徒然雑記

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終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#10 ★★★★   



【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#10】 枯野 瑛/ue 角川スニーカー文庫

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終わりゆく世界を救うために、この幸せな楽園を[壊す/護る]。

浮遊大陸群を救う、最後の戦いが始まった。〈最後の獣〉の結界内に広がるのは、在りし日の地上を模した風景。散り散りになる妖精兵たち、ティアットの前にはエマと名乗る女性と、白いマントの少年が現れて――。

これもまた世界、か。
〈いずれ訪れる最後の獣(ヘリテイエ)〉が創り出した世界というのは、言わば再演だ。核となった存在から抽出した思い出から形作られる世界。揺籃の世界と章タイトルにもあるように、それは夢のまどろみ、揺りかごの中で見る夢。の、はずだった。
でも、最後の獣が取り込んだのは星神エリクと地神たち。かつて、人類種が地上に反映していた頃、旧世界を文字通り形作ってた神たちだ。
思えば、かつての旧世界もまた揺籃の世界だったじゃないか。あれは、神の夢見る世界だった。だからこそ、神が目をさますことで夢の住人だった人は滅びた。
かつての旧世界と、最後の獣の結界の中に広がる世界にどれほどの違いがあるのだろうか。
もちろん、最後の獣の世界は繰り返される過去の情景だ。そこに生きる人達は、再現された存在であり、その果ては行き詰まってる……はずだったのに。

モーントシャインの存在がその前提を崩し去っている。本来なら、外から取り込んだ核となる人物をもって形成されるはずの世界が、その世界の中から新たな核を自ら生み出してしまった。
それって、仮初の夢の世界で命が生まれたという事じゃないのか。それは、旧世界と同じように仮初めの夢の中であっても、人が生まれ世界は続き未来へと繋がっていく、そんな可能性が生まれたという事ではないのか?
モーントシャインの誕生は、黄金妖精たちの誕生と、何が違うのだろう。
かつて、兵器として消費されていた彼女たちは、様々な事柄を経て生命として生きていく権利を得ている。まだ命の価値というものに対してあやふやな感性しか持たない黄金妖精たちだけど、それでも彼女たちは生きている。生きていく意思を持ってここにある。
ならば、モーントシャインは。
ああなるほど、パニバルがどうしてモーントシャインに育成を施し、彼に自ら行く末を選択するように促しているのか、その理由が何となくわかってきた気がする。いや、どうかな。わからないな。まだわからない。パニバルという不思議な女性の本質は、7巻で大いに語られ、その中でティアットというパニバルにとっての英雄の誕生と共にほんの少しの変化を迎えたはずだ。
未来を守りたいわけじゃない。未来に焦がれているわけでもない。ただパニバルは、新たに生まれた命に自ら選択する機会を与えたかった。それが幸福な終わりに焦がれた彼女の、役割だとでも言うように。その願いの在り処がどこにあるのかは、まだわからない。やっぱり不思議ちゃんだよ、パニバルは。
見てくれは、すっごい美人になったのにね。いつのまにか、大人の女性になってるじゃないですか。挿絵に描かれる彼女はもう少女の殻を破り捨てている。どこぞで黒幕でも気取っていそうな貫目のある雰囲気を醸し出している。謎めいた美女感マシマシである。
パニバルに限らず、コロンもティアットももう少女とは呼べない妙齢の女性への階を登りだしている。アルミタとユーディアが一端の少女になろうとしているのを横目に見ているから、なおさらだ。あの小玉みたいだったアルミタが、こんなに大きくなっちゃって。
と、そんな感慨を抱いたのはこれが初めてではなく、このシリーズ。【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?】がはじまった時にティアットたちに感じていた事なんですよね。
幼女だったちびっ子だったあのラキシュを含めた四人組のお子様カルテットが、一端の少女となってはじまった新シリーズ。そこに、世代の移り変わりを、継承を、引き継がれていくものを強く感じたものですけれど、ここに来てティアットたちが先輩として振る舞う時期になってたんですね。
実戦を知らずまだ右往左往しているアルミタたちを、なんだかんだとしっかり導いていくティアットたちの姿はちゃんと先輩していて、そこにクトリ世代の黄金妖精たちがかつてこの娘たちに見せていた背中を、今ちゃんと後輩たちに見せられているんだなあ、と思うと感慨深いものがあります。

ラキシュも、きっと美人になったんだろうな。

大人になった彼女たちは、もう自らが歩く道を選んでいる。ティアットも、パニバルも、コロンも、自分の道を進んでいる。ならば、その道が離れることもあるだろう。お互いに道を譲らずぶち当たることもあるだろう。それもまた、生きるということだ。彼女たちは、死霊として発生した彼女たちは、今こうして間違いなく生きている。世界が滅びるその時まで。
かつて、リーリァたちがそうであったように。

ならば、エルクは? 永遠の幼子である彼女は? 紅湖伯は文字通り、この世界を彼女の揺り籠としたいみたいだけれど、リーリァ・アスプレイに憧れたこの子は、クトリの恋を応援したこの子は、黄金妖精たちの夢を見続けた彼女は、モーントシャインと並んだエルクは。
いつまで幼子で居続けるだろうか。

長き長き物語の終わりが近づいている。最終巻は来月すぐに。待ち遠しくもいつまでもこのまま微睡んでいたい気にもなる。この世界も、物語も、一人ひとりも、好きであるが故に。


枯野瑛・作品感想

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#09 ★★★★   



【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#09】 枯野 瑛/ue 角川スニーカー文庫

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憧れに届かなくても、 それぞれの明日のために。シリーズ最終章その第二幕

39番浮遊島の〈最後の獣〉を退け、浮遊大陸群の滅びに猶予を勝ち取ったあの日から、五年。
「オルランドリ商会第四倉庫に、『鏃(やじり)』の提供を要請する」
未だ2番浮遊島に神々を囚える〈最後の獣〉を排除するほか、世界を守る術はなく――
最後の決戦を前に、妖精兵たちはつかの間の日常を過ごす。
「アルミタはさ、今でも、ティアット先輩みたいになりたい?」
かつて憧れていた景色に手が届く今、幼き妖精兵に訪れる葛藤――そして迫る決意のとき。
五年という歳月はそれだけで十分長い。15歳だったティアットは20歳を越えた大人になり、憧れていたクトリよりもずっと「女性」になった。周りからはあの頃と全然見た目変わらないとからかわれて拗ねたりしているみたいだけれど、そんなことはないよ。貴女は十分魅力的な大人の女性になってる。10年前、あの小さくてころころして無邪気に走り回っていた10歳のチビ助が、今や立派な英雄様だ。相変わらずの乙女脳で、若干エージェントみたくなっているけれど。
というか、マルゴと組んで見事に工作員紛いの影働きをやってますよね。ある意味お神輿にされた英雄じゃあないって証明になるのかもしれません。
そうやって、自分の信じた道をひた走っている。フェオドールとの対立を未だに思い悩んでいるけれど、それに引きずられているわけではなく、それを拠り所にしているわけでもなく、彼のやり方を認めない事をうまく消化して自分の在り方に溶け込ませているように見える。悩みながらももう迷ってはいない、心に余裕を持って定めているティアットは一つの完成を見たようにも見える。
フェオドールのような思想と兵器だった黄金妖精と同じ自分を費やす事に疑いを抱いていない定めを抱えた翼人の娘を、その意思を否定せず認めながらしかしそのまま潰える事を許さずに救ってみせたティアット、そしてマルゴ。それは象徴の一つなのだろう。過去を繰り返させず乗り越えた。
彼女達は大人に、なったのだ。
対して今17歳。ただコロコロしていた幼児であった頃から、一廉の少女になったアルミタは今まさに悩み迷い己の在り方を見出そうと必死にあがいている少女真っ盛りだ。妖精倉庫で屋上から無鉄砲に転がり落ちて、クトリに危機一髪助けられたあのチビ助が一端の小娘である。
彼女の世代は、旧式の調整を受けたアルミタとユーディアを除いて、既に兵器としては成り立っていない。二人とて聖剣との適合は済ませているものの、戦闘訓練などは殆ど行っていなくて、本当にただの小娘だ。
本来なら不要となって廃されるはずだった、幼体のまま消え去る運命の黄金妖精。その未来を繋いだのは、ティアットたちの世代だ。妖精が兵器として必要とされないだけの未来を作ったのはクトリたちの世代だ。そうして繋いできた世代を、今アルミタたちはどう受け取ろうか試行錯誤している。どう、次に繋げていこうか、そう考える段階に来ていると言っていいかもしれない。
そうやって、未来に繋いでいっている。
五年という歳月と世代の進展は、そんな思いを馳せるに十分な月日だ。

この世界はいつも終わりと背中合わせだった。いつ、様々な要因で潰えてもおかしくないほど不安定で脆い代物だった。妖精たちと同じく、いつ儚く消えても不思議ではない世界だった。
ただしく終末であり続けていたと言える。
今もまさにそうだ。浮遊大陸の存続そのものが、もはや終わろうとしている。一年を持たずして、今世界は滅びようとしている。
それなのに不思議と、今までよりも随分と遠くが見えている。
今、世界の未来に途絶も終わりも感じない。
それは、この世界で最も儚く脆く、終わりを遠ざける最終兵器でありながら一番その存在が終末に近似していた黄金妖精たちから、泡と消えゆく儚さが見えなくなったからではないだろうか。
少女のまま大人になること無く消えていくはずだったティアットやコロン、パニバルは今成年を越えて大人の女性として充実期を迎えている。
二十歳を超えていつ終わりを迎えても不思議ではなかったアイセア、ラーントルク、ノフトたちもそれぞれの人生を歩みながら今なおそこに終わりの影は見えない。それぞれが見つけた人生の上をしっかりと踏みしめて進んでいっている。
そして、フェオドールやラキシュ、そしてティアットたちの尽力によって、そもそも未来が与えられていなかった妖精の幼体たちは兵器としての役割すら課せられないまま、ただ生きることを許された。今の彼女達は、ただの普通の子供たちだ。戦う必要のない、未来を自分で選べる子供たちだ。
自分で、戦うと決めることの出来る妖精たちだ。
ヴィレムとクトリからはじまった、いやずっと昔の黄金妖精たちから紡がれてきた、託されてきた未来は今、アルミタたちの世代で結実しようとしている。終わりを前提としない、ただ生き続ける事を認められた妖精たち。そのもう消え去る事無く続いていくだろう妖精たちの姿が、不思議とこの世界そのものと重なるのだ。
ヴィレムやフェオドールたちが守って繋いだ未来は、それだけ太く逞しく確かなものとなって結実した。
今はまさに終末で、最終決戦は目の前だけれど、そこに不安はない。
そんな風に感じさせてくれる五年後の世界であり、最後の戦いを前にしたお話でありました。

