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転生魔王の大誤算 4 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート ★★★★   



【転生魔王の大誤算 4 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート】  あわむら赤光/kakao GA文庫

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憤怒の魔将が挑む、絶対に怒ってはいけない侵略作戦!?

魔将たちの心を見事にまとめ上げ、魔王としての器にさらに磨きがかかるケンゴー。
次なる作戦にサ藤、マモ代、ベル原を指名、三カ国を同時に無血攻略させるゲームを立案する。
マモ代やベル原が自信ありげなのとは対照的に、難題に苦悩するサ藤。
「バカな……殺すだけで減点だと!?」
憤怒の魔将だけどキレるの禁止!
存在意義を真っ向否定されるルールに、七転八倒するサ藤を見かねて、ケンゴーが差し伸べたとある救済策とは――サ藤のことを見てるだけ!?
「はい、ありがたき幸せです!!」
わずかなきっかけで劇的な急成長をさせる嬉しい誤算が止まらない!
愛する部下を熱く育てる最強名君の爽快サクセスストーリー第4弾!!
こういう勘違いで主人公が過剰に持ち上げられるように見える作品って、その勘違いや誤解ってなかなか解消されないんですよね。場合によってはすれ違ったまま最後まで行ってしまう。
相互理解が致命的に破綻したまま、主人公の本当の気持ちや価値観、素の顔なんて知らないまま、見向きもしないまま、理想を押し付けることで主人公は他人からの理想を演じるハメになる。
或いは、主人公が成長してそうした一方的な理想に追いついていく、という展開もあるのだけれど、本質的にそういった立場に立たされている主人公って孤独なんですよね。
その点、本作においては幼馴染のルシ子がケンゴーの最大の理解者で、彼が本当はヘタレチキンだと知った上で支えてくれている、ヘタレチキンだけれど彼の一番芯の部分にある強さや勇気や、履き違えていない優しさの持ち主だというのをちゃんとわかってくれている人が側にいるだけで、最初から随分と違ってはいたんですよ。
最初から、ケンゴーは孤独ではなかったわけだ。
それどころか、前巻では嫉妬の魔将レヴィ山くんが、ケンゴーのヘタレチキンのことはよくわかっていないものの、ケンゴー自身がよくわかっていないケンゴーの良いところ、長所、優れた所、残虐な魔王らしくないけれど魔王という支配者にして統治者として相応しい要素、ある意味ケンゴーの本質的なところを、もしかしたらルシ子よりもわかってるんじゃないか、という理解者だったというのが明らかになった話でもあったんですよね。
ルシ子にしてもレヴィ山にしても、ケンゴーのこと大好きなの、上辺とか見た目とか勘違いじゃなくて、ケンゴーの本質を理解した上で大好きでいてくれるし、ケンゴーの方も七大魔将たちのこと強大な魔族としてビビってるし反逆されないかいつも恐れてるし、過剰な評価や期待を押し付けてくるのに疲れているんだけれど、それ以上にケンゴーの方も彼らのこと何だかんだと大好きなんですよね。
マモ代をはじめとした他の魔将の面々も何となくケンゴーの素の方との距離感縮まってきた感もありましたし。
すれ違ってお互いのこと見えてなくて砂上の楼閣みたいないつ崩れてもおかしくないいびつな関係に見えていた魔王ケンゴーと七大魔将たちの関係、どんどん気心の知れた身内みたいな、主君と部下というよりも遊び仲間みたいな、すごくよい関係になってきていたんですね。

ただ、そんな七大魔将の中で、サ藤君は特にケンゴーとすれ違い食い違っている人物のように見えていました。冷酷にして残虐、怒りに任せての殺戮を厭わないキレ易い若者代表、憤怒の魔将サ藤くん。その在り方や思想は誰もが思い描く悪魔そのもので、穏健路線で人間とも出来れば戦争したくないし血を見るようなことは避けてほしい、という方針のケンゴーとは全く真逆なのである。
ところが、サ藤はケンゴーの事を崇拝と言っていいほど敬愛して、ケンゴーこそは魔族の中の魔族、冷酷非情なる魔王に相応しい人と思い込んで、自分の理想を当てはめているのである。
ある意味、魔将の中で一番ケンゴーの事を慕いながら、ケンゴーを理解していない人物でもあったわけだ。理解しようとすらせず、理解する気もなく、一方的な崇拝を押し付けていたのである。
ケンゴーの方も、彼の前では従順で大人しくて健気な少年という顔しか見せないサ藤の事を可愛い弟分として甘い顔ばかり見せている一方で、サ藤の残虐で恐ろしい性格の方はなるべく見ないようにしていた節があるんですよね。
そうした二人の乖離は途方もなく広がっていて、これいつか破綻して破滅的なことになるんじゃないか、と思ってしまうほどに、相互理解が壊れていたのでした。
こういう思い込みの激しく頑なで、ある意味純粋ですらある子って、ほとんど変わることがないから、もう彼に関してはずっと勘違いさせたまま、誤解させたままで行くのだろうか、とも考えていたのですが。

そうかー、この物語はケンゴーの方だけじゃなく、部下たちの方も成長させてくれる物語なのか。幼い固定観念を打ち壊して、すくすくと健やかに伸ばす機会が訪れる物語でもあったのか。
お互いに、成長していける話だったんですねえ。

契機は、サ藤が人を殺したりとかあんまり酷いことをしないで国を征服せよ、という課題のために離島しようとした魔王軍への降伏派に属していた幼き才媛リモーネ王女との出会いだったのです。
言われてみると、サ藤もまだ魔族としては若者どころか、少年と言ってもいい歳頃だったんですねえ。
聡明なる知性と勇気と天真爛漫さを兼ね備えた小さな姫は、頑迷な古くからの魔族の固定観念に縛られていた幼き魔族の、まさに蒙を啓いていくのである。そうして、サ藤の思い込みを解きほぐし、彼とケンゴーの間にあった錯誤をすり合わせていってくれるのである。
それも、サ藤の信じるケンゴー陛下の素晴らしい魔王としての姿を全肯定したまま、ケンゴーの魔王としての事績、その統治思想や考え方を説いていくわけである。
同時に、サ藤がゴミクズとしか思っていなかった人間という存在を、リモーネ自身がひっくり返しながら。
最初はお互いになんだこいつは!? と面食らいドン引きしながら、でも衝突を繰り返していくうちにお互いの存在に惹かれ合っていく幼い少年少女の育まれていく関係がまたいいんですよ。
いけ好かない小僧だったサ藤が、リモーネに言い負かされ諭され、いつしか我慢を覚えて、ときに自分の中の固定観念を壊されて幼い年相応の顔を見せ、そんなみるみると成長していくサ藤を、リモーネが憧憬とも慈しみともつかない表情で見守るという、このボーイ・ミーツ・ガールはこれがまた微笑ましくてねえ。
ついには、自分がボロボロになりながらも、足手まといのリモーネを決して見捨てず身を挺してかばい続ける、まるで騎士のように耐え続けるサ藤の、今までの彼からするとありえない姿を見せられた時は、なんかもう感動を通り越してしまいそうでしたよ。
この弟分の成長を、ケンゴー陛下が喜ばないはずがなく、そしてその弟分がゴミクズのように痛めつけられる事を許せるはずがなく。
ヘタレチキンが怒るとほんと怖いんやでえ。
かわいいかわいい身内が痛めつけられた際の、魔王陛下の憤怒は留まる所を知らぬのである。こういう時、もう誰も文句が言えないくらいカッコいい姿見せてくれるんだから、七大魔将たちの敬愛も尊敬も、何も勘違いでも過剰評価でもないんですよね。最近は、その辺がっちり噛み合ってきてすらいるし。
ってか、ケンゴーってば最後おっさん仲人みたいになってるじゃないですか。いやもう、手をつないでギュッと握り合うサ藤とリモーネの小さなカップルが尊すぎて気持ちはわかる!





転生魔王の大誤算 3 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート ★★★☆   



【転生魔王の大誤算 3 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート】  あわむら赤光/kakao GA文庫

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ケンゴー陛下と結婚パーティーに同行するのは、どの魔将だ!?

人畜無害なヘタレチキン高校生、うっかり魔界の名君に!?
誤算続きで予期せぬ名声を得まくって、魔族全軍から心酔される最強魔王爆誕!
大人気シリーズ第3弾は、【嫉妬】のレヴィ山の真なる力が明らかに……?
魔王の自覚に目覚め始め、魔将たちとの絆がさらに深まってきたケンゴー。
占領した王都の再建を待つ間、しばしの休息を兼ねてレヴィ山の妹の祝賀パーティーに赴くことに。

「で、誰を同伴者に選ぶんです?」
女性同伴がマナーとされる中、ルシ子、マモ代、アス美、さらにはベル乃までもがケンゴーの『正妻』役を名乗り出て一触即発の事態に!
一方ケンゴーを迎えるアザゼル男爵領では魔界の四大実力者に数えられる大物アザールが魔王に認められたいあまり、極上の接待を用意していた。
だが、それがケンゴーの逆鱗に触れる大誤算で――!
“愛する”部下を守る“理想”の魔王の爽快サクセスストーリー第3弾!!

