YuzuKi

家族なら、いっしょに住んでも問題ないよね? 2 ★★★☆   



【家族なら、いっしょに住んでも問題ないよね? 2】 高木幸一/YuzuKi GA文庫

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文化祭でシンデレラの王子役をやることになった、真。奇しくも姫芽の学校でもクラスで演劇を予定し、シンデレラ役を姫芽がするという。
ならば一緒に練習せよという長女、宙子の提案に戸惑う姫芽。
また町内の運動会に草原家も参加することを宙子は宣言、二人三脚の練習を真と波月に命じた。
近づく真と姫芽、そして真と波月。姫芽の真への想いに気づいた波月は、三人で出かけることを提案する。
姫芽と波月の新たな魅力に触れ、真の胸にはある想いが過ぎる……。

「魔法は解ける。たぶん、どんなものでも。でも俺の気持ちは――」

高木幸一×YuzuKiが贈る甘く、もどかしい青春ラブコメ第2弾!

そりゃ近所の人にも怒られるよ、というくらい家の中が騒がしい草原家。ボリュームが、声のボリュームが大きい! というか、この子たちひたすら叫んでるでしょう、みんな絶叫するように怒鳴り合っているわけで、そりゃうるさいよ。美星ちゃんなんか、この子セリフの語尾みんな「!」ついてますよ!? ひたすらフルボリュームで声張り上げてますよ、この子。
でも美星ちゃんって不思議とセリフ読むと同時に声が聞こえてくるんですよね。これだけ明瞭に声をイメージしてしまったのは美星だけだったなあ。
それだけ自分の中の存在感も美星は際立っていたのですけれど、不思議とあれだけきゃいきゃい全力で突っ走るような騒がしさの塊みたいな娘だったのに、お子様という感じはしなかったんですよね。いや、お子様なんですけど。小学生丸出しの感情任せの勢いだったのですけれど。
でも美星って既に心映えは子供という括りをはみ出した「女の子」だったと思うんですよね。言動はまだまだ小学生というランクに甘んじていましたけれど、心意気は本気だった。真への気持ちは掛け値なしに女の子として本気だったんじゃないでしょうか。
その点、まだ真の方は見損なっているというか、侮っているというか、小学生としてしか見れていない気もするけれど、姫芽と波月の方はどうだろう。真にまとわりつく美星にまで噛み付いていたのは、彼女達のメンタルの余裕の無さなのか、それとも美星に対して潜在的な脅威を感じ取っていたのか。
いやマジな話、真打ちは遅れてやってくる、じゃないですけどさ。この子大人になったらどころじゃなく、中学生、思春期迎えたくらいで既にとんでもねー女になりそうなんですよね。波月も姫芽もグズグズしてたら、ガチで後ろから追いついてきてそのまま勢いよく真のハート奪い取って、姉二人を置き去りにしてぶち抜いて行きかねない「モノ」を持ってそうなんですよね。
パワフルさというか、とにかくロケット噴射し続けてるような勢いとスケールがものが違うのよね。まあ思春期を迎えてなお、このパワーを維持できるのか、という所もあるのですが。
話を聞く限り、姫芽も小さい頃はわんぱくを通り越したパワーファイターだったみたいなのが、今みたいにやたらと遠回りしたがる娘さんになってますし。
いやでも、姫芽ってちゃんと告ってきたり、キスしてきたり、と遠巻きにグズグズしていると思ったらいきなり突っ込んでくる所もあるので、決して引っ込み思案タイプではないと思うのですけれど。
むしろ、波月の方が姉妹を優先して自分は引っ込んでしまう、という性質を今回露骨にぶちまけることになってしまいました。むしろ、その動きがあからさますぎて、メインヒロインのストリームに乗ってしまったのは予想外だったんですよね。
真は決して鈍い方ではなく、むしろ家庭環境もあって他人の顔色を伺うこと、人心の細部まで見抜く観察力に秀でているので、彼女の抑えきれない好意には当然気づいていて、その気持ちに反応して自分の中でもそぞろに動く感情というか感覚があったはずなのですけど。
うーむ、真という男の子はどうも理屈っぽいというか、自分の中の感情にも他人からの感情にも反応が鈍い、というよりも感覚のままに動けなくて立ち止まってしまう所があるようなんですよね。
長年、自分を泥人形と規定してしまって、意図的に感性を鈍らせていたのを引きずってしまっている所もあったのでしょうか。
わりと敏感に他人からの感情を察知して受け取り、一方で自分の中でも反応良く感覚を感じ取っている様子が見受けられるのに、それをどうにも持て余しているように見えたんですよね。
