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shirakaba

物理的に孤立している俺の高校生活 3 ★★★☆   



【物理的に孤立している俺の高校生活 3】  森田 季節/shirakaba ガガガ文庫

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残念系異能力者でも友達と文化祭回りたい!

波久礼業平には友達がいない……わけでもない。むしろ、あわやぼっちで過ごすと思われた夏休みを人研メンバーとともに無事乗り越え、本人はなんとなく成長した気さえしていた。
しかし、業平の持つ異能力「ドレイン」はもちろん健在で、オン・オフができるようになったわけでもなんでもない。やっぱり学校レベルで物理的に孤立している。せつない。
それでも、これなら二学期の文化祭も乗り切れると安心していた中、同じく不遇な異能力に悩む高鷲えんじゅから脈絡もなく連絡が来る。
「男友達作り、早くしないとまずいことになるわよ。うちの高校って修学旅行が二年生の二学期途中にあるから」
いやいや、そんなこと言ったってお前も人研メンバー以外の友達いないじゃんと思う業平だったが、高鷲の言葉は確かに事実。蘇る中学時代のトラウマ。現状、限りなくぼっちな二人は、売り言葉に買い言葉で「文化祭が終わるまでに友達を作れるか」勝負をすることになってしまう。
お互いこいつにだけは絶対負けないよなと思うのだが……あれ、そもそも友達ってどうやって作るんだ!?
残念系異能力者たちだって友達と文化祭を回りたい! 大人気青春未満ラブコメ第3弾!!

友達ってどうやって作るんですか?
いや、真面目な話、学生時代友達どうやって作ったか、とか覚えてないですよ。何となく喋ってたら一緒に遊んでいたらいつの間にか友達になってた、て感じですよね。友達になってください、友達になってよ、みたいに直接言葉にして「友達」という関係になった事はなかった気がする。
でも彼ら、業平と高鷲にとっては友達という関係はそんなに簡単でも軽いものでもなかったのだ。これまで友達という存在が出来なかったコンプレックスもあるのだろう。でも、それ以上に友達という存在に対して真面目なのだ。真剣なのだ。何となくいつの間にかなっているものではなかったのだろう。それこそ、彼氏彼女の関係に勝るとも劣らない、人生における重大事だったのだ、友達を作るという事は。
もっとも、彼氏彼女の関係ですら人種によっては気軽にホイホイとくっついたり離れたり何となくで始めたり終わらせたりしてしまうものなのだけれど。
人間関係というものは本当に人それぞれで同じ名称の関係ですら中身は、いや中身ではなく受け止め方、というべきだろうか、受け止め方が全然異なってきてしまうものなんだなあ。
文化祭の折に、人研部以外の友達をどちらが先に作るか、という勝負をはじめてしまう業平と高鷲。それからのこの二人のノリはというと、完全に男女交際の相手をゲットするつもりみたいな本気度、真剣さなんですよね。形は違えど、仲の良い友達とどっちが先に恋人を作るかの勝負をガチではじめてしまった、みたいな感じになってるんですよね。
そう、冗談ではなくガチで。だから、勝負しているはずなのに、業平ときたら高鷲がクラスの女の子となんだかうまくいきそう、性格に大変問題のある高鷲でも何とか友達になれそうな雰囲気、というのを見て取った途端、内心で応援し始めてしまうのですよ、こいつ。
勝負を忘れているわけじゃないんだけれど、高鷲に感情移入してうまく行ってほしいと本気で祈り始め、便宜だって図り始めてしまう。
イイ奴なのだ。拗らせているけれどこの男、いいヤツなのだ。
その業平も、生徒会から応援できてくれた大福という男の子と、これまでになく自然に気負いなく会話できることで、これ友達になれるんじゃないか、と浮かれだしてしまう。いや、いいんですよ。友達になれそう、と思うことになんの悪しきもない。
実際この大福、いいヤツなんですよ。1メートル以内に近づいた他人の生気を吸い取ってしまうという「ドレイン」の異能を持つがために、タイトル通り物理的に孤立してきた主人公。物理的のみならず、やっぱり近くとヤバいということで心理的にも距離を置かれ、場合によっては拒絶されてきた業平くん。でも大福はもちろんちゃんと距離には気をつけているけれど、業平がドレインという異能を持つ事に対しては常にフラットな対応で、同情も嫌悪もなく、自然とそういうものとして捉えた上で自然に付き合ってくれる人だったんですね。
別に内心で違うことを考えていたりとか、なにか企んでいたり、とかいうこともなく、本当にただいいヤツだったのです。
ただ、彼はそういう業平みたいな人間とも何の偏見もなく付き合える人だからこそ、他人との距離感が軽い人でもあったんですね。人と人が繋がることに、深い意味も重たい価値も特に見いださない、普通に仲良くなって簡単に恋人という関係を作ることの出来る人種だったわけである。
業平とは、どこか価値観が異なっている相手。
軽々に、あの娘なら付き合えそう。別に好きじゃなくても告白されたら、相手が可愛いなら付き合うよ、という大福に違和感を感じてしまう業平。相手に対して、それは真剣じゃないんじゃないか。真摯じゃないんじゃないか、と考えてしまうわけだ。
でも、それはちょっとした価値観の違いなんですよね。どちらが悪いとか間違いだとかいうわけじゃない。はじまりのきっかけや態度が軽いものでも、友達として恋人として付き合いだしたら何かが変わってくるのかもしれない。そもそも、軽い関係ってのが悪いかどうかって話もある。軽くて、なにがダメなんだ? そういう関係も、あっていいじゃないですか。
そういう事は、業平もちゃんとわかってると思うんですよね。彼が、嫌な思いを感じてしまったのは、実は大福に対してじゃないんですよね。好みの問題というのを踏まえた上で、そういう人との接し方が好きではない、と業平は感じたその時に、彼は自分を省みるのである。
あれ? 大福のそういう人との接し方に嫌悪を感じている自分は、大福のことを友達になれるようn相手か「品定め」していなかったか? と。大福が、あの娘なら付き合えるんじゃないか、と思っているのと同じように、こいつなら友達になれるんじゃないか、と打算で考えていなかったか、と。自分のことしか考えずに、友達を作りたいと大福をはじめとする周りの人間たちを選別の目線で見ていなかったか、と。