今回はほぼレヴィ山くんが主人公と言って良かったんじゃないだろうか。
まるっきりチャラ男で軽薄そうな態度とは裏腹に、レヴィ山ってマジでイイ男なんですよね。真面目ですし義理堅いですし気配り上手ですし情に厚いし。そもそも、今のチャラい態度もどうしてそうなったのか、どうしてそうしているのかを知ってしまうと彼の人間的な魅力に繋がってくるので、その軽薄さがなんとも愛おしくなってくる。
というか、彼の人生愛される事とそれを理不尽に喪うことの繰り返しで、よく人間性が歪まなかったよなあ、と思えるほどの山あり谷ありなんですよね。これだけの体験をしながら、今のようなレヴィ山になっている事自体が彼の強さを示しているようじゃないですか。
でなかったら、どこかで憎しみや恨みに囚われますよ。どこかで憤懣を抱え、世を嫉み、人を妬んでしまったでしょう。「嫉妬」を司りながら、レヴィ山の嫉妬ってネガティブな側面をあまり持たない。どちらかというと、それは憧れに近いもののように見える。自分にはないもの、持ち得ないものに凄いなあと憧れ、尊敬し、自分もそう在りたいと願う。ちょっと健全なくらいじゃなかろうか。リスペクトが常にある。
その分、それに見合わない詰まらない相手には一顧だにもしない所もあるんでしょうけれど。
彼は常に望まぬ立場を得てきました。今のレヴィアタン家の当主になったのも決して望んでの事ではなく、また魔将としてケンゴーに仕える事になったのも渋々の事でした。でも、彼はそこで掛け替えのないものを与えて貰うのである。
だからだろう、レヴィ山は一際家族や身内への愛情が深いし、実母と引き離され自分を愛してくれた兄たちと死別した事で大切なものがいつ喪われてもおかしくない儚いものがという事を身にしみて実感している。実の息子でない自分を、義母が自分の本当の息子たちを喪いながらもなお立ててくれる事を心から尊敬し、多分尊敬する以上に敬愛してるんじゃないだろうか。そんな義母に倣ってる所も見受けられるし。
そんなレヴィ山ですから、ケンゴーへの過剰なくらいの評価や称賛も実のところ決して的外れだったり誤解や勘違いでもないんですよね。ケンゴー自身は過剰評価されて変に勘違いされてると思ってるみたいですけれど、むしろケンゴー自身が気づいていない所もちゃんと見てる感じですし、ケンゴー自身が評価していない所を正しく認めているとも言える。ケンゴーが戦いを好いていないのもちゃんと知っているし、ケンゴーが思っているよりもずっとケンゴーの事ちゃんと理解してるんじゃなかろうか。
だから、ケンゴーが変に繕って魔王スタイル維持してなくても、レヴィ山の敬愛は何も変わらないんじゃないのかな、と確信して思えるようなレヴィ山くんの回でした。
レヴィ山が一人で抱え込んで我慢しようとした事を、ケンゴーが自分の戦争嫌いを飲み込んで、レヴィ山兄妹を苦しめるやつらは絶対許さん、と勇気振り絞ってレヴィ山への愛情を示してくれた時点で、レヴィ山の忠誠度はもうとどまる所を知らずでしょう。あれはレヴィ山でなくても、惚れる魔王様の御姿でしたし。
あの場面で、ケンゴーと同じノリ、ではないんだけど、ウチの身内になにさらしてくれとんじゃー! と、ばかりに他の七魔将たち全員がやる気みなぎらせて喧嘩売りにいったあたりも大好きなんですよね。
七魔将たち、こいつらもなんだかんだと仲いいなー、と。ちゃんと身内認定なんですよね。同じ上司に仕える同僚ってクールな関係じゃなく、魔王様の寵愛を奪い合うライバルでもなく、魔王様を頂点とした悪ガキ集団、みたいな感じで。一応、魔将ってからには大貴族で大将軍であるはずなんだけど、ケンゴーと魔将たち七人で身内で友達で、打ち解けた家族みたいな雰囲気にいつの間にかなってたんだなあ。
そう考えると、あのダサいレヴィ山とかルシ子というあだ名も、立場とか家柄とかいと高き名前とかうっちゃって、身内同士の中で呼び合う特別な関係の証拠、みたいなもんなんですよね。レヴィ山の妹のシトレンシアが、最後にあだ名つけてもらうシーンで、思わずなるほどと納得してしまいました。

色々と怪しげに暗躍する黒幕の様子が垣間見えてきましたけれど、それ以上に魔王と七魔将たちの関係が勘違いとか思い込みで出来た虚飾の関係じゃなくて、何だかんだと心通じ合った仲間たちである事がわかってきて、敵がどうであろうと心強い限りじゃないですか。うむ、面白くなってきた。




両親の借金を肩代わりしてもらう条件は日本一可愛い女子高生と一緒に暮らすことでした。 ★★★   



【両親の借金を肩代わりしてもらう条件は日本一可愛い女子高生と一緒に暮らすことでした。】  雨音 恵/kakao 富士見ファンタジア文庫

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今日からアナタは私のものです! 親のせいで可愛いJKと同棲(のち結婚)

海外逃亡した両親の借金の返済を迫られた高校生・吉住勇也を救ったのは社長令嬢の同級生・一葉楓だった。
その条件は、「――私と同棲することです!」「……なんで!?」
そして始まった楓との生活。
全国女子高生ミスコンの1位に輝くほど可愛い彼女が、お風呂に一緒に入って背中を流そうとしてきたり、添い寝したり……、「いやいやこんなことで絆されないぞ!」と意地を張るも、誰にも見せない無邪気な笑顔や人知れず努力する一面を知れば知るほど、どんどん楓が好きになって……。
抜群に可愛くて、ちょっと抜けてて、一生懸命な彼女とのハプニング満載同棲生活!
これ、男女を逆にしてしまうとわりと盛大にアウト案件じゃないですか?w
親の借金でヤクザに引き取られそうになった少女を、金持ちのイメケン男子が代わりに借金払った見返りに自分のものにした上で、自分の部屋に住まわせながら迫りまくる、という構図は完全にエロ漫画である。いや、少女漫画とか少女系小説なんかだとこういうパターンもあるの?
でも一緒のベッドで寝ようとしてきたり、勝手にお風呂入ってきたりって、美少女でなければ許されない、ですよねw
いいんだよ、美少女なんだから許されるんだよ、というお話である。
とはいえ、金で買った関係である、というのは厳然とした事実。借金取りのお兄さんとは幼い頃からの付き合いでもうなんか兄貴分という感じでお兄さんの家族ぐるみで懇意にしていた関係でしたし、借金の件もお兄さんかなり本気で上に取りなして身体張って勇也の事守ろうとしてくれていたので、本当に酷い事にはならなさそうだったので、勇也の方にもあんまり絶体絶命から救ってくれた恩人、という実感は得られていなかったみたいなんですよね。
なんなら、楓と結婚して大企業の社長職を継がなきゃいけない、という強制ルートも大概地獄っぽいですし。
というか、今どき電機メーカーなんてしかも一族経営とか、お先真っ暗で先行きヤバそうなんですけどねえ。
とはいえ、楓の方は借金を笠に着て無理やり健人に迫るというわけではなく……いや、人生プラン押し付けられた段階で思いっきり笠に着てるかもしれませんけど、普段のアプローチでは立場の違いを利用してという真似はしていないのでセーフ、ギリギリセーフ。自分個人の魅力でもってアプローチするのはセーフの範疇、思いっきり女の武器を使いまくってる気もしますけど。
でも、そのあたりも好きの気持ち任せで結構無理はしている感じはあるんですよね。積極的にイケイケガンガン突撃していますけど、完全にノリノリでというわけではなく、ちょっとビクビクしながらという風情も見受けられるんですよね。だからこそ、一途さが感じられて、健人の方も惹かれていったのでしょうけれど。
相手から良い反応が返ってきだしたら、必死のイケイケにも段々と調子が出てくるというもので、いやこの場合は調子に乗ってきだすというべきか。学校でももとのキャラ続ける気さらさらなく、見せつけるようにバカップルをはじめてしまうあたり、ウカレてキャラが壊れたのか素が出たのか、或いは所有を主張する牽制だったのか。
案の定、健人にほのかに好意を持っていた娘たちは軒並み撃沈されてしまうわけですが。
個人的には、所詮金で買ったのがはじまりの関係、別に本当に好きな娘が出来てしまった場合、二階堂哀との仲が友情ではなく恋愛感情に至ってしまっていたら、どんな修羅場になっていたかは興味あるんですよね。借金問題というお金が絡んでいる上に金を払ってでも手に入れるという重たい愛情が合わさっている以上、とてもドロドロとした愛憎劇になりかねない要素たっぷりな環境設定だったのですが、無事というか残念ながらというべきか、そちらは回避されて順当に積極的な好意の攻勢に撃ち抜かれて陥落した、という展開に収まった感があります。
健人が楓の事を段々と好きになりながら、その気持ちに応えることを躊躇していた理由も、両親に捨てられた事で大事な家族を作ることへの怯えがあったから、みたいなものでしたけど、そもそもおいていかれた時もそれほどショック受けてた様子も見せてなかったですし、いや夢見て泣いちゃってたりはありましたけれど、それだけと言えばそれだけであんまりトラウマという感じがなかったですしね。ちょっと取ってつけたような印象はありました。
ともあれ、すんなりと愛されることを受け入れ、自分の人生を彼女に預けることを決めてしまいましたけど、これから彼女に寄り添うには尋常ではない多大な努力が求められることを彼はちゃんと理解しているんだろうか。覚悟決まってるんだろうか。彼女の気持ちに応えるという一点にしか意識が行っていなくて、与えられたものを返すことの困難さを果たして見ているんだろうか、という不安が。
あと、あんまり日常シーンなかったんですよね。同棲している上でのハプニング的なエピソードは幾つもあったのだけれど、一緒に暮らしている中での何気ないワンシーンとか、生活感を感じさせる景色、呼吸みたいなものを読み取れるシーンがあんまりなくて、同世代の男女が同居しているという折角のシチュエーションに対して、広がり奥行きをあんまり感じられなかったのはちと残念でした。
続きあるのかな。もうあとはひたすらイチャイチャするだけしかやることなさそうだけど。というか、最初からイチャイチャしかしてないですが。