生じた感覚をロジカルに具体的な言語化をせしめないと、それに基づいた行動を取れない、というのでしょうか。はっきりと理屈にしないと、固まって行き詰まってしまって取りあえずの反応対応を取れないという感じで。こういうの、不器用って言うんでしょうね。
なので、文化祭直前の時期に煮詰まっていた真に、加賀くんがしたアドバイスというのは真にとって実はかなり助かったんじゃないでしょうか。あの割り切り方の助言がなかったら、真の不器用さからして劇の本番に多大な影響を出してしまったでしょうし。
出番は決して多くはなかったですけれど、クラスメイトの加賀くん、何気に相当の「人物」だったんじゃないでしょうか。あの対人能力と観察眼はべらぼうだと思うよなあ。真に対してあれだけ踏み込んだように、他の人にも敢えて奥まで踏み込むようになれば、大失敗もするようになるかもしれないけれど、相当の出来物になるんじゃと感じさせるキャラでえらく興味深いと思わせてくれる子でした。
と、話を戻すと真ですよ。感情とか感性とか感覚って、究極的にはやっぱり言葉にし切れないものでもあると思うんですよね。それを無理矢理にでも言語化してしまうからでしょうか、真の言葉にはちと仰々しい面がある。クドいくらいあざとい側面がある。気持ちをそのままとりとめもなく言葉にして吐き出す事をせず、喋り言葉の域を逸脱して「台詞」めいた畏まった所があるというのか。
ちゃんとした形作りした言葉にしようとする所があるんですよね。
で、それに理屈という形に押し込めて結論を出そうとするからか、無理が出る。
自分の中に芽生えた感情を素直に受け止めた結果として、気持ちを消し去るなんて感じて生み出して今現在自分の中を駆け巡っている衝動を、そして波月と姫芽がその心の中でバチバチに弾けさせているものを無視した、出来るはずのない、出来ないからこそどうにもならなくなって気持ちがわやくちゃになって自分自身のコントロールを失ってかけてしまったものを、消し去るなんて言ってしまえるのだろう。
むちゃくちゃ言ってる自覚、あっただろうか。
傷つけまいとして、ひどく傷つける言葉だったんじゃないだろうか。好きという気持ちを消すとか、そのために家を出るとか。
不器用にもほどがある。誠実であり真面目であることは、果たして相手に寄り添っていると言えるのだろうか。
こういう相手には理屈じゃないのだ。気の感情をぶつけないと、有無を言わさずぶつけてぶつけて、感覚でわからせないとダメなのだ。だから、波月の大爆発は大正解で、多分このどうしようもなく愚直で感情を持て余してうまく反応できない男の子には、溢れんばかりの感情を常に波立たせ爆発させぶん回している草原家の四姉妹が、絶対に必要なのだろう。最適なのだ。最良の相手なのだ。だからこそ、寄り添える人たちなのだ。
思えば、真にとっての唯一の親友であった三島も、無軌道で理屈なんか欠片もない感情任せの男だった。
つまりは、そういう事なのだろう。

居場所を得て、家族を得て、好きな人が出来て、そうして彼の孤独は消え去った。
この先、家族の形や関係は変わっていくかもしれないけれど、姫芽が希ったように家族であるという事だけは決してなくならないのだろう。
草原家四姉妹の四人掛かりなら、この不器用ゆえにともすれば自己完結してどこかに行ってしまいそうな男を引っ捕まえていられるはずだ。
ぜひ、そうであって欲しいものです、うん。


家族なら、いっしょに住んでも問題ないよね? ★★★★   



【家族なら、いっしょに住んでも問題ないよね?】 高木幸一/YuzuKi GA文庫

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「そこ、部屋を裸とか下着で歩かないっ!先輩を誘惑しないでっ!」

天涯孤独となった高校生、黒川真は、なぜか4姉妹と住むことに――。
小説家の長女、「きみは生理的にOK」と、クールな高校生の次女、元気いっぱいで、真になついてくる小学生の四女、そして――。

「あ、あのっ!あ、あたし……、黒川先輩のことが……好きです」
「君にはふさわしくないよ。俺は」

中学の卒業式に告白をお断りした後輩が三女だった!?
真面目で堅物な後輩、姫芽は同居に対してツンツン。真の方も一緒に住むことに気まずさを感じる(ですよねー)。

誘惑の多い同居生活と過去の恋。甘く、もどかしい青春ラブコメ開幕!