グリックは、この物語がはじまった当初から短命種の緑鬼族という事でひときわ早いサイクルで歳を重ねていて、五年前の段階で既にもう結構イイ歳みたいな言い方をされていたので、今回前の巻から五年後ということで覚悟はしていたのですけれど、やっぱりそうだったか。もう見送られていたんですね。
見送ったのがノフト、というのは妙にグリックの事気に入っていた素振りを見せていた事もあって不思議ではなかったのですけど……わりと真面目にこの五年の間で懇ろな仲になったんじゃないですかこれ。引き取った孤児や事情あって両親と離れた緑鬼族の子供たちに母ちゃんと呼ばれて奔走しているノフト。若くしてオッカサンという貫禄まで身に纏っちゃってる彼女ですけれど、グリック健在だった頃はこれ二人して夫婦めいた格好で父ちゃん母ちゃんと慕われてたんじゃないだろうか。
……やたらと未亡人感出しまくってたアイセアに引き続いて、こっちはガチで未亡人? なんかこう、恋愛とか恋人とかの段階をぶち抜いてノフトが一番、こう、大人になっちゃった感があって感慨深いというかなんというか。
……未だにちびっ子たちに「お姉さん」呼びさせているナイグラートさん、いかがですか? ノフトはかーちゃんですよ、母ちゃんw
ラーントルクも、大賢者の後始末やら何やらで彼女自身が大賢者の後継みたいな貫禄を持ち始めていて、出来る女を越えた雰囲気出し始めてますし(でもまだポンコツなんだろうけど)。
体壊して引退して余計に深窓っぽくなってしまったアイセアと合わせて、三人とも色んな意味で大人の女性をさらに越えた妙齢の女性になっちゃったなあ。
もう変わらないクトリと違って、みんな随分と変わってしまった。
そして、もう一人の変わらない少女、ネフレン。うん、色々と「もし大人になっていたら」を想像してしまうクトリと違って、ネフレンは色んな意味で想像が働かないまま今のママ固定されてしまっている。現実にも、あの頃のままもう変わらなくなって、でもまあこの娘はそのまま成長していてもあまり変わらなかったような気もするなあ。
半分神様になってしまったネフレン。ただ、危惧していたほど世界を担う負担にボロボロになっていなかったのはちょっと安心した。
ヴィレムが……そうだ、ヴィレムの野郎、こいつシレッと……本当にシレっと記憶元に戻ってるじゃんw フェオドールと同化していたのもいつの間にか解消されちゃってるし。いや、フェオドール成分どこに出てったんだよw
それはともかくとして、ヴィレムの現状、今度こそ人間じゃなくなった、という事なんですよね。生きていなくて実質ちゃんと死んだ、みたいな言い方しているけれど、それはもう変わらなくなった、という事でもあって……。うん、そうかー。ネフレンとしてはもう離れる心配をせずにずっと一緒に居られる、という事なのかも知れない。
それもまた、このあともずっと続いていく事を連想させられる事柄の一つだ。
その一方で、終わりを迎えようとしているものもある。
ヴィレムの、長い長い戦いの人生も、ようやく終わろうとしてるんじゃないだろうか。いや人生が終わり、というわけじゃなくてね。ずっと守るため救うため剣を振るって戦っていた準勇者としての彼。人類が亡びる前も、滅びてしまったこの世界でも、彼はボロボロになりながら時として自分自身を失いながらでも戦い続けていた。強さをもって、救おうとしてきた。
でも、この巻で一つの否定が提示されてるんですね。最終決戦において、彼が戦力として必要ではないと判断したアルミタたちが、最後の獣との決戦において彼女達が必要とされる場面には、強さは必要とされないかもしれない。強くはないアルミタたちこそが、鍵になるかも知れない。
それはヴィレムの今までの人生の価値観にはなかったもので、それが証明されたとき、ようやくヴィレムは剣をおけるんじゃないだろうか。それを語ったのが、彼を一番傍で見続けていたネフレンだった、というのもまた、色々と考えさせてくれる。
いずれにせよ、次こそがこの物語の終わりとなる。それが、この世界とそこに生きる人たちの終わりではない事を信じている。


枯野瑛・作品感想

終末なにしてますか? 異伝 リーリァ・アスプレイ #02 ★★★★  



【終末なにしてますか? 異伝 リーリァ・アスプレイ #02】 枯野 瑛/ue 角川スニーカー文庫

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聖剣セニオリスの調整に訪れた幽霊船都市国バゼルフィドルで、正規勇者リーリァにできたはじめての友人・エマ。
「正規勇者は、正義の味方じゃねぇ。あくまでも、人類の味方であって、人類の敵の敵だ」
そんな守護者が、友人を奪われたとき。そしてその友人が、人類の敵になったとき。リーリァは必殺の聖剣を手に、何を想うのか―。いつかは滅びゆく大地で、いまを生きる勇者と人々の烈しくも可憐な日々、その第2幕。

ヴィレムくん、この頃はまだ年相応の少年らしいムキになる所とか垣間見えて、若いなあと思わず目を細めたり。少年少女の冒険活劇、と呼ぶには彼ら正規勇者や準勇者たちに求められる振る舞いはあまりに子供らしさからは遠いのだけれど。でも、その胸のうちに秘めたるわ老成と達観だけではないのだと。
男の子らしい意地だってあり、女の子らしいトキメキだってちゃんとあるのだ。確かに彼らは正義の味方なんかじゃなく、常に現実に直視して情に流されず人類の敵を掃討する決戦兵器たる事を求められているのかもしれないし、彼らは直向きにそれを成し遂げ続けている。
でも、人間辞めてるわけじゃないんだよね。男の子や女の子するのを辞めてるわけじゃないのだ。諦めてるわけじゃないのだ。
だから、友達が人類の敵になってしまったからといって、機械的に自動的にそれを討ち滅すなんて真似、揚々とするはずがないのだ。そういうものだと思いこむのは、リーリァ・アスプレイという人を随分と見縊っているって話じゃないですか。割り切らなきゃならない時だってあるし、必要ならばどんな酷な状況だって涙一つ流さずにやってのけるのが彼女でしょう。でも、思考放棄して悩むの辞めて考えるの諦めて、とっとと楽な方に流されてるようじゃあそんなの正規勇者なんて呼ばないのだ。勇者って名称は伊達じゃない。
聖剣セニオリスに選ばれた者として、リーリァは数限りない別れと共にあゆんできた。でも、その歩みの中に諦め手を放し突き放した末のものは決してなかったに違いない。少なくとも、ヴィレムがそんな方面でリーリァという少女を心配していた事はなかったと思う。リーリァがそんな方に逃げてしまえる子だと、ヴィレムは昔から一度も考えたことなかったんじゃないだろうか。
そういう娘だからこそ、そんな彼女がそういう状況に直面させられ一人で頑張らさせられてるのをヴィレムはずっと腹立たしく思っている。理不尽、に思えるんだろうか。
なんかもー納得いかねー! という憤懣やる方ない気持ちになってるんだろうか。負けず嫌い? 面倒見の良さ? 放っておけない、黙って見てらんない、そういうの受け付けない。そんな感じなんだろうか。
そういう心持ちだけで、普通の人たち……人々の群れの先頭の突端に居て特別という枠組みに類される人たちですら、最初から当たり前のように別枠に除してしまっている「天才」たちの、その唯一無二性を、凡人の枠のまま否定しようと。凡人の自分ですら並び立てるんだ、と追いすがろうとしているの。それはそれで、十分精神性がぶっ飛んでますよねえ。
そして、それはそれで言ってしまえば「男の子の意地」とも言えるのだ。
そうやって身の程を知らず無様を晒しみっともなくも這いつくばって、追いすがってくるその無謀さが、最初から当たり前のように孤独を運命づけられている、独りという枠組みの中に区切られている天才たちにとって、眩しい光そのものなのだろう。独りにしない、という意地が嬉しくてたまらないのだろう。
天才のお嬢さんたち、ちょっと内心キュンキュンしすぎであるw
その原動力が思慕とか恋とか愛情なんてふわふわしたものではなく、意地っ張りとか負けず嫌いとか向こう気の類である事にこそときめきを生じさせているあたりに、彼女達の業のようなものを感じてしまうのでありました。

しかし、ヴィレムがこの時点で「インプ」と関わりがあったとは。これがのちの下地になっていた、という可能性もあるんだろうか。

また、聖剣四方山話じゃないけれど、幾つかの聖剣について来歴が語られることに。というか、この時期に誕生していた聖剣もあったのか。人類の時代としては最末期にあたるのだけれど、アイセアの愛剣であるヴァルガリスもその一つだったとはねえ。

なんて事を考えながらラストシーンまで読んだら、なんか目を擦って見直してしまう事が書いてあったんですけど。
鬼か! 作者は鬼か! 
いや待って。これって初情報ですよね。これまでの本編シリーズでこの事書いてありましたっけ。「すかすか」の最終五巻でリーリァが星神エルク・ハルクステンを討ち果たしたあのシーンですべては終わったものだと思っていたんだけれど……。
むしろ、ここで終わらせないとか鬼じゃないですか? だって、人類の終末はまさにここからだってのに。そこにはもうヴィレムはいないというのに。
これまでの人生、ずっとまとわりついてきた柵ともいうべき肩書のすべてを失って、ある意味すべてから解放されて、でもやっぱり正規勇者の常として一番守りたかったもの、一番大切だったものは失ってしまっているというありさまを、なおも彼女に突きつけるというのか。
酷すぎるだろう。それこそ、ここで終わっておけば満たされずとも幸せだったかもしれないのに、という案件じゃないですか。ヴィレムがもういないって、本当の絶望じゃないですか。
これでもかこれでもかと際限のない奈落へと突き落とされていくの、リーリァさん作者に愛されすぎてやしないだろうか。
人類にも、リーリァ個人にももう救いたるは残っていないように見える。それでもなお、彼女は存分に生き切る事が出来るのだろうか。彼女にもう本当に救いは残っていないのだろうか。
彼女の本当の最期を、この続きで見せられる事になるのかと思うと、怖くすらありますよ。

シリーズ感想

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#08 ★★★★☆   



【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#08】 枯野 瑛/ue 角川スニーカー文庫

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――さあ。目を開きなさい。いずれ訪れる終末と妖精兵たちの物語、最終章へ

パニバルたちが〈十一番目の獣(クロワイヤンス)〉を討ち、38番島は歓喜の騒乱にあった。
しかし水面下に隠されていた最後の危機を前に、護翼軍、貴翼帝国、そしてオデットが相対する。
そこで示された“滅びを避けられる手順”は、浮遊大陸群(レグル・エレ)を自分たちの手で破壊するというもので――

「“俺達”はどうやら揃って、そういう無私の聖人ってやつが心底気にいらない性分らしい」

あの二人の代わりにはなれないが。
幽遠から目覚めた青年は夢想する。
継がれた結末の、その先を。
ちょぉーーっとびっくりなんですけどー!?
え? 戻ってきたヴィレムの状態、あれなんなの? 地獄?
いや、元のヴィレムではないというのは分かっていたのですけれど、ヴィレムとフェオドールが入り混じった新しい人格か、もしくはフェオドールが会話していた「獣」としてのブラックアゲートの方の人格なのかと思ってたんですよね?
黒燭公との戦いで石化した時までの記憶しかない状態ってなに? 浮遊大陸での記憶がないってなに? クトリの事とか覚えてないって!?
目覚めて人類が滅び去ってもう大切な人が誰もいなくなっていたという想像を絶する孤独に突きとされた時の一番どん底の頃のヴィレムって、それもう地獄じゃないですかー。
石化から解けた当時、救出された時のヴィレムってグリックとナイグラートに随分と助けられて世話されて、世捨て人同然だったとはいえそれでも底の底からは彼らが必死にすくい上げてたんですよ。そこから妖精倉庫で働く仕事を紹介されて、黄金妖精たちという生きる目的を手に入れるわけですけれど。今のヴィレムは妖精倉庫に来る前どころかグリックたちと出会ってすらいない状態で、そりゃもう捨て鉢の無気力という酷い有様なのも仕方ないよこれ。唯一生きてたはずの大賢者スウォンですら、つい最近どうも生存絶望状態になってしまったというのをフェオドールの記憶から目の当たりにしているわけですから。
ナイグラート、やらかしちゃったよなあ。ヴィレムが一番弱ってたところに追い打ちかけちゃったのですから。そこは逆だろう、気持ちは痛いほどわかるけど。クトリを覚えていない、というのは全方向に辛すぎる。
思えば当時、ティアットたちはまだまだちびっ子でヴィレムの存在はお父さんというにもお兄さんというにも曖昧でしっかり根付いてはいなかったんですよね。やはり、彼の存在が大きく根ざしたのはクトリでありネフレンであり、アイセアだったんですよね。そして、ここにはもうクトリは居なくて、ネフレンは戻ってこれない所に追いやられてしまっていて、居るのはアイセアだけ。
正直、アイセアがあそこまでヴィレムとの再会にグチャグチャになっちゃうとは思わなかった。あのヴィレムに一番親しかった妖精三人の中でアイセアだけがちょっとだけわざと心の距離を置いていたのだけれど、それをあんなに後悔して未練に思っていたとはほんと思わなかったんですよね。元からかつて潰えた妖精の記憶を持ち、他の妖精たちとは違った大人びた部分を持っていたアイセア。自分を偽り色んな意味で大人のふりをしていた彼女は、成人となり本当に大人となり他の小さい妖精たちを守る側の立場になっていて、そのしっかりとした頼りがいのある頼もしさはポンコツ天然な部分の多分にあるナイグラートやラーントルクなどよりもよほど大人びていたんですけどね。
今、浮遊大陸は滅びの危機の只中にありその対処の中核近くにいる人間として彼女はとてつもない重圧のもとにいたのでしょう。さらに、自分の妹たちである妖精たちを守らなきゃならない、でもラキシュはさっさと逝ってしまい、今ネフレンもまた自分たちの手の届かないところで力尽きようとしている。色々と限界に近い部分はあったと思うんですよ。そこで、かつて自分は遠くから見ているだけで寄りかかる事をしなかった「お父さん」が戻ってきた。記憶もなく前よりももっと愛想もなく、それでも根本の所では変わっていないヴィレムが、今ネフレンもクトリもいないまま自分たちの前に居る。
これ絶対やばいって、とアイセア自身が自覚しちゃってるあたりがなんともはや。それでなるべく近づかないようにしていたくせに、自分で言ってたくせにちょっとだけ昔のアイセアに戻って、前に出来なかったちょっとだけの甘えを見せているあたりが、ほんとちょっとだけなのがアイセアらしくて、この娘らしくて愛おしいんですよね。もっとも、甘えを見せる今のアイセアは昔と違ってもう一端の女性なのですけど。うん、でもそれでも成人になってからのアイセアはずっと一人で頑張ってきた所があったので、こうしてちょっとでも寄りかかる姿が見れたのは良かった、本当に良かった。