転生魔王の大誤算 2~有能魔王軍の世界征服最短ルート ★★★   



【転生魔王の大誤算 2~有能魔王軍の世界征服最短ルート】  あわむら赤光/kakao GA文庫

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臣下達の重すぎる忠義と愛に後押しされ、しぶしぶ世界征服を続けるケンゴー。
ベクター王国を一瞬で攻め落とすと、統治体制を確立するため民心獲得政策を打ち出す。
金と物をバラ撒き、魔王の体面を保ちながら、どれだけ民に媚びることができるか、ヘタレチキン魔王の政治《たたかい》が始まる!
意外にも臣下達も協力的で、むしろ有能すぎてケンゴーもほくほく顔。
「これはうれしい誤算だな! 」
だが、魔族と人族の融和を望まぬ者達が暗躍。
まさかアイツまでもが謀略の糸を張り巡らせ、ケンゴーの優しさ溢れる占領政策を妨害する!?
魔王の自覚が芽生え始め、臣下達の愛もますます深まる、誤算だらけのサクセスストーリー第2弾!!

媚びる媚びる、これでもかとゴマをすって媚びまくる。
これが誰かに仕える立場なら佞臣路線一直線なのだけれど、ケンゴー君は一番偉い魔王なのである。それが偉そうな顔をしながら、幹部である魔将たちに媚を売り、征服した人間の都市の市民たちに媚を売り、と大安売りもイイ所なんですよね。
自分の意図が伝わって無くて、独自解釈で盛大にやらかしてドヤ顔の魔将たちを叱責したり罰を与えたり、なんて小心者の彼に出来るはずもなく、まず褒めて褒めてその上で自分の思ってたのとちょっと違うなあ、というのを伝えつつこれはこれで素晴らしい結果を出していると褒め称え、その有能さと忠誠心を褒め称え、君たちは間違ってはいないしよくやってくれたけれど、ちょっとだけ方向修正するからね、悪く思わないでね。という趣旨の話をふんぞり返って尊大な物言いで覆い隠しながら、実質低姿勢で全力で媚びを売りまくる魔王ケンゴー。
いや、ここまで偉そうにおもねることが出来るのって、それはそれで才能かもしれない。いやいや、ちゃんと話聞いてたら無茶苦茶言ってるなあ、というのが露骨にわかるので別に全然上手いこと言ってるわけじゃないんですよね。凄まじくボロボロとボロを出しまくっていると言える。
それでも魔将たちが褒められたと喜び、超好意的に解釈してくれて、尊敬を深めてくれるのはそれだけ普段も最初からちゃんと話聞いてくれてない、という証左でもあるのかもしれない。
今回は、間違ってぶっかけられた魔法薬によって、冷静さを保てなくなると内面の凶暴さが表に出てしまうという副作用によって、魔将たちが思いえがく理想の魔王様像を何度も実演してみせてしまったのが、思い込みを助長させる結果になってしまっていたのかもしれないが。
いやでも、この副作用状態のケンゴー、ただの性癖全開の中二病に掛かった変態、でしかなかったような。これ、ただのエロ魔王ですよね。
おかげで、ケンゴーの正体を知り小心者としての彼をフォローし守ろうとしてくれているルシ子が、火消しに苦労するはめになるのですが。傲慢を司る彼女があくせくとケンゴーのやらかしをフォローしケアして回ってるというのは何とも皮肉な姿でもあるのですが、彼女の場合傲慢ってのはただのツンデレだから別にいいのか。むしろ、実体は健気で献身的、と言ったところですもんね。自分だけが本当のケンゴーを知っている、という優越感も持っているみたいだし。ある意味、彼を独占しているとも言えますからね。なので、自分だけに弱音を吐いてくるケンゴーに対して、つんつんしているようでこの娘だだ甘で、やたらと甘やかしてやがりますし。ケンゴーも、ルシ子にベタベタなものだから、二人きりになると途端にイチャイチャしてばかりなんだよなあ。

ただ、そのルシ子の優越感もいつまで保てるか。
ケンゴーの中身を理解せず、勝手に自分の理想像を彼に被せてファンか信者のように盛り上がっているように見える魔将たち。実際、ケンゴーはその幻想を裏切らないために四苦八苦しているわけですけれど、本当に一から十まで全部誤解と思い込みで、魔将たちの忠誠心と信仰が成り立っているかというと、彼らは見事に能力はともかく見る目はなくてぼんくらもイイ所ですけれど、完全に何も見ていないし話も聞かない、というわけじゃあないんですよね。
少なくとも、ケンゴーが本当にカッコいい魔王様だというのはわかっている。
小心者で臆病者だけれど、ケンゴーは卑怯者とは程遠い男である。平和主義者で本心ではまず話し合い優先で戦う事は怖いし嫌だし面白いとも思っていないけれど、引いてはいけない場面では決して退かない。理不尽に対して心から怒り、自分を困らせてばかりの部下たちだけれど、その忠臣には本当に感謝して有能さには尊敬すらしている。いざ、彼らがピンチになった時に自ら身体を張って守り助けることに何らの躊躇も抱かない。
魔将たちがオーディエンスと化して、魔王様かっけぇぇぇ! とやんや喝采してる時は本当にちゃんとカッコいいんですよね、魔王ケンゴー。いやそれにしても、ひたすらテンションマックスで大騒ぎしてアゲアゲで居続けるのって、疲れないかな、と思ってしまうのだけれど、推しに夢中な連中というのはこういうものなのかもしれない。
ってか、魔将たちって忠誠心というよりもこれファン心理ですよね。推しのアイドルを一心不乱に応援するドルオタのようなメンタルである。
果たしてそんなファンと理想像と推しの実像には乖離があることは不思議ではないのですけれど……こうして見てるとその乖離は徐々に埋まっていっているような気もするんですよね。徐々に、魔将たちはケンゴーの本質を、実像を理解しつつあるように見える。誤解や思い込みと実像の乖離が埋まりだしてなお、彼らのケンゴーへの敬愛が薄れないとしたら。
ルシ子も、いつまでも自分だけが彼を知ってるのだ、みたいな優越感に浸ってはいられないんじゃないだろうか。既に、アス美あたりはケンゴーの中身について察しはじめているようなきらいもありますし、マモ代は別の意味で盲目的にケンゴーのカッコいい側面に夢中になりはじめているし、レヴィ山くんもあれ、結構ケンゴーのことわかってるんじゃないだろうか。
そんな風に、いつの間にか魔将たちとの距離感詰まってるような感じがあり、面白くなってきた。
しかし、天使サイドはこれ完全に悪役なのか。聖女さまも、見事に狂信者ですし、ケンゴーの怒りに触れる理不尽には事欠かなさそう。





