれてた上に、肝心なときにはいつも重要なポイントを解放して先に進めるようにしていてくれて、挙げ句に絶体絶命のピンチを覆す大どんでん返しまでそつなくやってくれていて、とシリーズ通して間違いなくMVPはこの人だったよなあ。
人格的には破綻していても、人間的には情深く愛を知る人であり、その出自からして人を愛することの素晴らしさを誰よりも感じる形で育てられた人だった、という事で随分と見方も変わった黒幕さんでしたし。軽薄な胡散臭さはついぞ変わりませんでしたけど。ソフィア姐さんとは本当に良いコンビでした。
最後のルートとスヴェンが写った写真のイラストは珠玉で、エンディングを飾るに相応しいこの物語の結末の形を描き尽くした素晴らしいものでした。
二人の新しいパン屋での生活に関しては、チラッと電子書籍版の描き下ろし短編で描かれているのですが、異国の地での生活は本当に苦労したようで、でもそこでの新しい営みがスヴェンの独白から伺い知れて、彼女が幸せですと語る言葉が胸に沁み入るものでした。スヴェン、ルートのこと「あなた」と呼んで慈しんでいるんですよね。長年連れ添った夫婦という雰囲気が伝わってきて、良かったなあ。
終わるのがほんとに寂しい、良い作品でした。次回作も同じくらい長く楽しませてもらえるものになってほしいものです。

シリーズ感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉9 ★★★★   

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 8 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉9】 SOW/ザザ HJ文庫

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マイッツァーを狙った機械兵の襲撃により、スヴェンが機械であるとルートにばれてしまう。二人が状況を理解する間もなく、ダイアンとブリッツドナーまで現れ、混迷を極めるトッカーブロート。普段ならこの混乱を収める側に回るジェコブも、突然の父親登場にその場を立ち去ってしまう…。スヴェンが看板娘になっておおよそ一年。ついにすれちがい始めたスヴェンとルート。聖女が裏で動き出す中で、スヴェンとルート、二人の未来の行き先は―。トッカーブロートの「驚天動地の九日間」、幕開け!!
ルート、男を見せる。
いやね、これまでスヴェンの正体について薄々察しながらも、それについて一切言及しようとしなかったのはスヴェンがそれを知られたくなかったから気づかないふりをしていた、という理由だけではなくルート自身、触れることで現状を壊してしまうことを恐れていた部分は多分にあったと思うのです。
なあなあの関係で良しとしていた、とも言えますし、核心に踏み込もうとしないルートはヘタレていたとも言えるのでしょう。ただまあ、様々な事件に見舞われたとはいえ、まだスヴェンが現れて一年。時間で考えるなら、一組の男女の関係が進展するに早いとも遅いとも言えない期間ではないでしょうか。だから、ルートのその知らんぷり、な態度はまだ非難されるほどの段階ではなかったと思うんですよね。
ただ、スヴェンの父親を名乗る存在が現れて、曖昧だったルートとスヴェンの関係についてはっきりしなさいよ、という主旨の指摘を切り込んできた上で、スヴェンの正体がこれまでの暗黙の了解とは異なり、これ以上なく明示されてしまったわけです。
ここまで事態が急変した以上、以前のままではいられない。何らかの意思表明はしないといけない。
にも関わらず、この巻はじまった当初のルートの態度は、スヴェンの正体など知らないかのように以前のまま。これはさすがに、スヴェンが立場的にも気持ち的にも宙ぶらりんにさせられて、可哀想過ぎる! と随分と構えてしまったのですが……さすがに彼もそこまでヘタレ尽くしたドぐされ野郎ではなかったようで、スヴェンには内緒でサプライズの企画を周囲の人達を巻き込んで企てていたのです。
って、それでも女の子を不安にさせた時点で女心をわかってない朴念仁、という汚名は頭から被っておかないといけないと思うのですが。
ルートってば、スヴェン相手だけじゃなくソフィア姐さんにまでドキツイのカマしちゃいましたからねえ。いや、マジで姐さんが自分に懸想してたことまったくこれっぽっちも気づいてなかっただなあ。でなければ、あんな残酷な役目、ナチュラルにお願いしたりしないでしょう。ってか、このサプライズで一番サプライズされてしまったのって、スヴェンよりもソフィアさんの方だよね、絶対。
あそこですぐに再起動して、ルートのポカをフォローする姐さん、マジ男前である。大丈夫だ、姐さん。あんな朴念仁よりもずっと大事にしてくれそうなイケてる男がすぐそこに居るじゃあないですか……。イケてるかどうかは定かではないか。あと、まともでもないし頭おかしいし人としてどうかというレベルでマッドサイエンティストだけれど。とても家庭人として役に立たなさそうだし、ほんとアレだけれど。
でも、ちゃんと人の心を持つイイ男なんですよねえ、ダイアン教授。
まさか、この人がルートに対してスヴェンのこと、あんな風に忠告してくれるなんて場面を見るとは思わなかった。それも、スヴェンの心を、気持ちを慮っての助言であり叱責ですよ。それを、あのダイアンが言うような展開が訪れるとはねえ。
ダイアン教授といえば、登場当初から悪役ムーヴ、絶対にこいつがシリーズの黒幕に違いないという怪しい態度、マッドな思想、胡散臭い言動、真っ黒な暗躍、という姿を見せっぱなしで、いつルートたちを陥れる動きを見せるのか、いつスヴェンたちを苦しめる企みをはじめるのか、いつ黒幕として敵対行動をはじめるのか、とずっと警戒を解けないままシリーズ続いてきたのでした。
にもかかわらず、ついにこの最終局面に至るまで敵側に回るわけでもなく、しかしはっきりと味方になるわけでもない、という不思議な立ち位置のままここまで来てしまったわけです。その意味では、非常に興味深いというか面白い立ち回りをし続けたキャラだったんですよねえ。これだけ曖昧な立ち位置にいながら物語の枠外にいるのではなく、何気にルートたちよりも物語の核心部分に立ち続けてもいたわけですから。
どうやらソフィア姐さんに対する好意が、単なる玩具を愛でる人でなしの興味や好奇心の類ではなく、胡散臭い言い回しとは裏腹にこれはガチで好きなんじゃないのか? と思われるような態度を見せ始めたあたりから、ようやくこれは黒幕じゃないんじゃないのか、と疑念が晴れてきて、でも本当の本当に確信を持って大丈夫敵側じゃない、と思えるようになったのはダイアンの過去が明らかになり、目的が明らかになり、そしてこの世界の本当の敵が明らかになった前巻でようやくでしたからねえ。
そう確信出来てから、ダイアンのソフィアへの態度を見ると何気にずっと一途で献身的であったようにも見えてくるわけで、いやまあなんだかんだとソフィア姐さんがガチで毛嫌いしていたのが絆されていったのもわからなくはないのである。
ソフィア姐さん、今晩はガチで羽目外してしまいそうだなー。この人はやらかす、絶対やらかすw

ブリッツドナーもドサクサに紛れて家族と再会。紆余曲折ありつつも、ようやく家族と一緒の時間を過ごせることになり、スヴェンとルートの関係もついにあるべきところへと辿り着き、と大きな変化を幸福にして平穏な方向へと迎えることになったパン屋とその周囲の愛すべき人たち。
しかし、大きな物語としてはこれぞ前哨。まさにここから、世界は究極の局面へと突入するのである。
そして、スヴェンの抱いた「人間になりたい」という願いもまた……。
戦うパン屋が戦う必要なくなり、機械仕掛けの看板娘が機械ではなくなる、そんなタイトルが雲散霧消するような結末が訪れるのか。クライマックスとなる次巻が待ち遠しい。