でもアイセアをはじめとして、ヴィレムをよく知っている人たちの目があるからこそ、今の極めて後ろ向きなヴィレムの姿はなかなかつらいものがある。まあ、後ろ向きであろうとこの男、じっと蹲っていられず動いてしまうことについては定評があるのだけれど。なんでそこまで空虚で、絶望に心縛られているのに、黙って力尽きていられないんだろう。それでこそ、それでこそヴィレムなんだろうけど、それで何かが取り戻せているわけではないのが本当に辛い。

しかし、あの最後の獣(ヘリテイエ)が見せた過去の人たち。あの再現された過去は過ぎ去って喪われたもの。だから、自分の中から失われていないものは現れない、というのなら。
どうして「彼女」は現れなかったんだろう。大賢者として生き残っていたスウォンはともかくとして、「彼女」については他の仲間達と同列だったはずなのに。アルですら、現れたのに。
リィエルの方もなんか一人でとんでもないことを仕出かしているようで。なんなんだこの幼女は。まだろくに思考もまとまらないぼんやりとした幼子のくせに、根性極まってるだろう。この娘は、いったい何になるんだろう、どうなるんだろう。セニオリスが共鳴したのは、果たして戻ってきたヴィレムなのか、それともこの娘なのか。
そしてオデットですよ。あれ、事実なのか。フェオドールと同じ方法をとったということ? 結局それって、無私の聖人の所業じゃないですか。それとも、戻ってこれる余地があるんだろうか。あとでネフレンが眼帯しているのを見ると、まず間違いなく弟と同じやり方をしてしまったということなのか。でもどうやって?

ともあれともあれ、タイトルに有るあの「もう一度だけ、会えますか?」。ネフレンについてだけは間違いなく成就したんですよね、これ。ネフレンにとってのヴィレムがどういう存在なのか、嫌というほどわかるあのワンシーン。ネフレンって、ヴィレムに寄り添うという意味では何気にクトリに全然負けてなかったんだよなあ、というのをよく思い出してしまいました。
もう泣くことすら出来ないくらいに擦り切れた、とでもいうような表紙絵のネフレンがそのまま消えてしまわなくてよかった、本当に良かった。
ラストシーンはあれ、期限一杯の時期ということになるんだろうか、リィエルの年齢からして。ネフレンが戻ってこれた、というだけでちょっともういっぱいいっぱいなのですけれど、どうにも不穏な状況は続くもので。そこで「ごめんなさい」なんて言われるとねえ。

シリーズ感想

終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ ★★★★   



【終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ】 枯野 瑛/ue  角川スニーカー文庫

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亡国の姫、勇者、13歳。『終末なにしてますか』シリーズもう一つの物語。

【TVアニメでも話題騒然の『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』シリーズから紡がれる、新・外伝。】

リーリァ・アスプレイ――極位の聖剣セニオリスに資格を認めらた正規勇者(リーガル・ブレイブ)の少女。
「あんたって、やっぱりさ。生きるの、へたくそだよね」
人類を守護するという使命を背負う彼女に並び立つことを諦めない兄弟子に、複雑な感情を抱きながら。
怪物(モンストラス)が蔓延る地上でリーリァが過ごすのは、烈しくも可憐な日々。
アニメ化も果たした『終末なにしてますか?』シリーズから紡がれる、いつかは滅びゆく大地で、いまを生きる勇者と人々の物語。

リーリァ・アスプレイは泣かない。
描かれるキャラクターの涙する姿が印象的なこのシリーズのジャケットデザインですけれど、聖剣セニオリスを手にこちらを振り返るリーリァの口元は強く引き結ばれ、その瞳はどこか虚ろでありながら強固な意志を感じさせる。それは多くの感情を封じ込めた、頑ななまでに鎧った表情であり、諦めであり、焦がれであり。このリーリァの物語を読んだあとだと、様々な想いを抱かせてくれるとても素晴らしい表紙絵である。一三歳のリーリァ。すでに正規勇者として最前線で活躍し続けていた彼女ですけれど、後の彼女と比べるとまだ自分の「正規勇者」としての命運に対して吹っ切れていない印象なんですよね。あるいは、その勇者としての命運を受け入れすぎているのか。
人類という総体を救う存在であるが故に、よりミクロな意味での救いたいと思う者を絶対に救えないという勇者という特質性。作中でも、リーリァは自分が助けたいと思った人を実際に助けられたことは本当に少ない、と吐露しているように人類最強級の戦士でありながら彼女は常に絶望と寄り添っている。その根底には諦観があり、それでも諦めきれずに手を差し伸べ続け叶わぬまま果てることに苦悩し続けている。この頃のリーリァはそんな勇者としての自分にのたうち回りながら足掻いている頃なのだろう。より頑なで周りを顧みない子供だったころ。
兄弟子ヴィレムの存在を、彼の在り方をどう受け止めていいのかまだわからないまま、ぐちゃぐちゃな想いを抱えていたころ。
後のリーリァも多分、泣かなかっただろうけれど、このリーリァのように堪えるように口元を引き結んではいなかった。その目を乾かせてはいなかった。最期までリーリァは幸せそうに想いを馳せて笑っていた。だからこれは、そんなリーリァに至る前の物語なのだ。
同時に、はるか昔に終わってしまうことがわかっている世界の物語でもある。結末を既に知っているだけに、全力で生きている姿を克明に鮮烈に描かれるこの作品のワンシーンワンシーンに、登場人物たちの生き様に、アデライードたちの生きるために懸命な輝きに胸を締め付けられる。
きっとこの作中の登場人物たちの誰にも理解できなかっただろう、ヨーズア氏の奈落のような絶望と姪っ子への愛情に共感させられる。
なんかもう、シリーズ全体の中から見た立ち位置として、物語の中身を度外視してもこの巻そのものが切ないんですよねえ。
それでも、彼らはこの時代、この時を現在として懸命に生きている。全力で生き足掻いている。

しかし、後の破滅とは関係なく、星神との戦いとの前段階で既にこの星の人類って容易に滅びやすい状況にあったんですよねえ。ちょっと気を抜くと滅びるよー、みたいな。でなければリーリァみたいな勇者が歴代活躍しているはずがなく、聖剣が開発されるはずもなく。
既にこの頃から人類、一杯一杯のギリギリを歩んでいるわけで、そこに生きる人たちにも瀬戸際の限界の端を歩いているような緊張感が、誰からも伺えるわけです。アデライードにしてもシリルにしてもあの孤児だったエマにしてすらも。
そんな中であのヴィレムである。この人だけ、この子だけ、ヴィレムだけはなんかこう、違うんですよねえ。いや違うくはないのかもしれないけれど、彼もまたこの簡単に滅びてしまいそうな世界の中で他の人達と同じようにギリギリを抱えながら生きているのだろうけれど、そのギリギリの意味が異なっているというべきか、あまりにもヴィレムはヴィレムでありすぎるというべきか。いつの時代、どんな世界でも、ヴィレムはヴィレムなんだよなあ。
そして、そんなヴィレムの凡人であるが故に凡人の極地へと至ってしまった彼の在り方は、その凡庸すぎる考え方の行き果てた先は、リーリァの諦めと絶望に対してあまりにもマッチングしすぎているんですよね。彼女が取りこぼしていくものを、どうしても掴めず拾えずどれだけ頑張ってもどうしようもできなかったものを、全部回収して拾い上げてすくい上げていくスタイル。丁寧に全部全部賄っていってくれるスタイル。
もうヴィレムがヴィレムすぎて、泣きそうになる。そんなヴィレムすぎるヴィレムを目の当たりにするリーリァの中から溢れてきて抑えきれず必死に蓋をしようとして抑え込みながらも、その隙間からこぼれ落ちてしまうキラキラした想いに、やっぱり泣きそうになってしまう。
ヴィレムに向けられるリーリァの笑み、彼女が笑う、笑えるというその意味に、その価値に胸打たれるのだ。
聖剣セニオリスの持ち主たちは、そんな風に笑っていく。そんな風に笑うものたちだからこそ、セニオリスは力を貸してくれるのだと、そんな者たちために生まれた剣なのだと、セニオリス誕生秘話も語っている。幕間に挟まれる初代勇者とそんな彼の人生に寄り添った精霊の物語、聖剣セニオリスがどのようにして誕生したのかを語る挿話がまた……クるんですよねえ。胸の奥からこみ上げてくるものがある。セニオリスが呪われた剣なんかじゃない、幾つもの願いが織り込まれ結実された優しい剣だというのが伝わってくる。

他にも、ヴィレムがどうしてセニオリスの調整が出来たのか、とか。セニオリスがどうして幾つもの護符(タリスマン)を繋いで剣として形成されているなんて変な構造をしているのか、など本編を補完する内容も幾つもあって、その意味でも読み応えある作品でした。
そして極位古聖剣モウルネンの継承条件なんか……あれずるいよね。六巻のラストにティアットがモウルネンを継承したシーンの重みがさらに変わってきてしまう。
なんかもう、色々と堪能させていただきましたよ、うん…………ヴィレムに似た人形ゲットして本能のままに抱き枕にしまくってるリーリァ、可愛かったですうん。目撃者は殺されそうですけどw

シリーズ感想

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 07 ★★★★☆  



【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 07】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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一人の少年が作り上げた舞台で、一人の少女が英雄となった。
〈獣〉に対抗できる黄金妖精(レプラカーン)の存在は明るみとなり、浮遊大陸群(レグル・エレ)が小さな守護者に沸く一方、38番浮遊島に侵食の足音が迫る。
「黄金妖精(レプラカーン)をしてくるよ。先輩たちには、ちと悪い気がするがね」
パニバル・ノク・カテナは、〈十一番目の獣(クロワイヤンス)〉に呑まれた39番浮遊島に立つ。
その力の限りを尽くして、〈獣〉との戦いへと臨むために。
これは作られた英雄たちの、終わりに近づく物語。