転生魔王の大誤算 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート~ ★★★☆   



【転生魔王の大誤算 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート~】 あわむら赤光/ kakao GA文庫

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歴代最強の実力を持つ魔王ケンゴーにも、決して漏らせぬ秘密があった。
「転生前より状況がひどくない!?」
前世の彼は、伝説の不良だった兄と勘違いされ舎弟から尊敬を集めた、草食系高校生の乾健剛だったのだ!
今度こそ平穏に生きたいのに、より凶悪な魔族達に臣従され、いつ本性を見抜かれるかハラハラの生活を送るケンゴー。
だが命惜しさに防御魔法を極めれば無敵の王と畏敬され、ハーレムに手を出す勇気がないだけなのに孤高だと逆にモテ、臣下の顔色を伺えば目配りの効く名君だと絶賛の嵐で、第二の人生は順風満帆!?
これは己の強さも権力も持て余し、誤算続きで名声まで爆上げしてしまう、転生魔王のサクセスストーリーである!
ルシ子さん、傲慢の魔将なんだけれど嫉妬するわ憤怒するわ、色々と忙しい。というか、傲慢というよりただのツンデレなんですが。しかも、かなりダダ甘のツンである。
勘違いモノの常として、どうしても主人公がひどい誤解をされる事で本当の気持ちとか想いを蔑ろにされ、思い込みでこうと決めつけられて、相互理解が致命的に喪われているケースが目立つんですよね。結果として、主人公は持て囃されながらも本当の自分を見てもらえないまま実質的に孤立してしまっている場合が多いのですけれど、本作の場合は幼馴染のルシ子がちゃんとケンゴーのことわかってくれてるんですね。前世が人間だったのも知っているし、彼がヘタレチキンなのもよくわかっている。いつクーデター起こされて酷い目に合わされるか怯えながら、必死に魔王として繕ってヘタレがバレないように頑張っているのもずっと横で見ていてくれているのである。
口ぶりはキツいし積極的に魔将たちとの関係を取り持ったりなんかはしてくれないものの、秘密を自分ひとりだけで抱えていないだけでも随分救われるし、へこたれた時なんかは何だかんだと甘やかしてくれるし、頼めばツンツンしながらもなんでもしてくれそうなチョロい所もあって、こんな幼馴染居るだけで勝ち組だろう、こいつ。
神様、自分なんか悪いことしました? というのが口癖で自分の境遇嘆くケンゴーですけれど、ルシ子を幼馴染にしてくれただけで大ボーナスだと思うんですけどねえ。
勿論、自分の境遇こそ嘆きながらも、ルシ子こそが自分にとっていちばん大事なもの、という真実だけは見失っていないので、ラストでもその辺ケンゴーにとっての一線に繋がってくるんですよね。どれだけ草食系で小心者で臆病でも、触れてはならないものに手出しされたら戦争である。
ともあれ、これだけ深い理解者が傍に居てくれているというだけでも、周りからどれだけ勝手な魔王像を押し付けられても彼が孤独にはならないのだと安心できる。ルシ子だったら、どれだけ酷い状況に追い込まれても絶対に味方で居てくれる、とケンゴー自身無意識にですが完全に信じ切ってますしね。
とはいえ、他の魔将たちもやんやと囃し立てて、深読みや思い込みでケンゴーの事を超絶魔王と思い込んで尊敬し慕いまくってるのですが、よくよく個々の魔将たちのケンゴーに対する見解を聞いていると案外と的を外していない気がするんですよね。いや、サ藤は相当思い込み激しくて勘違いが進んでますけれど、マモ代なんかはケンゴーがヘタレなのもう見抜いていますし、他の連中もケンゴーのやろうとしている事、どうしてそうしようとしているかは誤解しているか自分の都合の良いように解釈しているものの、ケンゴーのやろうとしている事はちゃんとわかっている奴もいますし、今までの歴代魔王と違うケンゴーのやり方についても分かった上で非常に好意的に見ていたり、彼の魔王としての実績についても決して過大評価じゃなくて、実情を見て評価してたりするんですよね。ケンゴーはそんなつもりないんですけど、とか言いそうですけど当人からは分からない所で彼の魔王としての在り方が魔将たちに良い傾向をもたらしているのは確かなんですよね。
魔族的価値観から、ケンゴーの本心についてはまったく分かっていないにしても、魔王が自分達魔将をかなり気を使って大事にしてくれている事はみんな大体気づいてるのである。ケンゴー、ビビリながらも何だかんだと魔将たち、嫌いじゃないみたいですし、愛が重いとはいえ一途に慕ってくれる彼らのことは何だかんだと親しんでる節もあるんだよなあ。
それにしても嫉妬の魔将のチャラ男なレヴィ山くん、嫉妬するために他人のイイ所探しが得意、というのは実は相当にイイ奴なんじゃないのか?w

なんだかんだと和気あいあいな魔族陣営に対して、むしろ怖いの人間サイドですよ。聖女さまが完全に狂信者&ドMという救いがたい変態だったりするし、全体的に神の使徒という体で思想が操作されてる様子が伺えるんですよね。おまけに、唯一神が実在しているみたいですし、神の意向によって魔族との絶滅戦争が施行されているので、何気に和解の余地がなさそうですし。そもそも、天使なんて神の尖兵まで攻めてくるわけですから、はたしてケンゴーの人間との和平なんて目的は叶えられるのか。魔族はどんどん殺る気満々、神様も殺る気満々、妥協の余地が見当たらねー。
それこそ、魔王のもとに世界征服するのが一番手っ取り早い気がしてきたぞ。

自他共認めるヘタレチキンであるけれど、肝心なものは見失わず、なけなしの勇気の出しどころは間違えない。ビビリで臆病者だけど、だからこそ油断なく、守るべきを護り通せる実力を死にものぐるいで手にしている。そして、怒るべきときに怒れる一端の男なのだ。ルシ子がべた惚れなのは、決して理由なきものではないのである。そんな彼の手による世界征服、うん重ね重ねそれが正解に思えてくる。なんか唯一神、ぬるぬるグチョグチョ系の邪神の可能性も出てきたし。


魔王学園の反逆者 2 ~人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる~ ★★★   



【魔王学園の反逆者 2 ~人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる~】 久慈 マサムネ/ kakao  角川スニーカー文庫

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人間でありながら次期魔王候補に選ばれた雄斗は『恋人』のアルカナの真の力『無限寵愛』を引き出して『世界』の魔王候補に辛くも勝利する。次の戦いに備え魔力を高めるために、リゼルや雅と肌を重ね、訓練を積む雄斗。しかし徐々にエスカレートしていって!?そんななか、校長バルバトスの思いつきで体育祭が行われることに。他の魔王候補たちとも一時休戦かと思いきや『悪魔』のアルカナ、三ツ石イビザが不穏な気配を漂わせる。彼はなぜか異様に雅に執着し、彼女から大切なものを奪い貶めようとする。次第に雅は追い詰められて!?仲間との絆を弄ぶ卑劣な『悪魔』に雄斗は戦いを挑む!王道学園魔術ファンタジー、波乱の第2弾!