「家族なら、いっしょに住んでも問題ないよね?」というタイトルは、その語り口からも軽いタイトルのように見える。起こり得るだろう問題をとりあえず見なかったふりをして、なんとなく勢いで上手くいくような。楽しさ優先で、深刻さとは無縁なように。
でも実際は、そんなドタバタホームコメディとは大いに様相を異にしている。
このタイトルは、この言葉はさながら胸の奥から絞り出すようにして吐き出された希求の願いだ。家族を欲する、祈りのような言葉だったのだ。

両親を早くに喪い、引き取られた祖父とも折り合い悪く突き放されるように必要最低限の接触しかなく、その祖父も高校入学と同時に急死してしまい、親戚たちも引き取り手なくたらい回しにされて、生活も住む所も見通しが立たず途方に暮れていた彼を引き取ったのが、遠縁に当たる草原家の宙子さんであり、彼女と共に暮らす四人の姉妹たちでした。
彼女達もまた、両親を喪って宙子が親代わりに身を寄せ合って暮らしてきた人たち。そんな中に突然放り込まれた真。挙げ句、三女の姫芽は中学時代の部活の後輩で、卒業式の時に告白されて振ってしまったばかり。ああ気まずい、居た堪れない。
それでも、彼女達は真を受け入れてくれる。それは同情や優しさで無理を押して受け入れてくれたのとは少し違っていた。彼女達は本当はそんな無分別な優しさとは無縁の、姉妹達だけで生きてきた者たちらしいリアリストだ。彼女達は自分たち家族のことを、凄く真剣に見つめながら考えて生きている。必死というほど切羽詰まっていないけれど、両親という保護者がいない環境で彼女達が寄り添って生きていく、という事は決して安易に過ごしていては成立しないものなのだ。
それでなお、彼女達は真を受け入れた。同情や優しさで受け入れるほど彼女たちには余裕はない。打算や家事担当として仕方なく、というほど姉妹だけで暮らしてきた環境に異物を取り入れるほど切羽詰まっても居ない。

それでも、個人的に真に対して複雑な感情がある姫芽以外が、連れてきた宙子以外の美星と波月が彼を受け入れたのは、熱に浮かされた真の口から溢れた魂からの言葉が、届いてしまったからだろう。
両親を喪い、姉妹が居るとしても家族を亡くした虚を間違いなく抱えているこの姉妹たちの心を揺さぶる傷を、目の当たりにしてしまうだけの痛みが、あの時の真の言葉には刻まれていた。

あれは、自分にとっても衝撃だった。胸を打つ一言だった。彼の抱えていた孤独を思い知らされる願いだった。どれほど、黒川真という少年が深い深い孤独の底で生きてきたのかを痛切に伝えてくれるシーンだった。
あれで、この作品の方向性を刻まれた気がした。

彼はボッチではない。少ないながら心許した友達が居て、部活でもよく活動していて、学校生活は無難に過ごしている。でも、ボッチではない事は孤独ではない、とはまた違うのだろう。
彼には家族が居ない。居たことがない。物心がまともにつく前に両親は亡くなり、駆け落ち同然に結婚した二人は親族からは縁を切られていて、彼を引き取った祖父もまた親族からは浮いた存在だった。その祖父は、真に愛情を注いだ様子はない。本当は大切に思っていた、なんて裏もなさそうだ。幼い孫に祖父が吐き捨てた言葉は、今なお真を蝕む傷跡となって彼の孤独感を奈落に突き落としているかのようだ。彼の人生に、今まで家族という存在は居なかった。でも、彼に家族は必要なかった、なんて事は絶対にないのだ。
だから、彼が家族を欲することを誰が否定できようか。祖父の言葉に呪われて、どれほど自分から背を向けようとも、あの時高熱に朦朧としていたからこそ、魂の底からの願いがこぼれ出たのだと思えば、それは祈りに近い希求であったのだ。