フェオドールの思惑通りにレプラカーンは闇から闇に消費される存在から、陽のあたる場所で活躍する存在へとなったわけだけれど、陽に当てられたら影が出来るわけで、その負の部分についての手当はどうにも片手落ちに見えて、やりたかった事はわかるけど中途半端だよフェオドール! と声を張り上げたくなってしまった。まだやらなきゃいけない事が残ってるじゃないか。なんでここで退場しちゃってるんだよ、君は。むしろ、ここからのほうが彼の能力が必要な場面が多かったろうに。フェオドールの上司だった被甲種のおっさんのフェオ不在への愚痴とも嘆きともつかない呟きに、強く共感を抱くのである。
ヒロインであるラキシュが死に、主人公であるフェオドールが退場して、しかしまだ浮遊大陸群を襲う危機は続いていて、兵器から英雄になったとはいえ黄金妖精たちの戦いは続いていく。
これまで第二部はティアットとラキシュがメインに描かれていた中で、今回はちびっ子四人組の中の不思議少女だったパニバルが主人公として描かれる。
小さい頃から何を考えてるのかわからない不思議ちゃんだったけれど、彼女が主人公として描かれてその内面まで明らかにされると、わりとみんな勢い任せな四人娘の中でこの子が一番色々と考えている子だったのかもしれない。
まあ、彼女の自己分析が正しかったのかについては、大いに疑問符がつくけれど。黄金妖精の「死霊」としての側面を強く持っていて、生命に対する関心が乏しくその内側に虚無を抱えている。だからか、自己保存についても興味がなくて自分を費やすことに躊躇いがない。なんて、自分で考えているけれど、果たしてそうなんだろうか。
むしろ、ラキシュの死に対して意識せずポロポロと泣いちゃっている時点で、他の妖精たちよりも生き死に対して敏感であるような気すらするのである。自分の生命に頓着しないところも、見方を変えると残されたコロンやティアット、後ろに続く後輩たちを犠牲にしないためという強い目的意識が眠っているようですし。
黄金妖精たちの持つ自分の命に対する無頓着さって、もっとアンバランスな唐突さを内包してる感じなんですよね。それに対してパニバルのそれは傍目には素晴らしく危なっかしく見えるけれど、内面的には極めて一貫しているように見える。
わりとアイセア似なところあると思うんですよね、パニバルって。その上でアイセアよりも考えすぎて自己完結してしまっている風でもある。自分はこういうモノだ、と答えありきで決めちゃっているような。
パニバルの考えるパニバル・ノク・カテナってどこにも泣くような真似をする要素は無いんですよ。パニバル・ノク・カテナは泣かないし悲しまない。喪うこと、欠け落ちることを既に知っているパニバル・ノク・カテナは、未来を望まない。既に幸福であることを知ったパニバル・ノク・カテナは過去を振り返るだけでいいのだ、と。幸せなまま終わることを望むのだと。
彼女自身はそう語っていて、でも彼女は実際こうして泣いている。表紙のように泣くのである。

パニバルが飛ぶシーンは、墜ちるシーンは、まさにクトリのあの瞬間とおんなじなんですよね。
でも異なるのである。パニバルはこのとき、決して「世界で一番幸せな女の子」ではなかったのだから。

だからその代わりに、パニバルを待ってたのは成れの果てでしかなかった黒瑪瑙ではなく、本物の英雄だったのでしょう。
決して作られた英雄なんかではなくて、もはや「死霊」としての黄金妖精でもない、特別な存在にティアット・シバ・イグナレオは成ったのである。
かつてのリーリァ・アスプレイでも至れなかった道。クトリもラキシュもヴィレムも掴めなかった場所。
この娘は、きっと望んだ未来を掴むことを叶えられる英雄になるに違いない。そう信じることが出来るシーンでした、ティアット登場シーンは。優しきセニオリスじゃなく、呪いから開放されたモウルネンの適合者として、またモウルネンをあんなふうに使える聖剣の使い手として、この娘こそが本当に英雄になることが出来るに違いない。


しかし、今回一番衝撃だったのはフェオドールのお姉ちゃんのオデットでしょう。第二部入ってからずっと裏で暗躍している一方で、何をしたいのかがわからず浮遊大陸群の置かれた現状を知らないまま邪魔ばかりして一体なんなんだ、と思っていたのですが……。
おいおいおいおい、もしかしてじゃなくオデットこそが一連の事態の核心に近いところで奔走していたのか!? ネフレンがああなったまさにその時に、オデットもそこに居たなんて。
ってか、怒涛にように溢れてくる情報がえらいことになっているし、クラスター爆弾のように散りばめられる伏線がとんでもないことになっている。リィエルからして、あれって思いっきりキーパーソンになっちゃってますよね、よく眠るようになってることも含めて。
トドメに最後のアレである。うははは、ブラックアゲートだけならまだしも、そう来たか。そうひっくり返してきたか!
参った、ここに来て一気にブースト掛かってきたんじゃないですかこれ!?

シリーズ感想

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 6 ★★★★  

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#06 (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 6】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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フェオドールは鏡の向こう、笑みを浮かべる黒髪の青年に語りかける。君の力を、貸してくれないか―浮遊大陸群を墜とすために。絶望を鎖ぎ、希望を結ぶ遺跡兵装モウルネンを手に戦場に刻むのは、最後の嘘。
「堕鬼種は悪だ。信じちゃいけない」
マルゴ、ティアット、そしてラキシュ―彼女たちの傍にいる資格なんてないけれど。これが、みんなが幸せになれる唯一の方法なんだ。コリナディルーチェの、長い夜が明ける。
もう一度、会えましたか?
ブラックアゲートの人、てっきりこれが復活のきっかけかと思ったらマジで獣の方だったのか。ただ人格的にはほぼ「彼」と同一と考えていい、ということは獣とコミュニケーションが取れる可能性がある、ということなんだろうか。いや、これはあまりにも特殊すぎるケースだからなあ。
だいたいヴィレムくんよ、あんた大人なんだから子供が自分のマネするのもっと理解しておいた方が良かったんじゃないだろうか。ほら、あなたの真似をしてしまう子が出てきちゃったじゃないか。
クトリとヴィレムのラブストーリーにあこがれて、クトリのマネをしようとして頑張っていたティアットをけちょんけちょんに貶し倒したフェオドールが回り回って、ヴィレムと同じことをしてしまうというのは、なんかもう随分な話じゃないですか。
ティアットは怒っていいと思うよ。徹底的に置いてけぼりにされて、置き去りにされて、役割を押し付けられて、取り残されてしまったことを、怒っていいと思うんだ。この娘だけは、怒る権利があると思う。実際、めっちゃ怒ってたけど、うん。
ラキシュもフェオドールも、自分のやりたいようにやって行ってしまった。残された者たちは子供のままでは居られずに、大人になるしかない。悔しいことに、彼らの働きこそが残された者たちに大人になる権利をもたらしたという事実が、救いであるからこそ当事者たちにとってはもうなんか、グガーーーッって感じなんだろう。ノフトがあの時納得できん!って怒ってたのも改めてわかるよなあ。しかも、ティアットにとってはフェオもラキシュも最も親しい存在だっただけに、なおさらに。
それ以上に、土壇場の土壇場でフェオと再会してしまった、マルゴがなんかもう酷すぎるんじゃないですか? その上、ラキシュとすら深い縁があったとか。元々どん底に近い位置を這いずり回っているような立場だったのに、そこからすら叩き落とされたような有り様じゃないですか。読み終えてから表紙絵を見直すと、心が柘榴のようにズタズタにされるかのような思いである。
一方でアイセアは、というとついに「彼女」ともう一度会うことはなかったわけです。なんだろう、このそれぞれに対しての「もう一度だけ、会えますか?」へのアンサーの強烈さは。

しかし、打開としては行き詰まっていた黄金妖精たちの行く末を決定的に打開してみせた、という意味ではフェオのそれは、対処療法であったヴィレムのそれと比べても通すべき筋が通っているのだ。
モウルネンという呪いによって、凄まじい制約に縛られていた黄金妖精の在り方がこれ根本からひっくり返された、とも言えるんですよね。いわゆる「妖精」から卒業した面々、また大人になったかつての少女たちが示している有能さは、妖精たちの成体化調整措置の停止なんて容易に覆せる材料でしょうしね。誰だ、有能才女なラーントルクさまは安定してポンコツ! とか主張したがってる人はw
ほんと大丈夫なのか、このポンコツ才媛。なんか、知性と切れ味が漲ってるはずの一挙手一投足にポンコツが隠れ潜んでるんだけど!?
しかしそれでも、だ。今、浮遊大陸郡が見舞われている危機を思えば、彼ら黄金妖精の存在は欠かせないものであることは間違いないでしょうし。
って、その問題があったかー。
フェオを中心に回っていたこのモウルネン問題、喫緊だった妖精の存続の危機に対しては見事に解決してみせたわけだけれど、根本的な世界の危機についてはまったく着手出来てないんですよね。
そもそも、大賢者さまたちがロストした件、どうなってんのほんとに!?
そう、主役とヒロインが退場しても、物語は続くのである。これから、誰を主体に話は進んでいくんだろうか。ティアットか、それともマルゴか。なんか、おばけが出たー! とかラストで騒ぎになってるけれど。一瞬前シリーズのラスト再びか、と思ったんだけれどあっちが時間昼前後なのに対してこっち夜なんですよねえ。さあて、何事だ?

シリーズ感想

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 5 ★★★★   

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#05 (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 5】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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その日、2番浮遊島は完全に沈黙した。

遺跡兵装(ダグウェポン)モウルネンの真実を知るべく、護翼軍司令本部に忍び込んだ元四位武官フェオドール。
彼の前に立ちはだかったのは、かつての妖精兵ノフト・カロ・オラシオンだった。
昏倒して目覚めない堕鬼種(インプ)を前に、自分の存在がある限り、彼は永遠に救われないのだと知るラキシュ。
「わかってるんでしょう? あなたがそばにいるだけで、あの子は死に近づいていく」
別れを告げた妖精兵の思考を埋めるのは数多の言葉の断片――あの夜の記憶。
これもうあかんやん!! 世界もう終わりやん!!
プロローグで明かされた、とんでもない事実。とんでもなさすぎて、え?嘘でしょう? とか思ってたら、どんどん確定事項と補強材料となるネタが湧き出てきて、意識が遠くなってきたんですが。
ちょっと待って、ほんと待って? マジなのこれ? なにやってんだよ、あの人ら!? いやうん、そう言えば大賢者がここしばらく沈黙してて音沙汰ない、みたいな話が以前されてましたけれど、対して気にもしてなかったし、そもそもこの第二部に入って気にかけるべきは黄金妖精たちの行く末という行ってしまうとミニマムな話であって、終末云々は第二部入ったらあんまり関係ないよなあ、とねちょっと気を抜いてた部分があったんですよ。何かあっても今となってはあの星神さまも居て、地神たちも揃いつつあり、ネフレンやラーンも控えてる、と。わりとジリジリと後がなくなりつつあった第一部の頃と比べると、安心感があったんですよ。クトリとヴィレムが残していってくれたものは、確かにティアットたちや黄金妖精たちや浮遊都市群に未来を与えてくれていて、その未来をどうするかはそれこそ当人たちの頑張り次第、という風に鷹揚にかまえていられたところがあったわけですよ。

どっかーーーーん!!