シリーズ感想

風銘係あやかし奇譚 ★★★★   



【風銘係あやかし奇譚】  SOW/ 鈴ノ マイクロマガジン社文庫

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維新の大英雄、西郷隆盛の起こした西南戦争で新政府軍に破れた薩摩のサムライ・乃木虎徹。
罪人として護送された先に待ち受けていたのは「内務省警保局図書課風銘係」で働く小娘・卯月。
彼女とともに文化振興事業を手伝うことになる虎徹だが食べたことのない味のパンに驚き電信がアメリカまで届く技術の革新や、食文化の違いに対応できず慌てふためく。
時代の流れを受け入れられず、武士としての挟持に悩む虎徹を頑なに文明に導く卯月の目的と正体とは……。
元サムライ青年とあやかしの少女が巻き起こす、文明開化あやかし奇譚。
風銘係って語音といい、言葉に込められた意味といい実に雅味で良い名称なんだけれど、傍からはさっぱり意味わかんないですよね。虎徹が混乱したのもよくわかる。これは説明されないとなあ。
武士の時代から突然近代国家の時代へと移行することになった激動の転換期である明治時代。中でも明治10年に起こった西南戦争の頃までは、まさにその過渡期も過渡期。この島国に暮らす民が時代そのものの大変化を痛感していた頃だったのでしょう。そして、その時代の変化に必死についていこうとするもの。変化そのものが認められずに背を向けるもの。廃仏毀釈運動における狂乱とも言うべき暴走や、士族反乱の頻発などはその象徴とも言うべきものでした。
その両方に深く関わる卯月と虎徹。いわば時代に拒絶され、背を向けようとした二人が揃って文化振興事業という名の時代の橋渡しを担う役目に付く、というのは何とも妙味ある話なのではないでしょうか。
尤も、積極的なのは卯月の方であって、虎徹の方はというと西南戦争で捕虜になりドサクサで引っ張り込まれ、戸惑うばかりなのでありますが。それでも、性格的に意固地で狷介そうに見えて案外素直に話を聞くんですよね、この侍坊や。聞く耳持たない人は本当に何を言おうと何を見聞きしようと梨の礫なのですが、虎徹は武士という立場には拘りながらも武士としての体面とか面子なんかには拘らず、似合わない仕事にも真面目に取り組みますし、自分の知らないことや新しい時代で起こっている様々な出来事に対して、卯月の語りにじっと耳を傾け、真っ向から理解しようとしている。
そうした上で、自分は時代に置き去りにされていく武士という要らない存在なのだ、という認識を深めて言ってしまうのは、変に過去にしがみついているのとは全く異なる真面目さと素直さ故の堅物さだなあ、とそういう状況でもないにも関わらずなんだか微笑ましく感じてしまう部分でした。
それは、卯月が必死になって拘るのがわかる可愛らしさなんでしょうなあ。
当初の計画通り、じっくり時間を掛けて説明を重ねていけば、彼の素直さと聡明さからいってわりとすんなり自分の状況を受け入れることが出来たかもしれませんし、逆にこの急転と黒鴉という時代に相いれぬ存在と激しく敵対することによってしか、虎徹が自分の存在を痛感し受け入れることが出来なかったのかもしれません。こればっかりはIFを考えても仕方のないことで、また結果オーライとはいえ丸く収まったわけですからこれで良かったのでしょう。
こと、卯月と生きていく、という覚悟を得るための一歩としては、穏当に事実を飲み下すよりも今回のごとく痛烈に乗り越えた方が後々のことを考えても良かったのかもしれません。卯月としては、虎徹大事でありますから、こんな危険な真似は絶対にさせたくなかったでしょうけどねえ。いっそ、完全に変転してもらった方が、卯月としては永々と付き添ってもらえる可能性が高くなるわけですから良いようにも思うのですが、彼女のように元からそうだったのと違って虎徹や黒鴉みたいに人間から、というパターンだと性格も墜ちてしまうんでしたっけ。それならまあ仕方ないか。個人的には、新しい時代をそれまでと違って一個人として生きていく意欲を奮っている卯月には、その果てまで一緒に付き添ってくれるパートナーが居てくれた方が良いんだろうな、と思うところなのですが。
明治初期の古きと新しきが混沌と渦巻く時代のうねりを強く背景に感じさせつつ、そこで生きる人達の戸惑いと力強さを感じさせてくれる良作でありました。主人公とヒロインが好感の持てるしっかりとした人物だと、尚更読み応えがあっていいですねえ。

SOW作品感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉8 ★★★★   

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 8 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉8】 SOW/ザザ HJ文庫

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ある日、トッカーブロートに謎の男・マイッツァーが現れる。彼は自らをスヴェンの父親と言い張るが、機械仕掛けの彼女に血のつながりなど存在しないはずで……。一方王都では、ソフィアがヒルダたちと新大陸国家ノアから来た正体不明の将軍を出迎えていた。また、ダイアンはある物の調査で、ブリッツドナーと共に敵国オーガストへと潜入していた。離れた場所の別々の事件が次第に交わり、より大きな事態に繋がっていく。登場キャラ総動員で動き出す人気シリーズ第8作!!

ロボ子のスヴェンに父親なんているわけがないじゃん。仮にいたとしても製作者はダイアンとわかっているので、父親扱いするならそっちだろうし。
だから、今回は父親を名乗る詐欺師の話かー……と思っていたらどうしてどうして。
あれ? 本当に父親なの!?
これはまったく予想外。そういえば、だいたい心を持つ機械人形って製作者を父親みたいなものとして認識していることが多かったのだけれど、ダイアンに関してはスヴェンはもとよりレベッカなんかもダイアンに対してボディの製作者という以上のものは何も感じていなかった。それは、彼女らの人格であるAIがルートたちが乗っていた猟兵機の支援AIであって、ダイアンが一から作り上げたものではなかったから、という認識だったから特に不思議とは思わなかったのである。
ダイアンを父と呼ばないのはそういうもの。スヴェンやレベッカが搭乗者であったルートたちを慕うのもそういうもの。そもそも、彼女らが機械にも関わらず人間のような心を持つに至ったのも、まあそういうものだから、というファジーな受け止め方をしていて、それで済む話なのかと思っていたのだけれど。
それでは済まなくなったのかー。
何気に、ルートがスヴェンの正体を知っているのかいないのか、というあたりにも容赦なく答えが突きつけられてしまったわけだ。もう素振りからだいたいのことは察せられていたのだけれど、そう言えばなぜルートがその事についてスヴェンについて問いたださないのか、という点については深い疑問を抱かなかったように思う。
それも、それがルートの優しい性格からくるものであり、そもそもスヴェンがそれを知られたくないと思っている以上、ルートから踏み込むことはないよな、という確信があったからなんだけれど。
言われてみると、それは停滞そのものなんですよね。関係性は、そこで行き止まりになってしまっている。それが悪いのか、と言われると首を傾げてしまうのだけれど、そうだよねー、何の関係もない他人……じゃなくても、友達や親しい仲でもこれに関してはなかなか言うことも言えないけど、女性側のお父さんからしたら、そういうなあなあな関係って認めがたいものがあるわなあ。
それでも、スヴェンが機械人形である以上、現状維持以外のどんな進展があるんだ、という話でもあるんだけれど、その前提がひっくり返るとなると、そりゃあもう話は変わってくる。
ってか、その前提ひっくり返るの!?
どうやらスヴェンの出自には、えらい歴史の深淵が関わっているようで、今まではルートの過去からいろんな罪やら想い出やらが追いかけてくる展開だったけれど、ここに来てついにヒロインであるところのスヴェンが、核心となって物語が動き出すのか。
何気に、前回確保されてしまったマリーさん。単にゲーニッツの残党に捕まったのかと思ったら、もっととんでもないモノに絡め取られてしまっていたみたいだし、想像以上に闇が深すぎる。
本来なら関わったり触れたりした途端に100%抹殺されるだろう展開から生還してみせるダイアン博士、この人なんだかんだとやっぱり凄えわ。
今回、ルートのパン屋さんが舞台のところと、ダイアンとブリッツドナーの門探索、そしてソフィアとヒルダのダグラス将軍接待編の三パートが同時展開していたわけですけれど、結構毎回違う場所で起こっている事件を同時進行で描いたり、という構成はあったものの、今回はさらに特別なクライマックスへと持ち込んでいて、これ物語そのものがクライマックスに突入したという盛り上がり、ばっちりですよね。何気に、全員揃ったのって初めてだろうし。まさにこの面子が主要人物として動いていくことになるのか。
これはラストに向けてテンションあがっていきますぞ。

シリーズ感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉7 ★★★  

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉7 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉7】  SOW/ザザ HJ文庫

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新章突入!過去の亡霊と決別を。スヴェンの前に広がったのは、強盗犯が立てこもるトッカーブロートの姿だった。立てこもり自体はルート(と、突入したスヴェン)によって無事解決したものの、これは最悪の始まりでしかなかった。“善意”の市民団体による抗議活動で客は減少、証人として出頭した裁判所では、ルートが戦時中に行なった作戦が槍玉に上げられる。さらに、死んだとルートが思いこんでいたマリーまでも姿を現し、ルートは再び過去の亡霊に悩まされることに…。パン屋を諦めかけた相棒にスヴェンがとった行動とは!