ちなみに大福くん、業平がどもりながらもそういう見方はよくないんじゃないか、相手に対して失礼じゃないか、という言葉にちょっと驚きながらも真剣に受け止めて、確かに自分も親しい人をそんな風な見方で言われたらあんまりいい気分じゃないよね、と反省してくれるんですよね。
特に何の気もなしに軽く雑談めいて喋っていた内容に、そんな真面目なトーンで反駁されたとして、反発したりドン引きしたりするのは論外としても、曖昧に流してしまったりなんか悪いこと言っちゃったかなと取り敢えず謝ったり、というくらいの対応は珍しくないと思うんですよね。
彼のように、本気でちゃんと考えて、良くなかったと謝ってくれる人は決して多くないと思う。大福くん、マジでいいヤツなんだよなあ。
でもあそこで、迷いどもりながらも、ちゃんと苦言を呈することの出来る業平もまた、大した人だと思うんですよね。それも、大福のことをそれはダメだろうと否定的に思いながら、じゃないんですよね。あそこで彼は、自分を省みて、自分もまた大福以上に失礼な事を考えながら彼に近づこうとしていた、と恥じ入りながら、その大福に対して苦言を呈するという事に何様だとさらに恥じ入りながら、それでも告げているのである。
あの違和感から嫌な気分を感じてしまった場面で、一方的に相手の上位に立った気になってしまうのではなく、そこで自分を省みる業平が。恥じ入りながら、それを自分の中に押し込めてしまうのではなく、相手に告げることの出来た彼が、本当にえらいと思うのですよ。
敬意を抱く。