前提から全部綺麗さっぱり吹き飛んじゃってるじゃないかーー!!
えらいこっちゃ、えらいこっちゃ!!??
こうなってしまうと、何がしたかったのかよくわからんかったフェオドールの姉ちゃんのテロ行為が、何を目的としているのか嫌っちゅうほど明らかになってしまって、いやもうそれって全部終わってしまったあとのどうしようもなくなった状況をどうしようもないなりに無駄な抵抗がちょっとだけでも出来るくらいにはなんとかしよう、という途方もなく無駄に近いであろう、しかしやらなければそれこそそのちょっとの間もないほどに一瞬に消え去ってしまうだろう、僅か寸土の無為を手繰り寄せるだけの可能性をなんとか掴もうというあれこれであって……もう書いてるだけで悲しくなってくるほど無駄に終わるだろう無駄な抵抗だなこれ!! それを、全人類の憎悪と怒りを自分一人に集めてもなお成し遂げようとしているわけで、あかんこの人なるほどフェオのお姉ちゃんだわ。
しかし、このやろうとしている手段って、話を聞けば聞くほどヤバいなんて代物ではなく、お姉ちゃんそれ把握してるのか!? いやうん、まだよくそれ……モウルネンについてよく理解しきれてないんだけれど、ジェイドさんがああなってしまってたということは、これお姉ちゃんの思うとおりに使ってしまうとその時点でアウトなんじゃないの? 500年前のアレ、再びじゃないの? それとも、回避手段があるのか、そもそもこっちが勘違いしているのか。
フェオはフェオで、第一部のクトリも顔負けの精神汚染で昏倒しまくってるし、ラキシュはもう完全に中の人が前に出てきちゃってて……、これアイセアの中の人とまず間違いなくかち合っているわけで、もうクラッシュまで見事にカウントダウン中ですし。
ラーンなんか、これノフトに言ってることを要約すると、もうどうしようもなくて心のほうが先に泡吹きそうなので、ノフト傍に居て縋らせて、てなもんですよね。打開策云々じゃなくて、もうただノフトに傍に居てほしい、という弱音吐きまくりというか、諦観モードですよね、これ。
うんでもまあそうだよな、マジでどうしようもなくないですか、これ?
断片的な情報からスルと、現状を支えているのってレンっぽいですし。ちょっとほんとにもう神様なにやってんのーーっ!!
おとうさん、おとうさんたすけてー!! マジで助けておとうさーーん!!

もう壁をバリバリー、なナイグラートだけが癒やしです、って癒やしなのかこれ?

シリーズ感想

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 04 ★★★☆  

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#04 (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 04】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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妖精兵ティアットと堕鬼種(インプ)の対峙は、ラキシュの振るう《聖剣(カリヨン)》セニオリスの一撃で決された。
手負いの堕鬼種が目指すのは――かつての戦場、コリナディルーチェ市。
バロニ=マキシ一位憲兵武官の計らいで彼の地へ向かったティアットは、朱髪の先輩妖精兵らと邂逅を果たす。
一方その頃、妖精倉庫の管理人喰人鬼(トロール)もまた、旧き知人を訪ねてその地を訪れていた……。
えええ!? これノフトなの!? 昔はあんな短く髪切っててボーイッシュだったのに、すんげえ美人になっちゃってるじゃないですか。アイセアも相当化けましたけれど、ノフトもこれすげえなあ。少女が女性に羽化していくと、ここまで変わるのかー。これ、ネフレンとかどうなってるか恐ろしく興味湧いてきましたぞ。
そのノフトだけれど、今は髪を伸ばして背もスラリと伸びていやすげえわ。まあ性格は相変わらずのガラッパチなのだけれど、そうかー今はグリックと組んで動いてるのか。大人で世話好きなグリックは大体のタイプと合わせられるのだけれど、むしろちょっと無鉄砲入ってる乱暴なノフトみたいな娘の方が手綱引けてしっくり来るのかしら。
恋愛方面には発展していないけれど、結構いい雰囲気になっているというのが意外というか納得と言うか。ってか、グリックって種族的にはもう初老の域に入っているのか。
もう一度だけ、会えますか? という二部に入ってから結構こういう種族的な寿命の差による価値観の違い、というものをあれこれと描き出してるんですよね。オーク種の短命で在るがゆえに刹那的で、しかし仲間意識が非常に強いとか。サイクロプスの長命故の考え方とか。その観点から行くと、黄金妖精の種としての自然な寿命というのは幼年期のまま成長せずに消えてしまうという在り方が自然のものである、と言われるとなかなか反論しづらくあるんですよね。他にもこれだけ短命の種族が居るとなると。しかし、同時に処理を受けた黄金妖精たちは、前世の侵食を乗り越えればアイセアやノフト、ラーンのように立派な大人の女性へと成長しているわけで、その事実を前にすると幼体のまま消えるのが自然、と言われてもやはり納得し難いわなね。
一番納得出来ないのは、彼女らを一番近くで見守り続けたナイグラートなのでしょう。幼体精霊たちのリミットが迫っている中で、ついに彼女もじっとしていられなくなったか。
獣の危機が遠ざかったことで黄金妖精の「調整」が停止してしまった件。単に予算の問題や状況変化の混乱によるものかと思ってたんだけれど、どうやら自体はそれどころじゃなく深刻なもののようで。
黄金妖精の調整に関わる護翼軍の関係者が次々と殺害されていく事案が発生。そして、次の被害者として予想浮上したのは、実際に妖精たちの調整を手がけている単眼種のお医者先生。ちょうど、アニメでも登場しているあのサイクロプスの先生ですよ。あの先生、超重要人物だったのか。
この先生を巡って、護翼軍や帝国の間者など各勢力が暗躍する中で、フェオドールたちも包囲網を掻い潜って先生たちのもとにたどり着き、そこで事態の核心へと触れることになる。なんか、ナイグラートが軍の連中からプレデター並の扱いを受けているのは気の所為だろうか。でも、ナイグラート相手だと軍の兵隊でもあっさり蹴散らされそうで怖い。普通の種族相手には使われない最新鋭のなんか熊殺しとか化物殺し用みたいなのモンスター銃持ち出されてきちゃってるんですけどww
まあ、ナイグラートってストレス甲斐性に熊狩りするらしいので、熊殺し程度じゃ全然足りてないわな、これ。

ガンガン侵食が進んでもはや別人のラキシュ、というかこれ古い黄金妖精の精神とラキシュの精神がパッチワーク状になってしまっているみたいな説明を受けているけれど、実質ラキシュの要素だけ省かれてるようにも見えるんだよなあ。
一方で、フェオドールの方もインプの能力の暴走で、ヴィレムのある要素を取り込んでしまい、絶賛精神汚染中。ヴィレムってば完全にもう死んでるはずなのに、終わってるはずなのに、止まったはずなのに、ここでさらにその向こう側に繋がっちゃって、またぞろこのままでは終わらなさそうだぞ、この絶対やれちゃうマンは。
なんかここに来てさらに不穏な話ばかりが持ち上がってきて、どんどんリミットが近づいてきているけれど何のリミットかはわからずひたすらヤバそうというのだけが伝わってくる状況、混迷極まるのだけれど、ここぞという時にやらかしてしまいそうなフェオドールとティアットが、やらかした結果打開してくれないものだろうか。
どちらにしても、伏せられている情報が明らかにならないと何もわからないのだけれど。

シリーズ感想

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?#EX ★★★★  

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?#EX (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?#EX】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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春の陽だまりの中、幼い少女妖精・ラキシュは“聖剣”セニオリスを抱え夢想する―。それは500年前の出来事。正規勇者リーリァ14歳、準勇者ヴィレム15歳。人類を星神の脅威から救う兄妹弟子の日常は、なかなかにデタラメで色鮮やかで…。それは少しだけ前の出来事。死にゆく定めの成体妖精兵クトリと、第二位呪器技官ヴィレム。想い慕われる一分一秒は、忘れ得ぬ二人の夢となる。「終末なにしてますか~?」第一部、外伝。
ちょっと待って? なんでこの男、ドラゴン素手で倒してるの? 素手で。聖剣(カリヨン)使わないで素手で!
おかしい、ちょっとデタラメにおかしいですから、この人。今代正規勇者であるリーリァの人外魔境っぷりをこれでもかと見せられている画面の外で、ヴィレムさんも相当にオカシイ話をやらかしてるんですけど!

幕間にラキシュの様子をはさみつつ、前編でリーリァ。後編でクトリの話を描く番外編。いわば、聖剣セニオリスの使い手の物語ということになる。その冒頭で、ラキシュの語る聖剣セニオリスへの思いがまた胸を突くんですよね。
最悪の宿命を持ったものにしか扱えないといういわくを持つ傍から見ると呪われているかのようにしか思えない聖剣セニオリス。でも、ラキシュの語るセニオリスは、持ち主を呪う剣どころか精一杯の救いをもたらしてくれる優しい温かい剣なのだ。思えば、リーリァもクトリもセニオリスを疎んでいる様子は欠片もなかった。
巻の冒頭に斯くある。

悲劇を抱えたものでもなく
悲劇を越えたものでもなく

希望を持たぬものでもなく
希望を捨てたものでもなく

本気で強く望む未来を持ちながら、
その未来が決して手に入らないのだと
受け入れたものたち――

例えば、越冬祭の夜をヴィレムから家族の団欒に誘われた時、リーリァが頷いていたら。そんな事を思ってしまう。きっと、彼らの迎える結末は何も変わらなかったのだろうけれど……。
万難を排してでも、リーリァを故郷に誘ったヴィレムの本気は、如何ばかりのものだったんでしょうね。それって、ヴィレムにとっていちばん大切なものである家族の枠の内側に、誘っていたようなものなんじゃないかと。
家族に配ったプレゼントと同じものを渡されて、そりゃもう見ちゃいけないレベルの醜態を晒しまくってたリーリァを見てしまうと、思わず長い長い溜息を吐いてしまう。
家族になら、重荷を背負わせても良かったのだ。家族になら、甘えてもよかったのだ。ヴィレムは、それを良しとしていたのに。
それでも、この勇者様は、お姫様は、きっと世の中にも、滅びた故郷にも、もしかしたら人間種にもどこか距離をおきながら、感情として寄り添えないまま、宙ぶらりんになったまま、でも戦う理由を得てしまっていた。戦場に突っ込んでいける理由を持っていた。
空っぽの中に一雫だけたまった幸せの為に、幾らでも戦えてしまったのだろう。
それは最悪の宿命で、悲劇の人生で、一番救いたいものを救えない運命が待っていたのだとしても、リーリァ・アスプレイはあんなにも幸せそうだった。あんなささやかな幸せで、満たされているようだった。
それが、ただ切ない。

そんなリーリァに比べると、クトリの方はもう少しだけみっともなくて、不器用で、余裕もなくて、重ね重ねみっともなくて、一杯一杯だった。
残念ながら、ラキシュの思い描くクトリは非実在存在であり、ラキシュもティアットも多分にしてその目は節穴であった。記憶は、美化するものなのである。
でも、クトリは自分の中に芽生えた「恋」にとても一生懸命だったことだけは間違いではないのだろう。そりゃもうみっともなく無様にジタバタのたうち回るほどには一生懸命だった。

それもこれも、リーリァのそれも、クトリのこれも、正しく恋する乙女の生き様だった。好きな人のことを精一杯、思いっきり全力で想うことの出来た生き方だった。
とても、幸せそうな光景だった。
だからその二人の生き方と結末は、憧れるに相応しいものだったのだろう。
星の神と、未だ幼い妖精たちが焦がれるに足る在り方だったのだろう。
そう得心してしまえることが、少し切ない。


ところで、この世界におけるエルフって、なんか思ってたのと全然違ったんですけど! 一巻だかにおいて、人間族に引き続き、獣によって滅ぼし尽くされたというエルフとドラゴン。あの語り口からして、当然のごとくあの森の妖精、耳の尖った精霊魔法とか弓が得意なあのエルフだと思ってたのに、なんかもう全然違ったですけど!
エルフ怖い、エルフヤバイ。あれはちょっと滅びてなかったとしても、浮遊島に受け入れるの無理だったんじゃなかろうか。他種族との共生、生態的にも無理っぽいし。
ちょこちょこっと、既存の概念と違う設定が盛り込まれてて、世界観からして興味深いんだなあ。

シリーズ感想

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 3 ★★★☆   

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#03 (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 3】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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「だからね、わたし、やっと決めたよ。──きみの、邪魔をしてやる」