眷属との愛情が鍵となる『恋人』にとって、今回の敵である『悪魔』はまさに不倶戴天。愛情を搾取し壟断する『悪魔』の能力は、『恋人』の在り方としても相容れぬどころか、存在を許してはならない敵なんですよね。
もっとも、詳しい『悪魔』の能力が明らかになるのは終盤ではあるのですけれど。でも、初っ端からこいつは見事なゲス野郎だぜ! というクソ野郎っぷりをイビザくんは見せつけてくれるので、そりゃもうこいつは盛大にぶっ飛ばすしかないよね、というカタルシスの贄である。
当然、それだけヘイトを集めてくれる敵の存在はありがたくもあるのだけれど、そういう敵を気持ちよくぶっ飛ばすには主人公サイドにも相応の痛快さを醸し出してくれるための下地が必要なのである。
その意味で雄斗は軽薄すぎず真面目すぎず、愛嬌があり可愛げがありここぞという時に熱く拳を奮ってくれる主人公なので、実に良いヒーローしている。良い主人公なのです。
しかし今回の敵役であるイビザは、見事なくらいにウェーイ系で。実際にウェーイとか言っちゃってるよ、こいつ? ただ狡猾ではあっても頭はあんまり良くないよね。彼の『悪魔』の能力は本気で強力なものであり、色々と制約はあるもののそれはちゃんと頭を使って利用すればさほど不利にはならない程度の制約だったり制限だったりするんですよね。変に欲張らずに効率的に一直線に敵を排除する方向性で動いていたら、果たしてどれだけ対抗できる人材がいたものか。校長が警戒していた、というのも冗談ではないでしょうし。
まあそういう遊びのない戦い方が出来るようなヤツなら、『悪魔』の能力みたいなのは備わらなかった気もしないでもないですけど。
だいたい、雄斗が魔王候補にあがる前から夕顔瀬家に対して色々と仕掛けていたというのですから、だらだらと弄んでいる間に肝心の雅が雄斗の眷属になっちゃったわけですしね。人間の魔王候補など眼中になく、いつでも潰せると障害とも思っていなかったのでしょうけれど。
それにしても、どうもギャルギャルしている裏で上品で楚々とした振る舞いを垣間見せていたので、実はそのお嬢様気質の方が本性でギャルの皮かぶっているんじゃないのか、という疑惑を前の巻で抱いていたのですが……そうかー、故あってギャルの皮をかぶっているわけじゃなくて、お嬢様的な振る舞いの方がしんどくて、ギャルやってたら色々と解放されちゃったタイプなのかー。
どうも、高位貴族のお嬢様として振る舞うには結構鈍くさくて適正なかったみたいだし、頭もあんまり良くないのね。
とは言え、幼少時から仕込まれた貴族としての所作はちゃんと根付いているので、ギャルやってても妙に品の良い感じは漂ってるんですよね。なので、だらしない方向のギャルではないのはだいぶ好ましいんじゃないかと。
他の魔王候補では、なぜかネイトがやたらと好感度高いんですよね。普通に裏表なく良い子なだけに、このまま仲間になってくれればいいのですけど。
そう言えば、前回で「友達」になったゲルトくん、全然今回出番なかったんですけど! もはやヒロイン入りするんじゃないか、というくらいのツンデレっぷりを見せてくれていただけに色々と「期待」してしまっていたのに、もうちょっと男友達にも出番をw
さて、今回はちらっとリゼル先輩がどうして雄斗に目をつけ、彼を『恋人』の魔王候補に祭り上げ自分はその眷属に収まったのか、その理由と思しき反応を垣間見せていましたけれど。やはり、以前に雄斗と面識があったのは間違いないようですね。ただ、雄斗はそれを覚えていない、それもどうも外的要因で。というのが要チェックのポイントでしょうか。理由もなくポッとでの偶然で魔王候補なんぞになってしまうわけもないですしねえ。そこにどんな因縁が絡んでいるのか。
その前に、もう一人の眷属れいなの話になりそうですけど。


魔王学園の反逆者 〜人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる〜 ★★★☆   



【魔王学園の反逆者 〜人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる〜】 久慈 マサムネ/kakao 角川スニーカー文庫

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魔族にとって人間は奴隷でしかない──。
次期魔王候補に選ばれた普通の男子高校生・盛岡雄斗は、転入した悪魔の学校『銀星学園』で蔑まれる。「──あなたを魔王にしてみせる。だから私を……眷属にして」魔族の美少女・姫神リゼルとの出逢いが、雄斗の人生と世界を変えていく。どんな魔法も一瞬で身に付け、眷属の少女と肌を重ねることで魔力を無限に吸収する。それは魔族にはない、人間の雄斗にだけ許された特別な力。魔王候補となった人間が、正義の魔王となるべく、最強の悪魔たちに戦いを挑む!
爽快にして妖艶。成り上がり学園魔術ファンタジー、開幕!

久慈さんの描く主人公は相変わらず、等身大に女の子にドキドキする男の子だ。ハーレムもの、特にエッチ度が高いものだと主人公はやたらと達観して淡々としてる系かむやみに肉食系でガツガツしてるか、というタイプのが多いのだけれど、本作の主人公は程よく年頃の男の子らしい初心なところと女性に興味津々なところが合わさってる子なんですよね。こういう子はヒロインのえっちい場面に良い反応を示してくれるので、個人的にはその手の場面の盛り上がりによく寄与すると思うんですよね。
ただこのユート、突然魔王候補なんて立場に立たされ、人間の身にも関わらず悪魔の学校なんかに通う事になって、実に小市民らしくワタワタと落ち着かない素振りに終始していたし、大事にならないよう巻き込まれないように無難な対応にかまけてるあたり、庶民感たっぷりなんですよね。けど、何気に適応能力があるのか肝が据わっているのか、それとも開き直ったのかあれこれと慌てながらも、根本の所で鷹揚になるようになるさ、みたいな感じで受け止めてる節があるんですよね。また、土壇場に追い詰められるとむしろあっけらかんとした感じになるあたり、わりと「なるようになるさ」なタイプなのかもしれない。最初に絡んできて、両親まで侮辱してきて相当に怒り心頭になっていた相手のゲルドくんへのその後の対応を見ていると、ねちっこさのないさっぱりした性格な所もあるみたいだし。
ヒロインの三人娘は、最初からえらい好感度高めではあるんですけれど、その好意の質も最初はただの期待感のようなものだったのが、ユートの姿勢から中身が伴っていく感じになっていましたね。まあチョロい事には変わりないのではありますが。
それにしても、三人ともそれぞれの方向性を煮詰めたような濃い属性の持ち主で、ハーレムものとしてはヒロインには相応以上の色気みたいなものがあって然るべきだとは思うのですけれど、これはまた極めてきたなあ、と。イラストのkakaoさんのデザインがさらにエロさに拍車を掛けまくってるというかなんというか。れいなとか、まだ中学生で未成熟な貧乳タイプにも関わらず未成熟ゆえのエロスというものをあれだけぶっこんでしまって、大丈夫なのかと心配になるレベル。いや本気で大丈夫かあれ。一方で雅なんかは見るからにエロいギャル系の陽キャラをベースにしながら、どこかリゼル先輩を上回る上品さを秘めているような素振りを垣間見せるのが、ポテンシャルの高さを感じさせてヤバいです、ヤバい。

しかし、そんなヒロイン衆に匹敵する勢いでチョロさを見せてくれるのが、初っ端に突っかかってきて速攻主人公の力を見せるための噛ませ犬として派手にぶち倒されてくれたゲルトくんですよ。典型的なチンピラ雑魚キャラだったにも関わらず、無様に負けた責任を負ってリンチされ粛清されそうになってた所をユートに助けられた事をきっかけに、まさかのツンデレ系親友キャラに変身ですがな。あっさりと鞍替えして媚びてくるのではなく、助けられた後に友だちになろうぜと言われたのをド直球に受け止めて、ユートがヤバい状況に追い込まれた時に自分の立場を顧みずにしかしつんつんした態度のまま何気に重要な手助けをしてくれるんですよね。
「ダチ……なんだろ? 俺たちはよ」
チョロい! チョロすぎるよ、ゲルトちゃん!! なんだよそのデレ方、完全にツンデレヒロインの王道そのままじゃないですか。それのそのまま男の友情バージョンになってしまってますよ。このハーレムヒロインに負けず劣らずの筋金入りのチョロさ。このまま親友キャラとして、ヒロイン三人に追随してくるつもりなんだろうか。レギュラーキャラとして出世していくつもりなんだろうか。そうなったらなったで、ちょっと楽しいぞw
そんなゲルトくんに比べて、第一巻の記念すべき中ボスは、というとこれこそが噛ませ犬本命というような見事なやられ役で。高貴さを気取っているような俺様王様キャラな魔王候補でしたけれど、部下連中がみんなチンピラというかヒャッハー系の品性乏しい輩ばっかりの時点でお里が知れるんですよねえ。というか、その王様スタイルでなんで部下連中こんなのばっかり揃えようと思ったのか。
能力自体は一巻のボスとしては破格に近い強力なものだったようにも見えたのですが。これってわりとラスボス、もしくは裏ボス級あたりが使ってきてもおかしくなさそうな能力に見えるんですけどねえw

JK堕としの名を持つ男、柏木の王道 ★★★★☆   

JK堕としの名を持つ男、柏木の王道 (角川スニーカー文庫)

【JK堕としの名を持つ男、柏木の王道】 永菜 葉一/kakao 角川スニーカー文庫

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最強の会社員、爆誕。闇堕ちしたJKたちを社会人パワーで蹂躙&救済!モテまくる!?有栖川グループ社員の柏木啓介はある日、社長の思いつきで備品として聖ルルド学園へ送り込まれる。そこでは資産家令嬢のJKたちが『借金返済ゲーム』と称し、殺し合いをさせられていた。大人として見過ごせず、柏木は備品枠でゲームに介入。生徒会の久遠寺玲花を倒し、泣かし、救済する。
「サービス残業だ。お前たちは俺が救う。あとは任せろ」
「こんな大人、初めて…っ。オジサマ、素敵!あたしを抱いて!」
絶望したJKたちを救うため、柏木の快進撃が始まった。会社員と女子高生の新たな王道、ここに開幕!