そして、高鷲もまた、無意識に友だちになろうとしていた娘にマウントを取ろうとしていた事に気がついて、咄嗟に身を引いてしまうんですね。彼女の場合は、ココロオープンという目を合わせると自分が心のなかで思っている事が全部テロップに出てしまうという異能のせいで、相手との関係が決定的に壊れてしまう事を怖れてしまった、というのもあるのだけれど。
業平にしても高鷲にしても、本当に友達という関係に対して真剣だからこそ、真面目だからこそ、その関係に対して真摯すぎるほどに誠実足らんとしてるんですよね。異能のせい、というのも大きいでしょう、適当にこなせない不器用さ、というのもあるのでしょう。性格がこじれてたり捩じれてるのもまあ致命的ですよね。
でも、この誠実さは、真面目さは敬したい。これはたしかに意識高い系の範疇なのかもしれないけれど、胸を張って意識高い!と言ってもいいんじゃないかしら。
それでも、二人はこれまで、ずっと人間関係に惨めな思いをしてきた。異能によってハンデを負って、寂しい思いをしてきた。こうしてみると、誰よりも相手のことを理解しわかっている二人なんですよね、高鷲と業平は。だからこそ、勝負しているのに相手を応援してしまう。挫けそうになっている高鷲を、一生懸命フォローして自分たちは同盟者じゃないか、と背中を押す業平はお世辞抜きにカッコいい……いや、カッコいいというのとは違うかもしれないけれど、高鷲にとっては彼の必死さは胸が一杯になるものだったんじゃなかろうか。

お互いに支え合って、友達作りという一歩を踏み出せた業平と高鷲。そこで友達作りの勝負をなかった事にしないあたりがさすが高鷲えんじゅ、と思う所だけれど……。この勝者の権利を保留にしたの、あとあとに大きな影響をもたらしそう。業平への命令権。この文化祭の中で生まれた二人の間の「空気」の様子に、本当に「ここぞ」という場面が巡ってきそうで、ちょっとワクワクしてしまうラストでした。


裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル ★★★★  



【裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル】  宮澤 伊織/shirakaba ハヤカワ文庫JA

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ネット怪談×異世界探険
「検索してはいけないもの」を探しにいこう。

仁科鳥子と出逢ったのは〈裏側〉で爐△"を目にして死にかけていたときだった――その日を境に、くたびれた女子大生・紙越空魚の人生は一変する。「くねくね」や「八尺様」など実話怪談として語られる危険な存在が出現する、この現実と隣合わせで謎だらけの裏世界。研究とお金稼ぎ、そして大切な人を探すため、鳥子と空魚は非日常へと足を踏み入れる――気鋭のエンタメSF作家が贈る、女子ふたり怪異探検サバイバル!

怖ぇぇぇ! なにこれ、何がピクニックですか! 散歩気分で行くところじゃないでしょうこれ!?
昨今氾濫している「異世界」じゃなくて「裏世界」ってなんだろう、とタイトル見る度に思っていたのですけれど、これは確かにファンタジーとしての異世界じゃないですわ。
オカルトだ、オカルトだよこれは。

確かに行ったきり帰って来られない一方通行の世界と違い、裏世界は条件は色々あるものの、行き来は出来るし、扉となっている場所はどうやらあちこちにあるらしい。
かと言って、気楽にピクニック!とばかりに遊びに行くような場所では断じて無い。そこにうごめいているのは、本物の怪異たち。都市伝説やネット怪談で語られたこの世ならざるものたちだ。
ということは、裏世界ってもうあの世とこの世の狭間というような世界なのか。それにしては世界の有り様は生々しく異質であり頭がおかしくなりそうな狂気がべったりと張り付いたような世界だ。
とても好んで自分から飛び込むような世界ではない。どんな理由があるにしても、だ。
それを、この二人の女性は自らの意思で飛び込んでいく。片や、そこで行方不明になった親友を探すため、片やそんな彼女を見捨てられないために。
それだけ見るなら、真っ当な理由に見えるんですけどね。
怖くても恐ろしくても、大事な人のために勇気を振り絞って、悍ましい異形の世界に挑んでいく。
そう聞くと、まともに聞こえるんですけどね。
果たして、本当に彼女たちは真っ当なのか、まともなのか……正気なのか。まだ人間なのか。
この裏世界を知る人はみんな言うのですよ。その世界に関わっていたら、マトモじゃなくなっていく。段々と、人間を逸脱していってしまう。頭がおかしくなる。
そして二人は、初めて出会ったそのときに、もうベッタリとこの裏世界の洗礼を受けてしまうのである。身体に、痕跡が残ってしまうほどに。
それは、裏世界の要素が身体の中に残ってしまったということ。あの世界と、チャンネルが合わさってしまったということ。
それ以降彼女たち、空魚と鳥子は別に裏世界に行こうとしていない時でもふとした拍子にあちらの世界に迷い込んでしまったり、それどころか現実世界の方にあの世界が侵食してくるような、そんな現象に苛まれることになる。現実世界にいるはずなのに、じわじわと常軌が逸していく感覚。狂気に見ている景色が塗りつぶされ、ぐるりと世界が反転してしまうかのような……。