マリー、以前からこっそり動いていてかなり入念に調べ回っていたので、もっと社会的に一撃必殺のクリティカルショットをキメてくるのかと戦々恐々としていたのだけれど、思いの外こう……大きく振りかぶりすぎてあっちこっちに隙のある攻め方をしてきてしまったなあ。
これ、彼女自身がルートをどうするのか決め切れないまま高ぶった感情を抑えきれずに攻め込んでしまった、というところなのか。マリーの経歴からしてその優秀さは折り紙付きだっただけに、彼女が本気でルートを抹殺するつもりだったなら、事態が動き出した時点でもう取り返しのつかない致命的なところにルートが追い込まれてもおかしくなかったのに、こんな穴だらけの裁判に持ち込んでしまっているわけですからね。ルートの弁護士が裏で相手とつながってた以上、スヴェンが居なかったらやばかったのは確かですけれど。
ルート自身が、マリーが直接訪ねてきて虐殺事件について語れと言ってきたら自分は正直に告白した、と述懐しているように、ただルートが犯した罪を、軍が起こした事件を弾劾するだけならやりようはいくらでもあったはず。それを、こんな形でルートを陥れるように動いてしまったのは、彼がパン屋を営んでいるという事実を否定し、貶めたかったのであろうし、以前変装して会いに行ったときにまったく気づいてもくれなかった事に、想いの分だけ憎悪が滾ってしまったのだろう。
それはすなわち、それだけルートへの想いが深かった、ということでもあるんでしょうね。愛するが故に憎むしかなかった。
彼女の観点で抜けていたのは、もうすでにルートが1人ではなかったこと。彼の営むパン屋が欠かせない日常の一部として、周囲から受け入れられていたこと。
もし、最初の頃のルートなら、自分ひとりで完結していて外につながりを持っていなかったルートなら、あっさり諦めてこの結末を受け入れていたのでしょう。でも、これまで彼がパン屋として働いてきた日々は、それが失われればその分、彼のパン屋に関わってきた人から日常や幸せを奪ってしまうまでに、密接に繋がるに至っていたのだ、と落ち込むルートにスヴェンが叩きつけていたんですよね。
ロボ娘であるスヴェンの方が、そういうのちゃんとわかってるのがこの作品の醍醐味であり、多分最初の頃では出来なかっただろう、スヴェンがルートを叱って立ち直らせるなんて真似が出来たのは、それだけスヴェンもまた成長してる、って事なんでしょうなあ。

と、本筋こそルートの抱えていた罪が過去から追いかけてきた、というものでしたけれど、それを枝葉にして国際情勢の裏側で蠢いているのが、今回露呈した平和教と呼ばれる正しさを振りかざして息巻く者たちとゲーニッツの思想を継ぐものたち。前者はそのあり方の質の悪さが迷惑を振り切って思想テロになってるし、後者は後者である意味ゲーニッツという重石が外れている分余計にやばいことになってそうだし、さらに暗躍している者もいる、となるとこれかなり混迷が深くなってるなあ。
果たしてこれ、どこまで「パン屋」が関わる話になるのか。

シリーズ感想

3年B組 ネクロマンサー先生 ★★★★   

3年B組 ネクロマンサー先生 (GA文庫)

【3年B組 ネクロマンサー先生】 SOW/ がおう GA文庫

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「というわけで、俺を魔王軍に入れてくれ! そして人類を滅ぼそう!!」
暗黒式魔導師クトゥーは勇者の仲間だったが、その女勇者レティシアにフラれたショックからパーティーを離脱。そのまま魔王に直接リクルート!?

「それなら、君にピッタリの仕事があるんだよ~」
魔王は過激なクトゥーを持て余し、彼に与えた役職は、気まぐれで創っちゃった学校の教師!!
しかし、担当クラスは人類文化に憧れる落ちこぼれの低級魔族ばかり……

「お前らを人類廃滅の使徒にする! 」
「「ええ~っ面倒くさい人きたー」」
激ネガティブなクトゥーの腐りきった性根と型破りな授業が、生徒たちの心を育み、彼らの才能をグングン伸ばす!?
これは、後世に『闇統べる者』と讃えられし、
伝説の教師の授業記録である。
せ、先生がだめな人すぎる! ぼっち拗らせたコミュ障が、生まれてはじめて優しくしてもらった女性に勘違いしていきなり重すぎる告白したら案の定振られました、からのー勇者パーティー裏切ってそのまま魔王軍に寝返るというこの無意味なアグレッシブさw
いやレティシアさん、別に酷い振り方したわけじゃなくて、誠実にごめんなさいしただけなので、別に彼女は特に何も悪くないのはご了承ください。
しかし先生、根っから腐ってるのに、思考が完全にネガティブ拗らせてるのに、なんでこんなにヒャッハー系なんだろう。僻み妬みもしまくるくせに、意外と陰に篭ってないのはそれを押し殺してグツグツ煮立てないからなんだろうけれど、堂々とああいう思った端から口にして発言してたらそりゃ友達できませんよねー、そうですよねー。
ただ、裏表はまったくなくて裏で何かを画策しているとか、ねちっこいヤバさは感じない分、生徒たちが一定の信頼を寄せていたのはよくわかるんですよねえ。それに、あれだけネガティブなのに他人の悪口とか陰口とか非難の類い、マイナスを誘発するような発言だけは確かにしてないんですよね。人を悪く言わない、その分自分を比べて腐して拗ねて捻て鬱陶しいことこの上ないんですけど。
他者から常にヘイトを浴びせ続けられていた子たちにとって、表面的な優しさや意識した平等ではなく、本気で・素で・自然に自分たちの劣等感を抱いている要素を一顧だにせず、全力で自分たちの中にある様々な要素を羨み地団駄踏んで妬んでくれる相手、ってのは随分と不思議な感覚だったんだろうなあ。
ネガティブで自分を卑下しているからこそ、相手を自分と比べて妬み嫉み羨んで負の感情を溜め込む腐った面倒くさい性格だからこそ、どんな相手でも妬み嫉むに足る良いところを探し出し見つけ出すことが出来る、という勇者レティシアが見出したこのネクロマンサーの性質は本当に面白い。単純に良かった探しが上手い主人公ってのは居るけれど、そういうポジティブ思考のキャラクターって同時に相手に劣等感を抱かせてしまう性質も持っているだけに、ネガティブだからこそ相手の良いところを見つけられる、いうキャラはなるほど、と思うと同時にその激烈と言っていいアグレッシブさは鬱陶しいけれどネガティブさがもたらすジメジメとした鬱陶しさとはまた違う鬱陶しさですからねえ。いや、鬱陶しいのは同じなのですが。生理的に無理、というのは闇の性質を持つが故の生来のものだけなのか。案外、この後天的な性格が唸りを上げているような気がしないでもない。
でも、これだけ腐ってるくせにちゃんと先生らしいこともしてて、責任感をもって仕事してるのは好感が持てるんですよね。振られただけで、人類陣営裏切るような無責任さも持ち合わせているのですけれどw
軽快にポンポンとぶつけ合うデットボール上等なボケツッコミの応酬がまた愉快で、最後までスルスルと読める良作でした。魔王サイドと勇者サイドの思惑とか、裏で蠢き絡んでいる要素もあるので、続いたらさらにおもしろくなりそうな匂いもプンプンしているだけに、ガンガン行ってくれればなあ、と思うのでした。

SOW作品感想

ホテル ギガントキャッスルへようこそ ★★★☆   

ホテル ギガントキャッスルへようこそ (ダッシュエックス文庫)