そんな彼だからこそ、彼女達は受け入れた。多分、そんな彼だからこそ相応しかったのだ。欠損を埋め合うのに、足りないものを満たすために。必要であったから。
でもそれは傷を舐め合うようなそれとも違うんですよね。家族を増やすのは、そんな後ろ向きの行為とは違う。もっと前向きで、より豊潤に生活を潤すもののはず。
それを一番に率先してやっていたのは、末っ子の小学生の美星で。あの美星とのデート回。あれは正直凄かった。あれ、真に死んだパパの面影を重ねているようで、全然違うんですよね。きっちりパパと真の事は分けて捉えていて、でも真の存在に新しい家族を迎えた喜びを覚えている。いや、この娘が姉妹の中では一番包容力があるかもしれない。積極的に、どこかまだ途方に暮れていた真を家族として引っ張って迎え入れてくれたように思う。元々波月曰く、美星は天才肌だと言うけれど、そういうの抜きにしてもこの娘大人になったらとんでもないイイ女になるんじゃないだろうか。既に小学生の段階でその傾向が出まくってるんですが。
そして波月とのデート。ここで彼女が語ってくれるのは、現在の姉妹達のこと。プロフィールもなんだけれど、もっと踏み込んだ姉妹ならでわの視点、いや普通の姉妹ではなかなか踏み込まない所まで、姉妹だけで生きてきたからこそより深く見つめてきた姉妹たちの姿、本質を訥々と流れの中で語ってくれる。家族になるからこそ、教えてくれる領域とでも言うべきか。
でもやっぱり、他の姉妹のことは語れても自分自身の事はなかなか語れるものじゃない。自分のことは自分ではわからないし、納得できないものもある。でも、そんな自分では見えない自分の姿を、姉妹の話を聞きながら真は外からの視点で、いや家族からの視点で波月の問いに答える形で応えるんですね。彼を受け入れながらもちょっとボーダーを引いていた波月が、そのボーダーを大股で跨ぎ越えてグイッと真の事を正面から見据えたのはこの時だったんじゃないでしょうか。
そして、部活でも親しい後輩だった姫芽。多分、友人たちを除けば一番身近で心を開いていたのが彼女だったのでしょう。だからこそ、大いに拗れてしまっていたとも言えるのでしょうが。
近いからこそ、すれ違ってしまった時にお互い直視できなくなってしまう。彼女にあったのが、憧れであり好意であり恋情であったのも、余計に新しい家族になるんだと現れた真に冷静で居られなかったのでしょう。
お風呂場の一件で、姫芽の中に根付く恐れを払ってくれたのは果たして家族としての真の存在だったのか、想う異性としての彼だったのか。身内として受け入れることが出来ても、振られた時の誤解が余計に彼女を苛んでいく。その誤解の元が、振られた原因が真の孤独の起因となる祖父の呪いだなんて知らないから尚更に。
結局、彼の呪いを祓うのは彼に本当の家族を与えてあげるのがまず必要で、姫芽としてはこれどうしたって迂回ルートなんだよなあ。いや、迂回しているようで自分のフィールドに引き込んでいるとも言えるし、真相を知った途端にためらわず突貫したあたり、この娘もこの娘でイケイケドンドンな長女や末っ子と同じ姉妹だなあ、と思ってしまった。真面目で堅物で頑固だけれど、少なくとも積極性に掛けては他の姉妹にも負けていないや。

エピローグで繰り広げられた大騒ぎは、お客さんではない本当の家族らしい遠慮なしのじゃれ合いで、欠けたるをピッタリと埋め込んだような満了の賑やかさ。そこで響く楽しそうな笑い声に寂しさを偲ばせる空虚さはもう見えない。
この四姉妹プラス1の在り方の肖像がこれからどう変わっていくかはわからないけれど、少なくとも彼らはもう本物の家族で、これからもそれは変わらないのだろう。
とてもあたたかく胸に沁み入る素敵なホームドラマでした。すごく、よかった。

高木幸一作品感想
 

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