めちゃくちゃおもしろかった!
これ、あらすじ詐欺、とまでは言わないまでもえらい矮小化されてますね。そもそも、社長の思いつきで派遣、という風になってますけれど、いや確かに思いつきなのかもしれませんけれどそんな軽い決断ではないのです。
聖ルルド学園という学校は「没落寸前」の企業の子息を受け入れて、その借金まみれの子供たちに命がけのギャンブルをさせている、という場所なだけに、本来なら世界に冠たる大財閥である有栖川グループは関わることが不可能。なのに社長ってば、子供たちが殺し合いのゲームをさせられていると知って、それを叩き潰すために、入校資格を得るために自分のグループを文字通り「没落寸前」にまで自壊させて、その上で自分の娘である姫乃をこの命がけのゲームに送り込む、という凄まじいことをやらかしてるんですよね。これで姫乃が失敗して負けてしまうと、有栖川グループ社員全員が路頭に迷うというとんでもねーリスクがw
あと、姫乃ちゃん、なんも知らされないで送り込まれてるあたりはご愛嬌w
自分が何やらされて、何を背負わされてしまったか、どんな場所に送り込まれてどんな立場に立たされてしまったのかを知った時の阿鼻叫喚は見ものである。まあ、そんなんでギャーーー!ってなってる暇もなく、柏木さんのやりたい放題に巻き込まれて白目向いて「ぎゃーーー!」ってなってるので、悩んでいる暇もなかったのは幸いなのかもしれません。
もっとも、あの父をしてこの娘。早々に覚悟を決めてしまって、この狂った外道学園をぶっ壊し、苦しめられている生徒たちを助けるのだ、といわば父の思惑に全面的に乗ってしまうのですが。
柏木さん、自分のことを社畜社畜とのたまって、常識や良識やその他諸々を蹂躙してってますけれど、実のところ彼って会社の家畜じゃないんですよね。会社に仕えているのではなく、彼の根源原理って入社式で出会い言葉を交わしてその在り方を知ってしまった、姫乃に仕えているいわば騎士の類なのではないだろうか。
それはそれとして、正しくかつて世界を股にかけた「24時間働けますか」系ジャパニーズビジネスマンの正当な後裔なのですが。正当というかサイボーグ化して論理回路を金槌で三回くらい全力で叩いたようなナニモノかなんですけど。
とりあえず、社畜はそんなお前みたいなターミネーターじゃないから!
社畜ならこの程度誰でも出来る、とのたまうエピソード&技能、全部ターミネーターしか出来ないから! 多分にターミネーターでも出来ないようなことも混ざってる気もしますが。
ともあれ、ひたすら独自の社畜理論を振り回しながら、速やかにやりたい放題やりたおし、リードの持ち手であるところのお嬢こと姫乃が振り回され引っ張り倒されそのまま引きずられてボロボロになって涙目になりながら、結局の所上司らしく或いは飼い主らしく、責任を持って社畜を解き放ち、あらゆる理不尽をさらなる社畜的理不尽をもって吹っ飛ばす、という爽快痛快コメディアクションという作品でした。
むちゃくちゃやりながらも柏木さん、完全に大人なので女子高生は子供扱いなんですよね。あくまで庇護する対象であり守るべき子供であって、異性扱いは一切しないのであります。子供相手ならなにしてもええのんかい、というくらい無茶苦茶している場面も多々あるのですが、とりあえずは保護者対応でありお父さん目線、お兄さん目線、大人目線で一貫している。それが、柏木さんというキャラのやりたい放題でありながら無軌道でない揺るぎない安定感に繋がっていた気がします。
まあ、そういう大人のオトコの下心のない包容力と、絶対に助けてくれるというヒーロー的な存在感……ヒーローというよりもターミネーターな感じもしますけど、そういうの見せられ、実際助けられ、守れてしまったら、年頃の女の子からすればたまったもんじゃあないんですよね。
あらすじだと、えらいチョロく女子高生堕とされてる感がありますが、かなりガチで生死の境目、或いは人間としての尊厳の境界を跨がされそうになった場面で、少女たちが一世一代の覚悟を完了したそのときに、そんな覚悟や責任から許され解き放たれる形であのターミネーターに助けられたというか蹂躙されたというか、まあそんな感じで人生ひっくり返されてしまったわけですから、そりゃ惚れますがな、てなもんである。決して軽くはない、命を賭け女の誇りを賭けるに相応しい本気の恋なのだ。
そんなピチピチの女子高生の本気の本気からすれば、大人の男による子供扱いなんてのは許しがたい暴挙なわけで……。
コードネーム『JK堕とし』はJKの本当の怖さをまだ知らない、のだ。それは、学園を裏から操る
悪意と邪心の徒との対決と、果たしてどちらが苦戦することになるのか。
まあ、やっぱりあの凶悪な社畜のやりたい放題に、JK涙目で阿鼻叫喚の地獄絵図、というありさまが容易に目に浮かんでしまうのですが。

永菜 葉一作品感想

ニートの少女(17)に時給650円でレベル上げさせているオンライン 2 ★★★☆   

ニートの少女(17)に時給650円でレベル上げさせているオンライン2 (角川スニーカー文庫)

【ニートの少女(17)に時給650円でレベル上げさせているオンライン 2】 瀬尾 つかさ/kakao 角川スニーカー文庫

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レベルアップは突然に。サラリーマンと17歳の同棲MMOライフ、第2弾!

MMOを愛するサラリーマン・石破真一は、居候ニートの水那と相変わらずのネトゲライフを過ごしていた。
クリスマスイベントの無能運営に文句を垂れ、職場の上司からの文句にこらえて、ついに迎えた正月はもちろんネトゲ。それと水那、お前はいいかげん風呂上がりは服を着て……
「わわわっ、見るなばかあ! し、真一のすけべっ」
なぜか乙女な反応を見せる水那。
それはちょっとした変化だったが、水那が目指す夢への挑戦(レベルアツプ)の前触れだったなんて――
「なあ、真一。あたしがいなくなったら、寂しいか」

レベルアップは突然に。ニート少女と同棲MMOライフ第2弾!!
主人公の真一、これだけ頭の中ネトゲばかりで形成されている重度のネトゲ廃人にも関わらず、実際のゲーム内ではトップランカーな攻略組には到底届かないエンジョイ寄りの緩いギルドメンバーって、これだけ廃人なのにゆるゲーマー扱いしかないって、ガチ廃人ってどれだけの頂きなのか!! 6000、7000メートルクラスの鋭峰に挑むガチの登山家クライマーみたいなものなのか。何%かの割合で遭難して帰ってこなかったりするレベルの挑戦者たちなのか。
真一ってちょっと頭がおかしいくらいのレベルの廃ゲーマーっぽいのだけれど、それでも社会人である以上時間の拘束は当然のようにあるわけで、やはり働いたら負けなんですよねw
ガチの攻略組だった絵里子が度々プレイヤースキル、ゲーム内の能力値じゃなくプレイヤー本人の操作の上手さや戦術眼の高さを絶賛されてて、それこそ彼女1人の存在だけでダンジョン攻略イベントクリアの難易度が桁なんこか変わるほど、といくらいの戦略兵器扱いされているのだけれど、この娘ほんとどれだけ時間ゲームに費やしてたんだろう。よく女子大生になれたもんだ。そしてよく進学できたもんだ。リアルタイムでさらなる進学はやばい感じになりかけてるけれど。試験は受けろー!