【ホテル ギガントキャッスルへようこそ】 SOW/桜木蓮 ダッシュエックス文庫

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幼き日に命を救ってくれた皇国の騎士に憧れた少女・コロナは自分も騎士になるべく修行に励み、ついに騎士見習いとなる。だが、それが認められた翌日に大軍縮令が施行。いともあっさり職を失うも、気がつけばかつて最強とされた巨人砦で働くことになった。しかし、そこは大商業都市のシンボルとなるホテル・ギガントキャッスルへと様変わりしていて―。そこには、オークだとかオーガだとかドラゴンだとか、ありとあらゆる種族のお客様が訪れ、膨大な数で、そして時に厄介なリクエストがあった。それを一切拒まず応じる「最強のホテルマン」レイアとの出会いがコロナを変えることになる!!すべてのお客様へ最高のおもてなしをするホテルの物語へようこそ!!
ホテルコンシェルジュものかー。ホテル鬼岩城へようこそ、ってなもんなんですね、これ。かつての機動要塞が平和な時代にホテルになって、というのは時代の変化を象徴していてわかりやすく、物語の舞台としても面白い。ヒロインのコロナが、騎士見習いになった途端に軍縮で首切られ、という身の上というのも相まって、大戦期から平和な時代への過渡期という空気をダイレクトに感じられるわけですしね。
自然と、飛び込んでくるトラブルも戦争時の遺産関係のものが増えてくる、はずなんだけれど……。むむむ、ちょっとコンシェルジュのレイアが超人無敵すぎて、全部レイアがやってくれました、となっているのが勿体無い。未熟で経験も足りていないコロナが、もともとなるつもりがなかったホテルマンに成り行きでなってしまった、という絶好の展開を得ていただけに、自分のホテルマンとしての適正、騎士魂との共通項を見出した上で、ホテルマンとして本気でやっていく新たな目的、新たな志を得ていく、という流れをもっとスポットを当ててやってあげればよかったのになあ、と思っていまう。これは、コロナが主人公ではない、という部分に阻害されてしまったんだろうなあ。コロナの良い部分は折々に触れて垣間見えていたのだけれど、持ち込まれるトラブルのハードルが高すぎて、コロナの頑張りはあくまでアクセントに過ぎず、解決はほぼレイア任せ、になってしまってる。これはこれで痛快であり面白くはあるのですが、あまりに一点突破すぎて「ホテルモノ」として折角多種多様に広げられる面白い舞台設定があんまり活かしきれていなかった感はある。
ホテルのスタッフも、コロナとレイアを除けば本当に限られた数人、しかも責任者クラスしか出てこなかったですからね。お仕事モノ、というのは一緒に困難を乗り越えていく仲間・同僚との人間関係の構築から、アンサンブルが始まるようなものですから。
その点を鑑みると、あくまで一巻は導入編であって、本格的にホテルものとして面白くなるには舞台設定の説明が終わって、レギュラーメンバーが揃ってくる続刊以降から、という事になってしまうんじゃないでしょうか。
それにしても、レイアが万能すぎるのでむしろそうなると彼が物語を動かす上で便利すぎて逆に邪魔になってしまいそうなキライもあるのですが。お仕事モノとオレツエーは案外相性悪いのかもなあ。その場その場の盛り上げには効果的であっても、長期的に見ると……という感じで。今回に限っても、起こるトラブルを解決「させない」ために、度々レイアを不在にしないといけなかったですしね。居たら問題がどうにかなってしまわないと存在意義が崩壊してしまうキャラになってますし。
キャラクターの魅せ方や、登場人物それぞれの持つ過去や現在の関係、立場、秘めた信念。各話各話の話の転がり方、語り口など個別に見るととても魅力的で面白い要素がタップリなだけに、難しいものだなあとしみじみ吐息を落とすのでした。

しかし、巨人砦って自力で動けるのなら迂回戦術取られた時、帝国軍の動きを早期に察知していたら自分で皇都の方に迎撃に迎えてたりも出来たかもしれないのね。ある範囲以上からは動けないという制約とかあるのかもしれないけど。それでも自分で動ける要塞とか反則だよなー。しかし浪漫でもある。

SOW作品感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉6 ★★★★  

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉6 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉6】 SOW/ザザ HJ文庫

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エウロペアの聖女を讃える聖誕祭を年末に控えたオーガンベルツ。お祭りの夜に街にやってくるという、良い子にプレゼントを配る「聖女」と悪い子を連れ去ってしまう「悪魔」。この2役の仮装をすることになったスヴェンとルート。新しいお菓子作りと仮装に奔走する2人の「聖誕祭」の話。その他「魔導師」ダイアン・フォーチュナーの秘密に迫る話、「お嬢様予備校」と呼ばれる士官学校に編入されたヒルダの話、の3編を中心にゲーニッツの反乱後のキャラクター達を描いた人気シリーズ6作目!
ゲーニッツの反乱というシリーズがそれで完結してもおかしくない大事件が終わって、それでも続くとなると話の持って生き方が難しいんじゃないだろうか、蛇足にならんだろうか、という危惧をふっ飛ばしてくれる間奏回。スヴェンとルート、ヒルダ、そしてダイアンという三組のキャラクターたちを中心に、あの事件の後の様子を描くと同時に次に起こるだろう出来事への準備期間として仕込みが成されていくのだけれど、ここまでで本当にキャラがみんないい具合に育ったなあ。これ見てると、ヒルダなんか彼女主人公にしても一シリーズ作れるんじゃないか、と思えるくらいに良いキャラクターになったよね、彼女。親衛隊解体に伴って士官学校に入り直してやり直すことになったヒルダ。15歳にしてあれだけ人生の悲哀を味わって苦労したせいか、随分と性格も練れたというか落ち着いたんだけれど何故か受動的トラブルメーカーになってしまっている不思議。そりゃ、大人しく首を竦めて問題をやり過ごすよりも毅然と突っ込むのが彼女の気質なんだろうけれど、その無視できない問題がどんどん向こうから彼女の前に転がりだしてくるのは、ヒルダ悪くないですよねw
元親衛隊のエリートという悪名のみならず、様々な異名が実績伴ってヒルダに積み上がっていってしまうのには笑ってしまった。そこまで暴れてないだろうに、後ろ盾がいつの間にか大きくなりすぎてる、本人関係なしに。
でも、彼女一人だけだとなかなか話も膨らんでいかないだろう、と思うところにちゃんと彼女にもパートナーとなる娘が登場するわけで、このコンビで幾らでも話広げていけるんじゃないだろうか、これ。表紙にもなってるあの東方の国の人もこうなるとむしろヒルダにひっついて行かざるを得ないだろうし、ヒルダとトリオで本編の方にも絡んでくるんじゃなかろうか。
それにしても、機械人形のお嬢さんたちはなんで揃いも揃ってヤンデレな変態ばっかりなんだ!? いわゆる「心」の起動条件が病むほどに熱烈な痴情というのは色々とヤバイ気がするんだが。
まあ、スヴェンを見ても分かる通り、最初にはただ一人に向けられていた感情も時間を置き多くの経験を経ることでそれ以外の人にも広がっていくようなのだけれど。レベッカも、そんな感じですしねえ。

そんな機械人形たちの生みの親である天才博士ダイアン・フォーチュナーの過去が明らかになるのがもう一つのお話。シリーズ初期は、というかもう最近までこいつこそがラスボスだろう、という怪しさと胡散臭さ満載だったダイアン博士。ところが、彼が生み出した機械人形たちは情緒豊かで人らしい心を持った存在で、むしろ博士は計算外ではなく意図して兵器ではなく、心ある存在として彼女たちを創り出そうとしていた節が伺えてきたところに、身を挺してソフィアを助けるような真似まで見せて、人でなしのマッドサイエンティストに見えていた外殻がようやくポロポロと剥がれ落ちてきていたわけですが。
それでも、この人物の出自の不明さ、一体何を考えているかわからない、人からどこか外れた存在感への恐れはつきまとい続けていたのであります。丁度、ソフィアさんが彼に向ける警戒と恐れ、でも信じて心開いてみるべきなんじゃ、というダイアンに対する戸惑いはそのまま読者の気持ちの鏡写しのようなものだったように思います。
とは言え、このままではダイアンという人への不気味に感じる思いは晴れないまま、どこか未知の部分がある信じきれないジョーカーカード、という観点で見続けるしかなかったのでしょうけれど、この中編で一気にダイアンの正体と素性と過去が明らかになったことで、色々と一変したんじゃないでしょうか。
まず、その特殊すぎる出自と才能は退けておいて、人ならざるものに人そのものの愛情を篭めて育てられた、愛を知り愛を求める存在だった、とわかったことでどうしてダイアンがスヴェンやレベッカのような存在を積極的に作ろうとしていたのか、どこか人として外れたような側面と人そのもののような懐っこさをどうして同居させているのか、などなどようやく理解が及んできたんですよね。恐れとは未知や不理解を源泉とする、という観点からすればダイアンというキャラをこの間奏で思い切って地に足をつけさせてきたなあ、と意外に思うところでもあるのですけれど、今後思いの外彼が本筋に絡んでくる準備でもあったのかもしれません。

ラストのスヴェンとルートの話も、今後の展開を思うと色々と考えさせられる話でもあるんですよね。穏やかな、恐らくはルートとスヴェン二人の思い描いた理想のような日常を丹念に描くことで、その理想が何を踏みにじって出来上がったものか、をラストの独白が浮き彫りにさせてくるこの構成。暖かな暖炉の火が照らす明るい室内を散々映したあとで、雪が積もり凍りついたような静けさに暗く沈む冬の屋外を思い出させて照らし合わせたような、置いてきた消せない罪が、今追いついてきたその寒々しさが、次の物語の開始を謳うにはまた威力十分なんですよね。
キャラみんなに愛着が湧いてきているだけに、なおさらに。だからこそ、楽しみも増すわけですが。

シリーズ感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉5 ★★★★   

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉5 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉5】 SOW/ザザ HJ文庫

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ついに正体を現した宿敵、ワイルティア親衛隊中将・ゲーニッツにスヴェンを奪われてしまったルート。王都ベルンではソフィアまでも捕らえられ、兵器開発局は親衛隊の手に落ちてしまう。かつてない窮地に追い込まれたルートは己の忌まわしき過去を乗り越えて、愛すべき看板娘と共に再びパン屋『トッカーブロート』を開くことが出来るのか!?