いや怖いから、これ本当に怖いから。
なんかメインの二人の女性がタフなのか精神的に壊れているのか、わかりやすくキャーキャーと怯えずにビビりながらもずいずいと突き進んでいくタイプなために、無為に登場人物を恐怖のどん底に陥れてパニックを誘発させ、恐ろしさを煽るような描写にはなっていないものの、起こっていることだけ見ててもそれだけで怖いから。
てか、もっと怖がれよ、空魚と鳥子も! こっちが泣きそうだよ!
一見まともに見える二人なんですけど、鳥子は危険を感じる感覚がぶっ壊れているのか、何も考えずに突っ込んでいくし、空魚もこの娘はこの娘で唐突に爆弾持ちだというのを暴露してきやがるんですよ。本人、まったくわかってない、自分がどれほど異常なことを平然と口にしているのか自覚してないのが、もうヤバいのなんのって。あれはゾッとした。それまでは本当に感性に関しては普通に見えていただけに、余計に「静かに狂っている」感が伝わってきて、絶句してしまった。
これ、空魚が鳥子のブレーキ役になっているように見えるけれど、もしかしたら鳥子の方がストッパーというか錨になっているんじゃないの? と思えてくるほどのインパクトだった。
空魚がどうしても鳥子を見捨てられず、突っ走っていってしまう彼女を追いかけ引き止めるのは、鳥子の存在が自分にとって「あっち側」に行ってしまいそうな自分を引き止めてくれる存在になる、と無自覚に察しているからなんじゃないだろうか。
その担保となるのが特別な友情、というある意味人同士の絆、繋がりとしては真っ当以外のナニモノでもないものでもあるのですが。いや、だからこそ、か。

ともあれ、正気と狂気の天秤がジェットコースターにでも搭載されているかのように激しく上下して振り回されるような展開の悍ましさ、気色悪さ、恐ろしさは正直マジ怖いです。
裏世界に行くエレベーター、毎回毎回ある特定階で向こうから走って乗ってこようとする女がいるけど、絶対に乗せてはいけない、とか普通に怖くないですか? ちょっと閉ボタン押し損ねたらタイミング的に乗ってくるんですよ、そいつ!? というか、そうでなくても、毎回閉じていくエレベーターの扉の隙間からこっちに走ってどんどん近づいてくる女の姿が見えるとか、怖すぎてもうそのエレベーター絶対乗れないですって!
なんでこの空魚と鳥子の二人、平然としてんの? 絶対恐怖心とか頭の中ぶっ壊れてるってばww
裏世界の方も、まあ当たり前みたいにデストラップやらどう戦っていいかすらわからない怪異がわんさかといて、普通に人が死にまくります。出入り口が世界中にあるからか、迷い込んでくる人も自分から飛び込んでしまう人もけっこう居るみたいで。
これ、異世界のダンジョンとかだったら、脱出さえすればもう安全なんでしょうけれど、この裏世界の場合、現実に戻れても安心できないというのが冗談じゃねーですよ。

うう、ホラーというほど恐怖を煽る内容じゃないのですけれど、都市伝説もの特有の不気味さというか得体のしれなさ、ヤバいところに手を突っ込んでしまったようなゾワゾワする感覚を味わえてしまう作品でした。

 
12月3日

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