とまあひたすらネトゲばかりやっている話である。前巻の感想でこれはモラトリアム期間を描いた物語だ、なんてことを書いたような気がするのだけれど、モラトリアムがネトゲで埋まっておられるw
とは言え、ネトゲしてるだけでも人間関係は変化していき、情緒は生まれ、人の中身には成長という綿が詰め込まれていく。
いつまでも現状維持ではいられない。変化が顕著なのは学生時代だけれど、社会人になっても周囲は変わらないように見えて、着実に変わっていってしまうんですよね。歩いていくスピードは人によって違う。歩いていく方向も違う。いっとき、同じ時間同じ速さ同じ方向に向かって進んでいても、やがてそれらは段々と食い違っていくものなのだ。
一歩も動けなくなってうずくまってた水那を拾い上げたのは真一である。かつての憧れであり初恋だった人が自分に預けていった、いや捨てていった水那をすくい上げ、しかし彼はさほどの干渉を水那には及ぼしていない。急き立てるでもなく励ますでもなく、時給650円で自分のゲームのアカウントを育てる、という役割を与えて住むところと食べるところとを提供しただけ。猫を飼うように何もせず、ただ一緒に居て、一緒の時間を過ごしただけだ。
だから、水那が立ち直ったのも彼女自身の意思であり力であり、水那が他人とまっとうに付き合えるようになったのも絵里子という友人のおかげだ。そして、自分の力で未来を切り開いていくことを彼女が選んだときも、巣立ちを選んだときも、真一は何も言わなかった。ただ受け入れただけだ。彼女を拾ったときのように、彼女が出ていくときもその事実を受け入れただけだった。
でも、それこそが水那にとっての最良だったのだろう。自分の母親にすら受け入れられなかった異端にして異形の自分。それを、彼はあるがままに受け入れてくれた。
彼こそが、ホームだったのだ。
それだけは、間違いなく石破真一の選択である。誰もをあるがまま受け入れていたわけではない。水那の母親とは、再会のときまだ抱えていたであろう淡い想いを、未練を封印し、決定的な決別を示している。
彼が受け入れたのは、水那なのだ。だから、強がりだろうとなんだろうと、置き去りにされてしまう、自分を置いてさっていってしまう彼女の意思を受け入れることが出来たのだろう。
だからこそ、石破真一は徹頭徹尾、水那の居場所でありホーム足り得たのだ。帰るべき場所になれたのだ。
流れる時間を異にしてしまった人同士、同じ時間を歩めない。だから、歩くスピードを早めてしまった彼女たちは、目的地を見定めてしまった彼女たちは、一目散に走り去っていく。変わらない主人公を置き去りにして、去っていってしまう。
それは、作者の物語の根幹の一つだ。
そのまま別れ別れのまま遠い空を見上げるだけだったり、主人公自身が自分のスピードを早くして先に行った彼女たちのもとに追いついていく、そんな作品はあったけれど……。
そう、変わらない彼のもとに還ってくる話は初めてかもしれない。
……異なってしまった流れる時間を、異なったまま重ねて一緒に過ごす方法があるとすれば、それは「家族」になることなんじゃないか。
だからこれは、旅立った彼女が我が家に帰ってくる物語。ホームで在り続けてくれた彼のもとに戻ってくる物語。翼を広げて羽ばたいたままでも、置き去りにせずに一緒に居る選択を示した物語である。
そうか、こんな答えが出てくるところまで来たんだなあ……。

瀬尾つかさ作品感想

ニートの少女(17)に時給650円でレベル上げさせているオンライン ★★★★  

ニートの少女(17)に時給650円でレベル上げさせているオンライン (角川スニーカー文庫)

【ニートの少女(17)に時給650円でレベル上げさせているオンライン】 瀬尾つかさ/ kakao 角川スニーカー文庫

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ダメかわいいニートの少女と、同居生活はじめました。

MMOを愛するサラリーマン・石破真一(27)の部屋には、ニートの少女・瑞薙水那(17)が居候している。金髪美少女JKと同棲、といえば聞こえはいいが、「お腹空いた」と起こしにくるし、風呂上がりにタオル一枚でうろつくし、ネトゲのレベル上げバイトはサボるし……「真一っ、大好きだぞ! 愛してる!」「おだててもダメだ。給料は昨日やっただろクソニート!」社畜ゲーマーがネトゲに社会復帰に、ダメかわいいニートの少女を育成《レベル上げ》!?
またえらくエキセントリックなタイトルである。内容の方も、普段の瀬尾さんのそれとは随分と毛色が違う独特の……と、思ったんだけれど、ふーむ。
以前から口ずさんでいた事なんだけれど、瀬尾つかさという人の作品って、これはデビューしたての頃がその傾向強かったですけれど、主人公がヒロインたちに置いていかれる物語でした。遥か遠く遠くまで脇目も振らず駆け抜けていく彼女たちの背中を、あるところまでは支え背中を押していた主人公が、いつしかその腕の中からヒロインたちが飛び出し、もう主人公の力を必要としなくなった先で、その場に彼を置き去りにしてそのまま先へ先へと行ってしまう。それをどこか淋しげにしかし満足そうに見送り、見上げ、遠く手の届かないところへ行ってしまった彼女たちを眺め続ける。
特に最初期の【クジラのソラ】が顕著だったんですけれど、それ以外の作品にも色んな形であってもこの感じは常に敷かれ続けてたんですよね。
近年になって、主人公は佇んだままではなくなって、たとえ届かなくても追いかけるようになり、その手が届くケースも増えて来たのですけれど、この「置いていかれる」という要素はなかなか根強く散見されるのであります。
本作もまさにそれ、なんですよね。
初っ端から8年後のシーンからはじまり、彼女は既に遠く遠く違う世界に在るのを彼は地上から見上げている。
面白いのは、そこに至るまでの物語、つまり「現在」として描かれる本編が「激動の渦中」ではなくどちらかというと「モラトリアム」として描かれている、というところでしょうか。
これは、今現在ニートやっているニー子のことのみならず、既に28歳でバリバリのサラリーマンとして働いている社会人の石破真一についても、描かれるこの期間はどこか「猶予期間」なんですよね。それはこの物語の舞台となる2005年前。かの頃には全盛期でありながら現在プレイ人口が減りつつあるというMMORPGの現況とともに、8年前である本編時には社会人でありながら廃ゲーマーとして勇躍していながら、その熱中度が嘘のように今はかつてのゲームから離れている真一の姿にも、その隣に大人になった大家の娘の姿があるのもまた、モラトリアムというものを見てしまう理由なのかもしれない。
どこか懐かしく、振り返れば胸の奥を詰め先でひっかくような痛みと心地よさを感じる過去の情景。そして、もう二度と帰ることの出来ない想い出の時間。なんて表現するにはあまりにもバカバカしく、ダレ果てた日常。でも楽しかったかけがえのないあの頃。
それが、ここで描かれるニートな少女とそれを取り巻く騒がしい友人知人たちとの何気なくも懸命でいい加減だった、今はもう無いあのアパートの日々なのである。

瀬尾つかさ作品感想

高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない 2 ★★★★   

高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない2 (一迅社文庫)

【高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない 2】 瀬尾つかさ/kakao 一迅社文庫

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書き換わった歴史の中、最善を尽くしつつ現代への帰還を目指すダナン魔導学院の生徒たち。古代文明の遺産を利用した積層都市アルフェで開催される西部都市の魔族軍対策会議にダナンからも人員を派遣するのだが、洞窟都市グリンデのハルメス・ザルダート議長はケーネの姿を見て驚愕する。「あなたこそ、今代の星の神子!」一方、エルドは歴史上の重要人物、魔族軍と苛烈に戦い最後のひとりまで殺し尽くした女将軍シルテシア・アルフェミティと出会う。しかし、エルドの前に現れたシルテシアは、まだ争いとは無縁の優しい母親でしかなかった。星の神子に祀り上げられたケーネの運命、後世に虐殺者として知られるシルテシアの真実、そして積層都市アルフェで蠢く陰謀の影とは―。