あれから10日が経った。妖精の存在と特性についてはまだ極秘事項のままで、〈重く留まる十一番目の獣〉(クロワイヤンス)を仕留めたのは、フェオドール四位武官が極秘で預かっていた、最新の試作爆弾であるとされた。
常識を超えた強さで魔力(ヴェネノム)を熾した黄金妖精(レプラカーン)ラキシュはいまだ目覚めず、リンゴはもういない。
――フェオドールは結論した。
きっともう始めてしまうべきなのだろう。世界に敵対する、最初で最後の戦いを。
急転直下! 新シリーズ第3弾。
「おとうさん」はだからダメだって。威力強すぎる。オーバーキルだよ。
ある意味、その言葉を聞いただけで色んな人が心をずたずたにされる。読んでるこっちも、言われた人も、言った子も。
しかし、ラキシュはもう手遅れなのか。正直、彼女に関してはまだリカバー出来る段階で押しとどめた、と思っていただけに地味にショックで。アイセアの説明からすると、クトリが陥っていた最終段階に近い状態なのかしら。クトリの場合は奇跡的に何とかバランス取れていたのだけれど、結局踏み切っちゃったからなあ。
ラキシュはラキシュでこれ、もうどうにもならない状態にさらに進行しちゃったわけだし。なまじ動いて喋って考えて、ちゃんと一つの人格となっちゃってるっぽいのが余計に別人感が出てて、それがもうフェオドールの背中をグイグイ押し込んでいくんですよね。
ぶっちゃけ、フェオドールは一人ではとても彼自身の野望を実行に移すことなんてなんだかんだとできなかったんじゃないか、と思っているんだけれど、ラキシュとリンゴの結末がどうしようもなく彼を覗き込んでいた深淵へと突き飛ばしてしまったわけだ。
それにしても、焦りすぎだったと思うけどね。フェオドールにしてはあまりに行動にしても判断にしても拙速がすぎて慎重さに欠けていた。この嘘の下手な嘘つきのことは理解している人はもう見ればわかるほどにわかりやすいだけに、もろに態度に出てたものねえ。それがラキシュとリンゴの件に関してのショックだと受け止められている間は良かったけれど……何気にこの護翼軍の一位武官たちはみんな将官として優秀なだけでなく人間的にも深みがある「人物」ばかりですなあ。この人たちはみんな道を指し示してくれている。理解し肯定し導いて、しかし過てば抜かりなく容赦しない。こういう人らでないと妖精兵なんて扱えないのかもしれませんが、こういう人たち、妖精兵をまともに扱う人たちだからこそ、どれほど辛さを抱えているか。そういう立場だからこそ、フェオドールを後継にと真剣に考えていたのかもしれません。まさに、彼ら一位武官たちの在り方はフェオドールのそれと変わらぬものでしたから。しかし、フェオドールの正しさの発露は彼らとはどうしようもなく違っていたわけだ。それはもしかしたら、じわりじわりと修正されて同じところに落ち着く未来もあったのかもしれないけれど、フェオドールは踏み越えてしまった。
でも、そこであらすじにもあるティアットのセリフが効いてくるんだなあ。ラキシュ相手にフェオドールが似たようなこと言ってたけれど、この子たちってもう少し素直に……というのも違うか、彼らは本心からそう思って言ってるわけだし。この邪魔してやるって、単なる否定じゃないんですよね。相手のこうありたいという意思を認めた上で、しかし自分はそういう考え方嫌なんで立ちふさがる、という構えなんですよね。それって素直じゃないというよりもむしろ健気の領域なんじゃないだろうか。
でも、ティアット。アイセアにクトリに良く似てきたと言われちゃったけれど、振り切るところまで似ちゃわないようにしてくれよ。ぶっちゃけ、ティアットの側も心配なんだけれど、そこに芽生えつつある恋心、クトリみたいに決め込まれてしまったときその対象であるフェオドールが持たないから。この点に関してヴィレムはほんと超人だと思う。あの男はあり得ないほど受け止めきってたもんなあ。クトリだけじゃなくて、その他もろもろあり得ない規模と深度と年月で。
で、フェオドールが見つけてしまった件の「死せる黒瑪瑙」って間違いなくアレなんですよね。まさかここで出て来るのかー。いつ蓋が開けられるかドキドキしていたのだけれど、まだそう簡単には行かないか。
正直、早く出てこないとそろそろナイアグラードがいい加減限界振り切りそうなんですけど。

シリーズ感想

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 2 ★★★★   

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#02 (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 2】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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“獣”の侵食により死にかけた都市ライエル。その外れの森で新たに発生した妖精の子供2人は、リンゴ、マシュマロと名づけられた。「ふぇどーるーっ!」「ふぇどるー」「まったく、どうして僕なんかに懐いてるんだか」ぼやくフェオドール四位武官に、ラキシュは悪戯っぽい笑顔を返す。彼女らと過ごす日々の中、フェオドールは自らの想いを告げることを決めるが、そこに“十一番目の獣”の『小瓶』が落とされる…。新シリーズ、第2弾。
もう一度だけ、会えますか?
そんな請い願う再会が叶うのならば、それは素晴らしいことだと思っていた。起こりえるなら、美しい奇跡のようなものなのだと思っていた。
だが、その二人、もし再び会うことが叶うならば、それは悲劇の始まりだ。

もう一度だけ、会えますか? このセリフは、いったい誰のものだったのだろう。
誰が誰に宛てたものだったのだろう。
新しく生まれた黄金妖精の幼子たちリンゴとマシュマロ。そして生きていた許嫁マルゴ。再会の予感と幾つかの別れが、改めて強くこのタイトルに込められた言葉の意味に、思いを馳せるきっかけになる。
思えば、この言葉は消えゆく妖精たちだけに与えられたものじゃなかったのだろう。残され、置いて行かれる人たちの言葉でもあり、また生きて別れてしかし二度と会うことが許されなくなった人の懇願でもある、そんな可能性だってあるはずなのだ。
でもそのどれもが、問いかけに対して「会える」とは答えて貰えない。潰えた可能性への請願だ。それでもなお、わかっていてなお請い願ってしまう、その切ない思いをなんと言えばいいのか。

ついに自らの目的を明かしたフェオドール。だけれど、そんなことが嘘の下手な嘘つきに可能なんだろうか。幼い妖精たちの暴れっぷりに、あれだけ一喜一憂し、そしてその瞬くような在り方にあんなに傷ついてしまった少年に、そんな大それたことが出来るんだろうか。
本当にこの子は嘘が下手だ。始末に悪いのは、彼自身自分がよく出来た嘘つきだと思い込んでいるところだろう。実際の所、彼の嘘に一番騙されやすそうなのが自分自身、というところが尚更始末に悪いと来た。
それだとて、いったいいつまで自分に嘘をつき続けていられるか、わかったもんじゃないのだから。
生きていたマルゴは、そんな彼のどうしようもない嘘を現実に背負ってきている存在とも言えるのかもしれない。フェオと同じ感情を背負い、似たような目的を抱えて、浮遊島の多くを滅ぼすであろう爆弾を抱えた彼女。彼の大切なものであったはずなのに、知らずして今、彼の大切なモノを壊してしまった彼女。
お互い生きていることを知らず、お互い死んだものと思いながらも再会を願い、しかし会えば傷つけ合うであろう関係に陥ってしまった二人。
どうしてこんなことになってしまったのか。誰がいったい悪いのか。誰も悪く無いと言うには、あまりにも切ない有様じゃないですか。
刻々と滅びが近づくこの島で、なおも悲劇が積み重ねられていく。妖精たちの未来もまた、否定されながらゆっくりと閉ざされていく。
それでも、未来が在ると信じられるのは、前作のラストシーンがあるからか。マシュマロにつけられた名前、リィエル。あちらとこちらが、限りなく確かに繋がった。

そういえば、アイセアが姐さん顔して再登場しましたが、また雰囲気変わりましたねえ。いや、以前から一番後ろで受け止める懐の深い女でしたけれど、ちびっ子でしかも「……っす!」という三下口調。色気もなにもあったもんじゃなかったのに、どうやったらあの三下口調のまま「未亡人みたい」とまで言われる艶っぽさを獲得するに至ったのか。
なんか、ナイアグラートよりもよっぽど大人の女っぽくなっちゃってますよ、化けたなあw

シリーズ感想

終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか? 1 ★★★★   

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#01 (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか? 1】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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〈人間〉は規格外の〈獣〉に蹂躙され滅びた。〈獣〉を倒しうるのは、〈聖剣〉(カリヨン)を振るう黄金妖精のみ。戦いののち、〈聖剣〉は引き継がれるが、力を使い果たした妖精たちは死んでゆく。
「誰が恋愛脳こじらせた自己犠牲大好きよ!」
「君らだ君ら! 自覚ないのかよ自覚は!」
廃劇場の上で出会った、先輩に憧れ死を望む黄金妖精(レプラカーン)と、嘘つき堕鬼種(インプ)の青年位官の、葛藤の上に成り立つ儚い日常。次代の黄金妖精たちによる、新シリーズ開幕!
セリオニスがまた静かに荒ぶっておられる!
あれから五年。まだ幼かったティアットたちが年頃の少女たちになるに十分な年月だ。それだけの時間、どうやら黄金妖精が兵器として消費されなかったらしき事実は幸いとするべきなんだろうけれど、同時に流れ作業のように年嵩の妖精から使い潰されていた頃の諦めが失われていた、ということでもあるんですよね。
使い潰され消えることが当たり前だった頃。誰もが諦め、受け入れていた時代。それを、ヴィレムとクトリたちはぶち壊していってしまったわけだ。黄金妖精のオチビたちは、生きることも育つことも、その喜びも長きに渡って体験してしまった。
だからこそ、より深い覚悟が問われることになる。
ぶっちゃけ、必死に繕って突っ張って立つティアットのそれは、グラグラのブレブレなんですよね。どっかにしがみついていないと立っていられないくらいに、今の状況に対して震えている。その彼女が拠り所としているのが、クトリとヴィレムの美しく儚い恋物語だったわけだ。
そうかー、当事者じゃなく、ちょっと離れたところからおちびの視点から見上げていたあの二人の物語は、そんなふうに装飾されてたんだなあ。あれは、ほんと、当人たちしかわからない世界だったんですよね。オチビが夢見ても、仕方ないか。その美談に、必死でしがみついていたとしても仕方ないのか。
彼らは、あの当時戦っていた子たちは、みんな誰かのためじゃなくて、自己犠牲なんかでもなく、ただひたすらに自分のために戦っていた、というのをティアットはまだ実感できていないんだろうなあ。まあ、そのへんをフェオドールくんにけちょんけちょんに貶し倒されてしまったのですが。
フルボッコである。
残酷な真似ですが、この少年、わかっててやってるから凄い。拠り所を踏みにじって、彼女の覚悟を台無しにして潰しつくした上で、背負う覚悟を据えてやがる。
ヴィレムはあらゆるすべてを受け入れてみせたけれど、このフェオドールは自分を取り巻くあらゆるすべてに反発し、反抗し、徹底抗戦しようとしている。その中で最たるものとして邪魔し尽くしてやると標的に収めたのが、黄金妖精たちの、ティアットの彼女なりの必死の選択だったのだから、粋も粋である。
それは、大変な道だぜー。
だが、踏破するための気概を、この少年は抱えている。まさに、ヴィレムとは正反対の性質でありながら、どれほど無茶でも決めたなら絶対にやり遂げる、その歩みは正しく同じ勇者である。
でもなあ、ティアットはあれ、恋愛脳で出来上がってしまっているわりと雑魚ヒロインだと思うんだけれど、恐らくボスレベルなのがラキシュの方なんですよね。
なにしろ、あの聖剣セリオニスの継承者である。セリオニスに見込まれてしまったのである。薄幸を約束されてしまったようなものじゃないですか。
だからこそ、フェオドールには。この嘘つきにしてあらゆる結末に対する反逆者である彼には、セリオニスの運命にすら、反抗して欲しい。青年位官と称されているけれど、フェオドールってその気質からも、ティアットと同世代ぽいところからも、少年って感じするんだよなあ。ヴィレムが成熟しきった大人であったのと、どうしても比べてしまうからだろうけれど。でもその若さに、期待してしまうんだ。ひねくれ者であまのじゃくで性格悪くて、だからこそ根本的なところで脇目もふらず真っ直ぐ突き進むであろう、彼だからこそ。