レベッカって登場当時はスヴェンと対比する形でより機械人形らしい感情を排した同型機というスタンスに見えて、そんな無機質の中にもスヴェンと同様に自分のマスターだった人への思いやその息子への情を滲ませる、という奥ゆかしさを感じさせるキャラクターだった気もするんですよね。
そう思ってた時期もありました。
いやいやいや、レベッカさん、あんた完全にスヴェンと同類じゃねえか。そのあからさまな変態入ったマスターへの偏愛っぷり、スヴェンと殆ど変わらんじゃん!! 人型兵器のAIはみんなこんなんなんか!!
暴走乙女回路を実装していないと、スヴェンやレベッカみたいな魂魄実装型にはならないんだろうか。博士の場合、仕方なくではなく好んで彼女たちの豊かな情緒をそのままにしているようにも見えるんですよね。もっと機械人形らしい機械人形も作れていたようなのに、それは失敗作として放棄していたみたいですし。
博士ってマッドサイエンティストとして、序盤は黒幕なのかなーと思ってましたし実際、黒い行動も多いのですけれどスヴェンやレベッカに対しては邪魔もせずむしろ積極的に支援してくれるサポート役になってるのは面白い立ち位置だなあ、と。
そして、なんだかんだとソフィア姉さんへのアプローチが成功しかけている件について。博士、いつの間にかソフィア姉さんにガチでマジになってしまってるじゃないですか。最初の頃は博士本人もからかうと面白いから程度の玩具的な扱いだったと思うのだけれど、いつごろからマジになってたんだろう。まあおちょくられているのを除けば、博士のソフィア姉さんへの対応って基本献身的だったのを考えると姉さんがグラっと来てしまったのも無理ないかなあ、と。何だかんだと大事にされてしまっている、という感覚あったでしょうし。
まあ、囚われのところを助けに来てくれた王子様なルートがおもいっきり自分は上官兼姉であって女性としては眼中になかった、というのを思い知らされてしまった、という理由もあるんでしょうが。

肝心の記憶を消されてしまったスヴェンがルートとの絆を取り戻すシーン。ルートの覚悟、というかスヴェン=アーヴェイを大事に思うがゆえに、彼女をあらゆる頸木から解き放つリセットを行う決断は良かったんですけれど、もうちっと盛り上がりには欠けたかなあ、という印象。実のところ、今回の事件に関してはルートはスヴェンに対して一心不乱というわけでもなく、むしろルートとゲーニッツ、二人の物語という感が強かったせいもあるんじゃないかなあ、と思うんですよね。
兵器としてのルートを求め続けたゲーニッツですけれど、当人は最後まで気づいてなかったようですけれど、あのルートへの執心は優秀な兵器を得るためではないのでしょう。むしろ、たった一人の友人としてのルートに、自分の歩む道についてきて欲しかった、という理由であった方がゲーニッツの言動には筋が通るんですよね。
人と交わらぬが故に、友を得るという意味を最後まで理解できなかったゲーニッツ。しかし、一方でルートに対して残していた誠実さや執心は、ゲーニッツが自覚なくルートを友として扱っていた、とも言えるわけで、そのアンバランスさが哀しく、ゲーニッツの死にこの世でたった一人涙を流して悲しんだルートの姿に、切なさを感じると共に一人でも泣いてくれる人が居たんだなあ、とゲーニッツという黒幕にして最大の悪役のキャラに感じ入るものがあったのでした。
ただの野心家の悪人では醸し出せない雰囲気があったと思います。惜しむらくは、だからこそもっとルートとゲーニッツの間の因縁をもっと以前から前に押し出していたら、このクライマックスも盛り上がっただろうに、というところですか。

あと、一時勘違いしていた伍長の正体が、まわりまわって本当にあの人になった、というのは上手い試みだと思いましたねえ。想像していた通りのキャラクターで、いい意味で裏で暗躍してくれるキャラが増えたなあ。
さて、シリーズ通じての大事件が一段落したわけですが、これで仕舞いではなくまだ続くのですね。ここからパン屋のままどう展開していくんだろう。

シリーズ感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 4 ★★★★☆   

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉4 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 4】 SOW/ザザ HJ文庫

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感謝祭用のお菓子作りを依頼されたルートだが店の仕事も増え、疲労もピークに達していた。そんな中、親衛隊のヒルデガルドと「人狼」と呼ばれる工作員がルートの命を狙いオーガンベルツに現れる。
スヴェンがあっさりヒルダの変装を見破り、2人を捕えることが出来たが、「人狼」にルートがかけた言葉は「あんた、パンは焼けるかい?」だった。
ぐああ、効いた。全然予想だにしていなかった展開に、これは見事にテンプルぶち抜かれた。
油断を突かれた、と言ってしまうとそれまでなんだけれど、この読者側の油断を誘う構成が絶妙なんですよ。このシリーズ三巻に渡って重ねられたイメージという観念を見事に利用された、いや既刊だけではなくこの4巻中だって親衛隊のヒルダという少女の最悪に近かった印象をひっくり返す再生と成長の物語が完璧に近い出来栄えだったからこそ、この【戦うパン屋と機械じかけの看板娘】という作品が構築する「枠」を勝手に決めつけてしまっていたわけだ。なんという巧妙なお膳立て。
「伍長」の正体だって、そりゃもうイイようにミスリードされてしまっていましたよ。全然気づいていなかったし、同時進行していたソフィアが居る開発局の襲撃事件の方とのリンクもまさかのカラクリだったからなあ。
そもそも、本作のラスボスたる存在からして、そりゃもう胡散臭くて怪しくてマッドでサイコなダイアン博士がどうやったって怪しかったわけで。そりゃ、この人ソフィアさんにご執心だし、何だかんだとスヴェンやルートたちの都合に合う暗躍をしてくれてましたけれど、あくまで当人の好奇心や欲望優先で、どうやったって味方になってくれるような人ではなかったわけで、何だかんだと結局最後にはこのダイアンが障害になるものだと思っていたのですが。
うむむ、こうしてみると今までこの物語を読んでいて、こういうモノだと思い込んでいた勝手に決めつけていたものを、片っ端から一から十まで見事に土台からひっくり返されてしまったんじゃなかろうか。
いやもう、お見事としか言いようが無い。
何より、ありふれた悲しい無慈悲な出来事の一つとしか思っていなかった開発局の、ソフィアの傍で起きた悲劇が……まさか、こんな風に繋がっているなんて。ハイドリヒの一言にいったいどれだけ愕然とさせられたか。
一つ一つだけ取り上げても、無情な結末としか言いようが無いのに、それをつなげてしまってより惨たらしい事実をあからさまにする、この構成。二人が再会できる可能性があったことが、ハッピーエンドとなる筋道がじつは合ったことが同時に知らしめられることで、余計に威力を増してるんですよね、これ。
もうなんか、うわぁぁ、ってなりましたよ。きっついなあ。

三巻でのやりたい放題で印象最悪だったヒルダが、彼女がそうなった人格形成の過程である過去の出来事と、現状の彼女を支えるもの。それを揺さぶり彼女が必死にまとって鎧っていたものをふるい落として本当のヒルダを剥き出しにしていく、少女の再生の物語。そして、自分もまたそんな彼女の変化に揺さぶられ、人間のような心を育てていくスヴェンの成長の物語。この優しいハートフルなストーリーが本当に完璧でねえ……。
それを自分から盛大に巨大ハンマーでふっ飛ばして粉々にしてみせる作者の豪腕さ、好きだわー。愛おしいからこそ、思わず千尋の谷に突き落としてしまう悦楽。そこから這い上がってくると信頼しているからこそ、そのキャラクターたちを徹底的に蹴り落とすこの偏愛。これぞ作家の業であり、物語をよりビンビンに漲ったものにしてくれる贄なわけで、ここからの盛り返しに関してはもう確信の領域である。
かなりダメージ喰らいましたが、この大転換には次巻にかぶりつくより他ありません。