難しいところだよなあ。目の前で起ころうとしている悲劇を回避するために力を貸してしまうと、それがそのまま人間サイドの戦力を強化してしまいかねない。人魔大戦と呼ばれた大戦争に対するダナン学院のスタンスは、歴史の改変はもう仕方ないものとして、とにかく人も魔族も被害を少なくしたい、というものである以上、一方の必要以上の強化はより被害を拡大させかねないわけで。かと言って、手の届く範囲で多くの人が死のうとしているのを見過ごす、なんて割り切りが出来るほど学生たちは達観していないわけだし。
これは図らずも魔族側に入り込むことになってしまったガゼットも同じくで、とにかく出来ることをやって酷い有様の現状を改善していたら、著しく麾下の魔族軍が強化されちゃってるわけですし。でも、ガゼットってただのナンパなチャラ男かと思ってたら、どこのチート転生者かと思うくらい様々なジャンルに万能なんですけど、こいつ。全部、付き合ってた女の子から教えてもらったり、話を合わせるために習得したり、というあたりすげえとしか言いようがないんですが。
もしかして、戦闘特化型のエルドより主人公力高いんじゃなかろうかw 伊達に学園から離れてたった一人で魔族側に入り込むことになってしまっただけあるよなあ。助け得られないんですし。
それでも、使い魔を通じてある程度連絡は取れるだけマシなのか。エルドとガゼットの、立場も何もかも離れきってなお、あのお互いに信頼しきった親友関係はいいなあ、と思うんですよねえ。自分の命を預けるどころじゃない、自分の大切な人の命を預けられる、って大変なことだと思いますよ。
ダークエルフ姉妹の全幅の信頼を得ているとはいえ、秘密を抱えて一人奮闘しなくてはならないガゼットと違って、エルドたちはまだだいぶマシではあるんですよね。何よりも、この時代の人間でありながらダナン学園の秘密を知ってなお、味方になってくれたスピカ。時代に埋もれて後世には名前も残っていない彼女ですけれど、政治・智謀99はあって不思議じゃないんですよね。それが、ダナンのために全面的に力になってくれているわけで、この頼もしさたるや。何しろ、この時代の人間であり権力者サイドに立っていた娘ですから、各都市の上層部にも顔が通じてますし、何より国家間の事情や情報に明るい。ダナンの風紀委員長であるケーネも、末端とはいえ後世の統一帝国の皇族の一員であり、彼女も十分政治お化け、謀略妖怪の類いなんですけれど、政治力ってイコール人脈でもあるのでやっぱりスピカの存在は大きいんですよねえ。
まあ、そのケーネもまさかの「星の神子」認定によって、ただの政治交渉能力どころか、宗教系の影響力まで保持してしまったので、こちらはこちらで別方向から政治無双を発揮しだすのですが。
その星の神子認定も、どうやら帝国の血筋に関わりがあるようで、人魔大戦後の人類史においてケーネの帝国って相当裏で色々やってるみたいなんだよなあ。その原点が、丁度この人魔大戦まで遡ることを考えると、歴史上ではこの大戦当時では動きがなかったはずの冥神の使徒が暗躍している件も含めて、まだまだダナンがこの時代に来てしまった理由も絡んで、裏で大きな策謀が蠢いてるっぽいのよねえ。
ある意味、冥神の連中がダナンと同じステージに立っていることがわかった、ということそのものがこれから本番、という雰囲気を醸し出しているのですが……シリーズは一旦ここで一区切りのようで。
でも、また違う形で続き出します、と明言されているので、担当編集の移籍が要因だそうですけれど、これ一迅社文庫そのものの再編が絡んできそうだなあ。一迅社が講談社の子会社になった一件が、一迅社文庫に何の関わりもないまま、ということもあるわけないですし。

しかし、今回ひたすらスピカ推しだったですねえ。スピカのお兄さん登場によって、普段の賢さ爆発している余裕たっぷりの姿とは裏腹の年相応の感情を制御できずにプンスカしている可愛い面も見られましたし。
ケーネさん、ケーネさん、頑張らんとガチ婚約者にぜんぶ持ってかれますよ。当のスピカに全面支援してもらってるのになあ。とかそうこうしている間に、NEW婚約者になりそうな娘まで出てきてしまいましたし。続きが出るなら、ちゃんと巻き返していかないとw

1巻感想

高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない ★★★★  

高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない (一迅社文庫)

【高度に発達した魔法は神の奇蹟と区別がつかない】 瀬尾つかさ/kakao 一迅社文庫

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いくつもの戦争を経験した人類と魔族は一人の英雄の尽力により種族対立を乗り越え、千年の時の中で平和な世界の実現と技術発展を遂げていた。魔導技術に秀でた魔導学院の学生エルド・アルウェンは、高熱を出した妹のナナリーを見舞うため、特別に学院女子寮を訪れていたそのとき、学院を巨大な地震が襲い、閃光とともに学生女子寮は見知らぬ大地へと転移していた。そこは千年前、世界が混沌としていた戦乱の中世時代だった……。女生徒たちとともに過去へ転移したエルドは風紀委員のケーネ、そしてしっかりものの生徒会長にして騎士科の優等生アレミアとともに元の世界へ帰る手立てを探すが、手違いから大戦を終わらせた英雄の命を奪ってしまい――――
科学文明の発展した未来・現代の人間が過去、或いは中世レベルのファンタジー世界に転移して、という話は山程あれど。ファンタジー世界のまま発展した高度魔法文明の学徒たちが、古代のファンタジー世界に転移して、その昇華された魔法理論で無双する、というのは何気にありそうでなかった設定だなあ。
知るかぎりでは【異世界魔法は遅れてる!】くらいか。これは現代地球の魔術師が異世界に召喚され、という話だったけれど。
ただ、本作における魔法文明の現代ってこっちの21世紀相当じゃなくて、それより遡って19世紀から20世紀初頭くらいっぽいんですよねえ。社会システムに対する意識や認識が近代に入っている過渡期、くらいなのが面白い。国家規模での戦争は遠のいている一方で、戦闘技能がエリートを集めた大学内で一定数の割合で必須技能として求められる程度には、それが必要とされるあれこれがあるわけで。
まあだからこそ、戦乱の世に飛ばされてなお統制が行き届いていたわけですけれど。
でも、高度に発達した、というわりには魔法理論が古代から飛躍していたように見えなかったのはちと残念だったけれど。威力と効率は見違えるように古代からあがっていたとしても、それって元々あった理論の強化発展に過ぎず、古代の人たちから見ても、それは凄いものではあっても訳の分からない未知のものではないと思うんですよね。古代の人間が戦車や飛行機を目の当たりにする驚き、火の明かりしか知らない人が電灯を目にした時の理解、工業技術・医療技術、物理法則や過去ではまだ存在しない概念の数々。高度に発達した未来文明との遭遇、というのは大きな断絶があるものなんだけれど、本作だとどれも過去からの延長線上に存在しているものに過ぎないわけで、タイムトラベルという要素の面白味としては些か物足りない感じがしてしまうんですよね。
一方で、重要となるのが人魔大戦という人と魔族との人種対立が高じた末の殲滅戦争的な大戦の最初期に飛ばされたこの学院では、既に人族と魔族の垣根が完全に取っ払われて、総じて同じ「人間」という括りになっているということ。そもそも、この魔導学院が大戦の終結に伴って、人族と魔族の融和を願って創設されたという理念によって成立している、というのが重要なんですよね。

過去の世界では突出した高度な魔法を使える、というアドバンテージは、大きな武器ではあっても道具に過ぎず、まず生存と元の時代に戻ることを目的としている彼らだけれど、彼らの持つアドバンテージというのはただ生存のために用いるためのものではない、という流れなんですよね、これ。
すでに初っ端で、未来を決定的に変えてしまう歴史的人物の殺害、という改変を行ってしまっている彼ら。本来なら鏖殺され歴史上から消え去っていた街を、図らずも救ってしまったこと。もはや、冒頭で既に過去を変えることなく未来に戻る、という選択肢は喪われてしまっているわけで……。
ある意味、縛りが最初から消えてしまっている、ということでもあるんですよね。既に、周りに関わらずに生き残り続ける、という道も不可能になっていて、必然的に歴史的な大戦に関わらずを得なくなってしまっている。
そこで、ただ戦う、という道だけではなく、魔導学院の創立理念である「融和」が鍵になってくるわけで。果たして、彼らは人類史における最大の悲劇を回避できるのか、という話になってくるのがまたダイナミックなストーリーに出来る拡張性を感じさせてくれるんですよね。
でも、その学院の方向を決めるための戦略眼や政治力、地に足の着いた思考力と未来の影響を受けた社会理念を持っている人物が、学院内には居ないんですよねえ。主人公のエルドはいわゆるサバイバリティは高くても自分で考えるのは苦手な脳筋だし、アレミアはリーダーシップは非常に高いもののあれこれ自分で算段立てていくタイプじゃないし、ケーネは実務能力高くて喫緊の問題の処理能力は高いし将来的な予測とその対処方法もしっかり立てられるけれど、大きな未来図を描いたり戦略的に物事を想像し、方向性を示せるタイプじゃないんですよね。
それが出来るのが、まさか現地から現れるとは。まさに、この学院のターニングポイントって、彼女を完全にこっちサイドに取り込めたことなんでしょうね。真実から何から全部詳らかに明らかにした上で、本来なら現地の利益代表者だった彼女を、完全に味方に引き込めた。どう考えても、今後この学院国家の陰の宰相になるのって、この子なんだよなあ。
とはいえ、元々は外部の人間だった彼女が全部決めるはずもないので、漠然とこうしたい、という決断だけは主人公たち、というか学生全員で決めるんだろうけれど。

しかし、メインヒロインが堅物の風紀委員、というのは珍しいので面白いなあ。ケーネ、面倒くさいんだけれど瀬尾作品はヒロインの攻勢がほんとに容赦ないんで、グダグダやってるとあっさり脱落しかねないし、グズグズしてると尋常じゃない煽りを食らうので、心底をごまかしてられないのでわりと早々にケーネも丸裸で縛り上げられて、エルドの前に放り出されそうw

瀬尾つかさ作品感想
 
12月3日

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