シリーズ感想

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 5 ★★★★★  

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?#05 (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 5】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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ヴィレムは約束を守れず〈月に嘆く最初の獣〉(シヤントル)の結界は崩壊した。正規勇者(リーガル・ブレイブ)の命と引き替えに長い眠りについていた幼い星神(ほしがみ)は、その余波で空魚紅湖伯(カーマインレイク)とはぐれ、記憶を封じられたびれむと共に仮初めの平穏な日々を過ごす。その日、〈穿ち貫く二番目の獣〉(アウローラ)が浮遊大陸に降り注ぐことになるまでは――。〈獣〉に対するのは、アイセアとラーントルク。死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、終末最期の煌めき。次代に受け継ぐ第一部、幕。
……ふはぁーーーー。
うん、うん。
はぁ……。
しばらく、こう、余韻に浸っていたいと思う。感想? うん……うん、そうだねえ。そうだねえ。
………………。
色々と思うところがあり、考えに耽るところもある。いずれにしても、最後までただ見ているしかなかった、という感慨がある。
彼と彼女たちは最後まで、誰も叫ばず訴えず、自分の胸に思いを秘めて自分だけのものとして外にぶちまけず、持って行ってしまった。だからだろうか、悲しくはないけれど寂しいのだ。そして、少し憧れる。多くの後悔に足を取られず、絶望に知らん顔してやり遂げていった彼と彼女たちのことが。
幾つもの後悔を抱えながら、しかし嘆かず振り返らず。
運命に逆らわずに受け入れて、しかし徹底して抗い。
誰かのためではなく自らの願いの為に生きて、生き抜いて、費やし切って、そうして残された想いを誰かが拾ってまた己が願いとして抱きかかえていく。
その生き様は、多くを突き放していて、この上もなく健気だ。健気と、言わずしてなんというのか。
なんて、いうんだろうね、本当に。
本当にさ、この娘たちはみんな自分から選んじゃってるんですよね。兵器であること、戦って死ぬことを運命づけられながら、自ら望んで戦うことを選んでいく。それしかないからじゃなくて、それぞれ戦う理由を見つけてく。その果てに死ぬのは結果でしかなく、みんな望んだ願いを叶えるために戦って、そうして満足そうに逝ってしまうのだ。誰にも何も押し付けず、託さずに、重荷を残さず、思うがままに散っていく。
リーリァもクトリも、ネフレンもアイセアも。誰も彼もが、責任でも使命でもなく、自分の命を自分の為に使っていった。だから、これはきっと悲劇じゃないんだろう。笑って流す涙は、きっと悲しいだけの涙じゃないのだ。

頑張ったね、ありがとう。

次々と紐解かれていった真実、星神の正体であり、人類滅亡の真相であり、黄金妖精たちが生まれた理由。謎、或いは不可解な錯誤に思えたシリーズ当初からの過去の歴史と世界の成り立ちが、びっくりするくらい綺麗に一つに繋がっていって、ぜんぶ明らかになった時には思わずため息が漏れるほどだったけれど、この終末が誰が悪いでもなく、みんなが抗って抗ってそれでもどうにもならなかった結果だというのなら、やはりこの世界は悲劇なのだろう。でも、誰も悲劇に負けなかった。この終末の中で、誰も絶望しなかった。自分自身の未来のすべてを投げ出してしまったかもしれないけれど、きっと幸福だったのだ、彼女たちは。
ヴィレムは、最期まで穏やかに笑っていた。なら、クトリの願いは叶ったのだろう。
そうして、彼は最後に戻れたのだろうか。帰りたかった場所に、帰れたのだろうか。それなら、リーリァが命を賭けた理由もまた、ちゃんと叶ったのかもしれない。
一番救いたい人を救えないことが運命づけられた正規勇者の、覆せない運命がもし覆されたのなら、それはきっと、幸せな結末なのだ。
ヴィレム・クメシュという主人公の物語は、彼を想う少女たちの願いが叶った、ハッピーエンドなのだろう。
そう、思う。

この終末世界の物語は、また別のシリーズとして続くことになる。それが、いったい誰の物語なのか。何を語る話なのか。わからないけれど、この不可思議にして穏やかな、静やかな物語のその先をもう少しだけ見守ることが出来るのなら、それもまた幸せなことなのでしょう。
そんな幸福に、しばし余韻とともに浸る……。

シリーズ感想

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 4  ★★★★★   

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?#04 (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 4】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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妖精兵クトリ・ノタ・セニオリスは消滅し、ヴィレム・クメシュ二位技官は妖精兵ネフレンと共に闇に呑まれた。物語は、終わったはずだった。―しかし。ヴィレムは、見覚えのある部屋で目覚める。
「…おとー、さん?」
語りかけるのは、すでに亡き存在の娘アルマリア。そして、かつての仲間ナヴルテリが伝える真界再想聖歌隊の真実。それは時の彼方に過ぎ去ったはずの終末の光景―。夜闇の中、新たな“獣”が咆哮を上げる。
もう冒頭からナイグラードの号泣に貰い泣きである。目を背けるな、とばかりにつきつけられるクトリの喪失。ヴィレムとネフレンの消失。それでも希望が、喪われていないという希望が、が、がががっがががが。

アルマリア、泣いてないんですよね。悲しみも切なさも喜びも涙としてこぼさずにただ微笑んでいる。もう、この娘は何も求めていないのだ。待って待って待ち続けて幾星霜。あの約束は守られなくても、もう一度ひと目会うことだけを望んで、待ち続けたのだ。
それ以上、彼女は何も求めなかった。ぜんぶ、許してくれるような微笑みは、彼女が最期に浮かべた表情だったのかもしれない。
ヴィレムとネフレンが目の当たりにした世界は、ヴィレムが帰ってこなかったその後の終末世界。世界が滅びる前の一時。幻のようで、夢のようで、実態のない、しかしそこに確かに居る過去。わからぬまま飲まれるならまだ幸せで、これがもう喪われた記憶の世界だと承知しながら、それでもどうしようもなくこの終わってしまっている世界に浸り込んでいくヴィレム。それもまた切ないんですけどね、彼をじっと見守っているネフレンの思いがまた切なくてねえ。
上の世界ではいつだって壊れそうだったヴィレムが、この世界ではあるべき場所に戻ったように儚くなくなっている、放っておいたら壊れそうだったのに、今は放っておいても壊れなさそう、そんな見識を吐露しながらふと彼女がこぼしたセリフが痛切でねえ。
「私ひとりだけで、壊れそうだから」
ついつい、この偽物の世界の主賓であるヴィレムの想いにばかり目を取られていたけれど、完全な異邦人であるネフレンがここでどんな想いを抱いていたのか、その欠片でありながら凄まじい奔流を閉じ込めたような囁きが衝撃的でねえ。思いがけず胸がいっぱいになってしまったんだ。
クトリの代わりじゃないんだけれど、ネフレン、本当に最後の最後までヴィレムを離さなかったんですよね。ずっとずっと、傍らに寄り添い続け、続け尽くした。
ネフレン…レン。この娘は、もう、もうねえ……。
アルマリアの結末については、あの獣の咆哮を聞いた時からもう分かってしまっていたけれど、それでも……待ってたんだなあ。待ち続けてたんだなあ。
それを知った時、ヴィレムの抱いたものは如何程ばかりか。自分がもう、絶対に約束を守れないと理解した時、彼は……。
この最強の準勇者の受けた呪いというのは、それこそ折れることも諦めることも出来ない、ということだったんではなかろうか。だからこそ、出来ることは全部出来るようになってしまった。途中で辞める道もあったろうに、未練がましくずっと続けて続けて、規格内の範疇なのに規格外にはみ出るような最強の領分に陥ってしまった。そんな呪いが、この期に及んでまで彼を前へと進ませている。本当なら見なくて済んだ、人間が滅びる光景を目の当たりにし、その果ての終末を目の当たりにして、前にはもう、何もないのに。クトリも、アルマリアも、もういないのに。
そうして、新たな獣が誕生してしまった。絶望しないってことは、こんなにせつないものなのか。
彼に関してはね、あの冒険者のおねーさんが評した一言が、ガツーンとぶん殴るような威力の真理だったと思う。うわー、って感じだったし。ヴィレム本人も「うわー」となってたけれど。

幾つか、獣誕生の真相やそのきっかけとなる出来事など明らかになったけれど、それ以上にまだわからないことがいくつも出てきてる。あの昏睡するに至った人たちが見た夢。あれは、この結界内だからこそ見た夢なのか、それとも実際人間たちが滅んだ時に起こったことの中でも見られていた夢なのか。

真界再想聖歌隊(トゥルー・ワールド)が掲げていた教義や、星神がこぼしていた言葉がまた気になるんですよね。また、世界の真相の本当の姿はもう一段奥に隠れているようじゃないか。
最後の希望は、一番深い謎であるあの少女か。その言動から、想像はつくものの予想がつかない。どういう仕組で、何がどう動こうとしているのかさっぱりとわからない。
わからないけれど、わからないからこそ、その子が。クトリの中に居た、或いはクトリの枠組みとなったその子が、本当に最後の希望なのだと、そう信じるしかないじゃないか。

しかし、毎度ながら秀逸さに唸らされるのが挿絵である。大胆に、貪欲に見開きで描かれるワンシーン。2ページを使った広々とした挿絵だからこそ、そこにありったけの情感がつめ込まれている。本当にワンシーンを切り取ったような絵に、思わず目を釘付けにされて、心が揺さぶられる。まさにこの物語の世界観に確かな色彩を、あの切ない空気感をもたらしている一助なのが、このueさんのイラストなんですよねえ。ぶっちゃけ、まずもって表紙からして必殺ですし。

シリーズ感想

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 3 4   

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (3) (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 3】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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おかえりの声を、聞きたかった。ただいまを、きちんと、言いたかった。バターケーキを、食べたかった。それらの願いは、すべて叶った。帰るべき場所へ帰り、逢いたかった人に逢えた。だから。約束は尽きて。追いついてきた終末は、背後から静かに、少女の肩に手をかける。青年教官と少女妖精の、儚く輝いた日々。第3幕。
このあらすじ編んだ人だれなんだろう。韻を踏んだ短文にすべてがこめられていて素晴らしいんですが。
というわけで、多くのファンの声が届き、続刊かなったシリーズ第三巻。私自身、切に切に請い願っていただけに、この第三巻を手にとれたことは感無量でした。
奇跡が起きたように見えた前巻ラスト。きっと、それは間違いなく奇跡であって、しかし優しい猶予期間でしかなかったのか。
刻々と明らかになっていく、クトリの置かれた現状。それは、客観的に見れば絶望であり、悲劇であり、残酷すぎる結末に至る道程だったのかもしれない。でも、なんでだろうね。この作品は、そんな絶望に対して決して感情的にならないんですよ。
これは最初の巻からずっと言い続けていることだけれど、この物語は感情に訴える場面になればなるほど、淡々と落ち着いた雰囲気で語るんですよね。決して同情を誘おうとせず、起こったことをありのまま表現するように。本来ならばもっと情緒的に描いてもいいはずなんですよね。あざといくらいに泣かせに掛かっても構わないはずなんですよ。感情的に盛り上げて、引っ張り回して、これでもかこれでもかと波立たせて然るべきなのに。
そういう場面になるほど、むしろ語る言葉は穏やかに凪いでいく。優しく頭を撫でるように、泣きじゃくる子供を慰めるような慈しみが込められていくのだ。
「しょうがないなあ、もう」
こんなにも優しげで、穏やかで、空っぽなのに満ち足りたセリフがあるだろうか。悲劇である。絶望である。何もかもをなくしてしまって、もう二度と取り戻せない話である。それなのに、どうしてこんなにも幸せそうなのか。
諦観とはまったく違う、諦めたのとは絶対に違う、しかし何も求めずもう得たいものは全部得たのだという、願いは全部叶ったのだと、安らいだ笑みがそこにある。
もう、ずっと幸せだったから、と。

その優しさが、温かな雰囲気が、この物語に流れ続ける抱擁するような空気が、だからこそ胸を切なく締め付けていく。柔らかく、締め付けていく。切ない、切ない、切ないよ。
枯野さんは、昔から、それこそ【echo −夜、踊る羊たち−】や【銀月のソルトレージュ】の時代から、この人にしか醸し出せない独特の空気感、というものを描き出していて、それがどうしようもなく好きで好きでたまらなくてねえ。あの穏やかで、余計な雑音が聞こえてこない、静かな静かな雰囲気に、どうしようもなく心奪われてねえ。
今思えば、この穏やかな空気感というのは、特別で触れがたいものとは決定的に異なっていて、むしろ親しみ易い、日常の延長線上にある平穏さなんですよね。心の緊張をゆるゆると蕩かしてくれる、自分の家に帰ってきたような安らぎを与えてくれる、そんな穏やかさであり、温もりを感じさせる優しさが静かに揺蕩っているのです。
まるで、そんな穏やかな空気感が、目の前で起こっている絶望や残酷さに傷つかないように、包み込んでいてくれるかのようなのだ。だから、痛みはあまり感じない、苦しさにあえぐことはない。ただ、切なくて、なんだか哀しくて、天井を見上げてしまうだけなのだ。

そして、落ちた先に、目覚めた先に訪れた世界は、果たして夢か現実なのか。
続きに、救いを求めて、いいのでしょうか?