シリーズ感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 3 ★★★★  

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉3 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 3】 SOW/ザザ HJ文庫

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スヴェンとジェコブは新営業戦略として隣町サウプンクトにパンの出張販売に訪れていた。しかし、そこで起きたジェコブの運命的な出会いが「トッカーブロート」を揺るがす大事件の発端になろうとは。ジェコブを巡るパン売り上げ戦争の勃発にワイルティア親衛隊の思惑が絡み、事件は混迷化の一途を辿る。果たしてルートに安寧の日は来るのか!?
ここで見事なレベッカ推し。スヴェンの姉妹機にあたるものの、情緒豊かを通り越してやや過剰な感すらあるスヴェンに対して、レベッカは実に機械的に何の感情も挟まず、監視任務も命令通り密かに粛々と続けていて、これまで本当に本編には関わることなく傍観者に徹していたのですけれど……レベッカもスヴェンの姉妹機ということは元は人型強襲兵器のサポートAIであり、本来なら相棒であった搭乗者がいたんですよねえ。
今回の話は、レベッカの相棒にも深く関わってくる話となり、彼女も無関係ではいられない……いや、無関係で居ようと思えばなんぼでも居られたはずなのですけれど、レベッカもレベッカで乙女よなあ。
ってか、このAIたちみんな揃って情熱的な乙女すぎる(笑
常識はずれなスヴェンと違って、レベッカは実にオーソドックスなクール系機械少女と言えるのでしょうけれど、その秘めた想い、ずっと心に宿している相棒への情熱たるやスヴェンにも負けず劣らずの一途っぷりであり、熱量であり、博士博士、あんた相当のマッドでイカレ野郎のくせに、なんでこんな乙女ばっかり作ってるの!?
ってか、ハートが乙女でないと起動しなかったんだろうか。AIであった段階ではスヴェンもレベッカも性別はなかったみたいなのにねえ。
しかし、相棒であったルートに一直線でアプローチできているスヴェンに対して、レベッカの方はもう少し複雑な話になってるんですよねえ。レベッカの相棒にはちゃんと相手がいるわけで、彼女はそのままジェコブの方に行くんだろうか。

パン屋になってもやたらと国絡みのゴタゴタに巻き込まれるルートですけれど、彼の場合銀狼の勇名に誘われて向こうから事件がやってくる、というわけではなくて、本当に誰かが後ろで糸を引いているというわけではなく偶然巻き込まれてるんですよねえ。スヴェン絡みでもありませんしねえ。スティーブン・セガールでもあるまいに(笑
でも、ルートが偶然巻き込まれている事件はどれも単発で起こっているものではなく、悪化しつつある国内事情にまつわるものでもあり、一連なりになっているとも言えるわけでなんとなく雰囲気が戦後の混乱期から安定に向かうのではなく、むしろ大きな戦乱の前を感じさせるような不穏な雰囲気になってきてるんですよねえ。
その原因となっている人物が今回明確にされたわけですけれど……国軍と親衛隊の内部抗争という構図になりつつあるのかー。これもう、組織内のパワーゲームで収まる雰囲気じゃないじゃないですか。内乱になってもおかしくなさそうなのが何ともはや。
シャイロック爺さんという辣腕の武器商人にして、被差別民族の側にある登場人物として、このシリーズで一貫して触れている民族問題、戦勝国と敗戦国の意識格差、階級による貧困差別などに関しても、欠かさずグイグイと蹴りこむ話になってますし、バックグラウンドのきな臭さは寄り濃くなってる感じだなあ。
果たして、一パン屋としてこれらの問題にどれだけ立ち向かっていけるのか。でも少なくとも、今までは「パン屋」としてこれらのややこしい問題の数々に、地元だけとはいえ改善傾向に持ってってるのだから、実に真っ当にパン屋として戦っているんですよねえ。単に戦闘で戦ってるだけじゃない、というのはホント偉いと思いますよ。

シリーズ感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 2 4   

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉2 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 2】 SOW/ザザ  HJ文庫

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徐々に経営が安定し始めたパン屋「トッカーブロート」の店主ルートの元に、巨大飛空船で開催されるワイルティア・旧ペルフェの親睦パーティの招待状が届く。
そのパーティで供されるパンを焼いて欲しいというのだ。
お店の知名度アップを目論むスヴェンに説得され参加を決めるルートだが、その裏には政治的な思惑や陰謀が渦巻いているのであった。

相変わらず、機械人形なのにクールどころか感情が溢れすぎてて若干暴走気味ですらあるスヴェンが可愛すぎる。うん、クール系も好きですよ。マシンマシンした娘がふとした瞬間に垣間見せる感情の萌芽みたいなものは愛でるに十分な要素ですけれど、スヴェンの情熱的な性格は機械人形キャラのイメージをひっくり返すパワフルさで、実に素晴らしい。ちょいと嫉妬がすぎやしませんか、というくらいルートにコナ掛けてくる女性に対して威嚇しすぎなきらいがありますが。
しかし、スヴェンは気づいていませんけれど、これもうルートの方はスヴェン=アーヴェイである事に気づいてるんですよね。一巻の終わりに気づいたような素振りみせてましたけれど、疑惑段階じゃなくてもう確信してるようなんですよね。元愛機のAIがいきなり女の子の姿で現れたことに対して、さして気にした様子も見せてないあたり、この男大らかがすぎるんじゃないだろうか、と若干焦りすら覚える。元上官のソフィアもだけれど、彼をよく知っている人であるほど、この男を放ってはおけない、という気持ちになってるのもわからなくはないなあ。どうも、男女の機微云々どころじゃなく本当の意味で鈍いようなところがあるし。それでいて、かなり繊細な面もあるからなあ。ソフィアは、ルートへの対応完全に間違えてますよね、これ。いや、罵倒と手足が同時に出るのは性格みたいなので、間違えてるんじゃなくて最初から終わってた、というべきか。まあ激しく叩かないと反応が返ってこない感じだから気持ちはわかるけれど。
と、話が逸れたけれど、ルートの方はスヴェンの素性についておおよそ検討をつけている、というか戦場で誰よりも信頼していた相棒だと察したからか、一巻の時よりもスヴェンの行動や判断に対する信頼感がはるかに増しているので、彼女との息もピッタリなんですよね。けっこう、スヴェン乱暴なこともしているのですけれど、その場面においては必要な事でもあり、それをルートは邪魔したりせず彼女に任せるので、かなり厳しい場面の連続にも関わらず、スムーズに対処が進んでいたあたり、二人のコンビは先の大戦の頃の黄金期に勝るとも劣らないレベルに戻っていたような感じすらあります。それも、軍人としてだけではなく、パン屋の主人とウエイトレスとしても、黄金コンビになってたんじゃないかなあ。
こうして、二人でパン屋としてやっていける。おいしいパンを作って、美味しいと笑って食べてもらう。それをスヴェンと成し遂げる成功体験を、この事件以前に得ていなかったら、さてルートはソフィアの強引な、そして彼のことを親身になって心配した彼女の引き戻しに逆らえたかどうか。
ソフィアが指摘した、パン屋として働くことが逃避であり代償行為にすぎないというのは1面の真実だったのでしょう。でなければ、あれだけルートが動揺する理由がない。少なくとも、スヴェンが来るまでのルートでは否定しきれなかったでしょうね。でも、先の事件を通じて、彼はちゃんとパン屋としてやっていける、自分のパンが笑顔をもたらしてくれるという実感を得ることが叶っていた。この時点で、ルートはすでに過去に対して自分なりに区切りをつけることが出来ていたのでしょう。もちろん、なおも揺さぶられ、引き戻され、振り替えさせられることは起こるでしょうけれど、すでに彼は進みだしていたわけで……ソフィアお姉ちゃんの心配は、すでに彼の方で勝手に解消されてしまっていたわけだ。それは祝福スべきことなんだろうけれど、自分と関係ないところで、というのは忸怩たる思いがあるだろうなあ。彼女にとっては、ルートは自分の手の届かない所で傷つけられ、自分の知らない所で立ち直って先に進み始めていたわけですから。
彼女の愛情は不器用すぎて苦笑しか浮かばないレベルなんだけれど、その不器用さが可愛くてねえ、私は好きなんだけれどなあ。

