【女賢者の明智光秀だが、女勇者の信長がパーティーにいて気まずい】 森田季節/ yaman** LINE文庫エッジ

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

前世で殺した相手とパーティーを組む!?それってめちゃくちゃ気まずいんですけど!

明智光秀です。
なぜか転生を繰り返していたら、異世界で女賢者になっていました。
そこまではいいんですけど、賢者ひとりで戦うのは大変なのでパーティーに応募してみたら、信長様が女勇者として目の前にいました。

……いや、ムリ。
前世で殺した相手とパーティー組むとかムリムリ。
ほら、なんかすっごい目でこっちを見ているし。絶対うまくいくわけないですって!

「サルもパーティーに入ります~♪」(秀吉)
「わらわも入ってあげるわ」(義昭)
信長様だけでも気まずいのに、秀吉さんや義昭様も参加しちゃったんですけど!
心の平穏はどこー!?

前世でとっても因縁のあるパーティーメンバーたちの異世界冒険(日常)?物語。
このパーティーは今日も気まずいです。


じゃあ組むなよ! とまずは言いたくなる所ではあるんでしょうけど、敢えて光秀と信長がパーティー組むことにした理由がまた生々しいんですよね。
曰く、自分を殺したやつが他のパーティーにいるの、怖い!
そりゃそうだよね、自分の殺害実績あるやつが自分の手の届かない所で何してるかわかんない状態で野放しにされてたら、影で何されてるかわからないし何仕掛けてこられるかわからないから怖いよね。
でも、だからって身内に入れてたらもっと怖いって思うんだけど、そのへん自分ちゃんと監視してたらなんとかならあな、という自信家な所が流石のノッブである。
もう先に予防措置的に殺しておけよ、と思うのは鎌倉武士風に毒されているのだろうか。

というわけで、かの勇名な戦国武将である所の織田信長と明智光秀と豊臣秀吉と足利義昭が生まれ変わって冒険者となり、一緒にパーティー組んでダンジョン攻略するぞ、というどうしてそのメンツで組むことにした、というお話である。
一応、戦国時代から直で異世界、ではなく一度現代日本に転生してそこで死んでからまた転生して異世界に、というワンクッション置いているのが味噌である。さすがに戦国時代から直だと感情的にも相容れないものがあったんだろうけど、一度別の人生、それも女のものを挟んでいるせいか、感情的にも一旦落ち着いて怒りや憎しみというものは収まってるんですね。さらに、現代でみんな相応に自分の辿った生涯やその後の歴史についても勉強しているので、それぞれに思う所あるわけですよ。
ただ、光秀とノブの関係だとやはり殺った殺られたという事実があるし、秀吉なんかも光秀ぶっ殺した上に織田家乗っ取っちゃってるわけですから、信長からすると素直に昔みたいに可愛い臣下としては扱えないんですよね、微妙なんですよ、複雑だしコイツなに考えてるか実際の所わかんねー、って怖いわけですよ。
感情的には収まっているけれど、お互いにやらかしあった事実が厳然とある身同士としては、やはりどうしても気まずい! なんか、空気がぎこちない! 心から打ち解けられない! 
このどうしようもない空気感の表現がまた、なんというか絶妙なんですよね。
しかも、それぞれ個性も違う。うちに引っ込めて中々思うところを口にできない光秀に対して、信長はこうズケズケ言っちゃう。言いたい事ははっきり言うし言いにくい事も聞きにくい事も敢えて聞く! 秀吉なんかは愛想ばかり良くて何考えてるか実際わからない得体の知れない腹黒さを感じさせるギャルで、なんかこう信用できない。そして、足利義昭はなんにも考えてない!
わりとノッブがこう気まずさに停滞しそうな空気感を、敢えてそれ聞いちゃう!?みたいな感じで切り込んで行くことでどうしようもないくらいぶっちゃけた話になっちゃうわけですが、ぶっちゃけてしまえばしまったでそれはそれで気まずい話になってしまうわけでw

ちなみに、この四人ともが転生した現代日本で女性として生まれ変わり、それぞれに人生を送ったものの若いうちに盛大に人生失敗し若いうちに死んじゃっているので、わりとアカン方へと転がり落ちてる皆さんですw

面白いのがこれ、何気に信長を初めとして戦国武将の皆さん、わりと新しい方の説に基づいたと思われるキャラ造形されてるっぽい所なんですよね。
特に織田信長、実際は革新的というよりも保守的な傾向があり、横暴に見えて何気に気遣いの人、というのが結構透けて見えるキャラクターになってるのである。
めちゃくちゃズケズケ言いたいことを言っているようで、言うべき事聞くべき事を聞かずお互い本心を明かさずにいることで危うくなるだろうパーティーの関係を回避するために、あえて空気を読んでお互いをさらけ出し合うために自分から地雷を踏んでまわっている節もありますし、好き放題する足利義昭を叱りながら何くれとなく気遣って一生懸命面倒見ている所とか、なんかもうすごい織田信長っぽいんですよね。
やんやとお互いぶつけ合う歴史ネタも、使い古された過去のものは殆ど見当たらずに、結構最近のものでまとめられているようですし。長宗我部説も、原因の一旦くらいの比重で済ましてますしね。
秀吉の人物分析なんかも非常に興味深い所で、わざわざ秀吉をなんで媚媚なギャルにしたのかというのもわかって頷くところであったのですけど、秀吉の「友だち少ない」という人格面を安易に非難したり否定しない信長様が、なるほどと思わせられる「人物」っぷりだったんですよねえ。そういう所がカリスマだったんだろうなあ。
まさか、ここからイイ話になるとは思わなかったので、尚更に「おおっ」と思わせてくれるところであったのですけれど。
しかしイイ話になった所でそこでスッキリ気持ちの良い終わり方なぞするはずもなく、お互いのどうしようもない部分、どうしても神経に触る部分、噛み合わない部分、ムカつく部分というものはあるわけで。
立場も冒険者として対等という建前になり、お互いどういう人間かというのも前世を通じて理解し合い、今世でも曝け出しあったという事で、主従だったり時代背景もあり殺伐とした情勢もあり損得に縛られた関係だった前前世と違って、言いたいことを言い合える関係であり妥協しあい許し合い受け入れあえる仲間となった今だけど、でも気まずくなった時はどうしようもないよね! というこの微妙極まる空気感は、ここまでやってもらえるともうなんかひたすら楽しかったです。
当人たちは気まずいんでしょうけど、傍から見てて居た堪れなくなるような辛く痛々しい空気感ではなく、素直に苦笑できるあたりは実に良質の、人間関係にスポットを当てたコメディだったと思いますよこれ。こういう繊細な人と人との感情の機微を描かせるとやっぱり絶妙なんですよね、森田さんて。
期待していた以上に、面白かった♪ しかし、このメンツだとやっぱり家康は必要不可欠ですよなあ。次回があるなら、まず間違いなく参戦かしら。

森田季節作品感想