1巻 2巻感想

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 24   

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (2) (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 2】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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妖精兵であるクトリたちが決戦に赴いてから半月。彼女たちはまだ、戻らない。次代を担う妖精兵である少女・ティアットを連れ、11番浮遊島へ適性検査に向かったヴィレムは、そこで「決戦敗北」の報を受けるが…。“人間”に代わり“獣”を倒し、死にゆく定めを負った少女妖精たちと、たったひとり生き延びた“人間”の青年教官の、儚くも輝ける日々。第2幕。
だからもうズルいよ〜。泣かせよう泣かせようとあざとく迫ってきてくれたらむしろ冷静になれるのに、そんな素振りなんか見せずにむしろそっけないくらいに淡々と描かれてしまうと、構えることが出来ないんですよ。黙って、席について、その背中をじっと見つめるしかないじゃないですか。見守るしかないじゃないですか。
その挙句に、振り向いてもくれないまま、最後にそっとあんなものを目の前に差し出されて、置かれてしまったら。
感極まってしまうに決まってるじゃないですか。

戦いに行ったまま帰ってこないクトリたち。戦況も伝わってこない中で、一人前の妖精兵となる覚醒の予兆を見せたティアットを連れて、ヴィレムは前線に近い古都「11番浮遊島」へと出向くことになる。
何も分からないままただ待ち続けないといけない、それは何よりも辛いことで胸を焼く焦燥はきっと息も詰まるほど苦しいものであるはずなのに、ヴィレムはそんな素振りを周りの子供たちには一切見せない。
でも、それは強さじゃなくて、むしろヴィレムがどれほどの地獄で生きてきたか、擦り切れてきたか、そして今、何も出来ない残骸に成り果てているのかを目の前につきつけられるかのようで、彼の淡々とした風情が見ているだけで本当に切ない。
でも、それは既に終わってしまっているヴィレムだけじゃなくて、終わることを最初から宿命付けられている妖精兵たちも、似たようなものなんですよね。
それに気が付かず、もしくは目を背けてしまい、すれ違ってしまう二人の姿が、もう胸をかきむしりたくなるほど切ないのよ。辛い、じゃなくて切ないの。
だってこれ、もしすれ違わなくたって、もしちゃんと約束が果たされていたって……終わりは何も変わらないんだもの。後悔したまま終わってしまうことは悲劇だけれど、約束が果たされて、満たされて……そうして終わってしまうことはじゃあ悲劇じゃないの? せめて、せめて、せめて最期にはそのささやかな願いを……それが叶えられる事は、悲劇の中の一滴の中の幸せで、哀しみの中に救いがあるということで。でも、やっぱり悲劇なのだ。どうしようもなく悲劇でしかないのだ。だから、ただただ切ない。切なくて、胸を締め付けられる。
ああやっぱり、その最後の願いさえすれ違いの末に叶わないというのは、一欠片の救いさえ報われなかった事になるから、嫌だ、嫌だ、嫌だなあ……。
だからズルいのだ。最後の最後の、差し伸べられた、目の前にそっと置かれた「幸い」の芽は、あまりに優しすぎて、泣いてしまう。
たとえ、もっと残酷な真実がこの先に待ち構えているのだとしても、今はその奇跡に縋ってしまうのだ。

ヴィレムが古き友との再会の中で明かされていく、妖精兵誕生の真実と、その身に課せられた未来のない運命。そして、古き友らが口を噤んだもう一つの真実。哀しすぎる悲劇の末路。
そこは、紛うことなき終末で、ニンゲンという種は既に滅び、今生き残っている新たな人々もまた終わりを迎えつつある。既に滅びた人間の生き残りで、既に終わってしまっているヴィレムはやはり生まれた時から終わりを内包している妖精の少女たちを静かに見守っている。彼女らを少しでも生かすためにか、未来を見せるためにか、それとも今生きている時に幸せを感じてもらう為なのか。彼女らを看取るためなのか。きっと、彼自身にもわからないまま、終わった自分の体を引きずりながら彼女らの姿を見守っている。
一途に、その儚い命も魂も全部ぶつけるようにして寄り添ってくるクトリを彼は受け止められるのか。不幸とか絶望ばかりが並べ立てられるなかで、幸せというものを彼女に与えることができるのか。もう終わった人間なのに。きっとさらなる絶望が彼を待っているのに。
でもだからこそ、終末でしかないこの世界の果てに、確かな救いを見たいのだ。終わってしまっている彼と彼女が得られるかもしれない、優しい幸福を。見てみたい。
だから、お願い。続きを、この物語の続きを読みたいのです。どれだけ切なくても、哀しくても、その先が見たいのです。こんな所で終わらないで……お願いします。
3巻、3巻、3巻が何とか出ますように……。

1巻感想

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?4   

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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“人間”は規格外の“獣”に蹂躙され、滅びた。たったひとり、数百年の眠りから覚めた青年ヴィレムを除いて。“人間”に代わり“獣”を倒しうるのは、“聖剣”と、それを扱う妖精兵のみ。戦いののち、“聖剣”は再利用されるが、力を使い果たした妖精兵たちは死んでゆく。「せめて、消えたくないじゃない。誰かに覚えててほしいじゃない。つながっててほしいじゃない」
死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、儚くも輝ける日々。

果たして、ここまで見ているだけで胸締め付けられる表紙絵がどれほどあっただろう。食い縛った口元を見ろ。握りしめられた拳を見ろ。まっすぐに此方を見つめてくる碧い瞳を見るがいい。その苦鳴が聞こえてくるかのような涙は、何のために流されているのか。
ここまで魅入られたジャケットは、随分と久々である。しばし、呆けたように眺め続けた。

枯野瑛の物語には、夕焼け色がよく似合う。黄昏色がよく似合う。
それは【銀月のソルトレージュ】からの、或いは【echo】からの、もっと遡って【魔法遣いに大切なこと】の頃から、感じ続けていた思いである。終わりを連想させるノスタルジー。儚く物悲しく、それ故に切ないまでに美しい、去りゆくモノの物語だ。
私は、この人の書く物語が、文章がとても好きで好きでたまらなくて、今でもこの人の著作は手を伸ばせばすぐに手が届く所に確保してある。
本当に、好きなのだ。
【銀月のソルトレージュ】の完結から6年。ノベライズの【セイクリッドブレイズ】からでも5年半。長い長い沈黙の期間だった。半ば、もうこの人の書く本は読めないのだと諦めていただけに、もう一度新たなシリーズが立ち上がると知った時は、嬉しかった、とてもとても。
そして、6年ぶりの枯野さんの描く物語は、やっぱりこの人の物語だった。この優しくも切なく、穏やかながらも鋭く、賑やかながらも深と静やかな空気感は、間違いなく、間違いなく。
思えば、未熟な少女たちを導き鍛える教官モノ、というジャンルは最近隆盛となりつつあるテンプレートにも関わらず、古豪とも言うべき人が手掛けると、ここまで違って見えるものなのか。まず立つ位置が違い、見上げる方向が違う。観点の、違いなのだろう。それは時代の違いであり、作家としての根本的な作風の違いでもある。
そして、彼は、ヴィレムは徹底して父親として存在しようとしている。男としてでも教師としてでもなく。その一点のみで、この作品が語ろうとしている物語は描き出そうとしている景色を違えているのだろう。
何もかもが喪われて終わってしまった向こう側。終末のその先でまた巡りあうもう一つの行き止まり。そこで立ち尽くしたまま消えていくはずだった少女たちと出会ってしまった形骸は、その今にも崩れそうなほどボロボロで空っぽになってしまった器を、彼女たちの帰る場所に仕立て、せめて彼女たちを暖かく包み込もうとしている。己自身、荒涼と吹きすさぶ寒々とした虚無に晒され、身も心も朽ちさせながら、だ。その何と哀しいことだろう、切ないことだろう。
何て、愛情深いことだろう。

だからこそ、だからこそだ。あまりにも、あまりにもこの展開は、あの獣の叫びは、呼び声は……。
もう涙腺の決壊を止めることが出来なかった。
怖いよ。押し潰されそうだ。でも、だからこそ切実に、続きを望む。このままだと、余りにも悲しすぎて。


枯野瑛作品感想
 
8月3日

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(ビッグガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(KADOKAWA)
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(KADOKAWA)
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7月25日

(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップノベルス)
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(オーバーラップノベルス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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7月21日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(MFブックス)
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(MFC)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス フラッパーシリーズ)
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(アフタヌーンKC)
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(アフタヌーンKC)
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(アフタヌーンKC)
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(モーニングKC)
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(モーニングKC)
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(モーニングKC)
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7月20日

(4コマKINGSぱれっとコミックス)
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(4コマKINGSぱれっとコミックス)
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(4コマKINGSぱれっとコミックス)
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(4コマKINGSぱれっとコミックス)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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7月19日

(HJ NOVELS)
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(HJ NOVELS)
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(HJ NOVELS)
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(HJ NOVELS)
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(HJ NOVELS)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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(チャンピオンREDコミックス)
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7月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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7月16日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(角川文庫)
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(角川文庫)
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7月15日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(マガジンエッジKC)
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(コロナ・コミックス)
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(コロナ・コミックス)
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(コロナ・コミックス)
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7月14日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GAノベルス)
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(GAノベルス)
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(ハヤカワ文庫JA)
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(ハヤカワ文庫JA)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(モーニングKC) Amazon Kindle B☆W

7月13日

(リュウコミックス)
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7月12日

(アクションコミックス)
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(アクションコミックス)
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(アクションコミックス)
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(アクションコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグ コミックス)
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(ビッグ コミックス)
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(YKコミックス)
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(YKコミックス)
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(YKコミックス)
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(ガンガンコミックスONLINE)
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(アース・スターコミックス)
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(アース・スターコミックス)
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(アース・スターコミックス)
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(メテオCOMICS)
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(メテオCOMICS)
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(メテオCOMICS)
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(メテオCOMICS)
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7月10日

(TOブックス)
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(TOブックス)
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(モーニングスターブックス)
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7月9日

(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(講談社)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(電撃コミックスNEXT)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(星海社COMICS)
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(ブレイドコミックス)
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(ブレイドコミックス)
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7月8日

(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC
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(宝島社)
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7月7日

(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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(幻冬舎文庫)
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(アフタヌーンKC)
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(ガンガンコミックスUP!)
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(ガンガンコミックスUP!)
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