大戦が終結し、しかしまだ世情が落ち着かない世の中。ワイルティアと旧ペルフェの融和の象徴として取り上げられることになったルートのパン屋だけれど、そういう宣伝が必要とされる時点で両民族の関係がこじれていることが明らかであるし、実際現場でルートたちが凄まじく蔑ろな扱いをうけたことそのものが、融和の実態がどれだけ酷い有様なのかを示している。社会問題化している戦災孤児は、さらにテロの捨て駒として使い棄てされ、さらに世情の不安を煽り拡大を企むグループもいる。
戦争の終わりが決して平和の訪れを意味せず、戦後という言葉の裏でより深く、より陰湿に争いの種がまかれ芽吹いていく様子が、この物語の中では丹念に描かれている。憎しみ、恨み、妬みといった負の感情が、戦時のような爆発的なそれではなく、じわじわと煮立つように燻っている様は、胃の腑が重たくなるような雰囲気だ。
だからこそ、純朴とも言えるルートの、美味しいパンを食べてもらって、笑顔になってほしい、という願いに切実な希望を感じるのだろう。それを体現しているであろう、ミリィの変化はだから一つの救いであって、随分と眩しいんだなあ。

1巻感想

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 4   

戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉】 SOW/ザザ HJ文庫

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人型強襲兵器を駆り「白銀の狼」と呼ばれた英雄ルート・ランガートの夢はパン屋を開くこと。戦争が終わり、無事パン屋を営むルートだったが、その怖い顔のせいか、さっぱり売れない。そこで窮余の策で募集したウェイトレスとしてやってきたのは、ルートの軍人時代の愛機「アーヴェイ」のAIから生まれたという白銀の髪と赤い瞳を持つ美少女だった。
これ、ジャケットデザインが大勝利仕様じゃないですか!? もう見た目一発でキュピーン!ですよ。パンの絵を全面に押し出しているのもさることながら、ルートとスヴェンの重なった立ち姿の構図が非常に面白い。それに、敢えて真ん中に立たせるのではなく、端っこに立たせてタイトルをバンと置いて目立たせてる構図が、むしろ二人のシルエットに目を引かせる要素になってるように思うんですよね。凄く印象に残る。久々に表紙絵見てグワングワン脳内揺さぶられる感覚を味わいました。
ジャケットでまず掴みはOK、さらにあらすじでヒロインの娘が軍用兵器の元AIということで、AI好きとしてはドストライク決定。作品読む前からこれだけガツンガツンこられる作品はなかなかないですわー。
とはいえ、AI少女スヴェンの性格、キャラクターは思ってたのとかなり違ってたんですけどね。思い込みとして、やっぱりAI系という出自のヒロインというとロジカル、冷静、健気、献身、秘めた情熱という論理的クール系美少女という思い込みがあったんですけれど、スヴェンはまさかの感情アッパー系。健気で献身的という基本は押さえているものの、凄く感情豊かで情熱的で思い込んだら一直線で、というある意味マシンタイプのヒロインとは裏腹の可憐なキャラクターでした……だが、これがまた素晴らしい!
人型強襲兵器のAIだった頃、別に女性人格じゃなかったというのがむしろいいんですよ。ルートの愛機のAIとして同じ戦場を潜り抜け、生死を共にし、相棒として戦い続けるうちに芽生える自我。AIでしかない自分をまるで人間の相棒のように扱う主に刺激され、徐々に育っていく情緒。そうして生まれてしまった人格は、やがて戦争が終わりルートが軍人を辞め、自分を置いて去っていくという別れを体験することによって、決定的なものへと至ってしまうのですが……彼女はある意味、ここで自分で自分を「彼女」として既定するのですよね。勿論、強襲兵器搭載型AIだったアーヴェイを、まったく別の存在へと「改変」した人はいるんですけれど、彼女が彼女になったのって、外部の意思ではなくあくまで彼女自身の意思であるわけです。人の姿となり、兵士としてのルートの相棒という枠を逸脱し、彼の生きることすべての相棒として彼を支えたい、ずっとついていきたいという願いが、ただのAIだったものを「彼女」へと進化させたのである。
私はこういう、本来ヒロインと成り得なかった、何者でもなかった在り得ない立ち位置から自力でヒロインの座をもぎ取る決然とした覚悟と意思と貪欲さバイタリティを持った娘って、大好きなんですよね、大好物なんですよ。その点において、彼女……スヴェルゲン・アーヴェイはまさにドストライク。素晴らしいの一言。
ルートは、彼女がかつての相棒だと知らなくて、それどころか機械人形であることも知らないのだけれど、姿形どころかAIだった頃の彼女とは情緒の豊かさや感情の激しさとか全然違うはずなのに、その言動から度々AIアーヴェイを重ね見てしまうんですね。不器用で人付き合いが決して上手くない彼が、苦手なはずの歳若い女の子相手にも関わらず、彼女といるとかつて愛機を駆っていた頃の安心感、信頼感を感じてしまう。この知らず、通じ合った関係がまたキュンキュンきてしまうんですよね、もうキュンキュンですよ。
作中の雰囲気は決して明るくなく、戦争が終わった後もなお引きずられる国同士の因縁、実際に戦争で傷つき喪った痛みによって負の感情がわだかまり続ける「戦後」という終わらない、いや一度終わったからこそ続いてしまっている「平和の影の部分」が、重苦しい雰囲気を醸し出しているのだけれど、スヴェンの情熱的なまでの一途さと、ルートの素朴な人柄、そして平和な世の中でパン屋を開きおいしいパンを作って多くの人に食べてもらいたい、という自身の心の傷を超えて思い至った夢への純粋な思いが、そして彼の夢の純粋さに感化された人たちの優しい気持ちが、この物語を重苦しいものだけではない、温かいハートフルな物語へと育て上げ、押し上げている。
恨みや憎しみを単に否定するのではなく、受け止めた上で次へと進めてくれる素敵で、いい話じゃあないですか。
問題は、ルートはもう完全に街のパン屋さんであるスヴェンはパン屋の看板娘なので、果たしてパン屋さんと看板娘という立場のままで、何やら不穏な動きのある国際情勢や暗躍する謎の超技術に関わる組織、とかとどう絡んでいくのかがえらい難しそうなんですよね。続きはもちろん、大いに望み求める所なんだけれど、一体どう話を広げていくんだろう。
ともあれ、スヴェンの可愛らしさ、十分堪能させていただきました。機械少女最高っ。

SOW作品感想

よろず屋退魔士の返済計画 3.時を越えた再会4   

よろず屋退魔士の返済計画 3 時を越えた再会 (オーバーラップ文庫)

【よろず屋退魔士の返済計画 3.時を越えた再会】 SOW/蔓木鋼音 オーバーラップ文庫

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過去からの依頼、よろず屋退魔士最大のミッション開始!

「おう、我が息子よ、久しぶりだなぁ! 」
今日も借金返済に励む狗朗とみぎりの元に借金の原因を作った追儺獅郎が帰ってきた。これまでの恨みをぶつける狗朗に対し、獅郎はある人物からの依頼を持ってきたという。渡された手紙を開くと封印されていた術が発動し、二人はなんと過去の世界に飛ばされてしまう。
20年前の東京で困惑する彼らの前に現れたのは、死んだはずの狗朗の母親、神堂杏花だった。杏花が持っていたトランクには狗朗とみぎりを過去へと飛ばした術と同じ封印が施されていたのだった。
借金返済コメディ、今度は過去からの依頼に挑む!
運命って言葉、最近はネガティブな意味合いで使われる事が多くって、「運命を打ち破れ」みたいな立ち向かうべき壁、或いは檻のようなものとして捉えられてるじゃないですか。でも、本来「運命」という言葉はもっと素敵で晴れやかでキラキラと輝いているものだったんじゃないかな、と思うのです。無数にあるはずの選択を消し去り、決まった結末へと収束していく、終わりへと至る「運命」ではなく……出会いであり再開であり、そこから無限に広がっていく起点となるべき始まりとなる「運命」。
「運命」とはきっと、祝福された奇跡のことなんだろう。それも、ただ与えられるものではなく、連なり積み上げ紡ぎ上げた想いの結実として、産まれい出たるモノなのだと……この狗朗とみぎりの運命の物語を読んで、熟とそう願ったのでした。
きっとこれは、終わりへと至るはずだった運命が、始まりへと生まれ変わる偉大な恋の物語。
元々、狗朗とみぎりの関係って凄く特別感が漂っていたんですよね。ただの女性上位の幼馴染関係、というには新堂本家に行ってしまった狗朗を、みぎりは七年間も誰も帰ってこない家で待ち続けていた、というみぎりの姿が普段の行動的で活力が漲っていて腹に一物も二物も抱えている腹黒で、常に一手二手先を読んでいる聡明さとは裏腹で、その愚直で一途で想い人の帰還をじっとじっと耐えて待ち続ける女という姿とのギャップがみぎりという少女のキャラクターに一言で言い表せない情の深さを纏わせることに成功していたように思う。
普段は狗朗を顎でこき使い傍若無人なくらいに振舞っている彼女だけれど、その根底には彼に対して自分の人生をまるごと捧げて悔いる事がないだろう一途さと献身が垣間見えて、もう一方の狗朗のみぎりに対する深い信愛、それこそ命を彼女のために費やす事に何のためらいも抱かないような、大切にしようという気持ちと相まって、この二人のカップルは普段のドタバタな関係からは想像できないくらい深く深く結びついていて、傍から見ていても、時々思わずドキッとするような奈落に片足を突っ込んでいるような、触れてはいけない神聖さすら感じるような絆を感じさせるものがあったわけです。
私は、二人のこの表層は軽々として、しかし深いところでは侵し難いほど通じ合い捧げあった関係が大好きでねえ、近年読んだ本の中でも特別好きなカップルの一つでした。
でも、果たしてこの二人にこれほどの想いが生まれた発端は何だったのか、あのみぎりが、七年という時を待つことに費やすほどの気持ちはどこから生まれたものなのか。そういうものだと疑問にも思わなかったのだけれど、どうやら二人のつながりにはきちんとした理由があり、奇跡があり、つまり二人にはちゃんと掴みとった運命があったのです。そのすべてが明かされるのがこの物語。過去から未来へと繋がる、運命の恋の物語。
その詳細は本編を参照してもらうとして、私はますますこの二人のことを好きになりましたよ。運命によって結ばれる、とは他人任せに聞こえるけれど、彼らの場合は決して誰かから与えられた決まりきった結末ではなく、正気を失うほどに求めて渇望して足掻いて苦しんでそれでも追い求めた果てのことであり、同時にそんな過去からの想いとは棚を別にして、今を生きる狗朗とみぎりが改めて自分たちで始めた関係であり、七年という十代の少女にとっては人生の大半を費やして、待って待って待ち焦がれた果てに取り戻した再会の運命であり、神堂杏花と追儺獅郎というロミオとジュリエットが全霊を賭して掴みとった末に生まれた愛の結晶なのである。
過去からの想いがあってこそ生まれたものであり、しかし過去に縛られない未来の始まりとして生じた「運命」。
そんな二人の運命に、目いっぱいの祝福を。彼らのこれからが幸せでありますように。とても、素敵な物語でした。

1巻 2巻感想

よろず屋退魔士の返済計画 2.魂縛りの少女4   

よろず屋退魔士の返済計画 2 魂縛りの少女 (オーバーラップ文庫)

【よろず屋退魔士の返済計画 2.魂縛りの少女】 SOW/蔓木 鋼音 オーバーラップ文庫

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洋館! 海! そして薄幸の美少女襲来!

「もう夏かぁ……海にでも行きたいものだな」
莫大な借金返済のため、「死者専門の何でも屋」を開業した追儺狗朗(ついな・くろう)と九十九みぎり、そして新たに押しかけてきた神堂葛(しんどう・かずら)の三人。
相変わらずのヘンテコな依頼にドタバタしつつも、たまにはということで海へ遊びに来ていた一行のもとに、狗朗を狙う術士の少女が現れる!
狗朗の実家でもある「追儺一族」の因縁に縛られた少女に隠された謎とは! ?
借金返済コメディ第二弾、今回もフルスロットル!
凄いなあ……いや、みぎりの度量の広さには思わず唸らされてしまった。彼女ってば、実質その人生を狗朗の為に捧げてきたようなもので、ずっと狗朗の事を待ち続けていたんですよね。それで、ようやく願い叶って狗朗の身請けが出来たと思ったら葛なんてお邪魔虫が後からくっついてきてしまった。正直、面白く無いと思うんですよ。葛という娘自体、酸いも甘いも噛み分けた狗朗と違って良い所のお嬢様で苦労知らずの世間知らずでプライドばかり高い扱いにくい娘で、決して無条件で仲良く出来るような娘さんじゃないわけですよ。その上、狗朗に対して憎からざる感情を抱いている。敵です、みぎりにとっちゃあ敵以外の何物でもない。自分と狗朗との生活に紛れ込んできた異分子であります。そんな葛に対して、当初から辛辣な態度を取っていたみぎりに、まあ無理もないよなあ、と思っていたのですが、ここからが彼女を見損なっていたところでして……。
葛は、前回の事件をきっかけにそれまで長い間狗朗を見下し酷い態度で接し続けていた事に大きな負い目を抱いていて、一生懸命自分を繕って不遜に振る舞ってはいましたけれど、一枚皮を剥くと心身ともに大きく傷ついて、自分を追い込んでいたのでした。その挙句、必死に自分は役に立つとアピールしようとして、尽く失敗してしまい、新堂の保護をハズレて裸一貫の自分がどれほど役立たずか思い知ってしまい、へこむやしぼむわ、報いようとした狗朗に逆に迷惑をかけてばかりだわ、とかなり深刻に精神的にメタメタになってしまっていたわけです。
みぎりは、狗朗が気付かないような深く細かい部分まで葛の状態をちゃんと見抜いていて、なんちゅうかなあ……ずっと息を止めてしまって膨らむ一方だった葛の張り詰めた心を、真っ向から突っ込むことで解き放ってしまったのでした。それも対等の立場で、これ以上引け目を与えないように、受け止めきって吐き出させたのです。あのお風呂で、葛が堰を切ったように泣きだしてしまったシーンにはほとほと感心してしまった次第。それ以降、葛が完全にみぎりに懐いちゃうんですよね。あの気難しかった娘が。
ほんと、大した女ですよ、九十九みぎりという人は。メインヒロインであるんだけれど、完全にこの娘を中心に物語やキャラクターが動いているのがよく分かる。女王というか女将さんというか、1巻でも彼女こそが牽引役だと感想で書いていましたけれど、単に狗朗を尻に敷いている、というだけではない多くの人の光となり、支えとなる人なのだというのが、この二巻を通じて実感した次第。そんなみぎりだけが、異能とは縁のない一般人である、というのが不思議で面白いんですよねえ。何の力もないにも関わらず、狗朗や葛を庇護してるのは間違いなくみぎりなんですもの。
そんなみぎりに対する狗朗の接し方も、幼なじみ故の気安さの中に確かに憧憬めいたものが感じられるんですよね。守られているが故に、絶対に守らなければならない、という確信。騎士の忠誠めいた絶対命題がかいま見えるわけです。それが、1巻でも触れた、お互いに自分の存在、人生を相手に捧げ尽くした関係につながっているんだろうなあ。そして、それこそがこの二人に幼馴染という関係以上の深度を感じさせる空気を醸しださせているのではないだろうか、と。いやね、そんな二人だからこそ、葛が介在する余地なんてどこにもないと思ってたんですよねえ。故に、その葛を懐に入れて家族に迎え入れたみぎりは、本当に凄い女だと感嘆させられたわけです。
やっぱり、魅力的なヒロインと、味わい深い人間関係があるとお話は面白くなりますよねえ。


1巻感想
 
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11月30日

(GCノベルズ)
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(GCノベルズ)
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11月29日

(ヒーロー文庫)
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(ヒーロー文庫)
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(ファミ通文庫)
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(エンターブレイン)
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11月28日

(Mノベルス)
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(Mノベルス)
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(Mノベルス)
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(Mノベルス)
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11月27日

(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(アクションコミックス)
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11月26日

(エンターブレイン)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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11月25日

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(ガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(コロナ・コミックス)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップノベルス)
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(オーバーラップノベルスf)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(KADOKAWA)
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11月22日

(MFC)
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(MFC)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス フラッパーシリーズ)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスpixiv)
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11月20日

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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(GCN文庫)
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11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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11月18日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガブックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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11月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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